IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両制御装置 図1
  • 特許-車両制御装置 図2
  • 特許-車両制御装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20221213BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G08G1/09 V
G08G1/09 F
B60W40/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019127877
(22)【出願日】2019-07-09
(65)【公開番号】P2021012655
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 友紀
(72)【発明者】
【氏名】中西 司
(72)【発明者】
【氏名】森川 裕太
(72)【発明者】
【氏名】山室 直樹
(72)【発明者】
【氏名】辰本 裕樹
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-040522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30、30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
H03J 9/00- 9/06
H04B 7/24- 7/26
H04Q 9/00- 9/16
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外部の管制センターのオペレータによる操作に基づいた遠隔操作信号が入力される遠隔操作信号受信部と、
前記管制センター側において前記車両の遠隔操作が可能な状態では、前記管制センターから出力された前記遠隔操作信号に基づいた遠隔操作モードで前記車両を制御する制御部と、
目的地の入力が可能な目的地入力部と、
前記車両の現在の位置情報が入力される位置情報入力部と、
前記車両の乗員と前記管制センターのオペレータとの間での会話を可能とする通話装置と、
を備え
前記制御部は、前記位置情報入力部に入力された前記位置情報に基づく前記車両の現在地が前記目的地を含んだ所定の範囲に入ることによって前記遠隔操作モードで前記車両を制御する車両制御装置。
【請求項2】
前記車両の周囲の状況を検知すると共に、検知結果に基づく状況検知信号を出力する状況検知装置を備え、
前記制御部は、前記状況検知信号に基づいて前記車両を制御可能であると共に、前記目的地までの経路のうち、前記所定の範囲を含んだ少なくとも一部の区間では、前記状況検知信号に基づいて前記車両を制御する請求項1に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行を制御する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、車両走行中における車両の制御が乗員の操作に依存されない自律自動運転中に閾値リスクレベルに到達すると、車両の外部のコントロールセンターによる車両の走行制御の支援を受けることが可能な構成が開示されている。一方、例えば、観光地を車両で走行するような場合には、目的地への最短ルートや最速ルートで走行するよりも、遠回りであったり、時間がかかったりしても観光名所や景勝地を経由して、それらを見るルートで車両を走行させたいという要望がある。
【0003】
この点についていえば、上記の自律自動運転よって車両の走行が制御される自律自動運転モードでは、複雑な任意のルートの設定が難しい。また、車両の乗員の操作によって車両の走行が制御される手動モードでは、車両の乗員が観光地の情報を備えていなくては観光名所や景勝地を経由できない。これに対して、車両外部の管制センターのオペレータによって車両が遠隔操作される遠隔操作モードでは、オペレータが車両の走行ルートを任意に設定できる。しかしながら、オペレータがなぜその走行ルートを選択したのか車両の乗員が理解することは困難であり、オペレータが選択した走行ルートに対して車両の乗員が意思表示することもできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第9964948号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、車両の乗員が管制センターのオペレータからの説明を受け、更に、管制センターのオペレータに対して車両の乗員が意思表示できる車両制御装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の車両制御装置は、車両の外部の管制センターのオペレータによる操作に基づいた遠隔操作信号が入力される遠隔操作信号受信部と、前記管制センター側において前記車両の遠隔操作が可能な状態では、前記管制センターから出力された前記遠隔操作信号に基づいた遠隔操作モードで前記車両を制御する制御部と、目的地の入力が可能な目的地入力部と、前記車両の現在の位置情報が入力される位置情報入力部と、前記車両の乗員と前記管制センターのオペレータとの間での会話を可能とする通話装置と、を備え、前記制御部は、前記位置情報入力部に入力された前記位置情報に基づく前記車両の現在地が前記目的地を含んだ所定の範囲に入ることによって前記遠隔操作モードで前記車両を制御する。
【0007】
請求項1に記載の車両制御装置では、管制センターのオペレータの操作に基づく遠隔操作信号が管制センターから出力され、この遠隔操作信号が車両側の遠隔操作信号受信部に受信される。車両の外部の管制センター側での車両の遠隔操作が可能な状態では、遠隔操作信号が車両側の遠隔操作信号受信部に受信されると、制御部が遠隔操作信号に基づいて車両を制御する。したがって、この状態では、車両は、管制センターのオペレータによって遠隔操作される。
【0008】
一方、本車両制御装置では、車両の乗員と管制センターのオペレータとは、通話装置によって互いに会話できる。このため、管制センターのオペレータは、例えば、目的地までの推奨ルート(走行経路)等を提案でき、車両の乗員は、管制センターのオペレータからの提案に対して意思表示できる。
【0010】
また、請求項に記載の車両制御装置では、位置情報入力部に位置情報が入力され、この位置情報に基づく車両(自車両)の現在の位置が、目的地入力部に入力された目的地を含んだ所定の範囲に入ると、車両は、制御部によって遠隔操作モードで制御される。
【0011】
請求項に記載の車両制御装置は、請求項に記載の車両制御装置において、前記車両の周囲の状況を検知すると共に、検知結果に基づく状況検知信号を出力する状況検知装置を備え、前記制御部は、前記状況検知信号に基づいて前記車両を制御可能であると共に、前記目的地までの経路のうち、前記所定の範囲を含んだ少なくとも一部の区間では、前記状況検知信号に基づいて前記車両を制御する。
【0012】
請求項に記載の車両制御装置では、車両の周囲の状況が状況検知装置によって検知される。状況検知装置による車両の周囲の状況の検知結果は、状況検知信号として状況検知装置から出力される。状況検知装置から出力された状況検知信号は、制御部に入力される。
【0013】
ここで、目的地までの経路のうち、所定の範囲(目的地を含んだ所定の範囲)を含んだ少なくとも一部の区間では、制御部は、状況検知手段から出力された状況検知信号に基づいて車両を制御する。
【発明の効果】
【0017】
以上、説明したように、請求項1に記載の車両制御装置では、車両の乗員と管制センターのオペレータとの間で通話装置を介して会話が可能であるため、管制センターのオペレータは、車両の乗員に対して走行ルート等を提案でき、車両の乗員は、オペレータからの提案に対して意思表示できる。
【0018】
また、目的地を含んだ所定の範囲に入ると、車両は、制御部によって遠隔操作モードで制御される。すなわち、管制センターのオペレータによる車両の制御は、上記の所定の範囲に入ってから開始される。このため、目的地を含んだ所定の範囲に入るまでは、遠隔操作モードとは異なるモード、例えば、車両の乗員の操作による手動モードや、車両周辺の状況を検知して制御部が車両を制御する自律運転モード、他の管制センターのオペレータによる遠隔操作モードで車両を走行させることができる。
【0019】
請求項に記載の車両制御装置では、所定の範囲(目的地を含んだ所定の範囲)を含んだ少なくとも一部の区間では、車両の乗員は、特に、車両を制御しなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施の形態に係る車両制御装置のブロック図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る管制センターのコントローラのブロック図である。
図3】目的地までの走行ルートの側面視的な概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明一実施の形態を図1から図3の各図に基づいて説明する。
【0023】
<本実施の形態の構成>
図1に示されるように、本車両制御装置10は、制御部12を備えている。制御部12は、車両14(図1では図示省略、図3参照)のアクセル装置16、ブレーキ装置18、ステアリング装置20等の走行操作装置へ電気的に接続されている。
【0024】
車両14が電力を駆動エネルギーとする電気自動車等であれば、アクセル装置16は、車両14に搭載された駆動用モータへ電気的に接続されている。駆動用モータは、車両14の駆動輪へ機械的に連結されている。アクセル装置16は、制御部12から出力されたアクセル制御信号の信号レベルに基づいて駆動用モータへの供給電力を制御する。これによって、車両14の駆動輪は、制御部12から出力されたアクセル制御信号の信号レベルに基づいて回転が制御され、アクセル制御信号の信号レベルに基づいた速度や加速度で車両14が走行される。
【0025】
これに対して、車両14がガソリン等を燃料とするエンジン車等であれば、アクセル装置16は、エンジンへの空気の流入量を調節するスロットルの弁を作動させる駆動部へ電気的に接続されている。駆動部は、アクセル制御信号の信号レベルに基づいてスロットルの弁を駆動させる。これによって、アクセル制御信号の信号レベルに基づいた速度や加速度で車両14が走行される。
【0026】
一方、ブレーキ装置18は、給電されることによって駆動されるブレーキ駆動部を備えている。ブレーキ駆動部は、例えば、電動モータ等によって構成されており、ブレーキ駆動部の駆動方向や駆動速度は、制御部12から出力されたブレーキ制御信号の信号レベルに基づいて制御される。ブレーキ駆動部が正転駆動されると、車両14を構成する機械的ブレーキシステムのブレーキパッドやブレーキシューが車両14の車輪へ押し当てられ、これによって、車輪の回転速度が減速される。これに対して、ブレーキ駆動部が逆転駆動されると、ブレーキパッドやブレーキシューの車輪への押し当てが弱まる。これによって、車輪の回転速度を減速が弱まり、又は、それ以上の車輪の減速が解消される。
【0027】
また、ステアリング装置20は、給電されることによって駆動されるステアリング駆動部を備えている。ステアリング駆動部は、例えば、電動モータ等によって構成されており、ステアリング駆動部の駆動方向や駆動速度は、制御部12から出力されたステアリング制御信号の信号レベルに基づいて制御される。
【0028】
ステアリング駆動部は、ラック、ピニオン、タイ・ロッド等の機械的伝達機構を介して車両14の前輪及び後輪の少なくとも一方を支持するキングピンへ機械的に連結されている。ステアリング駆動部が駆動されると、ステアリング駆動部から出力された駆動力が上記の機械的伝達機構を介してキングピンへ伝達される。これによって、車両14の前輪は、車両上下方向を軸方向とする軸周り方向へ回動され、車両14の進行方向が変更される。
【0029】
また、車両14は、アクセルペダルを備えている。アクセルペダルは、車両14の室内における運転席の車両前下側で車幅方向を軸方向とする軸周り方向に回動可能に設けられている。アクセルペダルのぺダル部分が車両14の運転席に着座した乗員によって踏まれると、アクセルペダルのぺダル部分は、乗員からの踏力の大きさに応じて車両下側へ回動される。このアクセルペダルの回動角度及び回動速度は、図1に示されるアクセル操作検出部22を構成するセンサによって検出される。
【0030】
アクセル操作検出部22は、アクセルペダルの回動角度及び回動速度の各々の大きさに応じたレベルのアクセル操作信号を出力する。アクセル操作検出部22から出力されたアクセル操作信号は、制御部12へ入力される。車両14の走行制御モードが手動モードの状態では、制御部12は、入力されたアクセル操作信号のレベルに応じたアクセル制御信号を出力する。したがって、手動モードの状態では、例えば、乗員によって踏まれたアクセルペダルの回動角度及び回動速度に応じて車両14の走行速度や加速度(減速度を含む)が設定される。
【0031】
さらに、車両14は、ブレーキペダルを備えている。ブレーキペダルは、車両14の室内における運転席の車両前下側で車幅方向を軸方向とする軸周り方向に回動可能に設けられている。ブレーキペダルのぺダル部分が車両14の運転席に着座した乗員によって踏まれると、ブレーキペダルのぺダル部分は、乗員からの踏力の大きさに応じて車両前上側へ回動される。このブレーキペダルの回動角度及び回動速度は、図1に示されるブレーキ操作検出部24を構成するセンサによって検出される。
【0032】
ブレーキ操作検出部24は、ブレーキペダルの回動角度及び回動速度の各々の大きさに応じたレベルのブレーキ操作信号を出力する。ブレーキ操作検出部24から出力されたブレーキ操作信号は、制御部12へ入力される。車両14の走行制御モードが手動モードの状態では、制御部12は、入力されたブレーキ操作信号のレベルに応じたブレーキ制御信号を出力する。したがって、手動モードの状態では、例えば、乗員によって踏まれたブレーキペダルの回動角度及び回動速度に応じて車両14が減速される。
【0033】
また、車両14は、ステアリングホイールを備えている。ステアリングホイールは、車両14の室内における運転席の車両前側で車両前後方向を軸方向とする軸周り方向に左右に回転可能に設けられており、車両14の運転席の乗員によるステアリングホイールの回転操作が可能とされている。このステアリングホイールの回転角度は、図1に示されるステアリング操作検出部26を構成するセンサによって検出される。
【0034】
ステアリング操作検出部26は、ステアリングホイールの回転角度に応じたレベルのステアリング操作信号を出力する。ステアリング操作検出部26から出力されたステアリング操作信号は、制御部12へ入力される。車両14の走行制御モードが手動モードの状態では、制御部12は、入力されたステアリング操作信号のレベルに応じたステアリング制御信号を出力する。したがって、手動モードの状態では、例えば、乗員によって回転操作されたステアリングホイールの回転角度に応じて車両14が操舵される。
【0035】
一方、制御部12は、目的地入力部及び位置情報入力部の一態様である測位信号受信部としてのカーナビゲーション装置28へ電気的に接続されており、制御部12は、制御部12とは別のカーナビゲーション装置28の制御部へアクセスできる。このため、制御部12は、カーナビゲーション装置28の制御部が読み込んだ情報やカーナビゲーション装置28に記憶されている情報を読み込むことができる。
【0036】
カーナビゲーション装置28は、アンテナを備えており、測位システムを構成する人工衛星等から出力された位置情報の一態様である測位信号(電波)がカーナビゲーション装置28のアンテナによって受信される。カーナビゲーション装置28は、測位信号を受信することによって現在地の緯度、経度を演算し、車両14の室内のモニタに映し出された地図上に車両14の現在地を表示できる。また、カーナビゲーション装置28は、入力装置を備えており、乗員による入力装置の操作によって、例えば、出発地から目的地までのルートを検索、設定できる。さらに、カーナビゲーション装置28は、状況検知装置の一態様であるデータ受信部30へ電気的に接続されている。
【0037】
データ受信部30は、データ信号を受信可能なアンテナを備えており、サービス機関から送られたデータ信号を受信できる。サービス機関からは、例えば、出発地や目的地、目的地までのルート上の道路情報(例えば、道路の制限速度や渋滞情報)や気象情報等のデータ信号が送信される。データ信号がデータ受信部30に入力されると、データ信号は、カーナビゲーション装置28の制御部に入力され、更に、カーナビゲーション装置28を介して制御部12に入力される。
【0038】
また、制御部12は、状況検知装置の一態様として車両周辺監視装置を構成する車両周辺撮像装置としてのカメラ32へ電気的に接続されている。カメラ32は、車両14の周辺(例えば、車両14の前方)を撮像する。カメラ32が撮像した映像(画像)は、画像情報信号に変換されて制御部12に入力される。制御部12では、入力された画像情報信号に基づいて、車両14の前方の道幅、信号機の変化、車両14の前方の他の車両や歩行者等の状態等、車両14の周辺の状況が解析される。
【0039】
また、制御部12は、カメラ32と共に状況検知装置の一態様として車両周辺監視装置を構成する測距装置34へ電気的に接続されている。測距装置34は検出波出力部と検出波受信部とを備えている。測距装置34の検出波出力部からは検出波が車両14の前方等へ出力される。検出波は、例えば、赤外線やレーザー光等の電磁波とされ、車両14の前方の障害物等によって反射される。この検出波の反射波が測距装置34の検出波受信部で受信されると、測距装置34では、車両14から障害物等までの距離が演算され、この演算結果に基づく前方監視信号が測距装置34から出力される。測距装置34から出力された前方監視信号は、制御部12に入力される。
【0040】
本車両制御装置10が搭載された車両14は、走行制御モードの一態様である自律運転モードによる自律自動走行操作が可能とされている。自律運転モードの状態では、上述したカーナビゲーション装置28、カメラ32、測距装置34等から出力された信号に基づいて制御部12から適宜にアクセル操作信号、ブレーキ操作信号、ステアリング操作信号が出力される。これによって、車両14の乗員の操作に依存することなく車両14の走行が制御され、車両14は、乗員の操作を特に必要とせずに目的地等へ向けて走行できる。
【0041】
また、制御部12は、遠隔操作信号受信部としての車両側遠隔操作装置36へ電気的に接続されている。車両側遠隔操作装置36は、車両制御装置10と共に車両走行制御システム50を構成する管制センター38(図3参照)との間で相互通信可能とされている。管制センター38は、例えば、観光地、住宅地、立体駐車場等の特定の地域を含む範囲内で、この特定の地域を管轄するように各地に設定されている。管制センター38には、コントローラ52が設置されている。コントローラ52は、例えば、一般的な車両の運転席を模して作られており、オペレータ(遠隔操作員)が着座する疑似運転席を備えている。また、コントローラ52は、疑似アクセルペダル、疑似ブレーキペダル、疑似ステアリングホイールを備えている。
【0042】
疑似アクセルペダルは、コントローラ52における疑似運転席の前下側で左右方向を軸方向とする軸周り方向に回動可能に設けられている。疑似アクセルペダルのぺダル部分が疑似運転席に着差したオペレータによって踏まれると、疑似アクセルペダルのぺダル部分は、オペレータからの踏力の大きさに応じて車両下側へ回動される。この疑似アクセルペダルの回動角度及び回動速度は、図2に示される疑似アクセル操作検出部54を構成するセンサによって検出される。疑似アクセル操作検出部54は、疑似アクセルペダルの回動角度及び回動速度の各々の大きさに応じたレベルの疑似アクセル操作信号を出力する。
【0043】
一方、疑似ブレーキペダルは、コントローラ52の疑似運転席の前下側で左右方向を軸方向とする軸周り方向に回動可能に設けられている。疑似ブレーキペダルのぺダル部分がコントローラ52の疑似運転席に着座したオペレータによって踏まれると、疑似ブレーキペダルのぺダル部分は、オペレータからの踏力の大きさに応じて車両前上側へ回動される。この疑似ブレーキペダルの回動角度及び回動速度は、図2に示される疑似ブレーキ操作検出部56を構成するセンサによって検出される。疑似ブレーキ操作検出部56は、疑似ブレーキペダルの回動角度及び回動速度の各々の大きさに応じたレベルの疑似ブレーキ操作信号を出力する。
【0044】
また、疑似ステアリングホイールは、コントローラ52の疑似運転席の前側で前後方向を軸方向とする軸周り方向に左右に回転可能に設けられており、疑似運転席に着座したオペレータによる疑似ステアリングホイールの回転操作が可能とされている。この疑似ステアリングホイールの回転角度は、図2に示される疑似ステアリング操作検出部58を構成するセンサによって検出される。疑似ステアリング操作検出部58は、疑似ステアリングホイールの回転角度に応じたレベルの疑似ステアリング操作信号を出力する。
【0045】
また、コントローラ52は、遠隔操作制御部60を備えている。遠隔操作制御部60は、上述した疑似アクセル操作検出部54、疑似ブレーキ操作検出部56、疑似ステアリング操作検出部58の各々へ電気的に接続されており、疑似アクセル操作信号、疑似ブレーキ操作信号、疑似ステアリング操作信号の各々が遠隔操作制御部60に入力される。遠隔操作制御部60は、入力された疑似アクセル操作信号、疑似ブレーキ操作信号、疑似ステアリング操作信号に基づいて遠隔操作信号を生成する。遠隔操作制御部60は、送受信部62へ電気的に接続されており、遠隔操作制御部60で生成された遠隔操作信号は、送受信部62で電波に変換されて管制センター38のアンテナから送信される。
【0046】
走行制御モードの一態様である遠隔操作モードでは、管制センター38のアンテナから送信された遠隔操作信号に基づく電波が車両14の車両側遠隔操作装置36によって受信されると、遠隔操作信号は、制御部12に入力される。遠隔操作信号が制御部12に入力されると、制御部12からは遠隔操作信号に基づいたアクセル操作信号、ブレーキ操作信号、ステアリング操作信号等が出力される。これによって、車両14は、管制センター38のオペレータによるコントローラ52の操作に基づいて遠隔操作される
一方、コントローラ52は、モニタ64を備えている。車両制御装置10の制御部12と管制センター38のコントローラ52との相互通信状態では、上述したカメラ32が撮像した映像に基づく映像信号が遠隔操作制御部60を介して車両側遠隔操作装置36から電波として出力される。車両側遠隔操作装置36から出力された映像信号を管制センター38が受信して送受信部62に入力されると、映像信号に基づく車両14の周囲の映像がモニタ64に映し出される。これによって、コントローラ52の疑似運転席に着座したオペレータは、車両14の周囲の状況を視認できる。
【0047】
一方、車両制御装置10の制御部12は、通話装置を構成する車両側マイク40に接続されている。車両側マイク40は、車両14の室内の音声の入力が可能とされており、例えば、車両14の乗員の音声が車両側マイク40に入力される。音声が車両側マイク40に入力されると、音声が音声に対応した電気信号である車両側音声信号に変換される。車両14と管制センター38との相互通信状態では、車両側音声信号が制御部12を介して車両側遠隔操作装置36へ入力され、車両側音声信号に対応する電波が車両側遠隔操作装置36から出力される。
【0048】
管制センター38には通話装置を構成する管制センター側スピーカ66が設置されている。管制センター38が車両側音声信号に対応する電波を受信すると、車両側音声信号が音声に変換され、管制センター側スピーカ66から出力される。これによって、管制センター38のオペレータは、車両14の乗員の音声を聞くことができる。
【0049】
また、車両制御装置10の制御部12は、通話装置を構成する車両側スピーカ42に接続されている。車両側スピーカ42は、制御部12を介して車両側遠隔操作装置36へ接続されている。外部音声信号に対応する電波が車両側遠隔操作装置36によって受信されると、車両側スピーカ42から外部音声信号に基づく音声が出力され、車両14の乗員は、車両側スピーカ42から出力された音声を聞くことができる。
【0050】
管制センター38には、通話装置を構成する管制センター側マイク68が設置されている。管制センター38のオペレータの音声が管制センター側マイク68に入力されると、音声が外部音声信号に変換され、外部音声信号に対応する電波が管制センター38から出力される。管制センター38から出力された外部音声信号に対応する電波が車両側遠隔操作装置36によって受信されることによって車両14の乗員は、管制センター38のオペレータの音声を聞くことができる。すなわち、車両側マイク40と車両側スピーカ42とを併用することによって、車両14の乗員は、管制センター38のオペレータと会話できる。
【0051】
以上の管制センター38のオペレータによる車両14の遠隔操作は、例えば、旅行代理店等における事前申し込み等によって可能になる。
【0052】
また、以上の構成の車両制御装置10を搭載した車両14では、上述した手動モード、自律運転モード、遠隔操作モードのうち何れか1つの走行制御モードが車両14の乗員によって選択される。具体的には、例えば、車両14の乗員によって車両14のイグニッション装置が操作され、車両14の走行準備がなされると、制御部12は、カーナビゲーション装置28のモニタに走行制御モードの選択画面が表示される。この状態で、カーナビゲーション装置28のモニタに設けられたタッチパネルや他の入力装置が操作されることによって手動モード、自律運転モード、遠隔操作モードのうち何れか1つの走行制御モードが選択される。
【0053】
手動モード又は自律運転モードと遠隔操作モードとの間でのモードの切り替えは、車両14と管制センター38との間での相互通信状態になり、車両14の走行操作制御の権限が、車両14及び管制センター38の一方から他方へ移譲されることによって成立する。
【0054】
<本実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について出発地から目的地までの過程で高速道路H(図3参照)を利用するモデルを例に説明する。また、このモデルでは、出発地の最寄りの高速道路Hのインターチェンジまでは車両14が手動モードで制御され、高速道路Hでは、自律運転モードで制御され、目的地の最寄りの高速道路Hのインターチェンジからは車両14が遠隔操作モードで制御されるものとする。
【0055】
出発地(例えば、車両14の乗員の自宅駐車場)では、目的地や目的地までの経由地等が車両14の乗員によってカーナビゲーション装置28に入力される。さらに、この状態で、車両14の乗員によって車両14の走行制御モードが選択される。本実施の形態では、先ず、手動モードが選択され、この状態で、車両14の走行が開始される。
【0056】
この状態では、車両14の乗員によるアクセル操作、ブレーキ操作、ステアリング操作に基づいたアクセル操作信号、ブレーキ操作信号、ステアリング操作信号が制御部12に入力される。制御部12からは制御部12に入力されたアクセル操作信号、ブレーキ操作信号、ステアリング操作信号に基づいたアクセル制御信号、ブレーキ制御信号、ステアリング制御信号が出力される。車両14のアクセル装置16、ブレーキ装置18、ステアリング装置20の各々は、制御部12から出力されたアクセル制御信号、ブレーキ制御信号、ステアリング制御信号に基づいて操作される。したがって、手動モードでは、車両14の乗員の操作に応じて車両14の走行が制御される。
【0057】
車両14が出発地の最寄りの高速道路Hのインターチェンジに到達すると、車両14の乗員によって車両14の走行制御モードが手動モードから自律運転モードに切り替えられる。この状態では、データ受信部30が受信した道路情報や気象情報、カメラ32が撮影した車両14の周囲の映像、測距装置34が測定した車両14から障害物等までの距離等に基づいて適宜にアクセル操作信号、ブレーキ操作信号、ステアリング操作信号が制御部12から出力される。したがって、車両14が高速道路Hを走行している状態では、車両14は、基本的に乗員の操作に依存することなく走行できる。
【0058】
一方、目的地を含んだエリアA(図3参照)を管轄する管制センター38からは電波が出力される。管制センター38から出力された電波は、エリアA及び車両14の目的地の最寄りの高速道路Hのインターチェンジを含んだエリアB(図3参照)で受信可能とされる。したがって、車両14が目的地の最寄りの高速道路Hのインターチェンジの料金所44を通過すると、管制センター38からの電波が車両14の車両側遠隔操作装置36によって受信される。
【0059】
これによって、車両14と管制センター38との間での相互通信状態になる。この状態では、車両14の乗員と管制センター38のオペレータとの間で会話が可能になる。さらに、この状態で、車両14側から管制センター38側へ走行操作制御の権限が移譲されると、車両14は、自律運転モードから遠隔操作モードへ切り替わって一般道R(図3参照)上を走行する。
【0060】
この状態では、管制センター38に設置されたコントローラ52が車両14のカメラ32が撮影した映像等に基づいて管制センター38のオペレータによって操作される。管制センター38のコントローラ52での操作に基づいた遠隔操作信号は、管制センター38から出力される。管制センター38から出力された遠隔操作信号が車両14の車両側遠隔操作装置36によって受信され、更に、遠隔操作信号が制御部12に入力されると、遠隔操作信号に基づいたアクセル操作信号、ブレーキ操作信号、ステアリング操作信号等が制御部12から出力される。これによって、管制センター38のオペレータによるコントローラ52の操作に基づいて車両14が遠隔操作される。
【0061】
この状態では、管制センター38のオペレータによって車両14が遠隔操作されるため、例えば、目的地への最短距離のルートや、道幅が広く走行しやすいルート以外のルートを管制センター38のオペレータが任意に選択できる。また、この状態では、車両側マイク40、管制センター側スピーカ66、管制センター側マイク68、車両側スピーカ42を介して車両14の乗員と管制センター38のオペレータとの間で会話が可能である。
【0062】
したがって、この状態では、例えば、車両14の乗員と管制センター38のオペレータとの間で会話に基づいて管制センター38のオペレータが車両14の乗員の趣味や好みを把握し、適宜に目的地や目的地までのルートを変更することが可能である。また、管制センター38のオペレータは、目的地や目的地までのルートの変更を車両14の乗員に提案でき、車両14の乗員は、管制センター38のオペレータからの提案に対して意思表示できる。これによって、例えば、目的地までの最短距離のルートから外れて景観の美しい場所に車両14の乗員の同意のうえで立ち寄ったりすることができる。また、車両14の乗員は、例えば、目的地までの間の観光情報等の現地情報を管制センター38のオペレータから聞くことができ、更には、このような現地情報に基づいて観光地や飲食店等へ立ち寄ったりすることができる。
【0063】
このように、本実施の形態では、車両14の乗員の趣味や好みに応じた目的地及びその周辺等の案内や、それを踏まえた目的地の変更や目的地までのルートの変更が可能になる。
【0064】
なお、本実施の形態では、管制センター38のオペレータは、車両14の遠隔操作と、車両14の乗員との会話の双方を担っていた。しかしながら、車両14の遠隔操作を担当するオペレータとは別に車両14の乗員と会話するオペレータ(ガイド)を設定してもよい。
【0065】
また、本実施の形態でのモデルでは、出発地から出発地の最寄りの高速道路Hのインターチェンジまでの車両14の走行制御モードを手動モードとした。しかしながら、出発地から出発地の最寄りの高速道路Hのインターチェンジまでの車両14の走行制御モードを自律運転モードとしてもよいし、出発地や出発地の最寄りの高速道路Hのインターチェンジを含む範囲を管轄する他の管制センターのオペレータによる遠隔操作モードであってもよい。
【0066】
さらに、本実施の形態でのモデルでは、高速道路Hでの車両14の走行制御モードが自律運転モードであった。しかしながら、高速道路Hでの車両14の走行制御モードが手動モードであてもよいし、高速道路Hを管轄する他の管制センターのオペレータによる遠隔操作モードであってもよい。
【0067】
また、本実施の形態のモデルでは、車両14が高速道路Hを走行した。しかしながら、車両14が高速道路Hや自動車専用道路等を走行しないモデルであっても本実施の形態を適用できる。すなわち、例えば、一般道路上における目的地を含んだエリア又はエリアの外側に設定された切替エリアに車両14が到達した場合に、車両14側から管制センター38側へ走行操作制御の権限が移譲されるようにしてもよい。
【0068】
さらに、本実施の形態では、遠隔操作モードに切り替わり、車両14側と管制センター38側との間で相互通信状態になることで車両14の乗員と管制センター38のオペレータとの間で会話が可能であった。しかしながら、遠隔操作モードに切り替わるよりも前に車両14の乗員と管制センター38のオペレータとの間で会話が可能になる構成であってもよい。このような構成では、車両14の乗員と管制センター38のオペレータとの間で会話によるコミュニケーションを早くとることができる。
【0069】
また、本実施の形態では、目的地の最寄りの高速道路Hのインターチェンジからの車両14の制御を遠隔操作モードとした。しかしながら、例えば、出発地から管制センター38のオペレータによる遠隔操作としてもよい。このような場合には、車両14の乗員と管制センター38のオペレータとの間で会話によるコミュニケーションを早くとることができる。
【0070】
さらに、これまでの説明における「目的地」とは、例えば、駅やホテル等の建造物、特定の交差点等の特定の位置に限定されるものではなく、予め定められた地域(例えば、京都周辺、東京六本木周辺等)であってもよい。
【0071】
また、本実施の形態では、管制センター38に設置されたコントローラ52は、一般的な車両の運転席を模したものであった。しかしながら、コントローラ52は、操作されることによって車両14の走行を制御できる構成であればその具体的な構成に限定されるものではなく、広く適用が可能である。
【0072】
さらに、本実施の形態では、管制センター38は、特定の地域を含む範囲内で、この特定の地域を管轄するように設定されていた。しかしながら、管制センター38は、特定の地域に入った車両14をコントローラ52によって遠隔操作可能であれば、特定の地域を含む範囲から離れた地域に設置されてもよい。
【符号の説明】
【0073】
10 車両制御装置
12 制御部
14 車両
28 カーナビゲーション装置(目的地入力部、位置情報入力部)
32 カメラ(状況検知装置)
34 測距装置(状況検知装置)
36 車両側遠隔操作装置(遠隔操作信号受信部)
38 管制センター
40 車両側マイク(通話装置)
42 車両側スピーカ(通話装置)
50 車両走行制御システム
52 コントローラ
66 管制センター側スピーカ(通話装置)
68 管制センター側マイク(通話装置)
図1
図2
図3