(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】車両遠隔指示訓練装置
(51)【国際特許分類】
G09B 9/00 20060101AFI20221213BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20221213BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20221213BHJP
B60W 50/04 20060101ALI20221213BHJP
B60W 30/08 20120101ALI20221213BHJP
G09B 19/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G09B9/00 Z
G08G1/00 X
F02D29/02 H
B60W50/04
B60W30/08
G09B19/00 H
(21)【出願番号】P 2019147881
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2021-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100187311
【氏名又は名称】小飛山 悟史
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】浦野 博充
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 翔
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-538647(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0039871(US,A1)
【文献】特開2003-263098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 9/00-9/56
G08G 1/00
F02D 29/02
B60W 50/04
B60W 30/08
G09B 19/00-19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実際の自動運転車両に対して遠隔指示を行う遠隔コマンダの訓練を行う車両遠隔指示訓練装置であって、
前記実際の自動運転車両の状況を前記遠隔コマンダに示す情報出力部と前記実際の自動運転車両に対して前記遠隔コマンダが前記遠隔指示を入力する指示入力部とを有するコマンダインターフェースと、
仮想の自動運転車両である仮想車両の状況である仮想状況を時間変化させながら、前記情報出力部を通じて訓練対象者である前記遠隔コマンダに示す仮想状況表示部と、
前記遠隔コマンダによる前記指示入力部に対する遠隔指示の入力を認識する遠隔指示入力認識部と、
前記仮想車両の前記仮想状況に対する前記遠隔コマンダの前記遠隔指示のタイミング又は前記遠隔指示の内容に基づいて、前記遠隔コマンダの評価を行う評価部と、
を備える、車両遠隔指示訓練装置。
【請求項2】
前記仮想状況表示部は、前記遠隔コマンダに前記実際の自動運転車両に対する遠隔指示のための監視時間が複数割り当てられている場合、前記監視時間の合間に前記情報出力部を通じて前記仮想状況を前記遠隔コマンダに示す、請求項1に記載の車両遠隔指示訓練装置。
【請求項3】
前記評価部は、前記遠隔指示に応じて前記仮想車両が挙動を行う遠隔指示挙動期間における前記仮想車両の状況に基づいて、前記遠隔コマンダの評価を行う、請求項1又は2に記載の車両遠隔指示訓練装置。
【請求項4】
前記評価部は、前記仮想状況として前記仮想車両が非優先道路から優先道路の信号機無し交差点に進入する状況が示されている場合、前記遠隔コマンダの減速指示又は停止指示のタイミングと前記遠隔コマンダの進行指示のタイミングとに基づいて、前記遠隔コマンダの評価を行う、請求項1又は2に記載の車両遠隔指示訓練装置。
【請求項5】
前記評価部は、前記仮想状況として前記仮想車両が非優先道路から優先道路の信号機無し交差点に進入する状況であり且つ前記優先道路上を前記信号機無し交差点に向かって走行する他車両が存在する状況が示されている場合、前記遠隔コマンダの進行指示に応じた前記遠隔指示挙動期間となる交差点進入期間における前記仮想車両と前記他車両との衝突可能性に基づいて、前記遠隔コマンダの評価を行う、請求項3に記載の車両遠隔指示訓練装置。
【請求項6】
前記評価部は、前記仮想状況として前記仮想車両が車線変更を行う状況が示されている場合、前記遠隔コマンダの車線変更指示のタイミングと前記車線変更指示に応じた前記遠隔指示挙動区間となる車線変更区間と前記仮想車両の走行する道路上に予め決められた車線変更許可区間とに基づいて、前記遠隔コマンダの評価を行う、請求項3に記載の車両遠隔指示訓練装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両遠隔指示訓練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の遠隔操作に関する技術文献として、特開2018-77649号公報が知られている。この公報には、遠隔操作者によるステアリングホイールの操舵量が車両に送信され、車両の操舵系が遠隔操作者の操舵量に応じて操舵されることにより、車両の遠隔操作が行われる装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動運転車両の状況に応じて遠隔コマンダが進行や停止等の遠隔指示を入力し、自動運転車両は遠隔指示に従って自動で走行するシステムが考えられている。遠隔指示は車両の運転操作に近い遠隔操作とは全く異なる操作であるため、遠隔コマンダが適切な指示を出すためには、遠隔コマンダの訓練及び評価を適切に行うことが必要である。また、当該評価が実際の車両に対する遠隔指示と全く異なる環境で行われることとした場合には、実際の車両に対する遠隔指示の技量を正確に評価できない可能性があり、改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る車両遠隔指示訓練装置は、実際の自動運転車両に対して遠隔指示を行う遠隔コマンダの訓練を行う車両遠隔指示訓練装置であって、実際の自動運転車両の状況を遠隔コマンダに示す情報出力部と実際の自動運転車両に対して遠隔コマンダが遠隔指示を入力する指示入力部とを有するコマンダインターフェースと、仮想の自動運転車両である仮想車両の状況である仮想状況を時間変化させながら、情報出力部を通じて訓練対象者である遠隔コマンダに示す仮想状況表示部と、遠隔コマンダによる指示入力部に対する遠隔指示の入力を認識する遠隔指示入力認識部と、仮想車両の仮想状況に対する遠隔コマンダの遠隔指示のタイミング又は遠隔指示の内容に基づいて、遠隔コマンダの評価を行う評価部と、を備える。
【0006】
この車両遠隔指示訓練装置によれば、遠隔コマンダに仮想車両の仮想状況を示し、仮想状況に対して遠隔コマンダが遠隔指示を出したタイミングに基づいて遠隔コマンダの評価を行うことができるので、遠隔コマンダが遠隔指示を出したタイミングが適切であったか不適切であったかを評価でき、遠隔コマンダによる遠隔指示の訓練を適切に行うことができる。また、この車両遠隔指示訓練装置では、実際の自動運転車両に対する遠隔指示で用いるコマンダインターフェースを用いて仮想状況を遠隔コマンダに示すと共に遠隔コマンダの遠隔指示の入力を認識するので、仮想状況による評価が実際の自動運転車両に対する遠隔指示と全く異なる環境で行われる場合と比べて、より実際の自動運転車両に対する遠隔指示に近い状態で遠隔コマンダの評価を行うことができる。
【0007】
上記車両遠隔指示訓練装置において、仮想状況表示部は、遠隔コマンダに実際の自動運転車両に対する遠隔指示のための監視時間が複数割り当てられている場合、監視時間の合間に情報出力部を通じて仮想状況を遠隔コマンダに示してもよい。
この車両遠隔指示訓練装置によれば、実際の自動運転車両に対する監視時間の合間に仮想状況による遠隔指示の評価を行うので、実際の自動運転車両に対する監視時間と切り離して異なる日に仮想状況による遠隔指示の評価のみを行う場合と比べて、実際の自動運転車両を監視しているときと同じ状態の遠隔コマンダの評価を行えることが期待できるので、より適切に遠隔コマンダの評価を行うことができる。
【0008】
上記車両遠隔指示訓練装置において、評価部は、遠隔指示に応じて仮想車両が挙動を行う遠隔指示挙動期間における仮想車両の状況に基づいて、遠隔コマンダの評価を行ってもよい。
この車両遠隔指示訓練装置によれば、遠隔指示のタイミングだけではなく、遠隔指示に応じて仮想車両が挙動を行う遠隔指示挙動期間における仮想車両の状況を踏まえて遠隔コマンダの評価を行うことができるので、遠隔コマンダが遠隔指示後の仮想車両の状況を考慮して遠隔指示を行ったことを評価することができる。
【0009】
上記車両遠隔指示訓練装置において、評価部は、仮想状況として仮想車両が非優先道路から優先道路の信号機無し交差点に進入する状況が示されている場合、遠隔コマンダの減速指示又は停止指示のタイミングと遠隔コマンダの進行指示のタイミングとに基づいて、遠隔コマンダの評価を行ってもよい。
この車両遠隔指示訓練装置によれば、仮想状況として仮想車両が非優先道路から優先道路の信号機無し交差点に進入する状況が示されている場合に、遠隔コマンダの減速指示又は停止指示のタイミングと遠隔コマンダの進行指示のタイミングとに基づいて、遠隔コマンダの評価を行うので、仮想状況に応じた遠隔指示の内容とタイミングの組み合わせを踏まえて遠隔コマンダの評価を行うことができる。
【0010】
上記車両遠隔指示訓練装置において、評価部は、仮想状況として仮想車両が非優先道路から優先道路の信号機無し交差点に進入する状況であり且つ優先道路上を信号機無し交差点に向かって走行する他車両が存在する状況が示されている場合、遠隔コマンダの進行指示に応じた遠隔指示挙動期間となる交差点進入期間における仮想車両と他車両との衝突可能性に基づいて、遠隔コマンダの評価を行ってもよい。
この車両遠隔指示訓練装置によれば、仮想状況として仮想車両が非優先道路から優先道路の信号機無し交差点に進入する状況であり且つ優先道路上を信号機無し交差点に向かって走行する他車両が存在する状況が示されている場合に、遠隔コマンダの進行指示に応じた交差点進入期間における仮想車両と他車両との衝突可能性に基づいて遠隔コマンダの評価を行うので、遠隔コマンダが進行指示後の仮想車両と他車両との関係を考慮したか否かを適切に評価することができる。
【0011】
上記車両遠隔指示訓練装置において、評価部は、仮想状況として仮想車両が車線変更を行う状況が示されている場合、遠隔コマンダの車線変更指示のタイミングと車線変更指示に応じた遠隔指示挙動区間となる車線変更区間と仮想車両の走行する道路上に予め決められた車線変更許可区間とに基づいて、遠隔コマンダの評価を行ってもよい。
この車両遠隔指示訓練装置によれば、仮想状況として仮想車両が車線変更を行う状況が示されている場合に、車線変更指示のタイミングと車線変更区間と車線変更許可区間とに基づいて遠隔コマンダの評価を行うので、遠隔コマンダが車線変更指示後の仮想車両が車線変更許可区間内で車線変更できるかを考慮したか否かを適切に評価することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様に係る車両遠隔指示訓練装置によれば、遠隔コマンダの遠隔指示の訓練を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係る車両遠隔指示訓練装置を備える車両遠隔指示システムの一例を示すブロック図である。
【
図2】遠隔指示訓練サーバのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】車両遠隔指示訓練装置の一例を示すブロック図である。
【
図5】(a)仮想車両が優先道路から非優先道路の交差点に進入する状況を説明するための平面図である。(b)減速指示のタイミングの評価と仮想車両の進行方向の位置との関係の一例を示すグラフである。
【
図6】(a)仮想車両が非優先道路から優先道路の交差点に進入する状況を説明するための平面図である。(b)減速指示又は停止指示のタイミングの評価と仮想車両の進行方向の位置との関係の一例を示すグラフである。(c)他車両に対する進行指示のタイミングの評価と時間との関係の一例を示すグラフである。
【
図7】(a)仮想車両が車線変更を行う状況を説明するための平面図である。(b)車線変更許可区間に対する車線変更指示のタイミングの評価と仮想車両の進行方向の位置との関係の一例を示すグラフである。(c)他車両に対する車線変更指示のタイミングの評価と時間との関係の一例を示すグラフである。
【
図8】遠隔コマンダ評価処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、一実施形態に係る車両遠隔指示訓練装置を備える車両遠隔指示システムの一例を示すブロック図である。
図1に示す車両遠隔指示システム100は、遠隔コマンダRにより実際の自動運転車両2に対する遠隔指示を行うシステムである。遠隔指示とは、自動運転車両2の走行に関する遠隔コマンダRの指示である。
【0016】
遠隔指示には、自動運転車両2の進行の指示及び自動運転車両2の停止の指示が含まれる。遠隔指示には、自動運転車両2の車線変更の指示が含まれていてもよい。また、遠隔指示には、前方の障害物に対するオフセット回避の指示、先行車の追い越しの指示、緊急退避の指示等が含まれていてもよい。その他、遠隔指示には、自動運転車両2に対する乗員の乗り降りに関する指示(例えばドアの自動開閉の指示、降車の音声案内開始の指示)が含まれていてもよい。
【0017】
なお、車両遠隔指示システム100において遠隔コマンダRの人数は限定されない。遠隔コマンダRの人数は一人であっても二人であってもよく、数十人であってもよい。車両遠隔指示システム100と通信可能な自動運転車両2の台数も特に限定されない。複数人の遠隔コマンダRが交替して一台の自動運転車両2に対する遠隔指示を行う態様であってもよく、一人の遠隔コマンダRが二台以上の自動運転車両2に対して遠隔指示を行う態様であってもよい。
【0018】
自動運転車両2は、例えば、予め設定された目標ルート、自動運転車両2の地図上の位置、地図情報、自動運転車両2の外部センサ(カメラやレーダセンサ)の検出結果から得た自動運転車両2の周辺の状況、及び内部センサ(車速センサやヨーレートセンサ)の検出結果から得た車両状態に基づいて、目標ルートに沿った進路[trajectory]を生成する。目標ルートは、自動運転車両2の乗員により手動で設定されてもよく、周知のナビゲーションシステム又は自動運転システムにより自動で設定されてもよい。進路には、目標ルート上の位置に応じた車速計画と、目標ルート上の位置に応じた操舵計画(車線上の経路に対応)とが含まれる。自動運転車両2は、進路に沿って自動運転を行うことができる。なお、進路の生成方法や進路の内容は上述したものに限られず、周知の生成方法等を採用することができる。
【0019】
自動運転車両2は、例えば、交差点を右折する状況など予め決められた遠隔指示対象状況となった場合に、遠隔コマンダRに遠隔指示を要求する。遠隔コマンダRは、自動運転車両2からの要求に応じて遠隔指示を入力する。自動運転車両2は、遠隔指示に応じた進路を予め生成しており、受信した遠隔指示に対応する進路に沿って自動運転を行う。なお、自動運転車両2は、必ずしも遠隔指示要求を行う必要はなく、遠隔コマンダRの判断によって遠隔指示が送信されてもよい。また、自動運転車両2は、遠隔指示の入力に応じて当該遠隔指示に対応する進路の生成を開始してもよい。
【0020】
図1に示すように、車両遠隔指示システム100は、車両遠隔指示訓練装置1を備えている。車両遠隔指示訓練装置1とは、実際の自動運転車両2に対して遠隔指示を行う遠隔コマンダ(訓練対象者)の訓練を行うための装置である。車両遠隔指示訓練装置1では、仮想の自動運転車両である仮想車両の走行状態及び仮想車両の外部環境を含む仮想状況を時間変化させながら遠隔コマンダRに示す。後述するように、車両遠隔指示訓練装置1では、実際の自動運転車両2に対して遠隔指示を行う場合と同じデバイス(コマンダインターフェース3)を用いて遠隔コマンダRの訓練を行う。
【0021】
車両遠隔指示訓練装置1では、仮想車両の仮想状況に対する遠隔コマンダRの遠隔指示のタイミングに基づいて遠隔コマンダRの評価を行う。仮想車両は実際に存在する自動運転車両をモデルとしてもよく、仮想状況は実際に存在する自動運転車両が過去に遭遇した状況をモデルとしてもよい。仮想状況について詳しくは後述する。
【0022】
なお、本実施形態における車両遠隔指示訓練装置1は、実際に遠隔コマンダRが自動運転車両2に遠隔指示を送信する遠隔指示装置としても機能する。遠隔指示装置の一部として、車両遠隔指示訓練装置1が設けられていてもよい。
【0023】
[車両遠隔指示訓練装置の構成]
図1に示すように、車両遠隔指示訓練装置1は、遠隔指示訓練サーバ10を有している。先に遠隔指示訓練サーバ10のハードウェア構成について説明する。
図2は、遠隔指示訓練サーバ10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、遠隔指示訓練サーバ10は、プロセッサ10a、記録部10b、通信部10c及びユーザインターフェース10dを備えた一般的なコンピュータとして構成されている。この場合のユーザは遠隔指示訓練サーバ10のユーザ(管理者等)を意味している。
【0024】
プロセッサ10aは、各種オペレーティングシステムを動作させて遠隔指示訓練サーバ10を制御する。プロセッサ10aは、制御装置、演算装置、レジスタ等を含むCPU等の演算器である。プロセッサ10aは、記録部10b、通信部10c及びユーザインターフェース10dを統括する。記録部10bは、メモリ及びストレージのうち少なくとも一方を含んで構成されている。メモリは、ROM、RAM等の記録媒体である。ストレージは、HDD等の記録媒体である。
【0025】
通信部10cは、ネットワークNを介した通信を行うための通信機器である。通信部10cには、ネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード等を用いることができる。ユーザインターフェース10dは、管理者等のユーザに対する遠隔指示訓練サーバ10の入出力部である。ユーザインターフェース10dは、ディスプレイ、スピーカ等の出力器、及び、タッチパネル等の入力器を含む。なお、遠隔指示訓練サーバ10は、必ずしも施設に設けられている必要はなく、車両等の移動体に搭載されていてもよい。
【0026】
図3は、車両遠隔指示訓練装置1の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、車両遠隔指示訓練装置1の遠隔指示訓練サーバ10は、コマンダインターフェース3及びコマンダデータベース4と接続されている。
【0027】
コマンダインターフェース3は、遠隔コマンダRに対する車両遠隔指示訓練装置1の入出力部である。コマンダインターフェース3は、実際の自動運転車両2に対する遠隔コマンダRの遠隔指示に用いられる。コマンダインターフェース3は、情報出力部3a及び指示入力部3bを有している。
【0028】
情報出力部3aは、遠隔コマンダRに対して自動運転車両2の遠隔指示に用いる情報を出力する機器である。情報出力部3aは、画像を出力するディスプレイと音を出力するスピーカとを含む。
【0029】
ディスプレイには、一例として、自動運転車両2のカメラが撮像した自動運転車両2の前方の画像(前方の景色の画像)が表示される。ディスプレイには、自動運転車両2の進行方向の画像(車両後退時には後方)が表示されてもよい。ディスプレイは、複数の表示画面を有していてもよく、自動運転車両2の側方及び/又は後方の画像が表示されてもよい。
【0030】
また、ディスプレイには、仮想状況を表示する場合、一例として、仮想車両の前方の画像(前方の景色の画像)が表示される。ディスプレイには、仮想車両の進行方向の画像(車両後退時には後方)が表示されてもよい。ディスプレイは、複数の表示画面を有していてもよく、仮想車両の側方及び/又は後方の画像が表示されてもよい。ディスプレイは、遠隔コマンダRに視覚情報を提供できる構成であれば特に限定されない。ディスプレイは、遠隔コマンダRの目を覆うように装着されるウェアラブルデバイスであってもよい。
【0031】
スピーカは、例えば遠隔コマンダRの頭に装着されるヘッドセットスピーカである。スピーカは、例えば、自動運転車両2の状況又は仮想車両の仮想状況を音声(例えば交差点を右折時します等の音声)により遠隔コマンダRに伝える。スピーカは、必ずしもヘッドセットである必要はなく、設置型であってもよい。
【0032】
情報出力部3aは、振動によって遠隔コマンダRに情報を提供してもよい。情報出力部3aは、例えば遠隔コマンダRのシートに設けられた振動アクチュエータを有してもよい。情報出力部3aは、仮想車両に対する他車両の接近等を振動によって遠隔コマンダRに注意喚起してもよい。情報出力部3aは、シートの左右それぞれに振動アクチュエータを有しており、他車両の接近方向等に応じた位置の振動アクチュエータを振動させてもよい。なお、情報出力部3aは、遠隔コマンダRの体に装着するウェアラブル型の振動アクチュエータを有していてもよい。情報出力部3aは、体の各位置に装着された振動アクチュエータを他車両の接近方向等に応じて振動させることで遠隔コマンダRに情報提供を行うことができる。
【0033】
指示入力部3bは、遠隔コマンダRにより遠隔指示が入力される機器である。指示入力部3bは、実際の自動運転車両2に対する遠隔指示の入力にも用いられる。ここで、
図4は、指示入力部3bの一例を示す図である。
図4に示す指示入力部3bでは、ゲート式レバー構造が採用されている。
図4に、レバーLa、監視開始ボタンLb、及び十字溝Lcを示す。
【0034】
レバーLaは、遠隔コマンダRが操作するためのレバーである。レバーLaは、例えば上端の握り部と、握り部から十字溝(十字ゲート)Lcに向かって延びるシャフト部を有している。レバーLaの握り部の側面には、監視開始ボタンLbが設けられている。監視開始ボタンLbの位置は特に限定されず、握り部の左側面であってもよく、右側面であってもよい。監視開始ボタンLbは、十字溝Lcと同じ面に設けられていてもよい。
【0035】
監視開始ボタンLbは、遠隔コマンダRが仮想車両の状況の監視を開始するときに押すボタンである。車両遠隔指示訓練装置1は、監視開始ボタンLbが押されることで遠隔コマンダRが監視を開始したと認識してもよい。監視開始ボタンLbは、レバーLaのロック解除ボタンとしても機能する。すなわち、レバーLaは、監視開始ボタンLbが押されている間、又は、監視開始ボタンLbが押されてから一定時間の間だけロックが解除されて移動可能となる。
図4に示す指示入力部3bは二段階の入力方式となっている。なお、一段階目の入力に対応する監視開始ボタンLbは必ずしも設ける必要はない。指示入力部3bは一段階だけの入力方式であってもよい。
【0036】
十字溝Lcは、レバーLaのシャフト部が入り込み、遠隔コマンダRの操作によってレバーLaが移動する溝である。
図4に示す指示入力部3bでは、十字溝Lcに沿ってレバーLaの位置が切り換えられることで、遠隔指示が入力される。
図4に示すように、一例として、十字溝Lcの上方向は「進行」、下方向は「停止」、右方向は「車線変更」、左方向は「取消」の指示の入力とすることができる。
【0037】
遠隔コマンダRは、例えば監視開始ボタンLbを押しながらレバーLaを上方向に移動させることで、仮想車両に「進行」の遠隔指示を入力する。遠隔コマンダRは、例えば監視開始ボタンLbを押しながらレバーLaを下方向に移動させることで、仮想車両に「停止」の遠隔指示を入力する。遠隔コマンダRは、一つ前の遠隔指示を取り消したい場合には、監視開始ボタンLbを押しながらレバーLaを左方向に移動させることで、取消」の指示を入力する。
【0038】
なお、十字溝Lcにおける「進行」等の表示は変更可能なデジタル表示であってもよい。「進行」、「車線変更」等の表示は、仮想車両の状況に応じて変更されてもよい。例えば「車線変更」は状況に応じて「追い越し」の表示となってもよい。この場合、レバーLaを右に移動させることで、仮想車両に追い越しの遠隔指示を行うことができる。
【0039】
また、遠隔指示の「停止」は、「判断保留」としてもよい。「停止」の場合には仮想車両の位置に依らず停止するが、「判断保留」の場合には遠隔指示が必須となる位置(例えば信号機の手前の一時停止線)まで自動運転を継続する。指示入力部3bは、「停止」と「判断保留」とをそれぞれ区別して入力可能であってもよい。監視開始ボタンLbが存在する場合には、遠隔コマンダRが監視開始ボタンLbを押し続けることで「判断保留」の指示として扱ってもよい。
【0040】
指示入力部3bは、十字溝ではなく、進行及び停止(又は保留)の二つの遠隔指示入力を選択可能なストレート形状の溝を採用してもよく、車両のシフトレバー等に採用される階段状の溝を採用してもよい。その他、緊急退避のためのボタンを別に設けてもよい。緊急退避は、レバーLaの操作により選択できる遠隔指示の一つとしてもよい。
【0041】
その他、指示入力部3bには様々な入力方式を採用することができる。指示入力部3bには、ボタン、タッチパネルを採用してもよく、トグルスイッチ、ロッカースイッチ等の各種スイッチを採用してもよい。指示入力部3bには、キーボードを採用してもよく、音声入力装置を採用してもよい。指示入力部3bでは、誤操作防止のためにボタンカバーを取付けてもよい。指示入力部3bでは、誤操作防止のためボタンとスイッチを併用してもよく、ボタンとハンドルを併用してもよく、ペダルとレバーを併用してもよい。指示入力部3bでは、レバーの操作、ボタンの操作、タッチパネルの操作、ペダルの操作、音声入力のうち二つ以上を組み合わせることで遠隔指示を入力可能としてもよい。
【0042】
また、タッチパネル等の仮想的なボタンの場合には、ボタンの表示位置を固定としないことで、遠隔コマンダRが十分に自動運転車両2の状況を把握しないまま反射的に操作してしまうことを抑制してもよい。遠隔コマンダRが入力した遠隔指示の内容(進行、停止等)を音声及び/又は画像表示により通知するようにしてもよい。画像表示はテキスト表示であってもよく、色の変化により遠隔コマンダRに通知してもよい。
【0043】
指示入力部3bには、Enableボタンを採用してもよい。この場合のEnableボタンとは、設定された押し込み量の範囲でなければ信号が送信されないボタンであり、軽い押し込み量又は深すぎる押し込み量の場合には信号の送信を行わない。指示入力部3bには、軽い押し込み状態と奥まで押し込んだ状態で送信する情報を変える二段スイッチを採用してもよい。指示入力部3bには、円盤状の回転盤を回すことで遠隔指示内容を選択するダイヤル(例えばロータリースイッチ)を採用してもよい。ダイヤルには、複数の刻みが設けられており、各刻みに「進行」、「停止」等の遠隔指示内容が対応する。
【0044】
コマンダデータベース4は、遠隔コマンダRの情報を記憶するデータベースである。遠隔コマンダの情報には、遠隔コマンダRの個人識別情報と遠隔コマンダRの評価に関する情報が含まれている。遠隔コマンダRの評価に関する情報とは、車両遠隔指示訓練装置1により評価された遠隔コマンダRの評価の情報である。
【0045】
次に、遠隔指示訓練サーバ10の機能的構成について説明する。
図3に示すように、遠隔指示訓練サーバ10は、仮想状況表示部11、遠隔指示入力認識部12、評価部13、及びフィードバック部14を有している。
【0046】
仮想状況表示部11は、訓練対象者である遠隔コマンダRに対して、仮想車両の状況である仮想状況を時間変化させながら示す。仮想状況表示部11は、情報出力部3aを通じて仮想状況を遠隔コマンダRに示す。仮想状況表示部11は、音により仮想状況の情報を遠隔コマンダRに提供してもよい。
【0047】
仮想状況には、例えば仮想車両の走行状態及び仮想車両の外部環境が含まれる。仮想車両の走行状態とは、仮想車両の車速、加速度、ヨーレート(操舵角)等の走行状態である。仮想車両の外部環境とは、仮想車両の走行する道路の環境、仮想車両の周囲の障害物の状況を含む。障害物には、建物、電柱、ガードレールなどの固定障害物と、他車両、歩行者などの移動障害物が含まれる。
【0048】
仮想状況表示部11による仮想状況の表示の方法は限定されない。仮想状況表示部11は、例えば仮想車両の車速、加速度、ヨーレート、操舵角のうち少なくとも一つを数字又はメータとしてディスプレイに表示してもよい。仮想状況表示部11は、仮想車両のインストルメントパネルの情報をディスプレイに表示してもよい。仮想状況表示部11は、仮想車両の前方の撮像画像をディスプレイに示すことで仮想状況を表示してもよく、仮想車両を平面視した画像又は俯瞰した画像を示すことで仮想状況を表示してもよい。仮想状況表示部11は、仮想車両の地図上の位置を含む地図情報を表示してもよい。仮想状況表示部11は、仮想状況に含まれる信号機に対する信号機認識の尤度(信号機の点灯状態の認識の尤度)を表示してもよく、仮想状況に含まれる他車両の予測進路を表示してもよい。
【0049】
仮想状況表示部11は、実際の自動運転車両2に遠隔指示を行う場合と同様の情報を遠隔コマンダRに表示してもよい。この場合、仮想状況表示部11は、訓練であることを遠隔コマンダRに示す必要はない。仮想状況表示部11は、遠隔コマンダRが実際の自動運転車両2の遠隔指示を担当している合間に、訓練として仮想状況を表示してもよい。
【0050】
具体的に、車両遠隔指示システム100は、実際の自動運転車両2の遠隔指示のための監視時間を遠隔コマンダRに割り当てる。車両遠隔指示システム100は、例えば自動運転車両2が自動運転により走行する目標ルート、自動運転車両2の現在の位置、及び地図情報に基づいて、自動運転車両2が遠隔指示を要求する時刻を予測して監視時間を割り当てる。このような監視時間の割り当てについては、例えば特許出願2019-○○○○○に記載されている手法を採用可能である。遠隔コマンダRは、複数台の自動運転車両2の遠隔指示を担当していてもよい。
【0051】
この場合において、仮想状況表示部11は、割り当てられた遠隔コマンダRの監視時間の合間に、情報出力部3aを通じて仮想状況を遠隔コマンダRに示す。仮想状況表示部11は、例えば割り当てられた監視時間の間隔が評価開始閾値以上である場合、監視時間の合間に遠隔コマンダRに対して仮想状況を示す。評価開始閾値は予め設定された値の閾値である。仮想状況表示部11は、一定期間において予め決められた回数の仮想状況を示す態様であってもよい。一定期間は特に限定されない。一定期間は、一日であってもよく、一週間又は一ヶ月であってもよい。なお、監視時間の合間には日を跨いだ場合は含まれない。
【0052】
遠隔指示入力認識部12は、遠隔コマンダRによる指示入力部3bに対する遠隔指示の入力を認識する。遠隔指示入力認識部12は、遠隔コマンダRによる指示入力部3bの操作に基づいて、遠隔コマンダRが入力した遠隔指示の内容と遠隔指示のタイミング(入力タイミング)とを認識する。
【0053】
評価部13は、仮想車両の仮想状況に対する遠隔コマンダRの遠隔指示のタイミングに基づいて、遠隔コマンダRの評価を行う。評価部13は、遠隔コマンダRの評価を行った場合、評価結果をコマンダデータベース4に記憶させる。
【0054】
ここで、
図5(a)は、仮想車両が優先道路から非優先道路の交差点に進入する状況を説明するための平面図である。
図5(a)に、仮想車両M、優先道路R1、非優先道路R2、交差点T1を示す。仮想車両Mは例えば優先道路R1の法定最高速度で走行している。
図5(a)に示す状況において、例えば遠隔コマンダRは非優先道路R2からの他車両の飛び出しを考慮して減速指示を出すことが想定される。
【0055】
図5(b)は、減速指示のタイミングの評価と仮想車両の進行方向の位置との関係の一例を示すグラフである。縦軸が減速指示のタイミングの評価、横軸が仮想車両の進行方向の位置を示している。
図5(b)に示すように、評価部13は、仮想車両Mが交差点T1から十分離れた位置で遠隔コマンダRが減速指示を入力した場合、交差点T1に近づいてから遠隔コマンダRが減速指示を入力した場合と比べて、減速指示のタイミングを高い評価とする。
【0056】
横軸は交差点T1に到達するまでの距離であってもよく、現在の車速において交差点T1に到達するまでの残り時間であってもよい。この場合、交差点T1を超えた距離又は残り時間を負の値として表現してもよい。或いは、横軸は仮想状況の開始時から仮想車両の走行距離であってもよく、経過時間であってもよい。
【0057】
図6(a)は、仮想車両Mが非優先道路から優先道路の交差点に進入する状況を説明するための平面図である。
図6(a)に、非優先道路R3、優先道路R4、交差点T2、及び優先道路R4を交差点T2に向かって走行する他車両N1を示す。
図6(a)に示す状況において、遠隔コマンダRは、交差点T2に進入する前の減速指示又は停止指示と交差点T2への進行指示の二段階の異なる指示を出すことが想定される。なお、仮想車両Mが自動で一時停止線に停止する機能を有し、交差点T2の手前に一時停止線が存在する場合には停止指示は不要である。
【0058】
図6(b)は、減速指示又は停止指示のタイミングの評価と仮想車両Mの進行方向の位置との関係の一例を示すグラフである。縦軸が減速指示又は停止指示のタイミングの評価、横軸が仮想車両の進行方向の位置を示している。
【0059】
図6(b)に示すように、評価部13は、仮想車両Mが交差点T2から十分離れた位置で遠隔コマンダRが減速指示を入力した場合、交差点T2に近づいてから遠隔コマンダRが減速指示を入力した場合と比べて、減速指示のタイミングを高い評価とする。停止指示の場合も同様である。なお、複数の異なる指示(例えば減速指示と停止指示)を入力できる場合、複数の異なる指示で同じ評価基準を用いてもよく、異なる評価基準を用いてもよい。具体的に、評価部13は、
図6(a)に示す状況において、遠隔コマンダRが減速指示を入力した場合及び停止指示を入力した場合の両方で
図6(b)の評価基準(評価グラフ)を用いてもよく、それぞれに対応する異なる評価基準を用いてもよい。
【0060】
図6(c)は、他車両に対する進行指示のタイミングの評価と時間との関係の一例を示すグラフである。縦軸が他車両N1に対する進行指示のタイミングの評価、横軸が時間を示している。
図6(c)に示すように、評価部13は、他車両N1が交差点T2にいる時間に遠隔コマンダRが進行指示を入力した場合、進行指示の評価を最も低くする。評価部13は、他車両N1が交差点T2から離れた位置にいるタイミングで遠隔コマンダRが進行指示を入力した場合、進行指示の評価を高くする。評価部13は、交差点との距離などを考慮した減速指示のタイミングと、他車両を考慮した進行指示のタイミングとをそれぞれ評価する。
【0061】
なお、評価部13は、他車両N1に対する進行指示のタイミングの評価について、時間ではなく、仮想車両Mと他車両N1との距離を用いてもよく、衝突余裕時間[TTC : Time To Collision]を用いてもよい。
【0062】
また、評価部13は、遠隔指示に応じて仮想車両Mが挙動を行う遠隔指示挙動期間における仮想車両Mの状況に基づいて、遠隔コマンダRの評価を行ってもよい。遠隔指示挙動期間とは、遠隔指示に応じて仮想車両Mが挙動を開始してから終了するまでの期間である。遠隔指示挙動期間は、例えば減速指示に対して仮想車両Mが減速を開始してから終了するまでの期間とすることができる。遠隔指示挙動期間は、例えば交差点T2に対する進行指示に対して仮想車両Mが交差点T2に対する進行を開始してから交差点T2を通り抜けるまでの期間としてもよい。遠隔指示挙動期間は、車線変更指示に対して仮想車両Mが車線変更を開始してから終了するまでの期間としてもよい。
【0063】
ここで、
図6(c)に示す交差点進入期間D1,D2は、遠隔コマンダRによる進行指示に応じて仮想車両Mが交差点T2に進入する期間である。交差点進入期間D1と交差点進入期間D2とは、遠隔コマンダRによる進行指示のタイミングが異なっている。なお、交差点進入期間D2の方が交差点T2に近づいてからの進入開始となるため短い期間となる。
【0064】
具体的に、交差点進入期間D1の開始時間をt1、終了時間をt2、交差点進入期間D2の開始時間をt3、終了時間をt4として示す。交差点進入期間D2の開始時間t3及び終了時間t4は、それぞれ交差点進入期間D1の開始時間t1及び終了時間t2より遅い時間となっている。すなわち、交差点進入期間D1より交差点進入期間D2の方が遠隔コマンダRによる進行指示のタイミングが遅い。
【0065】
図6(c)に示すように、交差点進入期間D1の開始時間t1及び交差点進入期間D2の開始時間t3は何れも、進行指示のタイミングが高評価な領域に含まれる。しかしながら、交差点進入期間D2の終了時間t4は、進行指示のタイミングが低評価な領域に踏み込んでいる。
【0066】
この場合において、評価部13は、遠隔コマンダRによる進行指示に応じた仮想車両Mの交差点T2への進入の期間が交差点進入期間D2である場合、交差点進入期間D1である場合と比べて、仮想車両Mが他車両N1に接近してしまうことから、遠隔コマンダRによる進行指示の評価を低くしてもよい。
【0067】
その他、評価部13は、遠隔指示に応じた遠隔指示挙動期間における仮想車両Mの状況として、遠隔指示挙動期間における仮想車両Mと他車両(例えば他車両N1)との衝突可能性の最大値に基づいて、遠隔コマンダRの評価を行ってもよい。評価部13は、例えば仮想車両Mと他車両との衝突余裕時間を衝突可能性として算出する。評価部13は、衝突余裕時間に代えて、車間時間を用いてもよく、衝突余裕時間又は車間時間を入力値とした所定の演算式から衝突可能性を求めてもよい。
【0068】
評価部13は、遠隔指示に応じた遠隔指示挙動期間における仮想車両Mと他車両との衝突可能性の最大値が衝突可能性閾値以上である場合、衝突可能性の最大値が衝突可能性閾値未満である場合と比べて、当該遠隔指示の評価を低くする。衝突可能性閾値は予め設定された値の閾値である。評価部13は、遠隔指示に応じた遠隔指示挙動期間における仮想車両Mと他車両との衝突可能性の最大値が大きいほど、当該遠隔指示の評価を低くしてもよい。
【0069】
図7(a)は、仮想車両Mが車線変更を行う状況を説明するための平面図である。
図7(a)に、仮想車両Mの走行する走行車線R5、車線変更先の隣接車線R6、隣接車線R6を走行する他車両N2、車線変更許可区間Lを示す。車線変更許可区間Lとは、法規上で車線変更が許可されている区間である。他車両N2は、仮想車両Mの斜め後方を走行しており、仮想車両Mより高い速度で走行している。
【0070】
図7(b)は、車線変更許可区間Lに対する車線変更指示のタイミングの評価と仮想車両Mの進行方向の位置との関係の一例を示すグラフである。縦軸が車線変更許可区間に対する車線変更指示のタイミングの評価、横軸が仮想車両の進行方向の位置を示している。
図7(b)に示す車線変更区間A1、A2については後述する。
【0071】
図7(b)に示すように、評価部13は、車線変更許可区間Lに仮想車両Mが位置するタイミングで車線変更指示が入力された場合、車線変更許可区間L以外に仮想車両Mが位置するタイミングで車線変更指示が入力された場合と比べて、遠隔コマンダRによる車線変更指示のタイミングを高い評価とする。評価部13は、遠隔コマンダRによる車線変更指示のタイミングにおける仮想車両Mの位置が車線変更許可区間Lから離れるほど、低い評価とする。
【0072】
図7(c)は、他車両N2に対する車線変更指示のタイミングの評価と時間との関係の一例を示すグラフである。縦軸が他車両N2に対する車線変更指示のタイミングの評価、横軸が時間を示している。
図7(c)に示すように、評価部13は、仮想車両Mの斜め後方を走行する他車両N2と接触する可能性が高いタイミングで車線変更指示が入力された場合、他車両N2に対する車線変更指示のタイミングの評価を低くする。評価部13は、仮想車両Mより速度の高い他車両N2が離れたタイミングで車線変更指示が入力された場合、他車両N2に対する車線変更指示のタイミングの評価を高くする。このように、評価部13は、一つの遠隔指示に対して複数の基準で評価を行ってもよい。ここでは、評価部13は、車線変更指示に対して、車線変更許可区間Lと他車両N2の二つの基準で評価を行っている。
【0073】
評価部13は、例えば車線変更許可区間Lに対する評価と他車両N2に対する評価の平均値を車線変更指示のタイミングの評価とする。評価部13は、車線変更許可区間Lに対する評価と他車両N2に対する評価の合計値を車線変更指示のタイミングの評価としてもよい。評価部13は、車線変更許可区間Lに対する評価と他車両N2に対する評価とのそれぞれに予め決められた係数を乗じた後の合計値を車線変更指示のタイミングの評価としてもよい。このとき、車線変更許可区間Lに対する評価と比べて他車両N2に対する評価の合計値に対する影響が大きくなるように重み付けを行ってもよい。
【0074】
その他、評価部13は、車線変更時に隣接車線R6を走行する複数台の他車両N2の車速に合わせるための車速調整指示を遠隔コマンダRが選択可能な場合、車線変更指示の前に遠隔コマンダRが車速調整指示を入力したとき、遠隔コマンダRの評価を高くしてもよい。車速調整は数値を指定可能であってもよい。
【0075】
また、評価部13は、遠隔指示に応じて仮想車両Mが挙動を行う遠隔指示挙動区間における仮想車両Mの状況に基づいて、遠隔コマンダRの評価を行ってもよい。遠隔指示挙動区間とは、遠隔指示に応じて仮想車両Mが挙動を開始した位置から終了した位置までの区間である。遠隔指示挙動区間は、例えば減速指示に対する仮想車両Mの減速の開始位置から終了位置までの区間とすることができる。遠隔指示挙動期間は、例えば交差点に対する進行指示に対する仮想車両Mの進行の開始位置から交差点を通り抜けた終了位置までの区間としてもよい。遠隔指示挙動区間は、車線変更指示に対して仮想車両Mが車線変更の開始位置から終了位置までの区間としてもよい。この場合の遠隔指示挙動区間を車線変更区間と呼ぶ。
【0076】
ここで、
図7(b)に示す車線変更区間A1、A2は、遠隔コマンダRによる車線変更指示に応じて仮想車両Mが車線変更を行う区間である。車線変更区間A1、A2は、遠隔コマンダRが車線変更指示を入力したタイミングが異なっている。
【0077】
具体的に、車線変更区間A1の開始位置をP1、終了位置をP2、車線変更区間A2の開始位置をP3、終了位置をP4として示す。車線変更区間A1の終了位置P2は、車線変更区間A2の開始位置P3より手前の位置である。車線変更区間A1は車線変更許可区間Lに含まれるが、車線変更区間A2の一部は車線変更許可区間Lを逸脱している。
【0078】
このような場合において、評価部13は、遠隔コマンダRによる車線変更指示に応じて仮想車両Mが車線変更を行う区間が車線変更区間A1である場合、当該区間が車線変更区間A2である場合と比べて、車線変更許可区間Lから逸脱せずに車線変更を完了できるため、遠隔コマンダRの車線変更指示の評価を高くする。
【0079】
また、評価部13は、仮想状況として仮想車両Mが一時停止線で停止する状況である場合、遠隔コマンダRによる減速指示に応じた遠隔指示挙動区間である減速区間の終了位置が一時停止線を越える場合、減速区間の終了位置が一時停止線を越えない場合と比べて、減速指示の評価を低くしてもよい。
【0080】
更に、評価部13は、遠隔指示の内容に基づいて、遠隔コマンダRを評価してもよい。評価部13は、わき道からの飛び出し等が懸念される交差点において、遠隔コマンダRが減速指示を行わなかった場合、遠隔コマンダRの評価を低くしてもよい。また、評価部13は、例えば仮想状況が見通しの悪い交差点に進入する状況である場合に、停止指示を行うことなく、進行指示を入力したとき、遠隔コマンダRの評価を低くしてもよい。見通しの悪い交差点とは、交差点の進入時に壁等によって交差する道路の状況を確認しにくい交差点である。
【0081】
更に、評価部13は、進行指示の他に、仮想車両Mを徐行の速度で進行させる低速進行指示が選択可能な場合に、上記見通しの悪い交差点において低速進行指示ではなく進行指示を入力したとき、遠隔コマンダRの評価を低くしてもよい。なお、低速進行指示により進行した仮想車両Mは、周囲の見通しが良くなった場合(例えば仮想車両Mのセンサの検出範囲のうち障害物によって遮蔽された範囲が一定値未満になった場合)、通常の速度に自動で復帰してもよい。
【0082】
評価部13は、仮想状況が信号機を通過する状況で信号機は通過許可状態(例えば青信号)であるが渋滞等により先行車が停止している場合、横断歩道上又は交差点内に停止しないタイミングで遠隔コマンダRが停止指示を入力したとき、遠隔コマンダRの評価を高くしてもよい。評価部13は、仮想状況が信号機を通過する状況で信号機は通過許可状態であるが仮想車両Mが停止しようとしている場合に、遠隔コマンダRが目視の判断により進行指示を行ったとき、遠隔コマンダRの評価を高くしてもよい。
【0083】
評価部13は、仮想状況が信号機を通過する状況で信号機は通過禁止状態(例えば赤信号)であるが仮想車両Mが通過しようとしている場合に、遠隔コマンダRが目視の判断により停止指示を行ったとき、遠隔コマンダRの評価を高くしてもよい。なお、遠隔コマンダRは、仮想車両Mの挙動に対する遠隔指示ではなく、目視による信号機の認識結果を伝えるためだけの遠隔指示を行ってもよい。
【0084】
評価部13は、仮想車両Mにおいてウインカーの自動制御が行われない場合、ウインカーの点灯指示のタイミングに基づいて、遠隔コマンダRの評価を行ってもよい。評価部13は、例えば右左折する交差点までの残り距離又は交差点到達までの残り時間を用いてウインカーの点灯指示のタイミングから遠隔コマンダRの評価を行ってもよい。
【0085】
評価部13は、仮想状況が交差点を右折する状況である場合において、接近する対向車に気づいて右折待ちの停止線の手前で停止できるように、遠隔コマンダRが停止指示を入力したとき、遠隔コマンダRの評価を高くしてもよい。評価部13は、仮想状況が交差点を右折する状況である場合において、接近する対向車の存在又は進行先の道路上の横断歩道を通過中の歩行者の存在があるにも関わらず、遠隔コマンダRが進行指示を入力したとき、遠隔コマンダRの評価を低くしてもよい。
【0086】
評価部13は、対向車が右折待ちをしていても、その後ろに直進予定の対向車が存在する可能性があることから、直進予定の対向車が存在する可能性を考慮せずに遠隔コマンダRが進行指示を入力したとき、遠隔コマンダRの評価を低くしてもよい。
【0087】
また、遠隔指示の入力のタイミングによらず、遠隔指示の内容だけで評価できる場合が考えられる。ここで、仮想状況が交差点を右折する状況である場合で信号機は通過許可状態であり、対向車線で交差点の先が渋滞しているために対向車が自車両の前方で交差点に進入せず停止しているとする。この場合には、自車両及び他車両の位置や時間に状況が依存しないため、遠隔指示の内容に基づいて評価することが適切となる。この状況において、評価部13は、例えば遠隔コマンダRが低速進行指示を入力したとき、遠隔コマンダRが進行指示(通常速度による進行指示)を入力したときと比べて、遠隔コマンダRの評価を高くする。遠隔コマンダRは、上記の状況において停止している対向車によって自車両の死角となる領域(対向車の裏側)からの二輪車の飛び出し等に注意する必要がある。このため、評価部13は進行指示より低速進行指示の評価を高くする。
【0088】
評価部13は、仮想状況が工事区間に進入する状況である場合、遠隔コマンダRが警備員による手旗信号等を適切に確認できるように減速指示又は停止指示を行ったとき、遠隔コマンダRの評価を高くしてもよい。評価部13は、減速指示のタイミングが工事区間に進入する前であれば、遠隔コマンダRの評価を高くしてもよい。評価部13は、停止指示のタイミングが工事区間に進入する前に停止できるタイミングであれば、遠隔コマンダRの評価を高くしてもよい。評価部13は、警備員による手旗信号等が通行可能を示してから進行指示のタイミングまでの時間が短いほど遠隔コマンダRの評価を高くしてもよい。
【0089】
評価部13は、仮想状況が踏切に進入する状況である場合で遮断機は上がっているが、踏切の先に先行車が渋滞しており、仮想車両Mが進入すると踏切内で停止することになる場合において、遠隔コマンダRが踏切に進入する前に停止指示を行ったとき、遠隔コマンダRの評価を高くしてもよい。評価部13は、仮想状況が踏切に進入する状況である場合で遮断機は上がっており、先行車も停止していないとき、進行指示のタイミングが早いほど遠隔コマンダRの評価を高くしてもよい。
【0090】
評価部13は、仮想状況が低速の先行車の追い越しの状況である場合、遠隔コマンダRの追い越し指示に対する遠隔指示挙動期間である追い越し期間中に、他車両との衝突可能性が低いほど、遠隔コマンダRの評価を高くしてもよい。遠隔コマンダRは、例えば車線変更先の他車両の車間が十分に空いているタイミングで追い越し指示を行うことにより、他車両との衝突可能性を低くすることができる。評価部13は、追い越し指示と追い越し後に元の車線に戻る車線変更指示とが別々である場合、それぞれの指示に対して評価を行ってもよい。元の車線に戻る車線変更指示に対しては、
図7(a)~
図7(c)で説明した評価方法を適用してもよい。
【0091】
その他、評価部13は、遠隔コマンダRの集中度に基づいて、遠隔コマンダRの評価を行ってもよい。集中度とは、遠隔コマンダRが仮想車両Mの監視に集中している度合いである。評価部13は、例えば遠隔コマンダRを撮像する遠隔コマンダカメラの撮像画像に基づいて、遠隔コマンダRの集中度を求めてもよい。評価部13は、遠隔コマンダRが情報出力部3aのディスプレイ又は指示入力部3b以外の方向に顔を向けていると認識した場合、遠隔コマンダRの集中度を低い値として認識してもよい。評価部13は、仮想状況が示されてから遠隔コマンダRが指示入力部3bのレバーLaを把持するまでの時間が短いほど、遠隔コマンダRの集中度を高い値として認識してもよい。遠隔コマンダRの集中度の認識には、車両の運転者に対する運転の集中度の認識の技術を用いることができる。
【0092】
評価部13は、遠隔コマンダRの集中度が集中度閾値以上である場合、集中度が集中度閾値未満である場合と比べて、遠隔コマンダRの評価を高くする。集中度閾値は予め設定された値の閾値である。評価部13は、遠隔コマンダRの集中度が高いほど遠隔コマンダRの評価を高くしてもよい。
【0093】
評価部13は、遠隔コマンダRの覚醒度に基づいて、遠隔コマンダRの評価を行ってもよい。覚醒度とは、遠隔コマンダRが睡眠不足等により意識が朦朧とした状態ではなく覚醒していることを示す度合いである。評価部13は、例えば、遠隔コマンダRの眼の開眼の状況、まばたきの頻度、眼球運動等から遠隔コマンダRの覚醒度を認識する。評価部13は、遠隔コマンダRの心拍情報、脳波情報等から覚醒度を認識してもよい。遠隔コマンダRの覚醒度の認識にも、車両の運転者に対する覚醒度の認識の技術を用いることができる。
【0094】
評価部13は、遠隔コマンダRの覚醒度が覚醒度閾値以上である場合、覚醒度が覚醒度閾値未満である場合と比べて、遠隔コマンダRの評価を高くする。覚醒度閾値は予め設定された値の閾値である。評価部13は、遠隔コマンダRの覚醒度が高いほど遠隔コマンダRの評価を高くしてもよい。
【0095】
フィードバック部14は、評価部13により遠隔コマンダRの評価が行われた場合、遠隔コマンダRに対して評価のフィードバックを行う。フィードバック部14は、コマンダインターフェース3の情報出力部3aを介して遠隔コマンダRに評価を通知する。フィードバック部14は、遠隔コマンダRによる遠隔指示ごとに評価を通知してもよく、仮想状況ごとに評価を通知してもよい。フィードバック部14は、遠隔コマンダRが遠隔指示の作業を終了した後(例えば1日の作業の終わり)に、フィードバックを行ってもよい。
【0096】
フィードバック部14は、フィードバックとしてOK又はNGの何れかを出力してもよく、段階的な評価を出力してもよい。フィードバック部14は、遠隔コマンダRによる遠隔指示のタイミングと仮想状況における最適なタイミングとの差分を出力してもよい。なお、車両遠隔指示訓練装置1は必ずしもフィードバック部14を有する必要はない。車両遠隔指示訓練装置1はその場でフィードバックを行う必要はない。
【0097】
[車両遠隔指示訓練装置の処理]
次に、本実施形態に係る車両遠隔指示訓練装置1の処理について
図8を参照して説明する。
図8は、遠隔コマンダ評価処理の一例を示すフローチャートである。遠隔コマンダ評価処理は、例えば遠隔コマンダRが通常の遠隔指示の作業を繰り返している業務時間内に実行される。遠隔コマンダ評価処理は、予め決められた訓練時間に行われてもよい。
【0098】
図8に示すように、車両遠隔指示訓練装置1の遠隔指示訓練サーバ10は、S10として、仮想状況表示部11により仮想車両の仮想状況を遠隔コマンダRに示す。仮想状況表示部11は、情報出力部3aを介して仮想状況を遠隔コマンダRに示す。
【0099】
S12において、遠隔指示訓練サーバ10は、遠隔指示入力認識部12により、遠隔コマンダRが遠隔指示を入力したか否かを認識する。遠隔指示入力認識部12は、遠隔コマンダRによる指示入力部3bの操作に基づいて、遠隔コマンダRが入力した遠隔指示の内容と遠隔指示のタイミングとを認識する。遠隔指示訓練サーバ10は、遠隔コマンダRにより遠隔指示が入力されない場合(S12:NO)、S14に移行する。遠隔指示訓練サーバ10は、遠隔コマンダRにより遠隔指示が入力された場合(S12:YES)、S16に移行する。
【0100】
S14において、遠隔指示訓練サーバ10は、評価部13により、入力なしに対する遠隔コマンダRの評価を行う。評価部13は、仮想車両の仮想状況に対して遠隔コマンダRが遠隔指示を入力しなかったことに基づいて、遠隔コマンダRの評価を行う。評価部13は、例えばわき道からの飛び出し等が懸念される交差点において、遠隔コマンダRが減速指示を行わなかった場合、遠隔コマンダRの評価を低くする。その後、遠隔指示訓練サーバ10は、S18に移行する。
【0101】
S16において、遠隔指示訓練サーバ10は、評価部13により遠隔コマンダRの評価を行う。評価部13は、仮想車両の仮想状況に対する遠隔コマンダRの遠隔指示のタイミングに基づいて、遠隔コマンダRの評価を行う。評価部13は、遠隔指示に応じて仮想車両Mが挙動を行う遠隔指示挙動期間における仮想車両Mの状況又は遠隔指示に応じて仮想車両Mが挙動を行う遠隔指示挙動区間における仮想車両Mの状況に基づいて、遠隔コマンダRの評価を行ってもよい。その後、遠隔指示訓練サーバ10は、S18に移行する。
【0102】
S18において、遠隔指示訓練サーバ10は、フィードバック部14による遠隔コマンダRへのフィードバックを行う。フィードバック部14は、コマンダインターフェース3の情報出力部3aを介して遠隔コマンダRに評価を通知する。その後、遠隔指示訓練サーバ10は、今回の処理を終了する。
【0103】
なお、遠隔指示訓練サーバ10は、必ずしもS14の処理を行う必要はない。遠隔指示訓練サーバ10は、遠隔コマンダによる遠隔指示の入力が認識されなかった場合には、評価及びフィードバックを行うことなく、処理を終了してもよい。
【0104】
以上説明した本実施形態に係る車両遠隔指示訓練装置1によれば、遠隔コマンダRに仮想車両Mの仮想状況を表示し、仮想状況に対して遠隔コマンダRが遠隔指示を出したタイミングに基づいて遠隔コマンダRの評価を行うことができるので、遠隔コマンダRが遠隔指示を出したタイミングが適切であったか不適切であったかを評価でき、遠隔コマンダによる遠隔指示の訓練を適切に行うことができる。また、車両遠隔指示訓練装置1では、実際の自動運転車両2に対する遠隔指示で用いるコマンダインターフェース3を用いて仮想状況を遠隔コマンダRに示すと共に遠隔コマンダRの遠隔指示の入力を認識するので、仮想状況による評価が実際の自動運転車両2に対する遠隔指示と全く異なる環境で行われる場合と比べて、より実際の自動運転車両2に対する遠隔指示に近い状態で遠隔コマンダRの評価を行うことができる。
【0105】
車両遠隔指示訓練装置1によれば、実際の自動運転車両2に対する監視時間の合間に仮想状況による遠隔指示の評価を行うので、実際の自動運転車両2に対する監視時間と切り離して異なる日に仮想状況による遠隔指示の評価のみを行う場合と比べて、実際の自動運転車両2を監視しているときと同じ状態の遠隔コマンダRの評価を行えることが期待できるので、より適切に遠隔コマンダRの評価を行うことができる。
【0106】
また、車両遠隔指示訓練装置1では、遠隔指示のタイミングだけではなく、遠隔指示に応じて仮想車両Mが挙動を行う遠隔指示挙動期間又は遠隔指示挙動区間における仮想車両Mの状況を踏まえて遠隔コマンダRの評価を行うことができるので、遠隔コマンダRが遠隔指示後の仮想車両Mの状況を考慮して遠隔指示を行ったことを評価することができる。
【0107】
車両遠隔指示訓練装置1によれば、仮想状況として仮想車両が非優先道路から優先道路の信号機無し交差点に進入する状況が示されている場合に、遠隔コマンダの減速指示又は停止指示のタイミングと遠隔コマンダの進行指示のタイミングとに基づいて、遠隔コマンダの評価を行うので、仮想状況に応じた遠隔指示の内容とタイミングの組み合わせを踏まえて遠隔コマンダの評価を行うことができる。
【0108】
車両遠隔指示訓練装置1によれば、仮想状況として仮想車両が非優先道路から優先道路の信号機無し交差点に進入する状況であり且つ優先道路上を信号機無し交差点に向かって走行する他車両が存在する状況が示されている場合に、遠隔コマンダの進行指示に応じた交差点進入期間における仮想車両と他車両との衝突可能性に基づいて遠隔コマンダの評価を行うので、遠隔コマンダが進行指示後の仮想車両と他車両との関係を考慮したか否かを適切に評価することができる。
【0109】
車両遠隔指示訓練装置1によれば、仮想状況として仮想車両が車線変更を行う状況が示されている場合に、車線変更指示のタイミングと車線変更区間と車線変更許可区間とに基づいて遠隔コマンダの評価を行うので、遠隔コマンダが車線変更指示後の仮想車両が車線変更許可区間内で車線変更できるかを考慮したか否かを適切に評価することができる。
【0110】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。
【0111】
例えば車両遠隔指示訓練装置1は、必ずしも車両遠隔指示システム100の一部を構成する必要はない。車両遠隔指示訓練装置1は単体で用いられてもよい。この場合、コマンダインターフェース3も訓練用のインターフェースとなる。
【0112】
また、初心者訓練用の遠隔指示は、進行指示のみなどの制限がされていてもよい。遠隔指示が一種類の場合、遠隔指示のタイミングのみに基づいて遠隔コマンダRの評価が行われる。
【符号の説明】
【0113】
1…車両遠隔指示訓練装置、2…自動運転車両、3…コマンダインターフェース、3a…情報出力部、3b…指示入力部、4…コマンダデータベース、11…仮想状況表示部、12…遠隔指示入力認識部、13…評価部、14…フィードバック部、A1,A2…車線変更区間、D1,D2…交差点進入期間、100…車両遠隔指示システム、L…車線変更許可区間、M…仮想車両、N1,N2…他車両、R…遠隔コマンダ、R1,R4…優先道路、R2,R3…非優先道路、T1,T2…交差点。