(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】車両のインターロックシステム
(51)【国際特許分類】
B60R 22/48 20060101AFI20221213BHJP
A61G 3/08 20060101ALI20221213BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20221213BHJP
【FI】
B60R22/48 101
B60R22/48 105
A61G3/08
B60W60/00
(21)【出願番号】P 2019152868
(22)【出願日】2019-08-23
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】大野 光由
(72)【発明者】
【氏名】関塚 誠
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-028226(JP,A)
【文献】特開2007-076631(JP,A)
【文献】特開2018-122822(JP,A)
【文献】国際公開第2018/221350(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0079252(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0111889(US,A1)
【文献】独国実用新案第202010001972(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/00-22/48
G08G 1/16
A61G 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室内に設けられ、車椅子を前記車両に固定する車椅子固定装置と、
前記車椅子に着座した乗員に装着されるシートベルトを有するシートベルト装置と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
(1)前記車室内に前記車椅子が有るか否か、
(2)前記車椅子が車両前方側へ向けられているか又は車両後方側へ向けられているか、
(3)前記車椅子が前記車椅子固定装置によって前記車両に固定されているか否か、
(4)前記シートベルトが乗員に装着されているか否か、
の少なくともいずれかの条件により、前記車両の走行上限速度及び上限加速度の少なくとも一方を制限する、又は、警告信号を出力する、或いは、前記車両の走行上限速度及び上限加速度の少なくとも一方を制限しながら警告信号を出力する車両のインターロックシステム
であって、
前記車椅子が車両後方側へ向けられている場合の前記上限加速度が、前記車椅子が車両前方側へ向けられている場合の前記上限加速度よりも低い加速度となるように、前記制御部が前記上限加速度を制限する車両のインターロックシステム。
【請求項2】
車両の車室内に設けられ、車椅子を前記車両に固定する車椅子固定装置と、
前記車椅子に着座した乗員に装着されるシートベルトを有するシートベルト装置と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
(1)前記車室内に前記車椅子が有るか否か、
(2)前記車椅子が車両前方側へ向けられているか又は車両後方側へ向けられているか、
(3)前記車椅子が前記車椅子固定装置によって前記車両に固定されているか否か、
(4)前記シートベルトが乗員に装着されているか否か、
の少なくともいずれかの条件により、前記車両の走行上限速度及び上限加速度の少なくとも一方を制限する、又は、警告信号を出力する、或いは、前記車両の走行上限速度及び上限加速度の少なくとも一方を制限しながら警告信号を出力する車両のインターロックシステムであって、
前記制御部は、前記車椅子が車両後方側へ向けられている場合にのみ前記上限加速度を制限す
る車両のインターロックシステム。
【請求項3】
前記制御部は、前記車椅子が前記車椅子固定装置によって前記車両に固定されていない場合に前記上限加速度を制限する請求項
2記載の車両のインターロックシステム。
【請求項4】
車両の車室内に設けられ、車椅子を前記車両に固定する車椅子固定装置と、
前記車椅子に着座した乗員に装着されるシートベルトを有するシートベルト装置と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
(1)前記車室内に前記車椅子が有るか否か、
(2)前記車椅子が車両前方側へ向けられているか又は車両後方側へ向けられているか、
(3)前記車椅子が前記車椅子固定装置によって前記車両に固定されているか否か、
(4)前記シートベルトが乗員に装着されているか否か、
の少なくともいずれかの条件により、前記車両の走行上限速度及び上限加速度の少なくとも一方を制限する、又は、警告信号を出力する、或いは、前記車両の走行上限速度及び上限加速度の少なくとも一方を制限しながら警告信号を出力する車両のインターロックシステムであって、
前記車両は、運転席の乗員が運転操作をすることなく走行することが可能な自動運転と、運転席の乗員が運転操作をすることにより走行することが可能な手動運転と、を切替え可能な車両であり、
前記制御部は、前記車両が自動運転で走行している場合に前記条件に応じて前記車両の走行上限速度及び上限加速度の少なくとも一方を制限し、
前記制御部は、前記車両が手動運転で走行している場合に前記車両の走行上限速度及び上限加速度を制限せずに前記条件に応じて前記警告信号を出力す
る車両のインターロックシステム。
【請求項5】
車両の車室内に設けられ、車椅子を前記車両に固定する車椅子固定装置と、
前記車椅子に着座した乗員に装着されるシートベルトを有するシートベルト装置と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
(1)前記車室内に前記車椅子が有るか否か、
(2)前記車椅子が車両前方側へ向けられているか又は車両後方側へ向けられているか、
(3)前記車椅子が前記車椅子固定装置によって前記車両に固定されているか否か、
(4)前記シートベルトが乗員に装着されているか否か、
の少なくともいずれかの条件により、前記車両の走行上限速度及び上限加速度の少なくとも一方を制限する、又は、警告信号を出力する、或いは、前記車両の走行上限速度及び上限加速度の少なくとも一方を制限しながら警告信号を出力する車両のインターロックシステムであって、
前記車両は、運転席の乗員が運転操作をすることなく走行することが可能な自動運転と、運転席の乗員が運転操作をすることにより走行することが可能な手動運転と、を切替え可能な車両であり、
前記制御部は、前記車両が自動運転で走行している場合でかつ前記車室内に乗務員がいる場合に、前記車両の走行上限速度及び上限加速度を制限せずに、前記条件に応じて前記警告信号を出力す
る車両のインターロックシステム。
【請求項6】
前記車両は、前記車室内の乗員が運転操作をすることなく自動で走行することが可能な自動運転の車両である請求項1~請求項
3のいずれか1項に記載の車両のインターロックシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のインターロックシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両の乗員がシートベルトを装着していない場合に車両の速度を制限する安全装置が開示されている。
【0003】
また、下記特許文献2には、車室内の車椅子を車室フロアに固定する車椅子固定装置及び車室内の車椅子に着座した乗員に装着されるシートベルトを有する車椅子用シートベルト装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-076631号公報
【文献】特開2001-047969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車椅子に着座した乗員がシートベルトを装着していたとしても、車椅子が固定されていなければ、車両の衝突時にシートベルトによる乗員の拘束性能を十分に得ることは難しい。また、車椅子が固定されていたとしても、車椅子に着座した乗員がシートベルトを装着していなければ、車両の衝突時にシートベルトによる乗員の拘束性能を得ることはできない。しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に記載された装置は、このような状況下で車両を制御することや警告を行うことを考慮していない。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、車室内の車椅子を考慮して車両を制御することや警告を行うことができる車両のインターロックシステムを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様の車両のインターロックシステムは、車両の車室内に設けられ、車椅子を前記車両に固定する車椅子固定装置と、前記車椅子に着座した乗員に装着されるシートベルトを有するシートベルト装置と、制御部と、を備え、前記制御部は、(1)前記車室内に前記車椅子が有るか否か、(2)前記車椅子が車両前方側へ向けられているか又は車両後方側へ向けられているか、(3)前記車椅子が前記車椅子固定装置によって前記車両に固定されているか否か、(4)前記シートベルトが乗員に装着されているか否か、の少なくともいずれかの条件により、前記車両の走行上限速度及び上限加速度の少なくとも一方を制限する、又は、警告信号を出力する、或いは、前記車両の走行上限速度及び上限加速度の少なくとも一方を制限しながら警告信号を出力する。
【0008】
第1の態様の車両のインターロックシステムによれば、制御部が、車室内に車椅子が有るか否か、車椅子が車両前方側へ向けられているか又は車両後方側へ向けられているか、車椅子が車椅子固定装置によって車両に固定されているか否か及びシートベルトが乗員に装着されているか否かの少なくともいずれかの条件により、車両の走行上限速度及び上限加速度の少なくとも一方を制限する、又は、制御部が、警告信号を出力する、或いは、制御部が、車両の走行上限速度及び上限加速度の少なくとも一方を制限しながら警告信号を出力する。このように、第1の態様の発明では、車室内の車椅子を考慮して車両を制御することや警告を行うことができる。
【0009】
第2の態様の車両のインターロックシステムは、第1の態様の発明において、前記車椅子が前記車椅子固定装置によって前記車両に固定されていない場合でかつ前記シートベルトが乗員に装着されていない場合の前記走行上限速度が、前記車椅子が前記車椅子固定装置によって前記車両に固定されている場合でかつ前記シートベルトが乗員に装着されていない場合の前記走行上限速度よりも低い速度となるように、前記制御部が前記走行上限速度を制限する、又は、前記車椅子が前記車椅子固定装置によって前記車両に固定されていない場合でかつ前記シートベルトが乗員に装着されていない場合の前記走行上限速度が、前記車椅子が前記車椅子固定装置によって前記車両に固定されていない場合でかつ前記シートベルトが乗員に装着されている場合の前記走行上限速度よりも低い速度となるように、前記制御部が前記走行上限速度を制限する。
【0010】
第2の態様の車両のインターロックシステムによれば、車室内で車椅子が動く可能性がある場合でかつシートベルトによる乗員の拘束性能が得られない場合における車両の走行上限速度を車室内で車椅子が動く可能性がない場合又はシートベルトによる乗員の拘束性能が得られる場合よりも低くすることができる。
【0011】
第3の態様の車両のインターロックシステムは、第1又は第2の態様の発明において、前記車椅子が前記車椅子固定装置によって前記車両に固定されていない場合でかつ前記シートベルトが乗員に装着されていない場合の前記上限加速度が、前記車椅子が前記車椅子固定装置によって前記車両に固定されている場合でかつ前記シートベルトが乗員に装着されていない場合の前記上限加速度よりも低い加速度となるように、前記制御部が前記上限加速度を制限する、又は、前記車椅子が前記車椅子固定装置によって前記車両に固定されていない場合でかつ前記シートベルトが乗員に装着されていない場合の前記上限加速度が、前記車椅子が前記車椅子固定装置によって前記車両に固定されていない場合でかつ前記シートベルトが乗員に装着されている場合の前記上限加速度よりも低い加速度となるように、前記制御部が前記上限加速度を制限する。
【0012】
第3の態様の車両のインターロックシステムによれば、車室内で車椅子が動く可能性がある場合でかつシートベルトによる乗員の拘束性能が得られない場合における車両の上限加速度を車室内で車椅子が動く可能性がない場合又はシートベルトによる乗員の拘束性能が得られる場合よりも低くすることができる。
【0013】
第4の態様の車両のインターロックシステムは、第1~第3のいずれか1つの態様の発明において、前記車椅子が車両後方側へ向けられている場合の前記上限加速度が、前記車椅子が車両前方側へ向けられている場合の前記上限加速度よりも低い加速度となるように、前記制御部が前記上限加速度を制限する。
【0014】
第4の態様の車両のインターロックシステムによれば、車両の加速時に車椅子による乗員の背部の支持を得られない場合(車椅子が車両後方側へ向けられている場合)の上限加速度を車両の加速時に車椅子による乗員の背部の支持を得られる場合(車椅子が車両前方側へ向けられている場合)よりも低くすることができる。
【0015】
第5の態様の車両のインターロックシステムは、第1~第4のいずれか1つの態様の発明において、前記制御部は、前記車椅子が車両後方側へ向けられている場合にのみ前記上限加速度を制限する。
【0016】
第5の態様の車両のインターロックシステムによれば、車両の加速時に車椅子による乗員の背部の支持を得られない場合(車椅子が車両後方側へ向けられている場合)の上限加速度を制限することができる。
【0017】
第6の態様の車両のインターロックシステムは、第5の態様の発明において、前記制御部は、前記車椅子が前記車椅子固定装置によって前記車両に固定されていない場合に前記上限加速度を制限する。
【0018】
第6の態様の車両のインターロックシステムによれば、車両の加速時に車椅子が動いてしまう可能性がある場合(車椅子が車両に固定されていない場合)の上限加速度を制限することができる。
【0019】
第7の態様の車両のインターロックシステムは、第1~第6のいずれか1つの態様の発明において、前記車両の外側及び前記車室内の少なくとも一方には、表示部が設けられ、前記制御部は、前記車両の走行上限速度及び上限加速度の少なくとも一方を制限している場合に前記車両の走行上限速度及び上限加速度の少なくとも一方を制限していることを前記表示部に表示させる。
【0020】
第7の態様の車両のインターロックシステムによれば、車両の走行上限速度及び上限加速度の少なくとも一方が制限されていることを表示部を通じて車両の外側の人(一例として後続車の乗員)や車室内の乗員に知らせることができる。
【0021】
第8の態様の車両のインターロックシステムは、第1~第7のいずれか1つの態様の発明において、前記車両の外側には、ハザードランプが設けられ、前記制御部は、前記車両の走行上限速度及び上限加速度の少なくとも一方を制限している場合に前記ハザードランプを点滅させる。
【0022】
第8の態様の車両のインターロックシステムによれば、車両の走行上限速度及び上限加速度の少なくとも一方が制限されていることをハザードランプの点滅によって車両の外側の人(一例として後続車の乗員)に知らせることができる。
【0023】
第9の態様の車両のインターロックシステムは、第1~第8のいずれか1つの態様の発明において、前記車両は、運転席の乗員が運転操作をすることなく走行することが可能な自動運転と、運転席の乗員が運転操作をすることにより走行することが可能な手動運転と、を切替え可能な車両であり、前記制御部は、前記車両が自動運転で走行している場合に前記条件に応じて前記車両の走行上限速度及び上限加速度の少なくとも一方を制限し、前記制御部は、前記車両が手動運転で走行している場合に前記車両の走行上限速度及び上限加速度を制限せずに前記条件に応じて前記警告信号を出力する。
【0024】
第9の態様の車両のインターロックシステムによれば、運転席の乗員が車椅子の乗員に車椅子の固定やシートベルトの着用を促すことができない場合(車両が自動運転で走行する場合)等に、車両の走行上限速度及び上限加速度の少なくとも一方を制限することができる。また、運転席の乗員が車椅子の乗員に車椅子の固定やシートベルトの着用を促すことができる場合(車両が手動運転で走行する場合)等に、車両の走行上限速度及び上限加速度の少なくとも一方を不要に制限することを防止することができる。また、車両が手動運転で走行する場合でかつ車椅子の固定やシートベルトの着用がなされていなかった場合等に、制御部が警告信号を出力することにより、運転席の乗員や車室内の他の乗員に車椅子の固定やシートベルトの着用がなされていないこと等を知らせることができる。
【0025】
第10の態様の車両のインターロックシステムは、第1~第8のいずれか1つの態様の発明において、前記車両は、運転席の乗員が運転操作をすることなく走行することが可能な自動運転と、運転席の乗員が運転操作をすることにより走行することが可能な手動運転と、を切替え可能な車両であり、前記制御部は、前記車両が自動運転で走行している場合でかつ前記車室内に乗務員がいる場合に、前記車両の走行上限速度及び上限加速度を制限せずに、前記条件に応じて前記警告信号を出力する。
【0026】
第10の態様の車両のインターロックシステムによれば、運転席の乗員が車椅子の乗員に車椅子の固定やシートベルトの着用を促すことができない場合(車両が自動運転で走行する場合)等であっても乗務員が車椅子の乗員に車椅子の固定やシートベルトの着用を促すことができる場合等に、車両の走行上限速度及び上限加速度の少なくとも一方を不要に制限することを防止することができる。また、車両が自動運転で走行する場合でかつ車椅子の固定やシートベルトの着用がなされていなかった場合に、制御部が警告信号を出力することにより、乗務員に車椅子の固定やシートベルトの着用がなされていないこと等を知らせることができる。
【0027】
第11の態様の車両のインターロックシステムは、第1~第8のいずれか1つの態様の車両において、前記車両は、前記車室内の乗員が運転操作をすることなく自動で走行することが可能な自動運転の車両である。
【0028】
第11の態様の車両のインターロックシステムによれば、運転操作をする乗員がいない車両であっても、車室内の車椅子を考慮して車両を制御することや警告を行うことができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る車両のインターロックシステムは、車室内の車椅子を考慮して車両を制御することや警告を行うことができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】車両のインターロックシステムを備えた車両の車室内を車幅方向から見た側面図であり、車両前方側に向けられた車椅子が車室内にある場合を示している。
【
図2】車両のインターロックシステムを備えた車両を斜め後方側から見た斜視図である。
【
図3】車両のインターロックシステムの制御部等を示すブロック図である。
【
図4】車両のインターロックシステムによる判定条件及び車両の制御を示す表である。
【
図5】車両のインターロックシステムによる車両の制御を説明するためのフローチャートである。
【
図6】車両のインターロックシステムによる警告信号の出力に伴う警告灯の点灯及びブザーの作動を説明するためのフローチャートである。
【
図7】車両のインターロックシステムによる警告信号の出力に伴う表示器への表示を説明するためのフローチャートである。
【
図8】車両のインターロックシステムを備えた車両の車室内を車幅方向から見た
図1に対応する側面図であり、車両後方側へ向けられた車椅子が車室内にある場合を示している。
【
図9】車両のインターロックシステムを備えた車両の車室内を車幅方向から見た
図1に対応する側面図であり、車両後方側へ向けられた車椅子及び車両前方側へ向けられた車椅子が車室内にある場合を示している。
【
図10】車両のインターロックシステムによる車両の制御を説明するための
図5に対応するフローチャートであり、車両後方側へ向けられた車椅子の有無を考慮したフローチャートである。
【
図11】車両のインターロックシステムによる車両の制御を説明するためのフローチャートであり、車両の走行中にシートベルトの装着や車椅子の固定が解除された場合を考慮したフローチャートである。
【
図12】車両のインターロックシステムを備えていると共に自走運転と手動運転とを切替え可能な車両の車室内を車幅方向から見た
図1に対応する側面図であり、車両が手動運転で走行可能な場合を示している。
【
図13】車両のインターロックシステムを備えていると共に自走運転と手動運転とを切替え可能な車両の車室内を車幅方向から見た
図1に対応する側面図であり、車両が自動運転で走行可能で乗務員が乗車している場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1実施形態)
図1~
図5を用いて、本発明の第1実施形態に係る車両のインターロックシステム10について説明する。なお、以下の説明において前後左右上下の方向を示して説明するときは、車両の前後左右上下の方向を示すものとし、また各図に適宜示す矢印FRは前方向、矢印UPは上方向、矢印RHは右方向、矢印LHは左方向をそれぞれ示すものとする。
【0032】
図1に示されるように、本実施形態の車両のインターロックシステム10が適用された車両12は、運転操作をすることなく自動で走行することが可能な自動運転の車両である。この車両12の車室内14には、前後に対向する一対の車両用シート16が設けられている。車両用シート16は、着座乗員の臀部、背部及び頭部をそれぞれ支持するシートクッション18、シートバック20及びヘッドレスト22を備えている。ここで、シートクッション18は、シートバック20の下端部に車幅方向を軸方向として傾動可能になっている。そして、シートクッション18を乗員が着座可能な状態から上方側へ傾動させる(跳ね上げる)ことにより、後述する車椅子24を搭載する前後一対の車椅子搭載スペース26(車室内14のフロア28上のスペース)を確保することが可能となっている。なお、
図1においては、一対の車両用シート16のシートクッション18が跳ね上げられた状態を示している。
【0033】
また、車両12の車室内14には、車椅子搭載スペース26に搭載された車椅子24を車両12に固定するための車椅子固定装置30が設けられている。ここで、車椅子固定装置30の細部の構成の説明は省略するが、この車椅子固定装置30は、車椅子24をフロア28や車両用シート16等に固定すること等により当該車椅子24の車両前後方向及び左右方向への移動を規制できるものであればよい。また、車椅子固定装置30は、車椅子24が当該車椅子固定装置30を介して車両12に固定されている状態であることを検出するための車椅子固定検出スイッチ32(
図3参照)を備えている。この車椅子固定検出スイッチ32は、一例としてラッチ検知スイッチであり、後述するECU52に電気的に(直接又は間接的に)接続されている。
【0034】
また、車両12の車室内14には、車椅子24に着座した乗員P1に装着されるシートベルト34を有するシートベルト装置36が設けられている。ここで、シートベルト装置36の細部の構成の説明は省略するが、このシートベルト装置36は、いわゆる2点式のシートベルト装置や3点式のシートベルト装置であってもよいし、4点式以上のシートベルト装置であってもよい。なお、
図1においては、車椅子24に着座した乗員P1が3点式のシートベルト装置36のシートベルト34を装着した状態を図示している。また、シートベルト装置36は、車椅子24に着座した乗員P1がシートベルト34を装着した状態であることを検出するためのシートベルト装着検出スイッチ38(
図3参照)を備えている。このシートベルト装着検出スイッチ38は、一例としてバックルスイッチであり、後述するECU52に電気的に(直接又は間接的に)接続されている。
【0035】
また、車両12の車室内14には、車室内14に車椅子24が有るか否か、車椅子24が車両前方側へ向けられているか又は車両後方側へ向けられているか等を検出するためのカメラ40が設けられている。このカメラ40からの信号に基づいて、車椅子24の有無及び当該車椅子24の向き等が検出されるようになっている。このカメラ40は、後述するECU52に電気的に(直接又は間接的に)接続されている。なお、カメラ40で車椅子24の動きを検出することにより、車椅子24が車椅子固定装置30を介して車両12に固定されているか否かが判断されるようにしてもよい。
【0036】
また、車両12の車室内14における車椅子搭載スペース26の周辺には、表示部としての警告灯42が設けられている。この警告灯42が点灯することにより、車室内14の乗員P1に車椅子24の固定やシートベルト34の着用を促すことが可能となっている。この警告灯42は、後述するECU52に電気的に(直接又は間接的に)接続されている。
【0037】
また、車両12の車室内14には、ブザー44が設けられている。このブザー44が鳴ることにより、車室内14の乗員P1に車椅子24の固定やシートベルト34の着用を促すことが可能となっている。このブザー44は、後述するECU52に電気的に(直接又は間接的に)接続されている。
【0038】
図2に示されるように、車両12の後方の上部には、表示部としての表示器46が設けられている。この表示器46を通じて車両12の外側の人(一例として、後続車の乗員)へ当該車両12の情報を伝えることが可能となっている。また、表示器46は、後述するECU52に電気的に(直接又は間接的に)接続されている。車両12の後方の下部には、左右一対のハザードランプ48が設けられている。なお、左右一対のハザードランプ48は、ターンシグナルランプ50と共用のランプとなっている。
【0039】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態の車両のインターロックシステム10は、前述の車椅子固定装置30、シートベルト装置36、警告灯42、表示器46及び車両12の制御等を行う制御部としてのECU52を主要な要素として構成されている。
【0040】
図3に示されるように、ECU52は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)54、ROM(Read Only Memory)56、RAM(Random Access Memory)58、ストレージ60及び外部の装置との通信を行う入出力インタフェース(I/F)62を有しており、これらがバス64を介して相互に通信可能に接続された構成になっている。入出力インタフェース62には、車椅子固定検出スイッチ32、シートベルト装着検出スイッチ38、カメラ40、警告灯42、ブザー44、表示器46及び車両12のパワーユニット(一例としてモータ)等が電気的に接続されている。CPU54は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、パワーユニット等を制御したりする。すなわち、CPU54は、車椅子固定検出スイッチ32やシートベルト装着検出スイッチ38等からの信号に基づいてROM56やストレージ60から制御プログラムを読み出し、RAM58を作業領域として制御プログラムを実行してパワーユニット等を制御する。
【0041】
ここで、
図4に示されるように、ECU52は、車室内14に車椅子24が有るか否か、車椅子24が車椅子固定装置30によって車両12に固定されているか否か及びシートベルト34が車椅子24に着座した乗員P1に装着されているか否かの条件により、車両12の走行上限速度及び上限加速度を制限すると共に後に詳述するような警告信号を出力する。
【0042】
(車両12の制御について)
図1、
図3及び
図5に示されるように、ECU52は、カメラ40からの映像信号に基づいて車室内14に車椅子24が有るか否かを判断する(ステップS1)。
【0043】
ステップS1で否定判断されると、すなわち、車室内14に車椅子24が無いと判断されると、ECU52は、車両12の走行上限速度をE及び上限加速度をeに決定し(ステップS105)、車両12の走行上限速度及び上限加速度がこれらの閾値を超えないように当該車両12を制御する(ステップS106)。なお、上記閾値E及びeは、一例として無制限とされている。上記閾値E及びeが無制限とされている場合、車両12の走行上限速度及び上限加速度は制限されない。
【0044】
これに対して、ステップS1で肯定判断されると、すなわち、車室内14に車椅子24が有ると判断されると、ECU52は、車椅子固定検出スイッチ32からの信号に基づいて車椅子24が車椅子固定装置30によって車両12に固定されているか否かを判断する(ステップS2)。
【0045】
ステップS2で肯定判断されると、すなわち、車椅子24が車椅子固定装置30によって車両12に固定されていると判断されると、ECU52は、シートベルト装着検出スイッチ38からの信号に基づいてシートベルト34が車椅子24に着座した乗員P1に装着されているか否かを判断する(ステップS3)。
【0046】
ステップS3で肯定判断されると、すなわち、シートベルト34が車椅子24に着座した乗員P1に装着されていると判断されると、ECU52は、車両12の走行上限速度をA及び上限加速度をaに決定し(ステップS101)、車両12の走行上限速度及び上限加速度がこれらの閾値を超えないように当該車両12を制御する(ステップS106)。なお、上記閾値A及びaは、一例として無制限及び0.3Gにそれぞれ設定されている。
【0047】
これに対して、ステップS3で否定判断されると、すなわち、シートベルト34が車椅子24に着座した乗員P1に装着されていないと判断されると、ECU52は、車両12の走行上限速度をB及び上限加速度をbに決定し(ステップS102)、車両12の走行上限速度及び上限加速度がこれらの閾値を超えないように当該車両12を制御する。なお、上記閾値B及びbは、一例として30km/h及び0.1Gにそれぞれ設定されている。
【0048】
その一方で、ステップS2で否定判断されると、すなわち、車椅子24が車椅子固定装置30によって車両12に固定されていないと判断されると、ECU52は、シートベルト34が車椅子24に着座した乗員P1に装着されているか否かを判断する(ステップS4)。
【0049】
ステップS4で肯定判断されると、すなわち、シートベルト34が車椅子24に着座した乗員P1に装着されていると判断されると、ECU52は、車両12の走行上限速度をC及び上限加速度をcに決定し(ステップS103)、車両12の走行上限速度及び上限加速度がこれらの閾値を超えないように当該車両12を制御する(ステップS106)。なお、上記閾値C及びcは、一例として20km/h及び0.3Gにそれぞれ設定されている。
【0050】
これに対して、ステップS4で否定判断されると、すなわち、シートベルト34が車椅子24に着座した乗員P1に装着されていないと判断されると、ECU52は、車両12の走行上限速度をD及び上限加速度をdに決定し(ステップS104)、車両12の走行上限速度及び上限加速度がこれらの閾値を超えないように当該車両12を制御する。なお、上記閾値D及びdは、一例として0km/h及び0Gにそれぞれ設定されている。
【0051】
(警告信号の出力に伴う警告灯の点灯及びブザーの作動について)
図1、
図3及び
図6に示されるように、ECU52は、車椅子固定検出スイッチ32及びシートベルト装着検出スイッチ38からの信号に基づいて、車椅子24が車椅子固定装置30によって車両12に固定されていると共にシートベルト34が車椅子24に着座した乗員P1に装着されているか否かを判断する(ステップS201)。
【0052】
ステップS201で肯定判断されると(車椅子24が車椅子固定装置30によって車両12に固定されていると共に、シートベルト34が車椅子24に着座した乗員P1に装着されていると判断されると)、ECU52は処理を終了する。
【0053】
ステップS201で否定判断されると(車椅子24が車椅子固定装置30によって車両12に固定されていない、或いは、シートベルト34が車椅子24に着座した乗員P1に装着されていない、或いは、車椅子24が車椅子固定装置30によって車両12に固定されていない状態かつシートベルト34が車椅子24に着座した乗員P1に装着されていないと判断されると)、ECU52は、第1の警告信号を出力する(ステップS202)。これにより、車両12の警告灯42が点灯し、乗員P1に車椅子24の固定やシートベルト34の装着が促される。
【0054】
また、ECU52は、ステップS202で第1の警告信号を出力した後の所定の時間の経過後に、再び車椅子24が車椅子固定装置30によって車両12に固定されていると共にシートベルト34が車椅子24に着座した乗員P1に装着されているか否かを判断する(ステップS203)。
【0055】
ステップS203で肯定判断されると、すなわち、車椅子24が車椅子固定装置30によって車両12に固定されていると共に、シートベルト34が車椅子24に着座した乗員P1に装着されていると判断されると、ECU52は、第1の警告信号の出力を停止して(ステップS206)、処理を終了する。
【0056】
ステップS203で否定判断されると、すなわち、車椅子24が車椅子固定装置30によって車両12に固定されていない、或いは、シートベルト34が車椅子24に着座した乗員P1に装着されていない、或いは、車椅子24が車椅子固定装置30によって車両12に固定されていない状態かつシートベルト34が車椅子24に着座した乗員P1に装着されていないと判断されると、ECU52は、第2の警告信号を出力する(ステップS204)。これにより、車両12のブザー44が鳴り、乗員P1に車椅子24の固定やシートベルト34の装着が促される。
【0057】
また、ECU52は、ステップS204で第2の警告信号を出力した後の所定の時間の経過後に、再び車椅子24が車椅子固定装置30によって車両12に固定されていると共にシートベルト34が車椅子24に着座した乗員P1に装着されているか否かを判断する(ステップS205)。
【0058】
ステップS205で肯定判断されると、すなわち、車椅子24が車椅子固定装置30によって車両12に固定されていると共に、シートベルト34が車椅子24に着座した乗員P1に装着されていると判断されると、ECU52は、第1の警告信号及び第2の警告信号の出力を停止して(ステップS207)、処理を終了する。
【0059】
ステップS205で否定判断されると、すなわち、車椅子24が車椅子固定装置30によって車両12に固定されていない、或いは、シートベルト34が車椅子24に着座した乗員P1に装着されていない、或いは、車椅子24が車椅子固定装置30によって車両12に固定されていない状態かつシートベルト34が車椅子24に着座した乗員P1に装着されていないと判断されると、ECU52は、継続して第2の警告信号を出力する(ステップS204)。これにより、車両12のブザー44が継続して鳴り、乗員P1に車椅子24の固定やシートベルト34の装着が促される。
【0060】
(警告信号の出力に伴う表示器の表示について)
図1、
図2、
図3及び
図7に示されるように、ECU52は、
図5に示されたフローに基づいて車両12の走行上限速度を制限しているか否かを判断する(ステップS301)。
【0061】
ステップS301で否定判断されると、すなわち、車両12の走行上限速度を制限していないと判断されると、ECU52は処理を終了する。
【0062】
これに対して、ステップS301で肯定判断されると、すなわち、車両12の走行上限速度を制限していると判断されると、ECU52は、第3の警告信号を出力する(ステップS302)。これにより、車両12の表示器46に「車両の速度を制限している」旨の表示がなされ、後続車の乗員等の車両12の外側の人へ当該車両12が所定の速度を超えて走行できないことが伝えられる。ここで、第3の警告信号の出力に伴い、ハザードランプ48が点滅するように構成してもよい。また、「車両の加速度を制限している」旨の表示がなされるようにしてもよい。
【0063】
また、ECU52は、ステップS302で第3の警告信号を出力した後の所定の時間の経過後に、再び車両12の走行上限速度を制限しているか否かを判断する(ステップS303)。
【0064】
ステップS303で肯定判断されると、すなわち、車両12の走行上限速度を制限していると判断されると、ECU52は、継続して第3の警告信号を出力する(ステップS302)。これにより、車両12の表示器46に「車両の速度を制限している」旨の表示が継続してなされ、後続車の乗員等の車両12の外側の人へ当該車両12が所定の速度を超えて走行できないことが継続して伝えられる。
【0065】
ステップS303で否定判断されると(車両12の走行上限速度を制限していないと判断されると)、ECU52は、第3の警告信号の出力を停止して(ステップS304)、処理を終了する。
【0066】
以上説明したように、本実施形態の車両のインターロックシステム10によれば、車室内14の車椅子24を考慮して車両を制御することや警告を行うことができる。
【0067】
なお、
図4に示されるように、本実施形態では、走行上限速度の閾値であるA、B、C、D、Eをそれぞれ制限なし、30km/h、20km/h、0km/h、無制限に設定し、上限加速度の閾値であるa、b、c、d、eをそれぞれ0.3G、0.1G、0.1G、0G、無制限に設定した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。上記の閾値は、車両が走行する道路の条件等を考慮して適宜設定すればよい。また、上限加速度の閾値として、車両12の減速時の減速加速度を考慮した車両12の制御を行ってもよい。
【0068】
ここで、走行上限速度の閾値であるA、B、C、D、Eは、以下の(1)(2)(3)(4)(5)の範囲に設定するとよい。
(1)E≧A>B>D
(2)E≧A>C>D
(3)E>A>B>C>D
(4)E>A>C>B>D
(5)E>A>B=C>D
【0069】
また、上限加速度の閾値であるa、b、c、d、eは、以下の(6)(7)(8)(9)(10)の範囲に設定するとよい。
(6)e≧a>b>d
(7)e≧a>c>d
(8)e>a>b>c>d
(9)e>a>c>b>d
(10)e>a>b=c>d
【0070】
(車椅子の向きを考慮した車両の制御について)
図8及び
図9に示されるように、車室内14で車両後方側へ向けられた車椅子24が有る場合、車両後方側へ向けられた車椅子24の乗員は、車両12の加速時に車椅子24の背もたれによる背部の支持を得られない。そのため、車両後方側へ向けられた車椅子24が有る場合の上限加速度を車両後方側へ向けられた車椅子24が無い場合の上限加速度よりも低くすることが望ましい。以下、この点を考慮した車両12の制御について説明する。なお、以下においては、
図5を用いて説明した制御と重複する部分の説明を省略することがある。
【0071】
図10に示されるように、ステップS3で肯定判断された場合、ECU52は、カメラ40からの映像信号に基づいて車室内14に車両後方側へ向けられた車椅子24が有るか否かを判断する(ステップS401)。
【0072】
ステップS401で否定判断されると、すなわち、車室内14に車両後方側へ向けられた車椅子24が無いと判断されると、ECU52は、車両12の走行上限速度をA及び上限加速度をaに決定し(ステップS101)、車両12の走行上限速度及び上限加速度がこれらの閾値を超えないように当該車両12を制御する(ステップS106)。なお、上記閾値A及びaは、一例として無制限及び0.3Gにそれぞれ設定されている。
【0073】
これに対して、ステップS401で肯定判断されると、すなわち、車室内14に車両後方側へ向けられた車椅子24が有ると判断されると、ECU52は、車両12の走行上限速度をA及び上限加速度をa-αに決定し(ステップS402)、車両12の走行上限速度及び上限加速度がこれらの閾値を超えないように当該車両12を制御する(ステップS106)。なお、上記閾値A及びa-αは、一例として無制限及び0.2Gにそれぞれ設定されている。
【0074】
また、ステップS3で否定判断された場合、ECU52は、カメラ40からの映像信号に基づいて車室内14に車両後方側へ向けられた車椅子24が有るか否かを判断する(ステップS403)。
【0075】
ステップS403で否定判断されると、すなわち、車室内14に車両後方側へ向けられた車椅子24が無いと判断されると、ECU52は、車両12の走行上限速度をB及び上限加速度をbに決定し(ステップS102)、車両12の走行上限速度及び上限加速度がこれらの閾値を超えないように当該車両12を制御する(ステップS106)。なお、上記閾値B及びbは、一例として30km/h及び0.1Gにそれぞれ設定されている。
【0076】
これに対して、ステップS403で肯定判断されると、すなわち、車室内14に車両後方側へ向けられた車椅子24が有ると判断されると、ECU52は、車両12の走行上限速度をB及び上限加速度をb-βに決定し(ステップS404)、車両12の走行上限速度及び上限加速度がこれらの閾値を超えないように当該車両12を制御する(ステップS106)。なお、上記閾値B及びb-βは、一例として30km/h及び0.08Gにそれぞれ設定されている。
【0077】
また、ステップS4で否定判断された場合、ECU52は、カメラ40からの映像信号に基づいて車室内14に車両後方側へ向けられた車椅子24が有るか否かを判断する(ステップS405)。
【0078】
ステップS405で否定判断されると、すなわち、車室内14に車両後方側へ向けられた車椅子24が無いと判断されると、ECU52は、車両12の走行上限速度をC及び上限加速度をcに決定し(ステップS103)、車両12の走行上限速度及び上限加速度がこれらの閾値を超えないように当該車両12を制御する(ステップS106)。なお、上記閾値C及びcは、一例として20km/h及び0.1Gにそれぞれ設定されている。
【0079】
これに対して、ステップS405で肯定判断されると、すなわち、車室内14に車両後方側へ向けられた車椅子24が有ると判断されると、ECU52は、車両12の走行上限速度をC及び上限加速度をc-γに決定し(ステップS406)、車両12の走行上限速度及び上限加速度がこれらの閾値を超えないように当該車両12を制御する(ステップS106)。なお、上記閾値C及びc-γは、一例として20km/h及び0.08Gにそれぞれ設定されている。
【0080】
以上説明した車両12の制御を行うことにより、車両後方側へ向けられた車椅子24の乗員P1の姿勢が車両12の加速時に乱れることを抑制することができる。なお、車室内14に車両後方側へ向けられた車椅子24が有ると判断された場合にのみ上限加速度を制限するようにしてもよい。また、車椅子24が車椅子固定装置30によって車両12に固定されていない場合に上限加速度を制限するように構成してもよい。
【0081】
(車両の走行中にシートベルトの装着や車椅子の固定が解除された場合の制御について)
ところで、車両12の走行中にシートベルト34の装着や車椅子24の固定が解除されると、シートベルト34による乗員P1の拘束性能が発揮できないことや車椅子24が車室内14で移動することが考えられる。以下、この点を考慮した車両12の制御及び警告信号の出力について説明する。
【0082】
図1、
図3及び
図11に示されるように、ECU52は、車両12の走行中に車椅子固定検出スイッチ32及びシートベルト装着検出スイッチ38からの信号に基づいて、車椅子24が車椅子固定装置30によって車両12に固定されていると共にシートベルト34が車椅子24に着座した乗員P1に装着されているか否かを判断する(ステップS501)。
【0083】
ステップS501で肯定判断されると、すなわち、車椅子24が車椅子固定装置30によって車両12に固定されていると共に、シートベルト34が車椅子24に着座した乗員P1に装着されていると判断されると、ECU52は処理を終了する。
【0084】
ステップS501で否定判断されると、すなわち、車椅子24が車椅子固定装置30によって車両12に固定されていない、或いは、シートベルト34が車椅子24に着座した乗員P1に装着されていない、或いは、車椅子24が車椅子固定装置30によって車両12に固定されていない状態かつシートベルト34が車椅子24に着座した乗員P1に装着されていないと判断されると、ECU52は、第4の警告信号を出力し(ステップS502)、車両12を減速させる(ステップS503)。また、第4の警告信号の出力によって、警告灯42が点灯すると共にブザー44が鳴り、乗員P1に車椅子24の固定やシートベルト34の装着が促される。なお、警告灯42が点灯した後にブザー44がなるように構成してもよい。さらに、第4の警告信号の出力によって、ハザードランプ48(
図2参照)が点滅する。これにより、後続車の乗員等の車両12の外側の人に注意を促すことができる。
【0085】
また、ECU52は、ステップS503で減速を開始した後の所定の時間の経過後に、再び車椅子24が車椅子固定装置30によって車両12に固定されていると共にシートベルト34が車椅子24に着座した乗員P1に装着されているか否かを判断する(ステップS504)。
【0086】
ステップS504で肯定判断されると、すなわち、車椅子24が車椅子固定装置30によって車両12に固定されていると共に、シートベルト34が車椅子24に着座した乗員P1に装着されていると判断されると、ECU52は、第4の警告信号の出力を停止すると共に車両12の減速を止めて(ステップS505)、処理を終了する。
【0087】
ステップS504で否定判断されると、すなわち、車椅子24が車椅子固定装置30によって車両12に固定されていない、或いは、シートベルト34が車椅子24に着座した乗員P1に装着されていない、或いは、車椅子24が車椅子固定装置30によって車両12に固定されていない状態かつシートベルト34が車椅子24に着座した乗員P1に装着されていないと判断されると、ECU52は、第4の警告信号の出力を継続する(ステップS502)と共に車両12の減速を継続させる(ステップS503)。これにより、警告灯42が継続して点灯すると共にブザー44が継続して鳴り、乗員P1に車椅子24の固定やシートベルト34の装着が促される。また、ハザードランプ48(
図2参照)が継続して点滅する。これにより、後続車の乗員等の車両12の外側の人に引き続き注意を促すことができる。
【0088】
(自動運転と手動運転とを切替え可能な車両を考慮した制御について)
図12には、運転席66の乗員P2が運転操作をすることなく走行することが可能な自動運転と、運転席66の乗員P2が運転操作をすることにより走行することが可能な手動運転と、を切替え可能な車両68が示されている。
【0089】
ここで、自動運転と手動運転とを切替え可能な車両68の場合、運転席66の乗員P2が、手動運転時に車椅子24の乗員P1に車椅子24の固定やシートベルト34の着用を促すことができることに加えて、運転席66の乗員P2が車両の走行速度や加速度を調節することができる。そのため、車両68が手動運転で走行している場合においては、
図5を用いて説明した車両12の制御(走行上限速度や上限加速度の制限する制御)をせずに
図6を用いて説明した制御(警告信号の出力)のみを行ってもよい。なお、運転席66の乗員P2が車両68に乗車しないで当該車両68が自動運転で走行する場合においては、前述の
図5~
図7、
図10を用いて説明した制御を行えばよい。
【0090】
また、
図13に示されるように、運転席66の乗員P2が車両68に乗車しない場合であっても、乗務員P3が車両68に乗車する場合、当該乗務員P3が、自動運転時に車椅子24の乗員P1に車椅子24の固定やシートベルト34の着用を促すことができる。そのため、車両68が自動運転で走行している場合でかつ乗務員P3が車両68に乗車しいている場合においては、
図5を用いて説明した車両12の制御(走行上限速度や上限加速度の制限する制御)をせずに
図6を用いて説明した制御(警告信号の出力)のみを行ってもよい。
【0091】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形及び組み合わせて実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0092】
10 車両のインターロックシステム
12 車両
14 車室内
24 車椅子
30 車椅子固定装置
34 シートベルト
36 シートベルト装置
42 警告灯(表示部)
46 表示器(表示部)
48 ハザードランプ
52 ECU(制御部)
68 車両
P1 乗員
P3 乗務員