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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】駐車支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 99/00 20090101AFI20221213BHJP
【FI】
B60R99/00 330
B60R99/00 322
B60R99/00 351
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019171776
(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2021046174
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小原 賢治
(72)【発明者】
【氏名】シン ウチョル
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-151307(JP,A)
【文献】特開2003-58998(JP,A)
【文献】特開2006-189393(JP,A)
【文献】国際公開第2014/083830(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標駐車位置(P1)を定める少なくとも一つの物標(V21,V22)と車両(V10)との距離を検出するセンサ(11,12,13,16,17)から検出情報を取得するように構成された取得部(30)と、
前記取得部により取得された前記検出情報を用いて、前記距離が前記少なくとも一つの物標の位置をより精度良く検出するための所定の距離範囲以内であるか否かに応じて、前記目標駐車位置の検出に関する通知の態様を変えるように構成された通知制御部(30)と、を備える、
駐車支援装置。
【請求項2】
前記通知制御部は、前記距離が前記所定の距離範囲外である場合には、前記距離が前記所定の距離範囲よりも近い場合と、前記距離が前記所定の距離範囲よりも遠い場合とで、前記通知の態様を変えるように構成されている、
請求項1に記載の駐車支援装置。
【請求項3】
前記通知制御部は、前記目標駐車位置の検出に関する情報を表示によって通知するように構成されており、表示されるアイコン、表示の色、表示の透過度、表示の点滅パターンの少なくとも一つを変えることによって、前記通知の態様を変えるように構成されている、
請求項1又は2に記載の駐車支援装置。
【請求項4】
前記所定の距離範囲を動的に設定するように構成された範囲設定部(30)を備える、
請求項1~3のいずれか1項に記載の駐車支援装置。
【請求項5】
前記範囲設定部は、前記車両の外部環境、前記車両の速度、及び前記少なくとも一つの物標の駐車態様であって、前記少なくとも一つの物標は停車車両を含む駐車態様、の少なくとも一つに応じて、前記所定の距離範囲を変化させるように構成されている、
請求項4に記載の駐車支援装置。
【請求項6】
前記少なくとも一つの物標の前記車両の側方に面した端部を、前記所定の距離範囲の基準位置に設定するように構成された基準設定部(30)を備える、
請求項1~5のいずれか1項に記載の駐車支援装置。
【請求項7】
前記少なくとも一つの物標は、複数の物標を含み、
前記基準位置は、前記複数の物標の前記側方に面した端部の平均位置を、前記基準位置に設定するように構成されている、
請求項6に記載の駐車支援装置。
【請求項8】
前記少なくとも一つの物標は、停車車両、駐車枠、及び構造物の少なくとも一つを含む、
請求項1~7のいずれか1項に記載の駐車支援装置。
【請求項9】
前記少なくとも一つの物標の位置は、前記距離を検出するセンサ(12,13)と同じセンサ(12,13)によってより精度良く検出される、
請求項1~8のいずれか1項に記載の駐車支援装置。
【請求項10】
前記少なくとも一つの物標の位置は、前記距離を検出するセンサ(12,13)と異なるセンサ(11,16,17)によってより精度良く検出される、
請求項1~8のいずれか1項に記載の駐車支援装置。
【請求項11】
前記距離は、前記車両の横方向の距離である、
請求項1~10のいずれか1項に記載の駐車支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の駐車を支援する駐車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の駐車支援装置は、車両周辺を監視する周辺監視センサと、車両から障害物までの距離を検出する距離センサと、を備え、距離センサにより検出された検出情報に基づいて、駐車スペースの幅や奥行きを算出している。ここで用いられる距離センサは、障害物からの距離が所定の距離範囲内であれば、距離を正確に検出することができるが、障害物からの距離が所定の距離範囲外である場合は、距離を正確に検出することができない。
【0003】
そこで、上記駐車支援装置は、車両が駐車場に進入した際に、周辺監視センサにより障害物が検出された場合には、距離センサにより最も高い検出精度で障害物を検出できるように、車両が障害物の近傍を通過する経路を算出してドライバに提示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5083079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ドライバが、提示された経路に厳密に沿って運転することは困難である。上記駐車支援装置では、ドライバが提示された経路に厳密に沿って運転できない場合、駐車スペースを検出しづらくなるという問題がある。
【0006】
本開示の1つの局面は、駐車スペースを検出しやすくすることが可能な駐車支援装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの局面は、駐車支援装置であって、取得部(30)と、通知制御部(30)と、を備える。取得部は、目標駐車位置(P1)を定める少なくとも一つの物標(V21,V22)と車両(V10)との距離を検出するセンサ(11,12,13,16,17)から検出情報を取得するように構成される。通知制御部は、取得部により取得された検出情報を用いて、距離が少なくとも一つの物標の位置をより精度良く検出するための所定の距離範囲以内であるか否かに応じて、目標駐車位置の検出に関する通知の態様を変えるように構成される。
【0008】
本開示の1つの局面によれば、目標駐車位置を定める物標と車両との距離が検出される。そして、検出された距離が、物標の位置をより精度良く検出するための所定の距離範囲以内であるか否かに応じて、目標駐車位置の検出に関する通知の態様が変更される。よって、ドライバは、目標駐車位置を検出しやすい距離範囲以内に入っているか否かを直感的に認識して、目標駐車位置を検出しやすい距離範囲以内を走行するように運転することができる。ひいては、駐車スペースを検知しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】駐車支援システムの構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係る駐車支援処理を示すフローチャートである。
図3】第1実施形態に係るセンサにより駐車スペースを検出する様子を示す説明図である。
図4】距離範囲の基準位置の決め方を説明する図である。
図5】常温における距離範囲の中心を示す図である。
図6】高温多湿における距離範囲の中心を示す図である。
図7】低速時における距離範囲の中心を示す図である。
図8】高速時における距離範囲の中心を示す図である。
図9】晴天時における距離範囲の中心を示す図である。
図10】降雨又は降雪時における距離範囲の中心を示す図である。
図11】並列駐車モードにおける距離範囲の中心を示す図である。
図12】縦列駐車モードにおける距離範囲の中心を示す図である。
図13】物標から遠すぎることを示す表示の第1例である。
図14】適正な位置を走行していることを示す表示の第1例である。
図15】物標に近すぎることを示す表示の第1例である。
図16】物標から遠すぎることを示す表示の第2例である。
図17】適正な位置を走行していることを示す表示の第2例、第3例、第4例である。
図18】物標に近すぎることを示す表示の第2例である。
図19】物標から遠すぎることを示す表示の第3例である。
図20】物標に近すぎることを示す表示の第3例である。
図21】物標から遠すぎることを示す表示の第4例である。
図22】物標に近すぎることを示す表示の第4例である。
図23】物標から遠すぎることを示す表示の第5例である。
図24】適正な位置を走行していることを示す表示の第5例である。
図25】物標に近すぎることを示す表示の第5例である。
図26】第2実施形態に係る駐車支援処理を示すフローチャートである。
図27】第2実施形態に係るセンサにより駐車スペースを検出する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本開示を実施するための形態を説明する。
(第1実施形態)
<1.構成>
まず、本実施形態に係る駐車支援システム100の構成について、図1を参照して説明する。駐車支援システム100は、車両V10に搭載されている。駐車支援システム100は、車両V10が駐車場に進入して駐車スペースに近づいた場合に、駐車スペースを検出して車両V10を自動で駐車させることを想定している。
【0011】
駐車支援システム100は、4台の周辺監視カメラ11と、右側方距離センサ12と、左側方距離センサ13と、温度センサ14と、湿度センサ15と、レーダ16と、前方カメラ17と、ヒューマンマシーンインターフェース(以下、HMI)50と、システムECU30と、を備える。
【0012】
4台の周辺監視カメラ11は、例えば、車両V10の前方右角、前方左角、後方右角、後方左角の4箇所に搭載されている。各周辺監視カメラ11は、光軸が路面に水平となるように搭載されており、水平方向の画角180°を撮影する。そのため、4台の周辺監視カメラ11により撮影された画像を合成すると、車両V10を中心とした周囲360°の範囲の合成画像が生成される。各周辺監視カメラ11は、撮影データをシステムECU30へ送信する。
【0013】
右側方距離センサ12は、車両V10の右側方に搭載されており、左側方距離センサ13は、車両V10の左側方に搭載されている。本実施形態では、右側方距離センサ12は、車両V10の右側方の前方と後方の2箇所に搭載されており、左側方距離センサ13は、車両V10の左側方の前方と後方の2箇所に搭載されている。右側方距離センサ12及び左側方距離センサ13は、アクティブセンサである。
【0014】
本実施形態では、右側方距離センサ12及び左側方距離センサ13は、超音波センサ(すなわち、ソナー)であり、音波を送受信して、物標までの距離を検出する。右側方距離センサ12及び左側方距離センサ13は、検出データをシステムECU30へ送信する。
【0015】
ここで、右側方距離センサ12及び左側方距離センサ13は、音波の駆動源として、メカニカル共振を起こす素子を用いる。そのため、右側方距離センサ12及び左側方距離センサ13は、音波を送信してからメカニカル共振が収まるまでの間、距離を精度良く検出できない。すなわち、右側方距離センサ12及び左側方距離センサ13は、物標までの距離が近すぎると、距離を精度良く検出できない。一方、右側方距離センサ12及び左側方距離センサ13は、物標までの距離が遠すぎると、音波が減衰するため、物標の距離を精度良く検出できない。
【0016】
よって、右側方距離センサ12及び左側方距離センサ13には、物標までの距離を精度良く検出するために物標から保たれるべき距離範囲R1が存在する。図3に示すように、距離範囲R1は、物標からの横方向の最適距離D_thの位置を中心位置ROとして、中心位置ROよりも物標に近づく方向に幅ΔD1、中心位置ROよりも物標から遠ざかる方向に幅ΔD2を有する範囲である。ここでの横方向は、車両V10の進行方向を縦方向とした場合、縦方向に直交する方向である。すなわち、横方向は、車両V10の幅方向であり、縦方向は、車両V10の長さ方向である。
【0017】
温度センサ14は、車室外の大気の温度を検出するセンサである。湿度センサ15は、車室外の大気の湿度を検出するセンサである。温度センサ14及び湿度センサ15は、車両V10の空調制御用のセンサを流用してもよい。温度センサ14及び湿度センサ15は、検出データをシステムECU30へ送信する。
【0018】
レーダ16は、例えば、車両V10の前方バンパの中央、後方バンパの左右両端に搭載されている。レーダ16は、アクティブセンサであり、例えば、レーザレーダやミリ波レーダである。レーダ16は、光やミリ波を送受信して、物標までの距離、物標の方位、物標の速度等を検出する。レーダ16は、検出データをシステムECU30へ送信する。
【0019】
前方カメラ17は、車室内のウィンドシールドの内側や前方ミラーの裏側に搭載されており、車両V10の前方を撮影する。前方カメラ17は、光軸が路面に対して20°~30°下向きに傾くように搭載されており、水平方向の画角約110°を撮影する。すなわち、前方カメラ17は、周辺監視カメラ11と比べて、車両V10近くの狭い範囲を撮影する。前方カメラ17は、撮影データをシステムECU30へ送信する。
【0020】
システムECU30は、画像処理部31と、車両入力インターフェース(以下、車両入力I/F)34と、CPU35と、メモリ36と、を備える。画像処理部31は、画像認識回路32と、画像処理IPコア33と、を備える。
【0021】
車両入力I/F34は、右側方距離センサ12、左側方距離センサ13、温度センサ14、湿度センサ15、レーダ16から検出データを受信するとともに、前方カメラ17から撮影データを受信する。そして、車両入力I/F34は、受信した各種データをCPU35へ出力する。
【0022】
画像認識回路32は、各周辺監視カメラ11から撮影データを受信して、合成画像を生成する。そして、画像認識回路32は、生成した合成画像から物標を認識し、認識結果を車両入力I/F34を介してCPU35へ出力する。
【0023】
CPU35は、メモリ36に記憶されている各種のプログラムを実行することにより、取得部、通知制御部、範囲設定部、及び基準設定部の各種機能を実現する。
CPU35は、取得した各種の検出データ及び撮影データを用いて、駐車支援処理を実行し、駐車スペースP1を定める物標までの距離が精度よく検出できる距離範囲R1を、車両V10が走行しているか否か判定する。さらに、CPU35は、車両V10が距離範囲R1を走行していないと判定した場合には、車両V10が、駐車スペースP1を定める物標に近すぎるか、物標から遠すぎるかを判定する。そして、CPU35は、判定結果をドライバに通知するために、車両入力I/F34を介して、画像処理IPコア33へ通知指令を出力する。このとき、CPU35は、判定結果に応じて、駐車スペースの検出に関する通知の態様を変化させる。すなわち、CPU35は、駐車スペースP1を定める物標までの車両の横方向の距離に基づいて、通知の態様を変化させる。なお、駐車支援処理の詳細は後述する。
【0024】
画像処理IPコア33は、CPU35からの通知指令に基づいて、ドライバが駐車スペースの検出のしやすさを直感的に理解できるような画像を生成し、生成した画像をHMI50へ出力する。なお、本実施形態では、システムECU30が駐車支援装置に相当する。
【0025】
HMI50は、車室内においてドライバが視認しやすい位置に設けられたディスプレイを含み、ドライバに情報を提示する装置である。HMI50は、画像処理IPコア33により生成された画像を表示する。HMI50は、さらにスピーカを含んでいてもよい。
【0026】
<2.処理>
次に、第1実施形態に係るシステムECU30が実行する駐車支援処理について、図2のフローチャートを参照して説明する。システムECU30は、車両V10のイグニッションがオンになると、本処理を開始する。
【0027】
まず、S10では、駐車場に進入したことを検出する。具体的には、取得した撮影データに基づいて、駐車場に進入したことを検出してもよいし、地図情報を用いて駐車場に進入したことを検出してもよい。あるいは、ドライバが、HMI50を介して駐車モードを設定したことにより、駐車場に進入したことを検出してもよい。
【0028】
次に、S20において、駐車スペースP1の検出を開始する。図3に示すように、駐車スペースP1は、少なくとも一つの物標、具体的には停車車両V21及び停車車両V22によって定められている。よって、右側方距離センサ12又は左側方距離センサ13により停車車両V21,V22の位置を検出することによって、その間の駐車スペースP1が検出される。駐車スペースP1を定める物標は、駐車スペースP1の境界を定める物標であり、停車車両に限らず、壁や塀、ガードレールなどの構造物であってもよいし、白線、ブロック、ロープなどで構成された駐車枠であってもよい。S20では、周辺監視カメラ11による撮影データ、前方カメラ17による撮影データ、レーダ16による検出データを用いて、車両V10の前方において、駐車スペースP1を定める物標の検出を開始する。
【0029】
S30では、車両V10の前方の側方に、物標が検出されたか否か判定する。S30において、物標が検出されていないと判定した場合は、S40の処理へ進み、S30において、物標が検出されていると判定した場合は、S50の処理へ進む。
【0030】
S40では、グラフィカルユーザインターフェース(以下、GUI)の表示をせず、本処理を終了する。
一方、S50では、距離範囲R1を設定する。図3に示す例では、車両V10の前方の左側に物標が検出されるため、車両V10の左側に、左側方距離センサ13の距離範囲R1を設定する。
【0031】
具体的には、まず、横方向の距離の始点となる基準位置RPを設定する。図4は、車両V10の左側に、物標として停車車両V21,V22,V23が検出されており、停車車両V21,V22,V23の車両V10の左側方に面した端部(すなわち、右側端部)の位置RP1,RP2,RP3の位置が、互いに異なる例を示す。このような場合、端部の位置RP1,RP2,RP3の平均位置を結んだ線を、基準位置RPに設定する。
【0032】
そして、基準位置RPから横方向の最適距離D_thだけ右側に離れた位置を中心位置ROに設定し、中心位置ROに対して左側に幅ΔD1を有し、中心位置ROに対して右側に幅ΔD2を有する距離範囲R1を設定する。幅ΔD1と幅ΔD2とは同じ値でもよいし、異なる値でもよい。ここで、基準位置RPや中心位置ROについては、点列などで表してもよいし、線形近似や多項式で表されるような線で扱ってもよい。
【0033】
ここで、超音波センサの特性により、車両V10の外部環境や駐車場における駐車態様に応じて、検出性能が変化する。そこで、距離範囲R1を動的に設定する。
具体的には、超音波センサは、気温が常温のときと比べて、高温多湿のときは、音波が伝搬しにくくなるため、検出性能が低下する。そこで、図5及び図6に示すように、常温の場合には、横方向の距離D_thaを最適距離D_thに設定するのに対して、高温多湿の場合には、横方向の距離D_thaよりも短い距離D_thbを、最適距離D_thに設定する。
【0034】
また、超音波センサは、車両V10の車速が低速のときと比べて、高速のときは、検出性能が低下する。超音波センサでは、伝搬速度の遅い音波を使用するため、数10ms間隔でしか距離を検出できない。そのため、例えば、車速が30km/hである場合、30-50cm間隔でしか距離を検出できない。特に、後述する並列駐車モードの場合、1台の停車車両までの距離を数点でだけでしか検出できない。そのため、各検出点における検出精度を上げることが望ましい。そこで、図7及び図8に示すように、車速が低速の場合には、横方向の距離D_thcを最適距離D_thに設定するのに対して、車速が高速の場合には、距離D_thcよりも短い横方向の距離D_thdを、最適距離D_thに設定する。
【0035】
また、超音波センサは、晴天のときと比べて、降雨時や降雪時には、音波が伝搬しにくくなるため、検出性能が低下する。そこで、図9及び図10に示すように、晴天の場合には、横方向の距離D_theを最適距離D_thに設定するのに対して、降雨時又は降雪時には、距離D_theよりも短い横方向の距離D_thfを、最適距離D_thに設定する。なお、降雨時又は降雪時か否かは、例えば、ワイパーの動作の有無によって判定する。
【0036】
また、超音波センサは、停車車両V21,V22が縦列駐車モードで駐車している時と比べて、停車車両V21,V22が並列モードで駐車している時には、停車車両V21,V22のグリル等により音波が反射するため、検出性能が低下する。そこで、図11及び図12に示すように、並列駐車モードの場合には、横方向の距離D_thgを最適距離D_thに設定するのに対して、縦列駐車モードの場合には、距離D_thgよりも長い横方向の距離D_thhを、最適距離D_thに設定する。
【0037】
なお、並列駐車モードは、図11に示すように、車体の長手方向が車両V10の進行方向に直交するように、車両V10の進行方向に車両を並べて駐車するモードである。また、縦列駐車モードは、図12に示すように、車体の長手方向が車両V10の進行方向に沿うように、車両V10の進行方向に車両を並べて駐車するモードである。
【0038】
システムECU30は、ドライバによりHMI50を介して入力された駐車モードを取得してもよいし、撮影データから停車車両V21,V22の幅や駐車枠を検出して、駐車モードを判定してもよい。
【0039】
次に、S60では、図3に示すように、車両V10から物標までの横方向の距離Dを算出する。具体的には、周辺監視カメラ11による撮影データ、前方カメラ17による撮影データ、レーダ16による検出データを用いて、基準位置RPから車両V10の左側面までの距離Dを算出する。
【0040】
続いて、S70では、S60において算出した距離Dが、最適距離Dth-幅ΔD1よりも小さいか否か判定する。S60において、距離Dが、最適距離Dth-幅ΔD1よりも小さいと判定された場合には、S80の処理へ進む。S80では、車両V10の側方における車両V10と物標との距離が、距離範囲R1から外れており、距離範囲R1よりも近いと判定する。その後、S120の処理へ進む。
【0041】
一方、S70において、距離Dが、最適距離Dth-幅Δ1以上と判定された場合には、S90の処理へ進む。S90では、距離Dが、最適距離Dth+幅ΔD2よりも大きいか否か判定する。
【0042】
S90において、距離Dが、最適距離Dth+幅ΔD2よりも大きいと判定された場合には、S100の処理へ進む。S100では、車両V10の側方における車両V10と物標との距離が、距離範囲R1から外れており、距離範囲R1よりも遠いと判定する。その後、S120の処理へ進む。
【0043】
一方、S90において、距離Dが、最適距離Dth+幅ΔD2以下判定された場合には、S110の処理へ進む。S110では、車両V10の側方における車両V10と物標との距離が、距離範囲R1内に入っており、適切であると判定する。その後、S120の処理へ進む。
【0044】
S120では、S80、S100、及びS110での判定に応じて、GUI表示を行う。すなわち、ドライバが、距離範囲R1に入っていることを直感的に理解できる画像、又は、距離範囲R1から外れていることと、距離範囲R1内に入るためのハンドルの操作方向とが直感的に理解できる画像を、HMI50に表示させる。詳しくは、画像において、表示されるアイコン、表示の色、表示の透過度、表示の点滅パターンの少なくとも一つを変化させることによって、駐車スペースP1の検出に関する情報を通知する。以下に、具体的な表示例を説明する。
【0045】
[表示の第1例]
図13図15に示すように、放射アイコンI10を表示することによって、駐車スペースP1の検出に関する情報を通知する。放射アイコンI10は、超音波の放射を模式的に示すような記号である。車両V10の左側に距離範囲R1を設定した場合は、車両V10を示す図の左側に、放射アイコンI10を表示する。そして、放射アイコンI10の色を、距離Dが、距離範囲R1よりも近いか、距離範囲R1内か、距離範囲R1よりも遠いかによって、変化させる。図13図15では、放射のアイコンI10の色の違いを、ハッチングの違いで示している。図13は、距離Dが距離範囲R1よりも遠い場合の表示を示し、図14は、距離Dが距離範囲R1内の場合の表示を示す。図15は、距離Dが距離範囲R1よりも近い場合の表示を示す。
【0046】
[表示の第2例]
図16図18に示すように、異なるアイコンを表示することによって、駐車スペースP1の検出に関する情報を通知する。図16に示すように、距離Dが距離範囲R1よりも遠い場合には、車両V10の表示とともに、左向きの矢印アイコンI20を表示させる。すなわち、距離範囲R1に近づく向きの矢印アイコンI20を表示させる。また、図17に示すように、距離Dが距離範囲R1内の場合には、車両V10の表示とともに、強度アイコンI30を表示させる。強度アイコンI30は、3本の円弧を有するアイコンである。また、図18に示すように、距離Dが距離範囲R1よりも近い場合には、車両V10の表示とともに、右向きの矢印アイコンI40を表示させる。
【0047】
[表示の第3例]
図19及び図20に示すように、強度アイコンI30と矢印アイコンI20,I30との組み合わせによって、駐車スペースP1の検出に関する情報を通知する。図19に示すように、距離Dが距離範囲R1よりも遠い場合には、車両V10の表示とともに、強度アイコンI30を点滅表示させ、さらに、左向きの矢印アイコンI20を表示させる。また、図20に示すように、距離Dが距離範囲R1よりも近い場合には、車両V10の表示とともに、強度アイコンI30を点滅表示させ、さらに、右向きの矢印アイコンI40を表示させる。距離Dが距離範囲R1内の場合は、第2例と同じ表示でよい。
【0048】
[表示の第4例]
図21及び図22に示すように、強度アイコンI30の表示本数と、矢印アイコンI20,I30との組み合わせによって、駐車スペースP1の検出に関する情報を通知する。強度アイコンI30の表示本数は、距離Dが距離範囲R1から外れている度合が小さいほど、多く表示させる。例えば、距離Dが距離範囲R1内の場合は、強度アイコンI30の表示本数を最大の3本にし、距離Dが距離範囲R1から外れている場合は、外れている度合に応じて、表示本数を2本、1本、0本のいずれかにする。
【0049】
図21に示すように、距離Dが距離範囲R1よりも遠く、距離範囲R1から外れている度合が大きい場合には、強度アイコンI30の表示本数を0本にし、左向きの矢印アイコンI20を表示させる。また、図22に示すように、距離Dが距離範囲R1よりも近く、距離範囲R1から外れている度合が比較的小さい場合には、強度アイコンI30の表示本数を1本にし、右向きの矢印アイコンI40を表示させる。距離Dが距離範囲R1内の場合は、第2例と同じ表示でよい。
【0050】
[表示の第5例]
図23図25に示すように、車両V10の表示の透過度と矢印アイコンI20,I40との組み合わせによって、駐車スペースP1の検出に関する情報を通知する。図23に示すように、距離Dが距離範囲R1よりも遠い場合には、車両V10の表示の透過度を高くして表示を薄くするとともに、左向きの矢印アイコンI20を表示する。また、図24に示すように、距離Dが距離範囲R1内の場合には、車両V10の表示の透過度を低くして、濃く表示させる。また、図25に示すように、距離Dが距離範囲R1よりも近い場合には、車両V10の表示の透過度を高くして表示を薄くするとともに、右向きの矢印アイコンI40を表示する。なお、車両V10の表示の透過度を変化させる代わりに、車両V10の色を変化させてもよい。この場合、放射アイコンI10のように、車両V10の色を3通りに変化させることによって、矢印アイコンI20,I40を表示させる必要がない。
【0051】
<3.効果>
以上説明した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)駐車スペースP1を定める物標と車両V10との車両V10の横方向における距離Dが検出される。そして、検出された横方向の距離Dが、物標の位置をより精度良く検出するための距離範囲R1以内か否かに応じて、駐車スペースP1の検出に関する通知の態様が変更される。よって、ドライバは、駐車スペースP1を検出しやすい距離範囲R1以内に入っているか否かを直感的に認識して、距離範囲R1以内を走行するように運転することができる。ひいては、駐車スペースP1を検出しやすくすることができる。
【0052】
(2)距離Dが距離範囲R1よりも近い場合と、距離Dが距離範囲R1よりも遠い場合とで、通知の態様が変更される。よって、ドライバは、距離範囲R1に近づくためのハンドル操作を直感的に認識して、距離範囲R1以内を走行するように運転することができる。
【0053】
(3)ドライバは、HMI50に表示されるアイコンや、表示の色、表示の透過度、表示の点滅パターンを視認することによって、距離範囲R1と現在の車両V10の位置との関係を、直感的に認識することができる。
【0054】
(4)距離範囲R1を動的に設定することによって、距離範囲R1において物標の位置を高精度に検出することができる。
(5)車両V10の外部環境又は駐車態様に応じて、距離範囲R1を変化させる。これにより、車両V10の外部環境や駐車態様によらず、距離範囲R1へ移動することによって、右側方距離センサ12又は左側方距離センサ13により物標の位置を高精度に検出することができる。
【0055】
(6)物標の端部を基準位置RPにして、距離範囲R1が設定される。よって、距離範囲R1内へ移動することにより、物標の端部の位置を高精度に検出することができる。ひいては、駐車スペースP1を高精度に検出することができる。
【0056】
(7)複数の物標の端部の位置が異なる場合には、端部の平均位置を基準位置RPとして、距離範囲R1が設定される。よって、複数の物標の端部の位置が異なる場合でも、距離範囲R1へ移動することにより、複数の物標の端部の位置を高精度に検出することができる。ひいては、複数の物標の間の駐車スペースP1を高精度に検出することができる。
【0057】
(8)物標として、停車車両、駐車枠、及び構造物を検出することにより、停車車両の間の駐車スペースP1、駐車枠で囲まれた駐車スペースP1、停車車両や構造物の間の駐車スペースP1を検出することができる。
【0058】
(9)周辺監視カメラ11、レーダ16、前方カメラ17による検出データ及び撮影データから、駐車スペースP1を定める物標までの横方向の距離Dを算出した後、位置の検出精度がより高い右側方距離センサ12又は左側方距離センサ13により、駐車スペースP1を定める物標の位置を検出することができる。
【0059】
(第2実施形態)
<1.第1実施形態との相違点>
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0060】
上述した第1実施形態に係る車支援システム100は、右側方距離センサ12及び左側方距離センサ13以外に、物標のおおよその位置を検出することが可能な、他のセンサ(すなわち、周辺監視カメラ11、レーダ16、前方カメラ17)を備えていた。すなわち、第1実施形態に係る駐車支援システム100は、他のセンサの検出データや撮影データから物標のおおよその横方向の距離を検出して距離範囲R1を設定し、車両V10を距離範囲R1内へ移動させていた。これにより、右側方距離センサ12又は左側方距離センサ13による、物標までの高精度な位置の検出を可能にしていた。
【0061】
これに対し、第2実施形態に係る駐車支援システム100は、右側方距離センサ12及び左側方距離センサ13以外に、物標のおおよその横方向の距離を検出するためのデータを取得することが可能な、他のセンサを備えていない点で、第1実施形態と相違する。
【0062】
<2.処理>
次に、第2実施形態に係るシステムECU30が実行する駐車支援処理について、図26のフローチャートを参照して説明する。システムECU30は、車両V10のイグニッションがオンになると、本処理を開始する。
【0063】
まず、S200では、S10の処理と同様の処理を実行する。
続いて、S210では、駐車スペースP1の検出を開始し、S220において、車両V10の側方に位置する物標を検出する。本実施形態では、駐車支援システム100は、右側方距離センサ12及び左側方距離センサ13以外に、物標のおおよその横方向の距離を検出するためのデータを取得することが可能な、他のセンサを備えていない。そのため、図27に示すように、物標が車両V10の前方に位置している場合は、物標までの横方向の距離Dを検出することができない。車両V10が物標に近づいて、物標が車両V10の側方に位置すると、物標までの横方向の距離Dを検出できるようになる。
【0064】
その後、S230~S300では、S50~S120と同様の処理を実行する。すなわち、本実施形態に係る駐車支援システム100では、右側方距離センサ12又は左側方距離センサ13により検出された検出データから、物標のおおよその横方向の距離Dを検出して距離範囲R1を設定し、車両V10を距離範囲R1内へ移動させる。そして、さらに、右側方距離センサ12又は左側方距離センサ13により、物標の位置を高精度に検出する。
【0065】
<3.効果>
以上説明した第2実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果(1)~(8)に加え、以下の効果が得られる。
【0066】
(10)右側方距離センサ12又は左側方距離センサ13により検出された検出データを用いて、駐車スペースP1を定める物標までのおおよその横方向の距離Dを検出し、距離範囲R1を設定する。その後、距離範囲R1へ移動することにより、駐車スペースP1を定める物標の位置をより高い精度で検出することができる。
【0067】
(他の実施形態)
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0068】
(a)上記実施形態では、気温、湿度、天候といった外部環境の情報を、温度センサ14、湿度センサ15、及びワイパーの動作の有無から得ていたが、外部環境の情報は他から得てもよい。例えば、天気予報から外部環境の情報を得てもよいし、道路交通情報通信システムから通信によって外部環境の情報を得てもよい。
【0069】
(b)本開示に記載のシステムECU30及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載のシステムECU30及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載のシステムECU30及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されてもよい。システムECU30に含まれる各部の機能を実現する手法には、必ずしもソフトウェアが含まれている必要はなく、その全部の機能が、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0070】
(c)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0071】
(d)上述した駐車支援装置の他、当該駐車支援装置を構成要素とするシステム、当該駐車支援装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、駐車支援方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0072】
11…周辺監視カメラ、12…右側方距離センサ、13…左側方距離センサ、16…レーダ、17…前方カメラ、30…システムECU、P1…駐車スペース、R1…距離範囲、V10…車両、V21,V22,V23…停車車両。
図1
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