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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】運転席用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/2338 20110101AFI20221213BHJP
   B60R 21/203 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B60R21/2338
B60R21/203
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019178711
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021054249
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 瞳
(72)【発明者】
【氏名】河村 功士
(72)【発明者】
【氏名】堀田 昌志
(72)【発明者】
【氏名】石井 力
(72)【発明者】
【氏名】三浦 渉
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-298119(JP,A)
【文献】特開2003-276546(JP,A)
【文献】特開2018-122844(JP,A)
【文献】特開2019-112043(JP,A)
【文献】米国特許第05358273(US,A)
【文献】特開2018-167681(JP,A)
【文献】特開2005-271736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールが、操舵時の前下がりに傾斜した回転中心軸から離れた外周縁側に、操舵時に把持する操舵部を備えて、該操舵部が、上方から見て、左右方向の長さ寸法より、前後方向の長さ寸法を小さくする構成として、
前記ステアリングホイールにおける前記操舵部の回転中心軸付近のボス部に搭載される運転席用エアバッグ装置であり、
作動時に、運転者を保護可能に前記ボス部の搭載部位から展開膨張して、前記操舵部の上面側に支持されるエアバッグを備え、
前記エアバッグの膨張完了時の外周壁が、
膨張用ガスを流入させるための流入用開口の周縁であって、前記搭載部位への取付座、を中央付近に配設させて、前記操舵部の外周縁の前後左右を越える外形寸法として、前記操舵部の上面側に支持される車体側壁部と、
運転者を受け止め可能とするように、前記車体側壁部の外周縁から前記流入用開口の上方を塞ぐように延びる運転者側壁部と、
を備えて構成され、
前記エアバッグが、膨張完了時に、前記運転者側壁部の中央付近を、略鉛直方向に沿わせるように、前記操舵部の上面側における前部側の厚さ寸法を、後部側の厚さ寸法より大きくして膨張を完了させる構成とする運転席用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、膨張完了時の前記車体側壁部の後部側に、前記操舵部の上面側から下方に突出して前記操舵部の後面を係止し、膨張完了時の前記エアバッグの前部側の前方移動を規制する係止膨張部を配設させており、
前記エアバッグの膨張完了時の前記係止膨張部が、
前記操舵部の後端の上面側から後面に当接するように、底面側を上方に配置させ、かつ、高さ方向に沿った分割面を前面側に設けた半割りの略円錐形状として、
前面側に、前記操舵部の後面の上縁側から下縁側にかけて延びて、前記操舵部の後面の下縁側を係止可能な係止面を配設させていることを特徴とする運転席用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグの外周壁が、前記運転者側壁部を形成する運転者側基布と、前記車体側壁部を形成する車体側基布と、から形成され、
前記車体側基布が、前側の前側基布と、該前側基布の後方側に連結されて、前記取付座の部位を有した後側基布と、を備えて構成され、
前記後側基布が、
平らに展開した状態として、略円形状とするとともに、
後縁から前方に延びる三角状の後側切込み部と、前記取付座の部位より後方側の左右両縁から、それぞれ、左右方向に沿って中央側に延びるU字状切込み部と、を備えて、
前記後側切込み部の左右方向で対向する縁相互を、縫合して、前記後側切込み部を塞ぎ、かつ、前記U字状切込む部の前後方向で対向する縁相互を、縫代を前記エアバッグの外表面側に配置させつつ、縫合して、前記U字状切込み部を塞いで形成される構成として、
左右の塞がれた前記U字状切込み部の前縁側における外縁側相互を結ぶ直線部位が、前記ボス部への搭載状態での膨張完了時の前記エアバッグにおける前記操舵部の後端付近に対応する位置として、設定されていることを特徴とする請求項に記載の運転席用エアバッグ装置。
【請求項3】
ステアリングホイールが、操舵時の前下がりに傾斜した回転中心軸から離れた外周縁側に、操舵時に把持する操舵部を備えて、該操舵部が、上方から見て、左右方向の長さ寸法より、前後方向の長さ寸法を小さくする構成として、
前記ステアリングホイールにおける前記操舵部の回転中心軸付近のボス部に搭載される運転席用エアバッグ装置であり、
作動時に、運転者を保護可能に前記ボス部の搭載部位から展開膨張して、前記操舵部の上面側に支持されるエアバッグを備え、
前記エアバッグの膨張完了時の外周壁が、
膨張用ガスを流入させるための流入用開口の周縁であって、前記搭載部位への取付座、を中央付近に配設させて、前記操舵部の外周縁の前後左右を越える外形寸法として、前記操舵部の上面側に支持される車体側壁部と、
運転者を受け止め可能とするように、前記車体側壁部の外周縁から前記流入用開口の上方を塞ぐように延びる運転者側壁部と、
を備えて構成され、
前記エアバッグが、膨張完了時に、前記運転者側壁部の中央付近を、略鉛直方向に沿わせるように、前記操舵部の上面側における前部側の厚さ寸法を、後部側の厚さ寸法より大きくして膨張を完了させる構成とする運転席用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、膨張完了時の前記車体側壁部の後部側に、前記操舵部の上面側から下方に突出して前記操舵部の後面を係止し、膨張完了時の前記エアバッグの前部側の前方移動を規制する係止膨張部を配設させており、
前記エアバッグの膨張完了時の後端側の内部における左右方向の中央付近に、前記運転者側壁部と前記車体側壁部とを連結する長短2種類の長尺テザーと短尺テザーとが、配設されており、
前記長尺テザーと前記短尺テザーとが、
前記車体側壁部との連結部位と、前記運転者側壁部との連結部位と、を略前後方向に沿うように配設させるとともに、
前記車体側壁部への連結部位を、前記ボス部への搭載状態での膨張完了時の前記エアバッグにおける前記操舵部の後端付近に配置させて、
前記運転者側壁部への連結部位として、前記車体側壁部への連結部位より共に後方側に配置させつつ、前記短尺テザーの連結部位を、前記長尺テザーの連結部位より後方側に配置させて、配設され、
前記エアバッグの膨張完了時の前記係止膨張部が、
前記長尺テザーと前記短尺テザーとを連結させた前記車体側壁部への連結部位間の離隔距離より、前記運転者側壁部への連結部位間の離隔距離を長くした離隔距離の寸法差と、前記長尺テザーと前記短尺テザーとの長さの寸法差とにより、
前記操舵部の後端を、後面側から下面側に掛けて巻き込んで係止するように、形成されることを特徴とする運転席用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記エアバッグの前記長尺テザーと前記短尺テザーとが、左右方向の中央付近の両側で、開口を設けて、相互に分離して、二つずつ配設されていることを特徴とする請求項に記載の運転席用エアバッグ装置。
【請求項5】
前記エアバッグの外周壁が、前記運転者側壁部を形成する運転者側基布と、前記車体側壁部を形成する車体側基布と、から形成され、
前記運転者側基布が、前後方向の中央付近より後方側で、かつ、前記長尺テザーの連結部位より前方側の位置で、左右方向に沿う折目を付けて上下方向に重ねてなるタック部を備えて、外周縁を、前記車体側基布の外周縁に縫合されることを特徴とする請求項3又は4に記載の運転席用エアバッグ装置。
【請求項6】
前記エアバッグが、前記車体側壁部の左右方向の中央付近の後部側の外表面に、前記車体側壁部の後端付近の位置と、前記流入用開口より後方で、かつ、前記短尺テザーの前記車体側壁部への連結部位より前方側の位置と、を連結する外テザー、を備え、
該外テザーが、単体での前記エアバッグの膨張完了時の前記車体側壁部の後端側を、前記流入用開口側に曲げて接近させる長さ寸法として、設定されていることを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の運転席用エアバッグ装置。
【請求項7】
前記長尺テザーが、
外周縁を前記運転者側壁部と前記車体側壁部との内周面に結合させて、前記エアバッグを後端側と前記流入用開口側との二室に区画する隔壁として、配設されるとともに、
該隔壁に、前記エアバッグの後端側への膨張用ガスの流入を許容し、かつ、逆流を規制する逆止弁を、設けて、
配設されていることを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の運転席用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングホイールにおける操舵部の回転中心軸付近のボス部に搭載される運転席用エアバッグ装置に関し、特に、操舵部が、左右方向の寸法より前後方向の寸法を小さくしたステアリングホイール(すなわち、異形ハンドル、換言すれば、従来の略円環状の操舵部と異なる例えば略四角環状等の異形操舵部、を備えたステアリングホイールともいえる)に好適に搭載される運転席用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、異形ハンドルとしたステアリングホイールに搭載される運転席用エアバッグ装置では、エアバッグが、操舵部の上面側に支持される車体側壁部と、運転者を受け止める運転者側壁部とを備えて構成されて、車体側壁部に、操舵部の前面側や後面側に当接される支持面部を突設させているものが知られている(例えば、特許文献1)。このエアバッグでは、膨張完了後、運転者側壁部の前部側で運転者を受け止める場合には、操舵部の前面側に、前方側の支持面部を当接させて、運転者側壁部の前部側の下方向への落ち込みを防止して、運転者を、異形ハンドルにおける前後方向の寸法を小さくした操舵部の上面側に支持されたエアバッグの運転者側壁部によって、円滑に受け止めることができた。また、このエアバッグでは、膨張完了後、運転者側壁部の後部側で運転者を受け止める場合には、操舵部の後面側に、後方側の支持面部を当接させて、運転者側壁部の後部側の下方向への落ち込みを防止して、前後方向の寸法を小さくした操舵部の上面側に支持される構成としていても、運転者側壁部によって、運転者を円滑に受け止めることができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-122844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の異形ハンドルとしたステアリングホイールに搭載する運転席用エアバッグ装置において、膨張完了時のエアバッグが、広い面とした運転者側壁部により、運転者の頭部から胸部付近までを、均等に受け止めようとする場合には、運転者側壁部の中央付近を略鉛直方向に沿わせるように、操舵部の上面側での厚さ寸法として、後部側より前部側を厚くする形状とすることが好ましい。しかし、このような形状のエアバッグでは、操舵部の前面側に当接される前支持面部を備え、操舵部の後面側に当接される後支持面部を備えていても、前進移動する運転者を受け止める際、車体側壁部が、操舵部の上面に沿って前方側へずれようとすると、前支持面部が、操舵部の前面側から前方に離れ、後支持面部が、操舵部の後面側を上側に滑って、エアバッグの後部を操舵部の後端の上面側からずらしてしまう虞れが生ずる。この場合、エアバッグのずれが大きくなれば、操舵部の後部に、直接、運転者の腹部を干渉させてしまったり、あるいは、運転者の顎を運転者側壁部に接触させた状態で前方移動することに伴ない、頭部を後方回転させて、運転者の首に負担をかける虞れを生じさせて、好ましくない。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、異形ハンドルとしたステアリングホイールに搭載されるエアバッグが、前部側を厚くするように膨張する構成としていても、膨張完了時に、運転者を好適に受け止めて保護することができる運転者用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る運転者用エアバッグ装置では、ステアリングホイールが、操舵時の前下がりに傾斜した回転中心軸から離れた外周縁側に、操舵時に把持する操舵部を備えて、該操舵部が、上方から見て、左右方向の長さ寸法より、前後方向の長さ寸法を小さくする構成として、
前記ステアリングホイールにおける前記操舵部の回転中心軸付近のボス部に搭載される運転席用エアバッグ装置であり、
作動時に、運転者を保護可能に前記ボス部の搭載部位から展開膨張して、前記操舵部の上面側に支持されるエアバッグを備え、
前記エアバッグの膨張完了時の外周壁が、
膨張用ガスを流入させるための流入用開口の周縁であって、前記搭載部位への取付座、を中央付近に配設させて、前記操舵部の外周縁の上下左右を越える外形寸法として、前記操舵部の上面側に支持される車体側壁部と、
運転者を受け止め可能とするように、前記車体側壁部の外周縁から前記流入用開口の上方を塞ぐように延びる運転者側壁部と、
を備えて構成され、
前記エアバッグが、膨張完了時に、前記運転者側壁部の中央付近を、略鉛直方向に沿わせるように、前記操舵部の上面側における前部側の厚さ寸法を、後部側の厚さ寸法より大きくして膨張を完了させる構成とする運転席用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、膨張完了時の前記車体側壁部の後部側に、前記操舵部の上面側から下方に突出して前記操舵部の後面を係止し、膨張完了時の前記エアバッグの前部側の前方移動を規制する係止膨張部、を配設させていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る運転席用エアバッグ装置では、膨張を完了させたエアバッグが前進移動する運転者を受け止めて、操舵部の上面に沿って車体側壁部が前方側へずれようとしても、係止膨張部が、操舵部の後面を係止して、車体側壁部の前方移動を規制する。そのため、運転者側壁部は、その中央付近を略鉛直方向に沿わせた状態で、運転者の頭部から胸部付近を、広い面で、部分的な反力を発生させずに、均等に受け止めることができる。そして勿論、操舵部が、左右方向の長さ寸法より前後方向の長さ寸法を短くする形状としていても、車体側壁部が、操舵部の上面上で前方にずれないことから、エアバッグの前端側が、操舵部の上面に、直接、支持されていなくとも、エアバッグの前部自体が、厚さ寸法を厚く膨張させて変位量を抑制できて、前方に落ち込むことなく、操舵部の前端の上面側で、エアバッグの前部側が支持され、また、エアバッグの後部側でも、係止膨張部に連なる膨張部位が、操舵部の後端側を覆うことから、下方に落ち込むこと無く、操舵部の後端の上面側で、エアバッグの後部側が支持されて、操舵部の後端における運転者の腹部との干渉も生じさせない。そのため、操舵部が前後方向に短くとも、エアバッグは、安定して、操舵部の上面で支持されて、前進移動する運転者を好適に受け止めることができる。
【0008】
したがって、本発明に係る運転席用エアバッグ装置では、異形ハンドルとしたステアリングホイールに搭載されるエアバッグが、前部側を厚くするように膨張する構成としていても、膨張完了時に、係止膨張部によってずれを防止されて、運転者を好適に受け止めて保護することができる。
【0009】
そして、本発明に係る運転席用エアバッグ装置では、前記エアバッグの膨張完了時の前記係止膨張部は、
前記操舵部の後端の上面側から後面に当接するように、底面側を上方に配置させ、かつ、高さ方向に沿った分割面を前面側に設けた半割りの略円錐形状として、
前面側に、前記操舵部の後面の上縁側から下縁側にかけて延びて、前記操舵部の後面の下縁側を係止可能な係止面、を配設させていてもよい。
【0010】
このような構成では、膨張完了時のエアバッグにおける係止膨張部の前面側の係止面が、操舵部の後面の上縁側から下縁側にかけて延びて、操舵部の後面の下縁側を係止することから、車体側壁部の操舵部の上面上での前方側へのずれ移動だけでなく、エアバッグの後部の上方側への浮き上がりも、規制できて、運転者受止時に、エアバッグの前部側における取付座を中心とする前方回転の回転モーメントが作用しても、操作部の後端の下縁側を係止する係止面が対抗して、エアバッグの前部側の下方への落ち込みを的確に防止できる。
【0011】
この場合、前記エアバッグの外周壁が、前記運転者側壁部を形成する運転者側基布と、前記車体側壁部を形成する車体側基布と、から形成され、
前記車体側基布が、前側の前側基布と、該前側基布の後方側に連結されて、前記取付座の部位を有した後側基布と、を備えて構成されていれば、
前記後側基布は、
平らに展開した状態として、略円形状とするとともに、
後縁から前方に延びる三角状の後側切込み部と、前記取付座の部位より後方側の左右両縁から、それぞれ、左右方向に沿って中央側に延びるU字状切込み部と、を備えて、
前記後側切込み部の左右方向で対向する縁相互を、縫合して、前記後側切込み部を塞ぎ、かつ、前記U字状切込み部の前後方向で対向する縁相互を、縫代を前記エアバッグの外表面側に配置させつつ、縫合して、前記U字状切込み部を塞いで形成される構成として、
左右の塞がれた前記U字状切込み部の前縁側における外縁側相互を結ぶ直線部位が、前記ボス部への搭載状態での膨張完了時の前記エアバッグにおける前記操舵部の後端付近に対応する位置として、設定されていることが望ましい。
【0012】
このような構成では、車体側壁部における左右のU字状切込み部の縫合部位が、車体側壁部において、U字状の開口幅分の隆起部を、左右方向に沿って形成することとなり、この隆起部は、外縁側を、後側切込み部の縫合部位により、後方側に引っ張られ、逆に、左右のU字状切込み部の間の中央部が、前方に張り出す状態となる。そのため、車体側壁部では、左右のU字状切込み部の縫合部位の外縁側相互を結ぶ直線部位を折目として、左右のU字状切込み部の間の中央部を、取付座の近傍に折り重ねる状態とすることができ、このような左右のU字状切込み部の間の中央部の先端側は、エアバッグの膨張時、操舵部の下方側において、取付座の流入用開口側に接近するように膨張する。そして、左右のU字状切込み部の縫合部位の外縁側相互を連結する直線部位が、操舵部の後端付近に配置させる構成としていることから、エアバッグが膨張を完了させれば、左右のU字状切込み部の間の中央部の先端側が、操舵部の後端における後面側から下面側に当接して、操舵部の後端を下面側から係止する係止膨張部の頂部を形成することとなる。すなわち、左右のU字状切込み部の外縁側から左右のU字状切込み部の間における中央部の先端側にかける部位を、操舵部の後端を下面側から係止可能として、半割り円錐形状とした係止膨張部の前面側の係止面とすることができる。したがって、膨張した係止膨張部が、前面側を係止面とした半割り円錐形状とする立体形状としていても、単に、平面状の車体側基布に、所定の3か所に、所定形状の切込み部を設けて、塞ぐだけで、簡単に、形成することができる。
【0013】
また、本発明に係る運転席用エアバッグ装置では、前記エアバッグの膨張完了時の後端側の内部における左右方向の中央付近に、前記運転者側壁部と前記車体側壁部とを連結する長短2種類の長尺テザーと短尺テザーとが、配設されて、
前記長尺テザーと前記短尺テザーとが、
前記車体側壁部との連結部位と、前記運転者側壁部との連結部位と、を略前後方向に沿うように配設させるとともに、
前記車体側壁部への連結部位を、前記ボス部への搭載状態での膨張完了時の前記エアバッグにおける前記操舵部の後端付近に配置させて、
前記運転者側壁部への連結部位として、前記車体側壁部への連結部位より共に後方側に配置させつつ、前記短尺テザーの連結部位を、前記長尺テザーの連結部位より後方側に配置させて、配設され、
前記エアバッグの膨張完了時の前記係止膨張部が、
前記長尺テザーと前記短尺テザーとを連結させた前記車体側壁部への連結部位間の離隔距離より、前記運転者側壁部への連結部位間の離隔距離を長くした離隔距離の寸法差と、前記長尺テザーと前記短尺テザーとの長さの寸法差とにより、
前記操舵部の後端を、後面側から下面側に掛けて巻き込んで係止するように、形成されてもよい。
【0014】
このような構成では、エアバッグの後部側に設ける長短2種類のテザーにより、操舵部の後端を、後面側から下面側に掛けて巻き込んで係止する係止膨張部を、簡便に、エアバッグの後部側に形成できる。すなわち、運転者側壁部における長尺テザーと短尺テザーとの連結部位間が、車体側壁部側の長尺テザーと短尺テザーとの連結部位間より長いことから、エアバッグの膨張時、大きく膨らみ、長尺テザーより短い長さの短尺テザーにおける運転者側壁部への連結部位側を、短尺テザーにおける車体側壁部への連結部位側を回転中心として、後方側に回転させる状態となり、その回転挙動が、エアバッグの後端側を係止膨張部として、操舵部の後端を、後面側から下面側に掛けて巻き込んで係止する動作を生じる。また、このような構成では、単に、エアバッグ内に、テザーを配設するだけで、エアバッグの容量を増加させずに、係止膨張部を形成することができる。
【0015】
この場合、前記エアバッグの前記長尺テザーと前記短尺テザーとが、左右方向の中央付近の両側で、開口を設けて、相互に分離して、二つずつ配設されていれば、エアバッグの後端側の係止膨張部に対して、左右両側の長尺テザーと短尺テザーとの間の開口を経て、前後方向の中央付近に配置される流入用開口からの膨張用ガスを、円滑に、先端(頂部)まで、流すことができる。
【0016】
さらに、長短2種類のテザーを利用する場合、前記エアバッグの外周壁が、前記運転者側壁部を形成する運転者側基布と、前記車体側壁部を形成する車体側基布と、から形成されていれば、
前記運転者側基布が、前後方向の中央付近より後方側で、かつ、前記長尺テザーの連結部位より前方側の位置で、左右方向に沿う折目を付けて上下方向に重ねてなるタック部を備えて、外周縁を、前記車体側基布の外周縁に縫合されることが望ましい。
【0017】
このような構成では、運転者側壁部が、左右方向の中央付近では、タック部の解消によって、前後方向の膜長を長くできることから、操舵部の後端を後面側から下面側に掛けて巻き込んで係止する係止膨張部が、一層、先端側を繰り出すことができて、操舵部の後端を係止する係止力を向上させることができる。
【0018】
さらに、長短2種類のテザーを利用する場合、前記エアバッグが、前記車体側壁部の左右方向の中央付近の後部側の外表面に、前記車体側壁部の後端付近の位置と、前記取付座より後方で、かつ、前記短尺テザーの前記車体側壁部への連結部位より前方側の位置と、を連結する外テザー、を備え、
該外テザーが、単体での前記エアバッグの膨張完了時の前記車体側壁部の後端側を、前記流入用開口側に曲げて接近させる長さ寸法として、設定されていてもよい。
【0019】
このような構成では、操舵部の後端を後面側から下面側に掛けて巻き込んで係止する係止膨張部が、外テザーにより、一層、屈曲することとなり、操舵部の後端を巻き込み易くなって、係止力を向上させることができる。また、外テザーにより、係止膨張部の車体側壁部側が、係止膨張部の運転者側壁部側から離すように、引っ張られることから、エアバッグの係止膨張部の先端側における車体側壁部と運転者側壁部との間まで、円滑に、膨張用ガスを流すことができて、安定した係止力を発揮できる膨張完了形状まで、係止膨張部を、迅速に、膨張させることができる。
【0020】
また、長短2種類のテザーを利用する場合、前記長尺テザーが、
外周縁を前記運転者側壁部と前記車体側壁部との内周面に結合させて、前記エアバッグを後端側と前記流入用開口側との二室に区画する隔壁として、配設されるとともに、
該隔壁に、前記エアバッグの後端側への膨張用ガスの流入を許容し、かつ、逆流を規制する逆止弁を、設けて、配設されていてもよい。
【0021】
このような構成では、長尺テザー兼用の隔壁が、逆止弁により、係止膨張部側の内圧を低下させないように、作用することから、係止膨張部が、膨張完了形状を維持できて、操舵部の後端を高い係止力で係止する状態を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態における運転者用エアバッグ装置を搭載したステアリングホイールの概略平面図である。
図2】第1実施形態のエアバッグ装置を搭載したステアリングホイールの概略縦断面図であり、図1のII-II部位に対応する。
図3】第1実施形態のエアバッグ装置のエアバッグを単独で膨張させた状態の運転者側壁部側から見た概略斜視図である。
図4】第1実施形態のエアバッグ装置のエアバッグを単独で膨張させた状態の車体側壁部側から見た概略斜視図である。
図5】第1実施形態のエアバッグ装置のエアバッグの構成材料を示す平面図である。
図6】第1実施形態のエアバッグ装置のエアバッグを平らに展開させた状態の平面図と底面図である。
図7図6のVII-VII部位の概略断面図である。
図8】第1実施形態のエアバッグ装置の作動時を示す側面図である。
図9】第2実施形態のエアバッグ装置の作動時を示す側面図である。
図10】第2実施形態のエアバッグ装置に使用するエアバッグの構成材料を示す平面図である。
図11】第2実施形態のエアバッグ装置に使用するエアバッグにおける運転者側基布にタック部を設ける状態を説明する図である。
図12】第2実施形態のエアバッグ装置のエアバッグを平らに展開させた状態の平面図と底面図である。
図13図12のXIII-XIII部位の概略断面図である。
図14】第3実施形態のエアバッグ装置の作動時を示す側面図である。
図15】第3実施形態のエアバッグ装置に使用するエアバッグの構成材料を示す平面図である。
図16】第3実施形態のエアバッグ装置の作動時の作動完了前と作動完了時とを示す側面図である。
図17】第4実施形態のエアバッグ装置の作動時を示す側面図である。
図18】第4実施形態のエアバッグ装置に使用するエアバッグの構成材料を示す平面図である。
図19】第4実施形態のエアバッグ装置に使用するエアバッグの逆止弁の作動時を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態の運転席用エアバッグ装置10は、図1,2に示すように、ステアリングホイールWの操舵時における前下がりに傾斜した回転中心軸C0付近のボス部Bの上面側に搭載される。ステアリングホイールWは、回転中心軸C0から離れた外周縁側に、操舵時に把持する操舵部Rを備えている。操舵部Rは、操舵し易いように、上面RP側を、水平方向を基準として、前部Rf側より後部Rb側を低くし、また、異形操舵部とするように、上方から見て、左右方向の長さ寸法LBより、前後方向の長さ寸法LLを小さくするような略四角環状としている。詳しくは、操舵部Rは、左部Rlと右部Rrとが、前後方向に沿って延びる棒状とし、前部Rfと後部Rbとが、左右両縁側を棒状としているものの、左右方向の中央部位は、先端側を半円弧状の曲面として、前後方向に突出する板状として、ボス部Bに連結されている。
【0024】
なお、ステアリングホイールWは、操舵時に把持する操舵部R、及び、操舵部Rの中央に配置されるボス部B、を有したステアリングホイール本体1と、ボス部Bの上部に配設されるエアバッグ装置10と、を備えて構成される。
【0025】
また、本明細書でのエアバッグ装置10、エアバッグ20、ステアリングホイールW等の上下・左右・前後の方向は、特に断らなければ、ステアリングホイールWを車両のステアリングシャフトSSにナットN止めして接続させた状態における車両の直進操舵時を基準として、上下方向は、そのステアリングシャフトSSの軸方向に沿った上下方向に対応し、左右方向は、そのステアリングシャフトSSの軸直交方向の車両の左右方向に対応し、前後方向は、そのステアリングシャフトSSの軸直交方向の車両の前後方向に対応している。
【0026】
さらに、ステアリングホイール本体1は、操舵部Rとボス部Bとを連結するように配設される芯金2と、操舵部Rの芯金2付近を覆うウレタン等からなる被覆層3と、を備えて構成されている。芯金2は、操舵部Rに配置されるリング芯金部2aと、ボス部Bに配置されてステアリングシャフトSSと接続されるボス芯金部2bと、を備えて構成される。リング芯金部2aとボス芯金部2bとは、図示しない連結芯金部により連結されている。なお、ボス部B付近の上面側の被覆層3は、後述するように、エアバッグ装置10のエアバッグカバー17として、機能している。
【0027】
エアバッグ装置10は、エアバッグ20と、エアバッグ20に膨張用ガスを供給するインフレーター15と、折り畳まれたエアバッグ20を覆ってボス部Bの上面側に配置される合成樹脂製のエアバッグカバー17と、エアバッグ20とインフレーター15とを保持して収納する金属製のバッグホルダ11と、を備えて構成されている。バッグホルダ11は、図示しないブラケットを利用して、ボス芯金部2bに連なる図示しない連結芯金部に連結される部位でもある。
【0028】
なお、エアバッグ20内には、底面側の内部に、エアバッグ20をバッグホルダ11に取付固定するための板金製の四角環状としたリテーナ18が配設されている。リテーナ18は、四隅に図示しないボルトを下方へ突設させた四角環状として、中央に、インフレーター15の後述する本体部15aを挿入させる開口18aを配設させている。
【0029】
インフレーター15は、円柱状の本体部15aを備え、本体部15aの外周面には、四角環状のフランジ部15cが突設されている。フランジ部15cには、リテーナ18の図示しないボルトを貫通させる貫通孔が形成されている。本体部15aのフランジ部15cより上方の上部側には、膨張用ガスGを吐出させる複数のガス吐出口15bが配設されている。
【0030】
エアバッグカバー17は、被覆層3から延設されて配設され、折り畳まれて収納されたエアバッグ20の上方を覆う天井壁部17aと、天井壁部17aの下面から筒状に延び、折り畳まれたエアバッグ20の外周を覆う側壁部17dと、を備えて構成されている。天井壁部17aには、膨張するエアバッグ20に押されて前後両側に開くドア部17bが、配設されている。各ドア部17bは、それぞれ、前後方向の縁にヒンジ部を設け、かつ、周囲に、上方から見て略H字状の薄肉の破断予定部17cを設けて構成されている。エアバッグカバー17の側壁部17dは、バッグホルダ11における後述する側壁支持部13に、図示しないリベット等を利用して、結合されている。
【0031】
バッグホルダ11は、板金製として、折り畳まれたエアバッグ20とインフレーター15とを保持し、さらに、図示しない連結ブラケットを利用して、エアバッグ装置10をステアリングホイール本体1側に取り付ける板金製の部材として構成されている。バッグホルダ11は、ベースプレート部12と、ベースプレート部12の外周縁から上下両側に突出する側壁支持部13と、を備えて構成されている。ベースプレート部12の中央には、エアバッグ20の流入用開口24(図3,4参照)に対応して、インフレーター15の本体部15aを下方から挿入可能な略円形の挿入孔12aが、開口し、挿入孔12aの周縁には、リテーナ18の図示しない各ボルトを貫通させる貫通孔が形成され、挿入孔12aの周縁におけるボルト用の貫通孔を設けた部位は、リテーナ18を利用して、エアバッグ20とインフレーター15とを取り付けるための取付座12bとなる。
【0032】
エアバッグ20は、図1,2の二点鎖線や図3,4,8に示すように、前部20a側の厚さ寸法Tfを、後部20b側の厚さ寸法Tbより、大きくした略円板状の膨張完了形状としている。エアバッグ20の外周壁21は、図3,4,8に示すように、膨張用ガスGを流入させるための流入用開口24を設けた取付座25を中央付近に設けて、操舵部Rの外周縁の上下左右を越える外形寸法として、エアバッグ20の膨張完了時に操舵部Rの上面RP側に支持される車体側壁部22と、車体側壁部22の外周縁23に対して外周縁30を連ならせて、流入用開口24の上方を塞いで、車体側壁部22と対向するように配設される略円形状の運転者側壁部29と、を備えて構成されている。
【0033】
なお、車体側壁部22の円形に開口した流入用開口24の周縁は、バッグホルダ11への取付座25としており、取付座25には、流入用開口24の周囲に放射状に、リテーナ18の図示しないボルトを貫通させる4つの貫通孔25aが形成されている(図3,4参照)。取付座25は、内側面をリテーナ18の下面側に当接されて、バッグホルダ11の取付座12bに固定される略四角環状の部位としている。
【0034】
さらに、エアバッグ20の膨張完了時の車体側壁部22の後部側には、図2~4に示すように、下方へ突出する係止膨張部33が配設されている。係止膨張部33は、図8に示すように、操舵部Rの上面RP側から下方に突出して操舵部Rの後面Rbpを係止し、膨張完了時のエアバッグ20の前部20a側の前方移動を規制する。
【0035】
詳しくは、第1実施形態のエアバッグ20の係止膨張部33は、操舵部Rの後端Rbeの上面RP側から後面Rbpに当接するように、底面側を上方に配置させ、かつ、高さ方向に沿った分割面を前面33a側に設けた半割りの略円錐形状として、前面33a側に、操舵部Rの後面Rbpの上縁eu側から下縁ed側にかけて延びて、操舵部Rの後面Rbpの下縁ed側を係止可能な係止面34、を配設させている。
【0036】
また、運転者側壁部29は、中央付近を、運転者Dの頭部DHや胸部DBを受け止める受止面31として、車両搭載状態のエアバッグ20の膨張完了時には、略鉛直方向に沿うように、配設させる。
【0037】
なお、エアバッグ20内には、エアバッグ20の前部20a側を後部20b側より厚くするように、テザー38が配設されている。テザー38は、運転者側壁部29に連結される4本の上側部38aと、車体側壁部22の取付座25側に連結される下側部38bと、を備えて構成されている(図5,8参照)。下側部38bは、流入用開口24の周縁に結合される中央部38baから、放射状に延びる2本ずつの舌片38bb,38bcを備えて、各舌片38bb,38bcの上端38bdが、上端38aaを運転者側壁部29に結合させた各上側部38aの下端38ab、と結合されている。但し、下側部38bの前部側の左右2本の舌片38bbが、後部側の左右2本の舌片38bcより、長さを長くしていることから、膨張完了時のエアバッグ20は、前部20a側を後部20b側より厚くして、膨張することとなる。
【0038】
エアバッグ20の外周壁21を形成する基布は、図5に示すように、運転者側壁部29を形成する運転者側基布53と、車体側壁部22を形成する車体側基布40と、から形成されている。さらに、車体側基布40は、前側の前側基布50と、前側基布50の後方側に連結されて、取付座25の部位を有した後側基布42と、を備えて構成されている。前側基布50は、エアバッグ20の前部20a側の厚さ寸法Tfを大きくできるように、配設されている。これらの基布42,50,53は、ポリアミドやポリエステル等の合成繊維製のバッグ用基布から形成されている。
【0039】
運転者側基布53は、略円形状として、相互に前後で略反転させたような弓形状の前部53aと後部53bとを備えて構成されている。なお、実施形態では、後部53b側が、前部53aより、前後方向の張り出しを大きくしている。
【0040】
車体側基布40の後側基布42は、図5,6に示すように、平らに展開した状態として、略円形状としている。但し、後側基布42は、図5に示す予備基布41から形成されるもので、予備基布41には、後縁43bから前方に延びる三角状の後側切込み部47と、流入用開口24の部位より後方側の左右両縁から、それぞれ、左右方向に沿って中央側に延びるU字状切込み部44(L,R)と、を備えて構成されている。そして、図6に示す後側基布42は、後側切込み部47の左右方向で対向する縁47a,47a相互が、前端47bまで縫合されて、後側切込み部47が縫合部48により塞がれ、また、U字状切込み部44L,44Rの前後方向で対向する縁44a,44a相互が、縫代44cをエアバッグ20の外表面側に配置させつつ、先端44bまで縫合されて、U字状切込み部44L,44Rが縫合部45により塞がれて、形成されている。
【0041】
なお、後側基布42(車体側基布40)を平らに展開した状態では、左右の塞がれたU字状切込み部44L,44Rの前縁44af側における外縁部45a側相互を結ぶ直線部位LFが、ボス部Bへの搭載状態での膨張完了時のエアバッグ20における操舵部Rの後端Rbeに対応する位置となるように、U字状切込み部44(L,R)における対向縁44aの前縁44afの配置位置が、設定されている。換言すれば、外縁部45a側相互を結ぶ直線部位LFにおける取付座25(流入用開口24)からの距離LXが、ボス部Bへの搭載状態での膨張完了時のエアバッグ20の取付座25から操舵部Rの後端Rbeまでの実質的な距離、に対応するように、設定されている。
【0042】
そして、このような縫合部45,45,48を設けて形成された後側基布42では、左右のU字状切込み部44L,44Rの縫合部45,45が、U字状の開口幅W1分の隆起部46を、左右方向に沿って形成することとなり、この隆起部46は、外縁部45a側を、後側切込み部47の縫合部48により、後方側に引っ張られ、逆に、左右のU字状切込み部44L,44Rの間の中央部42bcが、前方に張り出す状態となる。そのため、縫合部45,48を設けた後側基布42では、図6,7に示すように、左右のU字状切込み部44L,44Rの縫合部45の外縁部45a相互を結ぶ直線部位LFを折目36として、左右のU字状切込み部44L,44Rの間の中央部42bcを、取付座25の近傍に折り重ねる状態とすることができる。すなわち、このような左右のU字状切込み部44L,44Rの間における取付座25側に折り重ねられた状態の中央部42bcの先端35側は、エアバッグ20の膨張時、操舵部Rの下方側において、取付座25の流入用開口24側に接近するように膨張することとなって(図2の二点鎖線や図4参照)、この中央部42bc側、すなわち、隆起部46側が、エアバッグ20の膨張時に、係止膨張部33を形成することとなり、隆起部46の取付座25側の面46aが、係止膨張部33の前面33a側となって、操舵部Rの後端Rbeを係止する係止面34となる。
【0043】
また、縫合部45,48を設けた後側基布42は、取付座25より前方側の弓形状の前部42aと、取付座25を有する弓形状の後部42bと、を備えて、外周縁43における前部42a側の弧部43aが、後述する前側基布50の弧部51bと結合(縫合)され、後部42b側の弧部43bが、運転者側基布53の後部53b側の弧部54bと結合(縫合)される。
【0044】
前側基布50は、前後に反転させた弓形状の前部50aと後部50bとを配設させた略円形状として、外周縁51の前後の縁を弧部51a,51bとしている。なお、弧部51aは、膨張完了時のエアバッグ20の外周壁21の状態としては、前縁側となり、運転者側基布53の外周縁54における前縁側の弧部54aと結合(縫合)される部位としており、弧部54aと同じ外形形状としている。また、前側基布50の後側の弧部51bは、膨張完了時のエアバッグ20の外周壁21の状態としては、前側基布50の後縁側となり、既述したように、車体側基布40の後側基布42の外周縁43における前縁側の弧部43aと結合(縫合)される部位として、弧部43aと同じ外形形状としている。
【0045】
さらに、前側基布50は、左右方向の幅寸法を、他の運転者側基布53や後側基布42と同様としているものの、左右両端を結ぶ直線C1を基準とする前後の幅寸法F1,F2として、前側の幅寸法F1を後側の幅寸法F2より大きくている。そのため、左右両端を結ぶ直線C1に折目52を付けて二つ折りすると、前側の前部53aは、後側の後部53bからはみ出る部位を有することとなる(図6,7参照)。
【0046】
さらに、エアバッグ20には、車体側壁部22の前側基布50の部位に、ベントホール27が形成されている。
【0047】
なお、図5に示す符号60の部材は、流入用開口24を有した取付座25を補強する補強布であり、符号61の部材は、U字状切込み部44(L,R)の縫合部45を補強する補強布である。
【0048】
エアバッグ20の製造は、流入用開口24や貫通孔25aを設けていない状態として、縫合部45,48を設けた後側基布42に、補強布61とテザー38の下側部38bの中央部38baとを縫合して、流入用開口24と貫通孔25aとを孔開け加工して形成する。また、ベントホール27を設けていない状態の前側基布50に、ベントホール用の補強布(図符号省略)を縫合して、ベントホール27を孔開け加工して形成する。運転者側基布53には、各テザー38の上側部38aの上端38aaを、縫合する。そして、前側基布50の後縁側の弧部54bと、後側基布42の前縁側の弧部43aを縫合して、車体側基布40を形成する。ついで、車体側基布40と運転者側基布53との外表面側相互を合わせて、後側基布42の後縁側の弧部43bと運転者側基布53の後縁側の弧部54bとを縫合するとともに、前側基布50の前縁側の弧部51aと、運転者側基布53の前縁側の弧部54aとを縫合すれば、エアバッグ20の外周壁21を形成することができる。
【0049】
その後、縫代が外表面側に露出しないように、流入用開口24を利用して、エアバッグ20を反転させ、流入用開口24を利用して、テザー38の上側部38aの下端38abと下側部38bの各舌片38bb,38bcとを引き出して縫合により結合して、それぞれの結合部位をエアバッグ20内に収納すれば、エアバッグ20の製造を完了させることができる。
【0050】
このように製造したエアバッグ20は、前側基布50に折目52を付け、かつ、後側基布42に折目36を付けて、図6,7に示すように、車体側壁部22と運転者側壁部29とを平らに展開して、折り畳む。なお、折り畳み前には、予め、エアバッグ20内の取付座25に、リテーナ18を配置させて、リテーナの図示しない各ボルトを、貫通孔25aを経て、エアバッグ20外へ突出させておく。
【0051】
そして、エアバッグ20を折り畳んで、図示しないラッピング材により包み、折り畳んだエアバッグ20とインフレーター15とをバッグホルダ11に保持させ、エアバッグカバー17と連結させるとともに、バッグホルダ11の図示しないブラケットをボス芯金部2b側に連なる図示しない連結芯金部に連結させれば、ステアリングホイールWと一体的に、エアバッグ装置10を組み立てることができて、その後、ステアリングホイールWをステアリングシャフトSSに取り付ければ、ステアリングホイールWとともにエアバッグ装置10を、車両へ搭載することができる。
【0052】
なお、エアバッグ装置10の車両への搭載時には、インフレーター15に、作動信号入力用の図示しないリード線を結線することとなる。
【0053】
車両への搭載後、インフレーター15に作動信号が入力されれば、インフレーター15は、膨張用ガスGをガス吐出口15bから吐出させることから、折り畳まれたエアバッグ20は、膨張用ガスGを流入させて膨張し、図示しないラッピング材を破断させ、さらに、エアバッグカバー17の天井壁部17aのドア部17bを押し開き、ドア部17bの開いた開口から突出して、ボス部Bの上方から操舵部Rの上面RPを覆うように、展開膨張することととなる(図1,2の二点鎖線、図8参照)。
【0054】
そして、実施形態のエアバッグ装置10では、図8に示すように、膨張を完了させたエアバッグ20が前進移動する運転者Dを受け止めて、操舵部Rの上面RPに沿って車体側壁部22が前方側へずれようとしても、係止膨張部33が、操舵部Rの後面Rbpを係止して、車体側壁部22の前方移動を規制する。そのため、運転者側壁部29は、その中央付近の受止面31を略鉛直方向に沿わせた状態で、運転者Dの頭部DHから胸部DB付近を、広い面で、部分的な反力を発生させずに、均等に受け止めることができる。そして勿論、操舵部Rが、左右方向の長さ寸法LBより前後方向の長さ寸法LLを短くする形状としていても、車体側壁部22が、操舵部Rの上面RP上で前方にずれないことから、エアバッグ20の前端20aa側が、操舵部Rの上面RPに、直接、支持されていなくとも、エアバッグ20の前部20a自体が、厚さ寸法Tfを厚く膨張させて変位量を抑制できて、前方に落ち込むことなく、操舵部Rの前端Rfeの上面RP側で、エアバッグ20の前部20a側が支持され、また、エアバッグ20の後部20b側でも、係止膨張部33に連なる膨張部位20baが、操舵部Rの後端Rbe側を覆うことから、後端Rbeの運転者Dの腹部DSとの干渉を防止し、かつ、下方に落ち込むこと無く、操舵部Rの後端Rbeの上面RP側で、エアバッグ20の後部20b側が支持される。そのため、操舵部Rが前後方向に短くとも、エアバッグ20は、安定して、操舵部Rの上面RPで支持されて、前進移動する運転者Dを好適に受け止めることができる。
【0055】
したがって、第1実施形態の運転席用エアバッグ装置10では、異形ハンドルとしたステアリングホイールWに搭載されるエアバッグ20が、前部20a側を厚くするように膨張する構成としていても、膨張完了時に、係止膨張部33によってずれを防止されて、運転者Dを好適に受け止めて保護することができる。
【0056】
そして、第1実施形態では、エアバッグ20の膨張完了時の係止膨張部33が、操舵部Rの後端Rbeの上面RP側から後面Rbpに当接するように、底面側を上方に配置させ、かつ、高さ方向に沿った分割面を前面33a側に設けた半割りの略円錐形状として、前面33a側に、操舵部Rの後面Rbpの上縁eu側から下縁ed側にかけて延びて、操舵部Rの後面Rbpの下縁ed側を係止可能な係止面34、を配設させている。
【0057】
そのため、第1実施形態では、膨張完了時のエアバッグ20における係止膨張部33の前面33a側の係止面34が、操舵部Rの後面Rbpの上縁eu側から下縁ed側にかけて延びて、操舵部Rの後面Rbpの下縁ed側を係止することから、車体側壁部22の操舵部Rの上面RP上での前方側へのずれ移動だけでなく、エアバッグ20の後部20bの上方側への浮き上がりも、規制できることから、運転者Dの受止時に、エアバッグ20の前部20a側における取付座25を中心とする前方回転の回転モーメントが作用しても、操舵部Rの後端Rbeの下縁ed側を係止する係止面34が対抗して、エアバッグ20の前部20a側の下方への落ち込みを的確に防止できる。
【0058】
そして、第1実施形態では、エアバッグ20の外周壁21が、運転者側壁部29を形成する運転者側基布53と、車体側壁部22を形成する車体側基布40と、から形成され、車体側基布40が、前側の前側基布50と、前側基布50の後方側に連結されて、取付座25の部位を有した後側基布42と、を備えて構成されている。そして、後側基布42が、平らに展開した状態として、略円形状とするとともに、後縁から前方に延びる三角状の後側切込み部47と、取付座25の部位より後方側の左右両縁から、それぞれ、左右方向に沿って中央側に延びるU字状切込み部44(L,R)と、を備えて、後側切込み部47の左右方向で対向する縁47a相互を、縫合して、後側切込み部47を塞ぎ、かつ、U字状切込み部44L,44Rの前後方向で対向する縁44a相互を、縫代44cをエアバッグ20の外表面側に配置させつつ、縫合して、U字状切込み部4L,44Rを塞いで形成される構成としている。そして、左右の塞がれたU字状切込み部44L,44Rの前縁44af側における外縁部45a側相互を結ぶ直線部位LFが、ボス部Bへの搭載状態での膨張完了時のエアバッグ20における操舵部Rの後端Rbe付近に対応する位置として、設定されている。
【0059】
そのため、第1実施形態では、図4,6に示すように、車体側壁部22における左右のU字状切込み部44L,44Rの縫合部45が、車体側壁部22において、U字状の開口幅W1分の隆起部46を、左右方向に沿って形成することとなり、この隆起部46は、外縁部45a側を、後側切込み部47の縫合部48により、後方側に引っ張られ、逆に、左右のU字状切込み部44L,44Rの間の中央部42bcが、前方に張り出す状態となる。そのため、車体側壁部22では、左右のU字状切込み部44L,44Rの縫合部45位の外縁部45a,45a側相互を結ぶ直線部位LFを折目36として、左右のU字状切込み部44L,44Rの間の中央部42bcを、取付座25の近傍に折り重ねる状態とすることができ、このような左右のU字状切込み部44L,44Rの間の中央部42bcの先端46b側は、エアバッグ20の膨張時、操舵部Rの下方側において、取付座25の流入用開口24側に接近するように膨張する。そして、左右のU字状切込み部44L,44Rの縫合部45の外縁部45a,45a側相互を連結する直線部位LFが、操舵部Rの後端Rbe付近に配置させる構成としていることから、エアバッグ20が膨張を完了させれば、図8に示すように、左右のU字状切込み部44L,44Rの間の中央部42bcの先端46b側が、操舵部Rの後端Rbeにおける後面Rbp側から下面RD側に当接して、操舵部Rの後端Rbeを下面RD側から係止する係止膨張部33の頂部35を形成することとなる。すなわち、左右のU字状切込み部44L,44Rの外縁部45a側から左右のU字状切込み部44L,44Rの間における中央部42bcの先端46b側にかける部位を、操舵部Rの後端Rbeを下面RD側から係止可能として、半割り円錐形状の前面側の係止面34とすることができる。したがって、膨張した係止膨張部33が、前面側を係止面34とした半割り円錐形状とする立体形状としていても、単に、平面状の車体側基布40(41)に、所定の3か所に、所定形状の切込み部44L,44R,47を設けて、塞ぐだけで、簡単に、形成することができる。
【0060】
特に、縫代44cが、運転者側基布53と縫合される外縁部45a付近では、取付座25(流入用開口24)側に倒れており、隆起部46の先端46b側を取付座25側に向かわせ易い構成としており(図3,4,6参照)、エアバッグ20の膨張時、隆起部46の先端46b側、すなわち、係止膨張部33の先端35側、が、取付座25側に接近する挙動となり易く、係止膨張部33の前面34は、操舵部Rの後端Rbeを強く係止することができる。
【0061】
次に、図9に示す第2実施形態の運転席用エアバッグ装置10Aを説明すると、第2実施形態のエアバッグ装置10Aは、エアバッグ20Aが第1実施形態のエアバッグ20と構成を異ならせているだけで、第1実施形態と同じバッグホルダ、インフレーター、リテーナ、及び、エアバッグカバーを備え、第1実施形態と同じ異形ハンドルとしたステアリングホイールW(ステアリングホイール本体1)に搭載される。
【0062】
エアバッグ20Aは、第1実施形態のエアバッグ20と同様に、膨張完了時の外周壁21が、図12,13に示すように、膨張用ガスを流入させるための流入用開口24の周縁であって、搭載部位への取付座25、を中央付近に配設させて、操舵部R(図9参照)の外周縁の上下左右を越える外形寸法として、操舵部Rの上面RP側に支持される車体側壁部22Aと、運転者を受け止め可能とするように、車体側壁部22Aの外周縁23から流入用開口24の上方を塞ぐように延びる運転者側壁部29Aと、を備えて構成されている。
【0063】
勿論、このエアバッグ20Aでも、図9に示すように、膨張完了時に、運転者側壁部29Aの中央付近を、運転者の受止面31として、略鉛直方向に沿わせるように、操舵部Rの上面RP側における前部20a側の厚さ寸法Tfを、後部20b側の厚さ寸法Tbより大きくして膨張を完了させる構成としている。また、このエアバッグ20Aでも、膨張完了時の車体側壁部22Aの後部側に、操舵部Rの上面RP側から下方に突出して操舵部Rの後面Rbpを係止し、膨張完了時のエアバッグ20Aの前部20a側の前方移動を規制する係止膨張部33A、を配設させている。
【0064】
この係止膨張部33Aは、エアバッグ20Aの膨張完了時の後端20bb側の内部における左右方向の中央付近に、運転者側壁部29Aと車体側壁部22Aとを連結する長短2種類の長尺テザー71と短尺テザー75とが、配設されて、形成される。これらの長尺テザー71と短尺テザー75とは、下端71b,75b側の車体側壁部22Aとの連結部位22a,22bと、上端71a,75a側の運転者側壁部29Aとの連結部位29a,29bと、を略前後方向に沿うように配設させるとともに、車体側壁部22Aへの連結部位22a,22bを、ボス部Bへの搭載状態での膨張完了時のエアバッグにおける操舵部Rの後端Rbe付近に配置させて(図9参照)、運転者側壁部29Aへの連結部位29a,29bを、車体側壁部22Aへの連結部位22a,22bより共に後方側に配置させつつ、短尺テザー75の連結部位29bを、長尺テザー71の連結部位29aより後方側に配置させて、配設されている。
【0065】
そして、エアバッグ20Aの膨張完了時の係止膨張部33Aが、長尺テザー71と短尺テザー75とを連結させた車体側壁部22Aへの連結部位22a,22b間の離隔距離SDより、運転者側壁部29Aへの連結部位29a,29b間の離隔距離SUを長くした離隔距離の寸法差と、長尺テザー71と短尺テザー75との長さ寸法L1,L2の寸法差とにより、操舵部Rの後端Rbeを、後面Rbp側から下面RD側に掛けて巻き込んで係止するように、形成されている。すなわち、運転者側壁部29Aの連結部位29a,29b間が、車体側壁部22Aへの連結部位22a,22b間より長いことから、エアバッグ20Aの膨張時、大きく膨らみ、長尺テザー71より短い長さの短尺テザー75の上端75a側を、下端75b側を回転中心として、後方側に回転させる状態となり、その回転挙動が、エアバッグ20Aの後端20bb側を係止膨張部33Aとして、操舵部Rの後端Rbeを、後面Rbp側から下面RD側に掛けて巻き込んで係止する動作を生じさせている。特に、第2実施形態の場合、長尺テザー71と短尺テザー75との下端71b,75bの車体側壁部22Aへの連結部位22a,22bは、同じ位置として、連結部位22a,22b間の離隔距離SDをゼロとしており、一層、運転者側壁部29Aの連結部位29a,29b間が、車体側壁部22Aの連結部位22a,22b間より大きく膨らむことから、短尺テザー75の上端75a側が、下端75b側を回転中心として、後方側に大きく回転する状態となって、エアバッグ20Aの後端20bb側の係止膨張部33Aが、操舵部Rの後端Rbeを、後面Rbp側から下面RD側に掛けて、効率的に、より強く巻き込んで係止することとができる。
【0066】
また、第2実施形態では、エアバッグ20Aの長尺テザー71と短尺テザー75とが、左右方向の中央付近の両側で、開口(隙間)80を設けて、相互に分離して、二つずつ配設されている。なお、左右の長尺テザー71と短尺テザー75とは、相互の左右の離隔距離として、車体側壁部22A側の下端71b,71b間や下端75b,75b間より、運転者側壁部29A側の上端71a,71a間や上端75a,75a間を、大きくしている。
【0067】
第2実施形態のエアバッグ20Aでは、外周壁21が、図10に示すように、運転者側壁部29Aを形成する運転者側基布53Aと、車体側壁部22Aを形成する車体側基布40Aと、から形成されている。そして、運転者側基布53Aが、前後方向の中央付近より後方側で、かつ、長尺テザー71の連結部位29aより前方側の位置で、左右方向に沿う折目57,58を付けて上下方向に重ねてなるタック部56(図11参照)を備えて、外周縁54を、車体側基布40Aの外周縁40aに縫合させている。車体側基布40Aは、図10に示すように、略円形状の前側基布50Aと、取付座25を備えた後側基布42Aと、から構成されている。後側基布42Aは、第1実施形態の後側基布42と相違して、縫合部45,48で縫合するような切込み部44,47は配設されていない。そして、前側基布50Aの後部50b側の後縁側の弧部51bと後側基布42の前部42aの前縁側の弧部43aとを縫合して、車体側基布40Aが形成されている。
【0068】
エアバッグ20Aは、車体側基布40Aにテザー38の下側部38bと補強布60とを縫合して、流入用開口24や貫通孔25aを形成し、また、タック部56を設けた運転者側基布53Aに、テザー38の上側部38aを縫合するとともに、長尺テザー71と短尺テザー75との対応する端部71a,75aを縫合する。そして、運転者側基布53Aと車体側基布40Aとの外表面側相互を合わせて、外周縁54,50a相互を縫合し、縫代が外周面側に表われないように、流入用開口24を利用して、表裏を反転させる。そして、流入用開口24を利用して、テザー38の上側部38aの下端38abと下側部38bの各舌片38bb,38bcとを引き出して縫合により結合して、それぞれの結合部位をエアバッグ20内に収納し、また、長尺テザー71と短尺テザー75との下端71b,75bを、車体側基布40Aの連結部位22a,22bに連結すれば、エアバッグ20の製造を完了させることができる。
【0069】
このように製造したエアバッグ20Aは、図12に示すように、前側基布50Aに折目52を付けて、車体側壁部22と運転者側壁部29とを平らに展開して、図示しないバッグホルダを入れて、第1実施形態と同様に、折り畳んで、ステアリングホイールWに組み付けて、車両に搭載することとなる。
【0070】
この第2実施形態のエアバッグ装置10Aでも、作動時、図9に示すように、膨張用ガスを流入させて、エアバッグ20Aが膨張を完了させれば、エアバッグ20Aの後部20b側に設ける長短2種類のテザー71,75により、係止膨張部33Aが、形成され、係止膨張部33Aが、操舵部Rの後端Rbeを、後面Rbp側から下面RD側に掛けて巻き込んで係止する。そのため、この第2実施形態でも、異形ハンドルとしてのステアリングホイールWに搭載されるエアバッグ20Aが、前部20a側を厚くするように膨張する構成としていても、膨張完了時に、係止膨張部33Aによってずれを防止されて、運転者を好適に受け止めて保護することができる。
【0071】
そして、第2実施形態では、エアバッグ20Aの後部20b側に設ける長短2種類のテザー71,75により、係止膨張部33Aを、簡便に、形成できる。また、このような構成では、単に、エアバッグ20A内に、テザー71,75を配設するだけで、エアバッグ20Aの容量を増加させずに、係止膨張部33Aを形成することができる。
【0072】
また、第2実施形態では、エアバッグ20Aの長尺テザー71と短尺テザー75とが、左右方向の中央付近の両側で、開口(隙間)80を設けて、相互に分離して、二つずつ配設されている。そのため、第2実施形態では、エアバッグ20Aの後端20bb側の係止膨張部33Aに対して、左右両側の長尺テザー71,71と短尺テザー75,75との間の開口80を経て、前後方向の中央付近に配置される流入用開口24からの膨張用ガスGを、円滑に、先端(頂部)20bb(35)まで、流すことができる。
【0073】
さらに、第2実施形態では、エアバッグ20Aの外周壁21が、運転者側壁部29Aを形成する運転者側基布53Aと、車体側壁部22Aを形成する車体側基布40Aと、から形成されて、運転者側基布53Aが、前後方向の中央付近より後方側で、かつ、長尺テザー71の連結部位29aより前方側の位置で、左右方向に沿う折目57,58を付けて上下方向に重ねてなるタック部56を備えて、外周縁54を、車体側基布40Aの外周縁40aに縫合されている。
【0074】
そのため、第2実施形態では、エアバッグ20Aの膨張完了時、運転者側壁部29Aが、左右方向の中央付近では、タック部56の解消によって、前後方向の膜長を長くできることから、短尺テザー75の上端75a側の後方回転をより助長して、操舵部Rの後端Rbeを後面Rbp側から下面RD側に掛けて巻き込んで係止する係止膨張部33Aが、一層、先端35側を繰り出すことができて、操舵部Rの後端Rbeを係止する係止力を向上させることができる。
【0075】
さらに、長短2種類のテザー71,75を利用する場合、図14~16に示す第3実施形態のエアバッグ装置10Bのエアバッグ20Bのように構成してもよい。このエアバッグ装置10Bは、第1,2実施形態と同様のステアリングホイールW(ステアリングホイール本体1)に搭載されるとともに、エアバッグ20Bが、第2実施形態のエアバッグ20Aに外テザー77を配設させたものである。
【0076】
なお、エアバッグ装置10Bは、エアバッグ20Bが、外テザー77を備えてエアバッグ20Aと異ならせているだけで、エアバッグ装置10,10Aと同様に、図示しないバッグホルダ、インフレーター、リテーナ等を備えて、エアバッグ20Bも、図14,15に示すように、車体側基布40Aからなる車体側壁部22A、タック部56を形成する運転者側基布53Aからなる運転者側壁部29A、テザー38等を備えて構成されている。
【0077】
そして、外テザー77は、車体側壁部22Aの左右方向の中央付近の後部側の外表面に配置されて、一端(後端)77aを車体側壁部22Aの後端22c付近の位置に連結させ、他端(前端)77bを、取付座25より後方で、かつ、短尺テザー75の車体側壁部22Aへの連結部位22bより前方側の位置に、連結させて配設されている。さらに、この外テザー77は、長さ寸法L3を、テザー77の端部77a,77bを連結する車体側壁部22Aにおける連結部位22d,22e間の距離LXより、短くして、単体でのエアバッグ20Bの膨張完了時の車体側壁部22Aの後端22c側を、流入用開口24側に曲げて接近させる寸法として、設定されている。
【0078】
そのため、このエアバッグ装置10Bのエアバッグ20Bでは、図14に示すように、膨張完了時、操舵部Rの後端Rbeを後面Rbp側から下面RD側に掛けて巻き込んで係止する係止膨張部33Bが、外テザー77により、一層、屈曲することとなり、操舵部Rの後端Rbeを巻き込み易くなって、係止力を向上させることができる。特に、図16のA,Bに示すように、膨張途中において、外テザー77自体が、操舵部Rの後端Rbeに当接して、連結部位22d、22e間の実質的な長さを短くすることから、一層、係止膨張部33Bを、屈曲させることができる。
【0079】
また、このエアバッグ20Bでは、外テザー77により、係止膨張部33Bにおける車体側壁部22Aが、係止膨張部33Bにおける運転者側壁部29Aから離すように、引っ張られることから、エアバッグ20Bの係止膨張部33Bの先端35側における車体側壁部22Aと運転者側壁部29Aとの間まで、円滑に、膨張用ガスGを流すことができて、安定した係止力を発揮できる膨張完了形状まで、係止膨張部33Bを、迅速に、膨張させることができる。
【0080】
また、長短2種類のテザーを利用する場合、図17~19に示す第4実施形態のエアバッグ装置10Cのエアバッグ20Cのように構成してもよい。このエアバッグ装置10Cは、第1~3実施形態と同様のステアリングホイールW(ステアリングホイール本体1)に搭載されるとともに、エアバッグ20Cが、第2実施形態のエアバッグ20Aの長尺テザー71を、隔壁72兼用の長尺テザー71Cとしたものである。
【0081】
なお、エアバッグ装置10Cは、エアバッグ20Cが、長尺テザー71Cを隔壁72と兼用とした点を、エアバッグ20Aと異ならせているだけで、エアバッグ装置10,10A,10Bと同様に、図示しないバッグホルダ、インフレーター、リテーナ等を備えて、エアバッグ20Cも、図17,18に示すように、車体側基布40Aからなる車体側壁部22A、タック部56を形成する運転者側基布53Aからなる運転者側壁部29A、テザー38,75等を備えて構成されている。
【0082】
そして、長尺テザー71Cが、外周縁72aを運転者側壁部29Aと車体側壁部22Aとの内周面に結合させて、エアバッグ20Cを後端20bb側の後室83と流入用開口24側の前室82との二室に区画する隔壁72として、配設されている。さらに、隔壁72は、エアバッグ20Cの後端20bb側への膨張用ガスGの流入を許容し、かつ、逆流を規制する逆止弁74を、設けて、配設されている。
【0083】
具体的には、隔壁72は、図18に示すように、膨張完了時のエアバッグ20Cの長尺テザー71Cの配設部位の内周面の外形形状を、左右に二分した二枚の分割布73,73から形成されている。分割布73,73は、相互の中央側を、相互に縫合する中央縫合部73cとし、周囲の外縁側を、エアバッグ20Cの長尺テザー71Cの配設部位の内周面に縫合する周縁縫合部73bとしている。そして、分割布73,73の相互に縫合する中央縫合部73cの部位には、長方形状に突出する凸部73aが配設され、凸部73aの先端側を未縫合部73dとして、分割布73,73相互は、凸部73a相互の上下の縁を含めて、中央縫合部73cにより、縫合されている。凸部73aの未縫合部73dは、短尺テザー75側に突出させている。そして、逆止弁74は、開弁時の開口74aを、凸部73a,73a相互の先端側の未縫合部73dから構成しており、閉弁時は、凸部73a,73aを密着させて、開口74aを塞いでいる。すなわち、エアバッグ20Cが、流入用開口24側から流入する膨張用ガスGにより膨張する場合には、凸部73a,73aを離して、開弁した逆止弁74の開口74aから、後室83側、すなわち、短尺テザー75側のエアバッグ20Cの後端20bbの係止膨張部33C側に、膨張用ガスGを流し、係止膨張部33C側の後室83側から前室82側に膨張用ガスGが逆流しようとすると、膨張用ガスGの圧力により、凸部73a,73a相互が密着されて、逆止弁74が閉弁することとなる。
【0084】
したがって、このエアバッグ装置10Cのエアバッグ20Cでは、長尺テザー71C兼用の隔壁72が、逆止弁74により、係止膨張部33C側の内圧を低下させないように、作用することから、係止膨張部33Cが、膨張完了形状を維持できて、操舵部Rの後端Rbeを高い係止力で係止する状態を維持できる。
【符号の説明】
【0085】
10,10A,10B,10C…運転席用エアバッグ装置、20,20A,20B,20C…エアバッグ、20a…前部、20b…後部、21…外周壁、22,22A…車体側壁部、22a…(長尺テザーの)連結部位、22b…(短尺テザーの)連結部位、22c…後端、23…外周縁、24…流入用開口、25…取付座、29,29A…運転者側壁部、30…外周縁、31…(中央)受止面、33,33A,33B,33C…係止膨張部、34…係止面、35…(先端)頂部、40,40A…車体側基布、40a…外周縁、42,42A…後側基布、42bc…(U字状切込み部間の)中央部、44(L,R)…U字状切込み部、44a…対向縁、44af…前縁、44c…縫代、45…縫合部、45a…外縁部、45b…先端、47…後側切込み部、47a…対向縁、48…縫合部、50,50A…前側基布、53,53A…運転者側基布、56…タック部、57,58…折目、71,71C…長尺テザー、72…隔壁、74…逆止弁、75…短尺テザー、77…外テザー、80…開口、G…膨張用ガス、
R…操舵部、Rf…前部、Rb…後部、Rbe…後端、Rbp…後面、eu…上縁、ed…下縁、RP…上面、B…ボス部、C0…回転中心軸、W…ステアリングホイール、LL…(前後方向の)長さ寸法、LB…(左右方向の)長さ寸法、Tf…(膨張完了時の前側部の)厚さ寸法、Tb…(膨張完了時の後側部の)厚さ寸法、SD…(連結部位22a,22b間の)離隔距離、SU…(連結部位29a,29b間の)離隔距離、L1…(長尺テザーの)長さ寸法L2…(短尺テザーの)長さ寸法、L3…(外テザーの)長さ寸法、D…運転者。
図1
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