(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】蓋開閉構造
(51)【国際特許分類】
E05B 83/34 20140101AFI20221213BHJP
B60K 15/05 20060101ALI20221213BHJP
E05B 81/44 20140101ALI20221213BHJP
B60L 53/14 20190101ALN20221213BHJP
【FI】
E05B83/34
B60K15/05 B
E05B81/44
B60L53/14
(21)【出願番号】P 2019191483
(22)【出願日】2019-10-18
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】服部 猛
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0008402(US,A1)
【文献】特開平6-206457(JP,A)
【文献】実開昭61-47729(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 83/34
B60K 15/05
E05B 81/44
B60L 53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋体を基材に対して開閉動作させるリッド駆動部材と、
前記蓋体を閉状態にロック可能なロック駆動部材と、
電動アクチュエータと、
前記電動アクチュエータの駆動に伴って回転する回転体と、
前記回転体の回転により、前記ロック駆動部材を、前記蓋体が閉状態にロックされるロック位置と前記蓋体の閉状態ロックが解除されるロック解除位置との間で位置移動させる第一駆動機構と、
前記回転体の回転により、前記リッド駆動部材を、前記蓋体の閉位置と全開位置との間で位置移動させる第二駆動機構と、
を備え、
前記第二駆動機構は、前記第一駆動機構により前記ロック駆動部材が前記ロック解除位置に位置する状態で前記リッド駆動部材を位置移動させ
、
前記第一駆動機構は、
前記回転体に設けられたカム部と、
前記ロック駆動部材に設けられ、前記カム部に係合し、前記回転体の回転に伴って前記ロック駆動部材を位置移動させる従動部と、
を含む、蓋開閉構造。
【請求項2】
前記第一駆動機構は、前記回転体の第一角度区間での回転により前記ロック駆動部材を位置移動させ、
前記第二駆動機構は、前記回転体の第二角度区間での回転により前記リッド駆動部材を位置移動させ、
前記第一角度区間と前記第二角度区間とは、互いに重なり合っていない、請求項1に記載された蓋開閉構造。
【請求項3】
前記第一駆動機構は、前記第二駆動機構により前記リッド駆動部材が前記蓋体の閉位置に位置する状態で前記ロック駆動部材を位置移動させる、請求項1又は2に記載された蓋開閉構造。
【請求項4】
前記カム部は、前記回転体の回転時に前記ロック駆動部材を前記ロック位置と前記ロック解除位置との間で位置移動させるロック側駆動区間部と、前記回転体が回転しても前記ロック駆動部材を前記ロック解除位置に維持させるロック側空転区間部と、を有する、請求項
1乃至3の何れか一項に記載された蓋開閉構造。
【請求項5】
前記従動部は、ピン状に形成されており、
前記カム部は、前記従動部が嵌るカム溝である、請求項
1乃至4の何れか一項に記載された蓋開閉構造。
【請求項6】
前記従動部は、溝状に形成されており、
前記カム部は、前記従動部に嵌るカム突起である、請求項
1乃至4の何れか一項に記載された蓋開閉構造。
【請求項7】
前記第二駆動機構は、
前記回転体側に設けられた第一係合部と、
前記リッド駆動部材側に設けられ、前記回転体の回転に伴って前記第一係合部に係合して前記リッド駆動部材を位置移動させる第二係合部と、
を含む、請求項1乃至
6の何れか一項に記載された蓋開閉構造。
【請求項8】
前記第一係合部及び前記第二係合部は、前記回転体の回転に伴って前記リッド駆動部材を前記閉位置から前記全開位置まで位置移動させる際に互いに係合する、請求項
7に記載された蓋開閉構造。
【請求項9】
前記蓋体を閉方向に付勢する力を発生する付勢部材を備える、請求項
8に記載された蓋開閉構造。
【請求項10】
前記付勢部材は、前記回転体側又は前記基材側と前記リッド駆動部材側との間に介在している、請求項
9に記載された蓋開閉構造。
【請求項11】
前記ロック駆動部材が前記ロック位置に位置移動した状態で前記リッド駆動部材と前記ロック駆動部材との相対移動を規制する相対移動規制部材を備える、請求項1乃至
10の何れか一項に記載された蓋開閉構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両などに設けられた開口を塞ぐ蓋体を開閉動作させることが可能な蓋開閉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、充電口や給油口などが設けられた車体の開口を塞ぐ蓋体を開閉動作させる蓋開閉構造が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1記載の蓋開閉構造は、蓋体を開閉動作させるリッド駆動部材(ヒンジ部)と、蓋体を閉状態にロックするロック駆動部材(ロッキングロッド)と、を備えている。この蓋開閉構造においては、リッド駆動部材による蓋体の開閉動作とロック駆動部材による蓋体のロック/ロック解除動作とは、順番に行われる。例えば、リッド駆動部材による蓋体の閉状態からの開動作は、ロック駆動部材により蓋体がロック解除された後に行われる。また、ロック駆動部材による蓋体のロック動作は、リッド駆動部材により蓋体が閉動作して閉状態になった後に行われる。上記特許文献1記載の蓋開閉構造では、ロック駆動部材による蓋体のロック/ロック解除動作を行うアクチュエータが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、リッド駆動部材による蓋体の開閉動作とロック駆動部材による蓋体のロック/ロック解除動作とをモータなどのアクチュエータを用いて行う構造として、各動作それぞれに対応したアクチュエータを独立して設けることが考えられる。しかしながら、この構造では、複数のアクチュエータや制御回路を用意することが必要となるので、大型化や複雑化等の不都合が生じる。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、リッド駆動部材による蓋体の開閉動作とロック駆動部材による蓋体のロック/ロック解除動作とを最少限のアクチュエータで実現することが可能な蓋開閉構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、蓋体を基材に対して開閉動作させるリッド駆動部材と、前記蓋体を閉状態にロック可能なロック駆動部材と、電動アクチュエータと、前記電動アクチュエータの駆動に伴って回転する回転体と、前記回転体の回転により、前記ロック駆動部材を、前記蓋体が閉状態にロックされるロック位置と前記蓋体の閉状態ロックが解除されるロック解除位置との間で位置移動させる第一駆動機構と、前記回転体の回転により、前記リッド駆動部材を、前記蓋体の閉位置と全開位置との間で位置移動させる第二駆動機構と、を備え、前記第二駆動機構は、前記第一駆動機構により前記ロック駆動部材が前記ロック解除位置に位置する状態で前記リッド駆動部材を位置移動させる、蓋開閉構造である。
【0007】
この構成によれば、リッド駆動部材による蓋体の開閉動作とロック駆動部材による蓋体のロック/ロック解除動作とを最少限のアクチュエータで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第一実施形態に係る蓋開閉構造における蓋体の閉状態での斜視図である。
【
図2】第一実施形態の蓋開閉構造における蓋体の閉状態での側面図である。
【
図3】第一実施形態の蓋開閉構造における蓋体の全開状態での側面図である。
【
図4】第一実施形態の蓋開閉構造が備える有底基材及び駆動装置における蓋体の閉状態での側面図である。
【
図5】第一実施形態の蓋開閉構造の分解斜視図である。
【
図6】第一実施形態の蓋開閉構造が備える駆動装置の主要部品を一方向から見た分解斜視図である。
【
図7】第一実施形態の蓋開閉構造が備える駆動装置の主要部品を他方向から見た分解斜視図である。
【
図8】第一実施形態の蓋開閉構造が備える駆動装置(但し、アクチュエータボックスのボックス蓋部材を除いた状態)の斜視図である。
【
図9】第一実施形態の蓋開閉構造が備える駆動装置の回転体に設けられるカム部の形状を展開した図である。
【
図10】第一実施形態の蓋開閉構造が備える駆動装置の回転体と開閉シャフトとの組付け状態を表した断面図である。
【
図11】第一実施形態の蓋開閉構造が備える駆動装置(但し、蓋体の閉状態ロック時)を
図4に示す直線XI-XIで切断した際の断面図である。
【
図12】第一実施形態の蓋開閉構造が備える駆動装置(但し、蓋体の閉状態ロックの解除時)を
図4に示す直線XI-XIで切断した際の断面図である。
【
図13】第一実施形態の蓋開閉構造における蓋体が閉位置と全開位置との間で開閉動作される際の回転体と開閉シャフトとの位置関係を表した遷移図である。
【
図14】第一実施形態の蓋開閉構造における蓋体が閉位置と全開位置との間で開閉動作される際の回転体とロックシャフトとの位置関係を表した遷移図である。
【
図15】第二実施形態に係る蓋開閉構造の分解斜視図である。
【
図16】第二実施形態の蓋開閉構造が備える回転体及び付勢部材の斜視図である。
【
図17】第二実施形態の蓋開閉構造が備えるアームの要部を回動軸の延びる方向に沿って見た正面図である。
【
図18】第二実施形態の蓋開閉構造が備える駆動装置(但し、蓋体の閉状態ロック時)の断面図である。
【
図19】一変形形態に係る蓋開閉構造の分解斜視図である。
【
図20】変形形態の蓋開閉構造が備えるアームボックスの斜視図である。
【
図21】変形形態の蓋開閉構造が備える駆動装置(但し、蓋体の閉状態ロック時)の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1-
図21を用いて、本発明に係る蓋開閉構造の具体的な実施形態について説明する。
【0010】
[第一実施形態]
第一実施形態の蓋開閉構造1は、開口を塞ぐ蓋体20を開閉動作させると共に、その蓋体20を閉状態にロック可能な構造である。蓋体20が塞ぐ開口12は、例えば車両に設けられた充電口や給油口である。
【0011】
蓋開閉構造1は、
図1、
図2、
図3、
図4、及び
図5に示す如く、有底基材10と、蓋体20と、駆動装置30と、を備えている。蓋開閉構造1は、駆動装置30により蓋体20を有底基材10に対して回動させることにより蓋体20を開閉動作させると共に、駆動装置30により蓋体20の回動を規制することにより蓋体20を閉状態にロックすることが可能である。
【0012】
有底基材10は、車両の車体側壁やボンネットなどに設けられた開口に取り付けられている。有底基材10は、樹脂などにより成形された射出成形体であって、容器状或いは箱状に形成されている。具体的には、有底基材10は、一端側(すなわち、奥側)にて底壁11が形成されかつ他端側(すなわち、手前側)にて開口12が形成された筒状の基底部材である。有底基材10は、四角筒状或いは円筒状に形成されている。
【0013】
有底基材10の底壁11には、取出口13が設けられている。取出口13は、所定の平面形状(例えば、四角形状や円形状など)に形成されている。取出口13は、給油口や充電口に連通している。取出口13には、燃料タンクやバッテリなどに接続する配管やケーブルの一端が表出している。その配管やケーブルの一端は、蓋体20の閉状態で有底基材10の開口内側に隠れる一方、蓋体20の開状態で燃料供給や充電が可能となるように外部に露出する。
【0014】
有底基材10には、アームボックス14が取り付けられている。アームボックス14は、駆動装置30の有する主に後述のアーム40を収容する箱体である。アームボックス14は、主に有底基材10の外側に配置されている。アームボックス14は、有底基材10の周回りの一箇所に固定されている。この箇所は、蓋体20の開閉動作の基点(すなわち、アーム40の回動中心軸C)となる箇所である。アームボックス14は、アーム40の回動中心軸Cに沿って平行に筒状に延びている。アームボックス14は、筒壁14aと、筒底壁14bと、開口14cと、軸支持部14dと、を有している(
図11参照)。
【0015】
筒壁14aは、周方向一部が切り欠かれた状態で筒状に形成された側壁である。筒壁14aは、アーム40が蓋体20の閉位置と全開位置(例えば、閉位置に対してアーム40が90°程度回動した位置)との間で回動する際に位置移動できる空間を形成している。筒底壁14bは、筒壁14aの底側を閉塞する底壁である。開口14cは、筒壁14aにおける筒底壁14bが設けられた側とは反対側に設けられている。開口14cは、アーム40などをアームボックス14内に挿入して組み付けるための作業孔である。軸支持部14dは、アーム40に設けられた回動中心軸Cに沿う軸部を支持する円筒状の部位である。軸支持部14dは、筒底壁14bにおける筒壁14aに近接した位置に筒底壁14bの外方へ突出するように設けられている。
【0016】
蓋体20は、有底基材10の開口12を塞ぐ板状の部材である。蓋体20は、開口12を閉じることが可能であると共に開放することが可能である。蓋体20は、開口12の平面形状に合わせた形状に形成されている。蓋体20は、例えば樹脂により成形された射出成形体である。
【0017】
駆動装置30は、蓋体20の開閉動作を実現すると共に、閉状態での蓋体20のロック/ロック解除動作(すなわち、蓋体20を閉状態にロックすると共にその閉状態ロックを解除させる動作)を実現する装置である。駆動装置30は、蓋体20をロック/ロック解除動作させる第一駆動機構31と、蓋体20を開閉動作させる第二駆動機構32と、を含む(
図11及び
図12参照)。第一駆動機構31による蓋体20のロック/ロック解除動作と第二駆動機構32による蓋体20の開閉動作とは、共用の一つの電動アクチュエータ50の駆動により実現される。駆動装置30は、アーム40と、電動アクチュエータ50と、回転体60と、ロックシャフト70と、開閉シャフト80と、付勢部材90と、を有している。
【0018】
アーム40は、蓋体20を有底基材10に対して開閉動作させるリッド駆動部材である。アーム40は、回動中心軸Cを中心にして回動することで蓋体20を開閉動作させる。アーム40は、上記のアームボックス14内に収容配置される。アーム40は、
図6及び
図7に示す如く、軸部41と、蓋固定部42と、腕部43と、を有している。
【0019】
軸部41は、アーム40の回動中心軸Cとなる部位であって、有底基材10(具体的には、アームボックス14)の軸支持部14dに回動可能に支持される円柱状又は円筒状の部位である。軸部41は、有底基材10の側壁の外側に配置されている。蓋固定部42は、蓋体20が固定される部位である。蓋固定部42は、平面状に形成されている。板状の蓋体20は、蓋固定部42に取り付け固定された状態で、アーム40の回動に伴って開閉される。
【0020】
腕部43は、軸部41と蓋固定部42とを繋ぐように湾曲状に形成された部位である。腕部43は、有底基材10の側壁の外側に配置された軸部41から取出口13の奥側にかけて延びていると共に、その取出口13の奥側からその取出口13の手前側にかけて延びている。また、腕部43は、取出口13の奥側からその取出口13の手前側にかけて延びる部位の近傍にて、アームボックス14の筒壁14aの周方向一部が切り欠かれた部位を通じて筒壁14aの内外方向に延びている。腕部43は、アーム40が蓋体20の閉位置と全開位置との間で回動する際に有底基材10及びアームボックス14に接触しないように形成されている。
【0021】
電動アクチュエータ50は、蓋体20を開閉動作させる駆動力及び閉状態での蓋体20をロック/ロック解除動作させる駆動力を発生する、例えば電動モータである。電動アクチュエータ50は、正逆の双方向に回転することが可能である。電動アクチュエータ50は、例えば、車両乗員による蓋体20の開操作(例えばスイッチ開操作)が行われた場合に蓋体20を開動作させる駆動力を発生し、また、車両乗員による蓋体20の閉操作(例えばスイッチ閉操作)が行われた場合に蓋体20を閉動作させる駆動力を発生すると共に蓋体20の閉状態でその蓋体20をロック動作させる駆動力を発生する。電動アクチュエータ50の出力軸には、ウォーム51が形成されている。
【0022】
電動アクチュエータ50は、アクチュエータボックス33内に収容されている。アクチュエータボックス33は、アームボックス14に取り付け固定される。アクチュエータボックス33は、ボックス本体部材33Aと、ボックス蓋部材33B、とからなる。ボックス本体部材33Aは、筒状に形成されており、電動アクチュエータ50、回転体60、ロックシャフト70、開閉シャフト80、及び付勢部材90を収容する空間を形成している。また、ボックス本体部材33Aには、アームボックス14の開口14cを閉じる板状のアーム蓋部34が一体に形成されている。ボックス蓋部材33Bは、ボックス本体部材33Aの開口を閉じる板状に形成された部材である。ボックス蓋部材33Bは、ボックス本体部材33Aに固定されることにより、上記の収容空間を閉塞する。
【0023】
回転体60は、電動アクチュエータ50の駆動に伴って回転する回転部材である。回転体60は、円筒状に形成されている。回転体60は、アクチュエータボックス33内に回転可能に収容されている。回転体60は、アクチュエータボックス33内に軸方向移動が規制された状態で収容されている。回転体60は、
図7に示す如く、ウォームホイール61と、カム溝62と、シャフト支持部63と、第一係合部65と、を有している。
【0024】
ウォームホイール61は、
図8に示す如く、電動アクチュエータ50のウォーム51と噛み合っており、そのウォーム51と共にウォームギヤを構成している。ウォームホイール61は、回転体60の外壁に全周に亘って設けられている。電動アクチュエータ50の出力軸と回転体60の回転軸とは、互いに直交している。回転体60は、電動アクチュエータ50の駆動がウォームギヤを介して変換されることで回転軸回りに回転する。
【0025】
カム溝62は、ロックシャフト70の一部が嵌る溝部である。カム溝62は、回転体60の外壁に径方向内側に凹みかつ周方向に延在するように形成されている。カム溝62は、周方向位置に応じて軸方向位置が変化する部位を含むように形成されている。すなわち、カム溝62は、
図9に示す如く、ロック側駆動区間部S1と、ロック側空転区間部S2と、を有している。ロック側駆動区間部S1と、ロック側空転区間部S2とは、互いに連通している。
【0026】
ロック側駆動区間部S1は、回転体60の回転時にロックシャフト70を、蓋体20が閉状態にロックされるロック位置と蓋体20の閉状態ロックが解除されるロック解除位置との間で位置移動させる部位である。尚、「ロック位置」とは、蓋体20が閉状態にロックされる位置であればよく、ロックシャフト70の進退方向に幅を持つ概念であってよい。また、「ロック解除位置」とは、蓋体20の閉状態ロックが解除される位置であればよく、ロックシャフト70の進退方向に幅を持つ概念であってよい。ロック側駆動区間部S1は、周方向に延びていると共に回転体60の軸方向に延びている。すなわち、ロック側駆動区間部S1は、周方向において回転体60の軸方向に直交する方向に対して傾斜して延びている。
【0027】
ロック側空転区間部S2は、回転体60が回転してもロックシャフト70をロック解除位置に維持させる部位である。ロック側空転区間部S2は、回転体60の軸方向に延びることなくすなわち回転体60の軸方向に直交する方向に対して傾斜することなく周方向に延びている。ロック側空転区間部S2は、ロック側駆動区間部S1に対して、ロックシャフト70がロック解除位置に位置する端部側に連通している。
【0028】
尚、カム溝62は、ロック側空転区間部S2とは別のロック側空転区間部S0を有していてもよい。このロック側空転区間部S0は、回転体60が回転してもロックシャフト70をロック位置に維持させる部位である。ロック側空転区間部S0は、回転体60の軸方向に延びることなくすなわち回転体60の軸方向に直交する方向に対して傾斜することなく周方向に延びている。ロック側空転区間部S0は、ロック側駆動区間部S1に対して、ロックシャフト70がロック位置に位置する端部側に連通している。
【0029】
ロックシャフト70は、蓋体20を閉状態にロック可能なロック駆動部材である。ロックシャフト70は、回転体60の軸方向に平行に延びている。ロックシャフト70は、ロック位置とロック解除位置との間で位置移動して軸方向に進退することが可能である。ロックシャフト70は、
図11及び
図12に示す如く、ロック部71と、従動部72と、を有している。
【0030】
ロック部71は、回転体60の軸方向に棒状に延びる円柱部位である。ロック部71は、ロックシャフト70がロック位置に位置する際にアーム40に当接してそのアーム40の回動を規制すると共に、ロックシャフト70がロック解除位置に位置する際にアーム40に当接することなくそのアーム40の回動を許容する。
【0031】
アーム40は、クッションプレート44を有している。クッションプレート44は、ロックシャフト70がロック位置に位置する状態でアーム40とロックシャフト70との相対移動を規制する部位である。クッションプレート44は、アーム40におけるロックシャフト70の当接位置に設けられている。クッションプレート44は、例えば、アーム40の本体の内面に沿って平行に広がるように板状に形成されている。
【0032】
クッションプレート44は、ロックシャフト70がロック解除位置から前進したときにそのロックシャフト70に押圧されることにより、アーム40の本体に対して位置移動してロックシャフト70のロック位置でそのロックシャフト70に反力を与えつつアーム40の本体に対して維持固定されるように構成されている。クッションプレート44は、例えば、ロックシャフト70からの押圧によりアーム40の内壁側に撓むことが可能である。
【0033】
上記したアーム40の構成においては、蓋体20の閉状態において振動が入力した場合でもクッションプレート44がロックシャフト70によりアーム40の本体を閉方向に付勢することでアーム40の振動を抑制し、蓋体20の振動に起因する異音の発生などを防止することができる。
【0034】
従動部72は、カム溝62に嵌って係合するピン状部位である。従動部72は、カム溝62の周方向両端部の間で相対移動することができる。従動部72は、ロック部71の軸方向一端部に接続されており、そのロック部71に一体に設けられている。従動部72は、回転体60の回転に伴ってカム溝62への係合位置がカム溝62の周方向両端部の間で軸方向に変化することにより、ロックシャフト70を位置移動させて軸方向に進退させる。
【0035】
具体的には、ロックシャフト70は、従動部72がカム溝62のロック側空転区間部S0,S2に嵌っている際はロック位置とロック解除位置との間で位置移動しないが、従動部72がカム溝62のロック側駆動区間部S1に嵌っている際はロック位置とロック解除位置との間で位置移動する。
【0036】
回転体60のシャフト支持部63は、開閉シャフト80を回動可能に支持する部位である。シャフト支持部63は、開閉シャフト80の一端が挿入される軸孔であって、円筒状に形成されている。シャフト支持部63は、開閉シャフト80の挿入後にその開閉シャフト80の回動を許容する一方でその開閉シャフト80の軸方向移動を規制するように形成されている。例えば、開閉シャフト80は、スナップフィット構造でシャフト支持部63に回動可能に取り付け固定される。
【0037】
回転体60の第一係合部65は、
図10に示す如く、シャフト支持部63の軸孔内壁との間に付勢部材90を挿入する隙間を形成すると共に、回転体60が所定角度回転した時に開閉シャフト80に形成された後述の第二係合部83に係合する部位である。第一係合部65は、シャフト支持部63の軸孔内に設けられている。第一係合部65は、回転体60の例えばシャフト支持部63の底壁から軸方向に向けて板状に延びている。
【0038】
第一係合部65は、シャフト支持部63の軸孔の周方向全域のうち一部の角度範囲のみに設けられている。第一係合部65は、角度範囲α1(例えば170°)に亘って設けられている(
図13において梨地で示す。)。尚、第一係合部65は、上記周方向全域のうち一部の角度範囲α1全体に亘って設けられていてもよいが、その一部の角度範囲α1の少なくとも両端に設けられていればよい。
【0039】
付勢部材90は、蓋体20を閉方向に付勢する力を発生する部材である。付勢部材90は、一端が回転体60に支持されると共に他端がアーム40側(具体的には、開閉シャフト80)に支持される例えばスプリングである。付勢部材90は、回転体60と開閉シャフト80との間に介在して配置されている。付勢部材90は、開閉シャフト80を回転体60に対して蓋体20の閉方向に付勢する力を発生する。
【0040】
開閉シャフト80は、アーム40の回動中心軸C上でアーム40と一体で回動する部材である。開閉シャフト80とアーム40とは、回動中心軸C上で互いに一体化されている。開閉シャフト80は、軸部81を有している。軸部81は、回動中心軸Cの軸方向に延びる部位である。アーム40の軸部41は、開閉シャフト80の軸部81が挿入される軸孔41aを有している。開閉シャフト80の軸部81とアーム40の軸孔41aとは、互いに嵌合する形状を有している。
【0041】
開閉シャフト80は、スプリング支持部82を有している。スプリング支持部82は、付勢部材90を支持する部位である。スプリング支持部82は、軸部81から径方向外側に向けてフランジ状に広がっている。
【0042】
開閉シャフト80は、
図6に示す如く、第二係合部83を有している。第二係合部83は、回転体60の第一係合部65に係合する部位である。第二係合部83は、開閉シャフト80の軸部81の外壁から径方向外側に向けて突出するように形成され、又は、軸部81の外壁の一部を径方向内側に切り欠いて残った部位として形成されている。第二係合部83は、軸部81の周方向全域のうち一部の角度範囲のみに設けられている。第二係合部83は、角度範囲α2(例えば80°)に亘って設けられている(
図13において両側ハッチングで示す。)。
【0043】
回転体60と開閉シャフト80とは、回転体60の第一係合部65が開閉シャフト80の軸部81における第二係合部83が設けられていない箇所に挿入され、かつ、開閉シャフト80の第二係合部83が回転体60の軸孔における第一係合部65が設けられていない箇所に挿入されるように互いに配置されている。
【0044】
第一係合部65及び第二係合部83は、回転体60の回転に伴ってアーム40を蓋体20の閉位置から全開位置まで位置移動(すなわち、回動)させる際(すなわち、蓋体20の開動作時)に互いに係合する。すなわち、第一係合部65が第二係合部83との非係合な状態からその第二係合部83に係合した後、回転体60が、第一係合部65が第二係合部83を押圧する周方向順方向に回転(以下、この回転を正回転と称す。)すると、第一係合部65が第二係合部83に係合したままその第二係合部83を周方向に押圧することで、第二係合部83を有する開閉シャフト80ひいてはその開閉シャフト80が一体化されたアーム40が回動中心軸Cを中心にして蓋体20の開方向へ回動される。
【0045】
上記のアーム40の開方向への回動は、蓋体20が全開位置に達するまで、具体的には例えば、そのアーム40若しくは開閉シャフト80がアームボックス14或いは有底基材10に設けられたストッパ(図示せず)に当接するまで、又は、ロックシャフト70の従動部72が相対的に回転体60のカム溝62の周方向一端部(具体的には、ロック側空転区間部S2におけるロック側駆動区間部S1と連通する周方向端部とは反対側の周方向端部)に達して回転体60がそれ以上回転できない状態に達するまで継続される。
【0046】
一方、第一係合部65及び第二係合部83は、アーム40が蓋体20の全開位置から閉位置まで位置移動(すなわち、回動)される際(すなわち、蓋体20の閉動作時)は互いに係合しない。具体的には、第一係合部65が蓋体20の開動作時に第二係合部83を押圧する周方向順方向とは反対の周方向逆方向に回転体60が回転すると(以下、この回転を逆回転と称す。)、開閉シャフト80の第二係合部83が第一係合部65によって周方向に押圧されることはないが、その第二係合部83は付勢部材90の付勢力によって第一係合部65の周方向逆方向への移動に追従してその周方向逆方向に移動する。この付勢部材90の付勢力による第二係合部83の周方向逆方向への移動は、蓋体20が有底基材10の開口12を塞ぐ閉位置に達してアーム40がそれ以上蓋体20の閉方向へ回動できない状態に達するまで継続される。
【0047】
上記の如く蓋体20が閉位置に達してアーム40や開閉シャフト80の回動が停止した後も、回転体60の逆回転は継続可能である。この回転体60の逆回転は、ロックシャフト70の従動部72が相対的に回転体60のカム溝62の周方向他端部(具体的には、ロック側空転区間部S0におけるロック側駆動区間部S1と連通する周方向端部とは反対側の周方向端部)に達して回転体60がそれ以上逆回転できない状態に至るまで継続される。このロックシャフト70の従動部72が相対的に回転体60のカム溝62の周方向他端部に達したときは、回転体60の第一係合部65(具体的には、蓋体20の開動作時に第二係合部83に係合される第一係合部65の周方向一端面65aとは反対側の周方向他端面65b)が、開閉シャフト80の第二係合部83(具体的には、蓋体20の開動作時に第一係合部65が係合する第二係合部83の周方向一端面83aとは反対側の周方向他端面83b)に係合する。
【0048】
第一駆動機構31は、回転体60のカム溝62と、ロックシャフト70の従動部72と、を含む。また、第二駆動機構32は、回転体60の第一係合部65と、開閉シャフト80の第二係合部83と、を含む。
【0049】
第一駆動機構31が回転体60の回転によりロックシャフト70を蓋体20のロック位置とロック解除位置との間で位置移動させる回転体60の角度区間と、第二駆動機構32が回転体60の回転によりアーム40を蓋体20の閉位置と全開位置との間で位置移動させる回転体60の角度区間と、は互いに重なり合っていない。すなわち、回転体60のカム溝62とロックシャフト70の従動部72との位置関係と、回転体60の第一係合部65と開閉シャフト80の第二係合部83との位置関係と、は上記の角度区間同士が互いに重なり合わないように設定されている。
【0050】
例えば、ロックシャフト70の従動部72が回転体60のカム溝62のロック側駆動区間部S1に嵌って接しているときは、回転体60が正回転すると、そのロックシャフト70が蓋体20のロック位置からロック解除位置へ向けて位置移動する。このときは、回転体60が正回転しても、回転体60の第一係合部65は、アーム40に一体化された開閉シャフト80の第二係合部83に係合せず、開閉シャフト80ひいてはアーム40の回動中心軸Cを中心にした回動は生じない。
【0051】
一方、ロックシャフト70の従動部72が回転体60のカム溝62のロック側空転区間部S2に嵌って接しているときは、回転体60が正回転しても、そのロックシャフト70が蓋体20のロック解除位置に維持されている。このときは、回転体60が正回転すると、回転体60の第一係合部65が、アーム40に一体化された開閉シャフト80の第二係合部83に係合して、開閉シャフト80ひいてはアーム40が回動中心軸Cを中心にして蓋体20の開方向へ回動される。
【0052】
次に、蓋開閉構造1の動作について説明する(
図13及び
図14参照)。
ロックシャフト70の従動部72が回転体60のカム溝62の周方向一端部に位置している状態では、蓋体20が付勢部材90の付勢力により閉状態にあると共に、ロックシャフト70がロック位置にあることで、蓋体20が閉状態にロックされている。この際、回転体60の第一係合部65の周方向他端面65bは、開閉シャフト80の第二係合部83の周方向他端面83bに係合している。
【0053】
以下、上記のときの回転体60の角度位置を基準角度(0°)とする。また例えば、ロック側空転区間部S0の周方向長は、回転体60の回転角度θ0(例えば30°)分に相当し、ロック側駆動区間部S1の周方向長は、回転体60の回転角度θ1(例えば80°)分に相当し、ロック側空転区間部S2の周方向長は、回転体60の回転角度θ2(例えば90°)分に相当するものとする。
【0054】
上記の状態から電動アクチュエータ50により蓋体20を開動作させる駆動力が発生すると、ウォームギヤを介して回転体60が正回転する。回転体60が正回転すると、まず、ロックシャフト70の従動部72がその回転体60のカム溝62のロック側空転区間部S0に嵌りながら相対移動する。従動部72がロック側空転区間部S0に位置しているときは、回転体60が正回転してもロックシャフト70がロック位置から後退せずそのロック位置に維持される。
【0055】
次に、回転体60が基準角度から角度θ0だけ正回転すると、回転体60のカム溝62におけるロックシャフト70の従動部72が嵌る位置がロック側空転区間部S0からロック側駆動区間部S1へ移行する。従動部72がロック側駆動区間部S1に位置しているときは、回転体60の正回転に伴って、ロックシャフト70がロック位置からロック解除位置へ向けて徐々に後退する。そして、回転体60が基準角度から角度(θ0+θ1)だけ正回転して従動部72がロック側駆動区間部S1とロック側空転区間部S2との境界付近に達すると、ロックシャフト70がロック位置から外れてロック解除位置に達する。
【0056】
回転体60が基準角度に対して角度(θ0+θ1)をなす角度位置から更に正回転して従動部72がロック側空転区間部S2に嵌ると、ロックシャフト70の後退が停止される。この後退停止後は、回転体60の更なる正回転が生じても、ロックシャフト70は、ロック解除位置に維持される。
【0057】
従動部72がロック側空転区間部S2に嵌った状態すなわちロックシャフト70がロック解除位置に維持された状態で、回転体60の更なる正回転が生じると、やがて回転体60の第一係合部65の周方向一端面65aが開閉シャフト80の第二係合部83の周方向一端面83aに係合する。そして、その係合状態で回転体60が更に正回転すると、開閉シャフト80ひいてはアーム40が回動中心軸Cを中心にして蓋体20の開方向へ回動される。アーム40が蓋体20の開方向へ回動されると、蓋体20が開動作する。このアーム40の開方向への回動すなわち蓋体20の開動作は、蓋体20が全開位置に達するまで実行可能である。そして、回転体60が基準角度から角度(θ0+θ1+θ2)だけ正回転すると、蓋体20が全開位置に達する。
【0058】
蓋体20の開状態では、ロックシャフト70がロック解除位置に維持されていると共に、開閉シャフト80の第二係合部83の周方向一端面に回転体60の第一係合部65の周方向一端面が係合している。この開状態から電動アクチュエータ50により蓋体20を閉動作させる駆動力が発生すると、ウォームギヤを介して回転体60が逆回転する。回転体60が逆回転すると、まず、ロックシャフト70の従動部72がその回転体60のカム溝62のロック側空転区間部S2に嵌っているため、その逆回転が生じてもロックシャフト70はロック解除位置に維持される。この状態は、回転体60が蓋体20の全開位置から角度θ2だけ逆回転する間は継続される。
【0059】
回転体60の逆回転に伴ってロックシャフト70の従動部72が相対的にその回転体60のカム溝62内をロック側空転区間部S2からロック側空転区間部S0へ向けて位置移動すると、回転体60と開閉シャフト80との間に介在する付勢部材90の付勢力により、開閉シャフト80が蓋体20の閉方向に付勢される。この場合は、開閉シャフト80の第二係合部83が回転体60の第一係合部65の周方向逆方向への移動に追従して周方向逆方向へ移動し、アーム40が閉方向に回動して蓋体20が閉動作される。
【0060】
次、回転体60が蓋体20の全開位置から角度θ2だけ逆回転すると、回転体60のカム溝62におけるロックシャフト70の従動部72が嵌る位置がロック側空転区間部S2からロック側駆動区間部S1へ移行する。従動部72がロック側駆動区間部S1に位置しているときは、回転体60の逆回転に伴って、ロックシャフト70がロック解除位置からロック位置へ向けて徐々に前進する。そして、回転体60が蓋体20の全開位置から角度(θ2+θ1)だけ逆回転して従動部72がロック側駆動区間部S1とロック側空転区間部S0との境界付近に達すると、ロックシャフト70がロック解除位置からロック位置に達する。
【0061】
回転体60が蓋体20の全開位置に対して角度(θ2+θ1)をなす角度位置から更に逆回転して従動部72がロック側空転区間部S0に嵌ると、ロックシャフト70の後退が停止される。この後退停止後は、回転体60の更なる逆回転が生じても、ロックシャフト70は、ロック位置に維持される。そして、従動部72がロック側空転区間部S0に嵌ってから回転体60が更に角度θ0だけ逆回転すると、ロックシャフト70の従動部72が相対的に回転体60のカム溝62の周方向他端部に達して回転体60がそれ以上逆回転できない状態に至る。
【0062】
このように、電動アクチュエータ50を用いて回転体60を正回転させることによって、第一駆動機構31によりロックシャフト70をロック位置からロック解除位置へ向けて位置移動させることができると共に、第二駆動機構32によりアーム40を蓋体20の閉位置から全開位置へ向けて位置移動させることができる。これらのロックシャフト70のロック位置からロック解除位置への位置移動と、アーム40の蓋体20の閉位置から全開位置への位置移動とは、一つの電動アクチュエータ50を用いた回転体60の正回転により、その順に連続して或いは時間差を設けて行われる。すなわち、第一駆動機構31によりロックシャフト70がロック位置からロック解除位置に位置移動した以後、そのロックシャフト70がロック解除位置に位置する状態で第二駆動機構32によりアーム40が蓋体20の閉位置から全開位置へ向けて位置移動する。
【0063】
また、電動アクチュエータ50を用いて回転体60を逆回転させることにより、アーム40ひいては蓋体20を蓋体20の全開位置から閉位置へ向けて位置移動させることができると共に、ロックシャフト70をロック解除位置からロック位置へ向けて位置移動させることができる。これらアーム40の蓋体20の全開位置から閉位置への位置移動と、ロックシャフト70のロック解除位置からロック位置への位置移動とは、一つの電動アクチュエータ50を用いた回転体60の逆回転により、その順に連続して或いは時間差を設けて行われる。すなわち、第二駆動機構32によりアーム40が蓋体20の全開位置から閉位置に位置移動した以後、アーム40が蓋体20の閉位置に位置する状態で第一駆動機構31によりロックシャフト70がロック解除位置からロック位置へ向けて位置移動する。
【0064】
従って、アーム40による蓋体20の開動作及び閉動作とロックシャフト70による蓋体20のロック/ロック解除動作とを、それぞれ適切かつ確実に行いつつ、最少限の一つの電動アクチュエータ50で実現することができる。このため、蓋開閉構造1の部品点数の削減や部品構成の簡素化を図ることができ、コスト低減を図ることができる。
【0065】
また、ロックシャフト70は、蓋体20のロック位置とロック解除位置との間で位置移動される部材である。このロックシャフト70は、開閉動作される蓋体20すなわちアーム40の回動中心軸Cに近接した位置に配置されている。このため、ロックシャフト70が蓋体20すなわちアーム40の回動中心軸Cから離間した位置(例えば、その回動中心軸Cから蓋体20を挟んだ反対側の位置)に配置されることはなく、蓋開閉構造1の大型化や複雑化を回避することができる。
【0066】
また、電動アクチュエータ50は、アーム40による蓋体20の開動作及び閉動作とロックシャフト70による蓋体20のロック/ロック解除動作とを実現するアクチュエータである。この電動アクチュエータ50は、開閉動作される蓋体20すなわちアーム40の回動中心軸Cに近接した位置に配置されている。このため、アーム40による蓋体20の開閉動作を少ないスペースで実現することができると共に、ロックシャフト70による蓋体20のロック/ロック解除動作を少ないスペースで実現することができる。
【0067】
更に、アーム40には、ロックシャフト70がロック位置に位置移動した状態でアーム40とロックシャフト70との相対移動を規制するクッションプレート44が設けられている。ロックシャフト70がロック解除位置からロック位置に向けて前進すると、ロックシャフト70のロック部71の先端部がクッションプレート44に当接してそのクッションプレート44をアーム40の本体に対して位置移動させる。この場合は、クッションプレート44がロックシャフト70に反力を与えつつ固定されて、ロックシャフト70がロック位置に維持される。
【0068】
従って、ロックシャフト70がロック位置に維持される際に、そのロックシャフト70とアーム40との間に両者を相対移動させる隙間が形成されるのを回避することができ、ロックシャフト70とアーム40との間のガタを抑制することができる。このため、車両走行中における振動などに起因して蓋体20が閉状態ロックで有底基材10に対して回動中心軸C回りに回動するのを防止することができ、異音が発生することや蓋体20が損傷し易くなることを防止することができる。
【0069】
尚、上記の第一実施形態においては、有底基材10が特許請求の範囲に記載した「基材」に、アーム40が特許請求の範囲に記載した「リッド駆動部材」に、ロックシャフト70が特許請求の範囲に記載した「ロック駆動部材」に、回転体60が基準角度に対してロック側空転区間部S0の周方向長に相当する角度θ0だけ正回転した角度位置から更にロック側駆動区間部S1の周方向長に相当する角度θ1だけ正回転した角度位置までの区間が特許請求の範囲に記載した「第一角度区間」に、回転体60が基準角度に対してロック側空転区間部S0及びロック側駆動区間部S1それぞれの周方向長を加算した長さに相当する角度(θ0+θ1)だけ正回転した角度位置から更にロック側空転区間部S2の周方向長に相当する角度θ2だけ正回転した角度位置までの区間が特許請求の範囲に記載した「第二角度区間」に、それぞれ相当している。
【0070】
また、上記の第一実施形態においては、カム溝62が特許請求の範囲に記載した「カム部」に、開閉シャフト80が特許請求の範囲に記載した「リッド駆動部材側」に、クッションプレート44が特許請求の範囲に記載した「相対移動規制部材」に、それぞれ相当している。
【0071】
[第二実施形態]
第二実施形態の蓋開閉構造100は、第一実施形態の蓋開閉構造1と同様に、開口を塞ぐ蓋体を開閉動作させると共に、その蓋体を閉状態にロック可能な構造である。尚、
図15~
図18において、上記第一実施形態の蓋開閉構造1と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。
【0072】
蓋開閉構造100は、
図15に示す如く、駆動装置110を備えている。駆動装置110は、蓋体20を有底基材10に対して回動させることにより蓋体20を開閉動作させると共に、蓋体20の回動を規制することにより蓋体20を閉状態にロックする。駆動装置110は、蓋体20をロック/ロック解除動作させる第一駆動機構111と、蓋体20を開閉動作させる第二駆動機構112と、を含む。第一駆動機構111による蓋体20のロック/ロック解除動作と第二駆動機構112による蓋体20の開閉動作とは、共用の一つの電動アクチュエータ50の駆動により実現される。駆動装置110は、アーム120と、電動アクチュエータ50と、回転体130と、ロックシャフト140と、付勢部材150と、を有している。
【0073】
アーム120は、蓋体20を有底基材10に対して開閉動作させるリッド駆動部材である。アーム120は、回動中心軸Cを中心にして回動することで蓋体20を開閉動作させる。アーム120は、アームボックス14内に収容配置される。アーム120は、軸部121と、蓋固定部42と、腕部43と、を有している。軸部121は、アーム120の回動中心軸Cとなる部位であって、有底基材10の軸支持部14dに回動可能に支持される円柱状又は円筒状の部位である。軸部121は、有底基材10の側壁の外側に配置されている。
【0074】
回転体130は、電動アクチュエータ50の駆動に伴って回転する回転部材である。回転体130は、
図16に示す如く、円筒状に形成されている。回転体130は、アクチュエータボックス33内に回転可能に収容されている。回転体130は、アクチュエータボックス33内に軸方向移動が規制された状態で収容されている。回転体130は、
図16に示す如く、ウォームホイール61と、カム突起132と、シャフト部133と、第一係合部134と、を有している。
【0075】
カム突起132は、ロックシャフト140の一部に嵌る突起部である。カム突起132は、回転体130の外壁に径方向外側に突出しかつ周方向に延在するように形成されている。カム突起132は、周方向位置に応じて軸方向位置が変化する部位を含むように形成されている。すなわち、カム突起132は、上記第一実施形態のカム溝62と同様の、ロック側駆動区間部S1と、ロック側空転区間部S2と、を有している。ロック側駆動区間部S1と、ロック側空転区間部S2と、は互いに連通している。尚、カム突起132は、ロック側空転区間部S0を有していてもよい。
【0076】
ロックシャフト140は、蓋体20を閉状態にロック可能なロック駆動部材である。ロックシャフト140は、回転体130の軸方向に平行に延びている。ロックシャフト140は、ロック位置とロック解除位置との間で位置移動して軸方向に進退することが可能である。ロックシャフト140は、
図18に示す如く、ロック部71と、従動部142と、を有している。
【0077】
従動部142は、カム突起132が嵌って係合する溝状部位であって、例えば軸方向に隙間を空けて並んだ二つの円板の間に形成される溝である。従動部142は、カム突起132の周方向両端部の間で相対移動することができる。従動部142は、ロック部71の軸方向一端部に接続されており、そのロック部71に一体に設けられている。従動部142は、回転体130の回転に伴ってカム突起132との係合位置がカム突起132の周方向両端部の間で変化することにより、ロックシャフト140を位置移動させて軸方向に進退させる。
【0078】
具体的には、ロックシャフト140は、従動部142にカム突起132のロック側空転区間部S0,S2が嵌っている際はロック位置とロック解除位置との間で位置移動しないが、従動部142にカム突起132のロック側駆動区間部S1が嵌っている際はロック位置とロック解除位置との間で位置移動する。
【0079】
回転体130のシャフト部133は、軸方向に棒状に延びる部位である。シャフト部133は、アーム120の回動中心軸C上で回動する。第一係合部134は、シャフト部133の軸方向端部の外壁に設けられている。第一係合部134は、シャフト部133の外壁から径方向外側に向けて突出するように形成され、又は、シャフト部133の外壁の一部を径方向内側に切り欠いて残った部位として形成されている。第一係合部134は、シャフト部133の周方向全域のうち一部の角度範囲のみに設けられている。第一係合部134は、角度範囲α1(例えば170°)に亘って設けられている。
【0080】
アーム120の軸部121は、
図17に示す如く、シャフト部133が挿入される軸孔121aを有している。アーム120は、第二係合部122を有している。第二係合部122は、回転体130の第一係合部134に係合する部位である。第二係合部122は、軸孔121a内に設けられている。第二係合部122は、軸孔121aの底壁から軸方向に向けて突出するように形成されている。第二係合部122は、軸孔121aの周方向全域のうち一部の角度範囲のみに設けられている。第二係合部122は、角度範囲α2(例えば80°)に亘って設けられている。尚、第二係合部122は、上記周方向全域のうち一部の角度範囲α2全体に亘って設けられていてもよいが、その一部の角度範囲α2の少なくとも両端に設けられていればよい。
【0081】
回転体130とアーム120とは、回転体130の第一係合部134がアーム120の軸孔121aにおける第二係合部122が設けられていない箇所に挿入され、かつ、アーム120の第二係合部122が回転体130のシャフト部133における第一係合部134が設けられていない箇所に挿入されるように互いに配置されている。
【0082】
第一係合部134及び第二係合部122は、回転体130の回転に伴ってアーム120を蓋体20の閉位置から全開位置まで位置移動(すなわち、回動)させる際(すなわち、蓋体20の開動作時)に互いに係合する。すなわち、第一係合部134が第二係合部122との非係合な状態からその第二係合部122に係合した後、回転体130が、第一係合部134が第二係合部122を押圧する周方向順方向に正回転すると、第一係合部134が第二係合部122に係合したままその第二係合部122を周方向に押圧することで、第二係合部122を有するアーム120が回動中心軸Cを中心にして蓋体20の開方向へ回動される。
【0083】
上記のアーム120の開方向への回動は、蓋体20が全開位置に達するまで、具体的には例えば、そのアーム120がアームボックス14或いは有底基材10に設けられたストッパに当接するまで、又は、ロックシャフト140の従動部142が相対的に回転体130のカム突起132の周方向一端部(具体的には、ロック側空転区間部S2におけるロック側駆動区間部S1と連通する周方向端部とは反対側の周方向端部)に達して回転体130がそれ以上回転できない状態に達するまで継続される。
【0084】
一方、第一係合部134及び第二係合部122は、アーム120が蓋体20の全開位置から閉位置まで位置移動(すなわち、回動)される際(すなわち、蓋体20の閉動作時)は互いに係合しない。具体的には、第一係合部134が蓋体20の開動作時に第二係合部122を押圧する周方向順方向とは反対の周方向逆方向に回転体130が逆回転すると、第二係合部122が第一係合部134によって周方向に押圧されることはないが、その第二係合部122は付勢部材150の付勢力によって第一係合部134の周方向逆方向への移動に追従してその周方向逆方向に移動する。この付勢部材150の付勢力による第二係合部122の周方向逆方向への移動は、蓋体20が有底基材10の開口12を塞ぐ閉位置に達してアーム120がそれ以上蓋体20の閉方向へ回動できない状態に達するまで継続される。
【0085】
上記の如く蓋体20が閉位置に達してアーム120の回動が停止した後も、回転体130の逆回転は継続可能である。この回転体130の逆回転は、ロックシャフト140の従動部142が相対的に回転体130のカム突起132の周方向他端部(具体的には、ロック側空転区間部S0におけるロック側駆動区間部S1と連通する周方向端部とは反対側の周方向端部)に達して回転体130がそれ以上逆回転できない状態に至るまで継続される。このロックシャフト140の従動部142が相対的に回転体130のカム突起132の周方向他端部に達したときは、回転体130の第一係合部134(具体的には、蓋体20の開動作時に第二係合部122に係合される第一係合部134の周方向一端面134aとは反対側の周方向他端面134b)が、アーム120の第二係合部122(具体的には、蓋体20の開動作時に第一係合部134が係合する第二係合部122の周方向一端面122aとは反対側の周方向他端面122b)に係合する。
【0086】
付勢部材150は、蓋体20を閉方向に付勢する力を発生する部材である。付勢部材150は、一端がアクチュエータボックス33に支持されると共に他端がアーム120に支持される例えばスプリングである。付勢部材150は、アクチュエータボックス33とアーム120との間に介在して配置されている。付勢部材150は、アーム120をアクチュエータボックス33(すなわち、有底基材10側)に対して蓋体20の閉方向に付勢する力を発生する。尚、付勢部材150は、アーム120と回転体130との間に介在して配置されてもよい。
【0087】
第一駆動機構111は、回転体130のカム突起132と、ロックシャフト140の従動部142と、を含む。また、第二駆動機構112は、回転体130の第一係合部134と、アーム120の第二係合部122と、を含む。
【0088】
第一駆動機構111が回転体130の回転によりロックシャフト140を蓋体20のロック位置とロック解除位置との間で位置移動させる回転体130の角度区間と、第二駆動機構112が回転体130の回転によりアーム120を蓋体20の閉位置と全開位置との間で位置移動させる回転体130の角度区間とは、互いに重なり合っていない。すなわち、回転体130のカム突起132とロックシャフト140の従動部142との位置関係と、回転体130の第一係合部134とアーム120の第二係合部122との位置関係とは、上記の角度区間同士が互いに重なり合わないように設定されている。
【0089】
次に、蓋開閉構造100の動作について説明する。
ロックシャフト140の従動部142が回転体130のカム突起132の周方向一端部に位置している状態では、蓋体20が付勢部材150の付勢力により閉状態にあると共に、ロックシャフト140がロック位置にあることで、蓋体20が閉状態にロックされている。この際、回転体130の第一係合部134の周方向他端面134bは、アーム120の第二係合部122の周方向他端面122bに係合している。
【0090】
上記の状態から電動アクチュエータ50により蓋体20を開動作させる駆動力が発生すると、ウォームギヤを介して回転体130が正回転する。回転体130が正回転すると、まず、ロックシャフト140の従動部142がその回転体130のカム突起132のロック側空転区間部S0に嵌りながら相対移動する。従動部142がロック側空転区間部S0に位置しているときは、回転体130が正回転してもロックシャフト140がロック位置から後退せずそのロック位置に維持される。
【0091】
次に、回転体130が基準角度から角度θ0だけ正回転すると、回転体130のカム突起132におけるロックシャフト140の従動部142が嵌る位置がロック側空転区間部S0からロック側駆動区間部S1へ移行する。従動部142がロック側駆動区間部S1に位置しているときは、回転体130の正回転に伴って、ロックシャフト140がロック位置からロック解除位置へ向けて徐々に後退する。そして、回転体130が基準角度から角度(θ0+θ1)だけ正回転して従動部142がロック側駆動区間部S1とロック側空転区間部S2との境界付近に達すると、ロックシャフト140がロック位置から外れてロック解除位置に達する。
【0092】
回転体130が基準角度に対して角度(θ0+θ1)をなす角度位置から更に正回転して従動部142がロック側空転区間部S2に嵌ると、ロックシャフト140の後退が停止される。この後退停止後は、回転体130の更なる正回転が生じても、ロックシャフト140は、ロック解除位置に維持される。
【0093】
従動部142がロック側空転区間部S2に嵌った状態すなわちロックシャフト140がロック解除位置に維持された状態で、回転体130の更なる正回転が生じると、やがて回転体130の第一係合部134の周方向一端面134aがアーム120の第二係合部122の周方向一端面122aに係合する。そして、その係合状態で回転体130が更に正回転すると、アーム120が回動中心軸Cを中心にして蓋体20の開方向へ回動される。アーム120が蓋体20の開方向へ回動されると、蓋体20が開動作する。このアーム120の開方向への回動すなわち蓋体20の開動作は、蓋体20が全開位置に達するまで実行可能である。そして、回転体130が基準角度から角度(θ0+θ1+θ2)だけ正回転すると、蓋体20が全開位置に達する。
【0094】
蓋体20の開状態では、ロックシャフト140がロック解除位置に維持されていると共に、アーム120の第二係合部122の周方向一端面122aに回転体130の第一係合部134の周方向一端面134aが係合している。この開状態から電動アクチュエータ50により蓋体20を閉動作させる駆動力が発生すると、ウォームギヤを介して回転体60が逆回転する。回転体60が逆回転すると、まず、ロックシャフト140の従動部142がその回転体130のカム突起132のロック側空転区間部S2に嵌っているため、その逆回転が生じてもロックシャフト140はロック解除位置に維持される。この状態は、回転体130が蓋体20の全開位置から角度θ2だけ逆回転する間は継続される。
【0095】
回転体130の逆回転に伴ってロックシャフト140の従動部142が相対的にその回転体130のカム突起132のロック側空転区間部S2からロック側空転区間部S0へ向けて位置移動すると、アクチュエータボックス33とアーム120との間に介在する付勢部材150の付勢力により、アーム120が蓋体20の閉方向に付勢される。この場合は、アーム120の第二係合部122が回転体130の第一係合部134の周方向逆方向への移動に追従して周方向逆方向へ移動し、アーム120が閉方向に回動して蓋体20が閉動作される。
【0096】
次に、回転体130が蓋体20の全開位置から角度θ2だけ逆回転すると、回転体130のカム突起132におけるロックシャフト140の従動部142が嵌る位置がロック側空転区間部S2からロック側駆動区間部S1へ移行する。従動部142がロック側駆動区間部S1に位置しているときは、回転体130の逆回転に伴って、ロックシャフト140がロック解除位置からロック位置へ向けて徐々に前進する。そして、回転体130が蓋体20の全開位置から角度(θ2+θ1)だけ逆回転して従動部142がロック側駆動区間部S1とロック側空転区間部S0との境界付近に達すると、ロックシャフト140がロック解除位置からロック位置に達する。
【0097】
回転体130が蓋体20の全開位置に対して角度(θ2+θ1)をなす角度位置から更に逆回転して従動部142がロック側空転区間部S0に嵌ると、ロックシャフト140の後退が停止される。この後退停止後は、回転体130の更なる逆回転が生じても、ロックシャフト140は、ロック位置に維持される。そして、従動部142がロック側空転区間部S0に嵌ってから回転体130が更に角度θ0だけ逆回転すると、ロックシャフト140の従動部142が相対的に回転体130のカム突起132の周方向他端部に達して回転体130がそれ以上逆回転できない状態に至る。
【0098】
このように、電動アクチュエータ50を用いて回転体130を回転させることによって、第一駆動機構111によりロックシャフト140をロック位置とロック解除位置との間で位置移動させることができると共に、第二駆動機構112によりアーム120を蓋体20の閉位置と全開位置との間で位置移動させることができる。これらのロックシャフト140のロック位置とロック解除位置との間の位置移動と、蓋体20の閉位置と全開位置との間の位置移動とは、一つの電動アクチュエータ50を用いた回転体130の回転により、連続して或いは時間差を設けて行われる。
【0099】
すなわち、第一駆動機構111によりロックシャフト140がロック位置からロック解除位置に位置移動した以後、そのロックシャフト140がロック解除位置に位置する状態で第二駆動機構112によりアーム120が蓋体20の閉位置から全開位置へ向けて位置移動する。また、第二駆動機構112によりアーム120が蓋体20の全開位置から閉位置に位置移動した以後、アーム120が蓋体20の閉位置に位置する状態で第一駆動機構111によりロックシャフト140がロック解除位置からロック位置へ向けて位置移動する。従って、蓋開閉構造100においても、上記第一実施形態の蓋開閉構造1と同様の効果を得ることができる。
【0100】
尚、上記の第二実施形態においては、アーム120が特許請求の範囲に記載した「リッド駆動部材」に、ロックシャフト140が特許請求の範囲に記載した「ロック駆動部材」に、カム突起132が特許請求の範囲に記載した「カム部」に、有底基材10に取り付けられたアームボックス14に取り付け固定されるアクチュエータボックス33が特許請求の範囲に記載した「基材側」に、それぞれ相当している。
【0101】
[変形形態]
ところで、上記の第二実施形態においては、蓋開閉構造100の駆動装置110が、一端がアクチュエータボックス33に支持されると共に他端がアーム120に支持される付勢部材150を有する。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、
図19、
図20に、及び
図21に示す如く、蓋開閉構造100に代えて蓋開閉構造200を採用することとしてもよい。すなわち、蓋開閉構造200の駆動装置210が、一端がアーム120(具体的には、軸部121の外面)に支持されると共に他端がアームボックス14(具体的には、アーム120の軸部121が支持される軸支持部14dの内面)に支持される付勢部材220を有するものとしてもよい。この付勢部材220は、アーム120をアームボックス14(すなわち、有底基材10側)に対して蓋体20の閉方向に付勢する力を発生して蓋体20を閉方向に付勢する。この変形形態の構成においても、上記第二実施形態の構成と同様の効果を得ることが可能である。この変形形態においては、有底基材10に取り付けられたアームボックス14が特許請求の範囲に記載した「基材側」に相当する。
【0102】
また、上記の第一及び第二実施形態においては、第一駆動機構31,111が回転体60,130の回転によりロックシャフト70,140を蓋体20のロック位置とロック解除位置との間で位置移動させる回転体60,130の角度区間と、第二駆動機構32,112が回転体60,130の回転によりアーム40,120を蓋体20の閉位置と全開位置との間で位置移動させる回転体60,130の角度区間とは、互いに重なり合っていない。この実施形態の構造によれば、第一駆動機構31による蓋体20のロック/ロック解除動作と第二駆動機構32による蓋体20の開閉動作とが、時間的に分離して行われるので、それらの動作中におけるロックシャフト70,140とアーム40,120との干渉を確実に防止することができる。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、両角度区間が互いに重なり合う部分を有するものとしてもよい。
【0103】
例えば、回転体60,130のカム溝62やカム突起132の設定によっては、第一駆動機構31,111によりロックシャフト70,140がロック位置からロック解除位置へ向けて後退し始めてそのロック解除位置に達した後も、更なる回転体60,130の正回転によりロックシャフト70,140がそのロック解除位置を保ったまま更に後退することが起こり得る。このロックシャフト70,140がロック解除位置への到達後も更に後退することがある構造では、ロックシャフト70,140のロック解除位置への到達後であればその後退停止前にアーム40,120の開方向への回動が開始されても、ロックシャフト70,140とアーム40,120との干渉は生じない。
【0104】
また、上記の如くロックシャフト70,140がロック解除位置への到達後も更に後退することがある構造では、逆に、ロックシャフト70,140がロック解除位置からロック位置側へ前進を開始しても、そのロックシャフト70,140がロック解除位置に位置する状態が継続するときがある。この構造では、アーム40が蓋体20の閉位置への到達前にロックシャフト70,140のロック解除位置からロック位置への前進が開始されても、ロックシャフト70,140とアーム40,120との干渉が生じないことがある。
【0105】
そこで、ロックシャフト70,140とアーム40,120との干渉が生じない範囲すなわち第一駆動機構31による蓋体20のロック/ロック解除動作と第二駆動機構32による蓋体20の開閉動作とをそれぞれ適切に実行可能な範囲で、第一駆動機構31,111が作動する回転体60,130の角度区間と、第二駆動機構32,112が作動する回転体60,130の角度区間とが、互いに重なり合う部分を有するものであってもよい。
【0106】
尚、本発明は、上述した実施形態や変形形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0107】
1,100:蓋開閉構造、10:有底基材、12:開口、14:アームボックス、20:蓋体、30,110:駆動装置、31,111:第一駆動機構、32,112:第二駆動機構、33:アクチュエータボックス、40,120:アーム、44:クッションプレート、50:電動アクチュエータ、60,130:回転体、62:カム溝、65,134:第一係合部、70,140:ロックシャフト、72,142:従動部、80:開閉シャフト、83,122:第二係合部、90,150:付勢部材、132:カム突起、C:回動中心軸、S1:ロック側駆動区間部、S2:ロック側空転区間部。