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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ガラスロール
(51)【国際特許分類】
   B32B 17/10 20060101AFI20221213BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20221213BHJP
   B65H 75/10 20060101ALI20221213BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20221213BHJP
【FI】
B32B17/10
B32B7/12
B65H75/10
C09J7/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019222280
(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公開番号】P2021091135
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】森 弘樹
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-43366(JP,A)
【文献】特開2010-228166(JP,A)
【文献】特開2014-32222(JP,A)
【文献】特開2013-79181(JP,A)
【文献】特開2013-22903(JP,A)
【文献】特開2001-113631(JP,A)
【文献】特開2001-97733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65H 75/00-75/32
B65D 85/58-85/68
C09J 7/00-7/50
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスフィルムと、保護フィルムと、前記ガラスフィルムと前記保護フィルムとの間に設けられ、前記ガラスフィルムを前記保護フィルムに接着する接着層とを備えた積層フィルムをロール状に巻き取ったものを含むガラスロールにおいて、
前記保護フィルムの幅が前記ガラスフィルムの幅よりも大きく、前記保護フィルムの幅方向の両端部がそれぞれ前記ガラスフィルムからはみ出しており、かつ、前記ガラスフィルムの幅が前記接着層の幅よりも大きく、前記ガラスフィルムの幅方向の両端部がそれぞれ前記接着層からはみ出していることを特徴とするガラスロール。
【請求項2】
前記ガラスフィルムの幅方向の各端部の前記接着層からのはみ出し幅が、0.1mm~10mmである請求項1に記載のガラスロール。
【請求項3】
前記保護フィルムの幅方向の各端部の前記ガラスフィルムからのはみ出し幅が、1mm~100mmである請求項1又は2に記載のガラスロール。
【請求項4】
前記接着層は、前記保護フィルムの一方の面に形成された微粘着層である請求項1~3のいずれか1項に記載のガラスロール。
【請求項5】
前記接着層の厚みが、100μm以下である請求項1~4のいずれか1項に記載のガラスロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスフィルムをロール状に巻き取ってなるガラスロールに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの薄型表示機器、さらには近年急速に普及しているスマートフォンやタブレット型PCなどのモバイル機器は、軽量であることが要求される。そのため、これらの機器に採用されるガラス基板としては、フィルム状に薄板化されたガラスフィルムが使用されつつある。このガラスフィルムは、最終製品の段階では、略矩形状等の形態をなすが、それ以前の製造工程や各種処理工程などの段階では、帯状の形態をなすものとして取り扱われている。
【0003】
この種のガラスフィルムは、適切な可撓性を有することから、保管時や輸送時等の利便性を考慮して、巻芯等の周囲にロール状に巻き取ったガラスロールの形態とすることがある。したがって、ガラスフィルムをガラスロールの形態としておけば、保管性等に優れるだけでなく、略矩形状等のガラスフィルムを多数枚に亘って切り出すことも容易に行い得る。
【0004】
その一方で、この種のガラスフィルムは、機械的強度が低く、損傷や破損等が生じ易いため、そのままでの取り扱いには注意を要する。すなわち、ガラスフィルムをロール状に巻き取ってガラスロールを製作した場合には、巻き取られたガラスフィルム同士が接触して、傷が付く等の損傷が生じ得る。そこで、ガラスフィルムに、樹脂等からなる帯状の保護フィルムを重ねた状態で、ロール状に巻き取ることでガラスロールを製作することが広く行われている。
【0005】
例えば特許文献1には、ガラスフィルムと、接着層(粘着面)を有する保護フィルムとを貼り合わせて積層フィルムを形成し、当該積層フィルムをロール状に巻き取ることで、ガラスロールを製造する方法が開示さている。
【0006】
同文献では、保護フィルムの幅をガラスフィルムの幅よりも小さくしたり、保護フィルムの幅をガラスフィルムの幅以上にしたりすることが開示されている。なお、接着層は、保護フィルムの一方の面の全面に形成されている。つまり、接着層の大きさは、保護フィルムの大きさと同じである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-187797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示のガラスロールにおいて、保護フィルムの幅をガラスフィルムの幅よりも小さくすると、ガラスフィルムの幅方向の両端部がそれぞれ保護フィルムからはみ出す。この場合、ガラスフィルムの幅方向の端部を保護フィルムにより保護できない。その結果、例えば、ガラスフィルムに成膜、印刷、他部材の貼り合わせなどの製造関連処理を施すために、ガラスロールから引き出した積層フィルムをロールトゥロール(Roll to Roll)装置などの搬送設備に投入すると、ガラスフィルムの幅方向の端部が、搬送設備(例えば、ガイドローラなど)と接触して破損するおそれがある。なお、保護フィルムの幅をガラスフィルムの幅と同じにした場合も、ガラスフィルムの幅方向の端部を保護フィルムで十分に保護できず、ガラスフィルムの破損の問題が同様に生じ得る。
【0009】
一方、特許文献1に開示のガラスロールにおいて、保護フィルムの幅をガラスフィルムの幅よりも大きくすると、保護フィルムの幅方向の両端部がそれぞれガラスフィルムからはみ出す。この場合、ガラスフィルムの幅方向の端部を保護フィルムによって保護できるため、ガラスフィルムの破損を抑制できる。しかしながら、接着層の大きさは、保護フィルムの大きさと同じであるため、ガラスフィルムの端部からはみ出した保護フィルムの表面には接着層が露出している。その結果、ガラスロールから引き出した積層フィルムを搬送設備に投入すると、接着層を構成する接着剤(粘着剤)が搬送設備に付着し、搬送設備を汚染するおそれがある。なお、保護フィルムの幅をガラスフィルムの幅と同じにした場合も、ガラスフィルム、保護フィルム及び接着層のそれぞれの幅方向の端面が、同一平面上に位置するため、接着層を構成する接着剤の付着による搬送設備の汚染の問題は同様に生じ得る。
【0010】
本発明は、ガラスフィルムの破損を抑制しつつ、接着剤による周囲環境の汚染を抑制し得るガラスロールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、ガラスフィルムと、保護フィルムと、ガラスフィルムと保護フィルムとの間に設けられ、ガラスフィルムを保護フィルムに接着する接着層とを備えた積層フィルムをロール状に巻き取ったものを含むガラスロールにおいて、保護フィルムの幅がガラスフィルムの幅よりも大きく、保護フィルムの幅方向の両端部がそれぞれガラスフィルムからはみ出しており、かつ、ガラスフィルムの幅が接着層の幅よりも大きく、ガラスフィルムの幅方向の両端部がそれぞれ接着層からはみ出していることを特徴とする。
【0012】
このようにすれば、保護フィルムの幅がガラスフィルムの幅よりも大きく、保護フィルムの幅方向の両端部がそれぞれガラスフィルムからはみ出しているため、ガラスフィルムの幅方向の両端部が保護フィルムによって確実に保護される。また、保護フィルムよりも幅狭のガラスフィルムの幅が接着層の幅よりも大きく、ガラスフィルムの幅方向の両端部がそれぞれ接着層からはみ出しているため、接着層が、保護フィルム及びガラスフィルムのそれぞれの幅方向の端部よりも内側に完全に隠れる。したがって、保護フィルムによってガラスフィルムの破損を抑制しつつ、接着層を構成する接着剤の付着による周囲環境の汚染を抑制できる。
【0013】
上記の構成において、ガラスフィルムの幅方向の各端部の接着層からのはみ出し幅が、0.1mm~10mmであることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、ガラスフィルムと保護フィルムとを確実に接着するための十分な接着面積を確保しつつ、接着層による搬送設備の汚染をより確実に抑制できる。
【0015】
上記の構成において、保護フィルムの幅方向の各端部のガラスフィルムからのはみ出し幅が、1mm~100mmであることが好ましい。
【0016】
このようにすれば、保護フィルムによりガラスフィルムの幅方向の端部を確実に保護しつつ、保護フィルムがガラスフィルムに比べて大きくなりすぎ、保護フィルムに無駄が生じるのを抑制できる。
【0017】
上記の構成において、接着層は、保護フィルムの一方の面に形成された微粘着層であってもよい。
【0018】
このようにすれば、必要に応じて、ガラスフィルムを保護フィルムから簡単に剥離できる。
【0019】
上記の構成において、接着層の厚みが、100μm以下であることが好ましい。
【0020】
このようにすれば、接着層が十分に薄くなるため、接着層を構成する接着剤の付着による搬送設備の汚染をより確実に抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、保護フィルムによってガラスフィルムの破損を抑制しつつ、接着層を構成する接着剤の付着による周囲環境の汚染を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第一実施形態に係るガラスロールを示す斜視図である。
図2図1のS-S断面図である。
図3】第一実施形態に係るガラスロールの製造方法を示す側面図である。
図4】第二実施形態に係るガラスロールの製造方法を示す側面図である。
図5】第三実施形態に係るガラスロールの製造方法を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0024】
(第一実施形態)
図1に示すように、第一実施形態に係るガラスロール1は、帯状のガラスフィルム2と帯状の保護フィルム3とを接着層4を介して重ねた積層フィルム5を巻芯6の周囲にロール状に巻き取ったものである。
【0025】
ガラスフィルム2は、表裏の関係にある第一の面2a及び第二の面2bを有する。本実施形態において、ガラスロール1が電子部品用途で使用される場合は、第一の面2aが保証面であり、第二の面2bが非保証面である。保証面は、素子等が形成される製品側の面であって、その面性状が保証される面であるのに対し、非保証面は、保証面の程度まで面性状が保証されなくともよい面である。このガラスロール1は、ガラスフィルム2の第一の面2aが内側となり、第二の面2bが外側となるように構成される。なお、ガラスロール1が、特に面精度が求められない用途に使用される場合については、保証面と非保証面の区別はなくてもよい。
【0026】
ガラスフィルム2の厚みは、好ましくは300μm以下であり、より好ましくは10μm以上200μm以下であり、最も好ましくは30μm以上100μm以下である。
【0027】
ガラスフィルム2の材質としては、ケイ酸塩ガラス、シリカガラスが用いられ、好ましくはホウ珪酸ガラス、ソーダライムガラス、アルミノ珪酸塩ガラス、化学強化ガラスが用いられ、最も好ましくは無アルカリガラスが用いられる。ガラスフィルム2として無アルカリガラスを使用することで、化学的に安定なガラスとすることができる。ここで、無アルカリガラスとは、アルカリ成分(アルカリ金属酸化物)が実質的に含まれていないガラスのことであって、具体的には、アルカリ成分の重量比が3000ppm以下のガラスのことである。本発明におけるアルカリ成分の重量比は、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは500ppm以下であり、最も好ましくは300ppm以下である。
【0028】
ガラスフィルム2は、公知のフロート法、ロールアウト法、スロットダウンドロー法、リドロー法等により成形できるが、オーバーフローダウンドロー法によって成形されていることが好ましい。
【0029】
保護フィルム3の厚みは、好ましくは10μm以上1000μm以下であり、より好ましくは20μm以上500μm以下である。
【0030】
保護フィルム3の材質としては、例えば、アイオノマーフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム、エチレン-メタクリル酸共重合体フィルム、ナイロン(登録商標)フィルム(ポリアミドフィルム)、ポリイミドフィルム、セロファンなどの有機樹脂フィルム(合成樹脂フィルム)等を使用でき、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を使用することが好ましい。
【0031】
接着層4は、保護フィルム3の一方の面3aに形成され、ガラスフィルム2の第二の面2bに接触する。つまり、積層フィルム5の状態で、ガラスフィルム2の第二の面2bが、接着層4を介して保護フィルム3の一方の面3aに接着される。
【0032】
接着層4の厚みは、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは50μm以下であり、最も好ましくは10μm以下である。
【0033】
接着層4は、ガラスフィルム2を剥離できる程度の弱い接着力を有する層(微粘着層)であってもよいし、ガラスフィルム2を実質的に剥離できない程度の強い接着力を有する層であってもよい。ここで、接着層4とは、粘着層を含む概念である。微粘着層としては、180°剥離強度試験(JIS Z 0237:2009に準拠)により測定した粘着力(剥離強度)が、例えば0.001N/25mm以上1.5N/25mm以下であるものを用いることができる。
【0034】
接着層4の材質としては、例えば、ゴム系接着剤、アクリル系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリエーテルやポリウレタン系接着剤などを使用できる。アクリル系接着剤は剥離時に糊残りが少ないため、ガラスフィルム2の剥離を前提とする場合に好適である。また、接着層4の形態としては、溶剤型接着剤、非水エマルジョン型接着剤、水系エマルジョン型接着剤、水溶性型接着剤、無溶剤型接着剤、液状硬化型接着剤などを使用できる。なお、接着層4を、ガラスフィルム2を実質的に剥離できない程度の強い接着力を有する層とする場合には、各種の熱可塑性樹脂接着剤や熱硬化性樹脂接着剤を適用してもよい。
【0035】
巻芯6は、この実施形態では、中空の円筒状を呈しているが、中実の円柱状であってもよい。
【0036】
巻芯6の材質は、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム合金、ステンレス鋼、マンガン鋼、炭素鋼などの金属、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ジリアルテレフタレート樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂、もしくはこれらの熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂にガラス繊維や炭素繊維などの強化繊維を混合した強化プラスチック、紙管などを使用できる。
【0037】
図2に示すように、積層フィルム5において、保護フィルム3の幅Aは、ガラスフィルム2の幅Bよりも大きく、保護フィルム3の幅方向の両端部3xがそれぞれガラスフィルム2からはみ出している。また、ガラスフィルム2の幅Bが接着層4の幅Cよりも大きく、ガラスフィルム2の幅方向の両端部2xがそれぞれ接着層4からはみ出している。
【0038】
ガラスフィルム2の幅方向の各端部2xの接着層4からのはみ出し幅Dは、好ましくは0.1mm~10mmであり、より好ましくは0.5mm~1mmである。
【0039】
保護フィルム3の幅方向の各端部3xのガラスフィルム2からのはみ出し幅Eは、好ましくは1mm~100mmであり、より好ましくは3mm~10mmである。
【0040】
このようなガラスロール1であれば、保護フィルム3の幅方向の両端部3xがそれぞれガラスフィルム2からはみ出しているため、ガラスフィルム2の幅方向の両端部2xが保護フィルム3によって確実に保護される。また、保護フィルム3よりも幅狭のガラスフィルム2の幅方向の両端部2xがそれぞれ接着層4からはみ出しているため、接着層4が、ガラスフィルム2及び保護フィルム3のそれぞれの幅方向の端部2x,3xよりも内側に完全に隠れる。したがって、ガラスロール1から積層フィルム5を引き出して搬送設備に投入した場合でも、ガラスフィルム2の破損や、接着層4を構成する接着剤の付着による周囲環境の汚染(例えば搬送設備のローラへの接着剤の付着など)を抑制できる。
【0041】
図3は、ガラスロール1の製造装置7を示す。製造装置7は、母材となるガラスフィルム2からなる母材ガラスロール1Aと、保護フィルム供給装置8と、上記のガラスロール1とを備える。
【0042】
母材ガラスロール1Aは、ガラスフィルム2を巻芯6Aで巻き取ることにより構成される。母材ガラスロール1Aの巻芯6Aと、ガラスロール1の巻芯6とは所定の間隔をおいて配置される。本実施形態では、母材ガラスロール1Aとガラスロール1とは、ロールトゥロール方式により連結される。すなわち、巻芯6Aに巻き取られているガラスフィルム2は、母材ガラスロール1Aから引き出された後、ガラスロール1に係る巻芯6によりロール状に巻き取られる。
【0043】
保護フィルム供給装置8は、母材ガラスロール1Aとガラスロール1との間に配置される。保護フィルム供給装置8は、保護フィルムロール9と、ガイドローラ10とを備える。
【0044】
保護フィルムロール9は、帯状の保護フィルム3の一方の面3aに形成された接着層4にセパレータ11を重ねたものを巻芯9aによりロール状に巻き取ったものである。この状態で、図2に示したように、保護フィルム3の幅Aは、ガラスフィルム2の幅Bよりも大きく設定されており、接着層4の幅Cは、ガラスフィルム2の幅Bよりも小さく設定されている。保護フィルムロール9は、母材ガラスロール1Aとガラスロール1との間に架け渡されたガラスフィルム2の下方位置に配置されるが、この構成に限定されない。保護フィルムロール9は、母材ガラスロール1Aとガラスロール1との間に架け渡されたガラスフィルム2の上方位置に配置されてもよい。
【0045】
保護フィルムロール9の近傍位置には、保護フィルム3から剥離させたセパレータ11を巻き取る巻芯11aが配置される。なお、接着層4の種類や粘着力によっては、セパレータ11及び巻芯11aは、省略してもよい。
【0046】
ガイドローラ10は、一対のローラにより構成される。ガイドローラ10は、ガラスフィルム2及び保護フィルム3を挟むように構成される。
【0047】
以下、上記の製造装置7によってガラスロール1を製造する方法について説明する。本方法は、ガラスフィルム供給工程と、保護フィルム供給工程と、巻取工程とを備える。
【0048】
ガラスフィルム供給工程では、ガラスフィルム2を母材ガラスロール1Aから引き出すとともに、下流側に搬送する。
【0049】
保護フィルム供給工程では、巻芯9aの回転とともに保護フィルムロール9から保護フィルム3を引き出す。これと同時に、保護フィルム3からセパレータ11を剥離する。剥離したセパレータ11は、巻芯11aにより巻き取る。引き出された保護フィルム3の一方の面3aに形成された接着層4は、ガイドローラ10を介してガラスフィルム2の第二の面2bに接触する。より具体的には、ガイドローラ10によって保護フィルム3及びガラスフィルム2を挟むことで、保護フィルム3の一方の面3aに形成された接着層4が、ガラスフィルム2の第二の面2bに貼り付けられる。これにより、ガイドローラ10の下流側において、ガラスフィルム2及び保護フィルム3が接着層4を介して接着された積層フィルム5が連続的に形成される。
【0050】
巻取工程では、保護フィルム供給工程を経て形成された積層フィルム5を、巻芯6の回転により巻き取る。所定長さのガラスフィルム2が巻芯6に巻き取られると、巻取工程が終了し、ガラスロール1が完成する。
【0051】
(第二実施形態)
図4は、本発明の第二実施形態を示す。本実施形態では、ガラスロール1の製造装置7が搬送装置12を備える点、及び、保護フィルム供給装置8の構成が、第一実施形態と異なる。
【0052】
搬送装置12は、母材ガラスロール1Aと、ガラスロール1との間に配置される。搬送装置12は、ベルトコンベアにより構成されるが、これに限定されるものではない。搬送装置12は、無端帯状のベルト12aを駆動することにより、上流側の母材ガラスロール1Aから引き出されたガラスフィルム2を下流側の巻芯6へと案内する。なお、搬送装置12は省略してもよい。
【0053】
保護フィルム供給装置8は、ガラスロール1の近傍に配置される。保護フィルム供給装置8は、保護フィルムロール9と、ガイドローラ10と、このガイドローラ10の支持機構13とを備える。
【0054】
保護フィルムロール9は、ガラスロール1の上方に配置されるが、この構成に限定されない。保護フィルムロール9は、ガラスロール1の下流側の位置又は下方位置に配置されてもよい。保護フィルムロール9の近傍位置には、保護フィルム3から剥離させたセパレータ11を巻き取る巻芯11aが配置される。なお、接着層4の種類や粘着力によっては、セパレータ11及び巻芯11aは、省略してもよい。
【0055】
ガイドローラ10は、一個のローラにより構成される。ガイドローラ10は、ガラスロール1の巻芯6とともに、ガラスフィルム2と保護フィルム3とを挟むように構成される。ガイドローラ10は、ガラスロール1の巻芯6よりも上方に配置されるが、この位置に限定されない。
【0056】
支持機構13は、ガイドローラ10を回転自在に支持する支持部材14と、この支持部材14を回動自在に支持する支持軸15とを備える。
【0057】
ガイドローラ10は、支持部材14を介して支持軸15まわりに作用するモーメントにより、適度な押圧力でガラスロール1の上部に接触する。ガイドローラ10は、ガラスロール1の上部に接触する場合に、その自重によりガラスロール1との接触を維持する。ガイドローラ10は、この支持機構13により、ガラスロール1の外径の拡大に追従して移動するように支持される。すなわち、ガイドローラ10は、ガラスロール1の外径の拡大に応じて、図2において実線で示す位置から二点鎖線で示す位置へと徐々に移動する。なお、支持機構13には、流体圧式のピストン・シリンダ機構、電動モータその他の機構を用いてもよい。
【0058】
本実施形態に係るガラスロール1の製造方法は、第一実施形態と同様に、ガラスフィルム供給工程と、保護フィルム供給工程と、巻取工程とを備える。
【0059】
ガラスフィルム供給工程では、ガラスフィルム2が母材ガラスロール1Aから引き出されるとともに、搬送装置12によって下流側に搬送される。
【0060】
保護フィルム供給工程では、保護フィルムロール9から保護フィルム3を引き出すとともに、保護フィルム3からセパレータ11を剥離する。剥離したセパレータ11は、巻芯11aにより巻き取る。保護フィルム供給装置8におけるガイドローラ10は、ガラスロール1の一部(上部)に接触しており、この位置で、保護フィルム3をガラスフィルム2の第二の面2bに接触させる。より具体的には、ガラスロール1の巻芯6とガイドローラ10とによって保護フィルム3及びガラスフィルム2を挟むことで、保護フィルム3の一方の面3aに形成された接着層4が、ガラスフィルム2の第二の面2bに貼り付けられる。これにより、ガラスフィルム2及び保護フィルム3が接着層4を介して接着された積層フィルム5が連続的に形成される。
【0061】
巻取工程では、保護フィルム供給工程を経て形成された積層フィルム5を、巻芯6の回転により巻き取る。所定長さのガラスフィルム2が巻芯6に巻き取られると、巻取工程が終了し、ガラスロール1が完成する。
【0062】
巻取工程の間、ガラスロール1は、巻芯6の回転に応じてその外径を拡大する。保護フィルム供給装置8のガイドローラ10は、ガラスロール1の外径の拡大に追従して移動する。支持機構13の支持部材14は、ガイドローラ10を移動させるべく、支持軸15の周りを(反時計回りに)回転する(図4における二点鎖線を参照)。
【0063】
なお、保護フィルム供給装置8は、母材ガラスロール1Aの近傍に配置されていてもよい。つまり、保護フィルム供給装置8におけるガイドローラ10を、母材ガラスロール1Aの一部(例えば上部)に接触させ、この位置で、保護フィルム3をガラスフィルム2の第二の面2bに接触させてもよい。この場合、母材ガラスロール1Aから積層フィルム5が下流側(例えば搬送装置12)に供給される。
【0064】
(第三実施形態)
図5は、本発明の第三実施形態を示す。本実施形態に係る製造装置7は、オーバーフローダウンドロー法によって連続的に成形したガラスフィルム2を巻き取ることにより、ガラスロール1を製造する。
【0065】
製造装置7は、ガラスフィルム2を成形する成形部16と、ガラスフィルム2の進行方向を縦方向下方から横方向に変換する方向変換部17と、方向変換後にガラスフィルム2を横方向に搬送する横搬送部18と、ガラスフィルム2における幅方向端部の耳部2cを切断する切断部19と、耳部2cが除去されたガラスフィルム2をロール状に巻き取ってガラスロール1を構成する巻取部20とを備える。
【0066】
成形部16は、上端部にオーバーフロー溝21aが形成された断面視略楔形の成形体21と、成形体21の直下に配置されて、成形体21から溢出した溶融ガラスを表裏両側から挟持するエッジローラ22と、エッジローラ22の直下に配備されるアニーラ23とを備える。
【0067】
成形部16は、成形体21のオーバーフロー溝21aの上方から溢流した溶融ガラスを、両側面に沿ってそれぞれ流下させ、下端で合流させてフィルム状の溶融ガラスを成形する。エッジローラ22は、溶融ガラスの幅方向収縮を規制して所定幅のガラスフィルム2とする。アニーラ23は、ガラスフィルム2に対して除歪処理を施すためのものである。このアニーラ23は、上下方向複数段に配設されたアニーラローラ24を有する。
【0068】
アニーラ23の下方には、ガラスフィルム2を表裏両側から挟持する支持ローラ25が配置されている。支持ローラ25とエッジローラ22との間、又は支持ローラ25といずれか一箇所のアニーラローラ24との間では、ガラスフィルム2を薄肉にすることを助長するための張力が付与されている。
【0069】
方向変換部17は、支持ローラ25の下方位置に設けられている。方向変換部17には、ガラスフィルム2を案内する複数のガイドローラ26が湾曲状に配列されている。これらのガイドローラ26は、鉛直方向に搬送されるガラスフィルム2を横方向へと案内する。
【0070】
横搬送部18は、方向変換部17の進行方向前方(下流側)に配置される。横搬送部18は、ベルトコンベアにより構成されるが、この構成に限定されない。横搬送部18は、無端帯状のベルト18aを駆動することにより、方向変換部17を通過したガラスフィルム2を下流側へと連続的に搬送する。
【0071】
切断部19は、横搬送部18の上方に配置される。本実施形態では、切断部19は、レーザ割断によりガラスフィルム2を切断するが、これに限定されず、レーザ溶断その他の切断手段であってもよい。切断部19は、レーザ照射装置27と、冷却装置28とを備える。レーザ照射装置27は、ガラスフィルム2の所定部位にレーザ光Lを照射することにより、当該部位を局部加熱する。冷却装置28は、ガラスフィルム2の搬送方向において、レーザ照射装置27の下流側に配置される。冷却装置28は、ガラスフィルム2において局部加熱された部位に冷媒Wを噴射して当該部位を冷却する。
【0072】
巻取部20は、横搬送部18及び切断部19の下流側に設置されている。巻取部20は、巻芯6を回転させることで、ガラスフィルム2をロール状に巻き取る。保護フィルム供給装置8は、この巻取部20の近傍位置に配置されている。保護フィルム供給装置8の構成は、第二実施形態と同じである。なお、保護フィルム供給装置8の構成は、第一実施形態と同じものであってもよい。この場合、切断部19とガラスロール1との間に保護フィルム供給装置8が配置される。
【0073】
以下、上記構成の製造装置7によりガラスロール1を製造する方法について説明する。本製造方法は、成形部16によって帯状のガラスフィルム2を成形する成形工程と、方向変換部17及び横搬送部18によりガラスフィルム2を搬送する搬送工程と、切断部19によりガラスフィルム2の幅方向端部(耳部2c)を切断する切断工程と、切断工程後に、ガラスフィルム2を巻取部20に供給するガラスフィルム供給工程と、ガラスフィルム2に保護フィルム3を重ねる保護フィルム供給工程と、ガラスフィルム2を巻取部20によって巻き取る巻取工程とを備える。
【0074】
成形工程では、成形部16における成形体21のオーバーフロー溝21aの上方から溢流した溶融ガラスを、両側面に沿ってそれぞれ流下させ、下端で合流させてフィルム状の溶融ガラスとする。この際、溶融ガラスの幅方向収縮をエッジローラ22により規制して所定幅のガラスフィルム2とする。その後、ガラスフィルム2に対してアニーラ23により除歪処理を施す(徐冷工程)。支持ローラ25の張力により、ガラスフィルム2は所定の厚みに形成される。
【0075】
搬送工程では、方向変換部17によってガラスフィルム2の搬送方向を横方向に変換するとともに、横搬送部18によって、ガラスフィルム2を下流側の巻取部20へと搬送する。
【0076】
切断工程では、横搬送部18によってガラスフィルム2を下流側に送りつつ、切断部19において、図示しない加傷部材でガラスフィルム2の先端部に初期クラックを形成した後、レーザ照射装置27の局部加熱による膨張と冷却装置の28の冷却による収縮とでガラスフィルム2に熱応力を生じさせる。これにより、非製品部としての耳部2cが製品部としてのガラスフィルム2から分離する。
【0077】
ガラスフィルム供給工程では、切断工程によって耳部2cが除去されたガラスフィルム2が巻取部20に供給される。なお、耳部2cは、横搬送部18の下流側に搬送され、巻取部20の上流側で、図示しない回収装置により回収される。
【0078】
保護フィルム供給工程では、第二実施形態と同様に、保護フィルム3からセパレータ11を剥離させ、ガイドローラ10と巻芯6とによって、保護フィルム3及びガラスフィルム2を挟むことで、保護フィルム3の一方の面3aに形成された接着層4をガラスフィルム2の第二の面2bに貼り付ける。これにより、ガラスフィルム2及び保護フィルム3が接着層4を介して接着された積層フィルム5が連続的に形成される。
【0079】
巻取工程では、積層フィルム5を巻芯6により巻き取る。巻芯6は、保護フィルム3がガラスフィルム2の外周側に位置するように、積層フィルム5を巻き取る。所定長さのガラスフィルム2が巻き取られると、巻取工程が終了し、ガラスロール1が完成する。
【0080】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0081】
上記の実施形態では、ガラスフィルム2のみからなる母材ガラスロール1Aを例示したが、この構成に限定されない。母材ガラスロール1Aは、母材となるガラスフィルム2に、PET等の樹脂からなる帯状の緩衝フィルムを重ねたものをロール状に構成したものであってもよい。この場合、ガラスフィルム供給工程において、母材ガラスロール1Aから引き出されたガラスフィルム2と緩衝フィルムとを分離させる。分離した緩衝フィルムは、母材ガラスロール1Aの近傍で、別途用意された巻芯により巻き取られる。
【0082】
上記の実施形態では、ガラスフィルム2の第二の面2bに保護フィルム3を接着させた後、そのまま巻芯6に巻き取る構成を例示したが、この構成には限定されない。ガラスフィルム2の第二の面2bに保護フィルム3を接着させた後、ガラスフィルム2の第一の面2a側にPET等の樹脂からなる帯状の緩衝フィルムを重ねて(非接着の状態で)巻芯6に巻き取ってもよい。この場合、より効果的に、第一の面2a(保証面)の面精度を確保することができる。
【0083】
帯状のガラスフィルム2の始端部及び終端部には、当該ガラスフィルム2と巻芯6A,6とを連結するためのリーダ(例えば帯状の樹脂フィルム)が接続されてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 ガラスロール
2 ガラスフィルム
3 保護フィルム
4 接着層
5 積層フィルム
6 巻芯
7 製造装置
8 保護フィルム供給装置
9 保護フィルムロール
10 ガイドローラ
11 セパレータ
12 搬送装置
13 支持機構
14 支持部材
17 方向変換部
18 横搬送部
19 切断部
20 巻取部
21 成形体
22 エッジローラ
23 アニーラ
24 アニーラローラ
25 支持ローラ
26 ガイドローラ
27 レーザ照射装置
28 冷却装置
A 保護フィルムの幅
B ガラスフィルムの幅
C 接着層の幅
D ガラスフィルムの接着層からのはみ出し幅
E 保護フィルムのガラスフィルムからのはみ出し幅
図1
図2
図3
図4
図5