(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】不定形耐火物硬化体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
F27D 1/00 20060101AFI20221213BHJP
C04B 35/66 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
F27D1/00 N
C04B35/66
(21)【出願番号】P 2019222365
(22)【出願日】2019-12-09
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(72)【発明者】
【氏名】内山 未有
(72)【発明者】
【氏名】松永 久宏
【審査官】立木 林
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-081361(JP,A)
【文献】特開平08-169754(JP,A)
【文献】特開昭62-260767(JP,A)
【文献】国際公開第2019/092894(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/66
F27D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不定形耐火物硬化体であって、
閉気孔の平均体積が0.05mm
3以下であり、
前記閉気孔および前記不定形耐火物硬化体の合計体積に対する、前記閉気孔の体積の割合が、10体積%以下である、不定形耐火物硬化体。
【請求項2】
アルミナ-マグネシア質、アルミナ-スピネル質、アルミナ-マグネシア-カーボン質、アルミナ-スピネル-カーボン質、アルミナ-炭化ケイ素-カーボン質、または、シリカ・アルミナ-アルミナ-炭化ケイ素-カーボン質の不定形耐火物硬化体である、請求項1に記載の不定形耐火物硬化体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の不定形耐火物硬化体を製造する方法であって、
耐火性粉体を含有する粉体組成物に水を添加して混練することにより不定形耐火物を得て、得られた前記不定形耐火物を硬化させ、
前記粉体組成物が、更に、消泡剤、または、消泡剤およびAE剤を含有する、不定形耐火物硬化体の製造方法。
【請求項4】
前記消泡剤の含有量が、前記耐火性粉体における粒径が0.1mm以下の微粉100質量部に対して、外かけで、0.01質量部以上0.10質量部以下である、請求項3に記載の不定形耐火物硬化体の製造方法。
【請求項5】
前記AE剤の含有量が、前記耐火性粉体における粒径が0.1mm以下の微粉100質量部に対して、外かけで、0質量部以上0.05質量部以下である、請求項4に記載の不定形耐火物硬化体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不定形耐火物硬化体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶鉄やスラグなどの高温溶融物を収容する容器(以下、単に「容器」ともいう)として、高炉鍋、トーピードカー、転炉、取鍋などが知られている。
容器の内張りには、不定形耐火物硬化体などが使用される。
高温溶融物を容器に供給する、または、高温溶融物を容器から排出する毎に、容器に内張りされた不定形耐火物硬化体においては、温度が急激に変化し、熱応力が発生する。この熱応力(熱衝撃)の発生によって、不定形耐火物硬化体にスポーリングが発生する場合がある。
耐スポーリング性を上げるためには、一般的には、ろう石などの低融点物質を多量に不定形耐火物硬化体に含有させて、熱応力を緩和させる。こうして、亀裂の発生および進展を抑える。
例えば、使用温度が低い環境;接触する高温溶融物の流動が小さい環境;等の耐溶損性に対する条件が比較的緩やかな環境において使用される不定形耐火物硬化体には、ある程度、ろう石などの低融点物質が含まれていても問題はない。
しかし、ろう石などの低融点物質を、耐スポーリング性を向上させるために、多量に加えると、溶鉄やスラグなどの高温溶融物により不定形耐火物硬化体が溶損しやすくなる。すなわち、耐溶損性が不十分となりやすい。
そこで、従来、ろう石を使用しないで、耐スポーリング性を向上させる技術が開発されている(特許文献1~2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-351678号公報
【文献】特開2010-236734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、不定形耐火物硬化体の耐スポーリング性を上げるためには、一般的には、ろう石が用いられるが、この場合、耐溶損性が不十分となりやすい。
本発明は、以上の点を鑑みてなされたものであり、耐溶損性と耐スポーリング性とが共に優れる不定形耐火物硬化体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、不定形耐火物硬化体の閉気孔を制御することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[5]を提供する。
[1]不定形耐火物硬化体であって、閉気孔の平均体積が0.05mm3以下であり、上記閉気孔および上記不定形耐火物硬化体の合計体積に対する、上記閉気孔の体積の割合が、10体積%以下である、不定形耐火物硬化体。
[2]アルミナ-マグネシア質、アルミナ-スピネル質、アルミナ-マグネシア-カーボン質、アルミナ-スピネル-カーボン質、アルミナ-炭化ケイ素-カーボン質、または、シリカ・アルミナ-アルミナ-炭化ケイ素-カーボン質の不定形耐火物硬化体である、上記[1]に記載の不定形耐火物硬化体。
[3]上記[1]または[2]に記載の不定形耐火物硬化体を製造する方法であって、耐火性粉体を含有する粉体組成物に水を添加して混練することにより不定形耐火物を得て、得られた上記不定形耐火物を硬化させ、上記粉体組成物が、更に、消泡剤、または、消泡剤およびAE剤を含有する、不定形耐火物硬化体の製造方法。
[4]上記消泡剤の含有量が、上記耐火性粉体における粒径が0.1mm以下の微粉100質量部に対して、外かけで、0.01質量部以上0.10質量部以下である、上記[3]に記載の不定形耐火物硬化体の製造方法。
[5]上記AE剤の含有量が、上記耐火性粉体における粒径が0.1mm以下の微粉100質量部に対して、外かけで、0質量部以上0.05質量部以下である、上記[4]に記載の不定形耐火物硬化体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐溶損性と耐スポーリング性とが共に優れる不定形耐火物硬化体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[不定形耐火物硬化体]
本発明の不定形耐火物硬化体は、不定形耐火物硬化体であって、閉気孔の平均体積が0.05mm3以下であり、上記閉気孔および上記不定形耐火物硬化体の合計体積に対する、上記閉気孔の体積の割合(以下、単に、「閉気孔の割合」ともいう)が、10体積%以下である、不定形耐火物硬化体である。
ここで、閉気孔とは、不定形耐火物硬化体の内部の気孔であって、周囲が全て不定形耐火物硬化体に囲まれている気孔を意味する。周囲の一部が不定形耐火物硬化体の外部に通じている気孔である開気孔は含まない。
【0009】
すなわち、本発明の不定形耐火物硬化体は、閉気孔が少なく、かつ、閉気孔が小さい。このような閉気孔が均等に分散していると考えられる。これにより、耐溶損性と耐スポーリング性とが共に優れる。
その理由は、次のように推測される。
まず、不定形耐火物硬化体の閉気孔が多かったり大きかったりすると、不定形耐火物硬化体を使用する間に、表面の損耗が進み、閉気孔が開気孔になったときに、開気孔の中に溶鉄などの高温溶融物が入り込みやすく、不定形耐火物硬化体が溶損しやすい。
これに対して、本発明の不定形耐火物硬化体は、閉気孔が少なく、かつ、閉気孔が小さい。このため、表面の損耗が進み、閉気孔が開気孔となったときにも、開気孔の中に高温溶融物が入り込みにくく、その結果、耐溶損性に優れる。
また、温度の急変により不定形耐火物硬化体の膨張収縮が生じ、この膨張収縮よって応力が発生するが、本発明においては、この応力を、均等に分散した複数の小さい閉気孔が変形することにより緩和する。これにより、耐スポーリング性に優れる。
【0010】
こうして、本発明の不定形耐火物硬化体は、閉気孔を制御することにより、耐溶損性と耐スポーリング性とが共に優れる。
本発明においては、ろう石などの低融点物質の使用を抑制できるため、耐溶損性が特に優れる。
本発明においては、板状辺(特許文献1)や耐熱性繊維(特許文献2)などの特殊な材料の使用も回避できる。
【0011】
閉気孔の割合は、上述したように10体積%以下であり、耐溶損性がより優れるという理由から、8体積%以下が好ましく、7体積%以下がより好ましく、6体積%以下が更に好ましい。
一方、下限について、閉気孔の割合は、例えば1体積%以上であり、2体積%以上が好ましく、3体積%以上がより好ましい。
【0012】
閉気孔の平均体積は、上述したように0.05mm3以下であり、耐スポーリング性および耐溶損性がより優れるという理由から、0.04mm3以下が好ましく、0.03mm3以下がより好ましく、0.02mm3以下が更に好ましく、0.01mm3以下が特に好ましい。
例えば、閉気孔が小さいほど、不定形耐火物硬化体の表面の溶損が進み、閉気孔が開気孔となった際に、高温溶融物が入り込みにくいので、耐溶損性に優れる。
一方、下限は特に限定されない。上述したように、本発明においては、不定形耐火物硬化体の膨張収縮により発生する応力を、均等に分散した複数の小さい閉気孔が変形して緩和することで、耐スポーリング性を向上させるからである。
【0013】
後述する[実施例]で示すように、閉気孔の割合が増加するに従い、耐スポーリング性は上昇するが、耐溶損性は低下する。閉気孔の割合が10体積%を超えると、耐溶損性は大幅に低下する。
閉気孔の平均体積が0.05mm3より大きい場合は、閉気孔の割合が10体積%以下であっても、耐溶損性が低下する。
【0014】
閉気孔の平均体積および割合は、X線CT(コンピュータ断層撮影)により取得されるCTデータから求める。より詳細には、乾燥品である不定形耐火物硬化体について、X線CTを行ない、取得されるCTデータから、閉気孔の体積および個数を求め、閉気孔の平均体積を算出する。この際の平均値は、算術平均である。閉気孔の割合は、不定形耐火物硬化体の体積と個々の閉気孔の体積とから算出する。
X線CTを用いる測定では、分解能の設定により、小さな閉気孔まで検知できる。しかし、分解能を高くすると測定時間が長くなる。更に、得られるCTデータから閉気孔の平均体積および割合を算出するための解析時間も長くなる。このため、本発明においては、測定する閉気孔の最小体積を0.0008mm3とする。
【0015】
本発明の不定形耐火物硬化体は、例えば、アルミナ-マグネシア質、アルミナ-スピネル質、アルミナ-マグネシア-カーボン質、アルミナ-スピネル-カーボン質、アルミナ-炭化ケイ素-カーボン質、または、シリカ・アルミナ-アルミナ-炭化ケイ素-カーボン質の不定形耐火物硬化体であるが、これらに限定されない。
すなわち、本発明の不定形耐火物硬化体は、閉気孔の平均体積および割合が上述した範囲内であれば、その種類は特に限定されない。
【0016】
[不定形耐火物硬化体の製造方法]
次に、本発明の不定形耐火物硬化体を製造する方法を説明する。
概略的には、粉体組成物に水を添加して混練することにより不定形耐火物を得て、得られた不定形耐火物を硬化させる。
【0017】
〈粉体組成物〉
粉体組成物は、耐火性粉体を含有し、更に、結合剤を含有することが好ましい。
また、粉体組成物は、消泡剤を含有し、更に、任意で、AE剤(空気連行剤)を含有する。粉体組成物における消泡剤およびAE剤の含有量を調整することにより、最終的に得られる不定形耐火物硬化体の閉気孔の平均体積および割合を上述した範囲内にする。
【0018】
《耐火性粉体》
耐火性粉体としては、従来公知の原料を用いることができ、例えば、ブラウンアルミナ、電融アルミナ、焼結アルミナ、ボーキサイト、ダイアスポア、ばん土頁岩、仮焼アルミナなどのアルミナ質原料;珪石、珪砂、無定形シリカ(例えば、マイクロシリカ、シリカフラワー、ヒュームドシリカ、ホワイトカーボン)などのシリカ質原料;ろう石、シャモット、粘土、焦宝石、アンダリュサイト、シリマナイト、カイヤナイト、ムライトなどのシリカ・アルミナ質原料;石炭、コークス、ピッチ、人造黒鉛、天然黒鉛(例えば、鱗状黒鉛、土状黒鉛)、カーボンブラックなどのカーボン質原料;電融スピネル、焼結スピネルなどのスピネル質原料;マグネシアクリンカーなどのマグネシア質原料;ドロマイトクリンカーなどのドロマイト質原料;電融ジルコニアなどのジルコニア質原料;ジルコンサンドなどのジルコン質原料;窒化ケイ素質原料;窒化アルミニウム質原料;SiCなどの炭化ケイ素質原料;炭化ホウ素質原料;ホウ化チタン質原料;ホウ化ジルコニウム質原料;等が挙げられる。
例えば、高炉鍋に用いるアルミナ-炭化ケイ素-カーボン質の不定形耐火物硬化体を得るためには、耐火性粉体として、アルミナ質原料、炭化ケイ素質原料およびカーボン質原料を用いる。
耐火性粉体の各含有量は、得られる不定形耐火物硬化体の所望する組成に応じて、適宜配合する。
【0019】
耐火性粉体において、粒径が0.1mm以下の微粉の含有量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましい。一方、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下が更に好ましい。
【0020】
「粒径が0.1mm以下の微粉」は、JIS Z 8801に準拠した、目開きが0.1mmのふるいを通る粉体を意味するものとする。
【0021】
《結合剤》
結合剤としては、例えば、アルミナセメント、水硬性遷移アルミナ、ケイ酸塩、リン酸塩などが挙げられる。
結合剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、耐火性粉体100質量部に対して、外かけで、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、2質量部以上が更に好ましく、一方、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましい。
【0022】
《消泡剤》
消泡剤としては、ポリアルキレングリコール誘導体、ノニオン系界面活性剤などが挙げられる。消泡剤の具体例としては、マスターエア404(BASFジャパン社製)およびそのシリーズ、フローリックDF325(フローリック社製)およびそのシリーズ等が挙げられる。
消泡剤の含有量は、耐火性粉体における粒径が0.1mm以下の微粉100質量部に対して、外かけで、0.01質量部以上1.00質量部以下が好ましく、0.01質量部以上0.10質量部以下がより好ましい。
微粉の含有量を基準にして消泡剤を加えるのは、表面積の大きい微粉に対して消泡の効果が大きいからである。
【0023】
《AE剤》
AE剤(空気連行剤)は、JIS A 6204:2011に規定されるAE剤である。AE剤は、市販品として入手でき、その具体例としては、マスターエア101(有効成分:アルキルオキシエチレン系スルホン酸ナトリウム塩、BASFジャパン社製)、マスターエア303A(有効成分:アルキルオキシエチレン系スルホン酸ナトリウム塩、BASFジャパン社製)、マスターエア775S(有効成分:アビエチン酸ナトリウム、BASFジャパン社製)、CAE-20(有効成分:アルキルオキシエチレン系スルホン酸ナトリウム塩、BASFジャパン社製)、ヴィンソル(有効成分:アビエチン酸ナトリウム、花王社製)などが挙げられる。
AE剤の含有量は、耐火性粉体における粒径が0.1mm以下の微粉100質量部に対して、外かけで、0質量部以上0.05質量部以下が好ましい。
微粉の含有量を基準にしてAE剤を加えるのは、表面積の大きい微粉に対して微細な空気泡を連行させる効果があるからである。
【0024】
粉体組成物は、上述した耐火性粉体、結合剤、消泡剤およびAE剤のほか、例えば、分散剤、繊維類、硬化時間調整剤、増粘剤などの添加剤を含んでもよい。
【0025】
〈不定形耐火物〉
粉体組成物に水を添加して、ミキサ等を用いて混練することにより、練り土状の不定形耐火物を得る。
添加する水としては、特に限定されず、例えば、工業用水、水道水などが用いられる。
水の添加量は、粉体組成物100質量部に対して、外かけで、3質量部以上が好ましく、4質量部以上がより好ましく、一方、10質量部以下が好ましく、7質量部以下がより好ましい。
【0026】
まず、粉体組成物のみを空練りし、その後、水を添加しながら、または、水を添加した後に、水練りしてもよい。
空練り時間および水練り時間は、例えば、混練する粉体組成物の量、用いるミキサの種類などに応じて、適宜設定する。
【0027】
上述した消泡剤およびAE剤が固体である場合は、空練りの際に、粉体組成物に配合してもよいし、水を添加する際に、水と共に配合してもよい。
上述した消泡剤およびAE剤が液体である場合は、水を添加する際に、水と共に配合することが好ましい。
【0028】
〈硬化〉
混練して得られた不定形耐火物を、所定の型や鍋などに流し込む。鍋への流し込みでは、中子を入れて、適宜振動を加える。吹付け材にも適用できる。
その後、不定形耐火物を養生し、型などを取り外した後、乾燥することにより硬化させる。養生時間は、不定形耐火物の組成等に応じて適宜決定できる。養生後の乾燥は、例えば、100~200℃に昇温して行なう。こうして、自由水が1質量%以下程度の不定形耐火物硬化体が得られる。
【実施例】
【0029】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0030】
〈不定形耐火物硬化体の製造:実施例1~6および比較例1~14〉
以下に説明するようにして、高炉鍋に用いるアルミナ-炭化ケイ素-カーボン質の不定形耐火物硬化体を製造した。
【0031】
まず、耐火性粉体を97質量%、結合剤(アルミナセメント)を3質量%とした粉体組成物を得た。
耐火性粉体は、アルミナ質原料(電融アルミナ)を72質量%、炭化ケイ素質原料(SiC)を20質量%、カーボン質原料(鱗状黒鉛)を5質量%とした。
耐火性粉体における粒径が0.1mm以下の微粉の含有量は、25質量%であった。
【0032】
更に、粉体組成物には、消泡剤(マスターエア404、BASFジャパン社製)およびAE剤(マスターエア101、BASFジャパン社製)を配合した。
消泡剤の配合量は、耐火性粉体における粒径が0.1mm以下の微粉100質量部に対して、外かけで、0.01質量部以上0.10質量部以下の範囲で調整した。
AE剤の配合量は、耐火性粉体における粒径が0.1mm以下の微粉100質量部に対して、外かけで、0質量部以上0.05質量部以下の範囲で調整した。
消泡剤およびAE剤は、後述する水の添加と共に、配合した。
【0033】
粉体組成物に水を添加し、モルタルミキサを用いて混練し、不定形耐火物を得た。より詳細には、まず、粉体組成物のみを空練りし、その後、水練りした。空練り時間は、1分間とした。水練り時間は、3分間とした。
水の添加量は、粉体組成物100質量部に対して、外かけで、6質量部とした。
【0034】
得られた不定形耐火物を、後述する金型に流し込み、24時間養生させた。養生後に脱枠し、乾燥機を用いて、110℃で24時間乾燥した。こうして、不定形耐火物硬化体を得た。
【0035】
得られた不定形耐火物硬化体について、上述した方法に従って、X線CT装置(XT H 225ST、ニコン社製)を用いて、閉気孔の平均体積(単位:mm3)および割合(単位:体積%)を求めた。測定した閉気孔の最小体積は、0.0008mm3とした。結果を下記表1に示す。
【0036】
〈評価〉
製造した実施例1~6および比較例1~14の不定形耐火物硬化体について、以下に説明する評価を行なった。結果を下記表1に示す。
【0037】
《耐スポーリング性》
耐スポーリング性の評価では、40×40×160mmの角柱状の金型を用いて、不定形耐火物硬化体を作製した。更に、作製した不定形耐火物硬化体を、コークスブリーズ中にて、1400℃で3時間焼成した。
焼成した不定形耐火物硬化体の弾性率を、音速法(ASTMC579、ASTMC769-80)で縦波の伝搬時間を測定することにより求めた。求めた弾性率の値をE0とした。
E0を求めた不定形耐火物硬化体を、1400℃の電気炉を用いて15分間加熱し、その後、5℃の水を用いて5分間水冷し、更に、10分間空冷した。空冷の後、乾燥機を用いて、110℃で24時間乾燥した。その後、再び音速法によって、弾性率を求めた。求めた弾性率の値をE1とした。
耐スポーリング性は、弾性率の変化値(E1/E0)から評価した。E1/E0の値が1に近いほど耐スポーリング性が良好であると評価できる。ここでは、0.60以上が好ましい。
【0038】
《耐溶損性》
耐溶損性の評価では、台形形状の金型を用いて、不定形耐火物硬化体を作製した。
8枚の不定形耐火物硬化体でるつぼを組み、内部にメタルとして銑鉄(溶銑)を装入した。窒素気流中で1600℃まで昇温した後、スラグとして高炉スラグを30分毎に投入し、掻き出しを行ないつつ、合計3時間保持し、その後、冷却した。冷却後、不定形耐火物硬化体を、溶銑との接触面と垂直に切断し、溶損の最大深さを測定した。
実施例4の溶損の最大深さを100とする指数(溶損指数)を求めた。溶損指数の値が小さいほど、耐溶損性に優れると評価できる。
【0039】
メタルおよびスラグは、不定形耐火物硬化体に応じて適宜変更できる。例えば、アルミナ-マグネシア質の不定形耐火物硬化体を用いる場合は、メタルとして電解鉄、スラグとして転炉スラグを使用できる。
【0040】
【0041】
〈評価結果まとめ〉
上記表1に示すように、閉気孔の平均体積が0.05mm3以下であり、かつ、閉気孔の割合が10体積%以下である実施例1~6の不定形耐火物硬化体は、これらを満たさない比較例1~14の不定形耐火物硬化体と比較して、耐スポーリング性および耐溶損性が共に優れていた。
【0042】
閉気孔の割合が同じである実施例1~3を対比すると、閉気孔の平均体積が小さいほど、耐スポーリング性および耐溶損性がより優れる傾向が見られた。
これは、実施例4~6の対比においても同様であった。
【0043】
閉気孔の平均体積が同じである実施例1と実施例4とを対比すると、閉気孔の割合が小さいほど、耐溶損性がより優れる傾向が見られた。
これは、実施例2と実施例5との対比、および、実施例3と実施例6との対比においても同様であった。