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特許7192757エピタキシャルシリコンウェーハ及びその製造方法並びにX線検出センサ
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  • 特許-エピタキシャルシリコンウェーハ及びその製造方法並びにX線検出センサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】エピタキシャルシリコンウェーハ及びその製造方法並びにX線検出センサ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/20 20060101AFI20221213BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20221213BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20221213BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20221213BHJP
   C30B 29/06 20060101ALI20221213BHJP
   C30B 25/20 20060101ALI20221213BHJP
   C23C 16/24 20060101ALI20221213BHJP
   H01L 31/08 20060101ALI20221213BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20221213BHJP
   H01L 31/0248 20060101ALI20221213BHJP
   G01T 1/24 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H01L21/20
H01L21/205
H01L27/06 102A
C30B29/06 504Z
C30B25/20
C23C16/24
H01L31/00 A
H01L31/10 A
H01L31/08 F
G01T1/24
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019229694
(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公開番号】P2021100012
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】古賀 祥泰
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-219833(JP,A)
【文献】特開2018-032668(JP,A)
【文献】特開2019-153797(JP,A)
【文献】特開平06-326359(JP,A)
【文献】特開2014-130920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/20
H01L 21/205
H01L 21/8234
C30B 29/06
C30B 25/20
C23C 16/24
H01L 31/08
H01L 31/10
H01L 31/0248
G01T 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェーハと、
前記シリコンウェーハの表面に設けられたシリコンエピタキシャル層と、
を備えるエピタキシャルシリコンウェーハであって、
前記シリコンエピタキシャル層は、前記シリコンウェーハの表面に設けられた第1のシリコンエピタキシャル層及びその表面に設けられた第2のシリコンエピタキシャル層からなり、
前記シリコンウェーハはp型であり、前記第1のシリコンエピタキシャル層はn型であり、前記第2のシリコンエピタキシャル層はp型であって、前記シリコンウェーハ並びに前記第1及び第2のシリコンエピタキシャル層の各厚さ及び各キャリア濃度が下記式(1)~(3):
d1>d3>d2 ・・・(1)
C3>C2>C1 ・・・(2)
C3・(d3/10)≧C2・d2 ・・・(3)
(前記式(1)~(3)中、d1、d2及びd3はそれぞれ前記シリコンウェーハ、前記第1のシリコンエピタキシャル層及び前記第2のシリコンエピタキシャル層の厚さを表し;C1、C2及びC3はそれぞれ前記シリコンウェーハ、前記第1のシリコンエピタキシャル層及び前記第2のシリコンエピタキシャル層のキャリア濃度を表す)
を満足し、
前記シリコンウェーハは、抵抗率が100Ω・cm以上であり、かつ酸素濃度が5.0×1017atoms/cm以下である、
ことを特徴とするエピタキシャルシリコンウェーハ。
【請求項2】
前記第1のシリコンエピタキシャル層は空乏層である、請求項1に記載のエピタキシャルシリコンウェーハ。
【請求項3】
前記シリコンウェーハの厚さd1が100μm以上である、請求項1又は2に記載のエピタキシャルシリコンウェーハ。
【請求項4】
前記シリコンウェーハはFZウェーハ又はMCZウェーハである、請求項1~3のいずれか1項に記載のエピタキシャルシリコンウェーハ。
【請求項5】
前記シリコンウェーハはCOPを含まない、請求項1~4のいずれか1項に記載のエピタキシャルシリコンウェーハ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法であって、
前記シリコンウェーハの表面に前記第1のシリコンエピタキシャル層を形成する工程と、
前記第1のシリコンエピタキシャル層の表面に前記第2のシリコンエピタキシャル層を形成する工程と、
を含むことを特徴とするエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載のエピタキシャルシリコンウェーハを用いて形成されたX線検出センサであって、
前記シリコンウェーハにX線検出部が設けられ、
前記第2のシリコンエピタキシャル層にMOS型トランジスタ部が設けられることを特徴とするX線検出センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピタキシャルシリコンウェーハ及びその製造方法並びにX線検出センサに関する。
【背景技術】
【0002】
X線は手荷物検査、食品異物検査、医療、天体観測などの種々の分野で利用されている。感光性フィルムを用いてX線を検出することがかつては一般的であったものの、その利用拡大に伴い、X線を高速かつ高感度に測定するために、シリコンなどの半導体ウェーハを用いて作製した光電変換素子から構成されるX線検出センサが近年では着目されている。
【0003】
例えば特許文献1に開示されるX線検出センサでは、支持基板を兼ねるシリコン単結晶からなるn型半導体層上に、シリコン酸化膜からなる埋め込み酸化層及びp型半導体層が積層されたSOI(Silicon on Insulator)基板が利用されている。例えば、このSOI基板を用いて作製されたX線検出センサでは、支持基板がX線センサ部(X線受光部)に使用される。これは、シリコン単結晶によるX線の吸収率を考慮すると、X線センサ部には十分な厚さが必要となるからである。また、p型半導体層にはX線検出センサ部から伝達される信号を処理するCMOS回路などのデバイスが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2011/111754号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、SOIウェーハの埋め込み絶縁層(BOX層とも呼ばれる)は、上記のとおり酸化シリコンからなるため、その熱伝導率は小さい。そのため、特許文献1などに記載されるSOIウェーハを用いて作製されたX線検出センサでは、その使用中にp型半導体層に形成されたCMOS回路が自己発熱して高温化し、デバイスの動作不良を生じてしまうおそれがある。
【0006】
そこで本発明者は、X線検出センサを作製するための半導体ウェーハとして、SOIウェーハに替えてエピタキシャルシリコンウェーハを使用することを着想した。エピタキシャルシリコンウェーハは酸化シリコンを有しないため、その熱伝導率はSOIウェーハよりも高く、放熱性に優れるからである。そこで、支持基板となるシリコンウェーハ上に2層構造のシリコンエピタキシャル層を形成して、支持基板直上のシリコンエピタキシャル層を実質的な絶縁層として機能させることにより、SOIウェーハに代替するエピタキシャルシリコンウェーハを作製することを想起した。エピタキシャルシリコンウェーハがこうした絶縁機能を有すれば、これをX線検出センサの用途に供することができる。そこで本発明は、X線検出センサに適用可能な、エピタキシャルシリコンウェーハ及びその製造方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、このエピタキシャルシリコンウェーハを用いたX線検出センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく検討した。そして、支持基板となるシリコンウェーハ及びその上に形成する第1及び第2のシリコンエピタキシャル層の導電型、キャリア濃度及び厚さの関係を適正化することにより、第1のシリコンエピタキシャル層を絶縁層として機能させることを着想した。この場合、シリコンウェーハは高抵抗のp型基板を用い、かつ、シリコンウェーハがX線を検出するセンサ部として使用されることになる。本発明者は、このシリコンウェーハを用いるとデバイス構造部を作製するときの熱処理に伴い抵抗変動が生じるおそれがあることと、センサ部として使用する場合の高感度化への対処が必要であることがさらなる課題であるとも認識した。そこで本発明者は、使用するシリコンウェーハをさらに検討し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明の要旨構成は以下のとおりである。
【0008】
<1>シリコンウェーハと、
前記シリコンウェーハの表面に設けられたシリコンエピタキシャル層と、
を備えるエピタキシャルシリコンウェーハであって、
前記シリコンエピタキシャル層は、前記シリコンウェーハの表面に設けられた第1のシリコンエピタキシャル層及びその表面に設けられた第2のシリコンエピタキシャル層からなり、
前記シリコンウェーハはp型であり、前記第1のシリコンエピタキシャル層はn型であり、前記第2のシリコンエピタキシャル層はp型であって、前記シリコンウェーハ並びに前記第1及び第2のシリコンエピタキシャル層の各厚さ及び各キャリア濃度が下記式(1)~(3):
d1>d3>d2 ・・・(1)
C3>C2>C1 ・・・(2)
C3・(d3/10)≧C2・d2 ・・・(3)
(前記式(1)~(3)中、d1、d2及びd3はそれぞれ前記シリコンウェーハ、前記第1のシリコンエピタキシャル層及び前記第2のシリコンエピタキシャル層の厚さを表し;C1、C2及びC3はそれぞれ前記シリコンウェーハ、前記第1のシリコンエピタキシャル層及び前記第2のシリコンエピタキシャル層のキャリア濃度を表す)
を満足し、
前記シリコンウェーハは、抵抗率が100Ω・cm以上であり、かつ酸素濃度が5.0×1017atoms/cm以下である、
ことを特徴とするエピタキシャルシリコンウェーハ。
【0009】
<2>前記第1のシリコンエピタキシャル層は空乏層である、前記<1>に記載のエピタキシャルシリコンウェーハ。
【0010】
<3>前記シリコンウェーハの厚さd1が100μm以上である、前記<1>又は<2>に記載のエピタキシャルシリコンウェーハ。
【0011】
<4>前記シリコンウェーハはFZウェーハ又はMCZウェーハである、前記<1>~<3>のいずれかに記載のエピタキシャルシリコンウェーハ。
【0012】
<5>前記シリコンウェーハはCOPを含まない、前記<1>~<4>のいずれかに記載のエピタキシャルシリコンウェーハ。
【0013】
<6>前記<1>~<5>のいずれかに記載のエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法であって、
前記シリコンウェーハの表面に前記第1のシリコンエピタキシャル層を形成する工程と、
前記第1のシリコンエピタキシャル層の表面に前記第2のシリコンエピタキシャル層を形成する工程と、
を含むことを特徴とするエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法。
【0014】
<7>前記<1>~<5>のいずれか1項に記載のエピタキシャルシリコンウェーハを用いて形成されたX線検出センサであって、
前記シリコンウェーハにX線検出部が設けられ、
前記第2のシリコンエピタキシャル層にMOS型トランジスタ部が設けられることを特徴とするX線検出センサ。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、X線検出センサに供して好適なエピタキシャルシリコンウェーハ及びその製造方法を提供することができる。さらに本発明によれば、このエピタキシャルシリコンウェーハを用いたX線検出センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態によるエピタキシャルシリコンウェーハを説明する模式断面図である。
図2】本発明の一実施形態によるエピタキシャルシリコンウェーハにおけるシリコンウェーハ及びシリコンエピタキシャル層の厚さ及びキャリア濃度の関係を示す概略図である。
図3】本発明の一実施形態によるエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法を説明する模式断面図である。
図4】本発明の一実施形態によるX線検出センサを説明する模式断面図である。
図5】TZDB測定に用いた耐圧測定用TEGを説明する模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、同一の構成要素には原則として同一の参照番号を付して、説明を省略する。また、図1及び図3図5では図面の簡略化のため、シリコンウェーハ及びシリコンエピタキシャル層の厚さについて、実際の厚さの割合と異なり誇張して示す。
【0018】
(エピタキシャルシリコンウェーハ)
図1を参照する。本発明の一実施形態に従うエピタキシャルシリコンウェーハ100は、シリコンウェーハ110と、シリコンウェーハ110の表面に設けられたシリコンエピタキシャル層120と、を備える。そして、このシリコンエピタキシャル層120は、シリコンウェーハ110の表面に設けられた第1のシリコンエピタキシャル層121及びその表面に設けられた第2のシリコンエピタキシャル層122からなる。ここで、シリコンウェーハ110はp型であり、第1のシリコンエピタキシャル層121はn型であり、第2のシリコンエピタキシャル層122はp型である。そして、シリコンウェーハ110並びに第1のシリコンエピタキシャル層121及び第2のシリコンエピタキシャル層122の各厚さ及び各キャリア濃度が下記式(1)~(3):
d1>d3>d2 ・・・(1)
C3>C2>C1 ・・・(2)
C3・(d3/10)≧C2・d2 ・・・(3)
(上記式(1)~(3)中、d1、d2及びd3はそれぞれシリコンウェーハ110、第1のシリコンエピタキシャル層121及び第2のシリコンエピタキシャル層122の厚さを表し;C1、C2及びC3はそれぞれシリコンウェーハ110、第1のシリコンエピタキシャル層121及び第2のシリコンエピタキシャル層122のキャリア濃度を表す)を満足する。さらに、シリコンウェーハ110は、抵抗率が100Ω・cm以上であり、かつ酸素濃度が5.0×1017atoms/cm以下である。以下、各構成の詳細を順次説明する。
【0019】
<シリコンウェーハ>
シリコンウェーハ110は、シリコンエピタキシャル層120を支持する支持基板である。シリコンウェーハ110は、別途のエピタキシャル層が設けられていない、いわゆるバルクのシリコン単結晶ウェーハを用いる。エピタキシャルシリコンウェーハ100を用いてX線検出センサを作製する場合、シリコンウェーハ110にセンサ部が形成されることになる。
【0020】
<シリコンエピタキシャル層>
シリコンエピタキシャル層120は第1のシリコンエピタキシャル層121及び第2のシリコンエピタキシャル層122からなる。図1に示すとおり、第1のシリコンエピタキシャル層121がシリコンウェーハ110の表面に設けられ、第2のシリコンエピタキシャル層122が第1のシリコンエピタキシャル層121の表面に設けられる。なお、製造工程上不可避な不純物を除き、その他の構成をシリコンエピタキシャル層120は有さない。
【0021】
第1及び第2のシリコンエピタキシャル層121、122は導電型及びキャリア濃度が互いに異なる2層構造のシリコンエピタキシャル層である。ここでいう第1及び第2のシリコンエピタキシャル層121、122のキャリア濃度は、各層の厚さ方向において製造上不可避な誤差を除いて実質的に均一である。例えば、いわゆるn+層/n-層のように、導電型が同じであってもキャリア濃度が厚さ方向において2倍以上変化する層が設けられている場合は、本明細書において当該n+層及びn-層はそれぞれ別の層であるとみなす。
【0022】
<<各構成の導電型及びキャリア濃度並びに厚さ>>
前述のとおり、シリコンウェーハ110、第1のシリコンエピタキシャル層121及び第2のシリコンエピタキシャル層122の各構成の導電型はそれぞれp型、n型、p型である。導電型をこの順にする理由は、第1のシリコンエピタキシャル層121を空乏化させて高抵抗にさせるためである。そして、SOIウェーハにおける埋め込み酸化膜(BOX層)の代替層として第1のシリコンエピタキシャル層121が絶縁層として機能するよう、エピタキシャルシリコンウェーハ100の各構成の厚さ及びキャリア濃度が上述の式(1)~(3)を満足する。以下、図2の概略図を参照しつつ、各式を定めた理由を述べる。
【0023】
-厚さの関係:式(1)-
上述のとおり、d1、d2及びd3はそれぞれシリコンウェーハ110、第1のシリコンエピタキシャル層121及び第2のシリコンエピタキシャル層122の厚さを表し、これら各厚さは上記式(1)に従ってd1>d3>d2の関係を満足する。シリコンウェーハ110は、シリコンエピタキシャル層120を支持し、かつ、シリコンエピタキシャル層120をエピタキシャル成長させるため、シリコンウェーハ110の厚さd1は、第1及び第2のシリコンエピタキシャル層121、122の厚さd2、d3よりも大きい。また、エピタキシャルシリコンウェーハ100をX線検出センサに適用する場合、シリコンウェーハ110にセンサ部が設けられるため、シリコン単結晶によるX線の吸収効率を考慮して厚さd1を十分に大きくする必要もある。さらに、第1のシリコンエピタキシャル層121の全体を空乏化して絶縁層として機能させるため、第1のシリコンエピタキシャル層の厚さd2を、第2のシリコンエピタキシャル層の厚さd3よりも小さくする。
【0024】
-キャリア濃度の関係:式(2)-
上述のとおり、C1、C2及びC3はそれぞれシリコンウェーハ110、第1のシリコンエピタキシャル層121及び第2のシリコンエピタキシャル層122のキャリア濃度を表し、これら各キャリア濃度は上記式(2)に従ってC3>C2>C1の関係を満足する。エピタキシャルシリコンウェーハ100をX線検出センサに適用する場合、上記のとおりシリコンウェーハ110にセンサ部が設けられるためそのキャリア濃度C1を十分に小さくして抵抗率を高くする必要がある。またこの場合、第2のシリコンエピタキシャル層122にはMOS型トランジスタ部が設けられるため、キャリア濃度を高くして抵抗率を下げる必要がある。そして、第1のシリコンエピタキシャル層121の全体を空乏化して絶縁層として機能させるため、上述の導電型及び上記式(3)と併せてそのキャリア濃度C2を、C3よりも小さく、かつ、C1よりも大きくする。
【0025】
-厚さ及びキャリア濃度の関係:式(3)-
そして、第1のシリコンエピタキシャル層121の厚さd2及びキャリア濃度C2と、第2のシリコンエピタキシャル層の厚さd3及びキャリア濃度C3との関係は上記式(3)に従ってC3・(d3/10)≧C2・d2の関係を満足する。ここで、C3とd3との積の1/10の値を、C2とd2との積の値以上とする理由は、第1のシリコンエピタキシャル層121を空乏化させて高抵抗にさせるためである。こうすることで、第1のシリコンエピタキシャル層121を絶縁層として機能させることが可能となる。
【0026】
<<シリコンウェーハ条件>>
また、上述のとおり、シリコンウェーハ110は上記式(1)~(3)の関係を満足するものを採用するため、抵抗率が100Ω・cm以上のp型基板が用いられる。シリコンウェーハ110をp型にするためのドーパントは任意であり、例えばボロン(B)を用いればよい。なお、抵抗率100Ω・cmは、キャリア濃度C1に換算すると1.3×1014atoms/cmである。キャリア濃度C1は1.3×1014atoms/cm以下であることがより好ましく、1.3×1013atoms/cm以下であることがさらに好ましい。また抵抗率が100Ω・cm以上であるから高抵抗の基板が用いられるため、シリコン単結晶インゴットを育成するときに必然的に混入する酸素の影響によって、センサ部及びMOS型トランジスタ部などのデバイス素子構造部を作製する際の熱処理に伴う抵抗変動が懸念される。そこで、シリコンウェーハ110の酸素濃度を5.0×1017atoms/cm以下に制限する。この目的では、シリコンウェーハ110の酸素濃度は少ないほど好ましく、酸素濃度が3.0×1017atoms/cm以下であることが好ましく、2.0×1017atoms/cm以下であることがより好ましい。酸素濃度の下限は限定されないが、工業的生産性を考慮すると下限の一例は1.0×1015atoms/cmである。こうした酸素濃度の条件を満たすシリコンウェーハ110は、MCZ(Magnetic field applied Czochralski)法で育成された単結晶シリコンインゴットから得られるMCZウェーハであることが好ましい。酸素濃度に関して同様の理由により、シリコンウェーハ110は、FZ(Floating Zone)法で育成された単結晶シリコンインゴットから得られるFZウェーハであることも好ましい。なお、シリコンウェーハの酸素濃度はASTM F121-1979に準拠し、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR:Fourier Transform Infrared Spectrometer)を用いて測定した値を採用する。
【0027】
以上のとおり、本発明の一実施形態に従うエピタキシャルシリコンウェーハ100は、各構成の導電型及びキャリア濃度並びに厚さが上記式(1)~(3)の関係を満足するため、第1のシリコンエピタキシャル層121は絶縁層として機能する。さらに、シリコンウェーハ110は、抵抗率及び酸素濃度が制限されているため、X線検出センサのセンサ部に適用することが可能である。なお、エピタキシャルシリコンウェーハ100をX線検出センサの作製用途に用いることが特に好ましいものの、第1のシリコンエピタキシャル層121を絶縁層として利用するものであれば、その用途が制限されることはない。
【0028】
以下、本発明に適用して好適なエピタキシャルシリコンウェーハ100の具体的態様を説明する。
【0029】
X線センサのセンサ部に適用するため、シリコンウェーハ110は、COPを含まないシリコンウェーハであることが好ましい。なお、本明細書における「COPを含まないシリコンウェーハ」とは、以下に説明する観察評価によってCOPが検出されないシリコンウェーハを意味する。すなわち、まず、CZ法により育成された単結晶シリコンインゴットから切り出し加工されたシリコンウェーハに対して、SC-1洗浄(すなわち、アンモニア水と過酸化水素水と超純水とを1:1:15で混合した混合液による洗浄)を行い、洗浄後のシリコンウェーハ表面を、表面欠陥検査装置としてKLA-Tenchor社製:Surfscan SP-2を用いて観察評価し、表面ピットと推定される輝点欠陥(LPD:Light Point Defect)を特定する。その際、観察モードはObliqueモード(斜め入射モード)とし、表面ピットの推定は、Wide Narrowチャンネルの検出サイズ比に基づいて行うものとする。こうして特定されたLPDに対して、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)を用いて、COPか否かを評価する。なお、FZ法により育成された場合は、シリコンウェーハ110にCOPは形成されない。また、シリコンウェーハ110の厚さd1は100μm以上であることが好ましく、300μm以上であることがさらに好ましい。厚さd1の上限は特に制限されないが、例えば直径300mmのウェーハであればその厚さ775μm±25μmが厚さd1の上限の一例となる。
【0030】
第1のシリコンエピタキシャル層121は、空乏層となることが好ましい。また、その厚さd2及びキャリア濃度C2は上述の式(1)~(3)を満足すれば特に制限されない。例えば、厚さd2は1μm以上10μm以下であることが好ましい。また、キャリア濃度C2は2.0×1013atoms/cm以上5.0×1015atoms/cm以下であることが好ましく、より好ましくは4.3×1013atoms/cm以上4.3×1014atoms/cm以下(抵抗率に換算して10Ω・cm以上100Ω・cm以下)である。また、第1のシリコンエピタキシャル層121をn型にするためのドーパントは任意であり、例えばリン(P)、ヒ素(As)等を用いればよい。
【0031】
第2のシリコンエピタキシャル層122の厚さd3及びキャリア濃度C3も、上述の式(1)~(3)を満足すれば特に制限されない。例えば、厚さd3は1μm以上15μm以下であることが好ましい。また、キャリア濃度C3は1.0×1015atoms/cm以上5.0×1016atoms/cm以下であることが好ましく、より好ましくは1.3×1015atoms/cm以上1.6×1016atoms/cm以下(抵抗率に換算して1Ω・cm以上10Ω・cm以下)である。また、第2のシリコンエピタキシャル層122をp型にするためのドーパントは任意であり、シリコンウェーハ100のドーパントと同様にボロン等を用いればよい。
【0032】
(エピタキシャルシリコンウェーハの製造方法)
次に、これまで説明してきた本発明のエピタキシャルシリコンウェーハ100を製造する方法の一実施形態を、図3を参照して説明する。本発明の一実施形態によるエピタキシャルシリコンウェーハ100の製造方法は、シリコンウェーハ110の表面に第1のシリコンエピタキシャル層121を形成する工程(S110、S120参照)と、第1のシリコンエピタキシャル層121の表面に第2のシリコンエピタキシャル層122を形成する工程(S130参照)と、を含む。シリコンエピタキシャル層120が第1及び第2のシリコンエピタキシャル層121、122からなることは既述のとおりであり、シリコンウェーハ110並びに第1及び第2のシリコンエピタキシャル層121、122の各構成の導電型及びキャリア濃度並びに厚さも、既述の条件を満足する。
【0033】
シリコンエピタキシャル層120の各層は、一般的な条件により形成すればよい。例えば、水素(H)をキャリアガスとして、ジクロロシラン(SiHCl)、トリクロロシラン(SiHCl)等のソースガスをチャンバ内に導入し、使用するソースガスによっても成長温度は異なるが、概ね1000~1200℃の温度範囲の温度でCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、各シリコンエピタキシャル層をエピタキシャル成長させればよい。また、各層を形成する際に使用するドーパントも既述のとおりである。
【0034】
(X線検出センサ)
これまで説明してきたエピタキシャルシリコンウェーハ100を用いてX線検出センサを形成することができる。このX線検出センサは、シリコンウェーハ100にX線検出部が設けられ、第2のシリコンエピタキシャル層122にMOS型トランジスタ部が設けられる。絶縁層として機能する第1のシリコンエピタキシャル層121は単結晶シリコンからなるため、熱伝導率が酸化シリコンよりも優れる。したがって、特許文献1等に開示されるSOIウェーハを用いて形成されたX線検出センサに比べて、本発明に従うX線検出センサは放熱性の点で優れる。
【0035】
エピタキシャルシリコンウェーハ100を用いて形成されるX線検出センサの一具体例を、図4を参照して説明する。図4に記載のX線検出センサ200は、シリコンウェーハ100由来で、高濃度n型拡散領域214がその表層部に設けられたp型シリコン層210と、第1エピタキシャル層由来で絶縁層として機能するn型シリコン層221と、第2シリコンエピタキシャル層122由来で、n型拡散領域224及びp型拡散領域225が設けられたp型シリコン層222とをこの順に備える。なお、n型拡散領域224及びp型拡散領域225の間には絶縁領域が形成される。また、AlやCu等からなる導電体250でp型シリコン層210の裏面並びに高濃度n型拡散領域214、n型拡散領域224及びp型拡散領域225が接続される。p型シリコン層210がX線検出部に相当し、p型シリコン層222がMOS型トランジスタ部に相当する。なお、このX線検出センサ200はp型シリコン層210の裏面(導電体250が設けられた側)をX線の入射面とする。なお、X線検出効率を上げるため、図4に示すように、高濃度n型拡散領域214の下方ではp型シリコン層210の裏面が露出するよう、導電体250に開口部290を設けることも好ましい。
【実施例
【0036】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0037】
[実験例1]
(発明例1-1)
支持基板としてFZ単結晶から得たp型シリコンウェーハ(厚さ:750μm、ドーパント種類:ボロン、キャリア濃度:1.3×1014atoms/cm、抵抗率:100Ω・cm、酸素濃度:2×1016atoms/cm)を用意した。次いで、このシリコンウェーハを枚葉式エピタキシャル成長装置(アプライドマテリアルズ社製)内に搬送し、水素をキャリアガス、トリクロロシランをソースガスとして1150℃でCVD法により、シリコンウェーハ上に厚さ5.0μmのn型シリコンエピタキシャル層(ドーパント:リン、キャリア濃度:4.3×1014atoms/cm 抵抗率:10Ω・cm)を成長させた(以下、n型Si層と略記する)。次いで、このn型層の表面に、厚さ10.0μmのp型シリコンエピタキシャル層(ドーパント:ボロン、キャリア濃度:1.4×1016atoms/cm 抵抗率:1Ω・cm)を成長させ(以下、p型Si層と略記する)、発明例1-1に係るエピタキシャルシリコンウェーハを作製した。
【0038】
(発明例1-2)
発明例1-1ではn型Si層のキャリア濃度を4.3×1014atoms/cm(抵抗率:10Ω・cm)としていたところ、これを2.0×1015atoms/cm(抵抗率:2.3Ω・cm)に変えた以外は発明例1-1と同様にして発明例1-2に係るエピタキシャルシリコンウェーハを作製した。
【0039】
(発明例1-3)
発明例1-1ではn型Si層の厚さを5.0μm、キャリア濃度を4.3×1014atoms/cm(抵抗率:10Ω・cm)とし、p型Si層の厚さを10.0μm、キャリア濃度を1.4×1016atoms/cm(抵抗率:1Ω・cm)としていたところ、n型Si層の厚さを2.3μm、そのキャリア濃度を8.0×1014atoms/cm(抵抗率:1Ω・cm)とし、p型Si層の厚さを3.0μm、そのキャリア濃度を1.0×1016atoms/cm(抵抗率:0.77Ω・cm)にした以外は発明例1-1と同様にして発明例1-3に係るエピタキシャルシリコンウェーハを作製した。
【0040】
(発明例1-4)
発明例1-1ではn型Si層の厚さを5.0μm、キャリア濃度を4.3×1014atoms/cm(抵抗率:10Ω・cm)とし、p型Si層の厚さを10.0μm、キャリア濃度を1.4×1016atoms/cm(抵抗率:1Ω・cm)としていたところ、n型Si層の厚さを3.0μm、そのキャリア濃度を3.0×1014atoms/cm(抵抗率:14.5Ω・cm)とし、p型Si層の厚さを12.0μm、そのキャリア濃度を1.0×1015atoms/cm(抵抗率:13.3Ω・cm)にした以外は発明例1-1と同様にして発明例1-4に係るエピタキシャルシリコンウェーハを作製した。
【0041】
(比較例1-1)
発明例1-1ではn型Si層のキャリア濃度を4.3×1014atoms/cm(抵抗率:10Ω・cm)としていたところ、これを5.0×1015atoms/cm(抵抗率:1.0Ω・cm)に変えた以外は発明例1-1と同様にして比較例1-1に係るエピタキシャルシリコンウェーハを作製した。
【0042】
(比較例1-2)
発明例1-1ではn型Si層の厚さを5.0μmとしていたところ、これを40μmに変えた以外は発明例1-1と同様にして比較例1-2に係るエピタキシャルシリコンウェーハを作製した。
【0043】
(比較例1-3)
発明例1-1ではn型Si層の厚さを5.0μm、キャリア濃度を4.3×1014atoms/cm(抵抗率:10Ω・cm)とし、p型Si層の厚さを10.0μm、キャリア濃度を1.4×1016atoms/cm(抵抗率:1Ω・cm)としていたところ、n型Si層の厚さを2.0μm、そのキャリア濃度を7.5×1015atoms/cm(抵抗率:0.7Ω・cm)とし、p型Si層の厚さを5.0μm、そのキャリア濃度を2.0×1016atoms/cm(抵抗率:0.77Ω・cm)にした以外は発明例1-1と同様にして比較例1-3に係るエピタキシャルシリコンウェーハを作製した。
【0044】
(比較例1-4)
発明例1-1ではn型Si層の厚さを5.0μm、キャリア濃度を4.3×1014atoms/cm(抵抗率:10Ω・cm)とし、p型Si層の厚さを10.0μm、キャリア濃度を1.4×1016atoms/cm(抵抗率:1Ω・cm)としていたところ、n型Si層の厚さを10.0μm、そのキャリア濃度を5.5×1015atoms/cm(抵抗率:0.9Ω・cm)とし、p型Si層の厚さを10.0μm、そのキャリア濃度を3.0×1015atoms/cm(抵抗率:4.5Ω・cm)にした以外は発明例1-1と同様にして比較例1-4に係るエピタキシャルシリコンウェーハを作製した。
【0045】
(評価1:n型Si層の絶縁性)
n型Si層が絶縁層として機能することを確認するため、TZDB(Time Zero Dielectric Breakdown)測定を実施した。図5を参照して、TZDB測定に用いた耐圧測定用TEG(Test Element Group)300を説明する。p型Si層322及びn型Si層321をエッチングすることで溝370を形成し、島状の孤立素子を作製した。次いで支持基板350の裏面及び孤立素子のp型層321表面に配線350を形成した。このTEG300を用いて、裏面電極を0Vとした(接地)上で、表面電極へ0Vから10Vまで電圧を印加して、その際に流れる電流値を測定することでn型Si層321の絶縁性を評価した。なお、今回の実験装置において、測定下限値は1×10-10(A/cm)である。結果を下記表1に記載する。本評価結果から、発明例1-1から発明例1-4ではn型Si層が絶縁層として機能することが確認された一方、比較例1-1から比較例1-4ではn型Si層が絶縁層として機能するには不十分であることが確認された。
【0046】
【表1】
【0047】
[実験例2]
(発明例2-1)
実験例1における発明例1-1と同様にして、発明例2-1に係るエピタキシャルシリコンウェーハを作製した。
【0048】
(発明例2-2)
発明例2-1ではFZウェーハを用いていたところ、これをMCZ単結晶から得たp型シリコンウェーハ(厚さ:750μm、ドーパント種類:ボロン、キャリア濃度:1.3×1014atoms/cm、抵抗率:100Ω・cm、酸素濃度:3.0×1017atoms/cm)に変えた以外は発明例2-1と同じ条件で、発明例2-2にかかるエピタキシャルシリコンウェーハを作製した。
【0049】
(発明例2-3)
発明例2-2のp型シリコンウェーハの酸素濃度は3.0×1017atoms/cmであったところ、これを5.0×1017atoms/cmに変えた以外は発明例2-2と同じ条件で、発明例2-2にかかるエピタキシャルシリコンウェーハを作製した。
【0050】
(比較例2-1)
発明例2-2のp型シリコンウェーハの酸素濃度は3.0×1017atoms/cmであったところ、これを7.0×1017atoms/cmに変えた以外は発明例2-2と同じ条件で、比較例2-1にかかるエピタキシャルシリコンウェーハを作製した。
【0051】
(比較例2-2)
発明例2-1で用いたのと同様のFZシリコンウェーハに、厚さ5.0μmのシリコン酸化膜を成膜した。次いで、これを、当該シリコン酸化膜を介してp型のシリコンウェーハ(ドーパント:ボロン、キャリア濃度:1.4×1016atoms/cm 抵抗率:1Ω・cm)と貼合せた。そして、p型のシリコンウェーハを研削及び研磨して厚さが10.0μmのp型シリコン単結晶層(説明の便宜状、発明例1-1等に準じてp型Si層と称する)を形成した。こうして、比較例2-2に係るSOIウェーハを作製した。
【0052】
(評価2-1:I-V測定試験)
発明例2-1、2-2、2-3及び比較例2-1に係るそれぞれのエピタキシャルシリコンウェーハ及び比較例2-2に係るSOIウェーハに対し、p型Si層へAl電極をパターニングし、エピタキシャルシリコンウェーハの表面(p型Si層)から裏面(シリコンウェーハ裏面)へ流れる電流をI-V測定により評価した。具体的には、ウェーハ裏面をグランドに設定した状態でAl電極へ、0Vから10Vまで電圧を印加し、その際に流れる電流を測定した。流れた電流がリーク電流である。測定結果を表2に記載する。
【0053】
(評価2-2:抵抗変動評価)
発明例2-1、2-2、2-3及び比較例2-1に係るそれぞれのエピタキシャルシリコンウェーハ及び比較例2-2に係るSOIウェーハに対し、さらにデバイス作製プロセスを想定して、450℃、10時間の熱処理を窒素雰囲気下で行った。熱処理前後でのシリコンウェーハの裏面側の抵抗率を、4短針法により評価した。結果を表2に記載する。
【0054】
【表2】
※1:支持基板は発明例2-1と同様のFZウェーハである。比較例2-2はSOIウェーハである。
【0055】
評価2-1及び評価2-2より、発明例2-1、2-2、2-3及び比較例2-1に係るエピタキシャルシリコンウェーハは、いずれも比較例2-2に係るSOIウェーハと同程度のリーク電流であることが確認された。しかしながら、酸素濃度が高い比較例2-1では、熱処理に伴い抵抗変動することが確認された。
【0056】
[実験例3]
エピタキシャルウェーハとSOIウェーハの熱伝導率の相違を確認するため、以下の実験を行った。
【0057】
(サンプル1)
発明例2-1と同条件でFZウェーハ表面にn型Si層を形成した。なお、n型Si層表面上にp型Si層は形成していない。
【0058】
(サンプル2)
比較例2-2と同条件でFZウェーハ表面にシリコン酸化膜を形成した。なお、シリコン酸化膜表面上にp型Si層は形成していない。
【0059】
(評価3:熱伝導率)
サンプル1、2にかかるウェーハの熱伝導率を、改良非定常平面熱源法(Modified transient plane source)を用いるC-Thermtechnology社製TCiを用いて評価した。サンプル2の熱伝導率は、サンプル1の熱伝導率の40%であり、シリコン酸化膜によって放熱性が悪化することが確認される。
【0060】
以上の実験例1~3より、本発明条件を満たすエピタキシャルシリコンウェーハではn型Si層が絶縁層として機能し、かつ、デバイス作製プロセスに伴う熱処理を経ても抵抗変動することがないことが確認された。したがって、本発明に従うエピタキシャルシリコンウェーハは、X線検出センサに供して好適である。
【0061】
本発明によれば、X線検出センサに供して好適なエピタキシャルシリコンウェーハ及びその製造方法を提供することができる。さらに本発明によれば、このエピタキシャルシリコンウェーハを用いたX線検出センサを提供することができる。
【符号の説明】
【0062】
100 エピタキシャルシリコンウェーハ
110 シリコンウェーハ
120 シリコンエピタキシャル層
121 第1のシリコンエピタキシャル層
122 第2のシリコンエピタキシャル層
200 X線検出センサ
210 p型シリコン層
214 高濃度n型拡散領域
221 n型シリコン層
222 p型シリコン層
224 n型拡散領域
225 p型拡散領域
250 導電体
300 耐圧測定用TEG
図1
図2
図3
図4
図5