(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】燃料電池用セパレータ
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0258 20160101AFI20221213BHJP
H01M 8/0247 20160101ALI20221213BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20221213BHJP
【FI】
H01M8/0258
H01M8/0247
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2019232195
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 善記
(72)【発明者】
【氏名】二見 諭
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-139929(JP,A)
【文献】特開2011-113806(JP,A)
【文献】特開2009-48775(JP,A)
【文献】特開2002-25586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0258
H01M 8/0247
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池の発電部に当接して設けられる燃料電池用セパレータであって、
互いに間隔をおいて並列して延びるとともに前記発電部に当接する複数の突条と、互いに隣り合う2つの前記突条の間に設けられ、反応ガスが流れる流路を形成する複数のガス流路部と、を有し、
前記ガス流路部を流れる反応ガスの流れ方向の下流側を下流側とするとき、
前記突条における前記発電部に当接する当接面には、前記突条の延在方向に沿って延びる第1溝が設けられており、
前記突条の下流側端部には、前記当接面に対して下流側に連なるとともに前記発電部から離間する離間面が設けられており、
前記離間面には、前記第1溝に連なる第2溝が設けられている、
燃料電池用セパレータ。
【請求項2】
前記離間面は、下流側ほど前記発電部から離間するように傾斜する傾斜面である、
請求項1に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項3】
複数の前記突条が、互いに間隔をおいて直列して設けられており、
前記第2溝が、前記突条の各々の前記離間面に設けられている、
請求項1または請求項2に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項4】
前記当接面には、前記第1溝と前記ガス流路部とを連通する第3溝が設けられている、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池用セパレータ。
【請求項5】
前記ガス流路部を流れる反応ガスの流れ方向の上流側を上流側とするとき、
複数の前記第3溝が設けられており、
前記第3溝の前記当接面に占める割合は、上流側よりも下流側の方が小さい、
請求項4に記載の燃料電池用セパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体高分子形燃料電池は、膜電極接合体を有する発電部と、複数の凸部及び凹部が交互に形成され、発電部を挟持する一対の金属製のセパレータとを含む単セルが複数積層されたスタックを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
単セルを構成する各セパレータと発電部との間には、上記凸部及び凹部により区画され、燃料ガスや酸化ガスを供給するガス流路が形成されている。各ガス流路に水素などの燃料ガス、及び酸素などの酸化ガスが供給される。これにより、膜電極接合体内における燃料ガスと酸化ガスとの電気化学反応により発電が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した電気化学反応により生成された水(以下、生成水と称する)は、カソード側のガス流路、すなわち酸化ガスが供給されるガス流路に流入する。こうした生成水は、ガス流路を流れる酸化ガスの圧力によって外部に排出される。しかしながら、生成水の量が多くなった場合には、ガス流路が生成水により閉塞されたり、酸化ガスの圧力損失が過度に増大したりするおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、生成水の排出性を高めることができる燃料電池用セパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための燃料電池用セパレータは、燃料電池の発電部に当接して設けられる燃料電池用セパレータであって、互いに間隔をおいて並列して延びるとともに前記発電部に当接する複数の突条と、互いに隣り合う2つの前記突条の間に設けられ、反応ガスが流れる流路を形成する複数のガス流路部と、を有し、前記ガス流路部を流れる反応ガスの流れ方向の下流側を下流側とするとき、前記突条における前記発電部に当接する当接面には、前記突条の延在方向に沿って延びる第1溝が設けられており、前記突条の下流側端部には、前記当接面に対して下流側に連なるとともに前記発電部から離間する離間面が設けられており、前記離間面には、前記第1溝に連なる第2溝が設けられている。
【0008】
同構成によれば、燃料電池の発電に伴い発生する生成水は、発電部に当接する突条の当接面に設けられた第1溝に流入するとともに下流側に向かって移動する。そして、第1溝の下流側端部に到達した生成水は、当接面に対して下流側に連なるとともに発電部から離間する離間面に設けられた第2溝に流入するとともに下流側に向かって移動するようになる。したがって、生成水の排出性を高めることができる。
【0009】
上記燃料電池用セパレータにおいて、前記離間面は、下流側ほど前記発電部から離間するように傾斜する傾斜面であることが好ましい。
同構成によれば、第2溝に流入した生成水が、傾斜面の傾斜を利用して下流側に向かって円滑に移動しやすくなる。これにより、生成水が円滑に排出されやすくなることから、生成水の排出性を一層高めることができる。
【0010】
上記燃料電池用セパレータにおいて、複数の前記突条が、互いに間隔をおいて直列して設けられており、前記第2溝が、前記突条の各々の前記離間面に設けられていることが好ましい。
【0011】
同構成によれば、複数の突条が互いに間隔をおいて直列して設けられているため、互いに直列する2つの突条同士の間を通じて、これら2つの突条に隣接するガス流路部同士が連通される。これにより、反応ガスの分配性を向上させることができる。また、各突条の下流側端部に第2溝が設けられているため、各突条の第1溝に流入した生成水が第2溝を通じて下流側に向かって排出される。以上のことから、反応ガスの分配性の向上と、生成水の排出性の向上との両立を図ることができる。
【0012】
上記燃料電池用セパレータにおいて、前記当接面には、前記第1溝と前記ガス流路部とを連通する第3溝が設けられていることが好ましい。
同構成によれば、第1溝とガス流路部とを連通する第3溝が当接面に設けられているため、発電部から第1溝に流入した生成水の一部は第2溝に向かって流れる一方、生成水の他の一部は第3溝を通じてガス流路部に向かって流れるようになる。これにより、発電部から第1溝に流入した生成水は、第2溝とガス流路部との双方を通じて下流側に向かって流れるようになるため、生成水の排出性を一層高めることができる。また、このように生成水の排出経路を複数設けることにより、生成水がセパレータの一部に滞留することを抑制できる。
【0013】
上記燃料電池用セパレータにおいて、前記ガス流路部を流れる反応ガスの流れ方向の上流側を上流側とするとき、複数の前記第3溝が設けられており、前記第3溝の前記当接面に占める割合は、上流側よりも下流側の方が小さいことが好ましい。
【0014】
発電部における生成水は、ガス流路部を上流側から下流側に向かって流れるため、ガス流路部における下流側の部分ほど生成水が滞留しやすくなる。
上記構成によれば、第3溝の当接面に占める割合が上流側よりも下流側の方が小さい。このため、第3溝を通じて第1溝からガス流路部に向かって流れる生成水の量が、上流側よりも下流側の方が少なくなる。これにより、第1溝内における上流側の生成水については、第1溝内を下流側に向かって流れるよりも第3溝を通じてガス流路部に向かって排出されやすくなる。また、第1溝内における下流側の生成水については、第3溝を通じてガス流路部に向かって排出されるよりも、第2溝を通じて下流側に向かって排出されやすくなる。以上のことから、第1溝内に生成水が過度に流れることで第1溝内が生成水により閉塞されることを抑制しつつ、ガス流路部の下流側に生成水が過度に滞留することを抑制できる。このように、第3溝の当接面に占める割合を適宜変更することで、第1溝内の生成水を排出するにあたり、第3溝を通じて排出する生成水の量と、第2溝を通じて排出する生成水の量とを調節することができる。したがって、生成水を効率的に排出することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、生成水の排出性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】燃料電池用セパレータの一実施形態について、当該セパレータを有する単セルを中心とした燃料電池スタックの断面図。
【
図3】同実施形態の第2セパレータにおける突条の上流側の部分を示す斜視図。
【
図4】同実施形態の第2セパレータにおける突条の下流側端部を示す斜視図。
【
図5】第1変更例の第2セパレータの突条を示す斜視図。
【
図6】第2変更例の第2セパレータの突条を示す斜視図。
【
図7】第3変更例の第2セパレータの突条を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1~
図4を参照して、燃料電池用セパレータの一実施形態について説明する。
各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については実際と異なる場合がある。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の燃料電池用セパレータ(以下、セパレータ20と称する)は、固体高分子形燃料電池のスタック100に用いられるものである。なお、セパレータ20は、後述する第1セパレータ30及び第2セパレータ50の総称である。
【0019】
スタック100は、複数の単セル10が積層された構造を有している。単セル10は、アノード側の第1セパレータ30と、カソード側の第2セパレータ50とにより挟持された発電部11を備えている。
【0020】
発電部11は、膜電極接合体12と、膜電極接合体12を挟持するアノード側ガス拡散層15及びカソード側ガス拡散層16とにより構成されている。アノード側ガス拡散層15は、膜電極接合体12と第1セパレータ30との間に設けられている。カソード側ガス拡散層16は、膜電極接合体12と第2セパレータ50との間に設けられている。アノード側ガス拡散層15及びカソード側ガス拡散層16は、共に炭素繊維により形成されている。
【0021】
膜電極接合体12は、湿潤状態で良好なプロトン伝導性を有する固体高分子材料からなる電解質膜13と、電解質膜13を挟持する一対の電極触媒層14とを備えている。各電極触媒層14には、燃料電池における反応ガスの電気化学反応を促進するために、例えば白金などの触媒が担持されている。
【0022】
第1セパレータ30は、例えば、ステンレス鋼などの金属板材をプレス成形することにより形成されている。第1セパレータ30における発電部11に対向する部分には、反応ガスを発電部11の全体に分配する分配部40が形成されている。分配部40は、互いに間隔をおいて並列して延びるとともに発電部11に当接する複数の突条41と、互いに隣り合う2つの突条41の間に設けられ、反応ガスが流れる流路を形成する複数のガス流路部42とを有している。各突条41は、アノード側ガス拡散層15に当接している。なお、各突条41及びガス流路部42は、
図1の紙面に直交する方向に延びている。
【0023】
第2セパレータ50は、例えば、ステンレス鋼などの金属板材をプレス成形することにより形成されている。第2セパレータ50における発電部11に対向する部分には、反応ガスを発電部11の全体に分配する分配部60が形成されている。分配部60は、互いに間隔をおいて並列して延びるとともに発電部11に当接する複数の突条61と、互いに隣り合う2つの突条61の間に設けられ、反応ガスが流れる流路を形成する複数のガス流路部62とを有している。各突条61は、カソード側ガス拡散層16に当接している。なお、各突条61及びガス流路部62は、
図1の紙面に直交する方向に延びている。
【0024】
第1セパレータ30のガス流路部42とアノード側ガス拡散層15とで区画される部分には、反応ガスとしての燃料ガスが流通する燃料ガス流路が形成されている。第2セパレータ50のガス流路部62とカソード側ガス拡散層16とで区画される部分には、反応ガスとしての酸化ガスが流通する酸化ガス流路が形成されている。本実施形態において、燃料ガス流路を流通する燃料ガスは水素であり、酸化ガス流路を流通する酸化ガスは空気である。
【0025】
第1セパレータ30におけるガス流路部42の底部と、同第1セパレータ30に隣り合う第2セパレータ50のガス流路部62の底部とは、レーザ溶接などにより互いに接合されている。第1セパレータ30の突条41の裏面と、第2セパレータ50における突条61の裏面とで区画される部分には、冷却水が流通する冷却水流路が形成されている。
【0026】
本実施形態のスタック100においては、燃料ガス流路に供給された燃料ガスと、酸化ガス流路に供給された酸化ガスとが発電部11において電気化学反応することにより発電が行われる。このとき、カソード側の電極触媒層14及びカソード側ガス拡散層16には、燃料ガスと酸化ガス、すなわち水素と酸素との電気化学反応により水(以下、生成水と称する)が生成される。こうした生成水は、第2セパレータ50のガス流路部62を流れる酸化ガスの圧力により下流側に移動して後述する酸化ガス排出マニホールド53bを通じて外部に排出される。
【0027】
次に、第2セパレータ50について詳細に説明する。
図2に示すように、第2セパレータ50は、長辺及び短辺を有する略長方形板状をなしている。
【0028】
以降において、第2セパレータ50の長辺が延びる方向を長手方向と称し、短辺が延びる方向であって長手方向と直交する方向を幅方向と称する。また、
図2における右側及び左側をそれぞれ長手方向の一方側及び長手方向の他方側とし、上側及び下側をそれぞれ幅方向の一方側及び幅方向の他方側として説明する。また、第2セパレータ50の突条61が延在する方向を単に延在方向と称し、突条61が並ぶ方向を単に並び方向と称する。
【0029】
第2セパレータ50における長手方向の一方側の端部には、燃料ガス排出マニホールド51b、冷却水排出マニホールド52b、及び酸化ガス供給マニホールド53aが、幅方向の一方側から順に形成されている。また、第2セパレータ50における長手方向の他方側の端部には、燃料ガス供給マニホールド51a、冷却水供給マニホールド52a、及び酸化ガス排出マニホールド53bが、幅方向の他方側から順に形成されている。
【0030】
燃料ガスは、燃料ガス供給マニホールド51aを通じて上記燃料ガス流路に供給され、燃料ガス排出マニホールド51bから排出される。冷却水は、冷却水供給マニホールド52aを通じて上記冷却水流路に供給され、冷却水排出マニホールド52bから排出される。酸化ガスは、酸化ガス供給マニホールド53aを通じて上記酸化ガス流路に供給され、酸化ガス排出マニホールド53bから排出される。
【0031】
第2セパレータ50の中央部には、上述した分配部60が設けられている。本実施形態の分配部60は、拡散部54aを介して酸化ガス供給マニホールド53aに接続されるとともに、拡散部54bを介して酸化ガス排出マニホールド53bに接続されている。分配部60は長手方向に沿って延びるとともに二度にわたって折り返されている。したがって、各突条61及び各ガス流路部62が、長手方向に沿って延びるとともに二度にわたって折り返されている。
【0032】
拡散部54aは分配部60に向かう反応ガスを拡散させるものであり、拡散部54bは酸化ガス排出マニホールド53bに向かう反応ガスを拡散させるものである。拡散部54a,54bには、第2セパレータ50の厚さ方向に突出した複数の半球状の突起が設けられている。
【0033】
以降において、酸化ガス流路を形成するガス流路部62を流れる反応ガスの流れ方向の上流側及び下流側を単に上流側及び下流側と称する。
各マニホールド51a,51b,52a,52bの外周側には、これらを個別に取り囲むシール枠部55が設けられている。また、酸化ガス供給マニホールド53a、拡散部54a、分配部60、拡散部54b、及び酸化ガス排出マニホールド53bの外周側には、これらを一括して取り囲むシール枠部56が設けられている。各シール枠部55,56は、第2セパレータ50の厚さ方向に突出しており、隣接する他の単セル10に当接することで反応ガスの漏洩を抑制するものである。
【0034】
図3及び
図4に示すように、各突条61における発電部11に当接する、より詳しくはカソード側ガス拡散層16に当接する当接面63には、延在方向に沿って延びる第1溝65が設けられている。本実施形態の第1溝65は、延在方向の全体にわたって設けられている。すなわち、第1溝65は、突条61の上流側端部から下流側端部まで延びている。
【0035】
図4に示すように、各突条61の下流側端部には、当接面63に対して下流側に連なるとともに発電部11から離間する離間面としての傾斜面64が設けられている。傾斜面64は、下流側ほど発電部11から離間するように傾斜している。換言すると、傾斜面64は、下流側ほど発電部11側とは反対側に位置するように傾斜している。傾斜面64は、拡散部54bに滑らかに連なっている。なお、図示は省略するが各突条61の上流側端部には、上流側ほど発電部11から離間するように傾斜する傾斜面が設けられている。
【0036】
傾斜面64には、第1溝65に連なるとともに下流側に向かって延びる第2溝66が設けられている。第2溝66は、傾斜面64における延在方向の全体にわたって設けられている。
【0037】
当接面63には、第1溝65とガス流路部62とを連通する複数の第3溝67が設けられている。より詳しくは、第1溝65から並び方向の両側に分岐するとともに同両側のガス流路部62に連通する一対の第3溝67が、延在方向に互いに間隔をおいて設けられている。一対の第3溝67の各々は、第1溝65に対して直交して延びるとともに延在方向において同一の位置に設けられている。本実施形態の第3溝67の幅及び深さは突条61の全体にわたって同一である。
【0038】
図3及び
図4に示すように、第3溝67の当接面63に占める割合は、上流側よりも下流側の方が小さい。ここで、
図3は突条61の上流側の部分を示しており、
図4は突条61の下流側端部を示している。より詳細には、
図3及び
図4に一点鎖線にて示す所定の範囲Aにおける第3溝67の数が、上流側よりも下流側の方が少ない。本実施形態では、延在方向における第3溝67同士の間隔を上流側よりも下流側の方が大きくなるようにすることで、第3溝67の数を上流側よりも下流側の方が少なくなるようにしている。
【0039】
本実施形態の作用について説明する。
燃料電池の発電に伴い発生する生成水は、発電部11に当接する第2セパレータ50の突条61の当接面63に設けられた第1溝65に流入するとともに下流側に向かって移動する。そして、第1溝65の下流側端部に到達した生成水は、当接面63に連なる傾斜面64に設けられた第2溝66に流入するとともに傾斜面64の傾斜を利用して下流側に向かって円滑に移動しやすくなる。
【0040】
本実施形態の効果について説明する。
(1)第2セパレータ50の突条61における発電部11に当接する当接面63には、突条61の延在方向に沿って延びる第1溝65が設けられている。突条61の下流側端部には、当接面63に対して下流側に連なるとともに下流側ほど発電部11から離間するように傾斜する傾斜面64が設けられている。傾斜面64には、第1溝65に連なる第2溝66が設けられている。
【0041】
こうした構成によれば、上述した作用を奏することから、生成水の排水性を高めることができる。
(2)当接面63には、第1溝65とガス流路部62とを連通する第3溝67が設けられている。
【0042】
こうした構成によれば、第1溝65とガス流路部62とを連通する第3溝67が当接面63に設けられているため、発電部11から第1溝65に流入した生成水の一部は第2溝66に向かって流れる一方、生成水の他の一部は第3溝67を通じてガス流路部62に向かって流れるようになる。これにより、発電部11から第1溝65に流入した生成水は、第2溝66とガス流路部62との双方を通じて下流側に向かって流れるようになるため、生成水の排出性を一層高めることができる。また、このように生成水の排出経路を複数設けることにより、生成水が第2セパレータ50の一部に滞留することを抑制できる。
【0043】
(3)第3溝67の当接面63に占める割合は、上流側よりも下流側の方が小さい。
発電部11における生成水は、ガス流路部62を上流側から下流側に向かって流れるため、ガス流路部62における下流側の部分ほど生成水が滞留しやすくなる。
【0044】
上記構成によれば、第3溝67の当接面63に占める割合が上流側よりも下流側の方が小さい。このため、第3溝67を通じて第1溝65からガス流路部62に向かって流れる生成水の量が、上流側よりも下流側の方が少なくなる。これにより、第1溝65内における上流側の生成水については、第1溝65内を下流側に向かって流れるよりも第3溝67を通じてガス流路部62に向かって排出されやすくなる。また、第1溝65内における下流側の生成水については、第3溝67を通じてガス流路部62に向かって排出されるよりも、第2溝66を通じて下流側に向かって排出されやすくなる。以上のことから、第1溝65内に生成水が過度に流れることで第1溝65内が生成水により閉塞されることを抑制しつつ、ガス流路部62の下流側に生成水が過度に滞留することを抑制できる。このように、第3溝67の当接面63に占める割合を適宜変更することで、第1溝65内の生成水を排出するにあたり、第3溝67を通じて排出する生成水の量と、第2溝66を通じて排出する生成水の量とを調節することができる。したがって、生成水を効率的に排出することができる。
【0045】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0046】
なお、以下の
図5~
図7にそれぞれ示す第1変更例~第3変更例において、上記実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すとともに、対応する構成については、それぞれ「100」、「200」、「300」を加算した符号を付すことにより、重複した説明を省略する。
【0047】
・
図5に示すように、複数の突条161を互いに間隔をおいて直列して設けるようにしてもよい。各突条161の離間面としての傾斜面64には、第2溝66が設けられている。こうした構成によれば、複数の突条161が互いに間隔をおいて直列して設けられているため、互いに直列する2つの突条161同士の間を通じて、これら2つの突条161に隣接するガス流路部162同士が連通される。これにより、反応ガスの分配性を向上させることができる。また、各突条161の下流側端部に第2溝66が設けられているため、各突条161の第1溝65に流入した生成水が第2溝66を通じて下流側に向かって排出される。以上のことから、反応ガスの分配性の向上と、生成水の排出性の向上との両立を図ることができる。
【0048】
・
図6に示すように、一対の第3溝67において、並び方向の一方側の第3溝67と、並び方向の他方側の第3溝67とが、延在方向において互いに異なる位置に設けられていてもよい。
【0049】
・
図7に示すように、傾斜面64を省略するとともに、発電部11に直交する離間面364が設けられた突条361を採用することもできる。この場合、離間面364には、発電部11に直交して延びる第2溝366が形成される。
【0050】
・第3溝67の当接面63に占める割合は、上流側から下流側に向かうほど徐々に小さくなっていてもよいし、段階的に小さくなっていてもよい。
・第3溝67の当接面63に占める割合は、反応ガスの流れ方向の全体にわたって同一であってもよい。
【0051】
・本実施形態の第3溝67の幅及び深さは突条61の全体にわたって同一であったが、これらは適宜変更することができる。例えば、第3溝67の幅及び深さを上流側よりも下流側の方が小さくなるようにすれば、上述した効果(3)に準じた効果を奏することができる。
【0052】
・第3溝67は、第1溝65に対して直交して延びるものに限定されず、第1溝65に対して任意の角度にて交差して延びるものであってもよい。例えば、第3溝67がガス流路部62側に向かうほど下流側に位置するように第1溝65に対して傾斜して延びる場合には、第1溝65に対して直交して延びる場合に比べて第3溝67の形成範囲を長くすることができる。
【0053】
・一対の第3溝67の片方を省略することもできる。
・第3溝67を省略することもできる。
・第1溝65は、1つの当接面63において並び方向に複数設けられていてもよい。この場合、各第1溝65は、突条61の延在方向の途中において合流していてもよい。
【0054】
・1つの当接面63において、複数の第1溝65が延在方向に互いに間隔をおいて直列して設けられていてもよい。この場合、各第1溝65のうち最も下流側に位置する第1溝65に第2溝66が連通される。
【0055】
・第1溝65は、延在方向に対して傾斜して延びるものであってもよい。
・第1溝65、第2溝66、及び第3溝67の隅部は、直角をなすものであってもよいし湾曲していてもよい。
【0056】
・第1セパレータ30に第1溝65、第2溝66、及び第3溝67を設けることもできる。すなわち、第1セパレータ30と第2セパレータ50とは同一形状であってもよい。
・セパレータ20は、金属板材により形成されるものに限定されず、他に例えばカーボンを含む材料により形成されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0057】
11…発電部
50…第2セパレータ
61…突条
62…ガス流路部
63…当接面
64…傾斜面
65…第1溝
66…第2溝
67…第3溝