(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】凝集ナノ粒子および蛍光標識材
(51)【国際特許分類】
C09K 11/06 20060101AFI20221213BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C09K11/06
G01N21/64 F
(21)【出願番号】P 2019550504
(86)(22)【出願日】2018-11-02
(86)【国際出願番号】 JP2018040898
(87)【国際公開番号】W WO2019088266
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-10-22
(31)【優先権主張番号】P 2017214201
(32)【優先日】2017-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 誠
(72)【発明者】
【氏名】北 弘志
(72)【発明者】
【氏名】櫻木 理枝
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0255696(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106631997(CN,A)
【文献】特開2016-199751(JP,A)
【文献】特開2009-227841(JP,A)
【文献】特開2009-197097(JP,A)
【文献】国際公開第2013/164886(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/043688(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/06
G01N 21/64
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集誘起発光性分子の凝集により形成された凝集ナノ粒子であって、
前記凝集ナノ粒子は、当該粒子表面に親水基を有し、
前記凝集ナノ粒子の粒径変動係数が30%以下であ
り、
前記凝集誘起発光性分子が、下記式(2)、(4)、(5)-1、(5)-2、および(10)で表される骨格を有する、凝集ナノ粒子。
【化1】
前記式(2)中、R
1
~R
3
、はそれぞれ独立であり、
R
1
およびR
2
は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、アルキル基または置換アルキル基であり、
置換アルキル基の置換基が、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、亜リン酸基、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、シリル基およびハロゲン原子から選択される少なくとも1種の置換基であり、
R
3
は、芳香族基、脂肪族基、または水素原子であり、
Yは、電子吸引性基である;
【化2】
前記式(4)中、白抜きの丸は炭素原子を表し、黒い点はBHを表し、
R
1
およびR
2
はそれぞれ独立であり、
R
1
およびR
2
は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、互いに縮合して環状構造を形成してもよく、
R
1
およびR
2
のうち1つが、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基であり、他方が、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、脂肪族炭化水素基、または水素原子である;
【化3】
前記式(5)-1、および式(5)-2中、R、R′、およびR′′はそれぞれ独立に、芳香族基であり、
R′およびR′′は、同一であっても異なっていてもよく、また互いに縮合して飽和環、不飽和環、または芳香族環を形成してもよい;
【化4】
前記式(10)中、Yは電子吸引性基または電子供与性基であり、
Xは、S、O、またはNであり、
R
1
、R
2
、R
3
、R
4
は、それぞれ独立に水素原子、有機基、または有機金属であり、
R
1
、R
2
、R
3
、R
4
は、それぞれ同一であっても異なっても良く、互いに縮合して環構造を取っても良い;
【請求項2】
前記凝集ナノ粒子が、前記親水基を当該粒子表面に1個/nm
2以上有している、請求項1に記載の凝集ナノ粒子。
【請求項3】
前記凝集ナノ粒子の平均粒径が1nm以上100nm以下である、請求項1または2に記載の凝集ナノ粒子。
【請求項4】
前記凝集誘起発光性分子が、環構造の形成に寄与しない炭素・炭素二重結合を有さないことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の凝集ナノ粒子。
【請求項5】
中心核を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の凝集ナノ粒子。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の凝集ナノ粒子を含む蛍光標識材であって、前記凝集ナノ粒子表面に標的指向性リガンドを有する、蛍光標識材。
【請求項7】
前記標的指向性リガンドが、抗体、糖鎖と結合性を有するタンパク質、細胞小器官親和性物質、ペプチドからなる群から選択される1種または2種以上の分子である、請求項6に記載の蛍光標識材。
【請求項8】
請求項6または7に記載の蛍光標識材と、緩衝液とを含む蛍光標識材分散液。
【請求項9】
凝集誘起発光性分子の溶液に、貧溶媒を接触させ、前記凝集誘起発光性分子を凝集させる工程(A)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の凝集ナノ粒子の製造方法。
【請求項10】
前記工程(A)が、中心核存在下で、前記凝集誘起発光性分子の溶液に、貧溶媒を接触させ、前記凝集誘起発光性分子を凝集させる工程である、請求項9に記載の凝集ナノ粒子の製造方法。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか一項に記載の凝集ナノ粒子に標的指向性リガンドを結合させる工程を含む、蛍光標識材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集ナノ粒子および蛍光標識材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、臨床分野や基礎研究において、分子イメージング技術が高い注目を集めている。分子イメージングは、これまで可視化できなかった生体内での分子の動きを可視化する技術であり、例えば、生体分子の分子レベルでの解析、疾病の原因となるウイルスや細菌の動態についての研究、薬物が生体に与える作用等の評価など、様々な目的について広く用いられている。特にその優れた検出感度や操作性等から、生体中の微量物質の検出には、蛍光物質を用いて行う蛍光イメージングが広く用いられる。
【0003】
蛍光イメージングを用いた診断や研究においては、蛍光性の物質を標識試薬として検出したい生体物質に結合させ、所定の励起光を照射することによって標識試薬の蛍光を高感度に検出する手法が提案されている。このような蛍光イメージングにより得られる蛍光シグナルにより、生体分子相互作用の定量化、長期間におよぶ生体分子の動態観察、超高感度観察などを行うため、「高輝度」および「高耐光性」の二つの特性をあわせもつ蛍光標識材が求められている。
【0004】
従来用いられてきた蛍光標識材としては、例えば市販の有機系蛍光色素等が挙げられるが、これらは量子収率は高くても標的分子に結合した1分子あたりの輝度は低く、また、使用の際に色素分子同士が凝集することで発光効率、発色性、光感受性や光増感性などの機能が著しく低下し、蛍光色素本来の特性を制限してしまうという欠点があった。
【0005】
さらに他の蛍光標識材としては、量子収率が高く、また耐光性が高いナノ粒子である量子ドットがある(特許文献1)。しかしながら、量子収率の比較的高い量子ドットの組成は生体毒性が高いCdを含む組成であることから生細胞や生体に対して用いることができないという問題がある。また、量子ドットは予測不可能な明滅現象を引き起こす等蛍光が安定せず、また比較的比重の大きい粒子であるため、標識した生体物質の動態や他の物質との相互作用へ干渉してしまうなど、生体分子の正確な観察や定量が難しいという欠点があった。
【0006】
これらの問題を解決するため、近年凝集誘起発光性分子を凝集させた凝集ナノ粒子が開発された(特許文献2)。この凝集ナノ粒子は従来の蛍光標識材よりも高輝度であり、さらに細胞毒性が低いという利点がある。凝集誘起発光性分子の高い輝度の発生は諸説あるが、凝集誘起発光性分子が高密度にパッキングされた微粒子となることで色素分子の部分構造の回転や振動や熱エネルギーへの変換等が抑制されて励起光エネルギーが効果的に発光パスに利用され量子収率が向上するメカニズム、また規則的な分子の積層状態がエキシマー発光しないような配置でパッキングされるために量子収率が向上するというメカニズムなどが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2011-530187号公報
【文献】米国特許出願公開第2013/089889号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献2に記載の凝集ナノ粒子について、本発明者らが追試実験をしたところ染色時において輝度ムラが発生し、また一定期間保存後に使用した際の輝度および染色後の耐光性が低いという問題が判明した。この原因を解明するため、本発明者らがさらに追試したところ、上記凝集ナノ粒子を製造してからの時間経過とともに、粒子の凝集による粒度分布が広がり始め、1週間後には粒径変動係数が60%を超えることが明らかになり、この凝集による粒度分布の増大が、耐光性の低下に相関していることもわかった。
【0009】
この原因について、発明者らは鋭意検討した結果、製造時の粒径変動係数が大きいほど、経時的な粒度分布の増大が顕著であることを突き止めた。さらに、当該凝集ナノ粒子は表面が疎水性であるために相互作用により2次凝集を引き起こしやすく、その結果、ナノ粒子の凝集体中心付近に位置する凝集誘起発光性分子の励起光吸収が不充分となることや、発光がナノ粒子凝集体の内部で多重散乱することで凝集誘起発光性分子が発した蛍光が検出されないことで、充分な輝度が得られないのではないかと考えた。また、ナノ粒子が2次凝集することで励起光の吸収に異方性が発現することで蛍光強度が均一でない(輝度ムラが発生する)こと、さらに凝集により隣接する粒子表面の凝集誘起発光性分子同士が相互作用を引き起こして再配置することでナノ粒子表面に空隙等が発生し、凝集誘起発光性分子の劣化因子となる酸素分子などが作用しやすくなってしまうことが、耐光性低下の原因となると考えた。
【0010】
本発明は、従来用いられてきた蛍光標識材よりも、より高輝度であり、より耐光性の高い凝集ナノ粒子に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、本発明者らは上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、凝集誘起発光性分子をナノ粒子化した凝集ナノ粒子の表面を親水性にし、凝集ナノ粒子の粒子径変動係数を30%以下とすることで、上記の課題を解決し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は例えば次のような凝集ナノ粒子および蛍光標識材を提供する。
[項1]
凝集誘起発光性分子の凝集により形成された凝集ナノ粒子であって、
前記凝集ナノ粒子は、当該粒子表面に親水基を有し、
前記凝集ナノ粒子の粒径変動係数が30%以下である、凝集ナノ粒子。
[項2]
前記凝集ナノ粒子が、前記親水基を当該粒子表面に1個/nm2以上有している、項1に記載の凝集ナノ粒子。
[項3]
前記凝集ナノ粒子の平均粒径が1nm以上100nm以下である、項1または2に記載の凝集ナノ粒子。
[項4]
前記凝集誘起発光性分子が、環構造の形成に寄与しない炭素・炭素二重結合を有さないことを特徴とする項1~3のいずれか一項に記載の凝集ナノ粒子。
[項5]
中心核を有する、項1~4のいずれか一項に記載の凝集ナノ粒子。
[項6]
項1~5のいずれか一項に記載の凝集ナノ粒子を含む蛍光標識材であって、前記凝集ナノ粒子表面に標的指向性リガンドを有する、蛍光標識材。
[項7]
前記標的指向性リガンドが、抗体、糖鎖と結合性を有するタンパク質、細胞小器官親和性物質、ペプチドからなる群から選択される1種または2種以上の分子である、項6に記載の蛍光標識材。
[項8]
項6または7に記載の蛍光標識材と、緩衝液とを含む蛍光標識材分散液。
[項9]
凝集誘起発光性分子の溶液に、貧溶媒を接触させ、前記凝集誘起発光性分子を凝集させる工程(A)を含む、項1~4のいずれか一項に記載の凝集ナノ粒子の製造方法。
[項10]
前記工程(A)が、中心核存在下で、前記凝集誘起発光性分子の溶液に、貧溶媒を接触させ、前記凝集誘起発光性分子を凝集させる工程である、項9に記載の凝集ナノ粒子の製造方法。
[項11]
項1~5のいずれか一項に記載の凝集ナノ粒子に標的指向性リガンドを結合させる工程を含む、蛍光標識材の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の「凝集ナノ粒子」は、凝集誘起発光性分子を含む従来のナノ粒子よりも量子収率が高くまた高輝度であり、さらに上述した2次凝集による輝度の低下および凝集誘起発光性分子の再配置による劣化が抑制されることで、経時的耐光性が飛躍的に向上する。
【0014】
また本発明の凝集ナノ粒子を含む蛍光標識材を生体分子の標識に用いると、強くまた均一な蛍光シグナルを安定して得ることができるため、生体物質の定量化、長期間におよぶ動態観察、および超高感度観察を行うことが可能となる。さらに本発明の凝集ナノ粒子および蛍光標識材は粒径および比重が比較的小さいことから、標識した生体物質と他の物質との相互作用へ干渉しにくいため、生体物質間相互作用を定量的に評価することも可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の「凝集ナノ粒子」は、凝集誘起発光性分子の凝集により形成された粒子であって、当該粒子表面には親水基を有しており、粒径変動係数が30%以下であることを特徴とする。
<凝集誘起発光性分子>
本発明において用いられる凝集誘起発光性分子は、希薄溶液中で凝集することなく各分子が溶解あるいは分散している状態では量子収率が低いため蛍光を発さないか、蛍光の発光強度が弱い物質であるが、凝集して集合体を形成することで量子収率が上がり、強い蛍光を発する、または蛍光強度を増すという性質を有する蛍光物質である。凝集誘起発光性分子としては、公知の凝集誘起発光性分子等を特に制限なく用いることができるが、通常は炭化水素系芳香環およびヘテロ芳香環の少なくとも一方を有する分子が用いられる。具体的には、例えば、マレイミド系凝集誘起発光性分子、アミノベンゾピラノキサンテン(ABPX)系凝集誘起発光性分子、ベンゾフロ・オキサゾロ・カルバゾール系凝集誘起発光性分子、カルボラン系凝集誘起発光性分子、ローダミン系凝集誘起発光性分子、テトラフェニルエチレン系凝集誘起発光性分子、シロール系凝集誘起発光性分子、芳香環含有金属錯体系化合物、BODIPY系ホウ素イミン錯体凝集誘起発光性分子、その他のヘテロ化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
<1.ベンゾフロ・オキサゾロ・カルバゾール系凝集誘起発光性分子>
前記ベンゾフロ・オキサゾロ・カルバゾール系凝集誘起発光性分子とは、ベンゾフロ・オキサゾロ・カルバゾール骨格を有する凝集誘起発光性分子のことをいい、ベンゾフロ・オキサゾロ・カルバゾール骨格とは、下記式(1)で表される。すなわち、ベンゾフロ・オキサゾロ・カルバゾール系凝集誘起発光性分子は、分子内に下記式(1)で表される骨格を有する凝集誘起発光性分子である。ベンゾフロ・オキサゾロ・カルバゾール系凝集誘起発光性分子としては、例えば下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0016】
【0017】
【化2】
R
1~R
3はそれぞれ独立に、水素原子、有機基または有機金属基である。
【0018】
R1およびR2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、好ましくはアルキル基または置換アルキル基であり、置換アルキル基の置換基としては、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、亜リン酸基、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、シリル基およびハロゲン原子から選択される少なくとも1種の置換基であることが好ましい。
【0019】
R3で表される置換基は、芳香族基、脂肪族基、または水素原子であることが好ましく、前記芳香族基は芳香族炭化水素基でも芳香族複素環基でもよく、好ましい例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナンスリル基、ピレニル基、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジニル基等が挙げられる。脂肪族基としては、アルキル基、シクロアルキル基、不飽和脂肪族基等が挙げられ、芳香族基、脂肪族基は水素原子が置換基で置換されていてもよく、置換基としては、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、亜リン酸基、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、シリル基およびハロゲン原子から選択される少なくとも1種の置換基が好ましい。
【0020】
また、Yは電子吸引性基を表し、具体的には、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基、トシル基、メシル基、ハロゲン、フェニル基、アシル基、ケト基、カルボキシル基、アルデヒド基、エトキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ジシアノメチル基、シアナミド基などが挙げられる。
【0021】
前記ベンゾフロ・オキサゾロ・カルバゾール系凝集誘起発光性分子は、以下の式(3)‐1~式(3)‐3であらわされる化合物であることが好ましい。
【0022】
【0023】
【0024】
【化5】
<2.カルボラン系凝集誘起発光性分子>
前記カルボラン系凝集誘起発光性分子としては、C
2B
10で構成されるカルボラン骨格を有する化合物、好ましくはortho-カルボラン骨格を有する化合物である。前記カルボラン系凝集誘起発光性分子としては、例えば下記式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0025】
【化6】
なお、式(4)において、白抜きの丸は炭素原子を表し、黒い点はBHを表す。立体構造の観点から図示できないBHは省略されている。
【0026】
式(4)においてR1およびR2はそれぞれ独立に、水素原子、有機基または有機金属基から選択することができる。R1およびR2で表される置換基は、同一であっても異なっていてもよく、互いに縮合して環状構造を形成してもよい。R1およびR2のうち1つが芳香族炭化水素基または芳香族複素環基であることが好ましく、その場合、他方は芳香族炭化水素基または芳香族複素環基であっても、脂肪族炭化水素基であっても、水素原子であってもよい。
【0027】
前記芳香族炭化水素基は、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナンスリル基、ピレニル基等が挙げられ、前記芳香族複素環基はピリジル基、ピリミジル基、トリアジニル基、ピロール基、イミダゾール基、ピラゾール基、トリアゾール基、オキサジアゾール基、オキサゾール基、チアジアゾール基、チアゾール基等が挙げられる。前記脂肪族炭化水素基のうち飽和脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基が挙げられ、不飽和脂肪族基としては、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基が挙げられる。また、前記脂肪族炭化水素基には、アラルキル基の水素原子の一つがアリール基で置換されたアラルキル基が含まれるものとする。
【0028】
前記芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、および脂肪族炭化水素基は任意のアルカリ金属基で置換されていてもよく、さらに親水性基および反応性官能基から選択される少なくとも1種の基で置換されていてもよい。前記親水性基および反応性官能基から選択される少なくとも1種の基としては、例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、亜リン酸基、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、シリル基およびハロゲン原子等が挙げられる。
【0029】
前記R1およびR2が同一のものである場合、R1およびR2は以下の式(4)‐1の中から選択されることが好ましい。
【0030】
【化7】
また、前記R
1およびR
2は、以下の式(4)‐2から選択される組み合わせであることも好ましい。
【0031】
【化8】
<3.マレイミド系凝集誘起発光性分子>
前記マレイミド系凝集誘起発光性分子とは、マレイミド骨格を有する化合物のことをいい、例えば下記式(5)‐1または(5)‐2で表される化合物が挙げられる。
【0032】
【化9】
前記式(5)‐1または(5)‐2においてR、R'、およびR''はそれぞれ独立に、水素原子、有機基または有機金属基から選択することができ、芳香族基であることが好ましく、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジニル基であることがより好ましい。
【0033】
置換基R'およびR''は、同一であっても異なっていてもよく、また互いに縮合して飽和環、不飽和環、芳香族環を形成してもよい。
【0034】
また、マレイミド系凝集誘起発光性分子としては、前記式(5)‐1または(5)‐2で表される化合物の任意の位置の水素原子の一つまたは複数が、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、亜リン酸基、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、シリル基およびハロゲン原子から選択される少なくとも1種によって置換されていることが好ましい。
【0035】
前記マレイミド系凝集誘起発光性分子として好適に用いられる化合物の一例として、具体的には以下の化合物が挙げられる。
【0036】
【化10】
<4.アミノベンゾピラノキサンテン系凝集誘起発光性分子>
前記アミノベンゾピラノキサンテン系凝集誘起発光性分子とは、アミノベンゾピラノキサンテン骨格を有する凝集誘起発光性分子のことをいい、例えば下記式(6)で表される化合物が挙げられる。
【0037】
【化11】
式(6)においてR
1~R
4はそれぞれ独立に、水素原子、有機基または有機金属基から選択することができる。アルキル基および置換アルキル基であることが好ましく、置換アルキル基の置換基としては、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、亜リン酸基、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、シリル基およびハロゲン原子から選択される少なくとも一種であることがより好ましい。
【0038】
さらに、R1とR2、R3とR4がそれぞれ結合して環を形成していてもよい。またアミノ基のカチオンにアニオンが配位することで塩を形成していてもよい。さらにR1とR2はそれぞれ独立に、R1とR2とが結合する窒素原子が結合する炭素原子を含む環が有する別の炭素原子と結合して環を形成してもよく、R3とR4はそれぞれ独立に、R3とR4とが結合する窒素原子が結合する炭素原子を含む環が有する別の炭素原子と結合して環を形成してもよい。
【0039】
具体的には、前記アミノベンゾピラノキサンテン系凝集誘起発光性分子は、以下の化合物であることが好ましい。
【0040】
【化12】
<5.ローダミン系凝集誘起発光性分子>
前記ローダミン系凝集誘起発光性分子とは、ローダミン骨格を有する凝集誘起発光性分子のことをいい、ローダミン骨格とは、下記式(7)で表される。ローダミン系凝集誘起発光性分子は、アミノベンゾピロキサンテン系色素が好ましく、下記式(7)‐1で表される化合物がより好ましい。式(7)‐1で表される化合物には、R
a~R
g、およびmが、それぞれ2つ存在するが、同様の符号で表されるものは、それぞれ同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0041】
【0042】
【化14】
式(7)‐1においてR
aおよびR
bは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~20の炭化水素基であり、好ましくは炭素数1~12の炭化水素基である。
【0043】
前記RcおよびRdはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~20の炭化水素基であり、好ましくは水素原子である。
【0044】
前記Reは独立に、アミノ基または-COORhであり、該Rhは、水素原子または炭素数1~20の炭化水素基であり、好ましくは水素原子である。
【0045】
前記Rfは独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、保護基を有していてもよいアミド結合含有基、または炭素数1~20の炭化水素基であり、好ましくは水素原子である。
【0046】
前記Rgは独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基又は炭素数1~20の炭化水素基であり、好ましくは水素原子である。
【0047】
mは、1~4の整数であり、好ましくは1である。
【0048】
前記Ra、Rb、Rc、Rd、Rf、RgおよびRhにおける炭化水素基は、一部が窒素原子、酸素原子または硫黄原子で置換されていてもよい。
【0049】
前記RaとRcおよび/またはRbとRdは互いに結合することで、窒素原子を少なくとも1つ含む、構成原子数5または6の複素環基を形成してもよい。該複素環基としては、例えば、ピロリジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン、ピリダジン、ピリミジンおよびピラジンが挙げられる。これらの中では、ピペリジンが好ましい。
【0050】
なお、該複素環基は、置換基Rjを有していてもよい。該Rjは独立に、炭素数1~12の炭化水素基または該炭化水素基の一部が窒素原子、酸素原子または硫黄原子で置換された基である。このような化合物としては、下記式(7)-2および(7)-3で表される化合物が挙げられる。このとき、nは独立に0~3の整数であり、好ましくは0~2の整数である。
【0051】
【化15】
[式(7)‐2および(7)‐3中、R
a、R
c、R
e、R
f、R
gおよびmはそれぞれ独立に、式(7)‐1中のR
a、R
c、R
e、R
f、R
gおよびmと同義である。]
前記R
eとR
fとは互いに結合することで、窒素原子を少なくとも1つ含む、構成原子数5または6の複素環基を形成してもよい。該複素環としては、例えば、γ-ブチロラクトン、β-ラクタム、γ-ラクタムが挙られ、特にγ-ブチロラクトンであることが好ましい。該複素環基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基、ヒドロキシル基、アミノ基、ピリジニル基、フリル基、またはチエニル基が挙げられる。このような化合物としては、例えば下記式(7)‐4で表される化合物が挙げられる。
【0052】
【化16】
[式(7)‐4中、R
a~R
d、R
gおよびmはそれぞれ独立に、式(7)‐1中のR
a~R
d、R
gおよびmと同義である。]
なお、前記式(7)‐4で表される化合物には、下記式(3A)のように共鳴構造を取るようなものや、下記式(3B)のようにイオン化したものも含まれる。
【0053】
【化17】
<6,テトラフェニルエチレン系凝集誘起発光性分子>
前記テトラフェニルエチレン系凝集誘起発光性分子とは、テトラフェニルエチレン骨格を有する凝集誘起発光性分子のことをいい、例えば下記式(8)で表される化合物が挙げられる。
【0054】
【化18】
前記式(8)中、a~dはそれぞれ独立して、0~5の整数である。a~d=0、すなわち前記式(8)であらわされる化合物がテトラフェニルエチレンであることも好ましい。なお、a~dが2以上の場合、複数のR
1~R
4は同一であっても異なっていてもよく、複数のR
1同士、R
2同士、R
3同士、またはR
4同士が互いに結合して環を形成していてもよい。R
1~R
4は、同一であっても異なっていてもよく、またR
1とR
2、R
2とR
4、R
3とR
4、R
3とR
1が縮合して飽和環、不飽和環、芳香族環を形成してもよい。
【0055】
前記式(8)中、R1~R4はそれぞれ独立に、有機基、または有機金属基であり、好ましくは芳香環含有有機基であり、より好ましくは芳香族基であり、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジニル基であることが特に好ましい。
【0056】
前記式(8)で表される化合物の一例として、以下の化合物が挙げられる。
【0057】
【化19】
また、テトラフェニルエチレン系凝集誘起発光性分子としては、式(8)で表される化合物において、分子中の任意の位置に、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、亜リン酸基、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、シリル基およびハロゲン原子を一つまたは複数個有する化合物を用いることも好ましい。
<7.シロール系凝集誘起発光性分子>
前記シロール系凝集誘起発光性分子とは、シロール環を有する凝集誘起発光性分子のことをいい、特に制限されないが、好ましくは下記式(2)で表される化合物である。なお、下記式(9)中の同じ符号で表される基は、それぞれ同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0058】
【化20】
前記R
Aは独立に、水素原子または炭素数1~12の炭化水素基であり、好ましくは水素原子または炭素数1~6の炭化水素基であり、より好ましくは水素原子または炭素数1~4の炭化水素基であり、さらに好ましくは水素原子である。
【0059】
前記aは独立に、1~5の整数であり、好ましくは1または2である。
【0060】
前記RBは独立に芳香環含有有機基等の有機基であり、該芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ピロール環、イミダゾール環、イミダゾリン環、ピラゾール環、ピリジン環、ピラジン環、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、チアゾール環等が挙げられる。
【0061】
前記RBは、少なくとも1つのベンゼン環を含むことが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。
【0062】
前記RCは、独立に有機基であり、好ましくは芳香環含有有機基または炭素数1~20の炭化水素基である。
【0063】
該炭素数1~20の炭化水素基としては、炭素数1~12の炭化水素基が好ましい。
【0064】
前記RCは、炭素数1~12の炭化水素基が好ましく、フェニル基または炭素数1~12のアルキル基であることがより好ましい。
【0065】
前記RBおよびRCにおける有機基は、炭素原子と水素原子のみからなる基であってもよく、窒素原子、酸素原子、硫黄原子またはケイ素原子などのヘテロ原子を含む基であってもよい。具体的には、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、亜リン酸基、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、シリル基およびハロゲン原子から選択される少なくとも一種を有していてもよい。
【0066】
また、前記RBおよびRCはそれぞれ結合して環を形成していてもよい。RBおよびRCが環を形成した化合物としては例えば下記の化合物が挙げられる。
【0067】
【0068】
【化22】
また、前記R
A、R
BおよびR
Cの組み合わせとしては好ましい例としては以下のものが挙げられる。
【0069】
【表1】
前記シロール系凝集誘起発光性分子として好適に用いられる化合物の一例として、具体的には以下の化合物が挙げられる。
【0070】
【化23】
前記式(9)で表される化合物は、シロール環にベンゼン環が2つ結合し、さらに、芳香環含有有機基を少なくとも2つ有する構造等であるため、凝集することにより、分子内回転が抑制され、発光が生じると考えられる。すなわち、前記式(9)で表される化合物は、シロール環にベンゼン環が2つ結合し、さらに、好ましくは芳香環含有有機基を少なくとも2つ有していれば特に制限されず、所望の用途に応じて、様々な基を導入することができる。例えば、分子中の任意の位置に、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、亜リン酸基、水酸基、アミノ基、イソシアネート基、シリル基およびハロゲン原子から選択される少なくとも一種を、一つまたは複数個有することが好ましい。
【0071】
前記式(9)で表される化合物はイオン化した構造をとるものも含む。例えば、前記RCが-C6H4-CH2-N(C2H5)2で表される基である場合、前記式(9)で表される化合物には、該部分が、-C6H4-CH2-N+(C2H5)2であるものも含まれる。
【0072】
<8.芳香環含有金属錯体系分子>
前記芳香環含有金属錯体系分子とは、芳香環および金属錯体部を有する凝集誘起発光性分子である。金属錯体部を構成する金属原子としては、特に限定されないが、例えばPt、Pd、Co、Cu、Ni、Fe、Ru、Mo、Zr、Cr、Re、Mn、Rh、V、W、Ti、Ta、Nb、Irなどが挙げられる。
【0073】
前記芳香環含有金属錯体系分子は、特に制限されないが、例えば下記の様なものを挙げることができる。
【0074】
【化24】
<9.BODIPY系ホウ素イミン錯体凝集誘起発光性分子>
前記BODIPY系ホウ素イミン錯体凝集誘起発光性分子とは、ホウ素原子とイミン構造とを有する凝集誘起発光性分子のことをいい、特に制限されないが、下記式(10)で表される化合物であることが好ましく、下記式(10)-1および(10)-2で表される化合物であることがさらに好ましい。
【0075】
【0076】
【化26】
前記式(10)、式(10)-1、および(10)-2中、Yは電子吸引性基または電子供与性基を表し、この置換基により、凝集誘起発光性分子の発光波長や強度といった蛍光特性が大きく変化する。前記式(10)中、XはS、O、またはNである。なお、式中X=OまたはSのとき、R
4は存在しないことを留意する。
【0077】
前記電子供与性基としては、例えば、メトキシ基、アルコキシ基、アミノ基アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、トリアルキルアミノ基、アルキル基、メトキシ基部位を有する芳香族基が挙げられる。
【0078】
R1、R2、R3、R4はそれぞれ独立に水素原子、有機基または有機金属を表し、それぞれ同一であっても異なっても良く、互いに縮合して環構造を取っても良い。
【0079】
前記BODIPY系ホウ素イミン錯体凝集誘起発光性分子として好適に用いられる化合物の一例として、具体的には以下の化合物が挙げられる。
【0080】
【化27】
前記凝集誘起発光性分子は、耐光性の観点から、環構造の形成に寄与しない炭素・炭素二重結合を有さないことが好ましい。言い換えると前記凝集誘起発光性分子は、耐光性の観点から、炭素・炭素二重結合は全て環構造の一部を形成していることが好ましい。
【0081】
前記凝集誘起発光性分子は、市販品を用いてもよく、従来公知の方法、例えば、米国特許出願公開第2012/299474号明細書、米国特許出願公開第2013/177991号明細書、米国特許出願公開第2013/89889号明細書、S. Kamino, et. Al., Chem. Commun., 2010, 46, 9013-9015に記載の方法で合成した化合物を用いてもよい。
【0082】
前記凝集誘起発光性分子は発光波長や輝度などの蛍光特性を調整できるさらにメカノクロミック特性を有していてもよい。
【0083】
凝集ナノ粒子の作製に用いられる凝集誘起発光性分子は、撮影される蛍光画像において所望の波長(色)の蛍光を発するものを選択することができる。蛍光標識の対象とする標的物質が2種類以上である場合は、それぞれに対応した異なる波長の蛍光を発する凝集誘起発光性分子の組み合わせを選択して凝集ナノ粒子を作製すればよい。そのような2種類以上の凝集誘起発光性分子を用いる場合は、発光波長のピークが互いに100nm以上離れているものを選択することが好ましい。
【0084】
<凝集ナノ粒子>
本発明の凝集ナノ粒子は、前記凝集誘起発光性分子の凝集により形成される粒子であり、粒子表面に親水基を有し、粒径変動係数が30%以下である。
【0085】
本発明の凝集ナノ粒子がその表面に有する親水基の種類は特に限定されないが、例えば-OH、-SH、-COOH、-S(=O)2OH、-S(=O)NH2、-S(=O)2NH2、-P(=O)(OH)3、-P(=O)R(OH)2、-P(=O)R2(OH)、-P(OH)3、-P(=O)(NH2)3、-P(=O)R(NH2)2、-P(=O)R2(NH2)、-P(NH2)3、-O(C=O)OH、-NH2、-NHR、-NHCONH2、-NHCONHR、-NHCOOH、-Si(OH)3、-Si(R)(OH)2、-Si(R)2OH、-Ge(OH)3、-Ge(R)(OH)2、-Ge(R)2OH、-Ti(OH)3、-Ti(R)(OH)2、-Ti(R)2OH、-Si(NH2)3、-Si(R)(NH2)2、-B(OH)2、-O-B(OH)2、-B(NH2)2、-NHB(OH)2等が挙げられる。なお、前記Rはそれぞれ独立に水素または炭素数1~12のアルキル基を示す。
【0086】
本発明の凝集ナノ粒子の製造方法としては特に制限は無いが、例えば任意の位置に事前に親水基が導入された凝集誘起発光性分子を任意の方法で凝集させてナノ粒子化することにより、表面に親水基を有する凝集ナノ粒子を作製することができる。また、親水基が導入されていない凝集誘起発光性分子を疎水性相互作用により凝集させてナノ粒子化させた後に化学合成法、分子間相互作用または錯形成によって粒子表面に親水基を導入する方法を用いてもよい。凝集ナノ粒子表面に親水基を導入する方法は特に限定はされないが、具体例としては、凝集誘起発光性分子を硫酸または、硝酸等の酸で処理する方法が挙げられる。
【0087】
本発明の凝集ナノ粒子は、親水基を当該粒子表面に1個/nm2以上有することが好ましく、1.5個/nm2以上有することがより好ましい。また、親水基を当該粒子表面に6.0個/nm2以下有することが好ましく、4.5個/nm2以下有することがより好ましい。なお、前記親水基の数は、凝集ナノ粒子の表面積1nm2あたりの親水基の個数である。
【0088】
前記親水基の導入量は、リファレンス試料と評価対象となる凝集誘起発光性分子に係るSTEM-EELSE(走査透過型電子顕微鏡を用いた電子エネルギー損失分光法)によりそれぞれの電子エネルギー損失値を測定し、ランベルト・ベールの法則に基づいて算出することができる。
【0089】
<平均粒径および粒径変動係数>
前記凝集ナノ粒子の粒径は、粒径が小さくなるほど比表面積が大きくなることで標的物質との結合力が高まること、粒子に含まれる全ての凝集誘起発光性分子を励起させることが可能となるという観点と、粒径と輝度とは相関するという観点から、平均粒径は1nm以上100nm以下であることが好ましく、10nm以上70nm以下であることが特に好ましい。凝集ナノ粒子の平均粒径は、その製造方法における条件を調節することにより、所望の範囲に収まるようにすることができる。
【0090】
凝集ナノ粒子の粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて粒子の画像を撮影することで測定することができる。充分な数(例えば100個)の集団に含まれる凝集ナノ粒子のそれぞれの粒径を測定し、その算術平均として平均粒径を算出する。
【0091】
前記凝集ナノ粒子の粒径変動係数は、式:100×粒径の標準偏差/平均粒径により算出される。粒径変動係数は小さいほど染色に用いた際の輝度ムラが抑えられ、染色結果における定量性が向上する。本発明に係る凝集ナノ粒子における粒径変動係数は30%以下であることが好ましく、15%以下であることがさらに好ましい。粒径変動係数の下限としては特に限定は無いが、通常は4%以上である。凝集ナノ粒子の平均粒径、粒径変動係数は、例えば製造方法に応じた製造条件を適宜調節することによって、所定の範囲に収めることができる。例えば、高希釈高回転数の貧溶媒の中に凝集誘起発光性分子の分散液を滴下する方法や、マイクロミキサーを用いて貧溶媒と凝集誘起発光性分子の分散液とを高速接触させる方法、記載の比較的粗大な凝集誘起発光性分子の結晶を貧溶媒中に分散させた分散液に対してレーザーアブレーションを行う方法(特開2005-238342号公報)等で、粒径変動係数の小さい凝集ナノ粒子を製造することができる。
【0092】
前記レーザーアブレーションを行う場合、レーザーとしては公知の各種レーザーを用いることができ、YAGレーザー、エキシマーレーザー、チタン-サファイヤレーザーなどが好ましく用いられる。照射レーザーとしては、パルス波を当てるのがよい。またより粒度分布のそろった凝集ナノ粒子を調製するためには、レーザーアプレーションを行う前の分散液の濃度を、0.1mg/L~500mg/Lに調整しておくことが好ましい。照射するパワー、パルス幅、波長、照射時間は、対象の凝集誘起発光性分子の結晶の種類や大きさ、貧溶媒との混合比により適宜調整することができ、より粒度分布のそろった凝集ナノ粒子を調製するためには、例えば、パワーは0.5~500mJ/cm2、パルス幅は1~100フェムト秒、パルス幅は0.01~500Hz、照射時間は0.5分~5時間、の範囲で選択してレーザーを照射することが好ましい。
【0093】
前記貧溶媒としては水、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族系溶媒、ベンゼン、トルエンなどの芳香族系溶媒、またはこれら2種以上の混合溶媒を使用することができるが、これらには限定されない。前記レーザーアブレーション法は例えば、The Review of Laser Engineering, 33, 41-46に記載の方法でセットアップした装置で行うことができる。
【0094】
前記凝集ナノ粒子は、その構成成分として凝集誘起発光性分子の他に、中心核を有していてもよい。中心核とは、後述するように凝集誘起発光性分子から前記凝集ナノ粒子を作製する際において、凝集誘起発光性分子が凝集して成長するための核となる物質である。
【0095】
中心核として用いられる物質は、特に限定されず、例えばポリスチレン、ラテックス等の有機分子や、シリカ等の無機分子からなる微粒子が好適に用いられる。中心核の性質および大きさは、所望の凝集ナノ粒子の粒径や作製に用いられる凝集誘起発光性分子の性質にしたがって選択することができる。中心核としては、平均粒径が1nm以上20nm以下であり、粒径変動係数が、5%以下のものが好ましい。中心核の平均粒径および粒径変動係数が前記範囲内であると、得られる凝集ナノ粒子の平均粒径および粒径変動係数を前述の範囲とすることが容易であるため好ましい。
【0096】
前記凝集ナノ粒子は、その表面に非特異吸着防止分子を有していてもよい。凝集ナノ粒子と非特異吸着防止分子の結合様式は特に限定されないが、例えば、凝集ナノ粒子表面の親水性基を介して共有結合や静電相互作用で結合することができる。非特異吸着防止分子は特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール等のポリマーであることが好ましい。
【0097】
本発明の凝集ナノ粒子の形態、例えば、製造時、保存時、流通時の形態としては、特に限定されないが、例えばPBS等の公知の緩衝液を分散媒とする分散液の形態であることが好ましい。
【0098】
<蛍光標識材>
本発明の一実施形態に係る蛍光標識材は、凝集ナノ粒子を含み、粒子表面に標的指向性リガンドを有する。凝集ナノ粒子と標的指向性リガンドとは、直接結合させてもよいし、リンカー等を介して結合させてもよい。また、凝集ナノ粒子の表面に公知の方法で結合基を導入することで標的指向性リガンドを結合させることもできる。前記結合基としては、例えば上述の凝集ナノ粒子が有する親水基を利用してもよい。
【0099】
蛍光標識材の形態、例えば、製造時、保存時、流通時の形態としては、特に限定されないが、例えばPBS等の公知の緩衝液を分散媒とする分散液の形態であることが好ましい。本発明の一態様は、分散液の形態、すなわち、蛍光標識材分散液であり、該蛍光標識材分散液は、蛍光標識材と、緩衝液とを含む。
【0100】
<標的指向性リガンド>
本発明において用いられる標的指向性リガンドは、標的物質を特異的に認識して結合する物質であり、例えば動物等から採取した組織や細胞に含まれる生体物質である目的生体物質を標的物質として、特異的に認識して結合する物質であることが好ましい。前記目的生体物質は特に限定されないが、例えばタンパク質、核酸、糖鎖、脂質等が挙げられる。目的生体物質は任意の疾患に関連している生体物質であることが好ましい。具体的には、例えばがん細胞特異的に発現するマーカータンパク質(例えば、がん特異的タンパク質、血管内皮細胞特異的タンパク質、リン酸化タンパク質など)、炎症誘発性タンパク質等、免疫関連タンパク質が挙げられる。
【0101】
例えば、目的生体物質が腫瘍組織やがん細胞において特異的に発現するタンパク質である場合、標的指向性リガンドとしてはこれらに対する抗体が好ましく選択される。目的生体物質が糖タンパク質の場合には、標的指向性分子としては、糖鎖と結合性を有するタンパク質(例えば、レクチン)などが好ましく選択される。
【0102】
その他の標的指向性分子としては、例えば、細胞小器官親和性物質、ペプチドなどが挙げられる。
【0103】
上記標的指向性リガンドとして抗体を選択する場合、通常はIgGまたはIgMであり、IgGが好ましく用いられる。抗体は、目的タンパク質または低次抗体を特異的に認識して結合する能力を有する限り、完全長のIgGのような天然型の抗体であってもよいし、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、scFvなどの抗体断片、あるいはそれらの抗体断片を用いて多機能化(多価化または多重特異性化)された人工抗体のような、非天然型の抗体であってもよい。抗原にユニークなエピトープを認識して結合する一次抗体が好ましく用いられる。標的指向性リガンドとして、一次抗体にユニークなエピトープを認識して結合する抗体である二次抗体を用いる場合にはあらかじめ目的生体物質に一次抗体を結合させたものを標的物質として用いる。
【0104】
標的指向性リガンドおよび凝集ナノ粒子表面との結合様式は特に限定されず、例えば共有結合、イオン結合、水素結合、配位結合、物理吸着および化学吸着等を介して結合することができる。特に、凝集ナノ粒子表面に存在する前記親水基と、標的指向性リガンドの有する官能基とが共有結合することによって結合していることが好ましい。この場合において、凝集ナノ粒子表面の親水基は標的指向性リガンドとの結合によって失われるが、標的指向性リガンドの有する親水基によって補完されるため、本発明の蛍光標識材の表面は親水性であることに留意する。
【0105】
また、前記凝集ナノ粒子がその表面に非特異吸着分子を有するとき、標的指向性リガンドと結合するためのリンカーとして該非特異吸着防止分子を用いてもよい。このような目的で用いられる非特異吸着防止分子としては、MPCポリマー、およびNHSもしくはマレイミド等の各種末端基を有するポリエチレングリコール誘導体等が挙げられる。
【0106】
<凝集ナノ粒子の製造方法>
本発明の凝集ナノ粒子は、凝集誘起発光性分子の溶液に、貧溶媒を接触させ、凝集誘起発光性分子を凝集させる工程(A)を含むことが好ましく、前記工程(A)が、中心核存在下で、凝集誘起発光性分子の溶液に、貧溶媒を接触させ、凝集誘起発光性分子を凝集させる工程であってもよい。前記工程(A)以外の工程としては特に限定は無く、例えば凝集誘起発光性分子に親水基を導入する工程や、凝集ナノ粒子表面に親水基を導入する工程等が適宜行われる。中心核存在下で工程(A)を行うことにより、凝集ナノ粒子の粒径変動係数や平均粒径をコントロールすることが容易になるため好ましい。中心核は、凝集誘起発光性分子の溶液中に予め混合されていてもよく、貧溶媒中に予め混合されていてもよい。
【0107】
本発明における凝集ナノ粒子は、凝集誘起発光性分子を溶解させることができる溶媒(良溶媒)を用い、凝集誘起発光性分子の溶液を調製した後に、凝集誘起発光性分子の溶液に、凝集誘起発光性分子の貧溶媒と混合することで凝集ナノ粒子を析出させる再沈殿法により調製することができる。このような再沈殿法を利用することで、凝集誘起発光性分子がより高密度に充填された粒子を作製することができる。具体的には、例えば、マイクロミキサーと呼ばれる内径の小さなミキサーを用いた再沈殿法であって、マイクロミキサーに凝集誘起発光性分子の良溶媒と貧溶媒とをポンプで送り込み、両者を急速かつ均一に混合することにより、微粒子を析出させる方法(流通法)が挙げられる。
【0108】
好適に用いることができるマイクロミキサーとしては、凝集誘起発光性分子の分溶液と貧溶媒とを混合する混合部の流路の内径(流路の断面が円形でない場合は、当該流路の断面積と同じ面積をもつ円の直径)が2mm以下であることが好ましく、溶液と貧溶媒をより急速に混合するためには、流路の内径が1mm以下であることが好ましい。また、微粒子による流路の閉塞を防止するため、および流路内部での圧力損失を低減するためには、流路の内径が0.05mm以上であることが好ましい。
【0109】
本発明の良溶媒としては、凝集誘起発光性分子に対して良好な溶解性を示すものであれば特に限定されず、後述の貧溶媒との混合性がよいものを選択することが好ましい。具体的には、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、1-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチルイミダゾリノン、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒、ジメチルスルホキシドなどの含硫黄系溶媒、またはこれら2種以上の混合溶媒を好適に使用することができる。また、凝集誘起発光性分子の再分散を防ぐという観点から、貧溶媒の沸点よりも低い沸点を有する良溶媒を使用することが好ましい。また、必要に応じて無機化合物や分散剤などを溶解させてもよい。
【0110】
本発明の貧溶媒としては、凝集誘起発光性分子に対して比較的溶解性が低いものであれば特に限定されず、前述の良溶媒との混合性がよいものを選択することが好ましい。例えば、水または水溶液が好ましく、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族系溶媒、ベンゼン、トルエンなどの芳香族系溶媒、またはこれら2種以上の混合溶媒を使用することができるが、これらには限定されない。除去を容易にする観点から、沸点が良溶媒と比較的低い(例えば40℃~120℃)ものが好ましい。また、必要に応じて無機化合物などを溶解させてもよい。
【0111】
反応時間、反応温度の反応条件は、上述した条件を満たす凝集ナノ粒子が製造されるような条件であれば特に限定されないが、凝集誘起発光性を効率よくナノ粒子化するためには短時間内に急速に混合することが好ましく、例えば、レイノルズ数が4,000以上であるような乱流条件であることが好ましい。
【0112】
<蛍光標識材の製造方法>
本発明の一実施形態としては、凝集ナノ粒子に標的指向性リガンドを結合させる工程を含む、蛍光標識材の製造方法が挙げられる。凝集ナノ粒子に標的指向性リガンドの結合方法は特に限定されず、したがって上記製造方法においては、凝集ナノ粒子と標的指向性リガンドとを直接反応させてもよいし、凝集ナノ粒子と標的指向性リガンドとを反応させる前に凝集ナノ粒子に任意の結合基を導入する工程を含んでいてもよい。また、凝集ナノ粒子に標的指向性リガンドを結合させる前に、凝集粒子表面に非特異吸着防止分子を結合させる、非特異吸着防止処理を行う工程を含んでいてもよい。
【実施例】
【0113】
以下、実施例に基づいて本発明の好適な態様をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
[作製例1]
【0114】
<凝集誘起性発光性分子の作製>
親水基を持たない1,1,2,3,4,5-Hexaphenyl-1H-silole(以下、AIE0と称する)0.1モルに対し、濃硝酸5mL、濃硫酸5mLを加え1時間攪拌することでAIE0の有する芳香環にニトロ基を導入した。続いて、トルエン/水で分液精製した後、カラムクロマトグラフィーを用いて一分子中に、ニトロ基が1つ導入されたAIE0、2つ導入されたAIE0をそれぞれ分離し、分取した。
【0115】
10.1gのニトロ基が1つ導入されたAIE0に対し、スズ粉末0.1gおよび濃塩酸10mLを加えて1時間攪拌した。続いて、1規定水酸化ナトリウム水溶液50mLを加え、10分間攪拌した。続いて、水/酢酸エチルで分液精製し、減圧乾燥させることで一分子中に1つのアミノ基を有するシロール系凝集誘起発光性分子(以下AIE1と称する)を得た。
【0116】
同様にニトロ基2つ導入されたAIE0から一分子中に2つのアミノ基を有するシロール系凝集誘起発光性分子(以下AIE2と称する)を合成した。
【0117】
また、1,2,3,4,5-Hexaphenyl-1H-siloleの代わりに tetraphenyletheneを用いて、AIE1合成と同様の製造法によりアミノ基を1つ導入したtetraphenylethene(以下AIE3と称する)を得た。なお、AIE3は炭素―炭素2重結合に芳香環が結合したオレフィン骨格を有する。
【0118】
Dalton Trans, 2013, 42, 3646-3652に記載の合成法により、シロール系凝集誘起発光性分子を作製した(以下、AIE4と称する)。
【0119】
Macromolecules 2009, 42, 1418-1420に記載の合成法によりカルボラン系凝集誘起発光性分子を作製した(以下、AIE5と称する)。
【0120】
New J. Chem., 2007, 31, 2076-2082に記載の合成法によりベンゾフロ・オキサゾロ・カルバゾール系凝集誘起発光性分子を作製した(以下、AIE6と称する)。
【0121】
Chem.Lett.2012, 41, 1445-1447に記載の合成法によりマレイミド系凝集誘起発光性分子を作製した(以下、AIE7と称する)。
【0122】
Organometallics, 2016, 35 (14), pp 2327-2332に記載の合成法によりシロール系凝集誘起発光性分子を作製した(以下、AIE8と称する)。
【0123】
Chem. Eur. J, 2013, 19, 4506-4512に記載の合成法によりBODIPY系ホウ素イミン錯体凝集誘起発光性分子を作製した(以下、AIE9と称する)。
【0124】
前記AIE1~AIE9はそれぞれ以下の構造を有する。
【0125】
【化28】
[作製例2]
<ビオチン修飾した2次抗体>
50mM Tris-HCl溶液(pH7.5)に抗ウサギIgG抗体100μgを溶解した。該溶液に最終濃度が3mMとなるようにDTT(Dithiothretol)溶液を混合した。その後、該溶液を37℃で30分間反応させ、脱塩カラムを用いて還元型2次抗体を精製した。精製した溶液全量のうち200μLを50mM Tris-HCl溶液(pH7.5)に溶解して抗体溶液を得た。その一方で、スペーサーの長さが30Åであるリンカー試薬「(+)-Biotin-PEG6-NH-Mal」(PurePEG社、製品番号2461006-250)をDMSOを用いて0.4mMとなるように調製した。この溶液8.5μLを前記抗体溶液に添加し、混和して37℃で30分間反応させた。
【0126】
この反応溶液を脱塩カラム(Zaba Spin Desalt Spin Columuns」(サーモサイエンティフィック社、89882)を用いて精製した。脱塩した反応溶液の波長300nmの吸収を分光光度計(日立社「F-7000」)により計測することで反応溶液に含まれるたんぱく質の量を算出した。50mM Tris溶液により反応溶液を250μg/mLに調整してビオチン修飾2次抗体の溶液とした。
[実施例1]
<凝集ナノ粒子1>
作製例1で作製した、AIE1を1mMになるようにテトラヒドロフランに溶解したものを調整した。内径0.15mmの流路を備えるステンレス製T字型マイクロミキサー(MT1XCS6、Valco社製)に、ポンプ(PU-1580、日本分光株式会社)を用いて流速1.0mL/minで前記溶液を送液し、さらに別のポンプ(NS-KX-500、日本精密科学株式会社)を用いて、流速74.0mL/minで超純水を送液することで、マイクロミキサー内で両液を混合してAIE1の粒子を析出させた。混合時の圧力は4~5MPaであり、AIE1の粒子による流路の閉塞は生じなかった。混合時のレイノルズ数は、約12,000と計算された。
【0127】
得られた粒子0.1gと硝酸10mLを混合し、50℃で1時間攪拌して粒子表面の親水化処理を行い、続いて遠心分離機を用いて10000rpmで30分処理して上澄みを除去して洗浄することで凝集ナノ粒子1を得た。
【0128】
得られた凝集ナノ粒子1について、TEMで任意の100個の粒子を観察し、平均粒径を求め、式;100×(粒子の標準偏差/平均粒子径)に基づいて粒径変動係数(CV)を算出した。
【0129】
得られた凝集ナノ粒子1について、以下の方法で粒子表面への親水基の導入量[個/nm2]を算出した。
【0130】
表面に3個/nm2の親水基を有するリファレンス試料溶液(100μM、100μL)を、φ3mmのTEM用グリッド内に滴下し、均一に乾燥させてSTEM-EELSE測定により損失値を測定した。このときの親水基またはリガンドに吸収に由来する波長におけるSTEM-EELSE測定の損失値を、リファレンス値とした。
【0131】
凝集ナノ粒子1についてSTEM-EELSE測定により、粒子表面の1nm2の領域を指定し、損失値を測定した。ランベルト・ベール則より、凝集誘起発光性分子1nm2の損失値とリファレンスの損失値をもとに、親水基の導入量[個/nm2]を算出した。
【0132】
各実施例および比較例で得られた凝集ナノ粒子1~21についても同様の方法で粒径変動係数および親水基の導入量を算出した。
<蛍光標識材1>
凝集ナノ粒子1を、EDTAを2mM含むPBSを用いて3nMに調整した分散液に、最終濃度が10mMとなるようにSM(PEG)12(succinimidyl-[(N-maleimidopropionamido)-dodecanethyleneglycol]ester;サーモサイエンティフィック社)を混合し、5℃で1時間反応させた。
【0133】
この分散液について、10000rpmで20分間遠心分離処理を行った後に上澄みを除去した後にEDTAを2mM含有したリン酸バッファに加えて沈殿物を分散させて、再度遠心分離を行った。同様の操作を3回行うことで、マレイミド基で修飾された凝集ナノ粒子1を得た。
【0134】
1mg/mLに調整したストレプトアビジン40μLを210μLのボレートバッファに加えた後、64mg/mLに調整した2-イミノチオラン塩酸塩(シグマアルドリッチ社製)70μLを加え、室温で1時間反応させることで、ストレプトアビジンのアミノ基にチオール基を導入した。このストレプトアビジン溶液をゲルろ過カラム(Zaba Spin Desalting Columuns、フナコシ社)により脱塩することで、表面にアミノ化を有する凝集ナノ粒子1に結合可能なストレプトアビジンを作製した。
【0135】
このストレプトアビジン0.04mgとEDTAを2mM含有したPBSを用いて、上記0.67nMに調整した表面にアミノ化を有する凝集ナノ粒子1、740μLと混合し、室温で1時間反応させた。10mMメルカプトエタノールを添加し、反応を停止させた。得られた溶液を遠心フィルターで濃縮後、精製用ゲルろ過カラムで未反応のストレプトアビジン等を除去し、ストレプトアビジン結合凝集ナノ粒子である蛍光標識材1を得た。
【0136】
[実施例2]
<凝集ナノ粒子2>
AIE1をAIE2に変更する以外は凝集ナノ粒子1と同様の手法で、凝集ナノ粒子2を得た。
<蛍光標識材2>
凝集ナノ粒子1を凝集ナノ粒子2に変更する以外は、蛍光標識材1と同様の手法で、蛍光標識材2を得た。
【0137】
[実施例3]
<凝集ナノ粒子3>
10w%に調整した凝集ナノ粒子2の水分散液1mLと硫酸10mLを混合し、50℃で1時間攪拌して粒子表面の親水化処理を行い、続いて遠心分離機を用いて10000rpmで30分処理して上澄みを除去して洗浄することで凝集ナノ粒子3を得た。
<蛍光標識材3>
凝集ナノ粒子1を凝集ナノ粒子3に変更する以外は、蛍光標識材1と同様の手法で、蛍光標識材3を得た。
【0138】
[実施例4]
<凝集ナノ粒子4>
硫酸での処理時間を3時間にする以外は凝集ナノ粒子3と同様の手法で、凝集ナノ粒子4を得た。
<蛍光標識材4>
凝集ナノ粒子1を凝集ナノ粒子4に変更する以外は、蛍光標識材1と同様の手法で、蛍光標識材4を得た。
【0139】
[実施例5]
<凝集ナノ粒子5>
超純水をマイクロミキサーの流路内に送液する際の流速を40.0mL/minに変更する以外は凝集ナノ粒子3と同様の手法で、凝集ナノ粒子5を得た。
<蛍光標識材5>
凝集ナノ粒子1を凝集ナノ粒子5に変更する以外は、蛍光標識材1と同様の手法で、蛍光標識材5を得た。
【0140】
[実施例6]
<凝集ナノ粒子6>
マイクロミキサーの流路内に送液するAIE2のテトラヒドロフラン溶液濃度を0.1mMに変更する以外は凝集ナノ粒子3と同様の手法で、凝集ナノ粒子6を得た。
<蛍光標識材6>
凝集ナノ粒子1を凝集ナノ粒子6に変更する以外は、蛍光標識材1と同様の手法で、蛍光標識材6を得た。
【0141】
[実施例7]
<凝集ナノ粒子7>
マイクロミキサーの流路内に送液するAIE2のテトラヒドロフラン溶液濃度を3mMに変更する以外は凝集ナノ粒子3と同様の手法で、凝集ナノ粒子7を得た。
<蛍光標識材7>
凝集ナノ粒子1を凝集ナノ粒子7に変更する以外は、蛍光標識材1と同様の手法で、蛍光標識材7を得た。
【0142】
[実施例8]
<凝集ナノ粒子8>
マイクロミキサーの流路内に送液するAIE2のテトラヒドロフラン溶液濃度を0.07mMに変更する以外は凝集ナノ粒子3と同様の手法で、凝集ナノ粒子8を得た。
<蛍光標識材8>
凝集ナノ粒子1を凝集ナノ粒子8に変更する以外は、蛍光標識材1と同様の手法で、蛍光標識材8を得た。
【0143】
[実施例9]
<凝集ナノ粒子9>
マイクロミキサーの流路内に送液するAIE2のテトラヒドロフラン溶液濃度を6mMに変更する以外は凝集ナノ粒子3と同様の手法で、凝集ナノ粒子9を得た。
<蛍光標識材9>
凝集ナノ粒子1を凝集ナノ粒子9に変更する以外は、蛍光標識材1と同様の手法で、蛍光標識材9を得た。
【0144】
[実施例10]
<凝集ナノ粒子10>
AIE2を0.1mMになるようにテトラヒドロフランに溶解したものを調整した。続いて調整したAIE2溶液を、高速撹拌造粒機(SPG-25TG、DALTON社製)を用いて、1000rpmで撹拌させている貧溶媒の水1000mLに1分間に1mLのペースで50mL滴下させ、さらに1000rpmでの撹拌を30分継続することにより凝集ナノ粒子10を得た。
<蛍光標識材10>
凝集ナノ粒子1を凝集ナノ粒子10に変更する以外は、蛍光標識材1と同様の手法で、蛍光標識材10を得た。
【0145】
[実施例11]
<凝集ナノ粒子11>
マイクロミキサーを用いて1mMに調整したAIE2のテトラヒドロフラン溶液と水とを混合する際に、中心核として平均粒径3nmの酸化ジルコニア粒子分散液(SZR-M、堺化学工業株式会社)2mLを加える以外は凝集ナノ粒子3と同様の手法で、凝集ナノ粒子11を得た。
<蛍光標識材11>
凝集ナノ粒子1を凝集ナノ粒子11に変更する以外は、蛍光標識材1と同様の手法で、蛍光標識材11を得た。
【0146】
[実施例12]
<凝集ナノ粒子12>
AIE1をAIE3に変更する以外は凝集ナノ粒子3と同様の手法で、凝集ナノ粒子12を得た。
<蛍光標識材12>
凝集ナノ粒子1を凝集ナノ粒子12に変更する以外は、蛍光標識材1と同様の手法で、蛍光標識材12を得た。
【0147】
[比較例1]
<凝集ナノ粒子13>
米国特許出願公開第2013/089889号明細書に記載のとおり、メタノール:THF=1:1溶媒にAIE2を100mg、完全に溶解させた後、冷暗所にて3日間再結晶させることにより凝集ナノ粒子13を得た。
<蛍光標識材13>
凝集ナノ粒子1を凝集ナノ粒子13に変更する以外は、蛍光標識材1と同様の手法で、蛍光標識材13を得た。
【0148】
[比較例2]
<凝集ナノ粒子14>
AIE1をAIE0に変更し、さらに粒子表面の親水化処理を行わない以外は凝集ナノ粒子3と同様の手法で、凝集ナノ粒子14を得た。
<蛍光標識材14>
凝集ナノ粒子1を凝集ナノ粒子14に変更する以外は、蛍光標識材1と同様の手法で、蛍光標識材14を得た。
【0149】
[実施例13]
<凝集ナノ粒子15>
AIE1をAIE4に変更する以外は凝集ナノ粒子3と同様の手法で、凝集ナノ粒子15を得た。
<蛍光標識材15>
ナトリウムアミドによる芳香族スルホ著酸塩のアミノ化反応(日本化学会誌1974,(8),P・1522, 奈良ら)を参考に、凝集ナノ粒子15を100mg、ナトリウムアミドを30mg、28w%アンモニア水を0.5mL、水を5mL加え、60℃で4時間反応させることで、粒子表面のスルホン酸基をアミノ基に置換した。続いて純水を用いてYM-100(ミリポア社製)で限外ろ過で精製を行った。精製後の凝集ナノ粒子15を用いて、蛍光標識材1と同様の手法でストレプトアビジンを導入し、蛍光標識材15を得た。
【0150】
[実施例14]
<凝集ナノ粒子16>
AIE1をAIE5に変更する以外は凝集ナノ粒子3と同様の手法で、凝集ナノ粒子16を得た。
<蛍光標識材16>
凝集ナノ粒子1を凝集ナノ粒子16に変更する以外は蛍光標識材1と同様の手法で蛍光標識材16を得た。
【0151】
[実施例15]
<凝集ナノ粒子17>
AIE1をAIE6に変更する以外は凝集ナノ粒子3と同様の手法で、凝集ナノ粒子17を得た。
<蛍光標識材17>
凝集ナノ粒子15を凝集ナノ粒子17に変更する以外は蛍光標識材15と同様の手法で蛍光標識材17を得た。
【0152】
[実施例16]
<凝集ナノ粒子18>
AIE1をAIE7に変更する以外は凝集ナノ粒子3と同様の手法で、凝集ナノ粒子18を得た。
<蛍光標識材18>
凝集ナノ粒子15を凝集ナノ粒子18に変更する以外は蛍光標識材15と同様の手法で蛍光標識材18を得た。
【0153】
[実施例17]
<凝集ナノ粒子19>
AIE1をAIE8に変更する以外は凝集ナノ粒子3と同様の手法で、凝集ナノ粒子19を得た。
<蛍光標識材19>
凝集ナノ粒子15を凝集ナノ粒子19に変更する以外は蛍光標識材15と同様の手法で蛍光標識材19を得た。
【0154】
[実施例18]
<凝集ナノ粒子20>
AIE1をAIE9に変更する以外は凝集ナノ粒子3と同様の手法で、凝集ナノ粒子20を得た。
<蛍光標識材20>
凝集ナノ粒子15を凝集ナノ粒子20に変更する以外は蛍光標識材15と同様の手法で蛍光標識材20を得た。
【0155】
[実施例19]
<凝集ナノ粒子21>
凝集ナノ粒子3を実施例19においては凝集ナノ粒子21とした。
<蛍光標識材21>
抗PD-L1ウサギモノクローナル抗体(Cell signaling Technology社;No.E1L3N)100μgをPBS100μLに溶解させた。この抗体溶液に1Mの2-メルカプトエタノールを0.002mL(0.2×10-5モル)添加して、pH8.5、室温で30分間反応させた反応液をゲル濾過カラムに通し、過剰の2-メルカプトエタノールを除去することで、チオール化した抗PD-L1ウサギモノクローナル抗体の溶液を得た。
【0156】
凝集ナノ粒子1を凝集ナノ粒子21に換えた以外は、実施例1と同様の手法で、マレイミド基で修飾された凝集ナノ粒子21を得た。マレイミド基で修飾された凝集ナノ粒子1をマレイミド基で修飾された凝集ナノ粒子21に換えて、さらにストレプトアビジンに換えて、チオール化した抗PD-L1ウサギモノクローナル抗体を用いる以外は実施例1と同様の手法で、抗PD-L1ウサギモノクローナル抗体結合凝集ナノ粒子である蛍光標識材21を得た。
【0157】
[実施例20]
<凝集ナノ粒子22>
AIE2を100mg/Lとなるようにメタノールで調製し、超音波処理を3分行うことでAIE2の分散液を得た。続いて、分散液を透明な石英容器に入れ、チタンサファイアレーザー(TiF-100、東京インスツルメンツ社製)を用いて、100mJ/cm2、パルス幅100フェムト秒、照射時間20分間の条件で、分散液にレーザー照射を行い、凝集ナノ粒子22を得た。
<蛍光標識材21>
凝集ナノ粒子1を凝集ナノ粒子22に変更する以外は、蛍光標識材1と同様の手法で、蛍光標識材21を得た。
【0158】
[評価1]
(継時的輝度変化)
凝集ナノ粒子1~20を、粒子モル濃度が0.01mmol/LになるようにPBS中に分散させた分散液をそれぞれ調製した。蛍光光度計(日立ハイテクノロジーズ社;F-7000)を用いて、調整直後の分散液および室温で7日間保管した後の分散液輝度を励起波長450nm、蛍光極大波長630nmにおける蛍光強度を測定した。以下の基準で経時的輝度の変化の評価を行った。
AA:「室温で7日間保管後の輝度」/「分散液調整直後の輝度」が、95%以上
BB:「室温で7日間保管後の輝度」/「分散液調整直後の輝度」が、80%以上、95%未満
CC:「室温で7日間保管後の輝度」/「分散液調整直後の輝度」が、70%以上、80%未満
DD:「室温で7日間保管後の輝度」 / 「分散液作製後すぐの輝度」が、70%未満
【0159】
[実験例]
(前処理)
上記実施例および比較例で作製した蛍光標識材1~21について評価を行うため組織アレイスライド(コスモバイオ社;CB-A712)を用いた蛍光染色を行った。脱パラフィン処理した組織アレイスライドを水で洗浄し、10mMクエン酸バッファ液中(pH6.0)121℃で15分間オートクレーブ処理することで、賦活化処理を行った。賦活化処理後の組織アレイスライドをリン酸バッファにより洗浄し、BSAを1%含んだリン酸バッファを用いて1時間ブロッキング処理を行った。
【0160】
(染色:蛍光標識材1~20)
BSAを1%含んだPBSを用いて抗HER2ウサギモノクローナル抗体(ベンタナ社製;4B5を0.05nMに調整し、上記ブロッキング処理した組織アレイスライドに対して4℃で1晩反応させた。反応後の組織アレイスライドをPBSで洗浄した後、BSAを1%含んだPBSを用いて6μg/mLに希釈した、作製例2で作製したビオチン修飾した2次抗体と室温30分間反応させた。2次抗体と反応後の組織アレイスライドをPBSで洗浄した後、BSAを1%含んだPBSを用いて0.02nMに希釈した蛍光標識材1~20とそれぞれ中性環境(pH6.9~7.4)室温条件下で3時間反応させた。反応後の各組織アレイスライドをPBSで洗浄した。
【0161】
(染色:蛍光標識材21)
BSAを1%含んだPBSを用いて0.02nMに希釈した蛍光標識材15と上記ブロッキング処理した組織アレイスライドとを、中性環境(pH6.9~7.4)室温条件下で3時間反応させた。反応後の各組織アレイスライドをPBSで洗浄した。
【0162】
(後処理・輝度観察)
上記染色後の各組織アレイスライドに対し、純エタノールに5分間浸漬する操作を4回繰り返し、洗浄・脱水を行った。続いてキシレンに5分間浸漬する操作を4回行い、透徹を行った。最後に封入剤(メルク社製、エンテランニュー)を用いて封入処理を行うことで、観察用の組織アレイスライドとした。
【0163】
封入処理を終えた各組織アレイスライドに対し、蛍光顕微鏡(オリンパス社製、DP73)により励起光の照射、蛍光の発光の観察および撮像を行った。この際、励起光の波長は、蛍光顕微鏡が備える励起光用光学フィルターを用いて575~600nmに設定し、観察する蛍光の波長は、蛍光用光学フィルターを用いて612~692nmに設定した。
【0164】
蛍光顕微鏡による観察および画像撮影時の励起光の強度は、視野中心部付近の照射エネルギーが900W/cm2となるようにした。画像撮影時の露光時間は、画像の輝度が飽和しないような範囲で調節し、例えば4000μ秒に設定した。
【0165】
撮影は400倍で行い、得られた画像は画像処理ソフトウェア「ImageJ」(オープンソース)を用いて画像処理を行った。ImageJの処理メニューであるFind Maxima(極大点の検出)により100細胞の輝点数を計測し、その平均値を算出した。
【0166】
輝度は、取得した画像において1粒子領域を指定して計算した。さらに100個の粒子の輝点について、平均値および標準偏差を算出した。
【0167】
[評価2]
(耐光性)
実験例で作製した観察用組織アレイスライドに、365nm、8WのUVランプを1時間照射し、照射前後における1輝点あたりの輝度平均値を求め、照射前の輝度平均値に対する照射後の輝度平均値の低下率を算出し、以下の基準で耐光性の評価を行った。
AA:UVランプ照射後の輝度平均値低下が、5%未満
BB:UVランプ照射後の粒子の輝度平均値低下が、5%以上、10%未満
CC:UVランプ照射後の粒子の輝度平均値低下が、10%以上、15%未満
DD:UVランプ照射後の粒子の輝度平均値低下が、15%以上
【0168】
[評価3]
(輝度ムラ)
実験例で作製した観察用組織アレイスライドについて取得した画像において、100個の粒子の輝点について標準偏差を求め以下の基準で評価することで、輝度ムラを評価した。
AA:100個の輝点輝度の標準偏差が、10%未満
BB:100個の輝点輝度の標準偏差が、10%以上、20%未満
CC:100個の輝点輝度の標準偏差が、20%以上、30%未満
DD:100個の輝点輝度の標準偏差が、30%以上
各凝集ナノ粒子および蛍光標識体について、下記表2に示す。
【0169】