(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】発泡体、及び発泡体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/12 20060101AFI20221213BHJP
C08L 23/12 20060101ALI20221213BHJP
C08K 7/04 20060101ALI20221213BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20221213BHJP
C08K 3/30 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C08J9/12 CES
C08L23/12
C08K7/04
C08K3/00
C08K3/30
(21)【出願番号】P 2019558275
(86)(22)【出願日】2018-12-06
(86)【国際出願番号】 JP2018044912
(87)【国際公開番号】W WO2019112004
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2017234426
(32)【優先日】2017-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】清水 基久
(72)【発明者】
【氏名】和田 幸周
(72)【発明者】
【氏名】萩原 昌彦
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-132894(JP,A)
【文献】国際公開第2009/057825(WO,A1)
【文献】特開平08-333491(JP,A)
【文献】特開2010-077396(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158943(WO,A1)
【文献】特開2017-057316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
C08L 7/00- 21/02
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
針状無機物粒子とポリプロピレンとを含み、前記針状無機物粒子の含有量が1質量%以上20質量%以下の範囲内にあ
って、発泡体から分離して測定した前記針状無機物粒子のアスペクト比(長径/短径)の平均が1.5以上100以下の範囲内にあり、密度が80kg/m
3
以下のストランド状である発泡体。
【請求項2】
前記針状無機物粒子が、針状塩基性硫酸マグネシウム粒子である請求項
1に記載の発泡体。
【請求項3】
さらに、粒状無機物粒子を含み、前記粒状無機物粒子の含有量が1質量%以上20質量%以下の範囲内にある請求項1
または2に記載の発泡体。
【請求項4】
アスペクト比の平均が2以上100以下の範囲内にある針状無機物粒子とポリプロピレンとを混練して、針状無機物粒子を1質量%以上20質量%以下の範囲内で含有する第1混練物を生成させる工程と、
前記第1混練物と水とを
、連続式混練機を用いて、シリンダー部の温度およびダイ部の温度が160℃以上190℃以下の範囲内、スクリュー回転数が50rpm以上400rpm以下の範囲内となる混練条件にて混練して第2混練物を生成させる工程と、
前記第2混練物
を前記ダイ部より押出し、水分を蒸発させて
ストランド状の発泡体を生成させる工程と、を含む発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡体、及び発泡体の製造方法に関する。
本願は、2017年12月6日に、日本に出願された特願2017-234426号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンを発泡させた発泡体は、物理的な衝撃に対する緩衝性と断熱性とに優れる。このためポリプロピレンの発泡体は、例えば、緩衝材、包装材、断熱材として利用されている。
【0003】
ポリプロピレンの発泡体の製造方法としては、発泡剤として水を用いる方法が知られている。例えば、特許文献1には、ポリプロピレンを含む熱可塑性樹脂の発泡体を、水を用いて製造する方法として、加熱、加圧下で熱可塑性樹脂、膨潤性粘土鉱物及び水を混合して熱可塑性樹脂中に水を含浸させた膨潤性粘土鉱物を均一に分散させた後に、温度及び圧力を下げて膨潤性粘土鉱物に含浸させた水を気化させる方法が開示されている。この特許文献1には、膨潤性粘土鉱物は、適量の水を含んでいる時に粘性と可塑性を示す、大部分が2μm以下の微細な層状ケイ酸塩から成る微粒子の集合体であると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発泡体の物理的な衝撃に対する緩衝性や断熱性を向上させるためには、発泡体の気孔量を多くすること、すなわち発泡体の密度を低くすることが有効である。しかしながら、本発明者の検討によると、特許文献1に記載されている膨潤性粘土鉱物などの微細な無機物粒子を単独で分散させたポリプロピレンは強度が低く、気孔が潰れやすいため、低密度の発泡体を得ることが難しい場合があった。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、強度が高く、気孔が潰れにくい発泡体及びその発泡体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、針状無機物粒子とポリプロピレンとを所定の量で含む混練物に、水を加えて発泡させることによって、強度が高く、気孔が潰れにくい発泡体を得ることが可能となることを見出して、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の構成を採用する。
【0008】
(1)針状無機物粒子とポリプロピレンとを含み、前記針状無機物粒子の含有量が1質量%以上20質量%以下の範囲内にあって、発泡体から分離して測定した前記針状無機物粒子のアスペクト比(長径/短径)の平均が1.5以上100以下の範囲内にあり、密度が80kg/m
3
以下のストランド状である発泡体。
(2)前記針状無機物粒子が、針状塩基性硫酸マグネシウム粒子である上記(1)に記載の発泡体。
(3)さらに、粒状無機物粒子を含み、前記粒状無機物粒子の含有量が1質量%以上20質量%以下の範囲内にある上記(1)または(2)に記載の発泡体。
【0009】
(4)アスペクト比の平均が2以上100以下の範囲内にある針状無機物粒子とポリプロピレンとを混練して、針状無機物粒子を1質量%以上20質量%以下の範囲内で含有する第1混練物を生成させる工程と、前記第1混練物と水とを、連続式混練機を用いて、シリンダー部の温度およびダイ部の温度が160℃以上190℃以下の範囲内、スクリュー回転数が50rpm以上400rpm以下の範囲内となる混練条件にて混練して第2混練物を生成させる工程と、前記第2混練物を前記ダイ部より押出し、水分を蒸発させてストランド状の発泡体を生成させる工程と、を含む発泡体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、強度が高く、気孔が潰れにくい発泡体及びその発泡体の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の発泡体および発泡体の製造方法の実施形態について説明する。
【0012】
<発泡体>
本実施形態の発泡体は、針状無機物粒子とポリプロピレンとを含む組成物であり、内部に多数の気孔を有する。針状無機物粒子の含有量は、1質量%以上20質量%以下の範囲内にある。本実施形態の発泡体は、さらに、粒状無機物粒子を含有していてもよい。また、本実施形態の発泡体は、密度が80kg/m3以下とされている。
【0013】
(針状無機物粒子)
針状無機物粒子は、発泡体の内部に分散して、発泡体の強度を向上させるとともに、後述の発泡体の製造方法においては、発泡剤である水を保持して得られる発泡体の発泡量を向上させる機能を有する。
針状無機物粒子の含有量が少なくなりすぎると、針状無機物粒子による上記の効果を得ることが困難となるおそれがある。一方、針状無機物粒子の含有量が多くなりすぎると、発泡体の密度が高くなり、物理的な衝撃に対する緩衝性や断熱性が低下するおそれがある。以上の理由から、本実施形態では、針状無機物粒子の含有量を1質量%以上20質量%以下の範囲内と設定している。針状無機物粒子の含有量は、3質量%以上15質量%以下の範囲内にあることが好ましい。
【0014】
針状無機物粒子は、アスペクト比(長径/短径)の平均が1.5以上100以下の範囲内にあることが好ましい。アスペクト比が1.5未満であると、針状無機物粒子による上記の効果を得ることが困難となるおそれがある。また、アスペクト比が100を超えると、針状無機物粒子が折れやすくなり、発泡体の強度が低下するおそれがある。
【0015】
針状無機物粒子の長径の平均は、1μm以上100μm以下の範囲内にあることが好ましい。また、針状無機物粒子の短径の平均は、0.1μm以上5μm以下の範囲内にあることが好ましい。なお、針状無機物粒子の長径、短径、アスペクト比は、例えば、針状無機物粒子の電子顕微鏡写真を用いて測定することができる。
【0016】
針状無機物粒子の例としては、繊維状塩基性硫酸マグネシウム粒子、針状珪酸塩鉱物粒子(例えば、セピオライト、アタパルジャイト、ウォラストナイト)、針状リン酸カルシウム粒子、針状酸化亜鉛粒子、針状酸化マグネシウム粒子、針状酸化チタン粒子、針状酸化アルミニウム粒子、針状チタン酸カリウム粒子、針状ホウ酸アルミニウム粒子、針状炭化ケイ素粒子、針状窒化ケイ素粒子、針状炭酸カルシウム粒子、針状炭酸ストロンチウム粒子、針状炭酸バリウム粒子、針状水酸化マグネシウム粒子、針状チタン酸バリウム粒子等を挙げることができる。これらの針状無機物粒子は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。これらの針状無機物粒子の中で好ましくは、繊維状塩基性硫酸マグネシウム粒子又は針状珪酸塩鉱物粒子、針状リン酸カルシウム粒子、針状チタン酸カリウム粒子、針状酸化亜鉛粒子、針状炭化ケイ素粒子等である。
【0017】
(ポリプロピレン)
ポリプロピレンは、MFR(メルトフローレート、温度:230℃、荷重:2.16kg)が0.1g/10分以上100g/10分以下の範囲内にあることが好ましい。
ポリプロピレンは1種を単独で使用してもよいし、MFRが異なる2種以上のポリプロピレンを併用してもよい。例えば、MFR(温度:230℃、荷重:2.16kg)が0.1g/10分以上20g/10分以下の範囲内にある低MFRのポリプロピレンと、その低MFRのポリプロピレンよりもMFR(温度:230℃、荷重:2.16kg)が10g/10分以上高い高MFRのポリプロピレンの2種を併用してもよい。
【0018】
(粒状無機物粒子)
本実施形態の発泡体は、さらに、粒状無機物粒子を含有していてもよい。粒状無機物粒子は親水性を有し、後述の発泡体の製造において発泡剤である水を保持する機能を有するものであることが好ましい。
粒状無機物粒子は、アスペクト比の平均が1.5未満、好ましくは1.3以下の無機物粒子である。粒状無機物粒子は、平均径が0.1μm以上100μm以下の範囲内にあることが好ましい。なお、粒状無機物粒子の平均径は、レーザ回折法によって測定した値である。
【0019】
親水性を有する粒状無機物粒子の例としては、例えば、珪藻土、四ホウ酸ナトナリウム、珪酸カルシウム、シリカ、硫酸マグネシウム、タルク、ホウ酸などが挙げられる。
【0020】
粒状無機物粒子の含有量は、1質量%以上20質量%以下の範囲内とされている。粒状無機物粒子の含有量が少なくなりすぎると、粒状無機物粒子を加えることによる効果を得ることが難しくなる。一方、粒状無機物粒子の含有量が多くなりすぎると、発泡体の密度が高くなり、物理的な衝撃に対する緩衝性や断熱性が低下するおそれがある。
なお、針状無機物粒子と粒状無機物粒子の合計含有量は、2質量%以上25質量%以下の範囲内にあることが好ましい。
【0021】
(発泡体の密度)
発泡体の密度が高くなりすぎると、発泡体の気孔量が相対的に少なくなり、物理的な衝撃に対する緩衝性や断熱性が低下するおそれがある。このため、発泡体の密度は80kg/m3以下にあることが好ましく、75kg/m3以下にあることがより好ましい。一方、発泡体の密度が低くなりすぎると、発泡体の強度が不足して、用途が限定されてしまう場合がある。このため、発泡体の密度は10kg/m3以上であることが好ましく、15kg/m3以上であることがより好ましい。
【0022】
(その他の成分)
本実施形態の発泡体は、針状無機物粒子とポリプロピレンの2成分、あるいは、針状無機物粒子と粒状無機物粒子とポリプロピレンの3成分で形成されていてもよいし、必要に応じて、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、有機系難燃剤、無機系難燃剤、酸化防止剤、発泡助剤などが挙げられる。その他の成分の含有量は、発泡体全体量に対する含有量として、例えば、0.1質量%以上30質量%以下の範囲内とすることができる。なお、その他の成分を含む場合、発泡体全体量に対するポリプロピレンの含有量は35質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。
【0023】
<発泡体の製造方法>
次に、本実施形態の発泡体の製造方法について説明する。
本実施形態の発泡体の製造方法は、針状無機物粒子とポリプロピレンとを混練して、針状無機物粒子を1質量%以上20質量%以下の範囲内で含有する第1混練物を生成させる工程(第1混練物生成工程)と、第1混練物と水とを混練して第2混練物を生成させる工程(第2混練物生成工程)と、前記第2混練物の水分を蒸発させて発泡体を生成させる工程(発泡体生成工程)と、を含む。
【0024】
(第1混練物生成工程)
原料として用いるポリプロピレンは、ペレット状もしくは粉末状であることが好ましい。ペレット状のポリプロピレンは、例えば、球状、半球状、アーモンド状、円柱状、角柱状、板状、フレーク状などの定形性を有するものである。粉末状のポリプロピレンは、上記のペレット状のポリプロピレンを粉砕して、粉状にしたものである。粉末状のポリプロピレンは、粒子径が2mm以下であることが好ましい。
【0025】
原料として用いる針状無機物粒子は、アスペクト比(長径/短径)の平均が2.0以上100以下の範囲内とされている。アスペクト比の平均が2.0未満である針状無機物粒子は、ポリプロピレンとの混練中に折れて、そのアスペクト比の平均が1.5未満となるおそれがある。また、アスペクト比の平均が100を超えるに針状無機物粒子は、ポリプロピレンとの混練中に折れやすくなり、アスペクト比の平均を大きくすることによる効果が得られにくくなるおそれがある。
【0026】
第1混練物生成工程において、針状無機物粒子とポリプロピレンとを混練する混練装置としては、連続式混練機及びバッチ式混練機を用いることができる。連続式混練機の例としては、単軸混練機、2軸混練機が挙げられる。バッチ式混練機の例としては、バンバリーミキサー、加圧式ニーダーが挙げられる。
【0027】
第1混練物生成工程において混練する針状無機物粒子とポリプロピレンとは密度が大きく異なるため、混練装置に投入する前に、予め針状無機物粒子とポリプロピレンとを混合して混合物とすることが好ましい。針状無機物粒子とポリプロピレンの混合物として混練装置に投入することによって、比較的短時間で組成が均一な第1混練物を得ることができ、混練時の針状無機物粒子の折れを少なくすることができる。
【0028】
本実施形態の発泡体として、粒状無機物粒子あるいはその他の成分を含有するものを製造する場合、第1混練物生成工程において、針状無機物粒子とポリプロピレンと共に粒状無機物粒子あるいはその他の成分を混練装置に投入し、粒状無機物粒子あるいはその他の成分を含む第1混練物を製造する。
【0029】
(第2混練物生成工程)
第2混練物生成工程において、第1混練物と水とを混練する混練装置としては、連続式混練機を用いることが好ましい。連続式混練機の例としては、単軸混練機、2軸混練機が挙げられる。連続式混練機は、シリンダー部の途中に水を導入するための水導入手段を有することが好ましい。
【0030】
連続式混練機のシリンダー部の温度およびダイ部の温度、スクリュー回転数、連続式混練機への水の供給速度などの混練条件は、第1混練物の成分、組成、材質および形状、目的とする発泡体の密度範囲などに応じて適宜決定できる。具体的には、連続式混練機のシリンダー部の温度およびダイ部の温度は、160℃以上190℃以下の範囲内にあることが好ましい。シリンダー部の温度およびダイ部の温度が上記の範囲内であると、第2混練物の発泡が促進される。また、シリンダー部の温度およびダイ部の温度が上記の範囲内であると、発泡体の材料である針状無機物粒子とポリプロピレンは分解、揮発しにくい。このため発泡体中の針状無機物粒子およびポリプロピレンの含有量は、発泡体の材料として使用した針状無機物粒子およびポリプロピレンの含有量の割合と同じとみなすことができる。スクリュー回転数は、50rpm以上400rpm以下の範囲内にあることが好ましい。連続式混練機への水の供給速度は、第1混練物と水との混練によって生成する第2混練物の含水率が10質量%以上40質量%以下の範囲内となる速度であることが好ましい。
【0031】
第1混練物生成工程と第2混練物生成工程は、連続的に行ってもよい。例えば、混練装置として連続式混練機を用い、連続式混練機にポリプロピレンと針状無機物粒子と、さらに必要に応じて含有される粒状無機物粒子あるいはその他の成分とを投入して第1混練物を生成させ、次いで、連続式混練機に水を供給して、第1混練物と水とを混練して第2混練物を生成させてもよい。このように第1混練物生成工程と第2混練物生成工程とを連続的に行うことによって、比較的短時間で組成が均一な第2混練物を得ることができ、混練時の針状無機物粒子の折れを少なくすることができる。
【0032】
(発泡体生成工程)
発泡体生成工程では、連続式混練機のダイ部から押し出された第2混練物の水分を蒸発させて発泡体を生成させる。第2混練物の水分の蒸発は大気下で行うことができる。通常は、連続式混練機のダイ部から押し出されるとともに第2混練物の水分が蒸発し、発泡体が生成する。生成した発泡体は、使用用途に応じた長さに切断され、緩衝材、包装材、断熱材などに利用される。
【0033】
以上のような構成とされた本実施形態の発泡体は、針状無機物粒子の含有量が1質量%以上20質量%以下の範囲内にあるので、強度が高く、気孔が潰れにくい。また、本実施形態の発泡体は、密度を80kg/m3以下とすることによって、物理的な衝撃に対する緩衝性や断熱性が向上する。このため、本実施形態の発泡体は、緩衝材、包装材、断熱材として有利に利用することができる。
【0034】
また、本実施形態の発泡体の製造方法によれば、針状無機物粒子を1質量%以上20質量%以下の範囲内で含有する第1混練物と水とを混練して得た第2混練物の水分を蒸発させて発泡体を生成させるので、発泡量の大きい発泡体を得ることができる。また、得られた発泡体は、強度が高く、気孔が潰れにくいので、発泡状態を長期間にわたって安定して維持することが可能となる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【実施例】
【0036】
本実施例で使用した材料は、以下の通りである。
(ポリプロピレン)
A1(ペレット状ポリプロピレン):日本ポリプロ株式会社製、ウェイマックス(登録商標)MFX6、MFR(温度:230℃、荷重:2.16kg):2.5g/10分 A2(ペレット状ポリプロピレン):株式会社プライムポリマー製、プライムポリプロ(登録商標)、J105G、MFR(温度:230℃、荷重:2.16kg):9.0g/10分
B1(粉末状ポリプロピレン):A1(ペレット状ポリプロピレン)を、ブレンダー(ワーリング社製、エクストリームミル MX-1200XTS)を用いて粉砕し、篩(目開き2.0mm、線径0.9mm)を用いて分級し、篩下の粒子を回収して得たもの。
B2(粉末状ポリプロピレン):A2(ペレット状ポリプロピレン)を、ブレンダー(ワーリング社製、エクストリームミル MX-1200XTS)を用いて粉砕し、篩(目開き2.0mm、線径0.9mm)を用いて分級し、篩下の粒子を回収して得たもの。
【0037】
(無機物粒子)
C1(針状塩基性硫酸マグネシウム粒子):宇部マテリアルズ株式会社製、モスハイジ(登録商標)、P粉状品、平均長径:7.8μm、平均短径:0.7μm、平均アスペクト比:10.8
C2(粗大針状塩基性硫酸マグネシウム粒子):針状塩基性硫酸マグネシウム粒子(C1)を、篩(目開き0.1mm)を用いて分級し、篩上の粒子を回収して得たもの。平均長径:7.8μm、平均短径:1.0μm、平均アスペクト比:8.9
C3(針状ウォラストナイト粒子):キンセイマテック株式会社製、平均長径:8.3μm、平均短径:2.0μm、平均アスペクト比:4.5
D1(珪藻土):和光純薬工業株式会社製、045-00975、平均径:18μm
D2(タルク):シグマアルドリッチ社製、30-0050-5、平均径:15μm
【0038】
[実施例1]
A1(ペレット状ポリプロピレン)135gと、C1(針状塩基性硫酸マグネシウム粒子)15gを秤量した。秤量したA1とC1とを30個の容器に分取し、各容器ごとに分取したA1とC1とを混合して原料混合物を得た。得られた原料混合物の組成は、A1含有量が90質量%、C1含有量が10質量%である。
【0039】
上記の原料混合物を、2軸混練押出機(株式会社テクノベル製、KZW15-30MG)に投入し、ダイ部温度Y1:180℃、シリンダー部温度X1/X2/X3/X4:180℃/180℃/180℃/180℃(X1~X4は、シリンダー部の原料混合物の導入部からダイ部までの各部の温度である)、スクリュー回転数90rpmの条件で混練した後、直径3mmのダイ先端部より押出し、ストランド状の前駆混練体(第1混練物)を得た。
【0040】
得られた第1混練物を適切な長さに切断した。得られた切断物を、ブレンダー(ワーリング社製、エクストリームミル MX-1200XTS)を用いて粉砕した。得られた粉砕物から、篩(目開き2.0mm、線径0.9mm)を用いて分級し、篩下の粒状第1混練物を回収した。
【0041】
回収した粒状第1混練物を、2軸混練押出機(株式会社テクノベル製、KZW15-30MG)に投入し、下記の混練条件1で混練した。このとき、シリンダー部のX3とX4の間からシリンダー部内に、冷水(5℃)を2mL/minの速度で供給して、シリンダー部のX1~X3の間で第1混練物を生成させ、シリンダー部のX4で第1混練物と水とを混練して第2混練物を生成させた。生成した第2混練物を、直径3mmのダイ先端部より押出し、第2混練物から水分を蒸発させて、断面が円形のストランド状の発泡体を得た。
(混練条件1)
ダイ部温度Y1:168℃、シリンダー部温度X1/X2/X3/X4:170℃/180℃/180℃/170℃、スクリュー回転数:60rpm
【0042】
[実施例2]
B1(粉末状ポリプロピレン)135gと、C1(針状塩基性硫酸マグネシウム粒子)15gを秤量し、実施例1と同様に混合して原料混合物を得た。得られた原料混合物の組成は、B1含有量が90質量%、C1含有量が10質量%である。
【0043】
得られた原料混合物を、2軸混練押出機(株式会社テクノベル製、KZW15-30MG)に投入し、下記の混練条件2で混練した。このとき、シリンダー部のX3とX4の間からシリンダー部内に、冷水(5℃)を1mL/minの速度で供給して、シリンダー部のX1~X3の間で第1混練物を生成させ、シリンダー部のX4で第1混練物と水とを混練して第2混練物を生成させた。生成した第2混練物を、直径3mmのダイ先端部より押出し、第2混練物から水分を蒸発させて、断面が円形のストランド状の発泡体を得た。
(混練条件2)
ダイ部温度Y1:168℃、シリンダー部温度X1/X2/X3/X4:170℃/180℃/180℃/170℃、スクリュー回転数:90rpm
【0044】
[実施例3]
原料混合物として、B1(粉末状ポリプロピレン)45gと、B2(粉末状ポリプロピレン)45gと、C1(針状塩基性硫酸マグネシウム粒子)10gを秤量し、実施例1と同様に混合して原料混合物を得た。なお、原料混合物の組成は、B1含有量が45質量%、B2含有量が45質量%、C1含有量が10質量%である。
次いで、原料混合物の混練条件を下記の混練条件3とし、冷水の供給速度を5mL/minとしたこと以外は、実施例2と同様にして、断面が円形のストランド状の発泡体を得た。
(混練条件3)
ダイ部温度Y1:168℃、シリンダー部温度X1/X2/X3/X4:168℃/180℃/180℃/170℃、スクリュー回転数:60rpm
【0045】
[実施例4]
原料混合物として、B1(粉末状ポリプロピレン)135gと、C2(粗大針状塩基性硫酸マグネシウム粒子)15gを秤量し、実施例1と同様に混合して原料混合物を得た。なお、原料混合物の組成は、B1含有量が90質量%、C2含有量が10質量%である。
次いで、原料混合物の混練条件を上記の混練条件1とし、冷水の供給速度を2mL/minとしたこと以外は、実施例2と同様にして、断面が円形のストランド状の発泡体を得た。
【0046】
[実施例5]
C2(粗大針状塩基性硫酸マグネシウム粒子)の代わりに、C3(針状ウォラストナイト粒子)15gを用いたこと以外は、実施例4と同様にして、断面が円形のストランド状の発泡体を製造した。なお、原料混合物の組成は、B1含有量が90質量%、C3含有量が10質量%である。
【0047】
[実施例6]
原料混合物として、B1(粉末状ポリプロピレン)135gと、C2(粗大針状塩基性硫酸マグネシウム粒子)4.5gと、D1(珪藻土)10.5gを秤量し、実施例1と同様に混合して得た原料混合物を用いたこと以外は、実施例4と同様にして発泡体を製造した。なお、原料混合物の組成は、B1含有量が90質量%、C2含有量が3質量%、D1含有量が7質量%である。
【0048】
[比較例1]
原料混合物として、B1(粉末状ポリプロピレン)135gと、D2(タルク)15gを秤量し、実施例1と同様に混合して得た混合物を用いたこと以外は、実施例4と同様にして発泡体を製造した。なお、原料混合物の組成は、B1含有量が90質量%、D2含有量が10質量%である。
【0049】
[評価]
得られた発泡体について、針状無機物粒子のサイズ(平均長径、平均短径、平均アスペクト比)、密度、熱伝導率、引張比強度を、下記の方法により測定した。その結果を、原料混合物の組成とともに表1に示す。
【0050】
(針状無機物粒子のサイズの測定方法)
発泡体から針状無機物粒子を分離して、得られた針状無機物粒子の平均長径、平均短径、平均アスペクト比を測定した。
発泡体からの針状無機物粒子の分離は、次のようにして行った。発泡体50mgをオルトキシレン20mLに添加したのち加熱還流させ溶解させて、発泡体溶液を得た。得られた発泡体溶液をオムニポアメンブレンフィルター(メルクミリポア製、JHWP04700)にてろ過し、固形分を回収した。回収した固形物を、再度オルトキシレン20mLに添加したのち加熱還流させ、得られた溶液をろ過し、固形物を回収した。得られた固形物をN-メチルピロリドンに添加し、超音波処理を5分間行い、得られた分散液をオムニポアメンブレンフィルター(メルクミリポア製、JHWP04700)にてろ過して、針状無機物粒子を取得した。
【0051】
発泡体から分離した針状無機物粒子を、電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製、MiniscopeTM3000)により撮影した。画像解析ソフトImageJ(アメリカ国立衛生研究所製)を用いて、撮影した針状無機物粒子の画像データを二値化し、これを楕円近似化処理した。得られた針状無機物粒子100個以上の楕円化像について長径と短径をそれぞれ計測し、平均長径と平均短径とを算出した。そして、楕円化像それぞれについて計測した長径を短径で除してアスペクト比を求め、その平均値を平均アスペクト比として算出した。
【0052】
(発泡体の密度の測定方法)
発泡体の密度ρ(kg/m3)は、下記式(1)によって求めた。ストランド状の発泡体を切断して、密度測定用の試験サンプルを作製した。試験サンプルの質量M(kg)は大気下で測定し、試験サンプルの体積V(m3)は水中置換法によって測定した。
【0053】
ρ=M/V・・・(1)
M:試験サンプルの質量(kg)、V:試験サンプルの体積(m3)
【0054】
(発泡体の熱伝導率の測定方法)
発泡体の熱伝導率は、迅速熱伝導率計(京都電子工業株式会社製、QTM-500)を用いて測定した。迅速熱伝導率計のプローブには、ニードル型プローブ(京都電子工業株式会社製、PD-N0)を使用した。
試験サンプルは、ストランド状の発泡体を切断して、各3本作製した。試験サンプルを、室温23℃、相対湿度55%の恒温恒湿環境下で、12時間静置した後、その恒温恒湿環境下で、試験サンプルの切断面の中心からニードル型プローブを挿入し、熱伝導率を測定した。次いで、リファレンスサンプルの発泡ポリエチレンについても試験サンプルと同様に熱伝導率を測定した。そして、発泡体の熱伝導率λ(W/mK)を、下記式(2)よって算出した。なお、表1には、3本の試験サンプルでそれぞれ算出した熱伝導率の平均値を記載した。
【0055】
λ=λS-(λR1-λR0)・・・(2)
λS:試験サンプルの熱伝導率の測定値(W/mK)、λR0:リファレンスサンプルの熱伝導率の既定値(W/mK)、λR1:リファレンスサンプルの熱伝導率の測定値(W/mK)
【0056】
(発泡体の引張比強度の測定方法)
引張比強度は、下記式(3)に示すように、引張強度を密度で除することによって算出した。
σr=σb/ρ・・・(3)
σr:引張比強度(Nm/kg)、σb:引張強度(N/m2)、ρ:密度(kg/m3)
【0057】
発泡体の密度は、上記の方法で測定した値である。
発泡体の引張強度は、万能試験機(株式会社島津製作所製、EZ-LX)を用い、つかみ具間距離を50mm、制御速度を5mm/minの条件で測定した。試験サンプルは、ストランド状の発泡体を8cmずつ切断して、各3本作製した。なお、表1には、3本の試験サンプルでそれぞれ算出した引張比強度の平均値を記載した。
【0058】
【0059】
無機物粒子として粒状無機物粒子であるタルクを単独で含む比較例1の発泡体は、密度が高くなった。これは、発泡体の強度が低く、時間の経過とともに、徐々に気孔が潰れて収縮したためであると考えられる。
【0060】
これに対して、無機物粒子として針状無機物粒子である針状塩基性硫酸マグネシウム粒子を本発明の範囲で含む実施例1~6の発泡体は、強度が高く、密度と熱伝導率は低くなった。特に密度が低い実施例2と実施例6は、他の実施例と比較して熱伝導率が低くなった。また、実施例3においては、他の実施例と比較して引張比強度が低くなっているが、これは、原料のポリプロピレンが、MFRが9.0g/10分と大きく、引張強度が比較的低い粉末状ポリプロピレン(B2)を含むためであると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の発泡体は、強度が高く、気孔が潰れにくいので、緩衝材、包装材、断熱材として有利に利用することができる。また、本発明の発泡体の製造方法によれば強度が高く、気孔が潰れにくい発泡体を、工業的に容易に製造することができる。