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特許7192798導電性フィルム、センサ、タッチパネル、画像表示装置、および保護フィルム付き導電性フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】導電性フィルム、センサ、タッチパネル、画像表示装置、および保護フィルム付き導電性フィルム
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20221213BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20221213BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H01B5/14
H01B5/14 A
G06F3/041 495
G06F3/044 122
G06F3/044 127
G06F3/041 660
G06F3/041 640
G06F3/041 490
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019562053
(86)(22)【出願日】2018-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2018047666
(87)【国際公開番号】W WO2019131679
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2017247306
(32)【優先日】2017-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017254135
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【弁理士】
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 未知子
(72)【発明者】
【氏名】威能 正隆
(72)【発明者】
【氏名】小久見 尚一郎
(72)【発明者】
【氏名】志水 悠司
(72)【発明者】
【氏名】武藤 宏明
(72)【発明者】
【氏名】北山 亮太
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/140971(WO,A1)
【文献】特開2017-217885(JP,A)
【文献】特開2012-79257(JP,A)
【文献】特開2013-224397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/14
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電部および第2の導電部を有する導電性フィルムであって、
前記第2の導電部の表面が前記導電性フィルムの表面の少なくとも一部をなし、
前記第1の導電部の表面が前記導電性フィルムの裏面の少なくとも一部をなし、
前記第1の導電部および前記第2の導電部が、それぞれ、導電性繊維を含み、
前記第1の導電部と前記第2の導電部との間に、前記第1の導電部から前記第2の導電部に向けて、樹脂層および光透過性基材をこの順でさらに備え、
前記第2の導電部が、前記光透過性基材に隣接しており、
前記第2の導電部の表面抵抗値と前記第1の導電部の表面抵抗値との差が、前記第1の導電部の表面抵抗値の±30%以内である、導電性フィルム。
【請求項2】
第1の導電部および第2の導電部を有する導電性フィルムであって、
前記第2の導電部の表面が前記導電性フィルムの表面の少なくとも一部をなし、
前記第1の導電部の表面が前記導電性フィルムの裏面の少なくとも一部をなし、
前記第1の導電部および前記第2の導電部が、それぞれ、導電性繊維を含み、
前記第1の導電部と前記第2の導電部との間に、前記第1の導電部から前記第2の導電部に向けて、樹脂層および光透過性基材をこの順でさらに備え、
前記第2の導電部が、前記光透過性基材に隣接しており、
前記導電性フィルムを幅5mmおよび長さ100mmの大きさに切り出して、前記第1の導電部および前記第2の導電部の線抵抗値をそれぞれ測定したとき、前記第2の導電部の線抵抗値と前記第1の導電部の線抵抗値との差が、前記第1の導電部の線抵抗値の±30%以内である、導電性フィルム。
【請求項3】
前記光透過性基材が、片面に下地層を備え、前記樹脂層が前記下地層に隣接している、請求項1または2に記載の導電性フィルム。
【請求項4】
前記光透過性基材が、シクロオレフィンポリマー系樹脂を含み、かつ前記光透過性基材の厚みが、45μm以下である、請求項1または2に記載の導電性フィルム。
【請求項5】
前記光透過性基材が、ポリエステル系樹脂を含み、かつ前記光透過性基材の厚みが、45μm以下である、請求項1または2に記載の導電性フィルム。
【請求項6】
前記光透過性基材が、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリアミドイミド系樹脂の少なくともいずれかを含み、かつ前記光透過性基材の厚みが、75μm以下である、請求項1または2に記載の導電性フィルム。
【請求項7】
前記第1の導電部が内側となり、かつ前記導電性フィルムの対向する辺部の間隔が4mmとなるように前記導電性フィルムを10万回繰り返し180°折り畳む連続折り畳み試験を行ったとき、前記連続折り畳み試験前の前記第1の導電部の電気抵抗値に対する前記連続折り畳み試験後の前記第1の導電部の電気抵抗値の比が3以下であり、かつ前記連続折り畳み試験前の前記第2の導電部の電気抵抗値に対する前記連続折り畳み試験後の前記第2の導電部の電気抵抗値の比が3以下である、請求項4ないし6のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【請求項8】
前記導電性フィルムのヘイズ値が、5%以下である、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【請求項9】
前記導電性フィルムの全光線透過率が、80%以上である、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の導電性フィルムを備える、センサ。
【請求項11】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の導電性フィルムを備える、タッチパネル。
【請求項12】
請求項11に記載のタッチパネルを備える、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本願は、先行する日本国出願である特願2017-247306(出願日:2017年12月25日)および特願2017-254135(出願日:2017年12月28日)の優先権の利益を享受するものであり、その開示内容全体は引用することにより本明細書の一部とされる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、導電性フィルム、センサ、タッチパネル、画像表示装置、および保護フィルム付き導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
従来から、導電性フィルムは、タッチパネルなどに幅広く利用されている。導電性フィルムは、光透過性基材と、光透過性基材の一方の面に設けられた導電部とを備えており、導電性フィルムの導電部には、主に、酸化インジウムスズ(ITO)が用いられている。
【0004】
しかしながら、ITOには柔軟性がないため、光透過性基材として可撓性の基材を使用した場合には、導電部にひび割れが生じやすいという問題がある。
【0005】
このようなことから、現在、ITOの代わりに、銀ナノワイヤ等の金属ナノワイヤを用いて、導電部を形成することが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
一方で、静電容量方式のタッチパネルとして、導電性フィルムを用いる場合には、X方向の電極およびY方向の電極が必要となるので、2枚の導電性フィルムを重ねて用いている。しかしながら、2枚の導電性フィルムを重ねて用いるので、タッチパネルの厚みが大きくなってしまう。このため、タッチパネルの薄型化を図るために、両面に導電部を有する導電性フィルムを用いることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-68674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、金属ナノワイヤからなる導電部を導電性フィルムの両面に形成した場合、両方の導電部を同じように形成したとしても、一方の導電部の電気抵抗値が、他方の導電部の電気抵抗値よりも極めて大きくなってしまう。
【0009】
また、金属ナノワイヤを含む導電部を備える導電性フィルムにおいては、後工程において加熱されることがある。例えば、導電部の表面に銀ペーストによって取出配線を形成する場合、導電部の表面に銀ペーストを塗布した後、銀ペーストを焼成するために導電性フィルムを130℃に加熱するが、このような温度で導電性フィルムを加熱すると、光透過性基材が熱収縮し、配線不良が発生してしまうおそれがあるので、まず、導電性フィルムを150℃に加熱し、予め光透過性基材を熱収縮させた後に、銀ペーストを塗布し、130℃に加熱して、銀ペーストを焼成する。通常、導電部の表面には、導電部の表面の傷付きを防止するため、および/または導電性フィルムの巻き取りを容易にするために、保護フィルムが剥離可能に貼り付けられているが、保護フィルムを導電性フィルムに貼り付けた状態で、導電性フィルムを加熱すると、導電性フィルムがカールしてしまうおそれがある。これは、特に、光透過性基材の厚みが薄い場合に、顕著となる。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものである。すなわち、第1の導電部の電気抵抗値と第2の導電部の電気抵抗値の相違が低減された導電性フィルム、およびこれを備えるセンサ、タッチパネルおよび画像表示装置を提供することを目的とする。また、加熱時のカールを低減できる保護フィルム付き導電性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の発明を含む。
[1]第1の導電部および第2の導電部を有する導電性フィルムであって、前記第2の導電部の表面が前記導電性フィルムの表面の少なくとも一部をなし、前記第1の導電部の表面が前記導電性フィルムの裏面の少なくとも一部をなし、前記第1の導電部および前記第2の導電部が、それぞれ、導電性繊維を含み、前記第2の導電部の表面抵抗値が、前記第1の導電部の表面抵抗値の±30%以内である、導電性フィルム。
【0012】
[2]第1の導電部および第2の導電部を有する導電性フィルムであって、前記第2の導電部の表面が前記導電性フィルムの表面の少なくとも一部をなし、前記第1の導電部の表面が前記導電性フィルムの裏面の少なくとも一部をなし、前記第1の導電部および前記第2の導電部が、それぞれ、導電性繊維を含み、前記導電性フィルムを幅5mmおよび長さ100mmの大きさに切り出して、前記第1の導電部および前記第2の導電部の線抵抗値をそれぞれ測定したとき、前記第2の導電部の線抵抗値が、前記第1の導電部の線抵抗値の±30%以内である、導電性フィルム。
【0013】
[3]前記第1の導電部と前記第2の導電部との間に、前記第1の導電部から前記第2の導電部に向けて、樹脂層および光透過性基材をこの順でさらに備える、上記[1]または[2]に記載の導電性フィルム。
【0014】
[4]前記光透過性基材が、片面に下地層を備え、前記樹脂層が前記下地層に隣接している、上記[3]に記載の導電性フィルム。
【0015】
[5]前記光透過性基材が、シクロオレフィンポリマー系樹脂を含み、かつ前記光透過性基材の厚みが、45μm以下である、上記[3]に記載の導電性フィルム。
【0016】
[6]前記光透過性基材が、ポリエステル系樹脂を含み、かつ前記光透過性基材の厚みが、45μm以下である、上記[3]に記載の導電性フィルム。
【0017】
[7]前記光透過性基材が、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリアミドイミド系樹脂の少なくともいずれかを含み、かつ前記光透過性基材の厚みが、75μm以下である、上記[3]に記載の導電性フィルム。
【0018】
[8]前記第1の導電部が内側となり、かつ前記導電性フィルムの対向する辺部の間隔が4mmとなるように前記導電性フィルムを10万回繰り返し180°折り畳む連続折り畳み試験を行ったとき、前記連続折り畳み試験前の前記第1の導電部の電気抵抗値に対する前記連続折り畳み試験後の前記第1の導電部の電気抵抗値の比が3以下であり、かつ前記連続折り畳み試験前の前記第2の導電部の電気抵抗値に対する前記連続折り畳み試験後の前記第2の導電部の電気抵抗値の比が3以下である、上記[5]ないし[7]のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【0019】
[9]前記導電性フィルムのヘイズ値が、5%以下である、上記[1]ないし[8]のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【0020】
[10]前記導電性フィルムの全光線透過率が、80%以上である、上記[1]ないし[9]のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【0021】
[11]上記[1]ないし[10]のいずれか一項に記載の導電性フィルムを備える、センサ。
【0022】
[12]上記[1]ないし[11]のいずれか一項の導電性フィルムを備える、タッチパネル。
【0023】
[13]上記[12]に記載のタッチパネルを備える、画像表示装置。
【0024】
[14]導電性フィルムと、前記導電性フィルムの少なくとも片面に剥離可能に設けられた第1の保護フィルムとを備える保護フィルム付き導電性フィルムであって、前記導電性フィルムが、光透過性基材、前記光透過性基材の第1の面側に設けられ、かつ導電性繊維を含む第1の導電部、および前記光透過性基材における前記第1の面とは反対側の第2の面側に設けられ、かつ導電性繊維を含む第2の導電部を備え、前記第1の保護フィルムが、耐熱保護フィルムであり、前記保護フィルム付き導電性フィルムを150℃で60分間加熱したとき、加熱後の前記保護フィルム付き導電性フィルムのカール量が、±14mm以内である、保護フィルム付き導電性フィルム。
【0025】
[15]前記保護フィルム付き導電性フィルムの表面内の任意の方向を第1の方向とし、かつ前記保護フィルム付き導電性フィルムの前記表面内における前記第1の方向と直交する方向を第2の方向とし、前記保護フィルム付き導電性フィルムから前記第1の保護フィルムを剥離した状態で、前記導電性フィルムと前記第1の保護フィルムをそれぞれ150℃で60分間加熱したとき、前記第1の方向における前記第1の保護フィルムの熱収縮率と前記第1の方向における前記光透過性基材の熱収縮率との差の絶対値が0.3%以下であり、かつ前記第2の方向における前記第1の保護フィルムの熱収縮率と前記第2の方向における前記光透過性基材の熱収縮率との差の絶対値が0.3%以下である、上記[14]に記載の保護フィルム付き導電性フィルム。
【0026】
[16]前記第1の保護フィルムの厚みが、前記光透過性基材の厚みの300%以下である、上記[14]または[15]に記載の保護フィルム付き導電性フィルム。
【0027】
[17]前記第1の保護フィルムが、前記第1の導電部の表面に設けられており、前記保護フィルム付き導電性フィルムが、前記第2の導電部の表面に設けられた非耐熱保護フィルムである第2の保護フィルムをさらに備える、上記[14]ないし[16]のいずれか一項に記載の保護フィルム付き導電性フィルム。
【0028】
[18]前記第2の導電部の表面抵抗値が、前記第1の導電部の表面抵抗値の±30%以内である、上記[14]ないし[17]のいずれか一項に記載の保護フィルム付き導電性フィルム。
【0029】
[19]前記光透過性基材と前記第1の導電部との間に設けられた樹脂層をさらに備える、上記[14]ないし[18]のいずれか一項に記載の保護フィルム付き導電性フィルム。
【0030】
[20]前記光透過性基材が、シクロオレフィンポリマー系樹脂を含み、かつ前記光透過性基材の厚みが、45μm以下である、上記[14]ないし[19]のいずれか一項に記載の保護フィルム付き導電性フィルム。
【0031】
[21]前記光透過性基材が、ポリエステル系樹脂を含み、かつ前記光透過性基材の厚みが、45μm以下である、上記[14]ないし[19]のいずれか一項に記載の保護フィルム付き導電性フィルム。
【0032】
[22]前記光透過性基材が、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリアミドイミド系樹脂の少なくともいずれかを含み、かつ前記光透過性基材の厚みが、75μm以下である、上記[14]ないし[19]のいずれか一項に記載の保護フィルム付き導電性フィルム。
【0033】
[23]前記第1の導電部が内側となり、かつ前記導電性フィルムの対向する辺部の間隔が4mmとなるように前記導電性フィルムを10万回繰り返し180°折り畳む連続折り畳み試験を行ったとき、前記連続折り畳み試験前の前記第1の導電部の電気抵抗値に対する前記連続折り畳み試験後の前記第1の導電部の電気抵抗値の比が3以下であり、かつ前記連続折り畳み試験前の前記第2の導電部の電気抵抗値に対する前記連続折り畳み試験後の前記第2の導電部の電気抵抗値の比が3以下である、上記[20]ないし[22]のいずれか一項に記載の導電性フィルム。
【0034】
[24]光透過性基材の第1の面側に樹脂層を形成する工程と、前記樹脂層を形成した後、前記光透過性基材における前記第1の面とは反対側の第2の面に導電性繊維を含む第2の導電部を形成する工程と、前記第2の導電部を形成した後に前記樹脂層の表面に導電性繊維を含む第1の導電部を形成する工程とを備える、導電性フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0035】
本発明の一の態様によれば、第1の導電部の電気抵抗値と第2の導電部の電気抵抗値の相違が低減された導電性フィルム、このような導電性フィルムを備えるタッチパネルおよび画像表示装置を提供することができる。
【0036】
本発明の他の態様によれば、加熱時のカールを低減できる保護フィルム付き導電性フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、第1の実施形態に係る導電性フィルムの概略構成図である。
図2図2は、図1に示される導電性フィルムの一部の拡大図である。
図3図3(A)~図3(C)は、連続折り畳み試験の様子を模式的に示した図である。
図4図4は、連続折り畳み試験後の導電性フィルムの平面図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る他の導電性フィルムの概略構成図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る他の導電性フィルムの概略構成図である。
図7図7は、図6に示される導電性フィルムの模式的な平面図である。
図8図8は、図6に示される導電性フィルムの一部の拡大図である。
図9図9(A)および図9(B)は、第1の実施形態に係る導電性フィルムの製造工程を模式的に示した図である。
図10図10(A)および図10(B)は、第1の実施形態に係る導電性フィルムの製造工程を模式的に示した図である。
図11図11(A)および図11(B)は、第1の実施形態に係る導電性フィルムの製造工程を模式的に示した図である。
図12図12(A)および図12(B)は、第1の実施形態に係る導電性フィルムの製造工程を模式的に示した図である。
図13図13は、第1の実施形態に係る画像表示装置の概略構成図である。
図14図14は、第2の実施形態に係る保護フィルム付き導電性フィルムの概略構成図である。
図15図15は、図14に示される保護フィルム付き導電性フィルムの一部の拡大図である。
図16図16は、図14に示される保護フィルムの平面図である。
図17図17は、第2の実施形態に係る他の保護フィルム付き導電性フィルムの概略構成図である。
図18図18は、第2の実施形態に係る他の保護フィルム付き導電性フィルムの概略構成図である。
図19図19は、第2の実施形態に係る他の保護フィルム付き導電性フィルムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態に係る導電性フィルム、タッチパネル、および画像表示装置について、図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態に係る導電性フィルムの概略構成図であり、図2図1に示される導電性フィルムの一部の拡大図であり、図3は連続折り畳み試験の様子を模式的に示した図であり、図4は連続折り畳み試験後の導電性フィルムの平面図である。図5および図6は実施形態に係る他の導電性フィルムの概略構成図であり、図7図6に示される導電性フィルムの模式的な平面図であり、図8図6に示される導電性フィルムの一部の拡大図である。図9~12は本実施形態に係る導電性フィルムの製造工程を模式的に示した図である。
【0039】
<<<導電性フィルム>>>
図1に示される導電性フィルム10は、第1の導電部11(以下、単に「導電部11」と称することもある。)、樹脂層12、光透過性基材13、および第2の導電部14(以下、単に「導電部14」と称することもある。)をこの順で備えるものである。本明細書における「光透過性」とは、光を透過させる性質を意味する。また「光透過性」とは、必ずしも透明である必要はなく、半透明であってもよい。第1の導電部11および第2の導電部14は、パターニングされる前の状態であり、層状となっている。本明細書における「導電部」とは、表面から導通可能な部分を意味し、層状の形態および層状以外の形態の両方を含む概念である。
【0040】
導電性フィルム10の表面10Aは、第2の導電部14の表面14Aから構成されており、導電性フィルム10における表面10Aとは反対側の面である裏面10Bは、第1の導電部11の表面11Aから構成されている。このように導電性フィルム10の表面10Aを第2導電部14から構成し、導電性フィルム10の裏面10Bを第1導電部11から構成することによって、表面からの導通性に優れ、取出配線との接触抵抗を担保することができる。導電性フィルムの両面には、剥離可能な保護フィルムが設けられていてもよいが、この場合、導電性フィルムは保護フィルムを剥離した状態で用いられるので、保護フィルムは導電性フィルムの一部を構成しないものとする。
【0041】
導電性フィルム10においては、導電性フィルム10に対し導電部11が内側(導電部14が外側)となり、かつ導電性フィルム10の対向する辺部の間隔φが4mmとなるように10万回繰り返し180°折り畳む連続折り畳み試験を行った場合であっても、連続折り畳み試験前後の導電性フィルム10の導電部11の後述する電気抵抗値比が3以下であり、かつ連続折り畳み試験前後の導電性フィルム10の導電部14の後述する電気抵抗値比が3以下であることが好ましい。導電性フィルムに対し連続折り畳み試験を行った場合に、連続折り畳み試験前後の導電性フィルムの第1の導電部の電気抵抗値比および連続折り畳み試験前後の導電性フィルムの第2の導電部の電気抵抗値比が3を超えていると、導電性フィルムの樹脂層等に割れ等が生じているおそれがあるので、導電性フィルムのフレキシブル性が不充分となる。ここで、連続折り畳み試験によって、導電性フィルムの樹脂層等に割れ等が発生すると、導電性が低下してしまうので、連続折り畳み試験後の導電性フィルムの第1の導電部の電気抵抗値が連続折り畳み試験前の導電性フィルムの第1の導電部の電気抵抗値よりも上昇してしまい、および/または連続折り畳み試験後の導電性フィルムの第2の導電部の電気抵抗値が連続折り畳み試験前の導電性フィルムの第2の導電部の電気抵抗値よりも上昇してしまう。このため、連続折り畳み試験前後の導電性フィルムの第1の導電部の電気抵抗値比および第2の導電部の電気抵抗値比を求めることにより、導電性フィルムの樹脂層等に割れ等が生じているか否かが判断できる。
【0042】
上記連続折り畳み試験の折り畳み回数が20万回、30万回、50万回または100万回であっても、連続折り畳み試験前後の導電性フィルム10の導電部11の電気抵抗値比が3以下であり、かつ連続折り畳み試験前後の導電性フィルム10の導電部14の電気抵抗値比が3以下であることがより好ましい。なお、上記折り畳み回数が多いほど、連続折り畳み試験前後の導電部の電気抵抗値比を3以下にすることは難しくなるので、上記折り畳み回数が20万回、30万回、50万回または100万回の連続折り畳み試験において連続折り畳み試験前後の導電部11の電気抵抗値比および導電部14の電気抵抗値比が3以下であることと、上記折り畳み回数が10万回の連続折り畳み試験において連続折り畳み試験前後の導電部11の電気抵抗値比および導電部14の電気抵抗値比が3以下であることとは、技術的に顕著な差がある。また、上記連続折り畳み試験の折り畳み回数を少なくとも10万回で評価しているのは、以下の理由からである。例えば、導電性フィルムを折り畳み可能なスマートフォンに組み込むことを想定すると、折り畳みを行う頻度(開閉する頻度)が非常に多くなる。このため、上記連続折り畳み試験の折り畳み回数を例えば1万回や5万回とする評価では、実用的なレベルでの評価を行うことができないおそれがある。具体的には、例えば、常にスマートフォンを使用する人を想定すると、朝の通勤時だけでも5回~10回はスマートフォンを開閉することが想定されるので、1日だけでも少なくとも30回はスマートフォンを開閉することが想定される。したがって、スマートフォンを1日30回開閉することを想定すると、折り畳み回数が1万回の連続折り畳み試験は、30回×365日=10950回となるので、1年間の使用を想定した試験となる。すなわち、折り畳み回数が1万回の連続折り畳み試験の結果が良好であったとしても、1年経過後は、導電性フィルムに折り癖やクラックが生じるおそれがある。したがって、連続折り畳み試験における折り畳み回数が1万回の評価とは、製品として使用できないレベルしか確認できないものであり、使用できるが不十分なものも良好となってしまい、評価することができない。このため、実用的なレベルであるか否かを評価するためには、上記連続折り畳み試験の折り畳み回数は少なくとも10万回で評価する必要がある。
【0043】
上記連続折り畳み試験の折り畳み回数が10万回、20万回、30万回、50万回および100万回のいずれの場合であっても、連続折り畳み試験前後の導電性フィルム10の導電部11の電気抵抗値比および導電部14の電気抵抗値比は、それぞれ1.5以下であることがより好ましい。
【0044】
上記連続折り畳み試験においては、導電性フィルム10の対向する辺部の間隔φが4mmの状態で行うが、画像表示装置の薄型化を図る観点から、導電性フィルム10の対向する辺部の間隔φは、更に狭い範囲、具体的には3mm、2mm、または1mmとなるように10万回繰り返し180°折り畳む連続折り畳み試験を行った場合であっても、連続折り畳み試験前後の導電部11の電気抵抗値比および導電部14の電気抵抗値比が3以下であることがより好ましい。なお、上記折り畳み回数が同じであっても、上記間隔φが狭くなるほど、連続折り畳み試験前後の導電部の電気抵抗値比を3以下にすることは難しくなるので、上記間隔φが3mm、2mm、1mmにおける連続折り畳み試験における連続折り畳み試験前後の導電部11の電気抵抗値比および導電部14の電気抵抗値比が3以下であることと、上記間隔φが4mmにおける連続折り畳み試験における連続折り畳み試験前後の導電部11の電気抵抗値比および導電部14の電気抵抗値比が3以下であることとは、技術的に顕著な差がある。
【0045】
上記連続折り畳み試験は、導電部11が内側(導電部14が外側)となるように導電性フィルム10を折り畳んでいるが、導電部14が内側(導電部11が外側)となるように導電性フィルム10を折り畳んでもよい。この場合であっても、連続折り畳み試験前後の導電性フィルム10の導電部11の電気抵抗値比および導電部14の電気抵抗値比がそれぞれ3以下であることが好ましい。
【0046】
導電性フィルム10の連続折り畳み試験は、導電性フィルム10から所定の大きさ(例えば、縦125mm×横50mmの長方形形状)に切り出したサンプルを用いて行うことができる。なお、縦125mm×横50mmの大きさにサンプルを切り出せない場合には、例えば、縦110mm×横50mmの大きさにサンプルを切り出してもよい。具体的には、まず、連続折り畳み試験前の導電性フィルム10から所定の大きさのサンプルを切り出す。そして、切り出したサンプルの長手方向の導電部11の両端部(例えば、各縦10mm×横50mmの部分)および導電部14の両端部(例えば、各縦10mm×横50mmの部分)上に、電気抵抗値の測定距離が変動するのを防ぐために、銀ペースト(製品名「DW-520H-14」、東洋紡株式会社製)をそれぞれ塗布し、130℃で30分加熱して、サンプルの第1の導電部および第2の導電部上の両端部に硬化した銀ペーストを設け、その状態で、サンプルの第1の導電部11および第2の導電部14の電気抵抗値をテスター(製品名「Digital MΩ Hitester 3454-11」、日置電機株式会社製)を用いて、それぞれ測定する。導電部11の電気抵抗値の測定の際には、テスターのプローブ端子を、導電部11の両端部に設けられた硬化した銀ペーストのそれぞれに接触させる。同様に、導電部14の電気抵抗値の測定の際には、テスターのプローブ端子を、導電部14の両端部に設けられた硬化した銀ペーストのそれぞれに接触させる。導電部11の電気抵抗値の測定は、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で行うものとする。連続折り畳み試験前のサンプルにおいて、導電部11および導電部14の電気抵抗値を測定した後、サンプルに対し、連続折り畳み試験を行う。
【0047】
連続折り畳み試験は、以下のようにして行われる。図3(A)に示すように連続折り畳み試験においては、まず、サンプルSの辺部S1と、辺部S1と対向する辺部S2とを、平行に配置された耐久試験機(製品名「DLDMLH-FS」、ユアサシステム機器株式会社製、IEC62715-6-1準拠)の固定部25でそれぞれ固定する。また、図3(A)に示すように、固定部25は水平方向にスライド移動可能になっている。
【0048】
次に、図3(B)に示すように、固定部25を互いに近接するように移動させることで、導電部11が内側(導電部14が外側)となり、かつサンプルSの中央部S3を折り畳むように変形させ、更に、図3(C)に示すように、サンプルSの固定部25で固定された対向する2つの辺部S1、S2の間隔φが4mmとなる位置まで固定部25を移動させた後、固定部25を逆方向に移動させてサンプルSの変形を解消させる。
【0049】
図3(A)~(C)に示すように固定部25を移動させることで、導電部11が内側となるようにサンプルSを中央部S3で180°折り畳むことができる。また、サンプルSの屈曲部S4が固定部25の下端からはみ出さないように連続折り畳み試験を行い、かつ固定部25が最も接近したときの間隔を4mmに制御することで、サンプルSの対向する2つの辺部S1、S2の間隔φを4mmにできる。この場合、屈曲部S4の外径を4mmとみなす。なお、サンプルSの厚みは、固定部25の間隔(4mm)と比較して充分に小さな値であるため、サンプルSの連続折り畳み試験の結果は、サンプルSの厚みの違いによる影響は受けないとみなすことができる。
【0050】
連続折り畳み試験を行った後、連続折り畳み試験後のサンプルにおいて、連続折り畳み試験前のサンプルと同様にして、導電部11および導電部14の電気抵抗値をそれぞれ測定する。そして、連続折り畳み試験前のサンプルの導電部11の電気抵抗値に対する連続折り畳み試験後のサンプルの導電部11の電気抵抗値の比(連続折り畳み試験後のサンプルの導電部11の電気抵抗値/連続折り畳み試験前のサンプルの導電部11の電気抵抗値)を求める。また、同様に、連続折り畳み試験前のサンプルの導電部14の電気抵抗値に対する連続折り畳み試験後のサンプルの導電部14の電気抵抗値の比(連続折り畳み試験後のサンプルの導電部14の電気抵抗値/連続折り畳み試験前のサンプルの導電部14の電気抵抗値)を求める。なお、電気抵抗値比は、3回測定して得られた値の算術平均値とする。
【0051】
導電性フィルムに対し上記連続折り畳み試験を行うと、連続折り畳み試験前後の導電性フィルムの導電部の電気抵抗値比が3以下であったとしても、屈曲部に折り癖が生じ、またマイクロクラックが生じてしまい、外観不良、具体的には白濁現象やマイクロクラックを起点とした層間剥離(密着不良)が生じるおそれがある。屈曲部の折り癖やマイクロクラックの抑制は、画像表示装置として用いる上で、極めて重要である。このようなことから、導電性フィルム10は、フレキシブル性を有していることが好ましい。本明細書における「フレキシブル性」とは、上記連続折り畳み試験前後において、第1の導電部および第2の導電部のいずれにおいても、電気抵抗値比が3以下であることのみならず、折り癖およびマイクロクラックが確認されないことを意味する。したがって、本明細書における「フレキシブル性」とは、上記連続折り畳み試験前後において、第1の導電部および第2の導電部のいずれにおいても、電気抵抗値比が3以下であることのみを要件とするフレキシブル性とは異なるものである。
【0052】
上記折り癖の観察は、目視で行うものとするが、折り癖の観察の際には、白色照明の明室(800ルクス~2000ルクス)で、屈曲部を透過光および反射光によって満遍なく観察するともに、折り畳んだときに屈曲部における内側となる部分および外側となる部分を両方観察するものとする。上記折り癖の観察は、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で行うものとする。
【0053】
上記マイクロクラックの観察は、デジタルマイクロスコープ(デジタル顕微鏡)で行うものとする。デジタルマイクロスコープとしては、例えば、キーエンス株式会社製のVHX-5000が挙げられる。マイクロクラックは、デジタルマイクロスコープの照明としてリング照明を選択するとともに、暗視野および反射光で観察するものとする。具体的には、まず、連続折り畳み試験後のサンプルをゆっくり広げ、マイクロスコープのステージにテープでサンプルを固定する。このとき、折り癖が強い場合には、観察する領域がなるべく平らになるようにする。ただし、サンプルの中央付近の観察予定領域(屈曲部)は手で触れず、力が加わらない程度とする。そして、折り畳んだときに内側となる部分および外側となる部分を両方観察するものとする。上記マイクロクラックの観察は、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で行うものとする。
【0054】
上記折り癖および上記マイクロクラックの観察においては、観察すべき位置が容易に把握できるように、連続折り畳み試験前のサンプルを耐久試験機の固定部に設置し、1回折り畳んだときに、図4に示されるように、屈曲部S4における折り畳み方向FDと直交する方向に位置する両端S4に、屈曲部であることを示す目印A1を油性ペンなどで付けておくとよい。また、連続折り畳み試験後に全く折り癖等が観察されないサンプルの場合は、サンプルを観察位置が不明になるのを防ぐため、連続折り畳み試験後に耐久試験機から取り外した状態で、屈曲部S4の上記両端S4の目印A1同士を結ぶ線A2(図4における点線)を油性ペンなどで引いておいてもよい。そして、折り癖の観察においては、屈曲部S4の両端S4の目印A1とこの目印A1同士を結ぶ線A2とで形成される領域である屈曲部S4全体を目視観察する。またマイクロクラックの観察においては、マイクロスコープ視野範囲(図4における二点鎖線で囲まれる範囲)の中心が屈曲部S4の中央となるようにマイクロスコープの位置を合わせる。
【0055】
また、導電性フィルムに対し上記連続折り畳み試験を行うと、光透過性基材と樹脂層の間の密着性が低下するおそれがある。このため、上記連続折り畳み試験後の導電性フィルムの屈曲部において、樹脂層12と光透過性基材13の間の界面付近を、デジタルマイクロスコープで観察したとき、樹脂層12と光透過性基材13の界面付近で剥がれ等が観察されないことが好ましい。デジタルマイクロスコープとしては、例えば、キーエンス株式会社製のVHX-5000が挙げられる。
【0056】
導電性フィルム10は、ヘイズ値(全ヘイズ値)が5%以下となっていることが好ましい。導電性フィルム10のヘイズ値が5%以下であれば、充分な光学的性能を得ることができる。ヘイズ値は、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で、JIS K7136:2000に準拠して、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、村上色彩技術研究所製)を用いて、測定することができる。ヘイズ値は、導電性フィルム全体で測定したときの値であり、また縦50mm×横100mmの大きさに切り出した後、カールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で設置し、導電性フィルム1枚に対して3回測定して得られた値の算術平均値とする。本明細書における「3回測定する」とは、同じ場所を3回測定するのではなく、異なる3箇所を測定することを意味するものとする。導電性フィルム10は、目視した表面10Aや裏面10Bは平坦であり、かつ導電部11等の積層する層も平坦であり、また膜厚のばらつきも膜厚の平均値の±10%の範囲内に収まる。したがって、切り出した導電性フィルムの異なる3箇所でヘイズ値を測定することで、おおよその導電性フィルムの面内全体のヘイズ値の平均値が得られると考えられる。なお、導電性フィルムを上記大きさに切り出せない場合には、例えば、HM-150は測定する際の入口開口が20mmφであるので、直径21mm以上となるような大きさのサンプルが必要になる。このため、22mm×22mm以上の大きさに導電性フィルムを適宜切り出してもよい。導電性フィルムの大きさが小さい場合は、光源スポットが外れない範囲で少しずつずらす、または角度を変えるなどして測定点を3箇所にする。導電性フィルム10のヘイズ値は、3%以下、2%以下、1.5%以下、1.2%以下、または1.1%以下であることがより好ましい。得られるヘイズ値のばらつきは、測定対象が1m×3000mと長尺であっても、5インチのスマートフォン程度の大きさであっても、ヘイズ値の平均値の±10%以内であり、上記好ましい範囲になる場合には、低ヘイズおよび低抵抗値がより得られやすい。なお、導電性フィルム10の導電部は、パターニングされていないが、ヘイズ値は、パターニングされた導電部を備える導電性フィルムであっても5%以下であり、また3%以下、2%以下、1.5%以下、1.2%以下、または1.1%以下であることがより好ましい。なお、導電性フィルムを搭載したタッチパネルセンサーなどの複数層が重なった積層体全体においても、上記と同じのヘイズ値であることが好ましい。
【0057】
導電性フィルム10は、全光線透過率が80%以上であることが好ましい。導電性フィルム10の全光線透過率が80%以上であれば、光学的性能が充分となる。全光線透過率は、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で、JIS K7361-1:1997に準拠して、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、村上色彩技術研究所製)を用いて、測定することができる。全光線透過率は、導電性フィルム全体で測定したときの値であり、また縦50mm×横100mmの大きさに切り出した後、カールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で設置し、導電性フィルム1枚に対して3回測定して得られた値の算術平均値とする。導電性フィルム10は、目視した表面10Aや裏面10Bは平坦であり、かつ導電部11等の積層する層も平坦であり、また膜厚のばらつきも膜厚の平均値の±10%の範囲内に収まる。したがって、切り出した導電性フィルムの異なる3箇所の全光線透過率を測定することで、おおよその導電性フィルムの面内全体の全光線透過率の平均値が得られると考えられる。なお、導電性フィルムを上記大きさに切り出せない場合には、例えば、HM-150は測定する際の入口開口が20mmφであるので、直径21mm以上となるような大きさのサンプルが必要になる。このため、22mm×22mm以上の大きさに導電性フィルムを適宜切り出してもよい。導電性フィルムの大きさが小さい場合は、光源スポットが外れない範囲で少しずつずらす、または角度を変えるなどして測定点を3箇所にする。導電性フィルム10の全光線透過率は、85%以上、88%以上、または90%以上であることがより好ましい。なお、導電性フィルム10の導電部は、パターニングされていないが、全光線透過率は、パターニングされた導電部を備える導電性フィルムであっても80%以上、85%以上、88%以上、または90%以上であることがより好ましい。得られる全光線透過率のばらつきは、測定対象が1m×3000mと長尺であっても、5インチのスマートフォン程度の大きさであっても、全光線透過率の平均値の±10%以内であり、上記好ましい範囲になる場合には、低ヘイズおよび低抵抗値がより得られやすい。なお、導電性フィルムを搭載したタッチパネルセンサーなどの複数層が重なった積層体全体においても、上記と同じの全光線透過率であることが好ましい。
【0058】
導電性フィルム10の裏面10Bは、JIS K5600-5-4:1999で規定される鉛筆硬度試験でH以上の鉛筆硬度を有することが好ましい。導電性フィルム10の裏面10Bの鉛筆硬度がH以上であることにより、導電性フィルム10が硬いので、耐久性を向上させることができる。鉛筆硬度試験においては、導電性フィルム10を縦50mm×横100mmの大きさに切り出し、第1の導電部11が上側になるようにガラス板上に折れや皺がないようニチバン株式会社製のセロテープ(登録商標)で固定し、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で、鉛筆に750gの荷重を加えるとともに、ひっかき速度を1mm/秒とした状態で行う。導電性フィルム10の裏面10Bの鉛筆硬度は、鉛筆硬度試験において第1の導電部11の表面11Aに傷が付かなかった最も高い硬度とした。なお、鉛筆硬度の測定の際には、硬度が異なる鉛筆を複数本用いて行うが、鉛筆1本につき5回鉛筆硬度試験を行い、5回のうち4回以上第1の導電部11の表面11Aに傷が付かなかった場合には、この硬度の鉛筆においては第1の導電部11の表面11Aに傷が付かなかったと判断する。上記傷は、鉛筆硬度試験を行った導電性フィルム10の表面を蛍光灯下で透過観察して視認されるものを指す。
【0059】
導電性フィルム10のイエローインデックス(YI)は、15以下であることが好ましい。黄色味が強い光透過性基材(特に、ポリイミド系樹脂を含む光透過性基材)であると、透明性が求められる用途に適用できない可能性があるが、導電性フィルム10のYIが15以下であれば、導電性フィルム10の黄色味が目立たないので、透明性が求められる用途に適用できる。なお、ポリイミド系樹脂を含む光透過性基材であっても、導電性フィルム10のYIが15以下であれば、透明性が求められる用途に適用できる。導電性フィルム10のYIの上限は、10以下、5以下、または1.5以下であることがより好ましい。上記YIは、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で、分光光度計(製品名「UV-3100PC」、島津製作所製、光源:タングステンランプおよび重水素ランプ)を用いて、50mm×100mmの大きさに切り出した光学フィルムについて測定された値からJIS Z8722:2009に記載された演算式に従って色度三刺激値X、Y、Zを計算し、三刺激値X、Y、ZからASTM D1925:1962に記載された演算式に従って算出された値である。上記YIは、導電性フィルム1枚に対して3回測定し、3回測定して得られた値の算術平均値とする。
【0060】
導電性フィルムに粘着層や接着層を介して他のフィルムが設けられている場合には、粘着層や接着層とともに他のフィルムを剥離してから、連続折り畳み試験を行い、またヘイズ値、全光線透過率、鉛筆硬度、YIを測定するものとする。他のフィルムの剥離は、例えば、以下のようにして行うことができる。まず、導電性フィルムに粘着層や接着層を介して他のフィルムが付いた積層体をドライヤーで加熱し、導電性フィルムと他のフィルムの界面と思われる部位にカッターの刃先を入れて、ゆっくりと剥離していく。このような加熱と剥離を繰り返すことで、粘着層や接着層および他のフィルムを剥離することができる。なお、このような剥離工程があったとしても、連続折り畳み試験やヘイズ値等の測定には大きな影響はない。
【0061】
また、上記したように、導電性フィルム10に対し連続折り畳み試験を行う際、またはヘイズ値、全光線透過率、鉛筆硬度、YIを測定する際には、導電性フィルム10を上記各大きさに切り出す必要があるが、導電性フィルム10の大きさが大きい場合(例えば、ロール状のような長尺の場合)には、任意の位置からA4サイズ(210mm×297mm)やA5サイズ(148mm×210mm)に切り出した後、各測定項目の大きさに切り出すものとする。例えば、導電性フィルム10がロール状になっている場合においては、導電性フィルム10のロールから所定の長さを繰り出すとともに、ロールの長手方向に沿って延びる両端部を含む非有効領域ではなく、品質が安定している中心部付近の有効領域から切り出すものとする。また、導電性フィルム10に対し連続折り畳み試験を行う際、またはヘイズ値、全光線透過率、鉛筆硬度、YIを測定する際には、上記装置を用いて測定するが、上記装置でなくとも、後継機種などの同程度の装置によって測定してもよい。
【0062】
導電性フィルムの用途は、特に限定されず、例えば、透明導電膜が用いられる様々な用途(例えば、センサ用途)で用いてもよい。また、本発明の導電性フィルムは、画像表示装置(スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末、パーソナルコンピュータ、テレビジョン、デジタルサイネージ、パブリックインフォメーションディスプレイ(PID)、車載ディスプレイ等を含む)用途や車載(電車や車両建設用機械等、あらゆる車を含む)用途に適している。導電性フィルムを車載用途のセンサーとして用いる場合、例えば、ハンドルやシートなど人が触れる部分に配置されるセンサーが挙げられる。また、導電性フィルムは、フォルダブル、ローラブルといったフレキシブル性を必要とする用途にも好ましい。さらに住宅や車(電車や車両建設用機械等、あらゆる車を含む)で用いられる電化製品や窓に用いてもよい。特に、本発明の導電性フィルムは、透明性を重視される部分に好適に用いることができる。また、本発明の導電性フィルムは、透明性等の技術的観点のみならず、意匠性やデザイン性が求められる電化製品にも好適に用いることができる。本発明の導電性フィルムの具体的な用途としては、例えば、電磁波シールド、デフロスター、アンテナ、太陽電池、オーディオシステム、スピーカー、扇風機、電子黒板や半導体用のキャリアフィルム等が挙げられる。導電性フィルムの使用時の形状は、用途に応じて適宜設計されるので、特に限定されないが、例えば、曲面状になっていてもよい。
【0063】
導電性フィルムは、所望の大きさにカットされていてもよいが、ロール状であってもよい。導電性フィルムがロール状となっている場合には、この段階で所望の大きさにカットしてもよく、また例えばエッチング等の処理を行った後に所望の大きさにカットしてもよい。本発明の導電性フィルムが所望の大きさにカットされている場合、導電性フィルムの大きさは、特に制限されず、画像表示装置の表示面の大きさに応じて適宜決定される。具体的には、導電性フィルムの大きさは、例えば、5インチ以上500インチ以下となっていてもよい。本明細書における「インチ」とは、導電性フィルムが四角形状である場合には対角線の長さを意味し、円形状である場合には直径を意味し、楕円形状である場合には、短径と長径の和の平均値を意味するものとする。ここで、導電性フィルムが四角形状である場合、上記インチを求める際の導電性フィルムの縦横比は、画像表示装置の表示画面として問題がなければ特に限定されない。例えば、縦:横=1:1、4:3、16:10、16:9、2:1等が挙げられる。ただし、特に、デザイン性に富む車載用途やデジタルサイネージにおいては、このような縦横比に限定されない。なお、例えば、導電性フィルム10がロール状になっている場合においては、導電性フィルム10のロールから所定の長さを繰り出すとともに、ロールの長手方向に沿って延びる両端部を含む非有効領域ではなく、品質が安定している中心部付近の有効領域から所望の大きさに切り出すものとする。
【0064】
<<光透過性基材>>
光透過性基材13としては、光透過性を有すれば特に限定されない。例えば、光透過性基材13の構成材料としては、光透過性を有する樹脂からなる基材が挙げられる。このような樹脂としては、光透過性を有すれば特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリエステル系樹脂、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、アセチルセルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはこれらの樹脂を2種以上混合した混合物等が挙げられる。光透過性基材は、樹脂層等をコーティングする際にコーティング装置に触れるので、傷が付きやすいが、ポリエステル系樹脂からなる光透過性基材は、コーティング装置に触れても傷が付きにくいため、ヘイズ値の上昇を抑制できる点、および耐熱性、バリア性、耐水性についてもポリエステル系樹脂以外の光透過性樹脂からなる基材本体よりも優れている点から、これらの中でも、ポリエステル系樹脂が好ましい。
【0065】
導電性フィルムとして、折り畳み可能な導電性フィルムを得る場合には、光透過性基材を構成する樹脂としては、折り畳み性が良好であることから、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、シクロオレフィンポリマー系樹脂またはこれらの混合物を用いることが好ましい。また、これらの中でも、優れた折り畳み性を有するだけでなく、優れた硬度および透明性をも有し、また、耐熱性にも優れ、焼成することにより、更に優れた硬度および透明性を付与することもできる観点からは、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはこれらの混合物が好ましい。さらに、屋外等ではサングラスを装着して、画像表示装置の表示画像を観察することがあるが、サングラスが偏光サングラスである場合、偏光サングラス越しに表示画像を観察すると、視認性が低下するおそれがある。したがって、現在、偏光サングラス越しに表示画像を観察した場合であっても視認性の低下を抑制できることが求められている。これに対し、シクロオレフィンポリマー系樹脂は、映像光に位相差を付与して、上記視認性の低下を抑制できるので、上記視認性の低下を抑制する観点からは、シクロポリオレフィンポリマー系樹脂が好ましい。
【0066】
本発明者らは、導電性フィルムにおいて、フレキシブル性が重要視される場合には、光透過性基材としてポリイミド系樹脂を含む基材が良好であると推測していた。ポリイミド系樹脂を用いた場合、確かに従来の汎用されている透明基材(例えば、ポリメチルメタクリレート系樹脂、トリアセチルセルロール系樹脂、またはポリエチレンテレフタレート系樹脂を含む基材)に比べると、マイクロクラックや破断は生じ難い。しかしながら、ポリイミド系樹脂を用いる場合、観察すると、樹脂層などに皺や折り癖が生じてしまうことがある。特に、導電性フィルムをスマートフォン用途で用いる場合には、画面が小さいことから、折り癖が見えると、文字等が読めないおそれがある。これに対し、光透過性基材として、シクロオレフィンポリマー系樹脂を含む基材を用いると、ポリイミド系樹脂を用いる場合よりも折り畳み性に優れることを見出した。また、例えば、シクロオレフィンポリマー系樹脂を含む光透過性基材の膜厚が5μm以上35μm以下(更には5μm以上18μm以下)という極めて薄膜の場合には、面内および膜厚方向の位相差値が非常に小さいなど光学性能も優れる。例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂を含む光透過性基材の場合には、膜の構造上、面内位相差が100nm未満であっても、厚さ方向の位相差は1000以上になることがあり、画像表示装置に用いる場合には視認性に影響が出るおそれがある。一方、シクロオレフィンポリマー系樹脂を含む光透過性基材の場合は、面内、厚さ方向位相差はどちらも100nm未満、50nm未満などに制御することが容易で三次元の光学等方性に優れるため、偏光サングラス対応も可能なり、光学用途には非常に好ましい。このため、フレキシブル用途および光学用途には、シクロオレフィンポリマー系樹脂を含む光透過性基材が最も好ましい。なお、トリアセチルセルロース系樹脂やポリカーボネート系樹脂を含む光透過性基材も光学等方性を有するが、折り畳むと、皺や割れ等の不具合が発生しやすいので、同じ光学等方性を有するシクロオレフィンポリマー系樹脂を含む光透過性基材は、分子構造的に折り畳み性に強いと考えられる。
【0067】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー系樹脂等の少なくとも1種を構成成分とする樹脂が挙げられる。
【0068】
シクロオレフィンポリマー系樹脂としては、ノルボルネン系樹脂、単環の環状オレフィン系樹脂、環状共役ジエン系樹脂、ビニル脂環式炭化水素系樹脂、およびこれらの水素化物等を挙げることができる。これらの中でも、ノルボルネン系樹脂は、透明性と成形性が良好であるため、好適に用いることができる。
【0069】
ノルボルネン系樹脂としては、ノルボルネン構造を有するモノマーの開環重合体もしくはノルボルネン構造を有するモノマーと他のモノマーとの開環共重合体またはそれらの水素化物、ノルボルネン構造を有するモノマーの付加重合体もしくはノルボルネン構造を有するモノマーと他のモノマーとの付加共重合体またはそれらの水素化物等を挙げることができる。
【0070】
シクロオレフィンポリマー系樹脂の市販品としては、例えば、日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオネックス(登録商標)」や「ゼオノア(登録商標)」(ノルボルネン系樹脂)、住友ベークライト株式会社製の商品名「スミライト(登録商標)FS-1700」、JSR株式会社製の商品名「アートン(登録商標)」(変性ノルボルネン系樹脂)、三井化学株式会社製の商品名「アペル(登録商標)」(環状オレフィン共重合体)、Ticona社製の商品名「Topas(登録商標)」(環状オレフィン共重合体)、日立化成株式会社製の商品名「オプトレッツOZ-1000シリーズ」(脂環式アクリル樹脂)等が挙げられる。このようなシクロオレフィン系樹脂を製膜して、光透過性基材を得ることができる。製膜としては、特に限定されず、溶剤キャスト法や溶融押出法など、公知の製膜方法を用いることができる。また、製膜されたシクロオレフィンポリマー系フィルムも市販されており、これを光透過性基材として用いることもできる。シクロオレフィンポリマー系フィルムとしては、例えば、積水化学株式会社製の商品名「エスシーナ(登録商標)」や「SCA40」、日本ゼオン株式会社の商品名「ゼオノアフィルム(登録商標)」、JSR株式会社製の商品名「アートン(登録商標)フィルム」等が挙げられる。
【0071】
ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、ビスフェノール類(ビスフェノールA等)をベースとする芳香族ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等の脂肪族ポリカーボネート等が挙げられる。
【0072】
ポリアクリレート系樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等が挙げられる。
【0073】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)の少なくとも1種が挙げられる。
【0074】
芳香族ポリエーテルケトン系樹脂としては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。
【0075】
アセチルセルロース系樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロースが挙げられる。トリアセチルセルロースは、可視光域380~780nmにおいて、平均光透過率を50%以上とすることが可能な樹脂である。トリアセチルセルロースの平均光透過率は70%以上、更に85%以上であることが好ましい。
【0076】
なお、トリアセチルセルロース系樹脂としては、純粋なトリアセチルセルロース以外に、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートの如くセルロースとエステルを形成する脂肪酸として酢酸以外の成分も併用した物であってもよい。また、これらトリアセチルセルロース系樹脂には、必要に応じて、ジアセチルセルロース等の他のセルロース低級脂肪酸エステル、或いは可塑剤、紫外線吸收剤、易滑剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。
【0077】
ポリイミド系樹脂は、脂肪族のポリイミド系樹脂であってもよいが、芳香族環を含む芳香族系ポリイミド樹脂であることが好ましい。芳香族系ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸成分およびジアミン成分の少なくとも一方に芳香族環を含むものである。
【0078】
ポリイミド系樹脂は、その一部にポリアミド構造を含んでいても良い。含んでいても良いポリアミド構造としては、例えば、トリメリット酸無水物のようなトリカルボン酸残基を含むポリアミドイミド構造や、テレフタル酸のようなジカルボン酸残基を含むポリアミド構造が挙げられる。ポリアミド系樹脂は、脂肪族ポリアミドのみならず、芳香族ポリアミド(アラミド)を含む概念である。具体的には、ポリイミド系樹脂としては、例えば、下記化学式(1)および(2)で表される構造を有する化合物が挙げられる。下記化学式中、nは、繰り返し単位であり、2以上の整数を表す。なお、下記化学式(1)および(2)で表される化合物の中でも、化学式(1)で表される化合物は、低位相差および高透明であるので、好ましい。
【化1】
【化2】
【0079】
光透過性基材13の厚みは、特に限定されないが、500μm以下とすることが可能であり、光透過性基材13の厚みの下限はハンドリング性等の観点から3μm以上、5μm以上、10μm以上、20μm以上がより好ましい。光透過性基材13の厚みの上限は薄膜化の観点から250μm以下、80μm以下、50μm以下、35μm以下、18μm以下であることが好ましい。光透過性基材の厚みは、走査透過型電子顕微鏡(STEM)または走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影された光透過性基材の断面写真からランダムに10箇所厚みを測定し、測定された厚みの平均値として求めるものとする。走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて光透過性基材の厚みを測定する場合、導電部の膜厚の測定方法と同様の方法により測定できる。ただし、光透過性基材の断面写真を撮影する際の倍率は、100~2万倍とする。
【0080】
銀ナノワイヤ等の導電性繊維自体は、例えば、フレキシブル性(例えば、折り畳み性)に適しているが、導電性繊維を含む導電部を積層するための光透過性基材や機能層(導電部を除く)の厚みが厚いと、折り畳み時に屈曲部における光透過性基材や機能層に割れが生じ、その割れが原因で、導電性繊維が断線してしまうおそれがあり、また屈曲部における光透過性基材や機能層に折り癖やマイクロクラックが生じてしまうことがある。上記した断線により目的とする抵抗値が得られないことに加え、外観不良、具体的には、白濁現象やクラック起因の密着不良などが生じてしまうおそれがある。このため、導電性フィルムをフレキシブル用途に用いる場合には、光透過性基材や機能層の厚み制御や各層間の密着性(材料が影響する化学的結合による密着や、クラックが生じないという物理的な密着)が重要になる。特に、光透過性基材13が、シクロオレフィンポリマー系樹脂やポリエステル系樹脂を含む場合や、ポリイミド系樹脂を含む場合も、厚みによって割れにくさが変わるので、光透過性基材の厚み制御が重要となる。
【0081】
具体的には、例えば、光透過性基材13が、シクロオレフィンポリマー系樹脂を含む場合には、光透過性基材13の厚みは、45μm以下が好ましい。この光透過性基材13の厚みが45μm以下であれば、折り畳み時に屈曲部における光透過性基材13の割れを抑制でき、また屈曲部における白濁現象を抑制できる。この場合の光透過性基材13の厚みの上限は、35μm以下、18μm以下であることが好ましい。また、この場合の光透過性基材13の厚みの下限は、ハンドリング性等の観点から、5μm以上であることが好ましい。
【0082】
光透過性基材13が、例えば、ポリエステル系樹脂を含む場合には、光透過性基材13の厚みは、45μm以下が好ましい。この光透過性基材13の厚みが45μm以下であれば、折り畳み時に屈曲部における光透過性基材13の割れを抑制でき、また屈曲部における白濁現象を抑制できる。この場合の光透過性基材13の厚みの上限は、35μm以下、18μm以下であることが好ましい。また、この場合の光透過性基材13の厚みの下限は、ハンドリング性等の観点から、5μm以上であることが好ましい。
【0083】
光透過性基材13が、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、またはこれらの混合物を含む場合には、折り畳み時の光透過性基材13の割れの抑制、光学特性や機械特性の観点から光透過性基材13の厚みは、薄い方がよく、具体的には、75μm以下が好ましい。この場合の光透過性基材13の厚みの上限は、70μm以下、50μm以下、35μm以下、18μm以下であることが好ましい。また、この場合の光透過性基材13の厚みの下限は、ハンドリング性等の観点から、5μm以上であることが好ましい。
【0084】
上記した各光透過性基材の厚みが35μm以下の場合には、製造時に保護フィルムを貼ると加工適性が向上するので、好ましい。
【0085】
光透過性基材13は、密着性向上のために、コロナ放電処理、酸化処理等の物理的な処理が表面に施されたものであってもよい。また、光透過性基材13は、少なくとも一方の面側に、他の層との密着性を向上させるため、巻き取り時の貼り付きを防止するため、および/または他の層を形成する塗布液のはじきを抑制するための下地層を有するものであってもよい。ただし、導電性繊維および分散媒を含む導電性繊維含有組成物を用いて、下地層の表面に導電部を形成すると、分散系の種類によって程度は異なるが、分散媒が下地層に浸透することによって導電性繊維も下地層中に入り込んでしまい、電気抵抗値が上昇してしまうおそれがあるので、光透過性基材における第2の導電部側には下地層を備えず、第2の導電部は光透過性基材に直接設けられていることが好ましい。本明細書においては、下地層は光透過性基材の一部をなすものとする。
【0086】
下地層は、他の層との密着性を向上させる機能、巻き取り時の貼り付きを防止する機能、および/または他の層を形成する塗布液のはじきを抑制する機能を有する層である。光透過性基材が下地層を有しているか否かは、走査型電子顕微鏡(SEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)、または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、1000~50万倍(好ましくは2.5万倍~5万倍)にて光透過性基材と樹脂層の界面周辺および光透過性基材と第2の導電部の界面周辺の断面を観察することにより確認することができる。なお、下地層には、巻き取り時の貼り付き防止のために易滑剤等の粒子を含むことがあるので、光透過性基材と樹脂層の間に粒子が存在することでも、この層が下地層であると判断できる。
【0087】
下地層の膜厚は、10nm以上1μm以下であることが好ましい。下地層の膜厚が10nm以上であれば、下地層としての機能が充分に発揮され、また下地層の膜厚が1μm以下であれば、光学的に影響を及ぼすおそれもない。下地層の膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)、または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて1000~50万倍(好ましくは2.5万倍~5万倍)にて撮影された下地層の断面写真からランダムに10箇所厚みを測定し、測定された10箇所の厚みの算術平均値とする。下地層の膜厚の下限は、30nm以上であることがより好ましく、上限は150nm以下であることがより好ましい。下地層の膜厚は、導電部11の膜厚と同様の方法によっても測定することができる。
【0088】
下地層は、例えば、アンカー剤やプライマー剤を含んでいる。アンカー剤やプライマー剤としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレンと酢酸ビニルまたはアクリル酸などとの共重合体、エチレンとスチレンおよび/またはブタジエンなどとの共重合体、オレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂および/またはその変性樹脂、電離放射線重合性化合物の重合体、および熱重合性化合物の重合体等の少なくともいずれかを用いることが可能である。
【0089】
下地層は、上記したように巻き取り時の貼り付き防止のために、易滑剤等の粒子を含んでいてもよい。粒子としては、シリカ粒子等が挙げられる。
【0090】
<<樹脂層>>
樹脂層12は、第1の導電部11と光透過性基材13との間に配置されている。樹脂層12が第1の導電部11と光透過性基材13との間に配置されていることにより、第1の導電部11の耐擦傷性を向上させることができる。図1に示される樹脂層12は、第1の導電部11および光透過性基材13に隣接しているが、隣接していなくともよい。光透過性基材13が下地層を備えている場合、樹脂層12は、下地層に隣接していることが好ましい。樹脂層12が下地層に隣接していることにより、樹脂層12と光透過性基材13との密着性が高い。本明細書における「樹脂層」とは、樹脂を含む層であり、樹脂の他に粒子や添加剤等を含んでいてもよい。
【0091】
樹脂層が柔らかすぎると、導電性フィルムの製造過程で容易に傷が付いてしまうおそれや、エッチング液などの薬品に対する耐性が乏しくなるおそれがあるので、樹脂層12は、例えば、ハードコート層であることが好ましい。樹脂層12がハードコート層であれば、導電性フィルム10の製造過程における傷付きを防止でき、または耐薬品性を向上させることができる。本明細書における「ハードコート層」とは、光透過性を有し、かつ光透過性基材よりも硬い層を意味するものとする。具体的には、ハードコート層のインデンテーション硬さは、光透過性基材のインデンテーション硬さよりも高くなっている。具体的には、ハードコート層のインデンテーション硬さは、100MPa以上であることが好ましい。ハードコート層のインデンテーション硬さの下限は、200MPa以上または300MPa以上であってもよく、また上限は、マイクロクラックを防止し、光透明性基材、樹脂層、導電部の各層界面における密着性を維持する観点から、800MPa以下であってもよい。このような下限および上限にすることによって、導電性繊維などによる導電部自身のフレキブル性を維持することができる。また、第1の導電部および第2の導電部を有する構造において、実用化のためには耐久性試験後も抵抗値、物理特性、光学特性が試験前とほぼ同じであることが必要とされる。また、ハードコート層は、加工時の傷付き防止、導電性繊維の断線などを、下地として補強する役割の層として有効である。このようなことから、銀ナノワイヤ等の導電性繊維が持つフレキシブル性を生かしながら、かつ上述したような実用のための物性を得るためには、上記した数値範囲内にあることが好ましい。なお、用途によるが、光透過性基材の一方の面側のみにハードコート層が設けられる場合よりも、光透過性基材の両面側にハードコート層が設けられる構成が好ましい。
【0092】
本明細書における「インデンテーション硬さ」とは、圧子の負荷から除荷までの荷重-変位曲線から求められる値である。上記インデンテーション硬さ(HIT)の測定は、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で、測定サンプルについてHYSITRON(ハイジトロン)社製の「TI950 TriboIndenter」を用いて行うものとする。具体的には、まず、10mm×10mmの大きさに切り出した導電性フィルムをシリコーン系の包埋板に入れ、エポキシ系樹脂を流し込み、導電性フィルム全体を樹脂にて包埋する。その後、包埋樹脂を65℃で12時間以上放置して、硬化させる。その後、ウルトラミクロトーム(製品名「ウルトラミクロトーム EM UC7」、ライカ マイクロシステムズ社製)を用いて、送り出し厚み100nmに設定し、超薄切片を作製する。超薄切片が切り出された残りのブロックを測定サンプルとする。次いで、測定サンプルを、市販のスライドガラス(製品名「スライドガラス(切放タイプ) 1-9645-11」、アズワン株式会社製)に、測定サンプルにおける上記切片が切り出されることによって得られた断面がスライドガラスの表面に対してほぼ垂直になるように、接着樹脂(製品名「アロンアルフア(登録商標)一般用」、東亜合成株式会社製)を介して固定する。具体的には、上記スライドガラスの中央部に上記接着樹脂を滴下する。この際、接着樹脂を塗り広げず、また接着樹脂が測定サンプルからはみ出さないように滴下は1滴とする。測定サンプルを測定サンプルにおける上記切片が切り出されることによって得られた断面がスライドガラスの表面に対してほぼ垂直になるようにスライドガラスに接触させ、スライドガラスと測定サンプルの間で接着樹脂を押し広げ、仮接着する。そして、その状態で、12時間室温で放置し、測定サンプルをスライドガラスに接着により固定する。なお、固定方法は任意であり、測定用サンプルが動かなければよい。次いで、測定サンプルの断面において、平坦な箇所を探し、この平坦な箇所において、変位基準の測定で、最大押し込み変位が100nmとなるように、速度10nm/秒でバーコビッチ(Berkovich)型圧子を、10秒で変位0nmから変位100nmまで負荷を加えながら樹脂層12に押し込み、その後変位100nmで5秒間保持した後、10秒で変位100nmから変位0nmまで除荷する。そして、このときの押し込み荷重F(N)に対応する押し込み深さh(nm)を連続的に測定し、荷重-変位曲線を作成する。作成された荷重-変位曲線からインデンテーション硬さ(HIT)を、以下の数式(1)のように最大押し込み荷重Fmax(N)を、圧子と第1の樹脂層12が接している接触投影面積A(mm)で除した値により求める。インデンテーション硬さ(HIT)は、10箇所測定して得られた値の算術平均値とする。Aは標準試料の溶融石英を用いて、Oliver-Pharr法で圧子先端曲率を補正した接触投影面積である。
IT=Fmax/A …(1)
【0093】
樹脂層を有する導電性フィルムの物理特性を制御するためには、樹脂層自身の弾性率等を測定することが考えられるが、三次元架橋構造を有する樹脂層は薄膜かつ脆いため単層でフィルム化は困難であり、樹脂層を単層として弾性率等を測定することは困難である。このため、上記においては、ナノインデンテーション法による硬さ測定によって評価を行っている。この方法によって、光透過性基材の影響によらず、薄膜高分子材料であっても膜自身の物性測定が可能となり、また弾性/塑性変形物質の、荷重変位曲線から上記したように数式(1)によって硬度の解析ができる。
【0094】
樹脂層12の膜厚は、樹脂層12の表面のみならず内部の正電荷を除去する観点から、光透過性基材13の厚みよりも薄いことが好ましい。具体的には、樹脂層12の膜厚は0.2μm以上15μm以下であることが好ましい。樹脂層12の膜厚が0.2μm以上であれば、所望の硬度を得ることができ、また樹脂層12の膜厚が15μm以下であれば、導電性フィルム10の薄型化を図ることができる。樹脂層12の膜厚は、光透過性基材13の厚みの測定方法と同様の方法によって測定することができる。樹脂層12の膜厚の上限は、折り畳み時における樹脂層12の割れを抑制する観点から、12μm以下であることがより好ましい。また、樹脂層12の膜厚の下限は、ハードコート性の観点から、0.3μm以上、0.5μm以上、または0.7μm以上がより好ましい。また、樹脂層12の膜厚の上限は、樹脂層12の薄膜化を図る観点から、10μm以下、5μm以下、または2μm以下であることがより好ましい。ただし、光透過性基材の両面に樹脂層を積層する場合には、上記した樹脂層12の膜厚より薄いことが好ましい。この場合、薄膜化を図り、また良好なフレキシブル性を得る場合であれば、各樹脂層の膜厚は、3μm以下、1.5μm以下、1μm以下、0.7μm以下であってもよい。
【0095】
光透過性基材13の厚みが薄い場合、ラインに通しにくくなり、また避けやすくなり、傷付きやすいなど工程上の取り扱いが困難になるので、導電性フィルム10は、少なくとも光透過性基材13の片面に樹脂層12を設けることが好ましい。導電性フィルム10がフレキシブル用途で用いられる場合には、樹脂層12を光透過性基材13に密着させ、かつ折り畳み時時に光透過性基材13に追随させることが重要となる。このような光透過性基材13に密着し、かつ折り畳み時に光透過性基材13に追随可能な樹脂層12を形成するためには、光透過性基材13の厚みに対する樹脂層12の膜厚のバランスも重要になる。
【0096】
樹脂層12は、少なくとも樹脂を含む層であるが、樹脂層12は、樹脂の他に、無機粒子、有機粒子およびレベリング剤を含んでいてもよい。
【0097】
<樹脂>
樹脂層12を構成する樹脂としては、重合性化合物の重合体(硬化物、架橋物)を含むものが挙げられる。樹脂は、重合性化合物の重合体の他、溶剤乾燥型樹脂を含んでいてもよい。重合性化合物としては、電離放射線重合性化合物および/または熱重合性化合物が挙げられる。これらの中でも、硬化速度が速く、また設計がしやすいことから、重合性化合物として電離放射線重合性化合物が好ましい。
【0098】
電離放射線重合性化合物は、1分子中に電離放射線重合性官能基を少なくとも1つ有する化合物である。本明細書における「電離放射線重合性官能基」とは、電離放射線照射により重合反応し得る官能基である。電離放射線重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和基が挙げられる。なお、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」および「メタクリロイル基」の両方を含む意味である。また、電離放射線重合性化合物を重合する際に照射される電離放射線としては、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、およびγ線が挙げられる。
【0099】
電離放射線重合性化合物としては、電離放射線重合性モノマー、電離放射線重合性オリゴマー、または電離放射線重合性プレポリマーが挙げられ、これらを適宜調整して、用いることができる。電離放射線重合性化合物としては、電離放射線重合性モノマーと、電離放射線重合性オリゴマーまたは電離放射線重合性プレポリマーとの組み合わせが好ましい。
【0100】
電離放射線重合性モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を含む単官能モノマーや、2官能以上の多官能モノマー、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
【0101】
電離放射線重合性オリゴマーとしては、2官能以上の多官能オリゴマーが好ましく、電離放射線重合性官能基が3つ(3官能)以上の多官能オリゴマーが好ましい。上記多官能オリゴマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル-ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0102】
電離放射線重合性プレポリマーは、例えば、1万の重量平均分子量を有していてもよい。電離放射線重合性プレポリマーの重量平均分子量としては1万以上8万以下が好ましく、1万以上4万以下がより好ましい。重量平均分子量が8万を超える場合は、粘度が高いため塗工適性が低下してしまい、得られるハードコート層の外観が悪化するおそれがある。多官能プレポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、ポリエステル-ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0103】
熱重合性化合物は、1分子中に熱重合性官能基を少なくとも1つ有するものである。本明細書における「熱重合性官能基」とは、加熱により同じ官能基同士または他の官能基との間で重合反応し得る官能基である。熱重合性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、アミノ基、環状エーテル基、メルカプト基等が挙げられる。
【0104】
熱重合性化合物としては、特に限定されず、例えば、エポキシ化合物、ポリオール化合物、イソシアネート化合物、メラミン化合物、ウレア化合物、フェノール化合物等が挙げられる。
【0105】
溶剤乾燥型樹脂は、熱可塑性樹脂等、塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂である。溶剤乾燥型樹脂を添加した場合、樹脂層12を形成する際に、塗液の塗布面の被膜欠陥を有効に防止することができる。溶剤乾燥型樹脂としては特に限定されず、一般に、熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0106】
熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂及びゴム又はエラストマー等を挙げることができる。
【0107】
熱可塑性樹脂は、非結晶性で、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶媒)に可溶であることが好ましい。特に、透明性や耐候性という観点から、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)等が好ましい。
【0108】
<無機粒子>
無機粒子は、樹脂層12の機械的強度や鉛筆強度を向上させるための成分であり、無機粒子としては、例えば、シリカ(SiO)粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、酸化スズ粒子、アンチモンドープ酸化スズ(略称:ATO)粒子、酸化亜鉛粒子等の無機酸化物粒子が挙げられる。これらの中でも、硬度をより高める観点からシリカ粒子が好ましい。シリカ粒子としては、球形シリカ粒子や異形シリカ粒子が挙げられるが、これらの中でも、異形シリカ粒子が好ましい。本明細書における「球形粒子」とは、例えば、真球状、楕円球状等の粒子を意味し、「異形粒子」とは、形が定まらないコロイド状粒子や、ジャガイモ状のランダムな凹凸を表面に有する形状の粒子を意味する。上記異形粒子は、その表面積が球状粒子と比較して大きいため、このような異形粒子を含有することで、上記重合性化合物等との接触面積が大きくなり、樹脂層12の鉛筆硬度をより優れたものとすることができる。樹脂層12に含まれているシリカ粒子が異形シリカ粒子であるか否かは、樹脂層12の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)で観察することによって確認することができる。球形シリカ粒子を用いる場合、球形シリカ粒子の粒子径が小さいほど、樹脂層の硬度が高くなる。これに対し、異形シリカ粒子は、市販されている最も小さい粒子径の球形シリカ粒子ほど小さくなくとも、この球形シリカと同等の硬度を達成することができる。
【0109】
異形シリカ粒子の平均一次粒子径は、1nm以上100nm以下であることが好ましい。異形シリカ粒子の平均一次粒子径がこの範囲であっても、平均一次粒子径が1nm以上45nm以下の球形シリカと同等の硬度を達成することができる。異形シリカ粒子の平均一次粒子径は、ハードコート層の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影したハードコート層の断面の画像から粒子の外周の2点間距離の最大値(長径)と最小値(短径)とを測定し、平均して粒子径を求め、20個の粒子の粒子径の算術平均値とする。また、球形シリカ粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影した粒子の断面の画像から20個の粒子の粒子径を測定し、20個の粒子の粒子径の算術平均値とする。走査透過型電子顕微鏡(STEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、断面写真の撮影を行う際には、検出器(選択信号)を「TE」、加速電圧を「30kV」、エミッションを「10μA」にして観察を行う。その他のSTEMによる断面写真の撮影条件は、後述の条件を参照できる。なお、平均一次粒子径測定には、画像データを2値化処理して算出することもできる。
【0110】
樹脂層12中の無機粒子の含有量は、20質量%以上70質量%以下であることが好ましい。無機粒子の含有量が20質量%以上であれば、十分な硬度を得ることができ、また無機粒子の含有量が70質量%以下であれば、充填率が上がりすぎず、無機粒子と樹脂成分との密着性が良好であるので、樹脂層の硬度を低下させることもない。
【0111】
無機粒子としては、表面に電離放射線重合性官能基を有する無機粒子(反応性無機粒子)を用いることが好ましい。このような表面に電離放射線重合性官能基を有する無機粒子は、シランカップリング剤等によって無機粒子を表面処理することによって作成することができる。無機粒子の表面をシランカップリング剤で処理する方法としては、無機粒子にシランカップリング剤をスプレーする乾式法や、無機粒子を溶剤に分散させてからシランカップリング剤を加えて反応させる湿式法等が挙げられる。
【0112】
<有機粒子>
有機粒子も、樹脂層12の機械的強度や鉛筆強度を向上させるための成分であり、有機粒子としては、例えば、プラスチックビーズを挙げることができる。プラスチックビーズとしては、具体例としては、ポリスチレンビーズ、メラミン樹脂ビーズ、アクリルビーズ、アクリル-スチレンビーズ、シリコーンビーズ、ベンゾグアナミンビーズ、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合ビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ等が挙げられる。
【0113】
樹脂層12は、重合性化合物等を含む樹脂層用組成物を用いることによって形成することが可能である。樹脂層用組成物は、上記重合性化合物等を含むが、その他、必要に応じて、溶剤、重合開始剤を添加してもよい。さらに、樹脂層用組成物には、樹脂層の硬度を高くする、硬化収縮を抑える、または屈折率を制御する等の目的に応じて、従来公知の分散剤、界面活性剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、易滑剤等を添加していてもよい。
【0114】
<溶剤>
溶剤としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、ベンジルアルコール、PGME、エチレングリコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、シクロヘプタノン、ジエチルケトン等)、エーテル類(1,4-ジオキサン、ジオキソラン、ジイソプロピルエーテルジオキサン、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、エステル類(蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0115】
<重合開始剤>
重合開始剤は、光または熱により分解されて、ラジカルやイオン種を発生させて重合性化合物の重合(架橋)を開始または進行させる成分である。樹脂層用組成物に用いられる重合開始剤は、光重合開始剤(例えば、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、光アニオン重合開始剤)や熱重合開始剤(例えば、熱ラジカル重合開始剤、熱カチオン重合開始剤、熱アニオン重合開始剤)、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0116】
上記したように導電性フィルム10がフレキシブル用途で用いられる場合には、樹脂層12を光透過性基材13に密着させ、かつ折り畳み時に光透過性基材13に追随させることが重要となる。このような光透過性基材13に密着し、かつ折り畳み時に光透過性基材13に追随可能な樹脂層12を形成するためには、重合開始剤としてオキシムエステル系化合物を用いることが好ましい。オキシムエステル系化合物の市販品としては、例えば、IRGACURE OXE01、IRGACURE OXE02、IRGACURE OXE03(いずれもBASFジャパン社製)が挙げられる。特に、シクロオレフィンポリマー系樹脂を含む光透過性基材においては、これらの開始剤が好ましい。
【0117】
樹脂層用組成物における重合開始剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、0.5質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。重合開始剤の含有量をこの範囲内にすることにより、ハードコート性能を充分に保つことができ、かつ硬化阻害を抑制できる。
【0118】
<<第1の導電部>>
導電部11は、図2に示されるように、導電性繊維15を含んでいる。導電部11は、導電性繊維15の他、光透過性樹脂16を含んでいる。ただし、第1の導電部は、導電性繊維を含んでいれば、光透過性樹脂を含んでいなくともよい。本明細書における「導電部」とは、走査透過型電子顕微鏡(STEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、断面を観察したときに、導電性繊維を含む層を意味する。導電部の界面が確認しにくい場合には、導電部の表面にスパッタ法によりPt-PdやAu等の金属層を形成する等の電子顕微鏡観察で一般的に用いられる前処理を行うとよい。また、四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム、リンタングステン酸など染色処理を施すと、有機層間の界面が見やすくなるので、導電性フィルム全体を樹脂にて包埋した後、染色処理を行ってもよい。
【0119】
導電性繊維15は、光透過性樹脂16中に配置されている。本明細書における「導電性繊維」とは、導電性を有し、かつ長さが太さ(例えば直径)に比べて十分に長い形状を持つものであり、例えば、概ね長さが太さの5倍以上のものは導電性繊維に含まれるものとする。
【0120】
導電部11の表面抵抗値は3Ω/□以上1000Ω/□以下となっていることが好ましい。導電部の表面抵抗値が3Ω/□未満であると、光学的性能が不充分となるおそれがあり、また導電部の表面抵抗値が1000Ω/□を超えると、特にタッチパネル用途では、応答速度が遅くなる等の不具合が発生するおそれがある。導電部11の表面抵抗値は表面11Aにおける表面抵抗値である。表面抵抗値は、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で、JIS K7194:1994(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)に準拠した接触式の抵抗率計(製品名「ロレスタAX MCP-T370型」、三菱化学アナリテック株式会社製、端子形状:ASPプローブ)および非破壊式(渦電流法)の抵抗率計(製品名「EC-80P」、ナプソン株式会社製、https://www.napson.co.jp/wp/wp-content/uploads/2016/08/Napson_EC80P_リーフレット_160614.pdf)のいずれを用いて測定できるが、導電部の膜厚に因らずに正確に測定できる点から、非破壊式の抵抗率計を用いて測定することが好ましい。非破壊式の抵抗率計のプローブは、サンプルに簡易接触させるだけで測定できるものであり、サンプルにダメージを与えず、任意の場所の測定が可能である。その意味で、非接触式と呼ぶ場合もある。非破壊式の抵抗率計による導電部の表面抵抗値の測定は、80mm×50mmの大きさに切り出した導電性フィルムを平らなガラス板上に導電部側が上面となるように配置して、プローブを導電部に接触させて行うものとする。EC-80Pを用いて表面抵抗値を測定する場合には、SW2を選択し、モードM-Hのシート抵抗測定Ω/□を選択する。また、測定レンジによってプローブタイプを容易に付け替えることができ、本実施形態においては測定レンジが10~1000Ω/□レンジのプローブ、0.5~10Ω/□レンジのプローブを用いる。なお、EC-80Pの代わりにEC-80P-PN(ナプソン株式会社製)でも同様に測定できるが、この機種の場合には、P/NはPを選択するとよい。また、接触式の抵抗率計による導電部の表面抵抗値の測定は、80mm×50mmの大きさに切り出した導電性フィルムを平らなガラス板上に導電部側が上面となるように配置して、ASPプローブを導電部の中心に配置し、全ての電極ピンを導電部に均一に押し当てることによって行うものとする。接触式の抵抗率計で表面抵抗値を測定する際には、シート抵抗を測定するモードであるΩ/□を選択する。その後は、スタートボタンを押し、ホールドすると、測定結果が表示される。表面抵抗値の測定は、抵抗率計の種類に関わらず、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で行うものとする。また、表面抵抗値を測定する際には、抵抗率計の種類に関わらず、水平な机の上に導電性フィルムを配置し、均一な平面状態で測定を行うが、導電性フィルムがカールする等平面状態を維持できない場合には、導電性フィルムをテープ等でガラス板に貼り付けた状態で行うものとする。測定箇所は、導電性フィルムの中心部の3箇所とし、表面抵抗値は、3箇所の表面抵抗値の算術平均値とする。ここで、JIS K7194:1994に全て従うと、測定点は1点、5点、または9点であるが、実際に80mm×50mmの大きさに導電性フィルムを切り出し、JIS K7194:1994の図5の通り測定すると、測定値が不安定になる場合がある。このため、測定点については、JIS K7194:1994とは異なり、導電部の中央部3箇所で測定するものとする。例えば、JIS K7194:1994の図5の1番の位置、1番および7番の間の位置(好ましくは1番に近い位置)、および1番と9番の間の位置(好ましくは1番に近い位置)で測定する。表面抵抗値をサンプルの中心付近で測定することが望ましいことは、井坂 大智、他1名、“四探針法による導電性薄膜の抵抗率測定” 平成20年度電子情報通信学会東京支部学生研究発表会、https://www.ieice.org/tokyo/gakusei/kenkyuu/14/pdf/120.pdf)でも報告されている。導電部11の表面抵抗値の下限は、5Ω/□以上、または10Ω/□以上であることがより好ましく、また導電部11の表面抵抗値の上限は、100Ω/□以下、70Ω/□以下、60Ω/□以下、または50Ω/□以下であることがより好ましい。
【0121】
上記表面抵抗値は、後述する線抵抗値から以下の数式(2)によって、換算することもできる。以下の数式(2)中、Rは表面抵抗値(Ω/□)であり、Rは線抵抗値(Ω)であり、Wは線抵抗値を測定する際の線幅であり、Lは線抵抗値を測定する際の長さである。実際に測定して得られた表面抵抗値と、線抵抗値から以下の式によって換算された表面抵抗値は、ほぼ同じ値となる。
=R×W÷L …(2)
【0122】
導電部11の線抵抗値は、60Ω以上20000Ω以下となっていることが好ましい。導電部の線抵抗値が60Ω未満であると、光学的特性が不充分となるおそれがあり、また導電部の線抵抗値が20000Ωを越えると、特にタッチパネル用途では、応答速度が遅くなる等の不具合が発生するおそれがある。導電部11の線抵抗値は、導電性フィルムから幅5mm×長さ100mmの長方形形状に切り出したサンプルの長手方向の両端部にテスター(製品名「Digital MΩ Hitester 3454-11」、日置電機社製)のプローブ端子を接触させることによって測定することができる。具体的には、Digital MΩ Hitester 3454-11は、2本のプローブ端子(赤色プローブ端子および黒色プローブ端子、両方ともピン形)を備えているので、赤色プローブ端子を導電部の一方の端部に接触させ、かつ黒色プローブ端子を導電部の他方の端部に接触させて導電部の線抵抗値を測定する。導電部11の線抵抗値の下限は、200Ω以上であることがより好ましく、また導電部11の線抵抗値の上限は2000Ω以下であることがより好ましい。線抵抗値の測定は、温度23±5℃および相対湿度30%以上70%以下の環境下で行うものとする。
【0123】
導電部11の膜厚は、300nm未満とすることが好ましい。導電部の膜厚が300nm以上であると、その分、光透過性樹脂の膜厚が厚すぎることになるので、全ての導電性繊維が光透過性樹脂に埋もれてしまうことによって、一部の導電性繊維が導電部の表面に露出しなくなってしまい、導電部の表面から電気的な導通が得られないおそれがある。導電部の膜厚が大きくなればなるほど、導電性繊維同士が重なる部分が増えるために、1Ω/□以上10Ω/□以下の低表面抵抗値も達成することが可能であるが、導電性繊維が重なり過ぎると低ヘイズ値の維持が困難になる場合もある。このため、膜厚は300nm未満が好ましい。なお、低表面抵抗値が維持できる限り導電部は薄膜である方が光学特性、薄膜化の観点から好ましい。導電部11の膜厚の上限は、薄型化を図る観点および低ヘイズ値等良好な光学特性を得る観点から、200nm以下、145nm、140nm以下、120nm以下、110nm以下、80nm以下、または50nm以下であることがより好ましい。また、導電部11の膜厚の下限は、10nm以上であることが好ましい。導電部の膜厚が10nm未満であると、その分、光透過性樹脂16の膜厚が薄すぎることになるので、導電部からの導電性繊維の脱離、導電部の耐久性の悪化、耐擦傷性の低下が生ずるおそれがある。また、導電性繊維が切れやすいなど不安定性がないようにするためには、導電性繊維の繊維径がある程度大きいことが好ましい。導電性繊維が安定して形態を維持できる繊維径としては、10nm以上または15nm以上であると考えられる。一方で、安定な電気的導通を得るためには、導電性繊維が2本以上重なって接触していることが望ましいため、導電部11の膜厚の下限は、20nm以上または30nm以上であることがより好ましい。なお、フレキシブル性を得る場合には、上記間隔φが大きめで折り畳み回数も10万回程度であれば、導電部11の膜厚は300nm未満であれば安定な抵抗値が得られる。また、上記間隔φが小さくなり、折り畳み回数も10万回を超える場合には、導電部11の膜厚は薄い方が好ましく、例えば、200nm以下、145nm以下、更には120nm以下が好ましい。
【0124】
導電部11の膜厚は、走査透過型電子顕微鏡(STEM)、または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影された導電部の断面写真からランダムに10箇所膜厚を測定し、測定された10箇所の膜厚の算術平均値とする。具体的な断面写真の撮影方法を以下に記載する。まず、上記と同様の方法にて導電性フィルムから断面観察用のサンプルを作製する。なお、このサンプルにおいて導通が得られないとSTEMによる観察像が見えにくい場合があるため、Pt-Pdを20秒程度スパッタすることが好ましい。スパッタ時間は、適宜調整できるが、10秒では少なく、100秒では多すぎるためスパッタした金属が粒子状の異物像になるため注意する必要がある。その後、走査透過型電子顕微鏡(STEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、STEM用サンプルの断面写真を撮影する。この断面写真の撮影の際には、検出器(選択信号)を「TE」、加速電圧を「30kV」、エミッションを「10μA」にしてSTEM観察を行う。倍率については、フォーカスを調節しコントラストおよび明るさを各層が見分けられるか観察しながら5000倍~20万倍で適宜調節する。好ましい倍率は、1万倍~10万倍、更に好ましい倍率は1万倍~5万倍であり、最も好ましい倍率2.5万倍~5万倍である。なお、断面写真の撮影の際には、さらに、アパーチャーをビームモニタ絞り3、対物レンズ絞りを3にし、またW.D.を8mmにしてもよい。導電部の膜厚を測定する際には、断面観察した折に、導電部と他の層(樹脂層や包埋樹脂等)との界面コントラストが可能な限り明確に観察できることが重要となる。仮に、コントラスト不足でこの界面が見え難い場合には、導電部の表面にスパッタ法によりPt-Pd、PtやAu等の金属層を形成する等の電子顕微鏡観察で一般的に用いられる前処理を行ってもよい。また、四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム、リンタングステン酸など染色処理を施すと、有機層間の界面が見やすくなるので、染色処理を行ってもよい。また、界面のコントラストは高倍率である方が分かりにくい場合がある。その場合には、低倍率も同時に観察する。例えば、2.5万倍と5万倍や、5万倍と10万倍など、高低の2つの倍率で観察し、両倍率で上記した算術平均値を求め、更にその平均値を導電部の膜厚の値とする。
【0125】
<導電性繊維>
導電性繊維15は導電部11中に複数本存在していることが好ましい。導電性繊維15は、導電部11の表面11Aから電気的に導通可能となっているので、導電部11の膜厚方向において導電性繊維15同士が接触している。
【0126】
導電部11においては、導電性繊維15同士が接触することによって導電部11の平面方向(2次元方向)にネットワーク構造(網目構造)を形成していることが好ましい。導電性繊維15がネットワーク構造を形成することによって、導電経路を形成することができる。
【0127】
一部の導電性繊維15は導電部11の表面11Aに露出していることが好ましい。なお、導電性繊維15が導電部11に固定される程度に導電性繊維15の一部が露出していればよく、導電性繊維15が導電部11の表面11Aから突出している場合も導電性繊維15が導電部11の表面11Aに露出している場合に含まれる。一部の導電性繊維が、導電部の表面に露出していないと、導電部の表面から電気的な導通が得られないおそれがあるので、導電部11の表面11Aから電気的な導通が得られれば、一部の導電性繊維15が、導電部11の表面11Aに露出していると判断できる。導電性繊維が、導電部の表面から電気的に導通可能であるか否かは、上記と同様の方法により導電部の表面抵抗値を測定することによって判断することが可能である。具体的には、導電部の表面抵抗値の算術平均値が1×10Ω/□未満であれば、導電部の表面から電気的な導通が得られていると判断できる。
【0128】
導電性繊維15の繊維径は100nm以下であることが好ましい。導電性繊維15の繊維径が100nm以下であれば、導電性フィルム10のヘイズ値の上昇を抑制でき、また光透過性能が不充分となるおそれもない。導電性繊維15の繊維径の下限は、上述したように安定して形態を維持できて、導電部11の導電性を確保することができることから3nm以上または5nm以上が好ましい。導電性繊維15の繊維径の上限は、透明性の観点から、50nm以下または30nm以下であることがより好ましい。導電性繊維15の繊維径のより好ましい範囲は7nm以上25nm以下である。
【0129】
導電性繊維15の繊維径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)(製品名「H-7650」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用い、10万倍~20万倍にて50枚撮像し、TEM付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の導電性繊維の繊維径を実測し、その算術平均値として求めるものとする。上記H-7650を用いて、繊維径を測定する際には、加速電圧を「100kV」、エミッション電流を「10μA」、集束レンズ絞りを「1」、対物レンズ絞りを「0」、観察モードを「HC」、Spotを「2」にする。また、走査透過型電子顕微鏡(STEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)によっても導電性繊維の繊維径を測定することが可能である。STEMを用いる場合には、10万倍~20万倍にて50枚撮像し、STEM付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の導電性繊維の繊維径を実測し、その算術平均値として導電性繊維の繊維径を求めるものとする。上記S-4800(TYPE2)を用いて、繊維径を測定する際には、信号選択を「TE」、加速電圧を「30kV」、エミッション電流を「10μA」、プローブ電流を「Norm」、焦点モードを「UHR」、コンデンサレンズ1を「5.0」、W.D.を「8mm」、Tiltを「0°」にする。
【0130】
導電性繊維15の繊維径を測定する際には、以下の方法によって作製された測定用サンプルを用いる。ここで、TEM測定は高倍率のため、導電性繊維ができる限り重ならないように導電性繊維含有組成物の濃度をできる限り低下させることが重要である。具体的には、導電性繊維含有組成物を、組成物の分散媒に合わせて水またはアルコールで導電性繊維の濃度を0.05質量%以下に希釈し、または固形分が0.2質量%以下に希釈することが好ましい。さらに、この希釈した導電性繊維含有組成物をTEMまたはSTEM観察用のカーボン支持膜付きグリッドメッシュ上に1滴滴下し、室温で乾燥させて、上記条件で観察し、観察画像データとする。これを元に算術平均値を求める。カーボン支持膜付きグリッドメッシュとしては、Cuグリッド型番「♯10-1012 エラスチックカーボンELS-C10 STEM Cu100Pグリッド仕様」が好ましく、また電子線照射量に強く、電子線透過率がプラスチック支持膜より良いため高倍率に適し、有機溶媒に強いものが好ましい。また、滴下の際には、グリッドメッシュだけであると微小すぎ滴下しにくいため、スライドガラス上にグリッドメッシュを載せて滴下するとよい。
【0131】
上記繊維径は、写真を元に実測して求めることができ、また画像データを元に2値化処理して算出してもよい。実測する場合、写真を印刷し適宜拡大してもよい。その際、導電性繊維は他の成分よりも黒さの濃度が濃く写り込む。測定点は、輪郭外側を起点、終点として測定する。導電性繊維の濃度は、導電性繊維含有組成物の全質量に対する導電性繊維の質量の割合で求めるものとし、また固形分は、導電性繊維含有組成物の全質量に対する分散媒以外の成分(導電性繊維、樹脂成分、その他の添加剤)の質量の割合によって求めるものとする。導電性繊維含有組成物を用いて求められた繊維径と、写真を元にして実測して求めた繊維径は、ほぼ同じ値となる。
【0132】
導電性繊維15の繊維長は1μm以上であることが好ましい。導電性繊維15の繊維長が1μm以上であれば、充分な導電性能を有する導電部11を形成でき、また凝集の発生を抑制できるので、ヘイズ値の上昇や光透過性能の低下を招くおそれもない。導電性繊維15の繊維長の上限は100μm以下、30μm以下、または20μm以下としてもよく、また導電性繊維15の繊維長の下限は3μm以上、10μm以上としてもよい。
【0133】
導電性繊維15の繊維長は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)のSEM機能を用い、500~2000万倍にて10枚撮像し、付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の導電性繊維の繊維長を測定し、その100本の導電性繊維の繊維長の算術平均値として求めるものとする。上記S-4800(TYPE2)を用いて、繊維長を測定する際には、45°傾斜の試料台を使用して、信号選択を「SE」、加速電圧を「3kV」、エミッション電流を「10μA~20μA」、SE検出器を「混合」、プローブ電流を「Norm」、焦点モードを「UHR」、コンデンサレンズ1を「5.0」、W.D.を「8mm」、Tiltを「30°」にする。なお、SEM観察時には、TE検出器は使わないので、SEM観察前にTE検出器は必ず抜いておく。上記S-4800は、STEM機能とSEM機能を選択できるが、上記繊維長の測定する際には、SEM機能を用いるものとする。
【0134】
導電性繊維15の繊維長を測定する際には、以下の方法によって作製された測定用サンプルを用いる。まず、導電性繊維含有組成物をB5サイズの厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの未処理面に塗布量10mg/mとなるように塗布し、分散媒を乾燥させて、PETフィルム表面に導電性繊維を配置させて、導電性フィルムを作製する。この導電性フィルムの中央部から10mm×10mmの大きさに切り出す。そして、この切り出した導電性フィルムを、45°傾斜を有するSEM試料台(型番「728-45」、日新EM株式会社製、傾斜型試料台45°、φ15mm×10mm M4アルミニウム製)に、銀ペーストを用いて台の面に対し平坦に貼り付ける。さらに、Pt-Pdを20秒~30秒スパッタし、導通を得る。適度なスパッタ膜がないと像が見えにくい場合があるので、その場合は適宜調整する。
【0135】
上記繊維長は、写真を元に実測して求めることができ、また画像データを元に2値化処理して算出してもよい。写真を元に実測する場合、上記と同様の方法によって行うものとする。導電性繊維含有組成物を用いて求められた繊維長と、写真を元にして実測して求めた繊維長は、ほぼ同じ値となる。
【0136】
導電性繊維15としては、導電性炭素繊維、金属繊維、金属被覆有機繊維、金属被覆無機繊維、およびカーボンナノチューブからなる群より選択される少なくとも1種の繊維であることが好ましい。
【0137】
上記導電性炭素繊維としては、例えば、気相成長法炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ、ワイヤーカップ、ワイヤーウォール等が挙げられる。これらの導電性炭素繊維は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0138】
上記金属繊維としては、ステンレススチール、Ag、Cu、Au、Al、Rh、Ir、Co、Zn、Ni、In、Fe、Pd、Pt、Sn、Ti、またはこれらの合金から構成された金属ナノワイヤが好ましく、金属ナノワイヤの中でも、低抵抗値を実現でき、酸化しにくく、また湿式塗布に適している観点から、銀ナノワイヤが好ましい。上記金属繊維としては、例えば、上記金属を細く、長く伸ばす伸線法または切削法により作製された繊維が使用できる。このような金属繊維は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0139】
また金属繊維として、銀ナノワイヤを用いる場合、銀ナノワイヤは、ポリオール(例えば、エチレングリコール)およびポリ(ビニルピロリドン)の存在下で、銀塩(例えば、硝酸銀)の液相還元により合成可能である。均一サイズの銀ナノワイヤの大量生産は、例えば、Xia,Y.et al.,Chem.Mater.(2002)、14、4736-4745およびXia,Y.et al.,Nanoletters(2003)3(7)、955-960に記載される方法に準じて得ることが可能である。
【0140】
金属ナノワイヤの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。例えば、銀ナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833~837;Chem.Mater.,2002,14,4736~4745等、金ナノワイヤの製造方法としては特開2006-233252号公報等、Cuナノワイヤの製造方法としては特開2002-266007号公報等、コバルトナノワイヤの製造方法としては特開2004-149871号公報等を参考にすることができる。
【0141】
上記金属被覆有機繊維としては、例えば、アクリル繊維に金、銀、アルミニウム、ニッケル、チタン等をコーティングした繊維等が挙げられる。このような金属被覆合成繊維は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0142】
<光透過性樹脂>
光透過性樹脂16は、導電部11からの導電性繊維15の脱離を防ぎ、かつ導電部11耐久性や耐擦傷性を向上させるために、導電性繊維15を覆うものであるが、導電部11の表面11Aから電気的な導通が得られる程度に導電性繊維15を覆うものである。具体的には、一部の導電性繊維が、第1の導電部の表面に露出していないと、第1の導電部の表面から電気的な導通が得られないおそれがあるので、光透過性樹脂16は、一部の導電性繊維15が導電部11の表面11Aから露出するように導電性繊維15を覆っていることが好ましい。一部の導電性繊維15が導電部11の表面11Aに露出するように導電性繊維15を光透過性樹脂16で覆うためには、例えば、光透過性樹脂16の厚みを調整すればよい。すなわち、光透過性樹脂の厚みが厚すぎると、全ての導電性繊維が光透過性樹脂に埋もれてしまうことによって、一部の導電性繊維が第1の導電部の表面に露出しなくなってしまい、第1の導電部の表面から電気的な導通が得られないおそれがある。また、光透過性樹脂の厚みが薄すぎると、第1の導電部からの導電性繊維の脱離、第1の導電部の耐久性の悪化、耐擦傷性の低下が生ずるおそれがある。このため、光透過性樹脂の厚みを適度な厚みに調節する必要がある。
【0143】
上記の観点から、光透過性樹脂16の厚みは、300nm未満とすることが好ましい。光透過性樹脂16の厚みは、導電部11の膜厚の測定方法と同様の方法にて測定することができる。光透過性樹脂16の膜厚の上限は、200nm以下、145nm以下、140nm以下、120nm以下、110nm以下、80nm以下、または50nm以下であることがより好ましい。また、光透過性樹脂16の膜厚の下限は、10nm以上であることが好ましい。
【0144】
光透過性樹脂16は、光透過性を有する樹脂であれば、特に限定されないが、光透過性樹脂としては、重合性化合物の重合体や熱可塑性樹脂等が挙げられる。重合性化合物としては、樹脂層12の欄で説明した重合性化合物と同様のものが挙げられるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0145】
<<第2の導電部>>
導電部14は、光透過性基材13における樹脂層12側の第1の面13Aとは反対側の第2の面13Bに直接設けられている。光透過性基材13は、導電部14側に下地層を備えていないことが好ましい。このような構成とすることにより、導電性繊維および分散媒を含む導電性繊維含有組成物を用いて、導電部を形成した場合であっても、導電性繊維が光透過性基材に入り込むことがないので、電気抵抗値の上昇を抑制できる。
【0146】
導電部14は、図2に示されるように、導電部11と同様に、導電性繊維17を含んでいる。導電部14は、導電性繊維17の他、光透過性樹脂18を含んでいる。導電性繊維17は、光透過性樹脂18中に配置されている。導電性繊維17および光透過性樹脂18は、導電性繊維15および光透過性樹脂16と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0147】
導電部14の表面抵抗値は、導電部11の表面抵抗値の±30%以内となっている。導電部14の表面抵抗値は表面14Aにおける表面抵抗値である。導電部14の表面抵抗値は、導電部11の表面抵抗値と同様の方法によって測定するものとする。導電部14の表面抵抗値は、導電部11の表面抵抗値の±20%以内、±15%以内、±10%以内、または±5%以内となっていることがより好ましい。導電部11の表面抵抗値に対する導電部14の表面抵抗値の相違率(%)は、以下の数式(3)によって求めるものとする。
A=(C-B)/B×100 …(3)
上記数式(3)において、Aは第1の導電部の表面抵抗値に対する第2の導電部の表面抵抗値の相違率(%)であり、Bは第1の導電部の表面抵抗値であり、Cは第2の導電部の表面抵抗値である。
【0148】
導電部14の表面抵抗値は、導電部11の欄で記載した理由と同様の理由から、3Ω/□以上1000Ω/□以下となっていることが好ましい。導電部14の表面抵抗値の下限は、5Ω/□以上、または10Ω/□以上であることがより好ましく、また導電部14の表面抵抗値の上限は、100Ω/□以下、70Ω/□以下、60Ω/□以下、または50Ω/□以下であることがより好ましい。
【0149】
導電部14の線抵抗値は、導電部11の線抵抗値の±30%以内となっている。導電部14の線抵抗値は、導電部11の線抵抗値と同様の方法によって測定するものとする。導電部14の線抵抗値は、導電部11の線抵抗値の±20%以内、±15%以内、±10%以内、または±5%以内となっていることがさらに好ましい。なお、任意の第1の方向の電気抵抗値が低くなる一方で、導電部の面内におけるこの第1の方向と直交する第2の方向の電気抵抗値が、第1の方向の電気抵抗値よりも高くなることもあるが、このことを加味しても、導電部14の線抵抗値は導電部11の線抵抗値の±30%以内にある。導電部11の線抵抗値に対する導電部14の線抵抗値の相違率(%)は、以下の数式(4)によって求めるものとする。
D=(F-E)/E×100 …(4)
上記数式(4)において、Dは第1の導電部の線抵抗値に対する第2の導電部の線抵抗値の相違率(%)であり、Eは第1の導電部の線抵抗値であり、Fは第2の導電部の線抵抗値である。
【0150】
導電部14の線抵抗値は、導電部11の欄で記載した理由と同様の理由から、60Ω以上20000Ω以下となっていることが好ましい。導電部14の線抵抗値の下限は、200Ω以上であることがより好ましく、また導電部14の線抵抗値の上限は2000Ω以下であることがより好ましい。
【0151】
導電部14の膜厚は、導電部11の欄で記載した理由と同様の理由から、300nm未満とすることが好ましい。導電部14の膜厚の上限は、薄型化を図る観点および低ヘイズ値等良好な光学特性を得る観点から、200nm以下、145nm、140nm以下、120nm以下、110nm以下、80nm以下、または50nm以下であることがより好ましい。また、導電部14の膜厚の下限は、導電部11の欄で記載した理由と同様の理由から、10nm以上、20nm以上、30nm以上であることがより好ましい。導電部14の膜厚は、導電部11の膜厚と同様の方法によって測定することができる。
【0152】
導電部14のインデンテーション硬さは、導電部11の欄で記載した理由と同様の理由から、導電部11のインデンテーション硬さと同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0153】
上述したように、上記連続折り畳み試験の折り畳み回数を例えば1万回や5万回とする評価では、実用的なレベルでの評価を行うことができないおそれがある。このため、実用的なレベルであるか否かを評価するためには、上記連続折り畳み試験の折り畳み回数は少なくとも10万回で評価する必要がある。また、用途によって、求められる間隔φや折り畳み回数は異なる。一方で、従来においては、導電性繊維やポリイミド系樹脂などの折り畳み性に強い基材を用いれば、間隔φを狭くしても、また折り畳み回数を増やしても、フレキシブル性は良好となると考えられていた。しかしながら、意外にもポリイミド系樹脂からなる基材は、折り畳み試験の条件によって良好なフレキシブル性を維持できない場合もあった。この点に関して、本発明者らが鋭意研究したところ、導電性繊維を含む導電性フィルムにおいて、良好なフレキシブル性を得るためには、各層の膜厚のバランスが重要であることを見出した。
【0154】
具体的には、上記折り畳み試験における上記間隔φが4mm以上で、折り畳み回数が10万回以下の場合には、次に説明する膜厚の範囲が好ましい。光透過性基材13がポリエチレンテレフタレート系樹脂を含む場合には、ポリエチレンテレフタレート系樹脂を含む光透過性基材13の厚みが3μm以上45μm以下であり、樹脂層12の膜厚が0.2μm以上3μm以下であり、導電部11、14の膜厚がそれぞれ10nm以上300nm未満であることが好ましい。また、光透過性基材13がシクロオレフィンポリマー系樹脂を含む場合には、シクロオレフィンポリマー系樹脂を含む光透過性基材13の厚みが3μm以上45μm以下であり、樹脂層12の膜厚が0.2μm以上3μm以下であり、導電部11、14の膜厚がそれぞれ10nm以上300nm未満であることが好ましい。また、光透過性基材13がポリイミド系樹脂を含む場合には、ポリイミド系樹脂を含む光透過性基材13の厚みが3μm以上75μm以下であり、樹脂層12の膜厚が0.2μm以上3μm以下であり、導電部11、14の膜厚がそれぞれ10nm以上300nm未満であることが好ましい。さらに、これらの場合、導電性フィルム10の厚み(総厚)は、5μm以上45μm以下であることが好ましい。
【0155】
上記折り畳み試験における上記間隔φが4mm以上で、折り畳み回数が20万回以下の場合には、次に説明する膜厚の範囲が好ましい。光透過性基材13がシクロオレフィンポリマー系樹脂を含む場合には、シクロオレフィンポリマー系樹脂を含む光透過性基材13の厚みが3μm以上45μm以下であり、樹脂層12の膜厚が0.2μm以上1.5μm以下であり、導電部11、14の膜厚がそれぞれ10nm以上200nm以下であることが好ましい。また、光透過性基材13がポリイミド系樹脂を含む場合には、ポリイミド系樹脂を含む光透過性基材13の厚みが3μm以上75μm以下であり、樹脂層12の膜厚が0.2μm以上1.5μm以下であり、導電部11、14の膜厚がそれぞれ10nm以上200nm以下であることが好ましい。なお、上記折り畳み試験における上記間隔φが4mm以上で、折り畳み回数が20万回以下の場合には、ポリエチレンテレフタレート系樹脂を含む光透過性基材においても、光透過性基材自体の薄膜化によって、ポリエチレンテレフタレート系樹脂を含む光透過性基材13の厚みが5μm以上25μm以下であり、樹脂層12の膜厚が0.2μm以上1.5μm以下であり、導電部11、14の膜厚がそれぞれ10nm以上200nm以下であれば、使用できるが、加工時には保護フィルムを要する場合がある。さらに、これらの場合、導電性フィルム10の厚み(総厚)は、5μm以上35μm以下であることが好ましい。
【0156】
上記折り畳み試験における上記間隔φが2mm以上で、折り畳み回数が30万回以下の場合には、次に説明する膜厚の範囲が好ましい。光透過性基材13がシクロオレフィンポリマー系樹脂を含む場合には、シクロオレフィンポリマー系樹脂を含む光透過性基材13の厚みが3μm以上45μm以下であり、樹脂層12の膜厚が0.2μm以上1.5μm以下であり、導電部11、14の膜厚がそれぞれ10nm以上200nm以下であることが好ましい。この場合の光透過性基材13の厚みの上限は30μm以下であることがより好ましく、樹脂層12の膜厚の上限は、1μm以下または0.7μm以下がより好ましい。なお、上記折り畳み試験における上記間隔φが2mm以上で、折り畳み回数が30万回以下の場合には、ポリエチレンテレフタレート系樹脂やポリイミド系樹脂を含む光透過性基材においても、光透過性基材自体の薄膜化によって、ポリエチレンテレフタレート系樹脂を含む光透過性基材13の厚みが5μm以上15μm以下であり、樹脂層12の膜厚が0.2μm以上1.5μm以下であり、導電部11、14の膜厚がそれぞれ10nm以上200nm以下であれば、またはポリイミド系樹脂を含む光透過性基材13の厚みが5μm以上25μm以下であり、樹脂層12の膜厚が0.2μm以上1.5μm以下であり、導電部11、14の膜厚がそれぞれ10nm以上200nm以下であれば、使用できるが、加工時には保護フィルムを要する場合がある。さらに、この場合、導電性フィルム10の厚み(総厚)は、5μm以上35μm以下であることが好ましく、30μm以下がより好ましい。
【0157】
上記折り畳み試験における上記間隔φが2mm以上で、折り畳み回数が50万回以下の場合には、次に説明する膜厚の範囲が好ましい。光透過性基材13がシクロオレフィンポリマー系樹脂を含む場合には、シクロオレフィンポリマー系樹脂を含む光透過性基材13の厚みが3μm以上30μm以下であり、樹脂層12の膜厚が0.2μm以上1μm以下であり、導電部11、14の膜厚がそれぞれ10nm以上145nm以下であることが好ましい。この場合の光透過性基材13の厚みの上限は、20μm以下がより好ましく、樹脂層12の膜厚の上限は、0.7μm以下がより好ましい。さらに、この場合、導電性フィルム10の厚み(総厚)は、5μm以上25μm以下であることが好ましく、20μm以下がより好ましい。
【0158】
<<<他の導電性フィルム>>>
図1に示される導電性フィルム10は、光透過性基材の片面側にのみ樹脂層を備えているが、図5に示されるように、光透過性基材の両面側に樹脂層を備えていてもよい。具体的には、図5に示される導電性フィルム30は、光透過性基材13と導電部14の間に樹脂層31をさらに備えている。光透過性基材13の両面側に樹脂層12、31を備えることにより、樹脂層の収縮によって生じるカールを抑制できるとともに光透過性基材13から析出する成分を封止できるので、導電性フィルム30の耐久性を向上でき、またパターニング時に光透過性基材13へのダメージを抑制することができる。なお、図2およびそれ以降の図において、図1と同じ符号が付されている部材は、図1で示した部材と同じものであるので、説明を省略するものとする。
【0159】
<<樹脂層>>
図5に示される樹脂層31は、光透過性基材13および導電部14に隣接しているが、隣接していなくともよい。樹脂層31は、樹脂層12と同様であるので、説明を省略するものとする。なお、樹脂層31の成分や膜厚は、樹脂層12の成分や膜厚と同じであってもよいが、異なっていてもよい。
【0160】
上記折り畳み試験における上記間隔φが4mm以上で、折り畳み回数が10万回以下の場合、上記折り畳み試験における上記間隔φが4mm以上で、折り畳み回数が20万回以下の場合、上記折り畳み試験における上記間隔φが2mm以上で、折り畳み回数が30万回以下の場合、上記折り畳み試験における上記間隔φが2mm以上で、折り畳み回数が50万回以下の場合における光透過性基材13の厚み、樹脂層12および導電部11、14の膜厚のバランスは、上記と同様の範囲が好ましい。なお、これらの場合の樹脂層31の膜厚は、樹脂層12の膜厚と同様である。
【0161】
また、図1に示される導電性フィルム10の導電部11、14は、パターニングされていない層状のものであるが、図6に示されるように、導電性フィルムの第1の導電部および第2の導電部は、パターニングされたものであってもよい。図6に示される導電性フィルム40は、第1の導電部41(以下、単に「導電部41」と称することもある。)、樹脂層12、光透過性基材13、および第2の導電部42(以下、単に「導電部42」と称することもある。)をこの順で備えるものである。導電部41、42は、所定の形状にパターニングされているとともに、複数存在している。また、図6に示される導電性フィルム40は、導電部41、42の他に、導電部41間に位置した第1の非導電部43(以下、単に「非導電部43」と称することもある。)および導電部42間に位置した第2の非導電部44(以下、単に「非導電部44」と称することもある。)を有している。
【0162】
導電性フィルム40の表面40Aは、第2の導電部42の表面42Aおよび非導電部44の表面44Aから構成されており、導電性フィルム40における表面40Aとは反対側の面である裏面40Bは、第1の導電部41の表面41Aおよび非導電部43の表面43Aから構成されている。
【0163】
<<第1の導電部>>
導電部41は、図8に示されるように、導電性繊維45を含んでいる。導電部41は、導電性繊維45の他、光透過性樹脂46を含んでいる。ただし、第1の導電部は、導電性繊維を含んでいれば、光透過性樹脂を含んでいなくともよい。導電性繊維45は、光透過性樹脂46中に配置されている。導電性繊維45および光透過性樹脂46は、導電性繊維15および光透過性樹脂16と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0164】
導電部41の表面抵抗値、線抵抗値、および膜厚は、導電部11の欄で記載した理由と同様の理由から、導電部11の表面抵抗値、線抵抗値、および膜厚と同様になっているので、ここでは説明を省略するものとする。
【0165】
導電部41は、投影型静電容量方式のタッチパネルにおけるX方向の電極として機能するものである。図7に示されるように、導電部41は、X方向に延びた複数のセンサ部41Bと、各センサ部41Bに連結した端子部(図示せず)とを備えている。
【0166】
各センサ部41Bは、タッチ位置を検出可能な領域である矩形状のアクティブエリア内に設けられており、端子部は、アクティブエリアに隣接し、アクティブエリアを四方から周状に取り囲む領域である非アクティブエリア内に設けられている。
【0167】
各センサ部41Bは、直線状に延びるライン部41Cと、ライン部41Cから膨出した膨出部41Dとを有している。図7においては、ライン部41Cは、センサ部41Bの配列方向と交差する方向に沿って直線状に延びている。膨出部41Dは光透過性基材13の表面に沿ってライン部41Cから膨らみ出ている部分である。したがって、各センサ部41Bの幅は、膨出部41Dが設けられている部分においては太くなっている。本実施形態においては、膨出部41Dは平面視略正方形状の外輪郭を有している。なお、膨出部41Dは平面視略正方形状に限らず、菱形状、またはストライプ状であってもよい。
【0168】
<<第2の導電部>>
導電部42は、光透過性基材13における樹脂層12側の面とは反対側の面に直接設けられている。図6に示される導電部42も、光透過性基材13に隣接している。
【0169】
第2の導電部42は、図8に示されるように、第1の導電部41と同様に、導電性繊維47を含んでいる。第2の導電部42は、導電性繊維47の他、光透過性樹脂48を含んでいる。導電性繊維47は、光透過性樹脂48中に配置されている。導電性繊維47および光透過性樹脂48は、導電性繊維15および光透過性樹脂16と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0170】
導電部42の表面抵抗値は、導電部41の表面抵抗値の±30%以内となっている。導電部42の表面抵抗値は表面42Aにおける表面抵抗値である。導電部42の表面抵抗値は、導電部11の表面抵抗値と同様の方法によって測定し、また相違率は導電性フィルム10と同様の方法によって算出するものとする。導電部42の表面抵抗値は、導電部11の表面抵抗値の±20%以内、±15%以内、±10%以内、または±5%以内となっていることがさらに好ましい。
【0171】
導電部41の表面抵抗値、線抵抗値、および膜厚は、導電部11の欄で記載した理由と同様の理由から、導電部11の表面抵抗値、線抵抗値、および膜厚と同様になっているので、ここでは説明を省略するものとする。
【0172】
導電部42は、投影型静電容量方式のタッチパネルにおけるY方向の電極として機能するものである。図7に示されるように導電部42は、Y方向に延びた複数のセンサ部42Bと、各センサ部42Bに連結した端子部(図示せず)とを備えている。
【0173】
各センサ部42Bは、タッチ位置を検出可能な領域である矩形状のアクティブエリア内に設けられており、端子部は、アクティブエリアに隣接し、アクティブエリアを四方から周状に取り囲む領域である非アクティブエリア内に設けられている。
【0174】
各センサ部42Bは、直線状に延びるライン部42Cと、ライン部42Cから膨出した膨出部42Dとを有している。図6においては、ライン部42Cは、センサ部42Bの配列方向と交差する方向に沿って直線状に延びている。膨出部42Dは光透過性基材13の表面に沿ってライン部42Cから膨らみ出ている部分である。したがって、各センサ部42Bの幅は、膨出部42Dが設けられている部分においては太くなっている。本実施形態においては、膨出部42Dは平面視略正方形状の外輪郭を有している。なお、膨出部42Dは平面視略正方形状に限らず、菱形状、またはストライプ状であってもよい。
【0175】
<<第1の非導電部および第2の非導電部>>
非導電部43は、導電部41間に位置し、かつ導電性を示さない部分であり、非導電部44は、導電部42間に位置し、かつ導電性を示さない部分である。本明細書においては、非導電部の表面における抵抗値(表面抵抗値)が、1500Ω/□以上であれば、非導電部は導電性を示さないと判断する。図8に示されるように、非導電部43は、光透過性樹脂46を含み、実質的に導電性繊維45を含んでいない。また、非導電部44は、光透過性樹脂48を含み、実質的に導電性繊維47を含んでいない。本明細書における「実質的に」とは、導電性を示さなければ、導電性繊維を若干含んでいてもよいことを意味する。したがって、例えば、導電部からの金属イオンのマイグレーションによって金属イオンが非導電部側に析出した場合であっても、導電性を示さない程度であれば導電性繊維を若干含んでいてもよい。非導電部43は、導電性繊維45を含んでいないことが好ましく、また非導電部44は、導電性繊維47を含んでいないことが好ましい。なお、後述するようにレーザー光で導電性繊維45、47を昇華させることによって、非導電部43、44から導電性繊維45、47を除去する際に、導電性繊維45、47を構成する導電性材料が残存するおそれがあるが、この導電性材料は繊維状ではないので、導電性繊維とはみなさない。
【0176】
非導電部43の厚みは、導電部41と一体的に形成されるので、300nm未満であることが好ましく、また非導電部44の厚みは、導電部42と一体的に形成されるので、300nm未満であることが好ましい。非導電部43、44の膜厚の上限は、薄型化を図る観点および低ヘイズ値等良好な光学特性を得る観点から、200nm以下、145nm以下、140nm以下、120nm以下、110nm以下、80nm以下、または50nm以下であることがより好ましい。また、非導電部43、44の膜厚の下限は、10nm以上、20nm以上、または30nm以上であることがより好ましい。非導電部43、44の厚みは、導電部11の厚みと同様の方法によって測定するものとする。
【0177】
<<導電性フィルムの製造方法>>
導電性フィルム10は、例えば、以下のようにして作製することができる。まず、図9(A)に示されるように、光透過性基材13における第1の面13Aに樹脂層用組成物を塗布し、乾燥させて、上記樹脂層用組成物の塗膜19を形成する。なお、光透過性基材13が片面に下地層を備えている場合には、第1の面13Aは下地層の表面であることが好ましい。
【0178】
樹脂層用組成物を塗布する方法としては、スピンコート、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法等の公知の塗布方法が挙げられる。
【0179】
次いで、図9(B)に示されるように塗膜19に紫外線等の電離放射線を照射し、または加熱して、重合性化合物を重合(架橋)させることにより塗膜19を硬化させて、樹脂層12を形成する。
【0180】
塗膜19を硬化させる際の電離放射線として、紫外線を用いる場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等から発せられる紫外線等が利用できる。また、紫外線の波長としては、190~380nmの波長域を使用することができる。電子線源の具体例としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が挙げられる。
【0181】
樹脂層12を形成した後、樹脂層12を除電する。除電は、例えば、電圧印加式除電器(製品名「SJ-H156A」、キーエンス株式会社製)を用いて行うことができる。なお、上記除電器は、例えば、樹脂層12との距離が50mmとなるように設置してもよい。
【0182】
樹脂層12を除電した後、光透過性基材13の第2の面13Bに、導電性繊維17および分散媒を含む導電性繊維含有組成物を塗布し、乾燥させて、図10(A)に示されるように光透過性基材13の第2の面13Bに複数の導電性繊維17を配置させる。導電性繊維含有組成物は、導電性繊維17および分散媒の他、熱可塑性樹脂や重合性化合物からなる樹脂分を含ませてもよい。本明細書における「樹脂分」とは、樹脂(ただし、導電性繊維を覆う導電性繊維同士の自己溶着や雰囲気中の物質との反応から防ぐため等の、導電性繊維の合成時に導電性繊維周辺に形成された有機保護層を構成する樹脂(例えば、ポリビニルピロリドン等)は含まない)の他、重合性化合物のように重合して樹脂となり得る成分も含む概念である。なお、導電性繊維含有組成物中の樹脂分は、第2の導電部を形成した後においては、光透過性樹脂の一部を構成するものである。
【0183】
分散媒としては、有機系分散媒および水系分散媒のいずれであってもよい。ただし、導電性繊維含有組成物中の樹脂分の含有量が多すぎると、導電性繊維間に樹脂分が入り込んでしまい、導電部の導通が悪化するおそれがある。特に、導電部の膜厚が薄い場合には、導電部の導通が悪化しやすい。一方で、有機系分散媒を用いた方が、水系分散媒を用いる場合よりも導電性繊維含有組成物中の樹脂分が少なくなる。このため、膜厚が薄い、例えば、300nmの膜厚を有する導電部14を形成する場合には、有機分散媒を用いることが好ましい。有機系分散媒は、10質量%未満の水を含んでいてもよい。
【0184】
有機系分散媒としては、特に限定されないが、親水性の有機系分散媒であることが好ましい。有機系分散媒としては、例えば、ヘキサン等の飽和炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;エチレンクロライド、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。これらの中でも、導電性繊維含有組成物の安定性の観点から、アルコール類が好ましい。水系分散媒としては、水が挙げられる。
【0185】
導電性繊維含有組成物に含まれていてもよい熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルキシレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の芳香族系樹脂;ポリウレタン系樹脂;エポキシ系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS);セルロース系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリアセテート系樹脂;ポリノルボルネン系樹脂;合成ゴム;フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0186】
導電性繊維含有組成物に含まれていてもよい重合性化合物としては、樹脂層12の欄で説明した重合性化合物と同様のものが挙げられるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0187】
光透過性基材13の第2の面21Bに複数の導電性繊維17を配置させた後、重合性化合物および溶媒を含む光透過性樹脂用組成物を塗布し、乾燥させて、図10(B)に示されるように光透過性樹脂用組成物の塗膜20を形成する。光透過性樹脂用組成物は、重合性化合物および溶剤を含むが、その他、必要に応じて、重合開始剤や反応抑制剤を添加してもよい。
【0188】
次いで、図11(A)に示されるように、塗膜20に紫外線等の電離放射線を照射して、重合性化合物を重合(架橋)させることにより塗膜20を硬化させて、光透過性樹脂18を形成して、導電部14を形成する。
【0189】
導電部14を形成した後、樹脂層12における光透過性基材13側の面とは反対側の面に、導電性繊維15および分散媒を含む導電性繊維含有組成物を塗布し、乾燥させて、図11(B)に示されるように樹脂層12上に複数の導電性繊維15を配置させる。導電性繊維含有組成物は、導電部14の形成する際に用いた導電性繊維含有組成物と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0190】
樹脂層12上に導電性繊維15を配置させた後、重合性化合物および溶媒を含む光透過性樹脂用組成物を塗布し、乾燥させて、図12(A)に示されるように光透過性樹脂用組成物の塗膜21を形成する。光透過性樹脂用組成物は、導電部14を形成する際に用いた光透過性樹脂組成物と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0191】
次いで、図12(B)に示されるように、塗膜21に紫外線等の電離放射線を照射して、重合性化合物を重合(架橋)させることにより塗膜21を硬化させて、光透過性樹脂16を形成して、導電部11を形成する。これにより、図1に示される導電性フィルム10が形成される。
【0192】
また、図5に示される導電性フィルム30を得る場合には、樹脂層12と同様の方法によって樹脂層31を形成するとともに、樹脂層12と同様の方法によって樹脂層31を除電する。
【0193】
また、図6に示される導電性フィルム40を得る場合には、導電性フィルム10を形成した後、導電部11、14における所定の領域にレーザー光(例えば、赤外線レーザー)を照射して、導電部11、14をそれぞれパターニングする。所定の領域にレーザー光を照射すると、レーザー光の熱によってこの領域に含まれる導電性繊維15、17が昇華する。昇華した導電性繊維15、17は、光透過性樹脂16、18を突き破って光透過性樹脂16、18外に放出される。これにより、図6に示される導電部41、42および非導電部43、44を有する導電性フィルム40を得ることができる。
【0194】
導電性フィルムの一方の面に第1の導電部を設け、他方の面に第2の導電部を設けた場合において、第1の導電部と第2の導電部で電気抵抗値が大きく相違してしまうのは、以下の理由からであると考えられる。まず、樹脂層等を形成するためにロール状の光透過性基材を引き出すが、その際に、光透過性基材は正に帯電してしまう。ここで、引き出した光透過性基材の正電荷を除電装置で除電した場合には、光透過性基材の表面に存在する正電荷は除電されるが、内部に存在する正電荷までは除電されない。このため、樹脂層を形成する前に第2の導電部を形成すると、光透過性基材の内部に残存する正電荷が第2の導電部側に移動し、第2の導電部が正電荷の影響を受けてしまう。一方、第1の導電部は、樹脂層を介しているので、正電荷の影響を受け難く、これにより、第1の導電部と第2の導電部で電気抵抗値が大きく相違してしまうと考えられる。これに対し、本実施形態においては、第2の導電部14を形成する前に樹脂層12を光透過性基材13に形成しているので、光透過性基材13の内部に残存する正電荷は樹脂層12側に移動する。特に、樹脂層12が樹脂として電離放射線重合性化合物の重合物を含む場合には、理由は定かではないが、光透過性基材13の内部に残存する正電荷は樹脂層12側に移動しやすくなる。このため、第2の導電部14を形成したとしても、正電荷の影響を受けにくくなる。また、樹脂層12の膜厚は光透過性基材13の厚みよりも薄いので、第1の導電部11を形成する際に、樹脂層12の表面のみならず内部に存在する正電荷を除電装置で除電することができる。このため、第1の導電部11も、正電荷の影響を受けにくい。これにより、第2の導電部14の表面抵抗値を第1の導電部11の表面抵抗値の±30%以内とすることができ、また第2の導電部14の線抵抗値を第1の導電部11の線抵抗値の±30%以内とすることができるので、第1の導電部11と第2の導電部14の電気抵抗値の相違を低減することができる。また、同様の理由から、光透過性基材13の両面側に樹脂層12、31を備える導電性フィルム30においても、第1の導電部11と第2の導電部14の電気抵抗値の相違を低減することができる。なお、導電部の膜厚も光透過性基材の厚みより薄いので、導電部の形成後に、導電部を除電すれば、正電荷の影響を受けなくなるとも考えられるが、導電部の形成後に、導電部を除電したとしても、除電の効果があまり得られず、表面抵抗値や線抵抗値の相違を低減できないおそれがある。このため、除電は、導電部を形成する前に行う必要がある。
【0195】
樹脂層、光透過性基材、および導電部をこの順で備え、かつ片面のみに導電部を有する導電性フィルムを2枚重ねてタッチパネルとした場合、光透過性基材および樹脂層は2枚用いられ、また導電性フィルム間は粘着層によって貼り付けられている。これに対し、本実施形態においては、導電部11、14を有する導電性フィルム10を用いているので、片面のみに導電部を有する導電性フィルムを2枚重ねて用いた場合に比べて、光透過性基材を1枚、また樹脂層および粘着層を1層ずつ省略することができる。これにより、タッチパネルおよび画像表示装置の薄型化を図ることができる。
【0196】
光透過性基材の表面には微小な凹凸が存在しているので、外部ヘイズが高くなることがあるが、本実施形態によれば、光透過性基材13の第1の面13Aに樹脂層12を備えているので、樹脂層12により光透過性基材13の第1の面13Aに存在する微小な凹凸を埋めることができる。これより、外部ヘイズ値を低下させることができる。また、光透過性基材を加熱すると、光透過性基材からオリゴマー成分が析出し、外部ヘイズ値が上昇し、透明性が失われることがある。これに対し、本実施形態においては、光透過性基材13の第1の面13Aに樹脂層12を形成しているので、光透過性基材13からのオリゴマー成分の析出を抑制することができる。これにより、導電性フィルム10を加熱した場合であっても、導電性フィルム10のヘイズ値の上昇を抑制することができ、透明性を確保することができる。
【0197】
本実施形態によれば、導電性繊維15、17を用いているので、ITOとは異なり、屈曲させたとしても割れ難い導電性フィルム10を提供することができる。このため、導電性フィルム10を折り畳み可能(フォルダブル)な画像表示装置にも組み込んで使用することも可能である。
【0198】
本実施形態に係る導電性フィルムの用途は特に限定されないが、本実施形態の導電性フィルム10、30、40は、例えば、センサ、タッチパネル、画像表示装置に組み込んで使用することが可能である。図13は本実施形態に係る画像表示装置の概略構成図である。図13に示される画像表示装置50は、導電性フィルム40を組み込んだものである。図13において、図6と同じ符号が付されている部材は、図6で示した部材と同じものであるので、説明を省略するものとする。
【0199】
<<<画像表示装置>>>
図13に示されるように、画像表示装置50は、主に、画像を表示するための表示パネル60と、表示パネル60の背面側に配置されたバックライト装置70と、表示パネル60よりも観察者側に配置されたタッチパネル80と、表示パネル60とタッチパネル80との間に介在した光透過性接着層90とを備えている。本実施形態においては、表示パネル60が液晶表示パネルであるので、画像表示装置50がバックライト装置70を備えているが、表示パネル(表示素子)の種類によってはバックライト装置70を備えていなくともよい。また、画像表示装置は、例えば、偏光サングラスによる視認性の低下を抑制するためフィルムをさらに備えていてもよい。
【0200】
<<表示パネル>>
表示パネル60は、図13に示されるように、バックライト装置70側から観察者側に向けて、偏光板61、表示素子62、偏光板63の順に積層された構造を有している。表示パネル60は、表示素子62を備えていればよく、偏光板61、63等は備えていなくともよい。
【0201】
表示素子62は液晶表示素子である。ただし、表示素子62は液晶表示素子に限られず、例えば、有機発光ダイオード(OLED)、無機発光ダイオード、および/または量子ドット発光ダイオード(QLED)を用いた表示素子であってもよい。折り畳み可能な画像表示装置を得る場合、OLEDを用いることが好ましい。液晶表示素子は、2枚のガラス基材間に、液晶層、配向膜、電極層、カラーフィルタ等を配置したものである。
【0202】
<<バックライト装置>>
バックライト装置70は、表示パネル60の背面側から表示パネル60を照明するものである。バックライト装置70としては、公知のバックライト装置を用いることができ、またバックライト装置70はエッジライト型や直下型のバックライト装置のいずれであってもよい。
【0203】
<<タッチパネル>>
タッチパネル80は、導電性フィルム40と、導電性フィルム40より観察者側に配置されたカバーガラス等の光透過性カバー部材81と、導電性フィルム40と光透過性カバー部材81との間に介在した光透過性粘着層82とを備えている。導電性フィルム40は、導電部42が導電部41よりも観察者側となるように配置されている。
【0204】
<光透過性粘着層>
光透過性粘着層82は、例えば、OCA(Optical Clear Adhesive)のような粘着シートが挙げられる。光透過性粘着層82の代わりに、光透過性接着層を用いてもよい。なお、図13に示されるように導電性フィルム40がタッチパネル80に組み込まれている場合、導電性フィルム40の第2の導電部42の表面抵抗値や線抵抗値を測定するには、光透過性粘着層82を剥がす必要があるが、光透過性粘着層82を剥がすと、光透過性粘着層82の一部が第2の導電部42の表面42Aに残存してしまい、表面抵抗値や線抵抗値に影響を及ぼすおそれがあるので、溶剤で表面42Aを洗浄することによって残留物を取り除いた後に第2の導電部42の表面抵抗値や線抵抗値を測定することが好ましい。
【0205】
<<光透過性接着層>>
光透過性接着層90は、例えば、OCR(Optically Clear Resin)のような重合性化合物を含む液状の硬化性接着層用組成物の硬化物から構成されている。
【0206】
[第2の実施形態]
以下、本発明の第2の実施形態に係る保護フィルム付き導電性フィルムについて、図面を参照しながら説明する。図14は本実施形態に係る保護フィルム付き導電性フィルムの概略構成図であり、図15図14に示される保護フィルム付き導電性フィルムの一部の拡大図であり、図16図14に示される保護フィルムの平面図であり、図17図19は本実施形態に係る他の保護フィルム付き導電性フィルムの概略構成図である。
【0207】
<<<保護フィルム付き導電性フィルム>>>
図14に示される保護フィルム付き導電性フィルム110は、導電性フィルム120と、導電性フィルム120の第1の面120Aに剥離可能に設けられた第1の保護フィルム130と、導電性フィルム120における第1の面120Aとは反対側の面である第2の面120Bに剥離可能に設けられた第2の保護フィルム140とを備えている。図14に示される保護フィルム付き導電性フィルム110は、導電性フィルム120の片面(第1の面120A)のみに第1の保護フィルム130が設けられているが、導電性フィルムの両面に第1の保護フィルムが剥離可能に設けられていてもよい。また、導電性フィルムの裏面に第1の保護フィルムを設けずに、導電性フィルムの表面に第1の保護フィルムを設けてもよい。
【0208】
保護フィルム付き導電性フィルム110に対し150℃で60分間加熱する加熱試験を行ったとき、加熱試験後における保護フィルム付き導電性フィルム10のカール量が、±14mm以内となっている。ただし、保護フィルム付き導電性フィルム110のように第1の保護フィルムの他に第2の保護フィルムが設けられている場合には、第2の保護フィルムは耐熱性を有さないので、加熱試験は、第2の保護フィルムを剥離した状態で行うものとする。加熱試験は、縦340mm×横340mmの大きさに切り出した保護フィルム付き導電性フィルム10を用いて行うものとする。加熱試験は、加熱装置(製品名「HISPEC横型 200℃シリーズ」、楠本化成株式会社製)を用いて行うことができる。その際、保護フィルム付き導電性フィルム110を加熱装置内に第1の保護フィルム130が下側となるように配置する。そして、加熱装置から保護フィルム付き導電性フィルム10を取り出し、安定的なカール量を測る観点から加熱終了時から10分経過後に25℃、相対湿度50%の環境下でカール量の測定を行う。保護フィルム付き導電性フィルムのカール量は、加熱試験後の保護フィルム付き導電性フィルムを、下側が第1の保護フィルムとなるように、平らな台の上に置き、保護フィルム付き導電性フィルムの四隅が台から浮き上がる場合には、四隅の浮き上がりの高さの平均値とし、また保護フィルム付き導電性フィルムの中央部が台から浮き上がる場合には、保護フィルム付き導電性フィルムの中央部のうち最も台から離れた箇所の高さとする。なお、台に第1の保護フィルムを下側となるように置いた場合、保護フィルム付き導電性フィルムの上面が凹状にカールする場合を正(+)とし、保護フィルム付き導電性フィルムの上面が凸状にカールする場合を負(-)とする。カール量は、±12mm以内、±10mm以内、±8mm以内、±6mm以内、または±4mm以内であることがより好ましい。
【0209】
保護フィルム付き導電性フィルム110は、所望の大きさにカットされていてもよいが、ロール状であってもよい。保護フィルム付き導電性フィルムが所望の大きさにカットされている場合、保護フィルム付き導電性フィルムの大きさは、特に制限されず、画像表示装置の表示面の大きさに応じて適宜決定される。具体的には、保護フィルム付き導電性フィルムの大きさは、例えば、第1の実施形態で説明した導電性フィルム10の大きさと同様になっていてもよい。
【0210】
<<導電性フィルム>>
導電性フィルム120は、光透過性基材121と、光透過性基材121の第1の面121A側に設けられた第1の導電部122(以下、単に「導電部122」と称することもある。)と、光透過性基材121における第1の面121Aとは反対側の第2の面121B側に設けられた第2の導電部123(以下、単に「導電部123」と称することもある。)とを備えている。導電性フィルム120は、光透過性基材121と導電部122との間に設けられた樹脂層124をさらに備えている。第1の導電部122および第2の導電部123は、パターニングされる前の状態であり、層状となっている。
【0211】
導電性フィルム120の第1の面120Aは、第1の導電部122の表面122Aから構成されており、導電性フィルム120の第2の面120Bは、第2の導電部123の表面123Aから構成されている。以下、導電性フィルム120の性質や物性値等について説明するが、導電性フィルム120の性質や物性値等は、第1の保護フィルム130や第2の保護フィルム140を剥離した導電性フィルム120単体の状態での性質や物性値である。
【0212】
導電性フィルム120は、連続折り畳み試験を行ったとき、導電性フィルム10と同様の結果が得られることが好ましい。連続折り畳み試験は、第1の実施形態で説明した連続折り畳み試験と同様であるので、ここでは、説明を省略するものとする。また、導電性フィルム120は、連続折り畳み試験前は勿論のこと、上記連続折り畳み試験後においも、光透過性基材と樹脂層の間の密着性が維持され、また白濁現象が確認されないことが好ましい。また、導電性フィルム120は、フレキシブル性を有していることが好ましい。
【0213】
導電性フィルム20のヘイズ値(全ヘイズ値)、全光線透過率、鉛筆硬度、イエローインデックス等は、導電性フィルム10と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0214】
導電性フィルム120の厚み(総厚)は、127μm以下であることが好ましい。導電性フィルム120の厚みが、127μm以下であれば、薄型化を図ることができる。導電性フィルムの厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影された導電性フィルムの断面写真から欠点やよれ、剥がれなどのない場所からランダムに10箇所厚みを測定し、測定された厚みの平均値として求めるものとする。導電性フィルム120の厚みの下限は、搬送における折れや傷抑制の観点から、25μm以上であることが好ましく、また導電性フィルム20の厚みの上限は、52μm以下であることがより好ましい。なお、より柔軟性を必要とされるウェアラブルやフレキシブル用途などには、更に薄い厚み(総厚)が7μm以上45μm以下の導電性フィルムであることが好ましく、更には厚みが35μm以下の導電性フィルムがより好ましく、厚みが25μm以下の導電性フィルムが最も好ましい。
【0215】
導電性フィルム120の用途も、導電性フィルム10の用途と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0216】
<<光透過性基材等>>
光透過性基材121は光透過性基材13と同様であり、第1の導電部122は第1の導電部11と同様であり、第2の導電部123は第2の導電部14と同様であり、樹脂層124は、樹脂層12と同様であり、導電性繊維125、127は導電性繊維15、17と同様であり、光透過性樹脂126、127は光透過性樹脂16、18と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0217】
<<第1の保護フィルム>>
第1の保護フィルム130は、耐熱保護フィルムである。本明細書における「耐熱保護フィルム」とは、150℃で60分間の加熱で溶融しないフィルムを意味する。保護フィルムが、150℃で60分間の加熱で溶融しないフィルムであるか否かは、実際に150℃で60分間加熱することによって目視により確認してもよく、または熱機械分析装置(TMA)を用いた分析によって確認することができる。第1の保護フィルム130は、軟化点が150℃以上に存在するものであることが好ましい。第1の保護フィルムの軟化点が150℃以上に存在するか否かは、熱機械分析装置(TMA)を用いた分析によって確認することができる。
【0218】
保護フィルム付き導電性フィルム110の表面110A内の任意の方向を第1の方向D1(図16参照)とし、かつ保護フィルム付き導電性フィルム110の表面110A内における第1の方向D1と直交する方向を第2の方向D2(図16参照)とし、保護フィルム付き導電性フィルム110から第1の保護フィルム130および第2の保護フィルム140を剥離した状態で、導電性フィルム120と第1の保護フィルム130をそれぞれ150℃で60分間加熱したとき、第1の方向D1における第1の保護フィルム130の熱収縮率と第1の方向D1における光透過性基材121の熱収縮率との差(熱収縮率差)の絶対値が0.3%以下であり、第2の方向D2における第1の保護フィルム130の熱収縮率と第2の方向D2における光透過性基材121の熱収縮率との差(熱収縮率差)の絶対値が0.3%以下であることが好ましい。第1の保護フィルム130と光透過性基材121の熱収縮率差がこのような関係であれば、加熱の際に光透過性基材121が収縮したとしても、第1の保護フィルム130も光透過性基材121と同様に収縮するので、カールをより抑制することができる。第1の方向および第2の方向は、保護フィルム付き導電性フィルムの表面内に存在すれば、特に限定されない。なお、導電性フィルムや第1の保護フィルムの第1の方向は、保護フィルム付き導電性フィルムの第1の方向と一致するものであり、導電性フィルムや第1の保護フィルムの第2の方向は、保護フィルム付き導電性フィルムの第2の方向と一致するものである。光透過性基材121の熱収縮率および第1の保護フィルム130の熱収縮率は、縦100mm×横100mmの正方形に切り出した保護フィルム付き導電性フィルムから第1の保護フィルム130を剥離した状態で、導電性フィルム120および第1の保護フィルム130をそれぞれ150℃で60分間加熱する前後で、25℃、相対湿度50%の環境下で第1の方向および第2の方向における長さをそれぞれ測定することによって求めることができる。具体的には、第1の方向および第2の方向における第1の保護フィルムの熱収縮率は、それぞれ以下の数式(5)および(6)によって求める。なお、第1の保護フィルムの熱収縮率を求める際には、第1の保護フィルム1枚に対して第1の方向における長さを3回測定し、3回測定して得られた値の算術平均値を「第1の方向における第1の保護フィルムの長さ」とし、また第1の保護フィルム1枚に対して第2の方向における長さを3回測定し、3回測定して得られた値の算術平均値を「第2の方向における第2の保護フィルムの長さ」とする。第1の方向および第2の方向における光透過性基材121の熱収縮率も、第1の保護フィルム130の熱収縮率と同様の方法によって求めるものとする。加熱は、加熱装置(製品名「HISPEC横型 200℃シリーズ」、楠本化成株式会社製)を用いて行うことができる。また、加熱装置から保護フィルム付き導電性フィルム10を取り出し、加熱終了時から10分経過後に25℃、相対湿度50%の環境下で上記長さを測定する。
第1の方向の熱収縮率(%)=(Lfd0-Lfd1)/Lfd0×100 …(5)
第2の方向の熱収縮率(%)=(Lsd0-Lsd2)/Lsd0×100 …(6)
上記数式(5)中、Lfd0は第1の方向における加熱前の長さであり、Lfd1は第1の方向における加熱後の長さであり、上記数式(6)中、Lsd0は第2の方向における加熱前の長さであり、Lsd2は第2の方向における加熱後の長さである。上記第1の方向D1における第1の保護フィルム130と光透過性基材121の熱収縮率差の絶対値は、0.25%以下、0.2%以下、または0.18%以下であることがより好ましい。上記第2の方向D2における第1の保護フィルム130と光透過性基材121の熱収縮率差の絶対値は、0.25%以下、0.2%以下、または0.18%以下であることがより好ましい。
【0219】
光透過性基材121の熱収縮率にもよるが、第1の方向D1および第2の方向D2における第1の保護フィルム130と光透過性基材121の熱収縮率差の絶対値をそれぞれ0.3%以下にする観点から、上記第1の方向および第2の方向における第1の保護フィルム130の上記熱収縮率はそれぞれ±0.7%以内であることが好ましく、±0.6%以内であることがより好ましい。
【0220】
第1の保護フィルム130が第1の方向D1および第2の方向D2ともに正の熱収縮率を有し、光透過性基材121の第1の方向D1および第2の方向D2の少なくともいずれかが負の熱収縮率を有し、かつ第1の方向D1および第2の方向D2における第1の保護フィルム130と光透過性基材121の熱収縮率差の絶対値がそれぞれ0.05%以上0.3%以下であることが特に好ましい。この場合、加熱工程によるカールを効率的により低減できる。また、第1の方向D1および第2の方向D2における上記熱収縮率差の絶対値が0.05%以上であることで、カール量をより低減できる。ただし、第1の方向D1および第2の方向D2における上記熱収縮率差の絶対値が0.3%を超えてしまうと、逆向きのカールや保護フィルム付き導電性フィルムの中央部で浮きが生じるおそれがある。この場合、第1の方向D1および第2の方向D2における上記熱収縮率差の絶対値はそれぞれ0.07%以上0.3%以下であることがより好ましい。
【0221】
第1の保護フィルム130の厚みは、光透過性基材121の厚みの300%以下であることが好ましい。第1の保護フィルム130の厚みが、光透過性基材121の厚みの300%以下であれば、後工程において傷や折れ等が無く搬送できる。第1の保護フィルムは薄い方がフレキシブル性は良好であるが、薄すぎると、第1の方向および第2の方向における第1の保護フィルムと光透過性基材の熱収縮率差の絶対値が0.3%を超えるおそれがある。このため、第1の保護フィルム130の厚みの下限は、光透過性基材121の厚みの10%以上であることが好ましい。さらに、第1の保護フィルム130の厚みは、光透過性基材121の厚みの20%以上250%以下であることが好ましく、30%以上250%以下であることがより好ましい。第1の保護フィルム130の厚みが、光透過性基材121の厚みの20%以上250%以下であれば、第1の方向D1および第2の方向D2における第1の保護フィルム130の熱収縮率がそれぞれ±0.7%以内になりやすく、第1の方向D1および第2の方向D2における上記熱収縮率差の絶対値がそれぞれ0.3%以下になりやすいためにカールをより抑制できる。
【0222】
具体的には、第1の保護フィルム130の厚みは、25μm以上150μm以下であることが好ましい。第1の保護フィルム130の厚みが25μm以上であれば、導電性フィルム120を保護する機能を十分に発揮することができ、また第1の保護フィルム130の厚みが150μm以下であれば、ロール径の肥大および搬送時の第1の保護フィルム130の剥離を抑制できる。第1の保護フィルム130の厚みは、光透過性基材121の厚みと同様の方法によって測定することができる。第1の保護フィルム130の厚みの下限は、フィルム搬送時の折れを抑制できる観点から、50μm以上であることが好ましく、上限は125μm以下が好ましい。第1の保護フィルム130の厚みは、光透過性基材13の厚みの測定方法と同様の方法によって測定することができる。
【0223】
第1の保護フィルム130は、樹脂基材と樹脂基材の一方の面側に設けられた粘着層から構成することが可能である。第1の保護フィルム130の樹脂基材を構成する樹脂としては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。例えば、光透過性基材121がポリエステル系樹脂からなる基材である場合には、カールをより抑制する観点から、ポリエステル系樹脂から樹脂基材を構成することが好ましい。なお、第1の保護フィルムとして、自己粘着型の樹脂フィルムを用いてもよい。
【0224】
<<第2の保護フィルム>>
第2の保護フィルム140は、非耐熱保護フィルムである。本明細書における「非耐熱保護フィルム」とは、150℃で60分間の加熱で溶融するフィルムを意味する。保護フィルムが、150℃で60分間の加熱で溶融するフィルムであるか否かは、実際に150℃で60分間加熱することによって確認してもよく、また熱機械分析装置(TMA)を用いた分析によって確認することができる。第2の保護フィルム140は、導電性フィルム20の傷付き防止や巻き取りを良好する機能を有する。
【0225】
第2の保護フィルム140の厚みは、20μm以上100μm以下であることが好ましい。第2の保護フィルム140の厚みが20μm以上であれば、導電性フィルムを保護する機能を充分に発揮することができ、また第2の保護フィルム140の厚みが100μm以下であれば、ロール径の肥大および搬送時の第2の保護フィルム140の剥離を抑制できる。第2の保護フィルム140の厚みは、光透過性基材121の厚みと同様の方法によって測定することができる。第2の保護フィルム140の下限は、導電性フィルムに対して皺無く貼り付けることができる観点から、30μm以上がより好ましく、上限は60μm以下がより好ましい。第2の保護フィルム140の厚みは、光透過性基材13の厚みの測定方法と同様の方法によって測定することができる。
【0226】
第2の保護フィルム140は、自己粘着型の樹脂フィルムから構成することが可能である。第2の保護フィルム140の樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。なお、第2の保護フィルムとして、樹脂基材と樹脂基材の一方の面側に設けられた粘着層とを備える保護フィルムを用いてもよい。
【0227】
<<<他の保護フィルム付き導電性フィルム>>>
図14に示される保護フィルム付き導電性フィルム110は、光透過性基材121の片面側にのみ樹脂層124を備えているが、図17に示されるように、光透過性基材の両面側に樹脂層を備えていてもよい。具体的には、図17に示される保護フィルム付き導電性フィルム160における導電性フィルム170は、光透過性基材121と導電部123の間に樹脂層171をさらに備えている。
【0228】
<<樹脂層>>
樹脂層171は、樹脂層12と同様であるので、説明を省略するものとする。なお、樹脂層171の膜厚は、樹脂層124の膜厚と同じであってもよいが、異なっていてもよい。
【0229】
図14に示される保護フィルム130は、樹脂基材と粘着層を備えているが、第1の保護フィルムとしては、樹脂基材と、樹脂基材の一方の面側に設けられた樹脂層とを備えている保護フィルムであってもよい。具体的には、図18に示される保護フィルム付き導電性フィルム180は、導電性フィルム120と、導電性フィルム120の第1の面120Aに剥離可能に設けられた第1の保護フィルム190と、導電性フィルム120における第1の面120Aとは反対側の面である第2の面120Bに剥離可能に設けられた第2の保護フィルム140とを備えている。図18に示される保護フィルム付き導電性フィルム180は、導電性フィルム120の片面(第1の面120A)のみに第1の保護フィルム190が設けられているが、導電性フィルムの両面に第1の保護フィルムが剥離可能に設けられていてもよい。また、導電性フィルムの裏面に第1の保護フィルムを設けずに、導電性フィルムの表面に第1の保護フィルムを設けてもよい。なお、図18において、図14と同じ符号が付されている部材は、図14で示した部材と同じものであるので、説明を省略するものとする。
【0230】
保護フィルム付き導電性フィルム180に対し150℃で60分間加熱する加熱試験を行ったとき、加熱試験後における保護フィルム付き導電性フィルム180のカール量が、保護フィルム付き導電性フィルム110と同様となっているので、ここでは説明を省略するものとする。
【0231】
<<第1の保護フィルム>>
第1の保護フィルム190は、耐熱保護フィルムであり、樹脂基材191と、樹脂基材191の一方の面側に設けられた樹脂層192とを備えている。第1の保護フィルム190は、樹脂層192が導電部122側となるように剥離可能に導電性フィルム120に設けられている。
【0232】
保護フィルム付き導電性フィルム180の表面180Aの任意の方向を第1の方向とし、かつ保護フィルム付き導電性フィルム180の表面180A内における第1の方向と直交する方向を第2の方向とし、保護フィルム付き導電性フィルム180から第1の保護フィルム190および第2の保護フィルム140を剥離した状態で、導電性フィルム120と第1の保護フィルム190をそれぞれ150℃で60分間加熱したとき、上記第1の方向における第1の保護フィルム190の熱収縮率と上記第1の方向における光透過性基材121の熱収縮率との差の絶対値は、保護フィルム付き導電性フィルム110と同様となっている。
【0233】
<<樹脂基材>>
樹脂基材191としては、特に限定されず、例えば、第1の保護フィルム130の樹脂基材と同様のものであってもよい。
【0234】
<<樹脂層>>
樹脂層192は、例えば、ハードコート層となっている。樹脂層192の膜厚は1μm以上10μm以下であることが好ましい。樹脂層192の膜厚が1μm以上であれば、所望の硬度を得ることができ、また、樹脂層192の膜厚が10μm以下であれば、折り曲げた際にクラックが発生し難く、また容易に取り扱うことができる。樹脂層192の膜厚は、光透過性基材13の厚みの測定方法と同様の方法にて測定することができる。樹脂層192の膜厚の下限は、樹脂層192の割れを抑制する観点から、4μm以上であることがより好ましい。また、樹脂層192の上限は、樹脂層192の薄膜化を図る一方で、カールの発生を抑制する観点から、7μm以下であることがより好ましい。
【0235】
樹脂層192は、少なくとも樹脂から構成することが可能である。なお、樹脂層192は、樹脂の他に、添加剤としてシリコーン系化合物やフッ素系化合物を含んでいることが好ましい。
【0236】
<樹脂>
樹脂層192における樹脂としては、電離放射線重合性化合物の重合体(硬化物、架橋物)を含むものが挙げられる。電離放射線重合性化合物としては、電離放射線重合性化合物として、アルキレンオキサイド非変性電離放射線重合性化合物と、アルキレンオキサイド変性電離放射線重合性化合物とを含むことが好ましい。アルキレンオキサイド変性電離放射線重合性化合物は、導電部122との密着性を低下させる性質を有しているので、アルキレンオキサイド変性電離放射線重合性化合物を用いることで、導電部122に対し所望の密着性を確保できるとともに、樹脂層192における導電部122への密着性を調整することができる。
【0237】
(アルキレンオキサイド非変性電離放射線重合性化合物)
アルキレンオキサイド非変性電離放射線重合性化合物は、アルキレンオキサイドで変性されていない化合物である。本明細書における「アルキレンオキサイド非変性」とは、電離放射線重合性化合物中に、エチレンオキサイド(-CH-CH-O-)、プロピレンオキサイド(-CH-CH-CH-O-)などのアルキレンオキサイドを有しない構造を意味する。アルキレンオキサイド非変性電離放射線重合性化合物としては、特に限定されないが、樹脂層12の樹脂の欄で挙げられた電離放射線重合性化合物が挙げられる。
【0238】
(アルキレンオキサイド変性電離放射線重合性化合物)
アルキレンオキサイド変性電離放射線重合性化合物は、アルキレンオキサイドで変性された化合物である。本明細書における「アルキレンオキサイド変性」とは、電離放射線重合性化合物中に、エチレンオキサイド(-CH-CH-O-)、プロピレンオキサイド(-CH-CH-CH-O-)などのアルキレンオキサイドを有する構造を意味するものとする。アルキレンオキサイドとしては、保護フィルム190の剥離力の観点から、炭素数2~4個のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド)であることが好ましく、特に炭素数2~3個のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド)であることが好ましく、さらには炭素数2個のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド)であることが好ましい。
【0239】
アルキレンオキサイド変性電離放射線重合性化合物の含有量は、アルキレンオキサイド非変性電離放射線重合性化合物100質量部に対し30質量部以上90質量部以下であることが好ましい。アルキレンオキサイド変性電離放射線重合性化合物の含有量が、30質量部以上であれば、導電部122と樹脂層192の間の界面で容易に剥離することができ、またアルキレンオキサイド変性電離放射線重合性化合物の含有量が、90質量部以下であれば、所望の密着性を確保することができる。
【0240】
アルキレンオキサイド変性電離放射線化合物としては、特に限定されないが、樹脂層12の樹脂の欄で挙げられた電離放射線重合性化合物をアルキレンオキサイドで変性させた化合物が挙げられる。これらの中でも、保護フィルム190の剥離力の観点から、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0241】
<シリコーン系化合物>
シリコーン系化合物は、導電部122に対し樹脂層192を剥がれやすくするための成分である。樹脂層192が、シリコーン系化合物を含むことにより、導電部122における樹脂層192との界面付近にシリコーン系化合物が偏在するので、導電部122と樹脂層192の間の界面で保護フィルム190を容易に剥離することができる。
【0242】
シリコーン系化合物は、重合性官能基を有するものであってもよい。シリコーン系化合物として重合性官能基を有するシリコーン系化合物を用いた場合には、シリコーン系化合物は樹脂層32層中においては樹脂と結合した状態で存在する。
【0243】
シリコーン系化合物としては、特に限定されないが、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサン等のストレートシリコーンや変性シリコーンが挙げられる。
【0244】
変性シリコーンとしては、例えば、(メタ)アクリル変性シリコーン等のエチレン性不飽和基変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アミド変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン等が挙げられる。
【0245】
シリコーン系化合物の含有量は、電離放射線重合性化合物100質量部に対し0.05質量部以上1質量部以下であることが好ましい。シリコーン系化合物の含有量が、0.05質量部以上であれば、導電部122と樹脂層192との界面で保第1の護フィルム190を容易に剥離することができ、またシリコーン系化合物の含有量が、1質量部以下であれば、導電部122と樹脂層192との界面において所望の密着性を確保することができる。
【0246】
シリコーン系化合物の市販品としては、例えば、セイカビーム10-28(大日精化工業社製)やBYK-313、BYK-322、BYK-331、BYK-333、BYK-345、BYK-377、BYK-378、BYK-UV3500、BYK-UV3510(いずれもビックケミー・ジャパン社製)等が挙げられる。
【0247】
<フッ素系化合物>
フッ素系化合物は、導電部122に対し樹脂層192を剥がれやすくするための成分である。樹脂層192が、フッ素系化合物を含むことにより、導電部122における樹脂層192との界面付近にフッ素系化合物が偏在するので、導電部122と樹脂層192の間の界面で保護フィルム190を容易に剥離することができる。
【0248】
フッ素系化合物は、重合性官能基を有するものであってもよい。フッ素系化合物として重合性官能基を有するフッ素系化合物を用いた場合には、フッ素系化合物は第2の樹脂層32層中においては樹脂と結合した状態で存在する。
【0249】
フッ素系化合物の含有量は、電離放射線重合性化合物100質量部に対し0.05質量部以上1質量部以下であることが好ましい。フッ素系化合物の含有量が、0.05質量部以上であれば、導電部122と樹脂層192との界面で第1の保護フィルム190を容易に剥離することができ、またフッ素系化合物の含有量が、1質量部以下であれば、導電部122と樹脂層192との界面において所望の密着性を確保することができる。
【0250】
フッ素化合物の市販品としては、例えば、F-568、F-556、F-554、F-553(いずれもDIC株式会社製)等が挙げられる。
【0251】
図18に示される第1の保護フィルム190は、樹脂基材191を備えているが、第1の保護フィルムとしては、図19に示されるように、樹脂基材を備えていない保護フィルムであってもよい。具体的には、図19に示される保護フィルム付き導電性フィルム200は、導電性フィルム120と、導電性フィルム120の第1の面120Aに剥離可能に設けられた第1の保護フィルム210と、導電性フィルム120における第1の面120Aとは反対側の面である第2の面120Bに剥離可能に設けられた第2の保護フィルム140とを備えているが、第1の保護フィルム210は樹脂層から構成されており、樹脂基材を備えていない。図19に示される保護フィルム付き導電性フィルム200は、導電性フィルム120の片面(第1の面120A)のみに第1の保護フィルム210が設けられているが、導電性フィルムの両面に第1の保護フィルムが剥離可能に設けられていてもよい。また、導電性フィルムの裏面に第1の保護フィルムを設けずに、導電性フィルムの表面に第1の保護フィルムを設けてもよい。なお、図19において、図14と同じ符号が付されている部材は、図14で示した部材と同じものであるので、説明を省略するものとする。
【0252】
保護フィルム付き導電性フィルム200に対し150℃で60分間加熱する加熱試験を行ったとき、加熱試験後における保護フィルム付き導電性フィルム200のカール量は、保護フィルム付き導電性フィルム110と同様になっているので、ここでは説明を省略するものとする。
【0253】
<<第1の保護フィルム>>
第1の保護フィルム210は、耐熱保護フィルムであり、樹脂層から構成されている。第1の保護フィルム210は、剥離可能に導電性フィルム120に設けられている。
【0254】
保護フィルム付き導電性フィルム200の表面200A内の任意の方向を第1の方向とし、かつ保護フィルム付き導電性フィルム200の表面200A内における第1の方向と直交する方向を第2の方向とし、保護フィルム付き導電性フィルム200から第1の保護フィルム210および第2の保護フィルム140を剥離した状態で、導電性フィルム120と第1の保護フィルム210をそれぞれ150℃で60分間加熱したとき、上記第1の方向における第1の保護フィルム210の熱収縮率と上記第1の方向における光透過性基材121の熱収縮率との差の絶対値は、保護フィルム付き導電性フィルム110と同様になっているので、ここでは説明を省略するものとする。
【0255】
第1の保護フィルム210は、樹脂層192と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0256】
<<保護フィルム付き導電性フィルムの製造方法>>
保護フィルム付き導電性フィルム110は、例えば、以下のようにして作製することができる。まず、第1の実施形態と同様にして、導電性フィルム120を得る。導電性フィルム120を形成した後、導電部122の表面122Aに第1の保護フィルム130を剥離可能に設ける。これにより、保護フィルム付き導電性フィルム110が得られる。
【0257】
また、保護フィルム付き導電性フィルム180を得る場合には、まず、導電性フィルム120を用意する。一方で、樹脂基材191の一方の面に樹脂層用組成物を塗布し、乾燥させて、樹脂層用組成物の塗膜を形成する。塗膜の乾燥は、例えば、40℃以上150℃以下の温度で行うことが可能である。なお、塗膜の乾燥の際には、加熱しなくともよい。
【0258】
樹脂層用組成物は、電離放射線重合性化合物を含むが、シリコーン系化合物をさらに含むことが好ましい。電離放射線重合性化合物は、アルキレンオキサイド非変性電離放射線重合性化合物とアルキレンオキサイド変性電離放射線重合性化合物との混合物であることが好ましい。樹脂層用組成物は、その他、必要に応じて、溶剤、重合開始剤を含んでいてもよい。
【0259】
塗膜を形成した後、導電部122が塗膜に接するように塗膜に導電性フィルム120を接触させる。次いで、塗膜に導電性フィルム120を接触させた状態で、塗膜に電離放射線を照射することにより塗膜を硬化させる。これにより、樹脂層192が形成されるとともに、導電性フィルム120に密着した剥離可能な第1の保護フィルム190を有する保護フィルム付き導電性フィルム180が得られる。
【0260】
さらに、保護フィルム付き導電性フィルム200を得る場合には、まず、導電性フィルム120を用意する。そして、導電部122の表面に樹脂層用組成物を塗布し、乾燥させて、樹脂層用組成物の塗膜を形成する。塗膜の乾燥は、例えば、40℃以上150℃以下の温度で行うことが可能である。なお、塗膜の乾燥の際には、加熱しなくともよい。樹脂層用組成物は、保護フィルム付き導電性フィルム200の樹脂層192を作成する際に用いる樹脂層用組成物と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0261】
塗膜を形成した後、塗膜に電離放射線を照射することにより塗膜を硬化させる。これにより、導電性フィルム120に密着した剥離可能な第1の保護フィルム210を有する保護フィルム付き導電性フィルム200が得られる。
【0262】
<<保護フィルム付き導電性フィルムの用途>>
保護フィルム付き導電性フィルム110、180、200の用途は、特に限定されないが、例えば、センサやタッチパネル等が挙げられる。保護フィルム付き導電性フィルム110、180、200を、タッチパネルのセンサとして用いる場合、保護フィルム付き導電性フィルム110、180、200は、例えば、以下のようにして加工される。まず、保護フィルム付き導電性フィルム110、180、200から第2の保護フィルム140を剥離して、導電性フィルム120および第1の保護フィルム130、190、210からなる積層体を得る。積層体は、搬送による導電性フィルム120の傷付き防止のために、第1の保護フィルム130、190、210はライン接触側(下側)になるように配置される。積層体を得た後、150℃で60分間加熱して、光透過性基材121を予め熱収縮させる。
【0263】
次いで、導電部123の表面123Aに導電性ペーストをスクリーン印刷等によって塗布する。導電性ペーストとしては、例えば、銀ペーストが挙げられる。導電性ペーストを塗布した後、130℃で30分間加熱して、導電性ペーストを焼成して、取出配線を形成する。
【0264】
取出配線を形成した後、導電部123における所定の領域にレーザー光(例えば、赤外線レーザー)を照射して、導電部123をパターニングする。所定の領域にレーザー光を照射すると、レーザー光の熱によってこの領域に含まれる導電性繊維125が昇華し、昇華した導電性繊維125は、光透過性樹脂26を突き破って光透過性樹脂126外に放出される。これにより、導電部123が所定形状にパターニングされる。
【0265】
その後、導電性フィルム120から第1の保護フィルム130を剥離し、上記と同様の手順で、取出配線の形成および導電部122のパターニングを行う。
【0266】
本実施形態によれば、導電性フィルム120の片面(第1の面120A)に耐熱保護フィルムである第1の保護フィルム130を剥離可能に設けられているので、導電性フィルム120を150℃で60分間加熱する際に第1の保護フィルム130を剥離せずに加熱することができる。また、保護フィルム付き導電性フィルム110、180、200を150℃で60分間加熱したとき、加熱後の保護フィルム付き導電性フィルム110、180、200のカール量が、±14mm以内となっている。これにより、導電性フィルム120のカールを低減できる。なお、光透過性基材の両面に樹脂層を形成した場合には、上記カール量が小さくなるとも考えられるが、実際は小さくならなかった。これは、樹脂層を光透過性基材の両面に形成する際には、一度に形成すると、量産性に劣るため、片面ずつ形成することになるが、片面ずつ樹脂層を形成すると、一方の樹脂層は、自身の硬化の際および他の樹脂層の硬化の際に合計2回電離放射線が照射されることになり、1回のみ電離放射線が照射される他の樹脂層とは、膜質が異なる。このため、先に形成される樹脂層には、後に形成される樹脂層よりも内部の歪みが大きく、加熱の際にこの歪みが影響して、カールしてしまうものと考えられる。カールの問題は、特に、光透過性基材の厚みが薄い場合、具体的には、125μm以下の場合に顕著になるので、光透過性基材13の厚みが、125μm以下の場合に特に有効である。また、導電性フィルムの両面に第1の保護フィルムを剥離可能に設けた場合であっても、上記と同様に、第1の保護フィルムを剥離せずに加熱を行うことができるので、導電性フィルム120の加熱時のカールを低減できる。
【0267】
また、導電性フィルム120の厚みが薄いが、導電性フィルム120の第1の面120Aに第1の保護フィルム130が剥離可能に設けられているので、第1の保護フィルム130を設けた状態で取り扱うことができ、これにより容易に取り扱うことができる。
【0268】
金属ナノワイヤからなる導電部を導電性フィルムの両面に形成すると、両方の導電部を同じように形成したとしても、一方の導電部の電気抵抗値が、他方の導電部の電気抵抗値よりも極めて大きくなってしまう。これは、以下の理由からであると考えられる。まず、ハードコート層等を形成するためにロール状の光透過性基材を引き出すが、その際に、光透過性基材は正に帯電してしまう。ここで、引き出した光透過性基材の正電荷を除電装置で除電した場合には、光透過性基材の表面に存在する正電荷は除電されるが、内部に存在する正電荷までは除電されない。このため、樹脂層を形成する前に第2の導電部を形成すると、光透過性基材の内部に残存する正電荷が第2の導電部側に移動し、第2の導電部が正電荷の影響を受けてしまう。一方、第1の導電部は、樹脂層を介しているので、正電荷の影響を受け難く、これにより、第1の導電部と第2の導電部で電気抵抗値が大きく相違してしまうと考えられる。これに対し、本実施形態においては、第2の導電部123を形成する前に樹脂層124を光透過性基材121に形成しているので、光透過性基材121の内部に残存する正電荷は樹脂層124側に移動する。このため、第2の導電部123を形成したとしても、正電荷の影響を受けにくくなる。また、樹脂層124の膜厚は光透過性基材121の厚みよりも薄いので、第1の導電部122を形成する際に、樹脂層124の表面のみならず内部に存在する正電荷を除電装置で除電することができる。このため、第1の導電部122も、正電荷の影響を受けにくい。これにより、第2の導電部123の表面抵抗値を第1の導電部122の表面抵抗値の±30%以内とすることができ、また第2の導電部123の線抵抗値を第1の導電部122の線抵抗値の±30%以内とすることができるので、第1の導電部122と第2の導電部123の電気抵抗値の相違を低減することができる。また、同様の理由から、光透過性基材121の両面側に樹脂層124、171を備える導電性フィルム170においても、第1の導電部122と第2の導電部123の電気抵抗値の相違を低減することができる。
【0269】
樹脂層、光透過性基材、および導電部をこの順で備え、かつ片面のみに導電部を有する導電性フィルムを2枚重ねてタッチパネルとした場合、光透過性基材および樹脂層は2枚用いられ、また導電性フィルム間は粘着層によって設けられている。これに対し、本実施形態においては、導電部122、123を有する導電性フィルム120を用いているので、片面のみに導電部を有する導電性フィルムを2枚重ねて用いた場合に比べて、光透過性基材を1枚、また樹脂層および粘着層を1層ずつ省略することができる。これにより、タッチパネルおよび画像表示装置の薄型化を図ることができる。
【0270】
光透過性基材の表面には微小な凹凸が存在しているので、外部ヘイズが高くなることがあるが、本実施形態によれば、光透過性基材121の第1の面121Aに樹脂層124を備えているので、樹脂層24により光透過性基材121の第1の面121Aに存在する微小な凹凸を埋めることができる。これより、外部ヘイズ値を低下させることができる。また、光透過性基材を加熱すると、光透過性基材からオリゴマー成分が析出し、外部ヘイズ値が上昇し、透明性が失われることがある。これに対し、本実施形態においては、光透過性基材121の第1の面121Aに樹脂層124を形成しているので、光透過性基材121からのオリゴマー成分の析出を抑制することができる。これにより、導電性フィルム120を加熱した場合であっても、導電性フィルム120のヘイズ値の上昇を抑制することができ、透明性を確保することができる。
【0271】
本実施形態によれば、導電性繊維125、127を用いているので、ITOとは異なり、屈曲させたとしても割れ難い導電性フィルム120を提供することができる。このため、導電性フィルム120を折り畳み可能(フォルダブル)な画像表示装置にも組み込んで使用することも可能である。折り畳み可能な画像表示装置は、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を備えていてもよい。
【実施例
【0272】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの記載に限定されない。
【0273】
<ハードコート層用組成物の調製>
まず、下記に示す組成となるように各成分を配合して、ハードコート層用組成物を得た。
(ハードコート層用組成物1)
・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(製品名「KAYARAD-PET-30」、日本化薬株式会社製):15質量部
・ポリメチルメタクリレート(ポリマー、重量平均分子量75,000):15質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア(登録商標)184」、BASFジャパン社製):1.5質量部
・メチルエチルケトン(MEK):50質量部
・シクロヘキサノン:18.5質量部
【0274】
(ハードコート層用組成物2)
・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(製品名「KAYARAD-PET-30」、日本化薬株式会社製):15質量部
・ポリメチルメタクリレート(ポリマー、重量平均分子量75,000):15質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア(登録商標) OXE01」、BASFジャパン社製):1.5質量部
・メチルエチルケトン(MEK):50質量部
・シクロヘキサノン:18.5質量部
【0275】
(ハードコート層用組成物3)
・エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート(製品名「BPE-20」、第一工業製薬社製、2官能):25質量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(製品名「KAYARAD PET-30」、日本化薬社製):25質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア(登録商標)184」、BASFジャパン社製):4質量部
・シリコーン系化合物(製品名「セイカビーム10-28(MB)」、大日精化工業社製):0.1質量部
・メチルイソブチルケトン(MIBK):100質量部
【0276】
<銀ナノワイヤ含有組成物の調製>
(銀ナノワイヤ含有組成物1)
還元剤としてエチレングリコール(EG)を、有機保護剤としてポリビニルピロリドン(PVP:平均分子量130万、アルドリッチ社製)を使用し、下記に示した核形成工程と粒子成長工程とを分離して粒子形成を行い、銀ナノワイヤ含有組成物を調製した。
【0277】
1.核形成工程
反応容器内で160℃に保持したEG液100mLを攪拌しながら、硝酸銀のEG溶液(硝酸銀濃度:1.0モル/L)2.0mLを、一定の流量で1分間かけて添加した。その後、160℃で10分間保持しながら銀イオンを還元して銀の核粒子を形成した。反応液は、ナノサイズの銀微粒子の表面プラズモン吸収に由来する黄色を呈しており、銀イオンが還元されて銀の微粒子(核粒子)が形成されたことを確認した。続いて、PVPのEG溶液(PVP濃度:3.0×10-1モル/L)10.0mLを一定の流量で10分間かけて添加した。
【0278】
2.粒子成長工程
上記核形成工程を終了した後の核粒子を含む反応液を、攪拌しながら160℃に保持し、硝酸銀のEG溶液(硝酸銀濃度:1.0×10-1モル/L)100mLと、PVPのEG溶液(PVP濃度:3.0×10-1モル/L)100mLを、ダブルジェット法を用いて一定の流量で120分間かけて添加した。この粒子成長工程において、30分毎に反応液を採取して電子顕微鏡で確認したところ、核形成工程で形成された核粒子が時間経過に伴ってワイヤ状の形態に成長しており、粒子成長工程における新たな微粒子の生成は認められなかった。
【0279】
3.脱塩水洗工程
粒子成長工程を終了した反応液を室温まで冷却した後、分画分子量0.2μmの限外濾過膜を用いて脱塩水洗処理を施すとともに、溶媒をエタノールに置換した。最後に液量を100mLまで濃縮して、銀ナノワイヤ分散液を調製した。最後に、銀ナノワイヤ濃度が0.1質量%となるようにエタノールで希釈し、銀ナノワイヤ含有組成物1を得た。
【0280】
銀ナノワイヤ含有組成物1中における銀ナノワイヤの繊維径および繊維長を測定したところ、銀ナノワイヤの繊維径は30nmであり、繊維長は15μmであった。銀ナノワイヤの繊維径は、透過型電子顕微鏡(TEM)(製品名「H-7650」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用い、10万倍~20万倍にて50枚撮像し、TEM付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の導電性繊維の繊維径を実測し、その算術平均値として求めた。上記繊維径の測定の際には、加速電圧を「100kV」、エミッション電流を「10μA」、集束レンズ絞りを「1」、対物レンズ絞りを「0」、観察モードを「HC」、Spotを「2」とした。また、銀ナノワイヤの繊維長は、走査型電子顕微鏡(SEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用い、500~2000万倍にて100本の銀ナノワイヤの繊維長を測定し、その100本の銀ナノワイヤの繊維長の算術平均値として求めた。上記繊維長の測定の際には、信号選択を「SE」、加速電圧を「3kV」、エミッション電流を「10μA」、SE検出器を「混合」とした。銀ナノワイヤの繊維長は、走査型電子顕微鏡(SEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)のSEM機能を用い、500~2000万倍にて10枚撮像し、付属のソフトウェアにより撮像画面上で、100本の銀ナノワイヤの繊維長を測定し、その100本の銀ナノワイヤの繊維長の算術平均値として求めた。上記繊維長の測定の際には、45°傾斜の試料台を使用して、信号選択を「SE」、加速電圧を「3kV」、エミッション電流を「10μA~20μA」、SE検出器を「混合」、プローブ電流を「Norm」、焦点モードを「UHR」、コンデンサレンズ1を「5.0」、W.D.を「8mm」、Tiltを「30°」にした。なお、TE検出器は予め抜いておいた。銀ナノワイヤの繊維径を測定する際には、以下の方法によって作製された測定用サンプルを用いた。まず、銀ナノワイヤ含有組成物1を、組成物の分散媒に合わせてエタノールで銀ナノワイヤの濃度を0.05質量%以下に希釈した。さらに、この希釈した銀ナノワイヤ含有組成物1をTEMまたはSTEM観察用のカーボン支持膜付きグリッドメッシュ(Cuグリッド型番「♯10-1012 エラスチックカーボンELS-C10 STEM Cu100Pグリッド仕様」)上に1滴滴下し、室温で乾燥させ、上記条件で観察し、観察画像データとした。これを元に算術平均値を求めた。銀ナノワイヤの繊維長を測定する際には、以下の方法によって作製された測定用サンプルを用いた。まず、銀ナノワイヤ含有組成物1をB5サイズの厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの未処理面に塗布量10mg/mとなるように塗布し、分散媒を乾燥させて、PETフィルム表面に導電性繊維を配置させて、導電性フィルムを作製した。この導電性フィルムの中央部から10mm×10mmの大きさに切り出した。そして、この切り出した導電性フィルムを、45°傾斜を有するSEM試料台(型番「728-45」、日新EM株式会社製、傾斜型試料台45°、φ15mm×10mm M4アルミニウム製)に、銀ペーストを用いて台の面に対し平坦に貼り付けた。さらに、Pt-Pdを20秒~30秒スパッタして、導通を得た。なお、以下の銀ナノワイヤの繊維径および繊維長も同様にして求めた。
【0281】
(銀ナノワイヤ含有組成物2)
銀ナノワイヤの濃度を0.2質量%にしたこと以外は、銀ナノワイヤ含有組成物1と同様にして、銀ナノワイヤ含有組成物2を得た。
【0282】
(銀ナノワイヤ含有組成物3)
粒子成長工程において、マイクロ波を用いたこと以外は、銀ナノワイヤ含有組成物1と同様にして、銀ナノワイヤ含有組成物3を得た。銀ナノワイヤ含有組成物3中における銀ナノワイヤの繊維径および繊維長を測定したところ、銀ナノワイヤの繊維径は26nmであり、繊維長は16μmであった。
【0283】
<光透過性樹脂用組成物の調製>
下記に示す組成となるように各成分を配合して、光透過性樹脂用組成物1を得た。
(光透過性樹脂用組成物1)
・ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(製品名「KAYARAD-PET-30」、日本化薬株式会社製):5質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア(登録商標)184」、BASFジャパン社製):0.25質量部
・メチルエチルケトン(MEK):70質量部
・シクロヘキサノン:24.75質量部
【0284】
<<実施例Aおよび比較例A>>
<実施例A1>
まず、光透過性基材としての片面のみに下地層を有する厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「コスモシャイン(登録商標)A4100」、東洋紡株式会社製)を準備し、ポリエチレンテレフタレートフィルムの下地層の表面に、ハードコート層組成物1を塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚2μmのハードコート層を形成した。
【0285】
ハードコート層を形成した後、ハードコート層を除電した。除電は、電圧印加式除電器(製品名「SJ-H156A」、キーエンス株式会社製)を用いて行われた。上記除電器は、ハードコート層との距離が50mmとなるように設置された。
【0286】
ハードコート層を除電した後、ポリエチレンテレフタレートフィルムにおける下地層側の面とは反対側の未処理面に、銀ナノワイヤ含有組成物1を塗布量10mg/mとなるように塗布した。次いで、塗布した銀ナノワイヤ含有組成物1に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて銀ナノワイヤ含有組成物1中の分散媒を蒸発させることにより、上記未処理面に、複数の銀ナノワイヤを配置させた。
【0287】
次いで、銀ナノワイヤを覆うように上記光透過性樹脂用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚100nmの光透過性樹脂を形成し、光透過性樹脂および光透過性樹脂中に配置された銀ナノワイヤからなる膜厚100nmの第2の導電部を得た。
【0288】
第2の導電部を形成した後、ハードコート層の表面に、銀ナノワイヤ含有組成物1を塗布量10mg/mになるように塗布した。次いで、塗布した銀ナノワイヤ含有組成物1に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて銀ナノワイヤ含有組成物1中の分散媒を蒸発させることにより、ハードコート層の表面に、複数の銀ナノワイヤを配置させた。
【0289】
次いで、銀ナノワイヤを覆うように上記光透過性樹脂用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚100nmの光透過性樹脂を形成し、光透過性樹脂および光透過性樹脂中に配置された銀ナノワイヤからなる膜厚100nmの第1の導電部を得て、導電性フィルムを得た。
【0290】
実施例A1に係る第1の導電部および第2の導電部の膜厚は、走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影された導電部の断面写真からランダムに10箇所厚みを測定し、測定された10箇所の厚みの算術平均値とした。具体的な断面写真の撮影は、以下の方法によって行われた。まず、導電性フィルムから断面観察用のサンプルを作製した。詳細には、2mm×5mmに切り出した導電性フィルムをシリコーン系の包埋板に入れ、エポキシ系樹脂を流し込み、導電性フィルム全体を樹脂にて包埋した。その後、包埋樹脂を65℃で12時間以上放置して、硬化させた。その後、ウルトラミクロトーム(製品名「ウルトラミクロトーム EM UC7」、ライカ マイクロシステムズ社製)を用いて、送り出し厚み100nmに設定し、超薄切片を作製した。作製した超薄切片をコロジオン膜付メッシュ(150)にて採取し、STEM用サンプルとした。その後、走査透過型電子顕微鏡(STEM)(製品名「S-4800(TYPE2)」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、STEM用サンプルの断面写真を撮影した。この断面写真の撮影の際には、検出器(選択信号)を「TE」、加速電圧を30kV、エミッションを「10μA」にした。倍率については、フォーカスを調節しコントラストおよび明るさを各層が見分けられるか観察しながら5000倍~20万倍で適宜調節した。好ましい倍率は、1万倍~5万倍、更に好ましくは2.5万倍~4万倍である。倍率を上げすぎると層界面の画素が粗くなりわかりにくくなるため、膜厚測定においては倍率を上げすぎない方がよい。なお、断面写真の撮影の際には、さらに、アパーチャーをビームモニタ絞り3、対物レンズ絞りを3にし、またW.D.を8mmにした。実施例A1のみならず、以降の実施例および比較例も全て、第1の導電部の膜厚、第2の導電部の膜厚、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の基材の厚み、およびハードコート層の膜厚は、この方法によって測定された。ただし、基材およびハードコート層の断面写真を撮影する際には、倍率を100~2万倍で適宜調節した。
【0291】
<実施例A2>
実施例A2においては、銀ナノワイヤ含有組成物1の代わりに銀ナノワイヤ含有組成物2を用いて、第1の導電部および第2の導電部を形成したこと以外は、実施例A1と同様にして、導電性フィルムを得た。
【0292】
<実施例A3>
実施例A3においては、ポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、厚さ25μmのシクロオレフィンポリマーフィルム(製品名「ゼオノアフィルム(登録商標)ZF16」、日本ゼオン株式会社製)を用い、またハードコート層用組成物1の代わりに、ハードコート層用組成物2を用いたこと以外は、実施例A1と同様にして、導電性フィルムを得た。
【0293】
<実施例A4>
実施例A4においては、ポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、上記化学式(1)で表される構造を有する厚さ50μmのポリイミドフィルムを用いこと以外は、実施例A1と同様にして、導電性フィルムを得た。なお、このポリイミドフィルムは、公知のポリイミドフィルムの製造方法によって製造することができる。
【0294】
<実施例A5>
まず、光透過性基材としての両面に下地層を有する厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「コスモシャイン(登録商標)A4300」、東洋紡株式会社製)を準備し、ポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の下地層の表面に、ハードコート層組成物1を塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚2μmのハードコート層を形成した。また、同様に、ポリエチレンテレフタレートフィルムの他方の下地層の表面に、膜厚2μmのハードコート層を形成した。
【0295】
両面にハードコート層を形成した後、両方のハードコート層を除電した。除電は、実施例A1と同様の方法および条件によって行われた。
【0296】
ハードコート層を除電した後、一方のハードコート層の表面に、銀ナノワイヤ含有組成物1を塗布量10mg/mとなるように塗布した。次いで、塗布した銀ナノワイヤ含有組成物1に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて銀ナノワイヤ含有組成物1中の分散媒を蒸発させることにより、このハードコート層の表面に、複数の銀ナノワイヤを配置させた。
【0297】
次いで、銀ナノワイヤを覆うように上記光透過性樹脂用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚100nmの光透過性樹脂を形成し、光透過性樹脂および光透過性樹脂中に配置された銀ナノワイヤからなる膜厚100nmの第2の導電部を得た。
【0298】
第2の導電部を形成した後、他方のハードコート層の表面に、銀ナノワイヤ含有組成物1を塗布量10mg/mになるように塗布した。次いで、塗布した銀ナノワイヤ含有組成物1に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて銀ナノワイヤ含有組成物1中の分散媒を蒸発させることにより、このハードコート層の表面に、複数の銀ナノワイヤを配置させた。
【0299】
次いで、銀ナノワイヤを覆うように上記光透過性樹脂用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚100nmの光透過性樹脂を形成し、光透過性樹脂および光透過性樹脂中に配置された銀ナノワイヤからなる膜厚100nmの第1の導電部を得て、導電性フィルムを得た。
【0300】
<実施例A6>
実施例A6においては、実施例A1の導電性フィルムを形成した後に、第1の導電部および第2の導電部の所定の領域に、以下の条件でレーザー光を照射し、この領域に存在する銀ナノワイヤを昇華させて除去することにより、第1の導電部および第2の導電部をパターニングしたこと以外は、実施例A1と同様にして、導電性フィルムを得た。パターニング後の第1の導電部および第2の導電部は複数存在し、それぞれの第1の導電部および第2の導電部は幅5mmの直線状であり、第1の導電部間および第2の導電部間には、幅30μmの非導電部がそれぞれ形成されていた。
(レーザー光照射条件)
・種類:YVO
・波長:1064nm
・パルス幅:8~10ns
・周波数:100kHz
・スポット径:30μm
・パルスエネルギー:16μJ
・加工速度:1200mm/s
【0301】
<実施例A7>
実施例A7においては、実施例A2の導電性フィルムを形成した後に、第1の導電部および第2の導電部の所定の領域に、実施例A3と同様の条件でレーザー光を照射し、第1の導電部および第2の導電部をパターニングしたこと以外は、実施例A2と同様にして、導電性フィルムを得た。パターニング後の第1の導電部および第2の導電部は複数存在し、それぞれの第1の導電部および第2の導電部は幅5mmの直線状であり、第1の導電部間および第2の導電部間には、幅30μmの非導電部がそれぞれ形成されていた。
【0302】
<実施例A8>
実施例A8においては、両方のハードコート層の膜厚をそれぞれ1μmにしたこと以外は、実施例A5と同様にして、導電性フィルムを得た。
【0303】
<実施例A9>
実施例A9においては、両面に下地層を有する厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「コスモシャイン(登録商標)A4300」、東洋紡株式会社製)の代わりに、両面に下地層を有する厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「コスモシャイン(登録商標)A4300」、東洋紡株式会社製)を用いたこと以外は、実施例A8と同様にして、導電性フィルムを得た。
【0304】
<実施例A10>
実施例A10においては、ポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、厚さ50μmのシクロオレフィンポリマーフィルム(製品名「ゼオノアフィルム(登録商標)ZF16」、日本ゼオン株式会社製)を用い、またハードコート層用組成物1の代わりに、ハードコート層用組成物2を用いたこと以外は、実施例A8と同様にして、導電性フィルムを得た。
【0305】
<実施例A11>
実施例A11においては、ポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、厚さ25μmのシクロオレフィンポリマーフィルム(製品名「ゼオノアフィルム(登録商標)ZF16」、日本ゼオン株式会社製)を用い、またハードコート層用組成物1の代わりに、ハードコート層用組成物2を用いたこと以外は、実施例A8と同様にして、導電性フィルムを得た。
【0306】
<実施例A12>
実施例A12においては、ポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、上記化学式(1)で表される構造を有する厚さ80μmのポリイミドフィルムを用いたこと以外は、実施例A8と同様にして、導電性フィルムを得た。
【0307】
<実施例A13>
実施例A13においては、ポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、上記化学式(1)で表される構造を有する厚さ30μmのポリイミドフィルムを用いたこと以外は、実施例A8と同様にして、導電性フィルムを得た。
【0308】
<比較例A1>
比較例A1においては、ハードコート層を除電しなかったこと以外は、実施例A1と同様にして、導電性フィルムを得た。
【0309】
<比較例A2>
まず、光透過性基材としての片面のみに下地層を有する厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「コスモシャイン(登録商標)A4100」、東洋紡株式会社製)を準備し、ポリエチレンテレフタレートフィルムにおける下地層側の面とは反対側の未処理面に、銀ナノワイヤ含有組成物1を塗布量10mg/mになるように塗布した。次いで、塗布した銀ナノワイヤ含有組成物1に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて銀ナノワイヤ含有組成物1中の分散媒を蒸発させることにより、上記未処理面に、複数の銀ナノワイヤを配置させた。
【0310】
次いで、銀ナノワイヤを覆うように上記光透過性樹脂用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚が100nmの光透過性樹脂を形成し、光透過性樹脂および光透過性樹脂中に配置された銀ナノワイヤからなる第2の導電部を得た。
【0311】
第2の導電部を形成した後、ポリエチレンテレフタレートフィルムの下地層の表面に、ハードコート層組成物1を塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚2μmのハードコート層を形成した。
【0312】
ハードコート層を形成した後、ハードコート層を除電せずに、ハードコート層の表面に、銀ナノワイヤ含有組成物1を塗布量10mg/mになるように塗布した。次いで、塗布した銀ナノワイヤ含有組成物1に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて銀ナノワイヤ含有組成物1中の分散媒を蒸発させることにより、ハードコート層の表面に、複数の銀ナノワイヤを配置させた。
【0313】
次いで、銀ナノワイヤを覆うように上記光透過性樹脂用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚100nmの光透過性樹脂を形成し、光透過性樹脂および光透過性樹脂中に配置された銀ナノワイヤからなる膜厚100nmの第1の導電部を得て、導電性フィルムを得た。
【0314】
<比較例A3>
比較例A3においては、銀ナノワイヤ含有組成物1の代わりに銀ナノワイヤ含有組成物2を用いて、第1の導電部および第2の導電部を形成したこと以外は、比較例A1と同様にして、導電性フィルムを得た。
【0315】
<比較例A4>
比較例A4においては、銀ナノワイヤ含有組成物1の代わりに銀ナノワイヤ含有組成物2を用いて、第1の導電部および第2の導電部を形成したこと以外は、比較例A2と同様にして、導電性フィルムを得た。
【0316】
<比較例A5>
比較例A5においては、比較例A1の導電性フィルムを形成した後に、第1の導電部および第2の導電部の所定の領域に、実施例A3と同様の条件でレーザー光を照射し、第1の導電部および第2の導電部をパターニングしたこと以外は、比較例A1と同様にして、導電性フィルムを得た。パターニング後の第1の導電部および第2の導電部は複数存在し、それぞれの第1の導電部および第2の導電部は幅5mmの直線状であり、第1の導電部間および第2の導電部間には、幅30μmの非導電部がそれぞれ形成されていた。
【0317】
<比較例A6>
比較例A6においては、比較例A2の導電性フィルムを形成した後に、第1の導電部および第2の導電部の所定の領域に、実施例A3と同様の条件でレーザー光を照射し、第1の導電部および第2の導電部をパターニングしたこと以外は、比較例A2と同様にして、導電性フィルムを得た。パターニング後の第1の導電部および第2の導電部は複数存在し、それぞれの第1の導電部および第2の導電部は幅5mmの直線状であり、第1の導電部間および第2の導電部間には、幅30μmの非導電部がそれぞれ形成されていた。
【0318】
<比較例A7>
比較例A7においては、比較例A3の導電性フィルムを形成した後に、第1の導電部および第2の導電部の所定の領域に、実施例A6と同様の条件でレーザー光を照射し、第1の導電部および第2の導電部をパターニングしたこと以外は、比較例A3と同様にして、導電性フィルムを得た。パターニング後の第1の導電部および第2の導電部は複数存在し、それぞれの第1の導電部および第2の導電部は幅5mmの直線状であり、第1の導電部間および第2の導電部間には、幅30μmの非導電部がそれぞれ形成されていた。
【0319】
<比較例A8>
比較例A8においては、比較例A4の導電性フィルムを形成した後に、第1の導電部および第2の導電部の所定の領域に実施例A6と同様の条件でレーザー光を照射し、第1の導電部および第2の導電部をパターニングしたこと以外は、比較例A4と同様にして、導電性フィルムを得た。パターニング後の第1の導電部および第2の導電部は複数存在し、それぞれの第1の導電部および第2の導電部は幅5mmの直線状であり、第1の導電部間および第2の導電部間には、幅30μmの非導電部がそれぞれ形成されていた。
【0320】
<表面抵抗値相違率>
実施例A1~A5、A8~A13および比較例A1~A4に係る導電性フィルムの第1の導電部および第2の導電部の表面抵抗値をそれぞれ測定し、第2の導電部の表面抵抗値が、第1の導電部の表面抵抗値に対してどの程度異なるか相違率を求めた。具体的には、JIS K7194:1994(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)に準拠した接触式の抵抗率計(製品名「ロレスタAX MCP-T370型」、株式会社三菱化学アナリテック製、端子形状:ASPプローブ)を用いて、温度23℃および相対湿度50%の環境下で、第1の導電部および第2の導電部の表面抵抗値をそれぞれ測定した。表面抵抗値の測定は、縦80mm×横50mmの大きさに切り出した導電性フィルムを平らなガラス板上に測定する導電部側が上面となり、かつ導電性フィルムが均一な平面状態となるように配置して、ASPプローブを導電部の中心に配置し、全ての電極ピンを導電部に均一に押し当てることによって行った。接触式の抵抗率計による測定の際には、シート抵抗を測定するモードであるΩ/□を選択した。その後は、スタートボタンを押し、ホールドして、測定結果を得た。第1の導電部および第2の導電部の表面抵抗値の測定箇所は、それぞれ導電性フィルムの中心部の3箇所とし、表面抵抗値は、それぞれ3箇所の表面抵抗値の算術平均値とした。表面抵抗値の測定は、23℃および相対湿度55%の環境下で行った。そして、得られた第1の導電部および第2の導電部の表面抵抗値を用いて、上記数式(3)によって、第1の導電部の表面抵抗値に対する第2の導電部の表面抵抗値の相違率(%)を求めた。
【0321】
<線抵抗値相違率>
実施例A1~A13および比較例A1~A8に係る導電性フィルムの第1の導電部および第2の導電部の線抵抗値をそれぞれ測定し、第2の導電部の線抵抗値が、第1の導電部の線抵抗値に対してどの程度異なるか相違率を求めた。線抵抗値は、導電性フィルムから幅5mm×長さ100mmの長方形形状に切り出したサンプルの長手方向の両端部にテスター(製品名「Digital MΩ Hitester 3454-11」、日置電機株式会社製)のプローブ端子を接触させることによって測定した。具体的には、Digital MΩ Hitester 3454-11は、2本のプローブ端子(赤色プローブ端子および黒色プローブ端子、両方ともピン形)を備えているので、赤色プローブ端子を第1の導電部の一方の端部に接触させ、かつ黒色プローブ端子を第1の導電部の他方の端部に接触させて第1の導電部の線抵抗値を測定した。また、第1の導電部と同様にして、第2の導電部の線抵抗値を測定した。なお、線抵抗値の測定は、温度23℃および相対湿度50%の環境下で行われた。そして、得られた第1の導電部および第2の導電部の線抵抗値を用いて、上記数式(4)によって、第1の導電部の線抵抗値に対する第2の導電部の線抵抗値の相違率を求めた。
【0322】
<全光線透過率測定>
上記実施例A1~A13および比較例A1~A8に係る導電性フィルムについて、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、村上色彩技術研究所製)を用いて、温度23℃および相対湿度50%の環境下で、JIS K7361:1997に従って全光線透過率を測定した。全光線透過率は、導電性フィルムを50mm×100mmの大きさに切り出した後、カールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で第1の導電部側が光源側となるように設置し、導電性フィルム1枚に対して3回測定して得られた値の算術平均値とした。
【0323】
<ヘイズ測定>
上記実施例A1~A13および比較例A1~A8に係る導電性フィルムにおいて、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、村上色彩技術研究所製)を用いて、温度23℃および相対湿度50%の環境下で、JIS K7136:2000に従って導電性フィルムのヘイズ値(全ヘイズ値)を測定した。ヘイズ値は、導電性フィルムを50mm×100mmの大きさに切り出した後、カールや皺がなく、かつ指紋や埃等がない状態で第1の導電部側が光源側となるように設置し、導電性フィルム1枚に対して3回測定して得られた値の算術平均値とした。
【0324】
<フレキシブル性>
(1)連続折り畳み試験前後の抵抗値評価
実施例A8~A13に係る導電性フィルムにおいて、連続折り畳み試験を行い、連続折り畳み試験前後の抵抗値を評価した。具体的には、連続折り畳み試験前の導電性フィルムから縦125mm×横50mmの長方形状のサンプルを切り出した。導電性フィルムからサンプルを切り出した後、それぞれのサンプルの長手方向の第1の導電部の両端部および第2の導電部の両端部のそれぞれ縦10mm×横50mmの部分に銀ペースト(製品名「DW-520H-14」、東洋紡株式会社製)を塗布し、130℃で30分加熱して、第1の導電部の両端部および第2の導電部の両端部に硬化した銀ペーストを形成した。なお、第1の導電部の両端部間の距離および第2の導電部の両端部間の距離は、それぞれ105mmで一定とした。そして、連続折り畳み試験前のサンプルの第1の導電部の電気抵抗値をテスター(製品名「Digital MΩ Hitester 3454-11」、日置電機株式会社製)を用いて、測定した。具体的には、Digital MΩ Hitester 3454-11は、2本のプローブ端子(赤色プローブ端子および黒色プローブ端子、両方ともピン形)を備えているので、赤色プローブ端子を第1の導電部の一方の端部に設けられた硬化した銀ペーストに接触させ、かつ黒色プローブ端子を第1の導電部の他方の端部に設けられた硬化した銀ペーストのそれぞれに接触させて、温度23℃および相対湿度50%の環境下で電気抵抗値を測定した。また、第1の導電部と同様にして、連続折り畳み試験前のサンプルの第2の導電部の電気抵抗値を測定した。その後、耐久試験機(製品名「DLDMLH-FS」、ユアサシステム機器株式会社製、IEC62715-6-1準拠)に、サンプルの短辺(50mm)側を固定部でそれぞれ固定し、図3(C)に示したように対向する2つの辺部の最小の間隔φが4mm(屈曲部の外径4mm)となるようにして取り付け、第1の導電部側が内側(第2の導電部が外側)となるようにサンプルを10万回繰り返し180°折り畳む連続折り畳み試験を行った。また、同様に、実施例9、11、13に係る導電性フィルムから上記と同様のサンプルを作製し、サンプルの短辺側を固定部でそれぞれ固定し、対向する2つの辺部の最小の間隔φが4mm(屈曲部の外径4mm)となるようにして取り付け、第1の導電部側が内側(第2の導電部が外側)となるようにサンプルを20万回繰り返し180°折り畳む連続折り畳み試験を行った。さらに、実施例9、11、13に係る導電性フィルムから上記と同様のサンプルを作製し、サンプルの短辺側を固定部でそれぞれ固定し、対向する2つの辺部の最小の間隔φが3mm(屈曲部の外径3mm)となるようにして取り付け、第1の導電部側が内側(第2の導電部が外側)となるようにサンプルを30万回繰り返し180°折り畳む連続折り畳み試験を行った。連続折り畳み試験を行った後、連続折り畳み試験後のサンプルにおいて、連続折り畳み試験前のサンプルと同様にして、第1の導電部および第2の導電部の電気抵抗値をそれぞれ測定した。そして、連続折り畳み試験前のサンプルの第1の導電部の電気抵抗値に対する連続折り畳み試験後のサンプルの第1の導電部の電気抵抗値の比である電気抵抗値比(連続折り畳み試験後のサンプルの第1の導電部の電気抵抗値/連続折り畳み試験前のサンプルの第1の導電部の電気抵抗値)を求めた。また、連続折り畳み試験前のサンプルの第2の導電部の電気抵抗値に対する連続折り畳み試験後のサンプルの第2の導電部の電気抵抗値の比である電気抵抗値比(連続折り畳み試験後のサンプルの第2の導電部の電気抵抗値/連続折り畳み試験前のサンプルの第2の導電部の電気抵抗値)を求めた。そして、連続折り畳み試験の結果を、以下の基準で評価した。なお、電気抵抗値比は、3回測定して得られた値の算術平均値とした。
◎:第1の導電部および第2の導電部のいずれにおいても、電気抵抗値比が1.5以下であった。
○:第1の導電部および第2の導電部のいずれか一方の電気抵抗値比が1.5以下であったが、他方の電気抵抗値比が1.5を超え、3以下であった。
×:第1の導電部および第2の導電部のいずれかの電気抵抗値比が3を超えていた。
【0325】
(2)連続折り畳み試験後の折り癖評価
実施例A8~A13に係る導電性フィルムにおいて、連続折り畳み試験後の外観を観察して、導電性フィルムの屈曲部に折り癖が生じているか評価した。連続折り畳み試験は、<連続折り畳み試験前後の表面抵抗値評価>の欄に記載されている方法によって行われた。折り癖の観察は、温度23℃および相対湿度50%の環境下で、目視で行った。折り癖の観察の際には、白色照明の明室(800ルクス~2000ルクス)で、屈曲部を透過光および反射光によって満遍なく観察するともに、折り畳んだときに屈曲部における内側であった部分および外側であった部分を両方観察した。折り癖の観察においては、観察すべき位置が容易に把握できるように、連続折り畳み試験前のサンプルを耐久試験機の固定部に設置し、1回折り畳んだときに、図4に示したように、屈曲部における折り畳み方向に直交する方向に位置する両端に、屈曲部であることを示す目印を油性ペンで付けておいた。また、連続折り畳み試験後に、連続折り畳み試験後に耐久試験機から取り外した状態で、屈曲部の上記両端の目印同士を結んだ線を油性ペンで引いておいた。そして、折り癖の観察においては、屈曲部の上記両端の目印とこの目印同士を結ぶ線とで形成される領域である屈曲部全体を目視観察した。なお、連続折り畳み試験前における各導電性フィルムの屈曲部となる領域を観察したところ、折り癖は観察されなかった。評価基準は、以下の通りであった。
○:連続折り畳み試験後においても、導電性フィルムに折り癖が観察されなかった。
△:連続折り畳み試験後において、導電性フィルムに折り癖が若干観察されたが、実使用上問題のないレベルであった。
×:連続折り畳み試験後において、導電性フィルムに折り癖が明確に観察された。
【0326】
(3)連続折り畳み試験後のマイクロクラック評価
実施例A8~A13に係る導電性フィルムにおいて、連続折り畳み試験後の外観を観察して、導電性フィルムの屈曲部にマイクロクラックが生じているか評価した。連続折り畳み試験は、<連続折り畳み試験前後の表面抵抗値評価>の欄に記載されている方法によって行われた。マイクロクラックの観察は、温度23℃および相対湿度50%の環境下で、デジタルマイクロスコープ(製品名「VHX-5000」、キーエンス株式会社製)を用いて行った。具体的には、まず、連続折り畳み試験後のサンプルをゆっくり広げ、マイクロスコープのステージにテープでサンプルを固定した。このとき、折り癖が強い場合には、観察部分がなるべく平らになるようにする。ただし、サンプルの中央付近の観察予定部(屈曲部)は手で触れず、力が加わらない程度する。次いで、折り畳んだときの内側となる部分および外側となる部分を両方観察した。マイクロクラックの観察は、デジタルマイクロスコープの照明としてリング照明を選択し、倍率200倍で、暗視野および反射光で行った。マイクロクラックの観察においては、観察すべき位置が容易に把握できるように、連続折り畳み試験前のサンプルを耐久試験機の固定部に設置し、1回折り畳んだときに、図4に示したように、屈曲部における折り畳み方向と直交する方向に位置する両端に、屈曲部であることを示す目印を油性ペンで付けておいた。また、連続折り畳み試験後に、連続折り畳み試験後に耐久試験機から取り外した状態で、屈曲部の上記両端の目印同士を結んだ線を油性ペンで引いておいた。そして、マイクロクラックの観察においては、マイクロスコープ視野範囲の中心が屈曲部の中央となるようにマイクロスコープの位置を合わせた。なお、連続折り畳み試験前における各導電性フィルムの屈曲部となる領域を観察したところ、マイクロクラックは観察されなかった。評価基準は、以下の通りであった。
(マイクロクラック)
○:連続折り畳み試験後においても、導電性フィルムにマイクロクラックが観察されなかった。
△:連続折り畳み試験後において、導電性フィルムにマイクロクラックが若干観察されたが、実使用上問題のないレベルであった。
×:連続折り畳み試験後において、導電性フィルムにマイクロクラックが明確に観察された。
【0327】
以下、結果を表1および表2に示す。
【表1】
【0328】
【表2】
【0329】
比較例A1~A4に係る導電性フィルムにおいては、第2の導電部の表面抵抗値が、第1の導電部の表面抵抗値の±30%の範囲を超えていたので、第1の導電部の電気抵抗値と第2の導電部の電気抵抗値の相違が抑制されていなかった。これに対し、実施例A1~A5、A8~A13に係る導電性フィルムにおいては、第2の導電部の表面抵抗値が、第1の導電部の表面抵抗値の±30%以内であったので、第1の導電部の電気抵抗値と第2の導電部の電気抵抗値の相違が抑制されていた。
【0330】
また、比較例A1~A8に係る導電性フィルムにおいては、第2の導電部の線抵抗値が、第1の導電部の線抵抗値の±30%の範囲を超えていたので、第1の導電部の電気抵抗値と第2の導電部の電気抵抗値の相違が抑制されていなかった。これに対し、実施例A1~A13に係る導電性フィルムにおいては、第2の導電部の線抵抗値が、第1の導電部の線抵抗値の±30%以内であったので、第1の導電部の電気抵抗値と第2の導電部の電気抵抗値の相違が抑制されていた。
【0331】
実施例A9に係る導電性フィルムは、実施例A8に係る導電性フィルムよりもポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みが薄い場合に、実施例A8に係る導電性フィルムよりもフレキシブル性に優れていた。また、実施例A11に係る導電性フィルムは、実施例A10に係る導電性フィルムよりも、シクロオレフィンポリマーフィルムの厚みが薄い場合に、実施例A10に係る導電性フィルムよりもフレキシブル性に優れていた。実施例A13に係る導電性フィルムは、実施例A12に係る導電性フィルムよりもポリイミドフィルムの厚みが薄い場合に、実施例A12に係る導電性フィルムよりもフレキシブル性に優れていた。なお、光透過性基材の両面側にハードコート層を備えている導電性フィルムに対して上記連続折り畳み試験を行うと、必ずいずれかのハードコート層が外側に曲げられる、いわゆる外曲げとなるので、ハードコート層にマイクロクラックが発生しやすいが、実施例A9~A13に係る導電性フィルムにおいては、マイクロクラックが観察されなかった、またはマイクロクラックが若干観察されたが、実使用上問題のないレベルであった。なお、実施例A11、A13に係る導電性フィルムにおいて、間隔が2mmで折り畳み回数が30万回でもフレキシブル性を評価したが、間隔が3mmで折り畳み回数が30万回での評価結果と同様の結果が得られた。
【0332】
間隔φが4mmで折り畳み回数が20万回で評価したときのフレキシブル性が良好というのは、例えば折り畳み型ディスプレイを1日に50回以上開閉しても約10年間良好であることを意味し、間隔φが3mmで折り畳み回数が30万回で評価したときのフレキシブル性が良好というのは、1日に75回以上開閉しても約10年間良好であることを意味する。このレベルにおいて、性能が維持できる理由としては、光透過性基材の樹脂系と膜厚の影響は存在するが、それだけではなく、導電性フィルム全体のバランスも優れていることが影響していると考えられる。例えば、折り畳み回数が10万回での評価で良好な場合の導電性フィルムの厚み(総厚)とは45μm以下であり、折り畳み回数が20万回、30万回での評価でフレキシブル性が良好な場合の導電性フィルムの厚み(総厚)は、35μm以下であった。特に、折り畳み回数が30万回であっても、フレキシブル性が良好な基材はシクロオレフィンポリマーフィルムであった。なお、この折り畳み回数が30万回でフレキシブル性が良好であったシクロオレフィンポリマーフィルムを用いて、更に厳しい間隔がφ2mmで折り畳み回数が50万回で評価したところ、シクロオレフィンポリマーフィルムの厚みが25μmであると、極僅かであるが折り癖を生じる場合が見られたが、その他の性能は問題がなかった。次いで、厚みが更に薄い15μmのシクロオレフィンポリマーフィルムにて同じ試験を実施したところ、全ての性能が良好であった。この時、導電性フィルムの厚み(総厚)は25μm以下であった。
【0333】
実施例A8~A13に係る導電性フィルムにおいて、連続折り畳み試験前後の光透過性基材としての各フィルムとハードコート層の間の界面付近を、上記デジタルマイクロスコープを用いて上記条件で観察したが、剥がれ等は観察されず、密着性は良好であった。
【0334】
なお、実施例A1~A13に係る導電性フィルムにおけるハードコート層と光透過性基材のインデンテーション硬さを温度23℃および相対湿度50%の環境下で測定したところ、ハードコート層の方が光透過性基材よりもインデンテーション硬さが高かった。ハードコート層のインデンテーション硬さは、以下のようにして測定された。まず、10mm×10mmの大きさに切り出した導電性フィルムをシリコーン系の包埋板に入れ、エポキシ系樹脂を流し込み、導電性フィルム全体を樹脂にて包埋した。その後、包埋樹脂を65℃で12時間以上放置して、硬化させた。その後、ウルトラミクロトーム(製品名「ウルトラミクロトーム EM UC7」、ライカ マイクロシステムズ社製)を用いて、送り出し厚み100nmに設定し、超薄切片を作製した。そして、超薄切片が切り出された残りのブロックを測定サンプルとした。次いで、測定サンプルを、市販のスライドガラス(製品名「スライドガラス(切放タイプ) 1-9645-11」、アズワン社製)に、測定サンプルにおける上記切片が切り出されることによって得られた断面がスライドガラスの表面に対してほぼ垂直になるように、接着樹脂(製品名「アロンアルフア(登録商標)一般用」、東亜合成社製)を介して固定した。具体的には、上記スライドガラスの中央部に上記接着樹脂を滴下した。この際、接着樹脂を塗り広げず、また接着樹脂が測定サンプルからはみ出さないように滴下は1滴とした。測定サンプルを測定サンプルにおける上記切片が切り出されることによって得られた断面がスライドガラスの表面に対してほぼ垂直になるようにスライドガラスに接触させ、スライドガラスと測定サンプルの間で接着樹脂を押し広げ、仮接着した。そして、その状態で、12時間室温で放置し、測定サンプルをスライドガラスに接着により固定した。次いで、測定サンプルの断面において、平坦な箇所を探し、この平坦な箇所において、HYSITRON(ハイジトロン)社製の「TI950 TriboIndenter」を用いて、変位基準の測定で、最大押し込み変位が100nmとなるように、速度10nm/秒でバーコビッチ型圧子を、10秒で変位0nmから変位100nmまで負荷を加えながらハードコート層に押し込み、その後100nmで5秒間保持した後、10秒で変位100nmから変位0nmまで除荷した。そして、このときの押し込み荷重F(N)に対応する押し込み深さh(nm)を連続的に測定し、荷重-変位曲線を作成した。作成された荷重-変位曲線からインデンテーション硬さHITを、上記数式(1)に基づいて最大押し込み荷重Fmax(N)を、圧子と各層が接している接触投影面積A(mm)で除した値により求めた。インデンテーション硬さは、10箇所測定して得られた値の算術平均値とした。なお、Aは標準試料の溶融石英を用いて、Oliver-Pharr法で圧子先端曲率を補正した接触投影面積とした。また、光透過性基材のインデンテーション硬さも、ハードコート層のインデンテーション硬さと同様にして測定された。
【0335】
<<実施例Bおよび比較例B>>
<実施例B1>
まず、片面のみに下地層を有する厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「コスモシャイン(登録商標)A4100」、東洋紡株式会社製)である光透過性基材を準備し、光透過性基材の下地層の表面に、ハードコート層用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚2μmのハードコート層を形成した。
【0336】
ハードコート層を形成した後、ハードコート層を除電した。除電は、電圧印加式除電器(製品名「SJ-H156A」、キーエンス株式会社製)を用いて行われた。上記除電器は、ハードコート層との距離が50mmとなるように設置された。
【0337】
ハードコート層を除電した後、光透過性基材における下地層側の面とは反対側の未処理面に、銀ナノワイヤ含有組成物1を塗布量10mg/mとなるように塗布した。次いで、塗布した銀ナノワイヤ含有組成物1に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて銀ナノワイヤ含有組成物1中の分散媒を蒸発させることにより、上記未処理面に、複数の銀ナノワイヤを配置させた。
【0338】
次いで、銀ナノワイヤを覆うように上記光透過性樹脂用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚100nmの光透過性樹脂を形成し、光透過性樹脂および光透過性樹脂中に配置された銀ナノワイヤからなる膜厚100nmの第2の導電部を得た。
【0339】
第2の導電部を形成した後、第2の導電部の表面に剥離可能に厚さ50μmのポリエチレンフィルム(製品名「SUNYTECT(登録商標)PAC-3-50THK」、株式会社サンエー化研製)である第2の保護フィルムを設けた。
【0340】
第2の保護フィルムを設けた後、ハードコート層の表面に、銀ナノワイヤ含有組成物1を塗布量10mg/mになるように塗布した。次いで、塗布した銀ナノワイヤ含有組成物1に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて銀ナノワイヤ含有組成物1中の分散媒を蒸発させることにより、ハードコート層の表面に、複数の銀ナノワイヤを配置させた。
【0341】
次いで、銀ナノワイヤを覆うように上記光透過性樹脂用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚100nmの光透過性樹脂を形成し、光透過性樹脂および光透過性樹脂中に配置された銀ナノワイヤからなる膜厚100nmの第1の導電部を得た。
【0342】
第1の導電部を形成した後、第1の導電部の表面に剥離可能に厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「CP170U」、日東電工株式会社製)である第1の保護フィルムを設けて、保護フィルム付き導電性フィルムを得た。
【0343】
実施例B1のみならず、以降の実施例および比較例も全て、第1の導電部の膜厚、第2の導電部の膜厚、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の基材の厚み、ハードコート層の膜厚、第1の保護フィルムの厚み、および第2の保護フィルムの厚みは、実施例Aにおける導電部の膜厚の測定方法と同様の方法によって測定された。ただし、基材、ハードコート層、第1の保護フィルムおよび第2の保護フィルムの断面写真を撮影する際には、倍率を100~2万倍で適宜調節した。
【0344】
<実施例B2>
実施例B2においては、第1の導電部の表面に、ポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「CP170U」、日東電工株式会社製)の代わりに、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「E-MASK(登録商標)TP200」、日東電工株式会社製)である第1の保護フィルムを剥離可能に設けたこと以外は、実施例B1と同様にして、保護フィルム付き導電性フィルムを得た。
【0345】
<実施例B3>
実施例B3においては、第1の導電部の表面に、ポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「CP170U」、日東電工株式会社製)の代わりに、厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「SAT TM40125TG」、株式会社サンエー化研製)である第1の保護フィルムを剥離可能に設けたこと以外は、実施例B1と同様にして、保護フィルム付き導電性フィルムを得た。
【0346】
<実施例B4>
実施例B4においては、光透過性基材として厚さ50μmの代わりに厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「コスモシャイン(登録商標)A4100」、東洋紡株式会社製)である光透過性基材を用い、第1の導電部の表面に厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「CP170U」、日東電工株式会社)の代わりに、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「E-MASK(登録商標)TP200」、日東電工株式会社)である第1の保護フィルムを剥離可能に貼り付けたこと以外は、実施例B1と同様にして、保護フィルム付き導電性フィルムを得た。
【0347】
<実施例B5>
実施例B5においては、光透過性基材として厚さ50μmの代わりに厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「コスモシャイン(登録商標)A4100」、東洋紡株式会社製)である光透過性基材を用い、第1の導電部の表面に厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「SAT TM40125TG」、株式会社サンエー化研製)の代わりに、厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「CP170U」、日東電工株式会社)である第1の保護フィルムを剥離可能に設けたこと以外は、実施例B1と同様にして、保護フィルム付き導電性フィルムを得た。
【0348】
<実施例B6>
実施例B6においては、第2の導電部の表面に、ポリエチレンフィルム(製品名「SUNYTECT(登録商標)PAC-3-50THK」、株式会社サンエー化研製)の代わりに、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「E-MASK(登録商標)TP200」、日東電工株式会社製)である第1の保護フィルムを剥離可能に設けたこと以外は、実施例B1と同様にして、保護フィルム付き導電性フィルムを得た。
【0349】
<実施例B7>
銀ナノワイヤ含有組成物1の代わりに銀ナノワイヤ含有組成物3を用いて、膜厚0.1μmの第1の導電部および膜厚0.1μmの第2の導電部を形成したこと以外は、実施例B1と同様にして、保護フィルム付き導電性フィルムを得た。
【0350】
<実施例B8>
まず、片面のみに下地層を有する厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「コスモシャイン(登録商標)A4100」、東洋紡株式会社製)である光透過性基材を準備し、光透過性基材における下地層側の面とは反対側の未処理面に、銀ナノワイヤ含有組成物1を塗布量10mg/mになるように塗布した。次いで、塗布した銀ナノワイヤ含有組成物1に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて銀ナノワイヤ含有組成物1中の分散媒を蒸発させることにより、上記未処理面に、複数の銀ナノワイヤを配置させた。
【0351】
次いで、銀ナノワイヤを覆うように上記光透過性樹脂用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚100nmの光透過性樹脂を形成し、光透過性樹脂および光透過性樹脂中に配置された銀ナノワイヤからなる膜厚100nmの第2の導電部を得た。
【0352】
第2の導電部を形成した後、第2の導電部の表面に剥離可能に厚さ50μmのポリエチレンフィルム(製品名「SUNYTECT(登録商標)PAC-3-50THK」、株式会社サンエー化研製)である第2の保護フィルムを設けた。
【0353】
第2の保護フィルムを設けた後、光透過性基材の下地層の表面に、ハードコート層用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚2μmのハードコート層を形成した。
【0354】
ハードコート層を形成した後、ハードコート層を除電せずに、ハードコート層の表面に、銀ナノワイヤ含有組成物1を塗布量10mg/mになるように塗布した。次いで、塗布した銀ナノワイヤ含有組成物1に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて銀ナノワイヤ含有組成物1中の分散媒を蒸発させることにより、ハードコート層の表面に、複数の銀ナノワイヤを配置させた。
【0355】
次いで、銀ナノワイヤを覆うように上記光透過性樹脂用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚100nmの光透過性樹脂を形成し、光透過性樹脂および光透過性樹脂中に配置された銀ナノワイヤからなる膜厚100nmの第1の導電部を得た。
【0356】
第1の導電部を形成した後、第1の導電部の表面に剥離可能に厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「CP170U」、日東電工株式会社製)である第1の保護フィルムを設けて、保護フィルム付き導電性フィルムを得た。
【0357】
<実施例B9>
まず、片面のみに下地層を有する厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「コスモシャイン(登録商標)A4100」、東洋紡株式会社製)である光透過性基材を準備し、光透過性基材における下地層側の面とは反対側の未処理面に、銀ナノワイヤ含有組成物1を塗布量10mg/mになるように塗布した。次いで、塗布した銀ナノワイヤ含有組成物1に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて銀ナノワイヤ含有組成物1中の分散媒を蒸発させることにより、上記未処理面に、複数の銀ナノワイヤを配置させた。
【0358】
次いで、銀ナノワイヤを覆うように上記光透過性樹脂用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚100nmの光透過性樹脂を形成し、光透過性樹脂および光透過性樹脂中に配置された銀ナノワイヤからなる膜厚100nmの第2の導電部を得た。
【0359】
第2の導電部を形成した後、第2の導電部の表面に剥離可能に厚さ50μmのポリエチレンフィルム(製品名「SUNYTECT(登録商標)PAC-3-50THK」、株式会社サンエー化研製)である第2の保護フィルムを設けた。
【0360】
第2の保護フィルムを設けた後、光透過性基材の下地層の表面に、ハードコート層用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚2μmのハードコート層を形成した。
【0361】
ハードコート層を形成した後、ハードコート層を除電せずに、ハードコート層の表面に、銀ナノワイヤ含有組成物1を塗布量10mg/mになるように塗布した。次いで、塗布した銀ナノワイヤ含有組成物1に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて銀ナノワイヤ含有組成物1中の分散媒を蒸発させることにより、ハードコート層の表面に、複数の銀ナノワイヤを配置させた。
【0362】
次いで、銀ナノワイヤを覆うように上記光透過性樹脂用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚100nmの光透過性樹脂を形成し、光透過性樹脂および光透過性樹脂中に配置された銀ナノワイヤからなる膜厚100nmの第1の導電部を得て、導電性フィルムを得た。
【0363】
一方で、別の厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート基材(製品名「コスモシャイン(登録商標)A4300」、東洋紡株式会社製)の一方の面にハードコート層用組成物3を塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させ乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させた。
【0364】
そして、乾燥させた塗膜に第1の導電部が接するように導電性フィルムを接触させ、この状態で、紫外線を積算光量が100mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させた。これにより、第1の導電部の表面に剥離可能に設けられたポリエチレンテレフタレート基材および第1の導電部に密着した膜厚6μmのハードコート層からなる第1の保護フィルムを得て、保護フィルム付き導電性フィルムを得た。
【0365】
<実施例B10>
実施例B10においては、光透過性基材として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「コスモシャイン(登録商標)A4100」、東洋紡株式会社製)の代わりに、厚さ25μmのシクロオレフィンポリマーフィルム(製品名「ゼオノアフィルム(登録商標)ZF16」、日本ゼオン株式会社製)を用い、またハードコート層用組成物1の代わりに、ハードコート層用組成物2を用いたこと以外は、実施例B1と同様にして、導電性フィルムを得た。
【0366】
<実施例B11>
実施例B11においては、光透過性基材として、ポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、上記化学式(1)で表される構造を有する厚さ50μmのポリイミドフィルムを用いこと以外は、実施例B1と同様にして、導電性フィルムを得た。
【0367】
<実施例B12>
まず、両面に下地層を有する厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「コスモシャイン(登録商標)A4300」、東洋紡株式会社製)である光透過性基材を準備し、光透過性基材の下地層の表面に、ハードコート層用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚2μmのハードコート層を形成した。また、同様に、ポリエチレンテレフタレートフィルムの他方の下地層の表面に、膜厚2μmのハードコート層を形成した。
【0368】
両面にハードコート層を形成した後、ハードコート層をそれぞれ除電した。除電は、電圧印加式除電器(製品名「SJ-H156A」、キーエンス株式会社製)を用いて行われた。上記除電器は、ハードコート層との距離が50mmとなるように設置された。
【0369】
ハードコート層をそれぞれ除電した後、一方のハードコート層の表面に、銀ナノワイヤ含有組成物1を塗布量10mg/mとなるように塗布した。次いで、塗布した銀ナノワイヤ含有組成物1に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて銀ナノワイヤ含有組成物1中の分散媒を蒸発させることにより、このハードコート層の表面に、複数の銀ナノワイヤを配置させた。
【0370】
次いで、銀ナノワイヤを覆うように上記光透過性樹脂用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚100nmの光透過性樹脂を形成し、光透過性樹脂および光透過性樹脂中に配置された銀ナノワイヤからなる膜厚100nmの第2の導電部を得た。
【0371】
第2の導電部を形成した後、第2の導電部の表面に剥離可能に厚さ50μmのポリエチレンフィルム(製品名「SUNYTECT(登録商標)PAC-3-50THK」、株式会社サンエー化研製)である第2の保護フィルムを設けた。
【0372】
第2の保護フィルムを設けた後、他方のハードコート層の表面に、銀ナノワイヤ含有組成物1を塗布量10mg/mになるように塗布した。次いで、塗布した銀ナノワイヤ含有組成物1に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて銀ナノワイヤ含有組成物1中の分散媒を蒸発させることにより、このハードコート層の表面に、複数の銀ナノワイヤを配置させた。
【0373】
次いで、銀ナノワイヤを覆うように上記光透過性樹脂用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、形成した塗膜に対して、0.5m/sの流速で50℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が100mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚100nmの光透過性樹脂を形成し、光透過性樹脂および光透過性樹脂中に配置された銀ナノワイヤからなる膜厚100nmの第1の導電部を得た。
【0374】
第1の導電部を形成した後、第1の導電部の表面に剥離可能に厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「CP170U」、日東電工株式会社製)である第1の保護フィルムを設けて、保護フィルム付き導電性フィルムを得た。
【0375】
<実施例B13>
実施例B13においては、両方のハードコート層の膜厚をそれぞれ1μmにしたこと以外は、実施例B12と同様にして、導電性フィルムを得た。
【0376】
<実施例B14>
実施例B14においては、両面に下地層を有する厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「コスモシャイン(登録商標)A4300」、東洋紡株式会社製)の代わりに、両面に下地層を有する厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「コスモシャインA4300」、東洋紡株式会社製)を用いたこと以外は、実施例B13と同様にして、導電性フィルムを得た。
【0377】
<実施例B15>
実施例B15においては、ポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、厚さ50μmのシクロオレフィンポリマーフィルム(製品名「ゼオノアフィルム(登録商標)ZF16」、日本ゼオン株式会社製)を用い、またハードコート層用組成物1の代わりに、ハードコート層用組成物2を用いたこと以外は、実施例B13と同様にして、導電性フィルムを得た。
【0378】
<実施例B16>
実施例B16においては、ポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、厚さ25μmのシクロオレフィンポリマーフィルム(製品名「ゼオノアフィルム(登録商標)ZF16」、日本ゼオン株式会社製)を用い、またハードコート層用組成物1の代わりに、ハードコート層用組成物2を用いたこと以外は、実施例B13と同様にして、導電性フィルムを得た。
【0379】
<実施例B17>
実施例B17においては、ポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、上記化学式(1)で表される構造を有する厚さ80μmのポリイミドフィルムを用いたこと以外は、実施例B13と同様にして、導電性フィルムを得た。
【0380】
<実施例B18>
実施例B18においては、ポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、上記化学式(1)で表される構造を有する厚さ30μmのポリイミドフィルムを用いたこと以外は、実施例B13と同様にして、導電性フィルムを得た。
【0381】
<比較例B1>
比較例B1においては、第1の導電部の表面に、ポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「CP170U」、日東電工株式会社製)を設けなかったこと以外は、実施例B1と同様にして、保護フィルム付き導電性フィルムを得た。すなわち、比較例B1に係る保護フィルム付き導電性フィルムにおいては、導電性フィルムの表面にはポリエチレンフィルム(製品名「SUNYTECT(登録商標)PAC-3-50THK」、株式会社サンエー化研製)である第2の保護フィルムが剥離可能に設けられており、導電性フィルムの裏面は露出しているものであった。
【0382】
<比較例B2>
比較例B2においては、第1の導電部の表面に、ポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「CP170U」、日東電工株式会社製)の代わりに、厚さ50μmのポリエチレンフィルム(製品名「SUNYTECT(登録商標)PAC-3-50THK」、日東電工株式会社製)である第2の保護フィルムを設けたこと以外は、実施例B1と同様にして、保護フィルム付き導電性フィルムを得た。すなわち、比較例B2に係る保護フィルム付き導電性フィルムにおいては、導電性フィルムの表面および裏面の両方にポリエチレンフィルム(製品名「SUNYTECT(登録商標)PAC-3-50THK」、株式会社サンエー化研製)である第2の保護フィルムが剥離可能に設けられているものであった。
【0383】
<比較例B3>
比較例B3においては、第1の導電部の表面に、ポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「CP170U」、日東電工株式会社製)の代わりに、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「SUNYTECT(登録商標)NSA33T」、サンエー化研株式会社製)である第1の保護フィルムを設けたこと以外は、実施例B1と同様にして、保護フィルム付き導電性フィルムを得た。すなわち、比較例B3に係る保護フィルム付き導電性フィルムにおいては、導電性フィルムの表面にはポリエチレンテレフタレート(製品名「SUNYTECT(登録商標)NSA33T」、株式会社サンエー化研製)である第1の保護フィルムが剥離可能に設けられており、導電性フィルムの裏面は露出しているものであった。
【0384】
<耐熱性試験>
実施例B1~B18および比較例B1~B3に係る保護フィルム付き導電性フィルムにおいて、加熱試験を行い、保護フィルムが溶融するか否か調べた。具体的には、縦100mm×横100mmの大きさに切り出した保護フィルム付き導電性フィルムに対し、150℃で60分間加熱する加熱試験を行い、加熱試験中に保護フィルムが溶融したか否かを調べた。ただし、実施例B1~B5、B7~B18に係る保護フィルム付き導電性フィルムにおいては、第2の保護フィルムであるポリエチレンフィルムを剥離した状態で加熱試験を行った。加熱試験中に保護フィルムが溶融したか否かは、目視によって確認した。評価基準は以下の通りとした。
○:保護フィルムが溶融しなかった。
×:保護フィルムが溶融した。
【0385】
<熱収縮率>
実施例B1~B18に係る保護フィルム付き導電性フィルムから全ての保護フィルムを剥離した状態で、導電性フィルムおよび第1の保護フィルムに対しそれぞれ加熱試験を行い、第1の方向および第1の方向と直交する第2の方向における第1の保護フィルムおよび光透過性基材の熱収縮率をそれぞれ求め、第1の方向における第1の保護フィルムの熱収縮率と光透過性基材の熱収縮率との差の絶対値および第2の方向における第1の保護フィルムの熱収縮率と光透過性基材の熱収縮率との差の絶対値を求めた。具体的には、まず、保護フィルム付き導電性フィルムを縦100mm×横100mmの大きさに切り出し、任意の方向を第1の方向とし、また第1の方向と直交する方向を第2の方向とした。その後、切り出した保護フィルム付き導電性フィルムから全ての保護フィルムを剥離した状態で、温度23℃および相対湿度50%の環境下において、第1の方向における導電性フィルムおよび第1の保護フィルムの長さをそれぞれ3回測定し、また第2の方向における導電性フィルムおよび第1の保護フィルムの長さをそれぞれ3回測定して、加熱試験前の第1の方向における導電性フィルムおよび第1の保護フィルムの長さの算術平均値をそれぞれ求めるとともに、第2の方向における導電性フィルムおよび第1の保護フィルムの長さの算術平均値をそれぞれ求めた。そして、導電性フィルムおよび第1の保護フィルムに対して、それぞれ150℃で60分間加熱する加熱試験を行った。加熱試験は、加熱装置(製品名「HISPEC横型 200℃シリーズ」、楠本化成株式会社製)を用いて行われた。そして、加熱装置から導電性フィルムおよび第1の保護フィルムを取り出し、加熱終了時から10分経過後に、25℃、相対湿度50%の環境下において、第1の方向における導電性フィルムおよび第1の保護フィルムの長さをそれぞれ3回測定し、また第2の方向における導電性フィルムおよび第1の保護フィルムの長さをそれぞれ3回測定して、加熱試験後の第1の方向における導電性フィルムおよび第1の保護フィルムの長さの算術平均値をそれぞれ求めるとともに、第2の方向における導電性フィルムおよび第1の保護フィルムの長さの算術平均値をそれぞれ求めた。そして、これらの算術平均値を用いて、上記数式(5)から第1の方向における導電性フィルムおよび第1の保護フィルムの熱収縮率をそれぞれ求め、また上記数式(6)から第2の方向における導電性フィルムおよび第1の保護フィルムの熱収縮率をそれぞれ求めた。そして、第1の方向における第1の保護フィルムの熱収縮率と光透過性基材の熱収縮率との差の絶対値および第2の方向における第1の保護フィルムの熱収縮率と光透過性基材の熱収縮率との差の絶対値を求めた。なお、熱収縮率の測定は、導電性フィルムおよび第1の保護フィルムを平らな台の上に置いて行われた。
【0386】
<カール量>
実施例B1~B18および比較例B1~B3に係る保護フィルム付き導電性フィルムにおいて、加熱試験を行い、加熱試験後におけるカール量を測定した。具体的には、縦340mm×横340mmの大きさに切り出した保護フィルム付き導電性フィルムに対して、150℃で60分間加熱する加熱試験を行った。なお、実施例B1~B5、B7~B18に係る保護フィルム付き導電性フィルムにおいては、第2の保護フィルムを剥離した状態で、加熱試験を行った。また、実施例B4および比較例B1~B3に係る保護フィルム付き導電性フィルムにおいては、そのままの状態で、加熱試験を行った。加熱試験は、加熱装置(製品名「HISPEC横型 200℃シリーズ」、楠本化成株式会社製)を用いて行われた。その際、保護フィルム付き導電性フィルムは加熱装置内に保護フィルムが下側となるように配置された。そして、加熱装置から保護フィルム付き導電性フィルムを取り出し、加熱終了時から10分経過後に、温度23℃および相対湿度50%の環境下でカール量の測定を行った。カール量の測定の際には、加熱試験後の保護フィルム付き導電性フィルムまたは導電性フィルムを、台側が保護フィルムとなるように、平らな台の上に置き、保護フィルム付き導電性フィルムまたは導電性フィルムの四隅が台から浮き上がる場合には、四隅の浮き上がりの高さの平均値とし、また保護フィルム付き導電性フィルムまたは導電性フィルムの中央部が台から浮き上がる場合には、保護フィルム付き導電性フィルムまたは導電性フィルムの中央部のうち最も台から離れた箇所の高さとした。なお、カール量は、保護フィルム付き導電性フィルムの上面が凹状にカールする場合を正(+)とし、保護フィルム付き導電性フィルムの上面が凸状にカールする場合を負(-)とした。
【0387】
<表面抵抗値相違率>
実施例B1~B18に係る保護フィルム付き導電性フィルムから、全ての保護フィルムを剥離して、導電性フィルム単体とした状態で、第1の導電部および第2の導電部の表面抵抗値をそれぞれ測定し、第2の導電部の表面抵抗値が、第1の導電部の表面抵抗値に対してどの程度異なるか相違率を求めた。第1の導電部および第2の導電部の表面抵抗値は、実施例Aにおける第1の導電部および第2の導電部の表面抵抗値と同様の測定条件でそれぞれ測定され、また表面抵抗値相違率は、実施例Aにおける表面抵抗値相違率を求める式と同様の式によって求めた。
【0388】
<全光線透過率測定>
実施例B1~B18に係る保護フィルム付き導電性フィルムから、全ての保護フィルムを剥離し、導電性フィルム単体とした状態で、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、村上色彩技術研究所製)を用いて、実施例Aにおける全光線透過率と同様の方法および同様の測定条件で全光線透過率を測定した。
【0389】
<ヘイズ測定>
実施例B1~B18に係る保護フィルム付き導電性フィルムから、全ての保護フィルムを剥離し、導電性フィルム単体とした状態で、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、村上色彩技術研究所製)を用いて、実施例Aにおけるヘイズ値と同様の方法および同様の測定条件で導電性フィルムのヘイズ値(全ヘイズ値)を測定した。
【0390】
<フレキシブル性>
(1)連続折り畳み試験前後の抵抗値評価
実施例B13~B18に係る保護フィルム付き導電性フィルムから、全ての保護フィルムを剥離し、導電性フィルム単体とした状態で、連続折り畳み試験を行い、連続折り畳み試験前後の抵抗値を評価した。抵抗値は、実施例Aにおけるフレキシブル性の評価方法と同様の方法によって評価した。また、抵抗値を評価する際の連続折り畳み試験は、実施例Aにおける連続折り畳み試験と同様の試験条件で行われ、また電気抵抗値は、実施例Aにおける電気抵抗値と同様の測定条件によって測定された。そして、以下の基準で評価した。なお、電気抵抗値比は、3回測定して得られた値の算術平均値とした。
◎:第1の導電部および第2の導電部のいずれにおいても、電気抵抗値比が1.5以下であった。
○:第1の導電部および第2の導電部のいずれか一方の電気抵抗値比が1.5以下であったが、他方の電気抵抗値比が1.5を超え、3以下であった。
×:第1の導電部および第2の導電部のいずれかの電気抵抗値比が3を超えていた。
【0391】
(2)連続折り畳み試験後の折り癖評価
実施例B13~B18に係る保護フィルム付き導電性フィルムから、全ての保護フィルムを剥離し、導電性フィルム単体とした状態で、連続折り畳み試験を行い、連続折り畳み試験後の外観を観察して、導電性フィルムの屈曲部に折り癖が生じているか評価した。連続折り畳み試験は、実施例Aにおける連続折り畳み試験と同様の試験条件で行われた。なお、連続折り畳み試験前における各導電性フィルムの屈曲部となる領域を観察したところ、折り癖は観察されなかった。折り癖の観察は、実施例Aと同様の方法および同様の条件によって行われた。評価基準は、以下の通りとした。
(折り癖)
○:連続折り畳み試験後においても、導電性フィルムに折り癖が観察されなかった。
△:連続折り畳み試験後において、導電性フィルムに折り癖が若干観察されたが、実使用上問題のないレベルであった。
×:連続折り畳み試験後において、導電性フィルムに折り癖が明確に観察された。
【0392】
(3)連続折り畳み試験後のマイクロクラック評価
実施例B13~B18に係る保護フィルム付き導電性フィルムから、全ての保護フィルムを剥離し、導電性フィルム単体とした状態で、連続折り畳み試験を行い、連続折り畳み試験後の外観を観察して、導電性フィルムの屈曲部にマイクロクラックが生じているか評価した。連続折り畳み試験は、実施例Aにおける連続折り畳み試験と同様の試験条件で行われた。なお、連続折り畳み試験前における各導電性フィルムの屈曲部となる領域を観察したところ、マイクロクラックは観察されなかった。マイクロクラックの観察は、実施例Aと同様の方法および同様の条件によって行われた。評価基準は、以下の通りとした。
(マイクロクラック)
○:連続折り畳み試験後においても、導電性フィルムにマイクロクラックが観察されなかった。
△:連続折り畳み試験後において、導電性フィルムにマイクロクラックが若干観察されたが、実使用上問題のないレベルであった。
×:連続折り畳み試験後において、導電性フィルムにマイクロクラックが明確に観察された。
【0393】
以下、結果を表3~表6に示す。
【表3】
【0394】
【表4】
【0395】
【表5】
【0396】
【表6】
【0397】
耐熱性の結果から、比較例B1、B2に係る保護フィルム付き導電性フィルムにおいて、第2の保護フィルムを導電性フィルムに設けたまま加熱すると、第2の保護フィルムが溶融することが理解できる。このため、加熱工程の際には第2の保護フィルムを剥離する必要がある。これに対し、実施例B1~B18に係る保護フィルム付き導電性フィルムにおいて、第1の保護フィルムを導電性フィルムに設けたまま加熱した場合であっても、第1の保護フィルムは溶融しないことが理解できる。このため、加熱工程の際には第1の保護フィルムを剥離する必要がないことが理解できる。
【0398】
比較例B1、B2に係る保護フィルム付き導電性フィルムにおいては、第2の保護フィルムを設けたまま加熱試験を行っているので、著しくカールしてしまい、加熱試験後のカール量が測定不能であった。また、比較例B3に係る保護フィルム付き導電性フィルムにおいては、第1の保護フィルムを設けたまま加熱試験を行っているが、第1の保護フィルムと光透過性基材の熱収縮率差が大きいために、加熱試験後のカール量が大きかった。これに対し、実施例B1~B18に係る保護フィルム付き導電性フィルムにおいては、第1の保護フィルムを設けたまま加熱試験を行っており、かつ第1の保護フィルムと光透過性基材の熱収縮率差が小さいために、加熱試験後のカール量が小さかった。
【0399】
実施例B8に係る保護フィルム付き導電性フィルムから、第1の保護フィルムおよび第2の保護フィルムを剥離した導電性フィルムにおいては、第2の導電部の表面抵抗値が、第1の導電部の表面抵抗値の±30%の範囲を超えていたので、第1の導電部の電気抵抗値と第2の導電部の電気抵抗値の相違率が高かった。これに対し、実施例B1~B7、B9~B18に係る保護フィルム付き導電性フィルムから、第1の保護フィルムおよび第2の熱保護フィルムを剥離した導電性フィルムにおいては、第2の導電部の表面抵抗値が、第1の導電部の表面抵抗値の±30%以内であったので、第1の導電部の電気抵抗値と第2の導電部の電気抵抗値の相違が抑制されていた。
【0400】
実施例B14に係る導電性フィルムは、実施例B13に係る導電性フィルムよりもポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みが薄かったので、実施例B13に係る導電性フィルムよりもフレキシブル性に優れていた。また、実施例B16に係る導電性フィルムは、実施例B15に係る導電性フィルムよりも、シクロオレフィンポリマーフィルムの厚みが薄かったので、実施例B15に係る導電性フィルムよりもフレキシブル性に優れていた。実施例B18に係る導電性フィルムは、実施例B17に係る導電性フィルムよりもポリイミドフィルムの厚みが薄かったので、実施例B17に係る導電性フィルムよりもフレキシブル性に優れていた。なお、光透過性基材の両面側にハードコート層を備えている導電性フィルムに対して上記連続折り畳み試験を行うと、必ずいずれかのハードコート層が外側に曲げられる、いわゆる外曲げとなるので、ハードコート層にマイクロクラックが発生しやすいが、実施例B13~B18に係る導電性フィルムにおいては、マイクロクラックが観察されなかった、またはマイクロクラックが若干観察されたが、実使用上問題のないレベルであった。なお、実施例B16、B18に係る導電性フィルムにおいて、間隔が2mmで折り畳み回数が30万回でもフレキシブル性を評価したが、間隔が3mmで折り畳み回数が30万回での評価結果と同様の結果が得られた。
【0401】
実施例B13~B18に係る導電性フィルムにおいて、連続折り畳み試験前後の光透過性基材としての各フィルムとハードコート層の間の界面付近を、上記デジタルマイクロスコープを用いて上記条件で観察したが、剥がれ等は観察されず、密着性は良好であった。
【0402】
実施例B1~B18に係る保護フィルム付き導電性フィルムにおけるハードコート層と光透過性基材のインデンテーション硬さを実施例Aにおけるインデンテーション硬さと同様の方法および同様の測定条件で測定したところ、ハードコート層の方が光透過性基材よりもインデンテーション硬さが高かった。
【符号の説明】
【0403】
10、30、40、120、170…導電性フィルム
10A、120A…表面
10B、120B…裏面
11、41、122…第1の導電部
12、31、124、131…樹脂層
13、121…光透過性基材
14、42、123…第2の導電部
15、17、45、47、125、127…導電性繊維
16、18、46、48、126、128…光透過性樹脂
50…画像表示装置
60…表示パネル
62…表示素子
80…タッチパネル
110、180、200…保護フィルム付き導電性フィルム
130、190、210…第1の保護フィルム
140…第2の保護フィルム

図1
図2
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