(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】スタッダブルタイヤ、および空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/16 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
B60C11/16 Z
(21)【出願番号】P 2019564359
(86)(22)【出願日】2018-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2018046354
(87)【国際公開番号】W WO2019138792
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2018002738
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】本間 健太
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/022683(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/098092(WO,A1)
【文献】特開2007-50718(JP,A)
【文献】特開昭59-45203(JP,A)
【文献】特開昭51-89605(JP,A)
【文献】特開2012-183954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスタッドピン取付用孔をトレッド部に有するスタッダブルタイヤであって、
前記トレッド部の接地領域は、
タイヤセンターラインからタイヤ幅方向の両側に接地幅の5~25%の長さの範囲に位置するセンター領域と、
前記センター領域のタイヤ幅方向両側に位置する2つのショルダー領域と、を有し、
前記センター領域及び前記ショルダー領域のそれぞれにおいて、タイヤ周方向に延びる4本以上のピン配置線に沿って、前記ピン配置線ごとに、前記スタッドピン取付用孔のうちの複数のスタッドピン取付用孔が配置され、
前記センター領域のピン配置線の隣り合う間隔の平均値は、前記ショルダー領域のピン配置線の隣り合う間隔の平均値より大き
く、
前記センター領域のピン配置線の隣り合う間隔の平均値は、前記ショルダー領域のピン配置線の隣り合う間隔の平均値の102~120%である、ことを特徴とするスタッダブルタイヤ。
【請求項2】
前記センター領域のピン配置線の隣り合う間隔のうち隣接する2つの間隔に関して、第1の間隔A1は、前記第1の間隔A1を確定する2本のピン配置線のうちタイヤ幅方向外側に位置するピン配置線L1と、当該ピン配置線L1とタイヤ幅方向外側に隣り合うピン配置線L2との間の第2の間隔A2と等しい又は前記第2の間隔A2より広い、請求項1に記載のスタッダブルタイヤ。
【請求項3】
複数のスタッドピン取付用孔をトレッド部に有するスタッダブルタイヤであって、
前記トレッド部の接地領域は、
タイヤセンターラインからタイヤ幅方向の両側に接地幅の5~25%の長さの範囲に位置するセンター領域と、
前記センター領域のタイヤ幅方向両側に位置する2つのショルダー領域と、を有し、
前記センター領域及び前記ショルダー領域のそれぞれにおいて、タイヤ周方向に延びる4本以上のピン配置線に沿って、前記ピン配置線ごとに、前記スタッドピン取付用孔のうちの複数のスタッドピン取付用孔が配置され、
前記センター領域のピン配置線の隣り合う間隔の平均値は、前記ショルダー領域のピン配置線の隣り合う間隔の平均値より大きく、
前記センター領域及び前記ショルダー領域のそれぞれにおいて、前記ピン配置線の隣り合う間隔は等しい、ことを特徴とするスタッダブルタイヤ。
【請求項4】
複数のスタッドピン取付用孔をトレッド部に有するスタッダブルタイヤであって、
前記トレッド部の接地領域は、
タイヤセンターラインからタイヤ幅方向の両側に接地幅の5~25%の長さの範囲に位置するセンター領域と、
前記センター領域のタイヤ幅方向両側に位置する2つのショルダー領域と、を有し、
前記センター領域及び前記ショルダー領域のそれぞれにおいて、タイヤ周方向に延びる4本以上のピン配置線に沿って、前記ピン配置線ごとに、前記スタッドピン取付用孔のうちの複数のスタッドピン取付用孔が配置され、
前記センター領域のピン配置線の隣り合う間隔の平均値は、前記ショルダー領域のピン配置線の隣り合う間隔の平均値より大きく、
前記センター領域及び前記ショルダー領域のそれぞれにおいて、前記ピン配置線の隣り合う間隔は、タイヤ幅方向外側に連れて段階的又は連続的に狭くなっている、ことを特徴とするスタッダブルタイヤ。
【請求項5】
前記センター領域のピン配置線のうちの第1のピン配置線上に配置された、タイヤ周方向に隣り合う第1のスタッドピン取付用孔及び第2のスタッドピン取付用孔の間の間隔Cは、当該第1のピン配置線と異なる第2のピン配置線上に配置された、前記第1のスタッドピン取付用孔に最も近い第3のスタッドピン取付用孔と、前記第1のスタッドピン取付用孔とのタイヤ周方向の間隔Dの2.5倍以上の長さである、請求項1から
4のいずれか1項に記載のスタッダブルタイヤ。
【請求項6】
前記センター領域のピン配置線のうちの第1のピン配置線上に配置された、タイヤ周方向に隣り合う2つのスタッドピン取付用孔の間の間隔は、タイヤ周方向の接地長の1/3以上の長さである、請求項1から5のいずれか1項に記載のスタッダブルタイヤ。
【請求項7】
前記センター領域のピン配置線のうちの第1のピン配置線上に配置された第1のスタッドピン取付用孔と、前記第1のピン配置線と隣り合う第3のピン配置線上に配置された、前記第1のスタッドピン取付用孔と最も近い第4のスタッドピン取付用孔と間のタイヤ周方向の間隔は、タイヤ周方向の接地長の1/5以上の長さの間隔をあけて配置されている、請求項1から6のいずれか1項に記載のスタッダブルタイヤ。
【請求項8】
スタッドピンと、
前記スタッドピンが取り付けられるスタッドピン取付用孔を有する請求項1から7のいずれか1項に記載のスタッダブルタイヤと、を備えることを特徴とする空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッドピン取付用孔を有するスタッダブルタイヤ、および空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
スタッドタイヤは、トレッド部にスタッドピンが装着され、氷雪路面においてグリップが得られるようになっている。
一般に、スタッドピンは、トレッド部に設けられた取付用孔に埋め込まれる。取付用孔にスタッドピンを埋め込むとき、孔径を拡張した状態の取付用孔にスタッドピンを挿入することで、スタッドピンは取付用孔にきつく埋め込まれ、タイヤ転動中に路面から受ける外力によるスタッドピンの抜け落ちを防いでいる。
【0003】
また、スタッドピンは、一般に、基部と、基部の一端面から飛び出す先端部と、を備えており、転動時に路面に接触した先端部が氷雪を引っ掻くことによって、氷雪路面での制動性、駆動性等の走行性能が確保される。
【0004】
従来のスタッドタイヤとして、スタッドを、タイヤ赤道面を中心にしたタイヤ接地幅の33%に相当する位置から95%に相当する位置に至るトレッド面の左右領域のタイヤ幅方向に5又は6列に分散してタイヤ周方向に配列した空気入りスタッドタイヤが記載されている(特許文献1)。また、ピン位置の配列を、所定の手順に従って設定するスタッドタイヤの設計方法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-50718号公報
【文献】特許第5993302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のスタッドタイヤでは、制動時に、路面を引っ掻く力が不十分となり、制動性能が低下する場合があることがわかった。
【0007】
そこで、本発明は、氷雪路面での制動性能に優れたスタッドタイヤが得られるスタッダブルタイヤ、及び空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、複数のスタッドピン取付用孔をトレッド部に有するスタッダブルタイヤであって、
前記トレッド部の接地領域は、
タイヤセンターラインからタイヤ幅方向の両側に接地幅の5~25%の長さの範囲に位置するセンター領域と、
前記センター領域のタイヤ幅方向両側に位置する2つのショルダー領域と、を有し、
前記センター領域及び前記ショルダー領域のそれぞれにおいて、タイヤ周方向に延びる4本以上のピン配置線に沿って、前記ピン配置線ごとに、前記スタッドピン取付用孔のうちの複数のスタッドピン取付用孔が配置され、
前記センター領域のピン配置線の隣り合う間隔の平均値は、前記ショルダー領域のピン配置線の隣り合う間隔の平均値より大きく、
前記センター領域のピン配置線の隣り合う間隔の平均値は、前記ショルダー領域のピン配置線の隣り合う間隔の平均値の102~120%である、ことを特徴とする。
前記ピン配置線は、複数のスタッドピンを互いに間隔をあけてタイヤ周方向に沿って配置するための仮想線である。
【0010】
前記センター領域のピン配置線の隣り合う間隔のうち隣接する2つの間隔に関して、第1の間隔A1は、前記第1の間隔A1を確定する2本のピン配置線のうちタイヤ幅方向外側に位置するピン配置線L1と、当該ピン配置線L1とタイヤ幅方向外側に隣り合うピン配置線L2との間の第2の間隔A2と等しい又は前記第2の間隔A2より広いことが好ましい。
【0011】
本発明の別の一態様は、複数のスタッドピン取付用孔をトレッド部に有するスタッダブルタイヤであって、
前記トレッド部の接地領域は、
タイヤセンターラインからタイヤ幅方向の両側に接地幅の5~25%の長さの範囲に位置するセンター領域と、
前記センター領域のタイヤ幅方向両側に位置する2つのショルダー領域と、を有し、
前記センター領域及び前記ショルダー領域のそれぞれにおいて、タイヤ周方向に延びる4本以上のピン配置線に沿って、前記ピン配置線ごとに、前記スタッドピン取付用孔のうちの複数のスタッドピン取付用孔が配置され、
前記センター領域のピン配置線の隣り合う間隔の平均値は、前記ショルダー領域のピン配置線の隣り合う間隔の平均値より大きく、
前記センター領域及び前記ショルダー領域のそれぞれにおいて、前記ピン配置線の隣り合う間隔は等しい、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の別の一態様は、複数のスタッドピン取付用孔をトレッド部に有するスタッダブルタイヤであって、
前記トレッド部の接地領域は、
タイヤセンターラインからタイヤ幅方向の両側に接地幅の5~25%の長さの範囲に位置するセンター領域と、
前記センター領域のタイヤ幅方向両側に位置する2つのショルダー領域と、を有し、
前記センター領域及び前記ショルダー領域のそれぞれにおいて、タイヤ周方向に延びる4本以上のピン配置線に沿って、前記ピン配置線ごとに、前記スタッドピン取付用孔のうちの複数のスタッドピン取付用孔が配置され、
前記センター領域のピン配置線の隣り合う間隔の平均値は、前記ショルダー領域のピン配置線の隣り合う間隔の平均値より大きく、
前記センター領域及び前記ショルダー領域のそれぞれにおいて、前記ピン配置線の隣り合う間隔は、タイヤ幅方向外側に連れて段階的又は連続的に狭くなっている、ことを特徴とする。
【0013】
前記センター領域の前記ピン配置線のうちの第1のピン配置線上に配置された、タイヤ周方向に隣り合う第1のスタッドピン取付用孔及び第2のスタッドピン取付用孔の間の間隔Cは、当該第1のピン配置線と異なる第2のピン配置線上に配置された、前記第1のスタッドピン取付用孔に最も近い第3のスタッドピン取付用孔と、前記第1のスタッドピン取付用孔とのタイヤ周方向の間隔Dの2.5倍以上の長さであることが好ましい。
前記第2のピン配置線は、前記第1のスタッドピン取付用孔と最も近いスタッドピン取付用孔が配置されたピン配置線である。
【0014】
前記センター領域の前記ピン配置線のうちの第1のピン配置線上に配置された、タイヤ周方向に隣り合う2つのスタッドピン取付用孔の間の間隔は、タイヤ周方向の接地長の1/3以上の長さであることが好ましい。
【0015】
前記センター領域の前記ピン配置線のうちの第1のピン配置線上に配置された第1のスタッドピン取付用孔と、前記第1のピン配置線と隣り合う第3のピン配置線上に配置された、前記第1のスタッドピン取付用孔と最も近い第4のスタッドピン取付用孔と間のタイヤ周方向の間隔は、タイヤ周方向の接地長の1/5以上の長さの間隔をあけて配置されていることが好ましい。
前記第3のピン配置線は、前記第2のピン配置線と同じピン配置線であってもよい。
【0016】
本発明の別の一態様は、空気入りタイヤであって、
スタッドピンと、
前記スタッドピンが取り付けられるスタッドピン取付用孔を有する前記スタッダブルタイヤと、を備えることを特徴とする。
前記スタッドピンは、複数備えられ、前記スタッドピン取付用孔のそれぞれに取り付けられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のスタッドピンによれば、氷雪路面での制動性能に優れたスタッドタイヤが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態の空気入りタイヤの断面を示すタイヤ断面図である。
【
図2】
図1の空気入りタイヤに適用されたトレッドパターンの一例を示す図である。
【
図3】空気入りタイヤのスタッドピンの一例を示す図である。
【
図4】
図2のトレッドパターンにおいてピン配置線を示した図である。
【
図5】スタッドピンの配置構成の一例を説明する図である。
【
図6】スタッドピンの配置構成の他の一例を説明する図である。
【
図7】スタッドピンの配置構成の他の一例を説明する図である。
【
図8】スタッドピンの配置構成の他の一例を説明する図である。
【
図9】スタッドピンの配置構成の他の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の空気入りタイヤを詳細に説明する。
(タイヤの全体説明)
以下、本実施形態の空気入りタイヤについて説明する。
図1は、本実施形態の空気入りタイヤ(以降、タイヤという)10の、タイヤ径方向に沿って切断した断面を示すタイヤ断面図である。タイヤ10は、トレッド部にスタッドピンが埋め込まれたスタッドタイヤである。
タイヤ10は、例えば、乗用車用タイヤである。乗用車用タイヤは、JATMA YEAR BOOK 2015(日本自動車タイヤ協会規格)のA章に定められるタイヤをいう。この他、B章に定められる小型トラック用タイヤおよびC章に定められるトラック及びバス用タイヤに適用することもできる。
【0020】
以降で説明するタイヤ周方向とは、タイヤ回転軸線Axisを中心にタイヤ10を回転させたとき、トレッド面の回転する方向(両回転方向)をいい、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸線に対して直交して延びる放射方向をいう。タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸線からタイヤ径方向に離れる側をいい、タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸線に向かってタイヤ径方向に近づく側をいう。タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸線の方向に平行な方向をいい、タイヤ幅方向外側とは、タイヤ10のタイヤセンターラインCLから離れる両側をいう。タイヤ幅方向内側とは、タイヤ10のタイヤセンターラインCLに向かってタイヤ幅方向に近づく側をいう。
【0021】
(タイヤ構造)
タイヤ10は、骨格材として、一対のビードコア16と、カーカスプライ層12と、ベルト層14とを有し、これらの骨格材の周りに、トレッドゴム部材18と、サイドゴム部材20と、ビードフィラーゴム部材22と、リムクッションゴム部材24と、インナーライナゴム部材26と、を主に有する。
【0022】
一対のビードコア16は円環状であり、タイヤ幅方向の両端部であって、タイヤ径方向内側端部に配置されている。
カーカスプライ層12は、有機繊維をゴムで被覆した1又は複数のカーカスプライ材12a、12bからなる。カーカスプライ材12a、12bは、トロイダル形状をなすよう一対のビードコア16の間に巻き回されている。
ベルト層14は複数のベルト材14a、14bからなり、カーカスプライ層12のタイヤ径方向外側にタイヤ周方向に巻き回されている。タイヤ径方向内側のベルト材14aのタイヤ幅方向の幅は、タイヤ径方向外側のベルト材14bの幅に比べて広い。
ベルト材14a、14bは、スチールコードにゴムを被覆した部材である。ベルト材14aのスチールコード、および、ベルト材14bのスチールコードは、タイヤ周方向に対して所定の角度、例えば20~30度傾斜して配置されている。ベルト材14aのスチールコードと、ベルト材14bのスチールコードとは、タイヤ周方向に対して互いに逆方向に傾斜し、互いに交錯する。ベルト層14は充填された空気圧によるカーカスプライ層12の膨張を抑制する。
【0023】
ベルト層14のタイヤ径方向外側には、トレッドゴム部材18が設けられる。トレッドゴム部材18の両端部には、サイドゴム部材20が接続されている。トレッドゴム部材18は、タイヤ径方向外側に設けられる上層トレッドゴム部材18aと、タイヤ径方向内側に設けられる下層トレッドゴム部材18bとの2層のゴム部材からなる。上層トレッドゴム部材18aには、周方向溝、ラグ溝や、スタッドピンの取付用孔(
図2参照)が設けられる。トレッド面は、タイヤ幅方向外側に向かうに連れて、タイヤ幅方向に対する傾斜角度が大きくなっている。
【0024】
サイドゴム部材20のタイヤ径方向内側の端には、リムクッションゴム部材24が設けられる。リムクッションゴム部材24はタイヤ10を装着するリムと接触する。ビードコア16のタイヤ径方向外側には、ビードコア16の周りに巻きまわしたカーカスプライ層12に挟まれるようにビードフィラーゴム部材22が設けられている。タイヤ10とリムとで囲まれる空気を充填するタイヤ空洞領域に面するタイヤ10の内表面には、インナーライナゴム部材26が設けられている。
この他に、タイヤ10は、ベルト層14のタイヤ径方向外側面を覆うベルトカバー層28を備える。ベルトカバー層28は、有機繊維と、この有機繊維を被覆するゴムとからなる。
【0025】
(トレッドパターン及びスタッドピン)
図2は、タイヤ10のトレッドパターン30を平面上に展開したトレッドパターンの一部の平面展開図である。なお、タイヤ10に採用されるトレッドパターンは、トレッドパターン30に制限されない。スタッドピン(
図3参照)は、後述するスタッドピン取付用孔45に装着される。
タイヤ10は
図2に示されるように、タイヤ周方向の一方の向きを示すタイヤ回転方向Rが指定されている。タイヤ回転方向Rの向きは、タイヤ10のサイドウォール表面に設けられた数字、記号等によって表示され指定されている。
【0026】
トレッドパターン30は、複数の第1傾斜溝31と、複数の第1ラグ溝32と、複数の第2傾斜溝33と、複数の第3傾斜溝34と、第2ラグ溝35と、第4傾斜溝36とを備えている。
図2において、符号CLはタイヤのセンターラインを示す。
【0027】
第1傾斜溝31は、タイヤ周方向に複数設けられている。各第1傾斜溝31は、タイヤセンターラインCLから離間した位置を開始端とし、開始端からタイヤ回転方向Rと反対方向に向かうとともに、タイヤ幅方向外側に向かって傾斜して延びている。
【0028】
第1ラグ溝32は、タイヤ周方向に複数設けられている。各第1ラグ溝32は、第1傾斜溝31のそれぞれのタイヤ幅方向外側端部からタイヤ回転方向Rと反対方向に向かうとともに、タイヤ幅方向外側に向かって傾斜して接地端よりもタイヤ幅方向外側まで延びている。
【0029】
第2傾斜溝33は、タイヤ周方向に複数設けられている。各第2傾斜溝33は、第1傾斜溝31のそれぞれのタイヤ幅方向外側端部からタイヤ回転方向Rと反対方向に向かうとともに、タイヤ幅方向内側に向かって傾斜して、隣接する他の第1傾斜溝31まで延在している。
【0030】
第3傾斜溝34は、タイヤ周方向に複数設けられている。各第3傾斜溝34は、第1ラグ溝32のそれぞれの途中からタイヤ回転方向Rと反対方向に向かうとともに、タイヤ幅方向外側に向かって傾斜して延びている。第3傾斜溝34は、タイヤ幅方向外側に向かって溝幅が徐々に狭くなり、タイヤ幅方向内側に向かって溝幅が徐々に広くなる形状をしている。
【0031】
第2ラグ溝35は、タイヤ周方向に隣接する2つの第1ラグ溝32の間に、第1傾斜溝31および第2傾斜溝33と交差しない範囲で、第1ラグ溝32と平行に延在している。
【0032】
第3傾斜溝34は、第2ラグ溝35を突き抜けて延びている。第2ラグ溝35の第3傾斜溝34との交差部よりもタイヤ幅方向内側の部分35aの幅は、第3傾斜溝34との交差部よりもタイヤ幅方向外側の部分35bの幅よりも狭い。
第4傾斜溝36は、第1傾斜溝31の途中から、タイヤ周方向の一方向に向かうとともに、タイヤ幅方向内側に傾斜して延在している。
【0033】
第1傾斜溝31、第1ラグ溝32、第2傾斜溝33及びトレッド接地端により囲まれる陸部41には、サイプ43が設けられている。第1傾斜溝31および第2傾斜溝33よりもタイヤ幅方向内側の陸部42には、サイプ44が設けられている。サイプ44はタイヤ幅方向とほぼ平行に延在している。サイプ43はサイプ44に対して傾斜している。サイプ43がサイプ44に対して傾斜していることで、タイヤ10の旋回性能を高めることができる。
【0034】
図2に示すように、第1傾斜溝31、第1ラグ溝32、第2傾斜溝33及びトレッド接地端により囲まれる陸部41、及び、第1傾斜溝31および第2傾斜溝33よりもタイヤ幅方向内側の陸部42には、スタッドピン取付用孔45が設けられている。スタッドピン取付用孔45に後述するスタッドピン50が装着されることで、タイヤ10はスタッドタイヤとして機能し、氷上制動、氷上旋回といった氷上性能が高まる。
【0035】
図3は、スタッドピン50の一例を示す外観斜視図である。
スタッドピン50は、埋設基部52と、先端部60と、を主に有する。埋設基部52は、タイヤ10のトレッド部内に埋設される。埋設基部52の側面がスタッドピン取付用孔45の側面からトレッドゴム部材18に押圧されることによりスタッドピン50がトレッド部に固定される。スタッドピン50は、埋設基部52及び先端部60が、方向Xに沿ってこの順に形成されている。埋設基部52は、方向Xに沿ってこの順に、底部54と、シャンク部56と、胴体部58と、を有している。なお、方向Xは、埋設基部52が先端部60に向かって延びる延在方向であり、スタッドピン50をスタッドピン取付用孔45に装着したときに、トレッド部のトレッド面に対する法線方向と一致する。
【0036】
(スタッドピン取付用孔の配置構成)
次に、スタッドピン取付用孔45の配置構成について説明する。
図4は、
図2のトレッドパターン30においてピン配置線Lを示した図である。
図4において、
図2のトレッドパターンのサイプ43、44の図示は省略されている。
【0037】
トレッド部の接地領域は、センター領域Ceと、2つのショルダー領域Shと、を有している。
センター領域Ceは、タイヤセンターラインCLからタイヤ幅方向の両側にそれぞれ接地幅の5~25%の長さの範囲に位置する領域である。ショルダー領域Shは、センター領域Ceのタイヤ幅方向両側に位置する領域である。
【0038】
接地領域は、タイヤ10を正規リムに組み付け、正規内圧を充填し、正規荷重の88%を負荷荷重とした条件において水平面に接地させたときに接地面となるトレッド表面の領域である。接地幅は、接地面のタイヤ幅方向の両端(接地端)の間のタイヤ幅方向長さである。正規リムとは、JATMAに規定される「測定リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。正規内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。正規荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。
一実施形態によれば、センター領域Ceによる制動性能を確保する観点から、センター領域Ceは、タイヤセンターラインCLからタイヤ幅方向の両側にそれぞれ接地幅の15~25%、好ましくは15~20%の長さの範囲に位置する領域である。
【0039】
センター領域Ce及びショルダー領域Shのそれぞれにおいて、タイヤ周方向に延びる4本以上のピン配置線Lに沿って、ピン配置線Lごとに、スタッドピン取付用孔45のうちの複数のスタッドピン取付用孔45が配置されている。ピン配置線Lは、複数のスタッドピン50を互いに間隔をあけてタイヤ周方向に沿って配置するための仮想線である。ピン配置線Lに沿って配置された複数のスタッドピン取付用孔50は、タイヤ周方向に延びる孔列を形成する。すなわち、本実施形態では、センター領域Ce及びショルダー領域Shのそれぞれにおいて、4本以上の孔列を有している。ピン配置線Lに沿って配置される複数のスタッドピン取付用孔50それぞれのトレッド表面における中心は、当該ピン配置線Lを通る。センター領域Ce及びショルダー領域Shの両方に、スタッドピン取付用孔45が配置されていることで、氷上路面での制動性能、旋回性能が確保される。また、センター領域Ce、及び、ショルダー領域Sh(
図4に示す2つのショルダー領域Sh)、のそれぞれの領域に、ピン配置線Lが4本以上定められていることによって、1本のピン配置線L上に配置されるスタッドピン50の数が多くなりすぎず、スタッドピン50をタイヤ幅方向に分散して配置することができる。
なお、タイヤ10に装着されるスタッドピン50の数は、例えば90~200個である。1本のピン配置線L上に配置されるスタッドピン50の数は、例えば、5~12個である。タイヤセンターラインCLを基準としたタイヤ幅方向の一方の側(半トレッド領域)において、センター領域Ce及びショルダー領域Shのそれぞれに配置されるスタッドピン50の個数は、例えば、センター領域Ceのピン配置線Lの数と、2つのうちの一方のショルダー領域Shのピン配置線Lの数の比に応じて定められ、当該比が1:1である場合、同数である。
半トレッド領域において、センター領域Ce及びショルダー領域Shのそれぞれのピン配置線Lの数は、例えば2~10本である。
図4に示す例では、半トレッド領域において、センター領域Ceに、タイヤセンターラインCLを通るピン配置線Lを含む3本、ショルダー領域Shに8本、設定されている。
【0040】
センター領域Ceのピン配置線Lの隣り合う複数の間隔の平均値(平均間隔)は、ショルダー領域Shのピン配置線Lの隣り合う複数の間隔の平均値(平均間隔)より大きい。
制動時、例えばタイヤがフルロックした状態では、路面と接触したスタッドピンによって削られた氷雪の屑が路面に残り、先に接地した後方のスタッドピンが路面を引っ掻くのを阻害して、制動性能が低下する場合がある。一般に、トレッド部は、タイヤセンターラインCLからタイヤ幅方向外側に遠ざかるに連れて、タイヤ幅方向に対するトレッド表面の傾斜角度が大きくなるラウンド形状を有している。このため、スタッドピンによって削られた氷雪の屑は、ショルダー領域では幅方向外側に向かって吐き出されやすい一方で、センター領域では接地面内に溜まりやすく、スタッドピンの引っ掻き力が低下しやすい。また、センター領域は、ショルダー領域と比べ接地圧が高いため、スタッドピンに削られて発生する屑の量が多く、スタッドピンの引っ掻き力の低下が顕著である。
本実施形態では、センター領域Ceのピン配置線Lの平均間隔を、ショルダー領域Shのピン配置線Lの平均間隔よりも広くすることで、車両進行方向の前方のスタッドピン50によって削られた氷雪の屑が、後方のスタッドピン50の進路上に残ることを抑え、後方のスタッドピン50の引っ掻き力の低下を抑制できる。センター領域Ceは接地圧が高く、センター領域Ceのスタッドピン50は、特に制動に寄与するため、本実施形態によれば、氷雪路面での制動性能が向上する。
また、ピン配置線の平均間隔が狭いと、前方のスタッドピンが路面を削った痕(溝)を、後方のスタッドピンが踏みやすいため、路面を引っ掻く力が低下するおそれがある。しかし、本実施形態では、センター領域Ceのピン配置線Lの平均間隔がショルダー領域Shよりも広いことで、後方のスタッドピン50が路面上の痕を引っ掻くことが抑制され、路面を引っ掻く力の低下が抑制される。これによっても、氷雪路面の制動性能が向上する。
【0041】
一実施形態によれば、氷雪の屑によって後方のスタッドピン50の引っ掻き力が低下することを抑制するために、センター領域Ceのピン配置線Lの平均間隔は、ショルダー領域Shのピン配置線Lの平均間隔の102%以上であることが好ましく、105%以上であることがより好ましい。
一方、センター領域Ceのピン配置線Lの間隔が広すぎると、センター領域Ceのスタッドピン50の数が減ることで制動性能が低下するおそれがある。ここで、センター領域Ceのピン配置線Lの間隔を広げつつ、制動性能の低下を避けるために、センター領域Ceのスタッドピン50の数を減らさなかった場合、1本あたりのピン配置線L上のスタッドピン50の数が多くなり、前方のスタッドピン50が削った路面上の痕を後方のスタッドピンが踏みやすくなる。このため、一実施形態によれば、センター領域Ceのピン配置線Lの平均間隔は、ショルダー領域Shのピン配置線Lの平均間隔の120%以下であることが好ましく、115%以下であることがより好ましい。
【0042】
図5は、スタッドピン50の配置構成の一例を説明する図である。
図6は、スタッドピンの配置構成の他の一例を説明する図である。以降の図では、トレッドパターンの図示が省略されている。
図5及び
図6において、センター領域Ce及びショルダー領域Shのピン配置線Lの数は、
図4のそれぞれのピン配置線Lの数と異なっている。
図5に示す例では、センター領域Ceの隣り合うピン配置線Lの間隔は一定である。
図6に示す例では、センター領域Ceの隣り合うピン配置線Lの間隔は、タイヤ幅方向外側に向かうに連れて連続的に小さくなっている。
一実施形態によれば、
図5及び
図6に示すように、センター領域Ceのピン配置線Lの隣り合う複数の間隔のうち隣接するいずれの2つの間隔A1、A2に関しても、間隔A1(第1の間隔)は、間隔A1を確定する2本のピン配置線のうちタイヤ幅方向外側に位置するピン配置線L1と、当該ピン配置線L1とタイヤ幅方向外側に隣り合うピン配置線L2との間の間隔A2(第2の間隔)と等しい又は間隔A2より広いことが好ましい。このような形態では、センター領域Ceの隣り合うピン配置線Lの間隔は、タイヤ幅方向外側に向かうに連れて、一定、あるいは、段階的又は連続的に狭く(小さく)なっている。タイヤセンターラインCLに近い接地領域であるほど、スタッドピン50によって削られた氷雪の屑が溜まりやすいため、上記形態によって、センター領域Ceの中でもタイヤセンターラインCLに近い領域において、スタッドピン50の引っ掻き力が低下することを確実に抑制することができる。この観点からは、
図6に示すように、間隔A1は間隔A2より広いことが特に好ましい。
【0043】
一方で、
図5に示すように、センター領域Ce及びショルダー領域Shのそれぞれにおいて、隣り合うピン配置線の間隔は等しいことも好ましい。センター領域Ceにおいてピン配置線Lの間隔が等しいことで、センター領域Ceのうちタイヤ幅方向外側に位置するスタッドピンが、隣のピン配置線L上のスタッドピン50の削り痕を踏むことを抑制できる。
【0044】
図7は、スタッドピン50の配置構成の他の一例を説明する図である。以降の図では、一部のピン配置線だけを示している。
一実施形態によれば、
図7に示すように、センター領域Ceのピン配置線Lのうちのピン配置線L1(第1のピン配置線)上に配置された、タイヤ周方向に隣り合うスタッドピン取付用孔45a、45b(第1のスタッドピン取付用孔及び第2のスタッドピン取付用孔)の間の間隔Cは、当該ピン配置線L1と異なるピン配置線Li(第2のピン配置線)上に配置された、スタッドピン取付用孔45aに最も近いスタッドピン取付用孔45c(第3のスタッドピン取付用孔)と、スタッドピン取付用孔45aとのタイヤ周方向の間隔Dの2.5倍以上の長さであることが好ましい。ピン配置線Liは、スタッドピン取付用孔45aと最も近いスタッドピン取付用孔45cが配置されたピン配置線である。なお、以降の説明において、2つのスタッドピン取付用孔の間の間隔とは、トレッド表面におけるスタッドピン取付用孔の中心位置同士の間隔を意味する。1本のピン配置線上に配置された複数のスタッドピン同士の間隔が短いと、制動時に、前方のスタッドピンによって削られた路面を後方のスタッドピンが再度引っ掻く場合があり、十分な引っ掻き力が得られず、制動距離が長くなる場合がある。この形態では、C/D≧2.5を満たすようスタッドピン50を配置することによって、制動距離が長くなることが抑制される。好ましくは、C/D≧3.5である。C/Dの上限値は、例えば、5である。
【0045】
図8は、スタッドピン50の配置構成の他の一例を説明する図である。
一実施形態によれば、
図8に示すように、センター領域Ceのピン配置線Lのうちのピン配置線L1上に配置された、タイヤ周方向に隣り合うスタッドピン取付用孔45a、45bの間の間隔Cは、タイヤ周方向の接地長の1/3以上の長さであることが好ましい。ここでいう接地長は、ピン配置線L1が位置するタイヤ幅方向位置における上記接地面のタイヤ周方向長さをいう。間隔Cが接地長の1/3以上(C≧(接地長/3))であることによって、1本のピン配置線L上に配置された複数のスタッドピン50同士の間隔が確保され、制動時に、前方のスタッドピン50によって削られた路面を後方のスタッドピン50が再度引っ掻くことを抑制し、十分な引っ掻き力が得られずに制動距離が長くなることを抑制できる。間隔Cの上限値は、例えば1/2である。
【0046】
図9は、スタッドピン50の配置構成の他の一例を説明する図である。
一実施形態によれば、
図9に示すように、センター領域Ceのピン配置線Lのうちのピン配置線L1上に配置されたスタッドピン取付用孔45aと、ピン配置線L1と隣り合うピン配置線L3(第3のピン配置線)上に配置された、スタッドピン取付用孔45aと最も近いスタッドピン取付用孔45d(第4のスタッドピン取付用孔)と間のタイヤ周方向の間隔Eは、タイヤ周方向の接地長の1/5以上の長さの間隔をあけて配置されていることが好ましい。ピン配置線L3は、上記ピン配置線Liのうちの1本である。ここでの接地長は、ピン配置線L3が位置するタイヤ幅方向位置における上記接地面のタイヤ周方向長さをいう。間隔Eが接地長の1/5未満であると、制動時に、スタッドピン50によって削られた氷雪の屑が、隣のピン配置線L上のスタッドピン50の進路上に残って引っ掻き力を低下させるおそれがある。この実施形態では、間隔Eが接地長の1/5以上(E≧(接地長/5))であることによって、上記スタッドピン50の引っ掻き力の低下が抑制される。間隔Eの上限値は、例えば1/3である。
【0047】
(実施例、比較例)
本発明の効果を確認するために、タイヤサイズ205/55R16 94Tのスタッドタイヤを、以下の実施例、比較例ごとに4本ずつ作製し、排気量2Lの前輪駆動の乗用車に装着して、氷上制動性能を調べた。車両のリムサイズは16×6.5Jであり、空気圧は210kPaとした。
実施例1~6のタイヤ及びトレッドパターンには、表1に示す点を除いて、上記実施形態および
図1~
図4に示される形態のものを用いた。実施例1~6において、センター領域Ceのピン配置線Lの平均間隔Aを6.5mm、ショルダー領域Shのピン配置線Lの平均間隔Bを6mmとした。
比較例のスタッドピンは、平均間隔Aを6mmとした点を除いて、実施例2と同様とした。
【0048】
表1において、「ピン配置」は、上記平均間隔Aと上記平均間隔Bの大小関係を意味する。
「センター領域内のピン配置」は、センター領域Ce内の隣り合う上記間隔A1、A2の大小関係を意味し、「A1<A2」は、幅方向外側に向かうに連れて間隔が広く、「A1>A2」は、幅方向外側に向かうに連れて間隔が狭く、「A1=A2」は等間隔であることを意味する。実施例1~6では、隣り合うピン配置線Lの間隔を、センター領域Ceでは6~7mm(実施例2では6mm)、ショルダー領域では5.5~6.5mmの範囲内で変化させた。
「最も近いピン同士の間隔Dに対する、同一ピン配置線上の最小間隔C/D」は、上記C/Dの値を示し、「接地長に対する、同一ピン配置線上の最小間隔C」は、上記説明した間隔C≧(接地長/3)の値を示し、「接地長に対する、隣り合うピン配置線上の最小間隔E」は、上記説明した間隔E≧(接地長/5)の値を示す。
【0049】
〔氷上制動性能〕
氷路上を、走行速度20km/時で車両を走行した状態から、ブレーキペダルを最深位置まで一定の力で踏み込んで走行速度5km/時になるまでの距離(制動距離)を測定した。測定した距離の逆数を用いて、比較例を100として指数化した。指数が大きいほど距離が短く、氷上制動性能に優れることを示す。指数が102以上である場合を、氷雪路面での制動性能に優れると評価した。
【0050】
【0051】
比較例と、実施例1~6とを対比すると、ピン配置線の平均間隔に関して、A>Bを満たすようスタッドピン取付用孔を配置した場合は、氷雪路面での制動性能に優れることがわかる。
実施例2、3と、実施例1とを対比すると、センター領域Ce内のスタッドピン取付用孔を、A1>A2あるいはA1=A2を満たすよう配置することで、氷雪路面の制動性能がさらに良好になることがわかる。
実施例3~6の対比により、C/D≧2.5を満たすようスタッドピン取付用孔を配置すること、間隔E≧接地長/3を満たすようスタッドピン取付用孔を配置すること、間隔E≧接地長/3を満たすようスタッドピン取付用孔を配置すること、のいずれによっても氷雪路面での制動性能がさらに良好になることがわかる。
【0052】
以上、本発明のスタッダブルタイヤおよび空気入りタイヤについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0053】
10 空気入りタイヤ
18 トレッドゴム部材
45 取付用孔
50 スタッドピン
L ピン配置線