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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/24 20190101AFI20221213BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20221213BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20221213BHJP
   B60L 53/62 20190101ALI20221213BHJP
   B60L 58/16 20190101ALI20221213BHJP
   B60L 7/24 20060101ALI20221213BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20221213BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20221213BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20221213BHJP
   B60T 8/171 20060101ALN20221213BHJP
【FI】
B60L58/24
B60L50/60
B60L53/14
B60L53/62
B60L58/16
B60L7/24 D
B60L9/18 J
H02J7/00 P
B60T8/17 C
B60T8/171 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020066083
(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公開番号】P2021078335
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2021-11-23
(31)【優先権主張番号】P 2019199436
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】竹内 良友
(72)【発明者】
【氏名】馬場 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嘉洋
(72)【発明者】
【氏名】倉知 大祐
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-171208(JP,A)
【文献】特開2013-162645(JP,A)
【文献】特開2015-033154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 58/24
B60L 50/60
B60L 53/14
B60L 53/62
B60L 58/16
B60L 7/24
B60L 9/18
H02J 7/00
B60T 8/17
B60T 8/171
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置(22)と、
前記蓄電装置に電気的に接続されるインバータ(21)と、
前記インバータに電気的に接続される回転電機(20)と、を備える車両(10)に適用される車両用制御装置(30,31,61)において、
前記車両の停車中において前記車両の外部に設置される給電設備(41)から前記蓄電装置に充電する第1制御、又は前記車両の走行中に前記インバータを介して前記回転電機と前記蓄電装置との間で電力の伝達を行う第2制御のいずれを行うかを判定する判定部と、
前記判定部により前記第1制御を行うと判定された場合、前記給電設備から前記蓄電装置伝達される電力又は電流のいずれかである制御量を第1制限値(WCin,WCоut)以下にする制御を行い、前記判定部により前記第2制御を行うと判定された場合、前記回転電機と前記蓄電装置との間で伝達される電力又は電流のいずれかである制御量を第2制限値(WDin,WDоut)以下にするように前記インバータの制御を行う制御部と、
設定部と、を備え、
前記第1制御の完了後に前記車両の走行を開始してから、前記第1制御が再度開始されるまでの期間を1走行サイクルとし、
前記設定部は、
今回の前記第1制御の実行指示がなされた場合、前記蓄電装置の充電開始に先立ち、前記第1制御が開始されてから完了するまでの平均時間と、前記第1制御が開始されてから完了するまでの前記蓄電装置の平均充電電力とに基づいて、前記蓄電装置を規定電力で充電する今回の前記第1制御が完了したと仮定したときにおける前記蓄電装置の温度である第1温度を予測し、
予測した前記第1温度、前記1走行サイクルにおける前記蓄電装置の平均放電電力、及び前記1走行サイクルに要する平均時間に基づいて、今回の前記第1制御の後に実施される次回の前記1走行サイクルが完了したと仮定した場合における前記蓄電装置の温度である第2温度を予測し、
予測した前記第2温度が、前記蓄電装置の放電可能な最大電力を前記車両の走行要求電力にする前記蓄電装置の温度である要求温度(Tbwdst)以下になるか否かを判定し、予測した前記第2温度が前記要求温度以下になると判定するまで、前記第2温度の予測に用いる前記規定電力を低下させ、
前記第1制限値を、予測した前記第2温度が前記要求温度以下になるとの判定時に用いた前記規定電力に設定する車両用制御装置。
【請求項2】
蓄電装置(22)と、
前記蓄電装置に電気的に接続されるインバータ(21)と、
前記インバータに電気的に接続される回転電機(20)と、を備える車両(10)に適用される車両用制御装置(30,31,61)において、
前記車両の停車中において前記車両の外部に設置される給電設備(41)と前記蓄電装置との間で電力の伝達を行う第1制御、又は前記車両の走行中に前記インバータを介して前記回転電機と前記蓄電装置との間で電力の伝達を行う第2制御のいずれを行うかを判定する判定部と、
制御部と、
設定部と、を備え、
前記制御部は、
前記判定部により前記第1制御を行うと判定された場合、前記給電設備から前記蓄電装置へと伝達される電力又は電流のいずれかである制御量を充電時充電制限値(WCin)以下にするように、又は前記蓄電装置から前記給電設備へと伝達される前記制御量を充電時放電制限値(WCоut)以下にするように前記インバータの制御を行い、
記判定部により前記第2制御を行うと判定された場合、前記回転電機の回生発電に伴って前記回転電機から前記蓄電装置へと伝達される前記制御量を走行時充電制限値(WDin)以下にするように、又は前記蓄電装置から前記回転電機へと伝達される前記制御量を走行時放電制限値(WDоut)以下にするように前記インバータの制御を行い、
前記設定部は、
前記充電時放電制限値及び前記充電時充電制限値を前記走行時放電制限値及び前記走行時充電制限値よりも小さい値に設定し、
前記充電時放電制限値を前記走行時放電制限値よりも小さい値に設定し、前記充電時充電制限値を前記走行時充電制限値よりも小さい値に設定する車両用制御装置。
【請求項3】
蓄電装置(22)と、
前記蓄電装置に電気的に接続されるインバータ(21)と、
前記インバータに電気的に接続される回転電機(20)と、を備える車両(10)に適用される車両用制御装置(30,31,61)において、
前記車両の停車中において前記車両の外部に設置される給電設備(41)と前記蓄電装置との間で電力の伝達を行う第1制御、又は前記車両の走行中に前記インバータを介して前記回転電機と前記蓄電装置との間で電力の伝達を行う第2制御のいずれを行うかを判定する判定部と、
前記判定部により前記第1制御を行うと判定された場合、前記給電設備と前記蓄電装置との間で伝達される電力又は電流のいずれかである制御量を第1制限値(WCin,WCоut)以下にする制御を行い、前記判定部により前記第2制御を行うと判定された場合、前記回転電機と前記蓄電装置との間で伝達される電力又は電流のいずれかである制御量を第2制限値(WDin,WDоut)以下にするように前記インバータの制御を行う制御部と、
前記蓄電装置の温度を取得する温度取得部と、
取得された温度が制限開始温度(Tstart)以上になった場合、前記第1制限値を前記第2制限値よりも小さい値に設定し、取得された温度が、前記制限開始温度よりも高い限界温度(Tlimit)以上になった場合、取得された温度が前記制限開始温度未満の場合よりも前記第2制限値を小さい値に設定する設定部と、を備える車両用制御装置。
【請求項4】
前記設定部は、取得された温度が前記限界温度以上になった場合、前記第2制限値を0に設定する請求項に記載の車両用制御装置。
【請求項5】
蓄電装置(22)と、
前記蓄電装置に電気的に接続されるインバータ(21)と、
前記インバータに電気的に接続される回転電機(20)と、を備える車両(10)に適用される車両用制御装置(30,31,61)において、
前記車両の停車中において前記車両の外部に設置される給電設備(41)と前記蓄電装置との間で電力の伝達を行う第1制御、又は前記車両の走行中に前記インバータを介して前記回転電機と前記蓄電装置との間で電力の伝達を行う第2制御のいずれを行うかを判定する判定部と、
制御部と、
設定部と、を備え、
前記制御部は、
前記判定部により前記第1制御を行うと判定された場合、前記給電設備から前記蓄電装置へと伝達される電力又は電流のいずれかである制御量を充電時充電制限値(WCin)以下にするように、又は前記蓄電装置から前記給電設備へと伝達される前記制御量を充電時放電制限値(WCоut)以下にするように前記インバータの制御を行い、
記判定部により前記第2制御を行うと判定された場合、前記回転電機と前記蓄電装置との間で伝達される電力又は電流のいずれかである制御量を第2制限値(WDin,WDоut)以下にするように前記インバータの制御を行い、
前記設定部は、
前記充電時放電制限値及び前記充電時充電制限値を前記第2制限値よりも小さい値に設定し、
前記充電時放電制限値を前記充電時充電制限値よりも小さい値に設定する車両用制御装置。
【請求項6】
蓄電装置(22)と、
前記蓄電装置に電気的に接続されるインバータ(21)と、
前記インバータに電気的に接続される回転電機(20)と、
車輪(11)に摩擦力を付与することにより制動力を発生させる機械式ブレーキ装置(60)と、を備える車両(10)に適用される車両用制御装置(30,31,61)において、
前記車両の停車中において前記車両の外部に設置される給電設備(41)と前記蓄電装置との間で電力の伝達を行う第1制御、又は前記車両の走行中に前記インバータを介して前記回転電機と前記蓄電装置との間で電力の伝達を行う第2制御のいずれを行うかを判定する判定部と、
制御部と、
設定部と、を備え、
前記制御部は、
前記判定部により前記第1制御を行うと判定された場合、前記給電設備と前記蓄電装置との間で伝達される電力又は電流のいずれかである制御量を第1制限値(WCin,WCоut)以下にするように前記インバータの制御を行い、
前記車両の走行中において前記判定部により前記第2制御を行うと判定された場合、前記回転電機の回生発電に伴って前記回転電機から前記蓄電装置へと伝達される前記制御量を走行時充電制限値(WDin)以下にするように、又は前記蓄電装置から前記回転電機へと伝達される前記制御量を走行時放電制限値(WDоut)以下にするように前記インバータの制御を行い、
前記第2制御の実行中において、前記車輪に対して付与すべき総制動力(Fbrk)に基づいて、前記回転電機の回生発電に伴って発生する回生制動力(Fgb)を前記回転電機に発生させるように前記インバータの制御を行うとともに、機械式制動力(Fmb)を前記機械式ブレーキ装置から発生させるようにし、
前記設定部は、
前記第1制限値を前記走行時放電制限値及び前記走行時充電制限値よりも小さい値に設定し、
前記走行時充電制限値を前記走行時放電制限値よりも小さい値に設定する車両用制御装置。
【請求項7】
前記車両には、駆動輪(11)と動力伝達可能とされる走行動力源として前記回転電機のみが搭載されている請求項1~のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項8】
蓄電装置(22)と、
前記蓄電装置に電気的に接続されるインバータ(21)と、
前記インバータに電気的に接続される回転電機(20)と、
制御装置(30,31,61)と、を備える車両(10)に適用されるプログラムにおいて、
前記車両の停車中において前記車両の外部に設置される給電設備(41)から前記蓄電装置に充電する第1制御の完了後に前記車両の走行を開始してから、前記第1制御が再度開始されるまでの期間を1走行サイクルとし、
前記制御装置に、
前記第1制御、又は前記車両の走行中に前記インバータを介して前記回転電機と前記蓄電装置との間で電力の伝達を行う第2制御のいずれを行うかを判定する処理と、
前記第1制御を行うと判定された場合、前記給電設備から前記蓄電装置に伝達される電力又は電流のいずれかである制御量を第1制限値(WCin,WCоut)以下にする制御を行い、前記第2制御を行うと判定された場合、前記回転電機と前記蓄電装置との間で伝達される電力又は電流のいずれかである制御量を第2制限値(WDin,WDоut)以下にするように前記インバータの制御を行う処理と、
今回の前記第1制御の実行指示がなされた場合、前記蓄電装置の充電開始に先立ち、前記第1制御が開始されてから完了するまでの平均時間と、前記第1制御が開始されてから完了するまでの前記蓄電装置の平均充電電力とに基づいて、前記蓄電装置を規定電力で充電する今回の前記第1制御が完了したと仮定したときにおける前記蓄電装置の温度である第1温度を予測する処理と、
予測した前記第1温度、前記1走行サイクルにおける前記蓄電装置の平均放電電力、及び前記1走行サイクルに要する平均時間に基づいて、今回の前記第1制御の後に実施される次回の前記1走行サイクルが完了したと仮定した場合における前記蓄電装置の温度である第2温度を予測する処理と、
予測した前記第2温度が、前記蓄電装置の放電可能な最大電力を前記車両の走行要求電力にする前記蓄電装置の温度である要求温度(Tbwdst)以下になるか否かを判定し、予測した前記第2温度が前記要求温度以下になると判定するまで、前記第2温度の予測に用いる前記規定電力を低下させる処理と、
前記第1制限値を、予測した前記第2温度が前記要求温度以下になるとの判定時に用いた前記規定電力に設定する処理と、
を実行させるプログラム。
【請求項9】
蓄電装置(22)と、
前記蓄電装置に電気的に接続されるインバータ(21)と、
前記インバータに電気的に接続される回転電機(20)と、
制御装置(30,31,61)と、を備える車両(10)に適用されるプログラムにおいて、
前記制御装置に、
前記車両の停車中において前記車両の外部に設置される給電設備(41)と前記蓄電装置との間で電力の伝達を行う第1制御、又は前記車両の走行中に前記インバータを介して前記回転電機と前記蓄電装置との間で電力の伝達を行う第2制御のいずれを行うかを判定する処理と、
前記第1制御を行うと判定された場合、前記給電設備から前記蓄電装置へと伝達される電力又は電流のいずれかである制御量を充電時充電制限値(WCin)以下にするように、又は前記蓄電装置から前記給電設備へと伝達される前記制御量を充電時放電制限値(WCоut)以下にするように前記インバータの制御を行う処理と、
前記第2制御を行うと判定された場合、前記回転電機の回生発電に伴って前記回転電機から前記蓄電装置へと伝達される前記制御量を走行時充電制限値(WDin)以下にするように、又は前記蓄電装置から前記回転電機へと伝達される前記制御量を走行時放電制限値(WDоut)以下にするように前記インバータの制御を行う処理と、
前記充電時放電制限値及び前記充電時充電制限値を前記走行時放電制限値及び前記走行時充電制限値よりも小さい値に設定し、前記充電時放電制限値を前記走行時放電制限値よりも小さい値に設定し、前記充電時充電制限値を前記走行時充電制限値よりも小さい値に設定する処理と、
を実行させるプログラム。
【請求項10】
蓄電装置(22)と、
前記蓄電装置に電気的に接続されるインバータ(21)と、
前記インバータに電気的に接続される回転電機(20)と、
制御装置(30,31,61)と、を備える車両(10)に適用されるプログラムにおいて、
前記制御装置に、
前記車両の停車中において前記車両の外部に設置される給電設備(41)と前記蓄電装置との間で電力の伝達を行う第1制御、又は前記車両の走行中に前記インバータを介して前記回転電機と前記蓄電装置との間で電力の伝達を行う第2制御のいずれを行うかを判定する処理と、
前記第1制御を行うと判定された場合、前記給電設備と前記蓄電装置との間で伝達される電力又は電流のいずれかである制御量を第1制限値(WCin,WCоut)以下にする制御を行い、前記第2制御を行うと判定された場合、前記回転電機と前記蓄電装置との間で伝達される電力又は電流のいずれかである制御量を第2制限値(WDin,WDоut)以下にするように前記インバータの制御を行う処理と、
前記蓄電装置の温度を取得する処理と、
取得された温度が制限開始温度(Tstart)以上になった場合、前記第1制限値を前記第2制限値よりも小さい値に設定し、取得された温度が、前記制限開始温度よりも高い限界温度(Tlimit)以上になった場合、取得された温度が前記制限開始温度未満の場合よりも前記第2制限値を小さい値に設定する処理と、
を実行させるプログラム。
【請求項11】
蓄電装置(22)と、
前記蓄電装置に電気的に接続されるインバータ(21)と、
前記インバータに電気的に接続される回転電機(20)と、
制御装置(30,31,61)と、を備える車両(10)に適用されるプログラムにおいて、
前記制御装置に、
前記車両の停車中において前記車両の外部に設置される給電設備(41)と前記蓄電装置との間で電力の伝達を行う第1制御、又は前記車両の走行中に前記インバータを介して前記回転電機と前記蓄電装置との間で電力の伝達を行う第2制御のいずれを行うかを判定する処理と、
前記第1制御を行うと判定された場合、前記給電設備から前記蓄電装置へと伝達される電力又は電流のいずれかである制御量を充電時充電制限値(WCin)以下にするように、又は前記蓄電装置から前記給電設備へと伝達される前記制御量を充電時放電制限値(WCоut)以下にするように前記インバータの制御を行う処理と、
前記第2制御を行うと判定された場合、前記回転電機と前記蓄電装置との間で伝達される電力又は電流のいずれかである制御量を第2制限値(WDin,WDоut)以下にするように前記インバータの制御を行う処理と、
前記充電時放電制限値及び前記充電時充電制限値を前記第2制限値よりも小さい値に設定し、前記充電時放電制限値を前記充電時充電制限値よりも小さい値に設定する処理と、
を実行させるプログラム。
【請求項12】
蓄電装置(22)と、
前記蓄電装置に電気的に接続されるインバータ(21)と、
前記インバータに電気的に接続される回転電機(20)と、
車輪(11)に摩擦力を付与することにより制動力を発生させる機械式ブレーキ装置(60)と、
制御装置(30,31,61)と、を備える車両(10)に適用されるプログラムにおいて、
前記制御装置に、
前記車両の停車中において前記車両の外部に設置される給電設備(41)と前記蓄電装置との間で電力の伝達を行う第1制御、又は前記車両の走行中に前記インバータを介して前記回転電機と前記蓄電装置との間で電力の伝達を行う第2制御のいずれを行うかを判定する処理と、
前記第1制御を行うと判定された場合、前記給電設備と前記蓄電装置との間で伝達される電力又は電流のいずれかである制御量を第1制限値(WCin,WCоut)以下にするように前記インバータの制御を行う処理と、
前記車両の走行中において前記第2制御を行うと判定された場合、前記回転電機の回生発電に伴って前記回転電機から前記蓄電装置へと伝達される前記制御量を走行時充電制限値(WDin)以下にするように、又は前記蓄電装置から前記回転電機へと伝達される前記制御量を走行時放電制限値(WDоut)以下にするように前記インバータの制御を行う処理と、
前記第2制御の実行中において、前記車輪に対して付与すべき総制動力(Fbrk)に基づいて、前記回転電機の回生発電に伴って発生する回生制動力(Fgb)を前記回転電機に発生させるように前記インバータの制御を行うとともに、機械式制動力(Fmb)を前記機械式ブレーキ装置から発生させるようにする処理と、
前記第1制限値を前記走行時放電制限値及び前記走行時充電制限値よりも小さい値に設定し、前記走行時充電制限値を前記走行時放電制限値よりも小さい値に設定する処理と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に見られるように、蓄電装置と、蓄電装置に電気的に接続されるインバータと、インバータに電気的に接続される回転電機とを備える車両に適用される車両用制御装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4595829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この制御装置は、車両の停車中において車両の外部に設置される給電設備と蓄電装置との間で電力の伝達を行う第1制御、又は車両の走行中においてインバータを介して回転電機と蓄電装置との間で電力の伝達を行う第2制御のいずれかを行う。
【0005】
例えばユーザが蓄電装置を充電しようとする場合において、制御装置により第1制御が行われると、給電設備と蓄電装置との間で電力が伝達されるため、蓄電装置の温度が上昇する。
【0006】
ここで、蓄電装置の温度がその限界温度に到達すると、蓄電装置の充放電電力が大きく制限される。この制限下においてユーザが車両を走行させようとする場合、制御装置により第2制御が行われたとしても、車両を走行させることができなかったり、走行させることができたとしても意図どおりの走行を実現できなかったりする等、ドライバビリティが低下する懸念がある。
【0007】
本発明は、ドライバビリティの低下を抑制できる車両用制御装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、蓄電装置と、
前記蓄電装置に電気的に接続されるインバータと、
前記インバータに電気的に接続される回転電機と、を備える車両に適用される車両用制御装置において、
前記車両の停車中において前記車両の外部に設置される給電設備と前記蓄電装置との間で電力の伝達を行う第1制御、又は前記車両の走行中に前記インバータを介して前記回転電機と前記蓄電装置との間で電力の伝達を行う第2制御のいずれを行うかを判定する判定部と、
前記判定部により前記第1制御を行うと判定された場合、前記給電設備と前記蓄電装置との間で伝達される電力又は電流のいずれかである制御量を第1制限値以下にする制御を行い、前記判定部により前記第2制御を行うと判定された場合、前記回転電機と前記蓄電装置との間で伝達される電力又は電流のいずれかである制御量を第2制限値以下にするように前記インバータの制御を行う制御部と、
前記第1制限値及び前記第2制限値の少なくとも一方を前記車両のドライバビリティの低下を抑制するような値に設定する設定部と、を備える。
【0009】
第1の発明によれば、ドライバビリティの低下を抑制することができる。
【0010】
ここで、ドライバビリティの低下を抑制するような各制限値の設定手法としては、具体的には例えば、以下の構成を採用することができる。
【0011】
第2の発明において、前記第1制御は、前記給電設備から前記蓄電装置に充電する充電制御であり、
前記設定部は、
今回の前記充電制御の実行指示がなされた場合、前記蓄電装置の充電開始に先立ち、前記蓄電装置を規定電力で充電する今回の前記充電制御が完了したと仮定したときにおける前記蓄電装置の温度を予測し、
予測した温度が、前記蓄電装置の放電可能な最大電力を前記車両の走行要求電力にする前記蓄電装置の温度である要求温度以下になるか否かを判定し、予測した温度が前記要求温度以下になると判定するまで、前記蓄電装置の温度の予測に用いる前記規定電力を低下させ、
前記第1制限値を、予測した温度が前記要求温度以下になるとの判定時に用いた前記規定電力に設定する。
【0012】
ユーザの利便性の観点から、充電制御による蓄電装置の充電時間は極力短い方が望ましい。充電時間を短くする場合、給電設備から蓄電装置への充電電力を大きくする必要がある。しかしながら、この場合、蓄電装置の充電中における蓄電装置の発熱量が大きくなり、充電制御の完了時における蓄電装置の温度が高くなる。その結果、その後車両を走行させる場合に蓄電装置から放電可能な最大電力が低下し、ドライバビリティが低下する懸念がある。
【0013】
そこで、第2の発明では、今回の充電制御の実行指示がなされた場合、蓄電装置の充電開始に先立ち、蓄電装置を規定電力で充電する今回の充電制御が完了したと仮定したときにおける蓄電装置の温度が予測される。そして、予測された温度が上記要求温度以下になるか否かが判定される。ここでは、予測された温度が要求温度以下になると判定されるまで、蓄電装置の温度の予測に用いられる規定電力が低下させられる。そして、充電制御で用いられる第1制限値が、予測された温度が要求温度以下になるとの判定時に用いられた規定電力に設定される。
【0014】
以上説明した第2の発明によれば、今回の充電制御が実際に完了した後に車両を走行させる場合において、蓄電装置の放電可能な最大電力を車両の走行要求電力に近づけることができる。これにより、蓄電装置を過熱異常から保護しつつ、ドライバビリティの低下を好適に抑制することができる。
【0015】
また、ドライバビリティの低下を抑制するような各制限値の設定手法としては、具体的には例えば、以下の構成を採用することもできる。
【0016】
第3の発明において、前記第1制御は、前記給電設備から前記蓄電装置に充電する充電制御であり、
前記充電制御の完了後に前記車両の走行を開始してから、前記充電制御が再度開始されるまでの期間を1走行サイクルとし、
前記設定部は、
今回の前記充電制御の実行指示がなされた場合、前記蓄電装置の充電開始に先立ち、前記充電制御が開始されてから完了するまでの平均時間と、前記充電制御が開始されてから完了するまでの前記蓄電装置の平均充電電力とに基づいて、前記蓄電装置を規定電力で充電する今回の前記充電制御が完了したと仮定したときにおける前記蓄電装置の温度である第1温度を予測し、
予測した前記第1温度、前記1走行サイクルにおける前記蓄電装置の平均放電電力、及び前記1走行サイクルに要する平均時間に基づいて、今回の前記充電制御の後に実施される次回の前記1走行サイクルが完了したと仮定した場合における前記蓄電装置の温度である第2温度を予測し、
予測した前記第2温度が、前記蓄電装置の放電可能な最大電力を前記車両の走行要求電力にする前記蓄電装置の温度である要求温度以下になるか否かを判定し、予測した前記第2温度が前記要求温度以下になると判定するまで、前記第2温度の予測に用いる前記規定電力を低下させ、
前記第1制限値を、予測した前記第2温度が前記要求温度以下になるとの判定時に用いた前記規定電力に設定する。
【0017】
第3の発明によれば、今回の充電制御の後に実施される次回の1走行サイクルにおいて、蓄電装置の放電可能な最大電力が要求電力に対して大きく低下しないようにすることができる。このため、蓄電装置を過熱異常から保護しつつ、次回の1走行サイクルにおけるドライバビリティの低下を好適に抑制することができる。
【0018】
また、ドライバビリティの低下を抑制するような各制限値の設定手法としては、具体的には例えば、以下の構成を採用することもできる。
【0019】
第4の発明において、前記設定部は、前記第1制限値を前記第2制限値よりも小さい値に設定する。
【0020】
第4の発明では、第1制御を行うと判定された場合、給電設備と蓄電装置との間で伝達される電力又は電流のいずれかである制御量を第1制限値以下にする制御が行われ、第2制御を行うと判定された場合、回転電機と蓄電装置との間で伝達される電力又は電流のいずれかである制御量を第2制限値以下にするようにインバータの制御が行われる。
【0021】
ここで、車両の走行中における蓄電装置の充放電電力を大きく制限する場合、ドライバビリティの低下が大きくなることが考えられる。一方、停車中における蓄電装置の充放電電力を大きく制限する場合、例えば蓄電装置の充電時間が長くなり得るものの、車両が走行していないため、ドライバビリティは低下しないと考えられる。
【0022】
この点に着目し、第1制御で用いられる第1制限値は、第2制御で用いられる第2制限値よりも小さい値に設定されている。この設定によれば、第1制御が行われて給電設備と蓄電装置との間で伝達される電力が大きくなることを防止し、第1制御が行われる場合における蓄電装置の温度上昇を抑制することができる。これにより、その後第2制御によって車両を走行させるに際し、蓄電装置の温度をその限界温度に対して低い水準にできる。その結果、車両を走行させることができなくなる事態を回避でき、ドライバビリティの低下を抑制することができる。
【0023】
また、ドライバビリティの低下を抑制するような各制限値の設定手法としては、具体的には例えば、以下の構成を採用することもできる。
【0024】
第5の発明は、前記蓄電装置の劣化度合いを取得する劣化情報取得部を備え、
前記設定部は、
前記劣化度合いが第1所定度合いを超える場合、前記劣化度合いが大きいほど前記第1制限値を小さい値に設定し、
前記劣化度合いが第2所定度合いを超える場合、前記劣化度合いが大きいほど、前記第2制限値を小さい値に設定する。
【0025】
第5の発明によれば、蓄電装置を過熱異常から保護しつつドライバビリティの低下を抑制できる各制限値を、蓄電装置の劣化の進行に応じて適正に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態に係る車載システムの全体構成図。
図2】EVECU及び電池ECUが行う処理の手順を示すフローチャート。
図3】電池温度に基づく各制限値の設定態様を示すタイムチャート。
図4】第2実施形態に係る車載システムの全体構成図。
図5】ブレーキECU及びEVECUが行う処理の手順を示すフローチャート。
図6】電池温度に基づく各制限値の設定態様を示すタイムチャート。
図7】第3実施形態に係るブレーキECU及びEVECUが行う処理の手順を示すフローチャート。
図8】制限係数の設定方法を示す図。
図9】第3実施形態の変形例に係る制限係数の設定方法を示す図。
図10】第3実施形態の変形例に係る制限係数の設定方法を示す図。
図11】第4実施形態に係るブレーキECU及びEVECUが行う処理の手順を示すフローチャート。
図12】劣化係数の設定方法を示す図。
図13】第5実施形態に係るブレーキECU及びEVECUが行う処理の手順を示すフローチャート。
図14】第6実施形態に係るブレーキECU及びEVECUが行う処理の手順を示すフローチャート。
図15】第6実施形態に係るブレーキECU及びEVECUが行う処理の手順を示すフローチャート。
図16】第7実施形態に係るブレーキECU及びEVECUが行う処理の手順を示すフローチャート。
図17】第7実施形態に係るブレーキECU及びEVECUが行う処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る車両用制御装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の冷却制御装置は、走行動力源として回転電機のみを備える電気自動車等の車両に搭載される。
【0028】
図1に示すように、車両10は、回転電機20、インバータ21、及び蓄電装置としての2次電池22を備えている。本実施形態において、回転電機20は、3相の巻線を有し、例えば永久磁石型の同期機である。回転電機20のロータは、車両10の駆動輪11と動力伝達可能とされている。つまり、回転電機20は、車両10の走行動力源となる。
【0029】
インバータ21は、回転電機20のステータ巻線に電気的に接続されている。インバータ21は、上,下アームのスイッチを有している。2次電池22は、複数のセルの直列接続体からなる組電池であり、例えばリチウムイオン蓄電池又はニッケル水素蓄電池である。
【0030】
車両10は、充電インレット23を備えている。充電インレット23は、車両10の外部に設置された給電制御装置41と電気的に接続可能とされている。給電制御装置41は、例えば普通充電器又は急速充電器である。給電制御装置41と充電インレット23とが電気的に接続されることにより、外部系統電源40から給電制御装置41及び充電インレット23を介して2次電池22に給電したり、2次電池22から充電インレット23及び給電制御装置41を介して外部系統電源40へと電力を戻したりすることができる。なお、電力を戻す状況は、例えばスマートグリッドが構築されている状況である。
【0031】
車両10は、2次電池22を監視する電池ECU30と、冷却制御装置の機能を有するEVECU31とを備えている。電池ECU30は、2次電池22の各セルの電圧と、2次電池22の温度である電池温度Tbatと、2次電池22に流れる電流とを検出する。電池ECU32は、それら検出値に基づいて、2次電池22の充電率(SOC)等を算出する。検出された電圧,電流及び電池温度Tbatと、算出されたSOCとは、EVECU31に入力される。
【0032】
EVECU31は、インバータ21を構成する上,下アームスイッチのスイッチング制御を行う。詳しくは、EVECU31は、回転電機20のロータを回転させるべく、2次電池22から出力される直流電力を交流電力に変換して回転電機20に供給するスイッチング制御である力行駆動制御を行う。また、EVECU31は、2次電池22を充電すべく、回転電機20で発電される交流電力を直流電力に変換して2次電池22に供給するスイッチング制御である回生駆動制御を行う。
【0033】
図2に、EVECU31及び電池ECU30の協働により実行される処理の手順を示す。この処理は、例えば所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0034】
ステップS10において、電池ECU30は、電池温度Tbatを取得する。ステップS10の処理が温度取得部に相当する。
【0035】
ステップS11において、電池ECU30は、取得した電池温度Tbatに基づいて、第2制限値に相当する走行時放電電力制限値WDоut及び走行時充電電力制限値WDinと、第1制限値に相当する充電時放電電力制限値WCоut及び充電時充電電力制限値WCinとを設定する。各制限値WDоut,WDin,WCоut,WCinは、電池温度Tbatと関係づけられたマップ情報として、電池ECU30が備える記憶部としてのメモリに記憶されている。メモリは、ROM以外の非遷移的実体的記録媒体(例えば、ROM以外の不揮発性メモリ)である。各制限値WDоut,WDin,WCоut,WCinの設定方法については、後に詳述する。電池ECU30は、設定した各制限値WDоut,WDin,WCоut,WCinをEVECU31に送信する。なお、ステップS11の処理が設定部に相当する。
【0036】
ステップS12において、EVECU31は、外部充電制御を行うか否かを判定する。具体的には、EVECU31は、充電インレット23に給電制御装置41が電気的に接続されている旨の信号を充電インレット23から受信した場合、外部充電制御を行うと判定すればよい。
【0037】
EVECU31は、ステップS12において外部充電制御を行わないと判定した場合には、車両10を走行させる状況であると判定し、ステップS13に進む。ステップS13において、EVECU31は、指令充電電力制限値Winを、受信した走行時充電電力制限値WDinに設定し、指令放電電力制限値Wоutを、受信した走行時放電電力制限値WDоutに設定する。
【0038】
ステップS14において、EVECU31は、車両10の走行中における力行駆動制御又は回生駆動制御(「第2制御」に相当)を行う。詳しくは、EVECU31は、力行駆動制御を行う場合、2次電池22からインバータ21を介して回転電機20に供給する電力が、ステップS13で設定した指令放電電力制限値Wоut以下になるようにする。一方、EVECU31は、回生駆動制御を行う場合、回転電機20からインバータ21を介して2次電池22に供給する電力が、ステップS13で設定した指令充電電力制限値Win以下になるようにする。なお、2次電池22から回転電機20に供給する電力や、回転電機20から2次電池22に供給する電力は、例えば、電池ECU30から取得した2次電池22の電圧及び電流から算出されればよい。
【0039】
EVECU31は、ステップS12において外部充電制御を行うと判定した場合には、ステップS15に進む。ステップS15において、EVECU31は、指令充電電力制限値Winを、受信した充電時充電電力制限値WCinに設定し、指令放電電力制限値Wоutを、受信した充電時放電電力制限値WCоutに設定する。
【0040】
ステップS16において、EVECU31は、給電制御装置41に対して、ステップS15で設定した指令充電電力制限値Win及び指令放電電力制限値Wоutを送信する。これにより、給電制御装置41は、充電インレット23を介して2次電池22を充電する場合、給電制御装置41から充電インレット23を介して2次電池22に供給する電力が、受信した指令充電電力制限値Win以下になるように制御を行う。一方、給電制御装置41は、2次電池22から充電インレット23及び給電制御装置41を介して外部系統電源40へと電力を供給する場合、その電力が、受信した指令放電電力制限値Wоut以下になるように制御を行う。なお、給電制御装置41から2次電池22に供給する電力や、2次電池22から給電制御装置41を介して外部系統電源40に供給する電力は、例えば、電池ECU30から取得した2次電池22の電圧及び電流から算出されればよい。また、給電制御装置41が行う制御が第2制御に相当し、電池ECU30及びEVECU31が制御部に相当する。
【0041】
続いて、図3を用いて、電池温度Tbatに基づく各制限値WDоut,WDin,WCоut,WCinの設定方法について説明する。図3(a)は電池温度Tbatの推移を示し、図3(b),(c)は指令充電電力制限値Win,指令放電電力制限値Wоutの推移を示す。図3(d),(e)は走行時充電電力制限値WDin,走行時放電電力制限値WDоutの推移を示し、図3(f),(g)は充電時充電電力制限値WCin,充電時放電電力制限値WCоutの推移を示す。また、図3に示す「走行」の期間は、ステップS12で否定判定される期間を示し、「充電」の期間は、ステップS12で肯定判定される期間を示す。
【0042】
電池ECU30は、電池温度Tbatが制限開始温度Tstart以上の場合、電池温度Tbatが制限開始温度Tstart未満の場合よりも各制限値WDоut,WDin,WCоut,WCinを小さい値に設定する。
【0043】
電池ECU30は、電池温度Tbatが制限開始温度Tstart(例えば60℃)以上の場合、充電時充電電力制限値WCin及び充電時放電電力制限値WCоutを、走行時充電電力制限値WDin及び走行時放電電力制限値WDоutよりも小さい値に設定する。
【0044】
電池ECU30は、電池温度Tbatが、制限開始温度Tstartよりも高い限界温度Tlimit以上の場合、各制限値WDоut,WDin,WCоut,WCinを0に設定する。
【0045】
なお、電池ECU30は、例えば、「Tstart≦Tbat≦Tlimit」となる場合において、電池温度Tbatが高いほど、各制限値WDоut,WDin,WCоut,WCinを小さく設定してもよい。また、図3に示すTshutは、限界温度Tlimitよりも高いシステム遮断温度であり、車載システムをシャットダウンするために用いられる。Tfailは、システム遮断温度Tshutよりも高い温度(例えば80℃)であり、2次電池22の故障が発生すると想定される温度である。
【0046】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0047】
電池温度Tbatが制限開始温度Tstart以上の場合、充電時充電電力制限値WCin及び充電時放電電力制限値WCоutが、走行時充電電力制限値WDin及び走行時放電電力制限値WDоutよりも小さい値に設定される。この設定によれば、外部充電制御が行われる場合における2次電池22の充電電力が大きくなることを防止でき、2次電池22の温度が制限開始温度Tstartに対して過度に高くなることを防止できる。特に、停車中は、車両10の走行風による2次電池22の冷却が期待できないため、充電時充電電力制限値WCin及び充電時放電電力制限値WCоutが小さい値に設定されるメリットが大きい。本実施形態によれば、外部充電制御の後、力行駆動制御によって車両10を走行させるに際し、2次電池22の温度を限界温度Tlimit未満にできる。その結果、車両10を走行させることができなくなる事態を回避でき、ドライバビリティの低下を抑制することができる。
【0048】
駆動輪と動力伝達可能な走行動力源として内燃機関のみを備える車両や、走行動力源として内燃機関に加えて回転電機を備えるハイブリッド車及びプラグインハイブリッド車と比較して、走行動力源として回転電機のみを備える電気自動車においては、車載2次電池の充放電電力が制限されてしまうと、ドライバビリティや利便性が大きく低下してしまう。このため、図2に示した処理を、本実施形態の車両10に適用するメリットが特に大きい。
【0049】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。図4に、本実施形態に係る車載システムの全体構成図を示す。図4において、先の図1に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0050】
車両10は、電気機器としての高圧補機50を備えている。高圧補機50は、電動コンプレッサと、DCDCコンバータとを含む。電動コンプレッサは、車室内空調装置を構成し、車載冷凍サイクルの冷媒を循環させるべく、2次電池22から給電されて駆動される。DCDCコンバータは、2次電池22の出力電圧を降圧して車載低圧負荷に供給する。低圧負荷は、例えば、低圧蓄電池及び低圧電気負荷のうち少なくとも一方を含む。低圧蓄電池は、2次電池22よりも出力電圧の低い蓄電池であり、例えば鉛蓄電池である。
【0051】
車両10は、ブレーキ装置60と、ブレーキECU61とを備えている。ブレーキ装置60は、駆動輪11を含む車輪に摩擦力を付与することにより制動力を発生させる。ブレーキ装置60は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダルの踏込に応じて動作するマスタシリンダ及びブレーキパッド等を含む。ブレーキECU61は、ブレーキ装置60に機械式ブレークトルクを発生させるようにブレーキ装置60の制御等を行う。
【0052】
車両10は、ブレーキセンサ62と、アクセルセンサ63とを備えている。ブレーキセンサ62は、ドライバのブレーキペダルの踏込量であるブレーキストロークSbを検出する。アクセルセンサ63は、アクセル操作部材としてのアクセルペダルの踏込量であるアクセルストロークSaを検出する。ブレーキセンサ62及びアクセルセンサ63の検出値は、ブレーキECU61に送信される。
【0053】
続いて、図5を用いて、ブレーキECU61及びEVECU31の協働により実行される処理について説明する。
【0054】
ステップS21では、ブレーキECU61は、ブレーキセンサ62により検出されたブレーキストロークSb及びアクセルセンサ63により検出されたアクセルストロークSaを取得し、取得した各ストロークSb,Saに基づいて、車輪に対して付与すべき総制動力Fbrkを算出する。
【0055】
ステップS22では、ブレーキECU61は、回生可能制動力FgmaxをEVECU31から受信する。回生可能制動力Fgmaxは、回生駆動制御によって車輪に付与可能な制動力の現状の最大値である。
【0056】
ステップS23では、ブレーキECU61は、回生可能制動力Fgmaxと、総制動力Fbrkとに基づいて、回生要求制動力Fgbと、機械式要求制動力Fmbとを算出する。例えば、ブレーキECU61は、総制動力Fbrkから回生要求制動力Fgbを差し引くことにより、機械式要求制動力Fmbを算出する。
【0057】
ステップS24では、ブレーキECU61は、算出した回生要求制動力FgbをEVECU31に送信する。EVECU31は、受信した回生要求制動力Fgbを回転電機20に発生させるように回生駆動制御を行う。回生要求制動力Fgbが大きいほど、回転電機20からインバータ21を介して2次電池22へと供給される発電電力が大きくなる。
【0058】
また、ブレーキECU61は、算出した機械式要求制動力Fmbをブレーキ装置60に送信する。これにより、ブレーキ装置60により車輪へと付与される制動力が機械式要求制動力Fmbに制御されるようになる。
【0059】
続いて、図6を用いて、各制限値WDоut,WDin,WCоut,WCinの設定方法について説明する。図6(a)~(g)は、先の図3(a)~(g)に対応している。図6に示す「走行」の期間は、ステップS12で否定判定され、かつ、ステップS20で肯定判定される期間を示し、「充電」の期間は、ステップS12で肯定判定される期間を示す。
【0060】
時刻t1~t2の期間に例示するように、電池ECU30は、電池温度Tbatが制限開始温度Tstart以上の場合、電池温度Tbatが制限開始温度Tstart未満の場合よりも走行時充電電力制限値WDin及び走行時放電電力制限値WDоutを小さい値に設定しつつ、走行時充電電力制限値WDinを走行時放電電力制限値WDоutよりも小さい値に設定する。これにより、電池温度Tbatが高い場合に回生駆動制御により生成される発電電力を制限し、総制動力Fbrkに占める機械式要求制動力Fmbの割合を増加させる。その結果、必要な制動力を確保しつつ、2次電池22の温度が大きく上昇することを抑制できる。また、回生要求制動力Fgbが制限されることにより、2次電池22の温度上昇が抑制されるため、その後力行駆動制御が行われる場合において回転電機20の出力が電池温度Tbatにより制限されにくくなる。これにより、ドライバビリティの低下を好適に抑制できる。
【0061】
時刻t3~t4の期間に例示するように、電池ECU30は、電池温度Tbatが制限開始温度Tstart以上の場合、充電時充電電力制限値WCin及び充電時放電電力制限値WCоutを、走行時充電電力制限値WDin及び走行時放電電力制限値WDоutよりも小さい値に設定しつつ、充電時放電電力制限値WCоutを充電時充電電力制限値WCinよりも小さい値に設定する。これにより、外部充電制御による2次電池22の充電を迅速に完了しつつ、2次電池22の大きな温度上昇を抑制できる。
【0062】
つまり、外部充電制御中において、2次電池22から電力が持ち出される場合がある。例えば、外部充電制御中において、車室内空調装置が使用され、高圧補機50を構成する電動コンプレッサが駆動され得る。この場合、給電制御装置41から2次電池22に供給される電力が電動コンプレッサの消費電力よりも小さいと、2次電池22から電動コンプレッサへと電力が持ち出される。また、外部充電制御中において停電が発生し、外部系統電源40からの給電が停止されることがある。この場合において、停電時間が長く、かつ、車室内空調装置が使用されていると、2次電池22から電動コンプレッサへと電力が持ち出される。なお、外部充電制御中において、高圧補機50を構成するDCDCコンバータが駆動される場合も2次電池22から電力が持ち出される。
【0063】
2次電池22からの電力の持ち出しが大きくなると、2次電池22の温度が大きく上昇してしまう。その結果、充電時間を必要時間に長大させユーザを充電完了まで待たせることとなる。さらには、その後車両10を走行させようとする場合、電池温度の制限によって車両10を走行させることができなくなり、ドライバビリティが低下し得る。
【0064】
そこで、本実施形態では、充電時放電電力制限値WCоutが充電時充電電力制限値WCinよりも小さい値に設定されている。これにより、外部充電制御中における2次電池22の電力の持ち出しを制限し、外部充電制御による2次電池22の充電を迅速に完了しつつ、2次電池22の大きな温度上昇を抑制できる。
【0065】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、指令充電電力制限値Win及び指令放電電力制限値Wоutの設定方法を変更する。
【0066】
図7に、EVECU31及び電池ECU30の協働により実行される処理の手順を示す。この処理は、例えば所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0067】
ステップS30において、電池ECU30は、電池温度Tbatを取得する。この取得処理が「温度取得部」に相当する。
【0068】
電池ECU30は、取得した電池温度Tbatに基づいて、充電電力基準制限値WinBと、放電電力基準制限値WоutBとを設定する。各基準制限値WinB,WоutBは、電池温度Tbatと関係づけられたマップ情報として、電池ECU30が備えるメモリに記憶されている。電池ECU30は、設定した各基準制限値WinB,WоutBと、電池温度TbatとをEVECU31に送信する。
【0069】
ステップS31において、EVECU31は、充電電力基準制限値WinB及び放電電力基準制限値WоutBと、電池温度Tbatとを電池ECU30から取得する。
【0070】
ステップS32において、EVECU31は、先の図2のステップS12と同様に、外部充電制御を行うか否かを判定する。
【0071】
EVECU31は、ステップS32において外部充電制御を行わないと判定した場合には、車両10を走行させる状況であると判定し、ステップS33に進む。ステップS33において、EVECU31は、取得した電池温度Tbatに基づいて、走行時放電制限係数KDоut,走行時充電制限係数KDinを設定する。各制限係数KDоut,KDinは、電池温度Tbatと関係づけられたマップ情報として、EVECU31が備える記憶部としてのメモリに記憶されている。なお、電池温度Tbatと関係づけられた各制限係数KDоut,KDinのマップ情報が電池ECU30のメモリに記憶され、EVECU31は、電池ECU30から各制限係数KDоut,KDinを取得してもよい。
【0072】
図8を用いて、ステップS33の係数設定処理について説明する。
【0073】
本実施形態では、図8(a),(b)に示すように、電池温度Tbatが制限開始温度Tstartよりも高い閾値温度Ta以下の場合、走行時放電制限係数KDоut,走行時充電制限係数KDinが1に設定される。一方、電池温度Tbatが閾値温度Taよりも高い場合、電池温度Tbatが高いほど、走行時放電制限係数KDоut,走行時充電制限係数KDinが小さく設定され、電池温度Tbatが閾値温度Taよりも高い限界温度Tlimitの場合に走行時放電制限係数KDоut,走行時充電制限係数KDinが0に設定される。本実施形態では、各電池温度Tbatに対する走行時放電制限係数KDоut,走行時充電制限係数KDinが互いに同一の値に設定される。ただし、この設定方法に限らない。
【0074】
図7の説明に戻り、ステップS34では、EVECU31は、走行時充電電力制限値WDin(「第2制限値」に相当)を、充電電力基準制限値WinBと走行時充電制限係数KDinとの乗算値に設定する。また、EVECU31は、走行時放電電力制限値WDоut(「第2制限値」に相当)を、放電電力基準制限値WоutBと走行時放電制限係数KDоutとの乗算値に設定する。走行時充電電力制限値WDin及び走行時放電電力制限値WDоutは、電池温度Tbatが閾値温度Tαよりも高い場合、電池温度Tbatが高いほど小さくなり、電池温度Tbatが限界温度Tlimitの場合に0になる。
【0075】
ステップS35では、EVECU31は、指令充電電力制限値Winを、ステップS34で算出した走行時充電電力制限値WDinに設定し、指令放電電力制限値Wоutを、ステップS34で算出した走行時放電電力制限値WDоutに設定する。
【0076】
ステップS36において、EVECU31は、ステップS14と同様に、力行駆動制御を行う場合、2次電池22からインバータ21を介して回転電機20に供給する電力が、ステップS35で設定した指令放電電力制限値Wоut以下になるようにする。一方、EVECU31は、回生駆動制御を行う場合、回転電機20からインバータ21を介して2次電池22に供給する電力が、ステップS35で設定した指令充電電力制限値Win以下になるようにする。
【0077】
EVECU31は、ステップS32において外部充電制御を行うと判定した場合には、ステップS37に進む。ステップS37において、EVECU31は、取得した電池温度Tbatに基づいて、充電時放電制限係数KCоut,充電時充電制限係数KCinを設定する。各制限係数KCоut,KCinは、電池温度Tbatと関係づけられたマップ情報として、EVECU31が備えるメモリに記憶されている。なお、電池温度Tbatと関係づけられた各制限係数KCоut,KCinのマップ情報が電池ECU30のメモリに記憶され、EVECU31は、電池ECU30から各制限係数KCоut,KCinを取得してもよい。
【0078】
図8を用いて、ステップS37の係数設定処理について説明する。
【0079】
本実施形態では、図8(a),(b)に示すように、電池温度Tbatが制限開始温度Tstart以下の場合、充電時放電制限係数KCоut,充電時充電制限係数KCinが1に設定される。一方、電池温度Tbatが制限開始温度Tstartよりも高い場合、電池温度Tbatが高いほど、充電時放電制限係数KCоut,充電時充電制限係数KCinが小さく設定され、電池温度Tbatが限界温度Tlimitの場合に充電時放電制限係数KCоut,充電時充電制限係数KCinが0に設定される。本実施形態では、各電池温度Tbatに対する充電時放電制限係数KCоut,充電時充電制限係数KCinが互いに同一の値に設定される。ただし、この設定に限らない。
【0080】
図7の説明に戻り、ステップS38では、EVECU31は、充電時充電電力制限値WCin(「第1制限値」に相当)を、充電電力基準制限値WinBと充電時充電制限係数KCinとの乗算値に設定する。また、EVECU31は、充電時放電電力制限値WCоut(「第1制限値」に相当)を、放電電力基準制限値WоutBと充電時放電制限係数KCоutとの乗算値に設定する。充電時充電電力制限値WCin及び充電時放電電力制限値WCоutは、電池温度Tbatが制限開始温度Tstartよりも高い場合、電池温度Tbatが高いほど小さくなり、電池温度Tbatが限界温度Tlimitの場合に0になる。
【0081】
充電時放電電力制限値WCоut,充電時充電電力制限値WCinは、電池温度Tbatが制限開始温度Tstartよりも高い場合、走行時放電電力制限値WDоut,走行時充電電力制限値WDinよりも小さくなる。このため、外部充電制御中における2次電池22の温度上昇を抑制できる。特に、電池温度Tbatが制限開始温度Tstartよりも高くてかつ閾値温度Ta以下の場合、充電時放電電力制限値WCоut,充電時充電電力制限値WCinは、電池温度Tbatが高いほど、走行時放電電力制限値WDоut,走行時充電電力制限値WDinに対する低下度合いが大きくなる。
【0082】
ステップS39では、EVECU31は、指令充電電力制限値Winを、ステップS38で算出した充電時充電電力制限値WCinに設定し、指令放電電力制限値Wоutを、ステップS38で算出した充電時放電電力制限値WCоutに設定する。
【0083】
ステップS40では、EVECU31は、ステップS16と同様に、給電制御装置41に対して、ステップS39で設定した指令充電電力制限値Win及び指令放電電力制限値Wоutを送信する。これにより、給電制御装置41は、充電インレット23を介して2次電池22を充電する場合、給電制御装置41から充電インレット23を介して2次電池22に供給する電力が、受信した指令充電電力制限値Win以下になるように制御を行う。一方、給電制御装置41は、2次電池22から充電インレット23及び給電制御装置41を介して外部系統電源40へと電力を供給する場合、その電力が、受信した指令放電電力制限値Wоut以下になるように制御を行う。
【0084】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0085】
充電時放電制限係数KCоut,充電時充電制限係数KCinが低下し始める電池温度Tbatは、走行時放電制限係数KDоut,走行時充電制限係数KDinが低下し始める電池温度Tbatよりも低い。このため、外部充電制御中における2次電池22の温度上昇を抑制できる。一方、車両10の走行時においては、走行時放電制限係数KDоut,走行時充電制限係数KDinが低下し始める電池温度Tbatが、充電時放電制限係数KCоut,充電時充電制限係数KCinが低下し始める電池温度Tbatよりも高いため、外部充電制御中よりも2次電池22の充放電電力の制限がかかりにくくなる。したがって、本実施形態によれば、2次電池22を過熱異常から保護しつつ、ドライバビリティの低下を好適に抑制することができる。
【0086】
また、車両10に搭載された2次電池22の冷却装置が故障したり、2次電池22の冷却装置が車両10に搭載されていなかったりする場合であっても、図7に示した処理によれば、2次電池22を過熱異常から保護することができる。
【0087】
<第3実施形態の変形例>
各制限係数KDоut,KDin,KCоut,KCinの設定方法としては、図8に示した方法に限らず、例えば図9に示す方法であってもよい。なお、以下の説明において、制限開始温度Tstart<第1閾値温度Tα<第2閾値温度Tβ<限界温度Tlimitの関係がある。
【0088】
図9(a),(b)に示すように、電池温度Tbatが第2閾値温度Tβ以下の場合、走行時放電制限係数KDоut,走行時充電制限係数KDinが1に設定される。一方、電池温度Tbatが第2閾値温度Tβよりも高い場合、電池温度Tbatが高いほど、走行時放電制限係数KDоut,走行時充電制限係数KDinが小さく設定され、電池温度Tbatが限界温度Tlimitの場合に走行時放電制限係数KDоut,走行時充電制限係数KDinが0に設定される。
【0089】
電池温度Tbatが第1閾値温度Tα以下の場合、充電時放電制限係数KCоut,充電時充電制限係数KCinが1に設定される。一方、電池温度Tbatが第1閾値温度Tαよりも高い場合、電池温度Tbatが高いほど、充電時放電制限係数KCоut,充電時充電制限係数KCinが小さく設定され、電池温度Tbatが第2閾値温度Tβの場合に充電時放電制限係数KCоut,充電時充電制限係数KCinが0に設定される。
【0090】
また、各制限係数KDоut,KDin,KCоut,KCinの設定方法としては、例えば図10に示す方法であってもよい。詳しくは、図10(a),(b)に示すように、電池温度Tbatが第1閾値温度Tα以下の場合、走行時放電制限係数KDоut,走行時充電制限係数KDinと、充電時放電制限係数KCоut,充電時充電制限係数KCinとが1に設定される。一方、電池温度Tbatが第1閾値温度Tαよりも高い場合、電池温度Tbatが高いほど、走行時放電制限係数KDоut,走行時充電制限係数KDinが小さく設定され、電池温度Tbatが限界温度Tlimitの場合に走行時放電制限係数KDоut,走行時充電制限係数KDinが0に設定される。
【0091】
電池温度Tbatが第1閾値温度Tαよりも高い場合、電池温度Tbatが高いほど、充電時放電制限係数KCоut,充電時充電制限係数KCinが小さく設定され、電池温度Tbatが第2閾値温度Tβの場合に充電時放電制限係数KCоut,充電時充電制限係数KCinが0に設定される。
【0092】
図10に示す設定方法によれば、外部充電制御中及び車両10の走行中それぞれにおいて電池温度Tbatが第1閾値温度Tαを超えた場合に制限がかけられるため、制限がかかったことをユーザに把握させやすい。
【0093】
<第4実施形態>
以下、第4実施形態について、第3実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、2次電池22の劣化度合いに基づいて、指令充電電力制限値Win及び指令放電電力制限値Wоutを設定する。
【0094】
図11に、EVECU31及び電池ECU30の協働により実行される処理の手順を示す。この処理は、例えば所定の制御周期で繰り返し実行される。なお、図11において、先の図7に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0095】
ステップS41において、電池ECU30は、2次電池22の劣化度合いを取得する。本実施形態では、劣化度合いとして、2次電池22の内部抵抗Rbatが用いられる。内部抵抗Rbatが基準値に対して大きいほど、劣化度合いが大きくなる。なお、内部抵抗Rbatは、周知の種々の方法で算出することができるため、その詳細な算出方法の説明を省略する。また、ステップS41の処理が「劣化情報取得部」に相当する。
【0096】
ステップS42では、電池ECU30は、取得した内部抵抗Rbatに基づいて、充電時劣化係数KHin及び放電時劣化係数KHоutを設定する。本実施形態では、図12(a)に示すように、内部抵抗Rbatが第1所定値H1(「第1所定度合い」に相当)以下の場合、充電時劣化係数KHinが1に設定される。一方、内部抵抗Rbatが第1所定値H1よりも高い場合、内部抵抗Rbatが大きいほど充電時劣化係数KHinが小さく設定され、内部抵抗Rbatが上限閾値Hlimitの場合に充電時劣化係数KHinが0に設定される。
【0097】
内部抵抗Rbatが大きいほど各劣化係数が小さくされているのは、内部抵抗Rbatが大きいほど2次電池22の発熱量が大きくなることに鑑みたものである。これにより、2次電池22の劣化が進行した場合であっても、劣化度合いに応じた2次電池22の保護を実施できる。
【0098】
また、図12(b)に示すように、内部抵抗Rbatが第2所定値H2(「第2所定度合い」に相当)以下の場合、放電時劣化係数KHоutを1が設定される。一方、内部抵抗Rbatが第2所定値H2よりも高い場合、内部抵抗Rbatが大きいほど放電時劣化係数KHоutが小さく設定され、内部抵抗Rbatが上限閾値Hlimitの場合に放電時劣化係数KHоutが0に設定される。なお、第1所定値H1及び第2所定値H2は、互いに同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0099】
ちなみに、各劣化係数KHin,KHоutは、内部抵抗Rbatと関係づけられたマップ情報として、電池ECU30が備えるメモリに記憶されていればよい。また、内部抵抗Rbatと関係づけられた各劣化係数KHin,KHоutのマップ情報が電池ECU30のメモリに記憶されていてもよい。この場合、EVECU31は、電池ECU30から取得した内部抵抗Rbatとマップ情報とに基づいて、各劣化係数KHin,KHоutを設定すればよい。
【0100】
先の図11の説明に戻り、ステップS43では、EVECU31は、走行時充電電力制限値WDinを、充電電力基準制限値WinB、走行時充電制限係数KDin、及びステップS42で設定した充電時劣化係数KHinの乗算値に設定する。また、EVECU31は、走行時放電電力制限値WDоutを、放電電力基準制限値WоutB、走行時放電制限係数KDоut、及びステップS42で設定した放電時劣化係数KHоutの乗算値に設定する。
【0101】
ステップS44では、EVECU31は、指令充電電力制限値Winを、ステップS43で算出した走行時充電電力制限値WDinに設定し、指令放電電力制限値Wоutを、ステップS43で算出した走行時放電電力制限値WDоutに設定する。
【0102】
一方、ステップS45では、EVECU31は、充電時充電電力制限値WCinを、充電電力基準制限値WinB、充電時充電制限係数KCin、及びステップS42で設定した充電時劣化係数KHinの乗算値に設定する。また、EVECU31は、充電時放電電力制限値WCоutを、放電電力基準制限値WоutB、充電時放電制限係数KCоut、及びステップS42で設定した放電時劣化係数KHоutの乗算値に設定する。
【0103】
ステップS46では、EVECU31は、指令充電電力制限値Winを、ステップS45で算出した充電時充電電力制限値WCinに設定し、指令放電電力制限値Wоutを、ステップS45で算出した充電時放電電力制限値WCоutに設定する。
【0104】
以上説明した本実施形態によれば、2次電池22の劣化が進行した場合であっても、2次電池22を過熱異常から保護しつつ、ドライバビリティの低下を抑制することができる。
【0105】
<第4実施形態の変形例>
・走行時充電電力制限値WDin,充電時充電電力制限値WCinの設定に用いられる充電時劣化係数KHinは、走行時充電電力制限値WDin,充電時充電電力制限値WCinで共通の係数に限らず、走行時充電電力制限値WDin,充電時充電電力制限値WCinそれぞれで個別に設定される係数であってもよい。
【0106】
また、走行時放電電力制限値WDоut,充電時放電電力制限値WCоutの設定に用いられる放電時劣化係数KHоutは、走行時放電電力制限値WDоut,充電時放電電力制限値WCоutで共通の係数に限らず、走行時放電電力制限値WDоut,充電時放電電力制限値WCоutそれぞれで個別に設定される係数であってもよい。
【0107】
・ステップS41における2次電池22の劣化度合いとしては、内部抵抗に限らず、例えば2次電池22のSOH(State of Health)であってもよい。
【0108】
<第5実施形態>
以下、第5実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、外部充電制御方法を変更する。
【0109】
図13に、EVECU31及び電池ECU30の協働により実行される処理の手順を示す。
【0110】
ステップS50では、EVECU31は、開始時要求電力WDst(「走行要求電力」に相当)を設定する。開始時要求電力WDstは、外部充電制御の完了後、力行駆動制御により駆動輪を回転させて車両10を発進させるために必要な2次電池22の放電電力の下限値である。具体的には、例えば、開始時要求電力WDstは、道路勾配のない又は勾配の小さい平坦路において、車両10が発進してから車両10の走行速度を所定速度にするまでに必要な2次電池22の放電電力である。開始時要求電力WDstは、例えば、実験又は計算により定められる値である。
【0111】
ステップS51において、電池ECU30は、現在の電池温度Tbatを取得する。電池ECU30は、取得した電池温度TbatをEVECU31に送信する。
【0112】
ステップS52では、ステップS11と同様に、電池ECU30は、取得した電池温度Tbatに基づいて、走行時放電電力制限値WDоut及び走行時充電電力制限値WDinと、充電時放電電力制限値WCоut及び充電時充電電力制限値WCinとを設定する。電池ECU30は、設定した各制限値WDоut,WDin,WCоut,WCinをEVECU31に送信する。
【0113】
ステップS53では、電池ECU30は、ステップS41と同様に、2次電池22の現在の内部抵抗Rbatを取得する。電池ECU30は、取得した内部抵抗RbatをEVECU31に送信する。
【0114】
ステップS54において、EVECU31は、ステップS12と同様に、外部充電制御を行うか否かを判定する。
【0115】
EVECU31は、ステップS54において外部充電制御を行わないと判定した場合には、ステップS55に進む。ステップS55において、EVECU31は、指令充電電力制限値Winを、受信した走行時充電電力制限値WDinに設定し、指令放電電力制限値Wоutを、受信した走行時放電電力制限値WDоutに設定する。
【0116】
続くステップS56において、EVECU31は、ステップS14と同様に、車両10の走行中における力行駆動制御又は回生駆動制御を行う。
【0117】
EVECU31は、ステップS54において外部充電制御を行うと判定した場合、つまり、外部充電制御の実行指示がなされたと判定した場合には、ステップS57に進む。ステップS57において、EVECU31は、指令充電電力制限値Winを、受信した充電時充電電力制限値WCinに設定し、指令放電電力制限値Wоutを、受信した充電時放電電力制限値WCоutに設定する。
【0118】
ステップS58では、EVECU31は、ステップS57で設定した指令充電電力制限値Winと、ステップS53で取得した内部抵抗Rbatとに基づいて、設定した指令充電電力制限値Winで2次電池22を充電すると仮定した場合において2次電池22で発生する損失(以下、充電損失Wiloss)を予測する。充電損失Wilossは、内部抵抗Rbatが大きかったり、指令充電電力制限値Winが大きかったりするほど大きくなる。
【0119】
ステップS59では、EVECU31は、ステップS57で設定した指令充電電力制限値Winに基づいて、外部充電制御により2次電池22の充電を開始してから2次電池22の充電が完了するまでの時間である充電時間TLCを予測する。具体的には、EVECU31は、指令充電電力制限値Winと、電池ECU30から取得した現在のSOCとに基づいて、充電時間TLCを予測する。本実施形態において、2次電池22の充電が完了するとは、SOCが、2次電池22の満充電状態を示す目標SOCに到達することをいう。
【0120】
ステップS60では、EVECU31は、ステップS58で予測した充電損失Wiloss、ステップS59で予測した充電時間TLC、及びステップS51で取得した電池温度Tbatに基づいて、今回の外部充電制御が完了したと仮定した場合における2次電池22の温度である充電完了温度Tbfinを予測する。具体的には、充電損失Wiloss及び充電時間TLCに基づいて、2次電池22の現在の温度からの上昇量ΔTbを算出する。そして、算出した上昇量ΔTbを電池温度Tbatに加算することにより充電完了温度Tbfinを算出する。
【0121】
ステップS61では、EVECU31は、予測した充電完了温度Tbfinが要求温度Tbwdst以下であるか否かを判定する。要求温度Tbwdstは、2次電池22の放電可能な最大電力が開始時要求電力WDstとなる場合の2次電池22の温度であり、具体的には例えば、ステップS52のマップ情報において走行時放電電力制限値WDоutが開始時要求電力WDstになる場合の2次電池22の温度である。
【0122】
EVECU31は、予測した充電完了温度Tbfinが要求温度Tbwdstを上回ると判定した場合には、今回の外部充電制御が完了した場合における2次電池22の放電可能な最大電力が開始時要求電力WDstを下回ると判定し、ステップS62に進む。ステップS62では、EVECU31は、ステップS58,S59で用いた最新の指令充電電力制限値Win(「規定電力」に相当)を所定量低下させ、ステップS58に移行する。EVECU31は、ステップS58において、所定量低下させた指令充電電力制限値Winに基づいて充電損失Wilossを再度予測し、ステップS59において、所定量低下させた指令充電電力制限値Winに基づいて充電時間TLCを再度予測する。そして、ステップS61において、EVECU31は、予測した充電完了温度Tbfinが要求温度Tbwdst以下であるか否かを再度判定する。
【0123】
ステップS58~S62の処理によれば、予測された充電完了温度Tbfinが要求温度Tbwdst以下になるまで、充電完了温度Tbfinの予測に用いられる指令充電電力制限値Winが低下させられる。
【0124】
EVECU31は、予測した充電完了温度Tbfinが要求温度Tbwdst以下であると判定した場合には、ステップS63に進む。ステップS63では、EVECU31は、充電完了温度Tbfinの予測に用いた最新の指令充電電力制限値Winと、ステップS57で設定した指令放電電力制限値Wоutとを給電制御装置41に対して送信する。給電制御装置41は、充電インレット23を介して2次電池22を充電する場合、給電制御装置41から充電インレット23を介して2次電池22に供給する電力が、受信した指令充電電力制限値Win以下になるように制御を行う。例えば、給電制御装置41は、給電制御装置41から充電インレット23を介して2次電池22に供給する電力が、受信した指令充電電力制限値Winになるように制御を行えばよい。
【0125】
以上説明した本実施形態では、外部充電制御の実行指示がなされた場合、2次電池22の充電開始に先立ち、充電完了温度Tbfinが予測される。そして、外部充電制御で用いられる指令充電電力制限値Winが、予測された充電完了温度Tbfinが要求温度Tbwdst以下になるとの判定時に用いられた指令充電電力制限値Winに設定される。このため、今回の外部充電制御が実際に完了した後に車両10を走行させる場合において、2次電池22の放電可能な最大電力を開始時要求電力WDstに近づけることができる。これにより、2次電池22を過熱異常から保護しつつ、ドライバビリティの低下を好適に抑制することができる。
【0126】
特に本実施形態では、開始時要求電力WDstは、外部充電制御の完了後、力行駆動制御により駆動輪を回転させて車両10を発進させるために必要な2次電池22の放電電力に設定される。このため、外部充電制御の完了直後に車両10を走行させることができなくなることを好適に防止できる。
【0127】
<第6実施形態>
以下、第6実施形態について、第5実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、外部充電制御方法を変更する。
【0128】
図14及び図15に、EVECU31及び電池ECU30の協働により実行される外部充電制御処理の手順を示す。
【0129】
ステップS70では、EVECU31は、自身のメモリに記憶された最新の平均充電電力WCaveを取得する。平均充電電力WCaveは、外部充電制御により2次電池22の充電が開始されてから2次電池22の充電が完了するまでの充電電力の時間平均値である。
【0130】
ステップS71では、EVECU31は、充電時充電電力制限値WCinを、ステップS70で取得した平均充電電力WCaveに設定する。
【0131】
ステップS72では、EVECU31は、自身のメモリに記憶された最新の平均充電時間TLaveを取得する。平均充電時間TLaveは、外部充電制御により2次電池22の充電が開始されてから2次電池22の充電が完了するまでに要した時間の平均値である。
【0132】
ステップS73では、電池ECU30は、2次電池22の現在の温度である第1電池温度Tbat1を取得する。電池ECU30は、取得した第1電池温度Tbat1をEVECU31に送信する。
【0133】
ステップS74では、電池ECU30は、2次電池22の現在の内部抵抗である第1内部抵抗Rbat1を取得する。電池ECU30は、取得した第1内部抵抗Rbat1をEVECU31に送信する。
【0134】
ステップS75では、EVECU31は、ステップS71で設定した充電時充電電力制限値WCin、ステップS72で取得した平均充電時間TLave、第1内部抵抗Rbat1及び第1電池温度Tbat1に基づいて、設定した指令充電電力制限値Winで2次電池22を充電する今回の外部充電制御が完了したと仮定した場合における2次電池22の温度である第1充電完了温度TbfiAを予測する。
【0135】
ステップS76では、EVECU31は、予測した第1充電完了温度TbfiAが要求温度Tbwdst以下であるか否かを判定する。
【0136】
EVECU31は、予測した第1充電完了温度TbfiAが要求温度Tbwdstを上回ると判定した場合には、今回の外部充電制御が完了した場合における2次電池22の放電可能な最大電力が開始時要求電力WDstを下回ると判定し、ステップS77に進む。ステップS77では、EVECU31は、ステップS75で用いた最新の指令充電電力制限値Winを所定量低下させ、ステップS75に移行する。EVECU31は、ステップS75において、所定量低下させた指令充電電力制限値Winに基づいて第1充電完了温度TbfiAを再度予測する。そして、ステップS76において、EVECU31は、予測した第1充電完了温度TbfiAが要求温度Tbwdst以下であるか否かを再度判定する。
【0137】
ステップS75~S77の処理によれば、予測された第1充電完了温度TbfiAが要求温度Tbwdst以下になるまで、第1充電完了温度TbfiAの予測に用いられる指令充電電力制限値Winが低下させられる。
【0138】
EVECU31は、予測した第1充電完了温度TbfiAが要求温度Tbwdst以下であると判定した場合には、ステップS78に進む。ステップS78では、EVECU31は、第1充電完了温度TbfiAの予測に用いた最新の指令充電電力制限値Winを給電制御装置41に対して送信する。給電制御装置41は、給電制御装置41から充電インレット23を介して2次電池22に供給する電力が、受信した指令充電電力制限値Winになるように制御を行う。
【0139】
ステップS79では、EVECU31は、ステップS78の処理により2次電池22の充電が開始されてから、ステップS72で取得した平均充電時間TLaveが経過したか否かを判定する。
【0140】
EVECU31は、ステップS79において否定判定した場合には、ステップS80に進み、2次電池22の充電が完了したか否かを判定する。EVECU31は、2次電池22の充電が完了していないと判定した場合には、ステップS78に移行する。
【0141】
EVECU31は、2次電池22の充電が完了したと判定した場合には、ステップS81に進む。ステップS81では、EVECU31は、ステップS78の処理により2次電池22の充電が開始されてからステップS80で充電が完了したと判定するまでに要した実充電時間に基づいて、平均充電時間TLaveを更新する。例えば、EVECU31は、今回の実充電時間と、メモリに記憶されている最新の平均充電時間TLaveとの単純平均値又は加重平均値を更新後の平均充電時間TLaveとすればよい。EVECU31は、更新した平均充電時間TLaveをメモリに記憶する。次回の外部充電制御のステップS72では、更新された平均充電時間TLaveが取得される。
【0142】
また、ステップS81では、EVECU31は、今回の実充電時間と、ステップS78の処理により2次電池22の充電が開始されてからステップS80で充電が完了したと判定するまでの都度の2次電池22の充電電力とに基づいて、2次電池22の充電が開始されてから充電が完了したと判定するまでの2次電池22の充電電力の時間平均値(以下、実平均充電電力)を算出する。EVECU31は、算出した今回の実平均充電電力に基づいて、メモリに記憶されている平均充電電力WCaveを更新する。例えば、EVECU31は、今回の実平均充電電力と、メモリに記憶されている最新の平均充電電力WCaveとの単純平均値又は加重平均値を更新後の平均充電電力WCaveとすればよい。EVECU31は、更新した平均充電電力WCaveをメモリに記憶する。次回の外部充電制御のステップS70では、更新された平均充電電力WCaveが取得される。
【0143】
EVECU31は、ステップS79において肯定判定した場合には、ステップS82に進み、電池ECU30から取得した現在のSOCと、ステップS78で用いた最新の充電時充電電力制限値WCinとに基づいて、2次電池22の充電電力を充電時充電電力制限値WCinにしたと仮定した場合において、外部充電制御により2次電池22の充電を開始してから2次電池22の充電が完了するまでの時間である残充電時間TLCを予測する。
【0144】
ステップS83では、電池ECU30は、2次電池22の現在の温度である第2電池温度Tbat2を取得する。電池ECU30は、取得した第2電池温度Tbat2をEVECU31に送信する。
【0145】
ステップS84では、電池ECU30は、2次電池22の現在の内部抵抗である第2内部抵抗Rbat2を取得する。電池ECU30は、取得した第2内部抵抗Rbat2をEVECU31に送信する。
【0146】
ステップS85では、EVECU31は、最新の充電時充電電力制限値WCin、ステップS82で予測した残充電時間TLC、第2内部抵抗Rbat2及び第2電池温度Tbat2に基づいて、最新の指令充電電力制限値Winで2次電池22を充電する外部充電制御が完了したと仮定した場合における2次電池22の温度である第2充電完了温度TbfiBを予測する。
【0147】
ステップS86では、EVECU31は、予測した第2充電完了温度TbfiBが要求温度Tbwdst以下であるか否かを判定する。
【0148】
EVECU31は、予測した第2充電完了温度TbfiBが要求温度Tbwdstを上回ると判定した場合には、ステップS87に進む。ステップS87では、EVECU31は、ステップS85で用いた最新の指令充電電力制限値Winを所定量低下させ、ステップS85に移行する。EVECU31は、ステップS85において、所定量低下させた指令充電電力制限値Winに基づいて第2充電完了温度TbfiBを再度予測する。そして、ステップS86において、EVECU31は、予測した第2充電完了温度TbfiBが要求温度Tbwdst以下であるか否かを再度判定する。
【0149】
EVECU31は、予測した第2充電完了温度TbfiBが要求温度Tbwdst以下であると判定した場合には、ステップS88に進む。ステップS88では、EVECU31は、第2充電完了温度TbfiBの予測に用いた最新の指令充電電力制限値Winを給電制御装置41に対して送信する。給電制御装置41は、給電制御装置41から充電インレット23を介して2次電池22に供給する電力が、受信した指令充電電力制限値Winになるように制御を行う。
【0150】
ステップS89では、EVECU31は、2次電池22の充電が完了したか否かを判定する。EVECU31は、2次電池22の充電が完了したと判定した場合には、ステップS90に進み、ステップS88の処理により2次電池22の充電が開始されてからステップS89で充電が完了したと判定するまでに要した実充電時間に基づいて、ステップS81と同様に、メモリに記憶されている平均充電時間TLaveを更新する。
【0151】
また、EVECU31は、ステップS81と同様に、上記実充電時間と、ステップS88の処理により2次電池22の充電が開始されてからステップS89で充電が完了したと判定するまでの都度の2次電池22の充電電力とに基づいて、2次電池22の充電が開始されてから充電が完了したと判定するまでの2次電池22の実平均充電電力を算出する。EVECU31は、算出した今回の実平均充電電力に基づいて、メモリに記憶されている平均充電電力WCaveを更新する。
【0152】
以上説明した本実施形態によれば、第6実施形態と同様に、2次電池22を過熱異常から保護しつつ、ドライバビリティの低下を好適に抑制することができる。
【0153】
<第7実施形態>
以下、第7実施形態について、第5,第6実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、外部充電制御方法を変更する。
【0154】
図16及び図17に、EVECU31及び電池ECU30の協働により実行される処理の手順を示す。なお、図16及び図17において、先の図14及び図15に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0155】
EVECU31は、ステップS75の処理の完了後、ステップS91に進み、自身のメモリに記憶された平均走行電力WDaveを取得する。平均走行電力WDaveは、1走行サイクルにおける2次電池22放電電力の時間平均値である。1走行サイクルは、外部充電制御の完了後に車両10の走行を開始してから、外部充電制御が再度開始されるまでの期間である。
【0156】
ステップS92では、EVECU31は、自身のメモリに記憶された平均走行時間TDaveを取得する。平均走行時間TDaveは、1走行サイクルに要する時間の平均値である。
【0157】
ステップS93では、EVECU31は、ステップS91で取得した平均走行電力WDave、ステップS92で取得した平均走行時間TDave、第1内部抵抗Rbat1及び第1充電完了温度TbfiA(「第1温度」に相当)に基づいて、次回の1走行サイクルが完了したと仮定した場合における2次電池22の温度である走行完了温度TDbat(「第2温度」に相当)を予測する。
【0158】
ステップS94では、EVECU31は、予測した走行完了温度TDbatが要求温度Tbwdst以下であるか否かを判定する。ここで、本実施形態の要求温度Tbwdstは、2次電池22の放電可能な最大電力を特定走行電力(「走行要求電力」に相当)にする場合の2次電池22の温度である。特定走行電力は、例えば、道路勾配のない又は勾配の小さい平坦路を車両10が規定速度で定常走行するために必要な2次電池22の放電電力である。この特定走行電力は、例えば、実験又は計算により定められる値である。
【0159】
ステップS75,S91~94,S77の処理によれば、予測された走行完了温度TDbatが要求温度Tbwdst以下になるまで、走行完了温度TDbatの予測に用いられる指令充電電力制限値Winが低下させられる。
【0160】
EVECU31は、ステップS94において肯定判定した場合には、ステップS78に進む。ステップS78~S89の処理は、第6実施形態で説明した処理と同様である。
【0161】
2次電池22の充電の完了後、ステップS95では、EVECU31は、車両10の走行を開始するか否かを判定する。EVECU31は、ステップS95において走行を開始すると判定した後、ステップS96において、車両10の走行が完了したか否かを判定する。EVECU31は、車両10の走行が完了したと判定した場合、つまり、今回の1走行サイクルが完了したと判定した場合、ステップS97に進む。
【0162】
ステップS97では、EVECU31は、今回の1走行サイクルに要した時間(以下、実サイクル時間)に基づいて、平均走行時間TDaveを更新する。例えば、EVECU31は、今回の実サイクル時間と、メモリに記憶されている最新の平均走行時間TDaveとの単純平均値又は加重平均値を更新後の平均走行時間TDaveとすればよい。EVECU31は、更新した平均走行時間TDaveをメモリに記憶する。次回の外部充電制御のステップS92では、更新された平均走行時間TDaveが取得される。
【0163】
また、EVECU31は、今回の実サイクル時間と、今回の1走行サイクルにおける都度の2次電池22の放電電力とに基づいて、今回の1走行サイクルにおける2次電池22の放電電力の時間平均値(以下、実平均放電電力)を算出する。EVECU31は、算出した今回の実平均放電電力に基づいて、メモリに記憶されている平均走行電力WDaveを更新する。例えば、EVECU31は、今回の実平均放電電力と、メモリに記憶されている最新の平均走行電力WDaveとの単純平均値又は加重平均値を更新後の平均走行電力WDaveとすればよい。EVECU31は、更新した平均走行電力WDaveをメモリに記憶する。次回の外部充電制御のステップS91では、更新された平均走行電力WDaveが取得される。
【0164】
以上説明した本実施形態によれば、今回の外部充電制御の後に実施される次回の1走行サイクルにおいて、2次電池22の放電可能な最大電力が特定走行電力に対して大きく低下しないようにすることができる。このため、2次電池22を過熱異常から保護しつつ、次回の1走行サイクルにおけるドライバビリティの低下を好適に抑制することができる。
【0165】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0166】
・第5~第7実施形態に、第4実施形態で説明した劣化係数を用いた処理を適用してもよい。
【0167】
・第1,第2実施形態において、電池ECU30は、電池温度Tbatが限界温度Tlimit以上の場合、各制限値WDоut,WDin,WCоut,WCinを、Tstart≦Tbat<Tlimitの場合よりも小さくてかつ0よりも大きい値に設定してもよい。
【0168】
図2に示した処理を、電池ECU30及びEVECU31のうち、EVECU31のみで実施してもよい。この場合、例えば、EVECU31が備える記憶部に上記マップ情報が記憶され、電池ECU30からEVECU31に対して電池温度Tbatが送信されればよい。
【0169】
・第1,第2実施形態において、電池温度Tbatが限界温度Tlimit以上になった場合、充電時充電電力制限値WCin及び充電時放電電力制限値WCоutが0に設定されることなく、0よりもやや大きい値に設定されてもよい。
【0170】
・第1,第2実施形態において、充電時放電電力制限値WCоutと充電時充電電力制限値WCinとの比率、走行時放電電力制限値WDоutと走行時充電電力制限値WDinとの比率、充電時放電電力制限値WCоutと走行時放電電力制限値WDоutとの比率、充電時充電電力制限値WCinと走行時充電電力制限値WDinとの比率が、電池温度Tbatに応じて調整されてもよい。これにより、2次電池22の温度上昇と2次電池22に対する入出力可能電力とのバランスをとることができ、2次電池22の充電時間や、充電時に使用する機器の性能、車両10の走行性能、車両10の制動性能をより快適に調整することができる。
【0171】
・EVECU31は、力行駆動制御を行う場合、2次電池22からインバータ21へと流れる放電電流を走行時放電電流制限値IDоut以下になるようにインバータ21の制御を行ってもよい。また、EVECU31は、回生駆動制御を行う場合、回転電機20の回生発電に伴ってインバータ21から2次電池22に流れる充電電流を走行時充電電流制限値IDin以下になるようにインバータ21の制御を行ってもよい。走行時放電電流制限値IDоut及び走行時充電電流制限値IDinは電池温度Tbatに基づいて設定される。なお、走行時放電電流制限値IDоut及び走行時充電電流制限値IDinが第2制限値に相当する。
【0172】
給電制御装置41は、給電制御装置41から充電インレット23を介して2次電池22に供給する充電電流が充電時充電電流制限値ICin以下になるように制御を行ったり、2次電池22から充電インレット23を介して給電制御装置41に供給する放電電流を充電時放電電流制限値ICоut以下になるように制御を行ったりしてもよい。充電時放電電流制限値ICоut及び充電時充電電流制限値ICinは電池温度Tbatに基づいて設定される。なお、充電時放電電流制限値ICоut及び充電時充電電流制限値ICinが第1制限値に相当する。
【0173】
充電時放電電流制限値ICоut及び充電時充電電流制限値ICinは、走行時放電電流制限値IDоut及び走行時充電電流制限値IDinよりも小さい値に設定される。制御量を電力に代えて電流とする構成は、2次電池22の温度が2次電池22に流れる電流に大きく依存することに基づくものである。
【0174】
・インバータ21と2次電池22とがDCDCコンバータを介して電気的に接続されていてもよい。DCDCコンバータは、2次電池22の出力電圧を昇圧してインバータ21に供給したり、インバータ21からの電圧を降圧して2次電池22に供給したりする。
【0175】
・制御装置が搭載される車両としては、走行動力源として回転電機のみを備える車両に限らず、走行動力源として回転電機に加えて内燃機関を備える車両であってもよい。この場合であっても、上記実施形態で得られる効果に準じた効果を得ることはできる。
【0176】
・蓄電装置としては、蓄電池に限らず、例えば大容量のキャパシタであってもよい。
【0177】
・本開示に記載の制御装置及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0178】
10…車両、20…回転電機、21…インバータ、22…2次電池、30…電池ECU、31…EVECU。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17