(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】移植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
A01C11/02 301B
(21)【出願番号】P 2020111544
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2021-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村並 昌実
(72)【発明者】
【氏名】大久保 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】山根 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】東 幸太
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】中島 弘喜
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-030451(JP,A)
【文献】特開2011-229432(JP,A)
【文献】実開平02-137810(JP,U)
【文献】特開2012-023991(JP,A)
【文献】特開2011-167156(JP,A)
【文献】特開2016-178895(JP,A)
【文献】特開2017-104144(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0029475(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 7/00 - 14/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(11)に種球を圃場に植え付ける植付装置(14)と、該植付装置(14)に種球を搬送して供給する供給装置(15)と、移植用の種球の貯留部(31)を設けた移植機において、
該貯留部(31)は、供給装置(15)に種球を送り出す送出し機構(32)を備え
、
前記供給装置(15)は、無端状に巻回される左右一対の搬送チェーン(55,55)に種球を挟持する種球挟持体(56)を着脱自在に設けて構成し、該種球挟持体(56)は、弾性変形可能な柔らかい素材とし、
該種球挟持体(56)は、前記搬送チェーン(55,55)の直線部では、前後方向において互いに前後間隔を略空けず、且つ左右方向において互いに隣接し合い種球を挟持し、
前記搬送チェーン(55,55)が円弧状に移動する部分では、相互の間に前後方向及び左右方向の間隔が生じる配置とした挟持搬送装置(57)とすることを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記
植付装置(14)と供給装置(15)に駆動力を供給する伝動ケース(19)を設け、該伝動ケース(19)から前記搬送チェーン(55,55)に伝動する中継伝動ケース(59)を前記挟持搬送装置(57)の搬送方向後側寄りに設け、
前記貯留部(31)
に種球を送り出す送出し切欠部(33)を形成
し、該送出し切欠部(33
)内に送出し機構(32)を設け
、
前記送出し機構(32)は、前記挟持搬送装置(57)の搬送方向前側寄りに設けられ、前記搬送チェーン(55,55)の駆動力を受ける連動ケース(60)を介して回転する連動出力軸(61)と、該連動出力軸(61)の送出し回転軸(34)に設けられた送出しギア(37)と、該送出しギア(37)噛み合う連動ギア(64)から駆動力を受ける構成としたことを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項3】
前記貯留部(31)
には、前記送出し切欠部(33)に向かう送出し傾斜部送出し傾斜部(31a)を形成
したことを特徴とする請求項1または2に記載の移植機。
【請求項4】
前記
植付装置(14)を構成する植付ホッパ(144)は、一対のホッパ構成体(145,145)で構成され、
該ホッパ構成体(145,145)の内側端面には、ホッパ構成体(145,145)の外縁部と同形状の拡張プレート(146,146)を各々設け、
該拡張プレート(146,146)は、前記ホッパ構成体(145,145)の外周側から突出させ、マルチフィルムの切断刃となる突出部(146a)を形成することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の移植機。
【請求項5】
前記植付装置(14)を構成する植付ホッパ(144)は、一対の半円錐形状のホッパ構成体(147,147)で構成され、
該左右のホッパ構成体(147,147)を閉じると、植付ホッパ(144)が円錐形状の杭となることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、里芋やらっきょう等の種球を圃場に移植する移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、走行車体の後部に複数の供給カップが周回する供給装置と、供給装置から一つずつ落下供給される種球を圃場に植え付ける一つの苗植付ホッパを備えると共に、トレイに貯留している種球を供給装置付近まで転がらせて移動させる搬送シュータを備える移植機が知られている。(特許文献1)
また、トレイにベルトコンベアを設けて、作業者がベルトコンベアのレバーを操作することにより、貯留されている種球を供給装置付近までに移動させる移植機が知られている。(特許文献2)
これらの移植機は、作業者が供給装置に種球を移動させる距離を抑えられるので、作業者は圃場の状態や植付状況を確認しやすく、植付不良の発生を抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011‐193745号公報
【文献】特開2011-167156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、搬送シュータやベルトコンベアは複数の種球を同時に運ぶので、種球同士がぶつかり合うと、押し出された種球が供給装置付近で留まらず、供給装置に入り込んだり、機外に落下することがある。
【0005】
これにより、複数の種球が同じ場所に植え付けられ、養分や水分を取り合ってその部分だけ作物の生育が悪くなる、あるいは収穫物の品質が低下することや、作物が枯れてしまい収穫量が減少する問題が生じる。また、落下した種球を拾い集めることで余分な作業時間と労力が必要になると共に、落下時に種球に傷が付くと、生育に悪影響が生じたり、移植に適さず破棄セゼルを得なくなったりする問題が生じる。
【0006】
また、上記の移植機は、トレイに種球を貯留して作業を行うが、トレイ内の種球が無くなった際に用いる、補充用のコンテナを積載していないので、作業中に貯留している種球が無くなると一旦作業を中断し、補充用のコンテナを移植機まで運んで種球を補充する必要があり、作業能率が低下する問題がある。
【0007】
本発明は、従来の課題を考慮し、種球を一つずつ確実に供給装置に搬送して精度よく植え付けさせると共に、補充用の種球を搭載可能な移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
【0009】
請求項1に係る発明は、走行車体(11)に種球を圃場に植え付ける植付装置(14)と、該植付装置(14)に種球を搬送して供給する供給装置(15)と、移植用の種球の貯留部(31)を設けた移植機において、該貯留部(31)は、供給装置(15)に種球を送り出す送出し機構(32)を備え、前記供給装置(15)は、無端状に巻回される左右一対の搬送チェーン(55,55)に種球を挟持する種球挟持体(56)を着脱自在に設けて構成し、該種球挟持体(56)は、弾性変形可能な柔らかい素材とし、該種球挟持体(56)は、前記搬送チェーン(55,55)の直線部では、前後方向において互いに前後間隔を略空けず、且つ左右方向において互いに隣接し合い種球を挟持し、前記搬送チェーン(55,55)が円弧状に移動する部分では、相互の間に前後方向及び左右方向の間隔が生じる配置とした挟持搬送装置(57)とすることを特徴とする移植機とした。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記植付装置(14)と供給装置(15)に駆動力を供給する伝動ケース(19)を設け、該伝動ケース(19)から前記搬送チェーン(55,55)に伝動する中継伝動ケース(59)を前記挟持搬送装置(57)の搬送方向後側寄りに設け、前記貯留部(31)に種球を送り出す送出し切欠部(33)を形成し、該送出し切欠部(33)内に送出し機構(32)を設け、前記送出し機構(32)は、前記挟持搬送装置(57)の搬送方向前側寄りに設けられ、前記搬送チェーン(55,55)の駆動力を受ける連動ケース(60)を介して回転する連動出力軸(61)と、該連動出力軸(61)の送出し回転軸(34)に設けられた送出しギア(37)と、該送出しギア(37)噛み合う連動ギア(64)から駆動力を受ける構成としたことを特徴とする請求項1に記載の移植機とした。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記貯留部(31)には、前記送出し切欠部(33)に向かう送出し傾斜部送出し傾斜部(31a)を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の移植機とした。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記植付装置(14)を構成する植付ホッパ(144)は、一対のホッパ構成体(145,145)で構成され、該ホッパ構成体(145,145)の内側端面には、ホッパ構成体(145,145)の外縁部と同形状の拡張プレート(146,146)を各々設け、該拡張プレート(146,146)は、前記ホッパ構成体(145,145)の外周側から突出させ、マルチフィルムの切断刃となる突出部(146a)を形成することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の移植機とした。
【0013】
請求項5に係る発明は、前記植付装置(14)を構成する植付ホッパ(144)は、一対の半円錐形状のホッパ構成体(147,147)で構成され、該左右のホッパ構成体(147,147)を閉じると、植付ホッパ(144)が円錐形状の杭となることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の移植機とした。
【0014】
(削除)
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明により、貯留部(31)から送出し機構(32)で種球を供給装置(15)に送り出させることにより、作業者が種球を貯留部(31)から供給装置(15)に移動させる必要が無く、作業者の労力が軽減されると共に、機体の操縦や植付位置周辺の状況の確認等の作業能率が向上する。
また、搬送チェーン(55,55)の直線部では、弾性変形可能な柔らかい素材で構成される左右の種球挟持体(56)に種球が挟持されると共に、前後の種球挟持体(56)同士が互いに前後間隔を略空けないので、複数の種球を傷つけることなく植付装置(14)まで自動的に搬送することができる。
また、搬送チェーン(55,55)の搬送始端側の円弧状に移動する領域で、左右間隔が広くなっている左右の球種挟持体(56)の左右間隔部に貯留部(31)から種球が入り込み、搬送チェーン(55,55)の搬送終端側の円弧状に移動する領域で、左右間隔が広くなっている左右の球種挟持体(56)の左右間隔部から植付装置(14)に種球が落下することにより、複数の種球を傷つけることなく植付装置(14)まで自動的に搬送することができる。
【0016】
請求項2に係る発明により、請求項1に係る発明の効果に加えて、駆動力が伝動ケース(19)から植付装置(14)、供給装置(15)及び送出し機構(32)に伝動されることにより、各々の作動速度及び作動量を一つずつ種球を植え付けるタイミングに揃えることができるので、種球が確実に圃場に植え付けられる。
また、走行車体(11)の走行速度や、植付装置(14)の植付間隔の設定を変更した際に連動して供給装置(15)及び送出し機構(32)の作動速度及び作動量を連動して変更できるので、調節作業にかかる時間と労力の軽減が図られる。
【0017】
請求項3に係る発明により、請求項1または2に係る発明の効果に加えて、貯留部(31)に貯留される種球は、送出し傾斜部(31a)により送出し機構(32)が配置された送出し切欠部(33)に自動的に向かうので、作業者が貯留部(31)内の種球を移動させる作業が不要となり、作業能率が向上する。
【0018】
(削除)
【0019】
請求項4にかかる発明により、請求項1から3のいずれか1項に係る発明の効果に加えて、ホッパ構成体(145,145)の内側端面に拡張プレート(146)を設けたことにより、種球の形状や大きさに差異があっても植付ホッパ(144)内に詰まることを防止できるので、種球の植付が行われなかった箇所に手作業で種球を植え付ける作業が不要になる。
また、拡張プレート(146,146)を突出させてマルチフィルムの切断刃となる突出部(146a)を形成することにより、マルチフィルムの植付孔部の前後に切れ目を入れることができるので、里芋が成長する際にマルチフィルムが持ち上げられることが防止され、マルチフィルムが圃場面から持ち上げられ、保温効果や防草効果が低下することが防止される。
【0020】
また、ホッパ構成体(145,145)同士の左右間を広くして植付ホッパ(144)の内部空間が広くなり、種球を植付ホッパ(144)の下端部付近に種球を保持させておくことができるので、土中でホッパ構成体(145,145)が開く際に確実に種球が土中に移動し、植え付け損なうことが防止される。
【0021】
請求項5に係る発明により、請求項1から3のいずれか1項に係る発明の効果に加えて、半円錐形状のホッパ構成体(147,147)で構成され、ホッパ構成体(147,147)を閉じた状態では、円錐形状の杭となる植付ホッパ(144)としたことにより、半円錐形状のホッパ構成体(147,147)を一体形成できるので、土壌との接触負荷による破損が発生しにくくなる。
【0022】
(削除)
【0023】
(削除)
【0024】
(削除)
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図5】(a)植付作業中の種球ホッパとコンテナ載置部を示す要部側面図、(b)コンテナ載置部を傾斜させて種球を種球ホッパに移動させる補充作業を示す要部側面図
【
図6】(a)送出し板を4枚装着した送出しロールを示す側面図、(b)送出し板を6枚装着した送出しロールを示す側面図
【
図7】(a)拡張プレートを装着して内部空間を広げた植付ホッパを示す要部正面図、(b)従来の植付ホッパを示す要部側面図
【
図8】(a)拡張プレートを装着して内部空間を広げた植付ホッパを示す要部側面図、(b)拡張プレートを装着したホッパ構成体を示す斜視図
【
図9】別構成のホッパ構成体を用いた植付ホッパを示す要部正面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施の形態の移植機の一例として、里芋等の種球を移植する移植機10を示す左側面図であり、
図2は平面図である。
【0028】
なお、種球とは、収穫された里芋の可食部である、子芋及び孫芋から、頂芽を発芽させたもののことである。
【0029】
以下の説明では、操縦ハンドル13を配置した側を後とし、その反対側、即ちエンジン12を配置した側を前とする。そして、機体前側に向かって右手側を右とし、左手側を左とする。
【0030】
本件の移植機10は、
図1、
図2に示すとおり、機体を前進走行可能とする走行車体11と、走行車体11の後部に設ける歩行操縦用の操縦ハンドル13と、圃場に苗を植え付ける植付装置14と、植付装置14に苗を供給する供給装置15を備える。
【0031】
走行車体11は、機体前部にミッションケース16を設け、ミッションケース16の前側に駆動装置であるエンジン12を設ける。前記ミッションケース16の左右両側には、後輪となる走行輪17に駆動力を伝動する走行伝動ケース18を各々上下回動可能に装着する。
【0032】
なお、
図1及び
図2に示すとおり、左右の走行輪17は、走行伝動ケース18の機体後側で外側に向けて伝動車軸17aを突出させて装着しているが、この伝動車軸17aは組み換え作業により、機体内側に向けて突出させることも可能であり、走行車体11と走行伝動ケース18の左右間に走行輪17が配置される構成とすることも可能である。
【0033】
走行輪17の配置変更は、移植する作物の種類、植付作業を行う圃場の土質、あるいは作業地域の慣行により畝幅が異なる際に行う。これにより、移植機10を畝の左右に形成される畝溝を安定して走行でき、苗を畝の左右中央に揃えて植え付けることが可能になる。
【0034】
なお、作物の種類によっては、畝高さが低い、あるいは畝を作らない、所謂平畝に植え付けるものもある。平畝に苗を植え付けるとき、移植機10が苗の植付位置付近を踏みながら走行すると土が固められると共に、移植機10の重量により窪みができて水が溜まりやすくなり、苗の根部の定着が阻害されると共に、溜まった水を過剰に吸水してしまうことで、生育不良が生じるおそれがある。
【0035】
したがって、平畝での作業時においても、苗の植付位置に対して左右の走行輪17の左右間隔を適切に確保することで、植付後の苗の生育が安定する。
【0036】
左右の走行伝動ケース18は、後述する昇降シリンダ62やローリングシリンダ63の伸縮により回動し、これにより走行輪17の接地面から走行車体11までの高さが変動し、車高が調節される。
【0037】
この車高調節は、畝の高さに合わせて植付深さを設定するときだけでなく、旋回走行前に作業者が操縦ハンドル13を押し下げて機体前側を持ち上げやすくするときや、苗を植え付けない移動時に植付装置14等が地面に接触することを防止する際にも行われる。
【0038】
そして、
図1及び
図2に示すとおり、前記ミッションケース16から伝動されて植付装置14及び供給装置15に駆動力を分岐供給する伝動ケース19を走行車体11の前後方向の中央部付近に設ける。この伝動ケース19の左右一側には植付装置14への伝動経路を設け、機体後上側には供給装置15を設ける。供給装置15の機体後側には、種球を貯留すると共に供給装置15に移動させる送出し装置30を設けると共に、種球を収容するコンテナを搭載するコンテナ搭載部40を設ける。
【0039】
送出し装置30は、
図1及び
図5に示すとおり、機体前部側が機体左右方向中央で且つ下方に向かって窄んだ箱型状の種球ホッパ31と、この種球ホッパ31に投入された種球を一つずつ供給装置15に送り出す送出しロール32で構成される。
【0040】
より具体的には、種球ホッパ31の機体前側の収容壁部31a、及び収容底部31bの機体前側には、種球が通過すると共に送出しロール32が配置される送出し切欠部33を一体的に形成すると共に、収容底部31は送出し切欠部33に向かう送出し傾斜面31aを形成させる。
【0041】
前記送出しロール32は、送出し回転軸34に共回りする送出しボス35を設け、この送出しボス35の外周に所定角度ごとに送出し板36を設けて構成する。種球はある程度系の大きさがあるので、送り出し時の詰まりを防止すべく、
図6(a)に示すとおり、送出し板36は90度間隔で4枚、あるいは
図6(b)に示すとおり、60度間隔で6枚を設けることが望ましい。また、種球の傷付きを防止すべく、送出し板36の表面はスポンジやゴム等の軟質材で被覆するか、あるいは硬質のゴム等の一定以上の力がかかると変形可能な素材で構成するものとする。
【0042】
図3及び
図4に示すとおり、送出し回転軸34の左右どちらか一側の端部には、伝動ケース19から直接、あるいは供給装置15から間接的に中継伝動ケースから駆動力を受ける送出しギア37を設けて、供給装置15の種球の搬送速度、及び植付装置14の植付動作速度に連動して種球の送出し回転が行われる構成とする。
【0043】
なお、送出し切欠部33の左右幅は、種球の大きさにバラつきがあると共に、形状も異なるので、平均的な大きさの種球の径よりも左右方向に幅広く形成するものとする。
【0044】
図1、
図2及び
図5に示すとおり、前記コンテナ搭載部40は、種球ホッパ31の後部に、コの字形状のコンテナ支持アーム41を機体前後方向に回動可能に設け、このコンテナ支持アーム41の左右どちらか一側、あるいは両方に作業者が手動でコンテナ支持アーム41を回動操作する回動レバー42を設ける。
【0045】
上記のコンテナ支持アーム41は、例えばバネ鋼材で構成し、農作業に使われるコンテナの規格に合わせた左右幅とすることで、セットしたコンテナを左右から軽く押さえて支持する構成としてもよい。一方、使用するコンテナの左右幅が異なるものを用いることも考えられるので、コンテナ支持アーム41の上下に伸びる部分を、コンテナの外側面に接触して挟持する挟持アーム部41aとして形成してもよい。
【0046】
作業者は、コンテナ支持アーム41に種球の入ったコンテナを設置しておき、種球ホッパ31内の種球が少なくなる、あるいは無くなると、
図5(b)に示すとおり、回動レバー42を操作してコンテナ支持アーム41を機体前側に回動させる。すると、コンテナの開口されている上面が機体前側に面する姿勢となり、種球が種球ホッパ31内に補充される。
【0047】
種球を種球ホッパ31に投入する際、コンテナ傾斜角度が圃場面に対して垂直に近くなるほど、一度に大量の種球が移動するが、このとき種球同士がぶつかり合うことで、種球が傷付いて移植後に枯れてしまうことや、傷口から生じる粘液により種球が植付装置14や供給装置15に張り付き、種球の植付が行われない箇所が発生する問題がある。
【0048】
また、コンテナに収容されている種球の量によっては、コンテナから放出される位置から種球ホッパ31までの上下間隔が大きくなるので、落下時の衝撃によりさらに傷付きやすくなる問題がある。
【0049】
したがって、作業者は、コンテナに収容されている種球の数が多いときは緩い傾斜角度で少しずつ、できるだけ上下位置を抑えつつ種球を放出させ、種球の数が減ってコンテナから放出されにくくなるにつれて傾斜角度を大きくすることで、種球を傷付けず、且つコンテナ内に種球が残らないように、回動レバー42を操作するものとする。
【0050】
回動レバー42を誤ってコンテナの傾斜角度が垂直に近づく方向に大きく操作されることを防止すべく、回動レバー42の操作範囲に、ストッパとなるピンを固定、あるいは位置変更可能に設けてもよい。
【0051】
これにより、コンテナから種球が勢いよく放出されて傷付くことや、種球ホッパ31に入らずに圃場に種球が散らばってしまうことを防止できる。
【0052】
種球ホッパ31の送出し切欠部33に到達した種球は、送出しロール32によって搬送装置15に押し出される。この搬送装置15は、
図1から
図4に示すとおり、機体前後方向を長手とする搬送フレーム51,51を左右方向に間隔を空けて車体フレーム20に配置し、搬送フレーム51,51の前後に前伝動スプロケット53と後伝動スプロケット54を各々回転可能に設けると共に、前伝動スプロケット53と後伝動スプロケット54に搬送チェーン55を各々巻回して構成する。
【0053】
左右の搬送チェーン55,55で種球を挟持すると、種球の外周に傷が付くと共に、搬送チェーン55に塗布した潤滑剤により汚染されることになるので、左右の搬送チェーン55,55の挟持搬送面には、スポンジ等の弾性変形が可能で且つ軟らかい素材を、板状またはブロック状に形成した種球挟持体56…を複数着脱可能に設ける。球種挟持体56…は、搬送チェーン55が略直線状となる直線部では互いに前後間隔を殆ど空けることなく隣接し合い、前伝動スプロケット53及び後伝動スプロケット54に接して搬送チェーン55が円弧状に移動する部分では、相互の間に間隔部が生じる配置とする。また、球種挟持体56,56は、左右方向において各々前後方向にズレることなく隣接し合い、種球を前後の全幅で挟持する構成とする。
【0054】
これにより、左右の挟持搬送装置57,57が構成される。
【0055】
上記の構成では、送出しロール32により送出し切欠部33から搬送装置15側、即ち機体前側に送り出される種球は、搬送チェーン55が後伝動スプロケット54,54により円弧状に移動する領域で左右間隔が広くなっている左右の球種挟持体56,56の左右間隔部に入り込み、搬送チェーン55が直線状となって移動し始める位置において、左右の球種挟持体56,56の弾性変形により挟持される。
【0056】
そして、球種は挟持搬送領域の搬送後方上手側から下手側に直線的に搬送され、搬送チェーン55が前伝動スプロケット53,53により円弧状に移動する領域で左右の球種挟持体56,56の左右間隔が広くなると、挟持状態が解消されて下方に落下する。前記植付装置14は、種球が落下するタイミングで上死点乃至上死点の前後位置に移動し、供給装置15と植付装置14の上下間隔が狭くなった状態で種球を受ける構成とする。
【0057】
これにより、種球ホッパ31に種球を複数投入しておけば、種球を傷つけることなく植付装置14まで自動的に搬送することができるので、作業能率が向上する。
【0058】
種球は、文字の通りある程度は球に近いものであるが、種球の品種等により、楕円に近いものや、球とは言い難い歪な形状のものであることの方が多い。さらには、種球の大きさにも差異があるので、球種挟持体56が弾性変形可能な柔らかい素材であっても、挟持力の不足により種球が落下することや、種球が左右の球種挟持体56,56の左右間に入り込めず、種球ホッパ31と供給装置15の間で種球が停滞してしまう可能性がある。
【0059】
この問題の発生を防止すべく、車体フレーム20に左右の搬送フレームステー58,58を設け、この搬送フレームステー58,58に搬送フレーム51,51の後側端部を左右方向に移動可能に装着し、左右位置の調整により左右の種球挟持体56,56の左右間隔を種球の形状や大きさに合わせて調節可能とする。なお、調節時以外はボルト等の固定部材により、搬送フレームステー58,58を搬送フレーム51,51に固定することで、作業中に挟持幅が変わって種球が落下することや、種球が挟持搬送始端部に入り込めなくなることを防止している。
【0060】
これにより、挟持力不足で種球が圃場に落下することを防止できるので、種球を拾い集める作業が不要になると共に、落下時に種球が傷付いて移植に適さないものとなり、破棄されることが防止される。
【0061】
また、種球ホッパ31と供給装置15の間で種球が停滞することを防止できるので、種球が植え付けられなかった箇所に手作業で種球を植える作業が不要になると共に、送出しロール32と種球ホッパ31の間に停滞した種球が摩擦により傷付き、移植に適さないものとなって破棄せざるを得なくなることが防止される。
【0062】
図1から
図4に示すとおり、左右の搬送フレーム51,51の下面のうち、少なくとも左右一方には、伝動ケース19から上方に伸びる搬送出力軸に連結される、中継伝動ケース59を設ける。この中継伝動ケース59は、内部にスプロケットと伝動チェーンを少なくとも内装しており、前伝動スプロケット53の回転軸に連結する側は、搬送フレーム51を搬送フレームステー58に沿って左右方向に移動させる際に追従して移動し、中継伝動ケース59を回動させる構成とする。あるいは、伝動ケース19及び前伝動スプロケット53の回転軸に各々ベベルギアを設け、ユニバーサルジョイント(図示省略)の前後に対応するベベルギアを設けて、搬送フレーム51の左右移動に追従する構成としてもよい。
【0063】
そして、左右の後伝動スプロケット54,54の各回転軸は、連動ケース60に各々装着し、左右の挟持搬送装置57,57が同調して回転する構成とする。
【0064】
上記構成では、伝動ケース19から植付装置14、供給装置15及び送出しロール32に各々駆動力が伝動されるので、設定した走行速度や植付間隔に合わせて植付装置14、供給装置15及び送出しロール32が作動するので、種球の送り出しが不定期に行われることや、種球の落下時に植付装置14が適切な位置に移動していないことが生じず、種球を確実に設定間隔毎に植え付けることが可能になる。
【0065】
また、連動ケース60が挟持搬送装置57,57の搬送始端側の下部に設けられることにより、送出しロール32が過度に種球を下方に案内しようとしても、連動ケース60が種球の移動を阻止して挟持させることができ、落下した種球を拾い集める作業が不要になると共に、種球が落下時に傷付くことが防止される。
【0066】
なお、連動ケース60は送出しロール32の前側位置で且つ近傍に配置されるので、この連動ケース60から連動出力軸61を機体後方に取り出し、この連動出力軸61に送出し回転軸34に設けられた送出しギア37と噛み合う、連動ギア64を設けて伝動することが望ましい。
【0067】
図2に示すとおり、エンジン12及びミッションケース16の後側において、操縦ハンドル13と走行車体11を連結する車体フレーム20の前側端部を連結する。また、車体フレーム20の後端部は、機体後側端部を操縦ハンドル13の機体前側に位置するハンドルシャフト13aの左右中央部付近に連結する。なお、操縦ハンドル13は、機体左右方向の該ハンドルシャフト13aと、ハンドルシャフト13aの左右両側に各々設けられて機体後側に突出するハンドルアーム13bで構成する。
【0068】
そして、前記ハンドルシャフト13aの機体後側で、且つ左右のハンドルアーム13bの基部側寄りの左右間には、昇降シリンダ62を伸縮させて車高を調節する車高調節レバー21、ミッションケース16に内装する主クラッチを入切して左右の走行伝動ケース18及び伝動ケース19への伝動を入切する主クラッチレバー22、及び走行車体11の走行伝動を移動速、植付作業速、走行中立及び後進のいずれかに切り替える主変速レバー23を備える、操縦パネル24を設ける。
【0069】
また、前記左右のハンドルアーム13bには、左右の走行伝動ケース18に内装され、走行輪17への駆動の入切を切り替えるサイドクラッチを操作するサイドクラッチレバー28を各々装着する。該サイドクラッチレバー28は、作業者が旋回操作や移動操作をする際に操縦ハンドル13の左右のハンドルアーム13bを把持する際、握りやすい位置に配置するものとする。
【0070】
これにより、苗の植付作業を行わない旋回走行や移動走行の際、作業者は機体後側の操縦ハンドル13及び操縦パネル24を操作しやすい位置に立って作業することになり、状況に合わせた操作を適切に行いやすく、作業能率が向上する。
【0071】
そして、走行車体11の機体前側の左右両側には、前輪でもある、地面との接地抵抗により回転する接地転輪25を各々設ける。該接地転輪25は、機体左右方向に位置を変更可能とし、走行輪17と共に畝の幅、あるいは植付条の幅に合わせて適切な位置に調節するものとする。
【0072】
次に、植付装置14について、具体的に説明する。
【0073】
図1に示すとおり、前記伝動ケース19の左右一側には、走行車体11の車速、ならびに設定した苗の前後方向の植付間隔、所謂株間に合わせて上下回動する上側リンクアーム141と、該上側リンクアーム141に連動して上下回動する、側面視で円弧形状の下側リンクアーム142を、回動軸を介して装着する。該下側リンクアーム142の円弧は機体後側下方に向かって突出するものとし、これにより後述する植付ホッパ145が昇降される際、前後方向に揺動される構成となる。
【0074】
前記上側リンクアーム141と下側リンクアーム142の後側端部はリンクステー143の上下方向に各々装着し、該リンクステー143の機体内側端部に植付ホッパ144を装着する。該植付ホッパ144は、左右一対のホッパ構成体145,145を各々回動可能で、且つ各々の内部に収容空間が形成される形で設けて構成するものであり、前記上側リンクアーム141と下側リンクアーム142の上下回動に合わせて回動して開閉する構成とする。
【0075】
作物の苗を植え付ける植付ホッパ144においては、左右のホッパ構成体145,145は内側端面同士が直接接触し合う配置であっても、植付ホッパ144の内部の広さは苗の収容に十分な広さを有している。しかしながら、
図7(b)に示すとおり、里芋等の種球はある程度の幅があると共に、苗に比べると著しく柔軟性が無いので、種球の大きさによっては左右のホッパ構成体145,145が閉じた状態になると左右から圧迫され、これにより放出される汁を介して左右のホッパ構成体145,145に張り付き、土中に植えられなくなる問題がある。
【0076】
なお、種球が里芋の場合、粘性の強い汁が放出されるので、後から供給される種球、あるいは圃場の土がホッパ構成体145,145内に張り付く原因にもなり、ホッパ構成体145,145を含めた植付ホッパ144の清掃作業に要する労力が増加することになる。その際、作業者がこの汁に直接接触すると、かぶれ等を発生させるおそれがある。
【0077】
また、里芋の汁の除去が不十分であると、この汁を栄養源としてカビや細菌が発生し、余分な清掃が必要になると共に、種球や土壌がカビや細菌に汚染され、里芋の生育に悪影響が生じる、あるいは里芋が収穫できなくなる等の問題を生じさせるおそれがある。
【0078】
この問題を防止すべく、
図7(a)及び
図8に示すとおり、ホッパ構成体145の内側端面に、ホッパ構成体145の内側端面と同形状で、且つある程度の左右方向の厚み(例:3~5mm)のある拡張プレート146を溶接等により装着する。この拡張プレート416の前後方向の厚みは、ホッパ構成体145の内側端面を基部として、外側端面に至る厚み(例:2~3mm前後)を最低限とするが、ホッパ構成体145の外周側に突出部146aを形成し、種球を植え付ける圃場に敷設しているマルチフィルムに切れ目を入れる切断刃として用いてもよい。この切れ目は、植付ホッパ144により形成される植付孔部の前後に形成するものである。
【0079】
突出部146aの突出量は任意ではあるが、マルチフィルムを過度に切断する必要は無いので、10~30mm程度とすることが望ましい。植え付ける種球の品種の違い等による条件の違いに対応させる際は、突出部146aの厚みの異なる拡張プレート146を装着したホッパ構成体145に交換するものとする。
【0080】
これにより、マルチフィルムの植付孔部の前後に切れ目を入れることができるので、里芋が成長する際に茎葉部が植付孔部から多少離れた位置に伸び始めても、マルチフィルムが切れ目により捲れるので、マルチフィルムが持ち上げられることが防止される。したがって、マルチフィルムが圃場面から持ち上げられ、保温効果や防草効果が低下することが防止される。
【0081】
また、拡張プレート146の下端部は、ホッパ構成体145の下端部と同じ上下位置とするが、上端部はホッパ構成体145の上端部よりも上下方向の下側までに留めるものとする。具体的には、
図7(a)及び
図8(a)(b)に示すとおり、ホッパ構成体145の下端部から上下長さの半分~五分の三程度の位置までの長さとする。
【0082】
これにより、ホッパ構成体145,145の下端部付近の左右間隔が広がるので、種球が大きいものであったり、形状が歪なものであったとしても、引き継がれた種球は植付ホッパ144の下端部付近の内部まで落下でき、植付時に左右のホッパ構成体145,145が開くと確実に土中に種球が植え付けられる。言い換えれば、植付ホッパ144が正常に土中に進入したにもかかわらず、種球が左右のホッパ構成体145,145に挟まれたままとなって植え付けられなくなることが防止される。
【0083】
また、種球の植付後にホッパ構成体145,145同士が閉じる際、ホッパ構成体145よりも上下長さが短く、且つ左右幅も狭い拡張プレート146同士が接触し合うことにより、接触時に生じる音の発生を抑制できるので、騒音による精神的な負担が軽減される。
【0084】
また、拡張プレート146の上下長さを、少なくともホッパ構成体145の下端部から上下の中央位置付近までとしたことにより、種球の植付時に土中に進入する範囲は拡張プレート146が土の進入を保護するので、植付ホッパ144内に土が大量に入り込むことが防止される。
【0085】
上記構成では、拡張プレート146を各々ホッパ構成体145に取り付ける必要があるが、種球の移植作業が土中に進入して退避する、という動作を繰り返すものであるので、作業の繰り返しにより連結部分の強度が低下すると、いずれ拡張プレート146が脱落する可能性がある。
【0086】
したがって、
図9に示すとおり、植付ホッパ144の正面(背面視)が剣形状となる、半円錐形状のホッパ構成体147,147で植付ホッパ144を構成する。左右のホッパ構成体147を閉じた状態では、円錐形状の杭となる断面形状となることが望ましい。なお、この半円の径は、上記のホッパ構成体145よりも大径とし、種球の形状や大きさに左右されにくい内部空間が形成されるものとする。
【0087】
これにより、金属材の加工により半円錐形状のホッパ構成体147を一体形成できるので、土壌との接触負荷による破損が発生しにくくなる。
【0088】
また、ホッパ構成体147同士の内側端部に切り欠かれた部分が無いので、土中への進入量にかかわらず種球の植付後に植付ホッパ144の内部に土が入り込むことが確実に防止される。
【0089】
上記の半円錐形状のホッパ構成体147は、拡張プレート146を備えるホッパ構成体145と同じ取付基部を有し、互換性を有するものとしてもよい。また、互換性については、その他の作物の苗の植付ホッパとの間にあってもよい。
【0090】
なお、種球の植付深さは品種によって異なるので、移植機側の植付深さの調節範囲では対応できないときには、ホッパ構成体の上下長さがより長いもの、あるいはより短いものに交換することで、浅植えや深植えに対応可能とするとよい。
【0091】
畝面や畝溝に合わせて車高を変更し、苗の植付深さをほぼ一定に保つべく、伝動ケース19の下部には畝面を検出する畝面センサ26を上下回動可能に装着する。この畝面センサ26には昇降シリンダ62を伸縮させる油圧バルブ(図示省略)に連結される連動ワイヤ(図示省略)の一側部を装着し、回動量の変化があると油圧バルブの開度が変更されて昇降シリンダ62が伸縮して走行車体11の車高が自動的に上昇または下降する構成となる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明に係る移植機は、里芋やらっきょう等の種球を移植する作業等に適用でき、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0093】
11 走行車体
14 植付装置
15 供給装置
19 伝動ケース
31 種球ホッパ(貯留部)
32 送出しロール(送出し機構)
33 送出し切欠部
40 コンテナ搭載部(搭載部)
42 回動レバー(投入切替機構)
57 挟持搬送装置
144 植付ホッパ
145 ホッパ構成体
146 拡張プレート