IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横河電機株式会社の特許一覧

特許7192839ダイアフラムシール及びそのメンテナンス方法
<>
  • 特許-ダイアフラムシール及びそのメンテナンス方法 図1
  • 特許-ダイアフラムシール及びそのメンテナンス方法 図2
  • 特許-ダイアフラムシール及びそのメンテナンス方法 図3
  • 特許-ダイアフラムシール及びそのメンテナンス方法 図4
  • 特許-ダイアフラムシール及びそのメンテナンス方法 図5
  • 特許-ダイアフラムシール及びそのメンテナンス方法 図6
  • 特許-ダイアフラムシール及びそのメンテナンス方法 図7
  • 特許-ダイアフラムシール及びそのメンテナンス方法 図8
  • 特許-ダイアフラムシール及びそのメンテナンス方法 図9
  • 特許-ダイアフラムシール及びそのメンテナンス方法 図10
  • 特許-ダイアフラムシール及びそのメンテナンス方法 図11
  • 特許-ダイアフラムシール及びそのメンテナンス方法 図12
  • 特許-ダイアフラムシール及びそのメンテナンス方法 図13
  • 特許-ダイアフラムシール及びそのメンテナンス方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ダイアフラムシール及びそのメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/06 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
G01L19/06 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020170763
(22)【出願日】2020-10-08
(65)【公開番号】P2022062621
(43)【公開日】2022-04-20
【審査請求日】2022-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】関森 幸満
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-089171(JP,A)
【文献】特開2005-114453(JP,A)
【文献】特開2002-071494(JP,A)
【文献】特開2016-109525(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0023499(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32
G01L 27/00-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定媒体に面して配置される第1のダイアフラムと、
前記第1のダイアフラムが前記測定媒体から受けた圧力を伝送器に伝達するための封入液を収容する封入液収容部と、
前記封入液中に侵入した水素を前記封入液から排出するために前記水素を透過させる第2のダイアフラムと、を有するダイアフラムシール。
【請求項2】
前記第2のダイアフラムを透過した前記水素を前記ダイアフラムシール外に排出するための水素排出路を有する、請求項1に記載のダイアフラムシール。
【請求項3】
前記水素排出路は、外付け部品を接続可能な外付け部品接続部を有する、請求項2に記載のダイアフラムシール。
【請求項4】
前記外付け部品は、水素吸蔵カートリッジを有する、請求項3に記載のダイアフラムシール。
【請求項5】
前記第2のダイアフラムは、基材と、前記基材の前記封入液側の表面に配置され、前記第2のダイアフラム内への前記水素の侵入を加速させるために水素解離を促す触媒として働く材料と、を有する、請求項1~4の何れか1項に記載のダイアフラムシール。
【請求項6】
前記第2のダイアフラムの水素透過速度は、前記第1のダイアフラムの水素透過速度より大きい、請求項1~5の何れか1項に記載のダイアフラムシール。
【請求項7】
前記測定媒体の圧力によって前記第2のダイアフラムが前記封入液の反対側に変形させられることで前記第2のダイアフラムの前記封入液の反対側の表面に接触し、それにより前記第2のダイアフラムを支持する支持面を有する、請求項1~6の何れか1項に記載のダイアフラムシール。
【請求項8】
ダイアフラムシールをメンテナンスする方法であって、
前記ダイアフラムシールが、測定媒体に面して配置される第1のダイアフラムと、 前記第1のダイアフラムが前記測定媒体から受けた圧力を伝送器に伝達するための封入液を収容する封入液収容部と、前記封入液中に侵入した水素を前記封入液から排出するために前記水素を透過させる第2のダイアフラムと、を有し、
前記方法が、前記第2のダイアフラムを透過した前記水素を前記ダイアフラムシール外に排出する排出ステップを有する方法。
【請求項9】
前記ダイアフラムシールに取り付けたセンサによって、前記第2のダイアフラムを透過した前記水素を吸蔵するために前記ダイアフラムシールに取り付けた水素吸蔵カートリッジの水素吸蔵量に関わる物理情報を取得し、前記水素吸蔵カートリッジの交換を判断する判断ステップを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記排出ステップは、前記ダイアフラムシールを加熱し、それにより前記第2のダイアフラムの水素透過速度を上昇させることで、前記ダイアフラムシール外への前記水素の排出を加速させる加熱ステップを有する、請求項8又は9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ダイアフラムシール及びそのメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測定媒体に面して配置されるダイアフラムと、ダイアフラムが測定媒体から受けた圧力を伝送器に伝達するための封入液を収容する封入液収容部と、を有するダイアフラムシールが知られている(例えば特許文献1、2参照)。ダイアフラムシールによって伝送器に伝達される測定媒体の圧力に基いて、測定媒体の物理量を計測することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-22586号公報
【文献】特開2014-89171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダイアフラムシールは、測定媒体からダイアフラムを透過して封入液中に侵入した水素が封入液への溶解許容量を超えると、封入液中に水素気泡が発生し、測定誤差を生じてしまう。しかし、従来のダイアフラムシールは、封入液中に侵入した水素を封入液から効率的に排出することができなかった。
【0005】
本開示の目的は、封入液中に侵入した水素を封入液から効率的に排出することができるダイアフラムシール及びそのメンテナンス方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係るダイアフラムシールは、測定媒体に面して配置される第1のダイアフラムと、前記第1のダイアフラムが前記測定媒体から受けた圧力を伝送器に伝達するための封入液を収容する封入液収容部と、前記封入液中に侵入した水素を前記封入液から排出するために前記水素を透過させる第2のダイアフラムと、を有する。このような構成によれば、封入液中に侵入した水素を、第2のダイアフラムを透過させることにより封入液から効率的に排出することができる。
【0007】
一実施形態において、前記第2のダイアフラムを透過した前記水素を前記ダイアフラムシール外に排出するための水素排出路を有する。このような構成によれば、第2のダイアフラムを透過した水素を水素排出路を通してダイアフラムシール外に排出することができる。
【0008】
一実施形態において、前記水素排出路は、外付け部品を接続可能な外付け部品接続部を有する。このような構成によれば、配管、封止栓、水素吸蔵カートリッジ、センサなどで構成される外付け部品を容易に取り付けることができる。
【0009】
一実施形態において、前記外付け部品は水素吸蔵カートリッジを有する。このような構成によれば、水素の排出を許容できない使用環境に有利に適合することができる。
【0010】
一実施形態において、前記外付け部品接続部に前記外付け部品を接続した状態で耐圧構造を有する。このような構成によれば、耐圧構造を必要とされる使用環境に適合することができる。
【0011】
一実施形態において、前記外付け部品接続部は、前記水素排出路が負圧の状態で前記外付け部品で封止されている。このような構成によれば、封入液からの水素の排出速度を高めることができる。
【0012】
一実施形態において、前記第2のダイアフラムは、基材と、前記基材の前記封入液側の表面に配置され、前記第2のダイアフラム内への前記水素の侵入を加速させるために水素解離を促す触媒として働く材料と、を有する。このような構成によれば、封入液からの水素の排出速度を高めることができる。
【0013】
一実施形態において、前記第2のダイアフラムは、基材と、前記基材の前記封入液側の表面に配置され、前記第2のダイアフラム内へ前記水素の侵入を加速させるために前記基材よりも前記水素を吸収しやすい材料と、を有する。このような構成によれば、封入液からの水素の排出速度を高めることができる。
【0014】
一実施形態において、前記材料は、白金族金属若しくはその合金又はそれらの化合物を含む。このような構成によれば、封入液からの水素の排出速度をより確実に高めることができる。
【0015】
一実施形態において、前記材料は、前記基材の厚さより薄い薄膜構造を有する。このような構成によれば、高価な貴金属の使用量を低減し、コストを低減することができる。
【0016】
一実施形態において、前記材料は、複数層で構成されている。このような構成によれば、材料の選択の自由度を高めることができる。
【0017】
一実施形態において、前記基材は、SUS316Lで形成されている。このような構成によれば、第2のダイアフラムの水素脆化を抑制することができる。
【0018】
一実施形態において、前記基材は、前記水素を透過する導電性セラミクス材料で形成されている。このような構成によれば、封入液からの水素の排出速度を高めることができる。
【0019】
一実施形態において、前記基材は、前記水素を透過させる一方、前記封入液を透過させない空孔を備えるポーラス構造を有する。このような構成によれば、封入液からの水素の排出速度を高めることができる。
【0020】
一実施形態において、前記第2のダイアフラムの水素透過速度は、前記第1のダイアフラムの水素透過速度より大きい。このような構成によれば、封入液中に水素気泡が発生することをより確実に抑制することができる。
【0021】
一実施形態において、前記測定媒体の圧力によって前記第2のダイアフラムが前記封入液の反対側に変形させられることで前記第2のダイアフラムの前記封入液の反対側の表面に接触し、それにより前記第2のダイアフラムを支持する支持面を有する。このような構成によれば、第2のダイアフラムを薄く設けることができ、それにより封入液からの水素の排出速度を高めることができる。
【0022】
一実施形態において、前記支持面は、前記水素排出路を構成する水素排出溝を有する。このような構成によれば、水素排出溝により封入液からの水素の排出速度を高めることができる。
【0023】
一実施形態において、前記水素排出路は、前記水素排出溝と、前記水素排出溝に連通する水素排出穴と、を有する。このような構成によれば、水素排出路により水素を効率的に排出することができる。
【0024】
一実施形態において、前記水素排出穴は、前記外付け部品接続部を有する。このような構成によれば、簡単な構造で外付け部品接続部を設けることができる。
【0025】
一実施形態において、前記第2のダイアフラムは開口を有し、前記封入液収容部が前記開口を通ってキャピラリ内に連通している。このような構成によれば、水素が溜まりやすい第1のダイアフラムの外周部まで第2のダイアフラムを形成し、封入液から水素をより確実に排出することができる構造とすることができる。
【0026】
一実施形態において、前記ダイアフラムシール内の物理情報を取得するセンサを有し、又は、前記外付け部品は前記ダイアフラムシール内の物理情報を取得するセンサである。このような構成によれば、センサによって取得したダイアフラムシール内の物理情報に基づいてダイアフラムシールを効果的にメンテナンスすることができる。
【0027】
幾つかの実施形態に係るダイアフラムシールをメンテナンスする方法は、前記ダイアフラムシールが、測定媒体に面して配置される第1のダイアフラムと、前記第1のダイアフラムが前記測定媒体から受けた圧力を伝送器に伝達するための封入液を収容する封入液収容部と、前記封入液中に侵入した水素を前記封入液から排出するために前記水素を透過させる第2のダイアフラムと、を有し、前記方法が、前記第2のダイアフラムを透過した前記水素を前記ダイアフラムシール外に排出する排出ステップを有する。このような構成によれば、排出ステップを適切なタイミングで実施することにより、封入液中に侵入した水素を封入液から効率的に排出することができる。
【0028】
一実施形態において、前記ダイアフラムシールに取り付けたセンサによって、前記第2のダイアフラムを透過した前記水素を吸蔵するために前記ダイアフラムシールに取り付けた水素吸蔵カートリッジの水素吸蔵量に関わる物理情報を取得し、前記水素吸蔵カートリッジの交換を判断する判断ステップを有する。このような構成によれば、水素吸蔵カートリッジの交換を適切に行うことができる。
【0029】
一実施形態において、前記排出ステップは、前記ダイアフラムシールを加熱し、それにより前記第2のダイアフラムの水素透過速度を上昇させることで、前記ダイアフラムシール外への前記水素の排出を加速させる加熱ステップを有する。このような構成によれば、排出ステップを効率的に行うことができる。
【0030】
一実施形態において、前記ダイアフラムシールは、前記第2のダイアフラムを透過した前記水素を前記ダイアフラムシール外に排出するための水素排出路を有し、前記水素排出路は、前記ダイアフラムシール外に開口する第1開口及び第2開口を有し、前記排出ステップは、前記第1開口及び前記第2開口の一方を通して流体を導入し、前記第1開口及び前記第2開口の他方を通して前記流体とともに前記水素を排出する流体導入ステップを有する。このような構成によれば、排出ステップを効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0031】
本開示によれば、封入液中に侵入した水素を封入液から効率的に排出することができるダイアフラムシール及びそのメンテナンス方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】第1比較例に係るダイアフラムシールを示す断面図である。
図2】第2比較例に係るダイアフラムシールを示す断面図である。
図3】第3比較例に係るダイアフラムシールを示す断面図である。
図4】第1実施形態に係るダイアフラムシールを示す断面図である。
図5】第2のダイアフラムにおける水素透過現象を説明するための説明図である。
図6】第2のダイアフラムの水素吸着材の変形例を示す平面図である。
図7】第2のダイアフラムのポーラス構造を有する変形例を示す断面図である。
図8図4に示すダイアフラムシールにおいて第1のダイアフラムの外周部に水素気泡が溜まっている様子を示す断面図である。
図9】第2実施形態に係るダイアフラムシールを示す断面図である。
図10】第3実施形態に係るダイアフラムシールを示す断面図である。
図11】第4実施形態に係るダイアフラムシールを示す断面図である。
図12】第5実施形態に係るダイアフラムシールを示す断面図である。
図13】第6実施形態に係るダイアフラムシールを示す断面図である。
図14】第7実施形態に係るダイアフラムシールを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して、本開示に係る実施形態について詳細に例示説明する。
【0034】
<比較例>
まず、本開示に係る実施形態について説明する前に、比較例としてのダイアフラムシールについて説明する。
【0035】
図1に示す第1比較例に係るダイアフラムシール100は、水素透過防止用のコーティング膜101(金膜など)をダイアフラム102に施した一般的な構造を有している。ダイアフラムシール100は、離れた場所にあるプロセス流体である被測定流体、つまり測定媒体103の圧力を測定する場合の圧力計又は差圧計の受圧部分(伝送器)に測定媒体103が直接侵入しては困る場合に使用される。また、伝送器の製品仕様温度よりも高温となる測定媒体103を測定する場合などにも使用される。
【0036】
ダイアフラムシール100と伝送器とはキャピラリ104によって結合しており、内部にはオイルなどの封入液105が封入されている。ダイアフラムシール100は、測定媒体103の圧力を受けるダイアフラム102とブロック106とで構成されている。ブロック106はブロック本体106aとシールリング106bとで構成されている。ダイアフラム102はシールリング106bに溶接によって接合され、シールリング106bはブロック本体106aに溶接によって接合されている。ダイアフラムシール100は、封入液105を収容する封入液収容部107を有している。封入液収容部107は、ダイアフラム102とブロック本体106aとで形成されている。
【0037】
伝送器として差圧伝送器を用いる場合は、高圧側/低圧側双方に取り付けられた2つのダイアフラムシール100により、測定媒体103の圧力をそれぞれ受けて封入液105を介して差圧伝送器に伝達し、伝達された圧力差を差圧伝送器に設けたセンサで検出し、差圧信号を発信している。
【0038】
封入液105中への水素透過メカニズムは、水素分子がダイアフラム102の表面に吸着、水素分子が解離して水素原子となり、ダイアフラム102中へ溶解する。溶解した水素は、ダイアフラム102中を拡散してダイアフラム102の上記表面の反対側の表面で再分子化され、封入液105中に水素分子が放出される。封入液105中の水素の溶解許容量を超えると、内部で水素気泡が発生する。内部に水素気泡が発生することで、ダイアフラムシール100から伝送器へ圧力の伝達ができなくなって測定誤差が生じ、伝送器が使用できなくなる。
【0039】
[水素透過防止対策技術について(透過防止コーティング)]
第1比較例では、上記のようにダイアフラム102にコーティング膜101を施した構造が用いられている。コーティング膜101は、ダイアフラム102の内面側に施されることが多いが、ダイアフラム102の外面側に施されるもの、両面に施されるものもある。コーティング膜101の材料には、水素透過率の小さい材料が用いられ、金が使用されることが多いが、セラミクスなどの材料を使用されることもある。コーティング膜101を施すことによって、ダイアフラム102を透過して封入液105中への水素の侵入を抑制している。
【0040】
[水素透過防止対策技術について(ダイアフラムを2枚使用した対策技術)]
図2に示す第2比較例のように、測定媒体201に接したダイアフラム202中を透過した水素をダイアフラムシール200外へ放出するための構造を設けたものもある。2枚のダイアフラム202を使用し、2枚のダイアフラム202に間隙を設けることで、封入液203を封止しているダイアフラム202中へ水素拡散する前に、ダイアフラムシール200外へ水素を放出させることを目的とした構造である。この構造によって、封入液203内への水素侵入を抑制することができる。
【0041】
[水素吸蔵技術について]
ダイアフラムを透過して封入液中に侵入した水素を金属中に吸収させ、封入液中の水素量を低下させる対策方法がある。ブロックやキャピラリなどの部品に使用されるステンレス(SUS)などの金属材料中にも、水素は相当量、吸収・吸蔵されるが、ダイアフラムシール、キャピラリなどで吸収・貯留される水素量をさらに増加させることを目的とした方法である。SUSなどの金属材料よりも単位体積当たりの水素吸収量が大きな金属薄膜や金属粉末を配置した構造である。水素吸蔵用に使用される金属材料には、水素吸蔵量が特に多いパラジウム(Pd)やPd合金などが用いられる。ダイアフラムを透過して封入液中に侵入した水素が金属中に吸蔵される量の分、封入液中に水素気泡が発生するまでの時間を遅らせることができる。図3に示す第3比較例に係るダイアフラムシール300は、キャピラリ301に、水素透過材302を設け、水素透過材302を透過した封入液303中の水素を吸蔵部屋304内に配置した水素吸蔵材305に吸蔵させる構造を有している。水素を吸蔵した水素吸蔵材305は、吸蔵部屋304上に設けられた開閉蓋306から外へ取り出すことができる。
【0042】
[水素透過防止対策技術の問題点]
第1比較例のように金などの水素透過率の低い材料をコーティングした構造、第2比較例のように水素を内部に透過することを防止した構造は、水素透過量を低減させるための方法である。しかし、水素透過を完全に抑制することは困難な方法であるため、水素が透過しやすい厳しいプロセス条件に対しては、伝送器を延命させるための対策にすぎない。
【0043】
[水素吸蔵技術の問題点]
第3比較例のように、ダイアフラムを透過して封入液中に侵入してきた水素を金属中に吸蔵させて水素の透過対策とする方法は、金属中に吸蔵可能な水素量まで対策効果を得ることができる。しかし、吸蔵許容量を超えてしまうと、効果は得られなくなる。
【0044】
また、ダイアフラムシールは、測定媒体と接触するように設置されており、高温のプロセス温度にさらされて使用されるケースが多い。ダイアフラム等、材料を透過する水素量は、Fickの法則(下記式(1)参照)に則っているが、温度に比例して拡散係数が大きくなると、透過量が増加することがわかる。一方、水素吸蔵材の水素吸蔵量については、温度と反比例し、高温になるほど金属中の水素溶解量が低下する。そのため、温度条件によっては、水素吸蔵ができなくなるので、水素吸蔵効果が得られる用途は制限されてしまう。
【0045】
ダイアフラムシールはプロセス温度を直接受けるが、キャピラリはダイアフラムシールから離れているため、プロセス温度よりも温度が低下する。そのため、高温となりづらいキャピラリに水素吸蔵用の金属を配置することで水素吸蔵効果を得ようとする方法がある。しかし、水素の侵入経路であるダイアフラムから離れた箇所に水素吸蔵材を配置すると、水素が吸蔵されるよりも前に、ダイアフラム近傍で水素気泡が発生してしまう場合があるため、十分な効果が得られない問題が生じることもある。
【0046】
よって、金属中に吸蔵可能な水素を吸蔵させる方法は、使用可能なプロセス条件や用途で制限されるとともに、吸蔵量に制限もあるため、水素透過現象に対する根本的な対策にはならない。つまり、伝送器を延命させるための対策にすぎない。
[Fickの法則]
【数1】
Q:拡散水素量
D:拡散係数
A:面積
C:水素分圧
d:距離
t:時間
【0047】
[封入液中の水素除去について]
第1比較例のように、水素透過率の低い材料をダイアフラムにコーティングした構造を形成すると、水素が内部に透過することを抑制することができる。しかし、プロセス配管等からダイアフラムシールを取り外し、水素が内部に侵入した経路から、逆に水素を外部へ排出させることも困難となる構造である。そのため、ダイアフラムに透過を抑制させる対策をしているダイアフラムシールから水素を排出させて再生することは難しい。
【0048】
第3比較例のように、キャピラリの壁面に水素透過材を設け、その水素透過材を覆うように水素吸蔵部屋が設置された構造を有するものがある。この水素吸蔵部屋には、水素吸蔵材が設置され、蓋の開閉によって水素を吸収した水素吸蔵材を交換することができる。しかし、この構造によって、期待する効果を得ることは以下の理由により困難である。伝送器までの圧力伝達経路には圧力が掛かる。水素透過材から水素吸蔵部屋へ水素を透過させるためには、封入液が漏れないための構造が必要であるが、水素透過材が圧力に耐えられる構造となっていなければならない。そのため、水素透過材には水素透過させやすいだけでなく、高い耐圧性能も要求されることになる。水素透過材を厚くすることで耐圧性能を向上させようとすると、膜厚の厚さに反比例して、水素の透過性能は著しく低下してしまう。水素透過材が必要とされる水素透過速度と耐圧性能などとは、トレードオフの関係となっている。さらに、水素透過材は水素脆化しやすいため、水素透過材だけの構成では脆性破壊してしまう。
【0049】
第3比較例は、水素透過材と水素吸蔵材を同箇所に設置する構造となっている。水素透過材を透過する水素量は温度に比例して増加し、水素吸蔵は温度に反比例して減少する。そのため、この構造を温度の高い条件で、ダイアフラムシール又はその直近に形成した場合、水素吸蔵部屋への水素の透過は良好となるが、水素吸蔵材の水素の吸蔵はできなくなる。そのため、水素吸蔵ができる温度条件となるように、ダイアフラムシールから離れたキャピラリの壁面に設けることが必要となる。構造部の破損問題とは別に、使用条件も限定される問題がある。
【0050】
<実施形態>
そこで、以下に説明する種々の実施形態の目的は、以下の点にある。
・ダイアフラムを透過してダイアフラムシール内に侵入した水素によって発生する水素気泡がダイアフラムシールから伝送器への圧力の伝達を妨げることによって、計測器寿命が決まらないようにすること。
・計測器に必要とされるダイアフラムシールの耐圧性能を確保しつつ、使用条件が使用温度条件などによって限定されないようにすること。
・ダイアフラムシール内部に侵入した水素を、メンテナンスすることによって容易に排出できるようにすること、又は使用時に常時排出することができるようにすること。
【0051】
図4図14を参照して、種々の実施形態について例示説明する。なお、各図において、対応する要素に同一の符号を付している。
【0052】
<<第1実施形態>>
まず、第1実施形態について説明する。図4に示す第1実施形態に係るダイアフラムシール1は、第1のダイアフラム2、第2のダイアフラム3及びブロック4を有している。ブロック4はブロック本体4aとシールリング4bとで構成されている。第1のダイアフラム2はシールリング4bに溶接によって接合され、シールリング4bはブロック本体4aに溶接によって接合されている。ダイアフラムシール1は、オイルなどの封入液5を収容する封入液収容部6を有している。封入液収容部6は、第1のダイアフラム2、第2のダイアフラム3及びブロック4で形成されている。ダイアフラムシール1と伝送器とはキャピラリ7によって結合しており、測定媒体8の圧力がこれらの内部に封入された封入液5を介して伝送器に伝達される。
【0053】
このように、ダイアフラムシール1は、測定媒体8に面して配置される第1のダイアフラム2と、第1のダイアフラム2が測定媒体8から受けた圧力を伝送器に伝達するための封入液5を収容する封入液収容部6と、封入液5中に侵入した水素を封入液5から排出するために水素を透過させる第2のダイアフラム3と、を有している。第2のダイアフラム3は、第1のダイアフラム2に対向するように配置されている。
【0054】
また、ダイアフラムシール1は、第2のダイアフラム3を透過した水素をダイアフラムシール1外に排出するための水素排出路9を有している。水素は、測定媒体8に面して配置される第1のダイアフラム2内を拡散してダイアフラムシール1内に侵入し、封入液5中に溶解する。溶解した水素は、第2のダイアフラム3中を拡散して通過し、封入液5から排出される。封入液5から排出された水素は、水素排出路9を通ってダイアフラムシール1外に排出される。
【0055】
測定媒体8に合わせて第1のダイアフラム2の材質を変更するが、SUSなどの材料が使用されている。第1のダイアフラム2の内面には、測定媒体8側からダイアフラムシール1内へ侵入する水素を抑制するために、金などの水素透過防止用のコーティング膜10を設けている。第2のダイアフラム3は、SUS製の基材3aとPdからなる水素吸着材3bの膜によって構成されている。基材3aの外周部をSUS製のブロック本体4aに溶接してあり、封入液5が封入された空間、つまり封入液収容部6と水素排出路9とが、第2のダイアフラム3によって隔てられている。
【0056】
ブロック本体4aには、ダイアフラムシール1内と外部(大気)とをつなぐ、水素排出穴9aが形成されている。ブロック本体4aには、水素排出穴9aに連通するように水素排出溝9bも形成されている。水素排出路9は、水素排出溝9bと水素排出穴9aとで構成されている。水素排出穴9aの出口付近には、外付け部品を接続可能な外付け部品接続部11が設けられている。外付け部品接続部11は、外付け部品が容易に取り付けられるように切られたネジで構成されている。
【0057】
測定媒体8の圧力は、第1のダイアフラム2と封入液5とを介して第2のダイアフラム3に作用する。第2のダイアフラム3を隔てて、ダイアフラムシール1外(大気)との圧力差が生じるため、第2のダイアフラム3はその圧力差で破損しないように耐圧性能を持たせた構造としている。第2のダイアフラム3は、ブロック4に近接して対向するように配置され、第2のダイアフラム3に圧力が掛かっても、ブロック4と接触してその圧力をブロック4側へ逃がせる構造となっている。つまり、ダイアフラムシール1は、測定媒体8の圧力によって第2のダイアフラム3が封入液5の反対側に変形させられることで第2のダイアフラム3の封入液5の反対側の表面に接触し、それにより第2のダイアフラム3を支持する支持面12を有している。そのため、第2のダイアフラム3の厚さを薄く設計することができている。基材3aの材料には、水素脆化しづらいSUS材を使用することで、信頼性のある耐圧構造をもったダイアフラムシール構造とすることができる。
【0058】
第2のダイアフラム3が封入液5側から圧力を受けると、第2のダイアフラム3と支持面12とが接触して掛かる力をブロック4側へ逃がすようにしているが、使用時は、その状態になっていることが多い。第2のダイアフラム3とブロック4とが完全に隙間なく接触している場合、第2のダイアフラム3を透過した水素が滞留し、水素をダイアフラムシール1外へ排出するのが容易でない状況が生じる。そのため、支持面12には水素の排出を促進させるための水素排出溝9bを形成し、第2のダイアフラム3とブロック4との間に隙間ができるようにしている。この水素排出溝9bは、水素排出穴9aに接続されるように複数形成し、水素排出が促進されるようにしている。
【0059】
[ダイアフラムシール1における水素排出について]
本件の構造における水素透過に関わる現象は、次のようになる。
【0060】
ダイアフラムシール1内に侵入する水素は、測定媒体8から第1のダイアフラム2を透過して封入液5中に溶解する。封入液5中に溶解する水素は、封入液5中に水素気泡が発生する前に、水素吸着材3bの表面に吸着し、水素が水素吸着材3b中に取り込まれて、第2のダイアフラム3内へ拡散していく。第2のダイアフラム3を拡散して、反対面側に到達し、第2のダイアフラム3から放出される。放出された水素は、水素排出路9を通り、ダイアフラムシール1外へと排出されていく。
【0061】
金属中の水素透過は、水素分子ではなく水素原子の状態で透過する現象となる(図5参照)。そのため、水素分子は金属表面で吸着・解離して水素原子の状態で金属中に溶解する。水素分子が金属中に取り込まれる現象については、一般的にSievertsの法則(下記式(2)参照)で表される。
【0062】
[Sievertsの法則]
【数2】
C:金属中の水素溶解濃度
S:溶解係数
P:圧力
E:活性化エネルギー
R:気体定数
T:温度
【0063】
金属表面に水素解離を促す触媒があれば、活性化エネルギーを小さくすることができ、金属中への溶解が促進される。金属中への溶解が容易であれば、金属中の水素溶解濃度が大きくなり、Fickの法則(上記式(1)参照)で表される金属内部における水素透過速度が速くなる。
【0064】
水素吸着材3bには、金属内への水素溶解を促進させるために、以下の効果が期待できるものを選定することが望ましい。
a) 水素分子を解離させやすい(解離のための活性化エネルギーを小さくする触媒を使用)。
b) 金属中の水素溶解度が大きい。
c) 水素の拡散係数が大きい。
【0065】
Pd材料は、触媒効果によって、水素分子が大きな活性化エネルギーを必要とせずに、Pd表面で解離することができる。また、拡散係数が大きいため、水素の透過速度も速い。水素の溶解度についても、水素吸蔵材として広く使われているとおり他の金属より大きい。そのため、水素を取り込むための水素吸着材3bとして、これらの効果が得られやすいPdを採用する。
【0066】
水素の透過速度を速めるためには、第2のダイアフラム3をPd単体で形成できればよいが、上記条件を満たす金属材料は、単体で使用すると使用時に脆性破壊しやすい。そのため、金属内への水素溶解を加速するためのPd膜(水素吸着材3b)と水素脆化しづらいSUS(基材3a)の組み合わせ構造とする。水素吸着材3bは基材3aよりも水素を吸収しやすいため、水素吸着材3bによって金属中への水素の取り込みを速くする効果が得られる。また、基材3aによって耐圧性能を得ることができる。
【0067】
SUSは、水素透過しづらい材料であるため、通常水素透過材として使われることはない。第2のダイアフラム3の水素透過速度が速いことは望ましいことではあるが、使用時に水素を排出して内部に水素気泡を発生させないことを目的とする場合、水素透過速度は下記式(3)を満たせていればよいため、水素脆化の心配がなく、信頼性のある耐圧性能を満たせる材料を選定することが重要である。
【0068】
[水素透過速度]
第1のダイアフラム < 第2のダイアフラム ・・・式(3)
【0069】
ダイアフラムシール1の場合、ダイアフラムシール1内への水素透過経路となる第1のダイアフラム2には、水素透過しづらい材料が使用されることが多い。さらに第1のダイアフラム2には、水素バリア層として金膜が施されているものを用いることで、通常は、第2のダイアフラム3にSUS材を使用しても、第2のダイアフラム3よりも第1のダイアフラム2の水素透過速度を遅くすることができる。
【0070】
第1のダイアフラム2は測定媒体8と接触するように使用されるが、測定媒体8、温度、圧力などの使用条件によって、第1のダイアフラム2中に水素が吸収される速度が変わるとともに、第1のダイアフラム2中の水素濃度も変動する。測定媒体8と接している第1のダイアフラム2とダイアフラムシール1内部にある第2のダイアフラム3とは、測定媒体8の温度条件によって、温度差が生じることもある。
【0071】
上記式(3)の水素透過速度の関係は、第1のダイアフラム2と第2のダイアフラム3が、同じ条件下での透過速度の関係を示したものではなく、使用時において生じる第1のダイアフラム2と第2のダイアフラム3が置かれる条件も考慮したときでも満足する必要がある。
【0072】
Pd膜とSUSの2層の組み合わせ構造の場合、Pd膜とSUSとの接触界面付近では、水素はPd膜内を拡散してきた水素原子の状態で存在する。水素原子の状態であることにより、Pd膜からSUSへの水素移動は、大きな活性化エネルギーを必要とする障壁がなくなる。そのため、Pd膜とSUSの2層の組み合わせ構造であれば、SUS単層と比較して容易なダイアフラム中の水素拡散が実現できる。
【0073】
また、SUSよりもPdの方が水素の溶解係数が大きいため、PdとSUSとの接触界面付近では、水素濃度を高くできることから、式(1)のC1(Pd-SUS面側水素濃度)とC2(SUS反対面側水素濃度)との差が大きくできるので、SUS内の水素拡散速度の加速も期待できる。
【0074】
第2のダイアフラム3には、耐圧性能を持たせるとともに、水素を透過させやすい性能を合わせ持つ必要がある。水素を透過させるためには、第2のダイアフラム3の厚さは薄い方がよい(式(1)のd)が、耐圧性能を高めるためには厚くする必要があるため、トレードオフの関係にある。耐圧性能については、基材3aが担うため、材料強度と水素透過の関係から、基材3aの厚さは20~400μm程度であることが望ましい。
【0075】
水素吸着材3bについては、水素を活性化して第2のダイアフラム3内に水素を溶解させる役割を担い、耐圧性能を確保する必要がない。そのため、膜厚を薄くし、水素の拡散係数が大きい材料を選定することで、水素の透過速度を速くすることができる。水素吸着材の厚さは、基材3aの厚さより薄く設計することが望ましい。厚膜構造とすると、使用条件によっては、材料の水素脆化によって膜が崩落する可能性もある。よって、膜厚は0.01~400μmの範囲内で設定することが望ましい。
【0076】
[第1実施形態の効果]
第1のダイアフラム2から透過して侵入する水素の透過速度よりも、第2のダイアフラム3を透過して排出する水素の透過速度を速くすることによって、計測器の稼働中においても常時水素を排出することができる(第1のダイアフラム2で水素透過を抑制し、第2のダイアフラム3で水素を透過させやすくすることで、ダイアフラムシール1内に水素が入りづらいが、ダイアフラムシール1内の水素は排出しやすい構造とできる)。
【0077】
ダイアフラムシール1内から水素を排出できることによって、内部に水素気泡を発生させない、或いは水素気泡が発生したとしても、ダイアフラムシール1をメンテナンスすることで容易に水素を除去できる。そのため、計測器寿命が水素気泡の発生によって決まらないようにすることが実現できる。
【0078】
<<第1実施形態の変形例、第2~第7実施形態>>
次に、第1実施形態の変形例、並びに第2~第7実施形態について説明する。
【0079】
[第2のダイアフラムについて]
・水素吸着材3bについて
水素吸着材3bに使用する材料はPdとしているが、材料の表面で水素が解離する際に触媒として働く物質であれば、材料中へ水素の溶解を加速する効果が得られる。Pd以外に、Ru、Pd、Os、Ir、Ptなどの白金族金属若しくはその合金又はそれらの化合物などを使用しても触媒作用が得られるため効果が得られる。また、白金族以外でも、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニア(ZrO2)の化合物などでも触媒作用が得られる。
【0080】
水素吸着材3bは、基材3a上に単層で形成するだけでなく、2層以上の複数層の構成としてもよい。
【0081】
2層構成とする場合には、1層目の水素解離性能の高い材料を使用し、2層目には、1層目と基材3aとの密着性の良好な材料を使用することで、材料間の密着性に制約を受けずに水素吸着材3bの形成が容易になる。3層以上とする場合には、1層目と基材3aとの密着性が2層目の材料だけで得られない場合又は、膜応力の緩和などを考慮して複数層重ねた構造でもよい。
【0082】
2層目に使用する材料は、密着性だけでなく、水素溶解度が高い、水素透過性が大きいなどの材料を選定することが望ましい。例示すると、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、DbなどのIV族やV族に属する金属若しくはその合金又はそれらの化合物などが挙げられる。
【0083】
ダイアフラムシール1が使用される温度、圧力条件は広範囲になる。それらの使用条件において、水素吸着材3bに使用する材料の上記a)~c)への効果に与える影響が異なってくる。そのため、使用条件によって、層ごとに最良の材料選択をすることも可能となる。
【0084】
水素吸着材3bは、基材3aとの接触面積を大きくするように形成して、水素吸着材3bから基材3aへの水素の移動量を多くできる構造とすることが望ましい。そのため、基材3aを完全に覆うように薄膜で形成することが望ましいが、第2のダイアフラム3に十分な水素の透過能が得られる条件で使用できる場合には、完全に覆う必要はない。その場合、水素吸着材3bをドット状、ライン状などの形状の膜として支持体上に形成すれば良い(図6参照)。そのようにすることで、高価な貴金属の使用量を減量することができ、安価に製作することが可能となる。また、膜応力の緩和などにも効果ある構造とできる。
【0085】
・基材3aについて
基材3aの材料には、SUSを使用することとしているが、SUSの中でも特に水素脆化に強いSUS316L材を使用することで、第2のダイアフラム3の脆性破壊を回避することができる。基材3a中に高濃度水素が溶解する過酷な使用とならない条件での使用ならば、水素の拡散係数が小さいSUSよりも、拡散係数が大きい材料を基材3aとして選定できる。拡散係数が大きい材料を用いる場合、使用条件で水素脆化による基材3aの破損が生じない材料を選定する必要がある。基材3aの材料を例示すると、SUS系材料の他には、ハステロイ、モネル、Ni、Ti、Moなどが挙げられる。ブロック4の材料との溶接性が良好な材料や、水素吸着材3bとの密着性が良好な材料を選定すれば、なお望ましい。
【0086】
本実施形態は、第2のダイアフラム3中を水素原子が拡散して透過する現象を利用することで、ダイアフラムシール1内から水素を排出させることとしている。拡散現象を利用する方法だけでなく、第2のダイアフラム3内に空孔のあるポーラス状の基材3aを使用して、水素分子が第2のダイアフラム3を通過する現象を利用する方法でもよい。この場合、水素吸着材3bは必ずしも必要ない。
【0087】
ポーラス状の基材3aを採用する場合、サイズが小さい水素原子・分子と、分子サイズが大きい封入液5との分離ができるように、空孔のサイズを設定すると、水素を選択的に早く排出することが可能となる。例えば、水素原子サイズは0.1nm程度、封入液5の分子サイズを数100nm程度とすると、空孔サイズを数10nm程度に設定すれば、封入液5は基材3aを通過できないが、水素は基材3aを通過可能な構造とできる(図7参照)。用途によって使用される封入液5の種類は異なるため、空孔サイズは封入液5の分子サイズ・重合度によって、最適な空孔サイズに設定することが望ましい。また、第2のダイアフラム3にポーラス基材を用いる場合、ブロック4側にポーラス基材を接着させて第2のダイアフラム3が可動しない構造としてもよい。
【0088】
ポーラス基材を単層で使用する場合(水素吸着材3bなしの場合)、空孔サイズが温度、圧力などによる影響を受けやすいこと、重合度の低い封入液5を使用すること、又はモノマーが多く含まれる封入液5を使用することなどで、封入液5の成分も通過してしまう懸念点がある。このような問題点を解決するためには、第2のダイアフラム3を水素吸着材3bとポーラス基材の2層構成とする構造とした方が望ましい。水素吸着材3b部分では水素イオン・原子の拡散現象を利用し、ポーラス基材部分では水素分子が空孔を通過する方法によって、ダイアフラムシール1内から水素を排出させる構造となる。この構造とすることにより、前記ポーラス基材単層における問題点が解決される。水素の透過能が高い水素吸着材3bによって、ダイアフラムシール1内から水素を排出させる速度が決まってくる。また、水素吸着材3bが水素脆化しやすい問題についても、仮に水素吸着材3bが水素脆化してクラック等が生じたとしても、問題は生じない構造とできる。
【0089】
ポーラス基材の製作方法を例示すると、金属粉等の焼結、金属ボール等の融着(熱、荷重印加などによる)、めっきなどの方法などが挙げられる。ガラスやセラミクス材料も用いた構造、金属粉と混合して融着させるなどによる方法でも形成可能である。
【0090】
第2のダイアフラム3を金属材料ではなく、セラミクス材料で形成した構造でもよい。この場合、基材3aが圧力を受けて変形による破損が生じないように、ブロック4へ固定された構造とすることが望ましい。固定は、ロウ付け、ガラスによる接着などの方法で行うことができる。
【0091】
セラミクス材料として、プロトンを透過させやすい導電性セラミクスなどを使用することが望ましい。プロトンを透過させやすいセラミクス材料を基材3aとして使用する場合、必ずしも水素吸着材3bを必要とせず、セラミクス材料単層でも水素の排出効果が得られる。
【0092】
・第2のダイアフラム3の形状
ダイアフラムシール1設置付近で水素の放出を嫌うなどの使用条件の場合、メンテナンス時などに水素を排出することとし、稼働時は水素をダイアフラムシール1内に閉じ込めるようにして使用することもある。その場合、ダイアフラムシール1内に水素気泡が発生することが想定される。
【0093】
第1実施形態では、図4に示すように、封入液収容部6が第2のダイアフラム3よりも外周側を通ってキャピラリ7内に連通している構造となっているので、第1のダイアフラム2の外周部付近に水素気泡が発生した場合、第2のダイアフラム3に水素気泡が接触しないため、外部への水素の排出効率が低下する可能性がある。ダイアフラムシール1を立てた姿勢で設置して水素気泡が発生した場合、図8に示す位置に水素気泡が溜まりやすい。
【0094】
第1のダイアフラム2の外周部付近に発生した水素を排出しやすくするように、第2のダイアフラム3は図9に示す第2実施形態のようにドーナツ形状としてもよい。ドーナツ形状にすることによって、伝送器につながるキャピラリ7をブロック4の中央部に接続させることが可能となる。そのため、水素が溜まりやすい外周部まで第2のダイアフラム3を形成した構造が可能となる。このように、第2のダイアフラム3が中央に開口3cを有し、封入液収容部6が開口3cを通ってキャピラリ7内に連通している構造とすることができる。
【0095】
また、第2のダイアフラム3をドーナツ形状とすれば、第2のダイアフラム3の耐圧性能を向上させる効果も得られる。真空計用途で計測器を使用する場合、第2のダイアフラム3は測定媒体8から受ける圧力によって、第1のダイアフラム2側に凸となるように撓む。このとき、図4の構造よりも図9の構造の方が、第2のダイアフラム3の変形による容積の変化を抑えられるとともに、第2のダイアフラム3に掛かる応力も小さくできるためである。
【0096】
[水素排出路9について]
・水素排出溝9bについて
第2のダイアフラム3は、封入液5から受ける圧力をブロック4側に伝達させるように、バックアップされる構造となっているのが望ましい。第2のダイアフラム3に圧力が掛かり、バックアップされている状態で使用されていても、第2のダイアフラム3を通過した水素がダイアフラムシール1の外へと導く流路があれば、水素を排出することができる。水素排出のための流路は、ブロック側に設けた溝(水素排出溝9b)によって形成しているが、第2のダイアフラム3に圧力が掛かった場合でも、第2のダイアフラム3が溝に接触する箇所で塑性変形を繰り返さないように、計測器の使用圧力によって、溝の深さ、溝の幅の設計が必要である。圧力が高い場合には、溝の深さ、溝の幅をそれぞれ小さく設計し、溝の数を増やすことが望ましい。
【0097】
真空計として計測器が使用される場合、第2のダイアフラム3はブロック4側ではなく、封入液5側に凸となるように撓む場合がある。この場合、第2のダイアフラム3はブロック4にバックアップされるような使用方法にならない。そのため、第2のダイアフラム3とブロック4を部分的に固定するようにすれば、第2のダイアフラム3が破損しないようにすることができる。第2のダイアフラム3の固定は、水素排出溝9bが完全に埋まらないように、複数個所をスポット溶接によって行うことができる。
【0098】
・封止構造について
計測器の使用用途によっては、ダイアフラムシール1の設置場所における水素放出を避けたい場合がある。そのような用途の対応として、図10に示す第3実施形態に係るダイアフラムシール1を使用することができる。第3実施形態では、水素排出穴9aを外付け部品13としての封止栓14を外付け部品接続部11にねじ込んで取り付けた状態でダイアフラムシール1を使用する。ダイアフラムシール1内から水素が排出されないため、ダイアフラムシール1内に水素が蓄積されるが、計測器の使用限界近くまで、外部に水素を放出せずに使用するための構造となる。
【0099】
水素排出路9を封止する構造は、図11に示す第4実施形態の構造でもよい。第4実施形態の構造は、水素排出穴9aが第2のダイアフラム3と同等のサイズを有しており、水素排出穴9aに設けられた外付け部品接続部11にこれに対応するサイズの封止栓14をねじ込んで取り付けた構造としている。封止栓14の先端面14aは、第2のダイアフラム3と同等のサイズになっており、且つ、封止栓14が外付け部品接続部11に接続された状態で第2のダイアフラム3に対向している。第2のダイアフラム3に圧力が掛かった時に、封止栓14の先端面14aが第2のダイアフラム3をバックアップできる機能も合わせ持つように、第2のダイアフラム3と封止栓14の先端面14aとの間隔が設定されている。第4実施形態の構造とすれば、封止栓14を取り外すことで、ダイアフラムシール1内から水素を排除する作業時に、第2のダイアフラム3を露出させることが可能となる。
【0100】
封止構造は、ねじ状などの封止栓14を取り付けることで形成可能であるが、センサなどの機器を取り付けることによって、封止栓14の代わりに使用する構造でも対応可能である。
【0101】
封止後のキャビティ(水素排出路9)内の雰囲気は、真空としておくことが望ましい。真空計用途に使用する場合でも、第2のダイアフラム3が封入液5側に凸となる方向に大きく撓むことが避けられるとともに、第2のダイアフラム3から水素排出路9内へ水素を放出しやすくする効果も得られる。
【0102】
このような封止構造を形成した場合、ダイアフラムシール1内に蓄積された水素は、計測器設置場所以外の場所で、計測器のメンテナンスを行う際に、水素を放出させることで再生が可能である。
【0103】
封止構造を採用する場合には、必ずしも上記式(3)を満たしている必要はない。式(3)を満たす必要がなければ、第2のダイアフラム3は基材3aのみとして、水素吸着材3bを設けない構造とすることもできる。
【0104】
また、万が一にも第2のダイアフラム3が破損した場合の想定をした設計が要求される用途においても、封止部に十分な耐圧性能を持たせておけば、安全対策を施した構造として対応可能である。
【0105】
[ダイアフラムシール1への外付け部品13の取り付けについて]
・配管の取り付けについて
図10の構造の場合、第2のダイアフラム3を透過した水素は、水素排出路9に蓄積されることになる。図12に示す第5実施形態のように外付け部品13として配管15などを取り付けて配管15内も封止した状態にすれば、水素が蓄積される水素排出路9は配管15まで拡張され、水素排出穴9aに栓をするよりも多くの水素を蓄積することが可能となる。そのため、水素排出のためのメンテナンス周期を長くすることができる。
【0106】
取り付けた配管15内の封止は、配管15の端部にセンサ16を取り付けてダイアフラムシール1の状態を検査できるようにすることもできる。封止した場合は、メンテナンス時などに封止を解き、検査や水素の排出に利用することも可能である。万が一にも第2のダイアフラム3が破損した場合の想定をした設計が要求される用途においても、配管15も含めて十分な耐圧性能を持たせておけば、安全対策を施した構造として対応可能である。
【0107】
ダイアフラムシール1の水素排出穴9aに配管15を接続し、封止構造として使用しない場合も想定される。その場合は、ダイアフラムシール1から遠ざけるように配管15の端部(解放口)を設置する使用方法もある。配管15の解放口が、ダイアフラムシール1から離れた位置に設置できるようにすれば、ダイアフラムシール1付近で水素の漏洩を嫌う場合に有効である。
【0108】
・センサの取り付けについて
図12の外付け部品13をセンサ16で構成すれば、センサ16からダイアフラムシール1の状態、プロセス情報などを取得することができる。
【0109】
センサ16は、圧力センサ、温度センサ、水素センサなどが例示できるが、圧力センサを取り付ける場合には、水素排出路9内の真空度を測定することで、ダイアフラムシール1に透過した水素の状態を外部からモニタリングすることが可能である。水素センサの取り付けの場合でも、同様に内部の水素の状況がモニタリング可能となる。温度センサの場合は、ダイアフラムシール1の温度が計測でき、プロセス流体の温度監視、ダイアフラムシール1への水素透過予測などに、有用なデータなどの取得も可能となる。
【0110】
センサ16は、ダイアフラムシール1の水素排出穴9aに直接外付けしてもよいが、ダイアフラムシール1の温度が高い場合にはセンサ16が使用できないことがあるため、図12のように配管15を使用して温度が低い箇所で計測できるように、配管15の端部に取り付けることが望ましい。
【0111】
・水素吸蔵カートリッジの取り付けについて
ダイアフラムシール1内に水素吸蔵材を有する構造としてしまうと、使用温度が高くなる条件では、吸蔵材の水素吸蔵能力が著しく低下するために、水素吸蔵効果が得られない。しかし、図13に示す第6実施形態のように、ダイアフラムシール1に外付け部品13として水素吸蔵材を有する水素吸蔵カートリッジ17を取り付ける構造とすれば、水素吸蔵材に熱伝導する前に外部へ放熱することができ、水素吸蔵材は高温にさらされないようにできる。そのため、水素吸蔵材の能力が得られる状況で使用することが可能となる。
【0112】
温度の高いプロセス条件で使用される場合であっても、第2のダイアフラム3は高温によって拡散速度が速くなるため水素の排出能力が加速される。ダイアフラムシール1より温度が低下した箇所に取り付けられる水素吸蔵カートリッジ17では、十分な水素吸蔵ができるようにできるため、ダイアフラムシール1内からの水素排出としては良好な条件で使用することが可能である。水素吸蔵カートリッジ17は、ダイアフラムシール1の水素排出穴9aに直接外付けしてもよいが、図13のように配管15を使用して温度が低い箇所で水素吸蔵ができるように、配管15の端部に取り付けることが望ましい。
【0113】
水素吸蔵材中の水素吸蔵量が許容量に達した際には、ダイアフラムシール1を取り外すことなく、水素吸蔵カートリッジ17(又は配管15と水素吸蔵カートリッジ17)を交換するのみで、計測器の継続稼働も可能である。
【0114】
水素吸蔵カートリッジ17を耐圧容器としていれば、万が一にも第2のダイアフラム3が破損した場合の想定をした設計が要求される用途においても、水素吸蔵カートリッジ17なども含めて十分な耐圧性能を持たせておけば、安全対策を施した構造として対応可能である。
【0115】
また、第6実施形態のように、水素吸蔵カートリッジ17とセンサ16を外付けする構造とすれば、ダイアフラムシール1内に透過した水素の状態や、水素吸蔵カートリッジ17の吸蔵状況をモニタすることも可能である。センサ16から得られる情報によって、水素吸蔵カートリッジ17の交換の要否も確認することが可能である。なお、第6実施形態では、水素排出路9に2つの水素排出穴9aを設け、それぞれの水素排出穴9aに外付け部品接続部11を設け、それぞれの外付け部品接続部11に外付け部品13を接続している。一方の外付け部品13は配管15と水素吸蔵カートリッジ17で構成され、他方の外付け部品13は配管15とセンサ16で構成されている。
【0116】
[メンテナンス方法(水素排出作業)について]
計測器稼働時に、ダイアフラムシール1付近への水素の放出を嫌う用途の場合は、ダイアフラムシール1の水素排出路9などを封止して放出させない方法がある。その場合、従来のダイアフラムシール1と同様に、ダイアフラムシール1内に水素が蓄積される。
【0117】
ダイアフラムシール1内に水素が蓄積された場合、定期メンテナンスなどの際に、計測器を取り外して水素排出作業を行うことで、蓄積された水素を排出することができる。水素排出は、封止栓14などの外付け部品13を取り除いて、水素を外部に放出する方法となる。
【0118】
ダイアフラムシール1を昇温することで、ダイアフラムシール1内から水素排出に掛かる時間を短縮することができる。昇温することによって、封入液5中の水素は、第2のダイアフラム3内へ取り込まれる速度が速くなるとともに、第2のダイアフラム3内の水素の拡散係数を大きくできる。そのため、ダイアフラムシール1内から水素が排出されやすい状態とできるためである。
【0119】
水素は濃度差拡散するため、水素濃度差を大きくできるようにすれば、排出速度を速くできる。第2のダイアフラム3を通過してきた水素は、水素排出穴9aに向かって水素排出路9内を拡散しながら移動し、ダイアフラムシール1の外へ排出される。このとき、第2のダイアフラム3とブロック4との間には、第2のダイアフラム3から透過してきた水素が存在するようになるが、透過してきた水素をダイアフラムシール1内から強制的に排除すれば、第2のダイアフラム3からの水素の排出速度を速くできる。
【0120】
その方法としては、図14に示す第7実施形態のように、2つ以上形成した水素排出穴9aの1つ以上から加圧又は吸引により空気などの流体を導入し、それにより、ダイアフラムシール1内に滞留する水素を他の水素排出穴9aからダイアフラムシール1外へ排出させることで水素の放出速度を速くすることができる。この方法は、メンテナンス時だけでなく、計測器稼働時に行ってもよい。図14に示すように、第7実施形態では、水素排出路9はダイアフラムシール1外に開口する第1開口(一方の水素排出穴9a)及び第2開口(他方の水素排出穴9a)を有しており、ダイアフラムシール1内に滞留する水素をダイアフラムシール1外へ排出させるために、第1開口及び第2開口の一方を通して流体を導入し、第1開口及び第2開口の他方を通して流体とともに水素を排出する方法としている。
【0121】
図11に示す第4実施形態の構造の場合は、封止栓14を取り外せば、第2のダイアフラム3を露出させることができる。そのため、ダイアフラムシール1内に流体を流入するなどの操作をおこなわなくても、第2のダイアフラム3を透過した水素をダイアフラムシール1外に効率よく飛散させることができる。第2のダイアフラム3付近の水素濃度が低下できれば、第2のダイアフラム3内の水素の透過速度を高めることができ、ダイアフラムシール1内の水素排出効率を向上することができる。
【0122】
前述した実施形態は本開示の一例であり、種々変更可能であることはいうまでもない。
【0123】
例えば、前述した実施形態に係るダイアフラムシール1は、以下に述べるような種々の変更が可能である。
【0124】
前述した実施形態に係るダイアフラムシール1は、測定媒体8に面して配置される第1のダイアフラム2と、第1のダイアフラム2が測定媒体8から受けた圧力を伝送器に伝達するための封入液5を収容する封入液収容部6と、封入液5中に侵入した水素を封入液5から排出するために水素を透過させる第2のダイアフラム3と、を有する限り、種々の変更が可能である。
【0125】
しかし、ダイアフラムシール1は、第2のダイアフラム3を透過した水素をダイアフラムシール1外に排出するための水素排出路9を有することが好ましい。また、水素排出路9は、外付け部品13を接続可能な外付け部品接続部11を有することが好ましい。外付け部品13は水素吸蔵カートリッジ17を有することが好ましい。ダイアフラムシール1は、外付け部品接続部11に外付け部品13を接続した状態で耐圧構造を有することが好ましい。外付け部品接続部11は、水素排出路9が負圧の状態で外付け部品13で封止されていることが好ましい。第2のダイアフラム3は、基材3aと、基材3aの封入液5側の表面に配置され、第2のダイアフラム3内への水素の侵入を加速させるために水素解離を促す触媒として働く材料と、を有することが好ましい。第2のダイアフラム3は、基材3aと、基材3aの封入液5側の表面に配置され、第2のダイアフラム3内へ水素の侵入を加速させるために基材3aよりも水素を吸収しやすい材料と、を有することが好ましい。前記材料は、白金族金属若しくはその合金又はそれらの化合物を含むことが好ましい。前記材料は、基材3aの厚さより薄い薄膜構造を有することが好ましい。基材3aは、SUS316Lで形成されていることが好ましい。前記材料は、複数層で構成されていることが好ましい。基材3aは、水素を透過する導電性セラミクス材料で形成されていることが好ましい。基材3aは、水素を透過させる一方、封入液5を透過させない空孔を備えるポーラス構造を有することが好ましい。第2のダイアフラム3の水素透過速度は、第1のダイアフラム2の水素透過速度より大きいことが好ましい。測定媒体8の圧力によって第2のダイアフラム3が封入液5の反対側に変形させられることで第2のダイアフラム3の封入液5の反対側の表面に接触し、それにより第2のダイアフラム3を支持する支持面12を有することが好ましい。支持面12は、水素排出路9を構成する水素排出溝9bを有することが好ましい。水素排出路9は、水素排出溝9bと、水素排出溝9bに連通する水素排出穴9aと、を有することが好ましい。水素排出穴9aは、外付け部品接続部11を有することが好ましい。第2のダイアフラム3は開口3cを有し、封入液収容部6が開口3cを通ってキャピラリ7内に連通していることが好ましい。ダイアフラムシール1内の物理情報を取得するセンサ16を有し、又は、外付け部品13はダイアフラムシール1内の物理情報を取得するセンサ16であることが好ましい。
【0126】
前述した実施形態に係るダイアフラムシール1をメンテナンスする方法は、ダイアフラムシール1が、測定媒体8に面して配置される第1のダイアフラム2と、第1のダイアフラム2が測定媒体8から受けた圧力を伝送器に伝達するための封入液5を収容する封入液収容部6と、封入液5中に侵入した水素を封入液5から排出するために水素を透過させる第2のダイアフラム3と、を有し、前記方法が、第2のダイアフラム3を透過した水素をダイアフラムシール1外に排出する排出ステップを有する限り、種々の変更が可能である。
【0127】
しかし、ダイアフラムシール1に取り付けたセンサ16によって、第2のダイアフラム3を透過した水素を吸蔵するためにダイアフラムシール1に取り付けた水素吸蔵カートリッジ17の水素吸蔵量に関わる物理情報を取得し、水素吸蔵カートリッジ17の交換を判断する判断ステップを有することが好ましい。また、排出ステップは、ダイアフラムシール1を加熱し、それにより第2のダイアフラム3の水素透過速度を上昇させることで、ダイアフラムシール1外への水素の排出を加速させる加熱ステップを有することが好ましい。ダイアフラムシール1は、第2のダイアフラム3を透過した水素をダイアフラムシール1外に排出するための水素排出路9を有し、水素排出路9は、ダイアフラムシール1外に開口する第1開口及び第2開口を有し、排出ステップは、第1開口及び第2開口の一方を通して流体を導入し、第1開口及び前記第2開口の他方を通して流体とともに水素を排出する流体導入ステップを有することが好ましい。
【符号の説明】
【0128】
1 ダイアフラムシール
2 第1のダイアフラム
3 第2のダイアフラム
3a 基材
3b 水素吸着材
3c 開口
4 ブロック
4a ブロック本体
4b シールリング
5 封入液
6 封入液収容部
7 キャピラリ
8 測定媒体
9 水素排出路
9a 水素排出穴
9b 水素排出溝
10 コーティング膜
11 外付け部品接続部
12 支持面
13 外付け部品
14 封止栓
14a 先端面
15 配管
16 センサ
17 水素吸蔵カートリッジ
100 ダイアフラムシール
101 コーティング膜
102 ダイアフラム
103 測定媒体
104 キャピラリ
105 封入液
106 ブロック
106a ブロック本体
106b シールリング
107 封入液収容部
200 ダイアフラムシール
201 測定媒体
202 ダイアフラム
203 封入液
300 ダイアフラムシール
301 キャピラリ
302 水素透過材
303 封入液
304 吸蔵部屋
305 水素吸蔵材
306 開閉蓋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14