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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】電力変換装置および電力変換システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20221213BHJP
   H02M 7/493 20070101ALI20221213BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02M7/493
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020173803
(22)【出願日】2020-10-15
(65)【公開番号】P2022065310
(43)【公開日】2022-04-27
【審査請求日】2021-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴー・テックチャン
(72)【発明者】
【氏名】種村 恭佑
(72)【発明者】
【氏名】戸村 修二
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-182885(JP,A)
【文献】特開2000-014157(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168946(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 7/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列接続された第1から第Nのスイッチングアームであって、各前記スイッチングアームが、直列接続された上スイッチング素子および下スイッチング素子を備える第1から第Nのスイッチングアームと、
Jを1からN-1のいずれかの整数として、第Jの前記スイッチングアームの直列接続点と第J+1の前記スイッチングアームの直列接続点との間に接続された第Jのセカンダリ巻線と、
第Nの前記スイッチングアームの直列接続点と、第1の前記スイッチングアームの直列接続点との間に接続された第Nのセカンダリ巻線と、
第1から第Nの前記セカンダリ巻線にそれぞれ結合する第1から第Nのプライマリ巻線と、
第1から第Nの前記プライマリ巻線のそれぞれの両端に形成される交流入出力ポートと、
第1から第Nの前記スイッチングアームの両端に形成される第1の直流入出力ポートと、
第1から第Nの前記セカンダリ巻線のそれぞれの中途点と、第1から第Nの前記スイッチングアームの一方の並列接続点とに形成される第2の直流入出力ポートと、
を備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
各前記スイッチングアームは、前記上スイッチング素子および前記下スイッチング素子が交互にオンオフを繰り返すスイッチングをし、
第J+1の前記スイッチングアームが、第Jの前記スイッチングアームに対して遅れた位相でスイッチングをすることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換装置において、
第J+1の前記スイッチングアームが、第Jの前記スイッチングアームに対して、360°/Nの位相遅れでスイッチングをすることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電力変換装置において、
前記第1の直流入出力ポートに現れる電圧と、前記第2の直流入出力ポートに現れる電圧とが、第1から第Nの前記スイッチングアームのそれぞれが備える前記上スイッチング素子および下スイッチング素子のデューティ比に応じて制御されることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電力変換装置と、
各前記プライマリ巻線における前記交流入出力ポートに接続されたAC/ACコンバータと、を備え、
前記AC/ACコンバータは、
前記AC/ACコンバータに供給された交流電力に基づいて自らに流れる電流を、スイッチングよって調整することを特徴とする電力変換システム。
【請求項6】
請求項5に記載の電力変換システムにおいて、
複数の前記電力変換装置と、
各前記電力変換装置が備える各前記プライマリ巻線に対応して設けられた前記AC/ACコンバータと、を備え、
複数の前記電力変換装置が、それぞれの前記第1の直流入出力ポートで並列接続されると共に、それぞれの前記第2の直流入出力ポートで並列接続されており、
Kを1からNのいずれかの整数として、複数の前記電力変換装置のそれぞれが備える第Kの前記プライマリ巻線に接続された前記AC/ACコンバータが、それぞれの交流電源ポートで直列接続されていることを特徴とする電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置および電力変換システムに関し、特に、並列接続された複数のスイッチングアームを備える装置およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車等の電動自動車が広く用いられている。電動自動車には、駆動用モータに電力を供給するための主機電池が搭載されている。電動自動車のプラグイン機能では、商用電源から供給される電力によって主機電池が充電される。また、走行時には、回生制動によって発電した電力によって主機電池が充電される。ハイブリッド自動車では、エンジンによるジェネレータの駆動によって発電した電力によっても主機電池が充電される。主機電池の他、電動自動車にはアクセサリ機器に電力を供給する補機電池が搭載されている。補機電池は、主機電池から供給される電力による他、プラグイン機能によっても充電される。
【0003】
このように、電動自動車では、2つの直流電力源として主機電池および補機電池が搭載されている。一般に、電動自動車では、主機電池および補機電池のように、複数の直流電力源(コンデンサを含む)の相互間で電力の伝送を行い、各直流電力源に充放電を行わせる電力変換装置が搭載されている。
【0004】
以下の特許文献1には、3相のトランスを備え、各相の1次コイルに交流電力が供給され、各相の2次コイルに出力側回路としてAC/DCコンバータが接続された電力変換装置が記載されている。出力側回路にはコンデンサが接続され、2次コイルの中性点には、直流電源(直流電力源)が接続されている。出力側回路のスイッチングによって、直流電源とコンデンサとの間で電力の伝送が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-182885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数相の交流電力源および2つの直流電力源の相互間で電力を伝送する場合、複数相の交流電力源が電力変換装置に接続されるため、回路構成が複雑となる場合がある。また、電力変換装置の制御が複雑となり、動作状況によっては、複数相の交流電力源および2つの直流電力源の相互間で十分な電力を伝送することが困難となる場合がある。
【0007】
本発明の目的は、複数の電力源の相互間で十分な電力を伝送することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、並列接続された第1から第Nのスイッチングアームであって、各前記スイッチングアームが、直列接続された上スイッチング素子および下スイッチング素子を備える第1から第Nのスイッチングアームと、Jを1からN-1のいずれかの整数として、第Jの前記スイッチングアームの直列接続点と第J+1の前記スイッチングアームの直列接続点との間に接続された第Jのセカンダリ巻線と、第Nの前記スイッチングアームの直列接続点と、第1の前記スイッチングアームの直列接続点との間に接続された第Nのセカンダリ巻線と、第1から第Nの前記セカンダリ巻線にそれぞれ結合する第1から第Nのプライマリ巻線と、第1から第Nの前記プライマリ巻線のそれぞれの両端に形成される交流入出力ポートと、第1から第Nの前記スイッチングアームの両端に形成される第1の直流入出力ポートと、第1から第Nの前記セカンダリ巻線のそれぞれの中途点と、第1から第Nの前記スイッチングアームの一方の並列接続点とに形成される第2の直流入出力ポートと、 を備えることを特徴とする。
【0009】
望ましくは、各前記スイッチングアームは、前記上スイッチング素子および前記下スイッチング素子が交互にオンオフを繰り返すスイッチングをし、第J+1の前記スイッチングアームが、第Jの前記スイッチングアームに対して遅れた位相でスイッチングをする。
【0010】
望ましくは、第J+1の前記スイッチングアームが、第Jの前記スイッチングアームに対して、360°/Nの位相遅れでスイッチングをする。
【0011】
望ましくは、前記第1の直流入出力ポートに現れる電圧と、前記第2の直流入出力ポートに現れる電圧とが、第1から第Nの前記スイッチングアームのそれぞれが備える前記上スイッチング素子および下スイッチング素子のデューティ比に応じて制御される。
【0012】
本発明は、前記電力変換装置と、各前記プライマリ巻線における前記交流入出力ポートに接続されたAC/ACコンバータと、を備え、前記AC/ACコンバータは、前記AC/ACコンバータに供給された交流電力に基づいて自らに流れる電流を、スイッチングよって調整することを特徴とする。
【0013】
望ましくは、複数の前記電力変換装置と、各前記電力変換装置が備える各前記プライマリ巻線に対応して設けられた前記AC/ACコンバータと、を備え、複数の前記電力変換装置が、それぞれの前記第1直流入出力ポートで並列接続されると共に、それぞれの前記第2直流入出力ポートで並列接続されており、Kを1からNのいずれかの整数として、複数の前記電力変換装置のそれぞれが備える第Kの前記プライマリ巻線に接続された前記AC/ACコンバータが、それぞれの交流電源ポートで直列接続されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の電力源の相互間で十分な電力を伝送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る電力変換装置を示す図である。
図2】電力変換装置で用いられる各信号、および各プライマリ巻線の端子間電圧を示す図である。
図3】時間帯t1における各スイッチング素子の状態と、各トランスのセカンダリ巻線に流れる電流の経路を示す図である。
図4】時間帯t2における各スイッチング素子の状態と、各トランスのセカンダリ巻線に流れる電流の経路を示す図である。
図5】時間帯t3における各スイッチング素子の状態と、各トランスのセカンダリ巻線に流れる電流の経路を示す図である。
図6】時間帯t4における各スイッチング素子の状態と、各トランスのセカンダリ巻線に流れる電流の経路を示す図である。
図7】時間帯t5における各スイッチング素子の状態と、各トランスのセカンダリ巻線に流れる電流の経路を示す図である。
図8】時間帯t6における各スイッチング素子の状態と、各トランスのセカンダリ巻線に流れる電流の経路を示す図である。
図9】各ゲート信号、各リアクトルに流れる電流、および第2コンデンサ電流を示す図である。
図10】電力変換装置で用いられる各信号、および各プライマリ巻線の端子間電圧を示す図である。
図11】電力変換装置で用いられる各信号、および各プライマリ巻線の端子間電圧を示す図である。
図12】各下スイッチング素子のデューティ比Dと、各相のトランスのトランス平均電圧Vtとの関係についての実験結果を示す図である。
図13】電力変換装置の動作についての実験結果を示す図である。
図14】第2実施形態に係る電力変換装置を示す図である。
図15】各プライマリ巻線電圧を示す図である。
図16】スイッチングアームの数と、第Jのスイッチングアームのスイッチングに対する、第J+1のスイッチングアームのスイッチングの位相差(位相遅れ)との関係を示す図である。
図17】応用実施形態に係る電力変換システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
各図を参照して本発明の各実施形態について説明する。複数の図面に示された同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。本明細書における「上」、「下」、「左」、「右」等の方向を示す用語は、回路図における方向を示し、各部材を配置する際の姿勢を限定するものではない。
【0017】
図1には、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置100が示されている。電力変換装置100は、U相トランス12U、V相トランス12V、W相トランス12W、A相リアクトルLa、B相リアクトルLb、C相リアクトルLc、A相スイッチングアーム18A、B相スイッチングアーム18B、C相スイッチングアーム18C、第1コンデンサC1、第1正極端子20p、第1負極端子20n、第2コンデンサC2、第2正極端子22p、第2負極端子22nおよび制御装置10を備えている。
【0018】
A相スイッチングアーム18Aは、上スイッチング素子Sapおよび下スイッチング素子Sanを備えている。上スイッチング素子Sapおよび下スイッチング素子Sanは直列接続されている。すなわち、上スイッチング素子Sapの下端は、下スイッチング素子の上端に接続されている。上スイッチング素子Sapおよび下スイッチング素子Sanのそれぞれは、下端から上端に向けて電流を流すダイオードを含んでいる。上スイッチング素子Sapおよび下スイッチング素子Sanには、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体素子が用いられてよい。
【0019】
B相スイッチングアーム18BおよびC相スイッチングアーム18Cは、A相スイッチングアーム18Aと同様の構成を有している。B相スイッチングアーム18Bは、直列接続された上スイッチング素子Sbpおよび下スイッチング素子Sbnを備えている。C相スイッチングアーム18Cは、直列接続された上スイッチング素子Scpおよび下スイッチング素子Scnを備えている。
【0020】
A相スイッチングアーム18A、B相スイッチングアーム18BおよびC相スイッチングアーム18Cは並列接続されている。すなわち、各相のスイッチングアームの上端が共通に接続され、各相のスイッチングアームの下端が共通に接続されている。各相のスイッチングアームの上端には、正極導線24pが接続されており、正極導線24pの右端は第1正極端子20pに接続されている。各相のスイッチングアームの下端には、負極導線24nが接続されており、負極導線24nの右端は第1負極端子20nに接続されている。A相スイッチングアーム18A、B相スイッチングアーム18BおよびC相スイッチングアーム18Cには、第1コンデンサC1が並列接続されている。すなわち、第1正極端子20pと第1負極端子20nとの間には、第1コンデンサC1が接続されている。
【0021】
U相トランス12U、V相トランス12VおよびW相トランス12Wのそれぞれは、磁気的に結合するプライマリ巻線14およびセカンダリ巻線16を備えている。U相トランス12Uのセカンダリ巻線16は、A相スイッチングアーム18Aにおける直列接続点と、B相スイッチングアーム18Bにおける直列接続点との間に接続されている。ここで、スイッチングアームの直列接続点とは、上スイッチング素子の下端と、下スイッチング素子の上端とが接続された点をいう。V相トランス12Vのセカンダリ巻線16は、B相スイッチングアーム18Bの直列接続点と、C相スイッチングアーム18Cの直列接続との間に接続されている。W相トランス12Wのセカンダリ巻線16は、C相スイッチングアーム18Cの直列接続点と、A相スイッチングアーム18Aの直列接続との間に接続されている。
【0022】
U相トランス12Uのセカンダリ巻線16の中途点(タップ)には、A相リアクトルLaの一端が接続されている。V相トランス12Vのセカンダリ巻線16の中途点には、B相リアクトルLbの一端が接続され、W相トランス12Wのセカンダリ巻線16の中途点には、C相リアクトルLcの一端が接続されている。各相のセカンダリ巻線16においてリアクトルが接続される中途点は、各相のセカンダリ巻線16のセンタータップであってよい。A相リアクトルLa、B相リアクトルLbおよびC相リアクトルLcの他端は、第2正極端子22pに共通に接続されている。負極導線24nにおける第1負極端子20nとは反対側の一端は、第2負極端子22nに接続されている。第2正極端子22pと第2負極端子22nとの間には、第2コンデンサC2が接続されている。
【0023】
制御装置10は、各スイッチングアームが備える上スイッチング素子および下スイッチング素子を制御する。すなわち、制御装置10は、A相スイッチングアーム18A、B相スイッチングアーム18BおよびC相スイッチングアーム18Cのそれぞれに対応するA相キャリア信号、B相キャリア信号およびC相キャリア信号と、目標値信号との比較に基づいて定まるデューティ比で、各スイッチングアームを制御する。ここで、デューティ比とは、スイッチングの1周期に対しスイッチング素子がオンになる時間の比率をいう。
【0024】
図2(a)には、制御装置10が生成するA相キャリア信号CAa、B相キャリア信号CAb、C相キャリア信号CAcおよび目標値信号Stが示されている。横軸は時間を示し、縦軸は各信号の値を示す。A相キャリア信号CAa、B相キャリア信号CAbおよびC相キャリア信号CAcは、0以上1以下の範囲で値が変動する三角波信号であり、これらの信号には相互に120°の位相差がある。目標値信号Stは、第1正極端子20pと第1負極端子20nとの間の第1電圧V1(第1コンデンサC1の端子間電圧)、および第2正極端子22pと第2負極端子22nとの間の第2電圧V2(第2コンデンサC2の端子間電圧)の関係を調整するための信号である。図2(a)に示される例では、目標値信号Stの値は、一定値0.5である。目標値信号Stは、A相キャリア信号CAa、B相キャリア信号CAb、C相キャリア信号CAcの周波数よりも低い周波数で変動してもよい。
【0025】
図2(b)には、上スイッチング素子Sapおよび下スイッチング素子Sanを制御するゲート信号gapおよびganの時間波形が示されている。図2(c)には、上スイッチング素子Sbpおよび下スイッチング素子Sbnを制御するゲート信号gbpおよびgbnの時間波形が示されている。図2(d)には、上スイッチング素子Scpおよび下スイッチング素子Scnを制御するゲート信号gcpおよびgcnが示されている。
【0026】
制御装置10は、A相キャリア信号CAaと目標値信号Stとの比較に基づいて、ゲート信号gapおよびganを生成する。すなわち、制御装置10は、A相キャリア信号CAaの値が目標値信号Stの値を超えるときはゲート信号gapをハイにし、A相キャリア信号CAaの値が目標値信号Stの値以下であるときはゲート信号gapをローにする。ゲート信号ganは、ゲート信号gapのハイおよびローを反転した信号である。すなわち、制御装置10は、A相キャリア信号CAaの値が目標値信号Stの値を超えるときはゲート信号ganをローにし、A相キャリア信号CAaの値が目標値信号Stの値以下であるときはゲート信号ganをハイにする。
【0027】
ゲート信号gapがハイであるときは上スイッチング素子Sapはオンになり、ゲート信号gapがローであるときは上スイッチング素子Sapはオフになる。同様に、ゲート信号ganがハイであるときは下スイッチング素子Sanはオンになり、ゲート信号ganがローであるときは下スイッチング素子Sanはオフになる。
【0028】
制御装置10は、同様の処理に基づいて、B相キャリア信号CAbと目標値信号Stとの比較に基づいてゲート信号gbpおよびgbnを生成し、C相キャリア信号CAcと目標値信号Stとの比較に基づいてゲート信号gcpおよびgcnを生成する。B相におけるゲート信号gbpおよびgbnのハイ/ローと上スイッチング素子Sbpおよび下スイッチング素子Sbnのオン/オフの関係は、A相と同様である。C相におけるゲート信号gcpおよびgcnのハイ/ローと上スイッチング素子Scpおよび下スイッチング素子Scnのオン/オフの関係は、A相およびB相と同様である。
【0029】
このような制御によれば、下スイッチング素子San、SbnおよびScnのデューティ比は目標値信号Stの値となる。また、上スイッチング素子Sap、SbpおよびScpのデューティ比は、1から目標値信号Stの値を減算した値となる。図2(a)~(d)に示されている例では、各スイッチング素子のデューティ比は0.5となる。
【0030】
第1電圧V1と第2電圧V2との関係は、目標値信号Stの値、すなわち、下スイッチング素子San、SbnおよびScnのデューティ比をDとして(数1)で示される。(数1)は、各スイッチングアームのスイッチングによって、第1電圧V1に対する第2電圧V2の比率である昇圧比が、目標信号の値Dで定まることを示している。
【0031】
(数1)V2=D・V1
【0032】
図2に示された制御では、B相スイッチングアーム18Bは、A相スイッチングアーム18Aに対して120°の位相遅れでスイッチングをする。C相スイッチングアーム18Cは、B相スイッチングアーム18Bに対して120°の位相遅れでスイッチングをし、A相スイッチングアーム18Aは、C相スイッチングアーム18Cに対して120°の位相遅れでスイッチングをする。ここで、スイッチングアームがスイッチングをするとは、スイッチングアームが備える上スイッチング素子および下スイッチング素子が交互にオンオフすることをいう。上スイッチング素子および下スイッチング素子が交互にオンオフするとは、上スイッチング素子がオンからオフになったときに、下スイッチング素子がオフからオンになり、上スイッチング素子がオフからオンになったときに、下スイッチング素子がオンからオフになることをいう。
【0033】
図2(e)には、U相トランス12Uのプライマリ巻線14の端子間電圧が示されている。U相トランス12Uのプライマリ巻線14の端子間には、セカンダリ巻線16の端子間電圧の巻線比n倍の電圧が現れる。ここで巻線比nはセカンダリ巻線16の巻き数に対するプライマリ巻線14の巻き数の比率として定義される。
【0034】
図2(a)には、各キャリア信号の1周期を6等分したものが、早い方から順に時間帯t1~t6として示されている。時間帯t1およびt2では、上スイッチング素子Sapおよび下スイッチング素子Sbnがオンになる。U相トランス12Uの上端および下端は、それぞれ、上スイッチング素子Sapおよび下スイッチング素子Sbnに接続されている。そのため、U相トランス12Uのセカンダリ巻線16には、第1電圧V1が現れ、その巻線比n倍の電圧n・V1がプライマリ巻線14に現れる。
【0035】
時間帯t3では、上スイッチング素子SapおよびSbpがオンになる。U相トランス12Uの上端および下端は、それぞれ、上スイッチング素子SapおよびSbpに接続されている。そのため、U相トランス12Uのセカンダリ巻線16が短絡され、プライマリ巻線14の電圧は0となる。
【0036】
時間帯t4およびt5では、下スイッチング素子Sanおよび上スイッチング素子Sbpがオンになる。U相トランス12Uの上端および下端は、それぞれ、下スイッチング素子Sanおよび上スイッチング素子Sbpに接続されている。そのため、U相トランス12Uのセカンダリ巻線16には、第1電圧V1の極性を反転した電圧-V1が現れ、その巻線比n倍の電圧-n・V1がプライマリ巻線14に現れる。
【0037】
時間帯t6では、下スイッチング素子SanおよびSbnがオンになる。U相トランス12Uの上端および下端は、それぞれ、下スイッチング素子SanおよびSbnに接続されている。そのため、U相トランス12Uのセカンダリ巻線16が短絡され、プライマリ巻線14の電圧は0となる。
【0038】
図2(f)には、V相トランス12Vのプライマリ巻線14の端子間電圧が示されている。V相トランス12Vのプライマリ巻線14の端子間には、V相トランス12Vのセカンダリ巻線16の端子間電圧の巻線比n倍の電圧が現れる。
【0039】
U相トランス12Uのプライマリ巻線14の端子間電圧は、A相スイッチングアーム18AおよびB相スイッチングアーム18Bのスイッチングによって定まる。そして、V相トランス12Vのプライマリ巻線14の端子間電圧は、B相スイッチングアーム18BおよびC相スイッチングアーム18Cのスイッチングによって定まる。B相スイッチングアーム18BおよびC相スイッチングアーム18Cは、A相スイッチングアーム18AおよびB相スイッチングアーム18Bに対して120°の位相遅れでスイッチングをする。したがって、V相トランス12Vのプライマリ巻線14の端子間電圧の位相は、U相トランス12Uのプライマリ巻線14の端子間電圧に対して120°遅れたものとなる。
【0040】
図2(g)には、W相トランス12Wのプライマリ巻線14の端子間電圧が示されている。W相トランス12Wのプライマリ巻線14の端子間には、W相トランス12Wのセカンダリ巻線16に端子間電圧の巻線比n倍の電圧が現れる。V相と同様の原理によって、W相トランス12Wのプライマリ巻線14の端子間電圧の位相は、V相トランス12Vのプライマリ巻線14の端子間電圧に対して120°遅れたものとなる。
【0041】
図2(e)~図2(g)から明らかなように、U相トランス12Uのプライマリ巻線14の端子間電圧、V相トランス12Vのプライマリ巻線14の端子間電圧およびW相トランス12Wのプライマリ巻線14の端子間電圧の加算合計値は0となる。
【0042】
各プライマリ巻線14の端子間電圧の波高値の平均値Vt(以下、トランス平均電圧Vtという)は、(数2)によって表される。
【0043】
(数2)Vt=n・[V1・{1-(0.5-D)}]
【0044】
制御装置10は、目標値信号Stの値を変化させることで、各下スイッチング素子のデューティ比Dを変化させて、(数2)によって関係付けられるトランス平均電圧Vtおよび第1電圧V1を制御する。これと共に、制御装置10は、(数1)によって関係付けられる第1電圧V1および第2電圧V2を制御する。これらの制御によって、各トランスのプライマリ巻線14の両端と、第1正極端子20pおよび第1負極端子20nと、第2正極端子22pおよび第2負極端子22nとの相互間で双方向に電力が伝送され得る。
【0045】
U相トランス12Uのプライマリ巻線14には、U相交流電力源からU相トランス12Uに出力されるU相電力の力率を調整するU相AC/ACコンバータが接続されてよい。U相AC/ACコンバータは、U相交流電力源から出力される正弦波電圧をスイッチングすることで、U相の交流電力源および自らに流れる電流の時間波形を調整し、U相電力の力率を調整する。同様に、V相トランス12Vのプライマリ巻線14には、V相交流電力源からV相トランス12Vに出力されるV相電力の力率を調整するV相AC/ACコンバータが接続されてよい。同様に、W相トランス12Wのプライマリ巻線14には、W相交流電力源からW相トランス12Wに出力されるW相電力の力率を調整するV相AC/ACコンバータが接続されてよい。例えば、各相の交流電力源に流れる電流の時間波形を、対応する相の交流電力源から出力される正弦波電圧の時間波形に一致または近似させることで、各相の交流電力源から各相のトランスに出力される電力の力率が向上する。U相交流電力源、V相交流電力源およびW相交流電力源は、相互間の位相差が120°の正弦波電圧を出力する交流電力源であってよい。
【0046】
以下の(表1)には、時間帯t1~t6のそれぞれにおける各スイッチング素子の状態と、各プライマリ巻線14の電圧の極性が示されている。各スイッチング素子Sap、San、Sbp、Sbn、ScpおよびScnの欄における「1」の符号はスイッチング素子がオンであることを示し、「0」の符号はスイッチング素子がオフであることを示す。プライマリ巻線電圧Vtu、VtvおよびVtwの欄における「+」および「-」の符号は、プライマリ巻線電圧の極性を示す。「0」の符号は、プライマリ巻線電圧が0であることを示す。
【0047】
【表1】
【0048】
図3図8には、それぞれ、時間帯t1~t6における各スイッチング素子の状態と、各トランスのセカンダリ巻線16に流れる電流の経路が示されている。スイッチング素子を囲む丸印は、その丸印で囲まれたスイッチング素子がオンの状態にあることを示す。丸印が付されていないスイッチング素子はオフの状態にある。
【0049】
U相トランス12Uのセカンダリ巻線16に流れるab相電流Iabは、実線の矢印によって示されている。V相トランス12Vのセカンダリ巻線16に流れるbc相電流Ibcは、破線の矢印によって示されている。W相トランス12Wのセカンダリ巻線16に流れるca相電流Icaは、一点鎖線の矢印によって示されている。各プライマリ巻線の傍らに付された「+」、「0」または「-」の符号は、各プライマリ巻線の端子間に現れる電圧の極性、またはその電圧が0であることを示す。
【0050】
ab相電流Iabについて説明する。図3および図4に示されているように、時間帯t1およびt2では、ab相電流Iabは、第1負極端子20nから流入し、下スイッチング素子Sbn、U相トランス12Uのセカンダリ巻線16、および上スイッチング素子Sapを流れ、第1正極端子20pから流出する。図5に示されているように、時間帯t3では、ab相電流Iabは、上スイッチング素子Sbp、U相トランス12Uのセカンダリ巻線16、および上スイッチング素子Sapを環流する。
【0051】
図6および図7に示されているように、時間帯t4およびt5では、ab相電流Iabは、第1負極端子20nから流入し、下スイッチング素子San、U相トランス12Uのセカンダリ巻線16、および上スイッチング素子Sbpを流れ、第1正極端子20pから流出する。図8に示されているように時間帯t6では、ab相電流Iabは、下スイッチング素子San、U相トランス12Uのセカンダリ巻線16、および下スイッチング素子Sbnを環流する。
【0052】
V相トランス12Vのセカンダリ巻線16に流れるbc相電流Ibcについて説明する。図5および図6に示されているように、時間帯t3およびt4では、bc相電流Ibcは、第1負極端子20nから流入し、下スイッチング素子Scn、V相トランス12Vのセカンダリ巻線16、および上スイッチング素子Sbpを流れ、第1正極端子20pから流出する。図7に示されているように、時間帯t5では、bc相電流Ibcは、上スイッチング素子Scp、V相トランス12Vのセカンダリ巻線16、および上スイッチング素子Sbpを環流する。
【0053】
図8および図3に示されているように、時間帯t6およびt1では、bc相電流Ibcは、第1負極端子20nから流入し、下スイッチング素子Sbn、V相トランス12Vのセカンダリ巻線16、および上スイッチング素子Scpを流れ、第1正極端子20pから流出する。図4に示されているように時間帯t2では、bc相電流Ibcは、下スイッチング素子Sbn、V相トランス12Vのセカンダリ巻線16、および下スイッチング素子Scnを環流する。
【0054】
W相トランス12Wのセカンダリ巻線16に流れるca相電流Icaについて説明する。図7および図8に示されているように、時間帯t5およびt6では、ca相電流Icaは、第1負極端子20nから流入し、下スイッチング素子San、W相トランス12Wのセカンダリ巻線16、および上スイッチング素子Scpを流れ、第1正極端子20pから流出する。図3に示されているように、時間帯t1では、ca相電流Icaは、上スイッチング素子Sap、W相トランス12Wのセカンダリ巻線16、および上スイッチング素子Scpを環流する。
【0055】
図4および図5に示されているように、時間帯t2およびt3では、ca相電流Icaは、第1負極端子20nから流入し、下スイッチング素子Scn、W相トランス12Wのセカンダリ巻線16、および上スイッチング素子Sapを流れ、第1正極端子20pから流出する。図6に示されているように時間帯t4では、ca相電流Icaは、下スイッチング素子Scn、W相トランス12Wのセカンダリ巻線16、および下スイッチング素子Sanを環流する。
【0056】
図9(a)~(c)には、ゲート信号gap、gbpおよびgcpの時間波形が示されている。これらの時間波形は、それぞれ、図2(b)~(d)に示された時間波形と同様の時間波形である。図9(d)には、A相リアクトルLaに流れる放電電流ia1、B相リアクトルLbに流れる放電電流ib1およびC相リアクトルLcに流れる放電電流ic1の時間波形が示されている。各リアクトルに流れる放電電流は、第2コンデンサC2から各セカンダリ巻線16の中途点に流れる向きを正とする。
【0057】
ゲート信号gapがハイになり、上スイッチング素子Sapがオンになっている間、放電電流ia1は一旦最大値になり、時間経過と共に減少する。ゲート信号gbpがハイになり、上スイッチング素子Sbpがオンになっている間、放電電流ib1は一旦最大値になり、時間経過と共に減少する。ゲート信号gcpがハイになり、上スイッチング素子Scpがオンになっている間、放電電流ic1は一旦最大値になり、時間経過と共に減少する。
【0058】
図9(e)には、A相リアクトルLaに流れる充電電流ia2、B相リアクトルLbに流れる充電電流ib2およびC相リアクトルLcに流れる充電電流ic2の時間波形が示されている。各リアクトルに流れる充電電流は、各セカンダリ巻線16の中途点から第2コンデンサC2に流れる向きを正とする。
【0059】
ゲート信号gapがローになり(ゲート信号ganがハイになり)、下スイッチング素子Sanがオンになっている間、充電電流ia2が0から時間経過と共に増加する。ゲート信号gbpがローになり(ゲート信号gbnがハイになり)、下スイッチング素子Sbnがオンになっている間、充電電流ib2が0から時間経過と共に増加する。ゲート信号gcpがローになり(ゲート信号gcnがハイになり)、下スイッチング素子Scnがオンになっている間、充電電流ic2が0から時間経過と共に増加する。
【0060】
図9(f)には、第2コンデンサ電流idc2が示されている。第2コンデンサ電流idc2は、第2コンデンサC2から各リアクトルに流れる電流を正とする。第2コンデンサ電流idc2は、放電電流ia1、ib1およびic1を加算した値から、充電電流ia2、ib2およびic2を減算した値となる。第2コンデンサ電流idc2の周波数は、A相キャリア信号CAa、B相キャリア信号CAbおよびC相キャリア信号CAcの周波数の3倍となる。
【0061】
以下の(表2)には、時間帯t1~t6のそれぞれにおける各スイッチング素子の状態、各リアクトルに流れる電流の極性、および放電電流の極性が示されている。各スイッチング素子Sap、SbpおよびScpの欄における「1」の符号は、スイッチング素子がオンであることを示し、「0」の符号は、スイッチング素子がオフであることを示す。リアクトルLa、LbおよびLcの欄における「-」の符号は、第2コンデンサC2の放電に起因する電流が流れることを示し、「+」の符号は、第2コンデンサC2の充電に寄与する電流が流れることを示す。第2コンデンサ電流idc2の欄における「+」の符号は、第2コンデンサ電流idc2の増加を示し、「-」の符号は、第2コンデンサ電流idc2の減少を示す。
【0062】
【表2】
【0063】
図2には、目標値信号Stの値を一定値0.5とした場合について各時間波形が示されているのに対し、図10には、目標値信号Stの値を一定値0.3とした場合について各時間波形が示されている。図11には、目標値信号Stの値を一定値、-0.3とした場合について各時間波形が示されている。
【0064】
図2図10および図11に示されているように、本実施形態に係る電力変換装置100では、各プライマリ巻線14の端子間電圧が正となる時間長、および各プライマリ巻線14の端子間電圧が負となる時間長は、目標値信号Stの値に関わらず一定である。すなわち、各プライマリ巻線14の端子間電圧が正となる時間帯についての端子間電圧の積分値は、目標値信号Stの値に関わらず一定である。同様に、各プライマリ巻線14の端子間電圧が負となる時間帯についての端子間電圧の積分値は、目標値信号Stの値に関わらず一定である。また、本実施形態に係る電力変換装置100では、各プライマリ巻線14の端子間電圧が正となる時間長、および各プライマリ巻線14の端子間電圧が負となる時間長は、U相、V相およびW相について同一である。したがって、U相、V相およびW相のいずれについても、目標値信号Stの値が変動したとしても、各プライマリ巻線14から電力変換装置100に供給される電力の変動は小さい。
【0065】
図12には、目標値信号Stの値、すなわち各下スイッチング素子のデューティ比Dと、各相のトランスのトランス平均電圧Vtとの関係についての実験結果が示されている。横軸はデューティ比Dを示し、縦軸はトランス平均電圧Vtを示す。この図に示されているように、デューティ比Dが変化したとしても、トランス平均電圧Vtは一定である。したがって、デューティ比Dが変化したとしても、各プライマリ巻線14から電力変換装置100に供給される電力の変動は小さい。
【0066】
従来の電力変換装置では、スイッチング素子のデューティ比によっては、交流電力源から供給される電力が不十分となってしまう場合があった。また、スイッチング素子のデューティ比によっては、相ごとに交流電力源から供給される電力にばらつきが生じる場合があった。本実施形態に係る電力変換装置100によれば、目標値信号Stの値が変化したとしても、各プライマリ巻線14から電力変換装置100に供給される電力の大きさが安定化される。したがって、目標値信号Stの値によっては電力変換装置に供給される電力が不十分となるという問題点が解消され得る。また、トランスが用いられており、プライマリ巻線14側の回路と、セカンダリ巻線16側の回路との間で十分な絶縁性が確保される。
【0067】
図13(a)~(c)には、図1に示される電力変換装置100の動作についての実験結果が示されている。図13(a)~(c)の横軸は時間を示す。図13(a)の縦軸は、第1電圧V1が88Vであり、第2電圧V2が50Vである場合における、U相トランス12Uのプライマリ巻線電圧VtuおよびA相リアクトルLaに流れる電流iaを示す。正の電流iaは、上記の放電電流ia1に相当し、負の電流iaは上記の充電電流ia2に相当する。図13(b)の縦軸は、第1電圧V1が88Vであり、第2電圧V2が44Vである場合における、U相トランス12Uのプライマリ巻線電圧Vtuおよび電流iaを示す。図13(c)の縦軸は、第1電圧V1が88Vであり、第2電圧V2が37Vである場合における、U相トランス12Uのプライマリ巻線電圧Vtuおよび電流iaを示す。
【0068】
図14には、本発明の第2実施形態に係る電力変換装置102が示されている。電力変換装置102は、1・2相トランス1212、2・3相トランス1223、・・・・・・6・1相トランス1261を備えている。また、電力変換装置102は、第1リアクトルL1~第6リアクトルL6を備えている。電力変換装置102は、さらに、第1相スイッチングアーム181~第6相スイッチングアーム186、第1コンデンサC1、第1正極端子20p、第1負極端子20n、第2コンデンサC2、第2正極端子22p、第2負極端子22nおよび制御装置30を備えている。
【0069】
第j相スイッチングアーム18jは、直列接続された上スイッチング素子Sjpおよび下スイッチング素子Sjnを備えている。ただし、jは、1~6のうちいずれかの整数である。第1相スイッチングアーム181~第6相スイッチングアーム186は並列接続されている。各相のスイッチングアームの上端には、正極導線24pが接続されており、正極導線24pの右端は第1正極端子20pに接続されている。各相のスイッチングアームの下端には、負極導線24nが接続されており、負極導線24nの右端は第1負極端子20nに接続されている。第1相スイッチングアーム181~第6相スイッチングアーム186には、第1コンデンサC1が並列接続されている。すなわち、第1正極端子20pと第1負極端子20nとの間には、第1コンデンサC1が接続されている。
【0070】
1・2相トランス1212~6・1相トランス1261のそれぞれは、プライマリ巻線14およびセカンダリ巻線16を備えている。k・k+1相トランス12k・k+1のセカンダリ巻線16は、第k相スイッチングアーム18kにおける直列接続点と、第k+1相スイッチングアーム18k+1における直列接続点との間に接続されている。ただし、kは1~5のうちのいずれかの整数である。第6・1相トランス1261のセカンダリ巻線16は、第6相スイッチングアーム186の直列接続点と、第1相スイッチングアーム181の直列接続との間に接続されている。
【0071】
k・k+1相トランス12k・k+1のセカンダリ巻線16の中途点には、第kリアクトルLkの一端が接続されている。6・1相トランス1261のセカンダリ巻線16の中途点には、第6リアクトルL6の一端が接続されている。各相のセカンダリ巻線16においてリアクトルが接続される中途点は、各相のセカンダリ巻線16のセンタータップであってよい。第1リアクトルL1~第6リアクトルL6の他端は、第2正極端子22pに共通に接続されている。負極導線24nにおける第1負極端子20nとは反対側の一端は、第2負極端子22nに接続されている。第2正極端子22pと第2負極端子22nとの間には、第2コンデンサC2が接続されている。
【0072】
制御装置30は、ゲート信号gjpおよびgjnを、第j相スイッチングアーム18jが備える上スイッチング素子Sjpおよび下スイッチング素子Sjnにそれぞれ出力し、上スイッチング素子Sjpおよび下スイッチング素子Sjnを制御する。すなわち、制御装置30は、第1実施形態に係る制御装置10と同様の処理を実行し、第j相スイッチングアーム18jに対応する第j相キャリア信号と、目標値信号Stとの比較に基づいて定まるデューティ比で、第j相スイッチングアーム18jを制御する。
【0073】
第k+1相スイッチングアーム18k+1は、第k相スイッチングアーム18kに対して60°の位相遅れでスイッチングをする。第1相スイッチングアーム181は、第6スイッチングアームに対して60°の位相遅れでスイッチングをする。
【0074】
図15(a)~(f)には、それぞれ、1・2相トランス1212~6・1相トランスのプライマリ巻線電圧Vt12~Vt61が示されている。時間帯t1では、1・2相トランス1261のプライマリ巻線電圧はn・V1であり、時間帯t4では、1・2相トランス1212のプライマリ巻線電圧は-n・V1である。その他の時間帯では、1・2相トランス1212のプライマリ巻線電圧は0である。
【0075】
プライマリ巻線電圧Vt23の位相は、プライマリ巻線電圧Vt12に対して60°遅れている。プライマリ巻線電圧Vt34の位相は、プライマリ巻線電圧Vt23に対して60°遅れている。プライマリ巻線電圧Vt45の位相は、プライマリ巻線電圧Vt34に対して60°遅れている。プライマリ巻線電圧Vt56の位相は、プライマリ巻線電圧Vt45に対して60°遅れている。プライマリ巻線電圧Vt61の位相は、プライマリ巻線電圧Vt56に対して60°遅れている。図15(g)に示されているように、プライマリ巻線電圧Vt12~Vt61の加算合計値は0である。
【0076】
第1実施形態と同様、本実施形態に係る電力変換装置102についても、第1電圧V1と第2電圧V2との関係は(数1)によって表され、各トランスのトランス平均電圧Vtと、第1電圧V1との関係は(数2)によって表される。
【0077】
本実施形態に係る電力変換装置102によれば、第1実施形態と同様の原理によって、目標値信号Stの値が変化したとしても、各プライマリ巻線14から電力変換装置102に供給される電力の大きさが安定化される。したがって、目標値信号Stの値によっては電力変換装置に供給される電力が不十分となるという問題点が解消され得る。また、トランスが用いられており、プライマリ巻線14側の回路と、セカンダリ巻線16側の回路との間で十分な絶縁性が確保される。
【0078】
このように、本発明の各実施形態に係る電力変換装置は、並列接続された第1~第Nのスイッチングアームを備えている。第1実施形態ではN=3であり、A相スイッチングアーム18A~C相スイッチングアーム18Cが、それぞれ、第1~第3のスイッチングアームに相当する。第2実施形態ではN=6であり、第1相スイッチングアーム181~第6相スイッチングアーム186が、それぞれ、第1~第6のスイッチングアームに相当する。各スイッチングアームは、直列接続された上スイッチング素子および下スイッチング素子を備えている。
【0079】
本発明の各実施形態に係る電力変換装置は、Jを1からN-1のいずれかの整数として、第Jのスイッチングアームの直列接続点と第J+1のスイッチングアームの直列接続点との間に接続された第Jのセカンダリ巻線を備えている。第1実施形態では、U相トランス12UおよびV相トランス12Vのそれぞれにおけるセカンダリ巻線16が、第Jのセカンダリ巻線に相当する。第2実施形態では、1・2相トランス1212~5・6相トランス1256のそれぞれにおけるセカンダリ巻線16が、第Jのセカンダリ巻線に相当する。
【0080】
また、本発明の各実施形態に係る電力変換装置は、第Nのスイッチングアームの直列接続点と、第1のスイッチングアームの直列接続点との間に接続された第Nのセカンダリ巻線を備えている。第1実施形態ではW相トランス12Wにおけるセカンダリ巻線16が、第Nのセカンダリ巻線に相当し、第2実施形態では、6・1相トランス1261におけるセカンダリ巻線16が、第Nのセカンダリ巻線に相当する。
【0081】
また、本発明の各実施形態に係る電力変換装置は、第1~第Nのセカンダリ巻線にそれぞれ結合する第1~第Nのプライマリ巻線を備えている。第1実施形態では、U相トランス12U、V相トランス12VおよびW相トランス12Wのそれぞれにおけるプライマリ巻線14が、それぞれ第1~第Nのプライマリ巻線に相当する。第2実施形態では、1・2相トランス1212、2・3相トランス1223、・・・・・・・6・1相トランス1261のそれぞれにおけるプライマリ巻線14が、第1~第Nのプライマリ巻線に相当する。
【0082】
また、本発明の各実施形態に係る電力変換装置は、第1から第Nのプライマリ巻線のそれぞれの両端に形成される交流入出力ポートを備えている。また、本発明の各実施形態に係る電力変換装置は、第1から第Nのスイッチングアームの両端に形成される第1の直流入出力ポート(第1正極端子20pおよび第1負極端子20nによって構成される第1の直流入出力端子対)と、第1から第Nのセカンダリ巻線のそれぞれの中途点、および第1から第Nのスイッチングアームの一方の並列接続点に形成される第2の直流入出力ポート(第2正極端子22pおよび第2負極端子22nによって構成される第2の直流入出力端子対)とを備えている。
【0083】
図16には、スイッチングアームの数と、第Jのスイッチングアームのスイッチングに対する、第J+1のスイッチングアームのスイッチングの位相差(位相遅れ)との関係が示されている。横軸はスイッチングアームの数Nを示し、縦軸は位相差を示している。位相差は、360°/Nで示される。
【0084】
図17には、本発明の応用実施形態に係る電力変換システム104が示されている。電力変換システム104は、電力変換装置100-1~100-3が並列に接続された構成を有し、交流端子42u,42vおよび42wにおいて3相交流電力を入出力するシステムである。
【0085】
電力変換装置100-1~100-3のそれぞれは、第1実施形態に係る電力変換装置100と同様の構成を有し、電力変換装置100と同様の動作をする。電力変換装置100-1~100-3のそれぞれの第1正極端子20pおよび第1負極端子20nは、共通に接続されている。同様に、電力変換装置100-1~100-3のそれぞれの第2正極端子22pおよび第2負極端子22nもまた、共通に接続されている。
【0086】
電力変換装置100-rにおけるU相トランス12Uのプライマリ巻線14の両端には、AC/ACコンバータ40u-rが接続されている。電力変換装置100-rにおけるV相トランス12Vのプライマリ巻線14の両端には、AC/ACコンバータ40v-rが接続されている。電力変換装置100-rにおけるW相トランス12Wのプライマリ巻線14の両端には、AC/ACコンバータ40w-rが接続されている。ここで、rは1~3のいずれかの整数である。
【0087】
AC/ACコンバータ40u-r、40v-rおよび40w-rのそれぞれは、交流端子50α、50β、ローパスフィルタ52および本体回路54を備えており、交流端子50αおよび50βは、ローパスフィルタ52を介して本体回路54に接続されている。
【0088】
交流端子42uは、リアクトル56uを介して、AC/ACコンバータ40u-1の交流端子50αに接続されている。AC/ACコンバータ40u-1の交流端子50βは、AC/ACコンバータ40u-2の交流端子50αに接続されている。AC/ACコンバータ40u-2の交流端子50βは、AC/ACコンバータ40u-3の交流端子50αに接続されている。
【0089】
交流端子42v、リアクトル56v、AC/ACコンバータ40v-1、40v-2および40v-3は、U相と同様に直列接続されている。交流端子42w、リアクトル56w、AC/ACコンバータ40w-1、40w-2および40w-3もまた、U相およびW相と同様に直列接続されている。AC/ACコンバータ40w-1~40w-3のそれぞれの交流端子50βは共通に接続されている。
【0090】
このように、本応用実施形態では、複数の電力変換装置100-1~100-Mが、それぞれの第1直流入出力ポート(第1直流入出力端子対20p,20n)で並列接続されると共に、それぞれの第2直流入出力ポート(第2直流入出力端子対22p,22n)で並列接続されている。Kを1からNのいずれかの整数として、複数の電力変換装置100のそれぞれが備える第Kのプライマリ巻線14に接続されたAC/ACコンバータが、それぞれの交流電源ポート(交流端子50αおよび50βから構成される交流端子対)で直列接続されている。以下に説明するように、AC/ACコンバータは、自らに供給された交流電力に基づいて自らに流れる電流を、スイッチングによって調整する。
【0091】
交流端子42u、42vおよび42wには、3相交流電圧が印加される。例えば、交流端子42vの電圧の位相は、交流端子42uの電圧に対し120°遅れる。交流端子42wの電圧の位相は、交流端子42uの電圧に対し120°遅れる。交流端子42uの電圧の位相は、交流端子42wの電圧に対し120°遅れる。
【0092】
AC/ACコンバータ40u-1~40u-3は、交流端子42uに流れる電流の時間波形をスイッチングによって調整すると共に、スイッチングに基づく電圧を各電力変換装置100-1~100-3のU相トランス12Uのプライマリ巻線14に出力する。AC/ACコンバータ40v-1~40v-3は、交流端子42vに流れる電流の時間波形をスイッチングによって調整すると共に、スイッチングに基づく電圧を各電力変換装置100-1~100-3のV相トランス12Vのプライマリ巻線14に出力する。AC/ACコンバータ40w-1~40w-3は、交流端子42wに流れる電流の時間波形をスイッチングによって調整すると共に、スイッチングに基づく電圧を各電力変換装置100-1~100-3のW相トランス12Wのプライマリ巻線14に出力する。
【0093】
これによって、交流端子42u、交流端子42vおよび交流端子42wに入力される3相交流電力の力率が向上すると共に、各電力変換装置100-1~100-3に各トランス12U~12Vから電力が供給される。
【0094】
本発明の各実施形態に係る電力変換装置、または応用実施形態に係る電力変換システムは、プラグイン機能を有する電動自動車に搭載されてもよい。第1の直流入出力端子対には、走行用のバッテリが接続されてもよい。第2の直流入出力端子対には補機用のバッテリが接続されてもよい。各相のトランスのプライマリ巻線14は、商用電力系統に接続するためのAC/ACコンバータ等の装置が接続されてよい。本発明の各実施形態に係る電力変換装置、または応用実施形態に係る電力変換システムは、電動自動車の他、その他の電力によって動作する一般的な産業機械に用いられてもよい。
【符号の説明】
【0095】
10,30 制御装置、12U,12V,12W,1212,1223、1234,1245,1256、1261 トランス、14 プライマリ巻線,16 セカンダリ巻線、18A A相スイッチングアーム,18B B相スイッチングアーム、18C C相スイッチングアーム、20p 第1正極端子、20n 第1負極端子、22p 第2正極端子、22n 第2負極端子、24p 正極導線、24n 負極導線、42u,42v,42w,50α,50β 交流端子、52 ローパスフィルタ、54 本体回路、56u,56v,56w リアクトル,100,100-1,100-2,100-3,102 電力変換装置、104 電力変換システム。
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