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特許7192849光ファイバ増幅器、光ファイバ増幅器の制御方法、及び伝送システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】光ファイバ増幅器、光ファイバ増幅器の制御方法、及び伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/10 20060101AFI20221213BHJP
   H01S 3/067 20060101ALI20221213BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H01S3/10 D
H01S3/067
G02B6/02 461
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020505068
(86)(22)【出願日】2019-03-06
(86)【国際出願番号】 JP2019008751
(87)【国際公開番号】W WO2019172292
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】P 2018042743
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/空間多重フォトニックノード基盤技術の研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】松本 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ル タヤンディエ ドゥ ガボリ エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】柳町 成行
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-248455(JP,A)
【文献】特開2016-127241(JP,A)
【文献】特開2014-099453(JP,A)
【文献】特表2004-510395(JP,A)
【文献】特開平05-291676(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0085230(US,A1)
【文献】特開平04-361583(JP,A)
【文献】特開2006-012979(JP,A)
【文献】米国特許第07460298(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00 - 3/02
H01S 3/04 - 3/0959
H01S 3/098- 3/102
H01S 3/105- 3/131
H01S 3/136- 3/213
H01S 3/23 - 4/00
H04B 10/00 -10/90
H04J 14/00 -14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光が供給されて光信号を増幅する光ファイバであって、クラッド内に複数本のコアを有する光ファイバと、前記励起光を出力する光源と、前記光源からの前記励起光を前記光ファイバの前記クラッドに供給して、前記励起光を前記光信号に合成させる合成手段と、前記光信号を回収することなく前記励起光のうち前記光ファイバにて吸収されなかった励起光を回収する回収手段と、前記回収手段が回収した、前記光ファイバを通過した後の残留励起光をモニタするモニタ手段と、前記励起光の状態を制御する制御手段と、を含む光ファイバ増幅器であって、
前記励起光を前記光ファイバの前記クラッドに供給することで、前記光ファイバの前記複数本のコアの各コア内の光信号を一括して増幅し、
前記光ファイバの応答時間よりも十分高い周波数で前記励起光を変調し、
前記モニタ手段は、前記残留励起光の変調周波数成分をモニタし、
前記制御手段は、前記励起光の状態制御として、励起光の出力強度又は励起光の波長のいずれかを制御する、
光ファイバ増幅器。
【請求項2】
励起光が供給されて光信号を増幅する光ファイバであって、クラッド内に複数本のコアを有する光ファイバと、前記励起光を出力する光源と、前記光源からの前記励起光を前記光ファイバの前記クラッドに供給して、前記励起光を前記光信号に合成させる合成手段と、前記光信号を回収することなく前記励起光のうち前記光ファイバにて吸収されなかった励起光を回収する回収手段と、前記回収手段が回収した、前記光ファイバを通過した後の残留励起光をモニタするモニタ手段と、前記励起光の状態を制御する制御手段と、を含む光ファイバ増幅器であって、
複数本の光ファイバを備え、
前記複数本の光ファイバ毎に合成手段を備え、
個々の合成手段毎に合成手段に対応する出力端を有する励起光分解手段を有し、
前記モニタ手段からのモニタ値に応じて1つ以上の光源からの出力を配分する、
光ファイバ増幅器。
【請求項3】
励起光が供給されて光信号を増幅する光ファイバであって、クラッド内に複数本のコアを有する光ファイバと、前記励起光を出力する光源と、前記光源からの前記励起光を前記光ファイバの前記クラッドに供給して、前記励起光を前記光信号に合成させる合成手段と、前記光信号を回収することなく前記励起光のうち前記光ファイバにて吸収されなかった励起光を回収する回収手段と、前記回収手段が回収した、前記光ファイバを通過した後の残留励起光をモニタするモニタ手段と、前記励起光の状態を制御する制御手段と、を含む光ファイバ増幅器であって、
前記光ファイバの応答時間よりも十分高い周波数で前記励起光を変調し、
前記モニタ手段は、前記残留励起光の変調周波数成分をモニタし、
励起光を出力する第2の光源と、第2の合成手段を有し、
前記光信号を回収することなく前記励起光のうち前記光ファイバにて吸収されなかった励起光を回収する第2の回収手段を備える、
光ファイバ増幅器。
【請求項4】
複数本の光ファイバを備え、
前記複数本の光ファイバ毎に合成手段を備え、
個々の合成手段毎に合成手段に対応する出力端を有する励起光分解手段を有し、
前記モニタ手段からのモニタ値に応じて1つ以上の光源からの出力を配分する、
請求項1に記載の光ファイバ増幅器。
【請求項5】
励起光を出力する第2の光源と、第2の合成手段を有し、
前記光信号を回収することなく前記励起光のうち前記光ファイバにて吸収されなかった励起光を回収する第2の回収手段を備える、
請求項1、請求項2又は請求項4のうちのいずれか1項に記載の光ファイバ増幅器。
【請求項6】
光伝送路と、前記光伝送路に挿入された、請求項1から請求項5のうちのいずれか1項に記載の光ファイバ増幅器と、を含む伝送システム。
【請求項7】
励起光が供給されて光信号を増幅する光ファイバであって、クラッド内に複数本のコアを有する光ファイバの前記クラッドに、光源からの励起光を供給して、前記励起光を前記光信号に合成させ、
前記光信号を回収することなく前記励起光のうち前記光ファイバにて吸収されなかった励起光を回収し、
回収した、前記光ファイバを通過した後の残留励起光をモニタし、
モニタの結果に応じて前記励起光の状態を制御する、光ファイバ増幅器の制御方法であって、
前記励起光を前記光ファイバの前記クラッドに供給することで、前記光ファイバの前記複数本のコアの各コア内の光信号を一括して増幅し、
前記光ファイバの応答時間よりも十分高い周波数で前記励起光を変調し、
前記残留励起光のモニタでは、前記残留励起光の変調周波数成分をモニタし、
前記励起光の状態の制御として、励起光の出力強度又は励起光の波長のいずれかを制御する、
光ファイバ増幅器の制御方法。
【請求項8】
励起光が供給されて光信号を増幅する光ファイバであって、クラッド内に複数本のコアを有する光ファイバと、前記励起光を出力する光源と、前記光源からの前記励起光を前記光ファイバの前記クラッドに供給して、前記励起光を前記光信号に合成させる合成手段と、前記光信号を回収することなく前記励起光のうち前記光ファイバにて吸収されなかった励起光を回収する回収手段と、前記回収手段が回収した、前記光ファイバを通過した後の残留励起光をモニタするモニタ手段と、前記励起光の状態を制御する制御手段と、を含む光ファイバ増幅器の制御方法であって、
前記光ファイバ増幅器は、複数本の光ファイバを備え、
前記光ファイバ増幅器は、前記複数本の光ファイバ毎に合成手段を備え、
前記光ファイバ増幅器は、個々の合成手段毎に合成手段に対応する出力端を有する励起光分解手段を有し、
前記モニタ手段からのモニタ値に応じて1つ以上の光源からの出力を配分する、
光ファイバ増幅器の制御方法。
【請求項9】
励起光が供給されて光信号を増幅する光ファイバであって、クラッド内に複数本のコアを有する光ファイバと、前記励起光を出力する光源と、前記光源からの前記励起光を前記光ファイバの前記クラッドに供給して、前記励起光を前記光信号に合成させる合成手段と、前記光信号を回収することなく前記励起光のうち前記光ファイバにて吸収されなかった励起光を回収する回収手段と、前記回収手段が回収した、前記光ファイバを通過した後の残留励起光をモニタするモニタ手段と、前記励起光の状態を制御する制御手段と、を含む光ファイバ増幅器の制御方法であって、
前記光ファイバ増幅器は、励起光を出力する第2の光源と、第2の合成手段を有し、
前記光ファイバ増幅器は、前記光信号を回収することなく前記励起光のうち前記光ファイバにて吸収されなかった励起光を回収する第2の回収手段を備え、
前記光ファイバの応答時間よりも十分高い周波数で前記励起光を変調し、
前記モニタ手段は、前記残留励起光の変調周波数成分をモニタする、
光ファイバ増幅器の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号の信号強度を増幅させる光ファイバ増幅器、光ファイバ増幅器の制御方法、及び伝送システムに関し、特に光ファイバ増幅器の消費電力の削減に関する。
【背景技術】
【0002】
光信号の信号強度を増幅させる光ファイバ増幅器としては、光信号が入力される希土類添加ファイバに、励起光源から出力される励起光を入力することで、光信号の信号強度を増幅するものがある。
【0003】
このような光ファイバ増幅器は、高効率・高利得であり、利得がほぼ偏波無依存であることから、光ファイバ通信システムの光信号中継用の増幅器として用いられる。
【0004】
特許文献1は、光ファイバ増幅器に関するものであり、ダブルクラッド構造で構成されるとともにエルビウムイオンを添加した複数のコアを有する増幅用マルチコアファイバを用いることが提案されている。特許文献2は、光増幅器の動作状態をモニタする光増幅器のモニタ方法に関するものであり、エルビウムドープファイバに吸収されずに透過してきた励起光をモニタすることで、光増幅器の動作状態をモニタすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-219753号公報
【文献】特開平6-164021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的な光ファイバ増幅器は、希土類イオンが添加された光ファイバを含む。一般的な光ファイバ増幅器が用いられる光ファイバ通信システムは、通信の高速化および大容量化に重要な役割を担っている。そして、通信容量の増大に対応できるように、波長多重化の関連技術の開発が盛んに行われている。
【0007】
光ファイバ増幅器を長期にわたり効率よく運用するために、トラフィックの変動に合わせて、波長多重化によって「信号伝達に用いられる帯域」を変動する手法がとられる。このように、運用開始後のトラフィックの変動に合わせて、「信号伝達に用いられる帯域」は変動する。
【0008】
「信号伝達に用いられる帯域」が変動すると、変動に合わせて励起光出力も変動させる必要がある。広帯域の場合には高出力、狭帯域の場合には低出力で動作することとなる。そして、帯域が固定されると、出力を一定に保つ。例えば、自動電力制御、あるいは自動利得制御である。このように、励起光源は帯域の変化に従い、出力レベルを変化させ、帯域が変動しない場合には出力レベルを一定に保つ動作が求められる。
【0009】
本発明の目的は、低コストかつ低消費電力な光ファイバ増幅器、光ファイバ増幅器の制御方法、及び伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明に係る光ファイバ増幅器は、励起光が供給されて光信号を増幅する光ファイバであって、クラッド内に複数本のコアを有する光ファイバと、上記励起光を出力する光源と、上記光源からの上記励起光を上記光ファイバの上記クラッドに供給して、上記励起光を上記光信号に合成させる合成手段と、上記信号光を回収することなく上記励起光のうち上記光ファイバにて吸収されなかった励起光を回収する回収手段と、上記回収手段が回収した、上記光ファイバを通過した後の残留励起光をモニタするモニタ手段と、上記励起光の状態を制御する制御手段と、を含む。
【0011】
本発明に係る伝送システムは、光ファイバと、上記光ファイバに接続された上記光ファイバ増幅器と、を含む。
【0012】
本発明に係る光ファイバ増幅器の制御方法は、励起光が供給されて光信号を増幅する光ファイバであって、クラッド内に複数本のコアを有する光ファイバの上記クラッドに、光源からの励起光を供給して、上記励起光を上記光信号に合成させ、
上記信号光を回収することなく上記励起光のうち上記光ファイバにて吸収されなかった励起光を回収し、
回収した、上記光ファイバを通過した後の残留励起光をモニタし、
モニタの結果に応じて上記励起光の状態を制御する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、低コストかつ低消費電力な光ファイバ増幅器、光ファイバ増幅器の制御方法、及び伝送システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】上位概念の実施形態による光ファイバ増幅器を説明するための構成図である。
図2】第1実施形態による光ファイバ増幅器を説明するための構成図である。
図3】第2実施形態による光ファイバ増幅器を説明するための構成図である。
図4】第3実施形態による光ファイバ増幅器を説明するための構成図である。
図5】第4実施形態による光ファイバ増幅器を説明するための構成図である。
図6】第5実施形態による光ファイバ増幅器を説明するための構成図である。
図7】第6実施形態による光ファイバ増幅器を説明するための構成図である。
図8】第7実施形態による光ファイバ増幅器を説明するための構成図である。
図9】第8実施形態による光ファイバ増幅器を説明するための構成図である。
図10】実施形態による電力利用効率向上の効果を示すグラフである。
図11】実施形態による信号光品質への影響を示すグラフである。
図12】実施形態による検出精度向上の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各実施形態において、「信号伝達に用いられる帯域」を、単に、帯域と記す場合がある。「信号伝達に用いられる帯域」は、スペクトラム、必要帯域、WDM(Wavelength Division Multiplexing)の信号使用率、あるいは、波長充填率とも称することができる。
【0016】
具体的な実施形態について説明する前に、上位概念の実施形態による光ファイバ増幅器を説明する。図1は、上位概念の実施形態による光ファイバ増幅器を説明するための構成図である。
【0017】
図1の光ファイバ増幅器は、励起光が供給されて光信号を増幅する光ファイバ101であって、クラッド内に複数本のコアを有する光ファイバ101と、上記励起光を出力する光源106と、を含む。さらに図1の光ファイバ増幅器は、上記光源106からの上記励起光を上記光ファイバの上記クラッドに供給して、上記励起光を上記光信号に合成させる合成手段102と、上記信号光を回収することなく上記励起光のうち上記光ファイバ101にて吸収されなかった励起光を回収する回収手段103と、を含む。さらに図1の光ファイバ増幅器は、上記回収手段103が回収した、上記光ファイバを通過した後の残留励起光をモニタするモニタ手段104と、上記励起光の状態を制御する制御手段105と、を含む。
【0018】
図1の光ファイバ増幅器では、励起光が供給されて光信号を増幅する光ファイバ101は、クラッド内に複数本のコアを有している。合成手段102は、上記光源106からの上記励起光を上記光ファイバの上記クラッドに供給して、上記励起光を上記光信号に合成する。これにより、クラッド内の複数本のコア内を通過する光信号に一括して励起光を合成させる。本実施形態によれば、低コストかつ低消費電力な光ファイバ増幅器、光ファイバ増幅器の制御方法、及び伝送システムを提供することができる。以下、より具体的な実施形態について説明する。
【0019】
〔第1実施形態〕
次に、本発明の第1実施形態による光ファイバ増幅器、光ファイバ増幅器の制御方法、伝送システムについて、説明する。図2は、第1実施形態による光ファイバ増幅器の構成図である。
【0020】
図2の光ファイバ増幅器は、光伝送路の一例としての光ファイバ91aと光ファイバ92aとの間に挿入され、1本の光ファイバ内に複数本のコアを含むマルチコア光ファイバ21と、マルチコア光ファイバ21に対応した光合波器41と、マルチコア光ファイバ21に対応した光分岐部42と、を含む。さらに図2の光ファイバ増幅器は、励起光源31と、光源駆動回路71と、光源駆動回路制御装置61と、励起光強度モニタ51と、を含む。さらに図2の光ファイバ増幅器は、光信号の伝搬方向を一定方向に制限する光アイソレータ11と、光信号の伝搬方向を一定方向に制限する光アイソレータ12と、を含む。
【0021】
マルチコア光ファイバ21は、1本の光ファイバ内に複数本のコアと複数本のコアの周囲のクラッドとを含み、希土類イオンが添加された光ファイバである。ここでは、マルチコア光ファイバ21にエルビウムイオンが添加された場合を例にして説明する。なお、ここでは、図2に示す位置Aから位置Bまでの範囲に、エルビウムイオンが添加されているものとして説明する。
【0022】
励起光源31は励起光を出力し、光合波器41は励起光をマルチコア光ファイバ21に合波する。光分岐部42は残留励起光の一部を分岐し、励起光強度モニタ51は分岐した励起光をモニタする。光源駆動回路制御装置61は光源駆動回路71を制御し、光源駆動回路71は励起光源31を駆動する。
【0023】
光信号Lin1~LinNは、エルビウムイオンが添加されたマルチコア光ファイバ21を通過する際に、光合波器41から供給される励起光により光増幅される。本実施形態では、光合波器41は、N本のコア内を通過する光信号Lin1~LinNに一括して励起光を合成させる。具体的には、光合波器41は、マルチコア光ファイバ21の複数本のコアの周囲のクラッドに励起光を入力し、これによってN本のコア内を通過する光信号Lin1~LinNに一括して励起光を合成させる。以降、本方式を「クラッド一括励起方式」と呼ぶ。
【0024】
光分岐部42は、励起光源31が出力する励起光のうち、マルチコア光ファイバ21にて吸収されず、信号光増幅に使われなかった残留励起光をマルチコア光ファイバ21から分波させる。光分岐部42は、分波器として、例えば、信号光を透過し励起光を反射するダイクロイックミラーを備えていればよい。ただし、励起光出力をマルチコア光ファイバ21から分波するための分波器は、ダイクロイックミラー以外の手段であってもよい。
【0025】
励起光強度モニタ51は、励起光の波長をモニタ可能であり、例えば、励起光の波長帯周辺において光電変換効率の良いフォトダイオードを備える。ただし、残留励起光強度をモニタするためのセンサは、フォトダイオード以外のセンサであってもよい。そして、励起光強度モニタ51は、光源駆動回路制御装置61にモニタ結果として励起光出力強度を通知する。
【0026】
励起光源31は、例えば、半導体レーザダイオードによって実現される。光源駆動回路制御装置61、および光源駆動回路71は、それぞれ専用のプロセッサによって実現される。
【0027】
(動作の説明)
次に、第1の実施形態の光ファイバ増幅器の動作の例について説明する。入力光Lin1~LinNは、光アイソレータ11を介してマルチコア光ファイバ21を通過する際に光合波器41から供給される励起光により光増幅され、光アイソレータ12を介して出力光Loutとして出力される。マルチコア光ファイバ21にて光増幅に用いられなかった励起光は、光分岐部42から残留励起光として回収され、励起光強度モニタ51にてモニタされる。さらに、モニタ値を基に光源駆動回路制御装置61は、光源駆動回路71を制御する。本実施形態によれば、信号光の損失を抑えた上で励起光の状態を制御することが可能である。
【0028】
本実施形態では、クラッド一括励起方式によりマルチコア光ファイバ21のクラッド内を伝播する励起光を回収するので、モニタ値として十分な強度の励起光を回収することが可能となる。
【0029】
コア内を伝播する励起光を回収する手法では、回収可能な励起光強度が弱く、制御手段に対するフィードバックを与えられないことが想定される。さらに、コア内を伝播する励起光を回収する手法では、励起光の波長によってはコア内を伝播する励起光を回収する場合に信号光の一部を同時に回収してしまうことがある。このような信号光の回収が発生すると、光ファイバ増幅器が出力する信号光に品質劣化が生ずる。
【0030】
これに対し本実施形態では、クラッド一括励起方式によりマルチコア光ファイバ21のクラッド内を伝播する励起光を回収するので、光ファイバ増幅器が出力する信号光の品質劣化を招かないようにすることができる。
【0031】
本実施形態による電力利用効率向上の効果を図10に示す。このように、高い電力利用効率の光ファイバ増幅器を実現することができる。
【0032】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態による光ファイバ増幅器、光ファイバ増幅器の制御方法、伝送システムについて、説明する。図3は、第2実施形態による光ファイバ増幅器の構成図である。第2実施形態と同様な構成に対しては、同じ参照番号を付すことによりその詳細な説明を省略することとする。
【0033】
図3の光ファイバ増幅器は、1本の光ファイバ内に複数本のコアを含むマルチコア光ファイバ21と、マルチコア光ファイバ21に対応した光合波器41と、マルチコア光ファイバ21に対応した光分岐部42と、を含む。さらに図3の光ファイバ増幅器は、励起光源31と、光源駆動回路71と、光源駆動回路制御装置61と、励起光強度モニタ51と、を含む。
【0034】
さらに図3の光ファイバ増幅器は、1本のファイバ内に1本のコアを含むN本のファイバを、1本のファイバ内にN本のコアを備えた1本のファイバへと束ねるファイババンドルファンアウト81と、1本のファイバ内にN本のコアを備えた1本のファイバから、1本のファイバ内に1本のコアを含むN本のファイバへと分岐するファイババンドルファンイン82と、を含む。さらに図3の光ファイバ増幅器は、N本のシングルコアファイバ91(911~91N)と、N本のシングルコアファイバ92(921~92N)と、を含む。
【0035】
なお、N本のシングルコアファイバ91(911~91N)を伝播する光信号Lin1~LinNの帯域は均一となるように充填され、不均一だとしても、コア間で1波長分の不均一であるとする。
【0036】
さらに図3の光ファイバ増幅器は、N本のシングルコアファイバ91(911~91N)に対応して、N個の光アイソレータ11(111~11N)を含む。さらにN本のシングルコアファイバ92(921~92N)に対応して、N個の光アイソレータ12(121~12N)を含む。N個の光アイソレータ11(111~11N)及びN個の光アイソレータ12(121~12N)は、光信号の伝搬方向を一定方向に制限する。
【0037】
マルチコア光ファイバ21は、1本の光ファイバ内に複数本のコアと複数本のコアの周囲のクラッドとを含み、希土類イオンが添加された光ファイバである。ここでは、マルチコア光ファイバ21にエルビウムイオンが添加された場合を例にして説明する。なお、ここでは、図3に示す位置Aから位置Bまでの範囲に、エルビウムイオンが添加されているものとして説明する。
【0038】
励起光源31は励起光を出力し、光合波器41は励起光をマルチコア光ファイバ21に合波する。光分岐部42は残留励起光の一部を分岐し、励起光強度モニタ51は分岐した励起光をモニタする。光源駆動回路制御装置61は光源駆動回路71を制御し、光源駆動回路71は励起光源31を駆動する。
【0039】
シングルコアファイバ91(911~91N)を通して入力された光信号Lin1~LinNは光アイソレータ11(111~11N)を通過後、ファイババンドルファンアウト81へと入射する。ファイババンドルファンアウト81は、N個の光アイソレータ11(111~11N)からの1本のファイバ内に1本のコアを含むN本のファイバを、1本のファイバ内にN本のコアを備えた1本のファイバへと束ねる。ファイババンドルファンアウト81は、1本の光ファイバ内に複数本のコアを含むマルチコア光ファイバ21へ、光信号Lin1~LinNを1本の光ファイバ内のN本のコアへ出力する。
【0040】
光信号Lin1~LinNは、エルビウムイオンが添加されたマルチコア光ファイバ21を通過する際に、光合波器41から供給される励起光により光増幅される。
【0041】
ここで本実施形態では、光合波器41は、N本のコア内を通過する光信号Lin1~LinNに一括して励起光を合成させる。具体的には、光合波器41は、マルチコア光ファイバ21の複数本のコアの周囲のクラッドに励起光を入力し、これによってN本のコア内を通過する光信号Lin1~LinNに一括して励起光を合成させる。
【0042】
光分岐部42は、励起光源31が出力する励起光のうち、マルチコア光ファイバ21にて吸収されず、信号光増幅に使われなかった残留励起光をマルチコア光ファイバ21から分波させる。光分岐部42は、分波器として、例えば、信号光を透過し励起光を反射するダイクロイックミラーを備えていればよい。ただし、励起光出力をマルチコア光ファイバ21から分波するための分波器は、ダイクロイックミラー以外の手段であってもよい。
【0043】
励起光強度モニタ51は、励起光の波長をモニタ可能であり、例えば、励起光の波長帯周辺において光電変換効率の良いフォトダイオードを備える。ただし、残留励起光強度をモニタするためのセンサは、フォトダイオード以外のセンサであってもよい。そして、励起光強度モニタ51は、光源駆動回路制御装置61にモニタ結果として励起光出力強度を通知する。
【0044】
励起光源31は、例えば、半導体レーザダイオードによって実現される。光源駆動回路制御装置61、および光源駆動回路71は、それぞれ専用のプロセッサによって実現される。
【0045】
(動作の説明)
次に、第2実施形態の光ファイバ増幅器の動作の例について説明する。
【0046】
1本の光ファイバ内に複数本のコアを含むマルチコア光ファイバ21には、ファイババンドルファンアウト81を通して、光信号Lin1~LinNが入力される。光信号Lin1~LinNの波長は、例えば1.55μm帯である。光アイソレータ11(111~11N)は、光信号の伝搬方向を一定方向に制限する。
【0047】
光合波器41は、N本のコア内を通過する光信号Lin1~LinNに一括して励起光を合成させる。具体的には、光合波器41は、マルチコア光ファイバ21の複数本のコアの周囲のクラッドに励起光を入力し、これによってN本のコア内を通過する光信号Lin1~LinNに一括して励起光を合成させる。
【0048】
励起光が合成された光信号Lin1~LinNは、マルチコア光ファイバ21における希土類イオン(本例ではエルビウムイオン)の添加範囲を通過することで、信号強度が増幅される。光信号Lin1~LinNには、光信号Lin1~LinNの帯域および光源駆動回路制御装置61によって算出された励起光出力強度の励起光が合成される。この結果、光信号Lin1~LinNの信号強度は一定の信号強度に増幅される。
【0049】
光分岐部42は、マルチコア光ファイバ21内を伝播する残留励起光を分岐する。そして、励起光強度モニタ51が、励起光強度を光源駆動回路制御装置61に通知する。光源駆動回路制御装置61は、信号光Lin1~LinNの帯域と残留励起光強度の関係を記憶している。あるいは、光源駆動回路制御装置61は、上位のネットワーク層から現在の信号光Lin1~LinNの帯域を通知される。そして、光源駆動回路制御装置61は、励起光強度モニタ51から通知された信号強度によって、残留励起光強度が信号光の帯域に対して所定の一定値になっていることを、確認する。残留励起光強度が所定の一定値になっていなければ、光源駆動回路制御装置61は一定値になるよう光源駆動回路71を制御し、励起光源31から出力される励起光強度を調整する。
【0050】
例えば、帯域がN波長多重であり、残留励起光強度をPで一定にすべきであるとする。励起光強度モニタ51から通知された実際の残留励起光強度がPより小さければ、波長多重数Nの信号光を十分に励起できていないということなので、光源駆動回路制御装置61は励起光源31からの励起光出力を大きくするように光源駆動回路71を制御する。また、励起光強度モニタ51から通知された実際の残留励起光強度がPより大きければ、波長多重数Nの信号光を過剰に励起しているということなので、光源駆動回路制御装置61は励起光源31からの励起光出力を小さくするように光源駆動回路71を制御する。
【0051】
光分岐部42を通過した、増幅後の信号光Lout1~LoutNは、ファイババンドルファンイン82によって、N本のシングルコアファイバ92(921~92N)へと分割され、それぞれ伝播する。N個の光アイソレータ12(121~12N)は、光信号の伝搬方向を一定方向に制限する。
【0052】
本実施形態によれば、信号光Lout1~LoutNの一部を直接使用することなく、残留励起光から信号光Lout1~LoutNの帯域をモニタすることが可能である。従って、信号光Lout1~LoutNの出力光強度が下がるといった課題や、このような低下した信号光Lout1~LoutNの出力強度を補うべく光増幅器の消費電力が増大するという課題を回避することが可能となる。
【0053】
分波比が10:1の信号光分波器を用いた場合、信号光Lout1~LoutNの損失は9.09%程度であり、信号光利得と励起光出力、および励起光源31における消費電力が比例の関係にあると仮定すると、電力利用効率は10.01%程度向上する。このように、高い電力利用効率の光ファイバ増幅器を実現することができる。
【0054】
本実施形態では、クラッド一括励起方式によりマルチコア光ファイバ21のクラッド内を伝播する励起光を回収するので、モニタ値として十分な強度の励起光を回収することが可能となる。
【0055】
コア内を伝播する励起光を回収する手法では、回収可能な励起光強度が弱く、制御手段に対するフィードバックを与えられないことが想定される。さらに、コア内を伝播する励起光を回収する手法では、励起光の波長によってはコア内を伝播する励起光を回収する場合に信号光の一部を同時に回収してしまうことがある。このような信号光の回収が発生すると、光ファイバ増幅器が出力する信号光に品質劣化が生ずる。
【0056】
これに対し本実施形態では、クラッド一括励起方式によりマルチコア光ファイバ21のクラッド内を伝播する励起光を回収するので、光ファイバ増幅器が出力する信号光の品質劣化を招かないようにすることができる。
【0057】
光分岐部42は残留励起光の一部を分岐する。励起光強度モニタ51は、光分岐部42が分岐した励起光をモニタする。光源駆動回路制御装置61は、励起光強度モニタ51のモニタ結果に応じて、光源駆動回路71を制御する。光源駆動回路71は、励起光源31を駆動する。
【0058】
励起光強度モニタ51は、マルチコア光ファイバ21内のクラッドを伝播する残留励起光を検出する。励起光強度モニタ51にて検出される残留励起光は、マルチコア光ファイバ21内のクラッドを伝播する残留励起光であり、N本のシングルコアファイバ91(911~91N)を伝播する光信号Lin1~LinNの帯域がおおよそ均一となるように充填される場合には、各コア内の必要帯域を残留励起光強度から算出することが可能となる。
【0059】
(効果の説明)
本実施形態では、信号光Lout1~LoutNの一部を直接使用することなく、マルチコア光ファイバ21のクラッド内を伝播する残留励起光から各信号光Lout1~LoutNの帯域をモニタすることが可能である。これにより、信号光Lout1~LoutNの出力強度を低下させることなく、帯域のモニタが可能となる。また、マルチコア光ファイバ21のコアの数が増大した場合にも、モニタ等の部品点数を増やすことなく帯域のモニタが可能となる。これにより、マルチコア光ファイバ21のコアの数をNとした場合、部品点数の削減によりモニタ部のコストは1/Nとなる。このように、光増幅器の低コスト化の効果が得られる。
【0060】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態による光ファイバ増幅器、光ファイバ増幅器の制御方法、伝送システムについて、説明する。図4は、第3実施形態による光ファイバ増幅器の構成図である。第1実施形態や第2実施形態の光ファイバ増幅器と同様な要素に対しては同じ参照番号を付すこととして、その詳細な説明は省略することとする。
【0061】
図4の光ファイバ増幅器は第1実施形態や第2実施形態と同様に、1本の光ファイバ内に複数本のコアを含むマルチコア光ファイバ21と、マルチコア光ファイバ21に対応した光合波器41と、マルチコア光ファイバ21に対応した光分岐部42と、を含む。さらに図4の光ファイバ増幅器は、励起光源31と、光源駆動回路71と、光源駆動回路制御装置61と、励起光強度モニタ51と、を含む。
【0062】
さらに図4の光ファイバ増幅器は第2実施形態と同様に、1本のファイバ内に1本のコアを含むN本のファイバを、1本のファイバ内にN本のコアを備えた1本のファイバへと束ねるファイババンドルファンアウト81と、N個の光アイソレータ11(111~11N)と、を含む。
【0063】
さらに図4の光ファイバ増幅器は第2実施形態と同様に、1本のファイバ内にN本のコアを備えた1本のファイバから、1本のファイバ内に1本のコアを含むN本のファイバへと分岐するファイババンドルファンイン82と、N個の光アイソレータ12(121~12N)と、を含む。
【0064】
図4の光ファイバ増幅器ではさらに、コア個別励起用励起光源32(321~32N)、および光合波器43(431~43N)を含む。コア個別励起用励起光源32(321~32N)、および光合波器43(431~43N)は1本の光ファイバ中に1本のコアを持つN本のシングルコアファイバ92(921~92N)に対してそれぞれ備えられている。コア個別励起用励起光源32(321~32N)からの出力は、光合波器43(431~43N)により各シングルコアファイバ92(921~92N)のコアに合成される。
【0065】
図4の光ファイバ増幅器ではさらに、最適比記憶装置62を含む。最適比記憶装置62は、励起光強度モニタ51からの残留光強度と(クラッド励起光出力/コア励起光出力の)最適比の関係を記憶している。本実施形態では、励起光強度モニタ51の出力は最適比記憶装置62の入力に接続され、最適比記憶装置62の出力は光源駆動回路制御装置61の入力へと接続されている。
【0066】
本実施形態においても第1実施形態や第2実施形態と同様に、光合波器41は、マルチコア光ファイバ21のN本のコア内を通過する光信号Lin1~LinNに一括して励起光を合成させる。具体的には、光合波器41は、マルチコア光ファイバ21の複数本のコアの周囲のクラッドに励起光を入力し、これによってN本のコア内を通過する光信号Lin1~LinNに一括して励起光を合成させる。なお本実施形態では、光合波器41が、励起光を信号光の伝播方向と同一になる前方励起の態様で光信号Lin1~LinNに合成させている。
【0067】
次に、特にコア個別励起用励起光源32(321~32N)、最適比記憶装置62による動作について説明する。
【0068】
コア個別励起用励起光源32(321~32N)の出力波長は0.98μm帯、または1.48μm帯であり、励起光源31の波長帯と同じ場合、異なる場合に対してそれぞれ有効である。すなわち、励起光源31の波長帯が0.98μm帯であるのに対し、コア個別励起用励起光源32(321~32N)の出力波長は0.98μm帯、あるいは1.48μm帯である。また、励起光源31の波長帯が1.48μm帯であるのに対し、コア個別励起用励起光源32(321~32N)の出力波長は0.98μm帯、あるいは1.48μm帯である。ここで、コア個別励起用励起光源321~32Nの波長は同一である。
【0069】
図4の図示では、励起光源31は前方励起の態様で光信号Lin1~LinNに合成されているが、この場合、コア個別励起用励起光源32(321~32N)は後方励起の態様で光信号Lout1~LoutNにそれぞれ合成される。しかし、励起光源31が後方励起の態様で光信号Lin1~LinNに合成され、コア個別励起用励起光源321~32Nは前方励起の態様で光信号Lout1~LoutNに合成されてもよい。
【0070】
最適比記憶装置62は、励起光強度モニタ51からの残留光強度と(クラッド励起光出力/コア励起光出力の)最適比の関係を記憶している。具体的には、残留光強度値に対し、全励起光源の消費電力合計が最小となるように、クラッド励起光出力とコア励起光出力の割合を記憶している。最適比記憶装置62は、励起光強度モニタ51の出力に基づいて、光源駆動回路制御装置61へとクラッド励起光出力値およびコア励起光出力値を通知する。
【0071】
(動作の説明)
次に、第3実施形態の光ファイバ増幅器の動作の例について説明する。第3実施形態においても第1実施形態や第2実施形態と同様、光合波器41は励起光源31からの励起光を光信号Lin1~LinNに合成させる。また、光合波器43(431~43N)はコア個別励起用励起光源32(321~32N)からの励起光を光信号Lout1~LoutNに合成させる。
【0072】
励起光が合成された光信号Lin1~LinNは、マルチコア光ファイバ21を通過することで、信号強度が増幅される。このとき、光分岐部42は増幅後の光信号Lout1~LoutNとともにマルチコア光ファイバ21内を伝播する残留励起光を分岐する。そして、励起光強度モニタ51が、最適比記憶装置62に励起光強度を通知する。最適比記憶装置62は、励起光強度モニタ51から通知された信号強度によって、クラッド励起光出力/コア励起光出力の最適比を算出し、光源駆動回路制御装置61へとクラッド励起光出力値およびコア励起光出力値を通知する。光源駆動回路制御装置61は、通知された値に基づいて光源駆動回路71を駆動する。ここで、コア個別励起用励起光源32(321~32N)からの励起光の出力強度は同一の出力値であるとする。
【0073】
(効果の説明)
本実施形態によれば第1実施形態や第2実施形態と同様に、信号光Lout1~LoutNの一部を直接使用することなく、マルチコア光ファイバ21のクラッド内を伝播する残留励起光から各信号光Lout1~LoutNの帯域をモニタすることが可能である。これにより、信号光Lout1~LoutNの出力強度を低下させることなく、帯域のモニタが可能となる。また、マルチコア光ファイバ21のコアの数が増大した場合にも、モニタ等の部品点数を増やすことなく帯域のモニタが可能となる。
【0074】
さらに本実施形態によれば、N本のシングルコアファイバ91(911~91N)を伝播する光信号Lin1~LinNの帯域が均一な場合に、必要帯域に対して消費電力が最小となるようなクラッド励起光出力/コア励起光出力比を選択することが可能となる。これにより、増幅器モジュールの低消費電力動作が可能となる。
【0075】
〔第4実施形態〕
次に、第4実施形態による光ファイバ増幅器、光ファイバ増幅器の制御方法、伝送システムについて、説明する。図5は、第4実施形態による光ファイバ増幅器の構成図である。第1実施形態、第2実施形態や第3実施形態の光ファイバ増幅器と同様な要素に対しては同じ参照番号を付すこととして、その詳細な説明は省略することとする。
【0076】
図5の光ファイバ増幅器は第1実施形態乃至第3実施形態と同様に、1本の光ファイバ内に複数本のコアを含むマルチコア光ファイバ21と、マルチコア光ファイバ21に対応した光合波器41と、マルチコア光ファイバ21に対応した光分岐部42と、を含む。さらに図5の光ファイバ増幅器は、励起光源31と、光源駆動回路71と、光源駆動回路制御装置61と、励起光強度モニタ51と、を含む。
【0077】
さらに図5の光ファイバ増幅器は第2実施形態や第3実施形態と同様に、1本のファイバ内に1本のコアを含むN本のファイバを、1本のファイバ内にN本のコアを備えた1本のファイバへと束ねるファイババンドルファンアウト81と、N個の光アイソレータ11(111~11N)と、を含む。
【0078】
さらに図5の光ファイバ増幅器は第2実施形態や第3実施形態と同様に、1本のファイバ内にN本のコアを備えた1本のファイバから、1本のファイバ内に1本のコアを含むN本のファイバへと分岐するファイババンドルファンイン82と、N個の光アイソレータ12(121~12N)と、を含む。
【0079】
さらに図5の光ファイバ増幅器では第3実施形態と同様に、コア個別励起用励起光源32(321~32N)、および光合波器43(431~43N)を含む。コア個別励起用励起光源32(321~32N)、および光合波器43(431~43N)は1本の光ファイバ中に1本のコアを持つN本のシングルコアファイバ92(921~92N)に対してそれぞれ備えられている。コア個別励起用励起光源32(321~32N)からの出力は、光合波器43(431~43N)により各シングルコアファイバ92(921~92N)のコアに合成される。
【0080】
さらに図5の光ファイバ増幅器では、コア伝播励起光分岐部44、およびコア伝播励起光強度モニタ51aを備える。コア伝播励起光分岐部44はコア伝播励起光強度モニタ51aに接続され、コア伝播励起光強度モニタ51aは光源駆動回路制御装置61に接続されている。
【0081】
本実施形態においても第1実施形態乃至第3実施形態と同様に、光合波器41は、マルチコア光ファイバ21のN本のコア内を通過する光信号Lin1~LinNに一括して励起光を合成させる。具体的には、光合波器41は、マルチコア光ファイバ21の複数本のコアの周囲のクラッドに励起光を入力し、これによってN本のコア内を通過する光信号Lin1~LinNに一括して励起光を合成させる。
【0082】
コア個別励起用励起光源32(321~32N)の出力波長は0.98μm帯、または1.48μm帯であり、励起光源31の波長帯と同じ場合、異なる場合に対してそれぞれ有効である。すなわち、励起光源31の波長帯が0.98μm帯であるのに対し、コア個別励起用励起光源32(321~32N)の出力波長は0.98μm帯、あるいは1.48μm帯である。また、励起光源31の波長帯が1.48μm帯であるのに対し、コア個別励起用励起光源32(321~32N)の出力波長は0.98μm帯、あるいは1.48μm帯である。ここで、コア個別励起用励起光源32(321~32N)の波長は同一である。
【0083】
図5の図示では、励起光源31は前方励起の態様で光信号Lin1~LinNに合成されているが、この場合、コア個別励起用励起光源32(321~32N)は後方励起の態様で光信号Lout1~LoutNにそれぞれ合成される。しかし、励起光源31が後方励起の態様で光信号Lin1~LinNに合成され、コア個別励起用励起光源321~32Nは前方励起の態様で光信号Lout1~LoutNに合成されてもよい。
【0084】
コア伝播励起光分岐部44は、コア個別励起用励起光源32(321~32N)が出力する励起光のうち、マルチコア光ファイバ21の各コアにて吸収されず、信号光増幅に使われなかった残留励起光をマルチコア光ファイバ21から分波させる。コア伝播励起光分岐部44の分波器として、例えば、信号光を透過し励起光を反射するダイクロイックミラーを備えていればよい。ただし、励起光出力をマルチコア光ファイバ21から分波するための分波器は、ダイクロイックミラー以外の手段であってもよい。
【0085】
コア伝播励起光強度モニタ51aは、励起光の波長をモニタ可能であり、励起光の波長帯周辺において光電変換効率の良いフォトダイオードを備える。ただし、残留励起光強度をモニタするためのセンサは、フォトダイオード以外のセンサであってもよい。コア伝播励起光強度モニタ51aは、光源駆動回路制御装置61に励起光出力強度を通知する。
【0086】
(動作の説明)
次に、第4実施形態の光ファイバ増幅器の動作の例について説明する。本実施形態においても第1実施形態や第2実施形態と同様に、光合波器41は励起光源31からの励起光を光信号Lin1~LinNに合成させる。また、本実施形態においても光合波器43(431~43N)は第2実施形態と同様に、コア個別励起用励起光源32(321~32N)からの励起光を光信号Lout1~LoutNに合成させる。
【0087】
励起光が合成された光信号Lin1~LinNは、マルチコア光ファイバ21を通過することで、信号強度が増幅される。このとき光分岐部42は、増幅後の光信号Loutとともにマルチコア光ファイバ21内を伝播する残留励起光を分岐する。また、コア伝播励起光分岐部44は、増幅前の光信号Lin1~LinNとともにマルチコア光ファイバ21内を伝播する残留励起光を分岐する。そして、励起光強度モニタ51、およびコア伝播励起光強度モニタ51aが、光源駆動回路制御装置61に励起光強度を通知する。
【0088】
光源駆動回路制御装置61は、励起光強度モニタ51、およびコア伝播励起光強度モニタ51aから通知された信号強度に基づいて、光源駆動回路71を駆動する。光源駆動回路制御装置61は、各コア内を伝播する信号光Lin1~LinNの帯域と残留励起光強度の関係を記憶している。あるいは、光源駆動回路制御装置61は、上位のネットワーク層から現在の信号光Lin1~LinNの帯域を通知される。そして、光源駆動回路制御装置61は、励起光強度モニタ51、およびコア伝播励起光強度モニタ51aから通知された信号強度によって、残留励起光強度が信号光の帯域に対して所定の一定値になっていることを確認する。残留励起光強度が所定の一定値になっていなければ、光源駆動回路制御装置61は一定値になるよう光源駆動回路71を制御する。光源駆動回路71の制御によって、励起光源31、およびコア個別励起用励起光源321~32Nから出力される励起光強度を調整する。コア個別励起用励起光源32(321~32N)からの励起光の出力強度は同一の出力値であっても、異なる出力値であってもよい。
【0089】
(効果の説明)
本実施形態によれば第1実施形態、第2実施形態や第3実施形態と同様に、信号光Lout1~LoutNの一部を直接使用することなく、マルチコア光ファイバ21のクラッド内を伝播する残留励起光から各信号光Lout1~LoutNの帯域をモニタすることが可能である。これにより、信号光Lout1~LoutNの出力強度を低下させることなく、帯域のモニタが可能となる。また、マルチコア光ファイバ21のコアの数が増大した場合にも、モニタ等の部品点数を増やすことなく帯域のモニタが可能となる。
【0090】
さらに本実施形態によれば、仮にN本のシングルコアファイバ91(911~91N)を伝播する光信号Lin1~LinNの帯域が不均一であっても、コア毎に励起光強度をモニタすることで対応する。これにより、各コアの必要帯域に対して消費電力が最小となるようコア個別励起用励起光源32(321~32N)の出力をそれぞれ設定することが可能となる。これにより、N本のシングルコアファイバ91(911~91N)を伝播する光信号Lin1~LinNの帯域が不均一な場合にも、増幅器モジュールの低消費電力動作が可能となる。
【0091】
〔第5実施形態〕
好ましい実施形態について説明したが、上述した実施形態では以下のような変形例とすることも考えられる。例えば、第2実施形態などでは、光合波器41が、励起光を信号光の伝播方向と同一になる前方励起の態様で光信号Lin1~LinNに合成させる場合を示した。光合波器が、励起光を信号光の伝播方向と逆になる後方励起の態様で光信号Lin1~LinNに合成させてもよい。図6は、第1実施形態の光ファイバ増幅器の変形例の要部を説明するブロック図である。図6の光ファイバ増幅器では、光分岐部42aが、光合波器41aよりも上流側に設けられる。光合波器41aは、励起光源31から出力された励起光を上流側に伝搬させるようにして、励起光を光信号Lin1~LinNに合成させる。
【0092】
本実施形態でも第1実施形態と同様に、光合波器41aは、N本のコア内を通過する光信号Lin1~LinNに一括して励起光を合成させる。具体的には、光合波器41aは、マルチコア光ファイバ21の複数本のコアの周囲のクラッドに励起光を入力し、これによってN本のコア内を通過する光信号Lin1~LinNに一括して励起光を合成させる。
【0093】
光合波器41aは、励起光源31から出力された励起光を上流側に伝搬させる。光分岐部42aは、光合波器41aが上流側に伝搬させた励起光をマルチコア光ファイバ21から分波させる。光分岐部42aは、分波器として、例えば、信号光を透過し励起光を反射するダイクロイックミラーを備えていればよい。ただし、励起光出力をマルチコア光ファイバ21から分波するための分波器は、ダイクロイックミラー以外の手段であってもよい。
【0094】
励起光強度モニタ51は、励起光の波長をモニタ可能であり、励起光強度モニタ51は、光源駆動回路制御装置61にモニタ結果として励起光出力強度を通知する。
【0095】
その他の点に関しては、第1実施形態と同様である。
【0096】
〔第6実施形態〕
さらに、実施形態の他の変形例について説明する。図7は、第6実施形態の光ファイバ増幅器の構成例を示すブロック図であり、複数の励起光源31をその一部、あるいは全部、を柔軟に使用することで、励起光源の故障等に対する冗長性向上、光増幅器の低コスト化、低電力化を図るものである。第1実施形態などで示した構成要素と同様の構成要素については、同一の符号を付し説明を省略する。
【0097】
第6実施形態の光ファイバ増幅器は、第1実施形態の光ファイバ増幅器が備える構成要素に加え、入力数N出力数Mの光合波器43を備える。ここで、Nは1以上、Mは2以上の整数であり、NとMの値に相関はないものとする。なお、本実施形態においてはN=3、M=2の場合について説明する。また、第6実施形態においては励起光源31からの出力をモニタする励起光出力モニタ52を備える。さらに、第6実施形態においては光合分波器駆動制御装置61bを備える。励起光強度モニタ51は光合分波器駆動制御装置61bに接続され、光合分波器駆動制御装置61bは光合波器43、および光源駆動回路制御装置61aに接続されている。また、光合波器43のM(=2)出力はそれぞれM(=2)個の光合波器41に接続されている。そして、光合波器43のN(=3)入力には、N(=3)個の励起光の状態をモニタする励起光出力モニタ52が接続されている。
【0098】
第6実施形態の複数の励起光源31は、いずれも同一の特性を有する励起光源である。
【0099】
次に、光合波器43、および光合分波器駆動制御装置61bについて説明する。
【0100】
光合波器43のN個の入力ポートに入力された励起光源31からの励起光は波長0.98μm帯、または1.48μm帯を維持したまま、M個の出力ポートへと出力される。このとき、N個の入力ポートに入力される励起光の光強度の和はM個の出力ポートから出力される励起光の光強度の和と一致する。すなわち、N個の入力ポートに入力される全励起光の強度は、光合波器43にて損失を受けることなくM個の出力ポートへと出力される。光合波器43は、N個の入力ポートに入力されるそれぞれ任意の励起光強度をM個の出力ポートからそれぞれ任意の励起光強度として出力することが可能である。
【0101】
例えば、N=3,M=2の場合において、入力側の第1ポート入力強度がP1、入力側の第2ポート入力強度がP2、入力側の第3ポート入力強度がP3で、合計光強度がP1+P2+P3であり、出力側の第1ポート出力強度がPであったとすると、出力側の第2ポート出力強度は(P1+P2+P3)-Pである。
【0102】
光合分波器駆動制御装置61bは、光合波器43の各入力ポートに任意の強度で入力された励起光を出力側にて出力する際の出力光分配比を制御するものである。さらに、光合分波器駆動制御装置61bは、各励起光強度モニタ51からの出力に基づき、全光増幅器にて必要な励起光出力を光源駆動回路制御装置61aへ通知する。
【0103】
励起光出力モニタ52は、接続されている各励起光源31の出力値をモニタし、光源駆動回路制御装置61aへと伝える。本実施形態において、励起光出力モニタ52のモニタ情報に基づき、光源駆動回路制御装置61aは励起光源31が正常に動作しているか判断を行う。励起光源31が正常に動作していないと判断した場合には、正常に動作している光源のみを駆動するよう光源駆動回路71を制御する。例えば、N個の励起光源が出力値Pで駆動していた場合に、1つの励起光源が正常動作していないと判断した場合には、正常動作していない励起光源の駆動を停止し、正常動作をしている残り(N-1)個の励起光源を出力値(P×N)/(N-1)で駆動させるというものである。
【0104】
また、励起光出力モニタ52のモニタ情報に基づき、光源駆動回路制御装置61aは励起光源31が正常に動作しているか判断を行う。励起光源31が正常に動作していないと判断した場合には、正常に動作している光源のみを駆動するよう光源駆動回路71を制御するという点は、後述の各実施形態においても適用可能である。
【0105】
次に、第6実施形態の光ファイバ増幅器の動作の例について説明する。光合波器41は、光合波器43の出力端から出力された励起光を、光信号Linに合成させる。励起光が合成された光信号Linが、マルチコア光ファイバ21における希土類イオン(本例ではエルビウムイオン)の添加範囲を通過することで、光信号Linの信号強度は増幅される。光信号Linには、光信号Linの帯域および光合分波器駆動制御装置61bによって算出された励起光出力強度の励起光が合成される。この結果、光信号Linの信号強度は一定の信号強度に増幅され、光信号Loutとして光ファイバ92aを通して出力される。
【0106】
このとき、光分岐部42は光信号Loutとともに光ファイバ92a内を伝播する残留励起光を分岐する。そして、励起光強度モニタ51は光合分波器駆動制御装置61bに励起光強度を通知する。
【0107】
光合分波器駆動制御装置61bは、励起光強度モニタ51及び励起光強度モニタ51から通知される値を基に、各マルチコア光ファイバ21内を通過する信号帯域を増幅する際に必要となる励起光強度を光源駆動回路制御装置61aへと通知する。通知を受けた光源駆動回路制御装置61aは、全ての励起光源31が出力する励起光強度の和が複数の励起光強度モニタから通知された値と一致するように光源駆動回路71を駆動する。各励起光源31からの励起光出力強度は励起光出力モニタ52によって監視され、光源駆動回路制御装置61aへと通知される。これにより、光源が正常に動作しているか、あるいは正常に動作していないか、光源駆動回路制御装置61aが判断し、正常に動作していない場合には正常に動作している光源のみを駆動するよう光源駆動回路71を制御する。同時に、光合分波器駆動制御装置61bは接続される励起光強度モニタ51及び励起光強度モニタ51から通知される値を基に、光合波器43の出力側にて出力する際の出力光分配比を制御する。
【0108】
本実施形態では、光源駆動回路制御装置61aではなく、光合分波器駆動制御装置61bが信号光Linの帯域と残留励起光強度の関係を記憶している、あるいは、光合分波器駆動制御装置61bは、上位のネットワーク層から現在の信号光Linの帯域を通知される。そして、光合分波器駆動制御装置61bは励起光強度モニタ51から通知された残留励起光強度によって、残留励起光強度が帯域に応じた所定の一定値になっていることを確認する。残留励起光強度が所定の一定値になっていなければ、光合分波器駆動制御装置61bは励起光源31からの出力を調整するべく、光源駆動回路制御装置61aを通して光源駆動回路71を制御する。
【0109】
例えば、図7の上部のマルチコア光ファイバ21内では帯域がN波長多重であり、残留励起光強度をP1で一定にすべきであるとする。また、下部のマルチコア光ファイバ21内では帯域がM波長多重であり、残留励起光強度をP2で一定にすべきであるとする。このとき、各励起光強度モニタ51から通知された実際の残留励起光強度がP1+P2より小さければ、波長多重数Nの信号光、および波長多重数Mの信号光を十分に励起できていないということなので、光源駆動回路制御装置61aは励起光源31からの励起光出力を大きくするように光源駆動回路71を制御する。また、励起光強度モニタ51から通知された実際の残留励起光強度がP1+P2より大きければ、波長多重数Nの信号光、および波長多重数Mの信号光を過剰に励起しているということなので、光源駆動回路制御装置61aは励起光源31からの励起光出力を小さくするように光源駆動回路制御装置61aを介して光源駆動回路71を制御する。同時に、光合分波器駆動制御装置61bは光合波器43の出力比を(上部):(下部)=N:Mとなるように制御する。ただし、出力比を(上部):(下部)=N:Mとなるように制御する場合は各光増幅器の信号増幅量が等しい場合であり、信号増幅量が等しくない場合には出力比を変更する。
【0110】
本実施形態によれば、複数の励起光源31をその一部、あるいは全部、柔軟に使用することが可能であるため、励起光源31の故障等に対して、冗長性を持たせることが可能となる。さらに、(励起光源数)<(光増幅器数)の場合には、光源数の削減が可能となり、低コスト化、小型化等が可能となる。また、高温環境下においては励起光源の励起消費電力削減効果も期待できる。
【0111】
〔第7実施形態〕
さらに、実施形態の他の変形例について説明する。図8は、第7実施形態の光ファイバ増幅器の構成例を示すブロック図であり、励起光波長周辺に存在する自然放出光雑音成分を除去することで残留光の高感度検出を可能とするものである。第1実施形態などの実施形態で示した構成要素と同様の構成要素については、同一の符号を付し説明を省略する。
【0112】
第7実施形態の光ファイバ増幅器は、第1実施形態の光ファイバ増幅器が備える構成要素に加え、ディザ信号印加部72およびバンドパスフィルタ73を備える。ディザ信号印加部72は励起光源31に接続されている。光分岐部42の出力は励起光強度モニタ51bの入力に接続され、励起光強度モニタ51bの出力はバンドパスフィルタ73の入力にそれぞれ接続されている。
【0113】
次に、ディザ信号印加部72、およびバンドパスフィルタ73について説明する。ディザ信号印加部72は、励起光源31に正弦波による変調を与える。これは高い周波数を用いるもので、マルチコア光ファイバ21の応答時間よりも十分に早く、変調により信号光の劣化を引き起こさないものとする。バンドパスフィルタ73は、ディザ信号印加部72によって与えられた励起光源のディザ周波数のみを通過させるフィルタである。
【0114】
次に、第7実施形態の光ファイバ増幅器の動作の例について説明する。第7実施形態においても第1実施形態と同様、光合波器41は光合分波器の出力端から出力された励起光を光信号Linに合成させる。
【0115】
しかし、第7実施形態においては、光信号Linに合成される励起光にはディザ周波数のトーンが乗せられている。トーンが乗った励起光は、マルチコア光ファイバ21における希土類イオン(本例ではエルビウムイオン)の添加範囲を通過することで、光信号Linの信号強度は増幅される。このとき、ディザ信号印加部72によって励起光源31は変調される。しかし、与えられる変調周波数は、例えば10kHz程であり、マルチコア光ファイバ21の応答時間よりも十分に早いため、マルチコア光ファイバ21内を通過する信号光が変調されることはない。そのため、信号光の品質劣化が生ずることはない。この様子を図11に示す。
【0116】
ここで、ディザ信号印加部72からの変調信号が励起光源31に与えられる様態は、励起光源31の駆動電流を変調する直接変調方式であっても、励起光源31から出力された励起光を励起光源とは別に設けられた変調器を用いて変調する外部変調方式であってもよい。
【0117】
そして、マルチコア光ファイバ21を通過した残留励起光は、光分岐部42によって信号光Loutから分岐され、励起光強度モニタ51bによって電気信号に変換される。バンドパスフィルタ73は、光電変換後の電気信号のディザ周波数成分のみを通過させる。
【0118】
励起光強度モニタ51bは、残留励起光のディザ周波数成分を自乗検波する、あるいは絶対値をとる等の手法を用いて残留励起光のディザ周波数成分のみをモニタする。
【0119】
本実施形態によれば、主信号が変調されることなく、励起光波長周辺に存在する自然放出光雑音成分を除去することが可能となり、励起光の信号光強度対雑音比が向上することで、残留光の高感度検出が可能となる。その結果、残留光強度から信号光の帯域を算出する際の精度が向上する。本実施形態による検出精度向上の効果を図12に示す。
【0120】
〔第8実施形態〕
さらに、実施形態の他の変形例について説明する。図9は、第8実施形態の光ファイバ増幅器の構成例を示すブロック図であり、光ファイバの吸収帯へと励起光波長を制御することで、増幅器モジュールの低消費電力動作を可能とするものである。第1実施形態で示した構成要素と同様の構成要素については、同一の符号を付し説明を省略する。
【0121】
第8実施形態の光ファイバ増幅器は、第1実施形態の光ファイバ増幅器が備える構成要素に加え、ヒータ74、およびファイバブラッグ回折格子75を備える。また、第1実施形態の光源駆動回路制御装置61は、ヒータ制御装置61cに置き換えている。
【0122】
次に、ヒータ制御装置61c、ヒータ74、およびファイバブラッグ回折格子75について説明する。ヒータ制御装置61cは、励起光強度モニタ51からの残留励起光強度に関する電気信号を通知される。すると、ヒータ制御装置61cは、ヒータ74を駆動する。ヒータ74は、ファイバブラッグ回折格子75を加熱、あるいは冷却する装置である。ファイバブラッグ回折格子75は、光ファイバのコアの屈折率に周期的な屈折率変化が形成されているファイバ型デバイスであり、ひずみ量や温度変化に比例して透過波長がシフトするため、光フィルタとしての機能を持っているデバイスである。ただし、ひずみ量や温度変化に比例して透過波長がシフトするデバイスは、ファイバブラッグ回折格子以外のデバイスであってもよい。また、ファイバブラッグ回折格子75の透過波長を制御する装置は、図9のヒータ74に限られるものではなく、ヒータ74以外の装置であってもよい。
【0123】
次に、第8実施形態の光ファイバ増幅器の動作の例について説明する。第8実施形態においても第1実施形態と同様、光合波器41は、光合分波器の出力端から出力された励起光を、光信号Linに合成させる。励起光が合成された光信号Linは、マルチコア光ファイバ21を通過することで、光信号Linの信号強度は増幅される。そして、光信号Loutとして出力される。
【0124】
このとき、光分岐部42は光信号Loutとともに光ファイバ92a内を伝播する残留励起光を分岐する。そして、励起光強度モニタ51がヒータ制御装置61cに励起光強度を通知する。ヒータ制御装置61cは、励起光強度モニタ51から通知された信号強度によって、残留励起光強度が所定の強度(最小強度)になっていることを確認する。残留励起光強度が所定の強度になっていなければ、ヒータ制御装置61cは所定値になるようヒータ74を制御し、ファイバブラッグ回折格子の透過波長を制御する。
【0125】
本実施形態によれば、マルチコア光ファイバ21の吸収帯が狭く、吸収帯へと正確に波長を制御する必要がある場合に、残留光強度が最小となるようファイバブラッグ回折格子75を制御し、励起光波長を制御する。これにより、マルチコア光ファイバ21での励起光吸収効率が向上し、増幅器モジュールの低消費電力動作が可能となる。
【0126】
〔その他の実施形態〕
以上、本発明の好ましい実施形態や実施形態の変形例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、光合波器41をエルビウムイオンの添加範囲内に設けて、光分岐部42はエルビウムイオンの添加範囲外に設けた場合で説明したが、本発明はこれに限られるものではない。光合波器41および光分岐部42のいずれか一方あるいは両方が、マルチコア光ファイバ21におけるエルビウムイオンの添加範囲外に設けられる構成であってもよい。また、上述した実施形態では主に、光合波器41が、励起光を信号光の伝播方向と同一になる前方励起の態様で光信号Linに合成させる場合を示したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば第5実施形態として説明した図6に示すように、光合波器41aが、励起光を信号光の伝播方向と逆になる後方励起の態様で光信号Linに合成させてもよい。すなわち、光分岐部42aが、光合波器41よりも上流側に設けられる。光合波器41aは、励起光源31から出力された励起光を上流側に伝搬させるようにして、励起光を光信号Linに合成させる。また、上述した実施形態では、マルチコア光ファイバ21内での信号光の伝播方向が同一方向である場合を示した。マルチコア光ファイバ21内を伝播する信号光の向きは上り、下りの逆方向であってもよい。本発明は、請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲に含まれることはいうまでもない。
【0127】
以上、上述した実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【0128】
この出願は、2018年3月9日に出願された日本出願特願2018-42743号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0129】
11、111~11N、12、121~12N 光アイソレータ
21 マルチコア光ファイバ
31 励起光源
321~32N コア個別励起用励起光源
41 光合波器
42、42a 光分岐部
431~43N 光合波器
44 コア伝播励起光分岐部
51 励起光強度モニタ
51a コア伝播励起光強度モニタ
51b 励起光強度モニタ
61 光源駆動回路制御装置
61a 光源駆動回路制御装置
61b 光合分波器駆動制御装置
61c ヒータ制御装置
62 最適比記憶装置
71 光源駆動回路
81 ファイババンドルファンアウト
82 ファイババンドルファンイン
91a、92a 光ファイバ
911~91N シングルコアファイバ
921~92N シングルコアファイバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12