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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】濾過装置及び濾過方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/20 20060101AFI20221213BHJP
   B01D 29/11 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B01D39/20 A
B01D29/10 510D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020538180
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(86)【国際出願番号】 JP2019020622
(87)【国際公開番号】W WO2020039677
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2020-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2018155944
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018196415
(32)【優先日】2018-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019003726
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 孝志
(72)【発明者】
【氏名】村田 諭
(72)【発明者】
【氏名】川口 敏和
(72)【発明者】
【氏名】西川 美和子
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-155908(JP,U)
【文献】特開2017-177106(JP,A)
【文献】実公昭43-001516(JP,Y1)
【文献】特開平07-039704(JP,A)
【文献】特開2019-058894(JP,A)
【文献】特表2005-504625(JP,A)
【文献】特開2013-116463(JP,A)
【文献】特開2010-260020(JP,A)
【文献】実公昭17-008306(JP,Y1)
【文献】国際公開第2017/104259(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00-41/04
B01D 24/00-35/04
35/10-37/04
C12M 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端と他端とを有し、前記一端に開口を設けると共に、前記他端に端壁を設けた筒状体と、
前記筒状体の外周部に設けられ、複数の貫通孔を有する濾過部と、
を備え、
前記筒状体は、前記筒状体の内部と外部とを連通する複数の開口を画定する複数の枠部材を有し、
前記濾過部は、円筒状のフィルタであり、前記複数の枠部材の外周に取り付けられ
前記複数の枠部材のそれぞれは、前記筒状体の前記外周部の途中に、前記筒状体の高さ方向に延びる棒状に形成されており、
前記複数の枠部材は、互いに間隔を有して設けられている、
濾過装置。
【請求項2】
前記濾過部は、前記筒状体の前記外周部の全周にわたって設けられている、請求項1に記載の濾過装置。
【請求項3】
前記濾過部は、前記筒状体の前記外周部の半周以下の領域に設けられている、請求項1に記載の濾過装置。
【請求項4】
前記筒状体の前記一端は、前記他端よりも高い位置に配置され、
前記筒状体の前記他端側において前記濾過部の下方に設けられた液溜まり部を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の濾過装置。
【請求項5】
前記筒状体の前記一端と前記他端とを結ぶ方向と直交する方向に沿って前記液溜まり部を切断したときの前記液溜まり部の前記他端側の開口断面積は、前記液溜まり部の前記濾過部側の開口断面積に比べて小さい、請求項4に記載の濾過装置。
【請求項6】
前記液溜まり部の内壁は、前記筒状体の前記他端側に向かって傾斜する傾斜部を有する、請求項5に記載の濾過装置。
【請求項7】
前記傾斜部は、前記筒状体の中央に向かって傾斜している、請求項6に記載の濾過装置。
【請求項8】
前記液溜まり部の外壁は、前記筒状体の前記他端側に向かって突設する突設部を有する、請求項4~7のいずれか一項に記載の濾過装置。
【請求項9】
前記突設部の側面は、前記筒状体の中央に向かって傾斜している、請求項8に記載の濾過装置。
【請求項10】
更に、前記筒状体の前記他端側に配置される液体保持容器を備える、請求項1~のいずれか一項に記載の濾過装置。
【請求項11】
前記筒状体は、内部を視認可能な樹脂で形成されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の濾過装置。
【請求項12】
前記濾過部は、金属及び金属酸化物のうち少なくともいずれかを主成分とするフィルタで形成される、請求項1~11のいずれか一項に記載の濾過装置。
【請求項13】
一端と他端とを有し、前記一端に開口を設けると共に、前記他端に端壁を設けた筒状体と、前記筒状体の外周部に設けられ、複数の貫通孔を有する濾過部と、前記筒状体の前記他端において前記濾過部の下方に設けられ、濾過対象物と液体とを貯留する液溜まり部と、を備え、前記筒状体は、前記筒状体の内部と外部とを連通する複数の開口を画定する複数の枠部材を有し、前記濾過部は、円筒状のフィルタであり、前記複数の枠部材の外周に取り付けられ、前記複数の枠部材のそれぞれは、前記筒状体の前記外周部の途中に、前記筒状体の高さ方向に延びる棒状に形成されており、前記複数の枠部材は、互いに間隔を有して設けられている、濾過装置を準備するステップ、
濾過対象物を含む液体を前記濾過装置に導入するステップ、
前記濾過対象物と前記液体とを前記液溜まり部に貯留するステップ、
前記濾過部で前記濾過対象物を捕捉すると共に前記濾過部から前記液体を排出するステップ、
前記液溜まり部に貯留された前記濾過対象物と前記液体とを回収するステップ、を含む、濾過方法。
【請求項14】
前記濾過装置は、前記筒状体の前記他端側に配置される液体保持容器を備え、
前記濾過部から前記液体を排出するステップは、前記濾過部から排出された前記液体を前記液体保持容器に保持すること、を含む、請求項13に記載の濾過方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過装置及び濾過方法に関する。
【背景技術】
【0002】
濾過対象物を含む液体を濾過する装置として、例えば、特許文献1に記載のオンライン測定用前処理装置が知られている。特許文献1に記載の装置は、水系における水質をオンラインで測定する際の前処理装置であって、クロスフロー濾過方式で濾過する外圧式中空糸膜が備えられた濾過手段を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-210239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、濾過を効率良く行うことが求められている。
【0005】
本発明は、濾過を効率良く行うことができる濾過装置及び濾過方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の濾過装置は、
一端と他端とを有し、前記一端に開口を設けると共に、前記他端に端壁を設けた筒状体と、
前記筒状体の外周部に設けられ、複数の貫通孔を有する濾過部と、を備える。
【0007】
本発明の一態様の濾過方法は、
一端と他端とを有し、前記一端に開口を設けると共に、前記他端に端壁を設けた筒状体と、前記筒状体の外周部に設けられ、複数の貫通孔を有する濾過部と、前記筒状体の前記他端において前記濾過部の下方に設けられ、濾過対象物と液体とを貯留する液溜まり部と、を備える濾過装置を準備するステップ、
濾過対象物を含む液体を前記濾過装置に導入するステップ、
前記濾過対象物と前記液体とを前記液溜まり部に貯留するステップ、
前記濾過部で前記濾過対象物を捕捉すると共に前記濾過部から前記液体を排出するステップ、
前記液溜まり部に貯留された前記濾過対象物と前記液体とを回収するステップ、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、濾過を効率良く行うことができる濾過装置及び濾過方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る実施の形態1の濾過装置の一例の概略斜視図である。
図2】本発明に係る実施の形態1の濾過装置の一例の概略正面図である。
図3】本発明に係る実施の形態1の濾過装置の一例の概略断面図である。
図4】本発明に係る実施の形態1の濾過装置から濾過部を除いた構成の一例を示す概略図である。
図5】例示的な濾過部の一部の拡大斜視図である。
図6図5の濾過部の一部を厚み方向から見た概略図である。
図7】本発明に係る実施の形態1の濾過装置の使用状態の一例の概略構成図である。
図8】本発明に係る実施の形態1の濾過装置の使用状態の一例の概略断面図である。
図9】本発明に係る実施の形態1の濾過方法の一例のフローチャートである。
図10A】本発明に係る実施の形態1の濾過方法の工程の一例を示す図である。
図10B】本発明に係る実施の形態1の濾過方法の工程の一例を示す図である。
図10C】本発明に係る実施の形態1の濾過方法の工程の一例を示す図である。
図10D】本発明に係る実施の形態1の濾過方法の工程の一例を示す図である。
図10E】本発明に係る実施の形態1の濾過方法の工程の一例を示す図である。
図10F】本発明に係る実施の形態1の濾過方法の工程の一例を示す図である。
図11A】本発明に係る実施の形態1の変形例の濾過装置の概略図である。
図11B】本発明に係る実施の形態1の変形例の濾過装置の概略図である。
図12】本発明に係る実施の形態1の変形例の濾過装置の概略構成図である。
図13】本発明に係る実施の形態1の変形例の濾過装置の概略断面図である。
図14】本発明に係る実施の形態1の変形例の濾過装置の概略図である。
図15A】本発明に係る実施の形態1の変形例の濾過装置の概略図である。
図15B】本発明に係る実施の形態1の変形例の濾過装置の概略図である。
図15C】本発明に係る実施の形態1の変形例の濾過装置の概略図である。
図16A】本発明に係る実施の形態1の変形例の濾過装置の概略図である。
図16B】本発明に係る実施の形態1の変形例の濾過装置の概略分解図である。
図17】本発明に係る実施の形態1の変形例の濾過装置の概略図である。
図18】本発明に係る実施の形態2の濾過方法の一例のフローチャートである。
図19A】本発明に係る実施の形態2の濾過方法の工程の一例を示す図である。
図19B】本発明に係る実施の形態2の濾過方法の工程の一例を示す図である。
図19C】本発明に係る実施の形態2の濾過方法の工程の一例を示す図である。
図19D】本発明に係る実施の形態2の濾過方法の工程の一例を示す図である。
図19E】本発明に係る実施の形態2の濾過方法の工程の一例を示す図である。
図19F】本発明に係る実施の形態2の濾過方法の工程の一例を示す図である。
図19G】本発明に係る実施の形態2の濾過方法の工程の一例を示す図である。
図19H】本発明に係る実施の形態2の濾過方法の工程の一例を示す図である。
図19I】本発明に係る実施の形態2の濾過方法の工程の一例を示す図である。
図20】本発明に係る実施の形態3の濾過システムの一例の概略斜視図である。
図21】本発明に係る実施の形態3の濾過システムの一例の概略正面図である。
図22図21の濾過システムをA-A線で切断した概略断面図である。
図23A】本発明に係る実施の形態3の濾過システムの動作の一例を示す図である。
図23B】本発明に係る実施の形態3の濾過システムの動作の一例を示す図である。
図23C】本発明に係る実施の形態3の濾過システムの動作の一例を示す図である。
図23D】本発明に係る実施の形態3の濾過システムの動作の一例を示す図である。
図23E】本発明に係る実施の形態3の濾過システムの動作の一例を示す図である。
図24】本発明に係る実施の形態3の変形例の濾過システムの概略図である。
図25】本発明に係る実施の形態3の変形例の濾過システムの概略図である。
図26A】本発明に係る実施の形態3の変形例の濾過システムの動作の一例を示す図である。
図26B】本発明に係る実施の形態3の変形例の濾過システムの動作の一例を示す図である。
図26C】本発明に係る実施の形態3の変形例の濾過システムの動作の一例を示す図である。
図26D】本発明に係る実施の形態3の変形例の濾過システムの動作の一例を示す図である。
図26E】本発明に係る実施の形態3の変形例の濾過システムの動作の一例を示す図である。
図27】本発明に係る実施の形態4の濾過方法の一例のフローチャートである。
図28A】本発明に係る実施の形態4の濾過方法の工程の一例を示す図である。
図28B】本発明に係る実施の形態4の濾過方法の工程の一例を示す図である。
図28C】本発明に係る実施の形態4の濾過方法の工程の一例を示す図である。
図28D】本発明に係る実施の形態4の濾過方法の工程の一例を示す図である。
図29】本発明に係る実施の形態5の濾過装置の一例の概略断面図である。
図30】本発明に係る実施の形態5の濾過方法の一例のフローチャートである。
図31A】本発明に係る実施の形態5の濾過方法の工程の一例を示す図である。
図31B】本発明に係る実施の形態5の濾過方法の工程の一例を示す図である。
図31C】本発明に係る実施の形態5の濾過方法の工程の一例を示す図である。
図31D】本発明に係る実施の形態5の濾過方法の工程の一例を示す図である。
図32】本発明に係る実施の形態5の変形例の濾過装置の一例の概略断面図である。
図33】本発明に係る実施の形態5の変形例の濾過装置の動作の一例の概略断面図である。
図34】本発明に係る実施の形態6の濾過装置の一例の概略断面図である。
図35A】本発明に係る実施の形態6の濾過装置の動作の一例を示す図である。
図35B】本発明に係る実施の形態6の濾過装置の動作の一例を示す図である。
図36】本発明に係る実施の形態6の変形例の濾過装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本発明に至った経緯)
濾過装置を用いた濾過対象物の濾過において、濾過対象物が細胞である場合、濾過完了後に細胞が大気に曝された状態で回収されると、細胞の活性が低下する。このため、濾過完了後に細胞が液体に浸漬された状態で、細胞を回収することが求められている。
【0011】
また、クロスフロー濾過方式で濾過を行う濾過装置においては、例えば、ポンプ、配管、濾過部及び容器などを用いて循環経路を構成している。このような構成においては、容器に貯留された濾過対象物を含む液体をポンプによって配管内に供給する。配管内に供給された液体が濾過部が設けられている部分を流れる際に、クロスフロー濾過が行われる。クロスフロー濾過においては、配管内を流れる液体の一部が濾過部から配管の外に排出され、配管内を流れる残りの液体が容器内に戻る。
【0012】
このようなクロスフロー濾過方式においては、濾過が終了した後、配管などの循環流路に濾過対象物及び液体が残った状態となり、循環流路に残存した濾過対象物を回収することが困難である。また、濾過対象物と共に液体を回収する場合、回収する液体の液量を制御することができない。さらに、クロスフロー濾過方式において濾過を行う場合、装置の構成が複雑になる。
【0013】
そこで、本発明者らは、このような問題を解決するべく、濾過を効率良く行うことができる濾過装置及び濾過方法を検討し、以下の発明に至った。
【0014】
本発明の一態様の濾過装置は、
一端と他端とを有し、前記一端に開口を設けると共に、前記他端に端壁を設けた筒状体と、
前記筒状体の外周部に設けられ、複数の貫通孔を有する濾過部と、を備える。
【0015】
このような構成により、濾過を効率良く行うことができる。
【0016】
前記濾過装置において、前記濾過部は、前記筒状体の前記外周部の全周にわたって設けられていてもよい。
【0017】
このような構成により、短時間で濾過を行うことができる。
【0018】
前記濾過装置において、前記濾過部は、前記筒状体の前記外周部の半周以下の領域に設けられていてもよい。
【0019】
このような構成により、濾過を行う位置を容易に変更することができ、濾過を効率良く行うことができる。
【0020】
前記濾過装置において、前記筒状体の前記一端は、前記他端よりも高い位置に配置され、
前記筒状体の前記他端側において前記濾過部の下方に設けられた液溜まり部を備えてもよい。
【0021】
このような構成により、濾過対象物を容易に回収することができる。
【0022】
前記濾過装置において、前記筒状体の前記一端と前記他端とを結ぶ方向に沿って前記液溜まり部を切断したときの前記液溜まり部の前記他端側の開口断面積は、前記液溜まり部の前記濾過部側の開口断面積に比べて小さくてもよい。
【0023】
このような構成により、濾過対象物と液体とが液溜まり部に貯留されやすくなり、濾過対象物をより容易に回収することができる。
【0024】
前記濾過装置において、前記液溜まり部の内壁は、前記筒状体の前記他端側に向かって傾斜する傾斜部を有していてもよい。
【0025】
このような構成により、濾過対象物と液体とが液溜まり部に貯留されやすくなり、濾過対象物をより容易に回収することができる。
【0026】
前記濾過装置において、前記傾斜部は、前記筒状体の中央に向かって傾斜していてもよい。
【0027】
このような構成により、濾過対象物をより容易に回収することができる。
【0028】
前記濾過装置において、前記液溜まり部の外壁は、前記筒状体の前記他端側に向かって突設する突設部を有していてもよい。
【0029】
このような構成により、濾過部から筒状体の外部に排出された液体が液溜まり部の外壁に沿って流れる。これにより、濾過部から筒状体の外部に排出された液体が飛散することを抑制することができる。
【0030】
前記濾過装置において、前記突設部の側面は、前記筒状体の中央に向かって傾斜していてもよい。
【0031】
このような構成により、濾過部から筒状体の外部に排出された液体が飛散することをより抑制することができる。
【0032】
前記濾過装置において、前記筒状体は、前記筒状体の内部と外部とを連通する複数の開口を画定する複数の枠部材を有し、
前記濾過部は、円筒状のフィルタであり、前記複数の枠部材に取り付けられていてもよい。
【0033】
このような構成により、筒状体の外周部に濾過部を容易に設けることができる。
【0034】
前記濾過装置において、更に、前記筒状体の前記他端側に配置される液体保持容器を備えていてもよい。
【0035】
このような構成により、濾過部から筒状体の外部に排出される液体を受けることができる。
【0036】
前記濾過装置において、前記筒状体は、内部を視認可能な樹脂で形成されていてもよい。
【0037】
このような構成により、液溜まり部に貯留された濾過対象物と液体とを目視で確認することができる。
【0038】
前記濾過装置において、前記濾過部は、金属及び金属酸化物のうち少なくともいずれかを主成分とするフィルタで形成されていてもよい。
【0039】
このような構成により、短時間で濾過を行うことができる。
【0040】
本発明の一態様の濾過方法は、
一端と他端とを有し、前記一端に開口を設けると共に、前記他端に端壁を設けた筒状体と、前記筒状体の外周部に設けられ、複数の貫通孔を有する濾過部と、前記筒状体の前記他端において前記濾過部の下方に設けられ、濾過対象物と液体とを貯留する液溜まり部と、を備える濾過装置を準備するステップ、
濾過対象物を含む液体を前記濾過装置に導入するステップ、
前記濾過対象物と前記液体とを前記液溜まり部に貯留するステップ、
前記濾過部で前記濾過対象物を捕捉すると共に前記濾過部から前記液体を排出するステップ、
前記液溜まり部に貯留された前記濾過対象物と前記液体とを回収するステップ、を含む。
【0041】
このような構成により、濾過を効率良く行うことができる。
【0042】
前記濾過方法において、前記濾過装置は、前記筒状体の前記他端側に配置される液体保持容器を備え、
前記濾過部から前記液体を排出するステップは、前記濾過部から排出された前記液体を前記液体保持容器に保持すること、を含んでもよい。
【0043】
このような構成により、濾過部から筒状体の外部に排出される液体を受けることができる。
【0044】
以下、本発明に係る実施の形態1について、添付の図面を参照しながら説明する。また、各図においては、説明を容易なものとするため、各要素を誇張して示している。
【0045】
(実施の形態1)
[全体構成]
図1は、本発明に係る実施の形態1の濾過装置1Aの一例の概略斜視図である。図2は、本発明に係る実施の形態1の濾過装置1Aの一例の概略正面図である。図3は、本発明に係る実施の形態1の濾過装置1Aの一例の概略断面図である。図中のX、Y、Z方向は、それぞれ濾過装置1Aの横方向、縦方向、高さ方向を示している。
【0046】
図1-3に示すように、濾過装置1Aは、一端と他端とを有する筒状体10と、筒状体10の外周部11に設けられ、複数の貫通孔を有する濾過部20と、を有する。
【0047】
濾過装置1Aでは、筒状体10の一端は、他端よりも高い位置に配置されている。例えば、筒状体10は鉛直方向(Z方向)に沿って配置されており、筒状体10の一端が他端より上方に配置される。筒状体10の一端には、開口13が設けられている。筒状体10の他端には、他端を閉じる端壁12が設けられている。筒状体10の他端が端壁12により閉じられることによって、濾過部20の下方に液溜まり部30が形成されている。液溜まり部30は、濾過対象物と液体とを貯留する。
【0048】
このように、実施の形態1では、濾過装置1Aは、有底の筒状体10と、濾過部20と、液溜まり部30と、を備える。筒状体10は、外周部11と、外周部11の下端(他端)を閉じる端壁12とを有する。濾過部20は、筒状体10の外周部11に設けられており、且つ複数の貫通孔を有する。液溜まり部30は、筒状体10の他端側において濾過部20の下方に設けられており、且つ濾過対象物と液体とを貯留する。
【0049】
<筒状体>
筒状体10は、一端と他端とを有し、一端に開口13を設けると共に、他端に端壁12を設けている。実施の形態1では、筒状体10は、上部に開口13を有する有底の容器である。実施の形態1では、筒状体10は、円筒形状を有する。筒状体10は、外周部11と、外周部11の下端(他端)を閉じる端壁12を備え、筒状体10の外周部11には、複数の貫通孔を有する濾過部20が設けられている。
【0050】
実施の形態1では、筒状体10が鉛直方向(Z方向)に沿って配置されている。このため、外周部11は筒状体10の側壁として機能し、端壁12は筒状体10の底部として機能する。
【0051】
開口13は、濾過対象物を含む液体が流入する流入口であると共に、濾過対象物を含む液体が流出する流出口である。濾過装置1Aでは、開口13は、濾過対象物を含む液体を導入する流入口として機能する。
【0052】
図4は、本発明に係る実施の形態1の濾過装置1Aから濾過部20を除いた構成の一例を示す概略図である。図4に示すように、筒状体10の外周部11には、筒状体10の内部と外部とを連通する複数の開口15を画定する複数の枠部材14が設けられている。具体的には、筒状体10の外周部11の途中に、筒状体10の高さ方向(Z方向)に延びる複数の枠部材14が設けられている。複数の枠部材14は、棒状に形成されており、互いに間隔を有して設けられている。複数の枠部材14の間のそれぞれには、開口15が形成されている。
【0053】
実施の形態1では、筒状体10の外周部11の途中に、3つの枠部材14が等間隔で設けられている。これらの3つの枠部材14が間隔を有して配置されることによって、3つの開口15が形成されている。なお、側面視において、開口15の開口面積は、枠部材14の外面の表面積よりも大きい。
【0054】
図1-3に示すように、筒状体10の端壁12には、濾過対象物と液体とを貯留する液溜まり部30が設けられている。図3に示すように、液溜まり部30の内壁33は、端壁12の内面16を筒状体10の高さ方向(Z方向)に窪ませて形成されている。具体的には、液溜まり部30の内壁33は、筒状体10の端壁12の内面16を鉛直下方向に凹状に窪ませて形成されている。
【0055】
液溜まり部30は、濾過部20の下方に設けられている。実施の形態1では、液溜まり部30は、濾過部20よりも下方に位置する筒状体10の外周部11と端壁12とで形成されている。言い換えると、液溜まり部30は、濾過部20の最下端から下方の筒状体10の部分で形成されている。
【0056】
筒状体10の一端と他端とを結ぶ方向(Z方向)と直交する方向(XY方向)に沿って液溜まり部30を切断したときの液溜まり部30における筒状体10の他端側の開口断面積Sa2は、液溜まり部30における濾過部20側の開口断面積Sa1と比べて小さい。即ち、筒状体10の高さ方向(Z方向)と直交する方向(XY方向)に沿って液溜まり部30を切断したときの液溜まり部30の下部の開口断面積Sa2は、液溜まり部30の上部の開口断面積Sa1と比べて小さい。なお、液溜まり部30の下部とは、液溜まり部30の底部(最下端部32)に近い部分を意味し、液溜まり部30の上部とは、液溜まり部30の開口を意味する。実施の形態1では、筒状体10の高さ方向(Z方向)と直交する方向(XY方向)に沿って液溜まり部30を切断したときの液溜まり部30の開口断面積は、筒状体10の他端側、即ち下方に向かって小さくなっている。なお、液溜まり部30の開口断面積は、筒状体10の他端側、即ち下方に向かって、段階的に小さくなってもよいし、連続的に小さくなってもよい。
【0057】
具体的には、液溜まり部30は、筒状体10の外周部11と端壁12とが接続される接続部31と、接続部31の下方に形成される最下端部32と、を有する。なお、最下端部32は、液溜まり部30の最も下方に位置する部分を意味する。
【0058】
筒状体10の高さ方向(Z方向)と直交する方向(XY方向)に沿って液溜まり部30を切断したときの液溜まり部30の開口断面積は、接続部31から最下端部32に向かって小さくなっている。
【0059】
実施の形態1では、液溜まり部30の内壁33は、筒状体10の他端側、即ち下方に向かって傾斜する傾斜部35を有している。また、傾斜部35は、筒状体10の中央に向かって傾斜している。具体的には、液溜まり部30の内壁33は、円錐状に窪んでいる。
【0060】
液溜まり部30の内部の空間S1には、濾過対象物と液体とが貯留される。空間S1の大きさは、濾過終了後に回収したい液量に基づいて決定される。即ち、液体の回収量に基づいて、空間S1の大きさを設計する。
【0061】
液溜まり部30の外壁34は、筒状体10の端壁12の外面17を筒状体10の高さ方向(Z方向)に突設させて形成されている。具体的には、液溜まり部30の外壁34は、鉛直下方向に凸状に突設させて形成されている。
【0062】
濾過装置1Aを側面から見て、液溜まり部30の外壁34は、筒状体10の他端側、即ち下方に向かって細くなっている。具体的には、液溜まり部30の外壁34は、接続部31から最下端部32に向かって細くなっている。
【0063】
実施の形態1では、液溜まり部30の外壁34は、筒状体10の他端側、即ち下方に向かって突設する突設部36を有する。また、突設部36の側面は、筒状体10の中央に向かって傾斜している。具体的には、液溜まり部30の外壁34は、円錐状に突設している。
【0064】
このように、実施の形態1では、液溜まり部30の内壁33と外壁34とは、同様の形状を有する。即ち、液溜まり部30は、外部及び内部のいずれの形状においても円錐形状を有している。また、液溜まり部30は、外部及び内部のいずれの形状においても円錐形状の先端は丸められている。
【0065】
筒状体10は、内部を視認可能な樹脂で形成されている。筒状体10は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、PEEKなどの材料で形成されている。
【0066】
<濾過部>
濾過部20は、筒状体10の外周部11に設けられる複数の貫通孔を有するフィルタである。濾過部20は、濾過対象物を含む液体を濾過する部分である。具体的には、濾過部20は、濾過対象物を捕捉すると共に液体を通過させる部分である。
【0067】
本明細書において、「濾過対象物」とは、液体に含まれる対象物のうち濾過されるべき対象物を意味している。例えば、濾過対象物は、液体に含まれる生物由来物質であってもよい。「生物由来物質」とは、細胞(真核生物)、細菌(真性細菌)、ウィルス等の生物に由来する物質を意味する。細胞(真核生物)としては、例えば、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、ES細胞、幹細胞、間葉系幹細胞、単核球細胞、単細胞、細胞塊、浮遊性細胞、接着性細胞、神経細胞、白血球、再生医療用細胞、自己細胞、がん細胞、血中循環がん細胞(CTC)、HL-60、HELA、菌類を含む。細菌(真性細菌)としては、例えば、大腸菌、結核菌を含む。
【0068】
実施の形態1では、1つの例として、液体は細胞懸濁液であり、濾過対象物は細胞として説明する。
【0069】
実施の形態1では、濾過部20は、円筒形状のフィルタである。濾過部20は、筒状体10の外周部11の途中に設けられた複数の枠部材14に取り付けられる。例えば、第1主面と第1主面に対向する第2主面とを有する矩形状の板状構造体で形成されたフィルタを、複数の枠部材14に巻き付けることによって筒状体10の外周部11に取り付ける。即ち、濾過部20は、筒状体10の外周部11の周囲を囲んで設けられている。このように、濾過部20は、筒状体10の外周部11の全周にわたって設けられている。
【0070】
濾過部20を形成するフィルタは、金属製フィルタである。具体的には、濾過部20を形成するフィルタは、金属及び金属酸化物のうち少なくともいずれかを主成分とする。濾過部20は、例えば、金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム、チタン、これらの合金及びこれらの酸化物で形成されていてもよい。
【0071】
図5は、例示的な濾過部20の一部の拡大斜視図である。図6は、図5の濾過部20の一部を厚み方向から見た概略図である。
【0072】
図5及び図6に示すように、濾過部20は、第1主面PS1と、第1主面PS1に対向する第2主面PS2とを有する板状構造体のフィルタで形成されている。実施の形態1では、濾過部20は、板状構造体のフィルタを丸めることによって円筒状に形成されている。なお、第1主面PS1は、円筒状の濾過部20の外面側に位置し、第2主面PS2は円筒状の濾過部20の内面側に位置する。
【0073】
濾過部20には、第1主面PS1と第2主面PS2とを貫通する複数の貫通孔21が形成されている。具体的には、濾過部20を構成するフィルタ基体部22に、複数の貫通孔21が形成されている。
【0074】
複数の貫通孔21は、濾過部20の第1主面PS1及び第2主面PS2上に周期的に配置されている。具体的には、複数の貫通孔21は、濾過部20においてマトリクス状に等間隔で設けられている。
【0075】
実施の形態1では、貫通孔21は、濾過部20の第1主面PS1側、即ち濾過装置1AのX方向から見て、正方形の形状を有する。なお、貫通孔21は、X方向から見た形状が正方形に限定されず、例えば長方形、円形、又は楕円などの形状であってもよい。
【0076】
実施の形態1では、複数の貫通孔21は、濾過部20の第1主面PS1側(X方向)から見て正方形の各辺と平行な2つの配列方向、即ち図6中のY方向とZ方向に等しい間隔で設けられている。このように、複数の貫通孔21を正方格子配列で設けることによって、開口率を高めることが可能であり、濾過部20に対する液体の通過抵抗を低減することができる。このような構成により、濾過の時間を短くし、濾過対象物(細胞)へのストレスを低減することができる。
【0077】
なお、複数の貫通孔21の配列は、正方格子配列に限定されず、例えば、準周期配列、又は周期配列であってもよい。周期配列の例としては、方形配列であれば、2つの配列方向の間隔が等しくない長方形配列でもよく、三角格子配列又は正三角格子配列などであってもよい。なお、貫通孔21は、濾過部20に複数設けられていればよく、配列は限定されない。
【0078】
複数の貫通孔21の間隔は、濾過対象物である細胞の種類(大きさ、形態、性質、弾性)又は量に応じて適宜設計されるものである。ここで、貫通孔21の間隔とは、図6に示すように、貫通孔21を濾過部20の第1主面PS1側から見て、任意の貫通孔21の中心と隣接する貫通孔21の中心との間隔bを意味する。周期配列の構造体の場合、貫通孔21の間隔bは、例えば、貫通孔21の一辺dの1倍より大きく10倍以下であり、好ましくは貫通孔21の一辺dの3倍以下である。あるいは、例えば、濾過部20の開口率は、10%以上であり、好ましくは開口率は、25%以上である。このような構成により、濾過部20に対する液体の通過抵抗を低減することができる。そのため、処理時間を短くすることができ、濾過対象物である細胞へのストレスを低減することができる。なお、開口率とは、(貫通孔21が占める面積)/(貫通孔21が空いていないと仮定したときの第1主面PS1の投影面積)で計算される。
【0079】
濾過部20の厚みは、貫通孔21の大きさ(一辺d)の0.1倍より大きく100倍以下が好ましい。より好ましくは、濾過部20の厚みは、貫通孔21の大きさ(一辺d)の0.5倍より大きく10倍以下である。このような構成により、液体に対する濾過部20の抵抗を低減することができ、濾過の時間を短くすることができる。その結果、濾過対象物へのストレスを低減することができる。
【0080】
濾過部20において、濾過対象物を含む液体が接触する面は、表面粗さが小さいことが好ましい。ここで、表面粗さとは、濾過対象物を含む液体が接触する面の任意の5箇所において触針式段差計で測定された最大値と最小値の差の平均値を意味する。実施の形態1では、表面粗さは、濾過対象物の大きさより小さいことが好ましく、濾過対象物の大きさの半分より小さいことがより好ましい。言い換えると、濾過部20の第2主面PS2上の複数の貫通孔21の開口が同一平面(YZ平面)上に形成されている。また、濾過部20のうち貫通孔21が形成されていない部分であるフィルタ基体部22は、繋がっており、一体に形成されている。このような構成により、濾過部20の第2主面PS2への濾過対象物の付着が低減され、液体の抵抗を低減することができる。
【0081】
実施の形態1では、濾過対象物を含む液体は、濾過部20の内側に配置される第2主面PS2から濾過部20の外側に配置される第1主面PS1に向かって流れる。このため、第2主面PS2の表面粗さが小さいことが好ましい。
【0082】
貫通孔21は、第1主面PS1側の開口と第2主面PS2側の開口とが連続した壁面を通じて連通している。具体的には、貫通孔21は、第1主面PS1側の開口が第2主面PS2側の開口に投影可能に設けられている。即ち、濾過部20を第1主面PS1側から見た場合に、貫通孔21は、第1主面PS1側の開口が第2主面PS2側の開口と重なるように設けられている。
【0083】
実施の形態1では、濾過部20は、直径12mm、高さ22mm、膜厚2μmの円筒形状のフィルタである。正方形状の貫通孔21の一辺dの大きさは、6μmである。濾過部20は、これらの寸法に限定されることなく、他の寸法で作製されていてもよい。
【0084】
図7は、本発明に係る実施の形態1の濾過装置1Aの使用状態の一例の概略構成図である。図8は、本発明に係る実施の形態1の濾過装置1Aの使用状態の一例の概略断面図である。図7及び図8に示すように、濾過装置1Aは、濾過部20を通過して筒状体10の外部を流れる液体を受ける液体保持容器40を備えてもよい。
【0085】
<液体保持容器>
液体保持容器40は、筒状体10の他端側、即ち下方に配置されている。液体保持容器40は、有底の容器である。具体的には、液体保持容器40は、底部41と、底部41の外縁から上方へ延びる側壁42とを有する。液体保持容器40の上部には、開口43が設けられている。実施の形態1では、液体保持容器40は、円筒形状に形成されている。液体保持容器40の内径は、筒状体10の外径よりも大きい。
【0086】
筒状体10は、液体保持容器40の開口43から液体保持容器40の内部に配置される。例えば、筒状体10は、筒状体10の径方向に延びるフランジを備えてもよい。フランジが液体保持容器40の上端に載置されることによって、筒状体10が液体保持容器40の内部に保持されてもよい。
【0087】
液体保持容器40は、例えば、遠沈管などであってもよい。
【0088】
[濾過方法]
濾過方法の一例を図9及び図10A~10Fを用いて説明する。図9は、本発明に係る実施の形態1の濾過方法の一例のフローチャートを示す。図10A~10Fは、本発明に係る実施の形態1の濾過方法の工程の一例を示す。
【0089】
図9及び図10Aに示すように、ステップST11において、濾過装置1Aを準備する。具体的には、筒状体10を液体保持容器40の内部に配置する。
【0090】
図9及び図10Bに示すように、ステップST12において、濾過装置1Aに濾過対象物61を含む液体60を導入する。具体的には、筒状体10の開口13から濾過対象物61を含む液体60を筒状体10の内部に導入する。
【0091】
図9及び図10Cに示すように、ステップST13において、筒状体10の液溜まり部30に濾過対象物61と液体60とを貯留する。
【0092】
図9及び図10Dに示すように、ステップST14において、濾過部20で濾過対象物61を捕捉すると共に濾過部20から液体60を排出する。これにより、濾過対象物61を含む液体60の濾過を行う。具体的には、筒状体10の開口13から濾過対象物61を含む液体60を筒状体10の内部に導入し続ける。濾過対象物61を含む液体60が液溜まり部30から溢れたときに、濾過対象物61が濾過部20で捕捉されることで筒状体10内部に留まる。一方、液溜まり部30から溢れた液体60は、濾過部20を通過し、筒状体10の外部へ排出される。
【0093】
濾過部20においては、液溜まり部30に貯留される濾過対象物61のうち、濾過部20の貫通孔21よりも大きい濾過対象物61は、濾過部20の貫通孔21を通過することができず、濾過部20に捕捉される。一方、液溜まり部30に貯留される濾過対象物61のうち、濾過部20の貫通孔21よりも小さい濾過対象物61は、濾過部20の貫通孔21を通過し、筒状体10の外部に排出される。
【0094】
実施の形態1では、ステップST14は、濾過部20から筒状体10の外部に排出された液体62を液体保持容器40によって保持することを含む。
【0095】
濾過部20から排出された液体60は、筒状体10の外壁を流れる。具体的には、液体60は、筒状体10の液溜まり部30の外壁34に沿って他端側、即ち下方に流れる。液溜まり部30の外壁34は円錐状に形成されているため、液体60は最下端部32に向かって流れる。そして、最下端部32から液体保持容器40の底部に落下し、液体保持容器40の内部に液体62が溜まっていく。これにより、筒状体10の外部に排出される液体60が液体保持容器40の内部で飛散するのを抑制することができる。
【0096】
図10Eに示すように、液溜まり部30の内部に濾過対象物61と液体60とが貯留された状態で濾過を終了する。具体的には、液溜まり部30内部の空間S1が濾過対象物61と液体60とで満たされた状態で濾過を終了する。
【0097】
図9及び図10Fに示すように、ステップST15において、液溜まり部30に貯留された濾過対象物61と液体60とを回収する。具体的には、回収器具70を用いて、液溜まり部30に貯留された濾過対象物61と液体60とを回収する。回収器具70は、例えば、ピペット又はシリンジであってもよい。
【0098】
液溜まり部30の内部の空間S1の容積は、回収したい液体60の液量と等しい。ここで、「等しい」とは10%の範囲内の誤差を含んでもよい。このため、液溜まり部30の内部に貯留された濾過対象物61と液体60とを回収器具70で回収することによって、所望の液量の濾過対象物61を含む液体60を回収することができる。
【0099】
[効果]
実施の形態1に係る濾過装置1A及び濾過回収方法によれば、以下の効果を奏することができる。
【0100】
濾過装置1Aは、一端と他端とを有し、一端に開口13を設けると共に、他端に端壁12を設けた筒状体10と、筒状体10の外周部11に設けられ、複数の貫通孔21を有する濾過部20と、を備える。具体的には、濾過装置1Aでは、筒状体10の一端が他端よりも高い位置に配置されている。このため、濾過装置1Aは、有底の筒状体10と、筒状体10の外周部11に設けられ、複数の貫通孔21を有する濾過部20と、筒状体10の他端側において濾過部20の下方に設けられ、濾過対象物61と液体60とを貯留する液溜まり部30と、を備える。このような構成により、濾過を効率的に行うことができる。
【0101】
例えば、筒状体10の上部に設けられた開口13から濾過対象物61を含む液体60を導入すると、濾過対象物61と液体60とが筒状体10の端壁12に設けられた液溜まり部30の内部に貯留される。このため、濾過を終了した後、液溜まり部30に貯留された濾過対象物61と液体60とを回収器具70によって回収することで、濾過対象物61を容易に回収することができる。濾過対象物が細胞である場合、濾過完了後に液体と共に細胞を回収することができるため、細胞が大気に曝されることを抑制することができる。これにより、回収時に細胞の活性が低下することを抑制することができる。
【0102】
また、濾過装置1Aでは、液体60と共に濾過対象物61を回収することができるため、大気中に曝された濾過対象物61を回収する場合に比べて、濾過対象物61を容易に回収することができる。濾過完了後に濾過対象物61を大気に曝して放置すると、濾過対象物61が濾過装置1Aに固着し、濾過対象物61の回収操作が煩雑になることがあるが、濾過完了後に濾過対象物61を液体60に浸漬した状態とすることで濾過対象物61が濾過装置1Aに固着することを抑制し、濾過対象物61の回収が容易になる。
【0103】
また、濾過装置1Aでは、特に凝集性物質が凝集してしまうことを抑制できる。なお、従来では、細胞懸濁液中の細胞を回収する際、遠心分離機を用いていた。遠心分離機を用いる場合、遠心分離時に一方向に力(遠心力)が加わるため、凝集性物質同士の距離が短くなって接触する機会が増え、遠心分離操作後に、凝集性物質が凝集してしまうことがある。そのため、遠心分離完了後に凝集した凝集性物質を分離する操作が必要となる。一方、濾過装置1Aでは、濾過完了後に濾過対象物61が液体60に浸漬された状態となるため、濾過対象物同士の凝集を抑制でき、濾過対象物61の回収が容易になる。
【0104】
また、濾過装置1Aでは、液溜まり部30の内部の空間S1の容積を回収したい液量と等しくなるように設計することによって、回収時に所望の液量の濾過対象物61を含む液体60を回収することができる。そのため、回収液の秤量操作を不要にすることができる。
【0105】
また、濾過装置1Aでは、簡易な構成でクロスフロー濾過を行うことができる。そのため、作業中に濾過対象物61が濾過部20に付着してしまったとしても、液体60を開口13から導入することで、濾過対象物61を下方へ押し流すことができ、濾過部20への付着や濾過部20の目詰まりを低減することができる。
【0106】
また、濾過部20の貫通孔21のサイズの選択性によって、生細胞を濾過部20で捕捉し、死細胞及び/又はゴミなどについては濾過部20を通過させることができる。これにより、生細胞と死細胞及び/またはゴミとを分けることができる。そのため、操作後の細胞懸濁液に含まれる生細胞の比率が高まることにより、生細胞の活性を維持する時間を長くすることができる。
【0107】
濾過装置1Aでは、濾過部20の目詰まりが低減されるため、濾過操作を複数回行ってもよい。具体的には、ステップST12からステップST15を繰り返し行ってもよい。一般に、濾過操作においては、濾過部20の面積に応じて濾過対象物61の量が制限される。しかし、濾過装置1Aでは、濾過対象物61が濾過部20に留まらず、液溜まり部30でも保持されるため、濾過対象物61が多くなっても目詰まりが生じにくい。そのため、ステップST15の後でも、濾過部20が機能しやすく、再びステップST12に戻って操作することができ、1つの濾過装置1Aで大量の濾過対象物61を処理することができる。
【0108】
また、液溜まり部30から他の容器等に細胞を移す場合、液体の流動力によって細胞が移動するため、大気に曝された状態で細胞を移動する場合に比べて、細胞への物理的な負荷を低減させることができる。
【0109】
筒状体10の一端と他端とを結ぶ方向(Z方向)と直交する方向(XY方向)に沿って液溜まり部30を切断したときの液溜まり部30における筒状体10の他端側(液溜まり部30の下部)の開口断面積Sa2は、液溜まり部30における濾過部20側(液溜まり部30の上部)の開口断面積Sa1と比べて小さい。このような構成により、液溜まり部30の最下端部32に濾過対象物61と液体60が溜まり易くなるため、回収器具70で回収しやすくなる。特に、先端開口を小さく加工された流路、具体的にはチューブやニードル、ピペット、シリンジを回収器具70として選択することで、液溜まり部30の濾過対象物61と液体60の大部分、あるいは、全てを回収することができる。
【0110】
液溜まり部30の内壁33は、筒状体10の他端側に向かって傾斜する傾斜部35を有する。このような構成により、液溜まり部30に濾過対象物61と液体60とを貯留しやすくなり、濾過対象物61と液体60とを回収しやすくなる。
【0111】
傾斜部35は、筒状体10の中央に向かって傾斜している。このような構成により、濾過対象物61を含む液体60が最下端部32に、より溜まり易くなる。このため、回収器具70による濾過対象物61と液体60との回収がより容易になる。
【0112】
液溜まり部30の外壁34は、筒状体10の他端側に向かって突設する突設部36を有する。このような構成により、濾過部20から筒状体10の外部に排出された液体62が、液溜まり部30の外壁34に沿って流れ、液体62が飛散することを抑制することができる。
【0113】
突設部36の側面は、筒状体10の中央に向かって傾斜している。このような構成により、濾過部20から排出された液体62が最下端部32に流れやすくなり、液体62が飛散することをより抑制することができる。
【0114】
濾過部20は、筒状体10の外周部11の全周にわたって設けられている。即ち、濾過部20は、筒状体10の外周部11の周囲を囲んで設けられている。このような構成により、液溜まり部30から溢れた液体60が濾過部20から排出されやすくなり、濾過を短時間で行うことができる。
【0115】
筒状体10の外周部11には、筒状体10の内部と外部とを連通する複数の開口15を画定する複数の枠部材14が設けられている。濾過部20は、円筒状のフィルタであり、複数の枠部材14に取り付けられる。このような構成により、筒状体10の外周部11に濾過部20を容易に設けることができる。更に、筒状体10と濾過部20とを一体形成して作製する場合に比べて、製造コストを低減することができる。
【0116】
筒状体10は、内部を視認可能な樹脂で形成されている。このような構成により、液溜まり部30に貯留された濾過対象物61と液体60とを目視で確認することができる。これにより、液溜まり部30が濾過対象物61と液体60とで満たされた状態であるか否かを判別しやすくなる。
【0117】
濾過部20は、金属及び金属酸化物のうち少なくともいずれかを主成分とするフィルタである。このような構成により、濾過を短時間で行うことができる。また、濾過対象物61を容易に回収することができ、回収率を向上させることができる。例えば、樹脂フィルタなどにおいては、貫通孔の寸法及び配置にばらつきがあり、濾過対象物が貫通孔に入り込んでしまう場合がある。金属及び金属酸化物のうち少なくともいずれかを主成分とするフィルタにおいては、貫通孔の寸法及び配置が樹脂フィルタに比べて均等に設計されている。このため、濾過装置1Aでは、濾過部20を金属及び金属酸化物のうち少なくともいずれかを主成分とするフィルタで形成することによって、濾過対象物61を回収する際、濾過部20から濾過対象物61を剥離し易くなり、樹脂フィルタに比べて回収率を向上させることができる。
【0118】
濾過装置1Aは、筒状体10の他端側に配置される液体保持容器40を備える。このような構成により、濾過部20から筒状体10の外部に排出された液体62を液体保持容器40によって保持することができる。
【0119】
濾過回収方法において、上述した濾過装置1Aの効果と同じ効果を奏する。
【0120】
なお、実施の形態1では、筒状体10は、円筒形状である例について説明したが、これに限定されない。例えば、筒状体10は、角筒形状などの形状であってもよい。同様に、濾過部20は、円筒形状に限定されず、角筒形状などの形状であってもよい。
【0121】
実施の形態1では、筒状体10は、内部を視認可能な樹脂で形成されている例について説明したが、これに限定されない。筒状体10は、内部を視認できない樹脂で形成されていてもよい。
【0122】
実施の形態1では、筒状体10は、3つの枠部材14を備え、3つの開口15を形成する例について説明したが、これに限定されない。筒状体10は、少なくとも1つ以上の枠部材14を備え、少なくとも1つ以上の開口15を形成していればよい。また、複数の枠部材14は、筒状体10の高さ方向に延びる例について説明したが、これに限定されない。複数の枠部材14は、斜め方向に延びていてもよい。
【0123】
実施の形態1では、濾過部20は、筒状体10と別の部材により形成されている例について説明したが、これに限定されない。濾過部20は、筒状体10と一体で形成されていてもよい。この場合、筒状体10は、複数の枠部材14を備えていなくてもよい。
【0124】
実施の形態1では、液溜まり部30の内壁33は、円錐状に窪んでいる例について説明したが、これに限定されない。例えば、液溜まり部30の内壁33は、フラット面で形成されていてもよい。
【0125】
図11Aは、本発明に係る実施の形態1の変形例の濾過装置1AAの概略図である。図11Aに示すように、濾過装置1AAでは、液溜まり部30aaの内壁33aaはフラットだが、窪んでいる個所が底部の中央ではなく、液溜まり部30aaの底面と側面の境界部分に設けてある。この形態であっても、窪んだ個所に液が溜まるため、液体回収の際、残液を低減することができる。また、液溜まり部30aaの先端形状をシリンジニードルなど回収器具70の先端形状に合わせて設計することで、さらに残液を低減することができる。
【0126】
図11Bは、本発明に係る実施の形態1の変形例の濾過装置1ABの概略図である。図11Bに示すように、濾過装置1ABでは、液溜まり部30abの一部に開閉式のバルブ37が設けられている。バルブ37が開けられた場合には濾過装置1ABの外部への流路が通じる。即ち、バルブ37が開けられた場合、液溜まり部30abの内部が液溜まり部30abの底部に設けられた流路を介して、濾過装置1ABの外部と連通する。濾過装置1ABでは、バルブ操作で液溜まり部30abに貯留された濾過対象物と液体とを容易に回収できる。また、重力などを活用して、液体回収の際、残液を低減することができる。液溜まり部30abから液体の流動力によって細胞が移動するため、大気に曝された状態で細胞を移動する場合に比べて、細胞への物理的な負荷を低減するからである。
【0127】
あるいは、バルブ37を開けた状態で濾過対象物を含む液体を下から濾過装置1ABの筒状体10の内部に導入し、液体導入完了時にバルブ37を閉めて液溜まり部30abに濾過対象物を含む液体を貯留してもよい。また、その後にバルブを開けて濾過対象物と液体とを回収してもよい。この操作によって、濾過装置1AB内を攪拌することができる。
【0128】
実施の形態1では、液溜まり部30の外壁34は、円錐状に突設している例について説明したが、これに限定されない。例えば、液溜まり部30の外壁34は、フラット面で形成されていてもよい。
【0129】
図12は、本発明に係る実施の形態1の変形例の濾過装置1BAの概略構成図である。図13は、本発明に係る実施の形態1の変形例の濾過装置1BAの概略断面図である。図12及び図13に示すように、濾過装置1BAは、有底の筒状体10baを備える。有底の筒状体10baの外周部11baには濾過部20が設けられている。濾過部20の下方には、濾過対象物61と液体60とを貯留する液溜まり部30baが設けられている。
【0130】
濾過装置1BAでは、液溜まり部30baは、筒状体10baの外周部11baの一部と、端壁12baとで形成されている。具体的には、液溜まり部30baは、濾過部20の下方に位置する筒状体10baの外周部11baと、端壁12baとで形成されている。
【0131】
液溜まり部30baの底面側の内壁33baは、外周部11baの延びる方向(Z方向)と直交する方向(XY方向)に延びるフラット面で形成されている。また、液溜まり部30baの底面側の外壁34baは、外周部11baの延びる方向(Z方向)と直交する方向(XY方向)に延びるフラット面で形成されている。
【0132】
液溜まり部30baでは、筒状体10baの高さ方向(Z方向)と直交する方向(XY方向)に沿って液溜まり部30baを切断したときの液溜まり部30baの開口断面積Sbは、濾過部20の下端から液溜まり部30baの底面側の内壁33baの間において等しくなっている。
【0133】
濾過装置1BAにおける液溜まり部30baの内部の空間S2は、濾過装置1Aの液溜まり部30の内部の空間S1よりも大きくすることができる。なお、濾過装置1Aと濾過装置1BAの高さの寸法は同じである。このように、液溜まり部30baの底面側の内壁33baを、フラット面で形成することによって液溜まり部30baの内部の空間S2の容積を大きくすることができ、濾過装置1Aと比べて回収できる液量を増やすことができる。
【0134】
また、濾過装置1BAでは、液溜まり部30baの外壁34ba、即ち筒状体10baの底面側の外壁をフラット面で形成することによって、液体保持容器40の内部に筒状体10baを安定して載置することもできる。
【0135】
濾過装置1BAでは、液溜まり部30baの内壁33baと外壁34baの両方が、フラット面で形成される例について説明したが、これに限定されない。例えば、濾過装置1BAは、液溜まり部30baの内壁33baが円錐状に窪んでいる一方、液溜まり部30baの外壁34baがフラット面で形成されていてもよい。あるいは、濾過装置1BAは、液溜まり部30baの内壁33baがフラット面で形成されている一方、液溜まり部30baの外壁34baが円錐状に突設していてもよい。
【0136】
図14は、本発明に係る実施の形態1の変形例の濾過装置1BBの概略図である。図14に示すように、濾過装置1BBでは、液溜まり部30bbの内壁はフラットだが、底面と側面の境界部分が曲面になっており、液溜まり部30bbの液体回収の際、残液を低減することができる。境界部分を曲面にしたことにより、境界部分に液体が残りにくく、且つ、境界部分の液体による表面張力を低減できるからである。
【0137】
実施の形態1では、濾過部20は金属製フィルタである例を説明したが、これに限定されない。濾過部20は、液体60に含まれる濾過対象物61を濾過することができるものであればよく、例えば、樹脂製メンブレン等の他のフィルタであってもよい。
【0138】
実施の形態1では、濾過部20は筒状体10の外周部11の全周にわたって設けられている例、即ち濾過部20は筒状体10の外周部11の周囲を囲んで設けられている例について説明したが、これに限定されない。濾過部20は、筒状体10の外周部11の一部に設けられていてもよい。例えば、濾過部20は、筒状体10の外周部11の半周以下に設けられていてもよい。
【0139】
図15Aは、本発明に係る実施の形態1の変形例の濾過装置1ACの概略図である。図15Aに示すように、濾過装置1ACでは、濾過部20acが筒状体10の外周部11の全周にわたって設けられている部分と、外周部11の一部にだけ設けられている部分がある。例えば、濾過装置1ACでは、濾過部20acは、筒状体10の外周部に、筒状体10の延びる方向(Z方向)に対して斜めに設けられている。このような構成によっても、濾過装置1Aと同様の効果が得られる。
【0140】
図15Bは、本発明に係る実施の形態1の変形例の濾過装置1ADの概略図である。図15Bに示すように、濾過装置1ADでは、濾過部20adの一部が筒状体10の外側に膨らんで設けられている。本変形例においては、濾過部20adから液体が排出される際、膨らんで設けられた部分において乱流が発生しやすくなるため、濾過対象物が濾過部に付着することが低減される効果がある。
【0141】
図15Cは、本発明に係る実施の形態1の変形例の濾過装置1AEの概略図である。図15Cに示すように、濾過装置1AEでは、濾過部20aeの直径が液溜まり部30に向かって大きくなっている。即ち、濾過部20aeの下部の直径は、濾過部20aeの上部の直径に比べて大きくなっている。このような構成においても、濾過部20aeで捕捉された濾過対象物が重力で落下しやすく、濾過対象物が液溜まり部30に貯留されやすい効果がある。また、本変形例においても、濾過部20aeから液体が排出される際、乱流が発生しやすくなるため、濾過対象物が濾過部20aに付着することが低減される効果がある。
【0142】
図16Aは、本発明に係る実施の形態1の変形例の濾過装置1AFの概略図である。図16Bは、本発明に係る実施の形態1の変形例の濾過装置1AFの概略分解図である。図16Bは、濾過装置1AFから把持部90を取り外した状態を示す。図16A及び図16Bに示すように、濾過装置1AFにおいては、開口13付近の筒状体10の外周に、濾過装置1AFを保持する把持部90が取り付けられている。ユーザが把持部90を把持することによって、濾過対象物が接触する部分にユーザの手などが直接触れることを抑制することができる。これにより、濾過対象物が汚染されることを抑制することができる。あるいは、液体保持容器に把持部90を介して固定することができ、操作が容易になる。なお、把持部90は、筒状体10と一体で形成されていてもよいし、あるいは、筒状体10から脱着可能であってもよい。これにより、把持部90を取り外して濾過装置1AFを保管することができ、省スペース化が可能になる。
【0143】
図16A及び図16Bにおいては、開口13付近の筒状体10の外周には、フランジ部11aaが設けられている。フランジ部11aaは、筒状体10の径方向外側に突出している。フランジ部11aaは、把持部90の把持を補助するものである。具体的には、把持部90が筒状体10の外周に取り付けられた状態において、フランジ部11aaが把持部90に接触する。これにより、濾過装置1AFが把持部90から抜け落ちることを抑制することができる。
【0144】
図17は、本発明に係る実施の形態1の変形例の濾過装置1AGの概略図である。図17に示すように、濾過装置1AGの筒状体10の上部に開口13を塞ぐ蓋91が設けられている。蓋91を設けることにより、濾過対象物が乾燥したり大気等によって汚染されたりすることを低減できる。また、濾過後の運搬が容易になる。なお、蓋91は筒状体10から脱着可能であってもよいし、一部が筒状体10に固定された開閉式であってもよい。
【0145】
実施の形態1では、濾過を行う際に、濾過装置1Aを液体保持容器40に配置する例について説明したが、これに限定されない。液体保持容器40は、必須の構成ではない。例えば、濾過を行う際には、濾過装置1Aは、液体保持容器40以外に他の装置などに取り付けられてもよい。あるいは、濾過装置1Aは、液体保持容器40を用いずに濾過を行ってもよい。
【0146】
実施の形態1では、濾過対象物を細胞、液体を細胞懸濁液として説明したが、これに限定されない。
【0147】
実施の形態1では、濾過装置1Aと濾過方法について説明したが、これに限定されない。例えば、濾過装置1Aを含む、濾過方法を実施するためのキットとして使用されてもよい。
【0148】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る濾過装置について説明する。なお、実施の形態2では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態2においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態2では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0149】
実施の形態2の濾過方法の一例について、図18及び図19A~19Iを用いて説明する。図18は、本発明に係る実施の形態2の濾過方法の一例のフローチャートである。図19A~19は、本発明に係る実施の形態2の濾過方法の工程の一例を示す。
【0150】
実施の形態2では、筒状体10を液体62に浸漬させた状態で濾過を行う点で、実施の形態1と異なる。
【0151】
図18及び図19Aに示すように、ステップST21では、濾過装置1Cを準備する。濾過装置1Cは、筒状体10と、筒状体10の外周部11に設けられた濾過部20と、濾過部20の下方に設けられた液溜まり部30と、第1液体62を保持する液体保持容器50と、を備える。実施の形態2では、第1液体62は、PBS(Phosphate Buffered Saline)である。また、筒状体10は、液体保持容器50に固定されている。
【0152】
図18及び図19Bに示すように、ステップST22では、第1液体62を保持する液体保持容器50の内部に筒状体10を配置する。ステップST22では、筒状体10を第1液体62に浸漬することによって、第1液体62が濾過部20を通じて筒状体10の内部に浸入する。これにより、濾過部20の貫通孔21の通液性を高める。
【0153】
図18及び図19Cに示すように、ステップST23では、濾過対象物61を含む第2液体63を筒状体10に導入する。具体的には、筒状体10の開口13からピペット71を挿入し、ピペット71から濾過対象物61を含む第2液体63を筒状体10の内部に導入する。実施の形態2では、第2液体63は、細胞懸濁液であり、濾過対象物61は細胞である。
【0154】
ピペット7の内部には、濾過対象物61を含む第2液体63が保持されている。ピペット71の先端は、筒状体10の下方に設けられた端壁12付近に配置される。言い換えると、ピペット71の先端は、筒状体10の下方に設けられた液溜まり部30の内部に配置される。濾過対象物61を含む第2液体63は、ピペット71の先端から筒状体10の液溜まり部30に導入される。これにより、筒状体10の上部から下部に向かって濾過対象物61を含む第2液体63を導入する場合に比べて、第2液体63の導入による濾過対象物61へのダメージを低減することができる。
【0155】
筒状体10の内部に導入された第2液体63は、濾過部20を通じて筒状体10の外側に流れる。
【0156】
図18及び図19Dに示すように、ステップST24では、第1液体62と第2液体63とが濾過部20を通じて拡散する。あるいは、第1液体62と第2液体63の液面を一定にしようとして、第1液体62と第2液体63が濾過部20を通じて懸濁する。具体的には、濾過対象物61を含む第2液体63がピペット71から筒状体10の内部へ導入されることによって、濾過対象物61が濾過部20によって捕捉される一方、第2液体63が濾過部20を通って筒状体10の外側に移動する。これにより、筒状体10の外側では、液体保持容器50の内部に保持される第1液体62と第2液体63とが混合される。
【0157】
また、液体保持容器50の内部で保持される第1液体62は、濾過部20を通って筒状体10の内部に移動する。これにより、筒状体10の内部においても、第1液体62と第2液体63とが混合される。
【0158】
このように、ステップST24では、濾過部20を通じて第1液体62と第2液体63とが移動し、第1液体62と第2液体63とが拡散する。これにより、濾過対象物61が濾過部20に付着することを抑制することができる。
【0159】
なお、ステップST23で筒状体10の内部に濾過対象物61を含む第2液体63を導入すると、筒状体10の内部に保持される液体の液面が液体保持容器50に保持される液体の液面よりも高くなる場合がある。この場合、第1液体62と第2液体63とを拡散するため、筒状体10の内部の液体の液面と、液体保持容器50の液体の液面とがほぼ同一面になるまで待ってもよい。
【0160】
図18及び図19Eに示すように、ステップST25では、第3液体64を筒状体10に導入する。ステップST25では、筒状体10の内部に第3液体64を導入することによって、濾過対象物61を洗浄する。
【0161】
具体的には、筒状体10の開口13からピペット72を挿入し、ピペット72から第3液体64を筒状体10の内部に導入する。実施の形態2では、第3液体64は、洗浄液であり、例えば、PBSである。
【0162】
ピペット72の内部には、第3液体64が保持されている。ピペット72の先端は、筒状体10の下方に設けられた端壁12付近に配置される。言い換えると、ピペット72の先端は、筒状体10の下方に設けられた液溜まり部30の内部に配置される。第3液体64は、ピペット72の先端から筒状体10の液溜まり部30に導入される。これにより、筒状体10内部で濾過対象物61を攪拌することができ、洗浄効果を高めることができる。
【0163】
図18及び図19Fに示すように、ステップST26では、第1液体62、第2液体63及び第3液体64が濾過部20を通じて拡散する。具体的には、第1液体62、第2液体63及び第3液体64が濾過部20を通じて、筒状体10の内側と外側とを行き来する。これにより、第1液体62、第2液体63及び第3液体64が混合される。
【0164】
実施の形態2では、液体保持容器50に保持されている液体62,63,64の液面が上昇して液体保持容器50の開口に近づいてきた場合、液体62,63,64の一部を回収している。これにより、液体保持容器50から液体62,63,64が溢れるのを防止することができる。
【0165】
図18及び図19Gに示すように、ステップST27では、第4液体65を筒状体10に導入する。具体的には、第4液体65がピペット73から筒状体10の内部へ導入されることによって、濾過部20に捕捉された濾過対象物61を液溜まり部30へ移動させる。第4液体65は、回収液であり、例えば、PBSである。
【0166】
ピペット73の先端は、筒状体10の内部において、濾過部20よりも上方に配置される。また、第4液体65は、筒状体10の内部の側壁に導入される。これにより、濾過部20に付着した濾過対象物61を第4液体65によって、濾過部20から剥がして液溜まり部30へ移動させることができる。その結果、濾過対象物61の回収率を向上させることができる。
【0167】
図18及び図19Hに示すように、ステップST28では、液体保持容器50から筒状体10を引き上げる。これにより、筒状体10の内部の第4液体65は、濾過部20を通じて筒状体10の外側に流れ、下方に向かって移動する。一方、液溜まり部30では、濾過対象物61と第4液体65とが貯留される。
【0168】
実施の形態2では、筒状体10を左右に揺らしながら、液体保持容器50の内部から引き上げている。これにより、濾過部20に付着した濾過対象物61が剥がれ、液溜まり部30に貯留される。その結果、濾過対象物61の回収率を向上させることができる。
【0169】
図18及び図19Iに示すように、ステップST29では、筒状体10の液溜まり部30に貯留された濾過対象物61と第4液体65とを回収する。具体的には、回収器具70を用いて、液溜まり部30に貯留された濾過対象物61と第4液体65とを回収する。
【0170】
[効果]
実施の形態2に係る濾過装置1C及び濾過回収方法によれば、以下の効果を奏することができる。
【0171】
濾過装置1Cを用いた濾過方法においては、筒状体10を液体保持容器50の内部に保持された第1液体62に配置した状態で濾過を行っている。このような構成により、濾過の効率を向上させることができる。具体的には、濾過部20に濾過対象物61が付着することを抑制し、濾過対象物61の回収率を向上させることができる。
【0172】
濾過部に濾過対象物が付着することを抑制するために、液体保持容器50内部に、スターラー、回転スクリュー、加振機構、などの液体を攪拌する機構を設けてもよい。あるいは、筒状体を振動させたり回転させたりしてもよい。濾過対象物の回収率をさらに向上させることができる。
【0173】
また、濾過対象物61が細胞である場合、細胞が大気中に露出しないため、細胞の活性を維持することができる。
【0174】
また、濾過部20の貫通孔21のサイズの選択性によって、生細胞を濾過部20で捕捉し、死細胞及び/又はゴミなどについては濾過部20を通過させることができる。これにより、生細胞と死細胞及び/またはゴミとを分けることができる。
【0175】
濾過方法においては、筒状体10を第1液体62に浸漬させた状態とすることによって、濾過部20の貫通孔21の通液性を高めることができる。
【0176】
濾過方法においては、ピペット73を液溜まり部30に配置して、濾過対象物61を含む第2液体63を筒状体10の内部に導入している。これにより、筒状体10の上部から導入する場合と比べて、濾過対象物61にダメージを与えることを抑制することができる。
【0177】
濾過方法においては、ピペット73を液溜まり部30に配置して洗浄用の第3液体64を筒状体10の内部に導入している。これにより、液溜まり部30に溜まった濾過対象物61を攪拌し、洗浄効果を高めることができる。
【0178】
濾過方法においては、濾過対象物61を回収する前に、筒状体10を液体に浸漬させた状態で、筒状体10の内部に回収用の第4液体65を導入している。これにより、濾過部20に捕捉された濾過対象物61を筒状体10の下方に移動させ、液溜まり部30に貯留することができる。その結果、濾過対象物61の回収率を向上させることができる。
【0179】
なお、実施の形態2では、第2液体63、第3液体64及び第4液体65は、それぞれ、ピペット71,72,73を用いて筒状体10の内部に導入する例について説明したが、これに限定されない。第2液体63、第3液体64及び第4液体65を導入する器具は、ピペット71,72,73に限定されるものではない。第2液体63、第3液体64及び第4液体65を導入する器具は、例えば、シリンジやチューブ等であってもよい。
【0180】
実施の形態2では、ピペット72,73の先端を液溜まり部30に配置して、第2液体63及び第3液体64を導入する例について説明したが、これに限定されない。ピペット72,73の先端を液溜まり部30より上方に配置してもよい。
【0181】
実施の形態2では、ステップST21の後にステップST22を実施したが、液体保持容器50の内部に筒状体10を配置した後で、第1液体62を液体保持容器50および筒状体10の内部に導入してもよい。
【0182】
実施の形態2では、ステップST26において、液体保持容器50に保持されている液体の一部を回収する例について説明したが、これに限定されない。液体保持容器50に保持されている液体の一部を回収する動作については、別のステップで行ってもよい。あるいは、この動作については行わなくてもよい。
【0183】
実施の形態2では、濾過方法は、回収液である第4液体65を筒状体10に導入するステップST27を含む例について説明したが、これに限定されない。濾過方法は、ステップST27を含んでいなくてもよい。
【0184】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る濾過システムについて説明する。なお、実施の形態3では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態3においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態3では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0185】
実施の形態3においては、実施の形態1の濾過装置1Aを備える濾過システムの一例について説明する。
【0186】
[全体構成]
図20は、本発明に係る実施の形態3の濾過システム100Aの一例の概略斜視図である。図21は、本発明に係る実施の形態3の濾過システム100Aの一例の概略正面図である。図22は、図21の濾過システム100AをA-A線で切断した概略断面図である。
【0187】
図20~22に示すように、濾過システム100Aは、濾過装置1Aと、液体保持容器101と、流路102と、バルブ103と、廃液容器104と、廃液流路105と、を備える。
【0188】
濾過装置1Aは、液体保持容器101の内部に配置される。濾過装置1Aの説明については、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0189】
液体保持容器101は、有底の筒状の容器である。液体保持容器101の底部は、中央に向かって鉛直下方向に傾斜している。液体保持容器101の底部の中央には、廃液容器104に向かって延びる流路102が設けられている。これにより、液体保持容器101の内部に保持される液体は、液体保持容器101の底部中央に設けられた流路102に向かって流れる。
【0190】
流路102は、液体保持容器101と廃液容器104とを接続する経路である。流路102の一端は、液体保持容器101の底部中央に接続されている。流路102の他端は、廃液容器104の内部に配置されている。流路102は、液体保持容器101の中央から鉛直下方向に延び、廃液容器104に接続されている。液体保持容器101に保持された液体は、流路102を通って廃液容器104に流れる。
【0191】
バルブ103は、流路102に設けられている。バルブ103の開閉によって、液体保持容器101から廃液容器104への液体の移動を制御することができる。具体的には、バルブ103を開くことによって、液体保持容器101から廃液容器104へ液体を移動させる。また、バルブ103を閉じることによって、液体保持容器101から廃液容器104への液体の移動を停止する。
【0192】
廃液容器104は、液体保持容器101から流路102を介して移動してきた液体を保持する。廃液容器104は、液体保持容器101の下方に配置されている。
【0193】
廃液流路105は、液体保持容器101と廃液容器104とを接続する流路である。廃液流路105の一端は、濾過装置1Aの濾過部20より上方で、液体保持容器101の側壁に接続される。廃液流路105の他端は、廃液容器104の内部に配置されている。液体保持容器101に保持された液体は、廃液流路105を通って廃液容器104に流れる。これにより、液体保持容器101から液体が溢れるのを抑制することができる。
【0194】
[動作]
濾過システム100Aの動作の一例について、図23A~23Eを用いて説明する。図23A~23Eは、本発明の実施の形態3に係る濾過システム100Aの動作の一例を示す。
【0195】
図23Aに示すように、濾過システム100Aを準備する。具体的には、第1液体62を保持する液体保持容器101内に濾過装置1Aを配置する。
【0196】
図23Bに示すように、濾過対象物61を含む第2液体63を筒状体10の開口13から筒状体10内部に導入する。このとき、筒状体10内部に導入された第2液体63は、濾過部20を通じて筒状体10の外側に流れる。これにより、液体保持容器101の内部で第1液体62と第2液体63が混合される。
【0197】
第2液体63が濾過部20を通って、筒状体10の外側に流れることによって、液体保持容器101内の液体の液量は増加するが、増加分は廃液流路105を通じて廃液容器104へ廃液される。廃液容器104には、液体保持容器101から廃液流路105を通って流れてきた液体62,63が廃液110として貯留される。これにより、液体保持容器101の内部から液体が溢れることを抑制することができる。なお、図23Bに示す状態において、流路102に設けられたバルブ103は閉じている。
【0198】
図23Cに示すように、バルブ103を開け、液体保持容器101内の液体62,63を、流路102を通して廃液容器104へ移動させる。このとき、筒状体10内の液体111は、濾過部20を通って筒状体10の外側に流れる。このため、筒状体10内部の濾過対象物61を含む液体111は、液溜まり部30の方向へ濃縮される。
【0199】
図23Dに示すように、筒状体10の内部の液体111の液面が濾過部20の下端まで下がると、濾過部20から筒状体10の外側への液体111の移動が止まる。これにより、液溜まり部30には、濃縮された液体111が貯留される。
【0200】
図23Eに示すように、液溜まり部30に貯留された濾過対象物61と液体111とを回収する。具体的には、回収器具70を用いて、液溜まり部30に貯留された濾過対象物61と液体111とを回収する。
【0201】
[効果]
実施の形態3に係る濾過システム100Aによれば、以下の効果を奏することができる。
【0202】
濾過システム100Aにおいては、液体保持容器101の底部と廃液容器104とを接続する流路102にバルブ103を設けている。このような構成により、バルブ103の開閉操作によって、液体保持容器101内部に保持された液体の廃液容器104への移動を制御することができる。このため、濾過システム100Aではバルブ103の開閉操作によって筒状体10の内部の液体を濃縮することができるため、実施の形態2の濾過方法のステップST28のように、液体保持容器から筒状体10を引き上げる操作(図19H参照)に比べて、操作がより容易になる。
【0203】
また、濾過システム100Aでは、濾過対象物を剥がすために行う操作を標準化でき、回収率のばらつきを低減できる。
【0204】
なお、実施の形態3では、筒状体10の開口13が開放されているが、開口13に蓋部を設け、蓋部に設けた閉鎖的流路を介して液体を流出入させることで無菌操作が可能になる。同様に、液体保持容器101や廃液容器104に複数の閉鎖的流路を設けてもよい。あるいは、開口13や閉鎖的流路の一部に無菌フィルタ(ポアサイズが0.22μmのメンブレンフィルタなど)を設けてもよい。これにより、容器内の圧力を制御したり、液体の流出入を行ったりしてもよい。閉鎖的流路とは、流出入する液体と外気との接触を遮断する側壁を有する流路を意味する。閉鎖的流路は、例えば、チューブなどであってもよい。
【0205】
図24は、本発明に係る実施の形態3の変形例の濾過システム100Bの概略図である。なお、図24においては、液体を送液するための機構(ポンプなど)の図示は省略している。図24に示すように、濾過システム100Bは、濾過装置1BCと、液体保持容器101aと、流路102aと、廃液容器104と、廃液流路105と、切り替えバルブ106と、サンプル容器107と、回収容器108と、を備える。なお、濾過システム100Bの説明においては、実施の形態3の濾過システム100Aと重複する記載は省略する。
【0206】
濾過装置1BCは、上端が閉じられると共に、下端に開口13bcを有する筒状体10bcと、筒状体10bcの外周部11bcに設けられた濾過部20と、濾過部20の下方に設けられた液溜まり部30bcと、を備える。
【0207】
液溜まり部30bcは、濾過部20より下方の筒状体10bcで形成されている。具体的には、液溜まり部30bcは、濾過部より下方の筒状体10bcの側壁と底部によって形成されている。液溜まり部30bcの底部には、液体が流出入する開口13bcが設けられている。開口13bcは、流路102aと接続されている。
【0208】
濾過装置1BCは、液体保持容器101aの内部に配置される。
【0209】
流路102aは、濾過装置1BCとサンプル容器107とを接続する第1流路、及び濾過装置1Bと回収容器108とを接続する第2流路を有する。第1流路と第2流路との切替は、切り替えバルブ106によって行われる。
【0210】
サンプル容器107は、濾過対象物を含む液体を保持する容器である。回収容器108は、濾過装置1BCでの濾過が終了した後に、濾過対象物と液体とを回収する容器である。
【0211】
濾過システム100Bでは、サンプル容器107に収納された濾過対象物を含む液体を、濾過装置1BCの筒状体10bcの底部から筒状体10bcの内部に導入する。このとき、切り替えバルブ106は、サンプル容器107と濾過装置1BCとを接続するように流路102aを第1流路に切り替える。
【0212】
例えば、ポンプによって、サンプル容器107内部に収納された濾過対象物を含む液体を流路102aの第1流路に移動させる。流路102a内を流れる液体は、濾過装置1BCの底部から筒状体10bc内部に導入される。筒状体10bcの内部に導入された液体は、濾過部20を通って筒状体10bcの外側に流れ、液体保持容器101aで貯留される。このようにして、濾過を行い、液溜まり部0bcで濾過対象物を含む液体を凝集する。
【0213】
本明細書では、サンプル容器107に収納された濾過対象物を含む液体を、第1流路を通って濾過装置1BCの筒状体10bcの底部から筒状体10bcの内部に導入する操作を「第1操作α」と称する。
【0214】
次に、濾過装置1BCで濾過が終了した後、切り替えバルブ106を切り替えることによって、回収容器108と濾過装置1BCとを接続するように流路102aを第2流路に切り替える。
【0215】
例えば、ポンプによって、濾過装置1BCの液溜まり部30bcに貯留された濾過対象物と液体とを、流路102aの第2流路を通して回収容器108に移動させる。これにより、濾過装置1BCの液溜まり部30bcで凝集された液体を回収容器108に回収する。
【0216】
本明細書では、濾過装置1BCの液溜まり部30bcに貯留された濾過対象物と液体とを、第2流路を通って回収容器108に回収する操作を「第2操作β」と称する。
【0217】
濾過システム100Bにおいては、第1操作αと第2操作βを交互に連続して進めることができる。濾過部20の面積、液溜まり部30bcや液体保持容器101や廃液容器104の容量、濾過対象物や液体の性質(粘性や凝集性)、などによって処理量(濾過対象物を含む液体の液量または濾過対象物の量または濾過対象物の濃度)には上限がある。目標とする処理量が、一度の第1操作αと第2操作βによる処理量より少ない場合であっても、第1操作αと第2操作βを繰り返し行うことで、目標とする処理量を閉鎖的環境下で達成することが可能となる。また、濾過システム100Bにおいては、流路102aに切り替えバルブを増設したり、容器を増設したりすることで、様々な液体を利用して複雑な操作を行うことができる。
【0218】
図25は、本発明に係る実施の形態3の変形例の濾過システム100Cの概略図である。図25において、説明を容易にするため、濾過装置1BDを断面図で示している。図25に示すように、濾過システム100Cは、濾過装置1BDと、液体保持容器101bと、濾過装置1BDの供給口120と細胞懸濁液を貯留する容器121とを接続する流路122と、廃液容器104aと、液体保持容器101bの第1廃液口123aと廃液容器104aとを接続する流路124と、液体保持容器101bの第2廃液口123bと廃液容器104とを接続する流路125と、回収容器108aと、濾過装置1BDの回収口126と回収容器108aを接続する流路127と、流路122,124,125,127に、それぞれ設けられたバルブ128a、128b,128c,128dと、を備える。なお、図25における例において、「細胞懸濁液」は、濾過対象物61である細胞を含む液体63である。
【0219】
濾過システム100Cは、外気とフィルタ129のみで接続されている閉鎖系システムであり、フィルタ129を通じて閉鎖系内部の圧力を調整することができる。フィルタ129は、例えば、液体保持容器101b、容器121、廃液容器104a、回収容器108aに接続されている。
【0220】
図26A~26Eは、本発明に係る実施の形態3の変形例の濾過システム100Cの動作の一例を示す図である。図26A~26Eにおいて、説明を容易にするため、濾過装置1BDを断面図で示している。図26Aに示すように、濾過システム100B(図23A参照)と同様に、液体保持容器101bには第1液体62を入れておく。即ち、濾過システム100Bで細胞懸濁液を濾過する前に、液体保持容器101bに第1液体62を導入する。
【0221】
図26Bに示すように、供給バルブ128aを開け、且つ、回収バルブ128dを閉めた状態で、濾過装置1BDの供給口120から濾過対象物61を含む第2液体63を濾過装置1BDに導入する。例えば、ポンプ等を用いて、容器121に貯留された濾過対象物61を含む第2液体63を濾過装置1BDの供給口120から筒状体10bdの内部に供給する。このとき、第2液体63は、濾過部20を通じて筒状体10bdの外側に流れる。そして、液体保持容器101b内の液体62,63の液量は増加するが、第1廃液バルブ128bを開けておくことによって、増加分は廃液容器104aに導くことができる。これにより、増加分の液体62,63は、廃液容器104aに廃液110として貯留される。
【0222】
図26Cに示すように、第2廃液バルブ128cを開け、液体保持容器101b内の液体62,63を廃液容器104aへ移動させる。このとき、筒状体10bd内の液体111は、濾過部20を通って筒状体10bdの外側へ流れる。このため、筒状体10bd内部の濾過対象物61を含む液体111は、液溜まり部30bdの方向へ濃縮される。
【0223】
図26Dに示すように、筒状体10bdの内部の液体111の液面が、濾過部20の下端まで下がった後、回収バルブ128dを開く。これにより、図26Eに示すように、濾過対象物61と液体111を液溜まり部30bdから回収容器108aに移動させることができる。
【0224】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4に係る濾過装置について説明する。なお、実施の形態4では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態4においては、実施の形態1と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態4では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0225】
実施の形態4の濾過方法の一例について、図27及び図28A~28Dを用いて説明する。図27は、本発明に係る実施の形態4の濾過方法の一例のフローチャートである。図28A~28Dは、本発明に係る実施の形態4の濾過方法の工程の一例を示す。
【0226】
実施の形態4では、筒状体10を、濾過対象物61を含む液体66に浸漬させた状態で濾過を行う点で、実施の形態1と異なる。なお、本明細書において、「濾過」とは、濃縮の意味も含む。「濃縮」とは、濾過対象物61を含む液体66の濃度を高めることを意味する。したがって、実施の形態4の濾過装置及び濾過方法は、それぞれ、濃縮装置及び濃縮方法と称する場合もある。
【0227】
図27及び図28Aに示すように、ステップST31では、濾過装置1Dを準備する。濾過装置1Dは、筒状体10と、筒状体10の外周部11に設けられた濾過部20と、濾過部20の下方に設けられた液溜まり部30と、濾過対象物61を含む液体66を保持する液体保持容器51と、を備える。実施の形態では、液体66は細胞懸濁液であり、濾過対象物61は細胞である。
【0228】
実施の形態4では、筒状体10は、液体保持容器51に固定されている。液体保持容器51は、液体66を内部に保持できる容器であればよく、例えば、ビーカー、試験管、又はタンクなどである。
【0229】
図27及び図28Bに示すように、ステップST32では、濾過対象物61を含む液体66を保持する液体保持容器51の内部に筒状体10を配置する。ステップST32では、筒状体10を液体66に浸漬することによって、液体66が濾過部20を通じて筒状体10の内部に浸入する。このとき、濾過対象物61は、濾過部20によって捕捉される。このため、筒状体10の内部には、濾過対象物61を含まない液体66が浸入する。実施の形態では、死細胞及び/又はゴミなどが濾過部20を通過して、筒状体10の内部に浸入してもよい。
【0230】
ステップST32では、大気圧によって筒状体10の内部に液体66が浸入する。液体66に圧力などを負荷せずに、液体66が筒状体10の内部に侵入するため、濾過対象物61へのダメージを低減することができる。
【0231】
実施の形態4では、筒状体10を液体66に浸漬させた状態とすることによって、濾過部20の貫通孔21の通液性を高めることができる。
【0232】
図27及び図28Cに示すように、ステップST33では、筒状体10の内部の液体66を回収する。ステップST33では、回収器具74を用いて、筒状体10の内部の液体66を回収する。回収器具74は、例えば、ピペット又はシリンジである。あるいは、回収器具74は、ポンプに接続された中空チューブであってもよい。
【0233】
このように、回収器具74を用いて筒状体10の内部の液体66を吸引することによって、筒状体10の内部の液体66が回収される。
【0234】
実施の形態4では、回収器具74の先端は、筒状体10の下方に設けられた液溜まり部30の内部に配置される。これにより、回収器具74による液体66の吸引の力が濾過対象物61に伝わりにくくなり、濾過対象物61へのダメージを低減することができる。
【0235】
図28Dに示すように、回収器具74によって筒状体10の内部の液体66を回収し続け、液体保持容器51の液体66の液面が濾過部20の下端23、即ち液溜まり部30の開口まで下がってくると、筒状体10の内部に液体66が浸入しなくなる。これにより、濾過を終了する。
【0236】
実施の形態4では、濾過部20の下端23の位置によって、回収する液体66の液量を制御することもできる。
【0237】
[効果]
実施の形態4に係る濾過装置1D及び濾過回収方法によれば、以下の効果を奏することができる。
【0238】
濾過装置1Dを用いた濾過方法においては、筒状体10を液体保持容器51の内部に保持された濾過対象物61を含む液体66に配置した状態で濾過を行っている。このような構成により、濾過の効率を向上させることができる。具体的には、濾過部20に濾過対象物61が付着することを抑制しつつ、液体保持容器5内の濾過対象物61を含む液体66を濃縮することができる。
【0239】
なお、実施の形態4では、濾過装置1Dは、液溜まり部30を備える例について説明したが、これに限定されない。例えば、濾過装置1Dは、液溜まり部30を備えていなくてもよい。濾過装置1Dは、一端と他端とを有し、一端に開口13を設けると共に、他端に他端を閉じる端壁12を設けた筒状体10と、筒状体10の外周部11に設けられ、複数の貫通孔21を有する濾過部20と、を有していればよい。このような構成であっても、濾過部20に濾過対象物61が付着することを抑制しつつ、液体保持容器5内の濾過対象物61を含む液体66を濃縮することができる。
【0240】
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5に係る濾過装置について説明する。なお、実施の形態5では、主に実施の形態4と異なる点について説明する。実施の形態5においては、実施の形態4と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態5では、実施の形態4と重複する記載は省略する。
【0241】
図29は、本発明に係る実施の形態の濾過装置1Eの一例の概略断面図である。図29に示すように、実施の形態では、濾過装置1Eが筒状体10を上下方向(Z方向)に駆動可能な構成要素を備える点が、実施の形態と異なる。
【0242】
具体的には、濾過装置1Eは、筒状体10と、筒状体10の外周部11に設けられた濾過部20と、濾過部20の下方に設けられた液溜まり部30と、濾過対象物61を含む液体66を保持する液体保持容器52と、を備える。また、濾過装置1Eは、筒状体10を上下方向に駆動させる構成として、筒状体10に接続される駆動部18と、駆動部18を制御する制御部19を備える。
【0243】
実施の形態5の濾過方法の一例について、図30及び図31A~31Dを用いて説明する。図30は、本発明に係る実施の形態の濾過方法の一例のフローチャートである。図31A~31Dは、本発明に係る実施の形態の濾過方法の工程の一例を示す。
【0244】
図30示すように、ステップST41では、濾過装置1Eを準備する(図29参照)。実施の形態では、液体保持容器52は、液体66は細胞懸濁液であり、濾過対象物61は細胞である。液体保持容器52は、液体66を内部に保持できる容器であればよく、例えば、ビーカー、試験管、又はタンクなどである。
【0245】
図30及び図31Aに示すように、ステップST42では、濾過対象物61を含む液体66を保持する液体保持容器52の内部に筒状体10を配置する。ステップST42では、筒状体10を液体66に浸漬することによって、液体66が濾過部20を通じて筒状体10の内部に浸入する。このとき、濾過対象物61は、濾過部20によって捕捉される。このため、筒状体10の内部には、濾過対象物61が浸入せずに、濾過対象物61を含まない液体66が浸入する。
【0246】
図30及び図31Bに示すように、ステップST43では、筒状体10の内部の液体66を回収する。ステップST43では、回収器具74を用いて、筒状体10の内部の液体66を回収する。実施の形態では、液溜まり部30に回収器具74の先端を配置し、回収器具74の先端から筒状体10の内部の液体66を吸引することによって、液体66を回収する。例えば、液体保持容器52の内部の液体66の液面が濾過部20の下端23と同じ高さになり、液体66が濾過部20を通じて筒状体10の内部に侵入してこなくなるまで、回収器具74によって筒状体10の内部の液体66を回収する。
【0247】
図30及び図31Cに示すように、ステップST44では、駆動部18によって、筒状体10を下方へ移動させる。実施の形態では、駆動部18は、制御部19によって制御されている。例えば、制御部19は、検出部によって液体保持容器52の内部に保持された液体66の液面の位置の情報と筒状体10の位置の情報を取得する。制御部19は、これらの情報に基づいて、駆動部18を制御し、筒状体10を下方に移動させる。
【0248】
筒状体10が下方へ移動することによって、液体保持容器52に保持された液体66が再び濾過部20を通じて、筒状体10の内部に侵入する。
【0249】
図30及び図31Dに示すように、ステップST45では、筒状体10の内部の液体66を回収する。ステップST45では、ステップST43と同様に、回収器具74を用いて、筒状体10の内部の液体66を回収する。
【0250】
回収器具74によって筒状体10の内部の液体66を回収し続け、液体保持容器51の液体66の液面が濾過部20の下端23、即ち液溜まり部30の開口まで下がってくると、筒状体10の内部に液体66が浸入しなくなる。これにより、濾過を終了する。
【0251】
実施の形態5においても実施の形態と同様に、濾過部20の下端23の位置によって、回収する液体66の液量を制御することもできる。
【0252】
[効果]
実施の形態5に係る濾過装置1E及び濾過回収方法によれば、以下の効果を奏することができる。
【0253】
濾過装置1Eを用いた濾過方法においては、筒状体10を液体保持容器5の内部に保持された濾過対象物61を含む液体66に配置した状態で濾過を行っている。また、筒状体10を上下方向に駆動させる構成を含んでいる。このような構成により、濾過の効率を向上させることができる。具体的には、濾過部20に濾過対象物61が付着することを抑制しつつ、液体保持容器5内の濾過対象物61を含む液体66を濃縮することができる。更に、筒状体10を上下方向に駆動することによって、液体保持容器52の内部に残す液体66の量を制御することができる。
【0254】
言い換えると、液体保持容器52の内部の残液量を制御することができ、濃縮水の濃度を調整することができる。
【0255】
なお、実施の形態5では、駆動部18は、筒状体10を下方に移動させる例を説明したが、これに限定されない。駆動部18は、筒状体10を上方に移動させてもよい。例えば、筒状体10の開口13が液体保持容器52の内部の液体66の液面よりも低くなっている場合、駆動部18は筒状体10を上方に移動させてもよい。
【0256】
実施の形態5では、ステップST43及びST45における液体66の回収と、ステップST44の筒状体10の移動と、をそれぞれ別々のステップで行う例について説明したが、これに限定されない。ステップST43~ST45は、同時に行ってもよい。
【0257】
例えば、実施の形態5の濾過方法では、駆動部18によって筒状体10を下方へ移動させつつ、回収器具7によって筒状体10の内部の液体66を回収してもよい。これにより、濾過を短時間で行うことができ、濾過効率を更に向上させることができる。
【0258】
実施の形態5では、筒状体10を上下方向に移動させる構成として、濾過装置1Eが駆動部18と制御部19とを備える例について説明したが、これに限定されない。濾過装置1Eは、筒状体10を高さ方向(Z方向)に移動可能な構成を有していればよい。
【0259】
図32は、本発明に係る実施の形態5の変形例の濾過装置1Fの一例の概略断面図である。図32に示すように、濾過装置1Fは、筒状体10を高さ方向に移動させる構成要素として、筒状体10に接続されるフロート80と、フロート80に接続される接続線81と、接続線81に接続される固定部82と、を備える。濾過装置1Fにおいて、その他の構成要素は、濾過装置1Eと同じである。
【0260】
フロート80は、筒状体10の外周部11に接続されている。具体的には、フロート80は、濾過部20の上方に配置されている。フロート80は、液体66に浮きつつ、筒状体10を保持している。即ち、フロート80は、筒状体10と共に液体66に浮かんでおり、筒状体10を液体66の液面付近に保持している。
【0261】
接続線81は、フロート80と固定部8とに接続される。具体的には、接続線81の一端はフロート80に接続され、接続線81の他端は固定部82に接続される。濾過装置1Fでは、接続線81の長さを調整することによって、液体保持容器52の液体66の残液を調整することができる。
【0262】
例えば、筒状体10がフロート80によって保持されて、液体66に浮いている状態においては、接続線81は撓んだ状態となる。一方、回収器具74によって筒状体10の内部の液体66が回収されていくと、液体保持容器52の内部の液体66の液面が下がっていく。液面の低下に伴い、接続線81が下方に向かって伸びていく。そして、接続線81が最大まで伸びると、筒状体10の下方への移動が停止する。即ち、接続線81が最大まで伸びた状態においては、筒状体10は接続線81によって保持される。
【0263】
固定部82は、接続線81に接続されている。固定部82は、筒状体10及びフロート80とは異なる場所に固定されている。例えば、固定部82は、液体保持容器52に固定されていてもよい。
【0264】
濾過装置1では、フロート80が筒状体10を保持した状態で液体66に浮かんでいる状態において、回収器具74を用いて筒状体10の内部の液体66を回収する。回収器具74によって筒状体10の内部の液体66を回収するのに伴い、液体保持容器52の内部の液体66の液面が低下していく。フロート80は液体66に浮かぶことによって、筒状体10を保持している。このため、液体66の液面が下がることによって、筒状体10も下方へ移動する。
【0265】
ここで、固定部82は例えば液体保持容器52に固定されている。接続線81の一端がフロート80に接続され、接続線81の他端が固定部82に接続されている。このため、接続線81は、フロート80の下降に伴って伸びていく。そして、接続線81の長さが最大まで伸びると、筒状体10は接続線81によって保持され、筒状体10の下降が停止する。
【0266】
図33は、本発明に係る実施の形態の変形例の濾過装置1Fの動作の一例の概略断面図である。図33に示すように、接続線81の長さが最大まで伸びた状態において、筒状体10は接続線81によって保持される。これにより、液体保持容器52内部の液体66の液面が下がっても、筒状体10は下方向へ移動しなくなる。この状態で、回収器具74によって筒状体10の内部の液体66を回収する。
【0267】
回収器具74によって液体66の回収を続けると、液体保持容器52の内部の液体66の液面が濾過部20の下端23より下方にくると、濾過部20を通じて液体66が筒状体10の内部に侵入してこなくなる。これにより、液体保持容器52の内部の液体66の量を調整することができる。
【0268】
このように、濾過装置1Fでは、フロート80及び接続線81を用いて、液体保持容器52に残る液体66の量を調整することができる。具体的には、接続線81の長さを調整することによって、筒状体10の高さ方向(Z方向)の位置を決定し、液体保持容器52に残る液体66の量を調整することができる。
【0269】
(実施の形態6)
本発明の実施の形態6に係る濾過装置について説明する。なお、実施の形態6では、主に実施の形態4と異なる点について説明する。実施の形態6においては、実施の形態4と同一又は同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態6では、実施の形態4と重複する記載は省略する。
【0270】
図34は、本発明に係る実施の形態6の濾過装置1Gの一例の概略断面図である。図34に示すように、実施の形態6では、筒状体10を水平方向(XY方向)に配置された状態で濾過を行う点が、実施の形態4と異なる。
【0271】
濾過装置1Gは、一端と他端とを有し、一端を閉じる第1端壁12bを設けると共に、他端を閉じる第2端壁12cを設けた筒状体10bと、筒状体10bの外周部11に設けられ、複数の貫通孔21を有する濾過部20と、を備える。また、濾過装置1Gは、第1端壁12bを貫通する中空チューブ75と、中空チューブ75に接続されるポンプ76と、を備える。更に、濾過装置1Gは、濾過対象物61を含む液体67を保持する液体保持容器53を備える。
【0272】
実施の形態6において、液体67は細胞懸濁液であり、濾過対象物61は細胞である。
【0273】
第1端壁12bには、中空チューブ75が取り付けられる貫通孔が設けられている。中空チューブ75の先端は、第1端壁12bの貫通孔を通って、筒状体10bの内部に配置される。
【0274】
実施の形態6において、第2端壁12cは、筒状体10bの長手方向(Y方向)に向かって窪んだ凹状に形成されている。濾過部20は、筒状体10bの外周部11の全周にわたって設けられている。
【0275】
濾過装置1Gの動作(濾過方法)の一例について、図35A及び図35Bを用いて説明する。図35A及び図35Bは、本発明に係る実施の形態の濾過装置1Gの動作の一例を示す。
【0276】
図35Aに示すように、筒状体10bを液体保持容器53の内部において水平方向(XY方向)に配置する。これにより、濾過対象物61を含む液体67に筒状体10bを浸漬する。液体67が濾過部20を通じて筒状体10bの内部に浸入する一方、濾過対象物61は濾過部20で捕捉される。
【0277】
筒状体10bを水平方向に配置することによって、筒状体10bの内部に液体67が浸入しやすくなる。このため、筒状体10bの内部の液体67を回収する際に、筒状体10bを鉛直方向に配置した場合に比べて、弱い圧力で吸引回収することができる。
【0278】
筒状体10bの内部の液体67の回収は、中空チューブ75及びポンプ76によって行われる。具体的には、ポンプ76が、中空チューブ75を介して筒状体10bの内部の液体67を吸引する。これにより、液体保持容器53の内部の液体67は、濾過部20を通じて筒状体10bの内部に移動し、ポンプ76及び中空チューブ75によって回収される。
【0279】
図35Bに示すように、液体保持容器53の内部の液体67の液面が中空チューブ75の下端に来るまで、筒状体10bの内部から液体67が回収される。
【0280】
[効果]
実施の形態6に係る濾過装置1G及び濾過回収方法によれば、以下の効果を奏することができる。
【0281】
濾過装置1Gを用いた濾過方法においては、筒状体10bを液体保持容器53の内部において水平方向(XY方向)に配置した状態で濾過対象物61を含む液体67の濾過を行っている。このような構成により、濾過の効率を向上させることができる。具体的には、筒状体10bを水平方向に配置することによって、液体67が濾過部20を通って筒状体10bの内部に浸入しやすくなる。このため、濾過装置1Gを用いた濾過方法では、筒状体を鉛直方向(Z方向)に配置した場合に比べて、弱い圧力で吸引回収することができる。そのため、圧力による細胞へのダメージが少なくなり、細胞の活性を維持しやすくなる。
【0282】
なお、実施の形態6では、第2端壁12cは、筒状体10bの長手方向(Y方向)に窪んだ凹状に形成される例について説明したが、これに限定されない。例えば、第2端壁12cは、平板状に形成されていてもよい。
【0283】
実施の形態6では、濾過装置1Gは、筒状体10bの内部の液体67を回収する構成として、中空チューブ75及びポンプ76の例を説明したが、これに限定されない。例えば、濾過装置1Gは、ポンプ76を備えず、中空チューブ75を筒状体10bより低い位置に配置することによって、液体67を回収してもよい。
【0284】
実施の形態6では、濾過部20が筒状体10bの外周部11の全周にわたって設けられている例について説明したが、これに限定されない。例えば、濾過部20は、筒状体10bの外周部11の少なくとも一部に設けられていればよい。
【0285】
図36は、本発明に係る実施の形態の変形例の濾過装置1Hの概略断面図である。図36に示すように、濾過装置1Hでは、濾過部20aが外周部11の半周以下に設けられていてもよい。
【0286】
濾過装置1Hを用いた濾過方法では、筒状体10cを水平方向(XY方向)に配置したとき、濾過部20aが設けられていない部分よりも濾過部20aが設けられている部分を筒状体10cの外周部11の下側に配置する。これにより、沈降した濾過対象物61が濾過部20aの貫通孔21を塞ぐことを抑制することができる。即ち、濾過装置1Hでは、濾過部20aの目詰まりを抑制することができ、濾過対象物61へのダメージを低減することができる。
【0287】
(実施例1)
実施例1として、実施の形態1の濾過装置1Aを用いて細胞懸濁液をクロスフロー濾過し、濾過終了後に液溜まり部30に貯留された細胞懸濁液を回収した。そして、細胞懸濁液(液体)の回収率と細胞の回収率を測定した。表1に、実施例1に使用した細胞懸濁液の状態を示す。尚、細胞濃度については、画像解析型の細胞計数機(Thermo Fisher製Countess II FL Automated Cell Counter)を使用した。細胞の生死の判定はトリパンブルー排除法を用いた。
【0288】
【表1】
【0289】
次に、表2に実施例1の濾過装置1Aの条件を示す。
【0290】
【表2】
【0291】
実施例1においては、同条件で8回の実験を行った。実験は、表1に示した2mlの細胞懸濁液を濾過装置1Aに導入し、濾過部20から液体60が排出されなくなるまで2分間待った。その後、液溜まり部30に貯留された細胞懸濁液を、ピペットを用いて回収した。回収後、回収した細胞懸濁液の液量と細胞数を測定し、目標回収液量(1ml)に対する細胞懸濁液の回収率と細胞の回収率とを算出した。液量の測定には、ピペットに付記されている液量目盛りを、細胞濃度については、前記の細胞計数機を用いた。表3に細胞懸濁液の回収率と細胞の回収率の算出結果を示す。表3において、「目標回収液量(1ml)に対する細胞懸濁液の回収率」とは、「回収した細胞懸濁液の液量」を1mlで除して100倍したものである。また、「細胞の回収率」とは、回収した細胞懸濁液に含まれる生細胞数を4×10で除して100倍したものである。
【0292】
【表3】
【0293】
表3に示すように、濾過装置1Aによれば、細胞の回収率が高く、細胞を容易に回収できていることがわかる。また、目標回収液量(1ml)に対する細胞懸濁液の回収率も高い値を示していることから、液溜まり部30に貯留された細胞懸濁液を回収することによって、所望の液量を回収できていることがわかる。さらに、実施例1において回収された細胞の活性は維持されていたため、細胞へのダメージが低い操作方法であることも分かる。
【0294】
(実施例2)
実施例2として、実施の形態2の濾過装置1Cを用いて、筒状体10を第1液体PBSに浸漬した状態で細胞懸濁液を濾過して2分間待った。その後、細胞を洗浄する目的で2mlのPBSを投入した。そして、液溜まり部30に貯留された細胞懸濁液をピペットで回収し、細胞の回収率を測定した。表4に実施例2に使用した細胞懸濁液の状態を示す。なお、実施例2の濾過装置1Cの条件は、実施例1の濾過装置1Aと同様である(表2参照)。
【0295】
【表4】
【0296】
参考例1として、大気中で細胞懸濁液の濾過を行った後、大気中で細胞を洗浄した後、細胞懸濁液を回収し、細胞の回収率を測定した。なお、参考例1は、筒状体と、筒状体の外周部に設けられた濾過部と、濾過部の下方に設けられた液溜まり部とを有する。参考例1では、第1液体を使用していない点で実施例2と異なる。即ち、筒状体を液体に浸漬させずに大気中で濾過及び洗浄を行う点が、実施例2と異なる。
【0297】
表5は、実施例における細胞の回収率の測定結果を示す。
【0298】
【表5】
【0299】
前述の操作の後、再度、筒状体10を液体保持容器50に保持されたPBSに浸漬させ、開口13からPBSを2ml投入し、液体保持容器50から引き上げて、細胞懸濁液を回収した。結果を表6に示す。尚、表6の最下段は、表5と表6に示した細胞回収率の合算である。
【0300】
【表6】
【0301】
表7は、参考例1における細胞の回収率の測定結果を示す。
【0302】
【表7】
【0303】
実施例2では、表6の最下段に示すように、細胞の回収率が92%、93%、95%及び81%であり、細胞の回収率が高くなっている。一方、参考例1では、表7に示すように、細胞の回収率が43%、58%、49.2%、59.2%となっている。このように、実施例2では、参考例1に比べて細胞の回収率を向上させることができる。
【0304】
参考例1においては、大気中において細胞懸濁液の濾過を行った後、大気中において細胞の洗浄を行っている。具体的には、大気中に配置されている筒状体10の内部に洗浄液として、2mlのPBSを筒状体の開口から導入し、細胞を洗浄している。洗浄液を導入する際に、筒状体の内部で細胞が攪拌されて濾過部に付着する。そして、濾過部20から洗浄液が排出されるときに、細胞が濾過部の貫通孔内に押し付けられて目詰まりを起こしていると考えられる。このため、参考例1では、実施例と比べて、回収率が低下したものと考えられる。また、洗浄液の量が多くなるほど、あるいは、洗浄液の導入速度が大きくなるほど、目詰まりが発生しやすく、回収率の低下を招く恐れがあると考えられる。
【0305】
実施例2では、筒状体10を液体に浸漬させた状態で濾過及び洗浄を行っているため、細胞が濾過部に押し付けられることを抑制することができる。具体的には、実施例では、液体に浸漬させた状態で濾過及び洗浄を行う場合、溶液及び洗浄液が濾過部20を通じて拡散する。このため、実施例では、参考例1と比べて、濾過部20を通る液体の流速が大きくならず、細胞が濾過部に押し付けられにくく、目詰まりしにくくなっている。その結果、実施例2では、参考例2と比べて、細胞の回収率が高くなっていると考えられる。
【0306】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した特許請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0307】
本発明の濾過装置は、一般的な濾過操作が必要な産業分野で有用である。特に細胞活性を維持したまま濾過を行うことができるため、例えば、薬効調査や再生医療薬の製造等の分野に有用である。
【符号の説明】
【0308】
1A,1AA,1AB,1AC,1AD,1AE,1AF,1AG,1BA,1BB,1BC,1BD,1C,1D,1E,1F,1G,1H 濾過装置
10,10b,10ba,10bb,10bc 筒状体
11,11ba,11bc 外周部
11aa フランジ部
12,12ba 端壁
12b 第1端壁
12c 第2端壁
13,13bc 開口
14 枠部材
15 開口
16 内面
17 外面
18 駆動部
19 制御部
20,20a,20ac,20ad,20ae 濾過部
21 貫通孔
22 フィルタ基体部
23 下端
30,30aa,30ab,30ba,30bb,30bc,30bd 液溜まり部
31 接続部
32 最下端部
33,33aa,33ba 内壁
34,34ba 外壁
35 傾斜部
36 突設部
37 バルブ
40 液体保持容器
41 底部
42 側壁
43 開口
50,51,52,53 液体保持容器
60 液体
61 濾過対象物
62,63,64,65,66,67 液体
70 回収器具
71,72,73 ピペット
74 回収器具
75 中空チューブ
76 ポンプ
80 フロート
81 接続線
82 固定部
90 把持部
91 蓋
100A,100B,100C 濾過システム
101,101a,101b 液体保持容器
102,102a 流路
103 バルブ
104,104a 廃液容器
105 廃液流路
106 切り替えバルブ
107 サンプル容器
108,108a 回収容器
110 廃液
111 液体
120 供給口
121 容器
122 流路
123a 第1廃液口
123b 第2廃液口
124 流路
125 流路
126 回収口
127 流路
128a,128b,128c,128d バルブ
129 フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図17
図18
図19A
図19B
図19C
図19D
図19E
図19F
図19G
図19H
図19I
図20
図21
図22
図23A
図23B
図23C
図23D
図23E
図24
図25
図26A
図26B
図26C
図26D
図26E
図27
図28A
図28B
図28C
図28D
図29
図30
図31A
図31B
図31C
図31D
図32
図33
図34
図35A
図35B
図36