(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ナレッジ生成システム、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/10 20120101AFI20221213BHJP
G06N 5/02 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G06Q10/10
G06N5/02 120
(21)【出願番号】P 2020552449
(86)(22)【出願日】2018-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2018039692
(87)【国際公開番号】W WO2020084734
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103090
【氏名又は名称】岩壁 冬樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124501
【氏名又は名称】塩川 誠人
(72)【発明者】
【氏名】小阪 勇気
(72)【発明者】
【氏名】久保 雅洋
【審査官】上田 威
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-079469(JP,A)
【文献】特開2004-206571(JP,A)
【文献】特開2017-111756(JP,A)
【文献】特開2016-099967(JP,A)
【文献】特開2017-107261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G06N 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
事象に対応する原因または対処方法を表わす情報であるナレッジを記憶するナレッジ記憶手段と、
所定の事象を表す文字列に含まれる各単語を全て含む文を、前記所定の事象に関連した文であると判定する判定処理、および、前記所定の事象に対応する既存のナレッジに含まれている原因または対処方法を示す1つ以上の単語のうちの一部の単語しか含んでいないか、あるいは、その全ての単語を含んでいない文を、既存のナレッジと異なる内容を含む文であると判定する判定処理を行うことによって、過去に作成された業務記録の中から、前記所定の事象に関連した文であって、かつ、当該所定の事象に対応する既存のナレッジと異なる内容を含む文を抽出する前処理用文抽出手段と、
前記前処理用文抽出手段によって抽出された文から前記所定の事象を表わす文節を除去した文字列を生成する文字列生成手段と、
前記文字列生成手段によって生成された文字列をグルーピングするグルーピング手段と、
前記所定の事象を表す文字列に含まれる各単語を全て含む文を、前記所定の事象に関連した文であると判定する判定処理、および、前記所定の事象に対応する既存のナレッジに含まれている原因または対処方法を示す1つ以上の単語のうちの一部の単語しか含んでいないか、あるいは、その全ての単語を含んでいない文を、既存のナレッジと異なる内容を含む文であると判定する判定処理を行うことによって、未確定の業務記録の中から、
前記所定の事象に関連した文であって、かつ、当該所定の事象
に対応する既存のナレッジと異なる内容を含む文を抽出する文抽出手段と、
前記グルーピング手段によってグルーピングされた文字列のグループのうち複数の文字列を含むグループの各々と、
前記文抽出手段によって抽出された前記文から、前記所定の事象を表す文節を除去することによって得られる第1の文字列との類似度に基づいて、前記複数の文字列を含むグループのいずれかを選択するグループ選択手段と、
選択された前記複数の文字列を含むグループに含まれる文字列を第2の文字列として選択する文字列選択手段と、
前記業務記録内の前記第1の文字列を、文字列選択手段によって選択された前記第2の文字列に置き換える置き換え手段と、
前記第1の文字列が前記第2の文字列に置き換えられた業務記録が確定される状況に関する所定の条件が満たされた場合、前記グループに含まれる文字列のいずれかに基づいて新たなナレッジを生成するナレッジ生成手段とを備える
ことを特徴とするナレッジ生成システム。
【請求項2】
グループは、
文字列の各々を表わすベクトルに基づいて文字列がグルーピングされている
請求項1に記載のナレッジ生成システム。
【請求項3】
グループ選択手段は、
複数の文字列を含む個々のグループの中心を表わす個々のベクトルと、第1の文字列を表わすベクトルとの距離を、前記個々のグループと前記第1の文字列との類似度としてグループを選択する
請求項1または請求項2に記載のナレッジ生成システム。
【請求項4】
文字列選択手段は、
選択されたグループに含まれる個々の文字列を表わす個々のベクトルと、第1の文字列を表わすベクトルとの距離に基づいて、前記選択されたグループから第2の文字列を選択する
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載のナレッジ生成システム。
【請求項5】
文字列選択手段は、
一回選択した第2の文字列を再度選択することを許容して、選択されたグループから第2の文字列を選択する
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載のナレッジ生成システム。
【請求項6】
文字列選択手段は、
グループから第2の文字列を選択するときに、一回選択した第2の文字列とは異なる第2の文字列を選択する
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載のナレッジ生成システム。
【請求項7】
所定の条件は、
文字列選択手段によって同一のグループから同一の第2の文字列が複数回選択され、
第1の文字列が前記第2の文字列に置き換えられた業務記録が、前記第2の文字列に対する修正が加えられずに確定されたことが所定回数生じたという条件である
請求項1から請求項5のうちのいずれか1項に記載のナレッジ生成システム。
【請求項8】
ナレッジ生成手段は、
所定の条件が満たされた場合に、グループから複数回選択された第2の文字列に基づいて新たなナレッジを生成する
請求項7に記載のナレッジ生成システム。
【請求項9】
所定の条件は、
文字列選択手段によって同一のグループから第2の文字列が複数回選択され、
第1の文字列が選択された第2の文字列に置き換えられた業務記録が、前記選択された第2の文字列に対する修正が加えられずに確定されたことが所定回数生じたという条件であり、
ナレッジ生成手段は、
前記所定の条件が満たされた場合に、前記文字列選択手段によって選択された回数が最も多い第2の文字列に基づいて新たなナレッジを生成する
請求項1から請求項5のうちのいずれか1項に記載のナレッジ生成システム。
【請求項10】
所定の条件は、
文字列選択手段によって同一のグループから第2の文字列が複数回選択され、
第1の文字列が選択された第2の文字列に置き換えられた業務記録が、前記選択された第2の文字列に対する修正が加えられずに確定されたことが所定回数生じたという条件である
請求項1から請求項6のうちのいずれか1項に記載のナレッジ生成システム。
【請求項11】
ナレッジ生成手段は、
所定の条件が満たされた場合に、グループに含まれる個々の文字列の長さに基づいて選択された文字列に基づいて新たなナレッジを生成する
請求項10に記載のナレッジ生成システム。
【請求項12】
ナレッジ生成手段は、
所定の条件が満たされた場合に、グループの中心を表わすベクトルと、前記グループに含まれる個々の文字列を表わす個々のベクトルとの距離を用いて前記グループから選択された文字列に基づいて新たなナレッジを生成する
請求項10に記載のナレッジ生成システム。
【請求項13】
ナレッジ生成手段は、
所定の条件が満たされた場合に、グループの中心を表わすベクトルと、前記グループに含まれる個々の文字列を表わす個々のベクトルとの距離、および、前記グループに含まれる個々の文字列の長さを用いて前記グループから選択された文字列に基づいて新たなナレッジを生成する
請求項10に記載のナレッジ生成システム。
【請求項14】
ナレッジ生成手段は、新たなナレッジとして、グループから選択した文字列に含まれる各単語と所定の事象との組合せを生成する
請求項1から請求項13のうちのいずれか1項に記載のナレッジ生成システム。
【請求項15】
ナレッジ生成システムは、看護師業務のナレッジ生成に適用される
請求項1から
請求項14のうちのいずれか1項に記載のナレッジ生成システム。
【請求項16】
事象に対応する原因または対処方法を表わす情報であるナレッジを記憶するナレッジ記憶手段を備えるコンピュータが、
所定の事象を表す文字列に含まれる各単語を全て含む文を、前記所定の事象に関連した文であると判定する判定処理、および、前記所定の事象に対応する既存のナレッジに含まれている原因または対処方法を示す1つ以上の単語のうちの一部の単語しか含んでいないか、あるいは、その全ての単語を含んでいない文を、既存のナレッジと異なる内容を含む文であると判定する判定処理を行うことによって、過去に作成された業務記録の中から、前記所定の事象に関連した文であって、かつ、当該所定の事象に対応する既存のナレッジと異なる内容を含む文を抽出する前処理用文抽出処理、
前記前処理用文抽出処理によって抽出された文から前記所定の事象を表わす文節を除去した文字列を生成する文字列生成処理、
前記文字列生成処理によって生成された文字列をグルーピングするグルーピング処理、
前記所定の事象を表す文字列に含まれる各単語を全て含む文を、前記所定の事象に関連した文であると判定する判定処理、および、前記所定の事象に対応する既存のナレッジに含まれている原因または対処方法を示す1つ以上の単語のうちの一部の単語しか含んでいないか、あるいは、その全ての単語を含んでいない文を、既存のナレッジと異なる内容を含む文であると判定する判定処理を行うことによって、未確定の業務記録の中から、
前記所定の事象に関連した文であって、かつ、当該所定の事象
に対応する既存のナレッジと異なる内容を含む文を抽出する文抽出処理、
前記グルーピング処理によってグルーピングされた文字列のグループのうち複数の文字列を含むグループの各々と、
前記文抽出処理によって抽出された前記文から、前記所定の事象を表す文節を除去することによって得られる第1の文字列との類似度に基づいて、前記複数の文字列を含むグループのいずれかを選択するグループ選択処理、
選択された前記複数の文字列を含むグループに含まれる文字列を第2の文字列として選択する文字列選択処理、
前記業務記録内の前記第1の文字列を、文字列選択処理で選択された前記第2の文字列に置き換える置き換え処理、および、
前記第1の文字列が前記第2の文字列に置き換えられた業務記録が確定される状況に関する所定の条件が満たされた場合、前記グループに含まれる文字列のいずれかに基づいて新たなナレッジを生成するナレッジ生成処理を実行する
ことを特徴とするナレッジ生成方法。
【請求項17】
事象に対応する原因または対処方法を表わす情報であるナレッジを記憶するナレッジ記憶手段を備えるコンピュータに搭載されるナレッジ生成プログラムであって、
前記コンピュータに、
所定の事象を表す文字列に含まれる各単語を全て含む文を、前記所定の事象に関連した文であると判定する判定処理、および、前記所定の事象に対応する既存のナレッジに含まれている原因または対処方法を示す1つ以上の単語のうちの一部の単語しか含んでいないか、あるいは、その全ての単語を含んでいない文を、既存のナレッジと異なる内容を含む文であると判定する判定処理を行うことによって、過去に作成された業務記録の中から、前記所定の事象に関連した文であって、かつ、当該所定の事象に対応する既存のナレッジと異なる内容を含む文を抽出する前処理用文抽出処理、
前記前処理用文抽出処理によって抽出された文から前記所定の事象を表わす文節を除去した文字列を生成する文字列生成処理、
前記文字列生成処理によって生成された文字列をグルーピングするグルーピング処理、
前記所定の事象を表す文字列に含まれる各単語を全て含む文を、前記所定の事象に関連した文であると判定する判定処理、および、前記所定の事象に対応する既存のナレッジに含まれている原因または対処方法を示す1つ以上の単語のうちの一部の単語しか含んでいないか、あるいは、その全ての単語を含んでいない文を、既存のナレッジと異なる内容を含む文であると判定する判定処理を行うことによって、未確定の業務記録の中から、
前記所定の事象に関連した文であって、かつ、当該所定の事象
に対応する既存のナレッジと異なる内容を含む文を抽出する文抽出処理、
前記グルーピング処理によってグルーピングされた文字列のグループのうち複数の文字列を含むグループの各々と、
前記文抽出処理によって抽出された前記文から、前記所定の事象を表す文節を除去することによって得られる第1の文字列との類似度に基づいて、前記複数の文字列を含むグループのいずれかを選択するグループ選択処理、
選択された前記複数の文字列を含むグループに含まれる文字列を第2の文字列として選択する文字列選択処理、
前記業務記録内の前記第1の文字列を、文字列選択処理で選択された前記第2の文字列に置き換える置き換え処理、および、
前記第1の文字列が前記第2の文字列に置き換えられた業務記録が確定される状況に関する所定の条件が満たされた場合、前記グループに含まれる文字列のいずれかに基づいて新たなナレッジを生成するナレッジ生成処理
を実行させるためのナレッジ生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、業務上生じる事象に対応する原因または対処方法を表わす情報であるナレッジを生成するナレッジ生成システム、ナレッジ生成方法およびナレッジ生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者アセスメントとは、看護師の業務上生じる事象に対応する原因または対処方法を特定することである。患者アセスメントは、看護師の業務の中でも重要なものの1つである。看護師は、正確に、早く、漏れなく、患者アセスメントを行えなければ、適切な看護を行えない。なお、この場合、事象の例として、例えば、「SAT(Saturation)低下」、「血圧低下」、「脈拍低下」等が挙げられる。ここでは、「SAT」は、血中酸素濃度を意味する。
【0003】
なお、特許文献1には、コンピュータデバイスが、期限内に完了すべき患者ケアの指示を含むクリニカルプロトコルに基づいて、クリニカルコンディションを表わす患者情報をモニタリングし、モニタリングの結果に基づいて、ユーザの患者ケアの指示を提供すること等が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、医療の質の改善に重要な影響を及ぼすバリアンスを効率よく絞り込み、その発生原因となる診療行為を抽出することを支援するシステムが記載されている。特許文献2に記載された発明において、バリアンスとは、標準的な診療計画と実際の診療との差異である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2017-504103号公報
【文献】特開2007-108814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ベテランの看護師は、患者アセスメントを行えるが、新人の看護師にとっては、患者アセスメントは難しい。ベテランの看護師は、例えば、経験によって得た知識を用いて患者アセスメントを行う。また、ベテランの看護師は、患者の状態に応じて、患者に生じた事象の原因や対処方法を、その場で判断し、素早く対処を進めていく。しかし、事象に対応する原因や対処方法のバリエーションが多い等の理由により、事象に対応する原因や対処方法を表わす情報(以下、ナレッジと記す。)を文書化する余裕がない。従って、ナレッジを網羅的に文書化することは、難しい。そのため、新人の看護師がベテランの看護師から十分なナレッジを受け継ぐことが困難となっていて、新人の看護師にとって、患者アセスメントは難しいものとなっている。
【0007】
また、新人にナレッジを伝えるために、ベテランの看護師にナレッジの聞き取りを行って文書化することが考えられるが、この方法は、ベテランの看護師等に新たな業務負荷が多く生じるので好ましくない。また、ベテランの看護師と一緒に新人が業務を行い、ベテランと一緒に業務を行う過程で新人がナレッジを憶えることも考えられる。しかし、新人とベテランとが一緒に作業を行える期間も限られているため、新人は十分なナレッジを憶えることは困難である。
【0008】
そのため、通常業務を遂行する過程でナレッジを生成できることが好ましい。このことは、看護師業務に限らず、他の種々の業務(例えば、工場での業務等)にも当てはまる。
【0009】
そこで、本発明は、作業者が通常業務を遂行する過程でナレッジを新たに生成することができるナレッジ生成システム、ナレッジ生成方法およびナレッジ生成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるナレッジ生成システムは、事象に対応する原因または対処方法を表わす情報であるナレッジを記憶するナレッジ記憶手段と、所定の事象を表す文字列に含まれる各単語を全て含む文を、前記所定の事象に関連した文であると判定する判定処理、および、前記所定の事象に対応する既存のナレッジに含まれている原因または対処方法を示す1つ以上の単語のうちの一部の単語しか含んでいないか、あるいは、その全ての単語を含んでいない文を、既存のナレッジと異なる内容を含む文であると判定する判定処理を行うことによって、過去に作成された業務記録の中から、前記所定の事象に関連した文であって、かつ、当該所定の事象に対応する既存のナレッジと異なる内容を含む文を抽出する前処理用文抽出手段と、前記前処理用文抽出手段によって抽出された文から前記所定の事象を表わす文節を除去した文字列を生成する文字列生成手段と、前記文字列生成手段によって生成された文字列をグルーピングするグルーピング手段と、前記所定の事象を表す文字列に含まれる各単語を全て含む文を、前記所定の事象に関連した文であると判定する判定処理、および、前記所定の事象に対応する既存のナレッジに含まれている原因または対処方法を示す1つ以上の単語のうちの一部の単語しか含んでいないか、あるいは、その全ての単語を含んでいない文を、既存のナレッジと異なる内容を含む文であると判定する判定処理を行うことによって、未確定の業務記録の中から、前記所定の事象に関連した文であって、かつ、当該所定の事象に対応する既存のナレッジと異なる内容を含む文を抽出する文抽出手段と、前記グルーピング手段によってグルーピングされた文字列のグループのうち複数の文字列を含むグループの各々と、前記文抽出手段によって抽出された前記文から、前記所定の事象を表す文節を除去することによって得られる第1の文字列との類似度に基づいて、前記複数の文字列を含むグループのいずれかを選択するグループ選択手段と、選択された前記複数の文字列を含むグループに含まれる文字列を第2の文字列として選択する文字列選択手段と、前記業務記録内の前記第1の文字列を、文字列選択手段によって選択された前記第2の文字列に置き換える置き換え手段と、前記第1の文字列が前記第2の文字列に置き換えられた業務記録が確定される状況に関する所定の条件が満たされた場合、前記グループに含まれる文字列のいずれかに基づいて新たなナレッジを生成するナレッジ生成手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によるナレッジ生成方法は、事象に対応する原因または対処方法を表わす情報であるナレッジを記憶するナレッジ記憶手段を備えるコンピュータが、所定の事象を表す文字列に含まれる各単語を全て含む文を、前記所定の事象に関連した文であると判定する判定処理、および、前記所定の事象に対応する既存のナレッジに含まれている原因または対処方法を示す1つ以上の単語のうちの一部の単語しか含んでいないか、あるいは、その全ての単語を含んでいない文を、既存のナレッジと異なる内容を含む文であると判定する判定処理を行うことによって、過去に作成された業務記録の中から、前記所定の事象に関連した文であって、かつ、当該所定の事象に対応する既存のナレッジと異なる内容を含む文を抽出する前処理用文抽出処理、前記前処理用文抽出処理によって抽出された文から前記所定の事象を表わす文節を除去した文字列を生成する文字列生成処理、前記文字列生成処理によって生成された文字列をグルーピングするグルーピング処理、前記所定の事象を表す文字列に含まれる各単語を全て含む文を、前記所定の事象に関連した文であると判定する判定処理、および、前記所定の事象に対応する既存のナレッジに含まれている原因または対処方法を示す1つ以上の単語のうちの一部の単語しか含んでいないか、あるいは、その全ての単語を含んでいない文を、既存のナレッジと異なる内容を含む文であると判定する判定処理を行うことによって、未確定の業務記録の中から、前記所定の事象に関連した文であって、かつ、当該所定の事象に対応する既存のナレッジと異なる内容を含む文を抽出する文抽出処理、前記グルーピング処理によってグルーピングされた文字列のグループのうち複数の文字列を含むグループの各々と、前記文抽出処理によって抽出された前記文から、前記所定の事象を表す文節を除去することによって得られる第1の文字列との類似度に基づいて、前記複数の文字列を含むグループのいずれかを選択するグループ選択処理、選択された前記複数の文字列を含むグループに含まれる文字列を第2の文字列として選択する文字列選択処理、前記業務記録内の前記第1の文字列を、文字列選択処理で選択された前記第2の文字列に置き換える置き換え処理、および、前記第1の文字列が前記第2の文字列に置き換えられた業務記録が確定される状況に関する所定の条件が満たされた場合、前記グループに含まれる文字列のいずれかに基づいて新たなナレッジを生成するナレッジ生成処理を実行することを特徴とする。
【0012】
本発明によるナレッジ生成プログラムは、事象に対応する原因または対処方法を表わす情報であるナレッジを記憶するナレッジ記憶手段を備えるコンピュータに搭載されるナレッジ生成プログラムであって、前記コンピュータに、所定の事象を表す文字列に含まれる各単語を全て含む文を、前記所定の事象に関連した文であると判定する判定処理、および、前記所定の事象に対応する既存のナレッジに含まれている原因または対処方法を示す1つ以上の単語のうちの一部の単語しか含んでいないか、あるいは、その全ての単語を含んでいない文を、既存のナレッジと異なる内容を含む文であると判定する判定処理を行うことによって、過去に作成された業務記録の中から、前記所定の事象に関連した文であって、かつ、当該所定の事象に対応する既存のナレッジと異なる内容を含む文を抽出する前処理用文抽出処理、前記前処理用文抽出処理によって抽出された文から前記所定の事象を表わす文節を除去した文字列を生成する文字列生成処理、前記文字列生成処理によって生成された文字列をグルーピングするグルーピング処理、前記所定の事象を表す文字列に含まれる各単語を全て含む文を、前記所定の事象に関連した文であると判定する判定処理、および、前記所定の事象に対応する既存のナレッジに含まれている原因または対処方法を示す1つ以上の単語のうちの一部の単語しか含んでいないか、あるいは、その全ての単語を含んでいない文を、既存のナレッジと異なる内容を含む文であると判定する判定処理を行うことによって、未確定の業務記録の中から、前記所定の事象に関連した文であって、かつ、当該所定の事象に対応する既存のナレッジと異なる内容を含む文を抽出する文抽出処理、前記グルーピング処理によってグルーピングされた文字列のグループのうち複数の文字列を含むグループの各々と、前記文抽出処理によって抽出された前記文から、前記所定の事象を表す文節を除去することによって得られる第1の文字列との類似度に基づいて、前記複数の文字列を含むグループのいずれかを選択するグループ選択処理、選択された前記複数の文字列を含むグループに含まれる文字列を第2の文字列として選択する文字列選択処理、前記業務記録内の前記第1の文字列を、文字列選択処理で選択された前記第2の文字列に置き換える置き換え処理、および、前記第1の文字列が前記第2の文字列に置き換えられた業務記録が確定される状況に関する所定の条件が満たされた場合、前記グループに含まれる文字列のいずれかに基づいて新たなナレッジを生成するナレッジ生成処理を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、作業者が通常業務を遂行する過程でナレッジを新たに生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態のナレッジ生成システムの構成例を示すブロック図である。
【
図3】前処理用文抽出部によって抽出される文の例を示す説明図である。
【
図4】
図3に示す文1,2から生成されたインスタンスの例を示す説明図である。
【
図5】n次元ベクトルの各要素と単語との対応付けの例を示す説明図である。
【
図6】グルーピング部によって定められたグループの例を示す模式図である。
【
図7】端末装置のディスプレイ装置に表示された未確定の看護記録の例を示す模式図である。
【
図8】端末装置のディスプレイ装置に表示された置き換え後の看護記録の例を示す模式図である。
【
図9】置き換え後の看護記録の表示画面の他の例を示す模式図である。
【
図10】インスタンス毎に得られる距離、長さ、および両者の和の例を示す模式図である。
【
図11】前処理の処理経過の例を示すフローチャートである。
【
図12】ナレッジ生成処理の処理経過の例を示すフローチャートである。
【
図13】ナレッジ生成処理の処理経過の例を示すフローチャートである。
【
図14】本発明の実施形態のナレッジ生成システムに係るコンピュータの構成例を示す概略ブロック図である。
【
図15】本発明のナレッジ生成システムの概要を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態における「文」は、文以外の記述であってもよい。同様に、以下の実施形態における「文字列」は、文字列以外の記述であってもよい。また、同様に、以下の実施形態における「文節」は、文節以外の記述であってもよい。
【0016】
図1は、本発明の実施形態のナレッジ生成システム20の構成例を示すブロック図である。ナレッジ生成システム20は、事象記憶部1と、既存ナレッジ記憶部2と、業務記録記憶部3と、前処理用文抽出部4と、前処理用インスタンス生成部5と、グルーピング部6と、グループ記憶部7と、通信インタフェース8と、文抽出部9と、インスタンス生成部10と、グループ選択部11と、インスタンス選択部12と、置き換え部13と、ナレッジ生成部14とを備える。
【0017】
ナレッジ生成システム20の処理は、大きく分けて、前処理と、ナレッジ生成処理とに分けられる。前処理では、ナレッジ生成システム20は、過去の業務記録に基づいてインスタンスを生成し、そのインスタンスをグルーピングする。インスタンスについては後述する。ナレッジ生成処理では、ナレッジ生成システム20は、作業者によって新たな業務記録が作成されるときに、ナレッジを新たに作成する。
【0018】
本発明は、一連の作業の中に業務記録作成が含まれている業務に適用可能である。以下、説明を分かり易くするため、本発明が、看護師業務に適用される場合を例にして説明する。この場合、看護師が作業者に該当する。また、以下の説明では、作業記録を看護記録と記す。それに合わせて、以下では、便宜的に、業務記録記憶部3を、看護記録記憶部3と記す。
【0019】
また、ナレッジ生成システム20は、通信ネットワーク30を介して、端末装置31と通信を行う。端末装置31は、看護師によって使用される。端末装置31は、ディスプレイ装置(図示略)を備えるとともに、文字入力が可能な端末装置であり、端末装置31の例として、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等が挙げられる。通信ネットワーク30の例として、例えば、LAN(Local Area Network)やインターネット等が挙げられるが、通信ネットワーク30は、これらの例に限定されない。
図1では、1台の端末装置31を図示しているが、ナレッジ生成システム20と通信を行う端末装置31は複数台、存在していてもよい。
【0020】
事象記憶部1は、予め定められた事象を記憶する記憶装置である。予め定められた事象が複数個存在し、事象記憶部1が複数の事象を記憶していてもよい。例えば、事象記憶部1は、「SAT低下」、「血圧低下」、「脈拍低下」等の事象を記憶する。事象記憶部1に記憶される事象は、文字列で表されている。なお、「SAT低下」は、血中酸素濃度の低下を意味する。以下の説明では、「SAT低下」に着目して説明する。
【0021】
なお、「事象」を「シーン」と称してもよい。
【0022】
既存ナレッジ記憶部2は、既存のナレッジを予め記憶する記憶装置である。前述のように、ナレッジとは、事象に対する原因または対処方法を表わす情報である。
図2は、既存ナレッジ記憶部2に記憶されている既存のナレッジの例を示す説明図である。
図2に示す例では、各ナレッジは、事象を示す文字列42と、その事象に対応する原因または対処方法を示す1つ以上の単語41との組で表される。
図2に示す例では、事象に対応する原因または対処方法を示す1つ以上の単語41を、波括弧で囲んで示している。
図2に示す1番目のナレッジは、SAT低下の原因がSATモニタの不良であったことを表わしている。また、
図2に示す2番目のナレッジは、SAT低下の原因が酸素チューブが外れていたことであることを表わしている。
図2では、事象の原因を表わすナレッジを示しているが、事象への対処方法を表わす既存のナレッジが既存ナレッジ記憶部2に記憶されていてもよい。また、SAT低下以外の事象の既存のナレッジが既存ナレッジ記憶部2に記憶されていてもよい。
【0023】
看護記録記憶部3は、これまでに作成された過去の看護記録を記憶する記憶装置である。看護記録記憶部3は、テキストデータで表された看護記録を記憶する。ただし、看護記録記憶部3に記憶されている看護記録は、最初からテキストデータとして作成されたものであってもよく、あるいは、音声データからテキストデータに変換されたものであってもよい。看護記録は、複数の文を含んでいる。
【0024】
前処理用文抽出部4は、過去に作成された看護記録(すなわち、看護記録記憶部3に記憶されている看護記録)の中から、予め定められた事象に関連した文であって、かつ、その事象に対応する既存のナレッジと異なる内容を含む文を抽出する。
【0025】
予め定められた事象とは、事象記憶部1に記憶されている事象である。ここでは、予め定められた事象が「SAT低下」であるものとして説明する。なお、予め定められた事象が複数存在する場合には、ナレッジ生成システム20は、予め定められた事象毎に、同様の処理を行えばよい。
【0026】
前処理用文抽出部4は、予め定められた事象に関連した文であるか否かを、以下のように判定する。前処理用文抽出部4は、事象を表わす文字列に含まれる各単語を全て含む文を、その事象に関連した文であると判定する。また、前処理用文抽出部4は、事象を表わす文字列に含まれる各単語のうちの一部の単語しか含んでいないか、あるいは、その全ての単語を含んでいない文を、その事象に関連していない文であると判定する。例えば、「SAT低下」という文字列には、「SAT」、「低下」という単語が含まれる。従って、前処理用文抽出部4は、「SAT」、「低下」という各単語を全て含む文を、「SAT低下」に関連した文であると判定する。また、前処理用文抽出部4は、「SAT」および「低下」のうち、一方の単語しか含んでいない文や、両方を含んでいない文を、SAT低下」に関連していない文であると判定する。
【0027】
また、前処理用文抽出部4は、事象に対応する既存のナレッジと異なる内容を含む文であるか否かを、以下のように判定する。前処理用文抽出部4は、その事象に対応する既存のナレッジに含まれている原因または対処方法を示す1つ以上の単語41のうちの一部の単語しか含んでいないか、あるいは、その全ての単語を含んでいない文を、既存のナレッジと異なる内容を含む文であると判定する。また、前処理用文抽出部4は、その事象に対応する既存のナレッジに含まれている原因または対処方法を示す1つ以上の単語41を全て含んでいる文を、既存のナレッジと同じ内容を含む文であると判定する。例えば、
図2に示す1番目のナレッジを例にして説明する。過去の看護記録に含まるある文が、「SATモニタ」、「不良」という二つの単語のうち、一方しか含んでいないか、あるいは、両方とも含んでいない場合には、前処理用文抽出部4は、その文が、そのナレッジと異なる内容を含む文であると判定する。また、ある文が、「SATモニタ」、「不良」という二つの単語を両方とも含んでいる場合には、前処理用文抽出部4は、その文が、そのナレッジと同じ内容を含む文であると判定する。
【0028】
前処理用文抽出部4は、過去の看護記録に含まれている文毎に、予め定められた事象に関連した文であるか否かの判定、および、その事象に対応する既存のナレッジと異なる内容を含む文であるか否かの判定を行い、予め定められた事象に関連した文であって、かつ、その事象に対応する既存のナレッジと異なる内容を含む文を抽出する。
【0029】
前処理用文抽出部4によって抽出される文の例を、
図3に示す。
図3に示す文1および文2は、いずれも、「SAT」および「低下」の両方の単語を含んでいる。また、文1および文2は、
図2に示す1番目の既存のナレッジにおける「SATモニタ」および「不良」という単語のいずれも含んでおらず、
図2に示す2番目の既存のナレッジにおける「酸素チューブ」および「外れ」という単語のいずれも含んでいない。従って、文1および文2は、いずれも、「SAT低下」という事象に関連した文であって、かつ、
図2に示す2つの既存のナレッジのいずれとも異なる内容を含む文である。
【0030】
前処理用インスタンス生成部5は、前処理用文抽出部4によって抽出された文から、事象を表わす文節を除去した事象文節除去文字列を生成する。事象文節除去文字列とは、抽出された文から、事象を表わす文節を除去した文字列である。抽出された文から、事象を表わす文節を除去することによって、事象文節除去文字列を生成できる。以下の説明では、事象文節除去文字列をインスタンスと称する。インスタンスは、事象に対応する原因または対処方法を表わす可能性のある文字列であると言える。
【0031】
また、事象を表わす文節は、事象を表わす文字列に含まれる各単語を全て含む文節である。例えば、「SAT低下」という文字列には、「SAT」、「低下」という単語が含まれる。この場合、前処理用インスタンス生成部5は、前処理用文抽出部4によって抽出された文から、「SAT」および「低下」という2つの単語を含む文節を除去することによって、インスタンスを生成する。
【0032】
例えば、
図3に示す文1では、「SAT低下のため、」という文節に、「SAT」および「低下」という2つの単語が全て含まれている。従って、前処理用インスタンス生成部5は、文1から「SAT低下のため、」という文節を削除することによって、「たん吸引を実施。」というインスタンスを生成する。
【0033】
また、例えば、
図3に示す文2では、「SAT90%に低下し、」という文節に、「SAT」および「低下」という2つの単語が全て含まれている。従って、前処理用インスタンス生成部5は、文2から「SAT90%に低下し、」という文節を削除することによって、「喀痰がたまって呼吸しにくくなっていたので、痰を吸引しました。」というインスタンスを生成する。
【0034】
このように生成されたインスタンスの例を
図4に示す。
図4に示すインスタンス1,2は、
図3に示す文1,2から生成されたものである。
図4では、2つのインスタンスを示しているが、過去の看護記録に基づいて得られる、「SAT低下」に関するインスタンスはこの2つのインスタンスに限定されない。
【0035】
なお、ナレッジ生成システム20は、単語の類義語辞書を保持していてもよい。そして、前処理用文抽出部4は、単語の類義語を用いて、事象に関連した文であるか否かを判定してもよく、前処理用インスタンス生成部5は、単語の類義語を用いて、インスタンスを生成してもよい。
【0036】
グルーピング部6は、前処理用インスタンス生成部5によってえられたインスタンスをグルーピングする。グルーピング部6は、インスタンスのグルーピングを事象毎に実行する。
【0037】
グルーピング部6は、まず、インスタンス毎に、インスタンスを表わすベクトルを定める。以下、グルーピング部6がインスタンスを表わすベクトルを定める動作について説明する。インスタンスを表わすベクトルは、n次元ベクトルであるとする。n次元ベクトルの各要素は、それぞれ予め定められた単語に対応している。
図5は、n次元ベクトルの各要素と単語との対応付けの例を示す説明図である。
図5に示す例では、n次元ベクトルの1番目の要素は、「痰」に対応すると定められている。同様に、2番目の要素は、「吸引」に対応すると定められ、3番目の要素は、「つまって」に対応すると定められ、4番目の要素は、「実施」に対応すると定められ、n番目の要素は、「寝たきり」に対応すると定められている。
【0038】
グルーピング部6は、1番目の要素に対応する単語(上記の例では「痰」)が、着目しているインスタンスに含まれているならば、1番目の要素の値を“1”に定め、1番目の要素に対応する単語が着目しているインスタンスに含まれていないならば、1番目の要素の値を“0”に定める。グルーピング部6は、この処理を2番目の要素からn番目の要素についても、それぞれ行う。この結果、インスタンスを表わすベクトルが得られる。例えば、上記の例において、「痰吸引を実施」というインスタンスに関しては、(1,1,0,1,0,・・・,0)Tというベクトルが得られる。なお、Tは転置を意味する。
【0039】
グルーピング部6は、「SAT低下」という事象に関して得られたインスタンス毎に、上記のように、ベクトルを定める。個々のインスタンスを表わすベクトルは、いずれもn次元ベクトルである。
【0040】
グルーピング部6は、「SAT低下」に関して得られた個々のインスタンスを表わす個々のベクトルに基づいて、その個々のインスタンスをグルーピングする。より具体的には、グルーピング部6は、個々のインスタンスを表わす個々のベクトル同士の距離が近ければ、それらのインスタンスを同じグループ内に含め、個々のインスタンスを表わす個々のベクトル同士の距離が遠ければ、それらのインスタンスを異なるグループに含めるようにして、「SAT低下」に関して得られたインスタンスをグルーピングする。このようなグルーピングの方法では、ベクトルをグルーピングしているということもでき、このようなグルーピングの方法の代表的な例として、K-means法が挙げられる。また、K-means法によって、ベクトルをグルーピングした場合、グループの中心を表わすベクトルも定めることができる。後述するように、グループの中心を表わすベクトルを用いる場合には、各グループの中心を表わすベクトルも定めることができるグルーピング方法を採用すればよく、その代表的な例が、K-means法である。以下の説明では、グルーピング部6が、「SAT低下」に関して得られた個々のインスタンスを表わす個々のベクトルをK-means法でグルーピングすることによって、その個々のインスタンスをグルーピングする場合を例にして説明する。ただし、個々のインスタンスを表わす個々のベクトルに基づいてインスタンスをグルーピングする方法であれば、グルーピング部6は、K-means法以外の方法によって、インスタンスをグルーピングしてもよい。
【0041】
また、グルーピング部6は、いずれのグループにも含まれないインスタンスが生じた場合には、そのインスタンスのみを含むグループを定めればよい。
【0042】
グルーピング部6によって定められたグループ(インスタンスのグループ)の例を
図6に示す。
【0043】
グルーピング部6は、グルーピング処理の結果として得られたインスタンスの各グループを、グループ記憶部7に記憶させる。
【0044】
グループ記憶部7は、グルーピング処理の結果として得られたインスタンスの各グループを記憶する記憶装置である。
【0045】
換言すれば、グループ記憶部7は、過去の看護記録から得られた、事象に対応する原因または対処方法を表わす可能性のあるインスタンスをグルーピングすることによって得られたインスタンスのグループを記憶する。
【0046】
本実施形態では、グルーピング部6は、例えば、K-means法によって、ベクトルをグルーピングすることによってインスタンスをグルーピングし、ナレッジ生成処理でグループの中心を表わすベクトルを用いる場合には、各グループの中心を表わすベクトルも、グループ記憶部7に記憶させるものとする。
【0047】
グループは、ナレッジを生成するための文字列の候補をグルーピングしたものである。
【0048】
グルーピング部6がグルーピング結果をグループ記憶部7に記憶させるまでの処理が前処理に該当する。
【0049】
通信インタフェース8は、ナレッジ生成システム20が通信ネットワーク30を介して端末装置31と通信を行う際の通信インタフェースである。
【0050】
文抽出部9について説明する前に、看護師による看護記録の作成について説明する。看護師は、例えば、毎日、業務中に、看護記録を作成する業務を行う。このとき、看護師は端末装置31を用いて看護記録を作成する。前述のように、端末装置31は、ディスプレイ装置(図示略)を備えるとともに、文字入力が可能な端末装置である。文字入力の態様は、キーボード(図示略)による文字入力であってもよく、あるいは、マイクロフォン(図示略)によって入力された音声を文字に変換する入力態様であってもよい。看護師は、文字を入力して新たな看護記録を作成する。このとき、看護記録の確定操作が行われることによって、看護記録の作成が終了する。確定操作は、看護師自身が行う操作であってもよく、あるいは、看護師の上司が行う承認操作であってもよい。以下では、説明を簡単にするため、看護師自身が確定操作を行う場合を例にして説明する。
【0051】
端末装置31は、確定操作前では、入力された文字列で表される看護記録(未確定の看護記録)をディスプレイ装置に表示するとともに、その未確定の看護記録を、適宜、通信ネットワーク30を介して、ナレッジ生成システム20に送信する。
【0052】
文抽出部9は、通信インタフェース8を介して、その未確定の看護記録を受信する。そして、文抽出部9は、その未確定の看護記録の中から、予め定められた事象(事象記憶部1に記憶されている事象)に関連した文であって、かつ、その事象に対応する既存のナレッジと異なる内容を含む文を抽出する。既に説明したように、予め定められた事象が複数存在する場合には、ナレッジ生成システム20は、予め定められた事象毎に、同様の処理を行えばよい。
【0053】
文抽出部9が、予め定められた事象に関連した文であるか否かを判定する処理は、前処理用文抽出部4が行う判定処理と同様である。すなわち、文抽出部9は、事象を表わす文字列に含まれる各単語を全て含む文を、その事象に関連した文であると判定する。また、文抽出部9は、事象を表わす文字列に含まれる各単語のうちの一部の単語しか含んでいないか、あるいは、その全ての単語を含んでいない文を、その事象に関連していない文であると判定する。
【0054】
文抽出部9が、事象に対応する既存のナレッジと異なる内容を含む文であるか否かを判定する処理も、前処理用文抽出部4が行う判定処理と同様である。すなわち、文抽出部9は、その事象に対応する既存のナレッジに含まれている原因または対処方法を示す1つ以上の単語41(
図2参照)のうちの一部の単語しか含んでいないか、あるいは、その全ての単語を含んでいない文を、既存のナレッジと異なる内容を含む文であると判定する。また、文抽出部9は、その事象に対応する既存のナレッジに含まれている原因または対処方法を示す1つ以上の単語41を全て含んでいる文を、既存のナレッジと同じ内容を含む文であると判定する。
【0055】
文抽出部9は、未確定の看護記録に含まれている文毎に、予め定められた事象に関連した文であるか否かの判定、および、その事象に対応する既存のナレッジと異なる内容を含む文であるか否かの判定を行い、予め定められた事象に関連した文であって、かつ、その事象に対応する既存のナレッジと異なる内容を含む文を抽出する。
【0056】
図7は、端末装置31のディスプレイ装置に表示された未確定の看護記録の例を示す模式図である。端末装置31は、画面内の記録表示欄51に、看護師から入力された看護記録を表示する。確定ボタン52は、看護師が確定操作を行うためのGUI(Graphical User Interface)である。確定ボタン52がクリックされる前の時点で、端末装置31は、記録表示欄51に表示している看護記録(未確定の看護記録)を、ナレッジ生成システム20に送信する。
【0057】
文抽出部9は、端末装置31から、
図7に例示する未確定の看護記録を受信したとする。
図7に例示する看護記録において、「SAT低下で、喀痰がつまっていたので、吸引しました。」という文(以下、文Aと記す。)は、「SAT」および「低下」の両方の単語を含んでいる。従って、文抽出部9は、文Aを、「SAT低下」に関連した文であると判定する。
【0058】
また、文Aは、
図2に示す1番目の既存のナレッジにおける「SATモニタ」および「不良」という単語のいずれも含んでおらず、
図2に示す2番目の既存のナレッジにおける「酸素チューブ」および「外れ」という単語のいずれも含んでいない。従って、文抽出部9は、文Aを、
図2に示す2つの既存のナレッジのいずれとも異なる内容を含む文であると判定する。
【0059】
従って、本例では、文抽出部9は、「SAT低下」に関連した文であって、かつ、「SAT低下」に対応する既存のナレッジ(
図2参照)と異なる内容を含む文として、文Aを抽出する。
【0060】
インスタンス生成部10は、文抽出部9によって抽出された文から、事象を表わす文節を除去した事象文節除去文字列(インスタンス)を生成する。既に説明したように、事象文節除去文字列とは、抽出された文から、事象を表わす文節を除去した文字列である。また、事象文節除去文字列をインスタンスと称する。
【0061】
インスタンス生成部10がインスタンスを生成する処理は、前処理用インスタンス生成部5がインスタンスを生成する処理と同様である。すなわち、インスタンス生成部10は、文抽出部9によって抽出された文から、事象を表わす文字列に含まれる各単語を全て含む文節を除去することによって、インスタンスを生成すればよい。例えば、前述の文Aに含まれる「SAT低下で、」という文節は、「SAT」および「低下」という2つの単語が全て含まれている。「SAT低下で、」という文節は、「SAT低下」という事象を表わす文節である。よって、本例では、インスタンス生成部10は、文Aから「SAT低下で、」という文節を除去することによって、「喀痰がつまっていたので、吸引しました。」というインスタンスを生成する。以下、インスタンス生成部10によって生成されるインスタンスを符号Xで表す。
【0062】
グループ選択部11は、前処理によってグループ記憶部7に記憶されているグループのうち、複数のインスタンスを含む個々のグループと、インスタンスXとの類似度に基づいて、グループ記憶部7に記憶されているグループの中から、複数のインスタンスを含むグループを1つ選択する。従って、1つのインスタンスのみを含むグループが選択されることはない。例えば、「SAT低下」という事象に関して、
図6に模式的に示す3つのグループが導出されたとする。
図6に示す3つのグループのうち、1つのグループは、1つのインスタンスしか含まない(
図6参照)。このように、1つのインスタンスしか含まないグループは、グループ選択部11の選択対象から除外される。
【0063】
本実施形態では、グループ選択部11は、インスタンスXを表わすベクトルを定める。グループ選択部11がインスタンスXを表わすベクトルを定める動作は、グルーピング部6がインスタンスを表わすベクトルを定める動作と同様であり、説明を省略する。そして、グループ選択部11は、複数のインスタンスを含む個々のグループの中心を表わす個々のベクトルと、インスタンスXを表わすベクトルとの間の距離を、個々のグループとインスタンスXとの類似度として算出する。この場合、距離が小さいほど類似度が高いことを意味し、距離が大きいほど類似度が低いことを意味する。グループ選択部11は、インスタンスXとの類似度が最も高いグループを選択する。換言すれば、グループ選択部11は、インスタンスXを表わすベクトルとグループ中心を表わすベクトルとの間の距離が最小となるグループを選択する。以下、2つのベクトルの間の距離を、2つのベクトルの距離と表現する。
【0064】
図6に模式的に示す3つのグループのうち、複数のインスタンスを含むグループは、グループ61,62である。従って、グループ選択部11は、グループ61の中心を表わすベクトルとインスタンスXを表わすベクトルとの距離、および、グループ62の中心を表わすベクトルとインスタンスXを表わすベクトルとの距離をそれぞれ算出する。そして、グループ選択部11は、最小となる距離に対応するグループを選択する。
【0065】
本例では、インスタンスXが「喀痰がつまっていたので、吸引しました。」であり、グループ選択部11がグループ61を選択したものとする。
【0066】
インスタンス選択部12は、グループ選択部11によって選択されたグループから、インスタンスを1つ選択する。
【0067】
例えば、インスタンス選択部12は、選択されたグループから、インスタンスXとの類似度が最も高いインスタンスを選択してもよい。この場合、インスタンス選択部12は、そのグループに含まれる個々のインスタンスを表わす個々のベクトルと、インスタンスXを表わすベクトルとの距離をそれぞれ算出する。前述のように、距離が小さいほど類似度が高いことを意味し、距離が大きいほど類似度が低いことを意味する。インスタンス選択部12は、インスタンスXを表わすベクトルとの距離が最小となるベクトルに対応するインスタンスを選択すればよい。なお、インスタンス選択部12がインスタンスを選択する方法は、上記の方法に限定されない。
【0068】
例えば、インスタンス選択部12は、選択されたグループに含まれる個々の文字列の長さに基づいて、そのグループから文字列を選択してもよい。具体的には、インスタンス選択部12は、そのグループから、長さが最小になっているインスタンスを選択してもよい。インスタンスの長さは、インスタンスに含まれている文字数として定義されていてもよく、あるいは、インスタンスに含まれている単語の数として定義されていてもよい。
【0069】
また、例えば、インスタンス選択部12は、選択されたグループの中心を表わすベクトルと、そのグループに含まれる個々のインスタンスを表わす個々のベクトルとの距離に基づいて、そのグループからインスタンスを選択してもよい。具体的には、インスタンス選択部12は、選択されたグループの中心を表わすベクトルと、そのグループに含まれる個々のインスタンスを表わす個々のベクトルとの距離をそれぞれ算出し、その距離が最小となるインスタンスを選択してもよい。
【0070】
また、看護師は複数存在することが一般的であり、各看護師が、それぞれ所持している端末装置31を用いて看護記録を作成する。また、各看護師は、例えば、毎日、看護記録を作成する。従って、例えば、「SAT低下」という事象に関して、グループ選択部11によって同一のグループが複数回選択されることが生じ得る。
【0071】
グループ選択部11によって同一のグループが複数回選択される場合、インスタンス選択部12が、そのグループからインスタンスを選択する態様として、2つの態様が考えられる。
【0072】
第1のインスタンス選択態様は、同一のグループが複数回選択される場合において、インスタンス選択部12が、1回選択したインスタンスを再度選択することを許容して、そのグループからインスタンスを選択する選択態様である。
【0073】
第2のインスタンス選択態様は、同一のグループが複数回選択される場合において、インスタンス選択部12が、1回選択したインスタンスを再度選択することを許容しないで、そのグループからインスタンスを選択する選択態様である。換言すれば、第2のインスタンス選択態様は、同一のグループが複数回選択される場合において、インスタンス選択部12が、1回選択したインスタンスとは異なるインスタンスを選択する選択態様である。第2の選択態様では、インスタンス選択部12は、1回選択したインスタンスを選択対象から除外する。そして、インスタンス選択部12は、そのグループに含まれるインスタンスのうち、除外されずに残ったインスタンス(すなわち、未選択のインスタンス)の中からインスタンスを選択する。インスタンスを選択する方法は、前述のように、インスタンスXとの類似度が最も高いインスタンスを選択する方法であってもよく、長さが最小になっているインスタンスを選択する方法であってもよく、あるいは、グループの中心を表わすベクトルと、そのグループに含まれる個々のインスタンスを表わす個々のベクトルとの距離をそれぞれ算出し、その距離が最小となるインスタンスを選択する方法であってもよい。
【0074】
本実施形態では、第1のインスタンス選択態様も採用し得るし、また、第2のインスタンス選択態様も採用し得る。
【0075】
以下、インスタンス選択部12によって選択されるインスタンスを符号Yで表す。ここでは、インスタンスXが「喀痰がつまっていたので、吸引しました。」であり、インスタンス選択部12によってグループ61から選択されたインスタンスYが、「喀痰がたまって呼吸がしにくくなっていたので、痰を吸引しました。」であるものとする。
【0076】
置き換え部13は、端末装置31から受信した未確定の看護記録に含まれているインスタンスXをインスタンスYに置き換える。このとき、置き換え部13は、置き換え後の看護記録において、置き換えられた文字列(すなわち、インスタンスY)を、例えば、色付きの文字列としたり、下線付きの文字列としたりすることによって強調することを定める。なお、インスタンスYとインスタンスXとに共通の文字列が含まれている場合には、インスタンスYにおけるインスタンスXとの相違部分の文字列のみを強調するように定めてもよい。以下では、説明を簡単にするために、置き換え部13がインスタンスY全体を下線付きの文字列とすることで強調する場合を例にして説明する。
【0077】
置き換え部13は、上記のようにインスタンスXをインスタンスYに置き換えた看護記録を、通信インタフェース8を介して端末装置31に送信する。
【0078】
置き換え後の看護記録を受信した端末装置31は、その置き換え後の看護記録をディスプレイ装置に表示する。
図8は、端末装置31のディスプレイ装置に表示された置き換え後の看護記録の例を示す模式図である。
図8に示す例では、
図7における「喀痰がつまっていたので、吸引しました。」という文字列(上記の例におけるインスタンスX)が、「喀痰がたまって呼吸がしにくくなっていたので、痰を吸引しました。」という文字列(上記の例におけるインスタンスY)に置き換えられ、置き換えられた文字列は下線付きで表示されている。
【0079】
看護師は、端末装置31から未確定の看護記録を受信したナレッジ生成システム20の動作を認識する必要はなく、置き換え後の看護記録をディスプレイ装置で確認しながら、看護記録の作成を継続すればよい。置き換え後の看護記録において、置き換えられた文字列(インスタンスYに相当する文字列)に、看護師の意図と異なる表現や文言があれば、その文言を修正してもよい。また、看護師は、置き換えられた文字列全体を、元の文字列(インスタンスXに相当する文字列)に戻す修正を行ってもよい。あるいは、看護師は、置き換えられた文字列に、看護師の意図と異なる表現や文言がなければ、置き換えられた文字列を修正せずに、看護記録の作成を継続すればよい。
【0080】
看護記録の作成が完了し、新たな看護記録の内容が確定したと判断した場合、看護師は、確定ボタン52をクリックする。端末装置31は、確定ボタン52がクリックされると、看護記録が確定した旨の情報と、確定した看護記録と、置き換え部13によって置き換えられた文字列が看護師によって修正されたか否かを示す情報とを、ナレッジ生成システム20に送信する。
【0081】
なお、置き換え後の看護記録の表示画面は、
図8に示す例に限定されない。
図9は、置き換え後の看護記録の表示画面の他の例を示す模式図である。
図9に示す例において、端末装置31は、記録表示欄51に、置き換え前の看護記録を表示するとともに、第2の記録表示欄53を表示し、第2の記録表示欄53内に置き換え後の看護記録を表示する。また、端末装置31は、記録表示欄51に対応する確定ボタン52とは別に、第2の記録表示欄53に対応する確定ボタン54も表示する。端末装置31は、看護師の操作に応じて、記録表示欄51内の看護記録、または、第2の記録表示欄53内の看護記録を編集する。
【0082】
図9に示す例において、看護師が、記録表示欄51内の看護記録を編集し、確定ボタン52をクリックしたとする。このことは、置き換えられた文字列を元の文字列に戻す修正を行い、看護記録の作成を継続し、看護記録を確定したことと同義である。従って、この場合、端末装置31は、看護記録が確定した旨の情報と、確定した看護記録と、置き換え部13によって置き換えられた文字列が看護師によって修正されたことを示す情報とを、ナレッジ生成システム20に送信する。
【0083】
また、
図9に示す例において、看護師が、第2の記録表示欄53内の看護記録を編集してもよい。そして、看護師は、置き換えられた文字列を修正してもよく、あるいは、修正しなくてもよい。この点は、
図8に例示する画面で、看護記録の作成を継続する場合と同様である。そして、確定ボタン54がクリックされると、端末装置31は、看護記録が確定した旨の情報と、確定した看護記録と、置き換え部13によって置き換えられた文字列が看護師によって修正されたか否かを示す情報とを、ナレッジ生成システム20に送信する。置き換えられた文字列が看護師によって修正されたことを示す情報が送信されるか、置き換えられた文字列が看護師によって修正されなかったことを示す情報が送信されるかは、看護師が、置き換えられた文字列を修正したか否かに依存する。
【0084】
ナレッジ生成部14は、端末装置31が送信した上記の情報(看護記録が確定した旨の情報、確定した看護記録、および、置き換え部13によって置き換えられた文字列が看護師によって修正されたか否かを示す情報)を、通信インタフェース8を介して受信する。
【0085】
ナレッジ生成部14は、確定した看護記録を看護記録記憶部3に記憶させる。
【0086】
また、ナレッジ生成部14は、インスタンスXがインスタンスYに置き換えられた看護記録が確定される状況に関する所定の条件が満たされている場合、インスタンスYが含まれているグループ(前述の例では、
図6に例示するグループ61)から、インスタンスを選択し、そのインスタンスに基づいて、新たなナレッジを生成する。
【0087】
前述のように、看護師は複数存在することが一般的であり、各看護師が、それぞれ所持している端末装置31を用いて看護記録を作成する。また、各看護師は、例えば、毎日、看護記録を作成する。従って、例えば、「SAT低下」という事象に関して、グループ選択部11によって同一のグループが複数回選択されることが生じ得る。
【0088】
さらに、インスタンス選択部12が、1回選択したインスタンスを再度選択することを許容して、そのグループからインスタンスを選択する場合(第1のインスタンス選択態様)、同一のインスタンスが複数回選択されることが生じ得る。また、インスタンス選択部12が、1回選択したインスタンスを再度選択することを許容しないで、そのグループからインスタンスを選択する場合(第2のインスタンス選択態様)、同一のインスタンスが複数回選択されることはない。
【0089】
これらの点を踏まえ、インスタンスXがインスタンスYに置き換えられた看護記録が確定される状況に関する所定の条件の例や、ナレッジ生成部14がグループからインスタンスを選択する方法の例を説明する。
【0090】
まず、第1のインスタンス選択態様が採用される場合の例について説明する。
【0091】
[例1]
所定の条件は、「インスタンス選択部12によって同一のグループから同一のインスタンスが複数回選択され、そのインスタンスによってインスタンスXが置き換えられた看護記録が、そのインスタンスに対する修正が加えられずに看護師によって確定されたことが所定回数生じた」という条件であってもよい。
【0092】
この場合、上記の所定の条件が満たされると、ナレッジ生成部14は、上記のグループから複数回選択された上記のインスタンスを選択し、そのインスタンスに基づいて新たなナレッジを生成する。
【0093】
説明を簡単にするために、「所定回数」は「3回」であるものとして説明する。この点は、後述の例でも同様である。
【0094】
図6を参照して、本例を具体的に説明する。
図6に示すグループ61から、「喀痰がたまって呼吸がしにくくなっていたので、痰を吸引しました」というインスタンスがインスタンス選択部12によって複数回選択されたとする。ここでは、このインスタンスをインスタンスαと記す。そして、インスタンスXがインスタンスαに置き換えられた看護記録が、インスタンスαに対する修正が加えられずに看護師によって確定されたことが3回生じたとする。この場合、上記の所定の条件は満たされたことになる。この場合、ナレッジ生成部14は、
図6に示すグループ61から、インスタンスαを選択し、インスタンスαに基づいて新たなナレッジを生成する。
【0095】
[例2]
所定の条件は、「インスタンス選択部12によって同一のグループからインスタンスが複数回選択され、選択されたインスタンスによってインスタンスXが置き換えられた看護記録が、その選択されたインスタンスに対する修正が加えられずに看護師によって確定されたことが所定回数生じた」という条件であってもよい。
【0096】
この場合、上記の所定の条件が満たされると、ナレッジ生成部14は、インスタンス選択部12によって選択された回数が最も多いインスタンスを上記のグループから選択し、そのインスタンスに基づいて新たなナレッジを生成する。
【0097】
図6を参照して、本例を具体的に説明する。
図6に示すグループ61から、「喀痰がたまって呼吸がしにくくなっていたので、痰を吸引しました」というインスタンス(インスタンスα)がインスタンス選択部12によって1回選択されたとする。そして、インスタンスXがインスタンスαに置き換えられた看護記録が、インスタンスαに対する修正が加えられずに看護師によって確定されたことが1回生じたとする。また、グループ61から、「痰吸引を実施。」というインスタンスがインスタンス選択部12によって2回選択されたとする。このインスタンスをインスタンスβと記す。そして、インスタンスXがインスタンスβに置き換えられた看護記録が、インスタンスβに対する修正が加えられずに看護師によって確定されたことが2回生じたとする。
【0098】
すると、選択されたインスタンスによってインスタンスXが置き換えられた看護記録が、その選択されたインスタンスに対する修正が加えられずに看護師によって確定されたことが3回生じたことになる。従って、所定の条件が満たされたことになる。上記の例では、インスタンスαが選択された回数は1回であり、インスタンスβが選択された回数は2回である。従って、ナレッジ生成部14は、選択された回数が最も多いインスタンスβをグループ61から選択し、インスタンスβに基づいて新たなナレッジを生成する。
【0099】
以下に示す「例3」、「例4」および「例5」では、第1のインスタンス選択態様が採用されていても、あるいは、第2のインスタンス選択態様が採用されていてもよい。
【0100】
[例3]
所定の条件は、「インスタンス選択部12によって同一のグループからインスタンスが複数回選択され、選択されたインスタンスによってインスタンスXが置き換えられた看護記録が、その選択されたインスタンスに対する修正が加えられずに看護師によって確定されたことが所定回数生じた」という条件であってもよい。すなわち、例3における所定の条件は、例2における所定の条件と同様である。
【0101】
本例では、上記の所定の条件が満たされると、ナレッジ生成部14は、そのグループに含まれる個々のインスタンスの長さに基づいて、そのグループからインスタンスを選択する。具体的には、ナレッジ生成部14は、そのグループから、長さが最小となっているインスタンスを選択する。そして、ナレッジ生成部14は、選択したインスタンスに基づいて新たなナレッジを生成する。
【0102】
既に説明したように、インスタンスの長さは、インスタンスに含まれている文字数として定義されていてもよく、あるいは、インスタンスに含まれている単語の数として定義されていてもよい。
【0103】
図6を参照して、本例を具体的に説明する。
図6に示すグループ61から、「喀痰がたまって呼吸がしにくくなっていたので、痰を吸引しました」というインスタンス(インスタンスα)がインスタンス選択部12によって1回選択されたとする。そして、インスタンスXがインスタンスαに置き換えられた看護記録が、インスタンスαに対する修正が加えられずに看護師によって確定されたことが1回生じたとする。また、グループ61から、「痰吸引を実施。」というインスタンス(インスタンスβ)がインスタンス選択部12によって1回選択されたとする。そして、インスタンスXがインスタンスβに置き換えられた看護記録が、インスタンスβに対する修正が加えられずに看護師によって確定されたことが1回生じたとする。また、グループ61から、「詰まっていて痰吸引。」というインスタンスがインスタンス選択部12によって1回選択されたとする。このインスタンスをインスタンスγとする。そして、インスタンスXがインスタンスγに置き換えられた看護記録が、インスタンスγに対する修正が加えられずに看護師によって確定されたことが1回生じたとする。
【0104】
すると、選択されたインスタンスによってインスタンスXが置き換えられた看護記録が、その選択されたインスタンスに対する修正が加えられずに看護師によって確定されたことが3回生じたことになる。従って、所定の条件が満たされたことになる。上記の例では、インスタンスα,β,γが1回ずつ選択された場合を例示したが、1つのインスタンスが複数回選択されていてもよい。
【0105】
上記のように所定の条件が満たされると、ナレッジ生成部14は、そのグループ61に含まれるインスタンスのうち、インスタンスの長さが最小となるインスタンスを選択する。本例では、ナレッジ生成部14は、グループ61から、長さが最小となっているインスタンスβ(「痰吸引を実施。」)を選択し、インスタンスβに基づいて新たなナレッジを生成する。
【0106】
例3では、ナレッジ生成部14は、簡潔なインスタンスを選択するので、簡潔なナレッジを生成できる。
【0107】
[例4]
例4における所定の条件は、例2および例3における所定の条件と同様であり、説明を省略する。
【0108】
例4では、前処理において、グルーピング部6は、「SAT低下」に関して得られた個々のインスタンスを表わす個々のベクトルを、K-means法によってグルーピングし、グループの中心を表わすベクトルも定められているものとする。ただし、K-means法は、一例であり、個々のインスタンスを表わす個々のベクトルに基づいてインスタンスをグルーピングする方法であって、各グループの中心を表わすベクトルも定めることができるグルーピング方法であれば、K-means法以外の方法が用いられていてもよい。これらの点は、後述の例5においても同様である。
【0109】
例4では、所定の条件が満たされると、ナレッジ生成部14は、選択されたインスタンスが含まれていたグループ(ここでは、
図6に示すグループ61とする。)から、以下に示すように、インスタンスを選択する。ナレッジ生成部14は、グループ61の中心を表わすベクトルと、グループ61に含まれる個々のインスタンスを表わす個々のベクトルとの距離に基づいて、グループ61からインスタンスを選択する。より具体的には、ナレッジ生成部14は、グループ61の中心を表わすベクトルと、グループ61に含まれる個々のインスタンスを表わすベクトルとの距離をそれぞれ算出し、その距離が最小となるインスタンスを選択する。
図6に例示するグループ61に含まれる各インスタンスでは、グループ61の中心を表わすベクトルと、インスタンスβ(「痰吸引を実施。」)を表わすベクトルとの距離が最小となる。従って、ナレッジ生成部14は、インスタンスβを選択し、インスタンスβに基づいて新たなナレッジを生成する。
【0110】
なお、グループに含まれるあるインスタンスを表わすベクトルと、そのグループの中心を表わすベクトルが一致していれば、その2つのベクトルの距離は0となり、そのインスタンスが選択されることになる。ただし、グループの中心に該当するベクトルによって表されるインスタンスが存在するとは限らない。その場合であっても、例4に示す方法によれば、ナレッジ生成部14は、グループの中心(重心)に最も近いインスタンスを選択することができる。
【0111】
例4では、ナレッジ生成部14は、グループの代表的なインスタンスを選択するので、グループの特徴をよく表したナレッジを生成できる。
【0112】
[例5]
例4における所定の条件は、例2、例3および例5における所定の条件と同様であり、説明を省略する。
【0113】
例5では、所定の条件が満たされると、ナレッジ生成部14は、選択されたインスタンスが含まれていたグループ(ここでは、
図6に示すグループ61とする。)から、以下に示すように、インスタンスを選択する。ナレッジ生成部14は、グループ61の中心を表わすベクトルと、グループ61に含まれる個々のインスタンスを表わす個々のベクトルとの距離、および、グループ61に含まれる個々のインスタンスの長さとに基づいて、グループ61からインスタンスを選択する。より具体的には、ナレッジ生成部14は、グループ61に含まれているインスタンス毎に、グループ61の中心を表わすベクトルとインスタンスを表わすベクトルとの距離と、インスタンスの長さとの和を算出する。このとき、ナレッジ生成部14は、インスタンス毎に得られる距離および長さを、それぞれ、最大値が1になるように正規化してもよい。ナレッジ生成部14は、上記のように算出した和が最小になるインスタンスをグループ61から選択し、そのインスタンスに基づいて新たなナレッジを生成する。
【0114】
図10は、インスタンス毎に得られる距離、長さ、および両者の和の例を示す模式図である。
図10に示す例では、距離および長さは、それぞれ、最大値が1になるように正規化されている。インスタンス毎に、距離および長さの和が、
図10に示すように算出されたとする。この場合、ナレッジ生成部14は、距離および長さの和が最小となっているインスタンスβを選択し、インスタンスβに基づいて新たなナレッジを生成する。
【0115】
例5によれば、例3の効果と例4の効果の両方が得られる。
【0116】
次に、ナレッジ生成部14が選択したインスタンスに基づいて新たなナレッジを生成する動作について説明する。ナレッジ生成部14は、選択したインスタンスに含まれている個々の単語を抽出する。さらに、ナレッジ生成部14は、そのインスタンス生成時に着目していた事象と、抽出した各単語との組合せを、新たなナレッジとする。例えば、ナレッジ生成部14が、前述のインスタンスβ(「痰吸引を実施。」)を選択したとする。この場合、ナレッジ生成部14は、インスタンスβから、「痰」、「吸引」および「実施」という各単語を抽出する。また、インスタンスβ(「痰吸引を実施。」)の生成時に着目していた事象は、「SAT低下」である。従って、ナレッジ生成部14は、抽出した各単語と「SAT低下」との組合せを、新たなナレッジとする。具体的には、ナレッジ生成部14は、新たなナレッジとして、“({痰,吸引,実施},SAT低下)”を生成する。
【0117】
なお、新たなナレッジは、生成された時点で、既存のナレッジとなる。ナレッジ生成部14は、生成した新たなナレッジを、既存ナレッジ記憶部2に記憶させる。
【0118】
前処理用文抽出部4、前処理用インスタンス生成部5、グルーピング部6、文抽出部9、インスタンス生成部10、グループ選択部11、インスタンス選択部12、置き換え部13、および、ナレッジ生成部14は、例えば、ナレッジ生成プログラムに従って動作するコンピュータのCPU(Central Processing Unit )によって実現される。例えば、CPUが、コンピュータのプログラム記憶装置等のプログラム記録媒体からナレッジ生成プログラムを読み込み、ナレッジ生成プログラムに従って、前処理用文抽出部4、前処理用インスタンス生成部5、グルーピング部6、文抽出部9、インスタンス生成部10、グループ選択部11、インスタンス選択部12、置き換え部13、および、ナレッジ生成部14として動作すればよい。
【0119】
事象記憶部1、既存ナレッジ記憶部2、業務記録記憶部3、および、グループ記憶部7は、例えば、コンピュータが備える記憶装置によって実現される。
【0120】
また、端末装置31は、通信ネットワーク30を介してナレッジ生成システム20にアクセスし、看護師によって指定された事象をキーとして、既存ナレッジ記憶部2に記憶されているナレッジを検索し、検索結果として得られたナレッジを表示する。
【0121】
次に、本実施形態の処理経過の例について説明する。以下の説明では、予め定められた事象が「SAT低下」である場合を例にして説明する。既に説明したように、予め定められた事象が複数存在する場合には、ナレッジ生成システム20は、予め定められた事象毎に、同様の処理を行えばよい。
【0122】
図11は、前処理の処理経過の例を示すフローチャートである。なお、既に説明した事項については、詳細な説明を省略する。
【0123】
ナレッジ生成システム20は、前処理は、例えば、毎日、朝の所定の時刻(例えば、7時)に実行する。ただし、前処理の実行タイミングは、この例に限定されず、例えば、各看護師が1日分の看護記録を作成するタイミングよりも早いタイミングであればよい。
【0124】
前処理では、まず、前処理用文抽出部4が、過去に作成された看護記録の中から「SAT低下」に関連した文であって、かつ、「SAT低下」に対応する既存のナレッジ(例えば、
図2に例示する既存のナレッジ)と異なる内容を含む文を抽出する(ステップS1)。
【0125】
次に、前処理用インスタンス生成部5が、ステップS1で抽出された文から、「SAT低下」を表わす文節を削除することによって、インスタンスを生成する(ステップS2)。
【0126】
ステップS1で抽出される文は1つとは限らず、複数の文がステップS1で抽出され得る。従って、ステップS2でも、複数のインスタンスが生成され得る。
【0127】
次に、グルーピング部6が、ステップS2で得られたインスタンスをグルーピングし、グルーピング結果(インスタンスの各グループ)を、グループ記憶部7に記憶させる(ステップS3)。
【0128】
図12および
図13は、ナレッジ生成処理の処理経過の例を示すフローチャートである。なお、既に説明した事項については、詳細な説明を省略する。
【0129】
看護師は、端末装置31に文字列を入力することによって、新たな看護記録を作成する。まだ、看護記録の確定操作(例えば、
図7等に示す確定ボタン52のクリック操作)は行われていないものとする。
【0130】
端末装置31は、未確定の看護記録をナレッジ生成システム20に送信する(ステップS11)。ナレッジ生成システム20の文抽出部9は、通信インタフェース8を介して、その未確定の看護記録を受信する(ステップS12)。
【0131】
そして、文抽出部9が、ステップS12で受信した未確定の看護記録の中から、「SAT低下」に関連した文であって、かつ、「SAT低下」に対応する既存のナレッジと異なる内容を含む文を抽出する(ステップS13)。
【0132】
次に、インスタンス生成部10が、ステップS13で抽出された文から、「SAT低下」を表わす文節を削除することによって、インスタンスXを生成する(ステップS14)。
【0133】
次に、グループ選択部11が、グループ記憶部7に記憶されている、「SAT低下」に関するグループのうち、複数のインスタンスを含む個々のグループと、ステップS14で生成されたインスタンスXとの類似度に基づいて、複数のインスタンスを含むグループを1つ選択する(ステップS15)。
【0134】
次に、インスタンス選択部12が、ステップS15で選択されたグループからインスタンスYを選択する(ステップS16)。
【0135】
次に、置き換え部13が、未確定の看護記録に含まれているインスタンスXをインスタンスYに置き換え、置き換え後の看護記録を端末装置31に送信する(ステップS17)。
【0136】
端末装置31は、ステップS17で送信された置き換え後の看護記録を受信し、その看護記録をディスプレイ装置上に表示する(ステップS18)。
【0137】
そして、端末装置31は、看護師による看護記録の作成操作を継続して受け付ける(ステップS19)。このとき、看護師は、看護記録に含まれているインスタンスYに相当する文字列を修正する必要があると判断した場合、その文字列を修正して看護記録の作成を続ける。看護師は、インスタンスYに相当する文字列を修正する必要がないと判断した場合には、その文字列を修正せずに、看護記録の作成を続ける。
【0138】
看護記録の確定操作(例えば、確定ボタン52のクリック操作)が行われた場合、端末装置31は、看護記録が確定した旨の情報と、確定した看護記録と、置き換え部13によって置き換えられた文字列が看護師によって修正されたか否かを示す情報とを、ナレッジ生成システム20に送信する(ステップS20)。
【0139】
ナレッジ生成システム20のナレッジ生成部14は、ステップS20で送信された各情報を受信する。そして、ナレッジ生成部14は、確定した看護記録を、看護記録記憶部3に記憶させる(ステップS21)。
【0140】
次に、ナレッジ生成部14は、所定の条件が満たされたか否かを判定する(ステップS22)。所定の条件の種々の例については既に説明しているので、ここでは説明を省略する。
【0141】
所定の条件が満たされていない場合(ステップS22のNo)、ナレッジ生成システム20は、次に端末装置31から未確定の看護記録を受信するまで待機し、未確定の看護記録を受信した場合、ステップS12以降の処理を繰り返す。
【0142】
所定の条件が満たされている場合(ステップS22のYes)、ナレッジ生成部14は、所定の条件が満たされるまでの過程で、ステップS16で選択されたインスタンスを含むグループから、インスタンスを選択する(ステップS23)。ステップS23でのインスタンスの選択の例は、前述の「例1」から「例5」で説明しているので、ここでは説明を省略する。
【0143】
次に、ナレッジ生成部14は、ステップS23で選択したインスタンスに基づいて、新たなナレッジを生成し、その新たなナレッジを既存ナレッジ記憶部2に記憶させる(ステップS24)。
【0144】
本実施形態によれば、置き換え部13は、インスタンス選択部12が選択したインスタンスYでインスタンスXを置き換えた看護記録を端末装置31に送信し、端末装置31はその看護記録を表示する。従って、置き換え部13は、端末装置31を用いてインスタンスYを看護師に提示しているということが言える。
【0145】
そして、所定の条件が満たされたということは、看護師が、看護記録を作成するときにインスタンスYを確認し、インスタンスYに問題がないと判断したと言える。
【0146】
ナレッジ生成部14は、そのように判断されたインスタンスYを含むグループからインスタンスを選択し、そのインスタンスに基づいてナレッジを生成する。
【0147】
また、新たなナレッジ生成のために、看護師は、通常業務として看護記録を作成すればよい。そして、その際、看護師は、作成中の看護記録内の文字列が置き換えられた場合には、置き換えられた文字列(すなわち、インスタンスY)を修正するか否かを判断し、その判断に応じて看護記録を修正しつつ、看護記録の作成を継続し、看護記録を確定した時点で、確定操作(例えば、確定ボタン52のクリック操作)を行えばよい。
【0148】
従って、本実施形態によれば、看護師が通常業務を遂行する過程でナレッジを新たに生成することができる。その結果、新たなナレッジの集合を得ることができる。
【0149】
また、本実施形態において、端末装置31は、ナレッジ生成システム20にアクセスし、看護師によって指定された事象をキーとして、既存ナレッジ記憶部2に記憶されているナレッジを検索し、検索結果として得られたナレッジを表示する。従って、看護師は、新たに生成され、既存ナレッジ記憶部2に記憶されたナレッジを閲覧することができる。従って、新人の看護師でも、患者アセスメントを適切に行うことができる。
【0150】
次に、本発明の実施形態の変形例を説明する。
【0151】
置き換え部13は、ステップS17で、置き換え後の看護記録を送信する前に、インスタンスYと、置き換えられる文字列(インスタンスX)とを示す情報を、端末装置31に送信してもよい。そして、端末装置31は、例えば、
図7に例示する画面において、インスタンスXに相当する文字列の近傍に、インスタンスYが記述された吹き出しを表示してもよい。そして、端末装置31は、置き換えを認めるか否かの操作を、看護師から受け付け、置き換えを認めるか否かを示す情報を、置き換え部13に返す。置き換え部13は、置き換えを認める旨の情報を受信した場合に、置き換え後の看護記録を送信すればよい(ステップS17)。置き換え部13が置き換えを認めない旨の情報を受信した場合、ナレッジ生成システム20は、次に端末装置31から未確定の看護記録を受信するまで待機し、未確定の看護記録を受信したときに、ステップS12以降の処理を繰り返す。
【0152】
また、インスタンス選択部12は、グループ選択部11によって選択されたグループからインスタンスを選択するときに(ステップS16)、そのグループからランダムにインスタンスを選択してもよい。同様に、ナレッジ生成部14がグループからインスタンスを選択するときにも(ステップS23)、ナレッジ生成部14は、グループからランダムにインスタンスを選択してもよい。
【0153】
また、上記の説明では、ナレッジ生成システム20が看護師業務に適用される場合を例にして説明した。既に説明したように、本発明は、一連の作業の中に業務記録作成が含まれている業務に適用可能である。従って、本発明が適用される業務は、看護師業務に限定されず、例えば、工場等における製造業務、検査業務等であってもよい。
【0154】
図14は、上記の実施形態のナレッジ生成システムに係るコンピュータの構成例を示す概略ブロック図である。コンピュータ1000は、CPU1001と、主記憶装置1002と、補助記憶装置1003と、インタフェース1004と、通信インタフェース1005とを備える。
【0155】
本実施形態におけるナレッジ生成システムは、コンピュータ1000に実装され、その動作は、ナレッジ生成プログラムの形式で補助記憶装置1003に記憶されている。CPU1001は、そのナレッジ生成プログラムを補助記憶装置1003から読み出して主記憶装置1002に展開し、そのナレッジ生成プログラムに従って、上記の実施形態やその変形例で説明した動作を実行する。
【0156】
補助記憶装置1003は、一時的でない有形の媒体の例である。一時的でない有形の媒体の他の例として、インタフェース1004を介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory )、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory )、半導体メモリ等が挙げられる。また、プログラムが通信回線によってコンピュータ1000に配信される場合、配信を受けたコンピュータ1000がそのプログラムを主記憶装置1002に展開し、上記の処理を実行してもよい。
【0157】
また、プログラムは、前述の処理の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、プログラムは、補助記憶装置1003に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで前述の処理を実現する差分プログラムであってもよい。
【0158】
また、各構成要素の一部または全部は、汎用または専用の回路(circuitry )、プロセッサ等やこれらの組み合わせによって実現されてもよい。これらは、単一のチップによって構成されてもよいし、バスを介して接続される複数のチップによって構成されてもよい。各構成要素の一部または全部は、上述した回路等とプログラムとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0159】
各構成要素の一部または全部が複数の情報処理装置や回路等により実現される場合には、複数の情報処理装置や回路等は集中配置されてもよいし、分散配置されてもよい。例えば、情報処理装置や回路等は、クライアントアンドサーバシステム、クラウドコンピューティングシステム等、各々が通信ネットワークを介して接続される形態として実現されてもよい。
【0160】
次に、本発明の概要について説明する。
図15は、本発明のナレッジ生成システムの概要を示すブロック図である。本発明のナレッジ生成システムは、ナレッジ記憶手段72と、文抽出手段73と、グループ選択手段75と、文字列選択手段76と、置き換え手段77と、ナレッジ生成手段78と備える。
【0161】
ナレッジ記憶手段72(例えば、既存ナレッジ記憶部2)は、事象に対応する原因または対処方法を表わす情報であるナレッジを記憶する。
【0162】
文抽出手段73(例えば、文抽出部9)は、未確定の業務記録の中から、所定の事象に対応するナレッジに含まれる原因または対処方法と異なり、かつ、当該所定の事象と関連する文を抽出する。
【0163】
グループ選択手段75(例えば、グループ選択部11)は、過去の業務記録から得られた、事象に対応する原因または対処方法を表わす可能性のある文字列がグルーピングされた文字列のグループのうち複数の文字列を含むグループの各々と、抽出された文のうちの原因または対処方法を表わす可能性がある第1の文字列(例えば、インスタンスX)との類似度に基づいて、複数の文字列を含むグループのいずれかを選択する。
【0164】
文字列選択手段76(例えば、インスタンス選択部12)は、選択されたグループに含まれる文字列を第2の文字列(例えば、インスタンスY)として選択する。
【0165】
置き換え手段77(例えば、置き換え部13)は、業務記録内の第1の文字列を、文字列選択手段76によって選択された第2の文字列に置き換える。
【0166】
ナレッジ生成手段78(例えば、ナレッジ生成部14)は、第1の文字列が第2の文字列に置き換えられた業務記録が確定される状況に関する所定の条件が満たされた場合、グループに含まれる文字列のいずれかに基づいて新たなナレッジを生成する。
【0167】
そのような構成によれば、未確定の業務記録から抽出された文に含まれる第1の文字列を、置き換え手段77が、第2の文字列に置き換える。そして、その置き換えが行われた業務記録の確定状況に応じて、ナレッジ生成手段78が、ナレッジを生成する。従って、作業者が通常業務を遂行する過程でナレッジを新たに生成することができる。
【0168】
上記の本発明の実施形態は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下に限定されるわけではない。
【0169】
(付記1)
事象に対応する原因または対処方法を表わす情報であるナレッジを記憶するナレッジ記憶手段と、
未確定の業務記録の中から、所定の事象に対応するナレッジに含まれる原因または対処方法と異なり、かつ、当該所定の事象と関連する文を抽出する文抽出手段と、
過去の業務記録から得られた、事象に対応する原因または対処方法を表わす可能性のある文字列がグルーピングされた文字列のグループのうち複数の文字列を含むグループの各々と、抽出された前記文のうちの前記原因または対処方法を表わす可能性がある第1の文字列との類似度に基づいて、前記複数の文字列を含むグループのいずれかを選択するグループ選択手段と、
選択された前記複数の文字列を含むグループに含まれる文字列を第2の文字列として選択する文字列選択手段と、
前記業務記録内の前記第1の文字列を、文字列選択手段によって選択された前記第2の文字列に置き換える置き換え手段と、
前記第1の文字列が前記第2の文字列に置き換えられた業務記録が確定される状況に関する所定の条件が満たされた場合、前記グループに含まれる文字列のいずれかに基づいて新たなナレッジを生成するナレッジ生成手段とを備える
ことを特徴とするナレッジ生成システム。
【0170】
(付記2)
グループは、
文字列の各々を表わすベクトルに基づいて文字列がグルーピングされている
付記1に記載のナレッジ生成システム。
【0171】
(付記3)
グループ選択手段は、
複数の文字列を含む個々のグループの中心を表わす個々のベクトルと、第1の文字列を表わすベクトルとの距離を、前記個々のグループと前記第1の文字列との類似度としてグループを選択する
付記1または付記2に記載のナレッジ生成システム。
【0172】
(付記4)
文字列選択手段は、
選択されたグループに含まれる個々の文字列を表わす個々のベクトルと、第1の文字列を表わすベクトルとの距離に基づいて、前記選択されたグループから第2の文字列を選択する
付記1から付記3のうちのいずれかに記載のナレッジ生成システム。
【0173】
(付記5)
文字列選択手段は、
一回選択した第2の文字列を再度選択することを許容して、選択されたグループから第2の文字列を選択する
付記1から付記4のうちのいずれかに記載のナレッジ生成システム。
【0174】
(付記6)
文字列選択手段は、
グループから第2の文字列を選択するときに、一回選択した第2の文字列とは異なる第2の文字列を選択する
付記1から付記4のうちのいずれかに記載のナレッジ生成システム。
【0175】
(付記7)
所定の条件は、
文字列選択手段によって同一のグループから同一の第2の文字列が複数回選択され、
第1の文字列が前記第2の文字列に置き換えられた業務記録が、前記第2の文字列に対する修正が加えられずに確定されたことが所定回数生じたという条件である
付記1から付記5のうちのいずれかに記載のナレッジ生成システム。
【0176】
(付記8)
ナレッジ生成手段は、
所定の条件が満たされた場合に、グループから複数回選択された第2の文字列に基づいて新たなナレッジを生成する
付記7に記載のナレッジ生成システム。
【0177】
(付記9)
所定の条件は、
文字列選択手段によって同一のグループから第2の文字列が複数回選択され、
第1の文字列が選択された第2の文字列に置き換えられた業務記録が、前記選択された第2の文字列に対する修正が加えられずに確定されたことが所定回数生じたという条件であり、
ナレッジ生成手段は、
前記所定の条件が満たされた場合に、前記文字列選択手段によって選択された回数が最も多い第2の文字列に基づいて新たなナレッジを生成する
付記1から付記5のうちのいずれかに記載のナレッジ生成システム。
【0178】
(付記10)
所定の条件は、
文字列選択手段によって同一のグループから第2の文字列が複数回選択され、
第1の文字列が選択された第2の文字列に置き換えられた業務記録が、前記選択された第2の文字列に対する修正が加えられずに確定されたことが所定回数生じたという条件である
付記1から付記6のうちのいずれかに記載のナレッジ生成システム。
【0179】
(付記11)
ナレッジ生成手段は、
所定の条件が満たされた場合に、グループに含まれる個々の文字列の長さに基づいて選択された文字列に基づいて新たなナレッジを生成する
付記10に記載のナレッジ生成システム。
【0180】
(付記12)
ナレッジ生成手段は、
所定の条件が満たされた場合に、グループの中心を表わすベクトルと、前記グループに含まれる個々の文字列を表わす個々のベクトルとの距離を用いて前記グループから選択された文字列に基づいて新たなナレッジを生成する
付記10に記載のナレッジ生成システム。
【0181】
(付記13)
ナレッジ生成手段は、
所定の条件が満たされた場合に、グループの中心を表わすベクトルと、前記グループに含まれる個々の文字列を表わす個々のベクトルとの距離、および、前記グループに含まれる個々の文字列の長さを用いて前記グループから選択された文字列に基づいて新たなナレッジを生成する
付記10に記載のナレッジ生成システム。
【0182】
(付記14)
ナレッジ生成手段は、新たなナレッジとして、グループから選択した文字列に含まれる各単語と所定の事象との組合せを生成する
付記1から付記13のうちのいずれかに記載のナレッジ生成システム。
【0183】
(付記15)
過去に作成された業務記録の中から、所定の事象に関連した文であって、かつ、当該所定の事象に対応する既存のナレッジと異なる内容を含む文を抽出する前処理用文抽出手段と、
前記前処理用文抽出手段によって抽出された文から前記所定の事象を表わす文節を除去した文字列を生成する文字列生成手段と、
前記文字列生成手段によって生成された文字列をグルーピングするグルーピング手段とを備える
付記1から付記14のうちのいずれかに記載のナレッジ生成システム。
【0184】
(付記16)
ナレッジ生成システムは、看護師業務のナレッジ生成に適用される
付記1から付記15のうちのいずれかに記載のナレッジ生成システム。
【0185】
(付記17)
事象に対応する原因または対処方法を表わす情報であるナレッジを記憶するナレッジ記憶手段を備えるコンピュータが、
未確定の業務記録の中から、所定の事象に対応するナレッジに含まれる原因または対処方法と異なり、かつ、当該所定の事象と関連する文を抽出する文抽出処理、
過去の業務記録から得られた、事象に対応する原因または対処方法を表わす可能性のある文字列がグルーピングされた文字列のグループのうち複数の文字列を含むグループの各々と、抽出された前記文のうちの前記原因または対処方法を表わす可能性がある第1の文字列との類似度に基づいて、前記複数の文字列を含むグループのいずれかを選択するグループ選択処理、
選択された前記複数の文字列を含むグループに含まれる文字列を第2の文字列として選択する文字列選択処理、
前記業務記録内の前記第1の文字列を、文字列選択処理で選択された前記第2の文字列に置き換える置き換え処理、および、
前記第1の文字列が前記第2の文字列に置き換えられた業務記録が確定される状況に関する所定の条件が満たされた場合、前記グループに含まれる文字列のいずれかに基づいて新たなナレッジを生成するナレッジ生成処理を実行する
ことを特徴とするナレッジ生成方法。
【0186】
(付記18)
事象に対応する原因または対処方法を表わす情報であるナレッジを記憶するナレッジ記憶手段を備えるコンピュータに搭載されるナレッジ生成プログラムであって、
前記コンピュータに、
未確定の業務記録の中から、所定の事象に対応するナレッジに含まれる原因または対処方法と異なり、かつ、当該所定の事象と関連する文を抽出する文抽出処理、
過去の業務記録から得られた、事象に対応する原因または対処方法を表わす可能性のある文字列がグルーピングされた文字列のグループのうち複数の文字列を含むグループの各々と、抽出された前記文のうちの前記原因または対処方法を表わす可能性がある第1の文字列との類似度に基づいて、前記複数の文字列を含むグループのいずれかを選択するグループ選択処理、
選択された前記複数の文字列を含むグループに含まれる文字列を第2の文字列として選択する文字列選択処理、
前記業務記録内の前記第1の文字列を、文字列選択処理で選択された前記第2の文字列に置き換える置き換え処理、および、
前記第1の文字列が前記第2の文字列に置き換えられた業務記録が確定される状況に関する所定の条件が満たされた場合、前記グループに含まれる文字列のいずれかに基づいて新たなナレッジを生成するナレッジ生成処理
を実行させるためのナレッジ生成プログラム。
【0187】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記の実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【産業上の利用の可能性】
【0188】
本発明は、業務に関する新たなナレッジの生成に好適に適用される。
【符号の説明】
【0189】
1 事象記憶部
2 既存ナレッジ記憶部
3 業務記録記憶部
4 前処理用文抽出部
5 前処理用インスタンス生成部
6 グルーピング部
7 グループ記憶部
8 通信インタフェース
9 文抽出部
10 インスタンス生成部
11 グループ選択部
12 インスタンス選択部
13 置き換え部
14 ナレッジ生成部
20 ナレッジ生成システム
31 端末装置