(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】電気機器システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20221213BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20221213BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H02J7/00 301B
H02J7/00 S
H01M10/48 P
H01M10/44 P
(21)【出願番号】P 2020558195
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2019041962
(87)【国際公開番号】W WO2020110542
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2018224430
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】山口 聡史
(72)【発明者】
【氏名】吉川 哲史
(72)【発明者】
【氏名】塙 浩之
(72)【発明者】
【氏名】船橋 一彦
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-283677(JP,A)
【文献】特開2003-009406(JP,A)
【文献】特開2000-270494(JP,A)
【文献】特開2014-150687(JP,A)
【文献】特開2012-051085(JP,A)
【文献】特開平10-084639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H01M 10/42-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池パックと、前記電池パックを充電する充電装置本体と、を備える電気機器システムであって、
前記電池パックは、
電池セルと、
前記電池セルの状態を監視する制御部と、
前記電池セルの状態に応じて充放電禁止信号を前
記充電装置本体に出力可能であると共に前記充放電禁止信号
を電気機器本体に出力可能である信号端子と、を備え、
前記充電装置本体は、
充電回路と、
充電を制御する充電器側制御部と、
前記信号端子に接続され、前記充放電禁止信号が入力される充電器側信号端子と、
前記充電回路から前記電池パックへの充電電力の出力、遮断を切り替えるスイッチと、
前記充電器側制御部による充電可否の判定結果を示す信号と、前記充電器側信号端子で受信した信号と、に基づいて前記スイッチのオンオフを切り替える切替回路と、を備え、
前記電池パックは、前記電池セルが過放電となって前記充放電禁止信号が出力された状態で前記充電装置本体に接続されると、前記充放電禁止信号が停止又は前記電池セルが正常時の信号に変化して前記充電装置本体によって充電され
るよう構成され、
前記切替回路は、前記判定結果を示す信号が充電可能を示すレベルであり且つ前記充電器側信号端子で受信した信号が充電許可を示すレベルである場合に前記スイッチをオンし、それ以外の場合には前記スイッチをオフにするよう構成される、電気機器システム。
【請求項2】
前記電池パックは、前記電池セルが満充電又は充電禁止電圧となって前記充放電禁止信号が出力された状態で前記電気機器本体に接続されると、前記充放電禁止信号が停止又は前記電池セルが正常時の信号に変化して前記電気機器本体に放電するように構成した、
請求項1に記載の電気機器システム。
【請求項3】
前記充放電禁止信号は、前記充電
装置本体での充電を禁止する充電禁止信号と、前記電気機器本体による放電を禁止する放電禁止信号と、を含み、
前記充電禁止信号と前記放電禁止信号は同じ信号レベルである、請求項
2に記載の
電気機器システム。
【請求項4】
前記放電禁止信号は、前記電池セルの電圧が第1の所定値未満の第1セル状態になると前記制御部から出力され、前記充電禁止信号は、前記電池セルの電圧が前記第1の所定値よりも大きい第2の所定値を超えた第2セル状態になると前記制御部から出力される、請求項
3に記載の
電気機器システム。
【請求項5】
前記制御部は、充電が行われる場合、前記放電禁止信号を前記信号端子に出力せず、前記電池セルの状態に応じて前記充電禁止信号を前記信号端子に出力する、請求項
3又は
4に記載の
電気機器システム。
【請求項6】
前記制御部は、充電が行われる場合以外は、前記充電禁止信号を前記信号端子に出力せず、前記電池セルの状態に応じて前記放電禁止信号を前記信号端子に出力する、請求項
5に記載の
電気機器システム。
【請求項7】
前記電池パックは、前記
充電装置本体に接続される複数の端子を備え、
前記複数の端子は、正極端子と、負極端子と、前記制御部と前記
充電装置本体との間で通信するための通信端子と、前記信号端子と、を有する、請求項
1に記載の
電気機器システム。
【請求項8】
前記通信端子及び前記信号端子は夫々単一の端子である、請求項
7に記載の
電気機器システム。
【請求項9】
前記電池パックに接続可能な前記電気機器本
体を備え
、
前記電気機器本体は、
機器側制御部と、
前記電池パックの前記信号端子に接続され、前記充放電禁止信号が入力される機器側信号端子と、を備える、
請求項1に記載の電気機器システム。
【請求項10】
前記電池パックの電圧が所定値以下の場合に前記信号端子から前記切替回路への信号入力を遮断する遮断回路を備える、請求項
1に記載の電気機器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、制御部と電池パック遮断信号端子を有する電池パックを開示する。この電池パックでは、制御部に、保護ICの過電圧出力端子及び過放電出力端子等が接続される。制御部は、これら端子からの情報に応じて、電池パック遮断信号端子に印加する電圧を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電池パックは、充電禁止信号を充電装置に出力するための端子についての開示が無い。充電禁止信号の出力のために別途端子を設けると、端子数が増える。
【0005】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、端子数の増大を抑制可能な電池パックを備えた電気機器システムを提供することにある。また、単一の端子に複数の機能を持たせた電池パックを備えた電気機器システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、電気機器システムである。この電気機器システムは、
電池パックと、前記電池パックを充電する充電装置本体と、を備える電気機器システムであって、
前記電池パックは、
電池セルと、
前記電池セルの状態を監視する制御部と、
前記電池セルの状態に応じて充放電禁止信号を前記充電装置本体に出力可能であると共に前記充放電禁止信号を電気機器本体に出力可能である信号端子と、を備え、
前記充電装置本体は、
充電回路と、
充電を制御する充電器側制御部と、
前記信号端子に接続され、前記充放電禁止信号が入力される充電器側信号端子と、
前記充電回路から前記電池パックへの充電電力の出力、遮断を切り替えるスイッチと、
前記充電器側制御部による充電可否の判定結果を示す信号と、前記充電器側信号端子で受信した信号と、に基づいて前記スイッチのオンオフを切り替える切替回路と、を備え、
前記電池パックは、前記電池セルが過放電となって前記充放電禁止信号が出力された状態で前記充電装置本体に接続されると、前記充放電禁止信号が停止又は前記電池セルが正常時の信号に変化して前記充電装置本体によって充電されるよう構成され、
前記切替回路は、前記判定結果を示す信号が充電可能を示すレベルであり且つ前記充電器側信号端子で受信した信号が充電許可を示すレベルである場合に前記スイッチをオンし、それ以外の場合には前記スイッチをオフにするよう構成される。
前記電池パックは、前記電池セルが満充電又は充電禁止電圧となって前記充放電禁止信号が出力された状態で前記電気機器本体に接続されると、前記充放電禁止信号が停止又は前記電池セルが正常時の信号に変化して前記電気機器本体に放電するように構成してもよい。
【0007】
前記充放電禁止信号は、前記充電装置本体での充電を禁止する充電禁止信号と、前記電気機器本体による放電を禁止する放電禁止信号と、を含み、
前記充電禁止信号と前記放電禁止信号は同じ信号レベルでもよい。
前記放電禁止信号は、前記電池セルの電圧が第1の所定値未満の第1セル状態になると前記制御部から出力され、前記充電禁止信号は、前記電池セルの電圧が前記第1の所定値よりも大きい第2の所定値を超えた第2セル状態になると前記制御部から出力されるようにしてもよい。
【0008】
前記制御部は、充電が行われる場合、前記放電禁止信号を前記信号端子に出力せず、前記電池セルの状態に応じて前記充電禁止信号を前記信号端子に出力してもよい。
【0009】
前記制御部は、充電が行われる場合以外は、前記充電禁止信号を前記信号端子に出力せず、前記電池セルの状態に応じて前記放電禁止信号を前記信号端子に出力してもよい。
【0010】
前記外部機器との間で通信を行うための通信端子を備え、前記制御部は、前記通信端子を利用した通信により、充電が行われる場合か否かを判断してもよい。
【0011】
前記制御部は、前記通信端子において、充電が行われる場合を示す信号を所定時間受信しない場合、充電が行われる場合以外であると判断してもよい。
【0012】
前記電池パックは、前記充電装置本体に接続される複数の端子を備え、
前記複数の端子は、正極端子と、負極端子と、前記制御部と前記充電装置本体との間で通信するための通信端子と、前記信号端子と、を有してもよい。
また、前記通信端子及び前記信号端子は夫々単一の端子としてもよい。
【0013】
前記電池パックに接続可能な前記電気機器本体を備え、
前記電気機器本体は、
機器側制御部と、
前記電池パックの前記信号端子に接続され、前記充放電禁止信号が入力される機器側信号端子と、を備えてもよい。
【0017】
前記電池パックの電圧が所定値以下の場合に前記信号端子から前記切替回路への信号入力を遮断する遮断回路を備えてもよい。
【0018】
前記所定値は、前記電池パックの制御部が起動可能となる電圧値より大きくてもよい。
【0020】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、端子数の増大を抑制可能な電池パックを備えた電気機器システムを提供することができる。また、単一の端子に複数の機能を持たせた電池パックを備えた電気機器システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る電気機器システム(充電システム)1の回路ブロック図。
【
図2】
図1の電池パック50を、制御部89を有する電気機器本体80に接続した状態の回路ブロック図。
【
図3】
図1の電池パック50を、制御部を有さない電気機器本体90に接続した状態の回路ブロック図。
【
図4】電気機器システム(充電システム)1の動作の一例を示すタイムチャート。
【
図6】充電装置10の待機モードの動作のフローチャート。
【
図7】充電装置10の充電中モードの動作のフローチャート。
【
図8】充電装置10の充電終了モードの動作のフローチャート。
【
図9】本発明の実施の形態2に係る電気機器システム(充電システム)2の回路ブロック図。
【
図10】電気機器システム(充電システム)2の動作の一例を示すタイムチャート。
【
図11】充電装置10Aの充電中モードの動作のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る電気機器システム(充電システム)1の回路ブロック図である。電気機器システム(充電システム)1は、外部機器としての充電装置10(充電装置本体)と、電池パック50と、を備える。充電装置10は、電池パック50との接続用に、機器側プラス端子21と、機器側通信端子としての機器側D端子22と、機器側信号端子(充電器側信号端子)としての機器側LD端子23と、機器側マイナス端子24と、を有する。電池パック50は、電池側プラス端子61と、電池側通信端子としての電池側D端子62と、電池側信号端子としての電池側LD端子63と、電池側マイナス端子64と、を有する。機器側プラス端子21と電池側プラス端子61が互いに接続される。機器側D端子22と電池側D端子62が互いに接続される。機器側LD端子23と電池側LD端子63が互いに接続される。機器側マイナス端子24と電池側マイナス端子64が互いに接続される。なお、D端子とLD端子は夫々、単一の端子のみから構成されている。
【0025】
充電装置10は、電源回路11と、制御部(機器側制御部であり充電器側制御部)13と、通信回路15と、接続検出回路17と、スイッチ19と、停止信号検出回路27と、切替回路としてのAND回路31と、を有する。電源回路11は、商用電源等の外部の交流電源5から供給される交流電圧を電池パック50の充電用の直流電圧に変換して機器側プラス端子21に出力すると共に、前記交流電圧を制御用の直流電圧VDD2に変換して充電装置10の各回路に供給する。制御部13は、充電装置10の全体の動作を制御する。通信回路15は、機器側D端子22に接続され、制御部13の制御に従い電池パック50の通信回路57との間で通信信号の送受信を行う。接続検出回路17は、機器側D端子22に接続され、電池パック50の接続の有無を検出する。スイッチ19は、例えばリレーであり、AND回路31の出力信号によって開閉される。AND回路31の出力信号がハイレベルのときはスイッチ19はオン、ローレベルのときはスイッチ19はオフである。AND回路31は、制御部13のリレーオンオフ信号(充電可否の判定結果を示す信号)及び機器側LD端子23で受信した信号が共にハイレベルの場合にハイレベルの信号を出力してスイッチ19をオンし、少なくとも一方がローレベルの場合にローレベルの信号を出力してスイッチ19をオフする。停止信号検出回路27は、機器側LD端子23からの入力信号により、充電の許否を検出する。充電装置10は、充電電流の経路に抵抗R5を有する。抵抗R5の両端の電圧により、制御部13が充電電流を検出する。制御部13は、機器側プラス端子21の電圧により、電池パック50の電圧を検出する。
【0026】
電池パック50は、不図示の電源回路と、制御部(電池側制御部)53と、電池セル群55と、通信回路57と、温度検出素子67と、を有する。電源回路は、電池セル群55の出力電圧を制御用の直流電圧VDD1に変換して電池パック50の各回路に供給する。充電装置10のスイッチ19がオンの場合、電源回路は、充電装置10の電源回路11の出力電圧を制御用の直流電圧VDD1に変換して電池パック50の各回路に供給する。制御部53は、電池パック50の全体の動作を制御する。電池セル群55は、複数の電池セルを有する。通信回路57は、電池側D端子62に接続され、制御部53の制御に従い充電装置10の通信回路15との間で通信信号の送受信を行う。図示は省略したが、電池側D端子62に接続検出回路を設け、充電装置10あるいは他の電気機器の接続の有無を検出する構成としてもよい。また、電池側D端子62とグランドとの間に、電池パック50の情報(定格電圧や接続セル数、セルの接続形態等)に応じた抵抗値の判別抵抗を有してもよい。温度検出素子67は、例えばサーミスタであり、電池セル群55の近傍に配置され、電池セル群55の温度を検出する。制御部53は、電池セル群55の各セルの電圧を監視する。電池パック50は、放電電流の経路に抵抗R4を有する。抵抗R4の両端の電圧により、制御部53が放電電流を検出する。
【0027】
制御部53は、電池セル群55の状態(電池セル群55の温度や各セルの電圧等)を監視し、電池セルの状態により、充電許否及び放電許否を判断する。制御部53は、充電許可及び放電許可の場合には電池側LD端子63にハイレベルの信号(充電許可信号かつ放電許可信号であって第1信号状態に相当)を出力し、充電拒否及び放電拒否の場合には電池側LD端子63にローレベルの信号(充電禁止信号かつ放電禁止信号であって第2信号状態に相当)を出力する。制御部53は、充電が行われる場合、電池セル群55の状態が放電禁止か否かの判定結果を電池側LD端子63に出力せず、電池セル群55の状態が充電禁止か否かの判定結果を電池側LD端子63に出力する。すなわち、充電が行われる場合には放電禁止信号を電池側LD端子63に出力せず、又は放電禁止信号を電池セル群55の状態が正常時の信号(正常信号)に変化させ、電池セル群55の状態に応じて充電禁止信号を電池側LD端子63に出力する。制御部53は、充電が行われる場合以外は、電池セル群55の状態が充電禁止か否かの判定結果を電池側LD端子63に出力せず、電池セル群55の状態が放電禁止か否かの判定結果を電池側LD端子63に出力する。すなわち、充電が行われる場合以外は、充電禁止信号を電池側LD端子63に出力せず、又は充電禁止信号を電池セル群55の状態が正常時の信号(正常信号)に変化させ、電池セル群55の状態に応じて放電禁止信号を電池側LD端子63に出力する。制御部53は、電池側D端子62を利用した通信(充電装置10の制御部13との通信)により、充電が行われる場合か否かを判断する。制御部53は、電池側D端子62において、充電が行われる場合を示す信号を所定時間受信しない場合、充電が行われる場合以外であると判断する。充電装置10に図示しない判別抵抗を設け、制御部53は、前記判別抵抗を利用して電池パック50に充電装置10が接続されたか否かを判断し、充電装置10が接続されたと判断した場合に、充電が行われる場合と判断してもよい。ここで、充電禁止信号、放電禁止信号は共に、共通のLD端子63を介して外部機器に出力されることから、以降、これらの信号を総称して充放電禁止信号と呼ぶこともある。
【0028】
図2は、
図1の電池パック50を、制御部89(機器側制御部)を有する外部機器としての電気機器80(電気機器本体)に接続した状態の回路ブロック図である。電気機器80は、例えば電動工具(電動工具本体)である。電気機器80は、電池パック50との接続用に、機器側プラス端子81と、機器側信号端子としての機器側LD端子83と、機器側マイナス端子84と、を有する。機器側プラス端子81と電池側プラス端子61が互いに接続される。機器側LD端子83と電池側LD端子63が互いに接続される。機器側マイナス端子84と電池側マイナス端子64が互いに接続される。電気機器80は、機器側プラス端子81と機器側マイナス端子84との間に直列接続された、スイッチ86と、モータ85と、スイッチング素子87と、抵抗88と、を有する。スイッチ86は、作業者がオンオフするスイッチである。スイッチング素子87は、機器側LD端子83からの入力信号に応じて制御部89がオンオフを制御するスイッチである。制御部89は、機器側LD端子83からの入力信号がハイレベルの場合はスイッチング素子87をオン(導通)し、ローレベルの場合はスイッチング素子87をオフ(遮断)する。制御部89は、抵抗88の両端の電圧により、モータ85に流れる電流を検出する。制御部89は、機器側プラス端子81の電圧により、電池パック50の出力電圧を検出する。
電圧VDD3が制御部89に供給される。
【0029】
図3は、
図1の電池パック50を、
図2の制御部89に相当する制御部を有さない外部機器としての電気機器90(電気機器本体)に接続した状態の回路ブロック図である。電気機器90は、例えば電動工具(電動工具本体)である。電気機器90は、電池パック50との接続用に、機器側プラス端子91と、機器側信号端子としての機器側LD端子93と、機器側マイナス端子94と、を有する。機器側プラス端子91と電池側プラス端子61が互いに接続される。機器側LD端子93と電池側LD端子63が互いに接続される。機器側マイナス端子94と電池側マイナス端子64が互いに接続される。電気機器90は、機器側プラス端子91と機器側マイナス端子94との間に直列接続された、スイッチ96と、モータ95と、スイッチング素子97と、を有する。スイッチ96は、作業者がオンオフするスイッチである。スイッチング素子97は、機器側LD端子93からの入力信号に応じてオンオフされるスイッチである。機器側LD端子93からの入力信号がハイレベルの場合はスイッチング素子97はオン、ローレベルの場合はスイッチング素子97はオフとなる。なお、スイッチング素子97を制御部としてもよい。
【0030】
図4は、システム(充電システム)1の動作の一例を示すタイムチャートである。時刻t1以前は、充電装置10に電池パック50が接続されておらず、充電装置10の制御部13は待機モード(
図6)であり、電池パック50の制御部53の状態認識は非充電中(充電が行われる場合以外)である。電池パック50の電圧は放電禁止電圧未満のため、制御部53は、電池側LD端子63に放電禁止信号(充電禁止信号と同レベルの電圧信号)を出力している。時刻t1において充電装置10に電池パック50が接続されると、充電装置10の制御部13は、充電中モード(
図7)となり、電池パック50の制御部53に充電が行われる場合であることを示す信号を送信する。制御部53は、充電が行われる場合であることを示す信号を充電装置10から受信し、時刻t2において状態認識を充電中(充電が行われる場合)とする。制御部53は、充電中との状態認識になったことで、電池側LD端子63への放電禁止信号の出力を停止(放電禁止か否かの判定結果の出力を停止)し、電池側LD端子63に充電許可信号(放電許可信号と同レベルの電圧信号)を出力する。
【0031】
時刻t2以降、充電装置10の電源回路11から電池パック50の電池セル群55に充電電圧及び充電電流が供給され、電池パック50の充電が進められる。充電期間中、通信回路15、57による通信(制御部13、53間の通信)が行われる。通信では、充電が行われる場合であることを示す信号が制御部13から制御部53に送信され、また、電池セル群55の温度、各セルの電圧等が、制御部53から制御部13に送信される。時刻t3において充電が完了すると(電池パック50の電圧が満充電電圧である充電禁止電圧に到達すると)、充電装置10の制御部13は充電終了モード(
図8)となり、電池パック50の制御部53は電池側LD端子63に充電禁止信号を出力する。制御部53は、充電が行われる場合であることを示す信号を最後に受信してから所定時間txが経過した時刻t4において、状態認識を非充電中(充電が行われる場合以外)とする。制御部53は、非充電中との状態認識になったことで、電池側LD端子63への充電禁止信号の出力を停止(充電禁止か否かの判定結果の出力を停止)し、電池側LD端子63に放電許可信号を出力する。時刻t5において充電装置10から電池パック50が外されると、制御部13は待機モード(
図6)に移行する。
【0032】
図5は、電池パック50の動作のフローチャートである。制御部53は、充電装置10等の電気機器に接続されて起動する(S1)。例えば、起動信号の受信によって電池パック50の電源回路(図示せず)が起動し、電源回路から制御部53に動作電圧を供給することによって制御部53が起動する。起動信号の受信は、専用端子を用いてもよいし、電池側D端子62を利用してもよい。制御部53は、電池側D端子62において接続された電気機器(例えば充電装置10の制御部13)からデータ通信情報要求を受信しない場合は(S2のNO)、充電が行われる場合以外と判断し、電池セル群55の温度が所定値以下であり(S3のNO)、各電池セルの電圧が第1所定値V1以上であり(S4のNO)、かつ放電電流が所定値以下であれば(S5のNO)、放電許可信号を電池側LD端子63に出力する(S6)。制御部53は、電池セルの温度が所定値を超えている場合(S3のYES)、少なくとも1つの電池セルの電圧が第1所定値V1未満の場合(S4のYES)、又は放電電流が所定値を超えた場合(S5のYES)、放電禁止信号を電池側LD端子63に出力する(S7)。なお、第1所定値V1は電池セルが過放電と判断するための電圧値である。また、放電禁止信号を出力する状態が第1のセル状態に相当する。
【0033】
制御部53は、電池側D端子62において接続された電気機器からデータ通信情報要求を受信した場合は(S2のYES)、充電が行われる場合と判断し、電池セル群55の状態(電池セル群55の温度や各セルの電圧等)を電池側D端子62から電気機器に送信する(S8)。制御部53は、電池セル群55の温度が所定値以下であり(S9のNO)、各電池セルの電圧が第2所定値V2以下の場合(S10のNO)、充電許可信号を電池側LD端子63に出力する(S11)。制御部53は、電池セルの温度が所定値を超えている場合(S9のYES)、又は少なくとも1つの電池セルの電圧が第2所定値V2を超えている場合(S10のYES)、充電禁止信号を電池側LD端子63に出力する(S12)。制御部53は、充電装置10等の電気機器への接続が所定時間検出されない場合(S15のYES)、シャットダウンする(S17)。シャットダウンは、例えば電池パック50の電源回路(図示せず)を停止することで行われる。なお、第2所定値V2は電池セルが満充電と判断するための電圧値である。また、充電禁止信号を出力する状態が第2のセル状態に相当する。
【0034】
図6は、充電装置10の待機モードの動作のフローチャートである。制御部13は、電池パック50の接続を検出すると(S21のYES)、充電中モードに移行する。
【0035】
図7は、充電装置10の充電中モードの動作のフローチャートである。制御部13は、通信回路15からD端子22及び62を介して電池パック50に電池状態情報要求を送信する(S23)。制御部13は、通信回路15がD端子22及び62を介して電池パック50から電池状態情報を受信すると(S25のYES)、電池パック50の状態(温度等)に問題がなく(S27のYES)、充電電流が所定値あるいは所定範囲であり(S29のYES)、電池パック50の電圧が満充電電圧V2未満であり(S31のYES)、かつLD端子23及び63を介して電池パック50から充電禁止信号を受信しない場合(S33のYES)、電池パック50の充電を開始、継続する(S35)。制御部13は、充電装置10から電池パック50が外された場合(S37のNO)、待機モード(
図6)に移行する。制御部13は、ステップS25において電池状態情報を所定時間受信しない場合(S25のNO、S39のYES)、電池パック50の状態に問題がある場合(S27のNO)、充電電流が所定値あるいは所定範囲でない場合(S29のNO)、電池パック50の電圧が満充電電圧V2以上の場合(S31のNO)、あるいはLD端子23及び63を介して電池パック50に充電禁止信号を受信した場合(S33のNO)、電池パック50の充電を停止し(S41)、充電終了モード(
図8)に移行する。
【0036】
図8は、充電装置10の充電終了モードの動作のフローチャートである。制御部13は、電池パック50の接続を検出しなくなると(S43のNO)、待機モードに移行する。
【0037】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0038】
(1) 機器側LD端子23及び電池側LD端子63を、充電許可信号及び放電許可信号、並びに充電禁止信号及び放電禁止信号の送受信に共用するため、端子数を削減できる。
【0039】
(2) 電池パック50の制御部53は、充電が行われる場合、電池セル群55の状態が放電禁止か否かの判定結果を電池側LD端子63に出力せず、電池セル群55の状態が充電禁止か否かの判定結果を電池側LD端子63に出力するため、電池パック50の電圧が放電禁止電圧以下であっても(過放電であっても)充電を行える。
【0040】
(3) 制御部53は、充電が行われる場合以外は、電池セル群55の状態が充電禁止か否かの判定結果を電池側LD端子63に出力せず、電池セル群55の状態が放電禁止か否かの判定結果を電池側LD端子63に出力するため、電池パック50の電圧が充電禁止電圧以上であっても放電を行える。また、充電装置10以外の電気機器(電池パック50の放電先となる電気機器)は、放電が行われる場合であることを電池パック50に報知する構成を持つ必要がなく、構成を簡略化できる。
【0041】
(4) 充電装置10の制御部13は、電池パック50から通信の応答が無い場合は充電を行わないため、電池パック50の制御部が充電が行われる場合であることを認識できず過充電保護が有効にならないまま充電されることを抑制できる。また、所定のデータ通信が可能な電池パック50のみが充電対象となるため、模倣が困難となる。
【0042】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2に係る電気機器システム(充電システム)2の回路ブロック図である。充電システム2は、
図1に示した実施の形態1のものと比較して、充電装置10が充電装置10A(充電装置本体)に替わった点で相違し、その他の点で一致する。以下、充電装置10Aのうち充電装置10と異なる部分を中心に説明する。
【0043】
充電装置10Aは、切替回路としての遮断回路29を有する。遮断回路29は、電池パック50の電圧が所定値以下の場合に、機器側LD端子23からFET等のスイッチング素子Q3のゲート(制御端子)への信号入力を遮断する。前記所定値は、電池パック50の制御部53が起動可能となる電圧値より大きい。スイッチング素子Q3、コンデンサC3、抵抗R2、R3は、
図1のAND回路31の具体構成の一例である。
【0044】
スイッチ19は、リレーであり、コイル部に電流が流れるとオンになる。スイッチ19のコイル部の一端は、電源電圧VDD2が供給される電源ラインに接続される。コイル部の他端は、スイッチング素子Q3のドレインに接続される。スイッチング素子Q3のソースはグランドに接続される。スイッチング素子Q3のゲート、ソース間に、抵抗R3及びコンデンサC3が並列接続される。スイッチング素子Q3のゲートは、スイッチング素子Q2のエミッタに接続される。スイッチング素子Q2のコレクタは、機器側LD端子23に接続される。スイッチング素子Q2のベース(制御端子)は、スイッチング素子Q1のドレインに接続される。スイッチング素子Q1のソースはグランドに接続される。スイッチング素子Q1のゲート(制御端子)、ソース間に、抵抗R1が接続される。スイッチング素子Q1のゲートは、ツェナーダイオードD1のアノードに接続される。ツェナーダイオードD1のカソードは、電源回路11に出力端子に接続される。ツェナーダイオードD1のカソードは、スイッチ19のスイッチ部を介して機器側プラス端子21に接続される。
【0045】
電池パック50の電圧が、スイッチング素子Q1のゲートしきい値電圧(スイッチング素子Q1がターンオンする電圧)Vthと、ツェナーダイオードD1の電圧Vzと、の合計(Vth+Vz)よりも小さい場合、スイッチング素子Q1はオフのため、スイッチング素子Q2もオフである。このため、機器側LD端子23からスイッチング素子Q3のゲートへの信号入力は、スイッチング素子Q2によって遮断される。したがって、制御部13がスイッチング素子Q3のゲートに充電可能の判定結果を示すハイレベルの信号を印加すれば、スイッチング素子Q3がターンオンし、スイッチ19のコイル部に電流が流れ、スイッチ19のスイッチ部がオンとなる。一方、電池パック50の電圧が、ツェナーダイオードD1の電圧Vzと、スイッチング素子Q1のゲートしきい値電圧Vthと、の合計(Vth+Vz)以上の場合、スイッチング素子Q1がオンとなり、スイッチング素子Q2もオンとなる。このため、機器側LD端子23からスイッチング素子Q3のゲートへの信号入力は遮断されない。この場合、制御部13がスイッチング素子Q3のゲートに向けてハイレベルの信号を出力しても、機器側LD端子23がローレベルであれば、抵抗R2での電圧降下により、スイッチング素子Q3のゲート電位はローレベルとなり、スイッチング素子Q3はターンオンしない。
【0046】
図10は、充電システム2の動作の一例を示すタイムチャートである。時刻t8より前は、充電装置10Aに電池パック50が接続されておらず、充電装置10Aの制御部13は待機モード(
図6)である。時刻t8において充電装置10Aに電池パック50が接続されると、充電装置10Aの制御部13は、充電中モード(
図7)となる。電池パック50の電圧は、電池パック50の制御部53が起動するために必要な電圧Va未満である。このため、制御部13は、電池パック50の制御部53との通信を行えない。この場合、制御部13は、時刻t9においてスイッチ19をターンオンし、充電を開始する。
【0047】
時刻t10において電池パック50の電圧がVa以上になると、電池パック50の制御部53が起動する。制御部53は、通信により充電が行われる場合であることを認識するまでは、充電が行われる場合以外と認識しており、かつ電圧Vaは放電禁止電圧より低い。このため、制御部53は、放電禁止信号を電池側LD端子63に出力する。充電装置10Aでは、機器側LD端子23に放電禁止信号が入力されるが、Va<Vth+Vzのため、放電禁止信号は遮断回路29に遮断される。制御部13は、スイッチング素子Q3のゲートに充電可能の判定結果を示すハイレベルの信号を印加し、時刻t10以降も充電が継続される。時刻t10において充電装置10Aの制御部13と電池パック50の制御部53との間で通信が開始され、時刻t11において制御部53は、状態認識を充電中(充電が行われる場合)とする。制御部53は、充電中との状態認識になったことで、電池側LD端子63への放電禁止信号の出力を停止(放電禁止か否かの判定結果の出力を停止)し、電池側LD端子63に充電許可信号(放電許可信号と同レベルの電圧信号)を出力する。
【0048】
時刻t12において電池パック50の電圧がVth+Vz以上になると、スイッチング素子Q1がターンオンし、遮断回路29による遮断が解除される。時刻t13において充電が完了すると(電池パック50の電圧が満充電電圧である充電禁止電圧に到達すると)、充電装置10Aの制御部13は充電終了モード(
図8)となり、電池パック50の制御部53は電池側LD端子63に充電禁止信号を出力する。これにより停止信号検出回路27が充電禁止信号を検出し、制御部13はリレー19をオフするための信号をスイッチング素子Q3の制御端子に出力することでスイッチ19はターンオフする。制御部53は、充電が行われる場合であることを示す信号を最後に受信してから所定時間が経過した時刻t14において、状態認識を非充電中(充電が行われる場合以外)とする。制御部53は、非充電中との状態認識になったことで、電池側LD端子63への充電禁止信号の出力を停止(充電禁止か否かの判定結果の出力を停止)し、電池側LD端子63に放電許可信号を出力する。時刻t15において充電装置10Aから電池パック50が外されると、制御部13は待機モード(
図6)に移行し、スイッチング素子Q1はターンオフする。
【0049】
図11は、充電装置10Aの充電中モードの動作のフローチャートである。以下、
図7との相違点を中心に説明する。制御部13は、ステップS25において電池状態情報を電池パック50から所定時間受信しない場合(S25のNO、S39のYES)、電池パック50の電圧がVa未満であり(S51のYES)、機器側LD端子23において充電禁止信号を受信せず(S53のYES)、かつ充電中モードに移行してから所定時間が経過してなければ(S55のNO)、電池パック50の充電を開始、継続する(S57)。制御部13は、ステップS51において電池パック50の電圧がVa以上の場合(S51のNO)、電池パック50の充電を停止し(S41)、充電終了モード(
図8)に移行する。制御部13は、ステップS53において機器側LD端子23で充電禁止信号を受信した場合(S53のNO)、電池パック50の電圧がVa以上であれば(S59のNO)、電池パック50の充電を停止し(S61)、充電終了モード(
図8)に移行する。制御部13は、ステップS59において電池パック50の電圧がVa未満であれば(S59のYES)、ステップS55に進む。制御部13は、ステップS55において、充電中モードに移行してから所定時間が経過した場合(S55のYES)、電池パック50の充電を停止し(S61)、充電終了モード(
図8)に移行する。
【0050】
本実施の形態によれば、電池パック50が電池セル群55の電圧で制御部53を起動できない程度に過放電になっている場合においても、充電装置10Aにより電池パック50を好適に充電できる。すなわち、充電の過程で電池パック50の制御部53が起動して放電禁止信号を電池側LD端子63に出力しても、充電装置10Aでは遮断回路29により放電禁止信号を遮断するため、制御部13の制御により、電池パック50の充電を中断等することなく継続できる。
【0051】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0052】
1,2…システム(充電システム)、10,10A…充電装置、11…電源回路、13…制御部(機器側制御部)、15…通信回路、17…接続検出回路、19…スイッチ、21…機器側プラス端子、22…機器側D端子、23…機器側LD端子、24…機器側マイナス端子、27…停止信号検出回路、29…遮断回路、31…AND回路、50…電池パック、53…制御部(電池側制御部)、55…電池セル群、57…通信回路、61…電池側プラス端子(充電用プラス端子)、62…電池側D端子、63…電池側LD端子、64…電池側マイナス端子、67…温度検出素子、80…電気機器、81…機器側プラス端子、83…機器側LD端子、84…機器側マイナス端子、85…モータ、86…スイッチ、87…スイッチング素子、88…抵抗、89…制御部(機器側制御部)、90…電気機器、91…機器側プラス端子、93…機器側LD端子、94…機器側マイナス端子、95…モータ、96…スイッチ、97…スイッチング素子