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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】車両の走行制御方法及び走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020568858
(86)(22)【出願日】2019-01-31
(86)【国際出願番号】 IB2019000108
(87)【国際公開番号】W WO2020157532
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福重 孝志
(72)【発明者】
【氏名】田家 智
【審査官】稲垣 彰彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-151764(JP,A)
【文献】特開2018-112989(JP,A)
【文献】特開2018-188030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が走行可能な道路領域である走行路のレーンマーカに関するレーンマーカ情報と、前記自車両の周囲に存在する物体に関する物体情報とを取得し、
前記レーンマーカ情報と前記物体情報に基づいて、前記レーンマーカ情報と前記物体情報のそれぞれにおいて、前記自車両の周囲の占有状況を判定し、
前記占有状況に基づいて、前記自車両の走行可能領域を生成し、
前記走行可能領域内に、前記自車両が走行する目標経路を生成し、
生成された前記目標経路にしたがって、前記自車両の自動走行制御を実行する車両の走行制御方法であって、
前記レーンマーカの占有状況、及び前記物体の占有状況は、占有、非占有及び未知の判定クラスによって判定し、
前記占有、非占有及び未知の判定結果を用いて、占有領域、非占有領域及び未知領域を有する前記自車両の走行路統合占有マップを生成し、
前記自車両の走行可能領域を示す前記走行路統合占有マップ内に前記目標経路を生成して、前記自車両の自動走行制御を実行する車両の走行制御方法。
【請求項2】
前記レーンマーカの占有状況の判定結果に基づいて、前記自車両の周囲を、前記レーンマーカにより占有されている占有領域と、前記レーンマーカに占有されていない非占有領域と、前記レーンマーカによる占有状況が不明な未知領域と、に分類した第1走行路占有マップを生成し、
前記物体の占有状況の判定結果に基づいて、前記自車両の周囲を、前記物体により占有されている占有領域と、前記物体に占有されていない非占有領域と、前記物体による占有状況が不明な未知領域と、に分類した第2走行路占有マップを生成し、
前記第1走行路占有マップと、前記第2走行路占有マップとを統合して、前記走行路統合占有マップを生成し、
前記走行路統合占有マップに基づいて、前記目標経路を生成する請求項1に記載の車両の走行制御方法。
【請求項3】
前記レーンマーカ情報が取得可能な場合に、前記自動走行制御を実行し、
前記自動走行制御の実行中に、前記レーンマーカ情報が取得できなくなった場合には、第1所定時間内に前記自動走行制御を中止し、
前記自動走行制御を中止するまでに、前記走行路統合占有マップから、前記目標経路が生成可能な場合には、前記自動走行制御を第2所定時間だけ継続する請求項2に記載の車両の走行制御方法。
【請求項4】
前記第2所定時間内に、前記走行路統合占有マップから、前記目標経路が生成できなくなった場合には、前記自動走行制御を第3所定時間内に中止する請求項3に記載の車両の走行制御方法。
【請求項5】
前記第2所定時間内に、前記走行路統合占有マップから前記レーンマーカ情報が取得できるようになった場合には、前記自動走行制御を継続する請求項3又は4に記載の車両の走行制御方法。
【請求項6】
前記第2所定時間内に、前記走行路統合占有マップから前記レーンマーカ情報が取得できるようにならなかった場合には、前記自動走行制御を第4所定時間内に中止する請求項3~5のいずれか1項に記載の車両の走行制御方法。
【請求項7】
前記自動走行制御を中止する場合には、前記自車両の乗員に対し、第5所定時間内にその旨を報知する請求項3~6のいずれか1項に記載の車両の走行制御方法。
【請求項8】
前記走行路統合占有マップは、前記第1走行路占有マップと、前記第2走行路占有マップとを重ね合わせることにより生成され、
前記第1走行路占有マップと、前記第2走行路占有マップとの少なくとも一方が占有領域である領域は、前記走行路統合占有マップにおいて占有領域とし、
前記第1走行路占有マップと、前記第2走行路占有マップとのいずれか一方が非占有領域で、他方が未知領域である領域は、前記走行路統合占有マップにおいて非占有領域とし、
前記第1走行路占有マップと、前記第2走行路占有マップとが共に未知領域である領域は、前記走行路統合占有マップにおいて未知領域とする請求項2に記載の車両の走行制御方法。
【請求項9】
前記占有、非占有及び未知の判定クラスは、アナログ的に各判定クラスの中間の状態を含む請求項2に記載の車両の走行制御方法。
【請求項10】
前記アナログ的な各判定クラスの中間状態とは、前記未知の判定値を0、前記占有の判定値を+1、前記非占有の判定値を-1としたときに、これらの判定値の中間の状態を含む請求項9に記載の車両の走行制御方法。
【請求項11】
前記走行路統合占有マップは、前記第1走行路占有マップと、前記第2走行路占有マップとを重ね合わせることにより生成され、
前記第1走行路占有マップの各領域の判定値をi1、前記第2走行路占有マップの各領域の判定値をi2としたときに、
前記第1走行路占有マップの前記判定値i1と、前記第2走行路占有マップの前記判定値i2とが同符号の領域では、絶対値が大きい判定値の領域を前記走行路統合占有マップの領域とし、
前記第1走行路占有マップの前記判定値i1と、前記第2走行路占有マップの前記判定値i2とが異符号の領域では、i2-i1×i2+i1を演算して求めたiNの領域を前記走行路統合占有マップの領域とする請求項10に記載の車両の走行制御方法。
【請求項12】
前記走行路統合占有マップの非占有領域にのみ、前記目標経路を生成する請求項2に記載の車両の走行制御方法。
【請求項13】
前記自動走行制御の実行中に、前記第1走行路占有マップが得られない場合には、前記自車両の現在位置に関する自車位置情報と、前記自車両の現在位置の周辺の地図情報とを取得し、
前記自車位置情報と、前記地図情報とに基づいて、目標角度を算出し、
算出した前記目標角度を前記目標経路に反映する請求項2に記載の車両の走行制御方法。
【請求項14】
前記自動走行制御の実行中に、前記第1走行路占有マップが得られない場合には、
前記自車両の前方を走行する先行車両の走行軌跡を検出し、
前記走行軌跡に基づいて目標方向を算出し、
算出した前記目標方向を前記目標経路に反映する請求項2に記載の車両の走行制御方法。
【請求項15】
自車両が走行可能な道路領域である走行路のレーンマーカに関するレーンマーカ情報と、前記自車両の周囲に存在する物体に関する物体情報とを取得し、
前記レーンマーカ情報と前記物体情報に基づいて、前記レーンマーカ情報と前記物体情報のそれぞれにおいて、前記自車両の周囲の占有状況を判定し、
前記占有状況に基づいて、前記自車両の走行可能領域を生成し、
前記走行可能領域内に、前記自車両が走行する目標経路を生成し、
生成された前記目標経路にしたがって、前記自車両の自動走行制御を実行する車両の走行制御装置であって、
前記走行制御装置は、
前記レーンマーカの占有状況、及び前記物体の占有状況は、占有、非占有及び未知の判定クラスによって判定し、
前記占有、非占有及び未知の判定結果を用いて、占有領域、非占有領域及び未知領域を有する前記自車両の走行路統合占有マップを生成し、
前記自車両の走行可能領域を示す前記走行路統合占有マップ内に前記目標経路を生成して、前記自車両の自動走行制御を実行する車両の走行制御装置。
【請求項16】
前記走行制御装置は、
前記レーンマーカの占有状況の判定結果に基づいて、前記自車両の周囲を、前記レーンマーカにより占有されている占有領域と、前記レーンマーカに占有されていない非占有領域と、前記レーンマーカによる占有状況が不明な未知領域と、に分類した第1走行路占有マップを生成し、
前記物体の占有状況の判定結果に基づいて、前記自車両の周囲を、前記物体により占有されている占有領域と、前記物体に占有されていない非占有領域と、前記物体による占有状況が不明な未知領域と、に分類した第2走行路占有マップを生成し、
前記第1走行路占有マップと、前記第2走行路占有マップとを統合して、前記走行路統合占有マップを生成し、
前記走行路統合占有マップに基づいて、前記目標経路を生成する請求項15に記載の車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行制御方法及び走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が走行するレーンのレーン境界線の位置と、車両の周囲に存在する物体の位置とを平面座標系で認識し、認識したレーン境界線と物体との位置を平面座標系からレーン座標系に座標変換して投影し、レーン座標系におけるレーン境界線と物体とに基づいて、車両が走行可能な領域を算出する走行制御装置が知られている(特許文献1)。また、この走行制御装置では、レーン座標系において算出した走行可能領域を平面座標系に逆変換し、平面座標系の走行可能領域で、車両を自動運転するための走行軌跡を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-151764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の走行制御装置は、レーン境界線の位置と、車両の周囲の物体の位置とに基づいて走行可能領域を算出しているので、交差点等のようにレーン境界線が存在しない区間(以下、領域ともいう)では、走行可能領域を算出することはできない。そのため、特許文献1の走行制御装置では、レーン境界線が存在しない領域を走行する場合、自動走行を中止して手動運転に切り換える必要がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、レーン境界線が存在しない領域において自動走行を継続することができる車両の走行制御方法及び走行制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自車両が走行可能な道路領域である走行路のレーンマーカに関するレーンマーカ情報と自車両の周囲に存在する物体に関する物体情報に基づいて、レーンマーカの占有状況、及び物体の占有状況を占有、非占有及び未知の判定クラスによって判定し、占有、非占有及び未知の判定結果を用いて、占有領域、非占有領域及び未知領域を有する自車両の走行路統合占有マップを生成し、自車両の走行可能領域を示す走行路統合占有マップ内に目標経路を生成して、自車両の自動走行制御を実行することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、走行路統合占有マップにより、交差点等のレーン境界線(レーンマーカ)が存在しない領域でも自動走行を中止しないので、自動走行から手動運転に切り換える必要がなくなり、自動走行制御を実行可能な状況範囲を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る車両の走行制御装置の一実施の形態を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係る走行可能領域生成部の機能的な構成を示すブロック図である。
図3】本実施形態に係る自動走行制御の走行シーンを示す平面図である。
図4A図3の走行シーンにおけるレーンマーカの占有状況を示すレーンマーカ占有マップである。
図4B図3の走行シーンにおける物体の占有状況を示すLRF占有マップである。
図4C図3の走行シーンにおける物体の占有状況を示すレーダ占有マップである。
図5】複数の占有マップを統合して走行路統合占有マップ生成する手順を示す説明図である。
図6】走行路統合占有マップの構成を示す説明図である。
図7】レーンマーカ占有マップとLRF占有マップとを統合して生成される走行路統合占有マップの組み合わせ例を示すチャート図である。
図8】レーンマーカが存在しない走行区間の一例として挙げた十字路状の交差点の平面図である。
図9】従来の自動走行制御で走行可能領域を生成する際に、未知領域を非占有領域として扱っていた占有グリッドマップを示すチャート図である。
図10】従来の自動走行制御で走行可能領域を生成する際に、未知領域を占有領域として扱っていた占有グリッドマップを示すチャート図である。
図11】第1実施形態に係る自動走行制御の手順を示すフローチャートである。
図12A】第2実施形態に係り、レーンマーカ占有マップのアナログ的な判定値i1と、LRF占有マップのアナログ的な判定値i2と、i1とi2とを統合した領域iNとを示す離散値版の論理表を示す図である。
図12B図12Aの論理表から判定値i1とi2の中間の状態を含むように作成したグラフを示す図である。
図13A】第2実施形態に係り、レーンマーカ占有マップのアナログ的な判定値i1と、LRF占有マップのアナログ的な判定値i2と、i1とi2とを統合した領域iNとを示す連続値版の論理表を示す図である。
図13B図13Aの論理表から判定値i1とi2の中間の状態を含むように作成したグラフを示す図である。
図14】第3実施形態に係る走行可能領域生成部の機能的な構成を示すブロック図である。
図15】第3実施形態に係る、複数の占有マップを統合して走行路統合占有マップ生成する手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態に係る走行制御装置VTCの構成を示すブロック図である。本実施形態に係る走行制御装置VTCは、本発明に係る車両の走行制御方法を実施する一実施の形態でもある。走行制御装置VTCは、例えば、車両に搭載された車載装置であり、走行制御装置VTCが搭載された自車両V図3(A)参照)の走行を制御する各種の機能を備えている。例えば、走行制御装置VTCは、設定された目的地に向けて走行ルートを設定し、この走行ルートにしたがって自車両Vを自動で走行させる自動走行制御機能等を備えている。
【0010】
本実施形態に係る走行制御装置VTCは、目的地設定部1と、自車位置検出部2と、地図データベース3と、ルート設定部4と、センサ5と、走行可能領域生成部6と、目標経路生成部7と、経路追従制御部8と、ステアリングアクチュエータ9と、ステアリング装置10と、コーナー減速制御部11と、車速調整部12と、車速サーボ13と、エンジン14と、ブレーキ装置15と、静止障害物減速制御部16と、停止線停車制御部17と、先行車認識部18と、車間制御部19と、提示装置20と、を備える。
【0011】
走行制御装置VTCを構成する各部のうち、ルート設定部4と、走行可能領域生成部6と、目標経路生成部7と、経路追従制御部8と、コーナー減速制御部11と、車速調整部12と、静止障害物減速制御部16と、停止線停車制御部17と、先行車認識部18と、車間制御部19とは、一又は複数のコンピュータ及び当該コンピュータにインストールされたソフトウェアにより構成されている。コンピュータは、上述した各部を機能させるためのプログラムを格納したROMと、このROMに格納されたプログラムを実行するCPUと、アクセス可能な記憶装置として機能するRAMとから構成される。なお、CPUに代えて又はこれとともに、MPU、DSP、ASIC、FPGAなどを用いることができる。
【0012】
上述した各部を構成するコンピュータは、目的地設定部1と、自車位置検出部2と、地図データベース3と、センサ5と、ステアリングアクチュエータ9と、車速サーボ13と、提示装置20とに対し、相互に情報の送受信を行うために、たとえばCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続されている。
【0013】
目的地設定部1は、自動走行制御機能により自車両Vが走行する際の目的地を設定する。この目的地設定部1は、表示装置と入力装置とを備える。表示装置は、例えば、液晶パネル等のディスプレイであり、地図データベース3から読み出した地図情報と、目的地を設定するための設定情報等を表示する。入力装置は、例えば、ディスプレイ画面上に配置されたタッチパネルや、ダイヤルスイッチ、ドライバーの音声による入力が可能なマイクなどの装置であり、表示装置に表示された設定情報に対する目的地の入力操作等に利用される。目的地設定部1は、地図情報と、設定情報と、入力装置から入力された入力情報とに基づいて、目的地の位置を表す目的地情報を生成する。
【0014】
自車位置検出部2は、自車両Vの現在の位置を検出する。この自車位置検出部2は、GPSユニットと、ジャイロセンサと、車速センサ等を備える。自車位置検出部2は、GPSユニットにより複数の衛星通信から送信される電波を検出し、自車両Vの位置情報を周期的に取得するとともに、取得した自車両Vの位置情報と、ジャイロセンサから取得した角度変化情報と、車速センサから取得した速度情報とに基づいて、自車両Vの現在位置を検出し、現在位置を表す自車位置情報を生成する。
【0015】
地図データベース3は、走行ルートの生成に用いる低精度地図情報31(図2参照)と、自動走行制御に用いる高精度地図情報32(図2参照)とを格納している。低精度地図情報31は、一般的なカーナビゲーション装置等で用いられている地図情報であり、各種施設や特定の地点の位置情報とともに、道路に関する情報が記録されている。道路に関する情報としては、合流地点、分岐地点、料金所、車線数の減少位置、サービスエリア(SA)/パーキングエリア(PA)などの位置情報などの情報が含まれている。高精度地図情報32は、データ取得用車両を用いて実際の道路を走行した際に検出された道路形状に基づく三次元地図情報であり、地図情報とともに、車線数や車線幅、レーンマーカ(車線境界線)の種類や位置等が三次元情報として関連付けられた地図情報である。
【0016】
ルート設定部4は、自車両Vの目的地までの走行ルートを設定する。このルート設定部4は、ルート生成部41と、車線設定部42とを備える。ルート生成部41は、目的地設定部1から取得した目的地情報と、自車位置検出部2から取得した自車位置情報と、地図データベース3から取得した地図情報とに基づいて、自車両Vの現在位置から目的地までの走行ルートを生成する。車線設定部42は、地図データベース3から取得した高精度地図情報に基づいて、走行ルート上で自車両Vが走行する車線を設定する。なお、この車線とは、本発明における、自車両Vが走行可能な道路領域の走行路に相当する。
【0017】
センサ5は、自車両Vの周囲の状況を検出する。センサ5は、例えば、レーンカメラ51(図2参照)と、レーザレンジファインダ52(図2参照)と、レーダ装置53(図2参照)と、を備える。
【0018】
レーンカメラ51は、撮像部と、画像解析部とを備える。撮像部は、自車両Vの前方の所定の範囲を撮像して画像データを取得するイメージセンサであり、例えば車室内のフロントウィンドウ上部に設けられたCCD広角カメラからなる。撮像部は、ステレオカメラや全方位カメラであってもよく、複数のイメージセンサを含むようにしてもよい。画像解析部は、撮像部により撮像された画像データを解析して、自車両Vの前方に存在するセンターライン、縁石側の境界ライン等のレーンマーカを検出し、検出したレーンマーカの種類や位置等を特定して、レーンマーカ情報として出力する。
【0019】
レーザレンジファインダ(以下、LRFともいう)52は、距離測定用の出力波であるレーザ光を車両の周囲に照射し、その反射波(検知波)を検出することで、自車両Vの周囲に存在する他車両、二輪車、自転車、歩行者、路肩の縁石、ガードレール、壁面、盛り土等の物体を検出する。LRF52は、検出結果を自車両Vの周囲の物体情報として出力する。
【0020】
レーダ装置53は、ミリ波や超音波を自車両Vの前方に照射して自車両Vの周囲の所定の範囲を走査し、自車両Vの周囲に存在する他車両、二輪車、自転車、歩行者、ガードレール、壁面、盛り土等の物体を検出する。例えば、レーダ装置53は、検出した物体と自車両Vとの相対位置(方位)、物体の相対速度、自車両Vから物体までの距離等を検出して、自車両Vの周囲の物体情報として出力する。
【0021】
走行可能領域生成部6は、走行ルート内に自車両Vが走行可能な領域を生成する。走行可能領域生成部6は、ルート設定部4から走行ルートを取得し、レーンカメラ51、LRF52及びレーダ装置53から、自車両Vの周囲の物体情報と、レーンマーカ情報とを取得する。走行可能領域生成部6は、取得した走行ルートと、物体情報と、レーンマーカ情報とに基づいて、走行ルートとして設定された車線内に自車両Vの走行可能領域を生成する。
【0022】
目標経路生成部7は、走行可能領域内に自車両Vの走行時の追従目標となる目標経路を生成する。目標経路生成部7は、走行可能領域生成部6から走行可能領域に関する走行可能領域情報を取得し、取得した走行可能領域情報に基づいて、走行可能領域内に目標経路を生成する。
【0023】
経路追従制御部8は、自車両Vを目標経路に追従するように走行させる。具体的には、経路追従制御部8は、目標経路生成部7から目標経路を取得し、自車両Vの前後方向に沿って設定された車両中心線が、目標経路生成部7により生成された目標経路上を移動するように、ステアリングアクチュエータ9を介してステアリング装置10を制御する。これにより、自車両Vは、目標経路に追従するように走行ルートを走行する。
【0024】
コーナー減速制御部11は、目標経路生成部7により生成された目標経路に、右折又は左折、あるいはカーブ等が存在する場合に、乗員に違和感を与えないように自車両Vの速度を減速する。具体的には、コーナー減速制御部11は、目標経路生成部7から目標経路を取得し、目標経路の右折角度や左折角度、カーブの半径等に基づいて減速後の速度を設定し、車速調整部12に減速後の速度に関する減速情報を入力する。車速調整部12は、コーナー減速制御部11から入力された減速情報に基づいて、車速サーボ13を介してエンジン14及びブレーキ装置15を制御し、自車両Vの速度を減速する。
【0025】
静止障害物減速制御部16は、走行ルートとして設定された車線内に駐車車両や工事による走行制御区域等の静止した障害物が存在する場合に、乗員に違和感を与えずに静止障害物を回避できるように、自車両Vの速度を減速する。具体的には、静止障害物減速制御部16は、走行可能領域生成部6から走行可能領域情報を取得し、センサ5から自車両Vの周囲の物体情報を取得する。静止障害物減速制御部16は、取得した走行可能領域情報と、自車両Vの周囲の物体情報とに基づいて、減速後の速度を設定し、車速調整部12に減速後の速度に関する減速情報を入力する。なお静止障害物減速制御部16は、目標経路生成部7から目標経路を取得し、目標経路と自車両Vの周囲の物体情報とに基づいて減速後の速度を設定してもよい。車速調整部12は、静止障害物減速制御部16から入力された減速情報に基づいて、車速サーボ13を介してエンジン14及びブレーキ装置15を制御し、自車両Vの速度を減速する。
【0026】
停止線停車制御部17は、自車両Vが交差点などの一時停止地点に到達した場合に、停止線に合わせて自車両Vを停車する。具体的には、停止線停車制御部17は、自車位置検出部2から取得した自車位置情報と、ルート設定部4により設定された走行ルートとに基づいて、自車両Vが交差点等に到達したことを特定するとともに、センサ5のレーンカメラ51によって停車線の位置を検出する。そして、停止線停車制御部17は、車速調整部12により車速サーボ13を介してエンジン14及びブレーキ装置15を制御することにより、停止線に合わせて自車両Vを停車する。
【0027】
先行車認識部18及び車間制御部19は、自車両Vと同じ車線を走行する先行車両が存在する場合に、先行車両との間に所定の車間距離を空けるために自車両Vの速度を減速する。具体的には、先行車認識部18は、センサ5のレーダ装置53から出力された物体情報に基づいて先行車両を認識し、先行車両と自車両Vとの距離と、先行車両に対する相対速度とを算出し、算出結果を車間距離情報及び相対速度情報として車間制御部19に入力する。車間制御部19は、先行車認識部18から入力された車間距離情報と相対速度情報とに基づいて、先行車両との間に所定の車間距離が空くように、車速調整部12により車速サーボ13を介してエンジン14及びブレーキ装置15を制御する。
【0028】
提示装置20は、自車両Vのドライバーに情報を提示する。提示装置20は、例えば、ナビゲーション装置が備えるディスプレイ、ルームミラーに組み込まれたディスプレイ、メーター部に組み込まれたディスプレイ、フロントガラスに映し出されるヘッドアップディスプレイ、オーディオ装置が備えるスピーカー、および振動体が埋設された座席シート装置などの装置である。提示装置20は、自動走行制御の実行中に、目標経路生成部7で目標経路が生成できなくなった場合に、自車両Vのドライバーに対して、自動走行制御の中止を提示する。
【0029】
《第1実施形態》
図2は、本実施形態に係る走行可能領域生成部6の機能的な構成を示すブロック図である。走行可能領域生成部6は、走行路占有マップ生成部61~64と、マップ統合部65と、を備える。
【0030】
走行路占有マップ生成部61は、センサ5のレーンカメラ51から取得したレーンマーカ情報に基づいて、自車両Vの周囲におけるレーンマーカの占有状況を、占有、非占有及び未知の3種類の判定クラスによって判定する。なお、レーンマーカの占有状況とは、道路上にレーンマーカが設けられているか否かを表し、道路上にレーンマーカが設けられている場合に、道路上のレーンマーカが設けられている領域がレーンマーカに占有されているとし、道路上にレーンマーカが設けられていない場合に、道路上のレーンマーカが設けられていない領域がレーンマーカに占有されていない(非占有)とし、道路上にレーンマーカが設けられているか否かが不明な領域は未知とする。走行路占有マップ生成部61は、上述した判定クラスによってレーンマーカ情報を判定することにより、自車両Vの周囲を、レーンマーカにより占有されている占有領域と、レーンマーカに占有されていない非占有領域と、レーンマーカによる占有状況が不明な未知領域と、に分類した第1レーンマーカ占有マップを生成する。第1レーンマーカ占有マップは、本発明の第1走行路占有マップに相当する。
【0031】
例えば、自車両Vが、図3に示すように、左側への分岐路JLを有する左側通行の1車線道路を走行している場合、レーンカメラ51は、自車両Vが走行する自車線L1のセンターラインCLと、路肩側に配された境界ラインBLとをレーンマーカとして検出し、検出したレーンマーカの種類と位置とを特定してレーンマーカ情報を生成し、生成したレーンマーカ情報を走行路占有マップ生成部61に出力する。
【0032】
走行路占有マップ生成部61は、レーンカメラ51から取得したレーンマーカ情報に基づいて、自車両Vの周囲におけるレーンマーカの占有状況を、占有、非占有及び未知の3種類の判定クラスによって判定する。走行路占有マップ生成部61は、上述した判定クラスによってレーンマーカ情報を判定することにより、図4(A)に示す第1レーンマーカ占有マップOM1(以下、占有マップOM1ともいう)を生成する。この第1レーンマーカ占有マップOM1では、センターラインCLと境界ラインBLとが存在する領域(図中、斜線のハッチングで示す領域)は、占有領域OA1に分類される。また、センターラインCLと境界ラインBLとの間の領域(図中、微小な点のハッチングによって示す領域)は、非占有領域NA1に分類される。さらに、センターラインCLと境界ラインBLとの外側の領域(図中、無地によって示す領域)は、レーンカメラ51のレンジ外や死角等によってレーンマーカが検出できなかった領域として、未知領域UA1に分類される。
【0033】
走行路占有マップ生成部62は、センサ5のLRF52から取得した物体情報に基づいて、自車両Vの周囲における物体の占有状況を、占有、非占有及び未知の3種類の判定クラスによって判定する。なお、物体の占有状況とは、道路上の領域に自車両V以外の物体が存在するか否かを表し、道路上の領域に自車両V以外の物体が存在する場合に、物体が存在する領域が物体に占有されているとし、道路上に自車両V以外の物体が存在しない場合に、物体が存在しない領域が物体に占有されていない(非占有)とし、道路上に自車両V以外の物体が存在するか否かが不明な場合を未知とする。また、走行路占有マップ生成部62は、占有状況の判定結果に基づいて、自車両Vの周囲を、物体により占有されている占有領域と、物体に占有されていない非占有領域と、物体による占有状況が不明な未知領域と、に分類したLRF占有マップを生成する。LRF占有マップは、本発明の第2走行路占有マップに相当する。
【0034】
例えば、自車両Vが、図3に示す左側通行の1車線道路を走行している場合、LRF52は、自車線L1の路肩側の縁石Cと、歩道SWに設置された配電ボックス等の設置物Qと、自車線L1において自車両Vの前方を走行する先行車両Vとを自車両Vの周囲の物体として検出し、検出した物体の位置情報を含む物体情報を生成する。
【0035】
走行路占有マップ生成部62は、LRF52から取得した物体情報に基づいて、自車両Vの周囲における物体の占有状況を、占有、非占有及び未知の3種類の判定クラスによって判定し、その判定結果に基づいて、図4(B)に示すLRF占有マップOM3(以下、占有マップOM3ともいう)を生成する。このLRF占有マップOM3では、物体が存在する領域は占有領域OA3に分類される。また、物体が存在しない領域は、非占有領域NA3に分類される。さらに、LRF52のレンジ外や、死角等によって物体が検出できなかった領域は、未知領域UA3に分類される。なお、図4(B)では、占有領域OA3、非占有領域NA3及び未知領域UA3は、第1レーンマーカ占有マップOM1と同様に、それぞれ斜線のハッチング、微小な点のハッチング及び無地によって示している。
【0036】
走行路占有マップ生成部63は、センサ5のレーダ装置53から取得した物体情報に基づいて、自車両Vの周囲における物体の占有状況を、占有、非占有及び未知の3種類の判定クラスによって判定する。なお、物体の占有状況の定義については、走行路占有マップ生成部62の場合と同様であるため、詳しい説明は省略する。走行路占有マップ生成部63は、占有状況の判定結果に基づいて、自車両Vの周囲を、物体により占有されている占有領域と、物体に占有されていない非占有領域と、物体による占有状況が不明な未知領域と、に分類したレーダ占有マップを生成する。レーダ占有マップは、本発明の第2走行路占有マップに相当する。
【0037】
例えば、自車両Vが、図3に示す左側通行の1車線道路を走行している場合、レーダ装置53は、歩道SWの設置物Qと、自車線L1の先行車両V1とを自車両Vの周囲の物体として検出し、検出した物体の位置情報を含む物体情報を生成する。走行路占有マップ生成部63は、レーダ装置53から取得した物体情報に基づいて、自車両Vの周囲における物体の占有状況を、占有、非占有及び未知の3種類の判定クラスによって判定し、その判定結果に基づいて、図4(C)に示すレーダ占有マップOM4(以下、占有マップOM4ともいう)を生成する。このレーダ占有マップOM4では、物体が存在する領域は占有領域OA4に分類し、それ以外の領域は未知領域UA4に分類される。なお、図4(C)では、占有領域OA4及び未知領域UA4は、第1レーンマーカ占有マップOM1と同様に、それぞれ斜線のハッチング及び無地によって示している。
【0038】
なお、車両の自動走行制御に用いられるレーダ装置53は、一般的に路面から所定高さ以上の物体のみを検出するように構成されているため、センターラインCLや縁石C等は検出されない。そのため、レーダ装置53の検出結果に基づいて生成された、図4(C)のレーダ占有マップOM4には、非占有領域は存在しない。なお、センターラインCLや縁石C等の代わりに、ガードレールや擁壁などが設置されている道路では、レーダ装置53によってガードレールや擁壁を検出することができるので、レーダ占有マップOM4には、ガードレールや擁壁に基づいて認識された非占有領域NA4が生成される。
【0039】
走行路占有マップ生成部64は、地図データベース3から取得した高精度地図情報と、自車位置検出部2から取得した自車位置情報とに基づいて、自車両Vの周囲に存在するレーンマーカの種類や位置等を特定し、レーンマーカ情報を生成する。また、走行路占有マップ生成部64は、生成したレーンマーカ情報に基づいて、自車両Vの周囲における物体の占有状況を、占有、非占有及び未知の3種類の判定クラスによって判定し、占有状況の判定結果に基づいて、自車両Vの周囲を、レーンマーカにより占有されている占有領域と、レーンマーカに占有されていない非占有領域と、レーンマーカによる占有状況が不明な未知領域と、に分類した第2レーンマーカ占有マップOM2(以下、占有マップOM2ともいう)を生成する。なお、第2レーンマーカ占有マップOM2は、レーンカメラ51のレーンマーカ情報に基づいて生成される第1レーンマーカ占有マップOM1とほぼ同様なものとなるので、図示は省略する。
【0040】
マップ統合部65は、図5に示すように、第1レーンマーカ占有マップOM1と、第2レーンマーカ占有マップOM2と、LRF占有マップOM3と、レーダ占有マップOM4とを統合して、走行路統合占有マップIOMを生成する。具体的には、マップ統合部65は、図5のステップA~ステップDに示すように、自車両Vを含むベースマップM0を生成し、このベースマップM0にレーダ占有マップOM4と、第1レーンマーカ占有マップOM1及び第2レーンマーカ占有マップOM2と、LRF占有マップOM3とを順次に重ね合わせて、走行路統合占有マップIOMを生成する。
【0041】
また、マップ統合部65は、占有マップOM1~OM4の占有領域、非占有領域及び未知領域の組み合わせに応じて、走行路統合占有マップIMOの占有領域、非占有領域及び未知領域を決定する。このように、占有領域と非占有領域との組み合わせに応じて生成されるマップを、一般的に占有グリッドマップ(Occupancy grid map)という。
【0042】
具体的には、マップ統合部65は、図6に示すように、占有マップOM1~OM4の少なくとも1つが占有領域である領域については、安全性を考慮して、走行路統合占有マップIOMの占有領域IOAに分類する。また、マップ統合部65は、占有マップOM1~OM4の非占有領域と未知領域とが重なり合う領域については、自走走行制御の継続を優先して、走行路統合占有マップIOMの非占有領域INAに分類する。さらに、マップ統合部65は、占有マップOM1~OM4の未知領域のみが重なり合う領域については、未知領域であることが確実であると判定し、走行路統合占有マップIOMの未知領域IUAに分類する。すなわち、マップ統合部65は、占有領域と、非占有領域と、未知領域とに優先順位を設定し、走行路統合占有マップIOMでは、占有領域が優先的に設定されるようにマップの統合を行っている。なお、図6では、占有領域IOA、非占有領域INA及び未知領域IUAは、第1レーンマーカ占有マップOM1と同様に、それぞれ斜線のハッチング、微小な点のハッチング及び無地によって示している。
【0043】
目標経路生成部7は、マップ統合部65により生成された走行路統合占有マップIOMに基づいて、障害物などが存在しないことが確かな非占有領域INAにのみ目標経路TPを生成する。例えば、図6に示す走行路統合占有マップIOMでは、目標経路生成部7は、走行路統合占有マップIOMの非占有領域INAの左右の境界線から等距離となる中央部分に目標経路TPを生成する。経路追従制御部8は、目標経路生成部7により生成された目標経路TPに追従するように、自車両Vの自動走行制御を実行する。
【0044】
なお、目標経路生成部7は、自動走行制御の安全性を確保するため、走行路統合占有マップIOMの生成に用いられた占有マップOM1~OM4の組み合わせによっては、走行路統合占有マップIOMに目標経路TPを生成しない。すなわち、目標経路生成部7は、レーンマーカ情報と周囲の物体情報とのいずれかに基づいて、走行路統合占有マップIOMに非占有領域INAが生成されている場合には、その非占有領域INA内に目標経路TPを生成するが、走行路統合占有マップIOMに非占有領域INAが生成されていない場合には、目標経路TPを生成しない。
【0045】
図7は、レーンカメラ51のレーンマーカ情報に基づいて生成された第1レーンマーカ占有マップと、LRF52の物体情報に基づいて生成されたLRF占有マップとを、マップ統合部65により統合して生成される走行路統合占有マップの組み合わせ例を示すチャート図である。例えば、図7のチャート図の左上段に示すように、レーンカメラ51のレーンマーカ情報からレーンマーカが検出された第1レーンマーカ占有マップと、LRF52の物体情報から自車両Vの周囲の物体が検出されたLRF占有マップとが統合された場合、走行路統合占有マップには非占有領域が生成されるので、自動走行制御が可能となる。
【0046】
また、図7のチャート図の左下段に示すように、レーンカメラ51のレーンカメラ情報からレーンマーカが検出された第1レーンマーカ占有マップと、LRF52の物体情報から自車両Vの周囲の物体が検出できず、未知領域のみとなったLRF占有マップとが統合された場合、走行路統合占有マップには、第1レーンマーカ占有マップによって非占有領域が生成されるので、自動走行制御が可能となる。
【0047】
さらに、図7のチャート図の右上段に示すように、レーンカメラ51のレーンマーカ情報からレーンマーカが検出できず、未知領域のみとなった第1レーンマーカ占有マップと、LRF52の物体情報から自車両Vの周囲の物体が検出されたLRF占有マップとが統合された場合、走行路統合占有マップには、LRF占有マップによって非占有領域が生成されるので、自動走行制御が可能となる。
【0048】
これら3種類の走行路統合占有マップに対し、図7のチャート図の右下段に示す例では、レーンカメラ51のレーンマーカ情報からレーンマーカが検出できず、未知領域のみとなった第1レーンマーカ占有マップと、LRF52の物体情報から自車両Vの周囲の物体が検出できず、未知領域のみとなったLRF占有マップとが統合され、走行路統合占有マップには非占有領域が生成されない。この場合、自動走行制御が不可となる。
【0049】
このように、目標経路生成部7は、レーンマーカ情報及び周囲の物体情報が取得可能な領域では、レーンマーカ情報及び物体情報に基づいて生成された走行路統合占有マップを用いて、非占有領域内に目標経路を生成する。一方で、レーンマーカ情報もしくは周囲の物体情報の一方の情報が不明な領域であって、かつ、他方の情報が取得可能な領域では、レーンマーカ情報と周囲の物体情報とのいずれかに基づいて生成された走行路統合占有マップの非占有領域内に目標経路を生成するので、自動走行制御中にレーンマーカが一時的に存在しない領域を走行する場合、あるいは、物体情報を取得できない場合であっても自動走行制御を継続することができる。例えば、図8に示す十字路状の交差点CSは、センターラインCLや境界ラインBL等のレーンマーカが一時的に存在しない領域となるが、従来の自動走行制御では、このようなレーンマーカ情報が得られない領域を走行する際に、走行可能領域が生成できないため、自動走行制御を中止し、手動運転に切り換えていた。しかしながら、本実施形態によれば、レーンマーカ情報が得られなくなった場合でも、LRF52やレーダ装置53の物体情報に基づいて、走行路統合占有マップに非占有領域が生成可能な場合には、目標経路を生成して自動走行制御を継続することができる。
【0050】
また、未知領域のみのレーンマーカ占有マップと、未知領域のみのLRF占有マップとが統合された場合には、走行路統合占有マップに目標経路を生成しないので、確実に自動走行制御を中止することができ、自動走行制御の安全性をさらに一層高めることができる。
【0051】
なお、従来の自動走行制御においても、占有グリッドマップを利用して自車両Vの走行可能領域を生成していたが、占有領域と非占有領域の2つのクラス分けのみを用い、未知領域については、占有領域あるいは非占有領域として取り扱っていた。図9は、従来の自動走行制御で走行可能領域の生成に用いられた占有グリッドマップのチャート図であり、未知領域を非占有領域として取り扱う従来例1を示している。なお、占有領域と、非占有領域のハッチングは、図7のチャート図と同様である。
【0052】
この従来例1では、チャート図の左上段、左下段及び右上段に示すように、レーンカメラ51のレーンマーカ情報とLRF52の物体情報との少なくともいずれか一方によってレーンマーカ又は周囲の物体が検出できている場合には、本実施形態と同様に走行可能領域を生成し、目標経路を設定可能としている。しかしながら、この従来例1では、図9のチャート図の右下段に示すように、レーンカメラ51のレーンマーカ情報とLRF52の物体情報とによって、レーンマーカや周囲の物体が検出できなかった場合に、本来であれば未知領域となる領域を非占有領域として取り扱っているため、自動走行制御が可能になってしまう。
【0053】
そのため、従来の自動走行制御では、自動走行制御の安全性を優先し、未知領域については、占有領域として取り扱うのが一般的であった。図10は、従来の自動走行制御で走行可能領域の生成に用いる占有グリッドマップのチャート図であり、未知領域を占有領域として取り扱う従来例2を示している。なお、占有領域と、非占有領域のハッチングは、図7のチャート図と同様である。
【0054】
この従来例2では、図10のチャート図の右下段に示すように、レーンカメラ51のレーンマーカ情報と、LRF52の物体情報とによってレーンマーカや周囲の物体が検出できなかった場合に、未知領域となる領域を占有領域として取り扱うので、目標経路は設定できない。しかしながら、チャート図の左下段及び右上段に示すように、レーンカメラ51のレーンマーカ情報と、LRF52の物体情報とのいずれか一方でレーンマーカや周囲の物体が検出できた場合にも、統合された占有グリッドマップでは全体が占有領域となるので、自動走行制御が中止されてしまう。
【0055】
このように、本実施形態によれば、従来例1、2の占有グリッドマップを用いた自動走行制御よりも安全性をさらに一層高めながら、自動走行制御が可能な走行シーンを増やすことが可能である。
【0056】
次に、図11に示すフローチャートにしたがって、本実施形態に係る自動走行制御の作用について説明する。
【0057】
走行制御装置VTCは、自車両Vのドライバーにより自動走行制御の実行を指示された場合、センサ5のレーンカメラ51、LRF52及びレーダ装置53を作動させ、自車両Vの周囲のレーンマーカと、自車両Vの周囲の物体とを検出させる。
【0058】
走行路占有マップ生成部61は、レーンカメラ51から取得したレーンマーカ情報に基づいて、自車両Vの周囲におけるレーンマーカの占有状況を、占有、非占有及び未知の3種類の判定クラスによって判定し、占有状況の判定結果に基づいて、自車両Vの周囲を、レーンマーカにより占有されている占有領域OA1と、レーンマーカに占有されていない非占有領域NA1と、レーンマーカによる占有状況が不明な未知領域UA1と、に分類した第1レーンマーカ占有マップOM1を生成する。
【0059】
走行路占有マップ生成部62は、LRF52から取得した物体情報に基づいて、自車両Vの周囲における物体の占有状況を、占有、非占有及び未知の3種類の判定クラスによって判定し、占有状況の判定結果に基づいて、自車両Vの周囲を、物体により占有されている占有領域OA3と、物体に占有されていない非占有領域NA3と、物体による占有状況が不明な未知領域UA3と、に分類したLRF占有マップOM3を生成する。
【0060】
走行路占有マップ生成部63は、レーダ装置53から取得した物体情報に基づいて、自車両Vの周囲における物体の占有状況を、占有、非占有及び未知の3種類の判定クラスによって判定し、占有状況の判定結果に基づいて、自車両Vの周囲を、物体により占有されている占有領域OA4と、物体に占有されていない非占有領域NA4と、物体による占有状況が不明な未知領域UA4と、に分類したレーダ占有マップOM4を生成する。
【0061】
走行路占有マップ生成部64は、地図データベース3から取得した高精度地図情報と、自車位置検出部2から取得した自車位置情報とに基づいて、自車両Vの周囲に存在するレーンマーカの種類や位置等を特定し、レーンマーカ情報を生成する。また、走行路占有マップ生成部64は、生成したレーンマーカ情報に基づいて、自車両Vの周囲における物体の占有状況を、占有、非占有及び未知の3種類の判定クラスによって判定し、占有状況の判定結果に基づいて、自車両Vの周囲を、レーンマーカにより占有されている占有領域と、レーンマーカに占有されていない非占有領域と、レーンマーカによる占有状況が不明な未知領域と、に分類した第2レーンマーカ占有マップOM2を生成する。
【0062】
マップ統合部65は、第1レーンマーカ占有マップOM1と、第2レーンマーカ占有マップOM2と、LRF占有マップOM3と、レーダ占有マップOM4とを統合して、走行路統合占有マップIOMを生成する。また、マップ統合部65は、占有マップOM1~OM4の占有領域、非占有領域及び未知領域の組み合わせに応じて、走行路統合占有マップIMOの占有領域IOA、非占有領域INA及び未知領域IUAを決定する。
【0063】
走行制御装置VTCは、図11のステップS1に示すように、生成された走行路統合占有マップIOMからレーンマーカ情報又は物体情報が取得可能であるか否かを判定し、走行路統合占有マップIOMからレーンマーカ情報と物体情報とのいずれか一方又は両方が取得可能な場合には、次のステップS2において、自動走行制御を実行する。この自動走行制御では、目標経路生成部7は、走行路統合占有マップIOMの非占有領域INA内に目標経路TPを生成し、経路追従制御部8は、生成された目標経路TPに自車両Vが追従するように、ステアリングアクチュエータ9と、車速調整部12とを制御し、自車両Vを自動走行させる。
【0064】
走行制御装置VTCは、図11のステップS3に示すように、自動走行制御の実行中に、交差点等のレーンマーカが存在しない領域や、レーンマーカに関する情報を含む高精度地図情報が存在しない領域等を走行し、レーンマーカ情報が取得できずに走行路統合占有マップIOMからレーンマーカ情報が取得できなくなった場合には、ステップS4に示すように、レーンマーカ情報が取得できなくなった走行路統合占有マップIOMの物体情報から、目標経路TPが生成可能であるか否かを判定する。
【0065】
走行制御装置VTCは、レーンマーカ情報が取得できなくなった走行路統合占有マップIOMの物体情報から目標経路TPが生成可能である場合には、ステップS5に示すように、生成した目標経路TPにしたがって第2所定時間T2だけ自動走行制御を継続する。この第2所定時間T2は、例えば、自車両Vが、交差点等のレーンマーカが存在しない領域を通過可能な時間に設定されている。これにより、自車両Vが、レーンマーカが存在しない交差点等の所定距離以下の領域を走行する場合に、自動走行制御が中止されるのを防ぐことができる。
【0066】
なお、走行制御装置VTCは、ステップS4において、レーンマーカ情報と物体情報とが両方とも取得できず、走行路統合占有マップIOMから目標経路TPが生成できない場合には、ステップS6に示すように、ステップS3から第5所定時間T5内に、自動走行制御を中止する旨を提示装置20によって自車両Vのドライバーに提示し、自車両Vのドライバーに自動走行制御の中止、すなわち、手動運転の準備を促す。また、走行制御装置VTCは、ステップS7に示すように、ステップS3から第1所定時間T1内に、自動走行制御を中止し、自車両Vのドライバーに手動運転操作を開始させる。第1所定時間T1と、第5所定時間T5は、自車両Vのドライバーに手動運転操作を迅速に開始させるために、第2所定時間T2よりも短い時間に設定されており、具体的には、T2>T1>T5となっている。
【0067】
ステップS8に示すように、走行制御装置VTCは、自車両Vが交差点等のレーンマーカが存在しない領域を自動走行制御によって走行する第2所定時間T2の間に、走行路統合占有マップIOMからレーンマーカ情報及び物体情報が取得できず、目標経路TPが生成できなくなった場合には、ステップS9に示すように、ステップS8から第5所定時間T5内に、自動走行制御を中止する旨を提示装置20によって自車両Vのドライバーに提示して、手動運転の準備を促す。また、走行制御装置VTCは、ステップS10に示すように、ステップS8から第3所定時間T3内に、自動走行制御を中止し、自車両Vのドライバーに手動運転操作を開始させる。第3所定時間T3と、第5所定時間T5は、自車両Vのドライバーに手動運転操作を迅速に開始させるために、第2所定時間T2よりも短い時間に設定されており、具体的には、T2>T3>T5となっている。
【0068】
ステップS11に示すように、走行制御装置VTCは、自車両Vが交差点等のレーンマーカが存在しない領域を自動走行制御によって走行する第2所定時間T2の間に、走行路統合占有IOMマップからレーンマーカ情報が検出できるようになった場合には、ステップS2に移動して、通常の自動走行制御を実行する。
【0069】
また、ステップS12に示すように、第2所定時間T2の経過後、すなわち、自車両Vが交差点等のレーンマーカが存在しない領域を通過したにも関わらず、走行路統合占有IOMマップからレーンマーカ情報及び物体情報が認識できず、目標経路TPが生成できない場合には、ステップS13に示すように、ステップS12から第5所定時間T5内に、自動走行制御を中止する旨を提示装置20によって自車両Vのドライバーに提示する。また、走行制御装置VTCは、ステップS14に示すように、ステップS12から第4所定時間T4内に、自動走行制御を中止し、自車両Vのドライバーに手動運転操作を開始させる。第4所定時間T4と、第5所定時間T5は、自車両Vのドライバーに手動運転操作を迅速に開始させるために、第2所定時間T2よりも短い時間に設定されており、具体的には、T2>T4>T5となっている。なお、自車両Vの自動走行制御を中止させる第1所定時間T1と、第3所定時間T3と、第4所定時間T4は、同じ時間を用いてもよいし、異なる時間に設定してもよい。
【0070】
以上のように、本実施形態に係る車両の走行制御装置VTC及び走行制御方法は、自車両Vが走行可能な道路領域である走行路のレーンマーカに関するレーンマーカ情報と、自車両Vの周囲に存在する物体に関する物体情報とを取得し、レーンマーカ情報と、物体情報とに基づいて、自車両Vの走行可能領域を生成し、生成した走行可能領域内に、自車両Vが走行する目標経路TPを生成し、生成された目標経路TPにしたがって、自車両Vの自動走行制御を実行するものであり、自車両Vがレーンマーカの存在しない区間、すなわち、レーンマーカ情報が取得できない領域を走行する場合には、物体情報に基づいて自車両Vの走行可能領域を生成し、生成された走行可能領域内に目標経路TPを生成して、自車両Vの自動走行制御を継続する。また、これとは逆に、自車両Vが、物体情報が取得できない領域を走行する場合には、レーンマーカ情報に基づいて自車両Vの走行可能領域を生成し、生成された走行可能領域内に目標経路TPを生成して、自車両Vの自動走行制御を継続する。これにより、交差点等のレーンマーカが存在しない領域や、物体情報が取得できない領域でも自動走行制御を継続することができる。また、交差点内等で、自動走行制御からドライバーの手動運転に切り換える必要がなくなるので、自動運転制御の安全性をより一層高めることができる。
【0071】
また、本実施形態に係る車両の走行制御装置VTC及び走行制御方法によれば、レーンマーカ情報に基づいて、自車両Vの周囲におけるレーンマーカの占有状況を、占有、非占有及び未知の判定クラスによって判定し、占有状況の判定結果に基づいて、自車両Vの周囲を、レーンマーカにより占有されている占有領域と、レーンマーカに占有されていない非占有領域と、レーンマーカによる占有状況が不明な未知領域と、に分類した第1レーンマーカ占有マップOM1及び第2レーンマーカ占有マップOM2を生成する。さらに、物体情報に基づいて、自車両Vの周囲における物体の占有状況を、占有、非占有及び未知の3種類の判定クラスによって判定し、占有状況の判定結果に基づいて、自車両Vの周囲を、物体により占有されている占有領域と、物体に占有されていない非占有領域と、物体による占有状況が不明な未知領域と、に分類したLRF占有マップOM3及びレーダ占有マップOM4を生成する。そして、占有マップOM1~OM4を統合して走行路統合占有マップIOMを生成し、走行路統合占有マップIOMに基づいて、目標経路TPを生成する。これによれば、自車両Vの周囲を占有領域及び非占有領域だけでなく、未知領域にも分類するので、自車両Vの周囲の状況を詳細に分析して目標経路TPを生成することができる。したがって、物体情報のみに基づいて目標経路TPを生成する場合でも、自動運転制御の安全性をより一層高めることができる。
【0072】
また、本実施形態に係る車両の走行制御装置VTC及び走行制御方法によれば、走行路統合占有マップIOMからレーンマーカ情報が取得可能な場合に自動走行制御を実行し、自動走行制御の実行中に、走行路統合占有マップIOMからレーンマーカ情報の取得ができなくなった場合には、第1所定時間T1内に自動走行制御を中止する。また、自動走行制御を中止するまでに、走行路統合占有マップIOMの物体情報から目標経路TPが生成可能な場合には、自動走行制御を第2所定時間T2だけ継続する。これによれば、例えば、第1所定時間T1を適切な時間に設定することにより、自車両Vがレーンマーカ情報が取得できない領域を走行し終わるまでに、自動走行制御を中止することができる。また、第2所定時間T2を適切な時間に設定することにより、例えば、自車両Vがレーンマーカ情報が取得できない領域を通過し終えるまで自動走行制御を継続することができる。したがって、自動走行制御の中止と継続とを適切なタイミングで切り換えることができるので、自動運転制御の安全性をより一層高めることができる。
【0073】
また、本実施形態に係る車両の走行制御装置VTC及び走行制御方法によれば、第2所定時間T2内に、走行路統合占有マップIOMから目標経路TPが生成できなくなった場合には、自動走行制御を第3所定時間T3内に中止する。これによれば、例えば、第2所定時間T2と、第3所定時間T3とを適切な時間に設定することにより、自車両V0がレーンマーカ情報が取得できない領域を走行し終わるまでに、自動走行制御を中止することができる。したがって、自動走行制御を適切なタイミングで中止することができるので、自動運転制御の安全性をより一層高めることができる。
【0074】
また、本実施形態に係る車両の走行制御装置VTC及び走行制御方法によれば、第2所定時間内に、走行路統合占有マップIOMからレーンマーカ情報が取得できるようになった場合には、通常の自動走行制御を継続するので、自動運転制御の安全性をより一層高めることができる。
【0075】
また、本実施形態に係る車両の走行制御装置VTC及び走行制御方法によれば、第2所定時間内に、走行路統合占有マップIOMからレーンマーカ情報が取得できるようにならなかった場合には、自動走行制御を第4所定時間T4内に中止するので、第4所定時間T4を適切な時間に設定すれば、安全に自動走行制御を中止して自車両Vの乗員に運転操作を委譲することができるので、自動運転制御の安全性をより一層高めることができる。
【0076】
また、本実施形態に係る車両の走行制御装置VTC及び走行制御方法によれば、自動走行制御を中止する場合には、自車両Vの乗員に対し、第5所定時間T5内にその旨を報知するので、第5所定時間T5を適切な時間に設定すれば、自車両Vの乗員に自動走行制御の中止について準備を促すことができ、自動走行制御から手動運転への切り換えをスムースに行うことができる。
【0077】
また、本実施形態に係る車両の走行制御装置VTC及び走行制御方法によれば、走行路統合占有マップIOMは、占有マップOM1~OM4を重ね合わせることにより生成され、占有マップOM1~OM4の少なくとも一つの占有マップにおいて占有領域である領域は、走行路統合占有マップIOMの占有領域とし、占有マップOM1~OM4の少なくとも1つの占有マップにおいて非占有領域で、他の占有マップにおいて未知領域である領域は、走行路統合占有マップIOMの非占有領域とし、占有マップOM1~OM4の全ての占有マップにおいて未知領域である領域は、走行路統合占有マップIOMにおいて未知領域としている。これによれば、占有マップOM1~OM4の占有領域と、非占有領域と、未知領域とに優先順位をもたせて統合することにより、走行路統合占有マップIOMでは、占有領域が優先的に設定されるようにしているので、安全性を優先して自動走行制御を実行することができる。
【0078】
また、本実施形態に係る車両の走行制御装置VTC及び走行制御方法によれば、障害物等の他の物体が存在しないことが確かな、走行路統合占有マップIOMの非占有領域INAにのみ目標経路TPを生成するので、自動運転制御の安全性をより一層高めることができる。
【0079】
《第2実施形態》
なお、上記の第1実施形態では、自車両Vの周囲におけるレーンマーカや物体の占有状況を、占有、非占有及び未知の3種類の判定クラスによって、いわゆるデジタル的に判定し、占有状況の判定結果に基づいて、自車両Vの周囲を占有領域と、非占有領域と、未知領域とに分類したが、占有、非占有及び未知の判定クラスは、アナログ的に各判定クラスの中間の状態を含むようにしてもよい。アナログ的な各判定クラスの中間状態とは、例えば、未知の判定値を0、占有の判定値を+1、非占有の判定値を-1としたときに、これらの判定値の中間の状態を含むようにする。このように、判定クラスに、判定値の中間状態を含むようにするのは、センサ5によるレーンマーカや物体の検出結果の信頼度は、検出時の道路状況や、天候、時間、季節等の環境の変化によって変化するためである。
【0080】
図12(A)は、レーンカメラ51のレーンマーカ情報に基づいて生成された第1レーンマーカ占有マップのアナログ的な判定値i1と、LRF52の物体情報に基づいて生成されたLRF占有マップのアナログ的な判定値i2と、i1とi2とを統合した領域iNを示す離散値版の論理表である。このような論理表において、i1とi2の未知の判定値を0、占有の判定値を+1、非占有の判定値を-1とし、これらの判定値の中間の状態を含むように論理表をグラフ化した場合、図12(B)に示すようなグラフとなる。このグラフから分かるように、占有、非占有及び未知の判定クラスをアナログ的に各判定クラスの中間の状態を含むようにすることにより、自車両Vの周囲のレーンマーカや物体について、より詳細な占有状況を把握して目標経路を生成することができる。
【0081】
なお、図12では、判定値i1と、判定値i2と、i1とi2とを統合した領域iNを示す離散値版の論理表に基づくグラフについて説明したが、図13(A)に示すように、判定値i1と、判定値i2と、i1とi2とを統合した領域iNを示す連続値版の論理表に基づいて作成した、図13(B)に示すようなグラフを用いてもよい。この場合、判定値i1と判定値i2とが同符号の領域では、絶対値が大きい判定値の領域を走行路統合占有マップの領域iNとし、判定値i1と判定値i2とが異符号の領域では、i2-i1×i2+i1を演算して求めたiNの領域を走行路統合占有マップの領域iNとする。これにより、自車両Vの周囲のレーンマーカや物体について、より詳細な占有状況を把握して目標経路を生成することができる。
【0082】
以上のように、本実施形態に係る車両の走行制御装置VTC及び走行制御方法は、占有、非占有及び未知の判定クラスに対し、アナログ的に各判定クラスの中間の状態を含むようにしたので、センサ5による検出結果に基づく占有状況の信頼度、確信度が低い状態でも目標経路の生成に反映することができるようになる。
【0083】
また、本実施形態に係る車両の走行制御装置VTC及び走行制御方法は、アナログ的な各判定クラスの中間状態として、未知の判定値を0、占有の判定値を+1、非占有の判定値を-1としたときに、これらの判定値の中間の状態を含むようにしたので、センサ5による検出結果に基づく占有状況の信頼度、確信度が低い状態をスカラー値として保持して、目標経路の生成に反映することができるようになる。
【0084】
また、本実施形態に係る車両の走行制御装置VTC及び走行制御方法は、第1走行路占有マップの各領域の判定値をi1、第2走行路占有マップの各領域の判定値をi2としたときに、判定値i1と判定値i2とが同符号の領域では、絶対値が大きい判定値の領域を走行路統合占有マップの領域とし、判定値i1と判定値i2とが異符号の領域では、i2-i1×i2+i1を演算して求めたiNの領域を走行路統合占有マップの領域とするようにしたので、センサ5による検出結果に基づく占有状況の信頼度、確信度が低い状態からでも統合後の占有状況を得て、目標経路の生成に反映することができる。
【0085】
《第3実施形態》
また、第1実施形態では、レーンカメラ51に基づく第1レーンマーカ占有マップOM1と、高精度地図情報32に基づく第2レーンマーカ占有マップOM2と、LRF52に基づくLRF占有マップOM3と、レーダ装置53に基づくレーダ占有マップOM4とを統合して、走行路統合占有マップIOMを生成したが、これら以外の占有マップをさらに追加して走行路統合占有マップを生成してもよい。
【0086】
例えば、自動走行制御の実行中に、走行路統合占有マップIOMからレーンマーカが認識できなくなった場合、その走行区間が複数の数車線を有する道路の広い交差点等である場合、LRF52やレーダ装置53の物体情報から生成された走行可能領域だけでは、交差点から目標経路TPで設定された車線へ戻る方向が分からなくなる可能性があるが、低精度地図情報31を利用して交差点から車線への移動方向を補い、あるいは先行車両Vの移動軌跡を利用することで、交差点から車線内に戻る際の自車両Vの横ずれ量を低減することが可能である。
【0087】
図14は、本実施形態に係る走行可能領域生成部6Aの機能的な構成を示すブロック図である。走行可能領域生成部6Aは、第1実施形態の走行路占有マップ生成部61~64と、マップ統合部65とに加え、走行路占有マップ生成部66と、走行路占有マップ生成部66と、先行車軌跡認識部68とを備える。
【0088】
走行路占有マップ生成部66は、レーンカメラ51や高精度地図情報32からレーンマーカ情報が得られない交差点等の区間を走行する場合に、地図データベース3から取得した低精度地図情報と、自車位置検出部2から取得した自車位置情報とに基づいて、交差点から目標経路TPが生成された車線への目標角度を算出するために利用可能な低精度地図占有マップOM5(図15参照)を生成する。
【0089】
走行路占有マップ生成部67及び先行車軌跡認識部68は、レーンカメラ51や高精度地図情報32からレーンマーカ情報が得られない交差点等の区間を走行する場合に、先行車両Vの移動軌跡を利用して、交差点から目標経路TPが生成された車線への目標角度を得るために利用可能な先行車占有マップOM6(図15参照)を生成する。先行車軌跡認識部68は、レーダ装置53により検出された先行車両の移動位置を所定時間毎に記録して、先行車両Vの移動軌跡に関する先行車軌跡情報を生成する。走行路占有マップ生成部67は、先行車軌跡認識部68から取得した先行車軌跡情報に基づいて、先行車軌跡が非占有領域とされた先行車占有マップOM6を生成する。
【0090】
図15に示すように、本実施形態の走行可能領域生成部6Aは、レーンカメラ51のレーンマーカ情報に基づく第1レーンマーカ占有マップOM1や、高精度地図情報32のレーンマーカ情報に基づく第2レーンマーカ占有マップOM2が得られない場合に、LRF占有マップOM3とレーダ占有マップOM4とに、低精度地図占有マップOM5と先行車占有マップOM6とのいずれか一方、もしくは両方を統合して、マップ統合部65により走行路統合占有マップIOM1を生成する。この走行路統合占有マップIOM1に対し、第2実施形態で説明したアナログ的なクラス判定を適用することにより、低精度地図占有マップOM5と先行車占有マップOM6とに基づいて認識された非占有領域INA1に高い信頼度、確信度が得られるため、この非占有領域INA1を利用して目標経路TPを補正することで、交差点から車線内に戻る際の自車両Vの横ずれ量を低減することが可能である。
【0091】
以上のように、本実施形態に係る車両の走行制御装置VTC及び走行制御方法は、自動走行制御の実行中に、交差点等で走行路統合占有マップからレーンマーカ情報が取得できなくなった場合には、自車両Vの現在位置に関する自車位置情報と、自車両Vの現在位置の周辺の低精度地図情報31とを取得し、自車位置情報と低精度地図情報31とに基づいて交差点等から目標経路TPが生成された車線への目標角度を算出することができるので、交差点から車線内に戻る際の自車両Vの横ずれ量を低減することが可能である。
【0092】
また、本実施形態に係る車両の走行制御装置VTC及び走行制御方法は、自動走行制御の実行中に、走行路統合占有マップからレーンマーカ情報が取得できなくなった場合には、自車両Vの前方を走行する先行車両Vの走行軌跡を検出し、その走行軌跡に基づいて交差点等から目標経路TPが生成された車線への目標方向を算出することができるので、交差点から車線内に戻る際の自車両Vの横ずれ量を低減することが可能である。
【符号の説明】
【0093】
1…目的地設定部
2…自車位置検出部
3…地図データベース
31…低精度地図情報
32…高精度地図情報
4…ルート設定部
5…センサ
51…レーンカメラ
52…レーザレンジファインダ(LRF)
53…レーダ装置
6…走行可能領域生成部
61~64、66、67…走行路占有マップ生成部
65…マップ統合部
68…先行車軌跡認識部
7…目標経路生成部
8…経路追従制御部
20…提示装置
VTC…走行制御装置
…自車両
…先行車両
L1…自車線
CL…センターライン
BL…境界ライン
C…縁石
SW…歩道
Q…設置物
OM1…第1レーンマーカ占有マップ
OM2…第2レーンマーカ占有マップ
OM3…LRF占有マップ
OM4…レーダ占有マップ
IOM…走行路統合占有マップ
OA1、OA2、OA3、OA4、IOA…占有領域
NA1、NA2、NA3、NA4、NOA…非占有領域
UA1、UA2、UA3、UA4、UOA…未知領域
TP…目標経路
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15