(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】異常事態発報システム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/00 20060101AFI20221213BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20221213BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20221213BHJP
B61L 23/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G08B25/00 510M
G08B21/02
H04N7/18 D
B61L23/00 E
(21)【出願番号】P 2020569425
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2019048301
(87)【国際公開番号】W WO2020158197
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2019012231
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100088959
【氏名又は名称】境 廣巳
(74)【代理人】
【識別番号】100097157
【氏名又は名称】桂木 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】川合 諒
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-025962(JP,A)
【文献】特開2005-273188(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0105106(US,A1)
【文献】特開2009-202635(JP,A)
【文献】特開2003-246268(JP,A)
【文献】特開2004-106660(JP,A)
【文献】特開2009-190431(JP,A)
【文献】特開2013-196332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L1/00-99/00
G08B19/00-31/00
H04N7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常事態を検出する検出部と、
前記異常事態の検出時、前記異常事態の発生箇所の周辺の状況を表す情報を取得する取得部と、
前記異常事態の検出結果と前記情報の取得結果とから、前記異常事態の対応に費やせる時間を算出する算出部と、
前記異常事態の検出結果と前記時間の算出結果とを発報する発報部と、
を含
み、
前記検出部は、駅のプラットフォームから線路へのオブジェクトの転落を前記異常事態として検出するように構成されている、
異常事態発報システム。
【請求項2】
前記検出部は、前記異常事態の発生時刻と前記オブジェクトが転落した線路の線路番号とオブジェクト属性とを含む検出結果を出力するように構成されている、
請求項
1に記載の異常事態発報システム。
【請求項3】
前記取得部は、前記線路番号の線路および当該線路とプラットフォームを挟まずに並走する線路それぞれについて、前記発生時刻以降に最初に通過または到着する列車の通過・到着時刻を、前記情報として取得するように構成されている、
請求項
2に記載の異常事態発報システム。
【請求項4】
前記算出部は、前記線路番号の線路および当該線路とプラットフォームを挟まずに並走する線路を前記発生時刻以降に最初に通過または到着する複数の列車の通過・到着時刻に基づいて、前記異常事態の対応に費やせる時間を算出するように構成されている、
請求項
3に記載の異常事態発報システム。
【請求項5】
前記算出部は、前記線路番号の線路および当該線路とプラットフォームを挟まずに並走する線路を前記発生時刻以降に最初に通過または到着する複数の列車の通過・到着時刻と、当該列車が前記駅で停車する列車か前記駅を通過する列車かの種別とに基づいて、前記異常事態の対応に費やせる時間を算出するように構成されている、
請求項
3に記載の異常事態発報システム。
【請求項6】
前記算出部は、前記線路番号の線路および当該線路とプラットフォームを挟まずに並走する線路を前記発生時刻以降に最初に通過または到着する複数の列車の通過・到着時刻と、当該列車が前記駅で停車する列車か前記駅を通過する列車かの種別と、前記オブジェクト属性とに基づいて、前記異常事態の対応に費やせる時間を算出するように構成されている、
請求項
3に記載の異常事態発報システム。
【請求項7】
異常事態を検出し、
前記異常事態の検出時、前記異常事態の発生箇所の周辺の状況を表す情報を取得し、
前記異常事態の検出結果と前記情報の取得結果とから、前記異常事態の対応に費やせる時間を算出し、 前記異常事態の検出結果と前記時間の算出結果とを発報
し、
前記検出では、駅のプラットフォームから線路へのオブジェクトの転落を前記異常事態として検出する、
異常事態発報方法。
【請求項8】
コンピュータに、
異常事態を検出する処理と、
前記異常事態の検出時、前記異常事態の発生箇所の周辺の状況を表す情報を取得する処理と、
前記異常事態の検出結果と前記情報の取得結果とから、前記異常事態の対応に費やせる時間を算出する処理と、
前記異常事態の検出結果と前記時間の算出結果とを発報する処理と、
を行わせるためのプログラム
であって、
前記検出する処理では、駅のプラットフォームから線路へのオブジェクトの転落を前記異常事態として検出する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常事態発報システム、異常事態発報方法、および、記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
異常事態とは、一定の基準から外れた状態を言う。異常事態を放置しておくと、事故につながるおそれがある。そのため、異常事態を検出し、警報を発するシステムが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、駅ホームの一部に危険領域を設定し、泥酔者や視覚障害者などの監視対象者が危険領域に進入したことを異常事態として検出し、警報信号を出力するようにしている。また特許文献1では、監視対象者の危険レベルや、監視対象者の周囲の状況(込み具合や列車の運行状況など)に応じて危険領域を設定することにより、より的確な異常事態の検出を可能にしている。
【0004】
また特許文献2では、駅ホームから列車の軌道への人の転落を異常事態として検出し、駅ホームや駅務室に設置された警告灯を点灯させて、駅係員等に対して警報信号を出力するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-224844号公報
【文献】特開2017-19351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
異常事態が発生したことを検出して警報を出すことにより、異常事態の発生を係員に速やかに認識させることができる。しかし、単に警報を出すだけでは、係員に異常事態に対して臨機応変に対応させることは困難である。その理由は、異常事態の対応に費やせる時間は周囲の状況によって変わってくるけれども、警報が出された時点で係員が周囲の状況を的確に認識し、発生した異常事態の対応に費やせる時間を正確に認識することが困難なためである。即ち、例えば駅ホームで発生した異常事態の場合、次に到着する列車の時刻を表示する掲示板が設置されている駅では、駅ホームから列車の線路へ人が転落した異常事態の場合、駅員等は、掲示板の表示を確認し、現在時刻との時間差を計算するなどすれば、異常事態の対応に費やせる時間を認識することができる。しかしながら、人の行動の特徴として、異常事態に遭遇すると、外界から情報を取得する段階において、多種の情報の中から、ある特定の情報のみに集中し、現在の状態を多角的に捉えることができない視野の狭小化が起こるとされている。また、情報が得られたとしても、得られた情報を処理する段階において、通常とは異なる処理を行うことがあり得るとされている。そのため、駅員等が掲示板に表示された到着時刻と現在時刻とから異常事態の対応に費やせる時間を常に正確に認識できるとは限らない。また、駅ホームの掲示板には通過列車が通過する時刻の表示がない場合が多いため、線路に次に入る列車が通過列車の場合には掲示板の表示から異常事態の対応に費やせる時間を計算することは不可能である。以上のような事情により、発生した異常事態の対応に費やせる時間を係員自らが正確に把握するのは困難な場合があり、その結果、異常事態に対して臨機応変に対処することができなくなる。
【0007】
本発明の目的は、上述した課題、すなわち、異常事態に対して臨機応変に対処することは困難である、という課題を解決する異常事態発報システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る異常事態発報システムは、
異常事態を検出する検出部と、
前記異常事態の検出時、前記異常事態の発生箇所の周辺の状況を表す情報を取得する取得部と、
前記異常事態の検出結果と前記情報の取得結果とから、前記異常事態の対応に費やせる時間を算出する算出部と、
前記異常事態の検出結果と前記時間の算出結果とを発報する発報部と、
を含む。
【0009】
本発明の他の形態に係る異常事態発報方法は、
異常事態を検出し、
前記異常事態の検出時、前記異常事態の発生箇所の周辺の状況を表す情報を取得し、
前記異常事態の検出結果と前記情報の取得結果とから、前記異常事態の対応に費やせる時間を算出し、
前記異常事態の検出結果と前記時間の算出結果とを発報する。
【0010】
本発明の他の形態に係るコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、
コンピュータに、
異常事態を検出する処理と、
前記異常事態の検出時、前記異常事態の発生箇所の周辺の状況を表す情報を取得する処理と、
前記異常事態の検出結果と前記情報の取得結果とから、前記異常事態の対応に費やせる時間を算出する処理と、
前記異常事態の検出結果と前記時間の算出結果とを発報する処理と、
を行わせるためのプログラムを記録する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述した構成を有することにより、異常事態に対して、周囲の状況に応じて臨機応変に対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る異常事態発報システムのブロック図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る異常事態発報システムを適用する駅の一例を示す平面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る異常事態発報システムにおける制御装置の一例を示すブロック図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る異常事態発報システムにおける監視カメラ情報の一例を示す図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る異常事態発報システムにおける線路情報の一例を示す図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る異常事態発報システムにおける検出結果の一例を示す図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る異常事態発報システムにおける列車運行情報の一例を示す図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る異常事態発報システムにおける算出部で使用する式を示す図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態に係る異常事態発報システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係る異常事態発報システムのブロック図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係る異常事態発報システムの動作を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る異常事態発報システム100のブロック図である。また
図2は、本実施形態に係る異常事態発報システム100を適用する駅の一例を示す平面図である。本実施形態に係る異常事態発報システム100は、駅のプラットフォーム121から列車の線路122~126への人などの転落を異常事態として検出し、警報を発するように構成されている。
【0014】
異常事態発報システム100は、監視カメラ101と、スピーカ102と、駅舎モニタ103と、これらに接続された制御装置104とを含んで構成されている。また制御装置104は、列車運行管理サーバ105および防護無線装置106に接続されている。
【0015】
監視カメラ101は、例えば駅のプラットフォーム121に設置され、プラットフォーム121から線路122~126へのオブジェクトの転落を検出するセンサとして使用される。プラットフォーム121の規模が大きい場合、監視領域を1台の監視カメラ101で対応可能なサイズの小領域に分割し、それぞれの小領域に少なくとも1台の監視カメラ101が設置されている。監視カメラ101は、一定のフレームレートで撮像して得られた個々の画像(フレーム画像)に撮影時刻とカメラ識別情報とを付加して、制御装置104に送信するように構成されている。監視カメラ101は、可視光カメラであってもよいし、赤外線カメラであってもよい。なお、オブジェクトの線路への転落を検出するセンサは、監視カメラ101に限定されない。例えば、3D距離画像センサ、距離センサ、赤外線センサなどによってプラットフォームから線路への人などの転落を検出するようにしてもよい。
【0016】
スピーカ102は、例えば駅のプラットフォーム121に設置され、警報を音声により発するように構成されている。
図2では、2台のスピーカ102を背中合わせにしてプラットフォーム121の中央に設置しているが、スピーカ102の数および設置場所は上記に限定されない。
【0017】
駅舎モニタ103は、駅舎127の内部に設置され、監視カメラ101の映像および警報を画面表示し、また音声にて警報を出力するように構成されている。
【0018】
列車運行管理サーバ105は、各列車の運行実績(駅着発時刻など)を一元的に管理するように構成されている。
図2に示す例では、列車運行管理サーバ105は駅舎127に設置されているが、駅以外の場所に設置されていてもよい。
【0019】
防護無線装置106は、緊急を要する事態が生じたことを無線通信により付近の駅及び付近を走行中の鉄道車両に報知するように構成されている。
図2に示す例では、防護無線装置106は駅舎127に設置されているが、駅舎以外の場所に設置されていてもよい。
【0020】
制御装置104は、例えば駅舎127の内部に設置されている。制御装置104は、監視カメラ101、スピーカ102、駅舎モニタ103、列車運行管理サーバ105、および防護無線装置106と有線または無線により接続されている。制御装置104は、監視カメラ101の映像に基づいてプラットフォーム121から線路122~126へのオブジェクトの転落を異常事態として検出するように構成されている。また制御装置104は、転落したオブジェクトの属性を検出するように構成されている。転落したオブジェクトが人或いは物の何れであるか、人の場合には性別、年齢層、障碍者の有無などがオブジェクトの属性の例である。また制御装置104は、異常事態を検出すると、列車運行管理サーバ105から異常事態の発生箇所の周辺の状況を表す情報として、列車の運行情報を取得するように構成されている。また制御装置104は、上記検出した異常事態と上記取得した列車の運行情報とから上記異常事態の対応に費やせる時間を算出するように構成されている。また制御装置104は、スピーカ102および駅舎モニタ103を使用して、上記検出した異常事態と上記算出した時間とを発報するように構成されている。また制御装置104は、所定の条件が成立した場合、防護無線装置106を使用して、緊急を要する事態が生じたことを無線通信により付近の駅及び付近を走行中の鉄道車両に報知するように構成されている。
【0021】
図3は制御装置104の一例を示すブロック図である。
図3を参照すると、制御装置104は、カメラI/F(インターフェース)部110、列車運行管理サーバI/F部111、防護無線I/F部112、スピーカI/F部113、モニタI/F部114、通信I/F部115、操作入力部116、画面表示部117、記憶部118、および、演算処理部119を含んで構成されている。
【0022】
カメラI/F部110、列車運行管理サーバI/F部111、防護無線I/F部112、スピーカI/F部113、モニタI/F部114は、それぞれ、監視カメラ101、列車運行管理サーバ105、防護無線装置106、スピーカ102、駅舎モニタ103との間で信号の授受を行うように構成されている。
【0023】
通信I/F部115は、端末などの外部装置との間でデータ通信を行う通信装置である。操作入力部116は、キーボードやテンキーなどの入力装置であり、オペレータの操作を検出して演算処理部119に出力するように構成されている。画面表示部117は、LCD(Liquid Crystal Display)などの画面表示装置であり、演算処理部119からの指示に応じて操作メニューなどの各種情報を画面表示するように構成されている。
【0024】
記憶部118は、ハードディスクやメモリなどの記憶装置である。記憶部118は、演算処理部119で行われる各種処理に必要な処理情報およびプログラム1181を記憶するように構成されている。プログラム1181は、演算処理部119に読み込まれて実行されることにより各種処理部を実現する。プログラム1181は、通信I/F部115などのデータ入出力機能を介して外部装置(図示せず)や記憶媒体(図示せず)から予め読み込まれて記憶部118に保存される。
【0025】
記憶部118に記憶される主な処理情報には、監視カメラ情報1182、線路情報1183、検出結果1184、列車運行情報1185、および、対応時間1186がある。
【0026】
監視カメラ情報1182は、監視カメラ101の識別情報などを管理する情報である。
図4は監視カメラ情報1182の一例を示す。この例の監視カメラ情報1182は、監視カメラ識別情報と監視線路番号と監視場所とを含んで構成されている。カメラ識別情報は、監視カメラ101を一意に識別する情報である。監視線路番号は、監視カメラ101によって監視している線路を一意に識別する番号である。監視場所は、監視カメラ101が監視している領域の大まかな位置を示す情報である。例えば、監視場所は、駅舎127からの距離を用いて表現することができるが、それに限定されない。
【0027】
線路情報1183は、駅に複数の線路が存在する場合、線路間の関係を表す情報である。
図5は、
図2の5つの線路122~126の線路間の関係を表す線路情報1183の一例を示す。この例の線路情報1183は、複数の線路間の関係をマトリクスで表している。ここで、行と列の交点に記載された○印は、行の線路番号で識別される線路と列の線路番号で識別される線路とが、プラットフォームなどの障害物を挟まずに互いに並走していることを表している。また、行と列の交点に記載された×印は、行の線路番号で識別される線路と列の線路番号で識別される線路との間にプラットフォームなどの障害物が介在していることを表している。
【0028】
検出結果1184は、監視カメラ101の映像に基づいて検出された異常事態に係る情報である。
図6は検出結果1184の一例を示す。この例の検出結果1184は、検出時刻と検出場所とオブジェクト属性とを含んで構成されている。検出時刻は、プラットフォームから線路へオブジェクトが落下したことが検出された時刻を表す。検出場所は、上記落下が検出された監視カメラ101の識別情報および線路の線路番号を表す。オブジェクト属性は、落下したオブジェクトが人および物の何れであるか、オブジェクトが人の場合、性別、年齢層、障碍者か否かなどを表し、物の場合、サイズなどを表す。
【0029】
列車運行情報1185は、異常事態の発生箇所の周辺の状況を表す情報として取得された列車の運行情報に係る情報である。
図7は列車運行情報1185の一例を示す。この例の列車運行情報1185は、線路番号と通過・到着時刻と通過・到着区分とを含んで構成されている。線路番号は、線路の識別情報を表す。通過・到着時刻は、上記線路番号で特定される線路を異常事態発生時刻以降に最初に通過または到着する列車の通過時刻または到着時刻を表す。通過・到着区分は、通過・到着時刻が通過時刻および到着時刻の何れであるかを表す。
【0030】
対応時間1186は、異常事態の対応に費やせる時間を表す。
【0031】
演算処理部119は、MPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有する演算処理装置である。演算処理部119は、記憶部118からプログラム1181を読み込んで実行することにより、上記ハードウェアとプログラム1181とを協働させて各種処理部を実現するように構成されている。演算処理部119で実現される処理部として、検出部1191、取得部1192、算出部1193、および、発報部1194がある。
【0032】
検出部1191は、カメラI/F部110を通じて監視カメラ101から入力した監視領域を撮影した画像に基づいて、プラットフォームから線路へのオブジェクトの落下を検出するように構成されている。例えば、検出部1191は、連続するフレーム画像の差分を取ることによりプラットフォームから線路へ落下したオブジェクトを検出することができる。また検出部1191は、上記画像に基づいて、線路へ落下したオブジェクトが人および物の何れであるかを判定するように構成されている。例えば、検出部1191は、上記検出したオブジェクトの領域の大きさ、形状、服装などの特徴量を大人から子供までの男性および女性の特徴量と比較することにより、落下したオブジェクトが人であるか、人以外の物であるかを判定することができる。また検出部1191は、落下したものが人である場合、上記画像に基づいて、落下した人の性別、年齢層、障碍者の有無を判定するように構成されている。例えば検出部1191は、検出した人の領域の大きさ、形状、服装などの特徴量が女性および男性の何れの特徴量に合致しているかを確認することにより、落下した人の性別を判定することができる。また検出部1191は、検出した人の領域の大きさ、形状、服装などの特徴量が子供および大人の何れの特徴量に合致しているかを確認することにより、落下した人の年齢層を判定することができる。また検出部1191は、検出した人の映像を過去に遡って追跡し、例えばその人が杖を突いていることが確認できたら足が不自由な人であると判定することができる。また検出部1191は、落下した物の領域の画像内に占める大きさに基づいて物のサイズを判定することができる。
【0033】
このように検出部1191は、駅のプラットフォームから線路へのオブジェクトの転落、転落したオブジェクトの属性の検出を常に実施している。カメラの画像を解析してプラットフォームから線路へのオブジェクトの落下を検出する手法、落下したオブジェクトが人か物かを判定する手法、人の場合にその性別、年齢層、障碍者の有無を判定する手法、物の場合にその大きさを判定する手法は、上記に限定されず、任意の手法を使用することができる。検出部1191は、上記検出を行うと、その結果を検出結果1184として記憶部118に記憶するように構成されている。
【0034】
取得部1192は、検出部1191で異常事態が検出された時、異常事態の発生箇所の周辺の状況を表す情報を取得するように構成されている。具体的には、取得部1192は、先ず記憶部118から検出結果1184を読み出す。次に取得部1192は、読み出した検出結果1184から検出時刻および検出場所を取得する。次に取得部1192は、取得した検出場所から、落下が検出された線路の線路番号を対象線路番号の1つの候補として取得する。次に取得部1192は、上記対象線路番号の線路とプラットフォームなどの障害物を挟まずに並走する他の線路の線路番号を対象線路番号の他の候補として線路情報1183から取得する。次に取得部1192は、対象線路番号のそれぞれについて、当該対象線路番号の線路を上記検出時刻以降に最初に通過または到着する列車の通過・到着時刻を列車運行管理サーバ105から取得する。次に取得部1192は、対象線路番号のそれぞれについて、上記取得した通過・到着時刻、線路番号、および通過・到着区分から構成される列車運行情報1185を作成して記憶部118に記憶する。このように取得部1192は、オブジェクトが転落した線路およびそれに並走する線路それぞれについて、転落事象の発生後最初に通過または到着する列車の通過・到着時刻を取得する。
【0035】
算出部1193は、検出部1191で異常事態が検出された時、検出された異常事態の対応に費やせる時間を算出し、対応時間1186として記憶部118に記憶するように構成されている。具体的には、算出部1193は、
図8に示す式1を使用して対応時間Tを算出する。
【0036】
式1において、対応時間T以外のパラメータは、以下のように定義される。
(a)現在時刻をt0とする。
(b)人の転落、物の落下が発生した線路をr1とする。
(c)線路r1にプラットフォーム等の障害物を挟まずに並走する線路がn-1本(r1を合わせてn本)あるとして、それをr2,…,rnとする。
(d)線路rk(1≦k≦n)を次(時刻t0以降)に通過・到着する列車をckとし、その通過・到着時刻をtkとする。
(e)線路rkおよび列車ckの事情を考慮し、安全のために確保しておく必要のある時間をskとする。
(f)落下したオブジェクトの属性や発生場所等を考慮した調整時間をsとする。
【0037】
算出部1193は、記憶部118から検出結果1184を読み出し、検出結果1184から落下が検出された線路の線路番号を取り出し、この取り出した線路番号で特定される線路を、線路r
1とする。また算出部1193は、線路r
1とプラットフォームなどの障害物を挟まずに並走する他の線路の線路番号を線路情報1183から取り出し、それをr
2,…,r
nとする。例えば、線路r
1が
図2の線路122である場合、線路r
2は線路123である。また算出部1193は、線路r
kに係る列車運行情報1185を記憶部118から読み出し、その通過・到着時刻をt
kとする。
【0038】
また算出部1193は、s
kを以下のようにして決定する。先ず、線路r
kを走る列車c
kが駅で停車する列車である場合について説明する。対処に手間取り、T=0になってしまった後に防護無線を発報しても、発生場所の手前に列車c
kを停止させられるように、算出部1193は、
図8に示す式2を満足するようにs
kを決定する。式2において、v
kは、線路r
kを走る列車c
kの制限速度(km/h)である。式2によって決定される時間Tは、線路r
kをその制限速度v
kちょうどで走る列車c
kが、非常ブレーキ(日本の列車の非常ブレーキの標準的な加速度である-4km/h/sを想定)をかけて発生場所の100m手前に停車するための時間に、さらに30秒の余裕を加えた時間に相当する。
【0039】
また、通過列車の場合、駅で停止する列車に比べて進入速度が速い。そのため、算出部1193は、線路r
kを走る列車c
kが通過列車の場合、
図8の式3に示すように、式2に比べてさらに30秒加算した値をs
kの値として決定する。ここで、算出部1193は、列車c
kが通過列車、駅で停止する列車の何れであるかを、列車c
kに係る列車運行情報1185の通過・到着区分により決定する。また算出部1193は、制限速度v
kを固定値として保持しているが、列車運行管理サーバ105から列車c
kの制限速度v
kをその都度取得して使用してもよい。
【0040】
次に、調整時間sを決定する方法について説明する。調整時間sを決定する第1の方法は、予め定めた固定値としておく方法である。即ち、算出部1193は、例えば、調整時間sを常に0とする。調整時間sを決定する他の方法は、転落したオブジェクトの属性に基づいて調整時間sを決定する方法である。以下、転落したオブジェクトの属性に基づいて調整時間sを決定する方法を幾つか例示する。
【0041】
第1の方法は、転落したオブジェクトが人および物の何れであるかに基づいて調整時間sを決定する方法である。例えば算出部1193は、転落したオブジェクトが物の場合、調整時間sを負の値にして対処時間Tを増加させる。負の値として、例えば
図8の式4で算出されるsの値を使用してもよい。この式4で算出される値をsに使用すると、s
kを打ち消すことになり、対処時間Tが増加する。但し、大きい物の場合、接触が大きな事故につながる可能性がある。そのため、算出部1193は、オブジェクトのサイズが閾値以上の場合、調整時間sを0以上の所定値として算出するようにしてよい。一方、算出部1193は、転落したオブジェクトが人の場合、調整時間sを0以上の所定値とする。
【0042】
第2の方法は、転落した人が高齢者、子供、障碍者など、自力での回避が困難な人であるか否かに基づいて調整時間sを決定する方法である。例えば算出部1193は、自力での回避が困難な人の場合、
図8の式5で算出される値を調整時間sに決定する。式5で与えられる調整時間sを使用することにより、式1で与えられる対応時間Tを半分に減らすことができる。一方、それ以外のオブジェクトの場合、算出部1193は、調整時間sを例えば0とする。
【0043】
第3の方法は、転落した人が高齢者、子供、障碍者など自力での回避が困難な人、自力での回避は可能だが男性と比べて力が弱いため回避に時間がかかる女性、および、それ以外のオブジェクトの3種類に分けて、調整時間sを決定する方法である。例えば算出部1193は、自力での回避が困難な人の場合、
図8の式5で算出される値を調整時間sに決定する。また算出部1193は、女性である場合、30(秒)といった小さめの正の値を調整時間sとして算出する。また算出部1193は、それ以外のオブジェクトの場合、調整時間sを例えば0とする。
【0044】
第4の方法は、転落が発生した場所に応じて調整時間sを決定する方法である。例えば算出部1193は、
図8の式6で与えられる値を調整時間sとして算出する。式6において、dは転落が発生した場所と駅舎127との間の距離(m)である。検出結果1184の検出場所には、転落を検出した監視カメラ101の識別情報が含まれている。また、監視カメラ情報1182には、監視カメラの識別情報に対応付けて監視場所が記載されており、その監視場所には、監視カメラ101が監視している領域と駅舎127との距離が記載されている。算出部1193は、検出結果1184および監視カメラ情報1182に基づいて、転落が発生した場所と駅舎127との間の距離を大まかに求めることができる。また、式6において、v
pは想定される駅員の移動速度である。v
pは、2m/s(7.2km/h)のような固定値としてよい。或いは、監視カメラ101等の映像からプラットフォーム上の人の混雑度を推定し、混雑しているなら6km/hや4.8km/hなどに想定速度を下げるようにしてもよい。
【0045】
続いて、
図3に示す発報部1194は、検出部1191による異常事態の検出結果1184に基づいて、スピーカ102および駅舎モニタ103から、音声および画像によって、異常事態が発生した旨の警報を発報するように構成されている。また発報部1194は、単に警報を発報するだけでなく、算出部1193によって算出された対応時間1186に基づいて、発生した異常事態の対応に費やせる時間Tを音声および画像によって発報するように構成されている。対応時間Tの音声による発報は、対応時間Tそのものを読み上げるようにしてよい。また対応時間Tの画像による発報は、対応時間Tそのものを数値で表示するようにしてよい。或いは、対応時間Tの音声および画像による発報は、対応時間が例えば予め定められた時間(例えば5分)より長ければ、充分な時間がある旨を音声および画像で発報するようにしてもよい。
【0046】
また発報部1194は、対応時間Tが0以下になった場合、防護無線I/F部112を通じて防護無線装置106に対して防護無線を送信する指令を送信するように構成されている。
【0047】
図9は異常事態発報システム100の動作の一例を示すフローチャートである。以下、
図9を参照して、異常事態発報システム100の動作を説明する。
【0048】
異常事態発報システム100の制御装置104における検出部1191は、監視カメラ101から入力した監視領域を撮影した画像に基づいて、駅のプラットフォームから線路へのオブジェクトの転落、転落したオブジェクトの属性の検出を常に実施している(ステップS1)。
【0049】
取得部1192は、検出部1191で異常事態が検出されると、オブジェクトが転落した線路およびそれに隣接する線路それぞれについて、転落事象の発生後最初に通過または到着する列車の通過・到着時刻を含む列車運行情報を取得する(ステップS2)。また算出部1193は、検出部1191で異常事態が検出され、かつ取得部1192で列車運行情報が取得されると、それらに基づいて、検出された異常事態の対応に費やせる時間を算出する(ステップS3)。そして、発報部1194は、検出部1191による検出結果と算出部1193による算出結果とに基づいて、スピーカ102および駅舎モニタ103から、音声および画像によって、異常事態が発生した旨の警報を発報する(ステップS4)。このとき発報部1194は、単に警報を発報するだけでなく、発生した異常事態の対応に費やせる時間を音声および画像によって発報する。
【0050】
また発報部1194は、対応時間Tが0以下か否かを判定し(ステップS5)、0以下でない場合は操作入力部116などから解除指示が入力されたか否かを判定する(ステップS6)。対応時間Tが0以下でなく且つ解除指示も出されていない場合、ステップS2に戻って上述した処理と同様の処理が繰り返される。そのため、取得部1192によって列車運行情報が再取得され、この再取得された最新の列車運行情報と時間の経過とに基づいて算出部1193によって対応時間が再計算され、その再計算された対応時間に基づいて発報部1194によって警報が繰り返し発報されると共に、異常事態の対応に費やせる最新の時間が音声および画像によって発報されることになる。また対応時間Tが0以下になると、発報部1194は、防護無線装置106を通じて防護無線を送信することになる(ステップS7)。解除指示が入力された場合、
図9の処理は終了する。なお、ステップS6からステップS2に戻るのではなく、ステップS6からステップS3に戻るように構成されていてもよい。但し、その場合、列車運行情報の変化に対応することは困難になる。
【0051】
このように本実施形態によれば、駅のプラットフォームから線路へのオブジェクトの転落を異常事態として検出し、単に異常事態が発生したことだけでなく、発生した異常事態の対応に費やせる時間を発報するため、駅員等は、異常事態に対して周囲の状況に応じて臨機応変に対処することができる。
【0052】
また本実施形態によれば、駅のプラットフォームから線路へ転落したオブジェクトの属性を検出し、検出した属性に応じて異常事態の対応に費やせる時間を算出しているため、異常事態に対してより柔軟かつ効率よく対処することができる。
【0053】
また本実施形態によれば、緊急事態の発生場所であるオブジェクトの転落場所を検出し、検出した場所に応じて異常事態の対応に費やせる時間を算出しているため、異常事態の発生場所が駅員などの居る駅舎から遠い場合でも対処が間に合うようにすることができる。その結果、より確実に対処を完了させることができる。
【0054】
また本実施形態によれば、対応時間Tが0以下になった場合、自動的に防護無線を送信することができるため、最悪の事態を確実に回避することができる。なお、防護無線を送信する前、即ち対応時間Tが0以下になる前に、駅員や指令との通話を行い、必要な場合のみ周辺の列車を非常停止させるようにしてもよい。また緊急に停止させるのではなく、前に列車が詰まっているときと同様の手段で停止させるようにしてもよい。例えば異常が発生した場所に列車がいるものとみなして、信号制御などによって当該区間の手前で停止指示を出すようにしてもよい。
【0055】
本実施形態では、駅のプラットフォームから線路へのオブジェクトの転落という事象を異常事態とした。しかし、他の実施形態として、例えば、駅のプラットフォームでの喧嘩、人の滞留、人の転倒、ふらつき歩行などを異常事態として検出するようにしてもよい。また他の実施形態として、線路への動物の侵入などを異常事態として検出するようにしてもよい。この事態は駅や信号場以外でも検出し得るが、その場合、算出部1193は、列車ckを無条件に通過列車として扱ってよい。また他の実施形態として、駅のプラットフォームから線路へのオブジェクトの転落、駅のプラットフォームでの喧嘩、人の滞留、人の転倒、ふらつき歩行、線路への動物の侵入などの複数種類の異常事態を検出するようにしてもよい。その場合、検出部1191は、発生した異常事態の種別を検出し、異常事態の種別をさらに含む検出結果1184を生成するようにしてよい。また算出部1193は、上記検出された異常事態の種別に応じて対応時間Tを算出するように構成されていてよい。例えば、駅のプラットフォームでの喧嘩、人の滞留、人の転倒、ふらつき歩行などへの対処は、人の線路への転落への対処に比較して容易と考えられるため、対応時間を増やすようにしてもよい(例えば式1におけるsに負の値を設定する)。また、プラットフォームでの人のふらつきは、ひとまず様子を見るため、喧嘩、人の転倒に比べて対応時間を増やすようにしてもよい。
【0056】
[第2の実施形態]
図10は本発明の第2の実施形態に係る異常事態発報システム200のブロック図である。
図10を参照すると、異常事態発報システム200は、検出部201と、取得部202と、算出部203と、発報部204とを含んで構成されている。
【0057】
検出部201は、異常事態を検出するように構成されている。検出部201は、例えば
図3の検出部1191と同様に構成することができるが、それに限定されない。例えば、検出部201を、インテリジェントカメラ(例えば、内部に解析機能を備えるIPカメラやネットワークカメラ。スマートカメラ等とも呼ばれる)で構成してもよい。即ち、インテリジェントカメラが、異常事態を検出してもよい。
【0058】
取得部202は、検出部201で異常事態が検出された時、異常事態の発生箇所の周辺の状況を表す情報を取得するように構成されている。取得部202は、例えば
図3の取得部1192と同様に構成することができるが、それに限定されない。例えば、取得部202を、インテリジェントカメラで構成してもよい。即ち、インテリジェントカメラが、異常事態の発生箇所の周辺の状況を表す情報を取得してもよい。
【0059】
算出部203は、検出部201による異常事態の検出結果と取得部202による情報の取得結果とから、異常事態の対応に費やせる時間を算出するように構成されている。算出部203は、例えば
図3の算出部1193と同様に構成することができるが、それに限定されない。例えば、算出部203を、インテリジェントカメラで構成してもよい。即ち、インテリジェントカメラが、異常事態の検出結果と周辺情報とから、異常事態の対応に費やせる時間を算出してもよい。
【0060】
発報部204は、検出部201による異常事態の検出結果と算出部203による異常事態の対応に費やせる時間の算出結果とを発報するように構成されている。発報部204は、例えば
図3の発報部1194と同様に構成することができるが、それに限定されない。例えば、発報部204を、インテリジェントカメラで構成してもよい。即ち、インテリジェントカメラが、異常事態の検出結果と算出した時間とを発報してもよい。
【0061】
図11は異常事態発報システム200の動作を示すフローチャート図である。
図11を参照すると、異常事態発報システム200は、先ず、検出部201が、異常事態を検出する(ステップS11)。次に、取得部202が、検出部201で異常事態が検出された時、異常事態の発生箇所の周辺の状況を表す情報を取得する(ステップS12)。次に、算出部203が、検出部201による異常事態の検出結果と取得部202による情報の取得結果とから、異常事態の対応に費やせる時間を算出する(ステップS13)。次に、発報部204が、検出部201による異常事態の検出結果と算出部203による異常事態の対応に費やせる時間の算出結果とを発報する(ステップS14)。
【0062】
本実施形態に係る異常事態発報システム200は、上述したように、異常事態が発生したことだけでなく、発生した異常事態の対応に費やせる時間を係員に認識させることができるため、係員に異常事態を正確に把握させることができる。その結果、係員は、与えられた時間の範囲に応じて臨機応変に異常事態に対する対処が可能になる。
【0063】
[その他の実施形態]
上記の実施形態では、駅のプラットフォームから線路への人の転落、プラットフォームでの喧嘩など、駅構内で発生する異常事態を検出して発報するシステムについて説明した。しかし、本発明は駅構内以外で発生する異常事態を検出して発報するシステムにも広く適用することができる。
【0064】
例えば、本発明は、老人ホームあるいは病院などの施設内で発生する異常事態、例えば収容者(入居者あるいは患者)のベッドからの転落、収容者の無断外出などを検出して発報するシステムに利用できる。そのような異常事態発報システムでは、例えばカメラの映像を解析して上記転落、外出を検出し、或いは距離センサ、赤外線センサなどによって上記転落、外出を検出し、また収容者のプロファイルを管理するサーバから異常事態を引き起こした人の年齢、病歴などの属性を検出する検出部を利用できる。また、異常事態の発生箇所の周辺の状況を表す情報として、ベッドからの転落の場合には室温を取得する取得部、無断外出の場合には外気温、降雨状況、交通状況などを取得する取得部を利用できる。また、異常事態の対応に費やせる時間として、室温が一定以下になったタイミング、或いは一定以上の降雨が予想されるタイミングまでの時間を対応時間として算出する算出部、あるいは、それに加えて異常事態を引き起こした人の年齢、病歴、室温、外気温、降雨状況、交通状況などの属性に応じて対応時間を補正する機能を有する算出部を利用できる。また発報部は、施設の管理室に設置されたモニタから音声および画像で異常事態が発生した旨、および対応時間を発報するものが利用できる。
【0065】
また本発明は、自動車の運転中に発生する異常事態、例えば煽り運転に遭遇する事態を異常事態として検出して発報するシステムに利用できる。そのような異常事態発報システムでは、例えば自動車の前後左右に装着したカメラの映像を解析して自車に対して煽り運転をしている他車(例えば自車に対する車間距離が異常に短い車など)を検出する検出部を利用できる。また異常事態の発生箇所の周辺の状況を表す情報として、自車が走行している道路が一般道路か、高速道路の何れであるかの道路種別、走行路の混雑状況、自車および他車が停止しているか否かの状態を取得する取得部を利用できる。また、異常事態の対応に費やせる時間として、例えば、自車および他車が停止している場合、対応時間の最小値(例えば0)とし、自車および他車が走行している場合、高速道路なら法定速度で最寄りのサービスエリアまで到着できる時間とし、一般道路であれば法定速度で最寄りの警察署や派出所まで到着できる時間とする算出部を利用できる。また発報部は、煽り運転に遭遇した旨の警報と上記対応時間とを、自車が契約している自動車保険会社などの端末装置にメール等で送信するものが利用できる。
【0066】
以上、上記各実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0067】
なお、本発明は、日本国にて2019年1月28日に特許出願された特願2019-012231の特許出願に基づく優先権主張の利益を享受するものであり、当該特許出願に記載された内容は、全て本明細書に含まれるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、駅のプラットフォームから線路への人の転落などの異常事態を検出し、警報を発するシステムに利用できる。
【0069】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
[付記1]
異常事態を検出する検出部と、
前記異常事態の検出時、前記異常事態の発生箇所の周辺の状況を表す情報を取得する取得部と、
前記異常事態の検出結果と前記情報の取得結果とから、前記異常事態の対応に費やせる時間を算出する算出部と、
前記異常事態の検出結果と前記時間の算出結果とを発報する発報部と、
を含む異常事態発報システム。
[付記2]
前記検出部は、前記異常事態を引き起こしたオブジェクトの属性を検出するように構成され、
前記算出部は、前記オブジェクトの属性に応じて前記時間を算出するように構成されている、
付記1に記載の異常事態発報システム。
[付記3]
前記検出部は、前記異常事態の発生場所を検出するように構成され、
前記算出部は、前記発生場所に応じて前記時間を算出するように構成されている、
付記1または2に記載の異常事態発報システム。
[付記4]
前記検出部は、前記異常事態の種別を検出するように構成され、
前記算出部は、前記種別に応じて前記時間を算出するように構成されている、
付記1乃至3の何れかに記載の異常事態発報システム。
[付記5]
前記検出部は、駅のプラットフォームから線路へのオブジェクトの転落を前記異常事態として検出するように構成されている、
付記1乃至4の何れかに記載の異常事態発報システム。
[付記6]
前記検出部は、前記異常事態の発生時刻と前記オブジェクトが転落した線路の線路番号とオブジェクト属性とを含む検出結果を出力するように構成されている、
付記5に記載の異常事態発報システム。
[付記7]
前記取得部は、前記線路番号の線路および当該線路とプラットフォームを挟まずに並走する線路それぞれについて、前記発生時刻以降に最初に通過または到着する列車の通過・到着時刻を、前記情報として取得するように構成されている、
付記6に記載の異常事態発報システム。
[付記8]
前記算出部は、前記線路番号の線路および当該線路とプラットフォームを挟まずに並走する線路を前記発生時刻以降に最初に通過または到着する複数の列車の通過・到着時刻に基づいて、前記異常事態の対応に費やせる時間を算出するように構成されている、
付記7に記載の異常事態発報システム。
[付記9]
前記算出部は、前記線路番号の線路および当該線路とプラットフォームを挟まずに並走する線路を前記発生時刻以降に最初に通過または到着する複数の列車の通過・到着時刻と、当該列車が前記駅で停車する列車か前記駅を通過する列車かの種別とに基づいて、前記異常事態の対応に費やせる時間を算出するように構成されている、
付記7に記載の異常事態発報システム。
[付記10]
前記算出部は、前記線路番号の線路および当該線路とプラットフォームを挟まずに並走する線路を前記発生時刻以降に最初に通過または到着する複数の列車の通過・到着時刻と、当該列車が前記駅で停車する列車か前記駅を通過する列車かの種別と、前記オブジェクト属性とに基づいて、前記異常事態の対応に費やせる時間を算出するように構成されている、
付記7に記載の異常事態発報システム。
[付記11]
異常事態を検出し、
前記異常事態の検出時、前記異常事態の発生箇所の周辺の状況を表す情報を取得し、
前記異常事態の検出結果と前記情報の取得結果とから、前記異常事態の対応に費やせる時間を算出し、
前記異常事態の検出結果と前記時間の算出結果とを発報する、
異常事態発報方法。
[付記12]
前記検出では、前記異常事態を引き起こしたオブジェクトの属性を検出し、
前記算出では、前記オブジェクトの属性に応じて前記時間を算出する、
付記11に記載の異常事態発報方法。
[付記13]
前記検出では、前記異常事態の発生場所を検出し、
前記算出では、前記発生場所に応じて前記時間を算出する、
付記11または12に記載の異常事態発報方法。
[付記14]
前記検出では、前記異常事態の種別を検出し、
前記算出では、前記種別に応じて前記時間を算出する、
付記11乃至13の何れかに記載の異常事態発報方法。
[付記15]
コンピュータに、
異常事態を検出する処理と、
前記異常事態の検出時、前記異常事態の発生箇所の周辺の状況を表す情報を取得する処理と、
前記異常事態の検出結果と前記情報の取得結果とから、前記異常事態の対応に費やせる時間を算出する処理と、
前記異常事態の検出結果と前記時間の算出結果とを発報する処理と、
を行わせるためのプログラム。
【符号の説明】
【0070】
100…異常事態発報システム
101…監視カメラ
102…スピーカ
103…駅舎モニタ
104…制御装置
105…列車運行管理サーバ
106…防護無線装置
110…カメラI/F部
111…列車運行管理サーバI/F部
112…防護無線I/F部
113…スピーカI/F部
114…モニタI/F部
115…通信I/F部
116…操作入力部
117…画面表示部
118…記憶部
119…演算処理部
121…プラットフォーム
122~125…線路
126…駅舎
200…異常事態発報システム
201…検出部
202…取得部
203…算出部
204…発報部
1181…プログラム
1182…監視カメラ情報
1183…線路情報
1184…検出結果
1185…列車運行情報
1186…対応時間