(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
B65H 9/14 20060101AFI20221213BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B65H9/14
B65H5/06 A
(21)【出願番号】P 2021104008
(22)【出願日】2021-06-23
(62)【分割の表示】P 2017116125の分割
【原出願日】2017-06-13
【審査請求日】2021-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2016230082
(32)【優先日】2016-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016197375
(32)【優先日】2016-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】白根 達也
(72)【発明者】
【氏名】隠岐 成弘
(72)【発明者】
【氏名】竹内 敦彦
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 人志
(72)【発明者】
【氏名】赤間 淳貴
(72)【発明者】
【氏名】有賀 翔
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-051663(JP,A)
【文献】特開2011-057303(JP,A)
【文献】実開昭63-119558(JP,U)
【文献】特開2007-030997(JP,A)
【文献】特開2007-168961(JP,A)
【文献】特開2013-129506(JP,A)
【文献】特開2011-105416(JP,A)
【文献】特開平11-199087(JP,A)
【文献】特開平10-120236(JP,A)
【文献】特開2010-089271(JP,A)
【文献】特開2003-81459(JP,A)
【文献】特開平11-265048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 9/00-9/20
B65H 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に記録を行う記録手段と、
媒体の搬送経路において前記記録手段の上流に設けられ、前記記録手段と対向する位置に媒体を搬送する搬送ローラー対と、
前記搬送ローラー対に向けて媒体を給送する第1ローラーと、
前記第1ローラーの幅に対して複数設けられ、前記第1ローラーと接して従動回転する第2ローラーと、
前記第2ローラーの回転軸心線が媒体搬送方向と成す角度を調整する調整手段と、
前記第2ローラーを支持するローラー支持部材と、
前記搬送経路を形成する部材であって前記ローラー支持部材を揺動可能に支持する経路部材と、
前記第2ローラーが前記第1ローラーに向かう方向に前記ローラー支持部材を付勢する付勢手段と、
前記搬送ローラー対及び前記第1ローラーを制御する制御手段であって、前記第1ローラーと前記搬送ローラー対との間で媒体に撓みを形成して媒体のスキュー矯正を行う制御手段と、を備え
、
前記第2ローラーは、前記回転軸心線方向において内側端面と外側端面とを有し、
前記ローラー支持部材において一対の前記第2ローラーが前記内側端面を向かい合わせる様に設けられ、
前記第2ローラーにおいて前記内側端面の側には、前記回転軸心線を中心とするであって前記第2ローラーの外径より小さい円筒部が形成され、
前記円筒部が前記外側端面の側に形成されないことにより、前記回転軸心線方向において前記第2ローラーが非対称の形状に形成され、
前記ローラー支持部材において前記第2ローラーの前記外側端面と対向する側には、前記第2ローラーに向けて突出する突起が設けられ、
前記突起は、前記第2ローラーの前記内側端面が外側にされた際、前記円筒部と当接して前記第2ローラーの取り付けを阻害する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、前記第2ローラーは、当該第2ローラーの回転軸の軸線方向に沿って変位可能に設けられており、
前記軸線方向において前記第2ローラーの両側であって媒体搬送方向において前記回転軸より上流側に、前記第2ローラーの前記軸線方向への変位を規制する規制部が設けられている、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1
または請求項
2に記載の記録装置において、前記第1ローラーの周方向に沿って複数の従動ローラーが設けられ、
複数の前記従動ローラーのうち、少なくとも前記搬送ローラー対の上流側に最初に位置する前記従動ローラー、或いはその上流側に最初に位置する前記従動ローラーが、前記第2ローラーである、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の記録装置において、前記調整手段は、前記第2ローラーにおいて前記第2ローラーの回転軸と接する内周部に設けられた凸部を備えて構成され、
前記第2ローラーが前記凸部と前記回転軸との接触部を支点に揺動し、前記回転軸心線が媒体搬送方向と成す角度が調整される、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の記録装置において、前記第1ローラーと前記第2ローラーとのニップ位置から外れた媒体後端の、前記第2ローラー側への跳ね上がりを規制する跳ね上がり規制部を備える、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の記録装置において、前記制御手段は、前記スキュー矯正の動作として、前記搬送ローラー対の逆回転と前記第1ローラーの正回転とを利用して、前記第1ローラーと前記搬送ローラー対との間で媒体への撓みの形成を伴って媒体の先端を前記搬送ローラー対に突き当てる第1スキュー矯正動作と、
媒体の先端を前記搬送ローラー対のニップ位置から所定量下流側に送った後、前記第1ローラーを駆動せずに前記搬送ローラー対を逆転させ、媒体の先端を前記搬送ローラー対の上流側に吐き出す第2スキュー矯正動作と、を選択可能である、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項6に記載の記録装置において、媒体の第1面に記録を行った後、媒体を再度前記第1ローラーに送り込み、前記第1面とは反対側の第2面が前記記録手段と対向する様に媒体を反転させる反転経路を備え、
前記制御手段は、記録を行う媒体の面に応じて、前記第1スキュー矯正動作と、前記第2スキュー矯正動作と、のいずれか一方を実行した後に、他方を実行する複合スキュー矯正モードを実行可能である、
ことを特徴とする記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に記録を行う記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターに代表される記録装置において、給紙カセットなどの用紙収容部から給送ローラーによって送り出した用紙の斜行(スキュー)を、記録ヘッド手前のレジストローラー対を利用して矯正する技術が従来から採用されている。
【0003】
スキュー矯正の方法としては主に2種類あり、一つは特許文献1に示される様に、逆回転しているレジストローラー対に用紙先端を突き当てて、レジストローラー対のニップ位置に用紙先端を倣わせる方式(以下「逆転突き当て方式」と言う)がある。
もう一つは、特許文献2に示される様に、用紙先端をレジストローラー対に所定量食い付かせ、その後レジストローラー対を逆転させて用紙先端をレジストローラー対の上流側に吐き出し、レジストローラー対のニップ位置に用紙先端を倣わせる方式(以下「食い付き吐き出し方式」と言う)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-078388号公報
【文献】特開2013-129506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
逆転突き当て方式のスキュー矯正は、スキュー矯正の際にレジストローラー対上流の送りローラーを正転させる為、送りローラーの位置で用紙が回転し易いとともに、送りローラーによって用紙先端を積極的にレジストローラー対のニップ位置に突き当てる為、スキュー矯正の効果が高いというメリットがある。
しかし、装置の小型化をすすめるとレジストローラー対の径が小さくなり、この場合、用紙先端がレジストローラー対のニップ位置に誘われず、レジストローラー対を構成する一方側のローラーの周面に突き当たってしまい(以下「用紙先端の腹当たり」と言う)、適切にスキュー矯正が行えない場合が生じるというデメリットがある。
加えて、スキュー矯正の際にレジストローラー対上流の送りローラーを正転させる為、レジストローラー対と、その上流の送りローラーとの間で用紙を撓ませる際の撓みが大きくなり、この点も装置の小型化に対しては障壁となる。
【0006】
食い付き吐き出し方式のスキュー矯正は、スキュー矯正の際にレジストローラー対上流側の送りローラーは回転させない為、レジストローラー対と送りローラーとの間の用紙の撓みを抑えた状態でスキュー矯正を行うことができ、装置を小型化した場合には有効となる。
しかし、逆転突き当て方式のスキュー矯正に比べて用紙先端がレジストローラー対のニップ位置に押し当たる力が弱く、逆転突き当て方式よりもスキュー矯正の効果は劣り易いというデメリットがある。
【0007】
以上により、装置の小型化を図る場合には、逆転突き当て方式のスキュー矯正方式をそのまま採用することができず、しかし食い付き吐き出し方式のスキュー矯正方式をそのまま採用したのでは充分なスキュー矯正が行えない場合があるという問題があった。
【0008】
加えて、レジストローラー対の上流に設けられた送りローラーの取り付け精度が悪く、例えば送りローラーの回転軸心線が用紙搬送方向に対して直角を成していない場合、スキューが顕著となり、その結果上述の各スキュー方法を採用してもスキューが矯正しきれない場合もある。加えてこの様な場合、スキュー矯正を行ってもレジストローラー対の上流側では用紙の給送に伴ってスキューが形成されつづける為、レジストローラー対の上流における用紙の撓みに左右差が生じ、これが原因となってレジストローラー対の下流側でスキューが生じる虞もある。
【0009】
本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その目的は、装置を小型化しつつ、より適切なスキュー矯正を行うことができる記録装置を提供することにある。
また本発明の別の目的は、スキュー矯正を行うに際してより適切な装置構成を備えた記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する為の、本発明の第1の態様に係る記録装置は、媒体に記録を行う記録手段と、媒体の搬送経路において前記記録手段の上流に設けられ、前記記録手段と対向する位置に媒体を搬送する搬送ローラー対と、前記搬送ローラー対に向けて媒体を給送する給送ローラーと、前記搬送ローラー対及び前記給送ローラーを制御する制御手段と、備え、前記制御手段は、前記搬送ローラー対の逆回転と前記給送ローラーの正回転とを利用して、前記給送ローラーと前記搬送ローラー対との間で媒体への撓みの形成を伴って媒体の先端を前記搬送ローラー対に突き当てる第1スキュー矯正動作と、媒体の先端を前記搬送ローラー対のニップ位置から所定量下流側に送った後、前記給送ローラーを駆動せずに前記搬送ローラー対を逆転させ、媒体の先端を前記搬送ローラー対の上流側に吐き出す第2スキュー矯正動作と、のいずれか一方を実行した後に、他方を実行する複合スキュー矯正モードを実行可能であることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、制御手段は、前記第1スキュー矯正動作、即ち逆転突き当て方式のスキュー動作と、前記第2スキュー矯正動作、即ち食い付き吐き出し方式のスキュー矯正動作と、のいずれか一方を実行した後に、他方を実行する複合スキュー矯正モードを実行可能であるので、装置を小型化しても、適切なスキュー矯正を行うことができる。
【0012】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記複合スキュー矯正モードは、前記第1スキュー矯正動作を実行した後に前記第2スキュー矯正動作を実行するモードであることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、前記複合スキュー矯正モードは、前記第1スキュー矯正動作即ち逆転突き当て方式のスキュー矯正動作を実行した後に、前記第2スキュー矯正動作即ち食い付き吐き出し方式のスキュー矯正動作を行うモードであるので、先ず逆転突き当て方式のスキュー矯正動作を行うことで、前記搬送ローラー対への媒体先端の腹当たりが生じても、或る程度のスキュー矯正を期待できる。
【0014】
そしてその後前記第2スキュー矯正動作即ち食い付き吐き出し方式のスキュー矯正動作を行うことで、最終的には媒体先端の前記搬送ローラー対への腹当たりを回避してスキューを矯正でき、しかも食い付き吐き出し方式のスキュー矯正動作の前に逆転突き当て方式のスキュー矯正動作にて或る程度のスキュー矯正を行っているので、食い付き吐き出し方式のスキュー矯正動作の欠点(逆転突き当て方式に比べてスキュー矯正効果が低い)を補うことができ、結果として適切にスキューを矯正できる。
特に、装置の小型化に伴い前記搬送ローラー対を構成するローラーを小径化しても、適切にスキューを矯正できる。
【0015】
本発明の第3の態様は、第1の態様において、前記複合スキュー矯正モードは、前記第2スキュー矯正動作を実行した後に前記第1スキュー矯正動作を実行するモードであることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、前記複合スキュー矯正モードは、前記第2スキュー矯正動作即ち食い付き吐き出し方式のスキュー矯正動作を実行した後に、前記第1スキュー矯正動作即ち逆転突き当て方式のスキュー矯正動作を実行するモードであるので、先ず食い付き吐き出し方式のスキュー矯正動作を行うことで、媒体先端の前記搬送ローラー対への腹当たりを回避して媒体先端を適切に前記搬送ローラー対のニップ位置に到達させることができる。
【0017】
しかも、食い付き吐き出し方式のスキュー矯正動作を1回のみ行ってスキュー矯正する場合には、媒体先端の斜行を考慮すると、確実に前記搬送ローラー対に食い付かせる為に食い付き量を多くする必要があり、その為吐き出した後の撓み量が多くなって、装置を小型化した場合にはこれに対応することができない場合がある。
【0018】
しかしながら上記複合スキュー矯正モードにおいて最初に実行する食い付き吐き出し方式のスキュー矯正動作は、次の逆転突き当て方式のスキュー矯正動作を行う前の予備動作であるので、食い付き量は少なくて済む。即ち、装置を小型化して媒体が撓むことができる空間が狭くなっても、それに対応することができる。
そしてその後前記第1スキュー矯正動作即ち逆転突き当て方式のスキュー矯正動作を行うことで、媒体のスキューを適切に矯正することができる。
特に、装置の小型化に伴い前記搬送ローラー対を構成するローラーを小径化しても、適切にスキューを矯正できる。
【0019】
本発明の第4の態様は、第1から第3の態様のいずれかにおいて、媒体をセット可能な第1のセット部及び第2のセット部を備え、前記給送ローラーは、前記第1のセット部から送り出された媒体を前記搬送ローラー対に向けて反転させるローラーであり、前記第2のセット部から送り出される媒体は、反転されることなく前記搬送ローラー対に給送される構成を備え、前記制御手段は、少なくとも前記第2のセット部から媒体を給送する場合、前記複合スキュー矯正モードを選択しないことを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、前記制御手段は、媒体を反転させることなく前記搬送ローラー対に給送する場合、即ちスキューが生じ難い給送経路にて媒体が給送される場合には、前記複合スキュー矯正モードを選択しないので、スループットの低下を抑制できる。
【0021】
本発明の第5の態様は、第1から第4の態様のいずれかにおいて、前記制御手段は、媒体のサイズに応じて前記複合スキュー矯正モードを選択することを特徴とする。
本態様によれば、前記制御手段は、媒体のサイズに応じて前記複合スキュー矯正モードを選択するので、スキューが生じ難いサイズの媒体(例えばサイズの大きい媒体)に対しては前記複合スキュー矯正モードを適用しないことでスループットの低下を抑制でき、またスキューが生じ易いサイズの媒体(例えばサイズの小さい媒体)に対しては前記複合スキュー矯正モードを適用することで、適切にスキューを矯正できる。
【0022】
本発明の第6の態様は、第1から第5の態様のいずれかにおいて、前記制御手段は、媒体の種類に応じて前記複合スキュー矯正モードを選択することを特徴とする。
本態様によれば、前記制御手段は、媒体の種類に応じて前記複合スキュー矯正モードを選択するので、例えば前記搬送ローラー対への媒体先端の腹当たりが生じ難い媒体に対しては前記複合スキュー矯正モードを適用しないことでスループットの低下を抑制でき、また前記搬送ローラー対への媒体先端の腹当たりが生じ易い種類の媒体に対しては前記複合スキュー矯正モードを適用することで、適切にスキューを矯正できる。
【0023】
本発明の第7の態様は、第1の態様において、媒体の第1面に記録を行った後、媒体を再度前記給送ローラーに送り込み、前記第1面とは反対側の第2面が前記記録手段と対向する様に媒体を反転させる反転経路を備え、前記制御手段は、記録を行う媒体の面に応じて、前記複合スキュー矯正モードを選択することを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、前記制御手段は、記録を行う媒体の面(即ち第1面か第2面か)に応じて、前記複合スキュー矯正モードを選択するので、前記搬送ローラー対への媒体先端の腹当たりが生じ難い状況では前記複合スキュー矯正モードを選択しないことでスループットの低下を抑制でき、また前記搬送ローラー対への媒体先端の腹当たりが生じ易い状況では前記複合スキュー矯正モードを選択することで、適切にスキューを矯正できる。
【0025】
本発明の第8の態様は、第7の態様において、前記搬送ローラー対は、第1搬送ローラーと、当該第1搬送ローラーより媒体との間の摩擦係数が相対的に低い第2搬送ローラーと、を備えて構成され、前記制御手段は、媒体の前記第1面及び前記第2面のうちいずれか一方の面が、他方の面に対して相対的に前記第1ローラーとの間の摩擦係数が高い場合、前記摩擦係数の高い媒体の面が前記第1搬送ローラーと接する際に、前記複合スキュー矯正モードを選択することを特徴とする。
本態様によれば、上記第7の態様と同様な作用効果が得られる。
【0026】
本発明の第9の態様に係る記録装置は、媒体に記録を行う記録手段と、媒体の搬送経路において前記記録手段の上流に設けられ、前記記録手段と対向する位置に媒体を搬送する搬送ローラー対と、前記搬送ローラー対に向けて媒体を給送する第1ローラーと、前記第1ローラーの幅に対して複数設けられ、前記第1ローラーと接して従動回転する第2ローラーと、前記第2ローラーの回転軸心線が媒体搬送方向と成す角度を調整する調整手段と、を備えることを特徴とする。
【0027】
本態様によれば、前記第2ローラーの回転軸心線が媒体搬送方向と成す角度を調整する調整手段を備えるので、仮に前記第2ローラーの取り付け精度が悪く、前記回転軸心線が媒体搬送方向に対して直角を成していない場合でも、前記第2ローラーの回転軸心線が媒体搬送方向と成す角度が調整されることで、前記第1ローラーと前記第2ローラーとによる媒体の送り方向がより適正な方向に調整され、ひいてはスキューを抑制できる。
尚、「第2ローラーの回転軸心線」とは、第2ローラーの回転軸の軸中心線ではなく第2ローラーそのものの回転軸心線を意味する。即ち本発明は、第2ローラーそのものの回転軸心線と、第2ローラーの回転軸の軸中心線とが非平行となる場合があることを前提としている。
【0028】
本発明の第10の態様は、第9の態様において、前記第2ローラーは、当該第2ローラーの回転軸の軸線方向に沿って変位可能に設けられており、前記軸線方向において前記第2ローラーの両側であって媒体搬送方向において前記回転軸より上流側に、前記第2ローラーの前記軸線方向への変位を規制する規制部が設けられていることを特徴とする。
【0029】
本態様によれば、前記第2ローラーは、当該第2ローラーの回転軸の軸線方向に沿って変位可能に設けられており、前記軸線方向において前記第2ローラーの両側であって媒体搬送方向において前記回転軸より上流側に、前記第2ローラーの前記軸線方向への変位を規制する規制部が設けられているので、前記第2ローラーが前記規制部との当接部位を中心にして容易に揺動することができ、即ち前記第2ローラーの回転軸心線が媒体搬送方向と成す角度を容易に調整することができる。
【0030】
本発明の第11の態様は、媒体に記録を行う記録手段と、媒体の搬送経路において前記記録手段の上流に設けられ、前記記録手段と対向する位置に媒体を搬送する搬送ローラー対と、前記搬送ローラー対に向けて媒体を給送する第1ローラーと、前記第1ローラーと接して従動回転する第2ローラーと、前記第2ローラーの回転軸心線が媒体搬送方向と成す角度を調整する調整手段と、を備え、前記第2ローラーは、当該第2ローラーの回転軸の軸線方向に沿って変位可能に設けられており、前記軸線方向において前記第2ローラーの両側であって媒体搬送方向において前記回転軸より上流側に、前記第2ローラーの前記軸線方向への変位を規制する規制部が設けられていることを特徴とする。
【0031】
本態様によれば、前記第2ローラーの回転軸心線が媒体搬送方向と成す角度を調整する調整手段を備えるので、仮に前記第2ローラーの取り付け精度が悪く、前記回転軸心線が媒体搬送方向に対して直角を成していない場合でも、前記第2ローラーの回転軸心線が媒体搬送方向と成す角度が調整されることで、前記第1ローラーと前記第2ローラーとによる媒体の送り方向がより適正な方向に調整され、ひいてはスキューを抑制できる。
【0032】
また本態様によれば、前記第2ローラーは、当該第2ローラーの回転軸の軸線方向に沿って変位可能に設けられており、前記軸線方向において前記第2ローラーの両側であって媒体搬送方向において前記回転軸より上流側に、前記第2ローラーの前記軸線方向への変位を規制する規制部が設けられているので、前記第2ローラーが前記規制部との当接部位を中心にして容易に揺動することができ、即ち前記第2ローラーの回転軸心線が媒体搬送方向と成す角度を容易に調整することができる。
【0033】
本発明の第12の態様は、第9から第11の態様のいずれかにおいて、前記第1ローラーの周方向に沿って複数の従動ローラーが設けられ、複数の前記従動ローラーのうち、少なくとも前記搬送ローラー対の上流側に最初に位置する前記従動ローラー、或いはその上流側に最初に位置する前記従動ローラーが、前記第2ローラーであることを特徴とする。
本態様によれば、前記第1ローラーの周方向に沿って複数の従動ローラーが設けられ、複数の前記従動ローラーのうち、少なくとも前記搬送ローラー対の上流側に最初に位置する前記従動ローラー、或いはその上流側に最初に位置する前記従動ローラーが、前記第2ローラーであるので、スキュー矯正に大きい影響を及ぼす従動ローラーに対して前記第2ローラーを適用することで、効果的にスキューを矯正することができる。
【0034】
本発明の第13の態様は、第9から第12の態様のいずれかにおいて、前記調整手段は、前記第2ローラーにおいて前記第2ローラーの回転軸と接する内周部に設けられた凸部を備えて構成され、前記第2ローラーが前記凸部と前記回転軸との接触部を支点に揺動し、前記回転軸心線が媒体搬送方向と成す角度が調整されることを特徴とする。
【0035】
本態様によれば、前記調整手段は、前記第2ローラーにおいて前記第2ローラーの回転軸と接する内周部に設けられた凸部を備えて構成され、前記第2ローラーが前記凸部と前記回転軸との接触部を支点に揺動し、前記回転軸心線が媒体搬送方向と成す角度が調整される構成であるので、前記調整手段を構造簡単にして低コストに構成できる。
【0036】
本発明の第14の態様は、第9から第13の態様のいずれかにおいて、前記第1ローラーと前記第2ローラーとのニップ位置から外れた媒体後端の、前記第2ローラー側への跳ね上がりを規制する跳ね上がり規制部を備えることを特徴とする。
【0037】
媒体後端が前記第1ローラーと前記第2ローラーとのニップ位置から外れると、前記第1ローラーの外周面に沿って湾曲していた媒体が元の状態に復帰しようとする為、媒体後端が前記第1ローラーから跳ね上がろうとする(弾かれる)現象が生じ、その際に媒体搬送精度が乱れ、その結果記録品質が乱れる虞がある。
本態様によれば、前記第1ローラーと前記第2ローラーとのニップ位置から外れた媒体後端の、前記第2ローラー側への跳ね上がりを規制する跳ね上がり規制部を備えるので、上述の記録品質の乱れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図2】本発明に係るプリンターの用紙搬送経路の全体を示す側断面図。
【
図3】本発明に係るプリンターの制御系統を示すブロック図。
【
図4】本発明に係るプリンターの用紙搬送経路の部分拡大図。
【
図5】中間ローラーと搬送ローラー対との間の用紙搬送経路の模式図。
【
図6】中間ローラーと搬送ローラー対との間の用紙搬送経路の模式図。
【
図7】中間ローラーと搬送ローラー対との間の用紙搬送経路の模式図。
【
図9】給送経路、用紙種類・サイズに応じて設定されるスキュー矯正方法を示す表。
【
図10】経路部材、ローラー支持部材、第2従動ローラー、のこれらの斜視図。
【
図11】経路部材、ローラー支持部材、第2従動ローラー、のこれらの斜視図。
【
図12】ローラー支持部材及び第2従動ローラーの斜視図。
【
図16】ローラー支持部材及び第2従動ローラーの断面図。
【
図17】ローラー支持部材及び第2従動ローラーの断面図。
【
図18】本発明に係るプリンターの用紙搬送経路の部分拡大図。
【
図19】用紙先端の進行方向を規制する規制部材を装置下側から上側に向かって見た図。
【
図20】本発明に係るプリンターの用紙搬送経路の部分拡大図。
【
図21】経路部材及びローラー支持部材の他の実施形態を示す斜視図。
【
図22】ローラー支持部材の他の実施形態を示す斜視図。
【
図23】ローラー支持部材の他の実施形態を示す斜視図。
【
図25】本発明に係るプリンターの用紙搬送経路の部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は、以下説明する実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることを前提として、以下本発明の一実施形態を説明するものとする。
【0040】
図1は本発明に係る「記録装置」の一実施形態であるインクジェットプリンター(以下「プリンター」と言う)1の外観斜視図、
図2はプリンター1の用紙搬送経路の全体を示す側断面図、
図3はプリンター1の制御系統を示すブロック図である。
また、
図4はプリンター1の用紙搬送経路の部分拡大図、
図5~
図7は中間ローラー20と搬送ローラー対30との間の用紙搬送経路の模式図、
図8は記録動作の流れを示すフローチャートである。更に、
図9は給送経路、用紙種類・サイズに応じて設定されるスキュー矯正方法を示す表である。
【0041】
また、
図10及び
図11は経路部材50、ローラー支持部材51、第2従動ローラー21b、のこれらの斜視図、
図12はローラー支持部材51及び第2従動ローラー21bの斜視図、
図13はローラー支持部材51の斜視図、
図14及び
図15は第2従動ローラー21bの斜視図、
図16及び
図17はローラー支持部材51及び第2従動ローラー21bの断面図である。尚、
図17では図示の便宜上、
図16に示すハッチング(断面部分を示すハッチング)は図示を省略している。
【0042】
また、
図18はプリンター1の用紙搬送経路の部分拡大図、
図19は用紙先端の進行方向を規制する規制部材を装置下側から上側に向かって見た図、
図20はプリンターの1用紙搬送経路の部分拡大図、
図21は経路部材及びローラー支持部材の他の実施形態を示す斜視図、
図22及び
図23はローラー支持部材の他の実施形態を示す斜視図、
図24は経路部材の他の実施形態を示す斜視図、
図25はプリンター1の用紙搬送経路の部分拡大図、
図26はガイド部材の側断面図である。
【0043】
尚、
図1、
図2、
図4において示すx-y-z座標系はx方向が装置幅方向並びに用紙幅方向及びキャリッジ33の移動方向であり、y方向が装置奥行き方向及び用紙搬送方向であり、z方向が鉛直方向及び装置高さ方向を示している。尚、各図において+y方向側を装置前面側とし、-y方向側を装置背面側とする。また、+x方向側を装置右側及びキャリッジ33のホームポジション側とし、-x方向側を装置左側とする。
【0044】
先ず、
図1及び
図2を参照しつつプリンター1の全体構成について概説する。プリンター1は、媒体の一例としての記録用紙にインクジェット記録を行う装置本体(記録部)2の上部にスキャナユニット3を備えており、即ちインクジェット記録機能に加えてスキャナ機能を備える複合機として構成されている。
スキャナユニット3は、装置本体2に対して回動可能に設けられており、回動することにより、閉じた状態(
図1)と開いた状態(不図示)とをとり得る。
スキャナユニット3は、原稿台6(
図2)を開閉する原稿カバー5を備えている。
【0045】
装置本体2は、装置前面に、電源ボタンや各種印刷設定・記録実行を行う操作ボタン、印刷設定内容や印刷画像のプレビュー表示などを行う表示部、等を備えて成る操作パネル11を備えている。
【0046】
また装置本体2は、媒体を収容する給紙カセット13(
図2)を底部に備えている。給紙カセット13において装置前面側には、前面カバー10が開閉可能に設けられている。
図1は前面カバー10が閉じた状態を、
図2は前面カバー10が開いた状態を示している。前面カバー10を開くことにより、用紙排出口および後述する排紙受けトレイ12が露呈する。
【0047】
排紙受けトレイ12は、図示しないモーターによって装置本体2に収納された状態と、装置本体2の前方側に突出した状態(
図1において2点鎖線、
図2)と、を取りうる様に設けられており、装置本体2の前方側に突出した状態となることで、記録が行われて排出される記録用紙を受けることができる。
続いて、装置本体2の後方上部には、給紙口カバー4が開閉可能に設けられており、給紙口カバー4を開くことにより、用紙セット部23が露呈し、装置上方斜め上からの記録用紙の送り込みが可能となる。また給紙口カバー4は、開くことにより、
図2に示す様に記録用紙を傾斜姿勢に支持可能な姿勢となる。
【0048】
続いて、主として
図2を参照しつつプリンター1の用紙搬送(給送)経路について説明する。プリンター1は、装置底部の給紙カセット13からの用紙給送経路T1、装置後方の用紙セット部23から記録用紙を給送する用紙給送経路T2、のこれら2つの用紙給送経路を有している。記録用紙は、用紙給送経路T1、T2のいずれを通っても、必ず搬送ローラー対30に到達する様に構成されている。各用紙給送経路は、経路形成部材やローラーなどによって形成されている。
尚、プリンター1は記録用紙の両面に記録が実行可能であり、
図2において中間ローラー20の右下に付された矢印Dは、第1面(おもて面)に記録が行われた記録用紙をバックフィードして再び中間ローラー20に向けて搬送する際の搬送方向を示している。
【0049】
次いで、装置底部の給紙カセット13からの用紙給送経路T1について説明する。給紙カセット13の上部には、給送ローラー14が設けられている。給送ローラー14は、回転軸15aを中心に揺動するローラー支持部材15に設けられており、給紙カセット13に収容された記録用紙の最上位のものと接して回転することにより、当該最上位の記録用紙を給紙カセット13から送り出す。給送ローラー14は、第2駆動モーター153(
図3)を駆動源とする。尚、
図2において符号Pは、給紙カセット13に収容される記録用紙を示している。
【0050】
回転軸15aはローラー支持部材15の揺動軸を構成するとともに、給送ローラー14に対して駆動力を伝達する。ローラー支持部材15は、回転軸15aを中心にして揺動することにより給送ローラー14を昇降させ、給送ローラー14を記録用紙に接触させる姿勢と、給送ローラー14を記録用紙から離間させる姿勢と、をとり得る。
【0051】
給紙カセット13に収容された記録用紙の先端と対向する位置には、分離斜面16が設けられており、給紙カセット13が装着された状態では、給紙カセット13に収容された記録用紙の先端が分離斜面16と当接可能な状態となる。
そして送り出される記録用紙の先端が分離斜面16に接しながら下流側に進むことで、給送されるべき最上位の記録用紙と次位以降の用紙Pとの分離が行われる。
【0052】
分離斜面16より搬送経路の下流側の先には「給送ローラー」及び「第1ローラー」としての中間ローラー20が設けられており、この中間ローラー20によって記録用紙は湾曲反転させられ、装置前方側へと向かう。中間ローラー20は、第2駆動モーター153(
図3)を駆動源とする。
中間ローラー20には従動回転可能な「第2ローラー」としての複数のローラーが周方向に沿って配置さており、具体的には、符号21a、21b、21c、21dで示すローラーが、それぞれ中間ローラー20に接して従動回転可能な第1、第2、第3、第4従動ローラーである。給紙カセット13から送り出された記録用紙は、第1従動ローラー21a、第2従動ローラー21b、第3従動ローラー21cを経由し、搬送ローラー対30へと送られる。
【0053】
尚、以上説明した各ローラー、特にモーターによって駆動されるローラーの外周面は高摩擦材で形成されており、例えばEPDMに代表される非ジエン系ゴムや、ジエン系ゴム、熱可塑性エラストマー、などで形成することができる。尚、モーターによって駆動されるローラーに接して従動回転する従動ローラーのうち、符号21a、21b、21c、21dで示す各従動ローラーについては後に詳述する。
【0054】
続いて、記録用紙を記録ヘッド35の下へ搬送する搬送ローラー対30は、搬送駆動ローラー30aと搬送従動ローラー30bとで構成されるローラー対である。搬送駆動ローラー30aは、後述する第1駆動モーター151(
図3)を動力源とし、回転駆動される。搬送従動ローラー30bは、搬送駆動ローラー30a或いは搬送される用紙に接して従動回転する。
【0055】
尚、搬送駆動ローラー30aは、金属軸体の表面に高摩擦層を備えて形成されており、搬送従動ローラー30bは、低摩擦材料(例えばPOM)により形成され、搬送駆動ローラー30aの軸線方向に沿って適宜の間隔で複数設けられている。また、搬送従動ローラー30bは、不図示の付勢手段によって搬送駆動ローラー30aに向けて付勢された状態に設けられている。
【0056】
搬送駆動ローラー対30の下流には、記録手段としての記録ヘッド35と、プラテン31とが対向配置されている。記録ヘッド35は、制御部150(
図3)の制御のもと、インクを吐出する。
記録ヘッド35が設けられたキャリッジ33は、記録ヘッド35の走査方向(X方向)に往復動可能に設けられているとともに、不図示の動力源から動力を得て、記録ヘッド35の走査方向に動作する。その動力源は、後述する制御部150(
図3)により制御される。
プラテン31は、記録用紙を支持することにより、記録ヘッド35と記録用紙との間のギャップを規定する。
【0057】
記録ヘッド35及びプラテン31の下流には、排出駆動ローラー37aと排出従動ローラー37bとで構成される排出ローラー対37が設けられている。排出駆動ローラー37aは、後述する第1駆動モーター151(
図3)を動力源とし、回転駆動される。排出従動ローラー37bは、排出駆動ローラー37a或いは搬送される用紙に接して従動回転する。
【0058】
尚、排出駆動ローラー37aは、高摩擦材で形成されており、例えばEPDMに代表される非ジエン系ゴムや、その他にジエン系ゴム、熱可塑性エラストマー、などで形成することができる。また、排出従動ローラー37bは、記録用紙と点接触する所謂スターホイールである。
【0059】
記録の行われた記録用紙は、排出ローラー対37によって、装置前方側の排紙受けトレイ12に向けて排出される。
尚、上述したように記録用紙の両面を記録する場合には、第1面(おもて面)を記録ヘッド35で記録した後、スイッチバックさせることで、記録用紙を中間ローラー20と第4従動ローラー21dとの間に送り込み、中間ローラー20によって反転させることで、記録用紙の第2面(うら面)に記録を行うことが可能となる。
【0060】
またプリンター1では、装置底部の給紙カセット13からの用紙給送に加え、上述したように斜め上方からの記録用紙の送り込みも行える様に構成されている。
図2において符号23は、斜め上方から差し入れられる記録用紙をセットする用紙セット部であり、符号24は、斜め上方から送り込まれる記録用紙を給送する給送ローラーであり、符号25は従動ローラーである。
符号T2は、用紙セット部23から送り出される記録用紙の給送経路を示している。
【0061】
続いて、
図3を参照してプリンター1の制御系統について説明する。プリンター1の各種制御を行う制御手段としての制御部150は、不図示の外部コンピューターで動作するプリンタドライバ或いは制御部150が備えるプリンタドライバにより生成された、記録を行う為のデータである記録データを取得する。そして当該記録データ、及び操作パネル11からの入力情報に基づき、記録ヘッド35や、第1駆動モーター151のドライバであるモータードライバ152、第2駆動モーター153のドライバであるモータードライバ154、等を制御する。
【0062】
また制御部150は、各種センサー類の検出状態に基づき必要な制御を行う。各種センサー類の一例として、
図3には、ロータリーエンコーダー155、156と、用紙検出センサー29と、が示されている。ロータリーエンコーダー155は、第2駆動モーター153の回転を検出し、制御部150は、ロータリーエンコーダー155からの検出信号をもとに、第2駆動モーター153、ひいては各ローラーの回転方向、回転速度、回転量を把握する。ロータリーエンコーダー156についても、同様である。用紙検出センサー29は、
図2に示す様に搬送ローラー対30の上流近傍に設けられ、記録用紙先端或いは後端の通過を検出する。
【0063】
尚、本実施形態では、搬送駆動ローラー30aおよび排出駆動ローラー37aは、第1駆動モーター151を駆動源とする。また、給送ローラー14、中間ローラー20、給送ローラー24、のこれらは第2駆動モーター153を駆動源とする。
【0064】
以上がプリンター1の全体構成であり、以下、
図4以降を参照しつつ制御部150が制御するスキュー矯正動作について説明する。
先ず、
図4を参照しつつスキュー矯正の為に必要な記録用紙の撓み空間について説明する。
図4において符号40、41、42は、中間ローラー20と第3従動ローラー21cとの間から下流側の搬送ローラー対30に向かう記録用紙を案内するガイド部材である。
中間ローラー20と第3従動ローラー21cとの間から搬送ローラー対30に向けて給送される記録用紙は、ガイド部材40、41、42によって形成されるスペースAr内で、スキュー矯正時に撓むことができる。符号Prは、記録用紙に形成される撓み部分を示している。スペースArが大きいほど、スキュー矯正時において記録用紙に充分な撓みを形成することができる。換言すれば、装置の小型化を図ると、スペースArが小さくなり、記録用紙の撓み量は制限される。
【0065】
特に本実施形態では、用紙セット部23において斜め上方から記録用紙を給送する為に中間ローラー20と搬送ローラー対30との間にガイド部材40を配置している。このため、スペースArがより一層制限されている。
尚、符号Afで示す空間は、用紙セット部23にセットされ、給送ローラー24によって給送される記録用紙がスキュー矯正時に撓むことができるスペースである。符号43は、搬送従動ローラー30bを支持する支持部材である。
【0066】
続いて、
図10~
図17を参照しつつ「第2ローラー」としての第2従動ローラー21bまわりの構成について詳説する。
図10、
図11に示す様に第2従動ローラー21bはローラー支持部材51に支持されており、ローラー支持部材51は経路部材50に支持されている。
【0067】
経路部材50は用紙幅方向に延設されており、用紙搬送経路を形成する面には用紙搬送方向に沿って延びるリブ50aが、用紙幅方向に沿って適宜の間隔で複数設けられている。
経路部材50には軸保持部50b、50bが設けられており、ローラー支持部材51は、揺動軸51a、51aが軸保持部50b、50bに支持されることにより、経路部材50に対し揺動可能に設けられている。第2従動ローラー21bは、ローラー支持部材51の揺動により、用紙搬送経路に対して進退する。尚、ローラー支持部材51の揺動軸51aは、第2従動ローラー21bよりも用紙搬送方向の上流側に位置する。
【0068】
経路部材50とローラー支持部材51との間には付勢手段としてのばね53が設けられており、ばね53の付勢力により、ローラー支持部材51は第2従動ローラー21bが用紙搬送経路に進出する方向に付勢された状態に設けられている。
【0069】
第2従動ローラー21bは、
図12に示す様に回転軸52を介してローラー支持部材51に支持されている。本実施形態において第2従動ローラー21bはローラー支持部材51に対して二個設けられている。より詳しくは、本実施形態では、給送ローラーとしての中間ローラー20とこれに接する各従動ローラーは、用紙幅方向における中間位置に設けられており、第2従動ローラー21bは、一の中間ローラー20に対して二個配置されており、即ち中間ローラー20の幅に対して複数個設けられている。
【0070】
ローラー支持部材51には、
図13に示す様に軸受面(円筒面)51d、51dが形成されており、回転軸52は軸受面51d、51dによって軸支される。また、ローラー支持部材51には軸規制部51b、51bが設けられており、この軸規制部51b、51bによって回転軸52は軸線方向の位置が規制される。尚、符号51cは軸規制部51bにおいて回転軸52の軸端が当接する面である軸規制面を示している。
【0071】
第2従動ローラー21bは、
図14、
図15、
図16に示す様に外周面22a、外側端面22e、内側端面22d、軸孔22g、円筒部22h、のこれらを備え、全体が樹脂材料によって一体的に形成されている。
本実施形態では、第2従動ローラー21bを含め、中間ローラー20に接する各従動ローラーは一例として三井化学(株)の高摺動性特殊ポリエチレン「リュブマー」(同社登録商標)のうちグレードL5000を用いている。
各従動ローラーは上記材料に限定されることはないが、ローラーの外周面22aと用紙との間の摩擦係数が可能な限り低いものであることが好ましい。
【0072】
第2従動ローラー21bの外周面22aの角部22b、22cは、面取りされてR状に形成されており、これによって第2従動ローラー21bが用紙に接した際にローラー痕が用紙に形成され難い様に構成されている。
【0073】
第2従動ローラー21bは、内側端面22dの側と外側端面22eの側とが異なる形状(非対称)となる様に形成されており、具体的には内側端面22dの側の円筒部22hが、ローラー端面である内側端面22dとほぼ同じ位置にまで突出するように形成されている。
【0074】
2つの第2従動ローラー21bは、
図16に示す様に内側端面22dが互いに向き合う様に配置される。ここで、ローラー支持部材51において第2従動ローラー21bと対向する位置には
図13に示す様に第2従動ローラー21bに向けて突出する突起51fが設けられている。そして仮に第2従動ローラー21bの向きが誤った状態で取り付けられようとしても、即ち誤って外側端面22eを内側にした状態で取り付けようとしても、突起51fが円筒部22hに当接し、取り付けができない様に構成されている。即ち突起51fと円筒部22hは、誤った組み立てを防止する手段を構成している。
尚、
図13では2つの第2従動ローラー21bのうち一方側に対して設けられる突起51fが表れているが、他方側に対しても同様の突起51fが設けられている。
【0075】
続いて、
図16に示す様に第2従動ローラー21bの内周部(軸孔22g)には、凸部21fが形成されている。凸部21fは、回転軸52との接触範囲を小さくするとともに、凸部21fを支点として、第2従動ローラー21bが回転軸52に対して
図17に示す様に揺動する(傾く)ことが可能となっている。
図16において符号aは、凸部21fの形成範囲を示しており、
図17において符号L1は、回転軸52の軸中心線を示し、符号L2は、第2従動ローラー21bが回転する際の回転軸心線を示している。また、符号αは、第2従動ローラー21bが回転軸52に対して揺動した際の、回転軸52の軸中心線L1と第2従動ローラー21bの回転軸心線L2との成す角度を示している。
【0076】
符号Dは用紙搬送方向を示しており、
図17の例では、用紙搬送方向Dに対して回転軸52の軸中心線L1が正しく直角を成しておらず、組み立て誤差を有している状態となっている。
しかしながら第2従動ローラー21bの内周部には上記の通り凸部21fが形成されており、用紙の搬送に伴って凸部21fを支点として第2従動ローラー21bが回転軸52に対して揺動し、即ち用紙搬送方向Dと第2従動ローラー21bの回転軸心線L2との成す角度が調整される様になっている。従って仮に第2従動ローラー21bの取り付け精度が悪く、回転軸心線L2が用紙搬送方向Dに対して直角を成していない場合でも、用紙の搬送に伴って第2従動ローラー21(回転軸心線L2)が用紙搬送方向Dと直角を成す方向に倣うことで、中間ローラー20と第2従動ローラー21とによる用紙搬送方向がより適正な方向に調整され、ひいてはスキューを抑制できる。
以上により凸部21fは、用紙搬送方向Dと第2従動ローラー21bの回転軸心線L2との成す角度を調整する調整手段を構成する。
【0077】
尚、本実施形態では、第2従動ローラー21bは回転軸52の軸線方向(軸中心線L1に沿った方向)に沿って変位可能に設けられているとともに、
図16に示す様にローラー支持部材51には、前記軸線方向おいて第2従動ローラー21bの両側であって用紙搬送方向において回転軸52より上流側に、第2従動ローラー21bの前記軸線方向への変位を規制する規制部51eが設けられている。規制部51eの配置間隔は、第2従動ローラー21bのローラー幅より大きく、これにより第2従動ローラー21bは回転軸52の軸線方向(軸中心線L1に沿った方向)に沿って変位可能となる。
尚、規制部51eは、本実施形態では3箇所設けられている。
図17では、図示の便宜上ローラー支持部材51の本体は図示を省略し、規制部51eのみを示している。
【0078】
この様な構成により、第2従動ローラー21bの取り付け精度が悪く、回転軸心線L2が用紙搬送方向Dに対して直角を成していない場合には、例えば
図17に示す例では第2従動ローラー21bは
図17の左方向に動き、左側の規制部51eに当接する。そしてその当接部位を支点にして第2従動ローラー21bが揺動することができる。即ち、第2従動ローラー21bが規制部51eとの当接部位を中心にして容易に揺動することができ、第2従動ローラー21bの回転軸心線L2が用紙搬送方向Dと成す角度を容易に調整することができる。
【0079】
尚、本実施形態では、上述のように用紙搬送方向に対する回転軸心線の角度を調整する手段が設けられたローラーは、中間ローラー20に対して複数設けられた従動ローラーのうち、第2従動ローラー21bに対して設けられているが、これに代えて、或いはこれに加えて、例えば第3従動ローラー21cに対して設けても良い。即ち、少なくとも搬送ローラー対30の上流側に最初に位置する従動ローラー(第3従動ローラー21c)、或いはその上流側に最初に位置する従動ローラー(第2従動ローラー21b)、即ちスキュー矯正に大きい影響を及ぼす従動ローラーに対して上記角度調整手段を設けることで、効果的にスキューを矯正することができる。
但し、スキュー矯正に大きな影響を及ぼさないその他の従動ローラーに対して上記角度調整手段を設けても良い。
尚、本実施形態では中間ローラー20に対して第2従動ローラー21bが複数設けられていたが、中間ローラー20に対して第2従動ローラー21bが一つ設けられた構成であっても、上記角度調整手段の作用効果を得ることができる。
【0080】
尚、中間ローラー20との間で記録用紙をニップする従動ローラーが多いほど、搬送ローラー対30に到達するまでの記録用紙のスキューを抑制できる。本実施形態では、第1従動ローラー21a、第2従動ローラー21b、第3従動ローラー21c、のこれら3つの従動ローラーによって、記録用紙が搬送ローラー対30に到達するまでのスキューを抑制する。
尚、中間ローラー20とこれに接する従動ローラーは、用紙幅方向においてより多く設けることがスキュー抑制の観点では好ましい。本実施形態では、中間ローラー20とこれに接する従動ローラーは、用紙幅方向における中間位置に設けられているが、例えば用紙幅方向に沿って適宜の間隔で複数設ければ、スキュー抑制の観点ではより好ましい。
【0081】
次に、中間ローラー20まわりの構成の他の実施形態について
図18乃至
図26を参照しつつ説明する。
図18及び
図19において、符号26は、用紙Pの先端の進行方向を規制する規制部材を示している。即ち、両面印刷の為に用紙Pを中間ローラー20によって反転させた際に、用紙Pの先端が破線Pjで示す様に下向きにカールし、その結果下流側に適切に進まずにジャムとなってしまう虞がある。しかしながら規制部材26によって用紙先端の進行方向がより下流側に向くように規制されるので、上述の原因に伴うジャムを抑制することができる。
【0082】
また、用紙Pを中間ローラー20で反転させた際、中間ローラー20から下流側に進んだ用紙先端が、反転前の用紙後端領域と接触する場合があり、その際に用紙表面と裏面との間の摩擦係数が高いと、用紙先端が用紙表面を滑ることができず、ジャムとなる虞がある。
しかしながら上述の通り、規制部材26によって用紙先端の進行方向がより下流側に向くように規制されるので、上述の原因に伴うジャムを抑制することができる。
【0083】
尚、規制部材26は、用紙搬送方向と直交する方向である用紙幅方向において中央領域の、中間ローラー20の両側に設けられている。そして規制部材26は、本実施形態では弾性を有するシート材により形成されている。規制部材26を、弾性を有するシート材で形成することで、用紙Pへの傷等の形成を抑制できる。
尚、
図19において符号27は、用紙端部領域の進行方向を規制する規制部材である。本実施形態では、規制部材27は、規制部材26よりも用紙搬送方向下流側に延設されている。規制部材27も、本実施形態では規制部材26と同様に、弾性を有するシート材で形成されている。
【0084】
続いて、
図21に示す様に第2従動ローラー21bはローラー支持部材61に支持されており、ローラー支持部材61は経路部材60に支持されている。また、第1従動ローラー21aはローラー支持部材62に支持されている。経路部材60は
図10を参照しつつ既に説明した経路部材50の他の実施形態であり、同様にローラー支持部材61はローラー支持部材51の他の実施形態である。
経路部材60は用紙幅方向に延設されており、用紙搬送経路を形成する面には用紙搬送方向に沿って延びるリブ60aが、用紙幅方向に沿って適宜の間隔で複数設けられている。
経路部材60には軸保持部60b、60bが設けられており、ローラー支持部材61は、揺動軸61a、61a(
図24)が軸保持部60b、60bに支持されることにより、経路部材60に対し揺動可能に設けられている。第2従動ローラー21bは、ローラー支持部材61の揺動により、用紙搬送経路に対して進退する。ローラー支持部材61の揺動軸61aは、第2従動ローラー21bよりも用紙搬送方向の上流側に位置する。ローラー支持部材61は、不図示の付勢手段によって第2従動ローラー21bが中間ローラー20に接する方向に付勢されている。
【0085】
ローラー支持部材62は、揺動軸62a、62aを有しており(
図21、
図22)、この揺動軸62a、62aが
図21では図示を省略するフレームに支持されることで、ローラー支持部材62が揺動可能となっている。第1従動ローラー21aは、ローラー支持部材62の揺動により、用紙搬送経路に対して進退する。ローラー支持部材62の揺動軸62aは、第1従動ローラー21aよりも用紙搬送方向の上流側に位置する。ローラー支持部材62は、不図示の付勢手段によって第1従動ローラー21aが中間ローラー20に接する方向に付勢されている。
【0086】
図20に示す様に、中間ローラー20と第1従動ローラー21aとのニップ位置より下流側には、「跳ね上がり規制部」を構成する規制部67、68、69が設けられている。規制部67、68、69は、中間ローラー20と第1従動ローラー21aとのニップ位置を外れた用紙後端Prの、第1従動ローラー21a側への跳ね上がりを規制する。
即ち、用紙後端Prが中間ローラー20と第1従動ローラー21aとのニップ位置から外れると、中間ローラー20の外周面に沿って湾曲していた用紙が元の状態に復帰しようとする為、用紙後端Prが中間ローラー20から跳ね上がろうとする(弾かれる)現象が生じ、その際に用紙搬送精度が乱れ、その結果記録品質が乱れる虞がある。
しかしながら規制部67、68と、その下流側に設けられた規制部69が、中間ローラー20と第1従動ローラー21aとのニップ位置を外れた用紙後端Prの、第1従動ローラー21a側への跳ね上がりを規制するので、上述の記録品質の乱れを抑制することができる。
【0087】
以上の規制部67は、ローラー支持部材62に設けられており、規制部68は、経路部材60に設けられており、規制部69は、ローラー支持部材61に設けられている。
図22は、ローラー支持部材62を示す斜視図である。ローラー支持部材62には、リブ62b、62c、62d、のこれらが、用紙幅方向に沿って適宜の間隔で形成されており、これらリブが、
図20、
図21の規制部67を構成する。
また、
図23に示す様に、経路部材60には、リブ60c、60cが用紙幅方向に所定の間隔を空けて複数(本実施形態では、2箇所)形成されている。このリブ60c、60cも、
図20、
図21の規制部68を構成する。
本実施形態では、用紙幅方向において中央領域に重点的に規制部67を設けたが、用紙幅方向全体に亘って規制部67、68を設けても良い。
また本実施形態では、用紙幅方向において規制部67より用紙幅方向端部側に規制部68を設けたが、用紙幅方向全体に亘って規制部68を設けても良い。
【0088】
図24は、ローラー支持部材61を示す斜視図である。ローラー支持部材61には、複数のリブ61c、61c、61cが用紙幅方向に所定の間隔で形成されている。このリブ61c、61c、61cは、
図20、
図21の規制部69を構成する。
本実施形態では、用紙幅方向において中央領域に重点的に規制部69を設けたが、用紙幅方向全体に亘って規制部69を設けても良い。
【0089】
また、
図20に示す様に、中間ローラー20と第2従動ローラー21bとのニップ位置より下流側にも、同様な「跳ね上がり規制部」としての規制部70が設けられている。規制部70は、中間ローラー20と第2従動ローラー21bとのニップ位置を外れた用紙後端Prの、第2従動ローラー21b側への跳ね上がりを規制する。
この規制部70は、
図23に示す様に、ローラー支持部材61に設けられたリブ61b、61b、61d、61dにより構成される。
本実施形態では、用紙幅方向において中央領域に重点的に規制部70を設けたが、用紙幅方向全体に亘って規制部70を設けても良い。
【0090】
続いて、
図25に示す様に、第1面(おもて面)に記録が行われてスイッチバックされる用紙Pを中間ローラー20に案内するガイド部材42には、フラップ65への当接角を緩やかにするガイド42bが形成されている。
即ち、第4従動ローラー21dの近傍には、給紙カセット13から中間ローラー20に向かう用紙の給送経路と、第1面(おもて面)に記録が行われてスイッチバックされる用紙Pの搬送経路とを切り換えるフラップ65が設けられている。フラップ65は不図示の揺動軸を中心に揺動可能に設けられており、給紙カセット13から中間ローラー20に向かう用紙の給送経路を開放する姿勢(
図25の実線)と、第1面(おもて面)に記録が行われてスイッチバックされる用紙Pの搬送経路を開放する姿勢(
図25の二点鎖線及び符号65-1)とを切り換え可能に構成されている。
【0091】
図25の実線に示す様に、フラップ65が給紙カセット13から中間ローラー20に向かう用紙の給送経路を開放する姿勢をとっていると、第1面(おもて面)に記録が行われてスイッチバックされる用紙Pの先端Pfがフラップ65に急角度で突き当たり、ジャムとなる虞がある。ガイド42bは、その様な不具合を抑制する為に、用紙Pの先端Pfがフラップ65に当接する際の角度を緩やかにする様に用紙先端Pfを案内する。
【0092】
また、ガイド部材42には、ガイド42cが形成されている。このガイド42cは、以下の様に機能する。即ち、
図26に示す様に第4従動ローラー21dの回転軸21gの下側には、回転軸21gを中間ローラー20側に押圧する押圧部材としてのばね66が設けられているが、ばね66の設置位置が、上流側(
図26において左側)に寄っていると、ばね66の上端角部が用紙搬送経路に飛び出し、その飛び出した部分に用紙が引っ掛かる虞がある。ガイド42cは、用紙をばね66から遠ざける方向に案内することで、上記不具合を抑制する。
尚、ばね66の収容領域に対し上流側(
図26の左側)には規制リブ42dが設けられており、この規制リブ42dにより、ばね66の設置位置が上流側に寄ることが抑制されている。
【0093】
次いで、プリンター1における具体的なスキュー矯正動作について
図5~
図8を参照しつつ説明する。制御部150は、第1スキュー矯正動作と、第2スキュー矯正動作と、更にこれらを組み合わせた複合スキュー矯正モードとを実行可能に構成されている。
【0094】
第1スキュー矯正動作は、搬送ローラー対30の逆回転と中間ローラー20の正回転とを利用して、中間ローラー20及び第3従動ローラー21cと、搬送ローラー対30との間で記録用紙への撓みの形成を伴って用紙先端を搬送ローラー対30に突き当てる動作である。以下、説明の便宜上この第1スキュー矯正動作を「逆転突き当て方式」のスキュー矯正動作と言う。
また、第2スキュー矯正動作は、記録用紙の先端を搬送ローラー対30のニップ位置から所定量下流側に送った後、中間ローラー20を駆動せずに搬送ローラー対30を逆転させ、記録用紙の先端を搬送ローラー対30の上流側に吐き出して、搬送ローラー対30のニップ位置に用紙先端を倣わせる動作である。以下、説明の便宜上この第2スキュー矯正動作を「食い付き吐き出し方式」のスキュー矯正動作と言う。
【0095】
しかしながら逆転突き当て方式のスキュー矯正動作では、装置の小型化のために搬送ローラー対30を小径化すると、
図5に示す様に用紙先端Pfが搬送ローラー対30のニップ位置に誘われず、搬送駆動ローラー30aのローラー周面に衝突(腹当たり)して適切にスキュー矯正を行えない場合がある。
尚、
図5及び後の説明に用いる
図6、
図7は、説明の便宜上各ローラーの大きさや配置間隔を模式的に示しており、また、記録用紙の撓みの形状及び大きさについても、模式的に示している。
図5、
図6、
図7は、専ら用紙先端の位置と各ローラーの回転方向の関係を示すことを目的としている。
【0096】
制御部150は、必要に応じて上記複合スキュー矯正モードを実行する。
以下では先ず、
図8を参照しつつ本実施例に係る記録動作の流れを概説する。
図8において制御部150は、ドライバ情報をもとにして給送経路情報を取得し(ステップS101)、また、ドライバ情報から用紙種類及び用紙サイズ情報を取得する(ステップS102)。そしてステップS101で取得した給送経路情報とステップS102で取得した用紙種類及び用紙サイズ情報をもとにして、スキュー矯正方法を設定する(ステップS103)。
ステップS103のスキュー矯正方法については予め設定テーブルとしてメモリに記憶されているものであるが、その内容については後に説明する。
【0097】
次いで、用紙の給送とステップS103で設定したスキュー矯正方法に基づいたスキュー矯正を行い(ステップS104)、第1面(おもて面)への記録を実行する(ステップS105)。
次いで、片面記録の場合(ステップS106においてNo)、記録用紙を排出する(ステップS110)。
両面記録の場合には(ステップS106においてYes)、再度ステップS103と同様にスキュー矯正方法を設定し(ステップS107)、用紙の反転と設定したスキュー矯正方法に基づいたスキュー矯正を行い(ステップS108)、第2面(うら面)への記録を実行する(ステップS109)。次いで、記録用紙を排出する(ステップS110)。
【0098】
ここで、ステップS103、S107のスキュー矯正方法の設定は、上述した様に給送経路、用紙種類、用紙サイズに応じて行う。
本実施例では、一例として
図9に示す様に設定する。
具体的には、用紙給送経路T1(給紙カセット13から給紙)或いは両面記録の場合、記録用紙がハガキであれば複合スキュー矯正モードを選択する。また、記録用紙が普通紙の場合には食い付き吐き出し方式のスキュー矯正動作(第2スキュー矯正動作)のみ実行し、それ以外の記録用紙であれば逆転突き当て方式のスキュー矯正動作(第1スキュー矯正動作)のみ実行する。
【0099】
また、用紙給送経路T2の場合(用紙セット部23から給紙)、記録用紙がハガキ或いは普通紙であれば食い付き吐き出し方式のスキュー矯正動作(第2スキュー矯正動作)のみ実行し、それ以外の記録用紙であれば逆転突き当て方式のスキュー矯正動作(第1スキュー矯正動作)のみ実行する。
【0100】
以下では、
図6を参照しつつ複合スキュー矯正モードの具体例及び作用効果について説明する。
図6は、最初に逆転突き当て方式のスキュー矯正動作(第1スキュー矯正動作)を実行し、次いで食い付き吐き出し方式のスキュー矯正動作(第2スキュー矯正動作)を実行する複合スキュー矯正モードを説明するものである。
【0101】
図6の[状態1]は、逆転突き当て方式のスキュー矯正動作を実行した状態を示している。中間ローラー20と第3従動ローラー21cとから送り出された記録用紙Pは、逆回転している搬送ローラー対30に到達する。記録用紙Pは、搬送ローラー対30と中間ローラー20との間で撓みが形成され、用紙先端Pfが搬送ローラー対30に対して突き当てられる。このとき、
図5を参照しつつ説明したように用紙先端Pfが搬送駆動ローラー30aに腹当たりする場合がある。
【0102】
次いで、食い付き吐き出し方式のスキュー矯正動作(第2スキュー矯正動作)を実行する。
図6の[状態2]は、食い付き吐き出し方式のスキュー矯正動作において、用紙先端Pfを搬送ローラー対30のニップ位置から所定量Lだけ下流側に送り出した状態(食い付かせた状態)を示している。
【0103】
この状態から、中間ローラー20を停止した状態で、搬送ローラー対30を逆転させると、用紙先端Pfは搬送ローラー対30の上流側に吐き出される。
図6の[状態3]に示す様に記録用紙Pには、搬送ローラー対30と中間ローラー20との間で撓みが形成され、用紙先端Pfは、搬送ローラー対30のニップ位置に倣い、スキューが矯正される。
【0104】
以上の様に逆転突き当て方式のスキュー矯正動作を行った後に食い付き吐き出し方式のスキュー矯正動作を行う複合スキュー矯正モードによれば、先ず逆転突き当て方式のスキュー矯正動作を行うことで(
図6の[状態1])、搬送ローラー対30への用紙先端Pfの腹当たりが生じても、或る程度のスキュー矯正を期待できる。
【0105】
そしてその後食い付き吐き出し方式のスキュー矯正動作を行うことで(
図6の[状態2]、[状態3])、最終的には用紙先端Pfの搬送ローラー対30への腹当たりを回避してスキューを矯正できる。しかも、食い付き吐き出し方式のスキュー矯正動作の前に逆転突き当て方式のスキュー矯正動作によって或る程度のスキュー矯正を行っているので、食い付き吐き出し方式のスキュー矯正動作の欠点(逆転突き当て方式のスキュー矯正に比べてスキュー矯正の効果が劣る)を補うことができ、結果として適切にスキューを矯正できる。
特に、装置の小型化に伴い搬送ローラー対30を構成する各ローラー(特に本実施形態では搬送駆動ローラー30a)を小径化しても、適切にスキューを矯正できる。
【0106】
次に、
図7は、
図6とは逆に最初に食い付き吐き出し方式のスキュー矯正動作(第2スキュー矯正動作)を実行し、次いで逆転突き当て方式のスキュー矯正動作(第1スキュー矯正動作)を実行する複合スキュー矯正モードを説明するものである。
図7の[状態1]は、食い付き吐き出し方式のスキュー矯正動作において、用紙先端Pfを搬送ローラー対30のニップ位置から所定量Lだけ下流側に送り出した状態(食い付かせた状態)を示している。
【0107】
この状態から、中間ローラー20を停止した状態で、搬送ローラー対30を逆転させると、用紙先端Pfは搬送ローラー対30の上流側に吐き出される。記録用紙Pには、搬送ローラー対30と中間ローラー20との間で撓みが形成され、用紙先端Pfは、搬送ローラー対30のニップ位置に倣い、スキューが矯正される(
図7の[状態2])。
【0108】
次いで、搬送ローラー対30を逆回転させた状態で、中間ローラー20の正回転を介して用紙先端Pfを搬送ローラー対30のニップ位置に突き当てる。記録用紙Pには、搬送ローラー対30と中間ローラー20との間で撓みが形成され、用紙先端Pfは、搬送ローラー対30のニップ位置に倣い、スキューが矯正される(
図7の[状態3])。
【0109】
以上の様に食い付き吐き出し方式のスキュー矯正動作を行った後に逆転突き当て方式のスキュー矯正動作を行う複合スキュー矯正モードによれば、用紙先端Pfの搬送ローラー対30への腹当たりを回避して用紙先端Pfを適切に搬送ローラー対30のニップ位置に到達させることができる(
図7の[状態2])。
【0110】
しかも、食い付き吐き出し方式のスキュー矯正動作を1回のみ行ってスキュー矯正する場合には、用紙先端Pfの斜行を考慮すると、確実に搬送ローラー対30に食い付かせる為に食い付き量(
図7の[状態1]において符号L)を多くする必要があり、その為用紙先端Pfを搬送ローラー対30の上流に吐き出した後の、搬送ローラー対30と中間ローラー20との間での撓み量が多くなって、装置を小型化した場合にはこれに対応することができない場合がある。
【0111】
しかしながら上記スキュー矯正モードにおいて最初に実行する食い付き吐き出し方式のスキュー矯正動作は、次の逆転突き当て方式のスキュー矯正動作を行う前のいわば予備動作であるので、食い付き量(
図7の[状態1]において符号L)は少なくて済む。即ち、装置を小型化して記録用紙Pが撓むことができる空間が狭くなっても、それに対応することができる。
そしてその後逆転突き当て方式のスキュー矯正動作を行うことで、記録用紙Pのスキューを適切に矯正することができる。
特に、装置の小型化に伴い搬送ローラー対30を構成するローラーを小径化しても、適切にスキューを矯正できる。
【0112】
また上記実施例では、記録用紙をセット可能な第1のセット部としての給紙カセット13及び第2のセット部としての用紙セット部23を備え、給送ローラーとしての中間ローラー20は、給紙カセット13から送り出された記録用紙を搬送ローラー対30に向けて反転させるローラーであり、用紙セット部23から送り出される記録用紙は、反転されることなく搬送ローラー対30に給送される構成を備えている。この構成において制御部150は、
図9に示す様に少なくとも用紙セット部23から記録用紙を給送する場合(用紙給送経路T2を利用する場合)、複合スキュー矯正モードを選択しない。
即ち、スキューが生じ難い給送経路にて記録用紙が給送される場合には、複合スキュー矯正モードを選択しないので、スループットの低下を抑制できる。
【0113】
また本実施形態では、制御部150は記録用紙のサイズに応じて複合スキュー矯正モードを選択する。より具体的には、本実施形態では用紙サイズがハガキの場合、即ち用紙サイズが小さい場合に複合スキュー矯正モードを選択するので、スキューが生じ易い、サイズの小さい記録用紙に対しては適切にスキューを矯正できる。そしてスキューが生じ難い、サイズの大きい記録用紙に対しては、複合スキュー矯正モードを適用しないことでスループットの低下を抑制できる。
【0114】
以上説明した実施例は、一例として以下のように変更することもできる。
(1)上記実施例では、制御部150はハガキ、普通紙以外の紙種の場合には一律に逆転突き当て方式のスキュー矯正動作のみを行うが、例えば厚手の用紙の場合に、複合スキュー矯正モードを採用しても良い。厚手の用紙の場合は、用紙の剛性が高いため、搬送駆動ローラー30aへの用紙先端の腹当たりが生じ易い。よってその様な場合に、
図6或いは
図7を参照しつつ説明した複合スキュー矯正モードを適用すれば、搬送駆動ローラー30aへの用紙先端の腹当たりを抑制し、より適切にスキューを矯正できる。
この様に、用紙種類に応じて複合スキュー矯正モードを選択すれば、搬送ローラー対30への用紙先端の腹当たりが生じ難い記録用紙に対しては複合スキュー矯正モードを適用しないことでスループットの低下を抑制でき、また搬送ローラー対30への用紙先端の腹当たりが生じ易い記録用紙に対しては複合スキュー矯正モードを適用することで、適切にスキューを矯正できる。
【0115】
(2)第1面(おもて面)に記録を行った後、記録用紙を再度中間ローラー20に送り込み、第1面とは反対側の第2面(うら面)が記録ヘッド35と対向する様に記録用紙を反転させる反転経路を備える構成において、制御部150が、記録を行う用紙の面に応じて、複合スキュー矯正モードを選択するようにしても良い。
【0116】
これにより、記録を行う用紙の面により搬送ローラー対30への用紙先端の腹当たりが生じ難い状況では複合キュー矯正モードを選択しないことでスループットの低下を抑制でき、また搬送ローラー対30への用紙先端の腹当たりが生じ易い状況では複合スキュー矯正モードを選択することで、適切にスキューを矯正できる。
【0117】
以下、より具体的な例について説明する。本実施例に係る搬送ローラー対30は、第1搬送ローラーとしての搬送駆動ローラー30aと、搬送駆動ローラー30aより記録用紙との間の摩擦係数が相対的に低い、第2搬送ローラーとしての搬送従動ローラー30bと、を備えて構成されている。
この様な構成において、記録用紙が、第1面(おもて面)及び第2面(うら面)のうちいずれか一方の面が、他方の面に対して相対的に搬送駆動ローラー30aとの間の摩擦係数が高い場合、前記摩擦係数の高い用紙の面が搬送駆動ローラー30aと接する際に用紙先端の腹当たりが生じ易くなる為、複合スキュー矯正モードを選択することが考えられる。
【0118】
例えば、通信面がインクジェット記録対応の為に光沢加工された面であり、その反対側である宛名面が非加工面即ち普通紙と同等な面であるハガキの場合、光沢加工された通信面は、光沢加工されていない宛名面よりも、相対的に搬送駆動ローラー30aとの間の摩擦係数が高く、従って光沢加工された通信面を下にして搬送する場合(即ち宛名面に印刷を行う場合)は、その逆の場合に比べて、搬送駆動ローラー30aへの用紙先端の腹当たりが生じ易い傾向がある。
【0119】
よってこの様な場合は、光沢加工された通信面を下にして搬送する場合(宛名面に印刷を行う場合)に複合スキュー矯正モードを適用し、光沢加工されていない宛名面を下にして搬送する場合(通信面に印刷を行う場合)には複合スキュー矯正モードは適用せず、例えば逆転突き当て方式或いは食い付き吐き出し方式のいずれかのスキュー矯正動作のみを実行する。
【0120】
この様に構成することで、記録を行う用紙の面によりスキューが生じ難い状況では複合キュー矯正モードを選択しないことでスループットの低下を抑制でき、またスキューが生じ易い状況では複合スキュー矯正モードを選択することで、適切にスキューを矯正できる。
【0121】
(3)上記実施例では、食い付き吐き出し方式のスキュー矯正動作(第2スキュー矯正動作)において、搬送ローラー対30を逆転させて用紙先端を搬送ローラー対30の上流側に吐き出す際、中間ローラー20の駆動を単に停止している為に、外力が加われば中間ローラー20が回転する状態となっている。しかし、これに換えて、第2駆動モーター153のホールド制御を行い、中間ローラー20の回転を、積極的に止めるように制御しても良い。
或いは、搬送ローラー対30を逆転させて用紙先端を搬送ローラー対30の上流側に吐き出す際、中間ローラー20を正転させ、記録用紙により大きな撓みを形成することもできる。
(4)上記実施例では、逆転突き当て方式のスキュー矯正動作(第1スキュー矯正動作)において、その名の通り用紙先端を搬送ローラー対30に突き当てる際に搬送ローラー対30を逆転駆動しているが、用紙先端を搬送ローラー対30に突き当てる際に搬送ローラー対30を停止させることもできる。
【0122】
更に本発明は上記各実施形態や適宜記載した変形例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、その他種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0123】
1…インクジェットプリンター、2…装置本体、3…スキャナユニット、4…給紙口カバー、5…原稿カバー、6…原稿台、10…前面カバー、11…操作パネル、12…排紙受けトレイ、13…給紙カセット、14…給送ローラー、15…ローラー支持部材、15a…回転軸、16…分離斜面、20…中間ローラー、21a…第1従動ローラー、21b…第2従動ローラー、21c…第3従動ローラー、21d…第4従動ローラー、22a…外周面、22b、22c…角部、22d…内側端面、22e…外側端面、22f…凸部、
22g…軸孔、22h…円筒部、23…用紙セット部、24…給送ローラー、25…従動ローラー、26…規制部材、27…規制部材、29…用紙検出センサー、30…搬送ローラー対、30a…搬送駆動ローラー、30b…搬送従動ローラー、31…プラテン、33…キャリッジ、34…キャリッジガイド軸、35…記録ヘッド、36…インクカートリッジ、37…排出ローラー対、40…ガイド部材、41…ガイド部材、42…ガイド部材、42b、42c…ガイド、42d…規制リブ、43…支持部材、50…経路部材、50a…リブ、50b…軸保持部、51…ローラー支持部材、51a…揺動軸、51b…軸規制部、51c…軸規制面、51d…軸受面、51e…規制部、51f…突起、52…回転軸、53…ばね、60…経路部材、60a…リブ、60b…軸保持部、60c…リブ、61…ローラー支持部材、61a…揺動軸、61b、61c、61d…リブ、62…ローラー支持部材、62a…揺動軸、62b、62c、62d…リブ、65…フラップ、66…ばね、67、68、69、70…規制部、P…記録用紙、T1、T2…用紙給送経路