(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】放射線画像処理装置、散乱線補正方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
A61B6/00 350M
A61B6/00 330Z
(21)【出願番号】P 2021107169
(22)【出願日】2021-06-29
(62)【分割の表示】P 2018014242の分割
【原出願日】2018-01-31
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 良平
【審査官】最首 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-189392(JP,A)
【文献】特開2011-227047(JP,A)
【文献】特開2016-032623(JP,A)
【文献】特開2015-100543(JP,A)
【文献】特開平2-028779(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0056407(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を透過した放射線を検出する複数の放射線検出器により得られた複数の放射線画像の各画素の画素信号値に含まれる散乱線量を推定する散乱線推定手段と、
前記散乱線推定手段により推定された散乱線量に基づいて、散乱線補正において前記放射線画像の各画素の画素信号値から減算する散乱線量を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された散乱線量を前記各画素の画素信号値から減算することにより前記複数の放射線画像に散乱線補正を施す散乱線補正手段と、
前記散乱線補正が施された前記複数の放射線画像に対して、前記放射線検出器の回路基板が重なっている領域とそれ以外の領域とで粒状性抑制レベルを異ならせて粒状性抑制処理を施す粒状性抑制手段と、
前記散乱線補正及び前記粒状性抑制処理が施された前記複数の放射線画像間の濃度段差を、前記複数の放射線検出器の感度差に基づいて補正する濃度段差補正手段と、
を備える放射線画像処理装置。
【請求項2】
前記散乱線補正手段により散乱線補正が施された前記複数の放射線画像を結合して長尺画像を生成する長尺結合手段を備え、
前記濃度段差補正手段は、前記長尺結合手段により生成された長尺画像を構成する前記複数の放射線画像の濃度段差を補正する請求項
1に記載の放射線画像処理装置。
【請求項3】
被写体を透過した放射線を検出する複数の放射線検出器により得られた複数の放射線画像を結合して長尺画像を生成する長尺結合手段と、
前記長尺結合手段により生成された長尺画像を構成する前記複数の放射線画像間の濃度段差を、前記複数の放射線検出器の感度差に基づいて補正する濃度段差補正手段と、
前記濃度段差補正手段による補正後の前記長尺画像を任意の数に画像分割して複数の分割画像を生成する分割手段と、
前記複数の分割画像のそれぞれに対して、各画素の画素信号値に含まれる散乱線量を推定する散乱線推定手段と、
前記複数の分割画像のそれぞれに対して、前記散乱線推定手段により推定された散乱線量に基づいて、散乱線補正において各画素の画素信号値から減算する散乱線量を決定する決定手段と、
前記複数の分割画像のそれぞれに対して、前記決定された散乱線量を各画素の画素信号値から減算することにより散乱線補正を施す散乱線補正手段と、
前記散乱線補正が施された前記複数の分割画像に対して、前記放射線検出器の回路基板が重なっている領域とそれ以外の領域とで粒状性抑制レベルを異ならせて粒状性抑制処理を施す粒状性抑制手段と、
前記散乱線補正及び前記粒状性抑制処理が施された前記複数の分割画像を再結合する再結合手段と、
を備える放射線画像処理装置。
【請求項4】
前記濃度段差補正手段は更に、前記複数の放射線検出器の位置関係に基づいて前記放射線画像間の濃度段差を補正する
請求項1~3のいずれか一項に記載の放射線画像処理装置。
【請求項5】
被写体を透過した放射線を検出する複数の放射線検出器により得られた複数の放射線画像の各画素の画素信号値に含まれる散乱線量を推定する散乱線推定工程と、
前記散乱線推定工程において推定された散乱線量に基づいて、散乱線補正において前記放射線画像の各画素の画素信号値から減算する散乱線量を決定する決定工程と、
前記決定工程において決定された散乱線量を前記各画素の画素信号値から減算することにより前記複数の放射線画像に散乱線補正を施す散乱線補正工程と、
前記散乱線補正が施された前記複数の放射線画像に対して、前記放射線検出器の回路基板が重なっている領域とそれ以外の領域とで粒状性抑制レベルを異ならせて粒状性抑制処理を施す粒状性抑制工程と、
前記散乱線補正及び前記粒状性抑制処理が施された前記複数の放射線画像間の濃度段差を、前記複数の放射線検出器の感度差に基づいて補正する濃度段差補正工程と、
を含む散乱線補正方法。
【請求項6】
被写体を透過した放射線を検出する複数の放射線検出器により得られた複数の放射線画像の各画素の画素信号値に含まれる散乱線量を推定する散乱線推定手段と、
前記散乱線推定手段により推定された散乱線量に基づいて、散乱線補正において前記放射線画像の各画素の画素信号値から減算する散乱線量を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された散乱線量を前記各画素の画素信号値から減算することにより前記複数の放射線画像に散乱線補正を施す散乱線補正手段と、
を備える放射線画像処理装置に用いられるコンピュータを、
前記散乱線補正が施された前記複数の放射線画像に対して、前記放射線検出器の回路基板が重なっている領域とそれ以外の領域とで粒状性抑制レベルを異ならせて粒状性抑制処理を施す粒状性抑制手段、
前記散乱線補正及び前記粒状性抑制処理が施された前記複数の放射線画像間の濃度段差を、前記複数の放射線検出器の感度差に基づいて補正する濃度段差補正手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像処理装置、散乱線補正方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被写体を透過した放射線により被写体の放射線画像を撮影する際、とくに被写体の厚さが大きいと、被写体内において放射線が散乱して散乱線が発生し、この散乱線により、取得される放射線画像のコントラストが低下するという問題がある。このため、放射線画像の撮影時には、放射線を検出して放射線画像を取得するための放射線検出器に散乱線が照射されないように、被写体と放射線検出器との間に散乱線除去グリッド(以下単にグリッドとする)を配置して撮影を行うことがある。グリッドを用いて撮影を行うと被写体により散乱された放射線が放射線検出器に照射されにくくなるため、放射線画像のコントラストを向上させることができる。しかし、グリッドを用いると、病室等で行われるポータブル撮影時のグリッド配置の作業負担や患者の負担が大きい、グリッドのピッチに対応したモアレが記録されてしまう、グリッドの距離制約の影響を受ける等の問題がある。そこで、放射線の散乱線成分で低下したコントラストを改善するために、放射線画像に対して散乱線補正の画像処理を行うことが行われている。
【0003】
ところで、医療の分野においては、人体の全脊柱や全下肢等の比較的広い範囲を長尺撮影することがある。長尺撮影は、例えば、長尺撮影用の撮影台のホルダー内に複数の放射線検出器を並べて装填しておき、放射線発生装置から被写体を介して複数の放射線検出器に放射線を照射する。そして、複数の放射線検出器のそれぞれから読み出された小放射線画像を結合することにより1枚の放射線画像(長尺画像)が取得される。
【0004】
散乱線補正では、全画素に対して散乱線量を推定するが、散乱線量の推定には周辺の画素の画素値(画素信号値)が用いられる。そのため、長尺画像を構成する各小放射線画像においては、
図11に示すように、画素Aでは散乱線の推定ができるが、長尺画像として結合された際に他の小放射線画像に隣接する境界画素Bではその小放射線画像の画像領域内の画素から正しく散乱線量を推定できない。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1には、長尺画像を構成する小放射線画像の境界部分における散乱線成分は隣接する小放射線画像に含まれる散乱線成分の影響を受けるとして、境界画素の散乱線量の推定に他の小放射線画像の情報を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、放射線検出器は個体によって放射線検出感度が異なる。そのため、特許文献1に記載のように他の放射線検出器の情報を用いて散乱線量を推定すると正しく推定することができず、散乱線補正後に濃度段差が発生する可能性がある。
【0008】
また、1枚のみの放射線検出器を用いた撮影により得られた放射線画像であっても、或る構造物のコントラストを高める目的で、その構造物の領域だけ散乱線量の除去率を高めて散乱線補正が行われている場合は、その領域と他の領域の境界で濃度段差が生じてしまう。
【0009】
本発明の課題は、散乱線補正により生じる濃度段差を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の第1の側面による放射線画像処理装置は、
被写体を透過した放射線を検出する複数の放射線検出器により得られた複数の放射線画像の各画素の画素信号値に含まれる散乱線量を推定する散乱線推定手段と、
前記散乱線推定手段により推定された散乱線量に基づいて、散乱線補正において前記放射線画像の各画素の画素信号値から減算する散乱線量を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された散乱線量を前記各画素の画素信号値から減算することにより前記複数の放射線画像に散乱線補正を施す散乱線補正手段と、
前記散乱線補正が施された前記複数の放射線画像に対して、前記放射線検出器の回路基板が重なっている領域とそれ以外の領域とで粒状性抑制レベルを異ならせて粒状性抑制処理を施す粒状性抑制手段と、
前記散乱線補正及び前記粒状性抑制処理が施された前記複数の放射線画像間の濃度段差を、前記複数の放射線検出器の感度差に基づいて補正する濃度段差補正手段と、
を備える。
また、本発明の第2の側面による放射線画像処理装置は、
被写体を透過した放射線を検出する複数の放射線検出器により得られた複数の放射線画像を結合して長尺画像を生成する長尺結合手段と、
前記長尺結合手段により生成された長尺画像を構成する前記複数の放射線画像間の濃度段差を、前記複数の放射線検出器の感度差に基づいて補正する濃度段差補正手段と、
前記濃度段差補正手段による補正後の前記長尺画像を任意の数に画像分割して複数の分割画像を生成する分割手段と、
前記複数の分割画像のそれぞれに対して、各画素の画素信号値に含まれる散乱線量を推定する散乱線推定手段と、
前記複数の分割画像のそれぞれに対して、前記散乱線推定手段により推定された散乱線量に基づいて、散乱線補正において各画素の画素信号値から減算する散乱線量を決定する決定手段と、
前記複数の分割画像のそれぞれに対して、前記決定された散乱線量を各画素の画素信号値から減算することにより散乱線補正を施す散乱線補正手段と、
前記散乱線補正が施された前記複数の分割画像に対して、前記放射線検出器の回路基板が重なっている領域とそれ以外の領域とで粒状性抑制レベルを異ならせて粒状性抑制処理を施す粒状性抑制手段と、
前記散乱線補正及び前記粒状性抑制処理が施された前記複数の分割画像を再結合する再結合手段と、
を備える。
【0011】
本発明の散乱線補正方法は、
被写体を透過した放射線を検出する複数の放射線検出器により得られた複数の放射線画像の各画素の画素信号値に含まれる散乱線量を推定する散乱線推定工程と、
前記散乱線推定工程において推定された散乱線量に基づいて、散乱線補正において前記放射線画像の各画素の画素信号値から減算する散乱線量を決定する決定工程と、
前記決定工程において決定された散乱線量を前記各画素の画素信号値から減算することにより前記複数の放射線画像に散乱線補正を施す散乱線補正工程と、
前記散乱線補正が施された前記複数の放射線画像に対して、前記放射線検出器の回路基板が重なっている領域とそれ以外の領域とで粒状性抑制レベルを異ならせて粒状性抑制処理を施す粒状性抑制工程と、
前記散乱線補正及び前記粒状性抑制処理が施された前記複数の放射線画像間の濃度段差を、前記複数の放射線検出器の感度差に基づいて補正する濃度段差補正工程と、
を含む。
【0012】
本発明のプログラムは、
被写体を透過した放射線を検出する複数の放射線検出器により得られた複数の放射線画像の各画素の画素信号値に含まれる散乱線量を推定する散乱線推定手段と、
前記散乱線推定手段により推定された散乱線量に基づいて、散乱線補正において前記放射線画像の各画素の画素信号値から減算する散乱線量を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された散乱線量を前記各画素の画素信号値から減算することにより前記複数の放射線画像に散乱線補正を施す散乱線補正手段と、
を備える放射線画像処理装置に用いられるコンピュータを、
前記散乱線補正が施された前記複数の放射線画像に対して、前記放射線検出器の回路基板が重なっている領域とそれ以外の領域とで粒状性抑制レベルを異ならせて粒状性抑制処理を施す粒状性抑制手段、
前記散乱線補正及び前記粒状性抑制処理が施された前記複数の放射線画像間の濃度段差を、前記複数の放射線検出器の感度差に基づいて補正する濃度段差補正手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、散乱線補正により生じる濃度段差を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態における放射線画像撮影システムの全体構成を示す図である。
【
図2】
図1のコンソールの機能的構成を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態において
図2の制御部により実行される長尺画像生成処理Aの流れを模式的に示す図である。
【
図4】第1の実施形態において
図2の制御部により実行される長尺画像生成処理Aを示すフローチャートである。
【
図5】
図4のステップS1において実行される散乱線補正処理を示すフローチャートである。
【
図7】第2の実施形態において
図2の制御部により実行される長尺画像生成処理Bの流れを模式的に示す図である。
【
図8】第2の実施形態において
図2の制御部により実行される長尺画像生成処理Bを示すフローチャートである。
【
図9】第3の実施形態に適用される放射線画像の一例を示す図である。
【
図10】第3の実施形態において
図2の制御部により実行される領域別散乱線補正処理を示すフローチャートである。
【
図11】散乱線の推定が精度良く可能な画素と不可能な画素を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0021】
<第1の実施形態>
〔放射線画像撮影システム100の構成〕
まず、第1の実施形態の構成を説明する。
図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影システム100の全体構成例を示す図である。
図1に示すように、放射線画像撮影システム100は、撮影装置1と、コンソール2とがデータ送受信可能に接続されて構成されている。
【0022】
撮影装置1は、長尺撮影を行うための複数の放射線検出器P1~P3と、放射線検出器P1~P3を装填可能な長尺撮影用の撮影台11と、放射線発生装置12とを備えて構成されている。撮影台11は、そのホルダー11a内に複数の放射線検出器P1~P3を縦方向に一部が重なって並ぶように装填することができるようになっている。
【0023】
なお、以下では、
図1に示したように、撮影台11のホルダー11aが放射線検出器を3枚装填することができるように構成されている場合について説明するが、本発明は、撮影台11に装填される放射線検出器の枚数が3枚の場合に限定されず、2枚や4枚以上であってもよい。
【0024】
放射線検出器P1~P3は、FPD(Flat Panel Detector)等の半導体イメージセンサーにより構成され、被写体Hを挟んで放射線発生装置12と対向するように設けられている。放射線検出器P1~P3は、例えば、ガラス基板等を有しており、基板上の所定位置に、放射線発生装置12から照射されて少なくとも被写体Hを透過した放射線(X線)をその強度に応じて検出し、検出した放射線を電気信号に変換して蓄積する複数の検出素子(画素)がマトリックス状に配列されている。各画素は、例えばTFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング部を備えて構成されている。放射線検出器P1~P3は、コンソール2から入力された画像読取条件に基づいて各画素のスイッチング部を制御して、当該各画素に蓄積された電気信号の読み取りをスイッチングしていき、各画素に蓄積された電気信号を読み取ることにより、画像データを取得する。そして、放射線検出器P1~P3は、取得した画像データに、その画像データを取得した放射線検出器の位置情報(パネル位置情報と呼ぶ)を付帯させてコンソール2に出力する。パネル位置情報には、隣接する放射線検出器と重なる部分の画素の座標位置情報、他の放射線検出器の画像データと結合した際に他の放射線検出器の画像データと隣接する境界画素の座標位置情報及び放射線発生装置12の管球に対する位置情報(例えば、手前、中央、奥。
図1では放射線検出器P1が奥、放射線検出器P2が中央、放射線検出器P3が手前)が含まれる。
【0025】
放射線検出器P1~P3から取得される画像データは、結合されることにより1枚の長尺画像(放射線画像)を構成するものであり、小放射線画像と呼ぶ。
【0026】
放射線発生装置12は、被写体Hを挟んで放射線検出器P1~P3と対向する位置に配置され、コンソール2から入力された放射線照射条件に基づいて被写体Hである患者を介して、ホルダー11aに装填された複数の放射線検出器P1~P3に放射線を照射して長尺撮影を行う。コンソール2から入力される放射線照射条件は、例えば、管電流の値、管電圧の値、放射線照射時間、mAs値、SID(放射線検出器P1~P3と放射線発生装置12の管球との最短距離)等である。
【0027】
コンソール2は、放射線照射条件や画像読取条件を撮影装置1に出力して撮影装置1による放射線撮影及び放射線画像の読み取り動作を制御するとともに、撮影装置1により取得された小放射線画像に画像処理を施す放射線画像処理装置として機能する。
コンソール2は、
図2に示すように、制御部21、記憶部22、操作部23、表示部24、通信部25を備えて構成され、各部はバス26により接続されている。
【0028】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。制御部21のCPUは、操作部23の操作に応じて、記憶部22に記憶されているシステムプログラムや各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って、コンソール2各部の動作や、撮影装置1の放射線照射動作及び読み取り動作を集中制御する。また、撮影装置1の放射線検出器P1~P3から送信された小放射線画像を用いて、後述する長尺画像生成処理A等を実行する。
制御部21は、散乱線推定手段、決定手段、散乱線補正手段、濃度段差推定手段、調整手段、取得手段として機能する。
【0029】
記憶部22は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成される。記憶部22は、制御部21で実行される各種プログラムやプログラムにより処理の実行に必要なパラメーター、或いは処理結果等のデータを記憶する。各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部21は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
また、記憶部22は、撮影部位に対応する放射線照射条件及び画像読取条件を記憶している。更に、記憶部22は、図示しないRIS(Radiology Information System)等から送信される撮影オーダー情報が記憶されている。撮影オーダー情報には、患者情報、検査情報(検査ID、撮影部位、検査日等)が含まれる。撮影部位は、長尺画像全体の撮影部位としてもよいし、放射線検出器P1~P3によって得られる個々の画像の撮影部位としてもよい。
【0030】
また、記憶部22は、管電圧を変えて所定のmAs値とSIDで様々な厚さのアクリル板(人体とX線減衰率が似ている)を撮影する実験により得られた、管電圧毎の画素値と体厚との関係式(式1)、及び実験に用いたmAs値とSIDを記憶している。また、記憶部22は、予め実験により求められた、撮影部位毎の体厚と散乱線含有率との関係を示すテーブルを記憶している。
【0031】
操作部23は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号を制御部21に出力する。また、操作部23は、表示部24の表示画面にタッチパネルを備えても良く、この場合、タッチパネルを介して入力された指示信号を制御部21に出力する。更に、操作部23には、放射線発生装置12に動態撮影を指示するための曝射スイッチが備えられている。
【0032】
表示部24は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等のモニターにより構成され、制御部21から入力される表示信号の指示に従って、操作部23からの入力指示やデータ等を表示する。
【0033】
通信部25は、放射線発生装置12及び放射線検出器P1~P3とデータ送受信を行うためのインターフェースを有する。なお、コンソール2と放射線発生装置12及び放射線検出器P1~P3との通信は、有線通信であっても無線通信であってもよい。
また、通信部25は、LANアダプターやモデムやTA(Terminal Adapter)等を備え、通信ネットワークに接続された図示しないRIS等との間のデータ送受信を制御する。
【0034】
〔放射線画像撮影システム100の動作〕
撮影装置1においてホルダー11aに放射線検出器P1~P3がセットされた状態で、コンソール2において操作部23により撮影対象の撮影オーダー情報が選択されると、選択された撮影オーダー情報に応じた撮影条件(放射線照射条件及び放射線画像読取条件)が撮影装置1に送信される。被写体Hのポジショニングが行われて曝射スイッチが押下されると、撮影装置1において、放射線発生装置12により放射線が照射され、放射線検出器P1~P3のそれぞれにより放射線画像の画像データが読み取られ、読み取られた画像データ(すなわち、小放射線画像)にパネル位置情報が付帯されてコンソール2に送信される。
【0035】
放射線検出器P1~P3から小放射線画像を受信すると、コンソール2においては、制御部21により、長尺画像生成処理Aが実行される。
図3は、長尺画像生成処理Aの流れを模式的に示す図、
図4は、長尺画像生成処理Aの流れを示すフローチャートである。長尺画像生成処理Aは、制御部21と記憶部22に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0036】
まず、制御部21は、放射線検出器P1~P3から受信した各小放射線画像に対し、散乱線補正処理を実行する(ステップS1)。
【0037】
図5は、散乱線補正処理の流れを示すフローチャートである。
散乱線補正処理において、制御部21は、まず、撮影に用いた撮影オーダー情報に基づいて撮影条件及び撮影部位の情報を取得するとともに、小放射線画像に付帯されているパネル位置情報を取得する(ステップS101)。
【0038】
次いで、制御部21は、取得した撮影条件、撮影部位、パネル位置情報に基づいて、小領域画像の画素毎の散乱線量を推定する(ステップS102)。
ステップS102においては、以下の(1)~(4)の処理により画素毎の散乱線量を推定する。
ここで、(1)の体厚の推定を実行するために、予め実験により、管電圧を変えて所定のmAs値とSIDで様々な厚さのアクリル板(人体とX線減衰率が似ている)が撮影され、実験で得られた画素値とアクリル厚との関係式(以下の(式1))が算出され、実験に用いたmAs値、SID、及び管電圧毎の(式1)が記憶部22に記憶されている。
アクリル厚=係数A×log(画素値)+係数B・・・(式1)
また、記憶部22には、予め撮影部位毎に、体厚と散乱線含有率との関係を示すテーブルが記憶されている。
【0039】
(1)撮影条件及びパネル位置情報に基づいて体厚を推定する
まず、パネル位置情報に基づいて、取得した撮影条件のSIDを修正する。例えば、小放射線画像のパネル位置情報に含まれる放射線発生装置12の管球に対する位置情報が「中央」である場合、記憶部22に記憶されているSIDに放射線検出器1P~3Pの厚さであるαを加算する。画像データのパネル位置情報が「奥」である場合、記憶部22に記憶されているSIDに2αを加算する。これにより、放射線検出器の位置に応じて正確なSIDを求めることができ、放射線検出器ごとの撮影距離の違いによる散乱線補正誤差による濃度段差を低減することができる。
次いで、撮影により取得した小放射線画像の画素値p_1を、以下の(式2)により上記実験の撮影条件下で撮影した場合の画素値p_0に変換する。
p_0=p_1×(mAs_1/mAs_0)×{(SID_0)2/(SID_1)2}・・・(式2)
ここで、mAs_0は実験で用いたmAs値、mAs_1は実際の撮影で用いたmAs値、SID_0は
実験で用いたSID、SID_1は実際の撮影で用いたSID(修正したSID)である。(式2)は、放射線検出器で得られる画像データの画素値はmAs値に比例、SIDに反比例するという知見に基づくものである。
次いで、変換後の画素値p_0を(式1)に代入し、得られたアクリル厚を体厚として推定する。
【0040】
(2)体厚から散乱線含有率を推定する
記憶部22に記憶されている撮影部位に応じた体厚と散乱線含有率との関係を示すテーブルに基づいて、(1)で算出された体厚から散乱線含有率を推定する。
【0041】
(3)小放射線画像の低周波成分を抽出して低周波成分画像を生成する
例えば、Meanフィルター、Gaussianフィルター、Bilateralフィルター等の低周波成分抽出用のフィルターを用いて、小放射線画像の低周波数成分を抽出する。例えば、小放射線画像の各画素が、その画素(注目画素)を中心とする周囲のn画素×n画素(nは正の整数)の領域から発生する散乱線の影響を受けているとすると、画素毎に、その画素を中心とするn画素×n画素のフィルターを用いてフィルター処理を施すことにより低周波成分画像を生成する。
なお、長尺画像としたときに他の小放射線画像に隣接する境界画素及びその近傍の画素については、小放射線領域内に周囲のn画素×n画素の全てが存在していない場合がある。この場合は、該当する画素の画素値を、小放射線画像内の最も位置が近い画素の画素値として推定する。
【0042】
(4)低周波成分画像の画素値から画素毎の散乱線量を推定する。
低周波成分画像の画素値に散乱線含有率を乗算することにより、散乱線量を推定する。
【0043】
次いで、制御部21は、推定した散乱線量に基づいて、散乱線補正により小放射線画像の各画素から除去する(各画素の画素値から減算する)散乱線量を決定する(ステップS103)。
例えば、各画素について推定した散乱線量に予め定められた散乱線除去率を乗算することにより、除去する散乱線量を決定する。
【0044】
次いで、制御部21は、長尺画像として結合された際に隣接することとなる他の小放射線画像との間の境界画素の散乱線補正後の濃度段差を推定する(ステップS104)。
例えば、小放射線画像の境界画素の画素値から除去する散乱線量を引いた値と、隣接する他の小放射線画像の境界画素の画素値から除去する散乱線量を引いた値とを比較して濃度段差を推定する。
例えば、
図6に示すように、放射線検出器P1により取得された小放射線画像の境界画素である画素B1の画素値が500、除去する散乱線量が200であり、放射線検出器P2により取得された小放射線画像の画素B1に隣接する画素B2の画素値が600、除去する散乱線量が250である場合、画素B1の散乱線補正後の画素値(濃度値)は300、画素B2の散乱線補正後の画素値(濃度値)は350となり、画素B1と画素B2の散乱線補正後の濃度段差は50と推定される。
【0045】
次いで、制御部21は、散乱線補正後の当該小放射線画像の境界画素と他の小放射線画像の隣接する境界画素との濃度段差が0となるように、散乱線補正において境界画素の画素値から減算する散乱線量を調整する(ステップS105)。
例えば
図6に示す画素B1と画素B2の場合、画素B1及び画素B2の散乱線補正後の画素値がともに325となるようにするために、画素B1から除去する(減算する)散乱線量を200-25=175に、画素B2から除去する散乱線量を250+25=275
に調整する。
【0046】
なお、ステップS105においては、境界画素から所定範囲内の複数画素についても段階的に境界部付近の濃度が滑らかに変化するように減算する散乱線量を変更してもよい。
また、予め小放射線画像に照射野認識、直接X線領域認識を行ってこれらの被写体外領域をステップS104及びステップS105の濃度段差調整の処理対象領域からはずすことで、処理時間を短縮することとしてもよい。
【0047】
そして、制御部21は、小放射線画像の各画素の画素値から決定した散乱線量(境界画素は調整した散乱線量)を減算して散乱線補正を行い(ステップS106)、散乱線補正後の小放射線画像に粒状抑制処理を施して(ステップS107)、
図4のステップS2に移行する。
【0048】
ここで、本実施形態において、放射線検出器P1における放射線検出器P2との結合箇所には、放射線検出器P2の回路基板部分が重なっている。そのため、放射線検出器P1から送信された小放射線画像の所定領域には放射線検出器P2の回路基板が映り込んでいる。この回路基板が映り込んでいる領域は粒状性が悪い。そこで、粒状抑制処理においては、パネル位置情報に基づいて、小放射線画像における回路基板部分とそれ以外の領域との粒状抑制レベルを変更することが好ましい。また、画素値の分散や標準偏差に基づいてノイズの大きさを推定し、推定したノイズの大きさに基づいて粒状抑制レベルを変更してもよい。
【0049】
図4のステップS2において、制御部21は、複数の小放射線画像を結合する長尺結合処理を実行する(ステップS2)。
ステップS2においては、まず、パネル位置情報に基づいて、散乱線補正済みの複数の小放射線画像を結合して長尺画像を生成する。次いで、結合した小放射線画像間の濃度段差を補正する。例えば、放射線検出器P1~P3には感度差があるため、感度差等により生じる小放射線画像間の濃度段差を補正する。また、放射線検出器P1~P3の位置関係により生じる濃度段差を補正する。例えば、管球に対して手前にある放射線検出器により奥にある放射線検出器への到達放射線量が低下するため、奥にある放射線検出器の低下した到達放射線量に相当する濃度値を画素値に加算する。また、手前に重なっている放射線検出器の基板部分の映り込みがある場合は補正する。
長尺結合処理が終了すると、制御部21は、長尺画像生成処理Aを終了する。
【0050】
このように、第1の実施形態において、制御部21は、複数の小放射線画像の各画素の画素値に含まれる散乱線量を推定し、推定した散乱線量に基づいて画素値から減算する散乱線量を決定し、長尺画像として結合された際に互いに隣接する複数の小放射線画像の境界画素において、決定した散乱線量を散乱線補正により画素値から減算した場合に生じる濃度段差を推定し、推定した濃度段差が0となるように散乱線補正において境界画素の画素値から減算する散乱線量を調整する。そして、決定又は調整された散乱線量を用いて複数の小放射線画像に散乱線補正を施した後、複数の小放射線画像を結合して長尺画像を生成する。したがって、長尺画像において散乱線補正により生じる複数の小放射線画像の境界部分の濃度段差を低減することができる。
【0051】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第1の実施形態においては、
図3に示すように、放射線検出器P1~P3により得られた複数の小放射線画像に散乱線補正処理を実行してから長尺結合処理を実施して結合することとして説明したが、第2の実施形態では、
図7に示すように、まず、放射線検出器P1~P3により得られた複数の小放射線画像に長尺結合処理を実行して結合した後、結合した長尺画像を任意の数、場所で画像分割して散乱線補正処理を実行し、その後、分割した画像を再結合する場合について説明する。第2の実施形態は、濃度段差の目立ちにくいところで分割したい場合や、散乱線補正処理の並列計算が行える場合に、並列計算可能な数に長尺画像を分割して散乱線補正処理の並列処理を行うことで処理速度を高めたい場合等を想定した実施例である。
【0052】
第2の実施形態の構成及び撮影動作は、第1の実施形態で説明したものと同様であるので説明を援用し、以下、第2の実施形態におけるコンソール2の動作について説明する。
【0053】
放射線検出器P1~P3から画像データを受信すると、コンソール2においては、制御部21により、長尺画像生成処理Bが実行される。
図8は、長尺画像生成処理Bの流れを示すフローチャートである。長尺画像生成処理Bは、制御部21と記憶部22に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0054】
まず、制御部21は、長尺結合処理を実行して長尺画像を生成する(ステップS11)。
ステップS11では、まず、パネル位置情報に基づいて、複数の小放射線画像を結合して長尺画像を生成する。次いで、結合した小放射線画像間の濃度段差を補正する。例えば、放射線検出器P1~P3には感度差があるため、感度差等により生じる小放射線画像間の濃度段差を補正する。また、放射線検出器P1~P3の位置関係により生じる濃度段差を補正する。例えば、管球に対して手前にある放射線検出器により奥にある放射線検出器への到達放射線量が低下するため、奥にある放射線検出器の低下した到達放射線量に相当する濃度値を画素値に加算する。また、手前に重なっている放射線検出器の基板部分の映り込みがある場合は補正する。
【0055】
次いで、ステップS11で生成された長尺画像を分割して複数の分割画像を生成する(ステップS12)。
長尺画像の分割位置及び分割枚数は、ユーザーが操作部23により任意に指定することができる。
【0056】
次いで、制御部21は、複数の分割画像のそれぞれに対して、散乱線補正処理を実行する(ステップS13)。
ステップS13においては、第1の実施形態において
図5を用いて説明した処理を複数の分割画像のそれぞれに対して実行する。ただし、ステップS104においては、分割画像に複数の小放射線画像の画像領域が含まれる場合には、分割画像に含まれる複数の小放射線画像の画像領域の境界画素間における散乱線補正後の濃度段差を推定する。ステップS105においては、散乱線補正後の分割画像内の複数の小放射線画像の境界画素間の濃度段差が0となるように、散乱線補正において境界画素の画素値から減算する散乱線量を調整する。
【0057】
散乱線補正処理が終了すると、制御部21は、散乱線補正後の分割画像を再結合し(ステップS14)、長尺画像生成処理Bを終了する。
【0058】
このように、第2の実施形態において、制御部21は、複数の小放射線画像を結合して結合した長尺画像を任意の位置で画像分割して複数の分割画像を生成し、複数の分割画像のそれぞれに対して、各画素の画素値に含まれる散乱線量を推定し、推定した散乱線量に基づいて画素値から減算する散乱線量を決定し、当該分割画像に含まれる複数の小放射線画像の境界画素において決定された散乱線量を画素値から減算した場合に生じる濃度段差を推定し、推定した濃度段差が0となるように散乱線補正において境界画素の画素値から減算する散乱線量を調整する。そして、決定又は調整された散乱線量を用いて分割画像に散乱線補正を施した後、複数の分割画像を再結合する。したがって、長尺画像において散乱線補正により生じる、複数の小放射線画像の境界部分の濃度段差を低減することができる。また、長尺画像を任意の数、場所で分割して散乱線補正処理を実行することができるので、濃度段差の目立ちにくいところで分割したり、散乱線補正処理の並列計算が行える場合に、並列計算可能な数に長尺画像を分割して処理速度を高めたりすることが可能となる。
【0059】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
1枚の放射線画像において、ある部分(例えば、特定構造物)のコントラストを高めたい場合には、その部分については他の領域よりも散乱線除去率を高くすればコントラストを高めることができる(
図9の矩形内参照)。しかし、この場合、散乱線除去率を高くした部分とその他の領域とでは散乱線補正後に濃度段差ができてしまう。
そこで、第3の実施形態においては、このような1枚の放射線画像中の散乱線除去率の違いによって生じる濃度段差を低減する例について説明する。
【0060】
第1の実施形態では、3つの放射線検出器P1~P3を用いて3枚の小放射線画像を取得する構成であったが、第3の実施形態の撮影台11のホルダー11aは、1枚の放射線検出器Pが装着可能である。その他の構成は、第1の実施形態で説明したものと同様であるので説明を援用し、以下、第3の実施形態における動作について説明する。
【0061】
撮影装置1においてホルダー11aに放射線検出器Pがセットされた状態で、コンソール2において操作部23により撮影対象の撮影オーダー情報が選択されると、選択された撮影オーダー情報に応じた撮影条件(放射線照射条件及び放射線画像読取条件)が撮影装置1に送信される。被写体Hのポジショニングが行われて曝射スイッチが押下されると、撮影装置1において、放射線発生装置12により放射線が照射され、放射線検出器Pにより放射線画像が読み取られ、読み取られた放射線画像がコンソール2に送信される。
【0062】
放射線検出器Pから放射線画像を受信すると、コンソール2においては、制御部21により、領域別散乱線補正処理が実行される。
図10は、領域別散乱線補正処理の流れを示すフローチャートである。領域別散乱線補正処理は、制御部21と記憶部22に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0063】
まず、制御部21は、受信した放射線画像に領域認識処理を実行する(ステップS21)。ここでは、予め設定された特定構造物の領域を認識する。領域認識は、例えば、画像解析により自動的に行うこととしてもよいし、ユーザーが操作部23により表示部24に表示された画像上から領域を指定してもよい。
【0064】
次いで、制御部21は、領域認識の結果に基づいて受信した放射線画像に領域分割を行って複数の画像領域に分割する(ステップS22)。
例えば、受信した放射線画像を認識された特定の構造物の領域と、それ以外の領域に分割する。
【0065】
次いで、制御部21は、撮影に用いた撮影オーダー情報に基づいて撮影条件及び撮影部位の情報を取得するとともに、取得した撮影条件及び撮影部位に基づいて、放射線画像の画素毎に散乱線量を推定する(ステップS23)。ステップS23の処理は、第1の実施形態における
図5のステップS102において小放射線領域に対して行った処理と同様であるので説明を援用する。
【0066】
次いで、制御部21は、分割された画像領域毎に散乱線除去率を設定し、各画素について推定した散乱線量及び設定された散乱線除去率に基づいて、放射線画像の各画素から除去する(各画素の画素値から減算する)散乱線量を決定する(ステップS24)。
例えば、例えば、ユーザーによる操作部23の操作により認識された特定構造物の領域の散乱線除去率(0%~100%)の入力を受け付け、特定構造物の領域については入力された散乱線除去率を、それ以外の領域については予め定められた散乱線除去率を設定する。そして各画素について推定した散乱線量に設定された散乱線除去率を乗算することにより、除去する散乱線量を決定する。
【0067】
次いで、制御部21は、互いに隣接する複数の画像領域の境界画素において、散乱線補正後の濃度段差を推定する(ステップS25)。
ステップS25においては、特定構造物の画像領域における境界画素の画素値から除去する散乱線量を引いた値と、隣接する他の画像領域の境界画素の画素値から除去する散乱線量を引いた値とを比較して濃度段差を推定する(
図6参照)。
【0068】
次いで、制御部21は、散乱線補正後の境界画素間の濃度段差が0となるように散乱線補正により減算する散乱線量を調整する(ステップS26)。
【0069】
なお、ステップS26の処理においては、境界画素から所定範囲内の複数画素についても段階的に境界部付近の濃度が滑らかに変化するように減算する散乱線量を変更してもよい。
また、予め照射野認識、直接X線領域認識を行ってこれらの被写体外領域をステップS25及びステップS26の濃度段差調整の処理対象領域からはずすことで、処理時間を短縮することとしてもよい。
【0070】
そして、放射線画像の各画素の画素値から決定した散乱線量(境界画素は調整した散乱線量)を減算して散乱線補正を行い(ステップS27)、散乱線補正後の放射線画像に粒状抑制処理を施して(ステップS28)、領域別散乱線補正処理を終了する。
【0071】
このように、第3の実施形態において、制御部21は、放射線画像を複数の画像領域に分割し、分割された各領域に散乱線除去率を設定し、各画素について推定された散乱線量に設定された散乱線除去率を乗算することにより画素値から減算する散乱線量を決定し、複数の画像領域の境界画素において、決定した散乱線量を散乱線補正により画素値から減算した場合に生じる濃度段差を推定し、推定した濃度段差が0となるように散乱線補正において境界画素の画素値から減算する散乱線量を調整する。そして、決定又は調整された散乱線量を用いて放射線画像に散乱線補正を施す。したがって、放射線画像内の画像領域によって散乱線除去率を変えた場合に、放射線画像中の散乱線除去率の違いによって生じる濃度段差を低減することができる。
【0072】
以上説明したように、コンソール2の制御部21は、被写体を放射線撮影することにより得られた放射線画像の各画素の画素値に含まれる散乱線量を推定し、推定された散乱線量に基づいて散乱線補正において放射線画像における複数の画像領域の境界画素の画素値から減算する散乱線量を決定し、決定した散乱線量を複数の画像領域の境界画素の画素値から減算した場合に生じる濃度段差を推定し、推定した濃度段差が0となるように境界画素の画素値から減算する散乱線量を調整する。そして、調整された散乱線量を用いて放射線画像に散乱線補正を施す。したがって、放射線画像における散乱線補正により生じる濃度段差を低減することができる。
【0073】
なお、上記実施形態における記述内容は、本発明の好適な一例であり、これに限定されるものではない。
【0074】
例えば、上記実施形態においては、本発明を胸部の放射線画像に適用した場合を例にとり説明したが、他の部位を撮影した放射線画像に本発明を適用してもよい。
【0075】
また、上記実施形態においては、撮影装置1を制御するコンソール2が放射線画像処理装置としての機能を備える場合について説明したが、放射線画像処理装置はコンソールとは別体であってもよい。
【0076】
また、上記実施形態においては、好ましい例として濃度段差を0に低減とすることとして説明したが、これに限定されない。
【0077】
また、例えば、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0078】
その他、放射線画像撮影システムを構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0079】
100 放射線画像撮影システム
1 撮影装置
11 撮影台
11a ホルダー
12 放射線発生装置
P1~P3 放射線検出器
2 コンソール
21 制御部
22 記憶部
23 操作部
24 表示部
25 通信部
26 バス