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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/06 20060101AFI20221213BHJP
   B65H 29/58 20060101ALI20221213BHJP
   B65H 9/14 20060101ALI20221213BHJP
   B65H 5/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B65H5/06 B
B65H29/58 B
B65H9/14
B65H5/00 B
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021123161
(22)【出願日】2021-07-28
(62)【分割の表示】P 2020016387の分割
【原出願日】2015-11-02
(65)【公開番号】P2021169375
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中幡 彰伸
(72)【発明者】
【氏名】五十川 貴将
(72)【発明者】
【氏名】千野 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】田村 与作
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-145592(JP,A)
【文献】特開平10-297790(JP,A)
【文献】特開2014-125325(JP,A)
【文献】実開昭61-083641(JP,U)
【文献】特開平03-193452(JP,A)
【文献】特開2000-168985(JP,A)
【文献】特開2004-338234(JP,A)
【文献】特開2004-137048(JP,A)
【文献】特開2002-087634(JP,A)
【文献】特開2014-69939(JP,A)
【文献】特開2013-111838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/06
B65H 29/58-29/64
B65H 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の媒体に液体を用いて画像を印刷する印刷部と、
前記印刷部に向けて前記媒体が搬送される供給経路と、
前記媒体の両面に印刷する場合に、両面のうち片面が印刷された前記媒体をスイッチバックさせて前記供給経路に前記媒体を送るスイッチバック機構と、
前記供給経路を搬送される前記媒体を突き当てさせることで当該媒体の斜行を補正可能な補正ローラー対と、を備え、
前記補正ローラー対は、互いに対向する第一ローラーと第二ローラーとにより前記媒体を挟み込んで回転することで前記媒体を前記印刷部に向けて搬送し、
前記第一ローラーは、前記媒体に対して点接触可能な複数の凸部をその周面に有し、前記供給経路を挟んで前記印刷部が設けられる側とは反対側から前記媒体に接触し、
前記第二ローラーの周面は、前記媒体に対して面接触可能であるとともに、前記供給経路を搬送される前記媒体の先端が接触することにより当該媒体を前記補正ローラー対における前記媒体の挟み込み位置へ案内する案内面として機能することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記第一ローラーの周面に設けられる複数の前記凸部は、前記媒体の搬送方向と交差する幅方向から前記第一ローラーを見たときに、前記第一ローラーの周方向においてその位置がずれるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記補正ローラー対は、少なくとも前記第一ローラーが駆動回転することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記スイッチバック機構は、前記印刷部によって印刷された前記媒体を、前記印刷部によって印刷を実行した位置を経由せずに表裏を反転させるために前記媒体をスイッチバックさせることを特徴とする請求項1乃至請求項のうち何れか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記第一ローラーは、前記媒体の搬送方向と交差する幅方向に複数並んで設けられる歯付ローラーを含んで構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項のうち何れか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記第一ローラーにおける少なくとも前記凸部に接触するクリーニング部材を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項のうち何れか一項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記第一ローラーは前記凸部による山部分と谷部分を有し、前記クリーニング部材が前記第一ローラーの前記谷部分にも接触可能であることを特徴とする請求項に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記クリーニング部材は、駆動回転する前記第一ローラーに対して従動回転することを特徴とする請求項又は請求項に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記クリーニング部材は、駆動回転する前記第一ローラーよりも遅い周速度で従動回転することを特徴とする請求項に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記クリーニング部材は、保水性に優れた発泡体で構成される発泡体ローラーであることを特徴とする請求項又は請求項に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記発泡体ローラーの周面には、前記第一ローラーの前記凸部が潜り込み可能なスリットが設けられていることを特徴とする請求項10に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記スリットは、前記発泡体ローラーの回転方向に対して斜めに延びるよう設けられていることを特徴とする請求項11に記載の印刷装置。
【請求項13】
前記クリーニング部材は、ロールブラシで構成されることを特徴とする請求項又は請求項に記載の印刷装置。
【請求項14】
前記第一ローラーが備える前記凸部は、撥水加工されていることを特徴とする請求項乃至請求項13のうち何れか一項に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送される媒体に両面印刷が可能な印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、印刷装置の一種として、媒体の一例である用紙に液体の一例であるインクを吐出することで用紙に画像等の印刷を行う印刷部を備えたインクジェット式のプリンターが知られている。このようなプリンターにおいては、印刷部よりも用紙の搬送経路の上流から印刷部へ用紙が斜行して搬送されると、用紙に対して正しく印刷されないため、印刷品質が低下する。そこで、こうしたプリンターには、用紙の搬送経路で印刷部よりも上流位置に、その位置よりも上流から搬送されてきた用紙の先端を突き当てさせて用紙の斜行を正すスキュー補正をした後に、当該用紙を印刷部に向けて搬送するレジストローラーが設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-262574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のプリンターにおいては、用紙の表面にインクを吐出して印刷した後にその用紙をスイッチバックさせて裏面にも印刷を行う両面印刷を行う場合がある。そして、その両面印刷における裏面印刷時には、その用紙において先にインクの吐出で印刷がされた用紙の表面がレジストローラーの周面に接触することになる。そのため、裏面印刷時にレジストローラーの周面が汚れてしまい、その汚れが後に続いてレジストローラーを通過する他の用紙に転写する虞があった。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、媒体の斜行を媒体に接触することで補正する補正ローラー対が媒体を汚してしまう虞を低減できる印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する印刷装置は、シート状の媒体に液体を用いて画像を印刷する印刷部と、前記印刷部に向けて前記媒体が搬送される供給経路と、前記媒体の両面に印刷する場合に、両面のうち片面が印刷された前記媒体をスイッチバックさせて前記供給経路に前記媒体を送るスイッチバック機構と、前記供給経路を搬送される前記媒体を突き当てさせることで当該媒体の斜行を補正可能な補正ローラー対と、を備え、前記補正ローラー対は、互いに対向する第一ローラーと第二ローラーとにより前記媒体を挟み込んで回転することで前記媒体を前記印刷部に向けて搬送し、前記第一ローラーは、前記媒体に対して点接触可能な複数の凸部をその周面に有し、前記供給経路を挟んで前記印刷部が設けられる側とは反対側から前記媒体に接触する。
【0007】
この構成によれば、媒体の両面に印刷するにあたって、スイッチバックされた媒体が再び印刷部に向けて搬送される際、すでに印刷された媒体の印刷面に対して補正ローラー対を構成する第一ローラーが接触して媒体が搬送される。ここで、補正ローラー対は、その周面に設けられる凸部により、第一ローラーが媒体の印刷面に対して点接触するため、媒体の印刷面に面接触する構成と比較して、印刷面に接触する面積が小さくなる。このため、媒体の印刷面を介して第一ローラーに液体が付着する虞が低減される。すなわち、第一ローラーを介して次の媒体に液体が転写する虞が低減される。したがって、媒体の斜行を補正する補正ローラー対が媒体を汚してしまう虞を低減できる。
【0008】
上記印刷装置において、前記第一ローラーの周面に設けられる複数の前記凸部は、前記媒体の搬送方向と交差する幅方向から前記第一ローラーを見たときに、前記第一ローラーの周方向においてその位置がそれぞれずれるように配置されていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、第一ローラーの周面において凸部が幅方向に沿って一列に並ぶよう設けられる構成と比較して、補正ローラー対に突き当たる媒体の先端が第一ローラーの凸部と凸部の間に入り込んでしまう虞が低減される。すなわち、補正ローラー対による媒体の斜行を精度よく補正できる。
【0010】
上記印刷装置において、前記補正ローラー対は、少なくとも前記第一ローラーが駆動回転することが好ましい。
この構成によれば、媒体に対して点接触可能な第一ローラーが従動回転する構成と比較して、補正ローラー対が媒体を精度よく搬送できる。
【0011】
上記印刷装置において、前記スイッチバック機構は、前記印刷部により印刷された前記媒体が排出される排出経路から分岐するとともに前記媒体が前記印刷部により印刷された位置を経由せずに前記供給経路と連続する分岐経路を備え、当該分岐経路にて前記媒体をスイッチバックさせることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、媒体の両面に印刷する際、片面を印刷された媒体が排出経路にてスイッチバックされないため、両面印刷される媒体が排出経路を占有しない。そのため、分岐経路にて先の媒体をスイッチバックさせている間に、印刷部に向けて供給経路を搬送される次の媒体に印刷することができ、印刷装置の処理能力を向上できる。
【0013】
上記印刷装置において、前記第二ローラーの周面は、前記媒体に対して面接触可能であるとともに、前記供給経路を搬送される前記媒体の先端が接触することにより当該媒体を前記補正ローラー対における前記媒体の挟み込み位置へ案内する案内面として機能することが好ましい。
【0014】
例えば、補正ローラー対における媒体の挟み込み位置へ向けて、第一ローラーの周面が媒体を案内する構成とすると、第一ローラーは媒体に対して点接触可能な凸部を備えているため、媒体の先端が第一ローラーの周面において引っ掛かってしまい、適切に補正ローラー対における媒体の挟み込み位置へ媒体を案内できない虞がある。この点、上記構成によれば、媒体に対して面接触可能な第二ローラーの周面に媒体を接触させることで、適切に媒体を補正ローラー対における媒体の挟み込み位置へ案内することができる。
【0015】
上記印刷装置において、前記第一ローラーは、前記媒体の搬送方向と交差する幅方向に複数並んで設けられる歯付ローラーを含んで構成されていることが好ましい。
この構成によれば、媒体に対して点接触可能な第一ローラーを簡易に構成できる。
【0016】
上記印刷装置においては、前記第一ローラーにおける少なくとも前記凸部に接触するクリーニング部材を備えることが好ましい。
この構成によれば、媒体を搬送する際に第一ローラーの凸部に液体が付着したとしても、クリーニング部材によりクリーニングすることで、補正ローラー対が媒体を汚してしまう虞を低減できる。
【0017】
上記印刷装置において、前記第一ローラーは前記凸部による山部分と谷部分を有し、前記クリーニング部材が前記第一ローラーの前記谷部分にも接触可能であることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、第一ローラーにおける凸部による山部分と山部分との間にできる谷部分に液体が入り込んだとしても、クリーニング部材により良好にクリーニングできる。
上記印刷装置において、前記クリーニング部材は、駆動回転する前記第一ローラーに対して従動回転することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、クリーニング部材を第一ローラーの駆動回転に対応して従動回転させることで、クリーニング部材自身を駆動回転させる場合に比してクリーニング部材の耐久性を向上できる。
【0020】
上記印刷装置において、前記クリーニング部材は、駆動回転する前記第一ローラーよりも遅い周速度で従動回転することが好ましい。
この構成によれば、第一ローラーとクリーニング部材の回転を相対的に見たとき、第一ローラーが、クリーニング部材に対して凸部を拭われるように回転するため、クリーニング部材によるクリーニングの効果を向上できる。
【0021】
上記印刷装置において、前記クリーニング部材は、保水性に優れた発泡体で構成される発泡体ローラーであることが好ましい。
この構成によれば、保水性に優れているため、クリーニング部材を長期に亘って使用し続けることができる。
【0022】
上記印刷装置において、前記発泡体ローラーの周面には、前記第一ローラーの前記凸部が潜り込み可能なスリットが設けられていることが好ましい。
この構成によれば、クリーニング部材である発泡体ローラーのスリットに凸部を潜り込ませることにより、第一ローラーが有する凸部の周面もクリーニングできる。
【0023】
上記印刷装置において、前記スリットは、前記発泡体ローラーの回転方向に対して斜めに延びるよう設けられていることが好ましい。
この構成によれば、スリットにより、発泡体ローラーの周面には凹凸が設けられる。すなわち、第一ローラーは、凸部が発泡体ローラーの周面に設けられる凹凸を乗り越えるようにして発泡体ローラーに接触するため、クリーニング部材によるクリーニングの効果を向上できる。
【0024】
上記印刷装置において、前記クリーニング部材は、ロールブラシで構成されることが好ましい。
この構成によれば、第一ローラーをクリーニングする際、クリーニング部材として機能するロールブラシが接触することで、クリーニングによる負荷を低減できる。
【0025】
上記印刷装置において、前記第一ローラーが備える凸部は、撥水加工されていることが好ましい。
この構成によれば、第一ローラーの凸部に付着した液体をクリーニングし易くできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】印刷装置の一例であるプリンターの一実施形態について、その全体構造を概略的に示す側面図。
図2】補正ローラー対及びクリーニング部の斜視図。
図3】補正ローラー対を構成する補正駆動ローラー及び補正従動ローラーとクリーニング部の斜視図。
図4】補正駆動ローラーを構成する歯付ローラーの斜視図。
図5】歯付プレートとホルダーを含んで構成される歯付ローラーの分解斜視図。
図6図5に示す状態から歯付プレートとホルダーとを重ね合わせた状態を示す斜視図。
図7】歯付プレートが装着されたホルダーを示す斜視図。
図8】歯付ローラーを幅方向から見たときの側面図。
図9図8におけるA部分を示す拡大図。
図10】補正駆動ローラー及びクリーニング部材を搬送方向下流側から見たときの正面図。
図11】歯付プレートとクリーニング部材との鉛直方向における位置関係を示す概略図。
図12図11におけるB部分の拡大図。
図13】第3供給経路を搬送される用紙が補正ローラー対を構成する補正従動ローラーに突き当たった状態を概略的に示す側面図。
図14】第3供給経路を搬送される用紙が補正ローラー対のニップ位置に案内された状態を概略的に示す側面図。
図15】第3供給経路を搬送される用紙が補正ローラー対により斜行を補正されるときの状態を概略的に示す側面図。
図16】第3供給経路を搬送される用紙が補正ローラー対により斜行が補正されたうえで印刷部に向けて搬送されるときの状態を概略的に示す側面図。
図17】変形例としての歯付プレートに対してクリーニング部材が接触したときの状態を概略的に示す側面図。
図18図17におけるC部分の拡大図。
図19】本実施形態における歯付プレートに対してクリーニング部材が接触したときの歯付プレートの歯の山部分と谷部分とに対するクリーニング部材の周面の位置状態を示す概略図。
図20図19におけるD部分の拡大図。
図21】補正駆動ローラーの変形例であるノンスリップローラーの斜視図。
図22】ノンスリップローラーの一部分の拡大図。
図23】補正駆動ローラーの変形例であるセラミックローラーの一部を模式的に示す断面図。
図24】周面に環状のスリットが設けられた発泡体ローラーが歯付ローラーに接触した状態を示す正面図。
図25】周面に螺旋状のスリットが設けられた発泡体ローラーが歯付ローラーに接触した状態を示す正面図。
図26】周面に螺旋状のスリットが設けられた発泡体ローラーが歯付ローラーに接触した状態を示す正面図。
図27】周面に二種類の螺旋状のスリットが設けられた発泡体ローラーが歯付ローラーに接触した状態を示す正面図。
図28】周面に軸方向に沿うスリットが設けられた発泡体ローラーが歯付ローラーに接触した状態を示す正面図。
図29】クリーニング部材の変形例であるロールブラシの斜視図。
図30】ロールブラシが歯付ローラーに接触した状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、印刷装置の一実施形態として、液体の一例であるインクを吐出する印刷部を備え、シート状の媒体の一例である用紙にインクを吐出して文字や図形などを含む画像を印刷するインクジェット式のプリンターについて、図を参照して説明する。なお、本実施形態におけるプリンターは、水を溶媒とする水系インクを用いて媒体に印刷をする。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の印刷装置の一例としてのプリンター11は、複数の外装ケースなどからなる略直方体を呈する筐体12を装置本体として有し、この筐体12内に、図1に太い一点鎖線で示すように、用紙14が搬送される搬送経路13を備える。そして、この搬送経路13に沿って、用紙14を挟み込んで回転することで搬送する複数のローラー対と、用紙14を鉛直方向Zにおける重力方向-Z側(下側)から支持しつつ搬送する搬送ベルト51と、搬送される用紙14に対してインクを吐出する印刷部18とが、筐体12に装着されている。
【0029】
本実施形態では、印刷部18は、用紙14の搬送方向Yと交差(ここでは直交)する幅方向Xを長手方向とし、この長手方向に亘ってインクを同時に吐出可能な液体吐出ヘッドを有する所謂ラインヘッドとされている。なお、以降の説明を容易にするため、幅方向Xのうち、搬送方向Yの上流側から見て左方向(紙面の表面側に向く方向)を+X方向とし、搬送方向Yの上流側から見て右方向(紙面の裏面側に向く方向)を-X方向とする。ラインヘッドとされた印刷部18は、搬送ベルト51に支持された状態で搬送される用紙14に向かって反重力方向+Z側(上側)からインクを吐出することにより印刷を行う。搬送経路13は、印刷部18よりも搬送方向Y上流側の第1供給経路21及び第2供給経路22と、印刷部18よりも搬送方向Y下流側の第3供給経路23、分岐経路24、及び排出経路25とにより構成されている。
【0030】
第1供給経路21は、筐体12の重力方向-Z側となる底部に挿抜可能に備えられた用紙カセット27と、印刷部18とを結ぶ経路である。そして、第1供給経路21には、用紙カセット27に積層状態で載置された用紙14のうち、最上位の用紙14を送り出すピックアップローラー28と、このピックアップローラー28により送り出された用紙14を1枚ずつ分離する分離ローラー29とが設けられている。さらに、分離ローラー29よりも搬送方向Y下流側には、第1供給ローラー対31が設けられている。
【0031】
第2供給経路22は、筐体12の一側面に備えられたカバー12aを開けることによって露出する挿入部12bと、印刷部18とを結ぶ経路である。そして、第2供給経路22には、挿入部12bから挿入された用紙14を挟持して搬送する第2供給ローラー対32が設けられている。さらに、搬送経路13において、第1供給経路21と第2供給経路22と第3供給経路23とが合流した位置と印刷部18が設けられる位置との間には、用紙14の斜行を補正する補正ローラー対35が設けられている。また、第3供給経路23には、第3供給ローラー対33が設けられている。
【0032】
第3供給経路23は、印刷部18を囲うように設けられた経路であって、一旦印刷部18を通過した用紙14を、再び印刷部18よりも上流側へ戻すための経路である。そして、印刷部18よりも下流側には、分岐機構36が設けられていると共に、排出経路25から分岐した分岐経路24には、正転と逆転の双方に回転が可能な分岐ローラー対37が設けられている。この分岐経路24は、分岐機構36が設けられた位置で排出経路25と連続する一方、用紙14が印刷部18により印刷される位置である印刷部18と対向する位置を経由することなく第3供給経路23と連続している。
【0033】
すなわち、第1乃至第3供給経路21、22、23は、用紙14が印刷部18に向けて搬送される供給経路20を構成する。そして、供給経路20を搬送される用紙14は、回転が停止した補正ローラー対35にその先端が突き当たることで、搬送方向Yに対する傾き、すなわち斜行が補正される。斜行が補正された用紙14は、その後の補正ローラー対35の回転駆動によって、印刷部18へ搬送される。
【0034】
排出経路25は、印刷済みの用紙14が排出される排出口38と、印刷部18とを結ぶ経路である。なお、排出口38から排出された用紙14は載置台39に載置される。そして、排出経路25には、少なくとも1つの搬送ローラー対(本実施形態では、第1搬送ローラー対41~第5搬送ローラー対45)が設けられている。さらに、第3供給経路23にも第6搬送ローラー対46、及び第7搬送ローラー対47が設けられている。これらの第1搬送ローラー対41~第7搬送ローラー対47はインクが付着した印刷済みの用紙14を挟持して搬送する。
【0035】
すなわち、第1搬送ローラー対41~第7搬送ローラー対47は、それぞれ、駆動源の駆動力に基づいて回転する円柱状の搬送駆動ローラー48と、搬送駆動ローラー48の回転に伴って従動回転する搬送従動ローラー49とにより構成されている。また、搬送従動ローラー49は、搬送駆動ローラー48と対をなさずに単独でも設けられている。すなわち、搬送従動ローラー49は、第3供給経路23、分岐経路24、排出経路25において、用紙14の印刷が施された面である印刷面(すなわち、液体の一例であるインクが吐出されて付着する面)が通過する側に設けられている。また、搬送従動ローラー49は、搬送方向Yにおいて第1搬送ローラー対41~第7搬送ローラー対47の各搬送ローラー対の間にも設けられており、各搬送ローラー対と印刷部18との間にも設けられている。一方、搬送駆動ローラー48は、用紙14の印刷が施されていない非印刷面、もしくは両面印刷された用紙14では先に印刷された面が通過する側に設けられている。
【0036】
本実施形態では、印刷部18に対峙する搬送ベルト51が、その外周面となるベルト面に用紙14を静電吸着によって支持した状態で、周回することによって用紙14を搬送する構成とされている。すなわち、搬送ベルト51は、2つのローラー間に張架された無端状のベルトであって、2つのローラーのうちの一方のローラーは駆動源によって回転駆動される駆動ローラー52とされ、他方のローラーはベルトの周回に伴って回転する従動ローラー53とされている。そして、搬送ベルト51は、駆動ローラー52の回転に伴って周回し、この周回時においてベルト面に接触する図示しない帯電ローラーによって搬送ベルト51に静電気が帯電する。搬送ベルトは、この帯電した静電気によって、駆動ローラー52と従動ローラー53との間に形成される反重力方向+Z側の平坦なベルト面に用紙14を吸着し、吸着した用紙14を印刷部18に対峙させながら搬送方向Yへ搬送する。
【0037】
また、プリンター11は、用紙14に両面印刷する際に、片面が印刷された用紙14をスイッチバックさせて供給経路20に送るスイッチバック機構40を備えている。本実施形態において、スイッチバック機構40は、分岐経路24、分岐機構36及び分岐ローラー対37で構成されている。分岐機構36は、例えばフラップなどで構成され、排出経路25を搬送される用紙14を分岐経路24へ案内可能であるとともに、分岐経路24を搬送される用紙14を第3供給経路23に案内可能に設けられている。すなわち、印刷部18により片面を印刷された用紙14は、排出経路25から分岐する分岐経路24へ分岐機構36により案内される。そして、分岐経路24に収容された用紙14は、分岐ローラー対37が逆転駆動することで分岐経路24を逆搬送され、分岐機構36により第3供給経路23へ案内される。つまり、分岐ローラー対37は、分岐経路24にて用紙14をスイッチバックさせる。スイッチバック機構40によりスイッチバックされた用紙14は、印刷部18と対向する位置を経由せずに第3供給経路23を搬送されることで、印刷面が重力方向-Z側を向く姿勢にされる。換言すると、両面印刷される用紙14は、片面が印刷された後、鉛直方向Zにおける姿勢が反転されて、再び印刷部18に向けて搬送される。
【0038】
供給経路20の下流側に設けられる補正ローラー対35は、鉛直方向Zにおいて並ぶ補正駆動ローラー(第一ローラー)61と補正従動ローラー(第二ローラー)62を含んで構成されている。補正駆動ローラー61は、供給経路20を挟んで印刷部18とは反対側となる位置、すなわち補正ローラー対35において重力方向-Z側に設けられている。また、補正駆動ローラー61は、図示しないモーター等の駆動源によって駆動回転可能に設けられている。すなわち、補正駆動ローラー61は、図1において反時計回り方向に回転される。一方、補正従動ローラー62は、補正ローラー対35において反重力方向+Z側に設けられている。また、補正従動ローラー62は、補正駆動ローラー61の回転に対して従動回転可能に設けられている。すなわち、補正従動ローラー62は、図1において時計回り方向に回転される。補正ローラー対35は、供給経路20を搬送される用紙14を鉛直方向Zにおいて挟み込んだ状態で回転することで、印刷部18に向けて搬送する。そして、筐体12内には、補正駆動ローラー61をクリーニング可能なクリーニング部63が設けられている。
【0039】
図2に示すように、補正ローラー対35を構成する補正駆動ローラー61は、幅方向Xに延びる駆動軸64と、この駆動軸64に挿通される複数の歯付ローラー65とを含んで構成されている。歯付ローラー65は、駆動軸64に固定され、駆動軸64と一体回転可能に設けられている。本実施形態において、歯付ローラー65は、幅方向Xにおいて所定の間隔をあけて十個配置されている。一方、この補正駆動ローラー61に対して反重力方向+Z側から接触する補正従動ローラー62は、幅方向Xに延びる従動軸66と、この従動軸66に挿通される複数のローラー67とを含んで構成されている。このローラー67は、従動軸66に回転可能に支持され、幅方向Xにおいて歯付ローラー65と対向するように計十個配置されている。なお、ローラー67は、その周面が凹凸のない一様な円筒面となるように設けられ、搬送される用紙14に対して従動回転しつつ面接触可能な構成となっている。
【0040】
また、補正従動ローラー62は、従動軸66においてローラー67が配置される位置とは異なる複数箇所に、反重力方向+Z側に向けて延びる例えばコイルばねなどの付勢部材68を備えている。本実施形態において、付勢部材68は、幅方向Xに六個設けられていて、補正従動ローラー62を補正駆動ローラー61に向けて付勢している。
【0041】
図2及び図3に示すように、補正駆動ローラー61に対して重力方向-Z側には、クリーニング部63が設けられている。クリーニング部63は、補正駆動ローラー61をクリーニングするクリーニング部材69と、クリーニング部材69を支持するアーム部70と、アーム部70を支持する支持板71を含んで構成されている。支持板71は、幅方向Xが長尺となる部材であり、その幅方向Xにおける両端部には、搬送方向Y下流側に向けて屈曲する屈曲部72がそれぞれ設けられている。また、支持板71には、これらの屈曲部72を貫くように幅方向Xに延びる一本の軸73が設けられている。
【0042】
そして、この軸73により支持板71に対して回動可能に支持されるアーム部70が、支持板71において幅方向Xにおける両端部とその中央部の計三箇所に設けられている。ここで、複数のアーム部70において、軸73に支持される側を基端側とすると、その反対側となる先端側には、幅方向Xに延びる一本の軸74が貫通して設けられている。この軸74には、円柱状のクリーニング部材69を挿通されている。クリーニング部材69は、幅方向Xにおいて複数設けられるアーム部70の間に設けられ、軸74を介してアーム部70に支持されている。すなわち、本実施形態において、クリーニング部材69は二個設けられ、一のクリーニング部材69は、その周面が対向する五個の歯付ローラー65に接触している。
【0043】
クリーニング部材69は、軸74により、補正駆動ローラー61の駆動回転に従動回転可能に設けられている。すなわち、クリーニング部材69は、図1において時計回り方向に回転される。また、幅方向Xにおいて支持板71の両端に位置するアーム部70には、それぞれ巻きばね75が設けられている。この巻きばね75によって、アーム部70は、その先端が補正駆動ローラー61に向けて付勢されている。すなわち、アーム部70の先端に設けられるクリーニング部材69が、歯付ローラー65に向けて付勢されている。
【0044】
図4に示すように、歯付ローラー65は、駆動軸64が挿通されるための貫通孔76と、歯付ローラー65の周面から外側に向けて突出する複数の歯77を備えている。すなわち、貫通孔76の径は、駆動軸64の外径と略同一となっている。歯付ローラー65の周面に設けられる歯77は、駆動軸64とともに回転する歯付ローラー65の回転方向、すなわち歯付ローラー65の周方向に沿って列を形成するように設けられ、幅方向Xにおいて複数列並べて設けられている。本実施形態においては、歯付ローラー65の周面に歯77の列が六列設けられ、一列に並ぶ歯77の総数が100歯で、幅方向Xにおける歯77の列の配置間隔が2mmとなっている。この歯付ローラー65は、周面に設けられた歯77の先端が用紙14に対して接触することで用紙14を搬送する。すなわち、歯付ローラー65が備える歯77は、用紙14に対して点接触可能な凸部として機能する。換言すると、補正駆動ローラー61は、用紙14に対して点接触可能な凸部を備えている。
【0045】
また、幅方向Xにおいて、歯付ローラー65の+X側となる面には、貫通孔76の縁から歯付ローラー65の径方向外側に窪んだ矩形状の窪み78が、互いに対向する二位置に設けられている。歯付ローラー65を挿通する駆動軸64には、幅方向Xにおいて歯付ローラー65の+X側への移動を規制する止め棒79が、駆動軸64の長手方向(幅方向X)と交差する方向に貫通されている。そして、歯付ローラー65は、この止め棒79が窪み78に係合する態様で駆動軸64に挿通されている。その一方で、歯付ローラー65の-X側への移動は、駆動軸64に嵌められた止め輪80によって規制されている。すなわち、止め棒79と止め輪80によって両端が係止されることで、歯付ローラー65は、駆動軸64においてその位置がずれないよう固定されている。また、窪み78に止め棒79が係合することにより、歯付ローラー65は駆動軸64と一体回転可能に固定されている。
【0046】
図5及び図6に示すように、補正駆動ローラー61を構成する歯付ローラー65は、それぞれ複数設けられる円環状のホルダー81と円盤状の歯付プレート82とで構成されている。本実施形態においては、一の歯付ローラー65は、七個のホルダー81と、六個の歯付プレート82とで構成され、幅方向Xにおいて歯付プレート82がホルダー81の間に位置するよう交互に並んで配置されている。このホルダー81は、それぞれ歯付プレート82を保持可能に設けられ、本実施形態においては、幅方向Xにおいて-X側となる端部に位置する一のホルダー81以外の六個のホルダー81に、それぞれ歯付プレート82が、ホルダー81の-X側となる面に装着されて保持されている。また、複数のホルダー81のうち、幅方向Xにおいて+X側の端部に位置する一のホルダー81の+X側となる面には、止め棒79が係合する窪み78が設けられている。そして、各ホルダー81には、駆動軸64が挿通されるための貫通孔76が設けられている。一方、歯付プレート82には、ホルダー81の貫通孔76よりも径の大きな孔83がそれぞれ設けられている。
【0047】
図7に示すように、複数のホルダー81において、歯付プレート82が装着される側(-X側)の面には、ホルダー81の外径よりも小さな外径を有する円環状のボス84が、貫通孔76の縁から突出するように形成されている。このボス84にも、貫通孔76が貫通して設けられている。また、ボス84には、その外周面からホルダー81の径方向内側に向けて凹んだ凹み85が複数形成されている(本実施形態においては三個)。そして、このボス84が、歯付プレート82の孔83を挿通することで、歯付プレート82がホルダー81に装着されている。
【0048】
歯付プレート82は、その外周に亘って径方向外側に突出する歯77が連続的に設けられ、孔83の縁には径方向内側に向けて延びる爪86が設けられている。さらに、歯付プレート82が有する孔83の縁において、その爪86と異なる位置には、孔83の縁から径方向内側を指向する複数の接触片部87が切り欠き形成されている。また、歯付プレート82の孔83の径は、ホルダー81のボス84の外径と略同一に設けられている。そして、歯付プレート82は、爪86がボス84の凹み85に係合した状態でホルダー81に装着されることで、歯付プレート82はホルダー81に対して一体回転可能に取り付けられている。なお、接触片部87は、ホルダー81に対して圧入可能に設けられる歯付プレート82のガタつきを抑制し、ホルダー81に対する同軸度の精度を向上させるために設けられている。
【0049】
図5図6及び図7に示すように、幅方向Xの+X側となる端部に位置する一のホルダー81以外の六個のホルダー81において、+X側となる面には、-X側に向かって円形状に窪んだ窪み部88が形成されている。この窪み部88にもボス84と同様に、貫通孔76が貫通して設けられている。そして、窪み部88は、隣り合う別のホルダー81のボス84と嵌め合い可能に設けられている。すなわち、窪み部88の径は、ボス84の外径と略同一になっている。また、ボス84に設けられる凹み85に対応するよう、窪み部88の内周面には、ホルダー81の径方向内側に向けて突出する係合突起89が複数形成されている。そして、ボス84と窪み部88とを嵌め合わせることにより、隣り合うホルダー81同士が連結される。また、凹み85に係合突起89が係合することで、ホルダー81同士が一体回転可能に連結される。
【0050】
すなわち、歯付ローラー65は、歯付プレート82を介在させた状態で隣り合うホルダー81同士が連結されることで構成されている。したがって、歯付ローラー65の周面に設けられる歯77は、歯付プレート82によって構成され、歯付ローラー65の周面は、ホルダー81の周面で構成されている。
【0051】
図8及び図9に示すように、ホルダー81と歯付プレート82が幅方向Xに重ね合わされて構成される歯付ローラー65は、幅方向Xから見たときに、歯付ローラー65の周面においてそれぞれの歯77が完全に重ならないよう歯77の位置がずれて設けられている。すなわち、歯付ローラー65の周面に設けられるすべての歯77が、幅方向Xから見たときに視認可能となるよう配置されている。本実施形態においては、幅方向Xから見たときの歯付ローラー65の周方向における歯77と歯77の間隔が、等間隔となるように配置されている。すなわち、一の歯付プレート82が有する歯77と歯77のピッチPを六等分するようにその他五枚の歯付プレート82の歯77が配置されている。なお、本実施形態においては、歯77と歯77のピッチPの長さが0.6mmとなっている。
【0052】
また、歯付プレート82において、歯77の先端を山部分90とすると、山部分90と山部分90の間には溝状の谷部分91が設けられる。この谷部分91は、歯付ローラー65の径方向において、ホルダー81の周面よりも外側となる位置に設けられている。なお、本実施形態では、歯付ローラーの径方向において、ホルダー81の周面から歯77の山部分90までの距離L1が0.48mmであって、歯77の谷部分91から山部分90までの距離L2が0.41mmとなっている。また、用紙14に点接触する歯77の形状は、その先端角度が45度以上となる三角形状であることが好ましく、本実施形態においてはその山部分90の角度が60度となるよう構成されている。
【0053】
図10に示すように、補正駆動ローラー61を構成する歯付ローラー65には、鉛直方向Zにおいて重力方向-Z側からクリーニング部材69が接触している。歯付ローラー65に対して付勢されるクリーニング部材69は、例えば、発泡プラスチックなどの柔軟性及び保水性に優れた材料(発泡体)で構成され、歯付ローラー65に付着したインクを拭き取り可能となっている。本実施形態において、クリーニング部材69は、発泡ウレタンからなる発泡体ローラーで構成されていて、その気孔径が10~30μmで、気孔率が75~90%、保水率が300~400%となっている。なお、保水率とは、乾燥状態における試料を飽和状態まで含水させたときの重量増加率のことで、式にすると、(保水率)=[{(含水飽和状態の試料重量)-(乾燥状態の試料重量)}/{(乾燥状態の試料重量)}×100]で表される。このクリーニング部材69は、補正駆動ローラー61の回転方向に沿って歯付ローラー65の周面に並んだ歯77が食い込むようにして、歯77の先端に接触している。また、クリーニング部材69は、歯付ローラー65に対して歯77にだけでなくホルダー81の周面にも接触している。すなわち、クリーニング部材69は、補正駆動ローラー61の周面及び歯77に接触することで補正駆動ローラー61をクリーニングする。
【0054】
図11及び図12に示すように、クリーニング部材69が接触する歯付ローラー65から歯付プレート82をピックアップして、歯付プレート82とクリーニング部材69を幅方向Xから見ると、クリーニング部材69の周面の一部が、歯付プレート82の歯77の谷部分91よりも歯付プレート82の径方向内側に位置している。すなわち、クリーニング部材69は、幅方向Xから見たときに、歯付プレート82に対して、クリーニング部材69の周面が歯付プレート82における歯77の谷部分91を径方向内側に越えるように、つまりオーバーラップするような位置関係となっている。
【0055】
次に、上記のように構成されたプリンター11の作用、特に補正ローラー対35に注目して説明する。
図13に示すように、両面印刷される用紙14は、印刷部18により片面が印刷された後、スイッチバック機構40によりスイッチバックされて、第3供給経路23を搬送される。そして、第3供給経路23を搬送されることで印刷面が重力方向-Z側を向く姿勢とされる用紙14は、第3供給ローラー対33により、第1乃至第3供給経路21、22、23の合流点を通過し、供給経路20の下流側に配置される補正ローラー対35まで搬送されたのち、回転が停止した補正ローラー対35にその先端が突き当てられる。ここで、補正ローラー対35は、幅方向Xから見たときに、補正従動ローラー62が供給経路20に被さるよう配置されているため、供給経路20を搬送される用紙14の先端は、まず補正従動ローラー62に接触する。
【0056】
図14に示すように、補正従動ローラー62の周面に接触した用紙14は、その先端が補正従動ローラー62の周面に沿って搬送方向Y下流側に案内されて、補正駆動ローラー61と補正従動ローラー62とで用紙14が挟み込まれる挟み込み位置、すなわち補正ローラー対35のニップ位置Nまで導かれる。つまり、補正従動ローラー62の周面は、用紙14の先端を補正ローラー対35のニップ位置Nに案内する案内面として機能する。なお、補正従動ローラー62の周面は、用紙14に対して面接触可能とする凹凸のない一様な円筒面で設けられているため、用紙14の先端が補正従動ローラー62の周面で引っかかってしまう虞が少ない。そして、先端が補正従動ローラー62の周面に案内された用紙14は、第3供給ローラー対33の回転により送り出されて、その先端が補正ローラー対35のニップ位置Nとなるニップ箇所に突き当てられる。
【0057】
図15に示すように、補正ローラー対35のニップ位置Nとなるニップ箇所に突き当てられた用紙14は、第3供給ローラー対33がそのまま継続して回転することで、その先端から基端側の部分が供給経路20内で搬送方向Yに沿って波打つように撓む。ニップ箇所に突き当てられたままの状態で用紙14が撓むことで、補正ローラー対35に対して接触する用紙14の接触位置を支点に用紙14の先端から基端側が回動される。そして、用紙14の先端から基端側が回動することで、用紙14は、幅方向Xに長尺である補正ローラー対35のニップ位置Nに先端合わせされて、用紙14の搬送方向Yに対する傾き、所謂斜行が補正される。
【0058】
図16に示すように、用紙14の先端が補正ローラー対35のニップ位置Nに合わせられた後、停止していた補正ローラー対35が回転することで、用紙14の傾きが補正された状態のまま用紙14が補正ローラー対35に挟み込まれて印刷部18に向けて搬送される。また、第1及び第2供給経路21、22を搬送される用紙14も同様に、その先端が補正従動ローラー62の周面により補正ローラー対35のニップ位置Nに案内され、ニップ位置Nにおいて補正ローラー対35に突き当たることで、斜行が補正される。
【0059】
以上説明したように、補正ローラー対35は、用紙14の斜行を補正するために、突き当てられる用紙14の先端がニップ位置Nを通過しないよう用紙14を挟み込む力が他のローラー対と比較して強く構成されていることが一般的である。つまり、補正ローラー対35は、両面印刷する用紙14を搬送する際、強く挟み込んでしまうため、片面が印刷された用紙14の印刷面と接触する補正駆動ローラー61にインクが付着してしまうことが考えられる。補正駆動ローラー61にインクが付着してしまうと、次に印刷部18に向けて供給経路20を搬送される用紙14が、補正ローラー対35に挟み込まれる際に汚されてしまうことが有り得る。
【0060】
特に、本実施形態においては、印刷部18が吐出するインクが水系インクであるため、溶媒が有機溶剤等で構成される油系インクと比べて、インクの乾燥に時間を要する。このため、用紙14の片面に吐出されたインクの量によっては、用紙14が再び補正ローラー対35に到達するまでの間にインクが乾き切らないことがある。つまり、本実施形態のように水系インクを用いるプリンター11においては、補正駆動ローラー61に対するインクの付着が顕著となる。この点、本実施形態の補正ローラー対35は、用紙14に対して両面印刷する際に用紙14の印刷面と接触する補正駆動ローラー61が、用紙14に対して点接触可能な構成であるため、インクが付着してしまう虞が低減されている。
【0061】
また、仮に補正駆動ローラー61にインクが付着したとしても、補正駆動ローラー61の回転に伴って従動回転されるクリーニング部材69により、補正駆動ローラー61がクリーニングされる。このとき、クリーニング部材69は、補正駆動ローラー61を構成する歯付ローラー65の歯77だけでなくその周面にも接触する。ここで、回転する補正駆動ローラー61において、その周面の周速度は、歯77の先端部分(山部分90)の周速度よりも遅い。このため、補正駆動ローラー61の周面と接触するクリーニング部材69は、その摩擦により、補正駆動ローラー61の歯77の先端部分(山部分90)の周速度よりも遅い周速度で従動回転する。
【0062】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)用紙14の両面に印刷するにあたって、スイッチバックされた用紙14が再び印刷部18に向けて搬送される際、すでに印刷された用紙14の印刷面に対して補正ローラー対35を構成する補正駆動ローラー61が接触して用紙14が搬送される。ここで、補正ローラー対35は、その周面に設けられる歯77により、補正駆動ローラー61が用紙14の印刷面に対して点接触するため、用紙14の印刷面に面接触する構成と比較して、印刷面に接触する面積が小さくなる。このため、用紙14の印刷面を介して補正駆動ローラー61にインクが付着する虞が低減される。すなわち、補正駆動ローラー61を介して次の用紙14にインクが転写する虞が低減される。したがって、用紙14の斜行を補正する補正ローラー対35が用紙14を汚してしまう虞を低減できる。
【0063】
(2)補正駆動ローラー61の周面において歯77が幅方向Xに沿って一列に並ぶよう設けられる構成と比較して、補正ローラー対35に突き当たる用紙14の先端が補正駆動ローラー61の歯77と歯77の間に入り込んでしまう虞が低減される。すなわち、補正ローラー対35による媒体の斜行を精度よく補正できる。
【0064】
(3)用紙14に対して点接触可能な補正駆動ローラー61が従動回転する構成と比較して、補正ローラー対35が用紙14を精度よく搬送できる。
(4)用紙14の両面に印刷する際、片面を印刷された用紙14が排出経路25にてスイッチバックされないため、両面印刷される用紙14が排出経路25を占有しない。そのため、分岐経路24にて先の用紙14をスイッチバックさせている間に、印刷部18に向けて供給経路20を搬送される次の用紙14に印刷することができ、プリンター11の処理能力を向上できる。
【0065】
(5)例えば、補正ローラー対35における用紙14の挟み込み位置、つまりニップ位置Nへ向けて、補正駆動ローラー61の周面が用紙14を案内する構成とすると、補正駆動ローラー61は用紙14に対して点接触可能な歯77を備えているため、用紙14の先端が補正駆動ローラー61の周面において引っ掛かってしまい、適切に補正ローラー対35における用紙14のニップ位置Nへ用紙14を案内できない虞がある。この点、本実施形態におけるプリンター11は、用紙14に対して面接触可能な補正従動ローラー62の周面に用紙14を接触させることで、適切に用紙14を補正ローラー対35における用紙14の挟み込み位置へ案内することができる。
【0066】
(6)歯付ローラー65により、用紙14に対して点接触可能な補正駆動ローラー61を簡易に構成できる。
(7)用紙14を搬送する際に補正駆動ローラー61の歯77にインクが付着したとしても、クリーニング部材69によりクリーニングすることで、補正ローラー対35が用紙14を汚してしまう虞を低減できる。
【0067】
(8)クリーニング部材69を補正駆動ローラー61の駆動回転に対応して従動回転させることで、クリーニング部材69自身を駆動回転させる場合に比してクリーニング部材69の耐久性を向上できる。
【0068】
(9)補正駆動ローラー61とクリーニング部材69の回転を相対的に見たとき、その周速度差により、補正駆動ローラー61が、クリーニング部材69に対して歯77を拭われるように回転するため、クリーニング部材69によるクリーニングの効果を向上できる。
【0069】
(10)クリーニング部材69として機能する発泡体ローラーは、保水性に優れているため、クリーニング部材69を長期に亘って使用し続けることができる。
(11)クリーニング部材69が、巻きばね75により付勢されることで補正駆動ローラー61に常に接触しているため、仮に補正駆動ローラー61にインクが転写したとしてもすぐにクリーニングができ、補正駆動ローラー61の周面においてインクが堆積したり、固着したりしてしまう虞を低減できる。
【0070】
(12)補正ローラー対35において、用紙14に対して点接触可能な補正駆動ローラー61が駆動回転するため、用紙14に対する接触面積が小さくとも用紙14を適切に搬送できる。
【0071】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
図17及び図18に示すように、上記実施形態において、歯付ローラー65を構成する歯付プレート82は、クリーニング部材69が歯77の山部分90だけでなく谷部分91にも接触可能となるよう設けられていてもよい。図18に示すように、この変形例における歯付プレート82は、歯77の山部分90と谷部分91との距離L2が、図8及び図9に示す実施形態の歯付プレート82と比較して短くなるよう谷部分91が底上げされている。具体的には、図8及び図9に示す実施形態の歯付ローラー65の歯77の谷部分91から山部分90までの距離L2が0.41mmであるのに対し、図17及び図18に示す変形例の歯付プレート82の歯77の谷部分91から山部分90までの距離L2が0.15mmとされている。なお、ホルダー81の周面から歯77の山部分90までの距離L1は、どちらも0.48mmで共通である。
【0072】
図19及び図20に示すように、本実施形態における歯付プレート82は、歯77の山部分90と谷部分91との距離L2が長いために、たとえクリーニング部材69が歯77に食い込むよう接触しても、谷部分91に届かないことがある。すなわち、上記変形例によれば、上記実施形態での効果に加えて以下の効果を得ることができる。
【0073】
(13)補正駆動ローラー61における歯77と歯77の間にインクが入り込んだとしても、クリーニング部材69によりクリーニングできる。
また、歯77の谷部分91にクリーニング部材69が接触する構成を実現する手段は、歯77のピッチPの長さを変更することで実現してもよいし、クリーニング部材69をより柔軟性に優れた材料で構成することで実現してもよい。他にも、歯77の形状を変更することで実現してもよいし、クリーニング部材69の周面に凹凸を設けるなどして実現してもよい。このような構成を実現するためには、クリーニング部材69の形状、柔軟性、外径の大きさ、クリーニング部材69を歯付ローラー65に向けて付勢するアーム部70の付勢力や、歯付プレート82の歯77の形状、ピッチPの長さ、歯77の突出量等、様々なパラメーターが関係している。
【0074】
図21及び図22に示すように、上記実施形態において、補正駆動ローラー61は、その周面の一部が粗面となるよう加工された金属製のローラー、所謂ノンスリップローラー92で構成されていてもよい。このノンスリップローラー92は、例えばSUSなどで構成された円柱状をなす一本のローラーであって、その周面において幅方向Xにおける複数箇所に粗面部93が設けられている。この変形例においては、粗面部93が、ノンスリップローラー92の幅方向Xにおいて所定の間隔をあけて十箇所設けられている。粗面部93には、ノンスリップローラー92の周面に亘ってスパイク状をなす複数の突起94が設けられている。すなわち、粗面部93におけるこの突起94が、用紙14に対して点接触可能な凸部として機能する。
【0075】
また、図23に示すように、補正駆動ローラー61は、その周面に複数のセラミック粒95が設けられたセラミックローラー96であってもよい。このセラミックローラー96は、樹脂や金属等で構成される基材97の周面に形成された結合剤層98に複数のセラミック粒95が、結合剤層98の表面から突出するよう埋め込まれている。すなわち、このセラミック粒95が用紙14に対して点接触可能な凸部として機能し、結合剤層98の表面が、補正駆動ローラー61の周面として機能する。なお、セラミック粒95の粒径は、100μm~400μmが好ましく、より好ましくは150μmである。セラミック粒95の粒径が大きすぎると、結合剤層98から脱落し易くなり、粒径が小さすぎると、凸部として十分に機能しない虞がある。また、補正駆動ローラー61は、上記の変形例に限らず、用紙14に対して点接触可能な凸部を備える構成であればよい。
【0076】
図24図25図26図27及び図28に示すように、上記実施形態において、クリーニング部材69として機能する発泡体ローラーの周面に、スリット99が設けられる構成としてもよい。図24に示す変形例において、クリーニング部材69の周面に設けられるスリット99は、歯付ローラー65が有する歯77に沿うように環状に設けられている。すなわち、スリット99は、クリーニング部材69の周方向に延びるスリット99が、幅方向Xにおいて六列並んで設けられている。歯付ローラー65は、その周面において周方向に並ぶ各列の歯77が、それぞれスリット99に潜り込むようにしてクリーニング部材69と接触している。この変形例によれば、上記実施形態での効果に加えて以下の効果を得ることができる。
【0077】
(14)クリーニング部材69である発泡体ローラーのスリット99に歯77を潜り込ませることにより、補正駆動ローラー61が有する歯77の周面もクリーニングできる。
また、図25及び図26に示す変形例において、クリーニング部材69の周面に設けられるスリット99は、クリーニング部材69の回転方向、つまり周方向に対して斜めに延びるようにして複数設けられている。すなわち、スリット99は、クリーニング部材69の周面に沿って螺旋状に設けられているともいえる。この変形例によれば、上記実施形態での効果に加えて以下の効果を得ることができる。
【0078】
(15)スリット99により、クリーニング部材69として機能する発泡体ローラーの周面には凹凸が設けられる。すなわち、補正駆動ローラー61は、歯77が発泡体ローラーの周面に設けられる凹凸を乗り越えるようにして発泡体ローラーに接触するため、クリーニング部材69によるクリーニングの効果を向上できる。
【0079】
また、図27に示すように、クリーニング部材69の周面に設けられるスリット99は、その周面において互いに交差するようにして複数設けられる構成でもよい。このスリット99は、それぞれがクリーニング部材69の回転方向に対して斜めに延びるよう設けられ、クリーニング部材69の周面において格子状をなすように設けられている。
【0080】
また、図28に示すように、クリーニング部材69の周面に設けられるスリット99は、その周面において幅方向X(すなわち、クリーニング部材69の軸方向)に沿って延びるようにして複数設けられる構成でもよい。また、スリット99の形状は上記構成に限らない。また、スリット99に限らず、発泡体ローラーの周面にドット状の凹みを複数設ける構成としてもよい。
【0081】
図29及び図30に示すように、上記実施形態において、クリーニング部材69は、軸74に回転可能に支持されるロールブラシ100であってもよい。ロールブラシ100は、その径方向に向かって延びる複数のブラシ毛101を備えている。そして、このブラシ毛101の先端が、歯付ローラー65と接触することで補正駆動ローラー61のクリーニングを行う。このようなロールブラシにおいては、ブラシ毛101の先端が、クリーニング部材69の周面として機能する。なお、このロールブラシ100は、複数のブラシ毛101が起毛するよう設けられた基布を、ロールブラシ100の軸部材の表面に対して螺旋状に巻きつけられることで構成されている。この変形例によれば、上記実施形態での効果に加えて以下の効果を得ることができる。
【0082】
(16)補正駆動ローラー61をクリーニングする際、クリーニング部材69として機能するロールブラシ100が接触することで、クリーニングによる負荷を低減できる。
・上記実施形態において、歯付ローラー65の歯77は、例えばフッ素が塗布されるなどして撥水加工されていてもよい。この変形例によれば、上記実施形態での効果に加えて以下の効果を得ることができる。
【0083】
(17)補正駆動ローラー61の歯77に付着したインクをクリーニングし易くできる。
・上記実施形態において、補正駆動ローラー61を構成する歯付ローラー65が備えるホルダー81及び歯付プレート82の数は適宜変更してもよい。また、補正駆動ローラー61は、幅方向Xにおいて長尺となる一の歯付ローラー65で構成されていてもよい。
【0084】
・上記実施形態において、歯付ローラー65が備える歯77は、その周面において列をなすよう設けられる構成に限らず、無秩序的に乱立するよう設けられる構成でもよい。
・上記実施形態において、歯付プレート82が備える歯77の総数は適宜変更してもよい。また、歯77のピッチPの長さも適宜変更してもよい。
【0085】
・上記実施形態において、歯付ローラー65を構成する歯付プレート82の枚数及びその配置間隔は適宜変更してもよい。例えば、歯付ローラー65は、幅方向Xにおいて三枚の歯付プレート82を配置間隔5mmで備える構成でもよい。この場合、歯付プレート82が有する歯77の総数を200歯とすることで、歯付ローラー65が有する歯77の総数を変更することなく歯付ローラー65が備える歯付プレート82の枚数を変更できる。また、配置間隔が広がることで、歯77の側面をクリーニング部材69でクリーニングし易くできる。
【0086】
・上記実施形態において、補正ローラー対35は、補正従動ローラー62が駆動回転し、補正駆動ローラー61が従動する回転でもよい。また、両者何れもが駆動回転する構成でもよい。
【0087】
・上記実施形態において、補正従動ローラー62の周面は、凹凸のない一様な円筒面に限らず、凹凸が設けられていてもよい。例えば、補正従動ローラー62が、図21及び図22に示すようなセラミックローラー96で構成されていてもよい。
【0088】
・上記実施形態において、歯付ローラー65が備える歯77は、歯付ローラー65を幅方向Xから見たときに、その周面においてすべてが視認可能にずれて配置されていなくてもよい。例えば、一の歯77が、他の一の歯77に完全に重なるよう配置される構成でもよい。
【0089】
・上記実施形態において、歯77の先端となる山部分90の角度は、60度に限らずそれ以上でも以下であってもよい。また、歯77の形状が矩形状であってもよい。
・上記実施形態において、クリーニング部材69は、補正駆動ローラー61の回転に対して従動回転する構成に限らず、駆動回転する構成でもよい。また、クリーニング部材69は、回転する構成に限らず、搬送方向Yの上流側及び下流側に向かって平行移動する構成でもよいし、筐体12に固定されて不動となる構成でもよい。
【0090】
・上記実施形態において、両面印刷するために用紙14をスイッチバックさせるスイッチバック機構40は、例えば、排出経路25から分岐する分岐経路24でスイッチバックさせた用紙14を排出経路25に送り、排出経路25から印刷部18と対峙した状態で供給経路20に逆送させる構成でもよい。また、スイッチバック機構40は、分岐経路24を備えず、片面が印刷された用紙14を排出経路25でスイッチバックさせて、排出経路25から分岐する第3供給経路23へ用紙14を送る構成でもよい。
【0091】
・上記実施形態において、クリーニング部材69として機能する発泡体ローラーは、発泡ウレタンに限らず、メラミン樹脂発泡体など他の発泡プラスチックでもよい。
・上記実施形態において、印刷部18が印刷する媒体は、用紙14に限らず、布帛やプラスチックフィルムなどの他のシート状媒体を採用してもよい。
【0092】
・上記実施形態において、印刷部18は、幅方向Xに沿って移動可能なシリアルヘッドでもよい。
・上記実施形態において、印刷部18と対峙する搬送ベルト51の代わりに、プラテンとしての支持台を設ける構成としてもよい。
【0093】
・上記実施形態において、印刷装置としてのプリンター11は、インク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体、流体として流して吐出できる固体を含む)を吐出したり噴射したりして印刷を行う流体吐出装置であってもよい。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を吐出して印刷を行う液状体吐出装置であってもよい。また、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を吐出する流状体吐出装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の流体吐出装置に本発明を適用することができる。なお、本明細書において「流体」とは、気体のみからなる流体を含まない概念であり、流体には、例えば液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液等を含む)、液状体、流状体)などが含まれる。
【符号の説明】
【0094】
11…プリンター(印刷装置)、14…用紙(媒体)、18…印刷部、20…供給経路、21…第1供給経路、22…第2供給経路、23…第3供給経路、24…分岐経路、25…排出経路、31…第1供給ローラー対、32…第2供給ローラー対、33…第3供給ローラー対、35…補正ローラー対、40…スイッチバック機構、51…搬送ベルト、52…駆動ローラー、61…補正駆動ローラー(第一ローラー)、62…補正従動ローラー(第二ローラー)、63…クリーニング部、65…歯付ローラー、69…クリーニング部材(発泡体ローラー)、77…歯(凸部)、90…山部分、91…谷部分、99…スリット、100…ロールブラシ、N…ニップ位置(挟み込み位置)、X…幅方向、Y…搬送方向、Z…鉛直方向。
図1
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