(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】液体クロマトグラフ
(51)【国際特許分類】
G01N 30/26 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
G01N30/26 Z
(21)【出願番号】P 2021501171
(86)(22)【出願日】2019-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2019005991
(87)【国際公開番号】W WO2020170320
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 悦輔
(72)【発明者】
【氏名】吉野 早紀
(72)【発明者】
【氏名】岡本 冬樹
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-040811(JP,A)
【文献】特開平09-072911(JP,A)
【文献】特開2000-121620(JP,A)
【文献】特開平11-122276(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0207549(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/02,30/26,30/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の移動相容器に収容されている移動相の液量をそれぞれ計測する液量計と、
それぞれ前記1つ以上の移動相容器のいずれかに接続された1つ以上のポンプと、
前記1つ以上のポンプの各々について、該ポンプの識別子と、前記1つ以上の移動相容器のうち、該ポンプに接続された移動相容器の識別子と、を関連づけて記憶する対応関係記憶部と、
前記1つ以上の移動相容器の各々について、前記液量計で計測された該移動相容器における移動相の液量と、該移動相容器の識別子に関連づけて前記対応関係記憶部に記憶された前記ポンプの識別子との組み合わせをオペレータに通知する通知部と、
を有する液体クロマトグラフ。
【請求項2】
1つ以上の移動相容器に収容されている移動相の液量をそれぞれ計測する液量計と、
それぞれ前記1つ以上の移動相容器のいずれかに接続された1つ以上のポンプと、
前記1つ以上のポンプの各々について、該ポンプの識別子と、前記1つ以上の移動相容器のうち、該ポンプに接続された移動相容器の識別子と、を関連づけて記憶する対応関係記憶部と、
複数回の分析について、その分析条件及び実行順序を記述したバッチテーブルを記憶するバッチテーブル記憶部と、
前記1つ以上の移動相容器の各々について、前記対応関係記憶部に記憶された対応関係と前記バッチテーブル記憶部に記憶された前記バッチテーブルとに基づいて、前記複数回の分析において使用される移動相の総量である予測使用量を算出する予測使用量算出部と、
前記1つ以上の移動相容器の少なくとも1つについて、前記液量計で計測された移動相の液量が、前記予測使用量を下回っていた場合に、その旨をオペレータに通知する通知部と、
を有する液体クロマトグラフ。
【請求項3】
前記通知部が、前記液量計で計測された移動相の液量が前記予測使用量を下回っている旨の情報と、当該移動相容器の識別子に関連づけて前記対応関係記憶部に記憶された前記ポンプの識別子との組み合わせをオペレータに通知する請求項2に記載の液体クロマトグラフ。
【請求項4】
前記通知部が、前記1つ以上の移動相容器の少なくとも1つについて、前記液量計で計測された移動相の液量が、前記予測使用量を下回っていた場合に、その旨に加えて、前記複数回の分析のうちの何番目の分析までを実行可能であるかを通知する請求項2に記載の液体クロマトグラフ。
【請求項5】
1つ以上の移動相容器に収容されている移動相の液量をそれぞれ計測する液量計と、
それぞれ前記1つ以上の移動相容器のいずれかに接続された1つ以上のポンプと、
前記1つ以上の移動相容器の各々について定められた液量の閾値を記憶する閾値記憶手段と、
予め登録されたオペレータの連絡先を記憶する連絡先記憶部と、
前記1つ以上の移動相容器の少なくとも1つについて、前記液量計で計測された移動相の液量が、前記閾値を下回った時点で、その旨を示すメッセージを前記連絡先に送信するメッセージ送信手段と、
を有
し、
前記閾値記憶手段が、前記閾値として第1の閾値と、該第1の閾値よりも小さい第2の閾値とを記憶するものであって、
前記メッセージ送信手段が、前記1つ以上の移動相容器の少なくとも1つについて、前記液量計で計測された移動相の液量が前記第1の閾値を下回った時点若しくは該液量が前記第2の閾値を下回った時点、又はその両方の時点において前記連絡先に前記メッセージを送信するものである、
液体クロマトグラフ。
【請求項6】
更に、
前記1つ以上の移動相容器の少なくとも1つについて、前記液量計で計測された移動相の液量が前記第2の閾値を下回った時点で、前記1つ以上のポンプを全て停止させるポンプ停止手段、
を有する請求項5に記載の液体クロマトグラフ。
【請求項7】
1つ以上の移動相容器に収容されている移動相の液量をそれぞれ計測する液量計と、
それぞれ前記1つ以上の移動相容器のいずれかに接続された1つ以上のポンプと、
前記1つ以上のポンプの各々について、該ポンプの識別子と、前記1つ以上の移動相容器のうち、該ポンプに接続された移動相容器の識別子と、を関連づけて記憶する対応関係記憶部と、
複数回の分析について、その分析条件及び実行順序を記述したバッチテーブルを記憶するバッチテーブル記憶部と、
前記バッチテーブルに従った分析の実行中に、前記1つ以上の移動相容器の各々について、以降の分析において使用される移動相の総量である予測使用量を算出する予測使用量算出部と、
前記1つ以上の移動相容器の少なくとも1つについて、前記液量計で計測された移動相の液量が、前記予測使用量を下回った時点で、その旨をオペレータに通知する通知部と、
を有する液体クロマトグラフ。
【請求項8】
予め登録されたオペレータの連絡先を記憶する連絡先記憶部と、
前記1つ以上の移動相容器の少なくとも1つについて、前記液量計で計測された移動相の液量が、前記予測使用量を下回った時点で、その旨を示すメッセージを前記連絡先に送信するメッセージ送信手段と、
を更に有する請求項7に記載の液体クロマトグラフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフに関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフは、ポンプ、カラムオーブン、検出器、及びオートサンプラ等の複数の分析ユニットから構成されている。近年、こうした液体クロマトグラフにおいて、各分析ユニットを統括的に制御したり採取されたデータを処理したりするために、パーソナルコンピュータに所定の制御/処理プログラムをインストールした制御装置が広く利用されている。こうした制御装置では、複数回の分析について、その実行順序と、各分析の分析条件を記述したバッチテーブルを予め作成しておき、制御装置に該バッチテーブルに従って各分析ユニットを制御させることにより、複数回分析を連続的に行うことができるようになっている。
【0003】
しかしながら、このような連続分析では、移動相が多量に消費されるため、途中で移動相が不足して分析が中断するおそれがある。こうした事態を防ぐため、従来、移動相の残量を自動的に算出して分析担当者(オペレータ)に通知する機能を備えた液体クロマトグラフがある(例えば、特許文献1を参照)。このような液体クロマトグラフでは、連続分析の実行中に、ポンプの送液流量などに基づいて、移動相毎の総送液量を計算し、これを、オペレータによって予め設定された移動相総量から差し引くことによって、各移動相の残量が算出される。算出された残量は、制御装置に付設されたモニタに表示するなどしてオペレータに通知されるため、オペレータは該残量がある程度減少した時点で移動相容器に移動相を補充するなどの対応を取ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-194434号公報([0003]-[0007])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の液体クロマトグラフでは、オペレータが移動相容器に移動相を補充した後に、該移動相容器内の液量を目視するなどして計測し、その値を移動相総量として制御装置に手作業で入力していた。こうした作業は移動相を補充する毎に行う必要があり、面倒であった。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、液体クロマトグラフにおける移動相残量の管理に関するオペレータの作業負担を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様は、
1つ以上の移動相容器に収容されている移動相の液量をそれぞれ計測する液量計と、
前記液量計で計測された前記1つ以上の移動相容器の各々における移動相の液量をオペレータに通知する通知部、
を有する液体クロマトグラフに関する。
【0008】
本発明の第2態様は、
1つ以上の移動相容器に収容されている移動相の液量をそれぞれ計測する液量計と、
それぞれ前記1つ以上の移動相容器のいずれかに接続された1つ以上のポンプと、
前記1つ以上のポンプの各々について、該ポンプの識別子と、前記1つ以上の移動相容器のうち、該ポンプに接続された移動相容器の識別子と、を関連づけて記憶する対応関係記憶部と、
複数回の分析について、その分析条件及び実行順序を記述したバッチテーブルを記憶するバッチテーブル記憶部と、
前記1つ以上の移動相容器の各々について、前記複数回の分析において使用される移動相の総量である予測使用量を算出する予測使用量算出部と、
前記1つ以上の移動相容器の少なくとも1つについて、前記液量計で計測された移動相の液量が、前記予測使用量を下回っていた場合に、その旨をオペレータに通知する通知部と、
を有する液体クロマトグラフに関する。
【0009】
本発明の第3態様は、
1つ以上の移動相容器に収容されている移動相の液量をそれぞれ計測する液量計と、
それぞれ前記1つ以上の移動相容器のいずれかに接続された1つ以上のポンプと、
前記1つ以上の移動相容器の各々について定められた液量の閾値を記憶する閾値記憶手段と、
予め登録されたオペレータの連絡先を記憶する連絡先記憶部と、
前記1つ以上の移動相容器の少なくとも1つについて、前記液量計で計測された移動相の液量が、前記閾値を下回った時点で、その旨を示すメッセージを前記連絡先に送信するメッセージ送信手段と、
を有する液体クロマトグラフに関する。
【0010】
本発明の第4態様は、
1つ以上の移動相容器に収容されている移動相の液量をそれぞれ計測する液量計と、
それぞれ前記1つ以上の移動相容器のいずれかに接続された1つ以上のポンプと、
前記1つ以上のポンプの各々について、該ポンプの識別子と、前記1つ以上の移動相容器のうち、該ポンプに接続された移動相容器の識別子と、を関連づけて記憶する対応関係記憶部と、
複数回の分析について、その分析条件及び実行順序を記述したバッチテーブルを記憶するバッチテーブル記憶部と、
前記バッチテーブルに従った分析の実行中に、前記1つ以上の移動相容器の各々について、以降の分析において使用される移動相の総量である予測使用量を算出する予測使用量算出部と、
前記1つ以上の移動相容器の少なくとも1つについて、前記液量計で計測された移動相の液量が、前記予測使用量を下回った時点で、その旨をオペレータに通知する通知部と、
を有する液体クロマトグラフに関する。
【発明の効果】
【0011】
上記本発明に係る液体クロマトグラフによれば、オペレータが移動相を補充した際に、移動相容器内の液量を目視で計測してその値を制御装置に手作業で入力する必要がないため、液体クロマトグラフにおける移動相残量の管理に関するオペレータの作業負担を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る液体クロマトグラフの概略構成図。
【
図2】同実施形態における移動相の液量管理に関する処理の手順を示すフローチャート。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る液体クロマトグラフの概略構成図。
【
図4】同実施形態における移動相の液量管理に関する処理の手順を示すフローチャート。
【
図6】同実施形態における移動相の液量管理に関する処理の別の例を示すフローチャート。
【
図7】本発明の第3の実施形態に係る液体クロマトグラフの概略構成図。
【
図8】同実施形態における移動相の液量管理に関する処理の手順を示すフローチャート。
【
図9】本発明の第4の実施形態に係る液体クロマトグラフの概略構成図。
【
図10】同実施形態における移動相の液量管理に関する処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る液体クロマトグラフについて、
図1及び
図2を参照して説明する。
【0014】
図1は本実施形態に係る液体クロマトグラフの概略構成図である。この液体クロマトグラフは、第1移動相容器111中の移動相Aを吸引する第1送液ポンプ121と、第2移動相容器112中の移動相Bを吸引する第2送液ポンプ122と、移動相Aと移動相Bとを混合するグラジエントミキサ130と、グラジエントミキサ130を介して送液ポンプ121、122から送られて来た移動相A/B中に、多数の液体試料のうちの1つを自動的に選択して導入するオートサンプラ140と、カラム161の温度を調整するカラムオーブン160と、カラム161から溶出する成分を検出する検出器170と、上記各部の制御及び検出器170で得られたデータの処理を行うための制御・処理部180と、第1移動相容器111内の移動相Aの液量を計測する第1液量計113と、第2移動相容器112内の移動相Bの液量を計測する第2液量計114と、を備えている。ここで、検出器170としては、例えば、質量分析計又は吸光度検出器等を用いることができる。
【0015】
本実施形態に係る液体クロマトグラフに特徴的な構成である第1液量計113及び第2液量計114は、それぞれ第1移動相容器111内の移動相Aの量及び第2移動相容器112内の移動相Bの量を計測する装置であり、具体的には、例えば秤によって各移動相の質量を量るものとすることができる。
【0016】
オートサンプラ140は、サンプルラック141上に載置された各バイアル(試料容器)142から試料液を採取するためのサンプリングニードル(以下単に「ニードル」とよぶ)143と、移動機構144と、インジェクションポート145と、リンスポート146と、計量ポンプ147と、を備えている。インジェクションポート145は、グラジエントミキサ130からカラム161へと至る移動相の流路(以下、「移動相流路」とよぶ)154の中途に接続されている。ニードル143は、移動機構144により水平方向及び垂直方向に移動可能となっており、インジェクションポート145上、バイアル142上、及びリンスポート146上に移動すると共にそれぞれの中に挿入可能である。
【0017】
計量ポンプ147は2つの吸引/吐出口(図示略)を備えており、そのうちの一方には、第1移動相容器111に至る流路(以下「第1リンス用流路」とよぶ)151が接続され、他方には、ニードル143に至る流路(以下「ニードル流路」とよぶ)152が接続されている。第1リンス用流路151上には第1の開閉バルブ148が設けられ、ニードル流路152上には第2の開閉バルブ149が設けられている。また、ニードル流路152上には、第2の開閉バルブ149とニードル143との間に切替バルブ150が設けられ、この切替バルブ150を介してリンスポート146に至る流路(これを「第2リンス用流路」とよぶ)153が接続されている。切替バルブ150は、計量ポンプ147をニードル143に接続した状態と、計量ポンプ147をリンスポート146に接続した状態とを切り替えるものである。
【0018】
このようなオートサンプラ140において、バイアル142からの試料液の採取は、ニードル143の先端をいずれかのバイアル142に刺入し、第1の開閉バルブ148を閉鎖し、第2の開閉バルブ149を開放し、且つ切替バルブ150によって計量ポンプ147をニードル143と接続した状態で、計量ポンプ147を吸引動作させて計量ポンプ147内に所定量の試料液を吸引することにより行われる。また、移動相流路154への試料液の注入は、ニードル143の先端をインジェクションポート145に刺入し、第1の開閉バルブ148を閉鎖し、第2の開閉バルブ149を開放し、且つ切替バルブ150によって計量ポンプ147をニードル143と接続した状態で、計量ポンプ147を吐出動作させて計量ポンプ147内の試料液を吐出することにより行われる。
【0019】
また、上記のような試料液の採取及び注入が完了した後は、以下の手順でニードル143の洗浄(リンス)を行う。まず、第1の開閉バルブ148を開放し、第2の開閉バルブ149を閉鎖した状態で、計量ポンプ147を吸引動作させて計量ポンプ147内に移動相Aを吸引させる。続いて、第1の開閉バルブ148を閉鎖し、第2の開閉バルブ149を開放し、且つ切替バルブ150によって計量ポンプ147をリンスポート146と接続した状態で、計量ポンプ147を吐出動作させて計量ポンプ147内の移動相Aを吐出させる。これにより、移動相Aによってリンスポート146内が満たされ、余分な移動相Aはリンスポート146の上部に設けられた排液口から排出される。次に、ニードル143をリンスポート146に貯留された移動相A中に浸漬させ、一定時間ニードル143を洗浄する。すなわち、ここでは移動相Aがニードル143を洗浄するためのリンス液(洗浄液)の役割を果たす。なお、本発明において「移動相」という用語は、カラム161における試料成分の分離のために用いられる液体に限らず、前記リンス液のように移動相容器111、112から送液される液体全般を意味している。
【0020】
制御・処理部180は、複数回の分析についてその分析条件及び実行順序を記述したバッチテーブルを記憶するバッチテーブル記憶部181、前記バッチテーブルの記述に従って各部を制御することにより試料の分析を実行させる分析制御部182、及び検出器170により得られるデータに対して所定の処理を行うことにより前記試料の分析結果であるクロマトグラムを生成するデータ処理部183に加えて、本実施形態の液体クロマトグラフに特徴的な動作を行う対応関係記憶部184、液量取得部185、及び表示制御部186(本発明における通知部に相当)を機能ブロックとして備える。この制御・処理部180には、マウス等のポインティングデバイス又はキーボート等から成る入力部101と、液晶ディスプレイ等から成る表示部102とが接続されている。
【0021】
なお、制御・処理部180の実体はパーソナルコンピュータ又はワークステーション等のコンピュータであり、該コンピュータに予めインストールされた専用の制御・処理ソフトウエアを該コンピュータで実行することにより、上述した各機能ブロックによる機能を達成することができる。
【0022】
本実施形態の液体クロマトグラフにおける一般的な分析動作を簡単に説明する。分析制御部182による制御の下で、送液ポンプ121、122は移動相容器111、112からそれぞれ所定流量の移動相A、Bを吸引しグラジエントミキサ130へと送る。グラジエントミキサ130は移動相A、Bを混合して一定流量でオートサンプラ140へと送る。オートサンプラ140では、複数のバイアル142から1つが選択され、該バイアル142中の試料液がニードル143によって所定量採取され、該ニードルをインジェクションポート145に刺入して試料液を吐出させることで試料液が移動相中に注入される。試料液は移動相の流れに乗って温度調整されているカラム161に導入され、カラム161を通過する際に試料液中の成分(試料成分)が分離される。そうして分離された試料成分を含む溶出液がカラム161の出口から出て検出器170に導入される。検出器170は溶出液中の試料成分の量に応じた検出信号を出力する。この信号は図示しないAD変換器でデジタル化され、制御・処理部180へと入力され、データ処理部183において前記信号に基づいてクロマトグラムが作成される。
【0023】
続いて、本実施形態に係る液体クロマトグラフの特徴的な動作について説明する。まず、分析に際してオペレータが、分析に使用する移動相容器111、112の識別子と、各移動相容器111、112から移動相を吸引するポンプ(送液ポンプ121、122、及び計量ポンプ147)との対応関係を入力部101から入力して対応関係記憶部184に記憶させておく。上記の例では、第1移動相容器111中の移動相Aは、第1送液ポンプ121及び計量ポンプ147によって吸引されるため、第1移動相容器111と第1送液ポンプ121及び計量ポンプ147の識別子を互いに対応付けて記憶させる。更に、第2移動相容器112中の移動相は第2送液ポンプ122によって吸引されるため、第2移動相容器112と第2送液ポンプ122の識別子を互いに対応付けて記憶させる。なお、移動相容器111、112の識別子としては、例えば移動相容器111、112自体を表す文字列(例えば「容器A」、「容器B」等)とするほか、該移動相容器111、112に収容された液体の名称(例えば「純水」、「アセトニトリル」等)とすることができる。また、ポンプ121、122、147の識別子としては、例えば、ポンプ121、122、147によって送られる液体の役割を含む文字列(「移動相A用ポンプ」、「移動相B用ポンプ」、「リンス液用ポンプ」等)とすることができる。
【0024】
その後、第1送液ポンプ121及び第2送液ポンプ122の少なくとも一方による移動相の送液が開始されると、制御・処理部180は一定時間毎に第1移動相容器111及び第2移動相容器112内の移動相の液量を確認して該液量を表示部102の画面上に表示させる。このときの動作を
図2のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0025】
まず、移動相の送液開始から予め定められた時間が経過した時点(すなわち
図2のステップS11でYesになった時点)で液量取得部185が第1液量計113及び第2液量計114から計測結果を取得し、該計測結果に基づいて第1移動相容器111及び第2移動相容器112内の移動相の液量を求める(ステップS12)。具体的には、各液量計113、114によって計測された各移動相容器111、112内の移動相の質量と、予め登録された各移動相容器111、112内の移動相の比重とに基づいて各移動相容器111、112に収容されている移動相の液量(体積)をそれぞれ算出する。続いて、表示制御部186が、移動相容器111、112の識別子とそれに対応付けられたポンプ121、122、147の識別子の情報を対応関係記憶部184から取得し、各移動相容器111、112について、該容器の識別子、該容器内の移動相の液量、及び該容器に対応付けられたポンプの識別子を、それぞれ表示部102の画面上に表示させる(ステップS13)。その後は一定時間が経過する毎(すなわち
図2のステップS11でYesとなるごと)にステップS12、及びステップS13の処理を繰り返し実行し、全ての分析が完了して第1送液ポンプ121及び第2送液ポンプ122による送液が終了した時点(すなわち
図2のステップS14でYesとなった時点)で一連の処理を終了する。なお、ここでは一定時間毎に移動相の液量の確認と表示を行うものとしたが、これに代えて、予め定められた回数の分析を完了する毎に移動相の液量の確認と表示を行うようにしてもよい。
【0026】
本実施形態に係る液体クロマトグラフによれば、オペレータは表示部102に表示された移動相の液量を確認し、液量がある程度減少した時点で移動相の補充を行うことができるため、送液中に移動相が足りなくなるのを防ぐことができる。また、本実施形態に係る液体クロマトグラフによれば、液量計113、114によって移動相容器内の液量が直接計測されるため、オペレータが目視で液量を計ってその値を手作業で制御装置に入力する必要がないため、移動相の液量管理に係るオペレータの作業負担を軽減することができる。また、各移動相容器111、112内の移動相の液量に加えて、移動相容器111、112とポンプ121、122、147との対応関係が表示されるため、液体クロマトグラフ内のどの部分で使われる移動相がどの程度残っているかをオペレータが容易に把握することができる。
【0027】
(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態に係る液体クロマトグラフについて、
図3~
図5を参照して説明する。
【0028】
図3は本実施形態に係る液体クロマトグラフの概略構成図である。なお、
図1で示したものと同一又は対応する構成要素については下二桁が共通する符号を付し、適宜説明を省略する。本実施形態に係る液体クロマトグラフにおける制御・処理部280は、第1の実施形態に係る液体クロマトグラフと同様の機能ブロックに加えて、バッチテーブル記憶部281に記憶されたバッチテーブルに基づいて連続分析における各移動相の予測使用量を算出する予測使用量算出部287と、該予測使用量を液量取得部285で取得された各移動相の液量と比較して移動相の液量が十分であるか否かを判定する判定部288とを機能ブロックとして備えている。なお、これらの機能ブロックの機能も、制御・処理部280の実体であるコンピュータに予めインストールされた専用の制御・処理ソフトウエアを該コンピュータで実行することにより、実現されるものである。
【0029】
続いて、本実施形態に係る液体クロマトグラフの特徴的な動作について説明する。なお、分析に際しては、第1の実施形態と同様に、オペレータが分析に使用する移動相容器211、212の識別子と、各移動相容器211、212から移動相を吸引するポンプ221、222、247の識別子との対応関係を対応関係記憶部284に記憶させておく。
【0030】
更に、オペレータが入力部201を操作してバッチテーブルを作成し、バッチテーブル記憶部281に記憶させる。バッチテーブルでは、1行が1回の試料分析(すなわちオートサンプラ240による1回の試料注入に伴う液体クロマトグラフ分析)に対応しており、各行に、その分析を実行するのに必要な情報として、分析対象試料が収容されたバイアル242の識別子であるバイアルIDや、該試料の分析に適用するメソッドファイル名などが記述される。ここでメソッドファイル(分析条件ファイル)とは、分析の内容、すなわち該分析に適用される各種分析条件が記載されたファイルであり、予めオペレータによって作成されて制御・処理部280に記憶される。このメソッドファイルには、各分析に適用される分析条件としてカラムオーブン260の温度、送液ポンプ221、222の流量、グラジエントプログラム、オートサンプラ240における試料注入時の動作等が記載されている。なお、移動相を一定の組成でカラムに導入するアイソクラティック送液法による分析(アイソクラティック分析)を行う場合には、前記分析条件の1つとして第1送液ポンプ221又は第2送液ポンプ222の流量を記載し、複数の移動相の混合比を時間的に変化させつつカラム261に導入するグラジエント送液法による分析(グラジエント分析)を行う場合には、前記分析条件の1つとして第1送液ポンプ221及び第2送液ポンプ222の流量の経時的変化を指示するグラジエントプロファイルが記載される。
【0031】
その後、オペレータが入力部201を操作してバッチテーブルを指定すると共に所定の操作(例えば、該バッチテーブルによる分析の開始指示など)を行うと、制御・処理部280は、現在の移動相の液量で前記バッチテーブルに記述された連続分析を最後まで実行できるか否かを判定する。このときの制御・処理部280の動作について
図4のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0032】
まず、予測使用量算出部287が、バッチテーブル記憶部281から前記バッチテーブルを読み出し、該バッチテーブルに記述された連続分析で使用される各移動相の総量(予測使用量)を算出する(ステップS21)。
【0033】
具体的には、まず、バッチテーブルの各行で規定された分析における各送液ポンプの送液量を算出する。このときの計算の具体例を以下にしめす。ここでは、第1送液ポンプ221(ここでは「ポンプA」とする)と第2送液ポンプ222(ここでは「ポンプB」とする)の2台のポンプで、2液混合(バイナリグラジエント)による分析を行う例を示す。具体的なポンプパラメータは以下の通りである。
トータル分析時間:10 (min)
トータル流量 :5 (mL/min)
初期濃度(ポンプA):80 (%)
初期濃度(ポンプB):20 (%)
グラジエントプロファイル:(
図5に示す通り)
この分析におけるポンプA及びポンプBの送液量の合計は、[トータル流量]×[トータル分析時間]=5×10=50 (mL)である。このうち、ポンプBによる送液量は、
図5に示すグラジエントプロファイルのうち網点で塗りつぶした領域に相当する。該領域の面積は、5(min)と8(min)で当該領域を分割して得られる台形及び長方形の面積の合計から求められる。すなわち、[ポンプBの送液量]=[0~5minの台形面積]+[5~8minの長方形面積]+[8~10min長方形の面積]=(5[mL/min]×(20%+90%)/2×5[min])+(5[mL/min]×90%×3[min])+(5[mL/min]×20%×2[min])=13.75+13.5+2.0=29.25 (mL)である。同様に、ポンプAによる送液量は、
図5に示すグラジエントプロファイルのうち斜線で塗りつぶした領域の面積に相当するから、[ポンプAの送液量]=[ポンプA、Bの送液量の合計]-[ポンプBの送液量]=50-29.25=20.75 (mL)となる。
【0034】
以上のようにしてバッチテーブルの各行で規定された分析の各々における第1送液ポンプ221及び第2送液ポンプ222の送液量を算出した後は、それらの値を各ポンプ221、222についてそれぞれ合計することによって連続分析における第1送液ポンプ221の総送液量と、第2送液ポンプ222の総送液量とがそれぞれ求められる。次に、バッチテーブルに記述されたオートサンプラ240の動作の情報に基づいて、前記連続分析において計量ポンプ247によって送液される移動相の総量、すなわちオートサンプラ240で消費されるリンス液の総量を算出する。そして、以上で求められた第1送液ポンプ221、第2送液ポンプ222、及び計量ポンプ247の各々の総送液量と、対応関係記憶部284に記憶された各ポンプ221、222、247と各移動相容器211、212との対応関係から各移動相の予測使用量を特定する。例えば、
図2に示した構成では、第1移動相容器211中の移動相Aは、第1送液ポンプ221及び計量ポンプ247によって吸引されるため、対応関係記憶部284には、第1移動相容器211の識別子と第1送液ポンプ221及び計量ポンプ247の識別子とが互いに対応付けて記憶されている。そこで、第1送液ポンプ221の総送液量と計量ポンプ247の総送液量を合計したものが、移動相Aの予測使用量となる。
【0035】
以上のステップS21により、連続分析における各移動相の予測使用量を算出した後は、液量取得部285が液量計213、214から計測結果を取得し、該計測結果に基づいて各移動相の液量を求める(ステップS22)。このときの動作の詳細は第1の実施形態で説明したものと同様であるから、ここでは説明を省略する。
【0036】
次に、判定部288が、各移動相容器について、ステップS22で求められた移動相の液量が、ステップS21で算出された予測使用量以上であるか否かを判定する(ステップS23)。全ての移動相について、移動相の液量が予測使用量以上であった場合(ステップS23でYes)には、そのまま一連の処理を終了する。
【0037】
一方、いずれか1つの移動相でも、移動相の液量が予測使用量を下回っていた場合(ステップS23でNo)には、更に判定部288が該予測使用量から該移動相の液量を差し引くことによって該移動相の不足量を算出すると共に、現在の移動相の液量でバッチテーブルの何行目まで実行可能かを特定する。そして、表示制御部286が、表示部202に警告画面を表示させて移動相の液量が不足している旨をオペレータに通知する(ステップS24)。前記警告画面には、移動相の液量が不足している旨に加えて、液量が不足している移動相が収容された移動相容器の識別子、各移動相容器211、212内の移動相の液量、及び移動相の不足量(すなわち最低限補充すべき移動相の液量)、及び現在の移動相の液量でバッチテーブルの何行目までを実行可能であるかを表示する。
【0038】
この警告画面を見たオペレータは、不足している移動相を移動相容器に補充する、又は現在の移動相の液量で実行可能な行数までの分析を実行するようバッチテーブルを編集する等の対応を取ることができるため、連続分析の途中で移動相が足りなくなるのを防ぐことが可能となる。
【0039】
(第2の実施形態の変形例)
なお、上記ではバッチテーブルに従った連続分析を開始する前に、移動相の液量が十分であるか否かを判定するものとしたが、これに代えて、前記連続分析の実行中に、移動相の液量が以降の分析を実行するのに十分であるか否かを判定するものとしてもよい。この場合の動作について、
図6のフローチャートに従って分析する(液体クロマトグラフの構成は
図3に示したものと同様であるため説明を省略する)。
【0040】
まず、バッチテーブルに従った連続分析の実行中において、予め定められた数の分析が終了した時点(ステップS31でYes)で、予測使用量算出部287が以降の分析における移動相の予測使用量を算出する(ステップS32)。このときの予測使用量の算出方法は上述したものと同様であるが、ここでは、バッチテーブルに記載された複数の分析のうち、実行済みの分析を除いた残りの分析において消費される移動相の総量を前記予測使用量として算出する。続いて、液量取得部285が各移動相容器211、212内の移動相の液量を取得し(ステップS33)、判定部288が、各移動相について前記液量と前記予測使用量とを比較して、該液量が該予測使用量以上であるか否かを判定する(ステップS34)。ここで、全ての移動相容器211、212中の移動相について前記液量が前記予測使用量以上であると判定された場合(ステップS34でYes)はステップS31に戻り、ステップS31からステップS34を繰り返し実行する。ステップS34において移動相容器211、212のうちの1つでも収容されている移動相の液量が前記予測使用量を下回っていると判定された場合(ステップS34でNo)は、表示制御部286が、表示部202に警告画面を表示させて移動相の液量が不足している旨をオペレータに通知する(ステップS35)。前記警告画面には、移動相の液量が不足している旨に加えて、液量が不足している移動相が収容された移動相容器の識別子、各移動相容器211、212内の移動相の液量、及び移動相の不足量(すなわち最低限補充すべき移動相の液量)、及び現在の移動相の液量でバッチテーブルの何行目までを実行可能であるかを表示する。
【0041】
このように連続分析の実行中に一定間隔で移動相の液量が不足していないかどうかを判定することにより、仮に連続分析の開始当初に予測した移動相の使用量よりも多くの移動相が実際の分析で使用された場合でも、移動相の液量管理を適切に行うことができる。
(第3の実施形態)
続いて、本発明の第3の実施形態に係る液体クロマトグラフについて、
図7及び
図8を参照しつつ説明する。
【0042】
図7は本実施形態に係る液体クロマトグラフの概略構成図である。なお、
図1に示したものと同一又は対応する構成要素については下二桁が共通する符号を付し、適宜説明を省略する。本実施形態に係る液体クロマトグラフにおける制御・処理部380は、第1の実施形態に係る液体クロマトグラフと同様の機能ブロック(但し、対応関係記憶部184を除く)に加えて、移動相の液量の閾値を記憶する閾値記憶部389と、液量取得部385で取得された各移動相の液量が前記閾値以上であるか否かを判定する判定部388と、オペレータによって予め登録された連絡先を記憶する連絡先記憶部390と、該連絡先宛のメッセージを作成して送信するメッセージ送信部391と、を機能ブロックとして備えている。なお、これらの機能ブロックの機能も、制御・処理部380の実体であるコンピュータに予めインストールされた専用の制御・処理ソフトウエアを該コンピュータで実行することによって実現されるものである。
【0043】
まず、分析に際し、オペレータが入力部301を操作して各移動相の液量の閾値を設定する。ここで、前記閾値としては、第1の閾値と、該第1の閾値よりも値の小さい第2の閾値とを移動相毎に設定する(以下、第1の閾値を「警告閾値」とよび、第2の閾値を「エラー閾値」とよぶ)。
【0044】
その後、第1送液ポンプ321又は第2送液ポンプ322による移動相の送液が開始されると、制御・処理部380は一定時間毎に第1移動相容器311及び第2移動相容器312内の移動相の液量を閾値記憶部389に記憶された閾値と比較する。このときの動作について、
図8のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0045】
まず、送液開始から予め定められた時間が経過した時点(すなわち
図8のステップS41でYesになった時点)で液量取得部385が第1液量計313及び第2液量計314から計測結果を取得し、該計測結果に基づいて第1移動相容器311及び第2移動相容器312中の移動相の液量を求める(ステップS42)。続いて、判定部388が、閾値記憶部389に記憶されている警告閾値とステップS42で求めた液量とを比較して、該液量が前記警告閾値以上であるか否かを判定する(ステップS43)。ここで、全ての移動相容器311、312について前記液量が前記警告閾値以上であると判定された場合(ステップS43でYes)は、ステップS41に戻り、前記液量が警告閾値を下回るまで(すなわちステップS43でNoとなるまで)、又は第1送液ポンプ321及び第2送液ポンプ322による送液が終了するまで(すなわちステップS44でYesとなるまで)ステップS42及びステップS43を一定の時間間隔で繰り返し実行する。
【0046】
一方、ステップS43において第1移動相容器311又は第2移動相容器312のいずれか一方でも前記液量が前記警告閾値を下回っていると判定された場合(ステップS43でNo)には、表示制御部386が警告画面を表示部302に表示させ(ステップS45)、更に、メッセージ送信部391がメッセージを作成して連絡先記憶部390に記憶されているオペレータの連絡先宛に送信する(ステップS46)。なお、前記警告画面及び前記メッセージには、移動相の液量が警告閾値を下回っている旨、及び移動相の液量が警告閾値を下回っている移動相容器の識別子を記載する。また、ステップS45及びステップS46の処理は逆の順で行ってもよく、同時に行ってもよい。
【0047】
上記のようにいずれかの移動相の液量が警告閾値を下回った後は、予め定められた時間が経過した時点(すなわちステップS47でYesとなった時点)で再び第1移動相容器311及び第2移動相容器312の移動相の液量を取得し(ステップS48)、該液量が閾値記憶部389に記憶されているエラー閾値以上であるか否かを判定する(ステップS49)。ここで、全ての移動相容器311、312について前記液量が前記エラー閾値以上であると判定した場合(ステップS49でYes)は、ステップS47に戻り、前記液量がエラー閾値を下回るまで(すなわちステップS49でNoとなるまで)、又は全ての分析が完了して第1送液ポンプ321及び第2送液ポンプ322による送液が終了するまで(すなわちステップS50でYesとなるまで)ステップS48及びステップS49の処理を一定の時間間隔で繰り返し実行する。
【0048】
一方、ステップS49において第1移動相容器311又は第2移動相容器312のいずれか一方でも移動相の液量が前記エラー閾値を下回ったと判定された場合(ステップS49でNo)には、分析制御部382が第1送液ポンプ321及び第2送液ポンプ322による移動相の送液を停止させる(ステップS51)。すなわち、本実施形態においては、分析制御部382が本発明におけるポンプ停止手段に相当する。なお、試料の分析中であった場合(すなわちステップS52でYesの場合)には、データ処理部383におけるクロマトグラムの作成も中止させる(ステップS53)。更に、表示制御部386が、表示部にエラー画面を表示させると共に(ステップS54)、メッセージ送信部391がメッセージを作成して連絡先記憶部390に記憶されているオペレータの連絡先宛に送信する(ステップS55)。なお、前記エラー画面及び前記メッセージには、移動相の液量がエラー閾値を下回っている旨、及び移動相の液量がエラー閾値を下回っている移動相容器の識別子を記載する。なお、ステップS51~ステップS55の処理は、上記に限らずいかなる順序で行ってもよく、一部のステップを同時に行ってもよい(但し、ステップS53は必ずステップS52よりも後に実行する)。
【0049】
本実施形態に係る液体クロマトグラフによれば、移動相の液量が第1閾値を切った時点でその旨を知らせるメッセージが予め登録しておいた連絡先宛に送信されるため、該連絡先として、本実施形態に係る液体クロマトグラフが配置された分析室以外の場所(例えば事務室等)に配置されたパソコンのe-mailアドレス、又はオペレータが所持する携帯端末(例えば、携帯電話、スマートフォン、又はタブレットPC等)のe-mailアドレス、電話番号、若しくは前記携帯端末に固有の識別子である端末ID等を設定しておくことで、オペレータが分析室を離れている場合でも、移動相の液量が低下していることを知ることができ、移動相を継ぎ足すなどの対処が可能となる。なお、前記メッセージは、例えば、e-mailのほか、ショートメッセージ又はプッシュ通知などの形態で作成及び送信されるものとすることができるが、メッセージの形態はこれらに限定されるものではない。更に、本実施形態に係る液体クロマトグラフでは、移動相の液量が第2閾値を切った時点で送液ポンプによる送液が自動的に停止するため、移動相容器311、312内の移動相が無くなった状態で送液ポンプ321、322が作動し続けることによって該送液ポンプ321、322がダメージを受けるのを防ぐことができる。
【0050】
(第4の実施形態)
続いて、本発明の第4の実施形態に係る液体クロマトグラフについて、
図9及び
図10を参照しつつ説明する。
【0051】
図9は本実施形態に係る液体クロマトグラフの概略構成図である。
図1で示したものと同一又は対応する構成要素については下二桁が共通する符号を付し、適宜説明を省略する。本実施形態に係るクロマトグラフにおける制御・処理部480は、第1の実施形態に係る液体クロマトグラフと同様の機能ブロックに加えて、バッチテーブル記憶部481に記憶された連続分析の実行中にバッチテーブルの記述に基づいて以降の分析における移動相の予測使用量を算出する予測使用量算出部487と、該予測使用量を液量取得部485で取得された各移動相の液量と比較して、該液量が以降の分析を実行するのに十分であるか否かを判定する判定部488と、オペレータによって登録された連絡先を記憶する連絡先記憶部490と、該連絡先宛のメッセージを作成して送信するメッセージ送信部491と、を機能ブロックとして備えている。なお、これらの機能ブロックの機能も、制御・処理部480の実体であるコンピュータに予めインストールされた専用の制御・処理ソフトウエアを該コンピュータで実行することにより実現される。
【0052】
本実施形態における移動相の液量管理に関する処理の手順を、
図10のフローチャートに従って分析する。まず、バッチテーブルに従った連続分析の実行中において、予め定められた数の分析が終了した時点(ステップS61でYes)で、予測使用量算出部487が以降の分析における各移動相の予測使用量を算出する(ステップS62)。このときの予測使用量の算出方法は第2の実施形態で説明したものと同様であるが、ここでは、バッチテーブルに記載された複数の分析のうち、実行済みの分析を除いた残りの分析において消費される移動相の総量を前記予測使用量として算出する。続いて、液量取得部485が第1液量計413及び第2液量計414から計測結果を取得して、第1移動相容器411及び第2移動相容器412における移動相の液量を求める(ステップS63)。そして、判定部488が、各移動相の液量がステップS62で算出された予測使用量以上であるか否かを判定する(ステップS64)。ステップS64において、全ての移動相容器311、312について移動相の液量が前記予測使用量以上であると判定された場合には、ステップS61に戻り、予め定められた数の分析が終了するのを待って(すなわちステップS61でYesになるのを待って)、再びステップS62及びステップS63を実行する。一方、ステップS64において、第1移動相容器411又は第2移動相容器412のいずれか一方でも、移動相の液量が前記予測使用量を下回っていると判定された場合には、表示制御部486が表示部402に警告画面を表示させる(ステップS65)と共に、メッセージ送信部491がメッセージを作成して、連絡先記憶部490に記憶されたオペレータの連絡先宛に送信する(ステップS66)。このとき、前記警告画面及びメッセージには、移動相が不足している旨、及び移動相の液量が不足している移動相容器の識別子、及びその不足量を記載する。なお、前記不足量は、ステップS62で算出された予測使用量からステップS63で取得された移動相の液量を差し引くことによって求められる。ここでもステップS65とステップS66は逆の順で行ってもよく、同時に行ってもよい。
【0053】
このように連続分析の実行中に一定間隔で移動相の液量が不足していないかどうかを判定することにより、仮に連続分析の開始当初に予測した移動相の使用量よりも多くの移動相が実際の分析で使用された場合でも、移動相の液量管理を適切に行うことができる。また、液量が不足していると判定された時点でその旨を知らせるメッセージが予め登録しておいた連絡先宛に送信されるため、該連絡先として、本実施形態に係る液体クロマトグラフが配置された分析室以外の場所(例えば事務室等)に配置されたパソコンのe-mailアドレス、又はオペレータが所持する携帯端末(例えば、携帯電話、スマートフォン、又はタブレットPC等)のe-mailアドレス、電話番号、若しくは前記携帯端末に固有の識別子である端末ID等を登録しておくことで、オペレータが分析室を離れている場合でも、移動相の液量が低下していることを知ることができ、移動相を継ぎ足すなどの対処が可能となる。なお、本実施形態においても、前記メッセージは、例えば、e-mailのほか、ショートメッセージ又はプッシュ通知などの形態で作成及び送信されるものとすることができるが、メッセージの形態はこれらに限定されるものではない。
【0054】
以上、本発明を実施するための形態について具体例を挙げて説明を行ったが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で適宜変更が許容される。例えば、上記実施形態1~4では、送液ポンプと移動相容器をそれぞれ2つ設けたが、送液ポンプ及び移動相の数はそれぞれ1つ又は3つ以上とすることもできる。また、液量計は、秤とするほか、例えば、移動相容器に収容された移動相の液面の高さをレーザで測定するもの(液面計)などとすることもできる。
【0055】
[態様]
上述した複数の例示的な実施態様は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0056】
本発明の第1態様に係る液体クロマトグラフは、
1つ以上の移動相容器に収容されている移動相の液量をそれぞれ計測する液量計と、
前記液量計で計測された前記1つ以上の移動相容器の各々における移動相の液量をオペレータに通知する通知部と、
を有するものである。
【0057】
本発明において液量計とは、計測機器(秤や液面計など)によって移動相容器中の移動相の物理量(体積、重さ、液面の高さ等)を直接的に計測するものを意味する。
【0058】
第1態様に係る液体クロマトグラフによれば、オペレータが移動相を補充した際に、移動相容器内の液量を目視で計測してその値を制御装置に手作業で入力する必要がないため、液体クロマトグラフにおける移動相の液量管理に関するオペレータの作業負担を低減することができる。
【0059】
本発明の第2態様は、前記第1態様に係る液体クロマトグラフにおいて、
それぞれ前記1つ以上の移動相容器のいずれかに接続された1つ以上のポンプと、
前記1つ以上のポンプの各々について、該ポンプの識別子と、前記1つ以上の移動相容器のうち、該ポンプに接続された移動相容器の識別子と、を関連づけて記憶する対応関係記憶部と、
を更に有し、
前記通知部が、前記液量計で計測された前記1つ以上の移動相容器の各々における移動相の液量に加えて、該移動相容器の識別子に関連づけて前記対応関係記憶部に記憶された前記ポンプの識別子をオペレータに通知するものである。
【0060】
第2態様に係る液体クロマトグラフによれば、移動相容器内の移動相の液量に加えて、移動相容器とポンプとの対応関係が表示されるため、液体クロマトグラフ内のどの部分で使われる移動相がどの程度残っているかをオペレータが容易に把握することができる。
【0061】
本発明の第3態様に係る液体クロマトグラフは、
1つ以上の移動相容器に収容されている移動相の液量をそれぞれ計測する液量計と、
それぞれ前記1つ以上の移動相容器のいずれかに接続された1つ以上のポンプと、
前記1つ以上のポンプの各々について、該ポンプの識別子と、前記1つ以上の移動相容器のうち、該ポンプに接続された移動相容器の識別子と、を関連づけて記憶する対応関係記憶部と、
複数回の分析について、その分析条件及び実行順序を記述したバッチテーブルを記憶するバッチテーブル記憶部と、
前記1つ以上の移動相容器の各々について、前記複数回の分析において使用される移動相の総量である予測使用量を算出する予測使用量算出部と、
前記1つ以上の移動相容器の少なくとも1つについて、前記液量計で計測された移動相の液量が、前記予測使用量を下回っていた場合に、その旨をオペレータに通知する通知部と、
を有するものである。
【0062】
第3態様に係る液体クロマトグラフによれば、バッチテーブルに従った連続分析を開始する前に、移動相の液量が十分であるかを知ることができ、不足している移動相を移動相容器に補充する等の対応を取ることができる。
【0063】
本発明の第4態様は、前記第3態様に係る液体クロマトグラフにおいて、
前記通知部が、前記1つ以上の移動相容器の少なくとも1つについて、前記液量計で計測された移動相の液量が、前記予測使用量を下回っていた場合に、その旨に加えて、前記複数回の分析のうちの何番目の分析までを実行可能であるかを通知するものである。
【0064】
第4態様に係る液体クロマトグラフによれば、移動相の液量が不足していた場合に、現在の移動相の液量で実行可能な行数までの分析を実行するようバッチテーブルを編集するといった対応が可能となる。
【0065】
本発明の第5態様に係る液体クロマトグラフは、
1つ以上の移動相容器に収容されている移動相の液量をそれぞれ計測する液量計と、
それぞれ前記1つ以上の移動相容器のいずれかに接続された1つ以上のポンプと、
前記1つ以上の移動相容器の各々について定められた液量の閾値を記憶する閾値記憶手段と、
予め登録されたオペレータの連絡先を記憶する連絡先記憶部と、
前記1つ以上の移動相容器の少なくとも1つについて、前記液量計で計測された移動相の液量が、前記閾値を下回った時点で、その旨を示すメッセージを前記連絡先に送信するメッセージ送信手段と、
を有するものである。
【0066】
第5態様に係る液体クロマトグラフによれば、移動相の液量が閾値を下回った時点でその旨を知らせるメッセージが予め登録しておいたオペレータの連絡先に送信されるため、該オペレータが分析室を離れている場合でも、移動相の液量が低下していることを知ることができる。
【0067】
本発明の第6態様は、前記第5態様に係る液体クロマトグラフにおいて、
前記閾値記憶手段が、前記閾値として第1の閾値と、該第1の閾値よりも小さい第2の閾値とを記憶するものであって、
前記メッセージ送信手段が、前記1つ以上の移動相容器の少なくとも1つについて、前記液量計で計測された移動相の液量が前記第1の閾値を下回った時点で前記連絡先に前記メッセージを送信するものであって、
更に、
前記1つ以上の移動相容器の少なくとも1つについて、前記液量計で計測された移動相の液量が前記第2の閾値を下回った時点で、前記1つ以上のポンプを全て停止させるポンプ停止手段、
を有するものである。
【0068】
第6態様に係る液体クロマトグラフによれば、移動相の液量が第1の閾値を下回った時点でその旨を示すメッセージがオペレータの連絡先に送信されるため、該オペレータが分析室を離れている場合でも移動相の液量が低下していることを知ることができる。更に、移動相の液量が第2閾値を切った時点で送液ポンプによる送液が自動的に停止するため、移動相容器内の移動相が無くなった状態でポンプが作動し続けることによって該ポンプがダメージを受けるのを防ぐことができる。
【0069】
本発明の第7態様に係る液体クロマトグラフは、
1つ以上の移動相容器に収容されている移動相の液量をそれぞれ計測する液量計と、
それぞれ前記1つ以上の移動相容器のいずれかに接続された1つ以上のポンプと、
前記1つ以上のポンプの各々について、該ポンプの識別子と、前記1つ以上の移動相容器のうち、該ポンプに接続された移動相容器の識別子と、を関連づけて記憶する対応関係記憶部と、
複数回の分析について、その分析条件及び実行順序を記述したバッチテーブルを記憶するバッチテーブル記憶部と、
前記バッチテーブルに従った分析の実行中に、前記1つ以上の移動相容器の各々について、以降の分析において使用される移動相の総量である予測使用量を算出する予測使用量算出部と、
前記1つ以上の移動相容器の少なくとも1つについて、前記液量計で計測された移動相の液量が、前記予測使用量を下回った時点で、その旨をオペレータに通知する通知部と、
を有するものである。
【0070】
第7態様に係る液体クロマトグラフによれば、バッチテーブルに従った連続分析の実行中に、移動相の液量が不足していないかどうかが判定されるため、仮に連続分析の開始当初に予測した移動相の使用量よりも多くの移動相が実際の分析で使用された場合でも、移動相の液量管理を適切に行うことができる。
【0071】
本発明の第8態様は、前記第7態様に係る液体クロマトグラフにおいて、
更に、
予め登録されたオペレータの連絡先を記憶する連絡先記憶部と、
前記1つ以上の移動相容器の少なくとも1つについて、前記液量計で計測された移動相の液量が、前記予測使用量を下回った時点で、その旨を示すメッセージを前記連絡先に送信するメッセージ送信手段と、
を有するものである。
【0072】
第8態様に係る液体クロマトグラフによれば、更に、オペレータが分析室を離れている場合でも移動相の液量が低下していることを知ることができる。
【符号の説明】
【0073】
102…表示部
111…第1移動相容器
112…第2移動相容器
113…第1液量計
114…第2液量計
121…第1送液ポンプ
122…第2送液ポンプ
140…オートサンプラ
147…計量ポンプ
160…カラムオーブン
161…カラム
170…検出器
180…制御・処理部
181…バッチテーブル記憶部
182…分析制御部
183…データ処理部
184…対応関係記憶部
185…液量取得部
186…表示制御部