(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】車輪の製造方法、超音波探傷検査装置及び超音波探傷検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/04 20060101AFI20221213BHJP
G01M 17/10 20060101ALI20221213BHJP
B21K 1/28 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G01N29/04
G01M17/10
B21K1/28
(21)【出願番号】P 2021502137
(86)(22)【出願日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 JP2020006806
(87)【国際公開番号】W WO2020171169
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2019029809
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】服部 智大
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-048404(JP,A)
【文献】国際公開第2016/027209(WO,A1)
【文献】特開2013-044582(JP,A)
【文献】特開2007-046913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
G01M 17/10
B21K 1/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のビレットを切断し、切断面を底面とした円柱の形状を有する第2のビレットから車輪を製造する車輪の製造方法であって、
前記第1のビレット
を切断し、切断面を底面とした円柱の形状を有する前記第2のビレットを
取得する切断工程と、
前記底面から、
前記第2のビレットに対して超音波探傷検査を行う第1の超音波探傷検査工程と、
前記第2のビレットを車輪の形状に加工して、車輪形状加工品を製造する加工工程と、
前記車輪形状加工品に対して超音波探傷検査を行う第2の超音波探傷検査工程と、
前記車輪形状加工品から、前記第1の超音波探傷検査工程において超音波探傷検査の不感帯に相当する領域を含む部分を切削する切削工程と、
を有する
、車輪の製造方法。
【請求項2】
第1のビレットを切断し、切断面を底面とした円柱の形状を有する第2のビレットから車輪を製造する車輪の製造方法であって、
前記第1のビレットを切断し、切断面を底面とした円柱の形状を有する前記第2のビレットを取得する切断工程と、
前記第2のビレットの内部の領域であって
前記底面から所定距離離れた第1領域を探傷す
るアレイ探触子と、前記第2のビレットの内部の領域であって前記第1領域よりも
前記底面に近い第2領域を探傷す
る垂直探触子と
、を用いて、超音波探傷検査を行う
第1の超音波探傷検査工程と、
前記第2のビレットを車輪の形状に加工して、車輪形状加工品を製造する加工工程と、
前記車輪形状加工品に対して超音波探傷検査を行う第2の超音波探傷検査工程と、
を有する、車輪の製造方法。
【請求項3】
前記第1の超音波探傷検査工
程は、
前記底面のうちの第1の底面から、
前記第1の底面に対向する位置に配置された
前記アレイ探触子及び前記垂直探触子を用いて超音波探傷検査を行
い、
前記底面のうちの前記第1の底面とは異なる第2の底面から、
前記第2の底面に対向する位置に配置された
前記アレイ探触子及び前記垂直探触子を用いて超音波探傷検査を行う
、請求項2に記載の車輪の製造方法。
【請求項4】
切断面を底面とした円柱の形状を有するビレットに対して超音波探傷検査を行い、前記ビレットの欠陥の有無を判定する超音波探傷検査装置であって、
前記ビレットに対して、前記底面から超音波を送信し受信することで、前記ビレットの内部の領域であって前記底面から所定距離離れた第1領域を探傷するアレイ探触子と、
前記ビレットに対して、前記底面から超音波を送信し受信することで、前記ビレットの内部の領域であって前記第1領域よりも前記底面に近い第2領域を探傷する垂直探触子と、
前記アレイ探触子及び前記垂直探触子で受信した超音波に基づいて、前
記ビレットの欠陥の有無を判定する探傷処理部と、
を有し
、
前記垂直探触子は、前記アレイ探触子から送信される超音波よりも周波数が高い超音波を送信および受信する
、超音波探傷検査装置。
【請求項5】
前記
ビレットの側面と接触して、
前記ビレットを円周方向に回転させる回転機構部
を有し、
前記アレイ探触子及び前記垂直探触子は、
前記回転機構部によって前記円周方向に回転している
前記ビレット
を探傷する、請求項
4に記載の超音波探傷検査装置。
【請求項6】
前記底面のうちの第1の底面から、前記第1の底面に対向する位置に配置された前記アレイ探触子及び前記垂直探触子を用いて超音波探傷検査を行い、
前記底面のうちの前記第1の底面とは異なる第2の底面から、前記第2の底面に対向する位置に配置された前記アレイ探触子及び前記垂直探触子を用いて超音波探傷検査を行う、請求項
4又は5に記載の超音波探傷検査装置。
【請求項7】
切断面を底面とした円柱の形状を有するビレットに対して超音波探傷検査を
行い、前記ビレットの欠陥の有無を判定する超音波探傷検査方法であって、
前記ビレットの内部の領域であって前記底面から所定距離離れた第1領域を探傷するアレイ探触子と、前記ビレットの内部の領域であって前記第1領域よりも前記底面に近い第2領域を探傷する垂直探触子とを用いて、前記ビレットに対して、前記底面から超音波を送信し受信する送受信
ステップと、
前記アレイ探触子及び前記垂直探触子で受信した超音波に基づいて、前
記ビレットの欠陥の有無を判定する探傷処理ステップと、
を有し、
前記垂直探触子は、前記アレイ探触子から送信される超音波よりも周波数が高い超音波を送信および受信する
、超音波探傷検査方法。
【請求項8】
回転機構部を用い、前記ビレットの側面と接触して、
前記ビレットを円周方向に回転させる
回転ステップを有し、
前記アレイ探触子及び前記垂直探触子は、
前記回転機構部によって前記円周方向に回転している
前記ビレット
を探傷する、請求項
7に記載の超音波探傷検査方法。
【請求項9】
前記底面のうちの第1の底面から、前記第1の底面に対向する位置に配置された前記アレイ探触子及び前記垂直探触子を用いて超音波探傷検査を行い、
前記底面のうちの前記第1の底面とは異なる第2の底面から、前記第2の底面に対向する位置に配置された前記アレイ探触子及び前記垂直探触子を用いて超音波探傷検査を行う、請求項
7又は8に記載の超音波探傷検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半製品である円柱の形状を有するビレットに対して、超音波探傷検査を行う超音波探傷検査装置及び超音波探傷検査方法、並びに、当該ビレットを車輪の形状に加工する車輪の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、半製品であるビレットを加工して車輪などの製品を製造する際に、その製品の品質を保証するための検査が行われている。例えば、特許文献1では、車輪形状に加工された車輪形状加工品に対して、超音波探傷検査を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載の技術では、車輪形状加工品に対して超音波探傷検査を行って車輪製品の品質を保証しているが、そもそも、欠陥を具備するビレットをもとに車輪製品を製造しても、車輪製品の検査では不良品となるため、欠陥を具備するビレットをもとに車輪製品を製造することは無駄な作業となってしまう。また、このような無駄な作業が生じると、車輪製品の製造コストの上昇を招くことにもなる。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、半製品であるビレットを加工して車輪製品を製造する際に、無駄な作業を低減して製造コストの改善を実現する仕組みを提供することを第1の目的とする。
さらに、本発明は、半製品である円柱の形状を有するビレットに対して、超音波探傷検査を行う際に、超音波探傷検査を高精度で行える仕組みを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車輪の製造方法は、第1のビレットを切断し、切断面を底面とした円柱の形状を有する第2のビレットから車輪を製造する車輪の製造方法であって、前記第1のビレットを切断し、切断面を底面とした円柱の形状を有する前記第2のビレットを取得する切断工程と、前記底面から、前記第2のビレットに対して超音波探傷検査を行う第1の超音波探傷検査工程と、前記第2のビレットを車輪の形状に加工して、車輪形状加工品を製造する加工工程と、前記車輪形状加工品に対して超音波探傷検査を行う第2の超音波探傷検査工程と、前記車輪形状加工品から、前記第1の超音波探傷検査工程において超音波探傷検査の不感帯に相当する領域を含む部分を切削する切削工程と、を有する。
本発明の車輪の製造方法における他の態様は、第1のビレットを切断し、切断面を底面とした円柱の形状を有する第2のビレットから車輪を製造する車輪の製造方法であって、前記第1のビレットを切断し、切断面を底面とした円柱の形状を有する前記第2のビレットを取得する切断工程と、前記第2のビレットの内部の領域であって前記底面から所定距離離れた第1領域を探傷するアレイ探触子と、前記第2のビレットの内部の領域であって前記第1領域よりも前記底面に近い第2領域を探傷する垂直探触子と、を用いて、超音波探傷検査を行う第1の超音波探傷検査工程と、前記第2のビレットを車輪の形状に加工して、車輪形状加工品を製造する加工工程と、前記車輪形状加工品に対して超音波探傷検査を行う第2の超音波探傷検査工程と、を有する。
【0007】
本発明の超音波探傷検査装置は、切断面を底面とした円柱の形状を有するビレットに対して超音波探傷検査を行い、前記ビレットの欠陥の有無を判定する超音波探傷検査装置であって、前記ビレットに対して、前記底面から超音波を送信し受信することで、前記ビレットの内部の領域であって前記底面から所定距離離れた第1領域を探傷するアレイ探触子と、前記ビレットに対して、前記底面から超音波を送信し受信することで、前記ビレットの内部の領域であって前記第1領域よりも前記底面に近い第2領域を探傷する垂直探触子と、前記アレイ探触子及び前記垂直探触子で受信した超音波に基づいて、前記ビレットの欠陥の有無を判定する探傷処理部と、を有し、前記垂直探触子は、前記アレイ探触子から送信される超音波よりも周波数が高い超音波を送信および受信する。
【0008】
本発明の超音波探傷検査方法は、切断面を底面とした円柱の形状を有するビレットに対して超音波探傷検査を行い、前記ビレットの欠陥の有無を判定する超音波探傷検査方法であって、前記ビレットの内部の領域であって前記底面から所定距離離れた第1領域を探傷するアレイ探触子と、前記ビレットの内部の領域であって前記第1領域よりも前記底面に近い第2領域を探傷する垂直探触子とを用いて、前記ビレットに対して、前記底面から超音波を送信し受信する送受信ステップと、前記アレイ探触子及び前記垂直探触子で受信した超音波に基づいて、前記ビレットの欠陥の有無を判定する探傷処理ステップと、を有し、前記垂直探触子は、前記アレイ探触子から送信される超音波よりも周波数が高い超音波を送信および受信する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半製品であるビレットを加工して車輪製品を製造する際に、無駄な作業を低減して製造コストの改善を実現することができる。
さらに、本発明によれば、半製品である円柱の形状を有するビレットに対して、超音波探傷検査を行う際に、超音波探傷検査を高精度で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る車輪の製造方法における処理手順の一例を示す模式図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の実施形態における
図1に示す切断工程の詳細を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の実施形態における
図1に示す切断工程の詳細を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、本発明の実施形態に係る超音波探傷検査装置の概略構成の第1例を示す図である。
【
図3B】
図3Bは、本発明の実施形態に係る超音波探傷検査装置の概略構成の第1例を示す図である。
【
図4】
図4は、
図1の超音波探傷検査工程において、本発明の実施形態に係る超音波探傷検査装置による超音波探傷検査方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図4のステップS102及びS103の処理を説明するための図である。
【
図6A】
図6Aは、
図4のステップS104において、
図4のステップS102でアレイ探触子の超音波振動子が受信した超音波に基づき探傷処理部が行う探傷処理を説明するための図である。
【
図6B】
図6Bは、
図4のステップS104において、
図4のステップS102でアレイ探触子の超音波振動子が受信した超音波に基づき探傷処理部が行う探傷処理を説明するための図である。
【
図6C】
図6Cは、
図4のステップS104において、
図4のステップS102でアレイ探触子の超音波振動子が受信した超音波に基づき探傷処理部が行う探傷処理を説明するための図である。
【
図7】
図7は、
図4のステップS104において、
図4のステップS103で垂直探触子が受信した超音波に基づき探傷処理部が行う探傷処理を説明するための図である。
【
図8A】
図8Aは、本発明の実施形態に係る超音波探傷検査装置の概略構成の第2例を示す図である。
【
図8B】
図8Bは、本発明の実施形態に係る超音波探傷検査装置の概略構成の第2例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る車輪の製造方法における処理手順の一例を示す模式図である。
【0013】
まず、
図1の工程K1では、用意した素材ビレット210(第1のビレット)から、円柱の形状を有するビレットである丸ビレット220(第2のビレット)を切断する。
【0014】
この
図1に示す切断工程K1の詳細について、
図2A及び
図2Bを用いて説明する。
図2A及び
図2Bは、本発明の実施形態における
図1に示す切断工程K1の詳細を示す図である。
【0015】
図1に示す素材ビレット210は、
図2Aに示すように、円柱の形状を有するビレットであり、当該円柱における2つの底面211及び212と側面213を有して構成されている。ここで、素材ビレット210の底面211及び底面212は、例えば、他の素材ビレットとの切断面である。そして、本実施形態における切断工程K1では、高速丸鋸切断機を用いて、
図2Aに示す素材ビレット210の側面213の切断位置216で切断し、
図2Bに示す丸ビレット220を取得する。ここで、
図2Aに示す例では、4つの丸ビレット220が切断によって取得されることになる。1つの丸ビレット220は、
図2Bに示すように、素材ビレット210の側面213よりも幅の狭い円柱の形状を有するビレットであり、当該円柱における2つの底面221及び222と側面213よりも幅の狭い側面223を有して構成されている。ここで、
図2Bに示す丸ビレット220は、第1の底面221及び第2の底面222が切断面となるが、高速丸鋸切断機を用いて切断を行ったため、第1の底面221及び第2の底面222を平坦な面とすることができ、その結果、
図1に示す次工程の第1の超音波探傷検査工程K2を精度良く行うことが可能となる。
【0016】
ここで、再び、
図1の説明に戻る。
図1においては、
図2A及び
図2Bに示す本実施形態における切断工程K1によって取得された丸ビレット220を「丸ビレット220-1」として記載する。
【0017】
そして、本実施形態における切断工程K1が終了すると、続いて、
図1の工程K2では、丸ビレット220-1に対して、超音波探傷検査を行う。この際、本実施形態においては、例えば、
図1の切断工程K1から第1の超音波探傷検査工程K2までの搬送は、
図2Bに示す丸ビレット220の側面223を搬送用ローラーに接触させて載置し、搬送用ローラーを回転させることで丸ビレット220を搬送する形態をとり得る。
【0018】
図1に示す第1の超音波探傷検査工程K2の詳細について、
図3A~
図6Cを用いて説明する。
図3A及び
図3Bは、本発明の実施形態に係る超音波探傷検査装置100の概略構成の第1例を示す図である。具体的に、
図3Aは、本実施形態に係る超音波探傷検査装置100の全体的な概略構成の第1例を示し、また、
図3Bは、
図3Aに示す全体的な概略構成のうちの一部の構成を向きを変えて図示したものである。そして、本実施形態においては、
図3Aに示す第1例に係る超音波探傷検査装置100を「超音波探傷検査装置100-1」として記載する。
【0019】
超音波探傷検査装置100-1は、
図3Aに示すように、超音波探触子110、制御・処理部120、回転機構部130、入力部140、及び、表示部150を有して構成されている。
図3Aに示す例では、超音波探触子110、回転機構部130及び丸ビレット220(丸ビレット220-1)は、水槽の水中の所定位置に配置されている。ここで、丸ビレット220は、水槽の下面に配置されている回転機構部130の上に、側面223を接触させて載置されている。なお、
図3Aでは、丸ビレット220の第1の底面221及び第2の底面222をXZ面とし、第1の底面221及び第2の底面222と直交する丸ビレット220の厚み方向をY方向とするXYZ座標系を図示している。
【0020】
図3Aに示す超音波探触子110は、丸ビレット220を構成する2つの底面221及び222のうちの1つの底面である第1の底面221に超音波を送信し、当該送信を行った第1の底面221からの超音波を受信する探触子である。
図3Aに示す例では、超音波探触子110は、第1の底面221と対向する所定位置にそれぞれ固定されて配置されたアレイ探触子111及び複数の垂直探触子112を含み構成されている。
【0021】
図3Bは、
図3Aに示す丸ビレット220の第1の底面221を向きを変えて上面に図示し、丸ビレット220の第1の底面221と
図3Aに示す超音波探触子110に含まれるアレイ探触子111及び垂直探触子112との関係を示す図である。この際、丸ビレット220の第1の底面221とアレイ探触子111及び垂直探触子112との間には、超音波を伝搬させる媒質として水が介在している。
図3Bでは、
図3Aに示す複数の垂直探触子112のうちの1つの垂直探触子112を代表して図示するとともに、
図3Aに示すXYZ座標系に対応するXYZ座標系を図示している。また、
図3Bでは、丸ビレット220の第1の底面221と第2の底面222との間であって丸ビレット220のY方向の長さで定められる丸ビレット220の厚みL1を図示している。アレイ探触子111は、X方向に配列した複数の超音波振動子1111を備えて形成されており、第1の底面221と当該アレイ探触子111との間で、丸ビレットの内部の領域であって第1の底面221から所定距離d1(d1<L1)離れた第1領域401の欠陥の有無を探傷処理部122が判定するための超音波を送信及び受信する探触子である。具体的に、アレイ探触子111は、第1領域401を探傷するために、第1の底面221に超音波411を送信し、第1の底面221から超音波412を受信する。垂直探触子112は、第1の底面221と当該垂直探触子112との間で、丸ビレットの内部の領域であって第1領域401よりも第1の底面221に近い第2領域402の欠陥の有無を探傷処理部122が判定するための超音波を送信及び受信する探触子である。具体的に、垂直探触子112は、第2領域402を探傷するために、第1の底面221に超音波421を送信し、第1の底面221から超音波422を受信する。本実施形態では、例えば、アレイ探触子111から送信する超音波411の周波数よりも垂直探触子112から送信する超音波421の周波数を高く設定することにより、探傷処理部122は、垂直探触子112が受信した超音波422に基づいて第1領域401よりも第1の底面221に近い第2領域402の欠陥の有無を判定できる。また、例えば、垂直探触子112から送信する超音波421の周波数よりもアレイ探触子111から送信する超音波411の周波数を低く設定することにより、探傷処理部122は、アレイ探触子111が受信した超音波412をもとに生成した開口合成像に基づいて第2領域402よりも第1の底面221から遠い(第2の底面222に近い)第1領域401の欠陥の有無を判定できる。なお、本実施形態においては、例えば、アレイ探触子111から送信する超音波411の周波数及び垂直探触子112から送信する超音波421の周波数を調整することによって、アレイ探触子111が探傷する第1領域401と垂直探触子112が探傷する第2領域402とを一部重複させるようにしてもよい。また、
図3A及び
図3Bに示す例では、超音波探触子110として、アレイ探触子111及び垂直探触子112を設ける例について説明を行ったが、本実施形態においてはこれに限定されるものではなく、例えば丸ビレット220の厚みL1が小さい場合には、一方の探触子のみ設ける態様も、本実施形態に適用可能である。
【0022】
制御・処理部120は、超音波探傷検査装置100-1の動作を統括的に制御するとともに、各種の処理を行う。この制御・処理部120は、
図3Aに示すように、制御部121、探傷処理部122、及び、記憶部123を有して構成されている。
【0023】
制御部121は、超音波探傷検査装置100-1における各種の制御を行う。制御部121は、例えば、入力部140から超音波探傷検査を実行する旨の情報が入力されると、回転機構部130を制御して丸ビレット220の回転を開始し、その後、アレイ探触子111の超音波振動子1111及び垂直探触子112のそれぞれを制御して丸ビレット220の探傷を行うための超音波の送受信を行わせる。また、制御部121は、例えば、アレイ探触子111及び垂直探触子112による探傷の結果を表示部150に表示する制御を行う。さらに、制御部121は、例えば、入力部140から超音波探傷検査を終了する旨の情報が入力されると、回転機構部130を制御して丸ビレット220の回転を停止する。
【0024】
探傷処理部122は、アレイ探触子111で受信した超音波412、及び、垂直探触子112で受信した超音波422に基づいて、丸ビレット220の欠陥の有無を判定する探傷処理を行う。具体的に、本実施形態においては、探傷処理部122は、アレイ探触子111で受信した超音波412に基づいて丸ビレット220の内部における第1領域401の探傷処理を行い、また、垂直探触子112で受信した超音波422に基づいて丸ビレット220の内部における第2領域402の探傷処理を行う。
【0025】
記憶部123は、制御・処理部120において各種の制御及び処理を実行する際に用いるプログラムや情報を予め記憶しているとともに、制御・処理部120において各種の制御及び処理を実行することによって得られた情報等を記憶する。
【0026】
回転機構部130は、丸ビレット220の側面223と接触しており、制御・処理部120の制御に基づいて、丸ビレット220を円周方向に回転させる。
図3Aでは、回転機構部130が、丸ビレット220の円周方向として丸ビレット220を図中の矢印の方向に回転させる例を示している。
【0027】
入力部140は、制御・処理部120に対して、各種の情報を入力する。
【0028】
表示部150は、制御・処理部120の制御に基づいて、各種の画像や各種の情報を表示する。
【0029】
次に、超音波探傷検査方法の処理手順について説明する。
図4は、
図1の第1の超音波探傷検査工程K2において、本発明の実施形態に係る超音波探傷検査装置100による超音波探傷検査方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、以下に記載する
図4のフローチャートの説明においては、
図3A及び
図3Bに示す超音波探傷検査装置100-1の各構成部を用いた説明を行う。
【0030】
例えば、入力部140から丸ビレット220(丸ビレット220-1)の超音波探傷検査を実行する旨の情報が入力されると、まず、
図4のステップS101において、制御部121は、回転機構部130を制御して丸ビレット220を円周方向に回転させる。例えば、ここでは、
図3Aにおいて矢印の方向に丸ビレット220を回転させる。
【0031】
続いて、
図4のステップS102において、アレイ探触子111は、制御部121の制御に基づいて、丸ビレット220の第1の底面221に超音波411を送信し、また、第1の底面221からの超音波412を受信する。具体的には、アレイ探触子111のそれぞれの超音波振動子1111は、制御部121の制御に基づいて、丸ビレット220の第1の底面221に超音波411を送信し、また、第1の底面221からの超音波412を受信する。
図5は、
図4のステップS102及びS103の処理を説明するための図である。
図4のステップS102では、アレイ探触子111の超音波振動子1111は、
図5に示す丸ビレット220の任意の断面501の第1領域401を探傷するための超音波を送信及び受信する。具体的に、
図5に示す任意の断面501は、
図3Aに示す丸ビレット220においてY方向に沿って形成され、例えば、アレイ探触子111が丸ビレット220の0°の位置に対向している場合には、丸ビレット220の0°の位置における断面に相当する。そして、アレイ探触子111の超音波振動子1111が、円周方向に回転している丸ビレット220の一周分の各断面に対して超音波の送受信を終了すると、制御部121は、アレイ探触子111の超音波振動子1111による超音波の送受信を停止する制御を行った後に、
図4のステップS103に進む。
【0032】
図4のステップS103に進むと、複数の垂直探触子112は、それぞれ、制御部121の制御に基づいて、丸ビレット220の第1の底面221に超音波421を送信し、また、第1の底面221からの超音波422を受信する。この際、それぞれの垂直探触子112は、
図5に示すように、丸ビレット220の任意の断面501の領域であって第1領域401よりも第1の底面221に近い第2領域402を探傷するための超音波を送信及び受信する。そして、それぞれの垂直探触子112が、円周方向に回転している丸ビレット220の一周分の各断面に対して超音波の送受信を終了すると、制御部121は、それぞれの垂直探触子112による超音波の送受信を停止する制御を行った後に、
図4のステップS104に進む。
【0033】
図4のステップS104に進むと、探傷処理部122は、ステップS102で受信した超音波412に基づいて丸ビレット220の一周分の各断面における第1領域401の探傷処理(欠陥の有無を判定する)を行うとともに、それぞれの垂直探触子112で受信した超音波422に基づいて丸ビレット220の一周分の各断面における第2領域402の探傷処理を行う。
【0034】
図6A~
図6Cは、
図4のステップS104において、
図4のステップS102でアレイ探触子111の超音波振動子1111が受信した超音波412に基づき探傷処理部122が行う探傷処理を説明するための図である。
図6B及び
図6Cにおいて、
図3A及び
図3Bに示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。
まず、
図6Aにおいて、太線で示す波形610は、アレイ探触子111の超音波振動子1111が受信した超音波412の波形の一例を模式的に示したものである。より具体的に、
図6Aに示す波形610は、
図5に示す丸ビレット220の任意の断面501(例えば、丸ビレット220の0°の位置における断面)において、アレイ探触子111の超音波振動子1111が受信した超音波412の波形の一例を模式的に示したものである。この
図6Aでは、アレイ探触子111の超音波振動子1111から送信された超音波411が第1の底面221で反射した超音波412を表面反射エコー611として図示している。
そして、探傷処理部122は、ステップS102において、丸ビレット220の各断面についてアレイ探触子111の超音波振動子1111が受信した超音波412の信号をもとに、開口合成法を用いた処理を行って、
図6Bに示す開口合成像620を生成する。この
図6Bに示す開口合成像620の画素の濃度は、開口合成法による超音波波形の振幅の合計値の大きさに依存する。ここで、
図6Cに示すように、開口合成像620のうち、上方に位置する第2領域402については、不感帯となることから開口合成像620に基づいて欠陥の有無を判定することができない。なお、
図6Cに示す開口合成像620のうち、第2領域402の範囲は、事前に決定しておくことが好ましい。具体的に、例えば、第2領域402の範囲は、Y方向の異なる深さ位置に形成された複数の欠陥を備えた試験体(検査対象となる丸ビレット220と同種であって同一形状のもの)をアレイ探触子111によって探傷することで決定することができる。より具体的には、Y方向の異なる深さ位置に形成された複数の欠陥を備えた試験体に対して、アレイ探触子111の超音波振動子1111が超音波を送受信し、探傷処理部122が開口合成像を生成する。そして、探傷処理部122は、生成した開口合成像をもとに欠陥が検出できなくなるY方向の深さ位置を特定し、当該特定したY方向の深さ位置と丸ビレット220の第1の底面221とで囲まれた領域を第2領域402(不感帯)として決定する。なお、本実施形態においては、この第2領域402については、後述するように、垂直探触子112が受信した超音波422に基づいて探傷処理部122が欠陥の有無を判定する。
ここまでは、丸ビレット220の各断面における欠陥の有無の判定方法について説明をしたが、丸ビレット220の周方向の全体における欠陥の有無の判定方法については、以下のようになる。具体的に、
図5において、点線で示した境界線502よりも丸ビレット220の第1の底面221側(アレイ探触子111が配置されている側)に位置する第2領域402の欠陥の有無は、垂直探触子112が受信した超音波422に基づいて探傷処理部122が判定する。また、
図5において、点線で示した境界線502よりも丸ビレット220の第2の底面222側(アレイ探触子111が配置されていない側)に位置する第1領域401の欠陥の有無は、アレイ探触子111の超音波振動子1111が受信した超音波412にもとに生成された開口合成像に基づいて探傷処理部122が判定する。
次に、
図6Cを用いて、開口合成像620をもとに第1領域401の欠陥の有無の判定方法について説明する。探傷処理部122は、開口合成像620の第1領域401のうち、例えば、画素の濃度が所定の閾値を超える濃い部分に欠陥があると判定する。具体的に、
図6Cに示す例では、深さ位置100mmの領域に画素の濃度が所定の閾値を超える濃い部分が存在するため、探傷処理部122は、深さ位置100mmの領域に欠陥があると判定する。
また、本発明者は、この開口合成法を用いた処理に使用する受信波形を得る際に、アレイ探触子111として、複数の超音波振動子1111によって、丸ビレット220の深部に対して或る角度方向に絞った超音波411を送信し、丸ビレット220の内部に高エネルギーの超音波を伝搬させるべく、いわゆるフェイズドアレイ法を適用することで、欠陥の検出精度が向上するという知見を得ている。
【0035】
図7は、
図4のステップS104において、
図4のステップS103で垂直探触子112が受信した超音波422に基づき探傷処理部122が行う探傷処理を説明するための図である。なお、ここでは、複数の垂直探触子112のうちの1つの垂直探触子112を代表して説明を行う。
図7において、太線で示す波形710は、垂直探触子112が受信した超音波422の波形の一例を模式的に示したものである。より具体的に、
図7に示す波形710は、
図5に示す丸ビレット220の任意の断面501(例えば、丸ビレット220の0°の位置における断面)において、垂直探触子112が受信した超音波422の波形の一例を模式的に示したものである。この
図7では、垂直探触子112から送信された超音波421が第1の底面221で反射した超音波422を表面反射エコー711として図示している。探傷処理部122は、例えば、この表面反射エコー711を検出するための閾値Th1を設定しており、
図7に示す例では、表面反射エコー711が閾値Th1以上となる時刻t1を表面反射エコー711の受信時刻として設定する例を示している。ここで、探傷処理部122は、例えば、表面反射エコー711が収まり安定するまでの時間t2を予め設定している。また、探傷処理部122は、例えば、垂直探触子112から送信された超音波421が丸ビレット220の第2領域402をY方向に所定距離d1伝搬する時間(超音波421が丸ビレット220の第2領域402を伝搬する速度と所定距離d1とに基づき算出される時間)に基づき得られる時間t4を予め設定している。ここで、時間t4は、例えば、丸ビレット220の内部を伝搬する超音波の往復分を考慮した時間として設定され得る。そして、探傷処理部122は、例えば、時刻t1から時間t2が経過した時点である時刻t3から、時間t4が経過した時点である時刻t5までの期間に、第2領域402において傷などの欠陥を検出するための閾値Th2を設定する。そして、探傷処理部122は、この時刻t3から時刻t5までの期間に、例えば、
図7に点線で示すような閾値Th2以上となる欠陥反射エコー712が存在する場合には、探傷処理の結果として第2領域402に欠陥があると判定する。また、探傷処理部122は、第2領域402に欠陥があると判定した場合には、さらに、例えば、欠陥反射エコー712が閾値Th2以上となる時刻に基づき、第1の底面221からの欠陥の深さ位置を算出し、この算出した欠陥の深さ位置も探傷処理の結果として含め得る。また、探傷処理部122は、時刻t3から時刻t5までの期間に、例えば、
図7に点線で示すような閾値Th2以上となる欠陥反射エコー712が存在しない場合には、探傷処理の結果として第2領域402に欠陥が無いと判定する。
なお、垂直探触子112が送信する超音波421の周波数は、垂直探触子112によって送信される超音波421が丸ビレット220の第2領域402の全体をできるだけ探傷できるように設定されている。この際、本実施形態では、上述したように、アレイ探触子111から送信する超音波411の周波数よりも高周波数の超音波421を垂直探触子112から送信するようにしているため、表面反射エコー711の時間的な広がりを抑制することが可能であり、その結果、表面反射エコー711と第1の底面221の付近に存在する欠陥からの欠陥反射エコー712とを分離しやすくできる。即ち、表面反射エコー711による第1の底面221の付近における不感帯を低減することができる。ここで、
図3A及び
図3Bに示す超音波探傷検査装置100-1においては、例えば
図7の時刻t1から時刻t3までの時間t2に相当する、第1の底面221からY方向に一定範囲の領域では、垂直探触子112を用いた探傷処理(欠陥の有無を判定する)を行えない不感帯となる。そのため、
図3A及び
図3Bに示す超音波探傷検査装置100-1では、この垂直探触子112を用いた探傷処理を行えない不感帯を、丸ビレット220(丸ビレット220-1)の第1の底面221からY方向に深さ「P」(Pは、任意の正数)mmまでの領域と定義する。
【0036】
ここで、再び、
図4の説明に戻る。
図4のステップS104の処理が終了すると、続いて、
図4のステップS105において、表示部150は、制御・処理部120の制御に基づいて、
図4のステップS104における探傷処理の結果を表示する。この
図4のステップS105では、例えば、欠陥の有無を示す情報と、欠陥がある場合には更にその位置情報を表示する。この際、本実施形態においては、表示部150は、丸ビレット220の第1領域401及び第2領域402の各領域ごとに、探傷処理の結果を表示してもよい。この場合、表示部150は、例えば、丸ビレット220の第1領域401における探傷処理の結果として、
図6Cに示す第1領域401の探傷処理の結果に係る情報を表示する形態を採り得る。また、本実施形態においては、表示部150は、丸ビレット220の第1領域401及び第2領域402の探傷処理における結果を一緒に表示してもよい。この場合、表示部150は、例えば、
図6Cに示す第1領域401の探傷処理の結果に係る情報に加えて、
図6Cの第2領域402に、第2領域402の探傷処理の結果に係る情報を表示する形態を採り得る。
【0037】
続いて、
図4のステップS106において、制御部121は、例えば、入力部140から入力された情報に基づいて、超音波探傷検査を終了するか否かを判断する。この判断の結果、超音波探傷検査を終了しない場合には(S106/NO)、
図4のステップS102に戻り、ステップS102以降の処理を再度行う。
【0038】
一方、
図4のステップS106の判断の結果、超音波探傷検査を終了する場合には(S106/YES)、
図4のステップS107に進む。
図4のステップS107に進むと、制御部121は、回転機構部130を制御して丸ビレット220の回転を停止させる。そして、
図4のステップS107の処理が終了すると、
図4のフローチャートの処理が終了し、その結果、
図1の第1の超音波探傷検査工程K2が終了する。
【0039】
なお、
図4のフローチャートの処理では、
図4のステップS102においてアレイ探触子111が第1の底面221との間で超音波を送受信する際に、同時にそれぞれの垂直探触子112が第1の底面221との間で超音波を送受信するとその影響を受ける場合があり得ることから、
図4のステップS102の処理と
図4のステップS103の処理とを独立した別の処理として行うようにしている。この点、アレイ探触子111が第1の底面221との間で超音波を送受信することと、それぞれの垂直探触子112が第1の底面221との間で超音波を送受信することとを同時に行っても、相互の影響を無視できる場合には、
図4のステップS102の処理と
図4のステップS103の処理とを同時に行ってもよい。
【0040】
また、
図3A及び
図3Bに示す第1例に係る超音波探傷検査装置100-1では、丸ビレット220を構成する2つの底面221及び222のうちの1つの底面である第1の底面221に対して、超音波探触子110から超音波を送受信する態様であったが、本発明においてはこの態様に限定されるものではない。例えば、丸ビレット220を構成する2つの底面221及び222のうちの両方の底面である第1の底面221及び第2の底面222に対して、超音波探触子110から超音波を送受信する態様も、本発明に含まれるものである。この第1の底面221及び第2の底面222の両方に対して超音波探触子110から超音波を送受信する態様は、例えば、丸ビレット220のY方向の長さで定められる丸ビレット220の厚みが、
図3A及び
図3Bに示す第1例の場合よりも大きい場合に好適な態様であり、この態様を第2例として、
図8A及び
図8Bを用いて以下に説明する。
【0041】
図8A及び
図8Bは、本発明の実施形態に係る超音波探傷検査装置100の概略構成の第2例を示す図である。具体的に、
図8Aは、本実施形態に係る超音波探傷検査装置100の全体的な概略構成の第2例を示し、また、
図8Bは、
図8Aに示す全体的な概略構成のうちの一部の構成を向きを変えて図示したものである。そして、本実施形態においては、
図8Aに示す第2例に係る超音波探傷検査装置100を「超音波探傷検査装置100-2」として記載する。なお、
図8A及び
図8Bにおいて、
図3A及び
図3Bに示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。
【0042】
超音波探傷検査装置100-2は、
図8Aに示すように、第1の超音波探触子110-1、第2の超音波探触子110-2、制御・処理部120、回転機構部130、入力部140、及び、表示部150を有して構成されている。
【0043】
図8Aに示す例では、第1の超音波探触子110-1は、
図3Aに示す超音波探触子110と同様に、第1の底面221と対向する所定位置にそれぞれ固定されて配置されたアレイ探触子111及び複数の垂直探触子112を含み構成されている。さらに、
図8Aに示す例では、第2の超音波探触子110-2は、第2の底面222と対向する所定位置にそれぞれ固定されて配置されたアレイ探触子113及び複数の垂直探触子114を含み構成されている。
【0044】
図8Bは、
図8Aに示す丸ビレット220の第1の底面221を向きを変えて上面に図示し、丸ビレット220の第1の底面221と
図8Aに示す第1の超音波探触子110-1に含まれるアレイ探触子111及び垂直探触子112との関係、及び、丸ビレット220の第2の底面222と
図8Aに示す第2の超音波探触子110-2に含まれるアレイ探触子113及び垂直探触子114との関係を示す図である。この際、丸ビレット220の第1の底面221とアレイ探触子111及び垂直探触子112との間、及び、丸ビレット220の第2の底面222とアレイ探触子113及び垂直探触子114との間には、超音波を伝搬させる媒質として水が介在している。
図8Bでは、
図8Aに示す複数の垂直探触子112のうちの1つの垂直探触子112を代表して図示するとともに、
図8Aに示す複数の垂直探触子114のうちの1つの垂直探触子114を代表して図示している。また、
図8Bでは、丸ビレット220の第1の底面221と第2の底面222との間であって丸ビレット220のY方向の長さで定められる丸ビレット220の厚みL2を図示している。この
図8Bに示す丸ビレット220の厚みL2は、
図8Bに示す丸ビレット220の厚みL1よりも大きい場合を示している。
【0045】
アレイ探触子113は、アレイ探触子111と同様に、X方向に配列した複数の超音波振動子1131を備えて形成されており、第2の底面222と当該アレイ探触子113との間で、丸ビレットの内部の領域であって第2の底面222から所定距離d2(d2<L2)離れた第1領域403を探傷するための超音波を送信及び受信する探触子である。この際、本実施形態においては、所定距離d2は、所定距離d1と同じ値としてもよい。具体的に、アレイ探触子113は、第1領域403を探傷するために、第2の底面222に超音波431を送信し、第2の底面222から超音波432を受信する。垂直探触子114は、第2の底面222と当該垂直探触子114との間で、丸ビレットの内部の領域であって第1領域403よりも第2の底面222に近い第2領域404を探傷するための超音波を送信及び受信する探触子である。具体的に、垂直探触子114は、第2領域404を探傷するために、第2の底面222に超音波441を送信し、第2の底面222から超音波424を受信する。本実施形態では、例えば、アレイ探触子113から送信する超音波431の周波数よりも垂直探触子114から送信する超音波441の周波数を高く設定することにより、垂直探触子114が第1領域403よりも第2の底面222に近い第2領域404を探傷でき、また、垂直探触子114から送信する超音波441の周波数よりもアレイ探触子113から送信する超音波431の周波数を低く設定することにより、アレイ探触子113が第2領域404よりも第2の底面222から遠い(第1の底面221に近い)第1領域403を探傷できる。なお、本実施形態においては、例えば、アレイ探触子113から送信する超音波431の周波数及び垂直探触子114から送信する超音波441の周波数を調整することによって、アレイ探触子113が探傷する第1領域403と垂直探触子114が探傷する第2領域404とを一部重複させるようにしてもよく、また、アレイ探触子113が探傷する第1領域403とアレイ探触子111が探傷する第1領域401とを一部重複させるようにしてもよい。
【0046】
制御部121は、アレイ探触子111及び垂直探触子112のそれぞれに加えて、アレイ探触子113及び垂直探触子114のそれぞれを制御して、丸ビレット220の探傷を行うための超音波の送受信を行わせる。また、制御部121は、例えば、アレイ探触子111及び垂直探触子112による探傷の結果に加えて、アレイ探触子113及び垂直探触子114による探傷の結果を、表示部150に表示する制御を行う。
【0047】
探傷処理部122は、アレイ探触子111で受信した超音波412、及び、垂直探触子112で受信した超音波422に加えて、アレイ探触子113で受信した超音波432、及び、垂直探触子114で受信した超音波442に基づいて、丸ビレット220の欠陥の有無を判定する探傷処理を行う。具体的に、本実施形態においては、探傷処理部122は、アレイ探触子111で受信した超音波412に基づいて丸ビレット220の内部における第1領域401の探傷処理を行い、垂直探触子112で受信した超音波422に基づいて丸ビレット220の内部における第2領域402の探傷処理を行うとともに、アレイ探触子113で受信した超音波432に基づいて丸ビレット220の内部における第1領域403の探傷処理を行い、また、垂直探触子114で受信した超音波442に基づいて丸ビレット220の内部における第2領域404の探傷処理を行う。
【0048】
そして、
図8A及び
図8Bに示す第2例に係る超音波探傷検査装置100-2においても、
図4に示すフローチャートの処理手順を実行し得る。この
図8A及び
図8Bに示す第2例に係る超音波探傷検査装置100-2では、
図4のステップS102において、アレイ探触子111が丸ビレット220の第1の底面221との間で超音波を送信する際に、アレイ探触子113が丸ビレット220の第2の底面222との間で超音波を送信する態様をとり得る。また、この
図8A及び
図8Bに示す第2例に係る超音波探傷検査装置100-2では、
図4のステップS103において、それぞれの垂直探触子112が丸ビレット220の第1の底面221との間で超音波を送信する際に、それぞれの垂直探触子114が丸ビレット220の第2の底面222との間で超音波を送信する態様をとり得る。なお、
図8A及び
図8Bに示す超音波探傷検査装置100-2では、上述した
図3A及び
図3Bに示す超音波探傷検査装置100-1と同様に、垂直探触子112を用いた探傷処理を行えない不感帯を、丸ビレット220(丸ビレット220-1)の第1の底面221からY方向に深さ「P」(Pは、任意の正数)mmまでの領域と定義する。同様に、
図8A及び
図8Bに示す超音波探傷検査装置100-2では、垂直探触子114を用いた探傷処理を行えない不感帯を、丸ビレット220(丸ビレット220-1)の第2の底面222からY方向に深さ「P」mmまでの領域と定義する。
【0049】
本実施形態では、
図3A~
図8Bを用いて上述した処理を行うことによって、
図1に示す第1の超音波探傷検査工程K2を行う。
【0050】
ここで、再び、
図1の説明に戻る。
図1に示す第1の超音波探傷検査工程K2が終了すると、
図1の工程K3に進む。ここで、
図1においては、第1の超音波探傷検査工程K2が終了し、例えば、第1の超音波探傷検査工程K2で問題が無いと判定された丸ビレット220-1を「丸ビレット220-2」として記載する。
【0051】
図1の工程K3に進むと、丸ビレット220-2の計量を行う。この際、例えば、丸ビレット220-2の側面223を計量器に載置して、丸ビレット220-2の計量を行う形態をとり得る。ここで、
図1においては、計量工程K3が終了し、例えば、計量工程K3で規格範囲内の重さであると判定された丸ビレット220-2を「丸ビレット220-3」として記載する。
【0052】
続いて、
図1の工程K4では、まず、丸ビレット220-3を加熱処理する。この加熱処理では、例えば、
図3Bに示すように、丸ビレット220-3の第1の底面221を上面とした配置で加熱炉に入れ、丸ビレット220-3を加熱する。その後、加熱炉の外で、丸ビレット220-3に付着したスケールをデスケーリングする。次いで、
図1の工程K4では、デスケーリングした丸ビレット220-3に対して鍛造及び圧延を行って、丸ビレット220-3を車輪形状に加工する。この際、鍛造として、第1の鍛造と第2の鍛造を行う。
【0053】
図9A~
図9Cは、
図1の工程K4及び工程K7を説明するための模式図である。具体的に、
図9A及び
図9Bは、
図1の工程K4を説明するための模式図であり、また、
図9Cは、
図1の工程K7を説明するための模式図である。ここでは、
図9Aを用いて、
図1の工程K4における第1の鍛造と第2の鍛造を説明する。
第1の鍛造では、丸ビレット220-3を車輪粗地形状810に成形する。そして、第2の鍛造では、車輪粗地形状810を車輪形状に成形し、その後、圧延及び回転鍛造により、外径寸法の拡大等を行って、車輪形状加工品230-1を製造する。
図9Aに示す車輪形状加工品230-1は、穿孔加工領域821、ボス部822、板部823、及び、リム部824を有して構成されている。ここで、
図1の工程K4では、第1の超音波探傷検査工程K2の所要時間を考慮して、上述した一連の処理を1分程度で行うことが好適である。
【0054】
さらに、
図1の工程K4では、
図9Aに示す車輪形状加工品230-1に対して、車輪の中心軸の部分を穿孔する加工を行う。ここでは、
図9Bを用いて、
図1の工程K4における軸穴穿孔加工を説明する。具体的に、
図1の工程K4における軸穴穿孔加工では、
図9Aに示す車輪形状加工品230-1の穿孔加工領域821に、
図9Bに示す孔831をあけて、車輪形状加工品230-2を製造する。以上により、
図1の鍛造・圧延・軸穴穿孔加工工程K4が終了する。
【0055】
続いて、
図1の工程K5では、車輪形状加工品230-2を所定時間、自然冷却する徐冷を行う。ここで、
図1においては、この徐冷工程K5が終了した車輪形状加工品230-2を「車輪形状加工品230-3」として記載する。
【0056】
続いて、
図1の工程K6では、車輪形状加工品230-3の車輪踏面部(車輪のレールと接触する部分)のみ焼き入れすべく、加熱処理を行った後、車輪形状加工品230-3の車輪踏面部に水焼き入れを行う。その後、焼き戻しを行う。この一連の処理を行う熱処理工程K6は、車輪踏面部へ圧縮の残留応力を付与すること及び適切な硬さを得るために実施される工程である。ここで、
図1においては、この熱処理工程K6が終了した車輪形状加工品230-3を「車輪形状加工品230-4」として記載する。
【0057】
続いて、
図1の工程K7では、車輪形状加工品230-4に対して、超音波探傷検査を行う。ここでは、
図9Cを用いて、
図1の第2の超音波探傷検査工程K7を説明する。この第2の超音波探傷検査工程K7では、例えば、
図9Cに示すように、ボス部822については単一探触子850を用いた超音波探傷検査を行い、リム部824についてはアレイ探触子840を用いた超音波探傷検査を行う。この際、リム部824の超音波探傷検査では、リム部824の上面8241との間で超音波の送受信を行うアレイ探触子841と、リム部824の側面8242との間で超音波の送受信を行うアレイ探触子842とを用いて、超音波探傷検査を行う。ここで、
図1においては、第2の超音波探傷検査工程K7が終了し、例えば、第2の超音波探傷検査工程K7で問題が無いと判定された車輪形状加工品230-4を「車輪形状加工品230-5」として記載する。
【0058】
続いて、
図1の工程K8では、車輪形状加工品230-5に対して、仕上げ切削を行う。この仕上げ切削工程K8では、例えば、顧客の要求する寸法に合わせるために、切削機を用いて、車輪形状加工品230-5の表面を切削して寸法の調整を行う。本実施形態においては、この仕上げ切削工程K8では、車輪形状加工品230-5の表面の部分であって、第1の超音波探傷検査工程K2において超音波探傷検査の不感帯に相当する領域を含む部分を切削する。具体的に、第1の超音波探傷検査工程K2では、上述したように、垂直探触子112(或いは、垂直探触子114)を用いた探傷処理を行えない不感帯が、丸ビレット220の第1の底面221(或いは、第2の底面222)からY方向に深さ「P」(Pは、任意の正数)mmまでの領域となっている。ここで、本実施形態においては、鍛造・圧延・軸穴穿孔加工工程K4を経て製造された車輪形状加工品230では、上述した第1の超音波探傷検査工程K2の不感帯に相当する領域が、車輪形状加工品230の表面から深さ「Q」(Qは、任意の正数)mmまでの領域となっているものと定義する。そして、本実施形態においては、仕上げ切削工程K8では、車輪形状加工品230-5の表面から深さ「R」(Rは、Q以上の任意の正数)mmを切削して、第1の超音波探傷検査工程K2において超音波探傷検査の不感帯に相当する領域を含む部分を切削する。ここで、
図1においては、仕上げ切削工程K8を実施した後の車輪形状加工品230-5を「車輪形状加工品230-6」として記載する。この車輪形状加工品230-6では、仕上げ切削工程K8による切削によって第1の超音波探傷検査工程K2の不感帯に相当する領域が除去されているため、高品質な車輪製品を製造することが可能となる。
【0059】
続いて、
図1の工程K9では、車輪形状加工品230-6に対して、磁粉探傷検査(マグナ)及び外観検査を行う。このマグナ・外観検査工程K9は、製品としての品質を保証するために行われる検査である。ここで、
図1においては、マグナ・外観検査工程K9が終了し、例えば、マグナ・外観検査工程K9で問題が無いと判定された車輪形状加工品230-6を「車輪形状加工品230-7」として記載する。
【0060】
続いて、
図1の工程K10では、車輪形状加工品230-7を車輪製品として梱包などを行って、出荷する。そして、この出荷工程K10が終了すると、
図1に示す車輪の製造方法における一連の処理が終了する。
【0061】
以上説明したように、本発明の実施形態では、
図1に示すように、丸ビレット220を車輪の形状に加工する鍛造・圧延・軸穴穿孔加工工程K4の前に、丸ビレット220に対して超音波探傷検査を行う第1の超音波探傷検査工程K2と、を有する車輪の製造方法を提供するものである。
かかる構成によれば、丸ビレット220を車輪の形状に加工する前に生じた傷などの欠陥を第1の超音波探傷検査工程K2において検出することができるため、次工程以降に欠陥を具備する丸ビレット220が投入されることを防止できることから、無駄な作業を低減することができ、その結果、製造コストの改善を図ることが可能となる。
【0062】
また、本発明の実施形態に係る超音波探傷検査装置100では、円柱の形状を有する丸ビレット220に対して、当該円柱を構成する2つの底面221及び222のうちの少なくとも1つの底面に超音波を送信し、当該送信を行った底面からの超音波を受信する、少なくとも1つの超音波探触子110と、超音波探触子110で受信した超音波に基づいて、丸ビレット220の欠陥の有無を判定する探傷処理を行う探傷処理部122を備えるようにしている。ここで、本発明の実施形態では、超音波の送信を行う底面は、素材ビレット210から、丸ビレット220-1を切断した際の当該丸ビレット220-1の切断面となっている。
かかる構成によれば、切断工程K1の後すぐに第1の超音波探傷検査工程K2を行うことになり、このような状況下では切断面である底面にはスケールが発生せず、このようにスケールが発生していない底面に対して探傷検査を行うための超音波を送信することで、超音波探傷検査を効率良く且つ高精度に行うことができる。
【0063】
(その他の実施形態)
なお、上述した本発明の実施形態においては、
図3A及び
図3Bや
図8A及び
図8Bでは、超音波探触子110の位置を固定した上で、丸ビレット220を回転機構部130で回転させて、丸ビレット220を超音波探傷する位置を変更する形態を説明したが、本発明においてはこの形態に限定されるものではない。即ち、本発明においては、丸ビレット220と超音波探触子110との位置関係が相対的に変更できればよく、例えば、丸ビレット220を固定し、超音波探触子110を回転機構部によって丸ビレット220の周方向に沿って移動(回転)させるようにした形態も、本発明に適用可能である。この形態では、超音波探触子110を回転移動させることによって、丸ビレット220を固定することができるため、例えば丸ビレット220が真円ではない場合であっても、丸ビレット220の全体を精度良く探傷することができる。
【0064】
また、上述した本発明の実施形態においては、
図8A及び
図8Bでは、アレイ探触子111及び垂直探触子112のそれぞれと、アレイ探触子113及び垂直探触子114のそれぞれとを対向するようにして配置し、各探触子による超音波の送信タイミングを変えて探傷する形態を説明したが、本発明においてはこの形態に限定されるものではない。例えば、アレイ探触子111及び垂直探触子112のそれぞれと、アレイ探触子113及び垂直探触子114のそれぞれとを対向しないようにして配置する形態も、本発明に適用することができる。この形態の場合、例えば、アレイ探触子111を0°、垂直探触子112を180°の方向に沿って配置し、アレイ探触子113を90°、垂直探触子114を270°の方向に沿って配置してもよい。この場合、アレイ探触子111によって0°位置で検査し、その後、垂直探触子112によって180°位置で検査し、次に、アレイ探触子によって90°位置で検査し、垂直探触子114によって270°位置で検査する。その後、丸ビレット220を周方向に沿って回転させ、再度、それぞれの探触子によって検査を行う。このようにすることで、例えばアレイ探触子111によって送信された超音波が、他の探触子によって送信された超音波と干渉することを一層防止することができる。そのため、精度良く超音波探傷検査を行うことができる。
【0065】
また、上述した本発明の実施形態においては、
図4のフローチャートの説明では、アレイ探触子111を丸ビレット220の周方向に1回転させて超音波探傷検査を終了した後に、垂直探触子112を丸ビレット220の周方向に1回転させて超音波探傷検査を行う形態を説明したが、本発明においてはこの形態に限定されるものではない。例えば、丸ビレット220の周方向における或る角度位置でアレイ探触子111による超音波探傷検査を行った後に僅かな時間をおいて或る角度位置で垂直探触子112による超音波探傷検査を行い、その後、丸ビレット220を周方向に僅かに回転させてその位置でアレイ探触子111による超音波探傷検査と垂直探触子112による超音波探傷検査とを順次行う形態も、本発明に適用可能である。この形態によれば、検査時間の短縮を行うことが可能となる。
【0066】
なお、上述した本発明の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。