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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/00 20060101AFI20221213BHJP
   F16D 1/02 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H02K7/00 A
F16D1/02 210
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021517924
(86)(22)【出願日】2019-05-07
(86)【国際出願番号】 IB2019000502
(87)【国際公開番号】W WO2020225582
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑原 卓
(72)【発明者】
【氏名】新井 健嗣
(72)【発明者】
【氏名】デレッグ ジャック
(72)【発明者】
【氏名】フキョー アライン
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-167684(JP,A)
【文献】国際公開第2015/108147(WO,A1)
【文献】特開2014-050217(JP,A)
【文献】実公平07-024659(JP,Y2)
【文献】特公昭61-006623(JP,B2)
【文献】特開2017-105372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/14
H02K 7/00
H02K 7/08
F16D 1/02
F16D 1/00
F16J 15/10
F16J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内にロータ及びステータを備え、前記ロータのロータシャフトが動力伝達装置の動力伝達シャフトに接続される回転電機であって、
前記ハウジングにはベアリングが設けられ、
前記ロータシャフトは、その基端が前記ベアリングを介して支持され、
前記ロータシャフト及び前記動力伝達シャフトは、一方のシャフトの先端に形成されたシャフト孔に他方のシャフトが挿入されることにより連結され、
前記ロータシャフトは、
前記シャフト孔が形成される一方のシャフトの先端部位に対応する位置で、前記動力伝達シャフトに対してインロー接続する第1インロー部と、
前記第1インロー部とは軸方向の異なる位置に形成され、前記動力伝達シャフトに対してインロー接続する第2インロー部と、
前記第1インロー部と前記第2インロー部との間に形成され、前記動力伝達シャフトに対してスプライン結合するスプライン部と、を備え、
前記第1インロー部には、前記ロータシャフトと前記動力伝達シャフトとの間をシールするシール部材が配置され、
前記ロータシャフト及び前記動力伝達シャフトの少なくとも一方には、前記シャフト孔に連通し、前記ロータシャフトと前記動力伝達シャフトの連結部分に潤滑オイルを供給するためのオイル供給路が形成される、
回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記第1インロー部では、前記シール部材よりも前記シャフト孔が形成される一方のシャフトの先端側における前記ロータシャフトと前記動力伝達シャフトとの間の隙間が、前記シール部材よりも前記スプライン部側における前記ロータシャフトと前記動力伝達シャフトとの間の隙間よりも大きい、
回転電機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の回転電機であって、
前記ロータシャフトは、その先端に前記動力伝達シャフトが挿入される前記シャフト孔を備え、
前記第1インロー部は、前記シャフト孔の内周面に形成され、前記ロータシャフトの先端部位を含む位置で前記動力伝達シャフトの外周面に対して嵌合し、
前記第2インロー部は、前記シャフト孔の内周面に形成され、前記動力伝達シャフトの先端寄りの位置で前記動力伝達シャフトの外周面に対して嵌合する、
回転電機。
【請求項4】
請求項3に記載の回転電機であって、
前記オイル供給路は、前記ロータシャフトの軸心に沿って形成され、
前記潤滑オイルは、前記ロータシャフトの基端側から先端側に向かって供給される、
回転電機。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の回転電機であって、
前記ロータシャフトは、前記動力伝達シャフトの先端に形成された前記シャフト孔に挿入され、
前記第1インロー部は、前記ロータシャフトの外周面に形成され、前記動力伝達シャフトの先端寄りの位置で前記シャフト孔の内周面に対して嵌合し、
前記第2インロー部は、前記ロータシャフトの外周面に形成され、前記ロータシャフトの先端部位を含む位置で前記シャフト孔の内周面に対して嵌合する、
回転電機。
【請求項6】
請求項5に記載の回転電機であって、
前記オイル供給路は、前記動力伝達シャフトの軸心に沿って形成され、
前記潤滑オイルは、前記動力伝達シャフトの基端側から先端側に向かって供給される、
回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
JP2009-166591Aには、変速機に取り付けて使用する電動車両用のモータにおいて、変速機の動力伝達シャフトとモータのロータシャフトとを結合する構成が開示されている。
【発明の概要】
【0003】
一般的に、回転電機としてのモータのロータシャフト及び動力伝達装置としての変速機の動力伝達シャフトは、それぞれベアリングによって支持されている。ベアリングは構造上ガタを有しているため、ベアリングに支持されたシャフト同士を連結すると、シャフトが傾いた状態で支持される場合がある。このように、上記構成では、ロータシャフトの芯出し精度が低下するおそれがある。
【0004】
本発明は、ロータシャフトの芯出し精度を高めることが可能な回転電機を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の一態様によれば、ハウジング内にロータ及びステータを備え、ロータのロータシャフトが動力伝達装置の動力伝達シャフトに接続される回転電機が提供される。この回転電機では、ハウジングにベアリングが設けられ、ロータシャフトはその基端がベアリングを介して支持され、ロータシャフト及び動力伝達シャフトは一方のシャフトの先端に形成されたシャフト孔に他方のシャフトが挿入されることにより連結される。ロータシャフトは、シャフト孔が形成される一方のシャフトの先端部位に対応する位置で、動力伝達シャフトに対してインロー接続する第1インロー部と、第1インロー部とは軸方向の異なる位置に形成され、動力伝達シャフトに対してインロー接続する第2インロー部と、第1インロー部と第2インロー部との間に形成され、動力伝達シャフトに対してスプライン結合するスプライン部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本発明の第1の実施形態におけるモータと変速機とを備えるモータシステムの一部縦断面図である。
図2図2は、図1の第1インロー部の一部拡大図である。
図3図3は、本発明の第2の実施形態におけるモータと変速機とを備えるモータシステムの一部縦断面図である。
図4図4は、図3の第1インロー部の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0008】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態によるモータ50と、変速機60とを備えるモータシステム100の一部縦断面図である。
【0009】
図1に示すように、モータシステム100(回転電機システム)は、モータ50と、変速機60とを備え、例えば電気自動車用の駆動装置を構成する。本実施形態のモータシステム100は、自動車用システムとして説明するが、車両以外の機器、例えば各種電気機器又は産業機械の駆動装置として用いられてもよい。
【0010】
モータ50は、車両に搭載されたバッテリ等の電源から電力の供給を受けて回転し、車両の車輪を駆動する電動機として機能する。モータ50は、外力により駆動されて発電する発電機としても機能する。したがって、モータ50は、電動機及び発電機として機能する、いわゆるモータジェネレータ(回転電機)として構成されている。本実施形態では、モータ50は、電気自動車用のモータジェネレータとして構成されているが、各種電気機器又は産業機械に用いられるモータジェネレータとして構成されてもよい。
【0011】
モータ50は、ロータ10と、ロータ10を取り囲むように配置されるステータ20と、ロータ10及びステータ20を収容するハウジング30と、を備えている。
【0012】
ロータ10は、円筒状のロータコア11と、ロータコア11の挿入孔11A内に固定されるロータシャフト12と、を備える。ロータ10は、ステータ20の内部に、当該ステータ20に対して回転可能に配置されている。ロータシャフト12は、ロータコア11の両端面から軸方向外側に突出する軸部材として構成されている。ロータシャフト12の一端部121(左端)はハウジング30に設けられたベアリング40により回転自在に支持されており、ロータシャフト12の他端部122(右端)は変速機60の回転軸61に連結されている。ロータシャフト12及び回転軸61は、それらの回転中心が同一線上に位置するように配置されることが好ましい。
【0013】
ステータ20は電磁鋼板を複数枚積層して形成された円筒状部材であって、ステータ20のティースにはU相、V相及びW相のコイルが巻き回されている。ステータ20は、その外周面がハウジング30の内周面に対して接触した状態でハウジング30に固定されている。
【0014】
ハウジング30は、ロータ10及びステータ20を収容するケース部材であって、ハウジング本体部31及び蓋部32を有している。モータ50と変速機60とは隣接して配置されており、ハウジング本体部31の右側面はボルト等の締結手段により変速機60の変速機ケース62の左側面に固定されている。ハウジング本体部31の右側面には、ロータシャフト12の他端部122をハウジング30の外側に通過させる貫通孔33が形成されている。
【0015】
変速機60は、変速機ケース62内に回転軸61と図示しない複数のギアとを備え、ロータシャフト12の回転動力を変速してドライブシャフトに伝達する動力伝達装置として構成されている。回転軸61(動力伝達シャフト)は、変速機ケース62に設けられたボールベアリング63により回転自在に支持されている。
【0016】
なお、変速機ケース62の左側面には、回転軸61の左端(先端)を変速機ケース62の外側に通過させる貫通孔64が形成されている。変速機ケース62の貫通孔64は、ハウジング30の貫通孔33と連通するように配置されている。
【0017】
次に、モータ50のロータシャフト12と変速機60の回転軸61との支持構造について説明する。
【0018】
図1に示すように、モータ50のロータシャフト12は、ロータコア11の挿入孔11Aに固定される中央部123と、中央部123から変速機60側とは反対側に延設される一端部121(基端)と、中央部123から変速機60側に延設される他端部122(先端)とから構成されている。一端部121及び他端部122の外径は中央部123の外径よりも小さく形成されており、一端部121及び他端部122は中央部123よりも細い軸部材となっている。
【0019】
ハウジング30の蓋部32の内側にはベアリング40を支持する円筒状の軸受支持部34が突出形成されており、ロータシャフト12の一端部121(基端)は軸受支持部34の内周面に固定されたベアリング40により回転自在に支持されている。ベアリング40は、例えば単列のボールベアリング(深溝玉軸受)である。ベアリング40の内輪は一端部121の外周面に取り付けられ、ベアリング40の外輪は軸受支持部34の内周面に取り付けられる。このように、モータ50単体で見れば、ロータ10のロータシャフト12は一端部121のみがベアリング40により支持された状態となっている。
【0020】
続いて、ロータシャフト12の他端部122と変速機60の回転軸61との連結部分について説明する。
【0021】
本実施形態のロータシャフト12は、他端部122(先端)に形成されたシャフト孔12Aに回転軸61の先端が挿入されている。回転軸61は、外径が先端に向けて段階的に小径となるように形成された軸部材である。回転軸61の先端部位には、先端側から順番に第3挿入部613、第2挿入部612、及び第1挿入部611が形成されている。第2挿入部612は、第3挿入部613の右側(基端側)に位置しており、第3挿入部613の外径よりも大きな外径を有している。第1挿入部611は、第2挿入部612の右側(基端側)に位置しており、第2挿入部612の外径よりも大きな外径を有している。
【0022】
ロータ10のロータシャフト12は、先端面から軸方向に窪んで形成されるシャフト孔12Aを有している。シャフト孔12Aは、その先端から孔底12Bに向かって、第1インロー部124、第1インロー部124より内径の小さいスプライン部125、及びスプライン部125よりも内径の小さい第2インロー部126を備えている。
【0023】
ロータシャフト12のシャフト孔12A内に回転軸61が挿入された状態では、ロータシャフト12の第1インロー部124は、第1挿入部611と対向する位置で、回転軸61に対してインロー接続する。つまり、ロータシャフト12のシャフト孔12Aの内周面に形成される第1インロー部124は、ロータシャフト12の先端部位を含む位置(シャフト孔12Aの開口端寄りの位置)で回転軸61(第1挿入部611)の外周面に対して嵌合する。また、ロータシャフト12の第2インロー部126は、第3挿入部613と対向する位置で、回転軸61に対してインロー接続する。つまり、ロータシャフト12のシャフト孔12Aの内周面に形成される第2インロー部126は、回転軸61の先端寄りの位置(シャフト孔12Aの孔底寄りの位置)で回転軸61(第3挿入部613)の外周面に対して嵌合する。
【0024】
ロータシャフト12のスプライン部125は、軸方向において、第1インロー部124と第2インロー部126との間に形成されている。換言すれば、ロータシャフト12の他端部122には、スプライン部125を介して軸方向に距離を空けて第1インロー部124と第2インロー部126とが配置されている。このスプライン部125は、回転軸61(第2挿入部612)の外周面に対してスプライン結合するように構成されている。ロータシャフト12と回転軸61とがスプライン結合することで、両シャフトにおける相対回転移動が規制される。
【0025】
上記構成によれば、ロータシャフト12は、スプライン部125を挟んで軸方向に距離を空けて配置される第1及び第2インロー部124,126を介して回転軸61に対して連結されることとなる。これにより、ロータシャフト12と回転軸61との連結部分が長くなるため、組み付け時におけるシャフト同士の軸心のずれをより確実に抑制することが可能となる。
【0026】
ところで、上述したようなモータシステム100においても、モータ50の作動時等には、ロータシャフト12の回転に伴ってロータシャフト12と回転軸61との連結部分に種々の応力が作用する。そして、このような応力によってシャフト連結部分に摩耗が生じることがある。したがって、シャフトの芯出し精度を高めた場合であっても、シャフト連結部分の摩耗を抑制することが望ましい。
【0027】
したがって、本実施形態のモータシステム100は、シャフト連結部分に潤滑オイルを供給するように構成されている。
【0028】
ロータシャフト12には、シャフト孔12Aに連通するオイル供給路14が形成されており、このオイル供給路14を通じてロータシャフト12と回転軸61との連結部分に潤滑オイルが供給される。なお、オイル供給路14にはモータ50の外部等に配置されたポンプPから潤滑オイルが供給される。
【0029】
ロータシャフト12と回転軸61とはインロー接続及びスプライン結合されてはいるが、このようなシャフト連結部分においても、第1インロー部124と第1挿入部611との間、スプライン部125と第2挿入部612との間、及び第2インロー部126と第3挿入部613との間には微小隙間が存在している。この隙間は、ロータシャフト12のシャフト孔12A内に回転軸61の先端部位を挿入するために必要な隙間であり、インロー接続及びスプライン結合に悪影響を与えない程度の隙間である。また、ロータシャフト12のシャフト孔12Aにおいては、回転軸61の第3挿入部613の先端と孔底12Bとの間にクリアランスC1が設けられている。本実施形態では、上述した微小隙間及びクリアランスC1を通じて、オイル供給路14から供給される潤滑オイルをシャフト連結部分に供給する。このように、本実施形態では、クリアランスC1から第1インロー部124にわたって、シャフト孔12Aの内周面と回転軸61の外周面との間に存在する隙間は、シャフト連結部分に潤滑オイルを供給するためのオイル供給用スペースF1として機能している。
【0030】
なお、オイル供給路14からスペースF1を通じて供給される潤滑オイルがロータシャフト12の先端から漏出しないように、ロータシャフト12の第1インロー部124におけるシャフト孔12Aの内周面と回転軸61の第1挿入部611におけるシャフト外周面との間にはシール部材S1が配置されている。このシール部材S1は、例えば回転軸61の第1挿入部611の外周面に取り付けられるOリングである。
【0031】
続いて、第1実施形態における第1インロー部124の領域D1の構成について説明する。図2は第1インロー部124の領域D1の拡大図である。
【0032】
変速機60の回転軸61における第1挿入部611の外周面には、周方向にシール部材配置用の環状溝G1が形成される。溝G1の軸方向寸法は、シール部材S1の断面の直径R1と略等しい。リング状のシール部材S1は、第1挿入部611の溝G1に嵌め込まれ、回転軸61の軸方向において固定される。
【0033】
ロータシャフト12の第1インロー部124の左側、つまりシール部材S1よりもシャフト孔12Aの孔底12B側の第1インロー部124は、回転軸61の外周面がシャフト孔12Aの内周面にインロー接続される部位である。この部位における回転軸61の外径はシャフト孔12Aの径よりもわずかに小さく形成されている。これにより、ロータシャフト12と回転軸61との連結部分に隙間LO1が形成される。
【0034】
一方、第1インロー部124の右側、つまりシール部材S1よりもロータシャフト12の先端側の第1インロー部124は、隙間LO1よりも大きな隙間LA1が形成されている。隙間LA1の大きさの上限値はシール部材S1が溝G1から脱落しない大きさであり、また隙間LA1の大きさの下限値は回転動作やベアリングのガタ等に伴ってロータシャフト12が傾いた場合であってもロータシャフト12と回転軸61とが接触しない大きさである。
【0035】
この隙間LO1,LA1は、第1インロー部124の内径及び第1挿入部611の外径の両方又はいずれか一方を調整することによって設計される。このように、本実施形態のロータシャフト12の第1インロー部124では、いわゆる空気中締め代としての隙間LA1が、いわゆる油中締め代としての隙間LO1よりも大きくなる構成となっている。
【0036】
上述したように、油中締め代としての隙間LO1を構成するスペースF1には、ロータシャフト12と回転軸61との連結部を潤滑する潤滑オイルが供給される。本実施形態において、ポンプPから吐出される潤滑オイルは、図1に示すように、オイル供給路14の基端側から先端側に向かって供給され、クリアランスC1からスペースF1に流入し、第2インロー部126を通って第1インロー部124に案内される。このように潤滑オイルを供給することで、ロータシャフト12と回転軸61との連結部位における摩耗を抑制することが可能となる。
【0037】
なお、図1に示したように、本実施形態では、潤滑オイルはロータシャフト12の基端側から先端側に向かって供給される。しかしながら、潤滑オイルの供給方向はこれに限られない。例えば、オイル供給路14は、回転軸61の軸心に沿って形成されてもよい。この場合、潤滑オイルは、回転軸61の基端から先端へ向かって供給された後にクリアランスC1からスペースF1へ流入する。
【0038】
また、モータ50の内部がオイル等によって冷却される構成である場合には、シャフト連結部分に供給されるオイルが回転軸61の外周に流出してもよい。このような場合には、シール部材S1は設けられなくてもよい。
【0039】
上記した本実施形態によるモータシステム100のモータ50(回転電機)によれば、以下の作用効果を得ることができる。
【0040】
本実施形態のモータシステム100のモータ50は、ハウジング30内にロータ10及びステータ20を備え、ロータ10のロータシャフト12が変速機60の回転軸61に接続されるモータである。ハウジング30にはベアリング40が設けられ、ロータシャフト12は、その一端部121がベアリング40を介して支持され、ロータシャフト12及び回転軸61は、ロータシャフト(一方のシャフト)12の先端に形成されたシャフト孔12Aに回転軸(他方のシャフト)61が挿入されることにより連結される。ロータシャフト12は、シャフト孔12Aが形成されるロータシャフト12の先端部位を含む位置で、回転軸61に対してインロー接続する第1インロー部124と、第1インロー部124とは軸方向の異なる位置に形成され、回転軸61に対してインロー接続する第2インロー部126と、第1インロー部124と第2インロー部126との間に形成され、回転軸61に対してスプライン結合するスプライン部125と、を備える。
【0041】
このように、ロータシャフト12は、軸方向に距離を空けて配置される第1インロー部124及び第2インロー部126を用いた二箇所のインロー接続によって回転軸61に対して連結するため、ロータシャフト12と回転軸61との連結部分が長くなる。これにより、ロータシャフト12がガタを含むベアリング40によって支持されている場合であっても、組み付け時におけるシャフト同士の軸心のずれを抑制することができ、ロータシャフト12の芯出し精度を高めることが可能となる。
【0042】
また、本実施形態のモータシステム100では、ロータシャフト12の第1インロー部124と回転軸61の第1挿入部611との間にシール部材S1が配置され、ロータシャフト12及び回転軸61の少なくとも一方には、シャフト孔61Aに連通し、ロータシャフト12と回転軸61との連結部分に潤滑オイルを供給するためのオイル供給路14が形成される。
【0043】
これにより、シール部材S1によってシールされたロータシャフト12のシャフト孔12Aの内周面と回転軸61の外周面との間のスペースF1に潤滑オイルを供給することができ、ロータシャフト12と回転軸61との間の摩擦係数を下げて摩耗を抑制することができる。また、シール部材S1を設けることにより、スペースF1から潤滑オイルが流出しないので、モータ50の内部に潤滑オイルが流入することはない。
【0044】
また、本実施形態では、第1インロー部124では、シール部材S1よりもロータシャフト12の先端側におけるロータシャフト12と回転軸61との間の隙間LA1が、シール部材S1よりもスプライン部125側におけるロータシャフト12と回転軸61との間の隙間LO1よりも大きい。
【0045】
このように、芯出し精度を高めるために、第1インロー部124に位置する隙間LO1を狭めるとともに、ロータシャフト12の先端側の隙間LA1をLO1よりも大きく設計することによって、万一ロータシャフト12が傾いた場合であっても、ロータシャフト12と回転軸61とが接触することを抑制できる。
【0046】
また、本実施形態では、ロータシャフト12は、その先端に回転軸61が挿入されるシャフト孔12Aを備え、第1インロー部124は、シャフト孔12Aの内周面に形成され、ロータシャフト12の先端部位を含む位置で回転軸61の外周面に対して嵌合し、第2インロー部126は、シャフト孔12Aの内周面に形成され、回転軸61の先端寄りの位置で回転軸61の外周面に対して嵌合する。
【0047】
この構成によれば、ロータシャフト12のシャフト孔12Aの内周面において軸方向に異なる位置にインロー接続部を二箇所設けるだけで、シャフト同士の芯出しの精度を向上させることができる。このように、ロータシャフト12又は回転軸61の周囲に他の部品を追加しなくてもシャフト同士の軸心を一致させることができ、簡易な構成で芯出し精度の向上を図ることが可能となる。
【0048】
また、本実施形態のオイル供給路14は、ロータシャフト12の軸心に沿って形成され、潤滑オイルは、ロータシャフト12の基端側から先端側に向かって供給される。
【0049】
このように、オイル供給路14がロータシャフト12の軸心に沿って形成されることにより、ロータシャフト12の軸心に供給される潤滑オイルの流動の方向と、スペースF1が延びる方向とが一致するので、潤滑オイルがスペースF1に対して案内されやすくなる。
【0050】
<第2実施形態>
次に、図3を参照して、第2実施形態におけるモータ50と、変速機60とを備えるモータシステム100について説明する。本実施形態と第1実施形態とは、ロータシャフト12と回転軸61との連結部分の構成が主に相違する。
【0051】
本実施形態のロータシャフト12は、回転軸61の先端に形成されたシャフト孔61Aに挿入されている。変速機60の回転軸61は、先端面が軸方向に窪んで形成されるシャフト孔61Aを有している。シャフト孔61Aは、その先端から孔底61Bに向かって内径が段階的に小さくなるように構成されており、先端側から順番に第1挿入部614、第2挿入部615、及び第3挿入部616を備えている。第2挿入部615は、第1挿入部614の右側(基端側)に位置しており、第1挿入部614より小さい内径を有している。第3挿入部616は、第2挿入部615の右側(基端側)に位置しており、第2挿入部615より小さい内径を有している。
【0052】
ロータシャフト12の他端部122は、外径が先端に向けて段階的に小径となるように形成された軸部材である。他端部122には、先端側から順番に第2インロー部129、スプライン部128、及び第1インロー部127が形成されている。スプライン部128は、第1インロー部127の右側(先端側)に位置しており、第1インロー部127の外径よりも小さな外径を有している。第2インロー部129は、スプライン部128の右側(先端側)に位置しており、スプライン部128の外径よりも小さい外径を有している。
【0053】
回転軸61のシャフト孔61A内にロータシャフト12が挿入された状態では、ロータシャフト12の第1インロー部127は、第1挿入部614と対向する位置で、回転軸61に対してインロー接続する。つまり、ロータシャフト12の外周面に形成される第1インロー部127は、回転軸61の先端寄りの位置(シャフト孔61Aの開口端寄りの位置)でシャフト孔61A(第1挿入部614)の内周面に対して嵌合する。また、ロータシャフト12の第2インロー部129は、第3挿入部616と対向する位置で、回転軸61に対してインロー接続する。つまり、ロータシャフト12の外周面に形成される第2インロー部129は、ロータシャフト12の先端部位を含む位置(シャフト孔61Aの孔底寄りの位置)でシャフト孔61A(第3挿入部616)の内周面に対して嵌合する。
【0054】
ロータシャフト12のスプライン部128は、軸方向において、第1インロー部127と第2インロー部129との間に形成されている。換言すれば、ロータシャフト12の他端部122には、スプライン部128を介して軸方向に距離を空けて第1インロー部127と第2インロー部129とが配置されている。このスプライン部128は、回転軸61(第2挿入部615)の内周面に対してスプライン結合するように構成されている。ロータシャフト12と回転軸61とがスプライン結合することで、両シャフトにおける相対回転移動が規制される。
【0055】
上記構成によれば、ロータシャフト12は、スプライン部128を挟んで軸方向に距離を空けて配置される第1及び第2インロー部127,129を介して回転軸61に対して連結されることとなる。これにより、ロータシャフト12と回転軸61との連結部分が長くなるため、組み付け時におけるシャフト同士の軸心のずれをより確実に抑制することが可能となる。
【0056】
続いて、本実施形態における潤滑オイルの供給について説明する。
【0057】
第1実施形態と同様、ロータシャフト12と回転軸61とはインロー接続及びスプライン結合されてはいるが、このようなシャフト連結部分においても、第1インロー部127と第1挿入部614との間、スプライン部128と第2挿入部615との間、及び第2インロー部129と第3挿入部616との間には微小隙間が形成されている。この隙間は、回転軸61のシャフト孔61A内にロータシャフト12の先端部位を挿入するために必要な隙間であり、インロー接続及びスプライン結合に悪影響を与えない程度の隙間である。また、回転軸61のシャフト孔61Aにおいては、ロータシャフト12の第2インロー部129の先端と孔底61Bとの間にクリアランスC2が設けられている。本実施形態では、上述した微小隙間及びクリアランスC2を通じて、オイル供給路15から供給される潤滑オイルをシャフト連結部分に供給する。このように、本実施形態では、クリアランスC2から第1インロー部127にわたって、シャフト孔61Aの内周面とロータシャフト12の外周面との間に存在する隙間は、シャフト連結部分に潤滑オイルを供給するためのオイル供給用スペースF2として機能している。
【0058】
なお、オイル供給路15からスペースF2を通じて供給される潤滑オイルが回転軸61の先端から流出しないように、ロータシャフト12の第1インロー部127におけるシャフト12の外周面とシャフト孔61Aの第1挿入部614の内周面との間にシール部材S2が配置されている。このシール部材S2は、例えばロータシャフト12の第1インロー部127の外周面に取り付けられるOリングである。
【0059】
続いて、第2の実施形態における第1インロー部127の領域D2の構成について説明する。図4は、第1インロー部127の領域D2の拡大図である。
【0060】
図4に示すように、第1インロー部127におけるロータシャフト12の外周面には、周方向にシール部材配置用の環状溝G2が形成される。溝G2は、その軸方向の寸法がシール部材S2の断面の直径R2と略等しい。リング状のシール部材S2は、第1インロー部127の溝G2に嵌め込まれ、ロータシャフト12の軸方向において固定される。
【0061】
ロータシャフト12の第1インロー部127の右側、つまりシール部材S2よりもスプライン部128側の第1インロー部127は、ロータシャフト12の外周面がシャフト孔61Aの内周面にインロー接続される部位である。この部位におけるシャフト12外径はシャフト孔61Aの径よりもわずかに小さく形成されている。これにより、ロータシャフト12と回転軸61との連結部分に隙間LO2が形成される。
【0062】
一方、第1インロー部127の左側、つまりシール部材S2よりも回転軸61の先端側の第1インロー部127は、隙間LO2よりも大きな隙間LA2が形成されている。隙間LA2の大きさの上限値はシール部材S2が溝G2から脱落しない大きさであり、また隙間LA2の大きさの下限値は回転動作やベアリングのガタ等に伴ってロータシャフト12が傾いた場合であってもロータシャフト12と回転軸61とが接触しない大きさである。
【0063】
この隙間LO2,LA2の大きさは、第1インロー部127の外径及び第1挿入部614の内径の両方又はいずれか一方を調整することによって、設計することができる。このように、本実施形態の第2インロー部129では、いわゆる空気中締め代としての隙間LA2が、いわゆる油中締め代としての隙間LO2よりも大きくなる構成となっている。
【0064】
上述したように、油中締め代としての隙間LO2を構成するスペースF2には、ロータシャフト12と回転軸61との連結部位を潤滑する潤滑オイルが供給される。本実施形態において、ポンプPから吐出される潤滑オイルは、図3に示すように、オイル供給路15の基端側から先端側に向かって供給され、クリアランスC2からスペースF2に流入し、第2インロー部129を通って第1インロー部127に案内される。このように、潤滑オイルを供給することで、ロータシャフト12と回転軸61との連結部位における摩耗を抑制することが可能となる。
【0065】
なお、本実施形態では、潤滑オイルは、回転軸61の基端側から先端側に向かって供給される。しかしながら、潤滑オイルの供給方向はこれに限られない。例えば、オイル供給路15は、ロータシャフト12の軸心に形成されてもよい。この場合、潤滑オイルは、ロータシャフト12の基端から先端へ向かって供給された後にクリアランスC2からスペースF2へ流入する。
【0066】
また、モータ50の内部が潤滑オイル等によって冷却される構成である場合には、シャフト連結部分に供給される潤滑オイルがロータシャフト12の外周に流出してもよい。このような場合には、シール部材S2は設けられなくてもよい。
【0067】
上記した本実施形態によるモータシステム100のモータ50(回転電機)によれば、以下の作用効果を得ることができる。
【0068】
本実施形態のモータシステム100のモータ50は、ハウジング30内にロータ10及びステータ20を備え、ロータ10のロータシャフト12が変速機60の回転軸61に接続されるモータである。ハウジング30にはベアリング40が設けられ、ロータシャフト12は、その一端部121がベアリング40を介して支持され、ロータシャフト12及び回転軸61は、回転軸61(一方のシャフト)の先端に形成されたシャフト孔61Aにロータシャフト12(他方のシャフト)が挿入されることにより連結される。ロータシャフト12は、シャフト孔61Aが形成される一方のシャフトの先端部位に対応する位置で、回転軸61に対してインロー接続する第1インロー部127と、第1インロー部127とは軸方向の異なる位置に形成され、回転軸61に対してインロー接続する第2インロー部129と、第1インロー部127と第2インロー部129との間に形成され、回転軸61に対してスプライン結合するスプライン部128と、を備える。
【0069】
これにより、ロータシャフト12は、軸方向に距離を空けて配置される第1インロー部127及び第2インロー部129を用いた二箇所のインロー接続によって回転軸61に対して連結するため、ロータシャフト12と回転軸61との連結部分が長くなる。これにより、ロータシャフト12がガタを含むベアリング40によって支持されている場合であっても、組み付け時におけるシャフト同士の軸心のずれを抑制することができ、ロータシャフト12の芯出し精度を高めることが可能となる。
【0070】
また、本実施形態では、第1インロー部127には、ロータシャフト12と回転軸61との間をシールするシール部材S2が配置され、ロータシャフト12及び回転軸61の少なくとも一方には、シャフト孔61Aに連通し、ロータシャフト12と回転軸61との連結部分に潤滑オイルを供給するためのオイル供給路15が形成される。
【0071】
これにより、シール部材S2によってシールされたロータシャフト12の外周面と回転軸61のシャフト孔61Aの内周面との間のスペースF2に潤滑オイルを供給することができ、ロータシャフト12と回転軸61との間の摩擦係数を下げて摩耗を抑制することができる。また、シール部材S2を設けることにより、スペースF2から潤滑オイルが流出しないので、モータ50の内部に潤滑オイルが流入することはない。
【0072】
また、第1インロー部127では、シール部材S2よりも回転軸61の先端側におけるロータシャフト12と回転軸61との間の隙間LA2が、シール部材S2よりもスプライン部128側におけるロータシャフト12と回転軸61との間の隙間LO2よりも大きい。
【0073】
このように、芯出し精度を高めるために、第1インロー部127に位置する隙間LO2を狭めるとともに、回転軸61の先端側の隙間LA2をLO2よりも大きく設計することによって、万一ロータシャフト12が傾いた場合であっても、ロータシャフト12と回転軸61とが接触することを抑制できる。
【0074】
また、ロータシャフト12は、回転軸61の先端に形成されたシャフト孔61Aに挿入される。第1インロー部127は、ロータシャフト12の外周面に形成され、回転軸61の先端寄りの位置でシャフト孔61Aの内周面に対して嵌合する。第2インロー部129は、ロータシャフト12の外周面に形成され、ロータシャフト12の先端部位を含む位置でシャフト孔61Aの内周面に対して嵌合する。
【0075】
この構成によれば、ロータシャフト12の外周面において軸方向に異なる位置にインロー接続部を二箇所設けるだけで、シャフト同士の芯出しの精度を向上させることができる。このように、ロータシャフト12又は回転軸61の周囲に他の部品を追加しなくてもシャフト同士の軸心を一致させることができ、簡易な構成で芯出し精度の向上を図ることが可能となる。
【0076】
また、本実施形態では、オイル供給路15は、回転軸61の軸心に沿って形成され、潤滑オイルは回転軸61の基端側から先端側に向かって供給される。
【0077】
このように、オイル供給路15が回転軸61の軸心に沿って形成されることにより、回転軸61の軸心に供給される潤滑オイルの流動の方向と、スペースF2が延びる方向とが一致するので、潤滑オイルがスペースF2に対して案内されやすくなる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0079】
上述した各実施形態において説明したロータコア11、ステータ20、及びコア支持部13等は、円筒状の部材としたが、多角形状の筒部材であってもよい。
【0080】
また、上述した各実施形態では、モータ50は動力伝達装置としての変速機60に組み付けられているが、モータ50は減速機等の動力伝達装置に組み付けられてもよい。この場合においても、各実施形態における技術思想を適用することで、モータ50のロータシャフト12と減速機の回転軸とを連結することができる。
【0081】
さらに、上述した実施形態では、ロータシャフト12と回転軸61との相対回転の規制は、スプライン継手構造により実現されているが、スプライン継手構造以外の継手構造により実現されてもよい。
図1
図2
図3
図4