(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】車両用電気機器の構造
(51)【国際特許分類】
B60K 1/00 20060101AFI20221213BHJP
H01R 13/64 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B60K1/00
H01R13/64
(21)【出願番号】P 2021520532
(86)(22)【出願日】2019-05-20
(86)【国際出願番号】 JP2019019924
(87)【国際公開番号】W WO2020234969
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】福原 悠介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠一
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-060225(JP,A)
【文献】特開2014-093289(JP,A)
【文献】国際公開第2012/070140(WO,A1)
【文献】特開2006-014577(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0125024(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00
B60K 8/00
H01R 13/56 - 13/72
H01M 50/262
H02M 7/00 - 7/40
B60R 16/00 - 17/02
B60L 50/00 - 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用電気機器の筐体と、
電気ケーブルと、
前記電気ケーブルに設けられた第1コネクタと、
前記筐体に設けられ、前記第1コネクタを着脱方向に相対移動させることで前記第1コネクタと着脱可能に嵌合する第2コネクタと、
前記第1コネクタ及び前記第2コネクタのうち一方に設けられた短絡端子と、
前記第1コネクタ及び前記第2コネクタのうち他方に設けられ、前記第1コネクタと前記第2コネクタとが嵌合した嵌合状態では、前記短絡端子と接触して互いに導通し、前記第1コネクタと前記第2コネクタとが嵌合していない非嵌合状態では、前記短絡端子から離間して互いに導通しない一対の接触子と、
前記筐体に設けられた、外部から前記筐体内の部品へのアクセスを許容するための開口と、
前記開口を覆うカバーと、
前記筐体に設けられたネジ穴に螺合して、前記カバーを前記筐体に固定するボルトと、
前記筐体に固定されて、前記ボルトの取り外しを規制する規制部材と、
を備え、
前記規制部材の第1部分は、前記第2コネクタと完全に嵌合した完全嵌合状態にある前記第1コネクタの前記着脱方向の先端部と、前記筐体のうち前記先端部と前記着脱方向に対向する部分との間で、前記着脱方向からみて前記先端部の少なくとも一部と重複する位置に配置されており、
前記規制部材の第2部分は、前記カバーを固定している前記ボルトの軸延長上に位置しており、
前記カバーを固定している前記ボルトと前記第2部分との間の前記ボルトの軸方向における隙間の大きさと、前記完全嵌合状態にある前記第1コネクタの前記先端部と前記第1部分との間の前記着脱方向における距離との和は、前記ネジ穴の開口から前記カバーを固定している前記ボルトの先端までの長さより小さい、車両用電気機器の構造。
【請求項2】
前記嵌合状態から前記非嵌合状態に切り替わるときの前記第1コネクタの位置を境界位置とすると、
前記カバーを固定している前記ボルトと前記第2部分との間の前記ボルトの軸方向における隙間の大きさと、前記境界位置に位置する前記第1コネクタの前記先端部と前記第1部分との間の前記着脱方向における距離との和は、前記ネジ穴の開口から前記カバーを固定している前記ボルトの先端までの長さより小さい、請求項1に記載の車両用電気機器の構造。
【請求項3】
前記筐体には、前記着脱方向に延びる第1ピンが突設されており、
前記規制部材には、前記第1ピンが挿通される第1孔が設けられており、
前記第1孔における前記第1ピン基端側の端部から前記第1ピンの先端までの長さは、前記第1部分と、前記境界位置に位置する前記第1コネクタの先端部との間の前記着脱方向における距離より大きい、請求項2に記載の車両用電気機器の構造。
【請求項4】
前記筐体には、前記着脱方向に延びる第2ピンが突設されており、
前記カバーには、前記第2ピンが挿通される第2孔が設けられており、
前記第2孔における前記第2ピン基端側の端部から前記第2ピンの先端までの長さは、前記ネジ穴の開口から前記カバーを固定している前記ボルトの先端までの長さより大きい、請求項2または3に記載の車両用電気機器の構造。
【請求項5】
前記規制部材には、前記第2ピンが挿通される第3孔が設けられており、
前記第3孔の前記第2ピン基端側の端部から前記第2ピンの先端までの長さは、前記第1部分と、前記境界位置に位置する前記第1コネクタの先端部との間の前記着脱方向における距離より大きい、請求項4に記載の車両用電気機器の構造。
【請求項6】
前記規制部材は、前記着脱方向に延びる第2ボルトにより前記筐体に固定され、
前記第2ボルトの頭部は、前記完全嵌合状態にある前記第1コネクタの前記先端部と、前記筐体のうち前記先端部と前記着脱方向に対向する部分との間で、前記着脱方向からみて前記先端部の少なくとも一部と重複する位置に配置されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の車両用電気機器の構造。
【請求項7】
前記第1部分が前記第1コネクタの前記先端部と、前記筐体のうち前記先端部と前記着脱方向に対向する部分との間に挟持されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の車両用電気機器の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ、DC/DCコンバータ、ジャンクションボックス、電動エアコンコンプレッサ等の車両用電気機器の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータでは、筐体内に端子接続部が設けられ、該端子接続部に、モータやバッテリからの電気配線の端子が接続される。特許文献1は、関連する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記インバータ等の車両用電気機器の筐体には、外部から例えば端子接続部等へのアクセスを許容するための開口が設けられ、該開口を覆うカバーに、カバー開放を検知するためのスイッチ等が設けられることがある。このスイッチ等の設置スペースが、車両用電気機器の小型化を阻んでいた。
【0005】
本発明の目的は、車両用電気機器の小型化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、カバー固定用ボルトの取り外しを規制する規制部材を備えた車両用電気機器の構造である。規制部材は、第1部分と第2部分とを有する。第1部分は、電気ケーブルのコネクタの先端部と、筐体のうち上記先端部と着脱方向に対向する部分との間で、着脱方向からみて上記先端部の少なくとも一部と重複する位置に配置されている。第2部分は、カバーを固定しているボルトの軸延長上に位置する。また、カバーを固定しているボルトと第2部分との間の隙間の大きさと、完全嵌合状態にあるコネクタの先端部と第1部分との間の着脱方向における距離との和は、ネジ穴の開口から当該ボルトの先端までの長さより小さい。
【発明の効果】
【0007】
上記構造によれば、車両用電気機器の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態にかかる電気機器の配置図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかる電気機器の平面図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかる電気機器の要部斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態にかかるコネクタの構成を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態にかかるコネクタの構成を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態にかかる電気機器の要部の構成を説明する図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態にかかる電気機器の要部平面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態にかかる電気機器の要部断面図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態にかかる電気機器の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
いくつかの実施形態にかかる車両用電気機器の構造Sについて、図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、同一の機能を有する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
<第1実施形態>
図1及び
図2に示すように、第1実施形態の構造Sは、インバータ1の構造であって、筐体2と、電気ケーブル3と、コネクタ4と、規制部材5とを含む。
【0011】
インバータ1は、
図1に示すように、車両Vに搭載され、車両Vを駆動する図示しない電動モータ、電動モータが発電した電力を蓄える図示しないバッテリ等に電気的に接続される。インバータ1は、例えばバッテリに蓄えられた直流電力を交流電力に変換し、車速やシステム制御に必要な周波数を作り出し、モータ回転数や駆動トルクを制御して、車両Vの加減速を行う。
【0012】
インバータ1は、図示しない強電部品等の部品と、これらを収容する筐体2とを備える。上記部品には、例えばIGBT(Integrated Gate Bipolar Transistor)などのパワー半導体素子からなるパワーモジュール、パワーモジュール駆動回路、モータ制御回路、平滑コンデンサ、バスバ、電流センサなどが含まれる。
【0013】
筐体2には、
図2に示すように、外部から筐体2内の部品へのアクセスを許容するための開口6Aが設けられている。開口6Aを介するアクセスは、典型的には、メンテナンス時、バスバやパワーケーブルの端子を筐体2内の端子締結部にボルトで締結する際などに生じ得る。通常時、開口6Aは、防水のため、例えば鋼板製のカバー7Aにより覆われる。開口6Aの周縁部には、複数のネジ穴8(
図6参照)が設けられている。カバー7Aは、ネジ穴8に螺合した複数のボルト9により、筐体2に固定されている。
【0014】
また、筐体2には、外部から筐体2内の部品へのアクセスを許容するためのもう一つの開口6Bが設けられている。開口6Bは、カバー7Bにより覆われる。開口6Bの周縁部には、複数のネジ穴8(
図6参照)が設けられ、カバー7Bは、ネジ穴8に螺合した複数のボルト9により、筐体2に固定されている。以下、開口6A,6Bを開口6と、カバー7A,7Bをカバー7と総称することもある。なお、
図2では、開口6A,6Bの配置を示すために、カバー7A,7Bの一部を省略している。
図2中の2点鎖線は、カバー7A,7Bのうち省略された部分の外形を示している。また、本実施形態では、ボルト9の軸方向は、コネクタ4の着脱方向(各図中のZ軸に平行な方向)と平行であるが、ボルト9の軸方向は、コネクタ4の着脱方向と非平行であってもよい。
【0015】
電気ケーブル3は、インバータ1と、インバータ1以外の電気機器とを電気的に接続するケーブルである。本実施形態の電気ケーブル3は、高電圧ケーブルであり、図示しない車載空調機器のコンプレッサと、インバータ1に含まれるコンプレッサ用インバータとを電気的に接続する。なお、電気ケーブル3は、高電圧ケーブルに限定されない。また、電気ケーブル3が接続される電気機器は、コンプレッサに限定されない。
【0016】
電気ケーブル3は、
図3に示すように、コネクタ4を介してインバータ1に結合される。コネクタ4は、電気ケーブル3に設けられた第1コネクタ11と、筐体2に設けられた第2コネクタ12とを含む。第2コネクタ12は、第1コネクタ11を着脱方向に相対移動させることで第1コネクタ11と着脱可能に嵌合する。
【0017】
図4に示すように、第1コネクタ11は、電気ケーブル3の導線13にそれぞれ接続された2本のメス接触子14を備えたプラグであってもよい。第2コネクタ12は、2本のメス接触子14にそれぞれ挿入される2本のオス接触子15を備えたレセプタクルであってもよい。2本のオス接触子15は、それぞれ筐体2内の配線16を介して図示しないコンプレッサ用インバータの出力端子に接続されてもよい。
【0018】
また、
図4に示すように、第1コネクタ11は、一対の接触子17を備え、第2コネクタ12は、短絡端子18を備える。第1コネクタ11と第2コネクタ12とが嵌合した嵌合状態では、一対の接触子17は、短絡端子18と接触して互いに導通または短絡する。第1コネクタ11と第2コネクタ12とが嵌合していない非嵌合状態では、一対の接触子17は、短絡端子18から離間して互いに導通しない(短絡しない)。
【0019】
ここで、第1コネクタ11を第2コネクタ12に対して着脱方向に移動させたときに、嵌合状態から非嵌合状態に切り替わる位置を境界位置z1とする。本実施形態では、第1コネクタ11が第2コネクタ12に対して前進限位置z0から境界位置z1までの範囲内に位置しているときは、接触子17同士が導通して、嵌合状態となる。また、第1コネクタ11が第2コネクタ12に対して境界位置z1よりも後方(離間側)に位置しているときは、接触子17同士は導通せず、非嵌合状態となる。
【0020】
また、第1コネクタ11は、前進限位置z
0及びその近傍において、第2コネクタ12に完全に嵌合する。このときの状態を、完全嵌合状態と称し、このときの第2コネクタ12に対する第1コネクタ11の位置を、完全嵌合位置と称する。すなわち、嵌合状態には、
図4に示すように、完全嵌合状態と、第1コネクタ11と第2コネクタ12とが完全には嵌合していないが接触子17同士は導通している不完全嵌合状態(半嵌合状態)とが含まれる。また、非嵌合状態には、第1コネクタ11が第2コネクタ12から離脱した離脱状態が含まれる。なお、完全嵌合状態にある第1コネクタ11は、公知のロック機構により完全嵌合位置にロックされてもよい。
【0021】
一対の接触子17は、嵌合検知回路21に接続されている。嵌合検知回路21は、
図4に示すように、直流電源22と、抵抗器23と、電圧センサ24とを備えてもよい。この場合、直流電源22は、一対の接触子17のうちの一方に接続される。抵抗器23は、一端が一対の接触子17のうちの他方に接続され、他端が接地電位に接続される。電圧センサ24は、抵抗器23の一端の電位、すなわち一対の接触子17のうちの他方の電位(接地電位に対する電圧)を検出する。嵌合検知回路21は、抵抗器25を備えてもよい。抵抗器25は、一端が一対の接触子17のうちの一方に接続され、他端が直流電源22に接続される。
【0022】
嵌合状態では、一対の接触子17同士が導通するため、直流電源22から出力される電流が抵抗器23に流れ、電圧センサ24は、この電流による電圧降下分の電圧を検出する。非嵌合状態では、一対の接触子17同士が導通しないため、抵抗器23に電流が流れず、電圧センサ24が検出する電圧は、接地電位となる。直流電源22の電圧は特に限定されないが、例えば5Vである。また、抵抗器23の抵抗値は、例えば2700Ωである。
【0023】
なお、上記の例では、一対の接触子17のうちの他方の電位を検出していたが、電圧センサ24は、一対の接触子17のうちの一方の電位を検出してもよい。この場合、嵌合状態では、直流電源22から出力される電流が抵抗器25に流れ、電圧センサ24は、この電流による電圧降下分の電圧を直流電源22の電圧から差し引いた電圧を検出する。非嵌合状態では、抵抗器25に電流が流れず、電圧センサ24が検出する電圧は、直流電源22の電位となる。
【0024】
嵌合検知回路21に接続された制御部31は、上記のように嵌合状態と非嵌合状態との間で変化する電圧センサ24の検出電圧に基づいて、嵌合状態または非嵌合状態のいずれであるかを検知する。
図4に示した例では、制御部31は、電圧センサ24から出力された検出信号が示す電圧値と閾値とを比較し、検出信号が示す電圧値が閾値よりも大きいときは、第1コネクタ11と第2コネクタ12とが嵌合状態にあることを検知する。また、制御部31は、電圧センサ24から出力された検出信号が示す電圧値が閾値よりも低いときは、第1コネクタ11と第2コネクタ12とが非嵌合状態にあることを検知する。
【0025】
嵌合状態または非嵌合状態を検知することで、制御部31は、例えば、非嵌合状態が検出されている間は、高電圧出力を停止したり、バッテリとインバータ1とを接続するリレーを非導通の状態に保持したり、警報ランプを点灯させたりすることができる。なお、制御部31は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータから構成してもよい。制御部31には、コンピュータプログラムがインストールされてもよい。制御部31は、コンピュータプログラムを実行することにより、嵌合検知機能を発揮し得る。なお、制御部31の機能を実装する処理回路には、プログラムされたプロセッサ、電気回路、特定用途向けの集積回路(ASIC)のような装置、記載された機能を実行するよう配置された回路構成要素などが含まれ得る。
【0026】
また、
図4の例では、一対の接触子17が第1コネクタ11に設けられ、短絡端子18が第2コネクタ12に設けられていたが、これに限定されない。
図5に示すように、一対の接触子17は第2コネクタ12に設けられ、短絡端子18は第1コネクタ11に設けられてもよい。
【0027】
本実施形態では、
図2及び
図3に示すように、ボルト9の取り外しを規制する規制部材5が設けられている。規制部材5は、例えば、鋼板製であり、ボルトB等の締結部材により、筐体2に取り外し可能に固定される。なお、規制部材5の形状は、図示したものに限らず、筐体2、第1コネクタ11、第2コネクタ12、カバー7、ボルト9等の大きさ、形状、配置などに応じて適宜選択することができる。
【0028】
規制部材5は、その一部として、着脱方向と略直交する方向にそれぞれ延出する第1部分51と第2部分52Aとを有する。第1部分51は、
図2及び
図3に示すように、完全嵌合状態にある第1コネクタ11の着脱方向の先端部11aと、筐体2のうち先端部11aと着脱方向に対向する部分2aとの間に介在している。また、第1部分51は、
図2及び
図3に示すように、少なくともその一部が、着脱方向からみて先端部11aの少なくとも一部と重複する位置に配置されている。第1コネクタ11の先端部11aのうち、着脱方向からみて第1部分51と重複する部分は、
図4の例であれば、接触子17との相対的な位置関係が固定されている部分であり、
図5の例であれば、短絡端子18との相対的な位置関係が固定されている部分である。
【0029】
第2部分52Aは、
図2及び
図3に示すように、規制部材5が筐体2に固定されている状態において、カバー7Aを固定している複数のボルト9のうちの一つ(以下、第1ボルト9aと称する)の軸延長上に位置する。すなわち、第2部分52Aの少なくとも一部が、第1ボルト9aの軸方向からみて第1ボルト9aの頭部の少なくとも一部と重複する位置に配置される。また、この状態において、カバー7Aを固定している第1ボルト9aと第2部分52Aとの間の第1ボルト9aの軸方向における隙間G
1の大きさは、
図6に示すように、ネジ穴8の開口8aから第1ボルト9aの先端9bまでの長さL
1より小さい。
【0030】
また、規制部材5の筐体2への固定が解かれ、第1部分51が完全嵌合状態にある第1コネクタ11に当接した状態においても、
図6に示すように、第2部分52Aは、カバー7Aを固定している第1ボルト9aの軸延長上に位置する。そして、この状態においても、カバー7Aを固定している第1ボルト9aと第2部分52Aとの間の第1ボルト9aの軸方向における隙間G
2の大きさは、ネジ穴8の開口8aから第1ボルト9aの先端9bまでの長さL
1より小さい。すなわち、規制部材5が筐体2に固定されている状態では、第1部分51と、完全嵌合状態にある第1コネクタ11の先端部11aとの間の着脱方向における距離をD
1とすると、距離D
1と隙間G
1の大きさとの和は、長さL
1より小さい。
【0031】
さらに、第2部分52Aは、第1部分51が境界位置z
1に位置する第1コネクタ11に当接した状態においても、
図6に示すように、カバー7Aを固定している第1ボルト9aの軸延長上に位置する。そして、この状態においても、カバー7Aを固定している第1ボルト9aと第2部分52Aとの間の第1ボルト9aの軸方向における隙間G
3の大きさは、ネジ穴8の開口8aから第1ボルト9aの先端9bまでの長さL
1より小さい。すなわち、規制部材5が筐体2に固定された状態では、第1部分51と、境界位置z
1に位置する第1コネクタ11の先端部11aとの間の着脱方向における距離をD
2とすると、距離D
2と隙間G
1の大きさとの和は、長さL
1より小さい。
【0032】
本実施形態の規制部材5は、
図2及び
図3に示すように、もう一つの第2部分52Bを備えている。この第2部分52Bも、規制部材5が筐体2に固定されている状態と、当該固定が解かれて第1部分51が嵌合状態にある第1コネクタ11に当接した状態とにおいて、カバー7Bを固定している複数のボルト9のうちの一つである第1ボルト9aの軸延長上に位置する。また、これらのいずれの状態においても、カバー7Bを固定している第1ボルト9aと第2部分52Bとの間の第1ボルト9aの軸方向における隙間G
1,G
2,G
3の大きさは、ネジ穴8の開口8aから第1ボルト9aの先端9bまでの長さL
1より小さい。以下、第2部分52A,52Bを、第2部分52と総称することもある。
【0033】
本実施形態では、規制部材5は、筐体2に設けられた筐体側部材により、回転と、着脱方向と直交する方向の移動とを機械的に拘束されている。
図2、
図3及び
図6に示すように、筐体2には、筐体側部材として着脱方向に延びる第1ピンである第1位置決めピン61が突設されている。規制部材5には、第1位置決めピン61が挿通される第1孔53が設けられている。第1孔53の内周面と第1位置決めピン61の外周面との間の隙間G
4は十分に小さく、当該内周面と外周面との機械的干渉により、着脱方向と直交する軸周りの規制部材5の回転(傾転)と、着脱方向と直交する方向への規制部材5の移動とが拘束されている。
【0034】
ここで、
図6に示すように、規制部材5が筐体2に固定された状態において、第1孔53における第1位置決めピン61基端側の端部53aから第1位置決めピン61の先端61aまでの長さをL
2とする。本実施形態では、長さL
2が、距離D
2より大きくなるように設定されている。
【0035】
また、
図2、
図3及び
図6に示すように、筐体2には、第1位置決めピン61と異なる位置に、筐体側部材として着脱方向に延びる第2ピンである第2位置決めピン62Aが突設されている。カバー7Aには、第2位置決めピン62Aが挿通される第2孔71Aが設けられている。
【0036】
ここで、
図6に示すように、カバー7Aが筐体2に固定された状態において、第2孔71Aにおける第2位置決めピン62A基端側の端部71Aaから第2位置決めピン62Aの先端62Aaまでの長さをL
3とする。また、同じ状態において、ネジ穴8の開口8aからカバー7Aを固定している第1ボルト9aの先端9bまでの長さをL
1とする。本実施形態では、長さL
3が、長さL
1より大きくなるように設定されている。
【0037】
また、
図2、
図3及び
図6に示すように、規制部材5には、第2位置決めピン62Aが挿通される第3孔54Aが設けられている。第3孔54Aの内周面と第2位置決めピン62Aの外周面との間の隙間G
5は十分に小さく、当該内周面と外周面との機械的干渉により、着脱方向と直交する軸周りの規制部材5の回転(傾転)と、着脱方向と直交する方向への規制部材5の移動とが拘束されている。また、第1孔53の内周面と第1位置決めピン61の外周面との間、及び、第3孔54Aの内周面と第2位置決めピン62Aの外周面との間の機械的干渉により、着脱方向に平行な軸周りの規制部材5の回転が機械的に拘束されている。
【0038】
ここで、
図6に示すように、規制部材5が筐体2に固定された状態において、第3孔54Aの第2位置決めピン62A基端側の端部54Aaから第2位置決めピン62Aの先端62Aaまでの長さをL
4とする。本実施形態では、長さL
4が、距離D
2より大きくなるように設定されている。
【0039】
さらに、筐体2には、
図2及び
図3に示すように、もう一つの第2位置決めピン62Bが設けられてもよい。また、開口6Bを覆うカバー7Bには、第2位置決めピン62Bが挿通される第2孔71Bが設けられてもよい。規制部材5には、第2位置決めピン62Bが挿通される第3孔54Bが設けられてもよい。
図6に示すように、カバー7Bが筐体2に固定された状態において、第2孔71Bにおける第2位置決めピン62B基端側の端部71Baから第2位置決めピン62Bの先端62Baまでの長さは、上記長さL
3である。また、同じ状態において、ネジ穴8の開口8aからカバー7Bを固定している第1ボルト9aの先端9bまでの長さは、上記長さL
1である。さらに、規制部材5が筐体2に固定された状態において、第3孔54Bの第2位置決めピン62B基端側の端部54Baから第2位置決めピン62Bの先端62Baまでの長さは、上記長さL
4である。以下、第2位置決めピン62A,62Bを第2位置決めピン62と、第2孔71A,71Bを第2孔71と、第3孔54A,54Bを第3孔54と総称することもある。
【0040】
本実施形態では、上記の通り、第1位置決めピン61と第1孔53との間、及び、第2位置決めピン62と第3孔54との間における機械的な干渉により、規制部材5の、回転と、着脱方向と直交する方向の移動とを拘束している。しかしながら、拘束の方法はこれに限らない。例えば、規制部材5を、筐体側部材における着脱方向と略平行に延びる側面(平面、曲面、凹溝、凸条等)を利用して、回転不能、かつ、着脱方向と直交する方向へ移動不能にガイドするようにしてもよい。筐体側部材としては、筐体2の表面または当該表面に形成された凹部または凸部であって上記側面を有するもの、筐体2に固定されまたは取り付けられた部材であって上記側面を有するもの等が挙げられる。また、筐体側部材に限らず、筐体2以外の構造に設けられた部材、インバータ1の周囲に配置された他の機器等との機械的な干渉により、規制部材5の回転と、着脱方向と直交する方向の移動とを拘束してもよい。
【0041】
また、本実施形態では、第1位置決めピン61の断面及び第1孔53の形状、並びに、第2位置決めピン62の断面及び第2孔71の形状は、いずれも円形であったが、当該形状は、楕円、多角形などであってもよい。当該形状を非円形にした場合には、位置決めピンの外周面と孔の内周面との係合により、一組の位置決めピンと孔の組み合わせのみによって、着脱方向に平行な軸周りの規制部材5の回転を拘束することができる。
【0042】
さらに、本実施形態では、第2部分52A,52Bは、それぞれ第1ボルト9aの軸延長上に位置するように配置されていたが、それぞれ第1ボルト9aを含む2以上のボルト9の軸延長上に位置するように配置されてもよい。
【0043】
以下、本実施形態にかかる作用効果について説明する。
【0044】
本実施形態の構造Sでは、第1部分51は、完全嵌合状態にある第1コネクタ11の先端部11aと、筐体2のうち先端部11aと着脱方向に対向する部分2aとの間で、着脱方向からみて先端部11aの少なくとも一部と重複する位置に配置されている。また、第2部分52は、カバー7を固定している第1ボルト9aの軸延長上に位置する。
【0045】
さらに、カバー7を固定している第1ボルト9aと第2部分52との間の第1ボルト9aの軸方向における隙間G
1
の大きさと、完全嵌合状態にある第1コネクタ11の先端部11aと第1部分51との間の着脱方向における距離D1との和は、ネジ穴8の開口8aから第1ボルト9aの先端9bまでの長さL1より小さい。従って、例えば、ボルトBを緩め、規制部材5の筐体2への固定を解いた上で第1ボルト9aを緩めて外そうとしても、第1ボルト9aがネジ穴8から抜け出る前に、第1部分51が完全嵌合状態にある第1コネクタ11に当接(機械的に干渉)し、第2部分52が緩められた第1ボルト9aと機械的に干渉する。このため、第1コネクタ11が完全嵌合状態にあるときは、規制部材5の筐体2への固定を解いても、第1ボルト9aを取り外すことはできない。これにより、カバー7の取り外しが阻止されて、開口6を介した筐体2内の部品へのアクセスが制限される。
【0046】
換言すれば、本実施形態の構造Sにおいて、第1ボルト9aを取り外すためには、その前に規制部材5を取り外しておく必要があり、規制部材5を取り外すためには、その前に、第1コネクタ11の完全嵌合状態を解いておく必要がある。従って、カバー7を取り外そうとする作業者は、まず、第2コネクタ12から第1コネクタ11を取り外すように促される。そして、第1コネクタ11を取り外せば、第1コネクタが非嵌合状態へ変化し、一対の接触子17がその導通を喪失する。このように、本実施形態の構造Sによれば、一対の接触子17間の導通の喪失から、カバー7が取り外される可能性、すなわち開口6を介した筐体2内の部品へのアクセスが発生する可能性を検出することができる。これにより、接触子17間の導通を喪失したときに高電圧出力を停止する等の安全措置を講じることができる。
【0047】
また、本実施形態の構造Sによれば、カバー開放の可能性の有無を、第1コネクタ11及び第2コネクタ12のうちの一方に設けられた一対の接触子17間の短絡(導通)の有無から検出することができる。そのため、開口6を覆うカバー7に対して開放検知用スイッチ等を設置する必要がなくなり、部品点数を減らしてコストを低減させるとともにインバータ1の小型化を図ることができる。
【0048】
さらに、本実施形態の構造Sによれば、規制部材5が2つの第2部分52を備えている。そのため、筐体2に複数の開口6が形成され、各開口6ごとにカバー7が設けられている場合でも、一つの規制部材5で複数のカバー7の取り外しを阻止することができる。これにより、各カバー7ごとに開放検知用スイッチ等を設置する必要がなくなり、部品点数をさらに減らしてコストをより低減させることができる。
【0049】
また、本実施形態の構造Sによれば、カバー7を固定している第1ボルト9aと第2部分52との間の第1ボルト9aの軸方向における隙間G
1
の大きさと、境界位置z1に位置する第1コネクタ11の先端部11aと第1部分51との間の着脱方向における距離D2との和は、ネジ穴8の開口8aから第1ボルト9aの先端9bの長さL1より小さい。従って、規制部材5の筐体2への固定を解いた上で第1ボルト9aを緩めて外そうとしても、第1ボルト9aがネジ穴8から抜け出る前に、第1部分51が境界位置z1に位置する第1コネクタ11に当接(機械的に干渉)し、第2部分52が緩められた第1ボルト9aと機械的に干渉する。このため、第1コネクタ11が境界位置z1に位置しているときも、第1ボルト9aを取り外すことはできない。すなわち、第1コネクタ11が嵌合状態にある限り、カバー7の取り外しは阻止され、開口6を介した筐体2内の部品へのアクセスが制限される。
【0050】
さらに、本実施形態の構造Sによれば、規制部材5が筐体2に固定された状態において、上記長さL2が、上記距離D2より大きい。そのため、作業者が、第1コネクタ11が境界位置z1に位置しているときに、これに当接するまで規制部材5を移動させたとしても、第1位置決めピン61が第1孔53から抜け出ることはない。これにより、規制部材5の取り外しを、簡易な構造でより確実に防止することができる。
【0051】
また、本実施形態の構造Sによれば、カバー7が筐体2に固定された状態において、上記長さL3が、上記長さL1より大きい。このため、作業者が、規制部材5を境界位置z1にある第1コネクタ11に当接するまで移動させ、第1ボルト9aを第2部分52に当接するまで緩めて、カバー7を外そうとしても、第2位置決めピン62が第2孔71から抜け出ることはない。その結果、第1ボルト9aと第2位置決めピン62とがカバー7を貫通した状態に保持されるため、着脱方向に平行な軸周りのカバー7の回転が阻止される。これにより開口6を介した筐体2内の部品へのアクセスをより確実に制限できる。
【0052】
さらに、本実施形態の構造Sによれば、規制部材5が筐体2に固定された状態において、上記長さL4が、上記距離D2より大きい。そのため、作業者が、第1コネクタ11が境界位置z1に位置しているときに、これに当接するまで規制部材5を移動させたとしても、第2位置決めピン62が第3孔54から抜け出ることはない。この構成によれば、第2位置決めピン62で、カバー7の回転と、規制部材5の取り外しとを阻止することができる。
【0053】
<他の実施形態>
次に、他の実施形態について、
図7乃至
図9を参照して説明する。なお、以下の説明では、第1実施形態と異なる構成についてのみ説明することとし、既に説明した要素と同じ機能を有する要素については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0054】
第2実施形態では、
図7及び
図8に示すように、規制部材5が、着脱方向に延びる第2ボルトB1により筐体2に固定されている。第2ボルトB1の頭部は、完全嵌合状態にある第1コネクタ11の着脱方向の先端部11aと、筐体2のうち先端部11aと着脱方向に対向する部分2aとの間で、着脱方向からみて先端部11aの少なくとも一部と重複する位置に配置されている。このため、第2ボルトB1周囲の空間は狭小になり、第2ボルトB1へのアクセスが制限されて、第1コネクタ11を第2コネクタ12から離脱させずに第2ボルトB1を取り外すことが難しくなっている。すなわち、この構成によれば、第1コネクタ11が嵌合状態にあるときの規制部材5の取り外しをより困難にして、より確実に規制部材5の取り外しを防止することができる。
【0055】
第3実施形態では、
図9に示すように、規制部材5が筐体2に固定された状態において、第1部分51が、第1コネクタ11の先端部11aと、筐体2のうち先端部11aと着脱方向に対向する部分2aとの間に挟持されている。従って、筐体2への固定が解かれてから第1部分51が第1コネクタ11に当接するまでの規制部材5の移動量が、先端部11aと部分2aとの間に第1部分51が挟持されていない場合よりも小さくなる。このため、第1コネクタ11に第1部分51が当接したときに、第1ボルト9aと第2部分52との間に形成される隙間G
2,G
3をより小さくすることができ、第1ボルト9aに必要な長さをより小さくすることができる。
【0056】
第1乃至第3実施形態は、いずれか2以上を組み合わせて適用することができる。組み合わせにかかる実施形態では、組み合わされた各実施形態の効果を得ることができる。
【0057】
上記実施形態は、発明の理解を容易にするために記載された単なる例示に過ぎない。発明の技術的範囲は、上記実施形態で開示した具体的な技術事項に限らず、そこから容易に導きうる様々な変形、変更、代替技術なども含むものである。
【0058】
上記実施形態では、車両用電気機器としてインバータを例にとって説明したが、本発明は、DC/DCコンバータ、ジャンクションボックス、電動エアコンコンプレッサ等、インバータ以外の車両用電気機器にも適用できる。
【符号の説明】
【0059】
S 車両用電気機器の構造
1 インバータ(車両用電気機器)
2 筐体
2a 先端部と着脱方向に対向する部分
3 電気ケーブル
5 規制部材
51 第1部分
52A,52B 第2部分
53 第1孔
53a 第1孔の端部
54A,54B 第3孔
54Aa,54Ba 第3孔の端部
6A,6B 開口
7A,7B カバー
71A,71B 第2孔
71Aa,71Ba 第2孔の端部
8 ネジ穴
8a ネジ穴の開口
9a 第1ボルト(ボルト)
9b 第1ボルトの先端(ボルトの先端)
11 第1コネクタ
11a 先端部
12 第2コネクタ
17 一対の接触子
18 短絡端子
61 第1位置決めピン(第1ピン)
61a 先端
62A,62B 第2位置決めピン(第2ピン)
62Aa,62Ba 先端
B1 第2ボルト
z1 境界位置
D1 完全嵌合状態にある第1コネクタの先端部と第1部分との間の距離
D2 境界位置に位置する第1コネクタの先端部と第1部分との間の距離
G1~G3 カバーを固定しているボルトと第2部分との間のボルトの軸方向における隙間
L1 ネジ穴の開口からカバーを固定しているボルトの先端までの長さ
L2 第1孔の端部から第1位置決めピン(第1ピン)の先端までの長さ
L3 第2孔の端部から第2位置決めピン(第2ピン)の先端までの長さ
L4 第3孔の端部から第2位置決めピン(第2ピン)の先端までの長さ