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特許7193013ノズル重なり幅の計測方法およびインクジェット記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ノズル重なり幅の計測方法およびインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20221213BHJP
   B41J 2/205 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B41J2/01 209
B41J2/01 451
B41J2/205
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021570036
(86)(22)【出願日】2020-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2020049174
(87)【国際公開番号】W WO2021140993
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2020000913
(32)【優先日】2020-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003443
【氏名又は名称】弁理士法人TNKアジア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100129997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 米藏
(72)【発明者】
【氏名】西原 正輝
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-167417(JP,A)
【文献】特開2010-260338(JP,A)
【文献】特開2006-035731(JP,A)
【文献】特開2014-069324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状に配置された複数の第1ノズルを有する第1ヘッドと、直線状に配置された複数の第2ノズルを有する第2ヘッドとを備え、記録媒体上にインクを吐出して画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部を制御する制御部とを備えたインクジェット記録装置における記録媒体の搬送方向と交差する主走査方向のノズル重なり幅の計測方法であって、
前記第1ヘッドは、前記複数の第1ノズルが、前記主走査方向に沿って並ぶ状態に配置され、
前記第2ヘッドは、前記複数の第2ノズルが、前記複数の第1ノズルと同一の方向に並ぶ状態に配置され、
前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドは、前記複数の第1ノズルの一部と前記複数の第2ノズルの一部とが、前記搬送方向に間隔を空けて隣り合うように配置され、
前記画像形成部が、各々前記主走査方向に沿って延びるブロック毎に異なる液滴サイズの組み合わせパターンを含む画像データを用いて、前記記録媒体の上に計測用画像を画像形成する第1ステップと、
前記制御部が、前記計測用画像の中で前記主走査方向に沿って均一な濃度を有するブロックを選択する第2ステップと、
前記制御部が、前記選択されたブロックの位置に基づき、前記計測用画像の画像形成に適用された液滴サイズ比を用いて前記ノズル重なり幅を決定する第3ステップと、
を備える、ノズル重なり幅の計測方法。
【請求項2】
前記制御部が、前記画像データを生成するステップを更に備える、請求項1に記載のノズル重なり幅の計測方法。
【請求項3】
前記画像データは、前記複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルとの重なり幅を無くすように前記複数の第1ノズルと前記複数の第2ノズルとの仮想の位置が設定されたデータであって、前記複数の第1ノズルの一部と前記複数の第2ノズルの一部とについて、大中小の3つの液滴サイズの組み合わせパターンを含む、請求項1に記載のノズル重なり幅の計測方法。
【請求項4】
前記第2ステップは、読取部が前記計測用画像を読み取って、前記制御部が、前記読取部にて読み取られた前記計測用画像の濃度判定を行うことにより、前記計測用画像の中で前記主走査方向に沿って均一な濃度を有するブロックを選択する、請求項1に記載のノズル重なり幅の計測方法。
【請求項5】
前記大中小の3つの液滴サイズは、大きい液滴サイズL(=1.0)、中位の液滴サイズM(=0.8)、小さい液滴サイズS(=0.6)の3つであり、
前記第3ステップは、前記制御部が、前記第2ステップにて前記選択されたブロックの位置に基づき、前記計測用画像の画像形成に適用された液滴サイズ比を用いて、下記の演算式から、前記ノズル重なり幅を決定する、請求項3に記載のノズル重なり幅の計測方法。
<演算式>
ノズル重なり幅=2-(選択されたブロックのパターンの合計液滴サイズ)/L
但し、前記液滴サイズ比は、L/M/S=1.0/0.8/0.6である。
【請求項6】
記録媒体上にインクを吐出して画像を形成する画像形成部と、
記憶部と、
制御部と、を備え、
前記画像形成部は、直線状に配置された複数の第1ノズルを有する第1ヘッドと、直線状に配置された複数の第2ノズルを有する第2ヘッドとを備え、
前記第1ヘッドは、前記複数の第1ノズルが、前記シートの搬送方向に対して垂直な配列方向に沿って並ぶ状態に配置され、
前記第2ヘッドは、前記複数の第2ノズルが、前記複数の第1ノズルと同一の方向に並ぶ状態に配置され、
前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドは、前記複数の第1ノズルの一部と前記複数の第2ノズルの一部とが、前記搬送方向に間隔を空けて隣り合うように配置され、
前記記憶部は、各々前記主走査方向に沿って延びるブロック毎に異なる液滴サイズの組み合わせパターンを含む画像データを予め記憶し、
前記制御部は、
(i)前記記憶部に記憶された前記画像データを用いて、前記記録媒体の上に計測用画像を前記画像形成部により形成させ、
(ii)前記計測用画像の中で前記主走査方向に沿って均一な濃度を有するブロックを選択し、
(iii)前記選択されたブロックの位置に基づき、前記計測用画像の画像形成に適用された液滴サイズ比を用いて前記ノズル重なり幅を決定する、インクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置におけるノズル重なり幅の計測方法およびインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のインクジェット記録装置は、各々インクを吐出する複数のノズルを有する複数のヘッドを備える。特許文献1には、主走査方向における1画素単位のノズル重なり幅の計測方法も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-167417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のインクジェット記録装置では、1画素未満を単位とするノズル重なり幅を計測することができなかった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、1画素未満を単位とするノズル重なり幅の計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係るノズル重なり幅の計測方法は、直線状に配置された複数の第1ノズルを有する第1ヘッドと、直線状に配置された複数の第2ノズルを有する第2ヘッドとを備え、記録媒体上にインクを吐出して画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部を制御する制御部とを備えたインクジェット記録装置における記録媒体の搬送方向と交差する主走査方向のノズル重なり幅の計測方法であって、第1ステップと、第2ステップと、第3ステップとを備える。前記第1ヘッドは、前記複数の第1ノズルが、前記主走査方向に沿って並ぶ状態に配置されている。前記第2ヘッドは、前記複数の第2ノズルが、前記複数の第1ノズルと同一の方向に並ぶ状態に配置されている。前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドは、前記複数の第1ノズルの一部と前記複数の第2ノズルの一部とが、前記搬送方向に間隔を空けて隣り合うように配置されている。前記第1ステップは、前記画像形成部が、各々前記主走査方向に沿って延びるブロック毎に異なる液滴サイズの組み合わせパターンを含む画像データを用いて前記記録媒体の上に計測用画像を画像形成するステップである。前記第2ステップは、前記制御部が、前記計測用画像の中で前記主走査方向に沿って均一な濃度を有するブロックを選択するステップである。前記第3ステップは、前記制御部が、前記選択されたブロックの位置に基づき、前記計測用画像の画像形成に適用された液滴サイズ比を用いて前記ノズル重なり幅を決定するステップである。
【0007】
本発明の一局面に係るインクジェット記録装置は、記録媒体上にインクを吐出して画像を形成する画像形成部と、記憶部と、制御部と、を備え、前記画像形成部は、直線状に配置された複数の第1ノズルを有する第1ヘッドと、直線状に配置された複数の第2ノズルを有する第2ヘッドとを備え、前記第1ヘッドは、前記複数の第1ノズルが、前記シートの搬送方向に対して垂直な配列方向に沿って並ぶ状態に配置され、前記第2ヘッドは、前記複数の第2ノズルが、前記複数の第1ノズルと同一の方向に並ぶ状態に配置され、前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドは、前記複数の第1ノズルの一部と前記複数の第2ノズルの一部とが、前記搬送方向に間隔を空けて隣り合うように配置され、前記記憶部は、各々前記主走査方向に沿って延びるブロック毎に異なる液滴サイズの組み合わせパターンを含む画像データを予め記憶し、前記制御部は、(i)前記記憶部に記憶された前記画像データを用いて、前記記録媒体の上に計測用画像を前記画像形成部により形成させ、(ii)前記計測用画像の中で前記主走査方向に沿って均一な濃度を有するブロックを選択し、(iii)前記選択されたブロックの位置に基づき、前記計測用画像の画像形成に適用された液滴サイズ比を用いて前記ノズル重なり幅を決定する、ものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、1画素未満を単位とするノズル重なり幅の計測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るノズル重なり幅の計測方法が適用されるインクジェット記録装置の一例を示す図である。
図2】画像形成部を下方から見た図である。
図3】インクジェット記録装置の電気的構成を示す機能ブロック図である。
図4】記憶部に格納された画像データの一例を示す図である。
図5図4中の部分データを拡大して示す図である。
図6】用紙の上に画像形成された計測用画像の一例を示す図である。
図7図6中の部分画像を拡大して示す図である。
図8】制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1を参照して、本発明の実施形態に係るノズル重なり幅の計測方法が適用されるインクジェット記録装置100について説明する。図1は、インクジェット記録装置100の一例を示す図である。
【0011】
図1に示されるように、インクジェット記録装置100は、搬送装置10と、カセット30と、排出トレイ31と、画像形成部40と、読取部50とを備える。
【0012】
搬送装置10は、給送部11と、用紙搬送路12と、第1ベルト搬送部13と、第2ベルト搬送部14と、第1搬送路15と、反転搬送路16と、分岐部17と、反転部18と、第2搬送路19とを備える。
【0013】
カセット30は、用紙Pを収容可能である。給送部11は、例えばピックアップローラーなどを備え、ピックアップローラーを駆動させることにより、カセット30内の用紙Pを取り出し、用紙搬送路12に送り出す。用紙Pは、例えば、普通紙、厚紙、OHP用紙、封筒、又はハガキである。用紙Pは、「記録媒体」の一例に相当する。
【0014】
用紙搬送路12は、各種のローラーなどを備え、各種のローラーを駆動させることにより、用紙Pを画像形成部40へ案内する。具体的には、用紙搬送路12は、カセット30から送り出された用紙Pを、第1ベルト搬送部13を通じて画像形成部40へ案内する。画像形成部40は、用紙Pにインクを吐出して、用紙Pに画像を形成する。第2ベルト搬送部14は、画像形成部40によって画像が形成された用紙Pを搬送する。
【0015】
第1搬送路15は、各種のローラーなどを備え、各種のローラーを駆動させることにより、第2ベルト搬送部14から送出された用紙Pを排出トレイ31へ案内する。その結果、用紙Pが排出トレイ31から排出される。
【0016】
反転搬送路16は、第1搬送路15から分岐した搬送路である。第1搬送路15から反転搬送路16へ搬送された用紙Pは、分岐部17に向けて送出される。分岐部17は反転搬送路16上に位置する。分岐部17は、用紙Pを反転部18に向けて案内する。
【0017】
反転部18は、各種のローラーなどを備え、各種のローラーを駆動させることにより、用紙Pの進行方向を反転させ、分岐部17に向けて用紙Pを送り出す。分岐部17は、反転部18から送出された用紙Pを第2搬送路19へ案内する。第2搬送路19は、各種のローラーなどを備え、各種のローラーを駆動させることにより、用紙Pを用紙搬送路12へ案内する。したがって、画像形成部40を通過した用紙Pは、第2搬送路19を介して、戻り位置11aへ案内される。戻り位置11aは、画像形成部40よりも用紙Pの搬送方向Xの上流に位置し、用紙搬送路12上に位置する。用紙Pの搬送方向Xは、画像形成部40が用紙Pに画像を形成するときの用紙Pの移動方向を示す。
【0018】
戻り位置11aへ案内された用紙Pは、再度、画像形成部40へ搬送される。また、戻り位置11aへ案内された用紙Pは、裏面と表面とが反転している。したがって、画像形成部40は、用紙Pの裏面に画像を形成する。
【0019】
読取部50は、画像形成部40と戻り位置11aとの間に配置される。読取部50は、用紙Pを走査して、用紙Pの画像を読み取る。読取部50は、例えば、CIS(Contact Image Sensor)ユニットである。読取部50は、用紙搬送路12の下方に配置される。
【0020】
次に、図1及び図2を参照して、画像形成部40について説明する。図2は、画像形成部40を下方から見た図である。つまり、図2は、画像形成部40を、第1ベルト搬送部13側から見た図である。
【0021】
図2に示されるように、画像形成部40は、ハウジング41と、複数のヘッド部とを有 する。ハウジング41は、複数のヘッド部を支持する。複数のヘッド部は、例えば、第1ヘッド部42と、第2ヘッド部43と、第3ヘッド部44と、第4ヘッド部45とで構成される。複数のヘッド部の各々は、第1ベルト搬送部13と対向配置される。複数のヘッド部は、搬送方向Xに沿って並んでいる。複数のヘッド部の各々には、インクが供給される。インクの色は、ヘッド部毎に異なる。第1ヘッド部42には、例えば、ブラックのインクが供給される。第2ヘッド部43には、例えば、シアンのインクが供給される。第3ヘッド部44には、例えば、マゼンタのインクが供給される。第4ヘッド部45には、例えば、イエローのインクが供給される。
【0022】
複数のヘッド部(つまり、第1ヘッド部42と、第2ヘッド部43と、第3ヘッド部44と、第4ヘッド部45)の各々は、互いに同様の構造を有する。したがって、第1ヘッド部42の構造を説明し、他のヘッド部の構造の説明は省略する。
【0023】
第1ヘッド部42は、複数のヘッドと、複数のノズルとを有する。複数のヘッドは、例えば、第1ヘッド42aと、第2ヘッド42bと、第3ヘッド42cとで構成される。複数のヘッドは、主走査方向Yに沿って千鳥状に並べられる。主走査方向Yは、用紙Pの搬送方向Xに交差する方向を示す。複数のヘッドの各々には複数のノズルが配置される。複数のノズルは、例えば、複数の第1ノズル46aと、複数の第2ノズル46bと、複数の第3ノズル46cとを示す。第1ヘッド42aは、複数の第1ノズル46aを有する。第2ヘッド42bは、複数の第2ノズル46bを有する。第3ヘッド42cは、複数の第3ノズル46cを有する。複数のノズルの各々は、第1ベルト搬送部13と対向して配置される。第1ヘッド42a、第2ヘッド42b、及び第3ヘッド42cは、「複数のヘッド」の一例に相当する。複数の第1ノズル46a、複数の第2ノズル46b、及び複数の第3ノズル46cは、それぞれ「複数のノズル」の一例に相当する。
【0024】
複数の第1ノズル46aと複数の第2ノズル46bとは、第1重なり幅Y1を有する。第1重なり幅Y1は、複数の第1ノズル46aと複数の第2ノズル46bとが主走査方向Yにおいて重なる部分の、主走査方向Yの寸法を示す。複数の第2ノズル46bと複数の第3ノズル46cとは、第2重なり幅Y2を有する。第2重なり幅Y2は、複数の第2ノズル46bと複数の第3ノズル46cとが主走査方向Yにおいて重なる部分の、主走査方向Yの寸法を示す。第1重なり幅Y1及び第2重なり幅Y2は、それぞれ「ノズル重なり幅」の一例に相当する。
【0025】
複数の第1ノズル46aは、主走査方向Yに沿って並んでいる。複数の第1ノズル46aのうち、先頭の第1ノズル46aは、図2の紙面左側の端に位置する。また、最後尾の第1ノズル46aは、図2の紙面右側の端に位置する。したがって、複数の第1ノズル46aは、図2の紙面左側から右側へ向かって並んでいる。主走査方向Yのうち、図2の紙面左側を先頭側と規定し、図2の紙面右側を後尾側と規定する。
【0026】
複数の第2ノズル46bは、複数の第1ノズル46aと同一の方向に沿って並んでいる。したがって、複数の第2ノズル46bにおいて、先頭の第2ノズル46bは、図2の紙面左側の端に位置する。また、最後尾の第2ノズル46bは、図2の紙面右側の端に位置する。したがって、複数の第2ノズル46bは、図2の紙面左側から右側へ向かって並んでいる。
【0027】
複数の第2ノズル46bのうちの先頭側の一部と、複数の第1ノズル46aのうちの後尾側の一部とが、搬送方向Xに間隔を空けて隣り合っている。搬送方向Xに間隔を空けて隣り合うとは、搬送方向Xの位置が異なり、かつ、主走査方向Yの位置が等しいことを示す。
【0028】
複数の第3ノズル46cは、複数の第2ノズル46bと同一の方向に並んでいる。した がって、複数の第3ノズル46cにおいて、先頭の第3ノズル46cは、図2の紙面左側の端に位置する。また、最後尾の第3ノズル46cは、図2の紙面右側の端に位置する。したがって、複数の第3ノズル46cは、図2の紙面左側から右側へ向かって並んでいる。
【0029】
複数の第3ノズル46cのうちの先頭側の一部と、複数の第2ノズル46bのうちの後尾側の一部とが、搬送方向Xに間隔を空けて隣り合っている。
【0030】
複数のヘッド(つまり、第1ヘッド42a、第2ヘッド42b、及び第3ヘッド42c)の各々は、例えば、圧電素子の変形による圧力を各ノズル内のインクに伝達してメニスカスを揺動させ、インク滴を発生させる。その結果、複数のノズル(つまり、複数の第1ノズル46a、複数の第2ノズル46b、及び複数の第3ノズル46c)の各々は、インクを吐出する。
【0031】
複数のヘッド部(つまり、第1ヘッド部42と、第2ヘッド部43と、第3ヘッド部44と、第4ヘッド部45)のそれぞれのノズルは、第1ベルト搬送部13に吸着された用紙Pに対してインクを吐出する。その結果、用紙Pにはシアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックの4色のインクが重ね合わされたカラー画像が生成される。
【0032】
次に、図1及び図3を参照して、インクジェット記録装置100の電気的構成について説明する。図3は、インクジェット記録装置の電気的構成を示す機能ブロック図である。
【0033】
図3に示されるように、インクジェット記録装置100は、入力部60と、表示部70と、記憶部80と、制御部90とを更に備える。
【0034】
入力部60は、インクジェット記録装置100に対するユーザーからの指示を受け付ける。入力部60は、例えば、タッチパネル、又は操作キー群などの物理キーを備えている。
【0035】
表示部70は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、又は有機ELD(Electro Luminescence Display)などの表示装置である。表示部70は、入力部60と一体化されていてもよい。具体的には、入力部60と表示部70とがタッチパネルで構成される。
【0036】
記憶部80は、記憶装置を含む。記憶装置は、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)のような主記憶装置(例えば、半導体メモリー)を含み、補助記憶装置(例えば、ハードディスクドライブ)を更に含んでもよい。主記憶装置は、制御部90によって実行される種々のコンピュータープログラムを記憶する。
【0037】
制御ユニット91は、プロセッサー、RAM、及びROMなどから構成される。プロセッサーは、例えばCPU(CENTRAL PROCESSING UNIT)、ASIC(APPLICATION SPECIFIC INTEGRATED CIRCUIT)、又はMPU(MICRO PROCESSING UNIT)等である。制御ユニット91は、上記のROM又は記憶部80に記憶された制御プログラムが上記のプロセッサーで実行されることにより、制御部90として機能する。
【0038】
制御部90は、インクジェット記録装置100を統括的に制御する。制御ユニット91は、搬送装置10、画像形成部40、読取部50、入力部60、表示部70、及び記憶部80などと接続されている。制御部90は、これらの構成要素の動作制御、及び、該各構成要素との間での信号またはデータを送受信する。制御部90は、インクジェット記録装置100の各構成を制御する。具体的には、制御部90は、搬送装置10と、画像形成部40と、読取部50と、入力部60と、表示部70と、記憶部80とを制御する。
【0039】
次に、図4及び図5を参照して、制御部90により生成されて記憶部80に格納される画像データ200について説明する。図4は、画像データ200の一例を示す図である。図5は、図4中の部分データ210を拡大して示す図である。
【0040】
制御部90は、図4に示されるように、画像データ200を生成する。図4に示されるように、画像データ200は、複数の第1ノズル46aと、複数の第2ノズル46bと、複数の第3ノズル46cとの全てを予め定められたパターンで動作させるためのデータである。画像データ200は、複数の第1ノズル46aと複数の第2ノズル46bとの第1重なり幅Y1を無くすように(つまり、第1重なり幅Y1を「0」にするように)、複数の第1ノズル46aと複数の第2ノズル46bとの仮想の位置が設定されると共に、複数の第2ノズル46bと複数の第3ノズル46cとの第2重なり幅Y2を無くすように(つまり、第2重なり幅Y2を「0」にするように)、複数の第2ノズル46bと複数の第3ノズル46cとの仮想の位置が設定されて、生成されたデータである。
【0041】
画像データ200は、例えば4ライン毎に複数のブロックに分割される。各ブロックは、主走査方向Yに沿って延びる帯状の画像に対応する。図4には、第1ブロックAと、第2ブロックBと、第3ブロックCと、第4ブロックDと、第5ブロックEと、第6ブロックFと、第7ブロックGと、第8ブロックHと、第9ブロックIと、第10ブロックJとが例示されている。
【0042】
画像データ200は、部分データ210を含む。部分データ210は、第1ブロックA~第6ブロックFのうち、複数の第1ノズル46aのうちの後尾側の予め定められた個数(例えば、4個)の第1ノズル46aと、複数の第2ノズル46bのうちの先頭側の予め定められた個数(例えば、4個)の第2ノズル46bとに対応したデータを示す。
【0043】
図5に示されるように、部分データ210のうち第1ブロックAに属する部分では、第1ノズル46aに対応した最後尾画素群211に大きい液滴サイズLが設定され、第2ノズル46bに対応した先頭画素群212にも大きい液滴サイズLが設定されている。この液滴サイズの組み合わせは、LLパターンである。
【0044】
部分データ210のうち第2ブロックBに属する部分では、最後尾画素群211に大きい液滴サイズLが設定され、先頭画素群212に中位の液滴サイズMが設定されている。この液滴サイズの組み合わせは、LMパターンである。
【0045】
部分データ210のうち第3ブロックCに属する部分では、最後尾画素群211に中位の液滴サイズMが設定され、先頭画素群212にも中位の液滴サイズMが設定されている。この液滴サイズの組み合わせは、MMパターンである。
【0046】
部分データ210のうち第4ブロックDに属する部分では、最後尾画素群211に中位の液滴サイズMが設定され、先頭画素群212に小さい液滴サイズSが設定されている。この液滴サイズの組み合わせは、MSパターンである。
【0047】
部分データ210のうち第5ブロックEに属する部分では、最後尾画素群211に小さい液滴サイズSが設定され、先頭画素群212にも小さい液滴サイズSが設定されている。この液滴サイズの組み合わせは、SSパターンである。
【0048】
部分データ210のうち第6ブロックFに属する部分では、第1ノズル46aに対応した最後尾画素群211に大きい液滴サイズLが設定され、第2ノズル46bに対応した先頭画素群213に空白が設定されている。更に、第2ノズル46bに対応した2番目画素群214に大きい液滴サイズLが設定されている。
【0049】
図示を省略するが、第6ブロックF~第10ブロックJでは、1個の空白列を挟んで、LL、LM、MM、MS、及びSSの各パターンが設定されている。更に、第11ブロック~第15ブロックが設定される場合には、2個の空白列を挟んで、LL、LM、MM、MS、及びSSの各パターンが設定される。
【0050】
複数の第2ノズル46bのうちの後尾側と、複数の第3ノズル46cのうちの先頭側との境界部分に対応した画像データ200も、以上の説明と同様、主走査方向Yに沿って延びるブロック毎に異なる液滴サイズの組み合わせパターンを含む。
【0051】
画像データ200に含まれるその他の画素には、大きい液滴サイズLが設定されている。
【0052】
次に、図6及び図7を参照して、制御部90が画像データ200を用いて、画像形成部40により用紙Pの上に画像形成(印刷)させた計測用画像300について説明する。図6は、計測用画像300の一例を示す図である。図7は、図6中の部分画像310を拡大して示す図である。
【0053】
図6に示されるように、例示のインクジェット記録装置100では、複数の第1ノズル46aと複数の第2ノズル46bとが、第1重なり幅Y1を有する。また、複数の第2ノズル46bと複数の第3ノズル46cとが、第2重なり幅Y2を有する。例えば、第1重なり幅Y1が画素ピッチの0.8倍に相当し、第2重なり幅Y2が画素ピッチの1.2倍に相当する。すなわち、Y1=0.8画素であり、Y2=1.2画素である。
【0054】
計測用画像300は、部分画像310を含む。部分画像310は、第1ブロックA~第6ブロックFのうち、複数の第1ノズル46aのうちの後尾側の4個の第1ノズル46aと、複数の第2ノズル46bのうちの先頭側の5個の第2ノズル46bとに対応した画像を示す。
【0055】
図7に示されるように、部分画像310のうち第1ブロックA~第4ブロックDに属する部分では、第1ノズル46aに対応した最後尾画素群311と第2ノズル46bに対応した先頭画素群312とが大きく重なるため、他の部分よりも濃度が高くなる。濃度の高い部分は、黒筋としてユーザーに認識される。
【0056】
部分画像310のうち第6ブロックFに属する部分では、第1ノズル46aに対応した最後尾画素群311と第2ノズル46bに対応した2番目画素群314との間に空白部分が残っている。空白部分は、第2ノズル46bに対応した先頭画素群313によるものである。空白部分は、白筋としてユーザーに認識される。
【0057】
一方、部分画像310のうち第5ブロックEに属する部分は、黒筋及び白筋なしで、主走査方向Yに沿って均一な濃度で画像形成(印刷)されている。したがって、ユーザーは、計測用画像300の中で主走査方向Yに沿って均一な濃度を有するブロックとして、SSパターンが設定された第5ブロックEを選択することができる。
【0058】
制御部90は、SSパターンが設定された第5ブロックEが選択されたことの通知を受けると、計測用画像300の画像形成に適用された液滴サイズ比を用いて、下記の式[1]から、ノズル重なり幅を決定する。
ノズル重なり幅=2-(パターン毎の合計液滴サイズ)/(Lサイズ)・・・[1]
【0059】
一例として、液滴サイズ比がL/M/S=1.0/0.8/0.6として与えられたものとすると、式[1]から、
Y1=2-(SSパターンの合計液滴サイズ)/(Lサイズ)
=2-(0.6+0.6)/1.0
=0.8
となり、Y1=0.8画素であると決定される。
【0060】
ちなみに、L/M/S=1.0/0.8/0.6である場合には、式[1]から、LMパターンであればY1=0.2画素、MMパターンであればY1=0.4画素、MSパターンであればY1=0.6画素となる。
【0061】
また、ユーザーは、複数の第2ノズル46bと複数の第3ノズル46cとの重なり部分について、計測用画像300の中で主走査方向Yに沿って均一な濃度を有するブロックとして、第7ブロックGを選択することができる。第7ブロックGでは、1個の空白列を挟んでLMパターンが設定されている。
【0062】
制御部90は、式[1]から得られるY2=0.2画素に、空白列に対応した「1画素」を加えて、Y2=1.2画素であると決定する。
【0063】
次に、図8を参照して、制御部90の動作について説明する。図8は、制御部90の動作の一例を示すフローチャートである。
【0064】
ステップS110:図8に示されるように、制御部90は、各々主走査方向Yに沿って延びるブロック毎に異なる液滴サイズの組み合わせパターンを含む画像データ200を生成し、記憶部80に記憶させる。
【0065】
ステップS120:制御部90は、記憶部80に記憶された画像データ200を用いて、用紙Pの上に計測用画像300が画像形成されるように画像形成部40を制御する。
【0066】
ステップS130:ユーザーは、画像形成された計測用画像300の中で主走査方向Yに沿って均一な濃度を有するブロックを選択する。ユーザーによる選択の結果は、入力部60を介して制御部90に通知される。制御部90は、通知に従って、計測用画像300の中で主走査方向Yに沿って均一な濃度を有するブロックを選択する。
【0067】
ステップS140:制御部90は、選択されたブロックの位置に基づき、計測用画像300の画像形成(印刷)に適用された液滴サイズ比を用いて第1重なり幅Y1及び第2重なり幅Y2を決定する。
【0068】
実施形態によれば、例えば0.2画素を単位としてノズル重なり幅(つまり、第1重なり幅Y1及び第2重なり幅Y2)が計測される。このため、1画素未満を単位とするノズル重なり幅の計測方法を提供することができる。
【0069】
上記のノズル重なり幅の計測方法にて得られた計測結果を用いて、複数のヘッド(つまり、第1ヘッド42a、第2ヘッド42b、及び第3ヘッド42c)の位置調整を行うことなく、第1重なり幅Y1及び第2重なり幅Y2を、それぞれ「0」に調整することができる。
【0070】
具体的には、上記したように、第1重なり幅Y1について、Y1=0.8画素との結果が得られた場合、以後は、制御部90は、複数の第1ノズル46aのうちの最後尾の第1ノズル46aと、複数の第2ノズル46bのうちの先頭側の1番目の第2ノズル46bとは、0.8画素分の重なり幅に合わせた諧調補正の対象とされる。これにより、第1ヘッド42aと第2ヘッド42bとの位置調整を行うことなく、用紙Pに対し、複数の第1ノズル46aから吐出されたインクと複数の第2ノズル46bから吐出されたインクとの第1重なり幅Y1を「0」に調整することができる。また、上記したように、第2重なり幅Y2について、Y2=1.2画素との結果が得られた場合、以後は、制御部90は、複数の第3ノズル46cのうちの先頭側の1個の第3ノズル46cがインクを吐出しないように調整すると共に、複数の第2ノズル46bのうちの最後尾の第2ノズル46bと、複数の第3ノズル46cのうちの先頭側の2番目の第3ノズル46cとは、0.2画素分の重なり幅に合わせた諧調補正の対象とする。これにより、第2ヘッド42bと第3ヘッド42cとの位置調整を行うことなく、用紙Pに対し、複数の第2ノズル46bから吐出されたインクと複数の第3ノズル46cから吐出されたインクとの第2重なり幅Y2を「0」に調整することができる。
【0071】
また、実施形態によれば、複数の第1ノズル46aの一部(後尾側の4個)と複数の第2ノズル46bの一部(先頭側の4個)、および、複数の第2ノズル46bの一部(後尾側の4個)と複数の第3ノズル46cの一部(先頭側の4個)について、大中小の3つの液滴サイズの組み合わせパターンを含む画像データ200が使用される。一方で用紙Pの種類に適合した液滴サイズ比が決定されれば、画像データ200を用いて画像形成された計測用画像300により、ノズル重なり幅が正確に計測される。
【0072】
なお、ユーザーが濃度判定を行う代わりに、読取部50が計測用画像300を読み取って、制御部90が濃度判定を行ってもよい。この場合、図1に示されるように、計測用画像300が画像形成(印刷)された用紙Pが第2搬送路19を介して戻り位置11aへ案内される。そして、用紙Pの上に画像形成された計測用画像300が、読取部50により読み取られる。制御部90は、読取部50により読み取られた計測用画像300の中で主走査方向Yに沿って均一な濃度を有するブロックを選択する。例えば、制御部90は、読取部50により読み取られた図6に示す部分画像310における第1ブロックA~第5ブロックEのそれぞれについて、濃度判定を行い、主走査方向Yに沿って均一な濃度を有するブロックを特定することにより、計測用画像300の中で主走査方向Yに沿って均一な濃度を有するブロックとして、SSパターンが設定された第5ブロックEを選択するとしてもよい。
【0073】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素を適
宜組み合わせることによって、種々の発明の形成が可能である。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の個数等は、図面作成の都合から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0074】
例えば、実施形態では制御部90が画像データ200を生成したが、これに限られない。制御部90は、インクジェット記録装置100の外部から画像データ200を読み込んでもよい。
【0075】
また、実施形態では大中小の3つの液滴サイズの組み合わせパターンを含む画像データ200が使用されたが、これに限られない。画像データ200は、4つ以上の液滴サイズの組み合わせパターンを含んでもよい。
【0076】
また、実施形態では画像データ200の中の各ブロックが4ラインで構成されたが、これに限られない。各ブロックが5ライン以上で構成される場合には、ブロック毎にブロック識別記号としてアルファベットが表示されるように、画像データ200が変更されてもよい。
【0077】
また、図1乃至図8を用いて上記実施形態により示した構成及び処理は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明を当該構成及び処理に限定する趣旨ではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8