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特許7193062アクチュエータのセンシング装置及びアクチュエータの制御システム
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  • 特許-アクチュエータのセンシング装置及びアクチュエータの制御システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】アクチュエータのセンシング装置及びアクチュエータの制御システム
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20221213BHJP
   B25J 15/06 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H05K13/04 A
B25J15/06 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018144869
(22)【出願日】2018-08-01
(65)【公開番号】P2020021839
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【弁理士】
【氏名又は名称】今堀 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100131532
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 浩一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100176201
【弁理士】
【氏名又は名称】小久保 篤史
(72)【発明者】
【氏名】福島 克也
(72)【発明者】
【氏名】石井 正志
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】林 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 明
(72)【発明者】
【氏名】大賀 和人
(72)【発明者】
【氏名】和久田 翔悟
(72)【発明者】
【氏名】原 聡史
(72)【発明者】
【氏名】水野 智史
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-016512(JP,A)
【文献】特開2006-179588(JP,A)
【文献】特開2008-227402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
B25J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に移動可能なシャフトであって、少なくともその先端部側に、その内部が中空となることで形成される中空部を有するシャフトと、前記シャフトの先端部側が外部に突出するように前記シャフトの一部を収容するハウジングと、を備え、前記中空部に負圧を発生させることで該シャフトの先端部にワークを吸着させて、該ワークをピックアップするアクチュエータに適用されるセンシング装置であって、
前記ハウジングの外部に設けられたポンプと前記中空部との間の前記ハウジング内に配置される通路であって、前記シャフトの前記中空部を負圧にする際に前記ポンプによって前記中空部から吸い出される空気が流通する通路である空気通路と、
前記ハウジング内における前記空気通路の途中に設けられ、前記中空部から吸い出される空気の流れを遮断又は許容するための弁装置と、
前記ハウジング内における前記弁装置と前記中空部との間の前記空気通路の途中に設けられ、該空気通路内の圧力を検出する圧力センサと、
前記ハウジング内における前記中空部と前記圧力センサとの間の前記空気通路の途中に設けられ、該空気通路を流れる空気の流量を検出する流量センサと
備える、アクチュエータのセンシング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセンシング装置を備えたアクチュエータの制御システムであって、
前記流量センサによって検出される流量が所定流量以下まで減少したとき、およびまたは前記圧力センサによって検出される圧力が所定圧力以下まで低下したときに、前記シャフトを軸方向上側へ移動させることで、前記ワークのピックアップを行う、
制御装置を備える、アクチュエータの制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載のセンシング装置を備えたアクチュエータの制御システムであって、
前記シャフトの先端部が前記ワークから離間した位置から該シャフトの先端部が前記ワークに接触する位置へ向けて前記シャフトを軸方向に移動させる場合に、前記シャフトの先端部が前記ワークに接触する前のタイミングであって、且つ前記シャフトの先端部が前記ワークに接触するときに前記流量センサ又は前記圧力センサの何れか一方の検出値が変化し始めるように定められたタイミングで、前記中空部から吸い出される空気の流れが遮断状態から許容状態へ変更されるように前記弁装置を制御する、
制御装置を備える、アクチュエータの制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータのセンシング装置及びアクチュエータの制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワークのピックアップとプレイスとを行うアクチュエータとして、中空のシャフトの先端部をワークに接触させた状態で、シャフト内を負圧することで、シャフトの先端部にワークを吸着させるものが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-164347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のようなアクチュエータによってワークをピックアップする場合、シャフトの先端部にワークが適切に吸着されていなければ、ワークをピックアップ位置からプレイス位置へ移動させる途中で該ワークを落下させてしまう等の不具合を生じる虞がある。よって、ワークのピックアップを行う場合には、シャフトの先端部にワークが適切に吸着されているかを判定する必要がある。
【0005】
ここで、シャフトの先端部にワークが適切に吸着されているかを判定する方法としては、シャフト内の圧力を検出する圧力センサをアクチュエータに取付け、シャフト内の空気を吸引し始めた後の圧力センサの検出値に基づいて、ワークがシャフトの先端部に吸着されているかを判定する方法が考えられる。
【0006】
ところで、比較的小型のワークのピックアップを行う場合には、比較的口径の小さな吸着ノズルがシャフトの先端部に装着される可能性がある。そのような場合には、吸着ノズルにワークが吸着されている状態と吸着されていない状態とにおけるシャフト内の圧力差が小さくなり易いため、吸着ノズルにワークが適切に吸着されているかを精度良く判定することが困難になる可能性がある。
【0007】
本発明は、上記したような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、多種多量のワークの吸着判定を好適に行う上で有効な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、軸方向に移動可能なシャフトであって、少なくともその先端部側に、その内部が中空となることで形成される中空部を有するシャフトを備え、前記中空部に負圧を発生させることで該シャフトの先端部にワークを吸着させて、該ワークをピックアップするアクチュエータに適用されるセンシング装置である。該センシング装置は、前記シャフトの前記中空部を負圧にする際に該中空部から吸い出される空気が流通する通路である空気通路の途中に設けられ、該空気通路を流れる空気の流量を検出する流量センサと、前記空気通路の途中に設けられ、該空気通路内の圧力を検出する圧力センサと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、多種多量のワークの吸着判定を好適に行う上で有効な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るアクチュエータの外観図である。
図2】実施形態に係るアクチュエータの内部構造を示した概略構成図である。
図3】実施形態に係るシャフトハウジングとシャフトの先端部との概略構成を示した断面図である。
図4】変形例において、ワークWのピックアップを行う際のアクチュエータの動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るセンシング装置が適用されるアクチュエータにおいては、シャフトが、軸方向に移動可能となっている。また、シャフトの先端部には、その内部が中空となることで中空部が形成されている。中空部には空気通路が連通されており、該中空部の空気が前記空気通路を介して吸い出されることで、シャフトの先端部に負圧を発生させることができる。斯様なアクチュエータによれば、シャフトの先端部をワークに接触させた状態で該先端部に負圧を発生させることで、該先端部にワークを吸着させることができる。そして、シャフトの先端部にワークを吸着させた状態で、該シャフトを軸方向上側へ移動させれば、ワークのピックアップを行うことができる。
【0012】
また、上記空気通路の途中には、該空気通路内を流れる空気の流量を検出する流量センサと、該空気通路内の圧力を検出する圧力センサと、を含むセンシング装置が配置される。斯様なセンシング装置によれば、ワークのピックアップを行う際に、流量センサによって検出される流量およびまたは圧力センサによって検出される圧力を利用して、シャフト先端部にワークが適切に吸着されているかの判定(吸着判定)を行うことが可能になる。
【0013】
シャフトの先端部にワークが接触した状態で、中空部の空気が吸い出されると、中空部の空気量が徐々に減少していくことで、中空部の圧力が徐々に低下(中空部の負圧度合が徐々に増加)していき、最終的には中空部が真空に近い状態となる。このような過程において、中空部が真空に近い状態になる前の段階であっても、シャフトの先端部にワークを吸い付けることができる程度に中空部の圧力が低下していれば、シャフトの先端部にワークを吸い付けた状態で該ワークをピックアップすることが可能となる。つまり、中空部の圧力がシャフトの先端部にワークを吸い付けることができる程度に低下していることを検出することができれば、中空部が真空に近い状態になる前にワークのピックアップを行うことが可能となり、タクトタイムの短縮を図ることができる。そこで、空気通路に圧力センサのみを取付け、圧力センサによって検出される圧力が所定圧力以下であることを条件として、シャフトの先端部にワークが吸着されていると判定する方法が考えられる。ここでいう所定圧力は、空気通路内の圧力が該所定圧力以下であれば、ワークを吸い付け得る負圧がシャフトの先端部に発生していると判定することができる圧力であり、例えば、シャフトの先端部にワークを吸い付けることができる圧力の最大値から所定のマージンを差し引いた圧力である。
【0014】
ところで、比較的小型のワークをピックアップする場合等は、比較的口径の小さな吸着ノズルがシャフトの先端部に装着される可能性がある。その場合、吸着ノズルにワークが吸着された状態(吸着ノズルが閉塞された状態)と吸着ノズルにワークが吸着していない状態(吸着ノズルが開放された状態)とにおける空気通路内の圧力差が小さくなり易い。それに伴い、上記所定圧力が、吸着ノズルにワークが吸着していない状態における空気通路内の圧力に近い圧力となる。また、圧力センサによって検出される圧力には、誤差や公差等が含まれる場合がある。よって、比較的口径の小さな吸着ノズルがシャフトの先端部に装着される場合においては、圧力センサによって検出される圧力と上記所定圧力とを比較する方法で精度の良い吸着判定を行うことが困難になる可能性がある。これに対し、上
記所定圧力よりも十分に低い圧力(負圧度合が十分に大きな圧力)である判定用圧力を設定しておき、圧力センサによって検出される圧力が該判定用圧力以下まで低下したことを条件として、シャフトの先端部にワークが吸着されていると判定する方法も考えられる。しかしながら、上記中空部の空気を吸い出し始めてから空気通路内の圧力が上記判定用圧力以下に低下するまでに要する時間が長くなるため、タクトタイムが不要に増加してしまうという問題がある。
【0015】
これに対し、本発明に係るセンシング装置によれば、比較的小型のワークをピックアップする場合等のように、比較的口径の小さな吸着ノズルがシャフトの先端部に装着される場合等に、流量センサによって検出される流量を利用した吸着判定を行うことができる。ここで、シャフトの先端部にワークが接触した状態で、中空部の空気が吸い出されると、前述したように、中空部の空気量が徐々に減少していくことで、中空部の圧力が徐々に低下(中空部の負圧度合が徐々に増加)していく。これに伴い、空気通路を流れる空気の流量は、中空部の圧力低下に伴って徐々に減少していく。つまり、シャフトの先端部にワークが接触した状態で、中空部の空気が吸い出される過程においては、空気通路を流れる空気の流量が中空部の圧力と相関する。よって、流量センサによって検出される流量が所定流量以下まで減少していることを条件として、シャフト先端部にワークが吸着されていると判定することができる。ここでいう所定流量は、流量センサによって検出される流量が該所定流量以下まで減少していれば、ワークを吸い付け得る負圧がシャフトの先端部に発生していると判定することができる流量である。言い換えると、所定流量は、流量センサによって検出される流量が該所定流量以下まで減少していれば、空気通路内の圧力が上記所定圧力以下に低下していると判定することができる流量である。これにより、比較的口径の小さな吸着ノズルがシャフトの先端部に装着される場合においても、タクトタイムの不要な増加を抑制しつつ、ワークの吸着判定を精度良く行うことができる。なお、比較的口径の小さな吸着ノズルがシャフトの先端部に装着される場合において、ワークの吸着判定をより正確に行うという観点にたつと、流量センサによって検出される流量が所定流量を下回っており、且つ圧力センサによって検出される圧力が所定圧力を下回っていることを条件として、シャフトの先端部にワークが吸着していると判定するようにしてもよい。斯様な方法によれば、タクトタイムの増加を少なく抑えつつ、シャフトの先端部にワークが適切に吸着しているかをより正確に判定することができる。
【0016】
なお、比較的大型のワークをピックアップする場合等のように、比較的口径の大きな吸着ノズルがシャフトの先端部に装着される場合は、吸着ノズルにワークが吸着された状態(吸着ノズルが閉塞された状態)と吸着ノズルにワークが吸着していない状態(吸着ノズルが開放された状態)とにおける空気通路内の圧力差が大きくなり易い。それに伴い、上記所定圧力は、吸着ノズルにワークが吸着していない状態における空気通路内の圧力より十分に低い圧力となる。そのため、圧力センサによって検出される圧力に誤差や公差等が含まれていても、圧力センサによって検出される圧力と所定圧力とを比較する方法で精度の良い吸着判定を行うことができる。
【0017】
したがって、本発明に係るセンシング装置を利用すれば、シャフトの先端部に装着される吸着ノズルの口径に左右されることなく、シャフトの先端部にワークが適切に吸着されているかを精度良く且つ速やかに判定することができる。それにより、多種多様のワークの吸着判定を好適に行うことが可能となる。
【0018】
以下、本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。本実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0019】
<実施形態>
図1は、本実施形態に係るアクチュエータ1の外観図である。アクチュエータ1は外形が略直方体のハウジング2を有しており、ハウジング2には、蓋200が取り付けられている。図2は、本実施形態に係るアクチュエータ1の内部構造を示した概略構成図である。ハウジング2の内部に、シャフト10の一部を収容している。このシャフト10の先端部10A側は、中空となるよう形成されている。シャフト10及びハウジング2の材料には、例えば金属(例えばアルミニウム)を用いることができるが、樹脂等を用いることもできる。なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置について説明する。ハウジング2の最も大きな面の長辺方向であってシャフト10の中心軸100の方向をZ軸方向とし、ハウジング2の最も大きな面の短辺方向をX軸方向とし、ハウジング2の最も大きな面と直交する方向をY軸方向とする。Z軸方向は鉛直方向でもある。なお、以下では、図2におけるZ軸方向の上側をアクチュエータ1の上側とし、図2におけるZ軸方向の下側をアクチュエータ1の下側とする。また、図2におけるX軸方向の右側をアクチュエータ1の右側とし、図2におけるX軸方向の左側をアクチュエータ1の左側とする。また、図2におけるY軸方向の手前側をアクチュエータ1の手前側とし、図2におけるY軸方向の奥側をアクチュエータ1の奥側とする。ハウジング2は、Z軸方向の寸法がX軸方向の寸法よりも長く、X軸方向の寸法がY軸方向の寸法よりも長い。ハウジング2は、Y軸方向と直交する一つの面(図2における手前側の面)に相当する箇所が開口しており、この開口を蓋200によって閉塞している。蓋200は、例えばネジによってハウジング2に固定される。
【0020】
ハウジング2内には、シャフト10をその中心軸100回りに回転させる回転モータ20と、シャフト10をその中心軸100に沿った方向(すなわち、Z軸方向)にハウジング2に対して相対的に直動させる直動モータ30と、エア制御機構60とが収容されている。また、ハウジング2のZ軸方向の下端面202には、シャフト10が挿通されたシャフトハウジング50が取り付けられている。ハウジング2には、下端面202から該ハウジング2の内部に向かって凹むように凹部202Bが形成されており、この凹部202Bにシャフトハウジング50の一部が挿入される。この凹部202BのZ軸方向の上端部には、Z軸方向に貫通孔2Aが形成されており、この貫通孔2A及びシャフトハウジング50をシャフト10が挿通される。シャフト10のZ軸方向下側の先端部10Aは、シャフトハウジング50から外部へ突出している。シャフト10は、ハウジング2のX軸方向の中心且つY軸方向の中心に設けられている。つまり、ハウジング2における、X軸方向の中心及びY軸方向の中心を通ってZ軸方向に延びる中心軸と、シャフト10の中心軸100とが重なるように、シャフト10が設けられている。シャフト10は、直動モータ30によってZ軸方向に直動すると共に、回転モータ20によって中心軸100の回りを回転する。
【0021】
シャフト10の先端部10Aと逆側の端部(Z軸方向の上側の端部)である基端部10B側は、ハウジング2内に収容されており、回転モータ20の出力軸21に接続されている。この回転モータ20は、シャフト10を回転可能に支持している。回転モータ20の出力軸21の中心軸は、シャフト10の中心軸100と一致する。回転モータ20は、出力軸21の他に、固定子22と、固定子22の内部で回転する回転子23と、出力軸21の回転角度を検出するロータリエンコーダ24とを有する。回転子23が固定子22に対して回転することにより、出力軸21及びシャフト10も固定子22に対して連動して回転する。
【0022】
直動モータ30は、ハウジング2に固定された固定子31、固定子31に対して相対的にZ軸方向に移動する可動子32を有する。直動モータ30は、例えばリニアモータである。固定子31には複数のコイル31Aが設けられ、可動子32には複数の永久磁石32Aが設けられている。コイル31Aは、Z軸方向に所定ピッチで配置され、且つ、U、V、W相の3つのコイル31Aを一組として複数設けられている。本実施形態では、これら
U、V、W相のコイル31Aに三相電機子電流を流すことによって直動的に移動する移動磁界を発生させ、固定子31に対して可動子32を直動的に移動させる。直動モータ30には固定子31に対する可動子32の相対位置を検出するリニアエンコーダ38が設けられている。なお、上記構成に代えて、固定子31に永久磁石を設け、可動子32に複数のコイルを設けることもできる。
【0023】
直動モータ30の可動子32と回転モータ20の固定子22とは、直動テーブル33を介して連結されている。直動テーブル33は、直動モータ30の可動子32の移動に伴って移動可能である。直動テーブル33の移動は、直動案内装置34によってZ軸方向に案内されている。直動案内装置34は、ハウジング2に固定されたレール34Aと、レール34Aに組み付けられたスライダブロック34Bとを有する。レール34Aは、Z軸方向に延びており、スライダブロック34Bは、レール34Aに沿ってZ軸方向に移動可能に構成されている。
【0024】
直動テーブル33は、スライダブロック34Bに固定されており、スライダブロック34Bと共にZ軸方向に移動可能である。直動テーブル33は、直動モータ30の可動子32と2つの連結アーム35を介して連結されている。2つの連結アーム35は、可動子32のZ軸方向の両端部と、直動テーブル33のZ軸方向の両端部とを連結している。また、直動テーブル33は、両端部よりも中央側において、2つの連結アーム36を介して回転モータ20の固定子22と連結されている。なお、Z軸方向上側の連結アーム36を第一アーム36Aといい、Z軸方向下側の連結アーム36を第二アーム36Bという。また、第一アーム36Aと第二アーム36Bとを区別しない場合には、単に連結アーム36という。直動テーブル33と回転モータ20の固定子22とが、該連結アーム36を介して回転モータ20の固定子22と連結されているために、直動テーブル33の移動に伴って回転モータ20の固定子22も移動する。また、連結アーム36は、断面が四角である。各連結アーム36におけるZ軸方向の上側を向く面には、ひずみゲージ37が固定されている。なお、第一アーム36Aに固定されるひずみゲージ37を第一ひずみゲージ37Aといい、第二アーム36Bに固定されるひずみゲージ37を第二ひずみゲージ37Bという。第一ひずみゲージ37Aと第二ひずみゲージ37Bとを区別しない場合には、単にひずみゲージ37という。なお、本実施形態の2つのひずみゲージ37は、連結アーム36のZ軸方向の上側を向く面に夫々設けられているが、これに代えて、連結アーム36のZ軸方向の下側を向く面に夫々設けられていてもよい。
【0025】
エア制御機構60は、シャフト10の先端部10Aに正圧や負圧を発生させるための機構である。すなわち、エア制御機構60は、ワークWのピックアップ時において、シャフト10内の空気を吸引することで、該シャフト10の先端部10Aに負圧を発生させる。これによってワークWがシャフト10の先端部10Aに吸着される。また、シャフト10内に空気を送り込むことで、該シャフト10の先端部10Aに正圧を発生させる。これによりシャフト10の先端部10AからワークWを脱離させる。
【0026】
エア制御機構60は、正圧の空気が流通する正圧通路61A(一点鎖線参照。)と、負圧の空気が流通する負圧通路61B(二点鎖線参照。)と、正圧の空気及び負圧の空気で共用される共用通路61C(破線参照。)と、を有する。正圧通路61Aの一端は、ハウジング2のZ軸方向の上端面201に設けられた正圧用コネクタ62Aに接続され、正圧通路61Aの他端は正圧用の電磁弁(以下、正圧電磁弁63Aという。)に接続されている。正圧電磁弁63Aは、後述するコントローラ7によって開閉される。なお、正圧通路61Aの一端側の部分はチューブ610によって構成され、他端側の部分はブロック600に開けられた穴により構成されている。正圧用コネクタ62Aは、ハウジング2のZ軸方向の上端面201を貫通しており、正圧用コネクタ62Aにはエアを吐出するポンプ等に繋がるチューブが外部から接続される。
【0027】
負圧通路61Bの一端は、ハウジング2のZ軸方向の上端面201に設けられた負圧用コネクタ62Bに接続され、負圧通路61Bの他端は負圧用の電磁弁(以下、負圧電磁弁63Bという。)に接続されている。負圧電磁弁63Bは、本発明に係る弁装置に相当し、後述するコントローラ7によって開閉される。なお、負圧通路61Bの一端側の部分はチューブ620によって構成され、他端側の部分はブロック600に開けられた穴により構成されている。負圧用コネクタ62Bは、ハウジング2のZ軸方向の上端面201を貫通しており、負圧用コネクタ62Bにはエアを吸引するポンプ等に繋がるチューブが外部から接続される。
【0028】
共用通路61Cはブロック600に開けられた穴により構成されている。共用通路61Cの一端は、2つに分岐して正圧電磁弁63A及び負圧電磁弁63Bに接続されており、共用通路61Cの他端は、ハウジング2に形成されている貫通孔であるエア流通路202Aに接続されている。エア流通路202Aは、シャフトハウジング50に通じている。負圧電磁弁63Bを開き且つ正圧電磁弁63Aを閉じることにより、負圧通路61Bと共用通路61Cとが連通されるため、共用通路61C内に負圧が発生する。そうすると、エア流通路202Aを介してシャフトハウジング50内から空気が吸引される。一方、正圧電磁弁63Aを開き且つ負圧電磁弁63Bを閉じることにより、正圧通路61Aと共用通路61Cとが連通されるため、共用通路61C内に正圧が発生する。そうすると、エア流通路202Aを介してシャフトハウジング50内に空気が供給される。
【0029】
上記の共用通路61Cには、本発明に係るセンシング装置が設けられている。すなわち、上記の共用通路61Cには、該共用通路61C内の空気の圧力を検出する圧力センサ64と、該共用通路61C内の空気の流量を検出する流量センサ65とが設けられている。その際、圧力センサ64は、負圧電磁弁63Bと流量センサ65との間の共用通路61Cに配置される。言い換えると、流量センサ65は、圧力センサ64よりもシャフト10の先端部10Aに近い位置に配置される。なお、圧力センサ64及び流量センサ65は、必ずしも共用通路61Cに配置される必要はなく、エア流通路202Aに設けられてもよい。要するに、圧力センサ64及び流量センサ65は、負圧電磁弁63Bとシャフト10の先端部10Aとの間において空気が流通する経路(空気通路)に配置されればよい。
【0030】
ここで、図2に示したアクチュエータ1では、正圧通路61A及び負圧通路61Bの一部がチューブで構成され、他部がブロック600に開けられた穴により構成されているが、これに限らず、全ての通路をチューブで構成することもできるし、全ての通路をブロック600に開けられた穴により構成することもできる。共用通路61Cについても同様で、全てチューブで構成することもできるし、チューブを併用して構成することもできる。なお、チューブ610及びチューブ620の材料は、樹脂等の柔軟性を有する材料であってもよく、金属等の柔軟性を有さない材料であってもよい。また、正圧通路61Aを用いてシャフトハウジング50に正圧を供給する代わりに、大気圧を供給してもよい。
【0031】
また、ハウジング2のZ軸方向の上端面201には、回転モータ20を冷却するための空気の入口となるコネクタ(以下、入口コネクタ91Aという。)及びハウジング2からの空気の出口となるコネクタ(以下、出口コネクタ91Bという。)が設けられている。入口コネクタ91A及び出口コネクタ91Bは、夫々空気が流通可能なようにハウジング2の上端面201を貫通している。入口コネクタ91Aにはエアを吐出するポンプ等に繋がるチューブがハウジング2の外部から接続され、出口コネクタ91Bにはハウジング2から流出するエアを排出するチューブがハウジング2の外部から接続される。ハウジング2の内部には、回転モータ20を冷却するための空気が流通する金属製のパイプ(以下、冷却パイプ92という。)が設けられており、この冷却パイプ92の一端は、入口コネクタ91Aに接続されている。冷却パイプ92は、入口コネクタ91AからZ軸方向にハウ
ジング2の下端面202付近まで延び、該下端面202付近において湾曲して他端側が回転モータ20に向くように形成されている。このように、Z軸方向の下側からハウジング2内に空気を供給することにより、効率的な冷却が可能となる。また、冷却パイプ92は、直動モータ30のコイル31Aから熱を奪うように、該固定子31の内部を貫通している。固定子31に設けられているコイル31Aからより多くの熱を奪うように、冷却パイプ92の周りにコイル31Aが配置されている。
【0032】
ハウジング2のZ軸方向の上端面201には、電力を供給する電線や信号線を含んだコネクタ41が接続されている。また、ハウジング2には、コントローラ7(本発明に係る制御装置に相当)が設けられている。コネクタ41からハウジング2内に引き込まれる電線や信号線は、コントローラ7に接続されている。コントローラ7には、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)
、EPROM(Erasable Programmable ROM)が備わり、これらはバスにより相互に接続
される。EPROMには、各種プログラムや各種テーブル等が格納される。EPROMに格納されたプログラムをCPUがRAMの作業領域にロードして実行し、このプログラムの実行を通じて、回転モータ20、直動モータ30、正圧電磁弁63A、負圧電磁弁63B等が制御される。これにより、所定の目的に合致した機能がCPUによって実現される。また、圧力センサ64、流量センサ65、ひずみゲージ37、ロータリエンコーダ24、リニアエンコーダ38の出力信号がコントローラ7に入力される。
【0033】
図3は、シャフトハウジング50とシャフト10の先端部10Aとの概略構成を示した断面図である。シャフトハウジング50は、ハウジング本体51と、2つのリング52と、フィルタ53と、フィルタ止め54とを有する。ハウジング本体51には、シャフト10が挿通される貫通孔51Aが形成されている。貫通孔51Aは、Z軸方向にハウジング本体51を貫通しており、該貫通孔51AのZ軸方向の上端は、ハウジング2に形成された貫通孔2Aに通じている。貫通孔51Aの直径はシャフト10の外径よりも大きい。そのため、貫通孔51Aの内面とシャフト10の外面とには隙間が設けられている。貫通孔51Aの両端部には、孔の直径が拡大された拡径部51Bが設けられている。2つの拡径部51Bには、夫々リング52が嵌め込まれている。リング52は筒状に形成されており、リング52の内径はシャフト10の外径よりも若干大きい。そのため、リング52の内面とシャフト10の外面との間にも隙間が形成される。したがって、シャフト10がリング52の内部をZ軸方向に移動可能であり、且つ、シャフト10がリング52の内部を中心軸100回りに回転可能である。ただし、拡径部51Bを除く貫通孔51Aの内面とシャフト10の外面との間に形成される隙間よりも、リング52の内面とシャフト10の外面との間に形成される隙間の方が小さい。なお、Z軸方向上側のリング52を第一リング52Aといい、Z軸方向下側のリング52を第二リング52Bとする。第一リング52Aと第二リング52Bとを区別しない場合には、単にリング52という。リング52の材料には、例えば金属又は樹脂を用いることができる。
【0034】
ハウジング本体51のZ軸方向の中央部には、X軸方向の左右両方向に張り出した張出部511が形成されている。張出部511には、ハウジング2の下端面202と平行な面であって、シャフトハウジング50をハウジング2の下端面202へ取り付けるときに、該下端面202と接する面である取付面511Aが形成されている。取付面511Aは、中心軸100と直交する面である。また、ハウジング2にシャフトハウジング50を取り付けたときに、シャフトハウジング50の一部であって取付面511AよりもZ軸方向の上側の部分512は、ハウジング2に形成された凹部202Bに嵌るように形成されている。
【0035】
上記のとおり、貫通孔51Aの内面とシャフト10の外面とには隙間が設けられている。その結果、ハウジング本体51の内部には、貫通孔51Aの内面と、シャフト10の外
面と、第一リング52Aの下端面と、第二リング52Bの上端面とによって囲まれた空間である内部空間500が形成されている。また、シャフトハウジング50には、ハウジング2の下端面202に形成されるエア流通路202Aの開口部と、内部空間500とを連通して空気の通路となる制御通路501が形成されている。制御通路501は、X軸方向に延びる第一通路501A、Z軸方向に延びる第二通路501B、第一通路501A及び第二通路501Bが接続される空間であってフィルタ53が配置される空間であるフィルタ部501Cを有する。第一通路501Aの一端は内部空間500に接続され、他端はフィルタ部501Cに接続されている。第二通路501Bの一端は、取付面511Aに開口しており、エア流通路202Aの開口部に接続されるように位置が合わされている。
【0036】
また、第二通路501Bの他端はフィルタ部501Cに接続される。フィルタ部501Cには、円筒状に形成されたフィルタ53が設けられている。フィルタ部501Cは、第一通路501Aと中心軸が一致するようにX軸方向に延びた円柱形状の空間となるように形成されている。フィルタ部501Cの内径とフィルタ53の外径とは略等しい。フィルタ53は、X軸方向にフィルタ部501Cへ挿入される。フィルタ部501Cにフィルタ53が挿入された後に、フィルタ止め54によってフィルタ53の挿入口となったフィルタ部501Cの端部が閉塞される。第二通路501Bの他端は、フィルタ53の外周面側からフィルタ部501Cに接続されている。また、第一通路501Aの他端はフィルタ53の中心側と通じている。そのため、第一通路501Aと第二通路501Bとの間を流通する空気は、フィルタ53を通過する。したがって、例えば、先端部10Aに負圧を発生させたときに、内部空間500に空気と一緒に異物を吸い込んだとしても、この異物はフィルタ53によって捕集される。第二通路501Bの一端には、シール剤を保持するように溝501Dが形成されている。
【0037】
張出部511のX軸方向の両端部付近には、該シャフトハウジング50をハウジング2にボルトを用いて固定するときに、該ボルトを挿通させるボルト孔51Gが2つ形成されている。ボルト孔51Gは、Z軸方向に張出部511を貫通して取付面511Aに開口している。
【0038】
シャフト10の先端部10A側には、シャフト10が中空となるように中空部11が形成されている。中空部11の一端は、先端部10Aで開口している。また、中空部11の他端には、内部空間500と中空部11とをX軸方向に連通する連通孔12が形成されている。直動モータ30によってシャフト10がZ軸方向に移動したときのストロークの全範囲において、内部空間500と中空部11とが連通するように連通孔12が形成されている。したがって、シャフト10の先端部10Aと、エア制御機構60とは、中空部11、連通孔12、内部空間500、制御通路501、エア流通路202Aを介して連通している。なお、連通孔12は、X軸方向に加えてY軸方向にも形成されていてもよい。
【0039】
上記のように構成されるシャフト10及びシャフトハウジング50によれば、直動モータ30を駆動してシャフト10をZ軸方向に移動させたときに、シャフト10がZ軸方向のどの位置にあっても、連通孔12は常に内部空間500と中空部11とを連通する。また、回転モータ20を駆動してシャフト10を中心軸100回りに回転させたときに、シャフト10の回転角度が中心軸100回りのどの角度であっても、連通孔12は常に内部空間500と中空部11とを連通する。したがって、シャフト10がどのような状態であっても、中空部11と内部空間500との連通状態が維持されるため、中空部11は常にエア制御機構60に通じていることになる。そのため、エア制御機構60において正圧電磁弁63Aを閉じ且つ負圧電磁弁63Bを開くことで、シャフト10の位置にかかわらず、中空部11内の空気を、連通孔12、内部空間500、制御通路501、エア流通路202A、及び共用通路61C(これらの経路が本発明の空気通路に相当)を介して、負圧通路61Bへ吸引することができる。その結果、シャフト10の位置にかかわらず、中空
部11に負圧を発生させることができる。すなわち、シャフト10の位置にかかわらず、シャフト10の先端部10Aに負圧を発生させることができ、それにより、シャフト10の先端部10AにワークWを吸着することができる。なお、上述したように、リング52の内面とシャフト10の外面との間にも隙間が形成されている。しかしながら、この隙間は、内部空間500を形成する隙間(すなわち、貫通孔51Aの内面とシャフト10の外面との間に形成される隙間)よりも小さい。そのため、エア制御機構60において正圧電磁弁63Aを閉じ、負圧電磁弁63Bを開くことで、内部空間500内の空気が吸引されても、リング52の内面とシャフト10の外面との間の隙間を流通する空気の流量を抑制することができる。これにより、ワークWをシャフト10の先端部10Aに吸着させ得る負圧をシャフト10の先端部10Aに発生させることができる。一方、シャフト10の位置にかかわらず、エア制御機構60において正圧電磁弁63Aを開き、負圧電磁弁63Bを閉じると、中空部11に正圧を発生させることができる。すなわち、シャフト10の先端部10Aに正圧を発生させることができるので、シャフト10の先端部10AからワークWを速やかに脱離させることができる。
【0040】
(ピックアンドプレイス動作)
アクチュエータ1を用いたワークWのピックアンドプレイスについて説明する。ピックアンドプレイスは、コントローラ7が所定のプログラムを実行することにより行われる。なお、ワークWのピックアップアンドプレイスを行う場合には、ワークWの大きさに応じた口径を持つ吸着ノズル70がシャフト10の先端部10Aに装着される。そして、ワークWのピックアップ時において、吸着ノズル70がワークWに接触するまでは、正圧電磁弁63A及び負圧電磁弁63Bは共に閉じた状態とする。この場合、シャフト10の先端部10A及び吸着ノズル70の圧力は大気圧となる。そして、直動モータ30によりシャフト10をZ軸方向下側に移動させる。吸着ノズル70がワークWに接触すると、直動モータ30を停止させる。直動モータ30を停止後に正圧電磁弁63Aを閉じた状態に維持しつつ負圧電磁弁63Bを開くことにより、中空部11から負圧通路61Bへ吸い出される空気の流れが許容されて、シャフト10の先端部10A及び吸着ノズル70に負圧が発生する。これにより、ワークWを吸着ノズル70に吸着させる。その後、直動モータ30によりシャフト10をZ軸方向上側に移動させる。このときに、必要に応じて、回転モータ20によりシャフト10を回転させる。このようにして、ワークWをピックアップすることができる。
【0041】
次に、ワークWのプレイス時には、ワークWが吸着ノズル70に吸着している状態のシャフト10を直動モータ30によりZ軸方向の下側に移動させる。ワークWが接地すると、直動モータ30を停止させることで、シャフト10の移動を停止させる。さらに、負圧電磁弁63Bを閉じることにより、中空部11から負圧通路61Bへ吸い出される空気の流れを遮断すると共に、正圧電磁弁63Aを開くことにより、ポンプ等から正圧通路61Aを介して中空部11へ供給される空気の流れを許容する。これにより、シャフト10の先端部10A及び吸着ノズル70に正圧を発生させる。その後、直動モータ30によりシャフト10をZ軸方向の上側に移動させることにより、シャフト10の先端部10AがワークWから離れる。なお、アクチュエータ1は、ワークWのプレイス時に中空部11へ空気が供給されるように構成されていればよく、例えば、正圧通路61Aの一端を大気開放端とすることで、正圧電磁弁63Aが開いたときに上記の大気開放端から正圧通路61Aを介して中空部11へ空気が導入されるように構成されてもよい。
【0042】
ここで、ワークWのピックアップ時において、吸着ノズル70がワークWに接触したことをひずみゲージ37を用いて検出する。以下では、この方法について説明する。なお、ワークWのプレイス時においてワークWが接地したことも同様にして検出することができる。吸着ノズル70がワークWに接触して吸着ノズル70がワークWを押すと、シャフト10とワークWとの間に荷重が発生する。すなわち、シャフト10がワークWに力を加え
たときの反作用によって、シャフト10がワークWから力を受ける。このシャフト10がワークWから受ける力は、連結アーム36に対してひずみを発生させる方向に作用する。すなわち、このときに連結アーム36にひずみが生じる。このひずみは、ひずみゲージ37によって検出される。そして、ひずみゲージ37が検出するひずみは、シャフト10がワークWから受ける力と相関関係にある。このため、ひずみゲージ37の検出値に基づいて、ワークWからシャフト10が受ける力、すなわち、シャフト10とワークWとの間に発生した荷重を検出することができる。ひずみゲージの検出値と荷重との関係は予め実験又はシミュレーション等により求めることができる。
【0043】
このように、ひずみゲージ37の検出値に基づいてシャフト10とワークWとの間に発生した荷重を検出することができるため、例えば、荷重が発生した時点で吸着ノズル70がワークWに接触したと判断してもよいし、誤差等の影響を考慮して、検出された荷重が所定荷重以上の場合に、吸着ノズル70がワークWに接触したと判断してもよい。なお、所定荷重は、吸着ノズル70がワークWに接触したと判定される閾値である。また、所定荷重をワークWの破損を抑制しつつワークWをより確実にピックアップすることが可能な荷重として設定してもよい。また、所定荷重は、ワークWの種類に応じて変更することもできる。
【0044】
また、本実施形態では、ワークWのピックアップ時において、吸着ノズル70にワークWが適切に吸着されているかの判定(吸着判定)は、上記したセンシング装置を利用して行われる。以下では、この方法について説明する。本実施形態では、原則的には、圧力センサ64によって検出される圧力に基づいて吸着判定が行われる。ワークWのピックアップ時において、前述したように吸着ノズル70がワークWに接触したことが検出されると、コントローラ7は、正圧電磁弁63Aを閉じた状態に維持しつつ負圧電磁弁63Bを閉じた状態から開いた状態へ切り換える。これにより、共用通路61C、エア流通路202A、制御通路501、内部空間500、及び連通孔12を含む空気通路の空気、並びに中空部11の空気が負圧通路61Bへ吸い出される。ここで、吸着ノズル70がワークWに接触した状態で、空気通路及び中空部11の空気が負圧通路61Bへ吸い出されると、それら空気通路及び中空部11の圧力が徐々に低下していくことになる。その際、コントローラ7は、圧力センサ64を利用して共用通路61C内の圧力をモニタリングすることで、共用通路61C内の圧力が所定圧力以下まで低下したかを判別する。ここでいう所定圧力は、前述したように、共用通路61C内の圧力が該所定圧力以下まで低下していれば、ワークWを適正に吸着し得る負圧がシャフト10の先端部10A(吸着ノズル70)に発生していると判定することができる圧力であり、吸着ノズル70の口径に応じて予め設定される。その際、吸着ノズルの口径が大きい場合は小さい場合に比べ、所定圧力がより低い圧力(負圧度合がより大きくなる圧力)に設定される。なお、吸着ノズル70の口径は、ワークWの大きさに応じて定められるため、ワークWの大きさに応じて所定圧力が設定されてもよい。そして、圧力センサ64によって検出される圧力が上記所定圧力以下まで低下していれば、コントローラ7は、吸着ノズル70にワークWが適切に吸着されていると判定する。その場合、コントローラ7は、直動モータ30によりシャフト10をZ軸方向上側に移動させることで、ワークWのピックアップを行う。
【0045】
なお、上記のように圧力センサ64を利用した吸着判定は、ワークWのサイズが比較的大きい場合のように、比較的口径の大きな吸着ノズル70がシャフト10の先端部10Aに装着される場合に行われる。これは、比較的口径の大きな吸着ノズル70がシャフト10の先端部10Aに装着される場合は、吸着ノズル70にワークWが吸着されている状態(吸着ノズル70が閉塞された状態)における共用通路61Cの圧力と吸着ノズル70にワークWが吸着されていない状態(吸着ノズル70が開放された状態)における共用通路61Cの圧力との差が大きくなり易く、且つシャフト10の先端部10A(吸着ノズル70)の圧力変化が共用通路61C内の圧力に速やかに反映され易いため、圧力センサ64
を利用した吸着判定によって、吸着ノズル70にワークWが適切に吸着されているかを精度良く且つ速やかに判定することができるからである。これに対し、ワークWの大きさが比較的小さい場合のように、比較的口径の小さな吸着ノズル70がシャフト10の先端部10Aに装着される場合には、流量センサ65を利用した吸着判定が行われる。これは、吸着ノズル70の口径が比較的小さい場合には、前述したように、吸着ノズル70にワークWが吸着されている状態(吸着ノズル70が閉塞された状態)における共用通路61Cの圧力と吸着ノズル70にワークWが吸着されていない状態(吸着ノズル70が開放された状態)における共用通路61Cの圧力との差が小さくなるため、圧力センサ64を利用した吸着判定では精度の良い判定を速やかに行うことが困難になる可能性があるためである。
【0046】
比較的口径の小さな吸着ノズル70がシャフト10の先端部10Aに装着された状態でワークWのピックアップが行われる場合には、コントローラ7は、正圧電磁弁63Aを閉じた状態に維持しつつ負圧電磁弁63Bを閉じた状態から開いた状態へ切り換えた後に、流量センサ65を利用して共用通路61Cを流れる空気の流量をモニタリングすることで、共用通路61Cを流れる空気の流量が所定流量以下まで減少しているかを判別する。ここでいう所定流量は、前述したように、共用通路61Cを流れる空気の流量が該所定流量以下まで減少していれば、ワークWを適切に吸着し得る負圧がシャフト10の先端部10A(吸着ノズル70)に発生していると判定することができる流量である。言い換えると、所定流量は、共用通路61Cを流れる空気の流量が該所定流量以下まで低下していれば、共用通路61C内の圧力が上記の所定圧力以下に低下していると判定することができる流量である。そして、流量センサ65によって検出される流量が上記所定流量以下まで減少していれば、コントローラ7は、吸着ノズル70にワークWが適切に吸着されていると判定する。その場合、コントローラ7は、直動モータ30によりシャフト10をZ軸方向上側に移動させることで、ワークWのピックアップを行う。
【0047】
なお、比較的口径の小さな吸着ノズル70がシャフト10の先端部10Aに装着された状態でワークWのピックアップが行われる場合には、圧力センサ64と流量センサ65の双方を利用して吸着判定を行うようにしてもよい。すなわち、正圧電磁弁63Aが閉じた状態に維持されつつ負圧電磁弁63Bが閉じた状態から開いた状態へ切り換えられた後において、コントローラ7は、流量センサ65を利用して共用通路61Cを流れる空気の流量をモニタリングすると共に、圧力センサ64を利用して共用通路61C内の圧力をモニタリングするようにしてもよい。そして、共用通路61Cを流れる空気の流量が所定流量以下まで減少しており、且つ共用通路61C内の圧力が所定圧力以下まで低下していることを条件として、吸着ノズル70にワークWが適切に吸着されていると判定するようにしてもよい。
【0048】
(本実施形態に係る構成の効果)
以上説明したように、本実施形態に係るアクチュエータ1は、共用通路61C内の圧力を検出する圧力センサ64と共用通路61Cを流れる空気の流量を検出する流量センサ65とを含むセンシング装置を備えている。そのため、ワークWのピックアップ時において、流量センサ65およびまたは圧力センサ64を利用した吸着判定を行うことが可能となる。例えば、比較的口径の大きな吸着ノズル70がシャフト10の先端部10Aに装着される場合(すなわち、比較的サイズの大きなワークWをピックアップする場合)のように、圧力センサ64を利用して精度の良い吸着判定を速やかに行える場合には、圧力センサ64を利用した吸着判定を行うことが可能になる一方で、比較的口径の小さな吸着ノズル70がシャフト10の先端部10Aに装着される場合(すなわち、比較的サイズの小さなワークWをピックアップする場合)のように、圧力センサ64を利用して精度の良い吸着判定を速やかに行うことが困難である場合には、流量センサ65を利用した吸着判定、又は流量センサ65と圧力センサ64とを利用した吸着判定を行うことが可能になる。それ
により、吸着ノズル70の口径やワークWのサイズ等に左右されることなく、精度の良い吸着判定を速やかに行うことが可能となる。
【0049】
また、本実施形態では、センシング装置の圧力センサ64及び流量センサ65は、負圧電磁弁63Bよりもシャフト10の先端部10Aに近い位置(共用通路61C)に配置されるため、先端部10Aの圧力との相関が高い圧力及び流量を正確に且つ速やかに検出することができる。これにより、流量センサ65およびまたは圧力センサ64を利用した吸着判定をより正確に且つより速やかに行うことも可能となる。
【0050】
さらに、本実施形態では、流量センサ65が圧力センサ64よりもシャフト10の先端部10Aに近い位置に配置されることで、比較的口径の小さな吸着ノズル70がシャフト10の先端部10Aに装着される場合のように、流量センサ65を利用した吸着判定、又は流量センサ65と圧力センサ64とを利用した吸着判定が行われる場合に、先端部10Aの圧力との相関が高い流量を高精度で速やかに検出することも可能となる。特に、流量センサ65と圧力センサ64の双方を利用して吸着判定が行われる場合には、圧力センサ64よりも流量センサ65の方に高い応答性が求められるため、流量センサ65が圧力センサ64よりもシャフト10の先端部10Aに近い位置に配置されることで、先端部10Aの圧力との相関が高い流量を高応答で検出することが可能となる。したがって、比較的口径の小さな吸着ノズル70がシャフト10の先端部10Aに装着される場合においても、精度良い吸着判定を速やかに行うことができる。
【0051】
(変形例)
上記の実施形態では、ワークWのピックアップ時において、吸着ノズル70がワークWに接触するまでは、正圧電磁弁63A及び負圧電磁弁63Bが閉じた状態にされ、吸着ノズル70がワークWに接触したことが検出された後に、負圧電磁弁63Bを開くことで、空気通路及び中空部11内の空気の吸引が開始される例について述べた。これに対し、本変形例では、ワークWのピックアップ時において、吸着ノズル70がワークWに接触する前の段階で、負圧電磁弁63Bを開いて、空気通路及び中空部11内の空気の吸引を開始する。
【0052】
ここで、ワークWのピックアップ時におけるアクチュエータの動作について、図4に基づいて説明する。図4は、ワークWのピックアップ時にコントローラ7によって行われる処理フローを示す図である。
【0053】
図4の処理フローにおいて、コントローラ7は、先ず、直動モータ30を駆動させることで、シャフト10のZ軸方向下側への移動(降下)を開始する(ステップS101)。なお、この時点では、正圧電磁弁63A及び負圧電磁弁63Bは共に閉じた状態に維持される。
【0054】
コントローラ7は、シャフト10の降下を開始した時点から所定時間が経過したかを判別する(ステップS102)。ここでいう「所定時間」は、シャフト10が降下を開始した時点から該シャフト10の先端部10A(吸着ノズル70)がワークWに接触する時点までに要する時間(降下時間)と、負圧電磁弁63Bが開き始めた時点から流量センサ65の検出値が変化し始める時点(負圧通路61Bから印加される負圧が流量センサ65の位置に到達する時点)までに要する時間(応答遅れ時間)と、の差に相当する時間(=(降下時間)-(応答遅れ時間))である。なお、上記降下時間及び上記応答遅れ時間を実験やシミュレーションの結果等に基づいて予め求めておくことで、上記所定時間も予め演算してことができる。シャフト10の降下を開始した時点から所定時間が未だ経過していない場合(ステップS102で否定判定された場合)は、コントローラ7は、該ステップS102の処理を繰り返し実行する。一方、シャフト10の降下を開始した時点から所定
時間が経過している場合(ステップS102で肯定判定された場合)は、コントローラ7は、ステップS103の処理へ進む。
【0055】
ステップS103では、コントローラ7は、正圧電磁弁63Aを閉じた状態に維持しつつ、負圧電磁弁63Bを閉じた状態から開いた状態へ切り換える。続いて、コントローラ7は、ひずみゲージ37を利用して、吸着ノズル70がワークWに接触したかを判別する(ステップS104)。吸着ノズル70がワークWに接触していない場合(ステップS104で否定判定された場合)は、コントローラ7は、該ステップS104の処理を繰り返し実行する。一方、吸着ノズル70がワークWに接触している場合(ステップS104で肯定判定された場合)は、コントローラ7は、ステップS105の処理へ進む。
【0056】
ステップS105では、コントローラ7は、直動モータ30を停止させることで、シャフト10のZ軸方向下側への移動(降下)を停止させる。続いて、コントローラ7は、吸着ノズル70にワークWが適切に吸着されているかを判別する(ステップS106)。その際、シャフト10の先端部10Aに装着されている吸着ノズル70の口径が比較的大きければ、コントローラ7は、前述の実施形態で述べたように、圧力センサ64によって検出される圧力が前述の所定圧力以下まで低下していることを条件として、吸着ノズル70にワークWが適切に吸着されていると判定すればよい。また、シャフト10の先端部10Aに装着されている吸着ノズル70の口径が比較的小さければ、コントローラ7は、前述の実施形態で述べたように、流量センサ65によって検出される流量が前述の所定流量以下まで減少していることを条件として、吸着ノズル70にワークWが適切に吸着されていると判定してもよく、又は、流量センサ65によって検出される流量が前述の所定流量以下まで減少しており、且つ圧力センサ64によって検出される圧力が前述の所定圧力以下まで低下していることを条件として、吸着ノズル70にワークWが適切に吸着されていると判定してもよい。そして、吸着ノズル70にワークWが適切に吸着されていないと判定された場合(ステップS106で否定判定された場合)は、コントローラ7は、該ステップS106の処理を繰り返し実行する。一方、吸着ノズル70にワークWが適切に吸着されていると判定された場合(ステップS106で肯定判定された場合)は、コントローラ7は、ステップS107の処理へ進む。
【0057】
ステップS107では、コントローラ7は、直動モータ30を駆動させることで、シャフト10のZ軸方向上側への移動(上昇)を開始することで、ワークWのピックアップを行う。
【0058】
上記の図4に示す手順でワークWのピックアップが行われた場合、吸着ノズル70がワークWに接触する前のタイミングであって、且つ吸着ノズル70がワークWに接触するときに流量センサ65の検出値が変化し始めるように定められたタイミングで、負圧電磁弁63Bが開かれることになる。これにより、吸着ノズル70がワークWに接触するタイミングで、流量センサ65の検出値が変化し始めることになる。その結果、吸着ノズル70がワークWに接触したとき、又は吸着ノズル70がワークWに接触した後の早い時期に、シャフト10の先端部10A(吸着ノズル70)に負圧を発生させることができる。よって、前述の実施形態で述べたように吸着ノズル70がワークWに接触した時点で負圧電磁弁63Bを開く場合に比べ、より早い時期に吸着ノズル70にワークWを吸着させることができる。
【0059】
したがって、本変形例によれば、多種多量のワークWの吸着判定をより速やかに行うことが可能になるため、ピックアップのタクトタイムをより一層短くすることができる。
【0060】
なお、前述の図4では、負圧電磁弁63Bが開き始めた時点から流量センサ65の検出値が変化し始める時点までに要する時間(応答遅れ時間)に比べ、シャフト10が降下を
開始した時点から吸着ノズル70がワークWに接触する時点までに要する時間(降下時間)の方が長い場合の処理フローを例示したが、降下時間よりも応答遅れ時間の方が長くなる場合も想定し得る。その場合は、コントローラ7は、先ず負圧電磁弁63Bを開き、その後の所定時間(=(応答得遅れ時間)-(降下時間))が経過した時点で、直動モータ30を駆動させることで、シャフト10のZ軸方向下側への移動(降下)を開始させればよい。これにより、降下時間が応答遅れ時間より長い場合においても、ワークWの吸着判定をより速やかに行うことが可能となる。
【0061】
また、前述の図4では、吸着ノズル70がワークWに接触する前のタイミングであって、且つ吸着ノズル70がワークWに接触するときに流量センサ65の検出値が変化し始めるように定められたタイミングで、負圧電磁弁63Bが開かれる例について述べたが、吸着ノズル70がワークWに接触する前のタイミングであって、且つ吸着ノズル70がワークWに接触するときに圧力センサ64の検出値が変化し始めるように定められたタイミングで、負圧電磁弁63Bが開かれるようにしてもよい。その場合も、吸着ノズル70がワークWに接触したとき、又は吸着ノズル70がワークWに接触した後の早い時期に、シャフト10の先端部10A(吸着ノズル70)に負圧を発生させることができる。
【符号の説明】
【0062】
1・・・アクチュエータ、2・・・ハウジング、7・・・コントローラ、10・・・シャフト、10A・・・先端部、11・・・中空部、20・・・回転モータ、22・・・固定子、23・・・回転子、30・・・直動モータ、31・・・固定子、32・・・可動子、36・・・連結アーム、37・・・ひずみゲージ、50・・・シャフトハウジング、60・・・エア制御機構、61B・・・負圧通路、61C・・・共用通路、63B・・・負圧電磁弁、64・・・圧力センサ、65・・・流量センサ、70・・・吸着ノズル、202A・・・エア流通路、500・・・内部空間、501・・・制御通路
図1
図2
図3
図4