(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】フィルムコンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/32 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
H01G4/32 511A
H01G4/32 511D
H01G4/32 511L
(21)【出願番号】P 2018018221
(22)【出願日】2018-02-05
【審査請求日】2020-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390022460
【氏名又は名称】株式会社指月電機製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】小笹 千一
(72)【発明者】
【氏名】阪本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】城岸 賢
【審査官】北原 昂
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102796985(CN,A)
【文献】中国実用新案第205428701(CN,U)
【文献】国際公開第2015/041126(WO,A1)
【文献】中国実用新案第205354876(CN,U)
【文献】中国実用新案第204497059(CN,U)
【文献】中国実用新案第203434000(CN,U)
【文献】特開平10-303056(JP,A)
【文献】国際公開第2006/112099(WO,A1)
【文献】特開2012-222127(JP,A)
【文献】特開2013-219094(JP,A)
【文献】実開平03-122527(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/18
H01G 4/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面、及び、前記第1面と反対側の第2面を有する第1誘電体フィルムと、
第1面、及び、前記第1面と反対側の第2面を有し、前記第1誘電体フィルムに積層された第2誘電体フィルムと、
前記第1誘電体フィルムの前記第1面に設けられた第1内部電極と、
前記第1誘電体フィルムと前記第2誘電体フィルムとの間に位置し、前記第2誘電体フィルムの前記第1面、又は、前記第1誘電体フィルムの前記第2面に設けられた第2内部電極と、
前記第1誘電体フィルム及び前記第2誘電体フィルムが積層された積層体の一方の端面に設けられ、前記第1内部電極に接続されるとともに前記第2内部電極と離間された第1外部電極と、
前記積層体の他方の端面に設けられ、前記第2内部電極に接続されるとともに前記第1内部電極と離間された第2外部電極と、を備えるフィルムコンデンサであって、
前記第1内部電極は、前記第1外部電極に接続された第1接続部と、前記第1接続部に連接され、前記第1接続部よりも薄い第1主電極部と、前記第1主電極部から前記第2外部電極に向かって伸び、前記第1主電極部よりも薄い第1薄膜部と、を備え、
前記第2内部電極は、前記第2外部電極に接続された第2接続部と、前記第2接続部に連接され、前記第2接続部よりも薄い第2主電極部と、を備え、
前記第1主電極部は、前記第1誘電体フィルムを介して前記第2主電極部に対向し、前記第2接続部には対向せず、
前記第1薄膜部は、前記第1誘電体フィルムを介して前記第2接続部に対向し、
前記第1薄膜部は、前記第2主電極部から前記第2接続部にわたって対向するように伸び
、
前記第2接続部は、前記第1薄膜部よりも電気伝導性が低い材料から構成される、フィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記第2内部電極は、さらに、前記第2主電極部から前記第1外部電極に向かって伸び、前記第2主電極部よりも薄い第2薄膜部を備え、
前記第2主電極部は、前記第1誘電体フィルムを介して前記第1接続部には対向せず、
前記第2薄膜部は、前記第1誘電体フィルムを介して前記第1接続部に対向する、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項3】
前記第1薄膜部の最大厚みは、前記第1接続部の最大厚みと前記第1主電極部の最大厚みとの差よりも小さい、請求項1又は2に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項4】
前記第1薄膜部の最大厚みは、7nm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項5】
前記第1外部電極から前記第2外部電極に向かう方向において、前記第1薄膜部は、前記第1主電極部よりも短く、かつ、前記第2主電極部に対向する前記第1薄膜部は、前記第2接続部に対向する前記第1薄膜部よりも長い、請求項1~3のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項6】
前記第1外部電極から前記第2外部電極に向かう方向において、前記第2主電極部に対向する前記第1薄膜部の長さは、4mm以下である、請求項5に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項7】
前記第2内部電極は、前記第2誘電体フィルムの前記第1面に設けられており、
前記第2接続部は、前記第1誘電体フィルムを介して前記第1薄膜部に対向する側が、前記第2誘電体フィルムに対向する側よりも電気伝導性が低い材料から構成される、請求項1
又は2に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項8】
前記第2接続部は、亜鉛を主成分とする材料から構成され、
前記第1薄膜部は、アルミニウムを主成分とする材料から構成される、請求項
7に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項9】
前記第1誘電体フィルムは、硬化性樹脂を主成分として含み、
前記第2誘電体フィルムは、硬化性樹脂を主成分として含む、請求項1又は2に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項10】
第1面、及び、前記第1面と反対側の第2面を有する第1誘電体フィルムと、
第1面、及び、前記第1面と反対側の第2面を有し、前記第1誘電体フィルムに積層された第2誘電体フィルムと、
前記第1誘電体フィルムの前記第1面に設けられた第1内部電極と、
前記第1誘電体フィルムと前記第2誘電体フィルムとの間に位置し、前記第2誘電体フィルムの前記第1面、又は、前記第1誘電体フィルムの前記第2面に設けられた第2内部電極と、
前記第1誘電体フィルム及び前記第2誘電体フィルムが積層された積層体の一方の端面に設けられ、前記第2内部電極に接続されるとともに前記第1内部電極と離間された第1外部電極と、
前記積層体の他方の端面に設けられ、前記第2内部電極に接続されるとともに前記第1内部電極と離間された第2外部電極と、を備えるフィルムコンデンサであって、
前記第1内部電極は、第1主電極部と、前記第1主電極部から前記第2外部電極に向かって伸び、前記第1主電極部よりも薄い第1薄膜部と、を備え、
前記第2内部電極は、前記第1外部電極に接続された第1接続部と、前記第1接続部に連接され、前記第1接続部よりも薄い第2主電極部と、前記第2外部電極に接続された第2接続部と、前記第2主電極部から離間されるとともに前記第2接続部に連接され、前記第2接続部よりも薄い第3主電極部と、を備え、
前記第1主電極部は、前記第1誘電体フィルムを介して前記第2主電極部及び前記第3主電極部に対向し、前記第2接続部には対向せず、
前記第1薄膜部は、前記第1誘電体フィルムを介して前記第2接続部に対向し、
前記第1薄膜部は、前記第3主電極部から前記第2接続部にわたって対向するように伸び
、
前記第1外部電極から前記第2外部電極に向かう方向において、前記第1薄膜部は、前記第1主電極部よりも短く、かつ、前記第3主電極部に対向する前記第1薄膜部は、前記第2接続部に対向する前記第1薄膜部よりも長い、フィルムコンデンサ。
【請求項11】
前記第1内部電極は、さらに、前記第1主電極部から前記第1外部電極に向かって伸び、前記第1主電極部よりも薄い第2薄膜部を備え、
前記第1主電極部は、前記第1誘電体フィルムを介して前記第1接続部には対向せず、
前記第2薄膜部は、前記第1誘電体フィルムを介して前記第1接続部に対向する、請求項
10に記載のフィルムコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサの一種として、内部電極となる金属蒸着膜が表面に設けられた誘電体フィルムが巻回又は積層されてなるフィルムコンデンサがある。
【0003】
フィルムコンデンサにおいては、自己回復性(絶縁欠陥部の放電に伴い、金属蒸着膜が飛散して絶縁性を回復する性質)を高めるために、特許文献1及び特許文献2に記載されているように、容量を形成する部分の内部電極(以下、主電極部ともいう)を薄くする一方、両端面に設けられた外部電極と接続する部分の内部電極(以下、接続部ともいう)を厚くした、いわゆるヘビーエッジ構造が広く用いられている。
【0004】
また、特許文献1及び特許文献2に記載されているように、内部電極内に金属の無いスリットを設けて複数の分割電極に区分し、スリット間に形成したヒューズにより分割電極を並列接続した構成も提案されている。これは、自己回復時の短絡電流により絶縁欠陥部周囲のヒューズを溶断して絶縁欠陥部を電気回路から切り離す、自己保安機能を形成するものである。
【0005】
フィルムコンデンサを構成する誘電体フィルムの材料としては、従来、ポリプロピレン(PP)が用いられてきたが、特許文献3に記載されているように、耐熱性の高い熱硬化性樹脂も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-219094号公報
【文献】特開2004-134561号公報
【文献】国際公開第2013/069485号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の
図1には、一方の内部電極を構成する主電極部の端部(主電極部と絶縁マージンとの境界部)が、誘電体フィルムを介して、他方の内部電極を構成する接続部に対向した構造が記載されている。しかし、一方の内部電極を構成する主電極部の端部と他方の内部電極を構成する接続部とが重なった箇所では、電界集中により放電が多発し、絶縁破壊を起こすおそれがある。特に、特許文献3に記載されているような熱硬化樹脂を誘電体フィルムの材料として用いた場合、従来のPPフィルムを用いた場合に比べて自己回復性が劣るため、絶縁破壊が起こりやすい。
【0008】
そこで、特許文献2の
図3に記載されているように、接続部の幅を狭くして、一方の内部電極を構成する主電極部の端部が、誘電体フィルムを介して、他方の内部電極を構成する接続部に対向しない構造が考えられる。しかし、このような構造では、接続部の幅が狭いために外部電極との接続が不充分となり、耐電流性能が損なわれるおそれがある。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、自己回復性が高く、かつ、絶縁破壊の発生が抑制されたフィルムコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のフィルムコンデンサは、第1の態様において、第1面、及び、上記第1面と反対側の第2面を有する第1誘電体フィルムと、第1面、及び、上記第1面と反対側の第2面を有し、上記第1誘電体フィルムに積層された第2誘電体フィルムと、上記第1誘電体フィルムの上記第1面に設けられた第1内部電極と、上記第1誘電体フィルムと上記第2誘電体フィルムとの間に位置し、上記第2誘電体フィルムの上記第1面、又は、上記第1誘電体フィルムの上記第2面に設けられた第2内部電極と、上記第1誘電体フィルム及び上記第2誘電体フィルムが積層された積層体の一方の端面に設けられ、上記第1内部電極に接続されるとともに上記第2内部電極と離間された第1外部電極と、上記積層体の他方の端面に設けられ、上記第2内部電極に接続されるとともに上記第1内部電極と離間された第2外部電極と、を備えるフィルムコンデンサであって、上記第1内部電極は、上記第1外部電極に接続された第1接続部と、上記第1接続部に連接され、上記第1接続部よりも薄い第1主電極部と、上記第1主電極部から上記第2外部電極に向かって伸び、上記第1主電極部よりも薄い第1薄膜部と、を備え、上記第2内部電極は、上記第2外部電極に接続された第2接続部と、上記第2接続部に連接され、上記第2接続部よりも薄い第2主電極部と、を備え、上記第1主電極部は、上記第1誘電体フィルムを介して上記第2主電極部に対向し、上記第2接続部には対向せず、上記第1薄膜部は、上記第1誘電体フィルムを介して上記第2接続部に対向する。
【0011】
第1の態様において、上記第2内部電極は、さらに、上記第2主電極部から上記第1外部電極に向かって伸び、上記第2主電極部よりも薄い第2薄膜部を備え、上記第2主電極部は、上記第1誘電体フィルムを介して上記第1接続部には対向せず、上記第2薄膜部は、上記第1誘電体フィルムを介して上記第1接続部に対向することが望ましい。
【0012】
上記第1薄膜部の最大厚みは、上記第1接続部の最大厚みと上記第1主電極部の最大厚みとの差よりも小さいことが望ましい。
【0013】
上記第1薄膜部の最大厚みは、7nm以下であることが望ましい。
【0014】
上記第1薄膜部は、上記第2主電極部から上記第2接続部にわたって対向するように伸びていることが望ましい。
【0015】
上記第1外部電極から上記第2外部電極に向かう方向において、上記第1薄膜部は、上記第1主電極部よりも短く、かつ、上記第2主電極部に対向する上記第1薄膜部は、上記第2接続部に対向する上記第1薄膜部よりも長いことが望ましい。
【0016】
上記第1外部電極から上記第2外部電極に向かう方向において、上記第2主電極部に対向する上記第1薄膜部の長さは、4mm以下であることが望ましい。
【0017】
上記第2接続部は、上記第1薄膜部よりも電気伝導性が低い材料から構成されることが望ましい。
【0018】
上記第2内部電極は、上記第2誘電体フィルムの上記第1面に設けられており、上記第2接続部は、上記第1誘電体フィルムを介して上記第1薄膜部に対向する側が、上記第2誘電体フィルムに対向する側よりも電気伝導性が低い材料から構成されることが望ましい。
【0019】
上記第2接続部は、亜鉛を主成分とする材料から構成され、上記第1薄膜部は、アルミニウムを主成分とする材料から構成されることが望ましい。
【0020】
上記第1誘電体フィルムは、硬化性樹脂を主成分として含み、上記第2誘電体フィルムは、硬化性樹脂を主成分として含むことが望ましい。
【0021】
本発明のフィルムコンデンサは、第2の態様において、第1面、及び、上記第1面と反対側の第2面を有する第1誘電体フィルムと、第1面、及び、上記第1面と反対側の第2面を有し、上記第1誘電体フィルムに積層された第2誘電体フィルムと、上記第1誘電体フィルムの上記第1面に設けられた第1内部電極と、上記第1誘電体フィルムと上記第2誘電体フィルムとの間に位置し、上記第2誘電体フィルムの上記第1面、又は、上記第1誘電体フィルムの上記第2面に設けられた第2内部電極と、上記第1誘電体フィルム及び上記第2誘電体フィルムが積層された積層体の一方の端面に設けられ、上記第2内部電極に接続されるとともに上記第1内部電極と離間された第1外部電極と、上記積層体の他方の端面に設けられ、上記第2内部電極に接続されるとともに上記第1内部電極と離間された第2外部電極と、を備えるフィルムコンデンサであって、上記第1内部電極は、第1主電極部と、上記第1主電極部から上記第2外部電極に向かって伸び、上記第1主電極部よりも薄い第1薄膜部と、を備え、上記第2内部電極は、上記第1外部電極に接続された第1接続部と、上記第1接続部に連接され、上記第1接続部よりも薄い第2主電極部と、上記第2外部電極に接続された第2接続部と、上記第2主電極部から離間されるとともに上記第2接続部に連接され、上記第2接続部よりも薄い第3主電極部と、を備え、上記第1主電極部は、上記第1誘電体フィルムを介して上記第2主電極部及び上記第3主電極部に対向し、上記第2接続部には対向せず、上記第1薄膜部は、上記第1誘電体フィルムを介して上記第2接続部に対向する。
【0022】
第2の態様において、上記第1内部電極は、さらに、上記第1主電極部から上記第1外部電極に向かって伸び、上記第1主電極部よりも薄い第2薄膜部を備え、上記第1主電極部は、上記第1誘電体フィルムを介して上記第1接続部には対向せず、上記第2薄膜部は、上記第1誘電体フィルムを介して上記第1接続部に対向することが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、自己回復性が高く、かつ、絶縁破壊の発生が抑制されたフィルムコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るフィルムコンデンサの一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すフィルムコンデンサのうち、第1外部電極及び第2外部電極を除く部分の拡大図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すフィルムコンデンサを構成する第1内部電極及び第2内部電極の一例を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すフィルムコンデンサを構成する第1内部電極及び第2内部電極の別の一例を模式的に示す平面図である。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は、第1内部電極を形成する方法の一例を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2実施形態に係るフィルムコンデンサの一例を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第3実施形態に係るフィルムコンデンサの一例を模式的に示す断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第4実施形態に係るフィルムコンデンサの一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のフィルムコンデンサについて説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
以下において記載する本発明の個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0026】
本発明のフィルムコンデンサにおいては、第1内部電極の薄膜部が、第1誘電体フィルムを介して第2内部電極の接続部に対向することを特徴としている。すなわち、第2内部電極の接続部と重なる箇所に位置する第1内部電極の端部に薄膜部を設けて、第1内部電極を薄くしている。そのため、第1内部電極の端部と第2内部電極の接続部とが重なった箇所で放電が多発しても自己回復し、絶縁破壊の発生を抑制することができる。
【0027】
以下に示す各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。第2実施形態以降では、第1実施形態と共通の事項についての記述は省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態毎には逐次言及しない。
【0028】
本発明のフィルムコンデンサは、内部電極が表面に設けられた誘電体フィルムが積層された状態で巻回されてなる巻回型のフィルムコンデンサであってもよいし、内部電極が表面に設けられた誘電体フィルムが積層されてなる積層型のフィルムコンデンサであってもよい。
【0029】
本発明のフィルムコンデンサが巻回型のフィルムコンデンサである場合、誘電体フィルムの巻回体は、断面形状が楕円又は長円のような扁平形状にプレスされ、よりコンパクトな形状とされてもよい。また、本発明のフィルムコンデンサが巻回型のフィルムコンデンサである場合、円柱状の巻回軸を備えていてもよい。巻回軸は、巻回状態の誘電体フィルムの中心軸線上に配置されるものであり、誘電体フィルムを巻回する際の巻軸となるものである。
【0030】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係るフィルムコンデンサでは、第1外部電極が第1内部電極に接続されるとともに第2内部電極と離間され、第2外部電極が第2内部電極に接続されるとともに第1内部電極と離間されている。第1実施形態では、第2内部電極が第2誘電体フィルムの第1面に設けられている。
【0031】
図1は、本発明の第1実施形態に係るフィルムコンデンサの一例を模式的に示す断面図である。
図2は、
図1に示すフィルムコンデンサのうち、第1外部電極及び第2外部電極を除く部分の拡大図である。
図3は、
図1に示すフィルムコンデンサを構成する第1内部電極及び第2内部電極の一例を模式的に示す平面図である。
【0032】
図1では、便宜上、第1誘電体フィルム11と第2誘電体フィルム12とを離間させて図示しているが、実際のフィルムコンデンサでは、第1誘電体フィルム及び第2誘電体フィルムは隙間なく重ねられている。
【0033】
図1には全体的な構成が示されていないが、フィルムコンデンサ1は、第1誘電体フィルム11と、第1誘電体フィルム11に積層された第2誘電体フィルム12と、第1誘電体フィルム11を介して互いに対向する第1内部電極21及び第2内部電極22と、を備えている。フィルムコンデンサ1は、さらに、第1内部電極21に接続されるとともに第2内部電極22と離間された第1外部電極31と、第2内部電極22に接続されるとともに第1内部電極21と離間された第2外部電極32と、を備えている。
【0034】
図4は、
図1に示すフィルムコンデンサを構成する第1内部電極及び第2内部電極の別の一例を模式的に示す平面図である。
図4に示すように、第1内部電極21には、電極の一部を細くしたヒューズ部21aと、絶縁スリット21bにより区分された分割電極21cとが形成されていてもよい。同様に、第2内部電極22には、電極の一部を細くしたヒューズ部22aと、絶縁スリット22bにより区分された分割電極22cとが形成されていてもよい。
【0035】
図1に示すフィルムコンデンサ1において、第1誘電体フィルム11は、第1面11a、及び、第1面11aと反対側の第2面11bを有する。同様に、第2誘電体フィルム12は、第1面12a、及び、第1面12aと反対側の第2面12bを有する。第1誘電体フィルム11の第2面11bと第2誘電体フィルム12の第1面12aとが対向するように、第1誘電体フィルム11と第2誘電体フィルム12とが積層されている。
【0036】
第1内部電極21は、第1誘電体フィルム11の第1面11aに設けられている。第1内部電極21は、第1誘電体フィルム11の第1面11aにおいて、一方側縁にまで届くが、他方側縁にまで届かないように設けられている。そのため、第1誘電体フィルム11の第1面11aの他方側縁には、第1内部電極21が設けられていない絶縁マージン71が存在する。
【0037】
第2内部電極22は、第2誘電体フィルム12の第1面12aに設けられている。第2内部電極22は、第2誘電体フィルム12の第1面12aにおいて、一方側縁にまで届かないが、他方側縁にまで届くように設けられている。そのため、第2誘電体フィルム12の第1面12aの一方側縁には、第2内部電極22が設けられていない絶縁マージン72が存在する。
【0038】
図1では、第1内部電極21における第1誘電体フィルム11の側縁にまで届いている側の端部、及び、第2内部電極22における第2誘電体フィルム12の側縁にまで届いている側の端部がともに積層されたフィルムから露出するように、第1誘電体フィルム11と第2誘電体フィルム12とが互いに幅方向(
図1では左右方向)にずらされて積層されている。
図1に示すフィルムコンデンサ1が巻回型のフィルムコンデンサである場合、第1誘電体フィルム11及び第2誘電体フィルム12は、積層された状態で巻回されることによって、第1内部電極21及び第2内部電極22が端部で露出した状態を保持して、積み重なった状態とされる。
【0039】
第1外部電極31及び第2外部電極32は、上述のようにして得られた積層体の各端面上に、例えば亜鉛などを溶射することによって形成される。第1外部電極31は、第1内部電極21の露出端部と接触し、それによって第1内部電極21と電気的に接続される。他方、第2外部電極32は、第2内部電極22の露出端部と接触し、それによって第2内部電極22と電気的に接続される。
【0040】
第1内部電極21は、第1外部電極31に接続された第1接続部41と、第1接続部41に連接された第1主電極部51と、第1主電極部51から第2外部電極32に向かって伸びる第1薄膜部61と、を備えている。第1主電極部51は第1接続部41よりも薄く、第1薄膜部61は第1主電極部51よりも薄い。
【0041】
第2内部電極22は、第2外部電極32に接続された第2接続部42と、第2接続部42に連接された第2主電極部52と、第2主電極部52から第1外部電極31に向かって伸びる第2薄膜部62と、を備えている。第2主電極部52は第2接続部42よりも薄く、第2薄膜部62は第2主電極部52よりも薄い。
【0042】
第1内部電極21のうち、第1主電極部51は、第1誘電体フィルム11の厚み方向において、第1誘電体フィルム11を介して第2主電極部52に対向し、第2接続部42には対向していない。一方、第1薄膜部61は、第1誘電体フィルム11の厚み方向において、第1誘電体フィルム11を介して第2接続部42に対向している。
【0043】
第2内部電極22のうち、第2主電極部52は、第1誘電体フィルム11の厚み方向において、第1誘電体フィルム11を介して第1接続部41に対向していない。一方、第2薄膜部62は、第1誘電体フィルム11の厚み方向において、第1誘電体フィルム11を介して第1接続部41に対向している。
【0044】
第1内部電極21は、望ましくは、以下の方法により形成される。第2内部電極22についても、同様の方法により形成される。
【0045】
図5(a)及び
図5(b)は、第1内部電極を形成する方法の一例を模式的に示す断面図である。
まず、
図5(a)に示すように、第1誘電体フィルム11の第1面11a上に、非蒸着部による絶縁マージン71を他方側縁に形成しながら、アルミニウムなどの金属を蒸着することにより第1金属蒸着膜21Aを形成する。第1金属蒸着膜21Aを形成する際、他の部分よりも金属蒸気量を少なくすることにより、第1薄膜部となる部分を形成することができる。例えば、金属蒸発源側のマスク形状を調整し、開口面積を他の部分より小さくする方法等が挙げられる。その後、
図5(b)に示すように、第1誘電体フィルム11の第1面11aの一方側縁側の第1金属蒸着膜21A上に亜鉛などの金属を蒸着することにより第2金属蒸着膜21Bを形成する。第2金属蒸着膜21Bは、第1金属蒸着膜21Aよりも厚いことが望ましい。その結果、第1誘電体フィルム11の第1面11aの一方側縁側に第1接続部が形成される。
【0046】
第1内部電極が上記の方法により形成される場合、第1接続部は、亜鉛を主成分とする材料から構成され、第1主電極部及び第1薄膜部は、アルミニウムを主成分とする材料から構成されることが望ましい。同様に、第2内部電極が上記の方法により形成される場合、第2接続部は、亜鉛を主成分とする材料から構成され、第2主電極部及び第2薄膜部は、アルミニウムを主成分とする材料から構成されることが望ましい。
【0047】
本明細書において、「主成分」とは、存在割合(重量%)が最も大きい成分を意味し、望ましくは、存在割合が50重量%を超える成分を意味する。
【0048】
図1に示すフィルムコンデンサ1では、第1接続部41は、厚みが一定である平坦領域に加えて、第1外部電極31から第1主電極部51に向かって厚みが低減する低減領域を有している。しかし、第1外部電極31に接続され、第1主電極部51よりも厚い限り、第1接続部の形状は特に限定されない。同様に、
図1に示すフィルムコンデンサ1では、第2接続部42は、厚みが一定である平坦領域に加えて、第2外部電極32から第2主電極部52に向かって厚みが低減する低減領域を有している。しかし、第2外部電極32に接続され、第2主電極部52よりも厚い限り、第2接続部の形状は特に限定されない。第2接続部の形状は、第1接続部の形状と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0049】
図1に示すフィルムコンデンサ1では、第1薄膜部61の形状は平坦であるが、第1主電極部51よりも薄い限り、第1薄膜部の形状は特に限定されない。同様に、
図1に示すフィルムコンデンサ1では、第2薄膜部62の形状は平坦であるが、第2主電極部52よりも薄い限り、第2薄膜部の形状は特に限定されない。第2薄膜部の形状は、第1薄膜部の形状と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0050】
図6(a)、
図6(b)、
図6(c)、
図6(d)及び
図6(e)は、第1薄膜部の別の例を模式的に示す断面図である。
図6(a)に示す第1薄膜部161、
図6(b)に示す第1薄膜部261、
図6(c)に示す第1薄膜部361、及び、
図6(d)に示す第1薄膜部461は、いずれも、第1主電極部51から第2外部電極(図示せず)に向かって厚みが低減するテーパー形状を有する。このうち、
図6(a)に示す第1薄膜部161は段差のある直線状のテーパー形状を有し、
図6(b)に示す第1薄膜部261は段差のない直線状のテーパー形状を有し、
図6(c)に示す第1薄膜部361は下に凸の曲線状のテーパー形状を有し、
図6(d)に示す第1薄膜部461は上に凸の曲線状のテーパー形状を有する。また、
図6(e)に示す第1薄膜部561は階段形状を有する。
【0051】
これまで説明してきたように、本発明の第1実施形態に係るフィルムコンデンサにおいては、第1内部電極が第1薄膜部を備え、第1薄膜部が第1誘電体フィルムを介して第2接続部に対向することを特徴としている。
【0052】
一方、本発明の第1実施形態に係るフィルムコンデンサにおいては、第2内部電極が第2薄膜部を備えていなくてもよいが、第2内部電極が第2薄膜部を備え、第2薄膜部が第1誘電体フィルムを介して第1接続部に対向することが望ましい。第1内部電極に第1薄膜部を設けるだけでなく、第2内部電極にも第2薄膜部を設けることにより、絶縁破壊をさらに抑制することができる。
【0053】
本発明の第1実施形態に係るフィルムコンデンサにおいて、第1薄膜部は、第1誘電体フィルムを介して、第2接続部における平均厚み以上の厚みを有する領域に対向することが望ましい。また、第1薄膜部は、第1誘電体フィルムを介して、第2接続部の平坦領域に対向することが望ましい。さらにまた、第1薄膜部は、第1誘電体フィルムを介して、第2接続部における最大厚みを有する領域に対向することが望ましい。
【0054】
本発明の第1実施形態に係るフィルムコンデンサにおいて、第2内部電極が第2薄膜部を備える場合、第2薄膜部は、第1誘電体フィルムを介して、第1接続部における平均厚み以上の厚みを有する領域に対向することが望ましい。また、第2薄膜部は、第1誘電体フィルムを介して、第1接続部の平坦領域に対向することが望ましい。さらにまた、第2薄膜部は、第1誘電体フィルムを介して、第1接続部における最大厚みを有する領域に対向することが望ましい。
【0055】
本発明の第1実施形態に係るフィルムコンデンサにおいて、第2接続部は、第1薄膜部よりも電気伝導性が低い材料から構成されることが望ましい。具体的には、第2接続部は、亜鉛を主成分とする材料から構成され、第1薄膜部は、アルミニウムを主成分とする材料から構成されることが望ましい。
【0056】
第1内部電極及び第2内部電極が
図5(a)及び
図5(b)に示すような方法により形成される場合、第2接続部は、第1誘電体フィルムを介して第1薄膜部に対向する側(
図5(b)中、第2金属蒸着膜21Bに相当する部分)が、第2誘電体フィルムに対向する側(
図5(b)中、第1金属蒸着膜21Aに相当する部分)よりも電気伝導性が低い材料から構成されることが望ましい。具体的には、第2接続部のうち、第1誘電体フィルムを介して第1薄膜部に対向する側は、亜鉛を主成分とする材料から構成され、第2誘電体フィルムに対向する側は、アルミニウムを主成分とする材料から構成されることが望ましい。
【0057】
本発明の第1実施形態に係るフィルムコンデンサにおいて、第2内部電極が第2薄膜部を備える場合、第1接続部は、第2薄膜部よりも電気伝導性が低い材料から構成されることが望ましい。具体的には、第1接続部は、亜鉛を主成分とする材料から構成され、第2薄膜部は、アルミニウムを主成分とする材料から構成されることが望ましい。
【0058】
第1内部電極及び第2内部電極が
図5(a)及び
図5(b)に示すような方法により形成される場合、第1接続部は、第1誘電体フィルムを介して第2薄膜部に対向する側と反対側(
図5(b)中、第2金属蒸着膜21Bに相当する部分)が、第1誘電体フィルムを介して第2薄膜部に対向する側(
図5(b)中、第1金属蒸着膜21Aに相当する部分)よりも電気伝導性が低い材料から構成されることが望ましい。具体的には、第1接続部のうち、第1誘電体フィルムを介して第2薄膜部に対向する側と反対側は、亜鉛を主成分とする材料から構成され、第1誘電体フィルムを介して第2薄膜部に対向する側は、アルミニウムを主成分とする材料から構成されることが望ましい。
【0059】
本発明の第1実施形態に係るフィルムコンデンサにおいて、第1薄膜部の最大厚み(
図2中、T
61で示される長さ)は、第1接続部の最大厚み(
図2中、T
41で示される長さ)と第1主電極部の最大厚み(
図2中、T
51で示される長さ)との差よりも小さいことが望ましい。
【0060】
本発明の第1実施形態に係るフィルムコンデンサにおいて、第2内部電極が第2薄膜部を備える場合、第2薄膜部の最大厚み(
図2中、T
62で示される長さ)は、第2接続部の最大厚み(
図2中、T
42で示される長さ)と第2主電極部の最大厚み(
図2中、T
52で示される長さ)との差よりも小さいことが望ましい。
【0061】
接続部は主電極部よりも厚いため、コンデンサ素子の両端は、接続部の厚みが積算されて大型に変形しやすい。そのため、薄膜部の最大厚みを、接続部の最大厚みと主電極部の最大厚みとの差よりも小さくすることにより、コンデンサ素子の両端の変形を抑制することができる。
【0062】
なお、内部電極の厚みは、内部電極の厚み方向に切断した断面を、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)等の電子顕微鏡を用いて観察することにより特定することができる。
【0063】
本発明の第1実施形態に係るフィルムコンデンサにおいて、第1薄膜部の最大厚みは、7nm以下であることが望ましい。一方、電極として機能するためには、第1薄膜部の最大厚みは、2nm以上であることが望ましい。
【0064】
本発明の第1実施形態に係るフィルムコンデンサにおいて、第2内部電極が第2薄膜部を備える場合、第2薄膜部の最大厚みは、7nm以下であることが望ましい。一方、電極として機能するためには、第2薄膜部の最大厚みは、2nm以上であることが望ましい。
【0065】
薄膜部の最大厚みが7nm以下であれば、放電時に蒸着膜を蒸発又は飛散させるためのエネルギーを小さくすることができ、自己回復性が良好になるため、一方の内部電極の端部と他方の内部電極の接続部とが重なった箇所で放電が多発しても、絶縁破壊を抑制することができる。
【0066】
本発明の第1実施形態に係るフィルムコンデンサにおいて、第1薄膜部は、第2主電極部から第2接続部にわたって対向するように伸びていることが望ましい。
【0067】
本発明の第1実施形態に係るフィルムコンデンサにおいて、第2内部電極が第2薄膜部を備える場合、第2薄膜部は、第1主電極部から第1接続部にわたって対向するように伸びていることが望ましい。
【0068】
一方の内部電極を構成する主電極部と薄膜部との界面の位置を、他方の内部電極を構成する接続部と主電極部との界面の位置と合わせることは困難である。特に、巻回型のフィルムコンデンサである場合、両者の位置がずれやすい。そのため、一方の内部電極を構成する薄膜部を、他方の内部電極を構成する主電極部から接続部にわたって形成することにより、例えば第1薄膜部を第2接続部に確実に対向させることができる。
【0069】
具体的には、第1薄膜部は、アルミニウムを主成分とする材料から構成される第2主電極部から、亜鉛を主成分とする材料から構成される第2接続部にわたって対向するように伸びていることが望ましい。また、第2内部電極が第2薄膜部を備える場合、第2薄膜部は、アルミニウムを主成分とする材料から構成される第1主電極部から、亜鉛を主成分とする材料から構成される第1接続部にわたって対向するように伸びていることが望ましい。
【0070】
本発明の第1実施形態に係るフィルムコンデンサでは、第1外部電極から第2外部電極に向かう方向において、第1薄膜部は、第1主電極部よりも短く、かつ、第2主電極部に対向する第1薄膜部は、第2接続部に対向する第1薄膜部よりも長いことが望ましい。
図2及び
図3では、第1薄膜部の長さをL
61、第2主電極部に対向する第1薄膜部の長さをL
615、第2接続部に対向する第1薄膜部の長さをL
614で示している。
【0071】
本発明の第1実施形態に係るフィルムコンデンサにおいて、第2内部電極が第2薄膜部を備える場合、第1外部電極から第2外部電極に向かう方向において、第2薄膜部は、第2主電極部よりも短く、かつ、第1主電極部に対向する第2薄膜部は、第1接続部に対向する第2薄膜部よりも長いことが望ましい。
図2及び
図3では、第2薄膜部の長さをL
62、第1主電極部に対向する第2薄膜部の長さをL
625、第1接続部に対向する第2薄膜部の長さをL
624で示している。
【0072】
なお、内部電極の長さは、内部電極の厚み方向に切断した断面を、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)等の電子顕微鏡を用いて観察することにより特定することができる。
【0073】
本発明の第1実施形態に係るフィルムコンデンサにおいて、第1外部電極から第2外部電極に向かう方向における第1薄膜部の長さL61は、第1主電極部の最大厚みT51と第1薄膜部の最大厚みT61との差よりも大きいことが望ましい。
【0074】
この場合、第1薄膜部の長さL61は、第1主電極部の最大厚みT51と第1薄膜部の最大厚みT61との差の50,000倍以上であることが望ましい。
【0075】
本発明の第1実施形態に係るフィルムコンデンサにおいて、第2内部電極が第2薄膜部を備える場合、第1外部電極から第2外部電極に向かう方向における第2薄膜部の長さL62は、第2主電極部の最大厚みT52と第2薄膜部の最大厚みT62との差よりも大きいことが望ましい。
【0076】
この場合、第2薄膜部の長さL62は、第2主電極部の最大厚みT52と第2薄膜部の最大厚みT62との差の50,000倍以上であることが望ましい。
【0077】
本発明の第1実施形態に係るフィルムコンデンサでは、第1外部電極から第2外部電極に向かう方向において、第2主電極部に対向する第1薄膜部の長さL615は、4mm以下であることが望ましい。第2主電極部に対向する第1薄膜部の長さL615は、0mmであってもよい。
【0078】
本発明の第1実施形態に係るフィルムコンデンサにおいて、第2内部電極が第2薄膜部を備える場合、第1外部電極から第2外部電極に向かう方向において、第1主電極部に対向する第2薄膜部の長さL625は、4mm以下であることが望ましい。第1主電極部に対向する第2薄膜部の長さL625は、0mmであってもよい。
【0079】
主電極部に対向する薄膜部の長さが4mm以下である場合、絶縁破壊を抑制することができるとともに、コンデンサのESR(等価直列抵抗)の上昇を抑制することもできる。したがって、電気特性の優れた信頼性の高いコンデンサとすることができる。
【0080】
本発明の第1実施形態に係るフィルムコンデンサにおいて、第1誘電体フィルムは、熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂を主成分として含んでもよいし、熱可塑性樹脂を主成分として含んでもよい。同様に、第2誘電体フィルムは、硬化性樹脂を主成分として含んでもよいし、熱可塑性樹脂を主成分として含んでもよい。第2誘電体フィルムは、第1誘電体フィルムと異なる構成を有していてもよいが、第1誘電体フィルムと同一の構成を有していることが望ましい。
【0081】
中でも、第1誘電体フィルムは、硬化性樹脂を主成分として含むことが望ましく、第2誘電体フィルムは、硬化性樹脂を主成分として含むことが望ましい。特に、第1誘電体フィルムは、熱硬化性樹脂を主成分として含むことが望ましく、第2誘電体フィルムは、熱硬化性樹脂を主成分として含むことが望ましい。
本発明の第1実施形態に係るフィルムコンデンサは、誘電体フィルムの材料として、PPに比べて熱的に安定な熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂を用いた場合であっても、容易に自己回復し、絶縁破壊が抑制されるため、信頼性の高い高耐熱性のコンデンサとすることができる。
【0082】
以下、第1誘電体フィルム及び第2誘電体フィルムを特に区別しない場合、単に「誘電体フィルム」という。
【0083】
上記のとおり、「主成分」とは、存在割合(重量%)が最も大きい成分を意味し、望ましくは、存在割合が50重量%を超える成分を意味する。したがって、誘電体フィルムは、主成分以外の成分として、例えば、シリコーン樹脂等の添加剤や、後述する第1有機材料及び第2有機材料等の出発材料の未硬化部分を含んでもよい。
【0084】
誘電体フィルムが硬化性樹脂を主成分として含む場合、硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂であってもよいし、光硬化性樹脂であってもよい。硬化性樹脂は、ウレタン結合及びユリア結合の少なくとも一方を有していてもよいし、有していなくてもよい。
なお、ウレタン結合及び/又はユリア結合の存在は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて確認することができる。
【0085】
本明細書において、熱硬化性樹脂とは、熱で硬化し得る樹脂を意味しており、硬化方法を限定するものではない。したがって、熱で硬化し得る樹脂である限り、熱以外の方法(例えば、光、電子ビームなど)で硬化した樹脂も熱硬化性樹脂に含まれる。また、材料によっては材料自体が持つ反応性によって反応が開始する場合があり、必ずしも外部から熱又は光等を与えずに硬化が進むものについても熱硬化性樹脂とする。光硬化性樹脂についても同様であり、硬化方法を限定するものではない。
【0086】
誘電体フィルムは、蒸着重合膜を主成分として含んでもよい。蒸着重合膜は、ウレタン結合及びユリア結合の少なくとも一方を有していてもよいし、有していなくてもよい。なお、蒸着重合膜は、基本的には、硬化性樹脂に含まれる。
【0087】
誘電体フィルムは、第1有機材料と第2有機材料との硬化物からなることが望ましい。例えば、第1有機材料が有する水酸基(OH基)と第2有機材料が有するイソシアネート基(NCO基)とが反応して得られる硬化物等が挙げられる。
【0088】
上記の反応によって硬化物を得る場合、出発材料の未硬化部分がフィルム中に残留してもよい。例えば、誘電体フィルムは、イソシアネート基(NCO基)及び水酸基(OH基)の少なくとも一方を含んでもよい。この場合、誘電体フィルムは、イソシアネート基及び水酸基のいずれか一方を含んでもよいし、イソシアネート基及び水酸基の両方を含んでもよい。
なお、イソシアネート基及び/又は水酸基の存在は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて確認することができる。
【0089】
第1有機材料は、分子内に複数の水酸基(OH基)を有するポリオールであることが望ましい。ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリビニルアセトアセタール等が挙げられる。第1有機材料として、2種以上の有機材料を併用してもよい。第1有機材料の中では、ポリエーテルポリオールに属するフェノキシ樹脂が望ましい。
【0090】
第2有機材料は、分子内に複数の官能基を有する、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂又はメラミン樹脂であることが望ましい。第2有機材料として、2種以上の有機材料を併用してもよい。
【0091】
イソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びトリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。これらのポリイソシアネートの変性体、例えば、カルボジイミド又はウレタン等を有する変性体であってもよい。中でも、芳香族ポリイソシアネートが望ましく、MDIがより望ましい。
【0092】
エポキシ樹脂としては、エポキシ環を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格エポキシ樹脂、シクロペンタジエン骨格エポキシ樹脂、ナフタレン骨格エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0093】
メラミン樹脂としては、構造の中心にトリアジン環、その周辺にアミノ基3個を有する有機窒素化合物であれば特に限定されず、例えば、アルキル化メラミン樹脂等が挙げられる。その他、メラミンの変性体であってもよい。
【0094】
誘電体フィルムは、望ましくは、第1有機材料及び第2有機材料を含む樹脂溶液をフィルム状に成形し、次いで、熱処理して硬化させることによって得られる。
【0095】
誘電体フィルムが熱可塑性樹脂を主成分として含む場合、熱可塑性樹脂としては、例えば、高結晶性ポリプロピレン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート等が挙げられる。
【0096】
誘電体フィルムは、他の機能を付加するための添加剤を含むこともできる。例えば、レベリング剤を添加することで平滑性を付与することができる。添加剤は、水酸基及び/又はイソシアネート基と反応する官能基を有し、硬化物の架橋構造の一部を形成する材料であることがより望ましい。このような材料としては、例えば、エポキシ基、シラノール基及びカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する樹脂等が挙げられる。
【0097】
誘電体フィルムの厚みは特に限定されないが、フィルムが薄すぎると脆くなりやすくなる。そのため、誘電体フィルムの厚みは、0.5μmを超えることが望ましく、2μm以上であることがより望ましい。一方、フィルムが厚すぎると、成膜時にクラック等の欠陥が発生しやすくなる。そのため、誘電体フィルムの厚みは、10μm未満であることが望ましく、6μm以下であることがより望ましい。
なお、誘電体フィルムの厚みは、光学式膜厚計を用いて測定することができる。
【0098】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係るフィルムコンデンサでは、第1実施形態と同様、第1外部電極が第1内部電極に接続されるとともに第2内部電極と離間され、第2外部電極が第2内部電極に接続されるとともに第1内部電極と離間されている。第2実施形態では、第1実施形態と異なり、第2内部電極が第1誘電体フィルムの第2面に設けられている。
【0099】
図7は、本発明の第2実施形態に係るフィルムコンデンサの一例を模式的に示す断面図である。
図7には全体的な構成が示されていないが、フィルムコンデンサ2は、第1誘電体フィルム11と、第1誘電体フィルム11に積層された第2誘電体フィルム12と、第1誘電体フィルム11を介して互いに対向する第1内部電極21及び第2内部電極22と、を備えている。フィルムコンデンサ2は、さらに、第1内部電極21に接続されるとともに第2内部電極22と離間された第1外部電極31と、第2内部電極22に接続されるとともに第1内部電極21と離間された第2外部電極32と、を備えている。
【0100】
図7に示すフィルムコンデンサ2において、第1内部電極21は、
図1に示すフィルムコンデンサ1と同様、第1誘電体フィルム11の第1面11aに設けられている。一方、第2内部電極22は、
図1に示すフィルムコンデンサ1と異なり、第1誘電体フィルム11の第2面11bに設けられている。そして、第2誘電体フィルム12には、内部電極が設けられていない。
【0101】
図1に示すフィルムコンデンサ1と同様、第1内部電極21は、第1外部電極31に接続された第1接続部41と、第1接続部41に連接された第1主電極部51と、第1主電極部51から第2外部電極32に向かって伸びる第1薄膜部61と、を備えている。また、第2内部電極22は、第2外部電極32に接続された第2接続部42と、第2接続部42に連接された第2主電極部52と、第2主電極部52から第1外部電極31に向かって伸びる第2薄膜部62と、を備えている。
【0102】
第1内部電極及び第2内部電極は、望ましくは、
図5(a)及び
図5(b)に示す方法により形成される。第2接続部は、第1誘電体フィルムを介して第1薄膜部に対向する側と反対側が、第1誘電体フィルムを介して第1薄膜部に対向する側よりも電気伝導性が低い材料から構成されることが望ましい。また、第2内部電極が第2薄膜部を備える場合、第1接続部は、第1誘電体フィルムを介して第2薄膜部に対向する側と反対側が、第1誘電体フィルムを介して第2薄膜部に対向する側よりも電気伝導性が低い材料から構成されることが望ましい。
【0103】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0104】
このような構成を有する第2実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0105】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係るフィルムコンデンサでは、第1実施形態と異なり、第1外部電極及び第2外部電極が、いずれも、第2内部電極に接続されるとともに第1内部電極と離間されている。第3実施形態では、第2内部電極が第2誘電体フィルムの第1面に設けられている。
【0106】
図8は、本発明の第3実施形態に係るフィルムコンデンサの一例を模式的に示す断面図である。
図8には全体的な構成が示されていないが、フィルムコンデンサ3は、第1誘電体フィルム11と、第1誘電体フィルム11に積層された第2誘電体フィルム12と、第1誘電体フィルム11を介して互いに対向する第1内部電極121及び第2内部電極122と、を備えている。フィルムコンデンサ3は、さらに、第2内部電極122に接続されるとともに第1内部電極121と離間された第1外部電極31と、第2内部電極122に接続されるとともに第1内部電極121と離間された第2外部電極32と、を備えている。
【0107】
第1内部電極121は、第1誘電体フィルム11の第1面11aに設けられている。第1内部電極121は、第1誘電体フィルム11の第1面11aにおいて、一方側縁及び他方側縁にまで届かないように設けられている。そのため、第1誘電体フィルム11の第1面11aの一方側縁及び他方側縁には、第1内部電極121が設けられていない絶縁マージン71が存在する。
【0108】
第2内部電極122は、第2誘電体フィルム12の第1面12aに設けられている。第2内部電極122は、第2誘電体フィルム12の第1面12aにおいて、2つに分離されるように設けられている。そのため、第2誘電体フィルム12の第1面12aの中央部には、第2内部電極122が設けられていない絶縁マージン72が存在する。
【0109】
第1内部電極121は、第1主電極部51と、第1主電極部51から第2外部電極32に向かって伸びる第1薄膜部61と、第1主電極部51から第1外部電極31に向かって伸びる第2薄膜部62と、を備えている。第1薄膜部61は第1主電極部51よりも薄く、第2薄膜部62は第1主電極部51よりも薄い。
【0110】
第2内部電極122は、第1外部電極31に接続された第1接続部41と、第1接続部41に連接された第2主電極部52と、第2外部電極32に接続された第2接続部42と、第2主電極部52から離間されるとともに第2接続部42に連接された第3主電極部53と、を備えている。第2主電極部52は第1接続部41よりも薄く、第3主電極部53は第2接続部42よりも薄い。
【0111】
第1内部電極121のうち、第1主電極部51は、第1誘電体フィルム11の厚み方向において、第1誘電体フィルム11を介して第2主電極部52及び第3主電極部53に対向し、第1接続部41及び第2接続部42には対向していない。一方、第1薄膜部61は、第1誘電体フィルム11の厚み方向において、第1誘電体フィルム11を介して第2接続部42に対向し、第2薄膜部62は、第1誘電体フィルム11の厚み方向において、第1誘電体フィルム11を介して第1接続部41に対向している。
【0112】
本発明の第3実施形態に係るフィルムコンデンサにおいては、第1内部電極が第1薄膜部を備え、第1薄膜部が第1誘電体フィルムを介して第2接続部に対向することを特徴としている。
【0113】
一方、本発明の第3実施形態に係るフィルムコンデンサにおいては、第1内部電極が第2薄膜部を備えていなくてもよいが、第1内部電極が第2薄膜部を備え、第2薄膜部が第1誘電体フィルムを介して第1接続部に対向することが望ましい。
【0114】
第1内部電極は、望ましくは、
図5(a)に示す方法により形成され、第2内部電極は、望ましくは、
図5(a)及び
図5(b)に示す方法により形成される。第2接続部は、第1誘電体フィルムを介して第1薄膜部に対向する側が、第2誘電体フィルムに対向する側よりも電気伝導性が低い材料から構成されることが望ましい。また、第1内部電極が第2薄膜部を備える場合、第1接続部は、第1誘電体フィルムを介して第2薄膜部に対向する側が、第2誘電体フィルムに対向する側よりも電気伝導性が低い材料から構成されることが望ましい。
【0115】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0116】
このような構成を有する第3実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0117】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態に係るフィルムコンデンサでは、第3実施形態と同様、第1外部電極及び第2外部電極が、いずれも、第2内部電極に接続されるとともに第1内部電極と離間されている。第4実施形態では、第3実施形態と異なり、第2内部電極が第1誘電体フィルムの第2面に設けられている。
【0118】
図9は、本発明の第4実施形態に係るフィルムコンデンサの一例を模式的に示す断面図である。
図9には全体的な構成が示されていないが、フィルムコンデンサ4は、第1誘電体フィルム11と、第1誘電体フィルム11に積層された第2誘電体フィルム12と、第1誘電体フィルム11を介して互いに対向する第1内部電極121及び第2内部電極122と、を備えている。フィルムコンデンサ4は、さらに、第2内部電極122に接続されるとともに第1内部電極121と離間された第1外部電極31と、第2内部電極122に接続されるとともに第1内部電極121と離間された第2外部電極32と、を備えている。
【0119】
図9に示すフィルムコンデンサ4において、第1内部電極121は、
図8に示すフィルムコンデンサ3と同様、第1誘電体フィルム11の第1面11aに設けられている。一方、第2内部電極122は、
図8に示すフィルムコンデンサ3と異なり、第1誘電体フィルム11の第2面11bに設けられている。そして、第2誘電体フィルム12には、内部電極が設けられていない。
【0120】
図8に示すフィルムコンデンサ3と同様、第1内部電極121は、第1主電極部51と、第1主電極部51から第2外部電極32に向かって伸びる第1薄膜部61と、第1主電極部51から第1外部電極31に向かって伸びる第2薄膜部62と、を備えている。また、第2内部電極122は、第1外部電極31に接続された第1接続部41と、第1接続部41に連接された第2主電極部52と、第2外部電極32に接続された第2接続部42と、第2主電極部52から離間されるとともに第2接続部42に連接された第3主電極部53と、を備えている。
【0121】
第1内部電極は、望ましくは、
図5(a)に示す方法により形成され、第2内部電極は、望ましくは、
図5(a)及び
図5(b)に示す方法により形成される。第2接続部は、第1誘電体フィルムを介して第1薄膜部に対向する側と反対側が、第1誘電体フィルムを介して第1薄膜部に対向する側よりも電気伝導性が低い材料から構成されることが望ましい。また、第1内部電極が第2薄膜部を備える場合、第1接続部は、第1誘電体フィルムを介して第2薄膜部に対向する側と反対側が、第1誘電体フィルムを介して第2薄膜部に対向する側よりも電気伝導性が低い材料から構成されることが望ましい。
【0122】
その他の構成は、第3実施形態と同様である。
【0123】
このような構成を有する第4実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【実施例】
【0124】
以下、本発明のフィルムコンデンサをより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0125】
[コンデンサの作製]
(実施例1)
厚み2.5μmのPPフィルムを用いて、フィルム幅方向の一端側に非蒸着部による絶縁マージンを形成しながらアルミニウムを蒸着した後、他端側のアルミニウム蒸着膜上に亜鉛を蒸着することにより、厚み50nmの接続部(ヘビーエッジ)を形成した。アルミニウムを蒸着する際、主電極部の縁端部側の幅5mmまでは厚み7nmの薄膜部とし、主電極部は厚み15nmとした。
なお、薄膜部は、蒸着工程において、主電極部よりも少量の金属蒸気量を導くことで形成した。
得られた金属化フィルムについて、主電極部と薄膜部との境界が、対向する接続部の縁端部から4mmの位置になるように、すなわち、主電極部に対向する薄膜部の長さが4mmになるように合わせながら、2枚重ねて巻回することにより、実施例1のコンデンサ(20μF)を作製した(
図1、
図2及び
図3参照)。
【0126】
(比較例1)
薄膜部を形成しないことを除いて実施例1と同様の方法により作製した金属化フィルムを、2枚重ねて巻回することにより、比較例1のコンデンサ(20μF)を作製した。
【0127】
[コンデンサの評価]
実施例1及び比較例1のコンデンサについて、ESRの値はほとんど同じであった。
【0128】
また、実施例1及び比較例1のコンデンサについて、耐電圧試験(105℃、750V、24時間印加)を実施した結果を表1に示す。
【0129】
【0130】
表1に示すように、実施例1のコンデンサでは、比較例1のコンデンサと異なり、絶縁破壊が生じなかった。なお、比較例1のコンデンサでは、いずれも、一方の内部電極の端部と他方の内部電極の接続部とが重なった箇所で絶縁破壊が生じていた。
【0131】
[コンデンサの作製]
(実施例2)
ポリビニルアセトアセタール(PVAA)とトリレンジイソシアネート(TDI)のプレポリマー体からなる厚み3μmの熱硬化性フィルムを用いて、フィルム幅方向の一端側に非蒸着部による絶縁マージンを形成しながらアルミニウムを蒸着した後、他端側のアルミニウム蒸着膜上に亜鉛を蒸着することにより、厚み40nmの接続部(ヘビーエッジ)を形成した。アルミニウムを蒸着する際、主電極部の縁端部側の幅5mmまでは厚み7nmの薄膜部とし、主電極部は厚み10nmとした。
得られた金属化フィルムについて、主電極部と薄膜部との境界が、対向する接続部の縁端部から4mmの位置になるように合わせながら、2枚重ねて巻回することにより、実施例2のコンデンサ(20μF)を作製した(
図1、
図2及び
図3参照)。
【0132】
(比較例2)
薄膜部を形成しないことを除いて実施例2と同様の方法により作製した金属化フィルムを、2枚重ねて巻回することにより、比較例2のコンデンサ(20μF)を作製した。
【0133】
[コンデンサの評価]
実施例2及び比較例2のコンデンサについて、ESRの値はほとんど同じであった。
【0134】
また、実施例2及び比較例2のコンデンサについて、耐電圧試験(125℃、750V、24時間印加)を実施した結果を表2に示す。
【0135】
【0136】
表2に示すように、実施例2のコンデンサでは、比較例2のコンデンサと異なり、絶縁破壊が生じなかった。なお、比較例2のコンデンサでは、いずれも、一方の内部電極の端部と他方の内部電極の接続部とが重なった箇所で絶縁破壊が生じていた。
【符号の説明】
【0137】
1,2,3,4 フィルムコンデンサ
11 第1誘電体フィルム
11a 第1誘電体フィルムの第1面
11b 第1誘電体フィルムの第2面
12 第2誘電体フィルム
12a 第2誘電体フィルムの第1面
12b 第2誘電体フィルムの第2面
21,121 第1内部電極
21a 第1内部電極のヒューズ部
21b 第1内部電極の絶縁スリット
21c 第1内部電極の分割電極
21A 第1金属蒸着膜
21B 第2金属蒸着膜
22,122 第2内部電極
22a 第2内部電極のヒューズ部
22b 第2内部電極の絶縁スリット
22c 第2内部電極の分割電極
31 第1外部電極
32 第2外部電極
41 第1接続部
42 第2接続部
51 第1主電極部
52 第2主電極部
53 第3主電極部
61,161,261,361,461,561 第1薄膜部
62 第2薄膜部
71,72 絶縁マージン
L61 第1薄膜部の長さ
L614 第2接続部に対向する第1薄膜部の長さ
L615 第2主電極部に対向する第1薄膜部の長さ
L62 第2薄膜部の長さ
L624 第1接続部に対向する第2薄膜部の長さ
L625 第1主電極部に対向する第2薄膜部の長さ
T41 第1接続部の最大厚み
T42 第2接続部の最大厚み
T51 第1主電極部の最大厚み
T52 第2主電極部の最大厚み
T61 第1薄膜部の最大厚み
T62 第2薄膜部の最大厚み