(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】貼付材及び貼付材製品
(51)【国際特許分類】
A61K 9/70 20060101AFI20221213BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20221213BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20221213BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20221213BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221213BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20221213BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20221213BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20221213BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221213BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20221213BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221213BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20221213BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20221213BHJP
A61P 23/02 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
A61K9/70 401
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/42
A61K45/00
A61K8/02
A61P9/00
A61P37/08
A61P43/00 113
A61P31/04
A61P29/00
A61P25/04
A61P17/04
A61P23/02
(21)【出願番号】P 2018044901
(22)【出願日】2018-03-13
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000236920
【氏名又は名称】富山県
(73)【特許権者】
【識別番号】500190029
【氏名又は名称】第一編物株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591166330
【氏名又は名称】前田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金丸 亮二
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 大輔
(72)【発明者】
【氏名】吉田 巧
(72)【発明者】
【氏名】栄 哲
(72)【発明者】
【氏名】上田 和紀
(72)【発明者】
【氏名】吉田 博之
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-132409(JP,A)
【文献】特開2012-012317(JP,A)
【文献】特開2010-168722(JP,A)
【文献】特開2012-030581(JP,A)
【文献】特開2011-132634(JP,A)
【文献】特開2015-044327(JP,A)
【文献】特開2015-113293(JP,A)
【文献】特開2016-011273(JP,A)
【文献】特開2014-152160(JP,A)
【文献】特開2015-045114(JP,A)
【文献】特開2014-210745(JP,A)
【文献】特開2006-028695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 8/00- 8/99
A61Q
A61F 7/00- 7/12
A61L 15/00-33/18
B32B
D01F
D01D
D04H
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノファイバー不織布からなる基材層と、前記基材層の一面に積層され、粘着成分を含む粘着層とを備え、前記基材層の積層方向の厚さは10μm以上100μm以下であり、前記粘着層の塗膏量は5μm以上500μm以下であり、前記粘着層中における前記粘着成分の含有量は1質量%以上10質量%以下であり、
前記粘着成分は
、中和度が
50モル%のポリ(メタ)アクリル酸部分中和
物であり、
横40mm×縦100mmのサイズに切り出した試験片を、横50mm×縦300mmのシリコンゴムシートに貼付した状態で、デマッチャ試験機を用い、30%伸張条件、80回/分の速度で10000回繰り返し平面伸張させた後に、前記シリコンゴムシートから前記試験片が剥がれた部分の面積が該試験片の面積の5%以内である
ことを特徴とする貼付材。
【請求項2】
JIS L1086-2013に準拠して測定した剥離強度は0.05N/25mm以上0.5N/25mm未満であることを特徴とする請求項
1に記載の貼付材。
【請求項3】
前記粘着層は、薬効成分又は化粧料成分を含むことを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載の貼付材。
【請求項4】
前記ナノファイバー不織布の原料樹脂は、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、ナイロン、ポリ乳酸、ポリアクリロニトリル、ポリカプロラクタン、シルク及びポリビニルアルコール、及びこれらのコポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載の貼付材。
【請求項5】
前記粘着層に含まれる前記粘着成分は前記水溶性粘着成分であり、JIS L1099-2012 B-2法に準拠して測定した、測定開始から75分後の透湿度は10000g/m
2・24時間以上300000g/m
2・24時間以下であることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の貼付材。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の貼付材と、前記貼付材の基材層における粘着層が形成されていない面に配置された支持層と、前記貼付材の粘着層における基材層が形成されていない面に配置されたフィルム層とを備えた貼付材製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付材及び貼付材製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬用湿布材等の貼付材は、粘着層を塗膏する基布の伸縮が皮膚の伸縮に追従し難いため、粘着層の粘着性を高めることで皮膚に固定させるようにしている。しかし、粘着性が高くなると貼付材を剥がす際に皮膚を傷つけてしまう虞や、貼付材を患部に連続貼付した場合に、皮膚の角質層を含む表皮に損傷を与え、皮膚疾患を引き起こしてしまう虞があった。
【0003】
そこで、基布としてナノファイバーシートを用いて貼付材を薄型化することにより、粘着剤を用いない場合であっても貼付部位にとどまることができる貼付材が報告されている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1では、粘着剤を用いない場合であっても、ナノファイバーシートに適用される水溶性高分子等を含む組成物のわずかな粘着力で長時間の貼付が可能となることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のものでは、貼付材の粘着力に関する具体的な検討がなされておらず、例えば曲げ伸ばしの頻度が高い関節等の屈曲部位等への長時間の連続貼付等は実際には困難である虞があった。
【0007】
そこで本発明では、簡単に貼付及び剥離を行うことができるとともに、関節等の屈曲部位であっても長時間に亘って連続貼付が可能な貼付材及び貼付材製品をもたらすことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示する貼付材は、ナノファイバー不織布からなる基材層と、前記基材層の一面に積層され、粘着成分を含む粘着層とを備え、前記基材層の積層方向の厚さは10μm以上100μm以下であり、前記粘着層の塗膏量は5μm以上500μm以下であり、前記粘着層中における前記粘着成分の含有量は1質量%以上10質量%以下であり、前記粘着成分は、中和度が50モル%のポリ(メタ)アクリル酸部分中和物であり、横40mm×縦100mmのサイズに切り出した試験片を、横50mm×縦300mmのシリコンゴムシートに貼付した状態で、デマッチャ試験機を用い、30%伸張条件、80回/分の速度で10000回繰り返し平面伸張させた後に、前記シリコンゴムシートから前記試験片が剥がれた部分の面積が該試験片の面積の5%以内であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基材層としてナノファイバー不織布を用いて貼付材の厚さを上記範囲とするとともに、粘着層中に上記含有量の粘着成分を含有させることにより、ナノファイバー不織布がもたらす優れた皮膚追従性と粘着成分がもたらす適度な粘着力を兼ね備えた貼付材を得ることができる。そうして、関節等の屈曲部位であっても長時間に亘って連続貼付が可能となるとともに、剥離したいときには簡単に剥離を行うことができる貼付材をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る貼付材の構成を示す断面図である。
【
図2】一実施形態に係る貼付材を含む貼付材製品の構成を示す断面図である。
【
図3】一実施形態に係る貼付材の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図4】
図3における紡糸工程の方法の一例を示す図である。
【
図5】平面伸張試験の方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0012】
≪貼付材≫
本実施形態に係る貼付材10は、
図1に示すように、基材層12と、基材層12の下面(一面)に積層された粘着層14とを備えている。
【0013】
<基材層>
基材層12は、ナノファイバー不織布からなる。
【0014】
ナノファイバー不織布は、極細の平均繊維径を有するナノファイバーからなる不織布であり、広い比表面積を有することから、軽い、薄い、柔らかい、伸びる、透湿防水性等の特徴を備える。ナノファイバーの平均繊維径は、特に限定されるものではなく、一般的な繊維径であってよいが、貼付材10の優れた柔軟性、透湿性を確保する観点から、例えば50nm以上1000nm以下とすることができる。なお、ナノファイバーの平均繊維径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により得られた任意のナノファイバー10本の繊維形状部分の繊維径の平均値から求めることができる。
【0015】
ナノファイバー不織布の製造方法は、特に限定されるものではないが、具体的には例えば、ナノファイバー不織布の繊維径の均一性を向上させる観点から、電解紡糸法を用いて作製することができる。なお、溶融紡糸法を用いて作製してもよい。
【0016】
前記ナノファイバー不織布の原料樹脂は、ナノファイバー不織布の極細ファイバーの繊維形状を形成する母材としての役割を有する。原料樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、ナイロン、ポリ乳酸、ポリ乳酸-グリコール酸コポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリカプロラクトン、シルク、ポリビニルアルコール、ポリ(エチレンビニルアルコール)コポリマー、ポリスチレン、ポリビニルカーボネート、ポリアミド、ポリアニリン、ポリエチレンオキサイド、ポリ塩化ビニリデン、ポリエーテルスルホン、及びこれらのコポリマー等が挙げられる。なお、貼付材の優れた肌触りや追従性を得る観点から、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、ナイロン、ポリ乳酸、ポリアクリロニトリル、ポリカプロラクタン、シルク及びポリビニルアルコールの群から選ばれる少なくとも1種、特にポリフッ化ビニリデンを採用することが好ましい。
【0017】
なお、原料樹脂の重量平均分子量Mwは、10000以上500000以下、より好ましくは30000以上200000以下である。重量平均分子量Mwが10000未満では、ナノファイバー不織布の強度が不足する虞があり、5000000超では、ナノファイバー不織布の柔軟性が低下する虞がある。
【0018】
また、基材層12の積層方向の厚さは、貼付材10の皮膚追従性を確保しつつ強度を確保する観点から、好ましくは5μm以上200μm以下、より好ましくは10μm以上100μm以下、特に好ましくは20μm以上50μm以下である。
【0019】
基材層12は、必要に応じて原料樹脂以外の添加物を含有してもよい。添加物としては、例えば顔料、染料、香料、冷温感材等が挙げられる。また、後述する基材層12の製造工程においてナノファイバー不織布の製造を促進させる観点から、後述するように塩が添加され得る。これらの添加物は、単独又は2種以上の組み合わせで使用することが可能である。
【0020】
<粘着層>
粘着層14は、粘着成分を含む。また、粘着層14は、薬効成分及び/又は化粧料成分を含んでもよい。さらに、粘着層14は、その他の添加剤を含有してもよい。
【0021】
-粘着成分-
粘着成分としては、特に限定されるものではなく、公知の非水溶性粘着成分及び水溶性粘着成分(水溶性成分)のいずれも用いることができる。
【0022】
非水溶性粘着成分は、例えば、アクリル(エマルジョン)系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。
【0023】
アクリル系粘着剤としては、好ましくは炭素数が1~18、さらに好ましくは炭素数4~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体や当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分単量体として、当該単量体と共重合可能な他の単量体を1~50質量%、好ましくは3~40質量%の範囲で共重合してなる各種コポリマー等が用いられる。
【0024】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、ブチルエステル、ヘキシルエステル、オクチルエステル、2-エチルヘキシルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、ラウリルエステル、ステアリルエステル等が挙げられ、これらのエステル鎖は直鎖状若しくは分岐状のいずれでもよい。
【0025】
また上記エステルと共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリル酸やマレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有不飽和単量体、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピルエステル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリルアミドやジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド及びその誘導体、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチルエステル等の(メタ)アクリル酸N,N-アルキルアミノアルキルエステル、N-ビニルピロリドン等の酸アミド基含有不飽和単量体等の官能性単量体が挙げられる。なお、これらの官能性単量体以外に、酢酸ビニルやスチレン、アクリロニトリル等の無官能性の単量体も共重合させることができる。
【0026】
ゴム系粘着剤としては、天然ゴム、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブテン、スチレン-イソプレン系ブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン系ブロックコポリマー等の主ポリマーに粘着付与樹脂としてロジン系樹脂やテルペン系樹脂、クマロン-インデン系樹脂、テルペン-フェノール系樹脂、石油系樹脂等を配合したものを用いることができる。さらに必要に応じて、液状ポリブテンや鉱油、ラノリン、液状イソプレン、脂肪酸エステル等の軟化剤や、酸化チタン、酸化亜鉛等の充填剤、ブチルヒドロキシトルエン等の酸化防止剤等を適宜配合したものを用いることができる。なお、このような添加剤は、前記アクリル系粘着剤に配合しても差し支えないものである。また、アクリル系粘着剤に軟化剤を配合する場合には、必要に応じて多官能性ポリイソシアネートや、多官能性エポキシ化合物、アルミニウムキレート化合物により架橋処理するのが好ましい。
【0027】
シリコーン系粘着剤としては、ジメチルポリシロキサンを主成分とする粘着剤が例示される。
【0028】
また、水溶性粘着成分は、例えば、(メタ)アクリル酸を重合したもの(ポリ(メタ)アクリル酸)、(メタ)アクリル酸を部分的に中和し重合したもの(ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物)及び(メタ)アクリル酸を完全に中和し重合したもの(ポリ(メタ)アクリル酸完全中和物)が挙げられ、これらの成分は含水状態で粘着性を示す。なお、特に(メタ)アクリル酸を部分的に中和し重合したものについては、中和度としては70モル%以下が好ましく、更に60モル%以下、特に50モル%以下が好ましい。また、中和度が10モル%以上であるのが生産性の点で好ましい。ポリ(メタ)アクリル酸の市販品としては、例えば、ジュリマーAC-10L(日本純薬製)、アクアリックHL(日本触媒製)等が挙げられる。ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物の市販品としては、例えば、ビスコメートNP-600、ビスコメートNP-700、ビスコメートNP-800(昭和電工製)、アロンビス105X、アロンビス106X(日本純薬製)等が挙げられる。ポリ(メタ)アクリル酸完全中和物(ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム)の市販品としては、例えば、アロンビスS(日本純薬製)、ポリスターA-1060(日本油脂製)、ビスコメートF-480SS(昭和電工製)、アクアリックFH(日本触媒製)等が挙げられる。これらポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物及びポリ(メタ)アクリル酸完全中和物は、一種又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
粘着層中における粘着成分の含有量は、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、特に1.5質量%以上8質量%が好ましい。粘着成分の含有量が10質量%を超えると粘着層14の粘着力が高くなりすぎ、貼付材10の剥離時に皮膚を傷つける可能性が高まる。また、含有量が1質量%未満の場合には、粘着力が低下しすぎ、関節等の屈曲部位への連続貼付が困難となる虞がある。
【0030】
-化粧料成分及び薬効成分-
化粧料成分としては、例えば、ヒアルロン酸Na、セラミド、米糠エキス等が上げられる。
【0031】
薬効成分としては、例えば、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、カンフル、メントール、トウガラシエキス、ノニル酸ワニリルアミド等の局所刺激剤、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール等の末梢血流改善剤、ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸イソチペンジル等の抗ヒスタミン剤、トウキ、オウバク、サンシシ、アルニカ、西洋トチノミ等の消炎性生薬のエキスや粉末、グリチルレチン酸、インドメタシン、ピロキシカム、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、フェルビナク、ロキソプロフェン、ジクロフェナック等の非ステロイド性消炎鎮痛剤、プレドニゾロン、ハイドロコルチゾン、デキサメタゾン、フルオシノロンアセトニド等の外用ステロイド剤、クロタミトン等の鎮痒剤、リドカイン、ジブカイン等の局所麻酔剤、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム等の殺菌消毒剤等が挙げられる。これらのうち非ステロイド性消炎鎮痛剤が好ましく、インドメタシンが特に好ましい。これらの化粧料成分及び薬効成分は、単独又は2種以上の組み合わせで使用することが可能である。
【0032】
なお、本明細書において、本実施形態に係る貼付材10のうち、粘着層14中に医薬品として該当する薬効成分が含まれているものを貼付剤と称することがある。
【0033】
粘着層中における化粧料成分及び/又は薬効成分の含有量は、その種類にもよるが、0.1~30質量%であることが好ましく、特に0.5~20質量%が好ましい。
【0034】
-その他の成分-
粘着層14中には、上記の成分に加えて、その他の添加剤成分を、目的に応じて適宜配合することができる。添加剤成分としては、架橋剤、硬化調整剤、溶媒、吸収促進剤、安定化剤、界面活性剤等が挙げられる。これらの添加剤成分は、単独又は2種以上の組み合わせで使用することが可能である。
【0035】
架橋剤は例えば、合成ヒドロタルサイト、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム及び合成ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらのうち、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート及び/又は乾燥水酸化アルミニウムゲルが好ましい。架橋剤の市販品には、合成ヒドロタルサイトとしては、例えばアルカマック(協和化学工業製)が、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテートとしては、例えばグリシナールSG、グリシナールPG(協和化学工業製)が、乾燥水酸化アルミニウムゲルとしては、例えば乾燥水酸化アルミニウムゲルS-100(協和化学工業製)が、ケイ酸アルミン酸マグネシウムとしては、例えばノイシリンUFL2(富士化学工業製)が、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムとしては、例えばノイシリンA、ノイシリン(富士化学工業製)、ネオアルミンS(富田製薬製)が、水酸化アルミナマグネシウムとしては、例えばサナルミン(協和化学工業製)が、合成ケイ酸アルミニウムとしては、例えば合成ケイ酸アルミニウム(協和化学工業製、富田製薬製)等が挙げられる。これらの架橋剤は、一種又は二種以上を組み合わせて使用することができる。架橋剤の含有量は、一般的に貼付材において粘着層を形成できる範囲の含有量であればよく、粘着層の質量に対して例えば0.001~3.0質量%とすることができる。
【0036】
硬化調整剤は例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、エデト酸二ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸、乳酸等が挙げられる。硬化調整剤の含有量は、粘着層の質量に対して例えば0.001~3質量%とすることができる。
【0037】
溶媒は例えば、水、(濃)グリセリン、D-ソルビトール液、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、マクロゴール、ジエチレングリコール、1、3-ブチレングリコール、2-エチル-1、3-ヘキサンジオール、ポリプロピレングリコール2000等の多価アルコール;エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の一価のアルコール;トリアセチン、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、トリイソオクタン酸等の炭素数が6~12の中鎖脂肪酸トリグリセリド等のエステル類;クロタミトン等のケトン類等が挙げられる。これら溶媒は、単独又は2種以上の組み合わせで使用することが可能である。特に粘着層14に水溶性粘着成分が含有される場合には、水を含む含水性の粘着層14とすることが好ましい。粘着層14における水の含有量は、一般的に含水性の粘着層を有する貼付材において必要とされる範囲の含有量であればよく、粘着層の質量に対して例えば15~60質量%とすることができる。また、その他の溶媒の含有量としては、粘着層の質量に対して例えば1~60質量%とすることができる。
【0038】
吸収促進剤は例えば、L-メントール、オレイン酸、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル等が挙げられる。吸収促進剤としてL-メントールを使用する場合、L-メントールの含有量は、粘着層の質量に対して0.01~10質量%であることが好ましく、特に0.1~5.0質量%が好ましい。
【0039】
安定化剤は例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル等のフェノール性物質;クロロブタノール、フェニルエチルアルコール等の中性物質;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の逆性石鹸;ビタミンE、ブチルヒドロキシアニソール、酢酸トコフェロール、没食子酸プロピル、2-メルカプトベンズイミダゾール等の抗酸化剤;アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤、エデト酸ナトリウム等のキレート剤が挙げられる。安定化剤の含有量は、粘着層の質量に対して例えば0.001~1.0質量%とすることができる。
【0040】
界面活性剤は例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等の陰イオン性界面活性剤、塩化セチルピリジニウム等の陽イオン性界面活性剤;モノステアリン酸グリセリル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤の含有量は、粘着層の質量に対して例えば0.01~3質量%とすることができる。
【0041】
その他の添加剤成分としては、粘着層同士が接着した際の剥離性を向上させる観点から、例えば、パルミチン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、ベヘン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、ヤシ油脂肪酸デキストリン、及びラウリン酸デキストリン等のデキストリン脂肪酸エステルを含有してもよい。これらのデキストリン脂肪酸エステルは、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。デキストリン脂肪酸エステルの含有量は、粘着層の質量に対して例えば0.1~20質量%とすることができる。
【0042】
-粘着層の塗膏量-
本明細書において、粘着層14の「塗膏量」とは、粘着層14の積層方向の厚さ(μm)をいうものとする。例えば貼付剤では、一般的に粘着層の塗膏量を質量(g)で示すことが多いが、本実施形態に係る貼付材10では、基材層12としてナノファイバーを採用していることから、従来の貼付剤と比較して塗膏量が少なく、質量で示すことが難しいため、厚さ(μm)表示を採用している。
【0043】
粘着層14の塗膏量は、貼付材10の優れた皮膚追従性を確保しつつ、屈曲部位への長時間の連続貼付に耐え得る粘着力を確保する観点から、好ましくは5μm以上500μm以下、より好ましくは50μm以上300μm以下、特に好ましくは100μm以上200μm以下である。粘着層14の塗膏量が5μm未満では、貼付材10の十分な粘着力を確保することが困難となる虞があり、500μm超では、貼付材10の皮膚追従性が低下する虞がある。
【0044】
≪貼付材の特性≫
<平面伸張耐久性>
貼付材10は、後述する平面伸張試験により求められる以下の耐久性を有する。すなわち、横40mm×縦100mmのサイズに切り出した貼付材10の試験片を、横50mm×縦300mmのシリコンゴムシートに貼付した状態で、デマッチャ試験機を用い、30%伸張条件、80回/分の速度で10000回繰り返し平面伸張させた後に、シリコンゴムシートから試験片が剥がれた部分の面積が該試験片の面積の5%以内、より好ましくは1%以内となる耐久性を有する。
【0045】
<剥離強度>
貼付材10の後述するJIS L1086-2013に準拠して測定した剥離強度は、屈曲部位への長時間の連続貼付に耐えうる粘着力を有しつつ剥離の際にはわずかな力で皮膚の損傷を抑えて容易に剥離可能な貼付材10を与える観点から、好ましくは0.05N/25mm超0.5N/25mm未満、より好ましくは0.06N/25mm以上0.45N/25mm以下、特に好ましくは0.1N/25mm以上0.4N/25mm以下である。
【0046】
<透湿度>
貼付材10を患部に長時間連続貼付する場合には、汗等の水分による蒸れ等を押さえる観点から、貼付材10が透湿性に優れていることが望ましい。従って、粘着層14に含まれる粘着成分が水溶性粘着成分である場合には、貼付材10の後述するJIS L1099-2012 B-2法に準拠して測定した透湿度は、好ましくは10000g/m2・24時間以上300000g/m2・24時間以下、より好ましくは20000g/m2・24時間以上280000g/m2・24時間以下、特に好ましくは30000g/m2・24時間以上250000g/m2・24時間以下である。当該透湿度は、100000g/m
2
・24時間以下であってもよい。
【0047】
≪貼付材の作用効果≫
本実施形態に係る貼付材10によれば、ナノファイバー不織布がもたらす優れた皮膚追従性と粘着成分がもたらす適度な粘着力を兼ね備えた貼付材10を得ることができる。そうして、関節等の屈曲部位であっても長時間に亘って連続貼付が可能となるとともに、剥離したいときには少しの力で簡単に剥離を行うことができる貼付材10をもたらすことができる。また、貼付材10は透湿性に優れているので、蒸れ等の発生を抑えることができるから、長時間に亘っても快適な連続貼付が可能となる。
【0048】
≪貼付材製品≫
本実施形態に係る貼付材10は、例えば
図2に示すように、支持層16やフィルム層18を設けて、本実施形態に係る貼付材製品11とすることができる。具体的には例えば、
図2に示すように、基材層12における粘着層14が形成されていない面、及び粘着層14における基材層12が形成されていない面に、それぞれ支持層16及びフィルム層18を設けて、貼付材製品11とすることができる。
【0049】
≪支持層≫
支持層16は、後述する紡糸工程S2において、電解紡糸によって基材層12を形成する際の支持体として用いられ、主にナノファイバーのシート形状の維持、及び保護を目的とする。また、支持層16は貼付材10において、皮膚貼付時のハンドリング性を向上させるためのものであり、皮膚貼付後には容易に基材層12から離脱するものが好ましい。具体的には例えば、コットン、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、ポリオレフィン、ポリエチレン、ビニロン、アセテート、ポリプロピレン、ポリウレタン等の不織布、織布、編布、紙材等が挙げられる。支持層16の厚さは、例えば10μm以上500μm以下とすることができる。
【0050】
≪フィルム層≫
フィルム層18は、粘着層14を保護するためのものであり、具体的には例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチック系のフィルム、セルロース系のフィルム及びシリコーン系剥離剤を表面にコーティングした上記フィルム、紙シート等が挙げられ、特にポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチック系のフィルムが好ましい。フィルム層18の厚さは、例えば5μm以上200μm以下とすることができる。
【0051】
≪貼付材製品における貼付材の皮膚貼付法≫
貼付材製品11を用いて貼付材10を肌に貼付する方法としては、例えば、フィルム層18の一方側18aを剥がして粘着層14の半分を肌に貼付した後、他方側18bを剥がして粘着層14の全体を肌に貼付する。そして、支持層16を剥離することにより、貼付材10を肌に貼付することができる。
【0052】
≪貼付材の用途≫
本実施形態に係る貼付材10は、例えばパップ剤、プラスター剤等で構成される痔疾用薬、虫刺され薬、消炎鎮痛薬、皮膚病薬等の治療用皮膚外用貼付剤、サージカルテープ、ドレッシング剤等の医療用、美白、シミ取り、しわ取り、皮膚機能改善等の化粧用、その他皮膚に貼付する用途の各種貼付材として用いることができる。
【0053】
≪貼付材及び貼付材製品の製造方法≫
本実施形態に係る貼付材10及び貼付材製品11の製造方法は、
図3に示すように、基材層を形成する樹脂溶液調製工程S1及び紡糸工程S2と、粘着層形成工程S3とを備える。
【0054】
<樹脂溶液調製工程>
樹脂溶液調製工程S1は、樹脂を溶媒に溶解させて樹脂溶液51を調製する工程である。樹脂溶液51の調製は、例えば、容器に原料樹脂を秤量し、溶媒、添加物を加え、撹拌機等の公知の撹拌手段(図示せず。)により撹拌して、溶媒中に樹脂、添加物を溶解・分散させることにより行う。撹拌に際し、同時に加熱や超音波等を印加してもよい。
【0055】
溶媒は、上記樹脂を溶解させ、樹脂溶液51の粘度を調整するとともに、紡糸工程S2において蒸発し繊維形状の形成を促進させるものである。溶媒としては、具体的には例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、トルエン、10-カンファースルホン酸、イソプロピルアルコール(IPA)、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール(HFIP)、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム、エタノール、ギ酸、塩酸、トリフルオロ酢酸、酢酸エチル等が挙げられる。これらの溶媒は、1種でもよいし、2種以上を用いてもよい。なお、これらの溶媒は上述のごとく紡糸工程S2において蒸発するため、基材層12にはほとんど含有されない。
【0056】
樹脂溶液に含まれる添加物としては、樹脂の溶解性・分散性の向上、微細な繊維形状の均一形成促進の観点から、例えば塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化リチウム等の塩等が添加され得る。また、上述のごとく、必要に応じて、顔料、染料、香料、冷温感材等の添加物を添加することができる。
【0057】
樹脂溶液51中における樹脂の濃度は、均一且つ微細な繊維形状のナノファイバー不織布を得る観点から、好ましくは5質量%以上50質量%以下、より好ましくは7質量%以上40質量%以下、特に好ましくは10質量%以上30質量%以下である。また、上記塩を添加する場合には、塩の濃度は、均一且つ微細な繊維形状のナノファイバー不織布を得る観点から、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。また、塩以外の添加物の濃度は、添加物の種類にもよるが、目的に応じて、例えば0.5質量%以上3質量%以下とすることができる。
【0058】
<紡糸工程S2>
紡糸工程S2は、樹脂溶液51を、電解紡糸法を用いて紡糸し、基材層12としてのナノファイバー不織布を得る工程である。
【0059】
電解紡糸法による紡糸は、例えば、
図4に示すマルチノズル式エレクトロスピニング装置を用いて行うことができる。具体的には例えば、マルチノズル式噴射装置33等のノズル先端から樹脂溶液51を噴射させて、例えばコレクタ35の表面上に一定速度で流れるように配置された支持層16としての不織布、織布、編布、紙材等の表面に樹脂溶液51を吹付けることで行われる。これにより、例えば、
図2の貼付材製品11の支持層16及び基材層12の部分を製造することができる。なお、電解紡糸法による紡糸の方法は、
図4の方法に限定されるものではなく、例えば支持層16を配置せず、基材層12だけをコレクタ35の表面に形成するようにしてもよいし、コレクタ35は例えば回転式ドラム等であってもよい。
【0060】
図4において、マルチノズル式噴射装置33又はコレクタ35のいずれか一方には、高圧電源装置34が接続されており、またもう一方にはアースが接続されている。そして、両者間には所定の高電圧が印加される。なお、マルチノズル式噴射装置33の樹脂溶液51は、室温程度、例えば15℃~30℃とすることができる。
【0061】
高圧電源装置34による印加電圧は、微小径の均一な繊維形状のナノファイバー不織布を得る観点から、例えば10kV以上50kV以下とすることができる。
【0062】
マルチノズル式噴射装置33等のノズル先端からコレクタ35までの距離は、微小径の均一な繊維形状のナノファイバー不織布を得る観点から、例えば50mm以上200mm以下とすることができる。
【0063】
支持層16の送り速度は、高密度のナノファイバー不織布を得る、あるいは生産速度を高める観点から、例えば0.5mm/分以上200mm/分以下とすることができる。
【0064】
こうして得られたナノファイバー不織布を、そのまま、又は例えば所望のサイズに裁断、加工等することにより基材層12とすることができる。
【0065】
<粘着層形成工程S3>
基材層12の一面に支持層16が形成されている場合には、基材層12の支持層16が形成されていない面に、粘着層14を形成するための組成物を塗布することにより、粘着層14を形成することができる。
【0066】
組成物は、上述した粘着成分、化粧料成分、薬効成分、添加剤成分等を一般的な方法により混合することで調製することができる。
【0067】
そして、組成物を、基材層12の上記面に展延塗布することで粘着層14を形成することができる。なお、例えば
図2の貼付材製品11を製造する場合は、フィルム層18の一面に組成物を展延塗布して粘着層14を形成しておき、基材層12の支持層16が形成されていない面と粘着層14のフィルム層18が形成されていない面とを貼り合わせることで貼付材10を含む貼付材製品11を形成するようにしてもよい。
【0068】
展延塗布を行う手段としては、特に限定されるものではないが、例えばフィルムアプリケータ等を用いることができる。フィルムアプリケータを用いた場合、上述の塗膏量(μm)、すなわち粘着層の積層方向の厚さは、塗布対象物である基材層12及び支持層16と、フィルムアプリケータとの隙間の大きさとなる。
【実施例】
【0069】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
【0070】
≪貼付材製品の作製≫
実施例1~9の貼付材製品、及び比較例1~4の貼付材製品を準備した。実施例及び比較例の貼付材製品の構成及び評価試験結果を表1、表2及び
図6に示す。
【0071】
【0072】
【0073】
<実施例1>
溶媒としてのDMF中に、ポリフッ化ビニリデン樹脂(東京材料株式会社製KYNAR(登録商標)2501-00)を、樹脂溶液中の樹脂濃度が15質量%となるように添加し、撹拌して溶解させた。この樹脂溶液を、マルチノズル式エレクトロスピニング装置(自社製作、
図4)を用い、支持層としてのポリプロピレン樹脂製の不織布シート(厚さ約100μm)をコレクタ下部に接触させるように一定速度(30mm/分~200mm/分)で流し、これに対し、印加電圧30kV、ノズル先端-コレクタ間距離200mmの条件で紡糸し、支持層上に厚さ25μm~35μmのナノファイバー不織布を得、支持層及びナノファイバー不織布の基材層を得た。
【0074】
粘着層を形成するための組成物として、粘着層の質量に対する含有量がそれぞれ以下の含有量となるように、ポリアクリル酸部分中和物(中和度50%Na塩、昭和電工株式会社製)4.2質量%、濃グリセリン(阪本薬品工業株式会社製)22質量%、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート(協和化学工業株式会社製)0.30質量%、乳酸(昭和化学工業株式会社製)1.25質量%、パルミチン酸デキストリン(日本サーファクタント株式会社製)質量%及び精製水を撹拌機にて全質均等となるまで撹拌して調製した。調製した組成物を、基材層の支持層が形成されていない面上にフィルムアプリケータ(テスター産業株式会社製SA-204)を用いて展延塗布し塗膏量100μmの粘着層を形成した。粘着層の基材層が配置されていない面に、フィルム層としてのポリエステル製のフィルムを接着させた後、1枚あたり12cm×20cmに裁断して、貼付材を含む貼付材製品を得た。
【0075】
<実施例2>
ポリアクリル酸部分中和物の含有量を4.6質量%とした以外は実施例1と同様に貼付材製品を作製した。
【0076】
<実施例3>
ポリアクリル酸部分中和物の含有量を5.0質量%とした以外は実施例1と同様に貼付材製品を作製した。
【0077】
<実施例4>
粘着層の塗膏量を200μmとした以外は実施例1と同様に貼付材製品を作製した。
【0078】
<実施例5>
ポリアクリル酸部分中和物の含有量を4.6質量%とした以外は実施例4と同様に貼付材製品を作製した。
【0079】
<実施例6>
ポリアクリル酸部分中和物の含有量を5.0質量%とした以外は実施例4と同様に貼付材製品を作製した。
【0080】
<実施例7>
粘着層の塗膏量を400μmとした以外は実施例1と同様に貼付材製品を作製した。
【0081】
<実施例8>
ポリアクリル酸部分中和物の含有量を4.6質量%とした以外は実施例7と同様に貼付材製品を作製した。
【0082】
<実施例9>
ポリアクリル酸部分中和物の含有量を5.0質量%とした以外は実施例7と同様に貼付材製品を作製した。
【0083】
<比較例1>
基材層の厚さを100~110μmとし、粘着層にポリアクリル酸部分中和物を添加しない構成とした以外は実施例1と同様に貼付材製品を作製した。
【0084】
<比較例2>
基材層の厚さを110~120μm、粘着層の塗膏量を200μmとし、粘着層にポリアクリル酸部分中和物を添加しない構成とした以外は実施例1と同様に貼付材製品を作製した。
【0085】
<比較例3>
貼付材製品として、市販のパップ剤(興和株式会社製バンテリン(登録商標)コーワ(登録商標)パップS)を用いた。
【0086】
<比較例4>
貼付材製品として、市販のパップ剤(久光製薬株式会社製フェイタス(登録商標)Z)を用いた。
【0087】
≪評価試験≫
<平面伸張試験>
貼付材製品を横40mm×縦100mmのサイズに切り出して試験片Fとした。
図5(a)に示すように、試験片Fのフィルム層を剥離して、横50mm×縦300mmのシリコンゴムシートB1に貼付した。そして、支持層を剥離した状態で、デマッチャ試験機B2を用い、
図5(b)の黒矢印に示すように平面伸張させ、
図5の(a)、(b)の状態を交互に繰り返すように、30%伸張条件、80回/分の速度で、10000回平面伸張を繰り返した。
【0088】
-評価方法-
試験後において、試験片の面積に対する、シリコンゴムシートから試験片が剥がれた部分の面積の割合に基づいて、以下の通り評価した。
◎:剥離部分の割合が1%以内。
○:剥離部分の割合が5%以内。
△:剥離部分の割合が5%超100%未満。
×:剥離部分の割合が100%(平面伸張試験中に全て剥離)。
【0089】
<剥離強度試験>
貼付材製品を100mm×25mmにカットして試験片とした。試験片のフィルム層を剥離し、粘着層を100mm×50mmのステンレス板に貼り付け、5kgの分銅で30秒間圧着した。この状態から試験片の支持層を剥離した後、JIS L1086-2013の規格に準拠し、剥離角度180度、剥離速度300 mm/minの条件で剥離力を測定した。
【0090】
剥離力の平均値を、力-掴み移動距離曲線にて初期値を除いた掴み移動距離40~100mm間での最適平均直線から決定し、剥離強度(N/25mm)とした。
【0091】
<透湿度測定試験>
JIS L1099-2012 B-2法に準拠して、実施例2、実施例5、実施例8、比較例3及び比較例4の貼付材の透湿度(g/m
2・24時間)を測定した。
図6中□及び実線で示す結果が実施例2、■及び二点鎖線で示す結果が実施例5、◇及び一点鎖線で示す結果が実施例8、▲及び点線で示す結果が比較例3、△及び破線で示す結果が比較例4の貼付材である。
【0092】
<結果>
表1、表2に示すように、比較例1~4の貼付材では、平面伸張試験における耐久性が低く、試験途中で剥離又は剥離面積が5%を超える結果となったのに対し、実施例1~9の貼付材では、平面伸張試験における耐久性が高いことが判った。
【0093】
また、比較例3,4の市販の貼付材では、剥離強度が0.5N/25mm以上となるのに対し、実施例1~9の貼付材では、剥離強度が0.05N/25mm超0.5N/25mm未満となることが判った。
【0094】
さらに
図6に示すように、比較例4の貼付材では、測定開始から15分後の透湿度は10000g/m
2・24時間であったが、75分後の透湿度は100g/m
2・24時間程度となり、透湿度の大幅な低下が観測された。一方、実施例
2,5,8の貼付材では、測定開始から15分後の透湿度は
10000g/m
2
・24時間を超えており、75分後もほとんど低下することなく高い透湿度を有することが判った。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、貼付材及び貼付材製品の分野において、極めて有用である。
【符号の説明】
【0096】
10 貼付材
11 貼付材製品
12 基材層
14 粘着層
16 支持層
18 フィルム層
33 マルチノズル式噴射装置
34 高圧電源装置
35 コレクタ
51 樹脂溶液
B1 シリコンゴムシート
B2 デマッチャ試験機
F 試験片
S1 樹脂溶液調製工程
S2 紡糸工程
S3 粘着層形成工程