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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】階段構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/025 20060101AFI20221213BHJP
   E04F 11/112 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
E04F11/025
E04F11/112
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018245903
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020105824
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】位田 健太
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-126912(JP,A)
【文献】実開平03-129634(JP,U)
【文献】特開2018-178573(JP,A)
【文献】特開2019-078147(JP,A)
【文献】特開平11-148213(JP,A)
【文献】米国特許第05660009(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/02
E04F 11/025
E04F 11/112
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上階の床部から建物下方側に傾斜して配置された上階直線部と、下階の床部から建物上方側に傾斜して配置された下階直線部とを備えた直線部と、
前記上階直線部の下端部と前記下階直線部の上端部とを連結する廻り部と、
前記廻り部の一部を構成し、金属板の折り曲げ加工により、略水平方向に延在する踏板部と、前記踏板部の一端に設けられる蹴込板部と、前記踏板部の他端に設けられ、直接又は部材を介して間接的に前記直線部に配置された桁若しくは建物躯体又はその両方に固定された取付板部と、が一体に形成された少なくとも一つの階段部材と、を有し、
前記階段部材は、前記踏板部の建物下方側に下段踏板部が隣接して配置され、
前記蹴込板部は、前記踏板部の一端から垂下されて、前記踏板部と前記下段踏板部との間に架け渡されると共に、その下端部から前記踏板部側へ略水平に延在する固定フランジ部が直接又は部材を介して前記下段踏板部に固定されており、
前記廻り部は、前記階段部材の建物下方側に隣接して配置され、平板状の下段踏板部と、前記下段踏板部が上部に載置される枠状体を備える下段階段部材を有し、
前記枠状体は、直接又は部材を介して間接的に前記直線部に配置された桁若しくは建物躯体又はその両方に固定されており、
前記固定フランジ部は、建物上下方向に延在すると共に、一端が前記固定フランジ部に固定され、他端が前記枠状体を介して前記下段踏板部に固定された複数の連結部材を介して前記下段踏板部に固定され、前記蹴込板部と前記下段踏板部との間に隙間が形成されている
階段構造。
【請求項2】
前記廻り部は、前記階段部材の建物下方側に隣接して配置され、金属板の折り曲げ加工により、略水平方向に延在する下段踏板部と、前記下段踏板部の一端に設けられる下段取付板部と、が一体に形成された下段階段部材を有し、
前記下段取付板部は、直接又は部材を介して間接的に前記直線部に配置された桁若しくは建物躯体又はその両方に固定されている、
請求項1に記載の階段構造。
【請求項3】
前記廻り部は、前記階段部材の取付板部と、前記下段階段部材の前記枠状体とを建物上下方向に連結する固定部材を備えている、
請求項1又は2に記載の階段構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建物の一階と二階を繋ぐ折り返し階段が記載されている。この折り返し階段では、一階側の直線部と二階側の直線部が廻り部(曲がり部)によって結ばれた構造となっている。また、この折り返し階段の廻り部は、一枚の金属板を折り曲げることにより、2つの踏板部(段板)と、2つの踏板部同士を繋ぐ蹴込板部(けこみ板)が形成されており、当該金属板が力桁(ささら桁)に載置されて下方側から支持される構造となっている。
【0003】
ところで、上記先行技術文献に開示された折り返し階段では、階段の直線部と廻り部を支持する力桁が一体に形成されている。具体的には、一階の基礎コンクリート上に立設した支持フレームと壁フレームの中間との間に掛け渡された一対のささら桁によって、一階側の直線部と廻り部に配置される階段部材が支持されている。一対のささら桁は、一階側から斜め上方側に傾斜された傾斜部を備え、傾斜部の上端部から先端までが水平方向に折り曲げられている。また、一対のささら桁の先端部と折曲部の間には、桁繋ぎが架け渡されている。そして、傾斜部に直線部の踏板となる階段部材が固定され、水平方向に折り曲げられたささら桁の上部及び桁繋ぎに廻り部の踏板を構成する金属板の階段部材が固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-148213号公報
【0005】
上記先行技術では、階段の廻り部の踏板部及び蹴込部が折り曲げ加工された一枚の金属板を用いて簡単に形成できるという点で施工性の良い構造とされている。しかし、階段の直線部と廻り部を支持する力桁が一体に形成されているため、ささら桁が大型化し、重量化する。このため、階段の施工にはクレーン等の大型の重機を用いる必要があり、現場での施工負担が増大する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、上階側の直線部と下階側の直線部が廻り部で連結された階段において、現場における施工負担を軽減させることができる階段構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る階段構造は、上階の床部から建物下方側に傾斜して配置された上階直線部と、下階の床部から建物上方側に傾斜して配置された下階直線部とを備えた直線部と、前記上階直線部の下端部と前記下階直線部の上端部とを連結する廻り部と、前記廻り部の一部を構成し、金属板の折り曲げ加工により、略水平方向に延在する踏板部と、前記踏板部の一端に設けられる蹴込板部と、前記踏板部の他端に設けられ、直接又は部材を介して間接的に前記直線部に配置された桁若しくは建物躯体又はその両方に固定された取付板部と、が一体に形成された少なくとも一つの階段部材と、を有している。
【0008】
第1の態様に係る階段構造では、上階の床部から建物下方側に傾斜して配置された上階直線部と、下階の床部から建物上方側に傾斜して配置された下階直線部が廻り部によって連結されている。また、廻り部は、金属板の折り曲げ加工により形成された階段部材を少なくとも一つ含んで構成されている。
【0009】
ここで、当該階段部材は、略水平方向に延在する踏板部と、踏板部の一端に設けられる蹴込板部と、踏板部の他端に設けられる取付板部と、が一体に形成されている。また、取付板部は、直接又は部材を介して間接的に上階直線部及び下階直線部を含む直線部に配置された桁又は建物躯体若しくはその両方に固定可能とされている。このように、階段部材は、金属板の折り曲げ加工により踏板部と蹴込板部を容易に形成すると共に、踏板部の一端に直線部の桁や建物躯体に固定される取付板部を一体形成することで直線部とは独立した構造体とすることができる。これにより、階段の廻り部が、直線部と一体に形成された桁を用いて支持される構造と比べて、直線部と廻り部の組み付け作業を別々に行うことができ、現場での施工負担が軽減される。
【0010】
第2の態様に係る階段構造は、第1の態様に記載の構成において、前記階段部材は、前記踏板部の建物下方側に下段踏板部が隣接して配置され、前記蹴込板部は、前記踏板部の一端から垂下されて、前記踏板部と前記下段踏板部との間に架け渡されると共に、その下端部から前記踏板部側へ略水平に延在する固定フランジ部が直接又は部材を介して前記下段踏板部に固定されている。
【0011】
第2の態様に係る階段構造では、階段部材の蹴込板部が、踏板部の一端から垂下されており、踏板部と下段踏板部との間に架け渡されている。ここで、蹴込板部と下段踏板部は、蹴込板部の下端部から踏板部側へ略水平に延在する固定フランジ部を用いて直接又は部材を介して固定されている。これにより、蹴込板部の固定部が廻り部の表面に露出されず、廻り部の表面に意匠面となる仕上げ材を設定する際の作業性が向上される。
【0012】
第3の態様に係る階段構造は、第2の態様に記載の構成において、前記廻り部は、前記階段部材の建物下方側に隣接して配置され、金属板の折り曲げ加工により、略水平方向に延在する下段踏板部と、前記下段踏板部の一端に設けられる下段取付板部と、が一体に形成された下段階段部材を有し、前記下段取付板部は、直接又は部材を介して間接的に前記直線部に配置された桁若しくは建物躯体又はその両方に固定されている。
【0013】
第3の態様に係る階段構造では、廻り部の階段部材の建物下方側に、下段階段部材が隣接して配置されている。この下段階段部材は、金属板の折り曲げ加工により、略水平方向に延在する下段踏板部と、下段踏板部の一端に設けられる下段取付板部とが一体に形成されている。また、上述した階段部材と同様に、下段取付板部は、直接又は部材を介して間接的に前記直線部に配置された桁若しくは建物躯体又はその両方に固定可能とされている。上記構成により、廻り部では、それぞれ踏板を備える階段部材と下段階段部材が、独立した構造体として直線部の桁や建物躯体にそれぞれ固定されている。これにより、階段の廻り部に配置された複数の踏板を一体に形成する構造と比べて、廻り部の個々の部材が軽量化される。しかも、階段部材と下段階段部材は、金属板を折り曲げてなる簡単な構成であるため、部品点数が少なく、取付作業が容易である。その結果、廻り部全体の組み付け作業を容易に行うことができる。
【0014】
第4の態様に係る階段構造は、第2の態様に記載の構成において、前記廻り部は、前記階段部材の建物下方側に隣接して配置され、平板状の下段踏板部と、前記下段踏板部が上部に載置される枠状体を備える下段階段部材を有し、前記枠状体は、直接又は部材を介して間接的に前記直線部に配置された桁若しくは建物躯体又はその両方に固定されている。
【0015】
第4の態様に係る階段構造では、廻り部の階段部材の建物下方側に、下段階段部材が隣接して配置されている。この下段階段部材は、平板状の下段踏板部が、枠状体の上部に載置される構造とされている。また、枠状体は、直接又は部材を介して間接的に前記直線部に配置された桁若しくは建物躯体又はその両方に固定されている。このように、下段階段部材は、下段踏板部が枠状体に載置された状態で下方側から支持されているため、下段踏板部の支持剛性が高められている。これにより、下段階段部材を含む廻り部全体の剛性を向上させることができる。
【0016】
第5の態様に係る階段構造は、第4の態様に記載の構成において、前記廻り部は、前記階段部材の取付板部と、前記下段階段部材の前記枠状体とを建物上下方向に連結する固定部材を備えている。
【0017】
第5の態様に係る階段構造では、廻り部に、階段部材の取付板部と、下段階段部材の枠状体とを建物上下方向に連結する固定部材が設けられている。これにより、階段部材の踏板部が、固定部材を介して枠状体に支持されている。これにより、下段踏板部に加えて踏板部の支持剛性も高めることができ、廻り部の全体の剛性を一層向上させることができる。
【0018】
第6の態様に係る階段構造は、第4の態様又は第5の態様に記載の構成において、前記固定フランジ部は、建物上下方向に延在すると共に、一端が前記固定フランジ部に固定され、他端が前記枠状体を介して前記下段踏板部に固定された複数の連結部材を介して前記下段踏板部に固定され、前記蹴込板部と前記下段踏板部との間に隙間が形成されている。
【0019】
第6の態様に係る階段構造では、固定フランジ部が連結部材及び枠状体を介して下段踏板部に固定されることにより、蹴込板部と下段踏板部との間に隙間が形成されている。このため、蹴込板部と下段踏板部の表面に仕上げ材を設定する際に、蹴込側と踏板側の仕上げ材を廻り部に別々に運び入れた後に固定することが可能となる。
【0020】
例えば、蹴込板部に沿って立設された蹴込側の仕上げ材と下段踏板部に載置される仕上げ材とを設置場所に置いた後、蹴込板部の裏側から蹴込側の仕上げ材の下端部と踏板側の仕上げ材の後端部との突き当て部にビス等を打ち込んで仕上げ材同士を固定することが可能となる。このため、施工スペースの狭い建築現場で仕上げ材を設定する場合でも、蹴込側と踏板側の仕上げ材を別々に運び入れた後に固定することができ、これらを予め固定した状態で運び入れて施工する場合に比べて作業スペースを必要としない。よって、比較的施工スペースが狭い建築現場においても、階段の廻り部に対して容易に仕上げ材を設定することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、第1の態様に係る階段構造によれば、上階側の直線部と下階側の直線部が廻り部で連結された階段において、現場における施工負担を軽減させることができるという優れた効果を有する。
【0022】
第2の態様に係る階段構造によれば、廻り部の表面に意匠面となる仕上げ材を設定する際の作業性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0023】
第3の態様に係る階段構造によれば、廻り部の組み付け作業を容易に行うことができるという優れた効果を有する。
【0024】
第4の態様に係る階段構造によれば、下段階段部材を含む廻り部全体の剛性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0025】
第5の態様に係る階段構造によれば、踏板部と下段踏板部の支持剛性を高めることで、廻り部の全体の剛性を一層向上させることができるという優れた効果を有する。
【0026】
第6の態様に係る階段構造によれば、比較的施工スペースが狭い建築現場においても、階段の廻り部に対して容易に仕上げ材を設定することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態に係る階段構造が適用された階段の側面図である。
図2図1に示す階段の平面図である。
図3】第1実施形態に係る廻り部の斜視図である。
図4】(A)は、図3に示す上段階段部材を構成する鋼板の展開図であり、(B)は、図3に示す上段階段部材の斜視図である。
図5】(A)は、図3に示す下段階段部材を構成する鋼板の展開図であり、(B)は、図3に示す下段階段部材の斜視図である。
図6】第2実施形態に係る廻り部を示す図3に対応する斜視図である。
図7】(A)は、図6に示す下段階段部材を構成する鋼板の展開図であり、(B)は、図6に示す下段階段部材の斜視図である。
図8】第3実施形態に係る廻り部を示す図3に対応する斜視図である。
図9】(A)は、図8に示す上段階段部材を構成する鋼板の展開図であり、(B)は、図8に示す上段階段部材の斜視図である。
図10】(A)は、図8に示す下段階段部材を構成する下段踏板部の平面図であり、(B)は、下段階段部材を構成する枠状体を示す斜視図である。
図11】第4実施形態に係る廻り部を示す図3に対応する斜視図である。
図12図11に示す廻り部の分解斜視図である。
図13】廻り部に仕上げ材を設定する方法を説明するための部分斜視図である。
図14】変形例に係る階段を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第1実施形態〕
以下、図1図5を用いて、第1実施形態に係る階段構造が適用された階段22について説明する。図1には、階段22が適用された建物10が側面図にて概略的に示されている。また、図2には、階段22が平面図にて示されている。なお、図1では、説明の便宜上、階段室12の左側壁12A、前側壁12B、右側壁12C、中間壁12Dの図示を省略している。
【0029】
これらの図に示されるように、階段22は、平面視で略U字状をなす折り返し階段とされている。階段22は、建物10の階段室12の内部に設置されており、建物10の下階空間14と上階空間16とを連通させている。階段室12は、階段22の上がり口及び下り口側を除く3方が左側壁12A、前側壁12B、右側壁12Cによって囲われていると共に、上がり口側と下り口側との間に中間壁12Dが設けられている。また、階段室12は、前側壁12Bに沿って、建物躯体としての複数の柱13が配置されている。具体的には、左側壁12Aと前側壁12Bの角部から、柱13A、13B、13Cがこの順で配置されている。柱13A、13B、13Cは、各々が角型とされ、建物高さ方向を長手方向として互いに平行に配置されている。
【0030】
階段22は、上階直線部24と下階直線部26を備える直線部23と、一対の廻り部28とを備えている。直線部23の上階直線部24は、階段室12の左側壁12Aに沿って配置され、階段22の下り口を形成する上階床部20から建物下方側へ傾斜して配置された直階段部である。上階直線部24は、所定の間隔を空けて平行に配置された一対の力桁30と、力桁30の上に固定される複数の段板部材32で構成されている。上階直線部24の力桁30は、その上端部が上階床部20を支持する床梁25に固定され、建物下方側へ傾斜して配置されている。また、段板部材32は、踏板部と蹴込板部を備える板材で、力桁30に載置された状態でボルト締結されている。この段板部材32の表面には意匠面となる仕上げ材34が設定されている。なお、力桁30が本発明における「桁」に相当する。
【0031】
一方、直線部23の下階直線部26は、階段室12の右側壁12Cに沿って配置され、階段22の上がり口を形成する下階床部18から斜め上方側へ延在された直階段部である。また、下階直線部26は、平面視で上階直線部24と略平行に配置されている。下階直線部26は、上述した上階直線部24と同様、一対の力桁30と複数の段板部材32を備えている。下階直線部26の力桁30は下端部が下階床部18に連結され、建物上方側へ傾斜して配置されている。段板部材32の構造は、上階直線部24の段板部材32と同様であるため、記載を割愛する。
【0032】
一対の廻り部28は、階段22の建物上下方向の中間部に設けられ、上述した上階直線部24と下階直線部26とを連結させている。一対の廻り部28は、上階直線部24の下端部側に設けられた廻り部28Aと、下階直線部26の上端部側に配置された廻り部28Bと、を備えている。廻り部28Bは、廻り部28Aに隣接して配置され、かつ、廻り部28Aの建物上下方向の下方側に配置されている。この廻り部28Bは、構造的には廻り部28Aと同様であり、図2に示す廻り部28Aを時計回りに90°回転させた向きにおいて、下階直線部26の上端部側に設置したものである。
【0033】
また、廻り部28A、28Bは、それぞれ二段分の階段部を形成しており、各々が平面視で略L字状に昇降可能とされている。廻り部28A、28Bは、上述したように互いに90°異なる向きに設置されることにより平面視で略U字状に折り返すように昇降可能な階段部を形成している。これにより、上階直線部24と下階直線部26が、廻り部28A、28Bによって折り返されて連結されている。
【0034】
以下、一対の廻り部28の構成について詳細に説明する。なお、廻り部28Aと廻り部28Bの構造は同様であるため以降では上階直線部24の下端部側に配置された廻り部28Aを中心に説明する。
【0035】
(廻り部28A)
図3に示されるように、廻り部28Aは、建物上方側の段部を形成する上段階段部材36と、上段階段部材36に隣接して配置され、下方側の段部を形成する下段階段部材38とを備えている。ここで、図4(A)には、上段階段部材36を構成する鋼板の展開図が示されている。また、図4(B)には、図4(A)に示される鋼板を、図4(A)の破線に沿って折り曲げてなる上段階段部材36の斜視図が示されている。
【0036】
これらの図に示されるように、上段階段部材36は、所定の形状に打ち抜いた鋼板が折り曲げられることにより形成されている。具体的には、上段階段部材36は、略水平面に沿って延在する上段踏板部40と、上段踏板部40の一端に設けられた蹴込板部42と、上段踏板部40の他端に設けられた上段取付板部44が一体に形成されている。なお、上段階段部材36が本発明における「階段部材」に相当し、上段踏板部40が「踏板部」に相当し、上段取付板部44が「取付板部」に相当する。
【0037】
図2及び図4(A)に示されるように、上段踏板部40は、上階直線部24側に配置された一端を構成する上辺部40Aと、階段室12の左側壁12Aに配置された一端を構成する左辺部40Bと、下段階段部材38に配置された一端を構成する下辺部40Cと、を有し、平面視で略三角形状をなしている。
【0038】
図4(B)に示されるように、蹴込板部42は、上段踏板部40の下辺部40Cから略鉛直下方側へ垂下されており、正面視で略矩形状に形成されている。この蹴込板部42は、上段踏板部40と後述する下段踏板部62を建物上下方向に繋ぐ蹴込板部を構成している。なお、蹴込板部42の階段幅寸法は、下辺部40Cの長さよりも短く設定されている。このため、上段階段部材36は、正面視で、蹴込板部42の階段幅方向の両側に上段踏板部40の下方側へ連通された空間43が形成されている(図3参照)。
【0039】
また、蹴込板部42の下端部には、当該下端部から上段踏板部40側へ略水平に延在した固定フランジ部46が形成されている。固定フランジ部46は、上段階段部材36を下段階段部材38へボルト締結する際の取付け面となっており、板厚方向に貫通された3つのフランジ孔48が形成されている。
【0040】
一方、上段取付板部44は、第1板部50と、第2板部52とを備えている。第1板部50は、上段踏板部40の上辺部40Aから略鉛直下方側へ垂下され正面視で略矩形状に形成されている。第1板部50は、上辺部40Aの延在方向を長手方向とし、長手方向の両側に板厚方向に貫通する2つの第1孔54がそれぞれ形成されている。第1孔54は、上階直線部24の一対の力桁30に形成された貫通孔31に対応しており、当該貫通孔31を貫通する図示しないボルトが締め込まれる。これにより、第1板部50が上階直線部24の力桁30に固定されている(図3参照)。
【0041】
図3及び図4(B)に示されるように、第2板部52は、上段踏板部40の左辺部40Bから略鉛直下方側へ垂下され、正面視で略矩形状に形成されている。第2板部52は、左辺部40Bの延在方向を長手方向とし、長手方向の一端に板厚方向に貫通する2つの第2孔56が形成されている。この第2孔56は、第1ブラケット58の貫通孔60に対応している。第1ブラケット58は、断面略L字状のアングルで構成され、一方の側面が階段室12の左側壁12Aと前側壁12Bとの角部に配置された柱13Aに溶接等の方法で固定されている。また、第1ブラケット58の他方の側面は、第2板部52に対して略平行に配置されており、板厚方向に貫通する貫通孔60が形成されている。第2孔56には、第1ブラケット58の貫通孔60を貫通する図示しないボルトが締め込まれている。これにより第2板部52が柱13Aに第1ブラケット58を介して固定されている。
【0042】
上記構成により、上段階段部材36は、上段取付板部44によって、上階直線部24の力桁30と、柱13Aに固定されて支持されている。
【0043】
また、図3に示されるように、本実施形態では上段階段部材36に補剛部材61を設けて上段踏板部40の支持剛性を高めている。補剛部材61は、一例として断面略L字状のアングルとされ、蹴込板部42と第1板部50との間を架け渡されるようにして延在している。補剛部材61は、縦断面視で建物高さ方向に延在する垂直面部61Aと垂直面部61Aの上端から直角に屈曲して略水平方向に延在する水平面部61Bとを備えている。この補剛部材61の長手方向の両端部では、垂直面部61Aの端部が蹴込板部42及び第1板部50にそれぞれ溶接され、水平面部61Bの端部が上段踏板部40に溶接されている。そして、水平面部61Bの上面は、上段踏板部40の下面に当接しており、上段踏板部40を建物下方側から支持している。さらに、上段階段部材36の上段踏板部40及び蹴込板部42の表面には、意匠面を構成する仕上げ材34が設定されている(図1及び図2参照)。なお、図2図4図5では、説明の便宜のため、上述した補剛部材61の図示を省略している。
【0044】
一方、図3に示されるように、上段階段部材36の建物下方側には、上段踏板部40の下辺部40C側に隣接して、下段階段部材38が配置されている。ここで、図5(A)には、下段階段部材38を構成する鋼板の展開図が示されている。また、図5(B)には、図5(A)に示される鋼板を、図5(A)の破線に沿って折り曲げてなる下段階段部材38の斜視図が示されている。
【0045】
これらの図に示されるように、下段階段部材38も、上述した上段階段部材36と同様に、所定の形状に打ち抜いた鋼板が折り曲げられることにより形成されている。具体的には、下段階段部材38は、略水平面に沿って延在する下段踏板部62と、下段踏板部62の一端に設けられた下段取付板部64が一体に形成されている。
【0046】
図2及び図5(A)に示されるように、下段踏板部62は、平面視で蹴込板部42に沿って配置された蹴込辺部62Aと、階段室12の前側壁12B側に配置された一端を構成する前辺部62Bと、階段室12の右側壁12C側に配置された一端を構成する右辺部62Cと、を有し、平面視で略三角形状をなしている。
【0047】
図5(B)に示されるように、蹴込辺部62Aは、平面視で上段踏板部40の下辺部40Cと重なるように配置されており、下辺部40Cから垂下された蹴込板部42の固定フランジ部46が載置されている。また、蹴込辺部62Aには、固定フランジ部46のフランジ孔48に対応する貫通孔66が形成されている。下段踏板部62には、建物下方側から貫通孔66とフランジ孔48を貫通するボルト68が挿通され、ボルト68が固定フランジ部46の上面に配置されたナット69に螺合される。これにより、上段階段部材36の蹴込板部42が、固定フランジ部46を介して下段踏板部62に固定されている(図3参照)。なお、固定フランジ部46の上面側からボルト68を挿通し、下段踏板部62の下面にナット69を配置して蹴込板部42を下段踏板部62に固定してもよい。
【0048】
図3及び図5(B)に示されるように、下段取付板部64は、第3板部70と、第4板部72と、第5板部74と、第6板部76と、を備えている。第3板部70及び第4板部72は、下段踏板部62の蹴込辺部62Aの両側に形成され、略鉛直下方側へ垂下されている。第3板部70は、上階直線部24の力桁30に対して略平行に配置されており、板厚方向に貫通する2つの第3孔71が形成されている。第3孔71は、上階直線部24の力桁30に形成された貫通孔31に対応しており、当該貫通孔31を貫通する図示しないボルトが締め込まれる。これにより、第3板部70が、上階直線部24の力桁30に固定されている。
【0049】
一方、第4板部72は、上述した第1ブラケット58に対して略平行に配置されており、板厚方向に貫通する2つの第4孔73が形成されている。第4孔73は、第1ブラケット58の貫通孔60に対応しており、当該貫通孔60を貫通する図示しないボルトが締め込まれている。これにより、第4板部72が、第1ブラケット58を介して柱13Aに固定されている。
【0050】
また、第5板部74は、下段踏板部62の前辺部62Bから略鉛直下方側に垂下されている。また、第6板部76は、下段踏板部62の右辺部62Cから略鉛直下方側に垂下されている。この第6板部76には、長手方向の一端に板厚方向に貫通する第6孔79が形成されている。第6孔79は、第2ブラケット80の貫通孔82に対応している。
【0051】
第2ブラケット80は、上述した第1ブラケット58と同様に断面L字状のアングルで構成されており、一方の側面が柱13Bに溶接等の方法で固定されている。また、第2ブラケット80の他方の側面は、第6板部76に対して略平行に配置されている。第6孔79には、第2ブラケット80の貫通孔82を貫通する図示しないボルトが締め込まれている。これにより、第6板部76が、第2ブラケット80を介して柱13Bに固定されている。
【0052】
上記構成により、下段階段部材38は、下段取付板部64によって、上階直線部24の力桁30と、柱13A、13Bに固定されて支持されている。
【0053】
また、図3に示されるように、下段階段部材38には、上述した上段階段部材36と同様の補剛部材61が設けられて、下段踏板部62の支持剛性が高められている。下段階段部材38の補剛部材61は、下段取付板部64の第5板部74と、第6板部76との間を架け渡されるように延在している。補剛部材61の長手方向の両端部では、垂直面部61Aの端部が第5板部74及び第6板部76にそれぞれ溶接され、水平面部61Bの端部が下段踏板部62に溶接されている。そして、水平面部61Bの上面は、下段踏板部62の下面に当接しており、下段踏板部62を建物下方側から支持している。さらに、下段階段部材38の下段踏板部62及び第6板部76の表面には、上述した上段階段部材36と同様に、仕上げ材34が設定されている(図1及び図2参照)。
【0054】
(廻り部28B)
廻り部28Bの構成は、上述した通り、廻り部28Aと同様であるため詳細な説明を割愛する。廻り部28Bは、図2で示す廻り部28Aを時計回りに90°回転させた向きで、下階直線部26の上端部側に配置されている。
【0055】
図2に示されるように、廻り部28Bの上段階段部材36では、上段踏板部40の左辺部40Bが階段室12の前側壁12B側に配置される、このため、左辺部40Bから垂下された第2板部52が柱13B、13Cとの取付面とされている。一例として、第2板部52の長手方向両端部が柱13B及び柱13Cとブラケット(符号省略)を介してボルト締結されている。なお、柱13Bに、ブラケットを介して第1板部50が固定される構成としてもよい。
【0056】
また、廻り部28Bの下段階段部材38では、第4板部72が柱13Cの近傍に配置され、柱13Cへの取付面とされている。一例として、第4板部72がブラケット(符号省略)を介して柱13Cにボルト締結されている。なお、柱13Cに、ブラケットを介して第5板部74が固定される構成としてもよい。
【0057】
また、下段階段部材38では、下段踏板部62の右辺部62Cが下階直線部26側に配置されている。このため、右辺部62Cから垂下された第6板部76が下階直線部26の力桁30との取付面とされている。一例として、第6板部76が下階直線部26の力桁30に直接ボルト締結されている。なお、力桁30に、ブラケットを介して第3板部70又は第5板部74が固定される構成としてもよい。
【0058】
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0059】
本実施形態に係る階段22では、上階床部20から建物下方側に傾斜して配置された上階直線部24と、下階床部18から建物上方側に傾斜して配置された下階直線部26が一対の廻り部28によって連結されている。また、廻り部28は、鋼板の折り曲げ加工により形成された上段階段部材36を含んで構成されている。
【0060】
ここで、上段階段部材36は、略水平方向に延在する上段踏板部40と、上段踏板部40の一端に設けられる蹴込板部と、踏板部の他端に設けられる上段取付板部44と、が一体に形成されている。また、上段取付板部44は、直接又は部材を介して間接的に上階直線部24及び下階直線部26を含む直線部23に配置された力桁30又は柱13若しくはその両方に固定可能とされている。
【0061】
このように、上段階段部材36は、鋼板の折り曲げ加工により上段踏板部40と蹴込板部42を容易に形成すると共に、上段踏板部40の一端に直線部23の力桁30や柱13に固定される上段取付板部44を一体形成することで直線部23とは独立した構造体とすることができる。これにより、階段の廻り部が、直線部と一体に形成された桁を用いて支持される構造と比べて、直線部23と廻り部28の組み付け作業を別々に行うことができ、現場での施工負担が軽減される。
【0062】
また、本実施形態では、上段階段部材36の蹴込板部42が、上段踏板部40の一端から垂下されており、上段踏板部40と下段踏板部62との間に架け渡されている。ここで、蹴込板部42と下段踏板部62は、蹴込板部42の下端部から上段踏板部40側へ略水平に延在する固定フランジ部46を介して固定されている。これにより、蹴込板部42の固定部が廻り部28の表面に露出されず、廻り部28の表面に意匠面となる仕上げ材34を設定する際の作業性を向上させることができる。
【0063】
また、本実施形態では、上段階段部材36の建物下方側に、下段階段部材38が隣接して配置されており、この下段階段部材38は、上述した上段階段部材36と同様に、鋼板の折り曲げ加工により形成されている。そして、下段階段部材38は、略水平方向に延在する下段踏板部62と、下段踏板部62の一端に設けられる下段取付板部64とが一体に形成されている。また、下段取付板部64は、直接又は部材を介して間接的に直線部23に配置された力桁30又は柱13若しくはその両方に固定可能とされている。
【0064】
このように、本実施形態では、それぞれ踏板を備える上段階段部材36と下段階段部材38が、独立した構造体として直線部23の力桁30や柱13にそれぞれ固定されている。これにより、階段の廻り部に配置された複数の踏板を一体に形成する構造と比べて、廻り部28の個々の部材が軽量化される。しかも、上段階段部材36と下段階段部材38は、鋼板を折り曲げてなる簡単な構成であるため、部品点数が少なく、取付作業が容易である。その結果、廻り部28全体の組み付け作業を容易に行うことができる。
【0065】
また、本実施形態では、上段階段部材36と下段階段部材38を、直線部23の力桁30や柱13にボルト締結されている。このため、ボルトの締め込み具合を調整することで、上段踏板部40と下段踏板部62の水平位置を微調整することができる。これにより、廻り部の力桁に踏板が溶接される階段構造と比べて、階段の廻り部の組み付け精度を向上させることができる。
【0066】
また、本実施形態では、上段階段部材36と下段階段部材38を組み付けた状態で、蹴込板部42の階段幅方向の両側に、上段踏板部40の下方側へ連通された空間43が設けられている。このため、当該空間43を通じて上段取付板部44の裏側から固定部を確認でき、力桁30や柱13へ上段取付板部44を固定する際の作業性を向上させることができる。
【0067】
〔第2実施形態〕
以下、図6及び図7を用いて、第2実施形態に係る階段構造が適用された階段84について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を割愛する。なお、図6には、上階直線部24の下端部側に配置された廻り部86Aと力桁30及び柱13の取付構造が斜視図にて示されている。また、図7(A)には、下段階段部材88を構成する鋼板の展開図が示されている。また、図7(B)には、図7(A)に示される鋼板を、図7(A)の破線に沿って折り曲げてなる下段階段部材88の斜視図が示されている。
【0068】
これらの図に示されるように、階段84では、廻り部86を構成する下段階段部材88の形状が第1実施形態の下段階段部材38と異なる。
【0069】
図7(A)及び図7(B)に示されるように、下段階段部材88は、所定の形状に打ち抜いた鋼板が折り曲げられることにより形成されており、略水平面に沿って延在する下段踏板部90と、下段踏板部90の一端に設けられた下段取付板部92が一体に形成されている。なお、下段踏板部90は、第1実施形態の下段踏板部62に相当する部分として構成され、蹴込辺部90Aと、前辺部90Bと、右辺部90Cと、を有し、平面視で略三角形状をなしている。
【0070】
下段取付板部92は、蹴込辺部90Aの長手方向の一端から略鉛直下方側へ垂下された第3板部94と、前辺部90Bから略鉛直下方側へ垂下された第5板部96とを備えている。第3板部94は、第1実施形態の第3板部70に相当し、上階直線部24の力桁30に図示しないボルトを用いて締結されている。また、第5板部96は、第1実施形態の第5板部74に相当する部分として構成されている。
【0071】
ここで、第5板部96の下端部には、当該下端部から下段踏板部90側へ略水平に延在された水平フランジ部98が設けられている。水平フランジ部98の長手方向の両端部には、板厚方向に貫通した第7孔100が2つずつ形成されている。この第7孔100は、一対の第3ブラケット102に形成された貫通孔104に対応している。
【0072】
第3ブラケット102は、柱13A、13Bの側面にそれぞれ固定される接合部102Aと、接合部102Aの上端部に形成され、水平フランジ部98が載置された載置面部102Bとを備えている。接合部102Aは、断面略L字状の板体とされ、一方の側面が柱13A、13Bに溶接等の方法で固定されている。載置面部102Bは、第3ブラケット102の他方の側面の上端部から略水平方向に板状に延材しており、板厚方向に貫通する2つの貫通孔104が形成されている。
【0073】
図6に示されるように、水平フランジ部98は、その両端部が一対の第3ブラケット102の載置面部102Bに載置されている。水平フランジ部98の第7孔100は、載置面部102Bの下方側から貫通孔104に挿入された図示しないボルトに締め込まれている。これにより、第5板部96が、一対の第3ブラケット102を介して柱13A、13Bに固定されている。
【0074】
(作用・効果)
上記構成の階段84は、基本的には第1実施形態に係る階段22の構成を踏襲しているため、同様の作用及び効果を得ることができる。
【0075】
また、本実施形態では、下段踏板部90に一体形成された第5板部96の下端部に略水平方向に延在された水平フランジ部98が形成され、当該水平フランジ部98が第3ブラケット102に載置された状態で、柱13A、13Bに固定されている。これにより、下段踏板部90は、水平フランジ部98を第3ブラケット102に載置した状態で固定作業を行うことができるため、力桁30及び柱13との締結部の位置決めがし易く、施工性を向上させることができる。
【0076】
〔第3実施形態〕
以下、図8図10を用いて、第3実施形態に係る階段構造が適用された階段200について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を割愛する。なお、図8には、上階直線部24の下端部側に配置された廻り部202Aと力桁30及び柱13の取付構造が分解斜視図にて示されている。また、図9(A)には、上段階段部材204を構成する鋼板の展開図が示されている。また、図9(B)には、図9(A)に示される鋼板を、図9(A)の破線に沿って折り曲げてなる上段階段部材204の斜視図が示されている。また、図10(A)には、下段階段部材206を構成する下段踏板部210が平面図にて示されており、図10(B)には、下段階段部材206を構成する枠状体212が斜視図にて示されている。
【0077】
これらの図に示されるように階段200の廻り部202では、下段踏板部210が枠状体212に載置され、しかも、上段階段部材204と枠状体212とが一対の固定部材224で連結されている点に特徴がある。
【0078】
図9(A)、図9(B)に示されるように、上段階段部材204は、第1実施形態の上段階段部材36と同様に、所定の形状に打ち抜いた鋼板が折り曲げられることにより形成され、上段踏板部40と、蹴込板部42と、上段取付板部44が一体に形成されている。また、本実施形態では、上段取付板部44の第2板部208に後述する一対の固定部材224の一端部がボルト締結されている。第2板部208は、第1実施形態の第2板部52に相当し、上段踏板部40の左辺部40Bから略鉛直下方側へ垂下され、正面視で略矩形状に形成されている。第2板部208には、長手方向の一端と中央部に、板厚方向に貫通する締結孔226が2つずつ形成されている。
【0079】
下段階段部材206は、鋼板で構成された平板状の下段踏板部210と、平面視で略矩形フレーム状に形成された枠状体212と、を備えている。下段踏板部210は、第1実施形態の下段踏板部62に相当する部分として構成され、蹴込辺部210Aと、前辺部210Bと右辺部210Cと、を有し、平面視で略三角形状をなしている。また、蹴込辺部210Aには、固定フランジ部46のフランジ孔48に対応する貫通孔214が形成されている。
【0080】
図10(B)に示されるように、枠状体212は、4本の溝形鋼216A、216B、216C、216Dが溶接等の方法で矩形枠状に接合された構成となっている。なお、本実施形態では、互いに平行に配置された溝形鋼216A,216Cの間に溝形鋼で構成された1本の補強梁218が架け渡されている。なお、枠状体212に補強梁218を設けない構成としてもよい。
【0081】
図8に示されるように、枠状体212を構成する溝形鋼216A、216B、216C、216Dのウエブ部には適宜板厚方向に貫通する貫通孔220が設けられ、直線部23の力桁30及び柱13に図示しないボルトを用いてボルト締結されている。一例として、廻り部202Aに配置された枠状体212では、上階直線部24に面して配置された溝形鋼216Bの長手方向両端部に、上階直線部24の力桁30の貫通孔31に対応する貫通孔220が形成されている。これにより、溝形鋼216Bが上階直線部24の力桁30に固定されている。また、溝形鋼216C及び溝形鋼216Dには、長手方向の一端に貫通孔220がそれぞれ設けられており、第1実施形態の第4板部72、第6板部76と同様に第1ブラケット58及び第2ブラケット80の貫通孔60、82に対応している。これにより、溝形鋼216C及び溝形鋼216Dが、第1ブラケット58及び第2ブラケット80を介して柱13A、柱13Bに固定されている。
【0082】
一方、下段踏板部210は、前辺部210Bと右辺部210Cの角部を枠状体212の角部に合わせて、枠状体212の上部に載置されている。この下段踏板部210は、枠状体212の上部に溶接等の方法で固定されている。この状態では、下段踏板部210によって、平面視で枠状体212の略半分が覆われている。
【0083】
一対の固定部材224は、断面略L字状の長尺な板体(アングル)とされ、建物上下方向に延在する縦壁部224Aと、縦壁部224Aの下端部から略水平方向に延在する水平部224Bを備えている。縦壁部224Aの上部には、第2板部208の締結孔226に対応する貫通孔(符号省略)が形成されており、当該貫通孔にボルト228が挿通され、第2板部208に締結されている。
【0084】
一方、水平部224Bは、平面視で第2板部208に沿って配置された溝形鋼216Cの上フランジ部216C1に載置可能とされている。水平部224Bは、板厚方向に貫通する2つのアングル孔230が形成されている。アングル孔230は、溝形鋼216Cの上フランジ部216C1に形成された貫通孔232に対応しており、図示しないボルトを用いて溝形鋼216Cに固定されている。これにより、上段階段部材204と枠状体212が、一対の固定部材224により建物上下方向に連結されている。
【0085】
なお、本実施形態では固定部材224を、第2板部208と溝形鋼216Cとの間に架け渡したが、固定部材224を第1板部50と溝形鋼216Bとの間に架け渡す構成としてもよい。若しくは、第2板部208と溝形鋼216Cの間と、第1板部50と溝形鋼216Bの間の両方に固定部材224を掛け渡す構成としてもよい。
【0086】
(作用・効果)
上記構成の階段200は、階段200の廻り部202を直線部23とは別の構造体にしているという点においては、第1実施形態に係る階段22と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0087】
また、本実施形態では、下段階段部材206の下段踏板部210が、枠状体212に載置された状態で下方側から支持されている。このため、下段踏板部210の支持剛性が高められている。これにより、下段階段部材206を含む廻り部202全体の剛性を向上させることができる。
【0088】
また、本実施形態の廻り部202では、上段階段部材204の上段踏板部40が、一対の固定部材224を介して枠状体212に支持されている。これにより、下段踏板部210に加えて上段踏板部40の支持剛性も高めることができ、廻り部の全体の剛性を一層向上させることができる。
【0089】
また、上記構成によれば、枠状体212は、上段階段部材204と下段踏板部210を含めた廻り部202全体を建物下方側から支持している。このため、廻り部202は、予め製造工場で組み付けを行った後で施工現場に搬入することが可能とされる。このため、施工現場における工期を短縮し、階段200の生産性を向上させることができる。
【0090】
また、上述した廻り部202の構造によれば、製造工場において、作業台に載置された枠状体212の上部に上段階段部材204と下段踏板部210の組み付けを順次行うことができる。このため、枠状体212で上段踏板部40及び下段踏板部210の水平位置を保ちながら廻り部202を形成することができ、出荷時の品質を向上させることができる。
【0091】
〔第4実施形態〕
以下、図11図13を用いて、第4実施形態に係る階段構造が適用された階段300について説明する。なお、前述した第1実施形態及び第3実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を割愛する。なお、図11には、上階直線部24の下端部側に配置された廻り部302Aが斜視図にて示されている。また、図12には、廻り部302Aが分解斜視図にて示されている。
【0092】
これらの図に示されるように、本実施形態の廻り部302は、基本的には第3実施形態の廻り部202を踏襲しているが、上段階段部材304の蹴込板部306が一対の連結部材314及び枠状体212を介して下段階段部材308の下段踏板部310に固定されている点に特徴がある。
【0093】
上段階段部材304は、上段踏板部40の下辺部40Cから、略鉛直下方側へ垂下された蹴込板部306を備えている。この蹴込板部306は、第1実施形態の蹴込板部42に相当する部分として構成されているが、蹴込板部306の建物上下方向の寸法が蹴込板部42に比べて若干小さく設定されている。また、蹴込板部306の下端部には、第1実施形態と同様の固定フランジ部46が設けられている。
【0094】
図12に示されるように、下段階段部材308は、鋼板で構成され、平面視で略三角形状の下段踏板部310と、下段踏板部を下方側から支持する平面視矩形フレーム状の枠状体212を備えている。枠状体212は、第3実施形態の枠状体212と同様の構成であるため、詳細な説明を割愛する。枠状体212には、互いに直交するように配置された溝形鋼216A,216Dの間に補強梁312が架け渡されている。補強梁312は、溝形鋼で形成されており、平面視で溝形鋼のウエブ部312Aが上段踏板部40の下辺部40Cに沿って配置され、ウエブ部312Aの上下両端部に形成されたフランジ部(符号省略)が下辺部40Cに対して離間する方向に延在するように配置されている。
【0095】
下段踏板部310は、上述した枠状体212の上部に載置されている。具体的には、下段踏板部310の周縁部が、枠状体212の溝形鋼216A、216Dと補強梁312の上面に載置されて溶接等の方法で固定されている(図11参照)。
【0096】
一方、補強梁312のウエブ部312Aにおける上段階段部材304側の側面には、一対の連結部材314の下部が固定されている。一対の連結部材314は、断面略L字状の長尺な板体とされ、建物上下方向に延在する縦壁部314Aと、縦壁部314Aの上端部から略水平方向に延在する水平部314Bを備えている。
【0097】
連結部材314の縦壁部314Aの下端部には、板厚方向に貫通する貫通孔(符号省略)が形成されている、当該貫通孔は、補強梁312のウエブ部312Aに形成された貫通孔(符号省略)に対応しており、双方の貫通孔にボルト316が挿通されて、連結部材314の下部が補強梁312にボルト締結されている。また、連結部材314の水平部314Bには、板厚方向に貫通する貫通孔318が形成されている。この貫通孔318は、蹴込板部306の固定フランジ部46に設けられた貫通孔(符号省略)に対応しており、固定フランジ部46を水平部314Bに載置した状態で、ボルト320を用いて締結されている。このように、連結部材314は、上端部(一端)が固定フランジ部46に固定され、下端部(他端)が枠状体212の補強梁312を介して下段踏板部310に固定されている。これにより、蹴込板部306が一対の連結部材314及び枠状体212を介して下段階段部材308の下段踏板部310に固定されている。
【0098】
また、この状態において、蹴込板部306は下段踏板部310から若干浮いた状態で連結部材314に支持されており、蹴込板部306と下段踏板部310の間に隙間322が形成されている(図11参照)。
【0099】
ここで、図13には、蹴込板部306を上段階段部材304の裏側から見た部分斜視図が示されている。この図に示されるように、蹴込板部306と下段踏板部310の表面には、仕上げ材34が設定される。この仕上げ材34は、建物上下方向に立設し蹴込板部306の意匠面を構成する蹴込仕上げ材34Aと、下段踏板部310に載置され下段踏板部310の意匠面を構成する踏板仕上げ材34Bとによって、側面視で略L字状をなしている。
【0100】
蹴込仕上げ材34Aと踏板仕上げ材34Bは、蹴込仕上げ材34Aの下端部に踏板仕上げ材34Bの後端部が突き当てられており、突き当て部34Cとされている。そして、この突き当て部34Cに対して略水平方向に打ち込まれた複数のビス324によって蹴込仕上げ材34Aに踏板仕上げ材34Bが固定されている。
【0101】
仕上げ材34の設定は、まず、蹴込板部306、及び下段踏板部310の表面を覆うように蹴込仕上げ材34Aと蹴込仕上げ材34Aを配置する。その後、廻り部302の裏側(蹴込板部306の裏側)に作業者が入り込み、蹴込板部306と下段踏板部310の間の隙間322を通じて、突き当て部34Cに対してビス324を打ち込むことにより完了する。なお、仕上げ材34は、予め、蹴込仕上げ材34Aに踏板仕上げ材34Bを固定し、蹴込板部306及び下段踏板部310に設定される構成としてもよい。
【0102】
(作用・効果)
上記構成の階段300は、基本的には第3実施形態に係る階段200の構成を踏襲しているため、同様の作用及び効果を得ることができる。
【0103】
また本実施形態では、固定フランジ部46が連結部材314及び枠状体212を介して下段踏板部310に固定されることにより、蹴込板部306と下段踏板部310との間に隙間322が形成されている。このため、蹴込板部306と下段踏板部310の表面に仕上げ材34を設定する際に、蹴込側と踏板側の仕上げ材を廻り部に別々に運び入れた後に固定することが可能となる。
【0104】
具体的には、先ず、蹴込板部306に沿って立設された蹴込仕上げ材34Aと下段踏板部に載置される踏板仕上げ材34Bとを設置場所に置く。その後、蹴込板部306の裏側に入り込んだ作業者が、蹴込仕上げ材34Aの下端部と踏板仕上げ材34Bの後端部との突き当て部34Cにビス324を打ち込んで仕上げ材同士を固定する(図13参照)。
【0105】
このように仕上げ材34を設定することで、施工スペースの狭い建築現場で作業する場合でも、蹴込仕上げ材34Aと踏板仕上げ材34Bを別々に運び入れた後に固定することができ、これらを予め固定した状態で運び入れて施工する場合に比べて作業スペースを必要としない。よって、比較的施工スペースが狭い建築現場においても、階段300の廻り部302に対して容易に仕上げ材34を設定することができる。
[補足説明]
以上、上述した各実施形態の構成は、適宜組み合わせることが可能とされている。
【0106】
例えば、上記各実施形態では、上段取付板部44と直線部23の力桁30が直接ボルト締結される構成としたが、本発明はこれに限らず、上段取付板部と直線部の力桁がブラケットを介して固定される構成としてもよい。
【0107】
また、上記各実施形態では、廻り部28、86、202、302が一つの上段階段部材36、204、304を備える構成としたが、本発明はこれに限らず、廻り部が複数の上段階段部材を備える構成としてもよい。例えば、一の上段階段部材の建物下方側に他の上段階段部材を隣接して配置し、さらに、当該他の上段階段部材の建物下方側に下段階段部材を配置する構成としてもよい。
【0108】
また、上記各実施形態では、廻り部28、86、202、302の構成部材同士をボルト締結する構成としたが、本発明はこれに限らず、溶接等の方法で固定してもよい。
【0109】
また、上記各実施形態では、廻り部28、86、202、302を折り返し階段の廻り部に適用したが、本発明はこれに限らず、かね折れ階段に廻り部28、86、202、302を適用してもよい。例えば図14に示す階段400ように、互いに昇降方向の直交する上階直線部402の下端部と下階直線部404の上端部が、第1実施形態と同様の廻り部28Aで結ばれる構成としてもよい。
【0110】
なお、上記各実施形態において、ボルトとナットによる部材同士の締結点数は、適宜増減が可能である。
【0111】
また、上記第1実施形態では、上段階段部材36及び下段階段部材38に補剛部材61を設けて上段踏板部40及び下段踏板部62の支持剛性を高める構成としたが、本発明はこれに限らない。上段踏板部40及び下段踏板部62の支持剛性が、これらの板厚によって確保できる場合は、補剛部材61を設けない構成としてもよい。一方、これとは逆に、上記実施形態では、上段階段部材36及び下段階段部材38にそれぞれ1つの補剛部材61を設ける構成としたが、複数の補剛部材61を設ける構成としてもよい。
【0112】
さらに言えば、補剛部材61は、第1実施形態に限らず、第2実施形態~第4実施形態に記載された上段階段部材36、204、304や、下段階段部材88、206、308に設けることも可能である。各実施形態において、上段踏板部40及び下段踏板部90、210、310の板厚に応じて補剛部材61を適宜設定し、これらの支持剛性を高めることができる。
【0113】
また、上記第3実施形態及び第4実施形態では、上段階段部材204、304が枠状体212と一対の固定部材224で連結される構成としたが、本発明はこれに限らず、1本の固定部材224で連結する構成でもよく、又は、3本以上の固定部材224で連結する構成としてもよい。
【0114】
また、上記第4実施形態では、固定フランジ部46と下段踏板部310とが一対の連結部材314を介して固定される構成としたが、本発明はこれに限らず、3本以上の連結部材314を介して固定される構成としてもよい。
【符号の説明】
【0115】
13 柱
18 下階床部(下階の床部)
20 上階床部(上階の床部)
22 階段
23 直線部
24 上階直線部
26 下階直線部
28 廻り部
30 力桁
36 上段階段部材(階段部材)
38 下段階段部材
40 上段踏板部(踏板部)
42 蹴込板部
44 上段取付板部(取付板部)
46 固定フランジ部
62 下段踏板部
64 下段取付板部
84 階段
86 廻り部
88 下段階段部材
90 下段踏板部
92 下段取付板部
200 階段
202 廻り部
204 上段階段部材
206 下段階段部材
210 下段踏板部
212 枠状体
224 固定部材
300 階段
302 廻り部
304 上段階段部材
306 蹴込板部
308 下段階段部材
310 下段踏板部
314 連結部材
322 隙間
400 階段
402 上階直線部
404 下階直線部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14