(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】免疫抑制性タンパク質吸着材料及び吸着カラム
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
A61M1/36 165
(21)【出願番号】P 2018554411
(86)(22)【出願日】2018-09-07
(86)【国際出願番号】 JP2018033126
(87)【国際公開番号】W WO2019049961
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2017173238
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、医療分野研究成果展開事業 戦略的イノベーション創出推進プログラム「LAP陽性制御性T細胞およびTGF-βに対する選択除去材の創製およびがんの革新的治療法への応用」に係る委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504177284
【氏名又は名称】国立大学法人滋賀医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 淳一
(72)【発明者】
【氏名】松長 遼
(72)【発明者】
【氏名】上野 良之
(72)【発明者】
【氏名】上田 祐二
(72)【発明者】
【氏名】寺本 和雄
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 一誠
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/133399(WO,A1)
【文献】特開2001-218840(JP,A)
【文献】国際公開第2003/101511(WO,A1)
【文献】特開2012-005827(JP,A)
【文献】特開2008-006171(JP,A)
【文献】特開2006-288571(JP,A)
【文献】特開2009-095436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
B01J 20/22-20/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(1)で表されるポリアミ
ンから選択される1種以上の窒素含有化合物が結合した水不溶性担体を含み、
前記水不溶性担体上のアミノ基の総量は、
吸着材料1g当たり
30μmol超
2400μmol以下であり、かつ、前記水不溶性担体上の1級アミノ基の量は、
吸着材料1g当たり450μmol以下であ
り、
前記アミノ基の総量に対する前記1級アミノ基の量の比率(1級アミノ基の量/アミノ基の総量)は、0.30以下である、免疫抑制性タンパク質の吸着材料。
R
1R
2N-X-NR
3R
4 ・・・式(1)
[式(1)中、Xは、2~20個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基、又は、3~20個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基において1~5個の炭素原子を窒素原子で置き換えたヘテロ原子含有炭素鎖であり、該窒素原子に結合する水素原子は、アミノ基を有していてもよいアルキル基で置換されていてもよく、R
1~R
4は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基である。
]
【請求項2】
前記窒素含有化合物は、リンカーを介して前記水不溶性担体に結合している、請求項
1記載の吸着材料。
【請求項3】
前記水不溶性担体の形状は、繊維又は粒子であり、
前記繊維又は前記粒子の直径は、15~50μmであり、
前記水不溶性担体の表面の算術平均粗さは、0.1~3.0μmである、請求項
1又は2記載の吸着材料。
【請求項4】
前記免疫抑制性タンパク質は、TGF-β又はLAP結合型TGF-βである、請求項1~
3のいずれか一項記載の吸着材料。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項記載の吸着材料を備える、吸着カラム。
【請求項6】
血液浄化療法に用いるための、請求項
5に記載の吸着カラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、免疫抑制性タンパク質の吸着材料及びそれを含む吸着カラムに関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、免疫と密接に関係していることが明らかとなってきており、近年、多くの進行癌で免疫抑制性の血液成分の濃度が上昇していることが報告されてきている。
【0003】
免疫抑制性の血液成分の中でも代表的なものがTGF-β(Transforming Growth Factor-β)である。近年、癌の進展に関与する分子の一つであるTGF-βが関与する免疫抑制シグナルが亢進することで、癌細胞は免疫系からの攻撃を免れ、その結果、癌が進行することが明らかになっている。TGF-βは単独では分子量25000程度のタンパク質であり、5つのアイソフォーム(TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、TGF-β5)が存在する。TGF-βは、血液中では、分子量75000程度のLatency Associated Peptide(以下、LAPと称す。)と呼ばれるタンパク質と結合して存在している(以下、LAP結合型TGF-βと称す。)。
【0004】
癌を治療する方法としては、癌細胞から放出されるTGF-βが関与する免疫抑制シグナルをブロックする薬が開発されてきているが、未だ有効な治療法となるまでには至っていない。
【0005】
一方で、TGF-βを除去すれば、癌細胞が免疫系から免れるシグナルが解除されて患者の免疫力が高まり、腫瘍の退縮や癌進行の抑制が期待できる。
【0006】
タンパク質を吸着する材料として、水不溶性担体に化合物を固定化した材料がいくつか開示されている。例えば、特許文献1には、クリングル配列を有するタンパク質又はペプチドを吸着する材料として、水不溶性担体にリジンを固定化した材料が開示されている。また、特許文献2には、ハイモビリティグループタンパク等の炎症性サイトカインを吸着する、アミノ基を有する官能基が導入された吸着担体が開示されている。また、特許文献3には、変性低密度リポ蛋白質及び/又は終末糖化産物を除去するための所定式で表されるポリアミン誘導体を有効成分として含む吸着剤が開示されている。また、特許文献4には、サイトカイン及び/又はスーパー抗原を吸着する材料として、ポリアミンを有する基材からなる吸着材料が開示されている。
【0007】
さらに、特許文献5及び6には、LAP結合型TGF-βを吸着する材料として、水不溶性担体に親水性アミノ基(4級アンモニウム基)を固定した吸着材が開示されている。
【0008】
特許文献7には、白血球及びサイトカインを吸着又は除去するための、所定の孔径と孔容積率を有する、親水性アミン残基が結合している吸着器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2012-062259号公報
【文献】特開2012-005827号公報
【文献】特開2011-139806号公報
【文献】特開2006-272075号公報
【文献】国際公開2003/101511号
【文献】特開2003-339854号公報
【文献】特開2007-202634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1~4では、TGF-β等の免疫抑制性タンパク質の吸着性を高めるための技術の開示はない。また、特許文献5~7に開示される材料に固定される4級アンモニウム基や親水性アミン残基は親水性が高いために、担体材料の物理的強度を維持しつつ、吸着効率を高めることが困難である場合が考えられる。
【0011】
そのため、担体材料の物理的強度を維持しつつ、血液中のTGF-β又はLAP結合型TGF-βを効率的に吸着することができる吸着材料の開発が求められている。
【0012】
そこで、本開示は、担体材料の物理的強度が保持され、免疫抑制性タンパク質を効率的に吸着する吸着材料を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、水不溶性担体にポリアミン残基又は脂肪族アミン残基を含有させることにより、免疫抑制性タンパク質が吸着することを見出した。さらに、水不溶性担体にポリアミン残基又は脂肪族アミン残基を含有させることに加え、水不溶性担体上のアミノ基の総量及び該水不溶性担体上の1級アミノ基の量を所定の範囲とした場合、担体材料の物理的強度が保持され、かつ免疫抑制性タンパク質(特にTGF-β又はLAP結合型TGF-β)を効率的に吸着できることを見出し、本開示に至った。
【0014】
本実施形態の態様例を以下に記載する。
[1] 以下の式(1)で表されるポリアミン、以下の式(2)で表される第1級脂肪族アミン及び式(3)で表される第2級脂肪族アミンから選択される1種以上の窒素含有化合物が結合した水不溶性担体を含み、
上記水不溶性担体上のアミノ基の総量は、1g当たり0μmol超2500μmol以下であり、かつ、上記水不溶性担体上の1級アミノ基の量は、1g当たり450μmol以下である、免疫抑制性タンパク質の吸着材料。
R1R2N-X-NR3R4 ・・・式(1)
[式(1)中、Xは、2~20個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基、又は、3~20個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基において1~5個の炭素原子を窒素原子で置き換えたヘテロ原子含有炭素鎖であり、該窒素原子に結合する水素原子は、アミノ基を有していてもよいアルキル基で置換されていてもよく、R1~R4は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基である。]
NH2R5 ・・・式(2)
[式(2)中、R5は、1~12個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基である。]
NHR6R7 ・・・式(3)
[式(3)中、R6及びR7は、それぞれ独立して、1~12個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基である。]
[2] 上記窒素含有化合物は、上記式(1)で表されるポリアミンを含む、[1]に記載の吸着材料。
[3] 上記窒素含有化合物は、リンカーを介して上記水不溶性担体に結合している、[1]又は[2]に記載の吸着材料。
[4] 上記アミノ基の総量は、1g当たり30~2400μmolである、[1]~[3]のいずれかに記載の吸着材料。
[5] 上記アミノ基の総量に対する上記1級アミノ基の量の比率(1級アミノ基の量/アミノ基の総量)は、0.30以下である、[4]に記載の吸着材料。
[6] 上記水不溶性担体の形状は、繊維又は粒子であり、
上記繊維又は上記粒子の直径は、15~50μmであり、
上記水不溶性担体の表面の算術平均粗さは、0.1~3.0μmである、[1]~[5]のいずれかに記載の吸着材料。
[7] 上記免疫抑制性タンパク質は、TGF-β又はLAP結合型TGF-βである、[1]~[6]のいずれかに記載の吸着材料。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の吸着材料を備える、吸着カラム。
[9] 血液浄化療法に用いるための、[8]に記載の吸着カラム。
【発明の効果】
【0015】
本開示により、担体材料の物理的強度が保持され、かつ免疫抑制性タンパク質(特にTGF-β又はLAP結合型TGF-β)を効率的に吸着する吸着材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】ジエチレントリアミンを水不溶性担体上に固定化した場合に得られる構造例を示す概念図である。
【
図2】ラジアルフロー型の吸着カラムの一例の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本実施形態について更に詳細に説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。したがって、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」等)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0018】
本実施形態に係る吸着材料は、免疫抑制性タンパク質を吸着するための免疫抑制性タンパク質吸着材料に関する。また、本実施形態に係る吸着材料は、式(1)で表されるポリアミン、式(2)で表される第1級脂肪族アミン及び式(3)で表される第2級脂肪族アミンから選択される1種以上の窒素含有化合物が結合した水不溶性担体を含む。また、本実施形態に係る吸着材料において、水不溶性担体上のアミノ基の総量が吸着材料1gあたり0μmol超2500μmol以下であり、かつ、水不溶性担体上の1級アミノ基の量が吸着材料1gあたり450μmol以下である。
【0019】
「水不溶性担体上のアミノ基」は、水不溶性担体上に存在する1級アミノ基(-NH2)、2級アミノ基、3級アミノ基、及び4級アミノ基(4級アンモニウム基)を意味する。窒素含有化合物が水不溶性担体に結合する際、窒素含有化合物中の結合位置に依存して、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基及び/又は4級アミノ基が結合後の窒素含有化合物中に存在する。例えば、式(1)で表されるポリアミンが水不溶性担体に結合する際、ポリアミン中の結合位置に依存して、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基及び/又は4級アミノ基が結合後のポリアミン中に存在することになる。また、窒素含有化合物は、該化合物中のアミノ基(又は窒素原子)を介して水不溶性担体に結合していることが好ましい。本明細書において、「水不溶性担体上のアミノ基」は、そのように生じた窒素含有化合物由来の1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基及び4級アミノ基を少なくとも含む概念である。窒素含有化合物がリンカーを介して結合している場合、「水不溶性担体上のアミノ基」は、リンカー由来の1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基及び4級アミノ基を含む。
【0020】
また、「アミノ基の総量」とは、水不溶性担体上の1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基及び4級アミノ基の総量(μmol)を意味する。また、「水不溶性担体上の1級アミノ基」とは、水不溶性担体上に存在する1級アミノ基を意味する。「水不溶性担体上の1級アミノ基」は、窒素含有化合物(例えばポリアミン)中の反応せずに残った1級アミノ基を少なくとも含む概念である。
【0021】
「窒素含有化合物残基」とは、本明細書で使用される場合、窒素含有化合物を水不溶性担体に直接的又は間接的に結合させて得られる基を意味する。同様に、「ポリアミン残基」とは、式(1)で表されるポリアミンを水不溶性担体に直接的又は間接的に結合させて得られる基を意味し、「脂肪族アミン残基」とは、式(2)又は式(3)で表される脂肪族アミン(脂肪族アミンとも称す)を水不溶性担体に直接的又は間接的に結合させて得られる基を意味する。
【0022】
窒素含有化合物は、式(1)で表されるポリアミン、式(2)で表される第1級脂肪族アミン及び式(3)で表される第2級脂肪族アミンから選択される。窒素含有化合物は、1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
一実施形態において、窒素含有化合物は、式(1)で表されるポリアミンである。
【0024】
R1R2N-X-NR3R4 ・・・式(1)
[式(1)中、Xは、2~20個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基、又は、3~20個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基において1~5個の炭素原子を窒素原子で置き換えたヘテロ原子含有炭素鎖であり、該窒素原子に結合する水素原子は、アミノ基を有していてもよいアルキル基で置換されていてもよく、R1~R4は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基である。]。
【0025】
式(1)において、Xは、例えば、2~20個(例えば、16個以下、14個以下、12個以下、10個以下、8個以下、6個以下、4個以下)の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基である。式(1)において、Xは、例えば、3~20個(例えば、16個以下、14個以下、12個以下、10個以下)の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基において1~5個(例えば、1~3個)の炭素原子を窒素原子で置き換えたヘテロ原子含有炭素鎖であり、該窒素原子に結合する水素原子は、アミノ基を有していてもよいアルキル基(例えば1~6個(好ましくは1~4個)の炭素原子を有する。)で置換されていてもよい。R1~R4は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基である。アルキル基は、例えば1~6個(好ましくは1~4個)の炭素原子を有する。脂肪族炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
【0026】
式(1)で表されるポリアミンは、下記式(1-1)~(1-6)のいずれかで表されるポリアミンであることが好ましい。
H2N-(CH2)p1-NH2 ・・・式(1-1)
[式(1-1)中、p1は、2~12(好ましくは2~6、2~5又は2~4)の整数であり、両末端の1級アミノ基の水素原子のうち少なくとも1つはアルキル基で置換されていてもよい。]、
H2N-(CH2)p1-NH-(CH2)p2-NH2 ・・・式(1-2)
[式(1-2)中、p1及びp2は、それぞれ独立に、2~5(好ましくは2~4、2~3、2)の整数であり、2級アミノ基の水素原子は、アミノ基を有していてもよいアルキル基で置換されていてもよく、両末端の1級アミノ基の水素原子のうち少なくとも1つはアルキル基で置換されていてもよい。]、
H2N-(CH2)p1-NH-(CH2)p2-NH-(CH2)p3-NH2 ・・・式(1-3)
[式(1-3)中、p1、p2及びp3は、それぞれ独立に、2~5(好ましくは2~4、2~3、2)の整数であり、2級アミノ基の水素原子は、それぞれ独立に、アミノ基を有していてもよいアルキル基で置換されていてもよく、両末端の1級アミノ基の水素原子のうち少なくとも1つはアルキル基で置換されていてもよい。]、
H2N-(CH2)p1-NH-(CH2)p2-NH-(CH2)p3-NH-(CH2)p4-NH2 ・・・式(1-4)
[式(1-4)中、p1、p2、p3及びp4は、それぞれ独立に、2~5(好ましくは2~4、2~3、2)の整数であり、p1、p2、p3及びp4の和は17以下であり、2級アミノ基の水素原子は、それぞれ独立に、アミノ基を有していてもよいアルキル基で置換されていてもよく、両末端の1級アミノ基の水素原子のうち少なくとも1つはアルキル基で置換されていてもよい。]、
H2N-(CH2)p1-NH-(CH2)p2-NH-(CH2)p3-NH-(CH2)p4-NH-(CH2)p5-NH2 ・・・式(1-5)
[式(1-5)中、p1、p2、p3、p4及びp5は、それぞれ独立に、2~5(好ましくは2~4、2~3、2)の整数であり、p1、p2、p3、p4及びp5の和は16以下であり、2級アミノ基の水素原子は、それぞれ独立に、アミノ基を有していてもよいアルキル基で置換されていてもよく、両末端の1級アミノ基の水素原子のうち少なくとも1つはアルキル基で置換されていてもよい。]、
H2N-(CH2)p1-NH-(CH2)p2-NH-(CH2)p3-NH-(CH2)p4-NH-(CH2)p5-NH-(CH2)p6-NH2 ・・・式(1-6)
[式(1-6)中、p1、p2、p3、p4、p5及びp6は、それぞれ独立に、2~5(好ましくは2~4、2~3、2)の整数であり、p1、p2、p3、p4、p5及びp6の和は15以下であり、2級アミノ基の水素原子は、それぞれ独立に、アミノ基を有していてもよいアルキル基で置換されていてもよく、両末端の1級アミノ基の水素原子のうち少なくとも1つはアルキル基で置換されていてもよい。]。
【0027】
式(1-2)~(1-6)において、2級アミノ基の窒素原子に結合し得る「アミノ基を有していてもよいアルキル基」の炭素原子数は、例えば1~6個であり、好ましくは1~5個であり、好ましくは1~4個であり、好ましくは1~3個である。式(1-1)~(1-6)において、両末端の1級アミノ基の窒素原子に結合し得る「アルキル基」の炭素原子数は、例えば1~6個であり、好ましくは1~5個であり、好ましくは1~4個であり、好ましくは1~3個である。これらの「アルキル基」は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
【0028】
式(1)で表されるポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、N-エチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、N-エチルジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミンが挙げられる。また、その他にも、以下のポリアミンが挙げられる。3,3'-ジアミノジプロピルアミン;1,3-ジアミノプロパン;ノルスペルミジン;ホモスペルミジン;アミノプロピルカダベリン;アミノブチルカダベリン;ノルスペルミン;テルモスペルミン;アミノプロピルホモスペルミジン;カナバルミン;ホモスペルミン;アミノペンチルノルスペルミジン;N,N-ビス(アミノプロピル)カダベリン;カルドペンタミン;ホモカルドペンタミン;テルモペンタミン;カルドヘキサミン;ホモカルドヘキサミン;テルモヘキサミン;ホモテルモヘキサミン;N4-アミノプロピルノルスペルミジン;N4-アミノプロピルスペルミジン;N4-アミノプロピルノルスペルミン。
【0029】
一実施形態において、窒素含有化合物は、式(2)で表される第1級脂肪族アミン又は式(3)で表される第2級脂肪族アミンである。
NH2R5 ・・・式(2)
[式(2)中、R5は、1~12個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基である。]、
NHR6R7 ・・・式(3)
[式(3)中、R6及びR7は、それぞれ独立して、1~12個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基である。]。
【0030】
式(2)又は(3)で表される脂肪族アミンにおいて、脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素基であることが好ましい。脂肪族炭化水素基の炭素数は、1~8個であることが好ましく、1~6個であることが好ましく、1~4個であることが好ましい。
【0031】
脂肪族アミンの具体例としては、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン等のモノアルキルアミン;ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルアミンが挙げられる。
【0032】
窒素含有化合物としては、例えば、エチルアミン、エチレンジアミン、ジエチルアミン、N-エチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、N-エチルジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン又はテトラエチレンペンタミンが挙げられる。これらの中でも、好ましくは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン又はテトラエチレンペンタミンが挙げられる。窒素含有化合物は、市販されているか又は公知の方法若しくはそれに準じた方法により製造することができる。
【0033】
窒素含有化合物が結合した水不溶性担体とは、上記窒素含有化合物が、直接的に共有結合している水不溶性担体、又はリンカーを介して間接的に結合している水不溶性担体の両方を包含する。また、窒素含有化合物が結合した水不溶性担体には、上記ポリアミン及び上記脂肪族アミンから選ばれる、それぞれ異なる2種以上の窒素含有化合物が結合しているものも包含する。
【0034】
窒素含有化合物として式(1)で表されるポリアミンを用いる場合、複数のアミノ基が水不溶性担体に結合して、架橋構造を形成していてもよい。すなわち、窒素含有化合物として、式(1)で表されるポリアミンを水不溶性担体に結合させた場合、ポリアミン中のアミノ基の少なくとも2つが水不溶性担体に結合すると、架橋構造を形成することになる。例として、式(1)で表されるポリアミンの代表的な化合物であるジエチレントリアミン(以下、DETAとも称す。)を水不溶性担体上に固定化した場合に得られる構造例を
図1に示す。
図1の例では、N-メチロール-α-クロルアセトアミド(以下、NMCAとも称す。)をリンカーとして用いている。
図1に示すように、ジエチレントリアミンのアミノ基のうち、両末端1級アミノ基が反応した場合、片末端1級アミノ基及び2級アミノ基が反応した場合、全てのアミノ基(両末端1級アミノ基及び2級アミノ基)が反応した場合において、架橋構造が得られる。
【0035】
「免疫抑制性タンパク質」とは、免疫系を抑制する働きを有するタンパク質を意味し、例えば、TGF-β、LAP結合型TGF-β、免疫抑制酸性蛋白、癌胎児性抗原、インドールアミン酸素添加酵素(Indoleamine 2,3-Dioxygenase: IDO)、誘導型一酸化窒素合成酵素(inducible nitric oxide synthase:iNOS)、アルギナーゼ(arginase:ARG)、インターロイキン4、インターロイキン6、インターロイキン10、インターロイキン13、腫瘍壊死因子等が挙げられる。これらの中でも、癌患者の腫瘍の退縮や癌進行の抑制を目的とした治療の効果を最大化するという点で、本実施形態に係る吸着材料はTGF-βとLAP結合型TGF-βを血液中から選択的に吸着することが好ましい。なお、「選択的に吸着する」とは、吸着材料を充填したカラムに免疫抑制性タンパク質(例えば、TGF-β又はLAP結合型TGF-β)を含む液体(例えば血液又は血液細胞混合液)を通した時、通過した液体中の免疫抑制性タンパク質の濃度が通過前よりも減少し、吸着したタンパク質中の免疫抑制性タンパク質の存在比率が通過前より増加することを意味する。
【0036】
「水不溶性担体」とは、常温(25℃)の水に浸漬した場合に形状変化を起こさない担体を指し、具体的には、25℃の水に1時間浸漬させた際の重量変化が5%以下である担体であることが好ましい。水不溶性担体の材料としては、特に制限されるものではないが、ポリスチレンに代表されるポリ芳香族ビニル化合物、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド等が好ましく挙げられる。水不溶性担体の材料は、市販されているか又は公知の方法若しくはそれに準じた方法により製造することができる。これらの材料は、血液と接触した際に補体を活性化しやすいと言われている水酸基を実質的に有しない材料である。これらの中でも単位重量あたりの芳香環の数が多く、アミノ基を固定化しやすいことから、ポリスチレンが好ましい。これらの高分子材料は、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。また、水不溶性担体は、ポリ芳香族ビニル化合物(例えば、ポリスチレン)を含む高分子材料であることが好ましい。水不溶性担体としては、ポリスチレン部分にアミノ基を固定化するための活性ハロゲン基等のリンカーを導入し易い点、及びポリオレフィン部分による強度補強による扱い易さ及び耐薬品性の点から、ポリスチレンとポリオレフィンの共重合体(例えば、ポリスチレンとポリエチレンの共重合体又はポリスチレンとポリプロピレンの共重合体)が好ましい。また、高分子材料は、ブレンド又はアロイ化したものでもよく、特に、ポリスチレンとポリオレフィンのポリマーアロイ(例えば、ポリスチレンとポリエチレンのポリマーアロイ又はポリスチレンとポリプロピレンのポリマーアロイ)は、耐薬品性を有し、物理形状を保持し易い観点から、好ましい。その中でも、血液体外循環療法で使用実績のあるポリスチレンとポリプロピレンのポリマーアロイが好ましい。また、用いる水不溶性担体は、アミノ基を実質的に有さないことが好ましい。
【0037】
窒素含有化合物は、水不溶性担体に直接的に結合してもよいし、リンカーを介して間接的に水不溶性担体に結合してもよい。窒素含有化合物を水不溶性担体に結合させる方法は、特に制限されるものではなく、例えば、化学的方法により水不溶性担体表面にリンカーを介して共有結合させる方法が挙げられる。リンカーとしては、例えば、反応性官能基を用いることができる。また、リンカーとしては、アミド結合、尿素結合、エーテル結合又はエステル結合等の電気的に中性の化学結合を有しているものが好ましく、アミド結合又は尿素結合を有しているものが好ましい。リンカーとしての反応性官能基としては、例えば、ハロメチル基、ハロアセチル基、ハロアセトアミドメチル基若しくはハロゲン化アルキル基等の活性ハロゲン基、エポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、又は酸無水物基等を挙げることができる。これらの中でも、活性ハロゲン基(特にハロアセチル基)は、製造が容易であり、反応性が適度に高く、アミノ基の固定化反応が温和な条件で遂行でき、生じる共有結合が化学的に安定であるため、好ましい。反応性官能基を導入したポリマーの具体的な例としては、クロルアセトアミドメチル基を付加したポリスチレン、クロルアセトアミドメチル基を付加したポリスルホン、クロルアセトアミドメチル基を付加したポリエーテルイミド等が挙げられる。なお、これらのポリマーは有機溶媒に対し可溶であり、成型しやすい利点がある。窒素含有化合物の添加量の目安は、リンカーの構造にもよるが、例えば、水不溶性担体1gに対して、10~10000μmolである。また、窒素含有化合物は過剰量で用いてもよい。
【0038】
反応性官能基は、予め、水不溶性担体と反応させることで導入することができる。例えば、水不溶性担体がポリスチレンで、反応性官能基がクロルアセトアミドメチル基の場合は、ポリスチレンとN-メチロール-α-クロルアセトアミドを反応させることでクロルアセトアミドメチル基を付加したポリスチレンを得ることができる。
【0039】
水不溶性担体上のアミノ基の総量は、吸着材料1gあたり0μmol超2500μmol以下である。アミノ基の総量は、吸着材料1gあたり、例えば、10μmol以上、20μmol以上、30μmol以上、40μmol以上、50μmol以上、100μmol以上、200μmol以上、300μmol以上、400μmol以上、500μmol以上、又は600μmol以上である。また、アミノ基の総量は、吸着材料1gあたり、例えば、2400μmol以下、2300μmol以下、2200μmol以下、2100μmol以下、2000μmol以下、1700μmol以下、又は1500μmol以下である。例示したいずれの下限値も例示したいずれの上限値と組み合わせることができる。例えば、アミノ基の総量は、吸着材料1gあたり、例えば、0μmol超2400μmol以下、10μmol以上2400μmol以下(10~2400μmol)、20μmol以上2400μmol以下(20~2400μmol)、30μmol以上2400μmol以下(30~2400μmol)である。水不溶性担体上の免疫抑制性タンパク質と効果的に相互作用できるアミノ基が全く存在しない場合、吸着性能が低くなる。また、アミノ基の総量が吸着材料1gあたり2500μmolを超える場合でも、吸着性能が低くなる。これは以下の理由によるものと推測している。タンパク質の表面電荷分布は不均一であり、タンパク質は部分的に正電荷や負電荷を有している。そのため、液中で正に帯電したアミノ基の固定化密度が高いと、正に帯電したタンパク質表面と静電反発を起こし、結果的にタンパク質は表面に吸着され難くなる。なお、当該推測により本実施形態が制限されることはない。
【0040】
水不溶性担体上のアミノ基の総量は、例えば、アミノ基を酸塩基逆滴定を利用して測定することにより、1級アミノ基の量、2級アミノ基の量、3級アミノ基の量、及び4級アミノ基(4級アンモニウム基)の量の和として求めることができる。すなわち、まず、ポリプロピレン製容器に、吸着材料及び過剰量の水酸化ナトリウム水溶液を添加して室温で十分撹拌し、吸着材料中の塩が付加されたアミノ基を脱塩する。次に、吸着材料をイオン交換水で溶液が中性になるまで十分に洗浄し、重量変化が1%以下になるまで乾燥する。次に、乾燥した吸着材料中のアミノ基を、過剰の酸を含む標準溶液の一定量と反応させる。次に、アミノ基と反応せずに残った酸の量を、塩基を含む標準溶液で滴定する。この方法により、アミノ基の総量(μmol)を求めることができる。さらに具体的には、水不溶性担体上のアミノ基の総量は下記実施例において記載した方法により求めることができる。
【0041】
また、水不溶性担体上の1級アミノ基の量は、吸着材料1gあたり450μmol以下であり、好ましくは400μmol以下であり、好ましくは350μmol以下であり、好ましくは300μmol以下であり、好ましくは250μmol以下であり、好ましくは200μmol以下である。1級アミノ基が吸着材料1gあたり450μmolより多いと、液中での担体の親水性が高くなり、担体の物理的強度が低下し、微粒子が発生しやすくなる。なお、上記の好ましい水不溶性担体上のアミノ基の総量と上記の好ましい水不溶性担体上の1級アミノ基の量は任意に組み合わせることができる。
【0042】
1級アミノ基の量は、例えば、水不溶性担体への反応性官能基の結合量、窒素含有化合物の種類、窒素含有化合物の使用量を調整することで制御することができる。反応性官能基の結合量は、例えば、反応性官能基の種類又は溶媒の種類、浸漬温度若しくは浸漬時間等の反応条件で制御することができる。例えば、水不溶性担体がポリ芳香族ビニル化合物を含む場合は、架橋剤を用いて、反応性官能基の結合可能箇所を制御することもできる。また、窒素含有化合物の固定化量は、窒素含有化合物の種類や反応性官能基の結合量に加え、溶媒の種類、浸漬温度、浸漬時間等の反応条件で制御することができる。
【0043】
水不溶性担体上の1級アミノ基の量は、例えば、チオール化合物の存在下で1級アミノ基と特異的に反応して蛍光分子を生成するo-フタルアルデヒド(以下、OPA)を用いて吸着材料中の1級アミノ基を逆滴定することにより測定することできる。すなわち、まず、ポリプロピレン製容器中に、乾燥させた吸着材料を配置する。また、80体積%メタノール及び20体積%炭酸塩pH標準液(pH 10.01)中に、過剰のOPA及びチオール化合物のジチオトレイトール(以下、DTT)を溶解させ、混合溶液を調製する。該混合溶液を、上記吸着材料が配置されたポリプロピレン製容器中に添加し、室温にて十分撹拌する。撹拌後、溶液を回収し、測定サンプルとする。また、検量線用サンプルとして、既知濃度となるように添加したOPA、DTT、80体積%メタノール及び20体積%炭酸塩pH標準液(pH 10.01)を含む混合溶液を準備する。測定サンプル及び検量線用サンプルを、n-プロピルアミン及びDTTを含む炭酸塩pH標準液(pH 10.01)と混合し、希釈後の測定サンプル及び希釈後の検量線用サンプルを得る。一定時間後、希釈後の測定サンプル及び希釈後の検量線用サンプルについて、340nmにおける吸光度を分光光度計で測定し、両者を比較することにより水不溶性担体上の1級アミノ基の量(μmol)を算出することができる。具体的には、水不溶性担体上の1級アミノ基の量は下記実施例において記載した方法により求めることができる。
【0044】
吸着材料1g当たりのアミノ基の総量に対する1級アミノ基の量の比率(1級アミノ基の量/アミノ基の総量)は、0.30以下であることが好ましく、0.25以下であることが好ましく、0.20以下であることが好ましい。
【0045】
「繊維の直径」は、以下の方法により求めることができる。まず、繊維のサンプル100本をランダムに採取して、走査型電子顕微鏡を用いて1000~3000の倍率で断面(繊維の伸長方向に垂直な断面)の写真をサンプル1本につきそれぞれ1枚撮影する。次に、それぞれの繊維断面の直径を測定する。そして、それらの値の平均値(計100本の繊維断面の直径の平均値)を算出することにより、「繊維の直径」を求める。繊維断面が円でない場合は、その断面積と同じ面積を有する円の直径を繊維の直径とする。
【0046】
「粒子の直径」は、以下の方法により求めることができる。まず、粒子のサンプル群10個をランダムに採取して、走査型電子顕微鏡を用いて1000~3000の倍率で写真をサンプル群1個につきそれぞれ1枚撮影する。次に、写真1枚当たり10個の粒子の直径を測定する。そして、それらの値の平均値(計100個の粒子の直径の平均値)を算出することにより、「粒子の直径」を求める。粒子の写真形状が円でない場合は、その粒子面積と同じ面積を有する円の直径を粒子の直径とする。
【0047】
繊維又は粒子の直径を15μm以上とすることにより、吸着材料のカラムへの充填密度を適度に低下させることができ、その結果、血小板や白血球等の各種細胞が繊維又は粒子に吸着され難くなる。また、白血球のなかでも顆粒球や単球は貪食能を有するため、繊維又は粒子の直径を15μm以上とすることにより、繊維又は粒子が異物として認識され難くなり、その結果、白血球が繊維又は粒子に吸着され難くなる。繊維又は粒子の直径が50μm以下である場合、吸着材料のカラムへの充填密度が適度に向上するため、吸着材料の単位体積あたりの血液接触面積が大きくなり、その結果、免疫抑制性タンパク質の吸着量を向上させることができる。以上の理由により、水不溶性担体を構成する繊維又は粒子の直径は、好ましくは15μm以上50μm以下(15~50μm)であり、好ましくは16μm以上40μm以下(16~40μm)であり、好ましくは17μm以上35μm以下(17~35μm)である。いずれの好ましい下限値もいずれの好ましい上限値と組み合わせることができる。
【0048】
「算術平均粗さ」とは、粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さLだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値の平均値を意味し、JIS B 0601-2001の算術平均粗さ(Ra)を意味する。算術平均粗さは、例えば、形状測定レーザーマイクロスコープで測定することができる。測定環境としては、水不溶性担体が水に濡れた状態で行うことが好ましい。また、繊維のように配向性のある場合は、長手方向の値を測定する。
【0049】
水不溶性担体の表面の算術平均粗さが3.0μm以下である場合、貪食能を有する顆粒球や単球が水不溶性担体の凹凸を異物として認識し難くなるため、表面に吸着し難くなる。また、血小板の付着惹起も小さくなる。そのため、免疫抑制性タンパク質の吸着性能を向上することができる。一方で、水不溶性担体の表面の算術平均粗さが0.1μm以上である場合も、免疫抑制性タンパク質の吸着性能を向上することができる。この理由については、免疫抑制性タンパク質が材料表面と接触できる面積が大きくなるためと推測している。以上の理由から、水不溶性担体(又は吸着材料)の表面の算術平均粗さは、好ましくは0.1μm以上3.0μm以下(0.1~3.0μm)であり、好ましくは0.5μm以上2.0μm以下(0.5~2.0μm)である。いずれの好ましい下限値もいずれの好ましい上限値と組み合わせることができる。なお、上記繊維又は上記粒子の好ましい直径と上記水不溶性担体の表面の好ましい算術平均粗さは任意に組み合わせることができる。
【0050】
水不溶性担体の表面の算術平均粗さは、例えば、水不溶性担体を有機溶媒に浸漬させることで制御することができる。水不溶性担体の表面の算術平均粗さを制御する方法としては、例えば、水不溶性担体としてポリ芳香族ビニル化合物とポリプロピレンを混練させて得たポリマーを、ポリ芳香族ビニル化合物を一部可溶させ、かつ、ポリプロピレンを溶かさない溶媒に浸漬する方法が挙げられる。水不溶性担体の表面の算術平均粗さは、ポリマーの種類、ポリマーの分子量、溶媒の種類、浸漬温度、浸漬時間等で制御することができる。さらには、ポリ芳香族ビニルについては、架橋剤を導入することにより、溶媒への可溶性を制御する等の方法も採用することができる。さらには、上記の反応は、窒素含有化合物の導入反応と同時に行うことも可能である。
【0051】
水不溶性担体の形状は、例えば、繊維、粒子又はこれらの高次加工品が挙げられる。中でも、繊維は、高次加工により血液流路を確保しつつ、血液との接触面積を増大させることが可能である点で好ましい。中でも、海島型複合繊維が好ましく、材料としての強度を保つ観点から、島が補強材、海が水不溶性ポリマーと補強材のアロイである海島型複合繊維が好ましく、さらに島がポリプロピレンであり、海がポリスチレンとポリプロピレンのアロイである海島型複合繊維が好ましい。
【0052】
補強材としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。中でも、ポリプロピレンが好ましい。これらのポリマーは、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
また、水不溶性担体の形状が繊維の場合、水不溶性担体は、高次加工品である編み地であることが好ましい。編み地は、その編み目を制御することで血液流路を確保できるため、編み地を用いることにより血液が繊維を通過する際の圧力損失を低減させることができる。また、繊維を合糸させて編み地を形成させる場合、合糸本数は、好ましくは10本以上100本以下であり、好ましくは30本以上80本以下である。合糸本数を100本以下とすることにより、血液が効率よく繊維束深部の繊維に接触し易いため、免疫抑制性タンパク質の吸着量が向上する。また、合糸本数を10本以上とすることにより、編み地の保持性が向上する。いずれの好ましい下限値もいずれの好ましい上限値と任意に組み合わせることができる。
【0054】
本実施形態の吸着材料は、免疫抑制性タンパク質(特にTGF-β又はLAP結合型TGF-β)の吸着用担体に用いることができ、吸着カラムの充填剤として使用することができる。
【0055】
また、本実施形態において、吸着材料1gあたりのTGF-β又はLAP結合型TGF-βの吸着量は7.0ng以上であることが好ましく、10.0ng以上であることが好ましく、11.0ng以上であることが好ましい。吸着材料の吸着量の試験系としては、例えば、TGF-β溶液を用いたバッチ式吸着試験が挙げられ、評価系としては、Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay(以下、ELISA法)による分析が挙げられる。
【0056】
さらに、体外循環への用途を考えたとき、吸着材料の一部が分離して発生する微粒子が少ないことが望ましい。したがって、吸着材料から発生する微粒子数は、可能な限り少ないことが好ましい。吸着材料の物理的強度が保持されると、吸着材料から発生する微粒子数が少なくなる。一方、吸着材料の物理的強度が低下すると、吸着材料から発生する微粒子数が多くなる。吸着材料からの微粒子発生を調査する試験系としては、例えば第十五改正日本薬局方収載(2006年3月31日厚生労働省告示第285号)の一般試験法6.07注射剤の不溶性微粒子試験法が挙げられ、評価系としては、光遮へい型自動微粒子測定装置での微粒子発生数(個)を測定する方法が挙げられる。
【0057】
また、体外循環への用途を考えたとき、吸着材料に吸着される血液抗凝固剤の量は少ないことが望ましい。一般に、体外循環を行う前には、体外循環時に血液中に溶解させた血液抗凝固剤が吸着材料に吸着されてカラム内で血液が凝固するのを防ぐために、血液抗凝固剤を溶解させた生理食塩水を吸着材料が充填された血液浄化カラムに通過させて、吸着材料に予め血液抗凝固剤を吸着させる。吸着材料に予め吸着させる血液抗凝固剤の量が少ない方が、血液抗凝固剤の使用量を低減できるとともに、一旦吸着材料に吸着させた血液抗凝固剤が、血液中に過剰に漏出する可能性を低下させることができる。血液抗凝固剤としては、特に限定されるのもではないが、ヘパリン、クエン酸ナトリウム、メシル酸、フッ化ナトリウム、EDTA-2K等が挙げられる。中でも、ヘパリンが好ましい。吸着材料による血液抗凝固剤の吸着率の評価方法としては、例えば、血液抗凝固剤を溶解させた生理食塩水を用いたバッチ式吸着試験が挙げられる。血液抗凝固剤がヘパリンである場合、分光光度計を用いた比色分析法による分析を好ましく用いることができる。すなわち、ポリプロピレン製容器に、吸着材料と、ヘパリンを溶解させた生理食塩水とを添加し、37℃のインキュベータ内で2時間転倒混和する。混和後、溶液を回収し、測定サンプルとする。また、検量線用サンプルとして、既知濃度となるようにヘパリン生理食塩水を準備する。測定サンプル及び検量線用サンプルについて、210nmにおける吸光度を分光光度計で測定し、両者を比較することにより測定サンプルにおけるヘパリン濃度を算出することができる。吸着材料によるヘパリンの吸着率は、インキュベート前のヘパリン濃度から、インキュベート後のヘパリン濃度を減じたものを、インキュベート前のヘパリン濃度で除した値の百分率として算出することができる。具体的には、吸着材料によるヘパリンの吸着率は下記実施例において記載した方法により求めることができる。
【0058】
血液抗凝固剤の吸着率の観点から、水不溶性担体上のアミノ基の総量は、吸着材料1gあたり、好ましくは1800μmol以下であり、好ましくは1000μmol以下であり、好ましくは700μmol以下であり、好ましくは600μmol以下であり、好ましくは500μmol以下であり、好ましくは400μmol以下であり、好ましくは300μmol以下であり、好ましくは250μmol以下であり、好ましくは150μmol以下である。また、血液抗凝固剤の吸着率の観点から、水不溶性担体上の1級アミノ基の量は、吸着材料1gあたり、好ましくは400μmol以下であり、好ましくは200μmol以下であり、好ましくは100μmol以下であり、好ましくは75μmol以下であり、好ましくは50μmol以下であり、好ましくは30μmol以下である。
【0059】
本実施形態の吸着カラムは、本実施形態の吸着材料を含む。
【0060】
「吸着カラム」とは、少なくとも血液入口部、ケース部、血液出口部を有しており、ケース部には吸着材料が充填されているものを意味する。吸着カラムとしては、例えば、ラジアルフロー型の吸着カラムが挙げられる。上述したように、吸着材料の形状としては、繊維が好ましく、編み地が好ましい。
【0061】
吸着カラムの内部の構成の一例を、
図2に沿って説明する。
図2において、1は容器本体であり、その長手方向の前端と後端とに流入口2と流出口3とを有する。流入口2の内側には、フィルター4と円板状の仕切板5が設けられ、また、流出口3の内側には、フィルター6と円板状の仕切板7が設けられている。2枚の仕切板5、7のうち、前側(流入口側)の仕切板5には中心部に開口5aが設けられ、また、後側の仕切板7の中心部には支持突起7aが設けられている。また、仕切板7の外周には、多数の透孔7bが周方向に間欠的に設けられている。さらに仕切板5の開口5aと仕切板7の支持突起7aとの間に、1本のパイプ8が掛け渡されている。パイプ8は血液を誘導する流路9を内側に形成し、かつ周壁に多数の貫通孔10を有する。また、パイプ8は、その前端で仕切板5の開口5aに連通しており、また、その後端は仕切板7の支持突起7aにより閉止されている。このパイプ8の外周に、吸着材料11が何重にも複数層に巻き付けられている。この吸着カラムを循環法に使用するときは、流入口2と流出口3に、血液プールとの間に循環回路を形成したチューブを連結し、その血液プールから取り出される血液を流入口2に供給し、内部の吸着材料11で対象吸着物質(免疫抑制性タンパク質)を除去して流出口3から流出し、再び血液プールに戻すように循環させる。カラム内では、流入口2からフィルター4を経て流路9に侵入した血液は、流路9を移動しながら貫通孔10から順次吸着材料11に浸入し、半径方向のいずれかへ移動しながら細胞等を吸着する。細胞等が除去された血液は、仕切板7の外周の多数の透孔7bから流出し、フィルター6を経て流出口3から流出する。上記の例では血液が開口5aからパイプ8内の流路9を流動しながら貫通孔10から流出するが、吸着カラムにおける血液の移動方向は、上記とは逆にして、流出口3から血液を供給し、流入口2から流出させるようにしてもよい。
【0062】
免疫抑制性タンパク質の吸着効率を上げるためには、カラム内の血液線速度も重要である。すなわち、血液線速度が速い場合、免疫抑制性タンパク質が吸着材料と十分な相互作用が起き難くなる場合がある。一方、血液線速度が遅い場合、血小板や白血球等の他の血液成分が吸着材料に非特異的に付着し、吸着材料と免疫抑制性タンパク質との相互作用を阻害する場合がある。したがって、吸着カラム入口の流速が50cm3/分のときの吸着材料内の血液線速度の最大値が50cm/分以下であることが好ましく、25cm/分以下であることが好ましい。また、吸着カラム入口の流速が50cm3/分であるときの吸着材料内の血液線速度の最小値は、0.1cm/分以上であることが好ましく、0.3cm/分以上であることが好ましい。ここで、血液線速度は、計算によって求められるものであり、例えば、ラジアルフロー型の吸着カラムの場合、吸着材料内の血液線速度の最大値(Vmax)は、中空円柱形状の中心パイプの側面に開いた開口部の合計面積(Sp)と吸着カラム入口の流速(50cm3/分)から、下記式1により算出される。
【0063】
Vmax(cm/分)= 50(cm3/分)/Sp(cm2)・・・式1
【0064】
また、最小値(Vmin)は中心パイプに巻き付けた吸着材料の最外周面の面積(So)と吸着カラム入口の流速(50cm3/分)から、下記式2により算出される。
【0065】
Vmin(cm/分)= 50(cm3/分)/So(cm2)・・・式2
【0066】
一方、吸着カラムが、粒子や単に繊維を重ねただけの円柱形状の吸着カラムの場合、血液の流れに直交する吸着材料の断面積の最小値と最大値が同一になるため、上記最大値(Vmax)と上記最小値(Vmin)は同じ値となる。
【0067】
さらには、吸着カラムとしては、供給された血液を流出するために設けられた貫通孔を長手方向の側面に備える中心パイプと、上記中心パイプの周りに吸着材料が充填されており、流入する上記血液が、上記中心パイプの中を通るように上記中心パイプの上流端に連通され、上記血液が上記中心パイプを通過せずに吸着材料と接触するのを防ぐように配置されたプレートAと、上記中心パイプの下流端を封鎖し、吸着材料を上記中心パイプの周りの空間に固定するように配置されたプレートBと、を備えるラジアルフロー型の吸着カラムが好ましい。これは、血液が吸着材料を均一に流れるようにするためである。なお、上記中心パイプの貫通孔の開口率が低い場合、この部分で圧力損失が生じやすくなるために、顆粒球、単球及び血小板が活性化し、これらが吸着材料に付着しやすくなる。そのため、免疫抑制性タンパク質の吸着性能が低下する場合がある。また、開口率が高い場合は、パイプの強度が低下すること、血液入口部付近の貫通孔でショートパスを起こしやすくなる等の問題が出てくる可能性がある。したがって、貫通孔の開口率は20~80%であることが好ましく、30~60%であることが好ましい。
【0068】
「ラジアルフロー型」とは、カラム内部の血液の流れ方を言う。カラムの入口と出口に血液を垂直方向に流した場合、カラム内部で、水平方向の血液流れが存在する場合に、ラジアルフロー型と呼ぶ。
【0069】
「貫通孔の開口率」とは、下記式3で求められる値を意味する。
【0070】
貫通孔の開口率(%)=パイプの長手方向の側面に形成された貫通孔の面積の和/パイプの側面の面積×100・・・式3
【0071】
血小板の付着は、上述したとおり、免疫抑制性タンパク質の吸着量が低下する原因になるとともに、カラムの目詰まりも引き起こすため、血小板は吸着材料になるべく付着しないことが望ましい。したがって、吸着材料への血小板の付着率は、80%以下であることが好ましく、70%以下であることが好ましく、65%以下であることが好ましい。血小板の付着率は、例えば、バッチ式試験で、血球計測器を用いて評価することができる。
【0072】
本実施形態の吸着カラムは、血液浄化療法に用いることができる。本実施形態の吸着カラムを血液浄化用カラムとして使用することで、血液中から免疫抑制性タンパク質を効率良く除去することができる。例えば、血液を体外循環させて、本実施形態の吸着カラムに通すことにより、血液中から免疫抑制性タンパク質を効率良く除去することができる。すなわち、本実施形態の吸着カラムは、体外循環用カラムとして用いることができる。より具体的には、本実施形態の吸着カラムは、がん患者の血液中から免疫抑制性タンパク質を選択的に除去する治療に用いることができる。すなわち、本実施形態の吸着カラムは、がん治療用カラムとして用いることができる。
【0073】
本実施形態の吸着カラムは、免疫抑制性タンパク質を吸着することができることから、癌治療に好適に用いられる。また、樹状細胞やナチュラルキラー細胞等を活性化させる細胞輸注治療と併用することも可能である。
【実施例】
【0074】
以下、実施例を挙げて本実施形態を説明するが、本実施形態はこれらの例によって限定されるものではない。
【0075】
1.免疫抑制性タンパク質吸着材料の作製
水不溶性担体として、ポリプロピレン(株式会社プライムポリマー;J105WT)からなる島成分を16島有し、海成分がポリスチレン(重量平均分子量:181,000)90重量%及びポリプロピレン(株式会社プライムポリマー;J105WT)10重量%からなり、島と海の比率(重量比)が50:50である、海島型複合繊維(直径20μm)を紡糸した。得られた繊維42本を合糸して編み地を形成した(以下、原編み地1)。なお、繊維表面の粗さは、島数や海島比率、ポリスチレンやポリプロピレンの分子量等によって影響を受ける。
【0076】
ニトロベンゼン20mLと硫酸13.3mLの混合溶液にパラホルムアルデヒド(以下、PFA)2gを10℃で溶解させた(以下、PFA溶液)。さらに、ニトロベンゼン259.3mLと硫酸169.3mLの混合溶液に46.9gのN-メチロール-α-クロルアセトアミドを10℃で溶解させた(以下、NMCA溶液)。10gの原編み地1をPFA溶液に浸漬させた後、速やかにNMCA溶液を添加し、撹拌した。撹拌下で2時間浸漬させた後、編み地を取りだし、過剰のニトロベンゼンで洗浄後、メタノールで置換・洗浄し、さらに水洗いし、α-クロルアセトアミドメチル化した編み地(以下、中間体1)を得た。PFA溶液の作製からメタノールを用いた編み地の洗浄までの一連の操作は15℃以下で実施した。
【0077】
(1)免疫抑制性タンパク質吸着材料1-1の作製
ジエチレントリアミン(46μL)とトリエチルアミン(28.6mL)をジメチルスルホキシド(398mL)に溶かした溶液に、中間体1(10g)を浸し、40℃にて3時間撹拌した。その後、ジエチレントリアミンで処理した中間体1を水洗いし、乾燥させ、免疫抑制性タンパク質吸着材料1-1を得た。
【0078】
(2)免疫抑制性タンパク質吸着材料1-2の作製
免疫抑制性タンパク質吸着材料1-1と同様にして、免疫抑制性タンパク質吸着材料1-2を得た。
【0079】
(3)免疫抑制性タンパク質吸着材料2-1の作製
ジエチレントリアミンの量を232μLとしたこと以外は、免疫抑制性タンパク質吸着材料1-1と同様にして、免疫抑制性タンパク質吸着材料2-1を得た。
【0080】
(4)免疫抑制性タンパク質吸着材料2-2の作製
免疫抑制性タンパク質吸着材料2-1と同様にして、免疫抑制性タンパク質吸着材料2-2を得た。
【0081】
(5)免疫抑制性タンパク質吸着材料3の作製
ジエチレントリアミンの量を464μLとしたこと以外は、免疫抑制性タンパク質吸着材料1-1と同様にして、免疫抑制性タンパク質吸着材料3を得た。
【0082】
(6)免疫抑制性タンパク質吸着材料4-1の作製
ジエチレントリアミンの量を929μLとしたこと以外は、免疫抑制性タンパク質吸着材料1-1と同様にして、免疫抑制性タンパク質吸着材料4-1を得た。
【0083】
(7)免疫抑制性タンパク質吸着材料4-2の作製
免疫抑制性タンパク質吸着材料4-1と同様にして、免疫抑制性タンパク質吸着材料4-2を得た。
【0084】
(8)免疫抑制性タンパク質吸着材料5の作製
ジエチレントリアミン(46μL)の代わりにエチレンジアミン(929μL)を用いたこと以外は、免疫抑制性タンパク質吸着材料1-1と同様にして、免疫抑制性タンパク質吸着材料5を得た。
【0085】
(9)免疫抑制性タンパク質吸着材料6の作製
ジエチレントリアミン(46μL)の代わりにテトラエチレンペンタアミン(1863μL)を用いたこと以外は、免疫抑制性タンパク質吸着材料1-1と同様にして、免疫抑制性タンパク質吸着材料6を得た。
【0086】
(10)免疫抑制性タンパク質吸着材料7-1の作製
ジエチレントリアミンの量を1863μLとしたこと以外は、免疫抑制性タンパク質吸着材料1-1と同様にして、免疫抑制性タンパク質吸着材料7-1を得た。
【0087】
(11)免疫抑制性タンパク質吸着材料7-2の作製
免疫抑制性タンパク質吸着材料7-1と同様にして、免疫抑制性タンパク質吸着材料7-2を得た。
【0088】
(12)免疫抑制性タンパク質吸着材料8-1の作製
ジエチレントリアミンの量を4687μLとしたこと以外は、免疫抑制性タンパク質吸着材料1-1と同様にして、免疫抑制性タンパク質吸着材料8-1を得た。
【0089】
(13)免疫抑制性タンパク質吸着材料8-2の作製
免疫抑制性タンパク質吸着材料8-1と同様にして、免疫抑制性タンパク質吸着材料8-2を得た。
【0090】
(14)免疫抑制性タンパク質吸着材料9の作製
ジエチレントリアミンの量を9479μLとしたこと以外は、免疫抑制性タンパク質吸着材料1-1と同様にして、免疫抑制性タンパク質吸着材料9を得た。
【0091】
(15)免疫抑制性タンパク質吸着材料10の作製
ジエチレントリアミン(46μL)の代わりにテトラエチレンペンタアミン(4687μL)を用いたこと以外は、免疫抑制性タンパク質吸着材料1-1と同様にして、免疫抑制性タンパク質吸着材料10を得た。
【0092】
(16)免疫抑制性タンパク質吸着材料11の作製
ジエチレントリアミンの量を19388μLとしたこと以外は、免疫抑制性タンパク質吸着材料1-1と同様にして、免疫抑制性タンパク質吸着材料11を得た。
【0093】
(17)免疫抑制性タンパク質吸着材料12の作製
ジエチレントリアミンの量を32964μLとしたこと以外は、免疫抑制性タンパク質吸着材料1-1と同様にして、免疫抑制性タンパク質吸着材料12を得た。
【0094】
(18)免疫抑制性タンパク質吸着材料13の作製
数平均分子量が約600のポリエチレンイミン(8195μL)とトリエチルアミン(28.6mL)をジメチルスルホキシド(398mL)に溶かした溶液に10gの中間体1を浸し、40℃にて3時間撹拌した。その後、ポリエチレンイミンで処理した中間体1を水洗いし、乾燥し、免疫抑制性タンパク質吸着材料13を得た。
【0095】
(19)免疫抑制性タンパク質吸着材料14の作製
数平均分子量が約750000のポリエチレンイミン50重量%水溶液(16390μL)とトリエチルアミン(28.6mL)をジメチルスルホキシド(398mL)に溶かした溶液に、10gの中間体1を浸し、40℃にて3時間撹拌した。その後、ポリエチレンイミンで処理した中間体1を水洗いし、乾燥し、免疫抑制性タンパク質吸着材料14を得た。
【0096】
(20)免疫抑制性タンパク質吸着材料15の作製
数平均分子量が約65000のポリアリルアミン20重量%水溶液(2876μL)とトリエチルアミン(28.6mL)をジメチルスルホキシド(398mL)に溶かした溶液に10gの中間体1を浸し、40℃にて3時間撹拌した。その後、ポリアリルアミンで処理した中間体1を水洗いし、乾燥し、免疫抑制性タンパク質吸着材料15を得た。
【0097】
2.吸着材料が有するアミノ基の総量の測定
作製した吸着材料等について、水不溶性担体上のアミノ基の総量は、酸塩基逆滴定により測定した。ポリプロピレン製容器に、吸着材料(1.0g)及び6M水酸化ナトリウム水溶液(50mL)を添加し、室温で1時間撹拌した。次に、イオン交換水(50mL)を含む別のポリプロピレン製容器に、上記吸着材料を添加し、室温で30分間撹拌した(洗浄)。吸着材料を添加したイオン交換水のpHが7になるまで洗浄を繰り返すことで、脱塩処理された吸着材料を得た。脱塩後の吸着材料を25℃の減圧下で48時間静置して乾燥した。乾燥後の吸着材料の重量を測定し、新たなポリプロピレン製容器に該吸着材料と0.1Mの塩酸を40mL加え、室温で30分間撹拌した。撹拌後、溶液のみを5mL抜き取って新たなポリプロピレン製容器に移した。次に、得られた溶液に対して、0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液を0.1mL滴下した。滴下後10分間撹拌し、溶液のpHを測定した。水酸化ナトリウムの滴下、10分間の撹拌及びpH測定を同様に100回繰り返した。溶液のpHが8.5を超えた際の水酸化ナトリウム水溶液の滴下量を滴定量とした。吸着材料1gあたりの適定量と以下の式4を用いて、吸着材料1gあたりのアミノ基の総量を算出した。
【0098】
吸着材料1gあたりのアミノ基の総量(μmol)={添加した0.1M塩酸の液量(40mL)/抜き取った塩酸の液量(5mL)}×滴定量(mL)÷乾燥後の吸着材料の重量(g)×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.1M)・・・式4
【0099】
3.吸着材料が有する1級アミノ基の量の測定
水不溶性担体上の1級アミノ基の量は、1級アミノ基と特異的に反応して蛍光物質を生じるo-フタルアルデヒド(以下、OPA)を利用して測定した。まず、吸着材料を直径6mmの円形になるようにポンチで任意の枚数打ち抜き、25℃の減圧下で48時間静置して乾燥させた。次に、乾燥後の吸着材料の重量を測定し、ポリプロピレン製容器中に、該吸着材料を配置した。また、80体積%メタノール及び20体積%炭酸塩pH標準液(pH 10.01)中に、OPA及びDTTをそれぞれ1.5mM及び5mMの濃度となるように溶解させ、混合溶液を調製した。該混合溶液を、上記吸着材料が配置されたポリプロピレン製容器中に添加し、室温にて3時間撹拌した。撹拌後、100μLの溶液を回収し、測定サンプルとした。検量線用サンプルとして、OPA(濃度がそれぞれ0mM、0.375mM、0.75mM、1.5mMとなるように調整した)、5mMのDTT、80体積%メタノール及び20体積%炭酸塩pH標準液(pH 10.01)を含む混合溶液を準備した。測定サンプル100μL及び検量線用サンプル100μLを、それぞれ、6.1mMのn-プロピルアミン及び5mMのDTTを含む炭酸塩pH標準液(pH 10.01)1mLと混合し、希釈後の測定サンプル及び希釈後の検量線用サンプルを得た。90秒後、希釈後の測定サンプル及び希釈後の検量線用サンプルについて、340nmにおける吸光度を分光光度計で測定した。希釈後の測定サンプルのOPA濃度を検量線から求め、希釈倍率を乗じて希釈前の測定サンプルのOPA濃度(以下、サンプルのOPA濃度)に換算した。
【0100】
以下の式5を用いて、吸着材料1gあたりの1級アミノ基の量を算出した。
【0101】
吸着材料1gあたりの1級アミノ基の量(μmol)={添加したOPA濃度(1.5mM)-サンプルのOPA濃度}×吸着材料と撹拌反応させる混合溶液の量(mL)/乾燥後の吸着材料の重量(g)・・・式5
【0102】
4.LAP結合型TGF-β1吸着性能試験
免疫抑制性タンパク質吸着材料における吸着反応の前後の溶液中のLAP結合型TGF-β1濃度をELISA法で定量し、以下の式6に従って材料1gあたりのLAP結合型TGF-β1吸着量を算出した。すなわち、直径6mmの円板状に切り抜いた免疫抑制性タンパク質吸着材料4枚を、容量2mLのポリプロピレン製の容器に入れた。この容器に、ウシ血清アルブミンを3.5重量%と、リコンビナントヒトLAP結合型TGF-β1(R&Dシステムズ社)の濃度が25ng/mLになるように調整したリン酸緩衝生理食塩水を1.1mL添加し、37℃のインキュベータ内で2時間転倒混和した。吸着繊維担体を容器から取り除いた後、Quantikine Human LAP(TGF-β1) ELISA Kit(R&Dシステムズ社)を用いて溶液中のLAP結合型TGF-β1の残濃度を測定した。また、直径6mmの円板状に切り抜いた免疫抑制性タンパク質吸着材料4枚を、25℃の減圧下で48時間静置して乾燥させた。乾燥後の水免疫抑制性タンパク質吸着材料4枚の重量を測定した。以下の式6にしたがってLAP結合型TGF-β1吸着量を算出した。
【0103】
吸着材料1gあたりのLAP結合型TGF-β1吸着量={(インキュベート前のLAP結合型TGF-β1濃度)―(インキュベート後のLAP結合型TGF-β1濃度)}/(インキュベート前のLAP結合型TGF-β1濃度)×リン酸緩衝生理食塩水量1.1mL÷(直径6mmの円板状に切り抜いた吸着材料4枚の乾燥重量)・・・式6
【0104】
5.タンパク質吸着材料を吸着担体として備えたカラムの作製
ポリプロピレン-ポリエチレン共重合体製ラジアルフロー型カラム(直径:25mm×長さ:133mm、吸着繊維充填部体積:14.7cm3)1本当たりに原編み地1又は免疫抑制性タンパク質吸着材料1-1、2-1、3、4-1、5、6、7-1、8-1、9~15を各々4g充填した。その後、カラム内を生理食塩液で満たした後、高圧蒸気滅菌を行い、それぞれ原編み地1を吸着担体として備えたカラム(以下、「原編み地1カラム」)、及び免疫抑制性タンパク質吸着材料1-1、2-1、3、4-1、5、6、7-1、8-1、9~15を吸着担体として備えたカラム(以下、「カラム1~15」)を得た。
【0105】
6.不溶性微粒子数測定
第十五改正日本薬局方収載(2006年3月31日厚生労働省告示第285号)の一般試験法6.07注射剤の不溶性微粒子試験法(第1法:光遮蔽粒子計数法;pp.1-2)を参考にして実施した。包装貨物及び容器の振動試験方法(JIS Z 0232)を参考にし、カラムを水平および垂直方向に各1時間振動した。振動後のカラムを市販の人工腎臓用血液回路と接続し、生理食塩液2Lを用いて毎分100mLの流速にて洗浄した。なお、使用する生理食塩液はポアサイズ0.3μmのフィルターで濾過し、10μm以上の微粒子が0.5個/mL以下かつ25μm以上の微粒子が0.2個/mL以下であることを確認した。濾過した生理食塩液をポンプを用いて毎分50mLの流速で1時間本品に送入し、その流出液を20分毎に1Lずつ、計3回採取(計3L)した。得られた流出液を光遮へい型自動微粒子測定装置にてそれぞれ300mLずつ供給し、微粒子を測定し、1時間送液した時の微粒子数(個/mL)を算出した。
【0106】
(実施例1~10)
免疫抑制性タンパク質吸着材料1-1、2-1、3、4-1、5、6、7-1、8-1、9、10について、アミノ基の総量の測定、1級アミノ基の量の測定、及びLAP結合型TGF-β1吸着性能試験を行った。また、カラム1~10を用いて、不溶性微粒子数を測定した。結果を表1に示す。
【0107】
免疫抑制性タンパク質吸着材料1-1、2-1、3、4-1、5、6、7-1、8-1、9、10は、不溶性微粒子の発生量が少なく、かつLAP結合型TGF-β1を効率的に吸着できることが確認された。
【0108】
(比較例1)
原編み地1カラム(原編み地1)について、アミノ基の総量の測定、1級アミノ基の量の測定、及びLAP結合型TGF-β1吸着性能試験を行った。また、原編み地1カラムを用いて、不溶性微粒子数を測定した。結果を表2に示す。
【0109】
原編み地1カラム(原編み地1)では、不溶性微粒子の発生量は少なかったが、LAP結合型TGF-β1を効率的に吸着できなかった。
【0110】
(比較例2~6)
免疫抑制性タンパク質吸着材料11~15について、アミノ基の総量の測定、1級アミノ基の量の測定及びLAP結合型TGF-β1吸着性能試験を行った。また、カラム11~15を用いて、不溶性微粒子数を測定した。結果を表2に示す。
【0111】
免疫抑制性タンパク質吸着材料11(比較例2)では、不溶性微粒子の発生量は少ないが、LAP結合型TGF-β1を効率的に吸着できなかった。
【0112】
免疫抑制性タンパク質吸着材料12(比較例3)では、不溶性微粒子が多く発生し、LAP結合型TGF-β1も効率的に吸着できなかった。
【0113】
免疫抑制性タンパク質吸着材料13~15(比較例4~6)では、LAP結合型TGF-β1は効率的に吸着できたものの、不溶性微粒子が多く発生した。
【0114】
後記表中以下の略号を用いる。
EDA:エチレンジアミン
DETA:ジエチレントリアミン
TEPA:テトラエチレンペンタアミン
PEI600:数平均分子量が約600のポリエチレンイミン
PEI750K:数平均分子量が約750000のポリエチレンイミン
PAA:数平均分子量が約65000のポリアリルアミン
【0115】
【0116】
【0117】
7.表面の算術平均粗さの測定
形状測定レーザー顕微鏡(キーエンス社製;カラー3Dレーザー顕微鏡 VK-9700)を用いて、100倍の倍率で、乾燥させないように水に濡れた状態で、吸着材料の表面を観察し、表面の算術平均粗さを測定した(JIS B 0601-2001準拠)。基準長さLは50μmとし、位置が異なる10箇所で測定した値の平均値を表面の算術平均粗さの値とした。
【0118】
8.血小板の付着試験
ヒト血液を用いたバッチ式試験を行い、吸着材料への血小板の付着性を、血球計測機により分析・算出した。すなわち、直径10mmの円板状に切り抜いた吸着材料5枚を、ポリプロピレン製の容器に入れた。この容器に、ヒト健常者から採血した血液を3.07mL添加し、37℃のインキュベータ内で1時間転倒混和した。吸着材料を容器から取り除いた後、残りの血液中に含まれる血小板数を血球計測器により算出した(以下、免疫抑制性タンパク質吸着材料を添加した血液の血小板数)。吸着材料を添加していない血液で、同様の操作を行った(以下、免疫抑制性タンパク質吸着材料を添加していない血液の血小板数)。以上の値を用いて、血小板の付着率を下記式7により算出した。
【0119】
血小板の付着率(%)=(免疫抑制性タンパク質吸着材料を添加していない血液の血小板数-免疫抑制性タンパク質吸着材料を添加した血液の血小板数)/免疫抑制性タンパク質吸着材料を添加していない血液の血小板数×100・・・式7
【0120】
(実施例11)
免疫抑制性タンパク質吸着材料4-1について、表面の算術平均粗さの測定及び血小板の付着試験を行った。結果を表3に示す。免疫抑制性タンパク質吸着材料4-1において、血小板の付着率は低かった。
【0121】
【0122】
9.血液抗凝固剤吸着試験
免疫抑制性タンパク質吸着材料における吸着反応の前後の溶液中のヘパリン濃度を、分光光度計を用いた比色分析法で定量し、以下の式8に従って吸着材料によるヘパリン吸着率を算出した。すなわち、直径10mmの円板状に切り抜いた免疫抑制性タンパク質吸着材料4枚を、容量2mLのポリプロピレン製の容器に入れた。また、免疫抑制性タンパク質吸着材料を入れていない容量2mLのポリプロピレン製の容器を準備した。吸着材料を入れた容器と、吸着材料を入れていない容器のそれぞれに、ヘパリンナトリウム(エイワイファーマ社)の濃度が50単位/mLになるように調製した生理食塩水を1.4mL添加し、37℃のインキュベータ内で2時間転倒混和した。転倒混和後、1mLの溶液を回収し、測定サンプル(それぞれ、吸着材料を入れたサンプル、吸着材料を入れていないサンプル)とした。検量線用サンプルとして、濃度がそれぞれ0単位/mL、0.3125単位/mL、0.625単位/mL、1.25単位/mL、2.5単位/mLとなるように調製した生理食塩水を準備した。それぞれの測定サンプル50μLを、生理食塩水0.95mLと混合し、希釈後の測定サンプルをそれぞれ得た。希釈後のそれぞれの測定サンプル及び検量線用サンプルについて、210nmにおける吸光度を分光光度計で測定した。希釈後の測定サンプルのヘパリン濃度を検量線から求め、希釈倍率を乗じて希釈前の測定サンプルのヘパリン濃度(以下、それぞれ、吸着材料を入れたサンプルのヘパリン濃度、吸着材料を入れていないサンプルのヘパリン濃度)に換算した。以下の式8に従ってヘパリン吸着率を算出した。
【0123】
吸着材料によるヘパリン吸着率(%)={(吸着材料を入れていないサンプルのヘパリン濃度)-(吸着材料を入れたサンプルのヘパリン濃度)}/(吸着材料を入れていないサンプルのヘパリン濃度)×100・・・式8
【0124】
(実施例12~16)
免疫抑制性タンパク質吸着材料1-2、2-2、4-2、7-2、8-2について、血液抗凝固剤吸着試験を行った。結果を表4に示す。
【0125】
免疫抑制性タンパク質吸着材料1-2、2-2、4-2、7-2、8-2(実施例12~16)では、アミノ基の総量が少ない方が、ヘパリンの吸着率は低かった。
【0126】
【0127】
実施例13、15及び16については、1級アミノ基の量は未測定であるが、これらの実施例で用いた吸着材料2-2、7-2及び8-2は、上記吸着材料2-1、7-1及び8-1と同じプロセスにより作製されているため、実施例13、15及び16における1級アミノ基の量はいずれも450μmol以下であることが推測される。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本実施形態の吸着材料及び吸着カラムは、免疫抑制性タンパク質を効率良く吸着することができる。そのため、癌治療への適用が期待される。また、本実施形態の吸着材料及び吸着カラムは、樹状細胞やナチュラルキラー細胞等を活性化させる細胞輸注治療と併用することも可能である。
【符号の説明】
【0129】
1 容器本体
2 流入口
3 流出口
4 フィルター
5 仕切板
5a 仕切板の開口
6 フィルター
7 仕切板
7a 仕切板の支持突起
7b 仕切板の透孔
8 パイプ
9 流路
10 貫通孔
11 吸着材料
Q 血液流れ