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特許7193085免疫抑制性白血球吸着材料及び吸着カラム
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  • 特許-免疫抑制性白血球吸着材料及び吸着カラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】免疫抑制性白血球吸着材料及び吸着カラム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20221213BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20221213BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20221213BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
A61M1/36 165
B01J20/22 C
B01J20/28 Z
B01D15/00 101Z
B01D15/00 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018554423
(86)(22)【出願日】2018-09-07
(86)【国際出願番号】 JP2018033129
(87)【国際公開番号】W WO2019049962
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2017173122
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、医療分野研究成果展開事業 戦略的イノベーション創出推進プログラム「LAP陽性制御性T細胞およびTGF-βに対する選択除去材の創製およびがんの革新的治療法への応用」に係る委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504177284
【氏名又は名称】国立大学法人滋賀医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 良之
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 淳一
(72)【発明者】
【氏名】荒金 徹
(72)【発明者】
【氏名】松長 遼
(72)【発明者】
【氏名】關谷 由美子
(72)【発明者】
【氏名】上田 祐二
(72)【発明者】
【氏名】寺本 和雄
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 一誠
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/133399(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/057185(WO,A1)
【文献】特開2004-248950(JP,A)
【文献】特開2006-288571(JP,A)
【文献】特開2012-005827(JP,A)
【文献】特開平07-204265(JP,A)
【文献】特開昭60-252423(JP,A)
【文献】特開昭56-130160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
B01J 20/22 -20/28
B01D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(1)で表されるポリアミンから選択される1種以上の窒素含有化合物が結合した水不溶性担体を含み、
前記水不溶性担体の形状が繊維又は粒子であり、前記繊維又は前記粒子の直径が15~50μmであり、前記水不溶性担体の表面の算術平均粗さが0.1~3.0μmである、免疫抑制性白血球の吸着材料
N-X-NR ・・・式(1)
[式(1)中、Xは、2~20個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基、又は、3~20個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基において1~5個の炭素原子を窒素原子で置き換えたヘテロ原子含有炭素鎖であり、該窒素原子に結合する水素原子は、アミノ基を有していてもよいアルキル基で置換されていてもよく、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基である。]
【請求項2】
前記窒素含有化合物は、リンカーを介して前記水不溶性担体に結合している、請求項1に記載の吸着材料。
【請求項3】
前記水不溶性担体の形状は、繊維である、請求項1又は2に記載の吸着材料。
【請求項4】
前記免疫抑制性白血球は、LAP陽性リンパ球又はLAP陽性単球である、請求項1~のいずれか一項記載の吸着材料。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項記載の吸着材料を備える、吸着カラム。
【請求項6】
血液浄化療法に用いるための、請求項に記載の吸着カラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、免疫抑制白血球の吸着材料及びそれを含む吸着カラムに関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、免疫と密接に関係していることが明らかとなってきており、近年、多くの進行癌で免疫抑制性の血液成分が上昇していることが報告されてきている。
【0003】
免疫機能に深く関与している白血球は、血液成分の一つであり、リンパ球、顆粒球、単球に分類される。それぞれの白血球は、さらに細分化され、例えば、リンパ球は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞等に分類される。
【0004】
近年、癌の進展に関与する分子の一つとして、LAP陽性のT細胞等の免疫抑制性白血球が亢進することで、癌細胞は免疫系からの攻撃を免れ、癌の進行につながることが明らかになりつつある。なお、LAPは、Latency Associated Peptideを意味し、分子量約7.5万のタンパク質である。LAP陽性白血球は、LAPと結合した白血球であり、免疫抑制性白血球として知られている。
【0005】
癌を治療する方法としては、チェックポイント抗体のように癌細胞から発信する免疫抑制のシグナルをブロックする薬が開発されてきているが、薬の副作用のために、自己免疫疾患に罹患する例も認められている。
【0006】
また、副作用を低減しつつ免疫力を高めるために、患者自身の白血球で癌を排除しようとする細胞療法も行われている。代表的なものとして、患者の樹状細胞を体外で癌抗原刺激した後、患者に戻し、癌特異的キラー細胞(cytotoxic T lymphocyte)を誘導して治療する樹状細胞輸注療法がある。しかしながら、この療法は治療効果として十分に満足できるまでに至っていないのが現状であり、その理由の一つとしては、免疫抑制系が亢進しているためと推測される。
【0007】
一方で、免疫抑制性白血球を除去できれば、癌細胞が免疫系から免れるシグナルが解除されて患者の免疫力が高まり、腫瘍の退縮や癌進行の抑制を期待できる。
【0008】
特許文献1は、白血球を除去する材料として、不織布の繊維径や嵩密度等に特徴を有するフィルターを開示しており、具体的には、繊維の直径が3μm未満で、嵩密度が0.15g/cmを超え0.50g/cm以下の不織布からなる白血球除去フィルターを開示している。
【0009】
特許文献2は、繊維径や表面積等に特徴を有する吸着材料を開示しており、具体的には、繊維径が0.5~10μmの繊維を含み、かつ表面積が0.5m以上10m未満である吸着体を充填してなる細胞吸着カラムであって、吸着体充填容積が100ml以下であることを特徴とする細胞吸着カラムを開示している。
【0010】
特許文献3は、アミノ基のリガンド構造及びアミノ基量等に特徴を有する吸着材料を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開昭60-193468号公報
【文献】WO2008/038785号
【文献】WO2012/133399号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1のフィルターは、ろ過により白血球を除去するため、全ての種類の白血球が除去されてしまい、免疫抑制性白血球を選択的に除去することが困難である。また、特許文献2の吸着材料は、顆粒球や単球の貪食能を利用して細胞を吸着するため、LAP陽性T細胞等のLAP陽性白血球を選択的に除去するのが困難である可能性がある。また、特許文献3の吸着材料は、免疫抑制性白血球の選択性に関してはまだ改善が望まれている。
【0013】
以上のような理由により、免疫抑制性白血球(特に、LAP陽性白血球)を選択的に吸着除去可能な技術の開発が望まれている。
【0014】
そこで、本開示は、免疫抑制性白血球を選択的に吸着する吸着材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、繊維状又は粒子状の水不溶性担体にポリアミン残基又は脂肪族アミン残基を含有させ、さらにその繊維若しくは粒子の直径及び算術平均粗さを所定の範囲とすることにより、意外にも免疫抑制性白血球(特に、LAP陽性白血球)を選択的に吸着できることを見出し、本開示に至った。
【0016】
本実施形態の態様例を以下に記載する。
[1]以下の式(1)で表されるポリアミン、以下の式(2)で表される第1級脂肪族アミン及び式(3)で表される第2級脂肪族アミンから選択される1種以上の窒素含有化合物が結合した水不溶性担体を含み、
上記水不溶性担体の形状が繊維又は粒子であり、上記繊維又は上記粒子の直径が15~50μmであり、上記水不溶性担体の表面の算術平均粗さが0.1~3.0μmである、免疫抑制性白血球の吸着材料。
N-X-NR ・・・式(1)
[式(1)中、Xは、2~20個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基、又は、3~20個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基において1~5個の炭素原子を窒素原子で置き換えたヘテロ原子含有炭素鎖であり、該窒素原子に結合する水素原子は、アミノ基を有していてもよいアルキル基で置換されていてもよく、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基である。]
NH ・・・式(2)
[式(2)中、Rは、1~12個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基である。]
NHR ・・・式(3)
[式(3)中、R及びRは、それぞれ独立して、1~12個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基である。]
[2] 上記窒素含有化合物は、上記式(1)で表されるポリアミンを含む、[1]に記載の吸着材料。
[3] 上記窒素含有化合物は、リンカーを介して上記水不溶性担体に結合している、[1]又は[2]に記載の吸着材料。
[4] 上記水不溶性担体の形状は、繊維である、[1]~[3]のいずれかに記載の吸着材料。
[5] 上記免疫抑制性白血球は、LAP陽性リンパ球又はLAP陽性単球である、[1]~[4]のいずれかに記載の吸着材料。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の吸着材料を備える、吸着カラム。
[7] 血液浄化療法に用いるための、[6]に記載の吸着カラム。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、免疫抑制性白血球(特にLAP陽性リンパ球及びLAP陽性単球)を選択的に吸着除去できる吸着材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ラジアルフロー型の吸着カラムの一例の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施形態について更に詳細に説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。したがって、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」等)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語及び科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0020】
本実施形態に係る吸着材料は、免疫抑制性白血球を吸着するための吸着材料に関する。また、本実施形態に係る吸着材料は、式(1)で表されるポリアミン、式(2)で表される第1級脂肪族アミン及び式(3)で表される第2級脂肪族アミンから選択される1種以上の窒素含有化合物が結合した水不溶性担体を含む。また、本実施形態に係る吸着材料において、水不溶性担体の形状は繊維又は粒子であり、該繊維又は該粒子の直径は15~50μmであり、前記水不溶性担体の表面の算術平均粗さは0.1~3.0μmである。
【0021】
本実施形態の吸着材料は、免疫抑制性白血球を選択的に吸着することができる。また、本実施形態の吸着材料は、好ましくは、免疫抑制性白血球に対して優れた吸着率を有する。
【0022】
「窒素含有化合物残基」とは、本明細書で使用される場合、窒素含有化合物を水不溶性担体に直接的又は間接的に結合させて得られる基を意味する。同様に、「ポリアミン残基」とは、式(1)で表されるポリアミンを水不溶性担体に直接的又は間接的に結合させて得られる基を意味し、「脂肪族アミン残基」とは、式(2)又は式(3)で表される脂肪族アミン(脂肪族アミンとも称す)を水不溶性担体に直接的又は間接的に結合させて得られる基を意味する。
【0023】
窒素含有化合物は、式(1)で表されるポリアミン、式(2)で表される第1級脂肪族アミン及び式(3)で表される第2級脂肪族アミンから選択される。窒素含有化合物は、1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
一実施形態において、窒素含有化合物は、式(1)で表されるポリアミンである。
【0025】
N-X-NR ・・・式(1)
[式(1)中、Xは、2~20個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基、又は、3~20個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基において1~5個の炭素原子を窒素原子で置き換えたヘテロ原子含有炭素鎖であり、該窒素原子に結合する水素原子は、アミノ基を有していてもよいアルキル基で置換されていてもよく、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基である。]。
【0026】
式(1)において、Xは、例えば、2~20個(例えば、16個以下、14個以下、12個以下、10個以下、8個以下、6個以下、4個以下)の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基である。式(1)において、Xは、例えば、3~20個(例えば、16個以下、14個以下、12個以下、10個以下)の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基において1~5個(例えば、1~3個)の炭素原子を窒素原子で置き換えたヘテロ原子含有炭素鎖であり、該窒素原子に結合する水素原子は、アミノ基を有していてもよいアルキル基(例えば1~6個(好ましくは1~4個)の炭素原子を有する。)で置換されていてもよい。R~Rは、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基である。アルキル基は、例えば1~6個(好ましくは1~4個)の炭素原子を有する。脂肪族炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
【0027】
式(1)で表されるポリアミンは、下記式(1-1)~(1-6)のいずれかで表されるポリアミンであることが好ましい。
H2N-(CH2)p1-NH2 ・・・式(1-1)
[式(1-1)中、p1は、2~12(好ましくは2~6、2~5又は2~4)の整数であり、両末端の1級アミノ基の水素原子のうち少なくとも1つはアルキル基で置換されていてもよい。]、
H2N-(CH2)p1-NH-(CH2)p2-NH2 ・・・式(1-2)
[式(1-2)中、p1及びp2は、それぞれ独立に、2~5(好ましくは2~4、2~3、2)の整数であり、2級アミノ基の水素原子は、アミノ基を有していてもよいアルキル基で置換されていてもよく、両末端の1級アミノ基の水素原子のうち少なくとも1つはアルキル基で置換されていてもよい。]、
H2N-(CH2)p1-NH-(CH2)p2-NH-(CH2)p3-NH2 ・・・式(1-3)
[式(1-3)中、p1、p2及びp3は、それぞれ独立に、2~5(好ましくは2~4、2~3、2)の整数であり、2級アミノ基の水素原子は、それぞれ独立に、アミノ基を有していてもよいアルキル基で置換されていてもよく、両末端の1級アミノ基の水素原子のうち少なくとも1つはアルキル基で置換されていてもよい。]、
H2N-(CH2)p1-NH-(CH2)p2-NH-(CH2)p3-NH-(CH2)p4-NH2 ・・・式(1-4)
[式(1-4)中、p1、p2、p3及びp4は、それぞれ独立に、2~5(好ましくは2~4、2~3、2)の整数であり、p1、p2、p3及びp4の和は17以下であり、2級アミノ基の水素原子は、それぞれ独立に、アミノ基を有していてもよいアルキル基で置換されていてもよく、両末端の1級アミノ基の水素原子のうち少なくとも1つはアルキル基で置換されていてもよい。]、
H2N-(CH2)p1-NH-(CH2)p2-NH-(CH2)p3-NH-(CH2)p4-NH-(CH2)p5-NH2 ・・・式(1-5)
[式(1-5)中、p1、p2、p3、p4及びp5は、それぞれ独立に、2~5(好ましくは2~4、2~3、2)の整数であり、p1、p2、p3、p4及びp5の和は16以下であり、2級アミノ基の水素原子は、それぞれ独立に、アミノ基を有していてもよいアルキル基で置換されていてもよく、両末端の1級アミノ基の水素原子のうち少なくとも1つはアルキル基で置換されていてもよい。]、
H2N-(CH2)p1-NH-(CH2)p2-NH-(CH2)p3-NH-(CH2)p4-NH-(CH2)p5-NH-(CH2)p6-NH2 ・・・式(1-6)
[式(1-6)中、p1、p2、p3、p4、p5及びp6は、それぞれ独立に、2~5(好ましくは2~4、2~3、2)の整数であり、p1、p2、p3、p4、p5及びp6の和は15以下であり、2級アミノ基の水素原子は、それぞれ独立に、アミノ基を有していてもよいアルキル基で置換されていてもよく、両末端の1級アミノ基の水素原子のうち少なくとも1つはアルキル基で置換されていてもよい。]。
【0028】
式(1-2)~(1-6)において、2級アミノ基の窒素原子に結合し得る「アミノ基を有していてもよいアルキル基」の炭素原子数は、例えば1~6個であり、好ましくは1~5個であり、好ましくは1~4個であり、好ましくは1~3個である。式(1-1)~(1-6)において、両末端の1級アミノ基の窒素原子に結合し得る「アルキル基」の炭素原子数は、例えば1~6個であり、好ましくは1~5個であり、好ましくは1~4個であり、好ましくは1~3個である。これらの「アルキル基」は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
【0029】
式(1)で表されるポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、N-エチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、N-エチルジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミンが挙げられる。また、その他にも、以下のポリアミンが挙げられる。3,3'-ジアミノジプロピルアミン;1,3-ジアミノプロパン;ノルスペルミジン;ホモスペルミジン;アミノプロピルカダベリン;アミノブチルカダベリン;ノルスペルミン;テルモスペルミン;アミノプロピルホモスペルミジン;カナバルミン;ホモスペルミン;アミノペンチルノルスペルミジン;N,N-ビス(アミノプロピル)カダベリン;カルドペンタミン;ホモカルドペンタミン;テルモペンタミン;カルドヘキサミン;ホモカルドヘキサミン;テルモヘキサミン;ホモテルモヘキサミン;N4-アミノプロピルノルスペルミジン;N4-アミノプロピルスペルミジン;N4-アミノプロピルノルスペルミン。
【0030】
一実施形態において、窒素含有化合物は、式(2)で表される第1級脂肪族アミン又は式(3)で表される第2級脂肪族アミンである。
NH ・・・式(2)
[式(2)中、Rは、1~12個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基である。]、
NHR ・・・式(3)
[式(3)中、R及びRは、それぞれ独立して、1~12個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基である。]。
【0031】
式(2)又は式(3)で表される脂肪族アミンにおいて、脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素基であることが好ましい。脂肪族炭化水素基の炭素数は、1~8個であることが好ましく、1~6個であることが好ましく、1~4個であることが好ましい。
【0032】
脂肪族アミンの具体例としては、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン等のモノアルキルアミン;ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルアミンが挙げられる。
【0033】
窒素含有化合物としては、例えば、エチルアミン、エチレンジアミン、ジエチルアミン、N-エチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、N-エチルジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン又はテトラエチレンペンタミンが挙げられる。これらの中でも、好ましくは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン又はテトラエチレンペンタミンが挙げられる。窒素含有化合物は、市販されているか又は公知の方法若しくはそれに準じた方法により製造することができる。
【0034】
窒素含有化合物が結合した水不溶性担体とは、上記窒素含有化合物は上記脂肪族アミンが、直接的に共有結合している水不溶性担体、又はリンカーを介して間接的に結合している水不溶性担体の両方を包含する。また、窒素含有化合物が結合した水不溶性担体には、上記ポリアミン及び上記脂肪族アミンから選ばれる、それぞれ異なる2種以上の窒素含有化合物が結合しているものも包含する。
【0035】
窒素含有化合物として式(1)で表されるポリアミンを用いる場合、複数のアミノ基が水不溶性担体に結合して、架橋構造を形成していてもよい。すなわち、窒素含有化合物として、式(1)で表されるポリアミンを水不溶性担体に結合させた場合、ポリアミン中のアミノ基の少なくとも2つが水不溶性担体に結合すると、架橋構造を形成することになる。
【0036】
窒素含有化合物は、該化合物中のアミノ基(又は窒素原子)を介して水不溶性担体に結合していることが好ましい。
【0037】
窒素含有化合物が水不溶性担体に結合する際、窒素含有化合物中の結合位置に依存して、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基及び/又は4級アミノ基が結合後の窒素含有化合物中に存在する。例えば、式(1)で表されるポリアミンが水不溶性担体に結合する際、ポリアミン中の結合位置に依存して、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基及び/又は4級アミノ基が結合後のポリアミン中に存在することになる。また、窒素含有化合物は、該化合物中のアミノ基(又は窒素原子)を介して水不溶性担体に結合していることが好ましい。本明細書において、「水不溶性担体上のアミノ基」は、そのように生じた窒素含有化合物由来の1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基及び4級アミノ基を少なくとも含む概念である。窒素含有化合物がリンカーを介して結合している場合、「水不溶性担体上のアミノ基」は、リンカー由来の1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基及び4級アミノ基を含む。また、本明細書において、「アミノ基の総量」とは、水不溶性担体上の1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基及び4級アミノ基の総量(μmol)を意味する。
【0038】
水不溶性担体上のアミノ基の総量は、特に制限されるものではないが、例えば、吸着材料1gあたり0μmol超5000μmol以下である。
【0039】
水不溶性担体上のアミノ基の総量は、例えば、アミノ基を酸塩基逆滴定を利用して測定することにより、1級アミノ基の量、2級アミノ基の量、3級アミノ基の量、及び4級アミノ基(4級アンモニウム基)の量の和として求めることができる。すなわち、まず、ポリプロピレン製容器に、吸着材料及び過剰量の水酸化ナトリウム水溶液を添加して室温で十分撹拌し、吸着材料中の塩が付加されたアミノ基を脱塩する。次に、吸着材料をイオン交換水で溶液が中性になるまで十分に洗浄し、重量変化が1%以下になるまで乾燥する。次に、乾燥した吸着材料中のアミノ基を、過剰の酸を含む標準溶液の一定量と反応させる。次に、アミノ基と反応せずに残った酸の量を、塩基を含む標準溶液で滴定する。この方法により、アミノ基の総量(μmol)を求めることができる。さらに具体的には、水不溶性担体上のアミノ基の総量は下記実施例において記載した方法により求めることができる。
【0040】
窒素含有化合物残基の量(窒素含有化合物の固定化量)は、例えば、水不溶性担体への反応性官能基の結合量、窒素含有化合物の種類、窒素含有化合物の使用量を調整することで制御することができる。反応性官能基の結合量は、例えば、反応性官能基の種類又は溶媒の種類、浸漬温度若しくは浸漬時間等の反応条件で制御することができる。例えば、水不溶性担体がポリ芳香族ビニルを含む場合は、架橋剤を用いて、反応性官能基の結合可能箇所を制御することもできる。また、窒素含有化合物残基の量は、窒素含有化合物の種類や反応性官能基の結合量に加え、溶媒の種類、浸漬温度、浸漬時間等の反応条件で制御することができる。
【0041】
「免疫抑制性白血球」は、免疫系を抑制する働きを有する白血球を意味する。免疫抑制性白血球としては、例えば、LAP陽性白血球が挙げられる。本実施形態に係る吸着材料は、LAP陽性白血球のなかでも、LAP陽性リンパ球又はLAP陽性単球を好ましく吸着することができ、LAP陽性CD4陽性リンパ球、LAP陽性CD8陽性リンパ球又はLAP陽性CD11b陽性単球を好ましく吸着することができる。
【0042】
「水不溶性担体」は、常温(25℃)の水に浸漬した場合に形状変化を起こさない担体を指し、具体的には、25℃の水に1時間浸漬させた際の重量変化が5%以下である担体であることが好ましい。水不溶性担体の材料としては、特に制限されるものではないが、ポリスチレンに代表されるポリ芳香族ビニル化合物、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド等が好ましく挙げられる。水不溶性担体の材料は、市販されているか又は公知の方法若しくはそれに準じた方法により製造することができる。これらの材料は、血液と接触した際に補体を活性化しやすいと言われている水酸基を実質的に有しない材料である。これらの中でも単位重量あたりの芳香環の数が多く、アミノ基を固定化しやすいことから、ポリスチレンが好ましい。これらの高分子材料は、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。また、水不溶性担体は、ポリ芳香族ビニル化合物(例えば、ポリスチレン)を含む高分子材料であることが好ましい。水不溶性担体としては、ポリスチレン部分にアミノ基を固定化するための活性ハロゲン基等のリンカーを導入し易い点、及びポリオレフィン部分による強度補強による扱い易さ及び耐薬品性の点から、ポリスチレンとポリオレフィンの共重合体(例えば、ポリスチレンとポリエチレンの共重合体又はポリスチレンとポリプロピレンの共重合体)が好ましい。また、高分子材料は、ブレンド又はアロイ化したものでもよく、特に、ポリスチレンとポリオレフィンのポリマーアロイ(例えば、ポリスチレンとポリエチレンのポリマーアロイ又はポリスチレンとポリプロピレンのポリマーアロイ)は、耐薬品性を有し、物理形状を保持し易い観点から、好ましい。その中でも、血液体外循環療法で使用実績のあるポリスチレンとポリプロピレンのポリマーアロイが好ましい。また、用いる水不溶性担体は、アミノ基を実質的に有さないことが好ましい。
【0043】
窒素含有化合物は、水不溶性担体に直接的に結合してもよいし、リンカーを介して間接的に水不溶性担体に結合してもよい。窒素含有化合物を水不溶性担体に結合させる方法は、特に制限されるものではなく、例えば、化学的方法により水不溶性担体表面にリンカーを介して共有結合させる方法が挙げられる。リンカーとしては、例えば、反応性官能基を用いることができる。また、リンカーとしては、アミド結合、尿素結合、エーテル結合又はエステル結合等の電気的に中性の化学結合を有しているものが好ましく、アミド結合又は尿素結合を有しているものが好ましい。リンカーとしての反応性官能基としては、例えば、ハロメチル基、ハロアセチル基、ハロアセトアミドメチル基若しくはハロゲン化アルキル基等の活性ハロゲン基、エポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、又は酸無水物基等を挙げることができる。これらの中でも、活性ハロゲン基(特にハロアセチル基)は、製造が容易であり、反応性が適度に高く、アミノ基の固定化反応が温和な条件で遂行でき、生じる共有結合が化学的に安定であるため、好ましい。反応性官能基を導入したポリマーの具体的な例としては、クロルアセトアミドメチル基を付加したポリスチレン、クロルアセトアミドメチル基を付加したポリスルホン、クロルアセトアミドメチル基を付加したポリエーテルイミド等が挙げられる。なお、これらのポリマーは有機溶媒に対し可溶であり、成型しやすい利点がある。窒素含有化合物の添加量の目安は、リンカーの構造にもよるが、例えば、水不溶性担体1gに対して、10~10000μmolである。また、窒素含有化合物は過剰量で用いてもよい。
【0044】
反応性官能基は、予め、水不溶性担体と反応させることで導入することができる。例えば、水不溶性担体がポリスチレンで、反応性官能基がクロルアセトアミドメチル基の場合は、ポリスチレンとN-メチロール-α-クロルアセトアミドを反応させることでクロルアセトアミドメチル基を付加したポリスチレンを得ることができる。
【0045】
水不溶性担体の形状は、繊維又は粒子である。繊維は、血液流路を確保しつつ、血液との接触面積を増大させることが可能であることから、好適に用いられる。特に、海島複合繊維は、島部分で繊維強度を保持しつつ、海部分にリガンドを固定化しやすいポリマー素材を配置させることができるため、紡糸性とリガンド固定化反応を両立させやすく、好ましく用いられる。
【0046】
本実施形態において、水不溶性担体を構成する繊維又は粒子の直径は、15~50μmである。
【0047】
本実施形態において、水不溶性担体を構成する繊維又は粒子の直径が所定の範囲に含まれる場合に、本実施形態の効果が得られる理由・メカニズムについては、以下のように推測される。繊維又は粒子の直径が15μm未満の場合、水不溶性担体のカラムへの充填密度が高くなるため、血小板や白血球等の各種細胞が非選択的にトラップされやすくなる。また、白血球のなかでも顆粒球や単球は貪食能を有するため、繊維又は粒子の直径が15μm未満である場合は、顆粒球や単球が水不溶性担体自体を異物として認識しやすくなる。一方で、繊維又は粒子の直径が50μmよりも大きい場合は、水不溶性担体の単位体積あたりの血液接触面積が小さくなるため、LAP陽性白血球の吸着率が低下する。また、吸着カラムに充填する場合、充填する担体量を増やせばLAP陽性細胞の吸着率を上げることが可能だが、カラムの容量が大きくなり体外に持ち出す必要のある血液量が増大する。したがって、水不溶性担体を構成する繊維又は粒子の直径が15~50μmであることが要求されるものと推測される。なお、これらの推測により本実施形態が制限されることはない。繊維又は粒子の直径は、好ましくは17μm以上であり、20μm以上であり、25μm以上である。繊維又は粒子の直径は、好ましくは40μm以下であり、35μm以下であり、30μm以下である。いずれの好ましい下限値もいずれの好ましい上限値と組み合わせることができる。
【0048】
「繊維の直径」は、以下の方法により求めることができる。まず、繊維のサンプル100本をランダムに採取して、走査型電子顕微鏡を用いて1000~3000の倍率で断面(繊維の伸長方向に垂直な断面)の写真をサンプル1本につきそれぞれ1枚撮影する。次に、それぞれの繊維断面の直径を測定する。そして、それらの値の平均値(計100本の繊維断面の直径の平均値)を算出することにより、「繊維の直径」を求める。繊維断面が円でない場合は、その断面積と同じ面積を有する円の直径を繊維の直径とする。
【0049】
「粒子の直径」は、以下の方法により求めることができる。まず、粒子のサンプル群10個をランダムに採取して、走査型電子顕微鏡を用いて1000~3000の倍率で写真をサンプル群1個につきそれぞれ1枚撮影する。次に、写真1枚当たり10個の粒子の直径を測定する。そして、それらの値の平均値(計100個の粒子の直径の平均値)を算出することにより、「粒子の直径」を求める。粒子の写真形状が円でない場合は、その粒子面積と同じ面積を有する円の直径を粒子の直径とする。
【0050】
本実施形態において、水不溶性担体の表面の算術平均粗さは、0.1~3.0μmである。
【0051】
「算術平均粗さ」とは、粗さ表面から、その平均線の方向に基準長さLだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値の平均値を意味し、JIS B 0601-2001の算術平均粗さ(Ra)を意味する。算術平均粗さは、例えば、形状測定レーザーマイクロスコープで測定することができる。測定環境としては、水不溶性担体が水に濡れた状態で行うことが好ましい。また、繊維のように配向性のある場合は、長手方向の値を測定する。
【0052】
本実施形態において、水不溶性担体表面の算術平均粗さが所定の範囲に含まれる場合に、本実施形態の効果が得られる理由・メカニズムについては、以下のように推測される。水不溶性担体表面の算術平均粗さが3.0μmよりも大きい場合、貪食能を有する顆粒球や単球が水不溶性担体の凹凸を異物として認識しやすくなる。そのため、顆粒球や単球が表面に吸着しやすくなり、LAP陽性白血球の選択性が低くなる。一方で、水不溶性担体表面の算術平均粗さが0.1μmよりも小さい場合は、LAP陽性白血球の吸着率が低下する。これは水不溶性担体と血液との接触面積が増えてLAP陽性白血球以外の血液成分が接触しやすくなり、LAP陽性白血球が水不溶性担体表面に効率的に接触しづらくなるためと推測される。なお、これらの推測により本実施形態が制限されることはない。水不溶性担体表面の算術平均粗さは、好ましくは0.5μm以上であり、0.7μm以上であり、0.9μm以上であり、1.0μm以上である。水不溶性担体表面の算術平均粗さは、好ましくは2.0μm以下であり、1.8μm以下であり、1.5μm以下である。いずれの好ましい下限値もいずれの好ましい上限値と組み合わせることができる。なお、上記繊維又は上記粒子の好ましい直径と上記水不溶性担体の表面の好ましい算術平均粗さは任意に組み合わせることができる。
【0053】
水不溶性担体の表面の算術平均粗さが0.1~3.0μmである場合、血小板の付着も抑制することができる。すなわち、窒素含有化合物を水不溶性担体に結合させると、血小板が付着し易くなる傾向があるが、水不溶性担体の表面の算術平均粗さが0.1~3.0μmである場合、血小板が付着する傾向を抑制することができる。
【0054】
水不溶性担体の表面の算術平均粗さは、例えば、水不溶性担体を有機溶媒に浸漬させることで制御することができる。水不溶性担体の表面の算術平均粗さを制御する方法としては、例えば、水不溶性担体としてポリ芳香族ビニル化合物とポリプロピレンを混練させて得たポリマーを、ポリ芳香族ビニル化合物を一部可溶させ、かつ、ポリプロピレンを溶かさない溶媒に浸漬する方法が挙げられる。水不溶性担体の表面の算術平均粗さは、ポリマーの種類、ポリマーの分子量、溶媒の種類、浸漬温度、浸漬時間等で制御することができる。さらには、ポリ芳香族ビニルについては、架橋剤を導入することにより、溶媒への可溶性を制御する等の方法も採用することができる。さらには、上記の反応は、窒素含有化合物の導入反応と同時に行うことも可能である。
【0055】
繊維は、高次加工により血液流路を確保しつつ、血液との接触面積を増大させることが可能である点で好ましい。中でも、海島型複合繊維が好ましく、材料としての強度を保つ観点から、島が補強材、海が水不溶性ポリマーと補強材のアロイである海島型複合繊維が好ましく、さらに島がポリプロピレンであり、海がポリスチレンとポリプロピレンのアロイである海島型複合繊維が好ましい。補強材としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。中でも、ポリプロピレンが好ましい。これらのポリマーは、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
水不溶性担体の形状が繊維の場合、その高次加工品である編み地であることが好ましい。編み地は、その編み目を制御することで血液流路を確保できるため、血液が繊維を通過する際の圧力損失を低減させることができる。また、繊維を合糸させて編み地を形成させる場合、合糸本数は好ましくは10~100本であり、好ましくは30~80本である。合糸本数が100本以下である場合、LAP陽性白血球が繊維束内に進入しやすくなり、吸着率を向上させることができる。また、合糸本数が10本以上である場合、編み地の形状の保持性が向上する。なお、いずれの好ましい下限値もいずれの好ましい上限値と組み合わせることができる。
【0057】
本実施形態の吸着材料は、免疫抑制性白血球(特に、LAP陽性白血球)の吸着用担体に用いることができ、吸着カラムの充填剤として使用することができる。
【0058】
本実施形態の吸着材料は、LAP陽性のリンパ球及び単球の吸着率がいずれも、30%以上であることが好ましく、35%以上であることが好ましく、40%以上であることが好ましい。また、選択性としては、リンパ球及び単球のいずれも、LAP陽性のリンパ球及び単球の吸着率が、それぞれ、LAP陰性のリンパ球及び単球の吸着率の2.5倍以上であることが好ましく、5倍以上であることが好ましく、8倍以上であることが好ましい。ここで、リンパ球としては、CD4陽性白血球又はCD8陽性白血球を対象とし、CD4陽性白血球又はCD8陽性白血球のいずれかについて、上記の選択性を満たせば良く、また、CD4陽性白血球及びCD8陽性白血球の両方について、上記の選択性を満たすことが望ましい。また、単球としては、CD11b陽性白血球とする。また、上記の吸着率の試験系としては、例えば、ヒト血液を用いたバッチ式白血球吸着試験(例えば本実施例参照)が挙げられる。評価系としては、例えば、白血球の表面抗原を指標としたフローサイトメトリーによる分析(例えば本実施例参照)が挙げられる。さらに、血小板の付着は、LAP陽性のリンパ球や単球の吸着率低下の原因になるとともに、カラムの目詰まりも引き起こす可能性があるため、血小板はなるべく吸着しないことが望ましい。したがって、血小板の吸着率は、80%以下であることが好ましく、70%以下であることが好ましく、65%以下であることが好ましい。血小板の吸着率は、上記同様にバッチ試験及び血球計測器で評価できる(例えば本実施例参照)。
【0059】
本実施形態の吸着カラムは、本実施形態の吸着材料を含む。
【0060】
「吸着カラム」とは、少なくとも血液入口部、ケース部、血液出口部を有しており、ケース部には吸着材料が充填されているものを意味する。吸着カラムとしては、例えば、ラジアルフロー型の吸着カラムが挙げられる。上述したように、吸着材料の形状としては、繊維が好ましく、編み地が好ましい。
【0061】
吸着カラムの内部の構成の一例を、図1に沿って説明する。図1において、1は容器本体であり、その長手方向の前端と後端とに流入口2と流出口3とを有する。流入口2の内側には、フィルター4と円板状の仕切板5が設けられ、また、流出口3の内側には、フィルター6と円板状の仕切板7が設けられている。2枚の仕切板5、7のうち、前側(流入口側)の仕切板5には中心部に開口5aが設けられ、また、後側の仕切板7の中心部には支持突起7aが設けられている。また、仕切板7の外周には、多数の透孔7bが周方向に間欠的に設けられている。さらに仕切板5の開口5aと仕切板7の支持突起7aとの間に、1本のパイプ8が掛け渡されている。パイプ8は血液を誘導する流路9を内側に形成し、かつ周壁に多数の貫通孔10を有する。また、パイプ8は、その前端で仕切板5の開口5aに連通しており、また、その後端は仕切板7の支持突起7aにより閉止されている。このパイプ8の外周に、吸着材料11が何重にも複数層に巻き付けられている。この吸着カラムを循環法に使用するときは、流入口2と流出口3に、血液プールとの間に循環回路を形成したチューブを連結し、その血液プールから取り出される血液を流入口2に供給し、内部の吸着材料11で対象吸着物質(免疫抑制性白血球)を除去して流出口3から流出し、再び血液プールに戻すように循環させる。カラム内では、流入口2からフィルター4を経て流路9に侵入した血液は、流路9を移動しながら貫通孔10から順次吸着材料11に浸入し、半径方向のいずれかへ移動しながら細胞等を吸着する。細胞等が除去された血液は、仕切板7の外周の多数の透孔7bから流出し、フィルター6を経て流出口3から流出する。上記の例では血液が開口5aからパイプ8内の流路9を流動しながら貫通孔10から流出するが、吸着カラムにおける血液の移動方向は、上記とは逆にして、流出口3から血液を供給し、流入口2から流出させるようにしてもよい。
【0062】
LAP陽性白血球の吸着率を上げるためには、カラム内の血液線速度も重要である。すなわち、血液線速度が速い場合、LAP陽性白血球が吸着材料と十分な相互作用が起き難くなる場合がある。一方、血液線速度が遅い場合、血小板やタンパク質等の他の血液成分が吸着材料に非特異的に付着し、吸着材料とLAP陽性白血球との相互作用を阻害する場合がある。したがって、吸着カラム入口の流速Sinが50cm/分のときの吸着材料内の血液線速度の最大値は50cm/分以下であることが好ましく、25cm/分以下であることが好ましい。また、吸着カラム入口の流速が50cm/分であるときの吸着材料内の血液線速度の最小値は、0.1cm/分以上であることが好ましく、0.5cm/分以上であることが好ましい。ここで、血液線速度は、計算によって求められるものであり、例えば、下記のラジアルフロー型の吸着カラムの場合、吸着材料内の血液線速度の最大値(Vmax)は、中心パイプの側面に空いた開口部の合計面積(S)と吸着カラム入口の流速Sin(50cm/分)から、下記式1により算出される。
max(cm/分)= Sin(cm/分)/S(cm)・・・式1
【0063】
また、最小値(Vmin)は中心パイプに巻き付けた吸着材料の最外周面の面積(S)と吸着カラム入口の流速Sin(50cm/分)から、下記式2により算出される。
min(cm/分)= Sin(cm/分)/S(cm)・・・式2
【0064】
一方、吸着材料の形状が、粒子や単に繊維を重ねただけの繊維形状の場合、上記最大値と上記最小値は同じ値となる。
【0065】
さらには、吸着カラムとしては、供給された血液を流出するために設けられた貫通孔を長手方向の側面に備える中心パイプと、上記中心パイプの周りに吸着材料が充填されており、流入する上記血液が、上記中心パイプの中を通るように上記中心パイプの上流端に連通され、上記血液が上記中心パイプを通過せずに吸着材料と接触するのを防ぐように配置されたプレートAと、上記中心パイプの下流端を封鎖し、吸着材料を上記中心パイプの周りの空間に固定するように配置されたプレートBと、を備えるラジアルフロー型の吸着カラムが好ましい。これは、血液が球吸着材料を均一に流れるようにするためである。なお、上記中心パイプの貫通孔の開口率が低い場合、この部分で圧力損失が生じ易くなるために、顆粒球、単球及び血小板が活性化し、これらが吸着材料に付着しやすくなる。そのため、LAP陽性白血球の吸着選択性が低下する場合がある。また、開口率が高い場合は、パイプの強度が低下すること、血液入口部付近の貫通孔でショートパスを起こしやすくなる等の課題が出てくる可能性がある。したがって、貫通孔の開口率は20~80%であることが好ましく、30~60%であることが好ましい。
【0066】
「ラジアルフロー型」とは、カラム内部の血液の流れ方を言う。カラムの入口と出口に血液を垂直方向に流した場合、カラム内部で、水平方向の血液流れが存在する場合に、ラジアルフロー型と呼ぶ。
【0067】
「貫通孔の開口率」とは、下記式3で求められる値を意味する。
【0068】
貫通孔の開口率(%)=パイプの長手方向の側面に形成された貫通孔の面積の和/パイプの側面の面積×100・・・式3
【0069】
本実施形態の吸着カラムは、血液浄化療法に用いることができる。本実施形態の吸着カラムを血液浄化用カラムとして使用することで、血液中から免疫抑制性白血球を選択的に除去することができる。例えば、血液を体外循環させて、本実施形態の吸着カラムに通すことにより、血液中から免疫抑制性白血球を選択的に除去することができる。すなわち、本実施形態の吸着カラムは、体外循環用カラムとして用いることができる。より具体的には、本実施形態の吸着カラムは、がん患者の血液中から免疫抑制性白血球を選択的に除去する治療に用いることができる。すなわち、本実施形態の吸着カラムは、がん治療用カラムとして用いることができる。
【0070】
本実施形態の吸着カラムは、免疫抑制性白血球を選択的に除去することができることから、癌治療に好適に用いられる。また、樹状細胞やナチュラルキラー細胞等を活性化させる細胞輸注治療と併用することも可能である。
【0071】
以下、実施例を挙げて本実施形態を説明するが、本実施形態はこれらの例によって限定されるものではない。
【実施例
【0072】
1.表面の算術平均粗さの測定
本実施例において、吸着材料に含まれる水不溶性担体の表面の算術平均粗さを以下の方法により測定した。
形状測定レーザー顕微鏡(キーエンス社製;カラー3Dレーザー顕微鏡 VK-9700)を用いて、100倍の倍率で、乾燥させないように水に濡れた状態で、吸着材料の表面を観察し、表面の算術平均粗さを測定した(JIS B 0601-2001準拠)。基準長さLは50μmとし、位置が異なる10箇所で測定した偏差の絶対値の平均値を表面の算術平均粗さの値とした。なお、水に濡れた状態としては、水分率(水分率=100×水分重量/材料重量)が20%以上である状態が好ましい。
【0073】
2.免疫抑制性白血球の吸着試験
本実施例において、吸着材料の免疫抑制性白血球の吸着率を、ヒト血液を用いたバッチ吸着試験により測定した。また、分析にはフローサイトメトリー(FACS Calibur、ベクトン・ディッキンソン社製)を用いた。
【0074】
まず、直径10mmの円板状に切り抜いた吸着材料5枚を、ポリプロピレン製の容器に入れた。この容器に、ヒト健常者から採血した血液を3.07mL添加し、37℃のインキュベータ内で1時間転倒混和した。吸着材料を容器から取り除いた後、容器に残った血液を容量15mLの分離チューブ(Greiner社製、LeucoSepTM)に入れて遠心分離した。分離した細胞層(白血球)を回収し、PBS(-)に再懸濁させ、遠心分離し、細胞層(白血球)を回収した。回収した白血球数と、LAP陽性白血球数をフローサイトメトリーを用いて算出した。また、LAP陰性白血球数は、LAPと結合していない白血球であり、白血球数からLAP陽性白血球数を減じて算出した。白血球数はLAP陽性白血球数とLAP陰性白血球数の和である。
【0075】
白血球の表面抗原の分析は、フローサイトメトリー(ベクトン・ディッキンソン社製のFACSCaliber)を用いて行なった。細胞表面染色用抗体としては、R&D社のフィコエリスリン標識抗ヒトLAP、BioLegend社のFITC標識抗ヒトCD4、APC標識抗ヒトCD8、APC標識抗ヒトCD11bを用いた。LAP陽性リンパ球としてはLAP陽性CD4陽性リンパ球及びLAP陽性CD8陽性リンパ球を、LAP陽性単球としてはLAP陽性CD11b陽性単球を評価対象とした。
吸着率は、下記式により算出した。
吸着率(%)=(吸着材料を添加していない血液でのLAP陽性白血球数-吸着材料を添加した血液でのLAP陽性白血球数)/吸着材料を添加していない血液でのLAP陽性白血球数×100
【0076】
3.血小板の付着試験
免疫抑制性白血球の吸着試験と同じ実験系で、血小板の付着率についても算出した。血小板数は血球計測器により測定した。
血小板の付着率を下記式により算出した。
血小板の付着率(%)=(吸着材料を添加していない血液での血小板数-吸着材料を添加した血液での血小板数)/吸着材料を添加していない血液での血小板数×100
【0077】
4.水不溶性担体の繊維の直径の測定
「繊維の直径」は、以下の方法により求めた。まず、繊維のサンプル100本をランダムに採取して、走査型電子顕微鏡を用いて3000の倍率で断面(繊維の伸長方向に垂直な断面)の写真をサンプル1本につきそれぞれ1枚撮影した。次に、それぞれの繊維断面の直径を測定した。そして、それらの値の平均値(計100本の繊維断面の直径の平均値)を算出することにより、「繊維の直径」を求めた。繊維断面が円でない場合は、その断面積と同じ面積を有する円の直径を繊維の直径とした。
【0078】
5.原編み地(水不溶性担体)及び中間体(リガンド結合水不溶性担体)の作製
(1)原編み地1及び中間体1
水不溶性担体として、ポリプロピレン(株式会社プライムポリマー;J105WT)からなる島成分を16島有し、海成分がポリスチレン(重量平均分子量:181,000)90重量%及びポリプロピレン(株式会社プライムポリマー;J105WT)10重量%からなり、島と海の比率(重量比)が50:50である、海島複合繊維(繊維の直径:20μm)を紡糸した。得られた繊維42本を合糸して編み地を形成した(以下、原編み地1)。なお、繊維表面の粗さは、島数や海島比率、ポリスチレンやポリプロピレンの分子量等によって影響を受ける。
【0079】
ニトロベンゼン(50mL)と硫酸(32mL)の混合溶液にパラホルムアルデヒド(以下、PFA)(0.26g)を10℃で溶解させた(以下、PFA溶液)。さらに、ニトロベンゼン(50mL)と硫酸(32mL)の混合溶液にN-メチロール-α-クロルアセトアミド(18g)を10℃で溶解させた(以下、NMCA溶液)。原編み地1(10g)をPFA溶液に浸漬させた後、速やかにNMCA溶液を添加し、撹拌した。1時間浸漬・撹拌した後、編み地を取り出し、過剰のニトロベンゼンで洗浄後、メタノールで置換・洗浄し、さらに水洗いし、α-クロルアセトアミドメチル化した編み地(以下、中間体1)を得た。PFA溶液の作製からメタノールを用いた編み地の洗浄までの一連の操作は15℃以下で実施した。
【0080】
(2)原編み地2及び中間体2
水不溶性担体として、ポリプロピレン(株式会社プライムポリマー;J105WT)からなる芯成分を有し、鞘成分がポリスチレン(重量平均分子量:261,000)90重量%及びポリプロピレン(株式会社プライムポリマー;J105WT)10重量%からなり、芯と鞘の比率(重量比)が50:50である、芯鞘複合繊維(繊維の直径:5μm)を紡糸した。得られた繊維42本を合糸して編み地を形成した(以下、原編み地2)。
【0081】
原編み地2を原編み地1の代わりに用いたこと以外は、上述と同様の処理を行い、α-クロルアセトアミドメチル化した編み地(以下、中間体2)を得た。
【0082】
(3)原編み地3及び中間体3
水不溶性担体として、ポリプロピレン(株式会社プライムポリマー;J105WT)からなる島成分を16島有し、海成分がポリスチレン(重量平均分子量:261,000)からなり、島と海の比率(重量比)が30:70である、海島複合繊維(繊維の直径:20μm)を紡糸した。得られた繊維42本を合糸して編み地を形成した(以下、原編み地3)。
【0083】
原編み地3を原編み地1の代わりに用いたこと以外は、上述と同様の処理を行い、α-クロルアセトアミドメチル化した編み地(以下、中間体3)を得た。
【0084】
(4)原編み地4及び中間体4
水不溶性担体として、ポリプロピレン(株式会社プライムポリマー;J105WT)からなる芯成分を有し、鞘成分がポリスチレン(重量平均分子量:261,000)90重量%及びポリプロピレン(株式会社プライムポリマー;J105WT)10重量%からなり、芯と鞘の比率(重量比)が50:50である、芯鞘複合繊維(繊維の直径:10μm)を紡糸した。得られた繊維42本を合糸して編み地を形成した(以下、原編み地4)。
【0085】
原編み地4を原編み地1の代わりに用いたこと以外は、上述と同様の処理を行い、α-クロルアセトアミドメチル化した編み地(以下、中間体4)を得た。
【0086】
(5)原編み地5及び中間体5
水不溶性担体として、ポリプロピレン(株式会社プライムポリマー;J105WT)からなる島成分を16島有し、海成分がポリスチレン(重量平均分子量:261,000)からなり、島と海の比率(重量比)が50:50である、海島複合繊維(繊維の直径:40μm)を紡糸した。得られた繊維42本を合糸して編み地を形成した(以下、原編み地5)。
【0087】
原編み地5を原編み地1の代わりに用いたこと以外は、上述と同様の処理を行い、α-クロルアセトアミドメチル化した編み地(以下、中間体5)を得た。
【0088】
(6)原編み地6及び中間体6
水不溶性担体として、ポリプロピレン(株式会社プライムポリマー;J105WT)からなる島成分を16島有し、海成分がポリスチレン(重量平均分子量:261,000)からなり、島と海の比率(重量比)が50:50である、海島複合繊維(繊維の直径:50μm)を紡糸した。得られた繊維42本を合糸して編み地を形成した(以下、原編み地6)。
【0089】
原編み地6を原編み地1の代わりに用いたこと以外は、上述と同様の処理を行い、α-クロルアセトアミドメチル化した編み地(以下、中間体6)を得た。
【0090】
6.吸着材料の作製
(実施例1)
ジエチレントリアミン(以下、DETA)(929μL)とトリエチルアミン(28.6mL)をジメチルスルホキシド(398mL)に溶かした溶液に、中間体1(10g)を、室温にて1時間撹拌下で浸漬させた。その後、ジエチレントリアミンで処理した中間体1を水洗いし、乾燥させ、吸着材料E1を得た。
【0091】
(実施例2)
テトラエチレンペンタミン(以下、TEPA)(1640μL)とトリエチルアミン(28.6mL)をジメチルスルホキシド(398mL)に溶かした溶液に、中間体1(10g)を、室温にて1時間撹拌下で浸漬させた。その後、テトラエチレンペンタミンで処理した中間体1を水洗いし、乾燥させ、吸着材料E2を得た。
【0092】
(比較例1)
原編み地1を吸着材料C1として使用した。
【0093】
(比較例2)
中間体1の代わりに中間体2を用いたこと以外は、実施例1と同様の処理を行い、吸着材料C2を得た。
【0094】
(比較例3)
ジエチレントリアミン(DETA)(929μL)とトリエチルアミン(28.6mL)をジメチルスルホキシド(398mL)に溶かした溶液に、中間体3(10g)を浸し、80℃に加温して10時間撹拌下で浸漬させた。その後、ジエチレントリアミンで処理した編み地を水洗いし、乾燥させ、吸着材料C3を得た。
【0095】
(実施例3)
浸漬時間を10分にしたこと以外は、実施例1と同様の処理を行い、吸着材料E3を得た。
【0096】
(実施例4)
浸漬時間を2時間にしたこと以外は、比較例3と同様の処理を行い、吸着材料E4を得た。
【0097】
(比較例4)
中間体1の代わりに中間体4を用いたこと以外は、実施例1と同様の処理を行い、吸着材料C4を得た。
【0098】
(実施例5)
中間体1の代わりに中間体5を用いたこと以外は、実施例1と同様の処理を行い、吸着材料E5を得た。
【0099】
(実施例6)
中間体1の代わりに中間体6を用いたこと以外は、実施例1と同様の処理を行い、吸着材料E6を得た。
【0100】
(比較例5)
浸漬時間を3分にしたこと以外は、実施例1と同様の処理を行い、吸着材料C5を得た。
【0101】
(実施例7)
浸漬時間を1時間にしたこと以外は、比較例3と同様の処理を行い、吸着材料E7を得た。
【0102】
吸着材料(E1~E7)及び吸着材料(C1~C5)について、上述の方法により、表面の算術平均粗さ及び免疫抑制性白血球の吸着率並びに血小板の付着率を測定した。結果を表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
表中の略号は以下の通りである。
CD4(+):CD4陽性
CD8(+):CD8陽性
CD11b(+):CD11陽性
LAP(+): Latency Associated Peptide陽性
LAP(-): Latency Associated Peptide陰性
DETA:ジエチレントリアミン
TEPA:テトラエチレンペンタミン
【産業上の利用可能性】
【0105】
本実施形態の吸着材料及び吸着カラムは、免疫抑制性白血球を吸着することができる。そのため、癌治療への適用が期待される。また、本実施形態の吸着材料及び吸着カラムは、樹状細胞やナチュラルキラー細胞等を活性化させる細胞輸注治療と併用することも可能である。
【符号の説明】
【0106】
1 容器本体
2 流入口
3 流出口
4 フィルター
5 仕切板
5a 仕切板の開口
6 フィルター
7 仕切板
7a 仕切板の支持突起
7b 仕切板の透孔
8 パイプ
9 流路
10 貫通孔
11 吸着材料
Q 血液流れ
図1