(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】非ウイルス的遺伝子導入のための閉鎖型直鎖状二重鎖DNA
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20221213BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221213BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20221213BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221213BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221213BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20221213BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20221213BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20221213BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20221213BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20221213BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20221213BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/63 Z
A61K31/711
A61K48/00
A61P25/00
A61P7/00
A61P9/00
A61P11/00
A61P1/16
A61P13/12
A61P27/02
A61P35/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021179896
(22)【出願日】2021-11-03
(62)【分割の表示】P 2018546429の分割
【原出願日】2017-03-03
【審査請求日】2021-11-25
(32)【優先日】2016-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507088266
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ マサチューセッツ
【住所又は居所原語表記】One Beacon Street,31st Floor,Boston,Massachusetts 02108
(73)【特許権者】
【識別番号】521466699
【氏名又は名称】ボイジャー セラピューティクス,インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】VOYAGER THERAPEUTICS,INC.
【住所又は居所原語表記】75 Sidney Street, Cambridge, Massachusetts 02139, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】コーチン,ロバート,エム.
(72)【発明者】
【氏名】チェッキーニ,シルヴァン
【審査官】竹内 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-508041(JP,A)
【文献】Virology Journal,2005年,vol.2, no.43,p.1-17
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物対象における遺伝的欠損または機能不全を処置するための、閉鎖型直鎖状二重鎖DNA(ceDNA)を含む医薬組成物であって、ceDNAは導入遺伝子を含む核酸インサートを含み、
ここで、インサートは、少なくとも2つのアデノ随伴ウイルス(AAV)の逆位末端(ITR)配列に隣接し;
ここで、少なくとも2つのITR配列は非対称でありかつ互いに共有結合しており、各配列は、作動性末端分解部位およびローリングサークル複製タンパク質結合要素(RBE)を有し;
ここで、第一のITR配列は、分断されたパリンドローム配列B-B’およびC-C’によって形成される2つの対向する縦方向対称ステムループを形成する交差アーム配列によって分断され、対抗する縦方向対称ステムループの各々は、長さ5~15塩基対の範囲のステム部分と2~5個の不対のデオキシリボヌクレオチドを有するループ部分とを有し;
ここで、第二のITR配列は、パリンドロームステムループ領域B-B’および/またはパリンドロームステムループ領域C-C‘における11~20の間のヌクレオチドの1つ以上の欠失を有する切断された交差アーム配列により分断され;および
ここで、ceDNAは対象における遺伝的欠損または遺伝的機能不全を処置または予防するために十分な量で対象に投与される、
前記医薬組成物。
【請求項2】
導入遺伝子が、以下:
グルコース-6-ホスファターゼ;Pepck欠損症に関連する、ホスホエノールピルビン酸-カルボキシキナーゼ;ガラクトース血症に関連する、ガラクトース-1リン酸ウリジルトランスフェラーゼ;フェニルケトン尿症に関連する、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ;メープルシロップ尿病に関連する、分枝鎖α-ケト酸デヒドロゲナーゼ;1型チロシン血症に関連する、フマリルアセトアセテート加水分解酵素;メチルマロン酸血症に関連する、メチルマロニル-CoAムターゼ;中鎖アセチルCoA欠損に関連する、中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ;オルニチントランスカルバミラーゼ欠損に関連する、オルニチントランスカルバミラーゼ;シトルリン血症に関連する、アルギニノコハク酸合成酵素;家族性高コレステロール血症に関連する、低密度リポタンパク質受容体タンパク質;クリグラー・ナジャー病に関連する、UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ;重症複合免疫不全症に関連する、アデノシンデアミナーゼ;痛風およびレッシュニーン症候群に関連する、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ;ビオチニダーゼ欠損症に関連する、ビオチニダーゼ;ゴーシェ病に関連する、β-グルコセレブロシダーゼ;Sly症候群に関連する、β-グルクロニダーゼ;ゼルウィガー症候群に関連する、ペルオキシソーム膜タンパク質70kDa;急性間欠性ポルフィリン症に関連する、ポルホビリノーゲンデアミナーゼ;α-1アンチトリプシン欠乏症(気腫)の処置のための、α-1アンチトリプシン;サラセミアまたは腎不全に起因する貧血の処置のための、エリスロポエチン;虚血性疾患の処置のための、血管内皮増殖因子、アンギオポイエチン-1、および線維芽細胞増殖因子;任意にアテローム性動脈硬化症、血栓症または塞栓症における閉塞した血管の処置のための、トロンボモジュリンおよび組織因子経路阻害剤;パーキンソン病の処置のための、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)およびチロシンヒドロキシラーゼ(TH);うっ血性心不全の処置のための、βアドレナリン作動性受容体、ホスホランバンのアンチセンスまたは変異型、筋小胞体アデノシントリホスファターゼ-2(SERCA2)、および心臓アデニリルシクラーゼ;種々のがんの処置のための、p53などの腫瘍抑制遺伝子;炎症性および免疫性障害およびがんの処置のためのサイトカイン、任意にはインターロイキン;筋ジストロフィーの処置のための、ジストロフィンまたはミニジストロフィン、およびユートロフィンまたはミニユートロフィン;および、糖尿病の処置のためのインスリン、
から選択されるタンパク質をコードする遺伝子の発現の低下、発現の欠如または機能不全に関連する疾患を処置するためのものである、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
遺伝的欠損または遺伝的機能不全が、中枢神経系(CNS)に関連する状態、疾患または障害;心血管系に関連する状態、疾患または障害;肺系に関連する状態、疾患または障害;肝臓に関連する状態、疾患または障害;腎臓に関連する状態、疾患または障害;眼に関連する状態、疾患または障害;あるいは血液に関連する状態、疾患または障害;あるいはがんである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
(1) CNSに関連する状態、疾患または障害のための導入遺伝子が、DRD2、GRIA1、GRIA2、GRIN1、SLC1A1、SYP、SYT1、CHRNA7、3Rtau/4rTUS、APP、BAX、BCL-2、GRIK1、GFAP、IL-1、およびAGERから選択され、ここで、導入遺伝子が、任意に、アルツハイマー病にさらに関連し;
(2) CNSに関連する状態、疾患または障害のための導入遺伝子が、UCH-L1、SKP1、EGLN1、Nurr-1、BDNF、TrkB、gstm1、およびS106βから選択され、ここで、導入遺伝子が、任意に、パーキンソン病にさらに関連し;
(3) CNSに関連する状態、疾患または障害のための導入遺伝子が、IT15、PRNP、JPH3、TBP、ATXN1、ATXN2、ATXN3、アトロフィン1、FTL、およびTITF-1から選択され、ここで、導入遺伝子が、任意に、ハンチントン病にさらに関連し;
(4) CNSに関連する状態、疾患または障害のための導入遺伝子が、FXNであり、ここで、導入遺伝子が、任意に、フリードリッヒ運動失調にさらに関連し;
(5) CNSに関連する状態、疾患または障害のための導入遺伝子が、ASPAであり、ここで、導入遺伝子が、任意に、カナバン病にさらに関連し;
(6) CNSに関連する状態、疾患または障害のための導入遺伝子が、DMDであり、ここで、導入遺伝子が、任意に、筋ジストロフィーにさらに関連し;
(7) CNSに関連する状態、疾患または障害のための導入遺伝子が、SMN1、UBE1、DYNC1H1から選択され、ここで、導入遺伝子が、任意に、脊髄性筋萎縮にさらに関連し;
(8) 心血管系に関連する状態、疾患または障害のための導入遺伝子が、VEGF、FGF、SDF-1、コネキシン40、コネキシン43、SCN4a、HIF1α、SERCa2a、ADCY1、およびADCY6から選択され;
(9) 肺系に関連する状態、疾患または障害のための導入遺伝子が、CFTR、AAT、TNFα、TGFβ1、SFTPA1、SFTPA2、SFTPB、SFTPC、HPS1、HPS3、HPS4、ADTB3A、IL1A、IL1B、LTA、IL6、CXCR1、およびCXCR2から選択され;
(10) 肝臓に関連する状態、疾患または障害のための導入遺伝子が、α1-AT、HFE、ATP7B、フマリルアセトアセテート加水分解酵素(FAH)、グルコース-6-ホスファターゼ、NCAN、GCKR、LYPLAL1、PNPLA3、レシチンコレステロールアセチルトランスフェラーゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、およびG6PCから選択され;
(11) 腎臓に関連する状態、疾患または障害のための導入遺伝子が、PKD1、PKD2、PKHD1、NPHS1、NPHS2、PLCE1、CD2AP、LAMB2、TRPC6、WT1、LMX1B、SMARCAL1、COQ2、PDSS2、SCARB3、FN1、COL4A5、COL4A6、COL4A3、COL4A4、FOX1C、RET、UPK3A、BMP4、SIX2、CDC5L、USF2、ROBO2、SLIT2、EYA1、MYOG、SIX1、SIX5、FRAS1、FREM2、GATA3、KAL1、PAX2、TCF2、およびSALL1から選択され;
(12) 眼に関連する状態、疾患または障害のための導入遺伝子が、ABCA4、VEGF、CEP290、CFH、C3、MT-ND2、ARMS2、TIMP3、CAMK4、FMN1、RHO、USH2A、RPGR、RP2、TMCO、SIX1、SIX6、LRP12、ZFPM2、TBK1、GALC、ミオシリン、CYP1B1、CAV1、CAV2、オプチニューリンおよびCDKN2Bから選択され;
(13) 血液に関連する状態、疾患または障害のための導入遺伝子が、第VIII因子(FVIII)、第IX因子(FIX)、およびフォンビルブラント因子(VWF)から選択され;または
(14) がんに関連する導入遺伝子が、AARS、ABCB1、ABCC4、ABI2、ABL1、ABL2、ACK1、ACP2、ACY1、ADSL、AK1、AKR1C2、AKT1、ALB、ANPEP、ANXA5、ANXA7、AP2M1、APC、ARHGAP5、ARHGEF5、ARID4A、ASNS、ATF4、ATM、ATP5B、ATP5O、AXL、BARD1、BAX、BCL2、BHLHB2、BLMH、BRAF、BRCA1、BRCA2、BTK、CANX、CAP1、CAPN1、CAPNS1、CAV1、CBFB、CBLB、CCL2、CCND1、CCND2、CCND3、CCNE1、CCT5、CCYR61、CD24、CD44、CD59、CDC20、CDC25、CDC25A、CDC25B、CDC2L5、CDK10、CDK4、CDK5、CDK9、CDKL1、CDKNIA、CDKNIB、CDKNIC、CDKN2A、CDKN2B、CDKN2D、CEBPG、CENPC1、CGRRF1、CHAF1A、CIB1、CKMT1、CLK1、CLK2、CLK3、CLNS1A、CLTC、COL1A1、COL6A3、COX6C、COX7A2、CRAT、CRHRl、CSFIR、CSK、CSNK1G2、CTNNAl、CTNNBl、CTPS、CTSC、CTSD、CUL1、CYR61、DCC、DCN、DDX10、DEK、DHCR7、DHRS2、DHX8、DLG3、DVL1、DVL3、E2F1、E2F3、E2F5、EGFR、EGR1、EIF5、EPHA2、ERBB2、ERBB3、ERBB4、ERCC3、ETV1、ETV3、ETV6、F2R、FASTK、FBN1、FBN2、FES、FGFR1、FGR、FKBP8、FN1、FOS、FOSL1、FOSL2、FOXG1A、FOXOIA、FRAP1、FRZB、FTL、FZD2、FZD5、FZD9、G22P1、GAS 6、GCN5L2、GDF15、GNA13、GNAS、GNB2、GNB2L1、GPR39、GRB2、GSK3A、GSPT1、GTF2I、HDAC1、HDGF、HMMR、HPRT1、HRB、HSPA4、HSPA5、HSPA8、HSPB1、HSPH1、HYAL1、HYOU1、ICAM1、ID1、ID2、IDUA、IER3、IFITM1、IGF1R、IGF2R、IGFBP3、IGFBP4、IGFBP5、IL1B、ILK、ING1、IRF3、ITGA3、ITGA6、ITGB4、JAK1、JARIDIA、JUN、JUNB、JUND、K-ALPHA-1、KIT、KITLG、KLK10、KPNA2、KRAS2、KRT18、KRT2A、KRT9、LAMB1、LAMP2、LCK、LCN2、LEP、LITAF、LRPAP1、LTF、LYN、LZTR1、MADH1、MAP2K2、MAP3K8、MAPK12、MAPK13、MAPKAPK3、MAPRE1、MARS、MAS1、MCC、MCM2、MCM4、MDM2、MDM4、MET、MGST1、MICB、MLLT3、MME、MMP1、MMP14、MMP17、MMP2、MNDA、MSH2、MSH6、MT3、MYB、MYBL1、MYBL2、MYC、MYCL1、MYCN、MYD88、MYL9、MYLK、NEO1、NF1、NF2、NFKB l、NFKB2、NFSF7、NID、NINJ1、NMBR、NME1、NME2、NME3、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH4、NPM1、NQO1、NR1D1、NR2F1、NR2F6、NRAS、NRG1、NSEP1、OSM、PA2G4、PABPC1、PCNA、PCTK1、PCTK2、PCTK3、PDGFA、PDGFB、PDGFRA、PDPK1、PEA15、PFDN4、PFDN5、PGAM1、PHB、PIK3CA、PIK3CB、PIK3CG、PIM1、PKM2、PKMYT1、PLK2、PPARD、PPARG、PPIH、PPP1CA、PPP2R5A、PRDX2、PRDX4、PRKAR1A、PRKCBP1、PRNP、PRSS15、PSMA1、PTCH、PTEN、PTGS1、PTMA、PTN、PTPRN、RAB5A、RAC1、RAD50、RAF1、RALBP1、RAP1A、RARA、RARB、RASGRF1、RB1、RBBP4、RBL2、REA、REL、RELA、RELB、RET、RFC2、RGS 19、RHOA、RHOB、RHOC、RHOD、RIPK1、RPN2、RPS6KB1、RRM1、SARS、SELENBP1、SEMA3C、SEMA4D、SEPP1、SERPINH1、SFN、SFPQ、SFRS7、SHB、SHH、SIAH2、SIVA、SIVA TP53、SKI、SKIL、SLC16A1、SLC1A4、SLC20A1、SMO、SMPD1、SNAI2、SND1、SNRPB2、SOCS 1、SOCS3、SOD1、SORT1、SPINT2、SPRY2、SRC、SRPX、STAT1、STAT2、STAT3、STAT5B、STC1、TAF1、TBL3、TBRG4、TCF1、TCF7L2、TFAP2C、TFDP1、TFDP2、TGFA、TGFB 1、TGFBI、TGFBR2、TGFBR3、THBS1、TIE、TIMP1、TIMP3、TJP1、TK1、TLE1、TNFα、TNFRSF10A、TNFRSF10B、TNFRSF1A、TNFRSF1B、TNFRSF6、TNFSF7、TNK1、TOB1、TP53、TP53BP2、TP53I3、TP73、TPBG、TPT1、TRADD、TRAM1、TRRAP、TSG101、TUFM、TXNRD1、TYRO3、UBC、UBE2L6、UCHL1、USP7、VDAC1、VEGF、VHL、VIL2、WEE1、WNT1、WNT2、WNT2B、WNT3、WNT5A、WT1、XRCC1、YES1、YWHAB、YWHAZ、ZAP70、およびZNF9から選択される、
請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
欠損または機能不全が、フェニルケトン尿症であり、および導入遺伝子によってコードされるタンパク質が、フェニルアラニンヒドロキシラーゼである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
欠損または機能不全が、ゴーシェ病であり、および導入遺伝子によってコードされるタンパク質が、β-グルコセレブロシダーゼである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
欠損または機能不全が、肝臓に関連する状態、疾患または障害であり、および、導入遺伝子が、ATP7Bである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
欠損または機能不全が、血液に関連する状態、疾患または障害であり、および、導入遺伝子が、第VIII因子(FVIII)または第IX因子(FIX)である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
欠損または機能不全が、眼に関連する状態、疾患または障害であり、および、導入遺伝子が、ABCA4またはCEP290である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
核酸インサートが、TALENSのための基質、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)のための基質、メガヌクレアーゼのための基質、Cas9のための基質、および他の遺伝子編集タンパク質のための基質から選択される遺伝子編集のための基質としての、無プロモーター構築物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
ceDNAが、薬学的に許容し得る賦形剤または担体と共に調製される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
ceDNAが、脂質ナノ粒子によって送達される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
ceDNAが、所望の組織をトランスフェクトし、かつ、十分なレベルの遺伝子導入および発現を提供するための治療的有効量で対象に投与され、ここで、ceDNAは、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腫瘍内、くも膜下腔内、眼内、腹腔内または硝子体内投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
門脈静脈注射によって投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、35 U.S.C.119(e)の元で、2016年3月3日出願の米国仮出願第62/303,047号、名称「非ウイルス的遺伝子導入のための閉鎖型直鎖状二重鎖DNA」、2016年9月14日出願の第62/394,720号、名称「非ウイルス的遺伝子導入のための閉鎖型直鎖状二重鎖DNA」、および2016年10月11日出願の第62/406,913号、名称「非ウイルス的遺伝子導入のための閉鎖型直鎖状二重鎖DNA」の、出願日の優先権を主張する。各参照された出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
現在の遺伝子送達ベクターは、いくつかの欠点を有する。ウイルスおよび細菌由来の遺伝子送達ベクターは両方とも、患者の先天性および適応性の免疫応答を誘導し得る。例えば、プラスミドDNA(pDNA)およびミニサークルDNA(mcDNA)ベクターは、典型的には、真核生物DNAに存在しない、原核生物のDNAメチル化パターンを有する。さらに、リポ多糖類(LPS)および他の細菌由来分子は脊椎動物細胞において、先天性免疫応答パターン認識受容体(PRR)により、病原体関連分子パターン(PAMP)として認識され、侵襲性微生物病原体に応答して細胞遺伝子の活性化をもたらす。プラスミドDNAは立体配座が細菌特有である;最も近い哺乳動物の構造は、ミトコンドリアゲノムまたは二重鎖環状DNAであり、これは細胞小器官内に区画化されていて、細胞質PRRには曝露されない。別の例では、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)は、処理されたキャプシド抗原に対するT細胞性応答を誘導することができ、または循環免疫グロブリンおよび非Ig糖タンパク質によって中和され得る。ウイルスベクターはまた、導入遺伝子を運ぶ能力が限られており、労働集約的で高価であり、生産に時間がかかる。したがって、遺伝子送達のための改善された組成物および方法が必要とされる。
【発明の概要】
【0003】
概要
本開示は、いくつかの側面において、特定種類の非対称末端(例えば、非対称かつ分断された自己相補的配列)が隣接する異種核酸インサートをコードする核酸の複製が、非対称末端(例えば、非対称かつ分断された自己相補的配列)の共有結合をもたらし、また新規な立体配座の閉鎖型直鎖状二重鎖DNA(ceDNA)の生成を導くという発見に関する。いくつかの態様において、非対称かつ分断された自己相補的配列を有する核酸は、他の遺伝子治療ベクター(例えば、ウイルスベースのベクター)に関連するスケールアップ問題を回避しつつ、容易に(例えば、大量に)生成され得る。この結果は、類似する核酸の増殖には内部パリンドローム領域に対称性が必要であるとの報告を考慮すると、驚くべきことである。
【0004】
いくつかの態様において、本明細書に開示された非対称かつ分断された自己相補的配列を有する核酸は、他の遺伝子治療ベクター(例えば、対称かつ分断された自己相補的配列を有する核酸)と比較して、改善された遺伝的安定性を有し得る。いくつかの態様において、本明細書に開示された非対称かつ分断された自己相補的配列を有する核酸は、他のベクター(例えば、対称かつ分断された自己相補的配列を有する核酸)と比較して、改善された安全性プロファイルを有し得る。例えば、いくつかの態様において、非対称かつ分断された自己相補的配列を有する核酸の投与は、他のベクター(例えば、対称かつ分断された自己相補的配列を有する核酸)と比較して、構築物の非対称的性質のために、挿入変異誘発を生じる可能性が低くなり得る。
【0005】
ある態様において、転写物(例えば、タンパク質または機能性核酸をコードする転写物)を発現するように操作された非対称かつ分断された自己相補的配列を有する核酸は、他のベクター(例えば、対称かつ分断された自己相補的配列を有する核酸)と比較して、改善された発現を有し得るが、これは、構築物の非対称的性質が、細胞においてかかるベクターの転写能力を低下させ得る一定の酵素(例えば、RecQヘリカーゼなどのヘリカーゼ)との相互作用を起こりにくくするからである。
【0006】
いくつかの態様において、本明細書に記載の非対称かつ分断された自己相補的配列を有する核酸の投与は、他の遺伝子治療ベクター(例えば、プラスミドDNAベクターおよびウイルスベクター)の投与と比較して、対象における免疫応答を誘導する可能性が低い。したがって、いくつかの態様において、本明細書に記載の核酸は、複数の機会に対象に投与することができ(例えば、長期の遺伝子治療の文脈において)、しかもその核酸によってコードされる遺伝子産物の発現および/または活性を予防または阻害するような実質的な免疫応答を誘導することはない。
【0007】
いくつかの側面において、本開示は、少なくとも1つの分断された自己相補的配列が隣接する異種核酸インサートを含む核酸であって、各自己相補的配列は、作動性末端分解部位およびローリングサークル複製タンパク質結合要素を有し、ここで自己相補的配列は、2つの対向する縦方向対称ステムループを形成する交差アーム配列により分断され、対向する縦方向対称ステムループの各々は、長さ5~15塩基対の範囲のステム部分と2~5個の不対のデオキシリボヌクレオチドを有するループ部分とを有する、前記核酸を提供する。
【0008】
いくつかの態様において、分断された自己相補的配列は、パルボウイルス、ディペンドウイルス(dependovirus)などを含む1つ以上の生物またはウイルス血清型に由来する。例えば、いくつかの態様において、核酸は、AAV2血清型に由来する第1の分断された自己相補的配列、およびAAV9血清型に由来する第2の分断された自己相補的配列を含む。別の非限定的な例において、本開示に記載される核酸は、AAV2血清型からの第1の分断された自己相補的配列、およびパルボウイルス(例えば、パルボウイルスB19)からの第2の分断された自己相補的配列を含み得る。いくつかの態様において、分断された自己相補的配列は、同じ生物またはウイルス血清型に由来するが、異なる長さ、またはそれらの組み合わせを有する。いくつかの態様において、核酸は、切断された交差アーム配列により分断された、第2の分断された自己相補的配列を含む。例えば、いくつかの態様において、核酸は、145塩基対の長さであるAAV2血清型に由来する第1の自己分断された自己相補的配列、および長さが145塩基対より短いAAV2血清型に由来する第2の分断された自己相補的配列(例えば、切断された交差アーム配列)を含む。
【0009】
いくつかの側面において、本開示は、分断された自己相補的配列が隣接する異種核酸インサートを含む核酸であって、各自己相補的配列は、作動性末端分解部位およびローリングサークル複製タンパク質結合要素を有し、ここで1つの自己相補的配列は、2つの対向する縦方向対称ステムループを形成する交差アーム配列により分断され、対向する縦方向対称ステムループの各々は、長さが5~15塩基対の範囲のステム部分と2~5個の不対のデオキシリボヌクレオチドを有するループ部分とを有し、ここでもう1つの自己相補的配列は、切断された交差アーム配列により分断されている、前記核酸を提供する。
【0010】
いくつかの態様において、分断された自己相補的配列(単数または複数)は、40~1000ヌクレオチド長の範囲である。いくつかの態様において、分断された自己相補的配列(単数または複数)は、100~160ヌクレオチド長の範囲である。
いくつかの態様において、交差アーム配列は、-12kcal/mol~-30kcal/molの範囲の生理学的条件下で、アンフォールディングのギブス自由エネルギー(ΔG)を有する。いくつかの態様において、交差アーム配列は、-20kcal/mol~-25kcal/molの範囲の生理学的条件下で、アンフォールディングのギブス自由エネルギー(ΔG)を有する。
いくつかの態様において、対向する縦方向対称ステムループの各々は、長さが3~15塩基対の範囲のステム部分を有する。いくつかの態様において、対向する縦方向対称ステムループの各々は、長さが8~10塩基対の範囲のステム部分を有する。
【0011】
いくつかの態様において、各ループ部分は、2~5個の不対のデオキシリボヌクレオチドを有する。いくつかの態様において、各ループ部分は、3個のデオキシリボヌクレオチドを有する。
いくつかの態様において、1つのループ部分は3個のデオキシチミジンを有し、もう1つのループ部分は3個のデオキシアデノシンを有する。
いくつかの態様において、ローリングサークル複製タンパク質結合要素は、Rep結合要素(RBE)である。いくつかの態様において、RBEは、配列5’-GCTCGCTCGCTC-3’(配列番号1)を含む。
いくつかの態様において、作動性末端分解部位は、配列5’-TT-3’を含む。いくつかの態様において、作動性末端分解部位の3’末端は、ローリングサークル複製タンパク質結合要素の5’末端から15~25ヌクレオチドである。
【0012】
いくつかの態様において、切断された交差アーム配列は、2つの対向する縦方向非対称のステムループを形成する。いくつかの態様において、対向する縦方向非対称ステムループの1つは、長さが8~10塩基対の範囲のステム部分と、2~5個の不対のデオキシリボヌクレオチドを有するループ部分とを有する。いくつかの態様において、1つの縦方向非対称ステムループは、8塩基対未満の長さのステム部分と、2~5個のデオキシリボヌクレオチドを有するループ部分とを有する。いくつかの態様において、1つの縦方向非対称ステムループは、3塩基対未満の長さのステム部分を有する。いくつかの態様において、1つの縦方向非対称ステムループは、3個以下のデオキシリボヌクレオチドを有するループ部分を有する。いくつかの態様において、切断された交差アーム配列は、0kcal/mol~-22kcal/molの範囲の生理学的条件下で、アンフォールディングのギブス自由エネルギー(ΔG)を有する。
【0013】
いくつかの態様において、異種核酸インサートは、タンパク質または機能性RNAを発現するように操作される。いくつかの態様において、異種核酸インサートは、遺伝子編集のための基質としての、無プロモーター構築物(プロモーターのない構築物)である。いくつかの態様において、無プロモーター構築物は、TALENS、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ、Cas9、および他の遺伝子編集タンパク質のための基質を提供する。いくつかの態様において、無プロモーター構築物は、細胞DNAと相同性を有する核酸に隣接して、細胞ゲノムへの相同組換えを促進する。いくつかの態様において、構築物は細胞DNAと相同性を有する核酸に隣接して、細胞ゲノムへの相同組換えを促進する。
【0014】
いくつかの態様において、核酸は、500~50,000ヌクレオチド長の範囲である。いくつかの態様において、核酸は、500~10,000ヌクレオチド長の範囲である。いくつかの態様において、核酸は、1000~10,000ヌクレオチド長の範囲である。いくつかの態様において、核酸は、500~5,000ヌクレオチド長の範囲である。
いくつかの側面において、本開示は、本開示に記載の複数の核酸を含む組成物を提供する。いくつかの態様において、複数の核酸は、エンド・ツー・エンドで連結される。いくつかの側面において、本開示は、本開示に記載の核酸および薬学的に許容し得る担体を含む、組成物を提供する。
【0015】
いくつかの側面において、本開示は、単一サブユニットを含む単量体核酸、および2つ以上のサブユニットを含む少なくとも1つの多量体核酸、を含む組成物であって、ここで単量体核酸および少なくとも1つの多量体核酸の各サブユニットは、分断された自己相補的配列が隣接する異種核酸インサートを含み、各自己相補的配列は、作動性末端分解部位およびローリングサークル複製タンパク質結合要素を有し、ここで1つの自己相補的配列は、2つの対向する縦方向対称ステムループを形成する交差アーム配列により分断され、もう1つの自己相補的配列は、切断された交差アーム配列により分断される、前記組成物を提供する。いくつかの態様において、各多量体は、少なくとも1つ、およびいくつかの場合によっては1つのみの、自己相補的末端パリンドロームを有する。
いくつかの態様において、少なくとも1つの多量体核酸は、2つのサブユニットを含む。いくつかの態様において、多量体核酸は、2つ以下のサブユニットを有する。いくつかの態様において、2つのサブユニットは、tail-to-tail構成、またはhead-to-head構成、またはhead-to-tail構成で連結される。
【0016】
いくつかの側面において、本開示は、本開示に記載の核酸を含む宿主細胞を提供する。いくつかの態様において、宿主細胞はさらに、核酸のローリングサークル複製タンパク質結合要素に選択的に結合する、ローリングサークル複製タンパク質を含む。
いくつかの態様において、本開示は、異種核酸を細胞に送達する方法を提供し、該方法は、本開示に記載の核酸を細胞に送達することを含む。
いくつかの側面において、本開示は、異種核酸を対象に送達する方法を提供し、該方法は、本開示に記載の核酸を対象に送達することを含み、ここで核酸の送達は、対象の核酸に対する後天性免疫応答の誘発をもたらさない。いくつかの態様において、免疫応答は体液性応答である。いくつかの態様において、免疫応答は細胞性応答である。
【0017】
いくつかの態様において、異種核酸は、複数の機会に対象に送達される。いくつかの態様において、異種核酸が対象に送達(例えば、投与)される機会の回数は、2~10回の範囲内である。いくつかの態様において、異種核酸が対象に送達される機会の回数は、1時間1回、1日1回、週1回、2週間に1回、月1回、年4回、年2回、または1年に1回である。いくつかの態様において、異種核酸が対象に送達される機会の回数は、臨床的(例えば、治療的)利益を維持するために必要とされる機会の回数である。
いくつかの側面において、本開示は、異種核酸を対象に送達する方法を提供し、該方法は、本開示に記載の宿主細胞を対象に送達することを含む。いくつかの態様において、宿主細胞は血液細胞である。いくつかの態様において、宿主細胞は前駆細胞(例えば、造血幹細胞、HSC)、骨髄細胞、またはリンパ系細胞である。いくつかの態様において、宿主細胞は、複数の機会に送達される。いくつかの態様において、宿主細胞が複数の機会において送達される頻度は、宿主細胞の半減期により決定される。いくつかの態様において、宿主細胞は複数回送達されて、治療上の利益を達成する(例えば、達成および維持する)。
【0018】
いくつかの側面において、本開示は核酸を調製する方法を提供し、該方法は、(i)許容細胞に、少なくとも1つの分断された自己相補的配列が隣接する異種核酸インサートをコードする核酸を導入すること、各自己相補的配列は、作動性末端分解部位およびローリングサークル複製タンパク質結合要素を有し、ここで自己相補的配列は、2つの対向する縦方向対称のステムループを形成する交差アーム配列により分断され、対向する縦方向対称ステムループの各々は、長さが5~15塩基対の範囲のステム部分と、2~5個の不対デオキシリボヌクレオチドを有するループ部分とを有する;および(ii)許容細胞を、許容細胞中のローリングサークル複製タンパク質が核酸の複数コピーの生成を開始する条件下で、維持すること、を含む。
【0019】
いくつかの態様において、方法はさらに、核酸の複数コピーを精製するステップを含む。いくつかの態様において、精製は、核酸をシリカゲル樹脂と接触させることを含む。
いくつかの態様において、ローリングサークル複製タンパク質は、野生型AAV Rep78、AAV Rep52、AAV Rep68、およびAAV Rep40からなる群より選択される。いくつかの態様において、ローリングサークル複製タンパク質のセットは、AAV Rep 78とAAV Rep 68から少なくとも1つ、およびAAV Rep 52とAAV Rep 40から1つを含む。いくつかの態様において、ローリングサークル複製タンパク質は、切断タンパク質または融合タンパク質を含む野生型AAV Repタンパク質の機能的に等価な誘導体である。
【0020】
いくつかの態様において、許容細胞は、哺乳動物細胞ではない。いくつかの態様において、許容細胞は、昆虫または他の無脊椎動物種細胞株、酵母細胞株、または細菌細胞株である。いくつかの態様において、許容細胞は、例えばSpodoptera frugiperdaの幼虫などの生産のために使用される。いくつかの態様において、閉塞組換えAutograph californica核多角体病ウイルス(AcMNPV)を使用して、組換えタンパク質産生のために、例えば、幼虫におけるタンパク質産生のための現在の良好な製造方法(cGMP)プロセスを介して、S.frugiperdaの幼虫を感染させる。
いくつかの態様において、ローリングサークル複製タンパク質はヘルパーウイルスベクターによってコードされ、任意にここで、ヘルパーウイルスベクターは、Autograph californica核多角体病ウイルス(AcMNPV)ベクターまたはバキュロウイルス発現ベクター(BEV)である。
【0021】
いくつかの側面において、本開示は核酸を調製する方法を提供し、該方法は以下を含む:許容細胞に、分断された自己相補的配列が隣接する異種核酸インサートを含む核酸を導入すること、各自己相補的配列は、作動性末端分解部位およびローリングサークル複製タンパク質結合要素を有し、ここで1つの自己相補的配列は、2つの対向する縦方向対称のステムループを形成する交差アーム配列により分断され、ここでもう1つの自己相補的配列は、切断された交差アーム配列により分断され、ここで許容細胞は、ローリングサークル複製タンパク質を発現するが、核酸の複製可能コピーをウイルス粒子にパッケージング可能なウイルスカプシドタンパク質を発現しない;および、許容細胞を、許容細胞中のローリングサークル複製タンパク質が核酸を複製する条件下で、維持すること。
【0022】
いくつかの側面において、本開示は核酸を調製する方法を提供し、該方法は以下を含む:許容細胞に、分断された自己相補的配列が隣接する異種核酸インサートを含む核酸を導入すること、各自己相補的配列は、作動性末端分解部位およびローリングサークル複製タンパク質結合要素を有し、ここで1つの自己相補的配列は、2つの対向する縦方向対称のステムループを形成する交差アーム配列により分断されると決定されており、ここでもう1つの自己相補的配列は、切断された交差アーム配列により分断されると決定されており、ここで許容細胞は、ローリングサークル複製タンパク質を発現するが、核酸の複製可能コピーをウイルス粒子にパッケージング可能なウイルスカプシドタンパク質を発現しない;および、許容細胞を、許容細胞中のローリングサークル複製タンパク質が核酸を複製する条件下で、維持すること。
【0023】
いくつかの態様において、方法はさらに、複製核酸を許容細胞から単離することを含む。
いくつかの側面において、本開示は、核酸を分析する方法を提供し、該方法は以下を含む:許容細胞から単離された核酸複製生成物を含む、核酸調製物を得ること、ここで許容細胞は、分断された自己相補的配列が隣接する異種核酸インサートを含む核酸を含み、各自己相補的配列は、作動性末端分解部位およびローリングサークル複製タンパク質結合要素を有し、ここで1つの自己相補的配列は、2つの対向する縦方向対称のステムループを形成する交差アーム配列により分断され、ここでもう1つの自己相補的配列は、切断された交差アーム配列により分断され、ここで許容細胞は、ローリングサークル複製タンパク質を発現するが、核酸の複製可能コピーをウイルス粒子にパッケージング可能なウイルスカプシドタンパク質を発現せず、およびここで、ローリングサークル複製タンパク質は、核酸のローリングサークル複製タンパク質結合要素に結合し、核酸を複製して核酸複製生成物を生成する;および、1つ以上の複製生成物の生理化学的特性を決定すること。
【0024】
いくつかの態様において、生理化学的特性は、1つまたはそれぞれの自己相補的配列のヌクレオチド配列である。
いくつかの態様において、生理化学的特性は、1つ以上の複製生成物の多量体化の程度である。いくつかの態様において、生理化学的特性は、核酸調製物中の複製生成物の単量体形態および/または多量体形態の化学量論である。
いくつかの態様において、生理化学的特性は、1つ以上の複製生成物の、制限エンドヌクレアーゼによる消化に対する感受性である。
いくつかの態様において、生理化学的特性は、複製生成物の二量体形態における単量体の極性であり、ここで、極性はhead-to-head、head-to-tailまたはtail-to-tailである。
【0025】
いくつかの態様において、生理化学的特性は、1つ以上の複製生成物または複製生成物の断片の、分子量である。いくつかの態様において、分子量は、1つまたはそれぞれの自己相補的配列を含む1つ以上の複製生成物の断片の分子量である。いくつかの態様において、分子量は、電気泳動移動度に基づいて決定される。いくつかの態様において、分子量は、質量分析に基づいて決定される。
いくつかの態様において、分子量は、1つ以上の複製生成物の断片の分子量であり、ここで分子量を決定する前に、断片は、ポリメラーゼによるプライマー伸長を含む反応によって増幅される。いくつかの態様において、プライマー伸長を含む反応は、ポリメラーゼ連鎖反応である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】
図1Aは、安定性を最大にしてギブスの自由エネルギー(ΔG、負の値は自発的形成を示す)を低減することに基づく、AAV2 ITRの理論的二次構造を示す。
【
図1B】
図1Bは、非対称末端を有する核酸分子をもたらすAAV2 ITRのステム領域における切断の、いくつかの非限定的な例を示す。
【
図2】
図2A~2Bは、対称および非対称の開放型および閉鎖型二重鎖DNA(ceDNA)分子を表示する。
図2Aは、対称末端を有する核酸のいくつかの非限定的な例(左のボックス)および、非対称末端を有する核酸のいくつかの非限定的な例(例えば、ceDNA)(右のボックス)を示す。
図2Bは、非対称末端領域が、ウイルス複製の間に誘導される核酸ニッキングおよび鎖分離の変化を誘発し、閉鎖型二重鎖DNA分子の形成をもたらすことを示す(右)。
【0027】
【
図3】
図3は、一対の非対称ITRを示す図である。完全長のAAV2 ITRが上に示され、C-ステムに切断を有するAAV2 ITRが下に示されている。全長および切断されたITRは両方とも、作動性Rep結合要素(RBE)および作動性末端分解部位(trs)を含む。
【
図4】
図4は、非対称自己相補的核酸配列(例えば、AAV2 ITR)および眼疾患に関連する導入遺伝子を有する核酸構築物の、非限定的な例を示す。
【
図5】
図5は、非対称自己相補的核酸配列(例えば、AAV2 ITR)および血液疾患に関連する導入遺伝子を有する核酸構築物の、非限定的な例を示す。
【0028】
【
図6】
図6は、非対称自己相補的核酸配列(例えば、AAV2 ITR)および肝疾患に関連する導入遺伝子を有する核酸構築物の、非限定的な例を示す。
【
図7】
図7は、非対称自己相補的核酸配列(例えば、AAV2 ITR)および肺疾患に関連する導入遺伝子を有する核酸構築物の、非限定的な例を示す。
【0029】
【
図8A】
図8A~8Dは、ceDNAの眼への送達を示す。成体マウスをケタミン/キシラジン(100/10mg/kg)で麻酔し、トランスフェクション剤を1~2μlの容積の経強膜注射により硝子体内に送達した。抗生物質軟膏を角膜に塗布して、マウスが回復する間に眼が乾燥するのを防いだ。マウスを37度で回復させた後、マウスの部屋に2週間戻し、CO
2窒息により安楽死させた。網膜を切開し、フラットマウントまたは切片用に処理した。トランスフェクトされた細胞を検出するためには、GFP抗体染色は必要なかった。
図8Aは、マウス網膜上のGFP蛍光のフラットマウントを示す。
【
図8B】
図8A~8Dは、ceDNAの眼への送達を示す。成体マウスをケタミン/キシラジン(100/10mg/kg)で麻酔し、トランスフェクション剤を1~2μlの容積の経強膜注射により硝子体内に送達した。抗生物質軟膏を角膜に塗布して、マウスが回復する間に眼が乾燥するのを防いだ。マウスを37度で回復させた後、マウスの部屋に2週間戻し、CO
2窒息により安楽死させた。網膜を切開し、フラットマウントまたは切片用に処理した。トランスフェクトされた細胞を検出するためには、GFP抗体染色は必要なかった。
図8Bは、網膜の断面におけるGFP蛍光を示す。
【
図8C】
図8A~8Dは、ceDNAの眼への送達を示す。成体マウスをケタミン/キシラジン(100/10mg/kg)で麻酔し、トランスフェクション剤を1~2μlの容積の経強膜注射により硝子体内に送達した。抗生物質軟膏を角膜に塗布して、マウスが回復する間に眼が乾燥するのを防いだ。マウスを37度で回復させた後、マウスの部屋に2週間戻し、CO
2窒息により安楽死させた。網膜を切開し、フラットマウントまたは切片用に処理した。トランスフェクトされた細胞を検出するためには、GFP抗体染色は必要なかった。
図8Cは、網膜の断面におけるGFP蛍光およびグリア細胞染色を示す。
【
図8D】
図8A~8Dは、ceDNAの眼への送達を示す。成体マウスをケタミン/キシラジン(100/10mg/kg)で麻酔し、トランスフェクション剤を1~2μlの容積の経強膜注射により硝子体内に送達した。抗生物質軟膏を角膜に塗布して、マウスが回復する間に眼が乾燥するのを防いだ。マウスを37度で回復させた後、マウスの部屋に2週間戻し、CO
2窒息により安楽死させた。網膜を切開し、フラットマウントまたは切片用に処理した。トランスフェクトされた細胞を検出するためには、GFP抗体染色は必要なかった。
図8Dは、網膜下のエレクトロポレーション(上)および硝子体内注射(下)によるceDNA(例えば、非対称かつ分断された自己相補的配列を有するceDNA)の送達後の、マウス網膜におけるGFP蛍光を示す。
【0030】
【
図9A】
図9A~9Cは、in vivoのjetPEIで製剤化されたceDNA-GFP(例えば、非対称かつ分断された自己相補的配列を有し、GFPをコードするceDNA)の、ラット線条体への頭蓋内注射を示す。
図9Aは、注射後3週および20週でのGFP発現についての染色を示す;類似したGFP発現が3週および20週に見られた。
【
図9B】
図9A~9Cは、in vivoのjetPEIで製剤化されたceDNA-GFP(例えば、非対称かつ分断された自己相補的配列を有し、GFPをコードするceDNA)の、ラット線条体への頭蓋内注射を示す。
図9Bおよび9Cは、Iba1(
図9B)およびMHCII(
図9C)に対する抗体(Ab)を用いた、免疫組織化学(IHC)を示す;3週において、MHCIIまたはIba1抗原は脳切片に検出されなかった。
【
図9C】
図9A~9Cは、in vivoのjetPEIで製剤化されたceDNA-GFP(例えば、非対称かつ分断された自己相補的配列を有し、GFPをコードするceDNA)の、ラット線条体への頭蓋内注射を示す。
図9Bおよび9Cは、Iba1(
図9B)およびMHCII(
図9C)に対する抗体(Ab)を用いた、免疫組織化学(IHC)を示す;3週において、MHCIIまたはIba1抗原は脳切片に検出されなかった。
【0031】
【
図10A】
図10A~10Bは、プラスミドDNA分断された自己相補的配列の配列解析の結果を示す。
【
図10B】
図10A~10Bは、プラスミドDNA分断された自己相補的配列の配列解析の結果を示す。
【
図10C】
図10Cは、ceDNA-GFPのアガロースゲル電気泳動分離を示す。図の左側は、切断されていないceDNA-GFPおよびXhoIで消化されたceDNA-GFPの、天然ゲル電気泳動を示す。単量体ゲル(~2.1kb)および二量体(~4.1kb)配座異性体生成物が天然ゲル中に観察される;0.4末端断片は、ゲルの底部の不純物の蛍光により不明瞭である。図の右側は、切断されていないceDNA-GFPおよびXhoIで消化されたceDNA-GFPの、変性ゲル電気泳動を示す。二量体(約4.1kb)の配座異性体生成物が、変性ゲル中に観察される;0.8kbで一本鎖DNAとなる変性した末端0.4kb生成物もまた、観察される。
【0032】
詳細な説明
本開示は、いくつかの側面において、導入遺伝子の対象への(例えば、対象の細胞、または対象の組織への)送達のための、組成物および方法に関する。本開示は部分的に、ある種の非対称末端配列(例えば、非対称かつ分断された自己相補的配列)が隣接する異種核酸インサートをコードする核酸の複製が、非対称末端配列の共有結合をもたらし、閉鎖型直鎖状二重鎖DNA(ceDNA)の新規な立体配座の生成を導くとの発見に関する。いくつかの態様において、非対称かつ分断された自己相補的配列を有する核酸は、現在使用されている遺伝子治療ベクターと比較して、対象において改善された発現、複製(例えば、生産収率)を有し得る。いくつかの態様において、非対称かつ分断された自己相補的配列を含む核酸の改善された発現は、非対称かつ分断された自己相補的配列を含む核酸と比べて対称かつ分断された自己相補的配列を含む核酸と相互作用するRecQヘリカーゼ(例えば、RecQ1)の選好と関連する。
【0033】
いくつかの態様において、非対称かつ分断された自己相補的配列を有する核酸(例えば、異なる生物体もしくはウイルス血清型に由来するか、または同じ生物体もしくはウイルス血清型に由来するが異なる長さを有するか、またはこれらの組合せ)は、現在使用されている遺伝子治療ベクターと比較して、対象における挿入突然変異誘発の可能性を減少させ得る。いくつかの態様において、非対称かつ分断された自己相補的配列を有する核酸の投与は、プラスミドDNAベクターと比べて、対象において低下した免疫応答を誘導するか、または検出可能な免疫応答を誘導しない。
【0034】
「核酸」配列とは、DNAまたはRNA配列をいう。いくつかの態様において、本開示のタンパク質および核酸が単離される。本明細書で使用する場合、「単離された」という用語は、人工的に生成されたことを意味する。いくつかの態様において、核酸に関して、用語「単離された」は、核酸であって、(i)in vitroで、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅された;(ii)分子クローニングによって組換え産生された;(iii)制限エンドヌクレアーゼ切断およびゲル電気泳動分画、またはカラムクロマトグラフィーなどにより、精製された;または(iv)例えば化学合成によって合成された、前記核酸をいう。単離された核酸は、当技術分野で知られている組換えDNA技術によって、容易に操作可能なものである。したがって、5’および3’制限部位が既知であるかまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマー配列が開示されているベクターに含まれるヌクレオチド配列は、単離されていると考えられるが、自然状態でその天然の宿主に存在する核酸配列は、そうではない。単離された核酸は、実質的に精製され得るが、そうである必要はない。例えば、クローニングベクターまたは発現ベクター内で単離された核酸は、それが存在する細胞内のわずかなパーセンテージの材料しか含んでいないという点で、純粋ではない。しかしながら本明細書で使用する場合、かかる核酸は、当業者に知られている標準的な技術によって容易に操作できるため、単離されている。タンパク質またはペプチドに関して本明細書で使用される「単離された」という用語は、その自然環境から単離されたかまたは人工的に生成された、タンパク質またはペプチドを指す(例えば、化学合成により、組換えDNA技術により、等)。
【0035】
当業者はまた、保存的アミノ酸置換を行って、キャプシドタンパク質の機能的に等価なバリアントまたは相同体を提供できることを、理解するであろう。いくつかの側面において、本開示は、保存的アミノ酸置換を生じる配列改変を包含する。本明細書で使用する場合、保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸置換がなされるタンパク質の相対的な電荷またはサイズ特性を変化させない、アミノ酸置換をいう。バリアントは、当業者に知られているポリペプチド配列を変化させる方法にしたがって調製することができ、方法は例えば、かかる方法をまとめた参考文献に見出される(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, J. Sambrook, et al., eds., Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989、またはCurrent Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel, et al., eds., John Wiley & Sons, Inc., New York)。例えば、いくつかの態様において、アミノ酸の保存的置換には、以下の群内のアミノ酸の間の置換が含まれる:(a)M、I、L、V;(b)F、Y、W;(c)K、R、H;(d)A、G;(e)S、T;(f)Q、N;および(g)E、D。したがって、本明細書に開示のタンパク質およびポリペプチドのアミノ酸配列に対して、保存的アミノ酸置換を行うことができる。
【0036】
分断された自己相補的配列
本開示は部分的に、非対称末端配列(例えば、非対称かつ分断された自己相補的配列)を有する核酸が、いくつかの態様において、現在利用可能な遺伝子送達ベクターと比較して低い免疫原性を示す閉鎖型直鎖状二重鎖DNA構造(例えば、ceDNA)を形成する、という発見に基づいている。いくつかの態様において、ceDNAは、天然条件下では直鎖状二重鎖DNAとして振る舞い、変性条件下では一本鎖環状DNAとなる。いかなる特定の理論に束縛されることを望むものではないが、本開示に記載の核酸(例えば、ceDNA)は、いくつかの態様において、異種核酸インサート(例えば導入遺伝子)の対象への送達に有用である。
【0037】
いくつかの側面において、本開示は、分断された自己相補的配列が隣接する異種核酸インサートを含む核酸であって、各自己相補的配列は、作動性末端分解部位およびローリングサークル複製タンパク質結合要素を有し、ここで1つの自己相補的配列は、2つの対向する縦方向対称ステムループを形成する交差アーム配列により分断され、対向する縦方向対称ステムループの各々は、ステム部分とループ部分とを有し、ここでもう1つの自己相補的配列は、切断された交差アーム配列により分断されている、前記核酸を提供する。
本明細書で使用する場合、用語「隣接する」とは、第1の分断された自己相補的配列を異種核酸インサートに対して上流(例えば、5’)に配置し、第2の分断された自己相補的配列を異種核酸インサートに対して下流(例えば、3’)に配置することを言う。例えば、アデノ随伴ウイルスゲノムは、逆位末端配列(ITR)が「隣接」したrepおよびcap遺伝子のオープンリーディングフレームを含む。
【0038】
本明細書で使用する場合、用語「分断された自己相補的配列」とは、非パリンドロームポリヌクレオチドの1以上のストレッチにより分断されたパリンドローム(例えば、両者が同じ5’から3’方向に「読まれる」場合に、その相補鎖と同一であるポリヌクレオチドの連続ストレッチ)末端配列を有する核酸をコードするポリヌクレオチド配列をいう。一般に、1つ以上の分断されたパリンドローム配列をコードするポリヌクレオチドは、それ自体を折り畳んで、
図1Aに示すAAV2 ITR構造および
図2Aに示す例示構造に示すように、ステムループ構造(例えば、ヘアピンループ、「T」型ループまたは「Y」型ループ)を形成する。
【0039】
いくつかの態様において、分断された自己相補的配列は、ステム配列および交差アーム配列を有する「T」型構造を形成する。いくつかの態様において、「交差アーム配列」は、2つの対向する(例えば、ステム配列に対して)、縦方向対称ステムループを形成し、対向する縦方向対称ステムループの各々は、ステム部分とループ部分とを有する。例えば、いくつかの態様において、ステム配列は、ポリヌクレオチド配列(「A-A’」と称される)の相補的(例えばパリンドローム)5’-および3’-末端のハイブリダイゼーションにより形成され、ここでA-A’パリンドロームは、
図1Aに示すように、それぞれ「B-B’」および「C-C’」で示される一対のループ形成分断パリンドローム配列によって形成される交差アームポリヌクレオチド配列により、分断される。いくつかの態様において、各交差アームのループ部分(例えば、分断されたパリンドローム配列B-B’およびC-C’によって形成されるループ)は、不対ヌクレオチド(例えば、不対のデオキシリボヌクレオチド)から形成される。本開示に記載の分断された自己相補的配列は、2より多く(例えば、3、4、またはそれ以上)の交差アーム配列を含み得ることが、理解されるべきである。
【0040】
分断された自己相補的配列は、配列がヘアピンループを形成し、核酸複製(例えば、DNA複製)のためのプライマーとして機能する限り、任意のサイズであることができる。例えば、分断された自己相補的配列は、約20~約2000ヌクレオチド長の範囲であり得る。いくつかの態様において、分断された自己相補的配列は、約40~1000ヌクレオチド長の範囲である。いくつかの態様において、分断された自己相補的配列は、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、または1000までのヌクレオチド長である。いくつかの態様において、分断された自己相補的配列は、1000ヌクレオチドを超える長さである。いくつかの態様において、分断された自己相補的配列は、約100~160ヌクレオチド長の範囲である。いくつかの態様において、分断された自己相補的ヌクレオチドは、約115~約150ヌクレオチド長の範囲である。
【0041】
いくつかの側面において、本開示は、対向する縦方向対称ステムループを形成する分断された自己相補的配列を有する核酸に関する。いくつかの態様において、対向する縦方向対称のステムループの各々は、長さが3から15塩基対の範囲のステム部分を有する。いくつかの態様において、対向する縦方向対称ステムループの各々は、長さが8~10塩基対の範囲のステム部分を有する。いくつかの態様において、対向する縦方向対称ステムループの各々は、長さが3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15ヌクレオチドの、ステム部分を有する。
一般に、ステム-ループ構造のループ部分は、少なくとも2個の不対ヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、各ループ部分は、2~5個の不対のデオキシリボヌクレオチド(例えば、2、3、4または5個の不対のデオキシリボヌクレオチド)を有する。いくつかの態様において、本開示に記載の交差アーム配列の各ループ部分は、3個のデオキシリボヌクレオチドを有する。いくつかの態様において、本開示に記載の交差アーム配列の1つのループ部分は3個のデオキシチミジンを有し、もう1つのループ部分は3個のデオキシアデノシンを有する。
【0042】
いくつかの側面において、本開示は、核酸インサートに隣接する分断された自己相補的配列に関し、ここで分断された自己相補的配列は、互いに非対称である(例えば、異なる生物体またはウイルス血清型に由来するか、同じ生物体またはウイルス血清型に由来するが異なる長さを有するか、またはこれらの組み合わせ)。いくつかの態様において、一対の非対称自己相補的配列の1つは、切断された交差アーム配列を含む。本明細書で使用する場合、「切断された交差アーム配列」は、異種核酸配列に隣接する対応する自己相補的配列と比較して、より短い長さを有する交差アーム配列を指す。切断された交差アーム配列は、全長交差アーム配列と比較して、1~50(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50)個のヌクレオチド欠失を有することができる。いくつかの態様において、切断された交差アーム配列は、全長交差アーム配列と比較して、1~30個のヌクレオチド欠失を有する。いくつかの態様において、切断された交差アーム配列は、全長交差アーム配列と比較して、2~20個のヌクレオチド欠失を含む。
【0043】
いくつかの態様において、切断された交差アーム配列は、2つの対向する縦方向非対称ステムループを形成する。いくつかの態様において、切断された交差アーム配列の対向する縦方向非対称ステムループの1つは、長さが8から10塩基対の範囲のステム部分と、2から5個の不対のデオキシリボヌクレオチドを有するループ部分とを有する。いくつかの態様において、切断された交差アーム配列の1つの縦方向非対称ステムループは、長さが8塩基対未満のステム部分と2~5個のデオキシリボヌクレオチドを有するループ部分とを有する。いくつかの態様において、1つの縦方向非対称ステムループは、3塩基対未満の長さのステム部分を有する。いくつかの態様において、1つの縦方向非対称ステムループは、3個以下のデオキシリボヌクレオチドを有するループ部分を有する。
一般に、切断された交差アーム配列は、AまたはA’領域にいかなるヌクレオチド欠失を含まず(例えば、切断されていない交差アーム配列と比較して)、したがってDNA複製(例えば、Repタンパク質によるRBEへの結合、または末端分解部位でのニッキング)を妨げない。いくつかの態様において、切断された交差アーム配列は、B、B’、Cおよび/またはC’領域に1つ以上の欠失を有する。切断された交差アーム配列のいくつかの非限定的な例を、以下に示す:
【0044】
AAV2 ITRΔC領域は括弧で示す;角括弧内のすべてまたは部分的な欠失は、非対称かつ分断された自己相補的配列を作製するために使用することができる;以下、「RBE’」は「Rep結合要素」を意味する。
【表1】
【0045】
一般に、ヘアピン形成に必要とされる核酸の熱力学的特性(例えば、ギブス自由エネルギー(ΔG)、G+C組成、A+T組成、融解温度、各鎖の塩基組成、相補配列の長さ、二重鎖領域内の不対塩基、およびループを構成する不対塩基)は当分野で知られており、例えば以下に開示されている:Bosco et al., Nucl. Acids Res. (2013) doi: 10.1093/nar/gkt1089;最初にオンラインで公開:2013年11月12日。
【0046】
いくつかの態様において、交差アーム配列は、-12kcal/mol~-30kcal/molの範囲の生理学的条件下で、アンフォールディングのギブス自由エネルギー(ΔG)を有する。いくつかの態様において、交差アーム配列は、-20kcal/mol~-25kcal/molの範囲の生理学的条件下で、アンフォールディングのギブス自由エネルギー(ΔG)を有する。いくつかの態様において、切断された交差アーム配列の熱力学的特性は、それらを非対称にするところの配列差異を有していたとしても、全長交差アーム配列と同じ(例えば同一)であり得る。いくつかの態様においては、切断された交差アーム配列の熱力学的特性は、全長交差アーム配列のそれとは異なり得る。例えば、いくつかの態様において、切断された交差アーム配列は、0kcal/mol~-22kcal/molを超える範囲の生理学的条件下で、アンフォールディングのギブス自由エネルギー(ΔG)を有する。
【0047】
本明細書で使用する場合、用語「作動性」とは、核酸配列の、その意図された機能を果たす能力を指す。例えば、「作動性結合領域」とは、その意図された標的(例えば、タンパク質または核酸)に対する結合機能を保持する核酸配列である。別の例において、「作動性切断部位」とは、特定の1酵素または複数酵素によって特異的に切断されるその能力を保持する、核酸配列である。
本開示の側面は、作動性ローリングサークル複製タンパク質結合要素を含む自己相補的核酸配列が、閉鎖型直鎖状二重鎖DNA(ceDNA)の形成に必要であるという発見に関する。本明細書で使用する場合、「ローリングサークル複製タンパク質結合要素」は、ローリングサークル複製タンパク質により認識され結合される保存された核酸配列(例えばモチーフ)をいい、これは、ローリングサークル(例えば、ローリングヘアピン)複製を開始するウイルス性非構造タンパク質(NSタンパク質)である。ローリングサークル(例えば、ローリングヘアピン)複製は、Tattersall et al. Nature 2009, 263, pp. 106-109に記載されている。NSタンパク質の例としては、限定はされないが、AAV Repタンパク質(例えばRep78、Rep68、Rep52、Rep40)、パルボウイルス非構造タンパク質(例えばNS2)、ロタウイルス非構造タンパク質(例えばNSP1)、およびデンソウイルス非構造タンパク質(例えば、PfDNV NS1)が挙げられる。いくつかの態様において、ローリングサークル複製タンパク質結合要素は、Rep結合要素(RBE)である。いくつかの態様において、RBEは、配列5’-GCTCGCTCGCTC-3’を含む。
【0048】
いくつかの態様において、ローリングサークル複製タンパク質は、直鎖状一本鎖DNAゲノムを有するウイルスのParvoviridae科のディペンドパルボウイルス属に由来する。いくつかの態様において、ローリングサークル複製タンパク質は、以下を含む自律Parvoviridae属に由来する:マウスの微小ウイルス、アリューシャンミンク病ウイルス、ウシパルボウイルス、イヌパルボウイルス、ニワトリパルボウイルス、猫汎白血球減少症ウイルス、ネコパルボウイルス、ガチョウパルボウイルス、HBパルボウイルス、H-1パルボウイルス、キルハムラットウイルス、ラパインパルボウイルス、LUIIIウイルス、ミンク腸炎ウイルス、マウスパルボウイルス、ブタパルボウイルス、アライグマパルボウイルス、RTパルボウイルス、腫瘍ウイルスX、ラットパルボウイルス1a、バルバリーダックパルボウイルス、ウマパルボウイルス、ハムスターパルボウイルスおよび関節リウマチウイルス1。いくつかの態様において、属はパルボウイルスである。いくつかの態様において、ローリングサークル複製タンパク質は、ブレビデンソウイルス、デンソウイルス、およびイテラウイルスを含む、Densovirinae属に由来する。
【0049】
いくつかの態様において、ローリングサークル複製タンパク質は、Parvovirinaeサブファミリーの属に由来する。Parvovirinae属の例としては、限定はされないが、Amdoparvovirus、Aveparvovirus、Bocaparvovirus、Copiparvovirus、Dependoparvovirus、Erythroparvovirus、Protoparvovirus、Tetraparvovirusが挙げられる。いくつかの態様において、ローリングサークル複製タンパク質は、Densovirinaeサブファミリーの属に由来する。Densovirinae属の例としては、限定はされないが、Amdoparvovirus、Aveparvovirus、Bocaparvovirus、Copiparvovirus、Dependoparvovirus、Erythroparvovirus、Protoparvovirus、およびTetraparvovirusが挙げられる。いくつかの態様において、ローリングサークル複製タンパク質は、Dependovirus、例えばアデノ随伴ウイルス2(AAV2)、アデノ随伴ウイルス3(AAV3)、アデノ随伴ウイルス4(AAV4)、またはアデノ随伴ウイルス5(AAV5)、またはそれらの任意の組み合わせに由来する。
いくつかの態様において、ローリングサークル複製タンパク質は、一本鎖DNAバクテリオファージファミリーに由来する。いくつかの態様において、ウイルス科は、MicroviridaeおよびInoviridaeである。
【0050】
いくつかの態様において、ローリングサークル複製タンパク質は、グラム陽性細菌に由来する。
本開示の側面は、作動性末端分解部位(trs)を含む分断された自己相補的核酸配列が、閉鎖型直鎖状二重鎖DNA(ceDNA)の形成に必要であるという発見に関する。典型的には、分断された自己相補的核酸配列(例えば、AAV ITR)を含む核酸の複製は、交差アーム(例えば、ヘアピン構造)の3’末端から開始され、一方の末端が共有結合で閉じられた二重鎖分子を生成する;次いで二重鎖分子の共有結合で閉じた末端を、末端分解と呼ばれるプロセスにより切断して、2つの別々の一本鎖核酸分子を形成する。いかなる特定の理論に束縛されることを望むものではないが、末端分解のプロセスは、末端分解部位(trs)(例えば、AAV Repタンパク質などのローリングサークル複製タンパク質)において部位特異的および鎖特異的エンドヌクレアーゼ切断により媒介される。trs配列の例には、3’-CCGGTTG-5および5’-AGTTGG-3’(AAV2 p5タンパク質によって認識される)が含まれる。Rep媒介性の鎖のニッキングは、trs配列の中心のジチミジン(「TT」)部分の間で起こると仮定されている。したがって、いくつかの態様において、作動性末端分解部位は、配列5’-TT-3’を含む。
【0051】
本開示の側面は、ローリングサークル複製タンパク質結合要素に相対的な末端分解部位(trs)の配置に関する。一般に、trsは、ローリングサークル複製タンパク質結合要素の上流(例えば、5’)に位置する。しかしながらいくつかの態様において、trsは、ローリングサークル複製タンパク質結合要素の下流(例えば、3’)に位置する。いくつかの態様において、作動性末端分解部位の3’末端は、ローリングサークル複製タンパク質結合要素の5’末端から15~25ヌクレオチド(例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25ヌクレオチド)である。
【0052】
いくつかの態様において、分断された自己相補的配列は、AAV逆位末端反復配列である。AAV ITR配列は、任意のAAV血清型であることができ、限定はされないが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、非ヒト霊長類AAV血清型(例えばAAVrh.10)、およびそのバリアントを含む。いくつかの態様において、分断された自己相補的配列は、AAV2 ITRまたはそのバリアント(例えば、AAV2 ITR、または「Bアーム」もしくは「Cアーム」に欠失を有する切断型AAV2 ITR)である。いくつかの態様において、分断された自己相補的配列は、AAV5 ITRまたはそのバリアント(例えば、AAV5 ITR、または「Bアーム」もしくは「Cアーム」に欠失を有する切断型AAV5 ITR)である。本明細書で使用する場合、AAV ITRの「バリアント」は、野生型AAV ITR配列と約70%~約99.9%の類似性を有するポリヌクレオチドである。いくつかの態様において、AAV ITRバリアントは、野生型AAV ITRと約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%または約99%同一である。
AAV ITRは、2つの立体配座、すなわちAAV複製のローリングヘアピン機構の結果である「フリップ」および「フロップ」で存在することができる。「フリップ」および「フロップ」両方の立体配座における分断された自己相補的配列(例えば、AAV2 ITR)の非限定的な例を、以下に示す:
【0053】
【0054】
いくつかの態様において、本開示に記載の核酸(例えば、ceDNA)は、フリップ立体配座の分断された自己相補的配列を含む。いくつかの態様において、本開示に記載の核酸(例えば、ceDNA)は、フロップ立体配座の分断された自己相補的配列を含む。
本開示の側面は、本開示に記載の核酸の集団を含む、組成物に関する。一般に集団は、同種(例えば、同一核酸の複数コピーを含む)または異種(例えば、複数の異なる核酸を含む)であり得る。例えば、いくつかの態様において組成物は、単一のサブユニットを含む単量体核酸(例えば、単一種の単量体核酸の集団)を含む。いくつかの態様において、サブユニットは、分断された自己相補的配列が隣接する異種核酸インサートを含み、各自己相補的配列は、作動性末端分解部位およびローリングサークル複製タンパク質結合要素を有し、ここで1つの自己相補的配列は、2つの対向する縦方向対称ステムループを形成し、もう1つの自己相補的配列は、切断された交差アーム配列により分断されている。
【0055】
いくつかの態様において、組成物は、2つ以上のサブユニット(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上のサブユニット)を含む多量体核酸を含む。いくつかの態様において、多量体核酸の各サブユニットは、分断された自己相補的配列が隣接する異種核酸インサートを含み、各自己相補的配列は、作動性末端分解部位およびローリングサークル複製タンパク質結合要素を有し、ここで1つの自己相補的配列は、2つの対向する縦方向対称ステムループを形成する交差アーム配列により分断され、もう1つの自己相補的配列は、切断された交差アーム配列により分断される。いくつかの態様において、多量体核酸は2つのサブユニットを含む(例えば、二量体である)。いくつかの態様において、各多量体は、少なくとも1つ、場合によっては1つのみの自己相補的末端パリンドロームを有する。
【0056】
いくつかの態様において、多量体核酸のサブユニットは、コンカテマーを形成する。本明細書で使用する場合、「コンカテマー」とは、典型的には直列に結合している同一または実質的に同一の核酸配列(例えば、サブユニット)の複数コピーを含む核酸分子を指す。いくつかの態様において、本開示に記載のコンカテマーは、heat-to-head極性またはtail-to-tail極性のいずれかに指向することができる。サブユニットがRNA転写物を発現するように構成された異種核酸配列を含む態様においては、「heat-to-head」極性とは、各サブユニットのプロモーター配列に最も近い分断された自己相補的配列が共有結合しているコンカテマーを指す(例えば、サブユニットは5’末端から5’末端に連結される)。かかる態様において、「tail-to-tail」極性とは、各サブユニットのプロモーター配列に対して遠位の分断された自己相補的配列が共有結合しているコンカテマーを指す(例えば、サブユニットは5’末端から5’末端に連結される)。いくつかの態様において、2つのサブユニットは、tail-to-tail構造(例えば、極性)で連結されている。
いくつかの態様において、組成物は、単量体核酸および多量体核酸の両方を含む(例えば、核酸の異種集団を含む)。
【0057】
異種核酸インサート
核酸の導入遺伝子配列(例えば、異種核酸インサート)の組成は、得られる核酸の使用に依存する。例えば、1つの種類の導入遺伝子配列は、発現時に検出可能なシグナルを生成するレポーター配列を含む。別の例において、導入遺伝子は、治療用タンパク質または治療用機能性RNAをコードする。別の例において、導入遺伝子は、研究目的での使用が意図されるタンパク質または機能性RNAをコードして、例えば、導入遺伝子を含む体細胞トランスジェニック動物モデルを作製し、例えば、導入遺伝子産物の機能を研究する。別の例において、導入遺伝子は、疾患の動物モデルを作製するための使用が意図されるタンパク質または機能性RNAをコードする。適切な導入遺伝子コード配列は、当業者には明らかであろう。
【0058】
本開示は、部分的に、AAVベクターとは異なり、本明細書に記載の核酸(例えば、ceDNA)が異種核酸インサート(例えば、導入遺伝子配列)のサイズに関して限定されないという発見に基づく。いくつかの態様において、分断された自己相補的配列が隣接する導入遺伝子(例えば、異種核酸インサート)は、約10~約5,000塩基対、約10~約10,000塩基対、約10~約50,000塩基対の長さの範囲である。いくつかの態様において、分断された自己相補的配列が隣接する導入遺伝子(例えば、異種核酸インサート)は、約10~約50塩基対の長さの範囲である。いくつかの態様において、分断された自己相補的配列が隣接する導入遺伝子(例えば、異種核酸インサート)は、約20~約100塩基対の長さの範囲である。いくつかの態様において、分断された自己相補的配列が隣接する導入遺伝子(例えば、異種核酸インサート)は、約500~約1500塩基対の長さの範囲である。いくつかの態様において、分断された自己相補的配列が隣接する導入遺伝子(例えば、異種核酸インサート)は、約1000~約5000塩基対の長さの範囲である。いくつかの態様において、導入遺伝子(例えば、異種核酸インサート)のサイズは、伝統的なAAVベクターの容量を超える(例えば、約4.8kbを超える)。
【0059】
導入遺伝子中に提供され得るレポーター配列としては、限定はされないが、β-ラクタマーゼ、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、および当技術分野で知られている他のものをコードするDNA配列が含まれる。発現を促進する調節要素と会合すると、レポーター配列は従来の手段によって検出可能なシグナルを提供し、該手段としては、酵素、放射線、比色、蛍光または他の分光学的アッセイ、蛍光活性化細胞選別アッセイ、および酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を含む免疫アッセイ、ラジオイムノアッセイ(RIA)および免疫組織化学が含まれる。例えば、マーカー配列がLacZ遺伝子の場合、シグナルを運ぶベクターの存在は、β-ガラクトシダーゼ活性についてのアッセイにより検出される。導入遺伝子が緑色蛍光タンパク質またはルシフェラーゼの場合、シグナルを運ぶベクターは、ルミノメーターでの色または光生成によって、視覚的に測定することができる。かかるレポーターは、例えば、核酸の組織特異的標的化能力および組織特異的プロモーター調節活性の検証に、有用となり得る。
【0060】
いくつかの側面において、本開示は、哺乳動物における1つ以上の遺伝的欠損または機能不全、例えば哺乳動物におけるポリペプチド欠損またはポリペプチド過剰などを予防または処置するための方法、特に、細胞および組織中のかかるポリペプチドの欠損に関連する1つ以上の障害を示すヒトにおける欠損の重篤度または程度を処置または低減するための方法における、使用のための核酸を提供する。該方法は、1つ以上の治療用ペプチド、ポリペプチド、siRNA、マイクロRNA、アンチセンスヌクレオチドなどをコードする核酸(例えば、本開示に記載の核酸)を、薬学的に許容し得る担体中で、対象に、かかる障害に罹患している対象の欠損または障害を処置するのに十分な量および期間、投与することを含む。
【0061】
したがって、本開示は、哺乳動物対象における疾患状態の処置または予防に有用な、1つ以上のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質をコードする核酸(例えば、本開示に記載の核酸)の送達を包含する。典型的な治療用タンパク質としては、増殖因子、インターロイキン、インターフェロン、抗アポトーシス因子、サイトカイン、抗糖尿病因子、抗アポトーシス剤、凝固因子、抗腫瘍因子からなる群から選択される、1種以上のポリペプチドが含まれる。治療用タンパク質の他の非限定的な例には、以下が含まれる:BDNF、CNTF、CSF、EGF、FGF、G-SCF、GM-CSF、ゴナドトロピン、IFN、IFG-1、M-CSF、NGF、PDGF、PEDF、TGF、VEGF、TGF-B2、TNF、プロラクチン、ソマトトロピン、XIAP1、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-10(187A)、ウイルスIL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17およびIL-18。
【0062】
核酸(例えば、本開示に記載の核酸)は、遺伝子の発現の低下、発現の欠如または機能不全に関連する疾患を処置するために対象に移入される(例えば、発現される)遺伝子を含んでよい。例示的な遺伝子および関連する疾患状態としては、限定はされないが、以下が挙げられる:糖原病1A型(glycogen storage deficiency type 1A)に関連する、グルコース-6-ホスファターゼ;Pepck欠損症に関連する、ホスホエノールピルビン酸-カルボキシキナーゼ;ガラクトース血症に関連する、ガラクトース-1リン酸ウリジルトランスフェラーゼ;フェニルケトン尿症に関連する、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ;メープルシロップ尿病に関連する、分枝鎖α-ケト酸デヒドロゲナーゼ;1型チロシン血症に関連する、フマリルアセトアセテート加水分解酵素;メチルマロン酸血症に関連する、メチルマロニル-CoAムターゼ;中鎖アセチルCoA欠損に関連する、中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ;オルニチントランスカルバミラーゼ欠損に関連する、オルニチントランスカルバミラーゼ;シトルリン血症に関連する、アルギニノコハク酸合成酵素;家族性高コレステロール血症に関連する、低密度リポタンパク質受容体タンパク質;クリグラー・ナジャー病に関連する、UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ;重症複合免疫不全症に関連する、アデノシンデアミナーゼ;痛風およびレッシュニーン症候群に関連する、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ;ビオチニダーゼ欠損症に関連する、ビオチニダーゼ;ゴーシェ病に関連する、β-グルコセレブロシダーゼ;Sly症候群に関連する、β-グルクロニダーゼ;ゼルウィガー症候群に関連する、ペルオキシソーム膜タンパク質70kDa;急性間欠性ポルフィリン症に関連する、ポルホビリノーゲンデアミナーゼ;α-1アンチトリプシン欠乏症(気腫)の処置のための、α-1アンチトリプシン;サラセミアまたは腎不全に起因する貧血の処置のための、エリスロポエチン;虚血性疾患の処置のための、血管内皮増殖因子、アンギオポイエチン-1、および線維芽細胞増殖因子;例えばアテローム性動脈硬化症、血栓症または塞栓症に見られるような閉塞した血管の処置のための、トロンボモジュリンおよび組織因子経路阻害剤;パーキンソン病の処置のための、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)およびチロシンヒドロキシラーゼ(TH);うっ血性心不全の処置のための、βアドレナリン作動性受容体、ホスホランバンのアンチセンスまたは変異型、筋小胞体アデノシントリホスファターゼ-2(SERCA2)、および心臓アデニリルシクラーゼ;種々のがんの処置のための、p53などの腫瘍抑制遺伝子;炎症性および免疫性障害およびがんの処置のための、種々のインターロイキンの1つ等のサイトカイン;筋ジストロフィーの処置のための、ジストロフィンまたはミニジストロフィン、およびユートロフィンまたはミニユートロフィン;および、糖尿病の処置のためのインスリン。
【0063】
いくつかの態様において、本開示は、中枢神経系(CNS)に関連する状態、疾患または障害の処置に有用なタンパク質または機能性RNAをコードする、異種核酸インサートに関する。以下は、CNS疾患に関連する遺伝子の非限定的リストである:アルツハイマー病に関連する、DRD2、GRIA1、GRIA2、GRIN1、SLC1A1、SYP、SYT1、CHRNA7、3Rtau/4rTUS、APP、BAX、BCL-2、GRIK1、GFAP、IL-1、AGER;パーキンソン病に関連する、UCH-L1、SKP1、EGLN1、Nurr-1、BDNF、TrkB、gstm1、S106β;ハンチントン病に関連する、IT15、PRNP、JPH3、TBP、ATXN1、ATXN2、ATXN3、アトロフィン1、FTL、TITF-1;フリードリッヒ運動失調に関連するFXN;カナバン病に関連するASPA;筋ジストロフィーに関連するDMD;脊髄性筋萎縮に関連する、SMN1、UBE1、DYNC1H1。いくつかの態様において、本開示は、上記の遺伝子またはその断片の1つ以上を発現する、異種核酸インサートに関する。いくつかの態様において、本開示は、上記の遺伝子の1つ以上の発現を阻害する1つ以上の機能性RNAを発現する、異種核酸インサートに関する。
【0064】
いくつかの態様において、本開示は、心血管系に関連する状態、疾患または障害の処置に有用なタンパク質または機能性RNAをコードする、異種核酸インサートに関する。以下は、心血管疾患に関連する遺伝子の非限定的なリストである:VEGF、FGF、SDF-1、コネキシン40、コネキシン43、SCN4a、HIF1α、SERCa2a、ADCY1、およびADCY6。いくつかの態様において、本開示は、上記の遺伝子またはその断片の1つ以上を発現する、異種核酸インサートに関する。いくつかの態様において、本開示は、上記の遺伝子の1つ以上の発現を阻害する1つ以上の機能性RNAを発現する、異種核酸インサートに関する。
【0065】
いくつかの態様において、本開示は、肺系に関連する状態、疾患または障害の処置に有用なタンパク質または機能性RNAをコードする、異種核酸インサートに関する。以下は、肺疾患に関連する遺伝子の非限定的なリストである:CFTR、AAT、TNFα、TGFβ1、SFTPA1、SFTPA2、SFTPB、SFTPC、HPS1、HPS3、HPS4、ADTB3A、IL1A、IL1B、LTA、IL6、CXCR1、およびCXCR2。いくつかの態様において、本開示は、上記の遺伝子またはその断片の1つ以上を発現する、異種核酸インサートに関する。いくつかの態様において、本開示は、上記の遺伝子の1つ以上の発現を阻害する1つ以上の機能性RNAを発現する、異種核酸インサートに関する。肺系に関連する状態、疾患または障害の処置に有用なタンパク質または機能性RNAをコードする異種核酸インサートの非限定的な例を、
図10に示す。
【0066】
いくつかの態様において、本開示は、肝臓に関連する状態、疾患または障害の処置に有用なタンパク質または機能性RNAをコードする、異種核酸インサートに関する。以下は、肝疾患に関連する遺伝子の非限定的なリストである:α1-AT、HFE、ATP7B、フマリルアセトアセテート加水分解酵素(FAH)、グルコース-6-ホスファターゼ、NCAN、GCKR、LYPLAL1、PNPLA3、レシチンコレステロールアセチルトランスフェラーゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、およびG6PC。いくつかの態様において、本開示は、上記の遺伝子またはその断片の1つ以上を発現する、異種核酸インサートに関する。いくつかの態様において、本開示は、上記の遺伝子の1つ以上の発現を阻害する1つ以上の機能性RNAを発現する、異種核酸インサートに関する。肝臓に関連する状態、疾患または障害の処置に有用なタンパク質または機能性RNAをコードする異種核酸インサートの非限定的な例を、
図9に示す。
【0067】
いくつかの態様において、本開示は、腎臓に関連する状態、疾患または障害の処置に有用なタンパク質または機能性RNAをコードする、異種核酸インサートに関する。以下は、腎疾患に関連する遺伝子の非限定的なリストである:PKD1、PKD2、PKHD1、NPHS1、NPHS2、PLCE1、CD2AP、LAMB2、TRPC6、WT1、LMX1B、SMARCAL1、COQ2、PDSS2、SCARB3、FN1、COL4A5、COL4A6、COL4A3、COL4A4、FOX1C、RET、UPK3A、BMP4、SIX2、CDC5L、USF2、ROBO2、SLIT2、EYA1、MYOG、SIX1、SIX5、FRAS1、FREM2、GATA3、KAL1、PAX2、TCF2、およびSALL1。いくつかの態様において、本開示は、上記の遺伝子またはその断片の1つ以上を発現する、異種核酸インサートに関する。いくつかの態様において、本開示は、上記の遺伝子の1つ以上の発現を阻害する1つ以上の機能性RNAを発現する、異種核酸インサートに関する。
【0068】
いくつかの態様において、本開示は、眼に関連する状態、疾患または障害の処置に有用なタンパク質または機能性RNAをコードする、異種核酸インサートに関する。以下は、眼疾患に関連する遺伝子の非限定的なリストである:ABCA4、VEGF、CEP290、CFH、C3、MT-ND2、ARMS2、TIMP3、CAMK4、FMN1、RHO、USH2A、RPGR、RP2、TMCO、SIX1、SIX6、LRP12、ZFPM2、TBK1、GALC、ミオシリン、CYP1B1、CAV1、CAV2、オプチニューリンおよびCDKN2B。いくつかの態様において、本開示は、上記の遺伝子またはその断片の1つ以上を発現する、異種核酸インサートに関する。いくつかの態様において、本開示は、上記の遺伝子の1つ以上の発現を阻害する1つ以上の機能性RNAを発現する、異種核酸インサートに関する。眼に関連する状態、疾患または障害の処置に有用なタンパク質または機能性RNAをコードする異種核酸インサートの非限定的な例を、
図7に示す。
【0069】
いくつかの態様において、本開示は、血液(例えば、赤血球)に関連する状態、疾患または障害の処置に有用なタンパク質または機能性RNAをコードする、異種核酸インサートに関する。以下は、血液の疾患および障害に関連する遺伝子の非限定的なリストである:第VIII因子(FVIII)、第IX因子(FIX)、フォンビルブラント因子(VWF)。いくつかの態様において、本開示は、上記の遺伝子またはその断片の1つ以上を発現する、異種核酸インサートに関する。いくつかの態様において、本開示は、上記の遺伝子の1つ以上の発現を阻害する1つ以上の機能性RNAを発現する、異種核酸インサートに関する。血液に関連する状態、疾患または障害の処置に有用なタンパク質または機能性RNAをコードする異種核酸インサートの非限定的な例を、
図8に示す。
【0070】
本開示の核酸(例えば、異種核酸インサートを有する核酸)を用いて、対象において発現が低下しているか、サイレンシングされているか、そうでなければ機能不全である遺伝子(例えば、がんを有する対象においてサイレンシングされた腫瘍抑制因子)の発現を、回復することができる。本開示の核酸はまた、対象において異常に発現される遺伝子(例えば、がんを有する対象において発現されるがん遺伝子)の発現を、ノックダウンするために使用され得る。いくつかの態様において、がんに関連する遺伝子産物(例えば、腫瘍抑制因子)をコードする異種核酸インサートを用いて、異種核酸インサートを含む核酸をがんを有する対象に投与することにより、がんを処置することができる。いくつかの態様において、がんに関連する遺伝子産物(例えば、がん遺伝子)の発現を阻害する低分子干渉核酸(例えば、shRNA、miRNA)をコードする異種核酸インサートを含む核酸を用いて、異種核酸インサートを含む核酸をがんを有する対象に投与することにより、がんを処置することができる。いくつかの態様において、がんに関連する遺伝子産物(またはがんに関連する遺伝子の発現を阻害する機能性RNA)をコードする異種核酸インサートを含む核酸は、研究目的で、例えばがんを研究するため、またはがんを処置する治療薬を同定するために、使用することができる。以下は、がんの発生に関連することが知られている例示的な遺伝子(例えば、がん遺伝子および腫瘍抑制因子)の、非限定的なリストである:
【0071】
【0072】
いくつかの態様において、本開示は、CNS関連障害に関連する遺伝子産物をコードする、異種核酸インサートに関する。以下は、CNS関連障害に関連する遺伝子の非限定的なリストである:アルツハイマー病に関連する、DRD2、GRIA1、GRIA2、GRIN1、SLC1A1、SYP、SYT1、CHRNA7、3Rtau/4rTUS、APP、BAX、BCL-2、GRIK1、GFAP、IL-1、AGER;パーキンソン病に関連する、UCH-L1、SKP1、EGLN1、Nurr-1、BDNF、TrkB、gstm1、S106β;ハンチントン病に関連する、IT15、PRNP、JPH3、TBP、ATXN1、ATXN2、ATXN3、アトロフィン1、FTL、TITF-1;フリードリッヒ運動失調に関連するFXN;カナバン病に関連するASPA;筋ジストロフィーに関連するDMD;および脊髄性筋萎縮に関連するSMN1、UBE1、DYNC1H1。
【0073】
異種核酸インサートは、導入遺伝子として、アポトーシスを調節するタンパク質または機能性RNAをコードする核酸を含み得る。以下は、アポトーシスに関連する遺伝子の非限定的なリストであり、これらの遺伝子およびその相同体の産物をコードする核酸、およびこれらの遺伝子およびその相同体の発現を阻害する低分子干渉核酸(例えば、shRNA、miRNA)をコードする核酸は、本開示の特定の態様において導入遺伝子として有用である:
【0074】
【0075】
当業者であれば、タンパク質またはポリペプチドをコードする導入遺伝子の場合、保存的アミノ酸置換をもたらす突然変異を導入遺伝子に作製して、タンパク質またはポリペプチドの機能的に同等なバリアントまたは相同体を提供できることも、認識するであろう。いくつかの側面において、本開示は、導入遺伝子の保存的アミノ酸置換をもたらす配列改変を包含する。いくつかの態様において、導入遺伝子は、ドミナントネガティブ変異を有する遺伝子を含む。例えば、導入遺伝子は、野生型タンパク質と同じ要素と相互作用する変異型タンパク質を発現し得て、それによって野生型タンパク質の機能のいくつかの側面をブロックし得る。
【0076】
有用な導入遺伝子産物には、miRNAも含まれる。miRNAおよび他の低分子干渉核酸は、標的メッセンジャーRNA(mRNA)の標的RNA転写物切断/分解または翻訳抑制を介して、遺伝子発現を調節する。miRNAは、典型的には、最終的に19~25の非翻訳RNA産物として天然で発現される。miRNAは、標的mRNAの3’非翻訳領域(UTR)との配列特異的相互作用を介して、その活性を示す。これらの内在的に発現されたmiRNAはヘアピン前駆体を形成し、これはその後、miRNA二重鎖に、さらには「成熟した」一本鎖miRNA分子にプロセシングされる。この成熟miRNAは多タンパク質複合体であるmiRISCをガイドし、これは、成熟miRNAに対するその相補性に基づき、標的mRNAの標的部位、例えば3’UTR領域を同定する。
【0077】
以下のmiRNA遺伝子およびその相同体の非限定的なリストは、方法のある態様において、導入遺伝子として、または導入遺伝子(例えば、miRNAスポンジ、アンチセンスオリゴヌクレオチド、TuD RNA)によりコードされる低分子干渉核酸の標的として、有用である。
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
miRNAは、それが標的とするmRNAの機能を阻害し、その結果mRNAによりコードされるポリペプチドの発現を阻害する。したがって、miRNAの活性を(部分的または完全に)ブロックする(例えば、miRNAをサイレンシングする)ことにより、発現が阻害されるポリペプチドの発現を、効果的に誘導または回復させることができる(ポリペプチドを抑制解除する)。一態様において、miRNAのmRNA標的によってコードされるポリペプチドの抑制解除は、細胞内のmiRNA活性を、様々な方法のいずれか1つを介して阻害することにより達成される。例えば、miRNAの活性をブロックすることは、miRNAと相補的または実質的に相補的な低分子干渉核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、miRNAスポンジ、TuD RNA)とのハイブリダイゼーションによって達成することができ、これにより、miRNAとその標的mRNAとの相互作用をブロックする。本明細書で使用する場合、miRNAと実質的に相補的な低分子干渉核酸は、miRNAとハイブリダイズし、miRNAの活性をブロックすることができるものである。いくつかの態様において、miRNAと実質的に相補的な低分子干渉核酸とは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、または18塩基を除いてmiRNAと相補的な、低分子干渉核酸である。いくつかの態様において、miRNAと実質的に相補的な低分子干渉核酸配列は、少なくとも1塩基でmiRNAと相補的な、低分子干渉核酸配列である。
【0084】
「miRNA阻害剤」は、miRNAの機能、発現および/またはプロセシングをブロックする薬剤である。例えば、これらの分子としては、限定はされないが、マイクロRNA特異的アンチセンス、マイクロRNAスポンジ、tough decoyRNA(TuD RNA)および、miRNAとDrosha複合体との相互作用を阻害するマイクロRNAオリゴヌクレオチド(二本鎖、ヘアピン、ショートオリゴヌクレオチド)を含む。マイクロRNA阻害剤は、上記のように、核酸の導入遺伝子由来の細胞中で発現され得る。マイクロRNAスポンジは、相補的な七量体シード配列を介して、miRNAを特異的に阻害する(Ebert, M.S. Nature Methods, Epub August, 12, 2007)。いくつかの態様において、miRNAのファミリー全体を、単一のスポンジ配列を使用してサイレンシングすることができる。TuD RNAは、哺乳動物細胞において、特定のmiRNAの効率的で長期間の抑制を達成する(例えば、Takeshi Haraguchi, et al., Nucleic Acids Research, 2009, Vol. 37, No. 6 e43を参照、TuD RNAに関連するその内容は、参照により本明細書に組み込まれる)。細胞においてmiRNA機能をサイレンシングする(miRNA標的の抑止)ための他の方法は、当業者には明らかであろう。
【0085】
いくつかの側面において、本明細書に記載の核酸(例えば、ceDNA)は、CNS関連障害の処置に有用であり得る。本明細書で使用される「CNS関連障害」とは、中枢神経系の疾患または状態である。CNS関連障害は、脊髄(例えば、脊髄障害)、脳(例えば、脳症)または脳および脊髄を取り囲む組織に影響し得る。CNS関連障害は遺伝的起源のものであり得、体細胞突然変異によって遺伝するかまたは獲得される。CNS関連障害は、心理学的な状態または障害、例えば、注意欠陥過活動障害、自閉症スペクトル障害、気分障害、統合失調症、うつ病、レット症候群などであり得る。CNS関連障害は、自己免疫障害であり得る。CNS関連障害はまた、CNSのがん、例えば脳腫瘍であってもよい。がんであるCNS関連障害は、CNSの原発がん、例えば、星状細胞腫、グリア芽腫などであり得るか、またはCNS組織に転移したがん、例えば、脳に転移した肺がんであり得る。CNS関連障害のさらなる非限定的例には、パーキンソン病、リソソーム蓄積症、虚血、神経因性疼痛、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)およびカナバン病(CD)が挙げられる。
【0086】
いくつかの態様において、本明細書に記載の核酸(例えば、ceDNA)は、遺伝子治療を心臓細胞(例えば、心臓組織)に送達するために有用であり得る。したがって、いくつかの態様において、本明細書に記載の核酸(例えば、ceDNA)は、心血管障害の処置に有用であり得る。本明細書で使用される「心血管障害」は、心血管系の疾患または状態である。心血管疾患は、心臓、循環系、動脈、静脈、血管および/または毛細管に影響を及ぼし得る。心血管障害は遺伝的起源のものであり得、体細胞突然変異によって遺伝するかまたは獲得される。心血管障害の非限定的例としては、リウマチ性心疾患、弁膜症、高血圧性心疾患、動脈瘤、アテローム性動脈硬化症、高血圧症(例えば、高血圧)、末梢動脈疾患(PAD)、虚血性心疾患、狭心症、冠動脈心疾患、冠動脈疾患、心筋梗塞、脳血管疾患、一過性虚血発作、炎症性心疾患、心筋症、心膜疾患、先天性心疾患、心不全、脳卒中、およびシャーガス病による心筋炎を含む。
【0087】
いくつかの態様において、本明細書に記載の核酸(例えば、ceDNA)は、肺および/または肺系の組織を標的とすることができる。したがって、いくつかの態様において、本明細書に記載の核酸(例えば、ceDNA)は、肺疾患の処置に有用であり得る。本明細書で使用される「肺疾患」は、肺系の疾患または状態である。肺疾患は、呼吸に関与する肺または筋肉に影響を及ぼし得る。肺疾患は遺伝的起源のものであり得、体細胞突然変異によって遺伝するかまたは獲得される。肺疾患は肺がんであり得、これには、限定はされないが、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、および肺カルチノイド腫瘍を含む。肺疾患のさらなる非限定的な例は、以下を含む:急性気管支炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、アスベスト症、喘息、気管支拡張症、細気管支炎、閉塞性細気管支炎・器質化肺炎(BOOP)、気管支肺異形成、綿繊維吸入性肺炎、慢性気管支炎、コクシジオイデス症(Cocci)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性器質化肺炎(COP)、嚢胞性線維症、肺気腫、ハンタウイルス肺症候群、ヒストプラスマ症、ヒトメタニューモウイルス、過敏性肺炎、インフルエンザ、リンパ管腫、中皮腫、中東呼吸器症候群、非結核菌マイコバクテリウム、百日咳、塵肺症(黒色肺病)、肺炎、原発性毛様体ジスキネジー、原発性肺高血圧症、肺動脈高血圧、肺線維症、肺血管疾患、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、サルコイドーシス、重症急性呼吸器症候群(SARS)、珪肺症、睡眠時無呼吸症、乳幼児突然死症候群(SIDS)、および結核。
【0088】
いくつかの態様において、本明細書に記載の核酸(例えば、ceDNA)は、肝臓組織を標的とすることができる。したがって、いくつかの態様において、本明細書に記載の核酸(例えば、ceDNA)は、肝疾患の処置に有用であり得る。本明細書で使用される「肝疾患」は、肝臓の疾患または状態である。肝疾患は遺伝的起源のものであり得、体細胞突然変異によって遺伝するかまたは獲得される。肝疾患は肝臓のがんであり得、これには、限定はされないが、肝細胞癌(HCC)、線維層状肝癌、胆管癌、血管肉腫および肝芽細胞腫を含む。肺疾患のさらなる非限定的例には、アラジール症候群、α1アンチトリプシン欠乏症、自己免疫性肝炎、胆道閉鎖症、肝硬変、肝臓の嚢胞性疾患、脂肪肝疾患、ガラクトース血症、胆石症、ギルバート症候群、ヘモクロマトーシス、妊娠中の肝疾患、新生児肝炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、ポルフィリン症、ライ症候群、サルコイドーシス、毒性肝炎、1型糖原病、チロシン血症、A、B、C型ウイルス性肝炎、ウィルソン病および住血吸虫症を含む。
【0089】
いくつかの態様において、本明細書に記載の核酸(例えば、ceDNA)は、腎臓組織を標的とすることができる。したがって、いくつかの態様において、本明細書に記載の核酸(例えば、ceDNA)は、腎疾患の処置に有用であり得る。本明細書で使用される「腎疾患」は、肝臓の疾患または状態である。肝疾患は遺伝的起源のものであり得、体細胞突然変異によって遺伝するかまたは獲得される。肝疾患は腎臓のがんであり得、これには、限定はされないが、腎細胞がん、明細胞がん、乳頭状がん1型、乳頭状がん2型、色素嫌性がん、膨大細胞がん、集合管がん、腎盂およびウィルムス腫瘍の転移性細胞がんを含む。腎疾患のさらなる非限定的例としては、以下を含む:Abderhalden-Kaufmann-Lignac症候群(腎障害シスチン症)、急性腎不全/急性腎障害、急性巣状細菌性腎炎、急性リン酸腎症、急性細尿管壊死、アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ欠損症、アデノウイルス腎炎、アルポート症候群、アミロイドーシス、血管筋脂肪腫、鎮痛薬性腎症、アンジオテンシン抗体および巣状分節性糸球体硬化症、抗リン脂質抗体症候群、抗TNF-α療法関連糸球体腎炎、APOL1突然変異、見かけの鉱質コルチコイド過剰症候群、アリストロキア酸腎症、バルカン風土病腎症、バーター症候群、ビート尿、βサラセミア腎疾患、胆汁円柱腎症、BKポリオーマ、C1q腎症、心腎症候群、CFHR5腎症、コレステロール塞栓症、チャーグ・ストラウス症候群、乳び尿、糸球体虚脱症、CMV関連糸球体虚脱症、先天性ネフローゼ症候群、腎錐体症候群(Mainzer-Saldino症候群またはSaldino-Mainzer病)、造影剤腎症、硫酸銅中毒、皮質壊死、
【0090】
クリオグロブリン血症、結晶誘発性急性腎障害、嚢胞性腎疾患、後天性、シスチン尿症、デンスデポジット糸球体腎炎(Dense Deposit Disease)(MPGN2型)、デント病(X連鎖劣性腎結石)、透析不均衡症候群、糖尿病性腎疾患、尿崩症、EAST症候群、異所性尿管、浮腫、エルドハイム・チェスター病、ファブリー病、家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症、ファンコーニ症候群、フレイザー症候群、フィブロネクチン糸球体症、原線維性糸球体腎炎およびイムノタクトイド腎症、フレーリー症候群、巣状分節性糸球体硬化症、巣状硬化症、巣状糸球体硬化症、ギャロウェイ-モワト症候群、ギッテルマン(Gitelman)症候群、糸球体疾患、糸球体尿細管逆流、尿糖、グッドパスチャー症候群、溶血性尿毒症症候群(HUS)、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、血球貪食症候群、出血性膀胱炎、発作性夜間血球減少症および溶血性貧血に関連するヘモシデリン沈着症、肝静脈閉塞性疾患、類洞閉塞症候群、C型肝炎関連腎疾患、肝腎症候群、HIV関連腎症(HIVAN)、馬蹄腎(腎融合)、ハンナ―潰瘍、高アルドステロン症、高カルシウム血症、高カリウム血症、高マグネシウム血症、高ナトリウム血症、高酸素血症、高リン酸血症、低カルシウム血症、低カリウム血症、低カリウム血症誘発性腎機能障害、低マグネシウム血症、低ナトリウム血症、低リン酸血症、IgA腎症、IgG4腎症、間質性膀胱炎、疼痛性膀胱症候群、間質性腎炎、イベマーク症候群、腎臓結石、腎石症、
【0091】
レプトスピラ症腎疾患、軽鎖沈着症、モノクローナル免疫グロブリン沈着症、リドル症候群、ライトウッド-アルブライト症候群、リポタンパク質糸球体症、リチウム腎毒性、LMX1B変異原因性遺伝性FSGS、腰痛血尿、狼瘡、全身性エリテマトーデス、ループス腎症、ループス腎炎、ライム病関連糸球体腎炎、マラリア腎症、悪性高血圧、マラコプラキー、外尿道狭窄(meatal stenosis)、髄質性嚢胞腎疾患、海綿腎、巨大尿管症、メラミン毒性および腎臓、膜性増殖性糸球体腎炎、膜性腎症、メソアメリカ腎症、代謝性アシドーシス、代謝性アルカローシス、顕微鏡的多発血管炎、ミルク・アルカリ症候群、微小変化型ネフローゼ、多嚢胞性発育不全腎、多発性骨髄腫、骨髄増殖性腫瘍および糸球体症、爪膝蓋症候群、腎石灰化症、腎性全身性線維症、腎下垂症(浮腫性腎症、腎下垂)、ネフローゼ症候群、神経因性膀胱、非淋菌性、ナットクラッカー症候群、口腔顔面指趾症候群、起立性低血圧、起立性蛋白尿、浸透圧利尿、ページ腎、乳頭壊死、乳頭腎症候群(腎-コロボーマ症候群、孤立腎形成不全)、腹膜-腎症候群、後部尿道弁、感染後糸球体腎炎、連鎖球菌感染後糸球体腎炎、多発性結節性動脈炎、多発性嚢胞腎、後部尿道弁、子癇前症、単クローン性IgGの沈着を伴う増殖性糸球体腎炎(ナスル病)、蛋白尿(尿中のタンパク質)、
【0092】
偽性アルドステロン過剰症、偽副甲状腺機能低下症、肺腎症候群、腎盂腎炎(腎臓感染症)、膿腎症、放射線腎症、リフィーディング症候群、逆流性腎症、急速進行性糸球体腎炎、腎膿瘍、腎周囲膿瘍、腎無形成、腎動脈瘤、腎動脈狭窄、腎細胞がん、腎嚢胞、運動誘発性急性腎不全を伴う腎性低尿酸血症、腎梗塞、腎性骨異栄養症、腎尿細管性アシドーシス、本態性低Na血症(Reset Osmostat)、大静脈後尿管、後腹膜線維症、横紋筋融解症、肥満外科手術関連横紋筋融解症、関節リューマチ関連腎疾患、サルコイドーシス腎疾患、塩喪失性、腎臓および脳の、シムケ免疫性骨形成不全、強皮症による腎クリーゼ、へび状腓骨-多嚢胞腎症候群(Serpentine Fibula-Polycystic Kidney Syndrome)、エクスナー症候群、鎌状赤血球性腎症、シリカ曝露および慢性腎臓病、造血細胞移植後の腎疾患、幹細胞移植に関連する腎疾患、菲薄基底膜病、良性家族性血尿、膀胱三角炎、結節性硬化症、精細管発育不全、腫瘍崩壊症候群、尿毒症、尿毒症性視神経症、尿管瘤、尿道小丘、尿道狭窄、尿失禁、尿路感染症、尿路閉塞、膀胱小腸瘻、膀胱尿管逆流症、フォン・ヒッペル・リンドウ病、ワーファリン関連腎症、ウェゲナー肉芽腫症、多発性血管炎性肉芽腫症およびWunderlich症候群。
【0093】
いくつかの態様において、本明細書に記載の核酸(例えば、ceDNA)は、遺伝子治療を眼組織に送達するのに有用であり得る。したがって、いくつかの態様において、本明細書に記載の核酸(例えば、ceDNA)は、眼障害の処置に有用であり得る。本明細書で使用する「眼障害」は、眼の疾患または状態である。心血管疾患は、眼、強膜、角膜、前房、後房、虹彩、瞳孔、水晶体、硝子体液、網膜または視神経に影響を及ぼし得る。眼障害は遺伝的起源のものであり得、体細胞突然変異によって遺伝するかまたは獲得される。眼疾患および眼障害の非限定的例には、限定はされないが、加齢黄斑変性症、網膜症、糖尿病性網膜症、黄斑浮腫、緑内障、色素性網膜炎、シュタルガルト病、アッシャー病およびレーバー先天性黒内障および眼がんが含まれる。
【0094】
いくつかの態様において、本明細書に記載の核酸(例えば、ceDNA)は、遺伝子治療を血液組織(例えば、血液細胞)に送達するために有用であり得る。したがって、いくつかの態様において、本明細書に記載の核酸(例えば、ceDNA)は、血液障害の処置に有用であり得る。本明細書で使用する「血液障害」は、血液の疾患または状態である。血液障害は遺伝的起源のものであり得、体細胞突然変異によって遺伝するかまたは獲得される。血液疾患および障害の非限定的な例には、限定はされないが、貧血(例えば、慢性腎疾患の貧血、再生不良性貧血、骨髄異形成貧血、鎌状赤血球貧血)、深部静脈血栓症、血友病(例えば血友病A、血友病B、血友病C)、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、肺塞栓症、サラセミア、およびフォンヴィルブランド病が含まれる。
【0095】
いくつかの態様において、本明細書に記載の核酸(例えば、ceDNA)は、遺伝子編集分子(例えば、ヌクレアーゼ)を対象に送達するのに有用であり得る。いくつかの態様において、本開示に記載の核酸は、ヌクレアーゼをコードする異種核酸インサートを含む。本明細書で使用される用語「エンドヌクレアーゼ」および「ヌクレアーゼ」は、ポリヌクレオチド鎖内のホスホジエステル結合(単数または複数)を切断する酵素を指す。ヌクレアーゼは天然のものでもよく、または遺伝子操作されていてもよい。遺伝子操作されたヌクレアーゼは、ゲノム編集に特に有用であり、4つのファミリー:ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、改変メガヌクレアーゼ、およびCRISPR関連タンパク質(Casヌクレアーゼ)、に分類される。いくつかの態様において、ヌクレアーゼはZFNである。いくつかの態様において、ZFNはFokI切断ドメインを含む。いくつかの態様において、ZFNは、Cys2His2折り畳み群(fold group)を含む。いくつかの態様において、ヌクレアーゼはTALENである。いくつかの態様において、TALENは、FokI切断ドメインを含む。いくつかの態様において、ヌクレアーゼは、改変メガヌクレアーゼである。
【0096】
用語「CRISPR」とは、塩基配列の短い反復を含むDNA座である「クラスター化され規則的に間隔を置いた短いパリンドローム反復」を意味する。CRISPR遺伝子座は、外来遺伝物質に対する耐性を付与する原核生物の適応免疫系の一部を形成する。各CRISPR遺伝子座は、ウイルスゲノム材料に由来する「スペーサーDNA」の短いセグメントに隣接している。タイプIIのCRISPRシステムでは、スペーサーDNAはトランス活性化RNA(tracrRNA)にハイブリダイズし、CRISPR-RNA(crRNA)にプロセシングされ、その後CRISPR関連ヌクレアーゼ(Casヌクレアーゼ)と会合して、外来DNAを認識して分解する複合体を形成する。ある態様において、ヌクレアーゼは、CRISPR関連ヌクレアーゼ(Casヌクレアーゼ)である。CRISPRヌクレアーゼの例としては、これらに限定されないが、Cas9、Cas6およびdCas9が挙げられる。dCas9は、標的遺伝子座に結合するが、この遺伝子座を切断しない、改変されたCasタンパク質である。いくつかの態様において、ヌクレアーゼはCas9である。いくつかの態様において、Cas9は細菌S. pyogenesに由来する(SpCas9)。
【0097】
ゲノム編集の目的のために、CRISPRシステムは、tracrRNAおよびcrRNAを単一のガイドRNA(sgRNA)または単に(gRNA)に組み合わせるように、改変することができる。本明細書で使用する「ガイドRNA」または「gRNA」という用語は、細胞内の標的配列に相補的であり、Casヌクレアーゼと会合し、それによりCasヌクレアーゼを標的配列に指向させる、ポリヌクレオチド配列を指す。いくつかの態様において、本開示に記載の核酸は、ガイドRNA(gRNA)をコードする異種核酸インサートを含む。いくつかの態様において、gRNAは、長さが1~30ヌクレオチドの範囲である。いくつかの態様において、gRNAは、長さが5~25ヌクレオチドの範囲である。いくつかの態様において、gRNAは、長さが10~20ヌクレオチドの範囲である。いくつかの態様において、gRNAは、長さが14~18ヌクレオチドの範囲である。いくつかの態様において、本開示に記載の核酸は、gRNAおよびCRISPRヌクレアーゼをコードする異種核酸インサートを含む。
【0098】
いくつかの側面において、本開示は、機能性タンパク質をコードしない異種核酸インサートをコードする核酸に関する。例えば、遺伝子治療の文脈において、導入遺伝子プロモーターの組み込みは、がん遺伝子の活性化を引き起こし得る。したがっていくつかの態様において、本開示は、無プロモーター構築物をコードする異種核酸インサートに関する。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、無プロモーター発現構築物は、いくつかの態様において、遺伝子編集のための基質として有用である。
【0099】
本明細書で使用する場合、「ゲノム編集」は、ゲノム配列(例えば、遺伝子配列)の付加、分裂または変更を指す。いくつかの態様において、ゲノム編集は、操作されたタンパク質および関連分子を用いて行われる。いくつかの側面において、ゲノム編集は、操作されたヌクレアーゼを使用して、標的ゲノム遺伝子座を切断することを含む。いくつかの態様において、ゲノム編集はさらに、核酸残基を切断された遺伝子座に挿入、欠失、突然変異または置換することを含む。いくつかの態様において、切断された遺伝子座における核酸残基の挿入、欠失、突然変異または置換は、相同組換え(HR)および非相同末端結合(NHEJ)などの内因性細胞機構によって達成される。例示的なゲノム編集技術には、限定はされないが、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、改変メガヌクレアーゼ再改変ホーミングエンドヌクレアーゼ、CRISPR/Casシステムが含まれる。いくつかの態様において、遺伝子編集技術はTALENに関連するタンパク質または分子であり、これには、限定はされないが、転写活性化因子様エフェクター(TALE)および制限エンドヌクレアーゼ(例えば、FokI)が含まれる。いくつかの態様において、遺伝子編集技術はZFNに関連するタンパク質または分子であり、これには、限定はされないが、Cys2His2折り畳み群(例えば、Zif268(EGR1))および制限エンドヌクレアーゼ(例えば、FokI)を含むタンパク質が含まれる。いくつかの態様において、遺伝子編集技術は、CRISPR/Casシステムに関連するタンパク質または分子であり、これには、限定はされないが、Cas9、Cas6、dCas9、CRISPR RNA(crRNA)およびトランス活性化crRNA(tracrRNA)が含まれる。いくつかの態様において、無プロモーター構築物は、TALENS、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ、Cas9、および他の遺伝子編集タンパク質のための基質を提供する。
【0100】
いくつかの側面において、本開示は、DNAワクチンをコードする異種核酸インサートをコードする核酸に関する。本明細書で使用される「DNAワクチン」は、ある抗原をコードする核酸であって、宿主中でその抗原に対する免疫応答(例えば、細胞性免疫応答または体液性免疫応答)を刺激する、前記核酸を指す。いくつかの態様において、免疫応答は、将来の感染または状態に対して保護する防御応答である。しかし、いくつかの態様において、免疫応答は、既存の感染または状態を処置する(例えば、根絶するまたは弱める)。DNAワクチンの例には、HL鎖Ig、scFv、ラクダ科動物(VhH)または軟骨魚(Vnar)由来の単一ドメインIg、ナノボディ、および集合的にIg(またはIg様)分子と呼ばれる、他のパラトープ認識ペプチドおよび融合ペプチドが含まれる。
【0101】
いくつかの態様において、異種核酸インサートは、Ig分子またはIg様分子をコードする。いくつかの態様において、Ig(またはIg様)分子は、モノクローナル抗体配列に由来する非修飾タンパク質配列である。いくつかの態様において、Ig(またはIg様)分子は、マウスまたは他の哺乳動物のモノクローナル抗体配列に由来する、非修飾タンパク質配列である。
いくつかの態様において、Ig(またはIg様)分子は、合成的にランダム生成されたペプチドライブラリーに由来する、非修飾タンパク質配列である。いくつかの態様において、ライブラリーは、ナイーブ脊椎動物種から得た相補的DNAに由来した。これらの種には、限定はされないが、哺乳動物、例えば霊長類(例えば、ヒトおよび非ヒト霊長類)、げっ歯類(例えば、マウス、ラット)、有蹄動物、ラクダ類、ウマ、イヌ、ネコ、有袋類および農業的に興味ある動物;ニワトリ、アヒル、およびガチョウを含む鳥類;軟骨魚、ヤツメウナギ、および有顎魚種を含む魚類が含まれる。
【0102】
いくつかの態様において、異種核酸は、許容細胞に投与された場合に集合Igが循環系に分泌されるように、免疫グロブリン(Ig)の重鎖および軽鎖をコードする。いくつかの態様において、Ig分子は分泌されず、いわゆる「細胞内抗体(intra-body)」として内部的に作用する。
いくつかの態様において、異種核酸インサートは、1つのポリペプチド中の重鎖および軽鎖可変領域からなる操作された単鎖抗体(scFv)である、Ig分子をコードする。scFvは、標的抗原に対する結合活性および特異性を保持する。
いくつかの態様において、異種核酸インサートは、微生物剤に結合して微生物の感染力に影響を及ぼす、Ig分子をコードする。いくつかの態様において、微生物剤は原核生物である。いくつかの態様において、微生物剤は、リケッチア、マイコプラズマ、または他の細胞内生命体である。
【0103】
いくつかの態様において、異種核酸インサートは、ヒト病原性ウイルスのウイルス構造タンパク質に結合するIg分子をコードし、これには、限定はされないが以下が含まれる:エボラウイルスウイルスタンパク質、ヒト免疫不全ウイルスタンパク質、乳頭腫ウイルスタンパク質、単純ヘルペス1ウイルスタンパク質、単純ヘルペス2ウイルスタンパク質、HCV Aウイルスタンパク質、HCV Bウイルスタンパク質、HCV Cウイルスタンパク質、HCV非Aウイルスタンパク質、HCV非Bウイルスタンパク質、またはデング出血熱ウイルスタンパク質。いくつかの態様において、異種核酸インサートは、人蓄共通性感染症病原体(限定されないが、口蹄疫ウイルスおよび狂犬病ウイルスを含む)のウイルス構造タンパク質に結合するIg分子をコードする。
【0104】
いくつかの側面において、本開示に記載の核酸は、改変された細胞、例えばex vivoで改変された細胞の生成に有用である。本明細書で使用する場合、「ex vivoで改変された細胞」とは、細胞(例えば哺乳動物細胞)であって、対象から取り出され、遺伝子改変され(例えば、外因性核酸でトランスフェクトされるか形質導入され、または遺伝的に再プログラミングされ)、培養されるかまたは拡大され、および任意に、対象(例えば、同一の対象または異なる対象のいずれか)に戻される前記細胞を指す。一般に、ex vivoで改変された細胞は、自己細胞療法または同種細胞療法に有用である。例えば、細胞は、特定の遺伝子異常(例えば、特定タンパク質の過剰発現)に関連する疾患を有する対象から取り出され、遺伝子異常を矯正する(例えば、タンパク質の発現を減少させる)核酸でトランスフェクトされて、対象に再導入される。別の非限定的な例において、細胞は対象から取り出され、遺伝子的に再プログラムされ(例えば、幹細胞に脱分化または分化転換され)、拡大され、対象に再導入される。いくつかの態様において、本開示に記載の核酸によるトランスフェクションにより生成されたex vivo改変細胞は、現在利用可能な遺伝子治療ベクターにより生成されたex vivo細胞と比較して、改善された安全性プロファイルを有する。
【0105】
いくつかの側面において、本開示に記載の核酸は、キメラ抗原T細胞(CART)の生成に有用である。キメラ抗原受容体(CAR)は、単鎖FV(scFv)抗体部分に基づき標的抗原に対する特異性を示す、操作されたT細胞受容体である。一般に、CARTは、CARをコードするDNAを含むレンチウイルスベクターでT細胞を形質導入することにより生成される。レンチウイルス形質導入は、いくつかの態様において、がんにつながる挿入突然変異誘発のリスクを上昇させる。本開示に記載のように、非対称かつ分断された自己相補的配列を有する核酸は、他の遺伝子治療様式と比較して、挿入突然変異誘発の可能性が低い。したがって、いくつかの態様において、本開示に記載の核酸は、CARをコードする異種核酸インサート(例えば、導入遺伝子)を含む。いくつかの態様において、本開示に記載の核酸を用いた形質導入により生成されるCARTは、レンチウイルス形質導入によって生成されるCARTと比較して、改善された安全性プロファイルを示す。
【0106】
その他の成分
核酸について上記で同定された主要な要素に加えて、核酸はまた、本開示に記載の核酸でトランスフェクトされた細胞でのその転写、翻訳および/または発現を可能にする様式で、異種核酸インサート(例えば、導入遺伝子)に作動可能に連結される、必要とされる従来の制御要素も含む。本明細書で使用する場合、「作動可能に連結された」配列とは、関心のある遺伝子と連続している発現制御配列および、関心のある遺伝子を制御するためにトランスでまたは遠隔で作用する発現制御配列の両方を含む。
【0107】
発現制御配列には、以下が含まれる:適切な転写開始、終結、プロモーターおよびエンハンサー配列;スプライシングおよびポリアデニル化(polyA)シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を高める配列(すなわち、コザックコンセンサス配列):タンパク質の安定性を増強する配列;必要に応じて、コードされた生成物の分泌を増強する配列。天然の、構成的、誘導性および/または組織特異的であるプロモーターを含む多数の発現制御配列が当分野で知られており、利用可能である。
【0108】
いくつかの態様において、異種核酸インサート(例えば、導入遺伝子)は、1つ以上の調節配列に作動可能に連結された、タンパク質コード配列を含む。本明細書で使用する場合、核酸コード配列および調節配列は、核酸配列(例えば、導入遺伝子)の発現または転写を調節配列の影響または制御下に置くような方法で共有結合される場合に、「作動可能に」連結されると言う。核酸配列(例えば、導入遺伝子)が機能性タンパク質に翻訳されることが望ましい場合、2つのDNA配列は、次の場合に、作動可能に連結されていると言う:5’調節配列中のプロモーターの誘導がコード配列の転写をもたらす場合、および、2つのDNA配列間の結合の性質が、(1)フレームシフト突然変異の導入をもたらさない、(2)コード配列の転写を導くプロモーター領域の能力を妨害しない、または(3)対応するRNA転写物の、タンパク質に翻訳される能力を妨害しない場合。したがって、プロモーター領域が核酸配列に作動可能に連結されるとは、プロモーター領域が、得られる転写産物が所望のタンパク質またはポリペプチドに翻訳されるように、そのDNA配列の転写を行うことができる場合である。同様に、2つ以上のコード領域は、共通のプロモーターからのそれらの転写により、フレーム内で翻訳された2つ以上のタンパク質の発現を生じるような方法で連結されている場合、作動可能に連結されている。いくつかの態様において、作動可能に連結されたコード配列は、融合タンパク質を生じる。いくつかの態様において、作動可能に連結されたコード配列は、機能性RNA(例えば、gRNA)を生じる。
【0109】
タンパク質をコードする核酸(例えば導入遺伝子)について、ポリアデニル化配列は、一般に、導入遺伝子配列の後、3’AAV ITR配列の前に、挿入される。本開示において有用な異種核酸インサート(例えば、導入遺伝子)はまた、イントロンを、望ましくはプロモーター/エンハンサー配列と導入遺伝子との間に位置して含んでよい。1つの可能なイントロン配列はSV-40から得られ、SV-40Tイントロン配列と呼ばれる。使用され得る別のベクター要素は、内部リボソーム進入部位(IRES)である。IRES配列を用いて、単一の遺伝子転写産物から1つより多くのポリペプチドを生成する。IRES配列を用いて、1つより多くのポリペプチド鎖を含有するタンパク質を生成する。これらおよび他の共通ベクター要素の選択は従来通りであり、多くのかかる配列が利用可能である[例えば、Sambrook et al.およびこれに引用された、例えばページ3.18、3.26、および16.17、16.27の参考文献、およびAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, 1989などを参照]。いくつかの態様において、口蹄疫ウイルス2A配列がポリタンパク質に含まれる;これは、ポリタンパク質の切断を媒介することが示されている小さなペプチド(約18アミノ酸長)である(Ryan, M D et al., EMBO, 1994; 4: 928-933;Mattion, N M et al., J Virology, November 1996; p. 8124-8127;Furler, S et al., Gene Therapy, 2001; 8: 864-873;およびHalpin, C et al., The Plant Journal, 1999; 4: 453-459)。2A配列の切断活性は、プラスミドおよび遺伝子治療ベクター(AAVおよびレトロウイルス)を含む人工系において以前に示されている(Ryan, M D et al., EMBO, 1994; 4: 928-933;Mattion, N M et al., J Virology, November 1996; p. 8124-8127;Furler, S et al., Gene Therapy, 2001; 8: 864-873;およびHalpin, C et al., The Plant Journal, 1999; 4: 453-459;de Felipe, P et al., Gene Therapy, 1999; 6: 198-208;de Felipe, P et al., Human Gene Therapy, 2000; 11: 1921-1931;およびKlump, H et al., Gene Therapy, 2001; 8: 811-817)。
【0110】
宿主細胞における遺伝子発現のために必要とされる調節配列の正確な性質は、種、組織または細胞型によって異なり得るが、一般に必要に応じて、それぞれ転写および翻訳の開始に関与する5’非転写配列および5’非翻訳配列を含み、例えばTATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列、エンハンサー要素などである。特に、かかる5’非転写調節配列は、作動可能に連結された遺伝子の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含む。調節配列はまた、必要に応じてエンハンサー配列または上流アクチベーター配列を含み得る。本開示のベクターは、5’リーダーまたはシグナル配列を任意に含み得る。適切なベクターの選択および設計は、当業者の能力および裁量の範囲内である。
【0111】
構成的プロモーターの例には、限定なく、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(任意にRSVエンハンサーを有する)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(任意にCMVエンハンサーを有する)[例えば、Boshart et al, Cell, 41:521-530 (1985)を参照]、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、β-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、およびEF1αプロモーター[Invitrogen]を含む。
【0112】
誘導性プロモーターは遺伝子発現の調節を可能にし、外因的に供給される化合物、温度などの環境因子、または特定の生理学的状態、例えば急性期、細胞の特定の分化状態の存在により、または複製細胞のみにおいて、調節することができる。誘導性プロモーターおよび誘導システムは様々な商業的供給源から入手可能であり、これには、限定はされないが、Invitrogen、ClontechおよびAriadが含まれる。多くの他のシステムが記載されており、当業者によって容易に選択することができる。外因的に供給されるプロモーターによって調節される誘導性プロモーターの例には、以下が含まれる:亜鉛誘導性ヒツジメタロチオニン(MT)プロモーター、デキサメタゾン(Dex)誘導性マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーターシステム(WO 98/10088);エクジソン昆虫プロモーター(No et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93:3346-3351 (1996))、テトラサイクリン抑制系(Gossen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:5547-5551 (1992))、テトラサイクリン誘導系(Gossen et al., Science, 268:1766-1769 (1995)、またHarvey et al, Curr. Opin. Chem. Biol., 2:512-518 (1998)も参照)、RU486誘導系(Wang et al., Nat. Biotech., 15:239-243 (1997)およびWang et al., Gene Ther., 4:432-441 (1997))、およびラパマイシン誘導系(Magari et al., J. Clin. Invest., 100:2865-2872 (1997))。この文脈において有用であり得るさらに他の種類の誘導性プロモーターは、特定の生理学的状態、例えば温度、急性期、細胞の特定の分化状態、または複製細胞のみにおいて、調節されるものである。
【0113】
別の態様において、導入遺伝子の天然のプロモーターが使用される。導入遺伝子の発現が天然の発現を模倣すべきである場合、天然のプロモーターが好ましい場合がある。導入遺伝子の発現を、時間的または発生的に、または組織特異的に、または特異的な転写刺激に応じて調節しなければならない場合、天然プロモーターを使用してもよい。さらなる態様において、他の天然発現制御要素、例えばエンハンサー要素、ポリアデニル化部位またはコザックコンセンサス配列などもまた、天然の発現を模倣するために使用され得る。
【0114】
いくつかの態様において、調節配列は、組織特異的遺伝子発現能力を付与する。いくつかの場合において、組織特異的調節配列は、組織特異的様式で転写を誘導する組織特異的転写因子に結合する。かかる組織特異的調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)は、当技術分野で知られている。組織特異的調節配列の例としては、限定はされないが、以下の組織特異的プロモーターが挙げられる:肝臓特異的チロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター、インスリンプロモーター、グルカゴンプロモーター、ソマトスタチンプロモーター、膵臓ポリペプチド(PPY)プロモーター、シナプシン-1(Syn)プロモーター、クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター、哺乳動物デスミン(DES)プロモーター、α-ミオシン重鎖(a-MHC)プロモーター、または心筋トロポニンT(cTnT)プロモーター。他の例示的なプロモーターとしては、とりわけ、当業者には明らかであろう以下が挙げられる:β-アクチンプロモーター、B型肝炎ウイルスコアプロモーター、Sandig et al., Gene Ther., 3:1002-9 (1996);α-フェトプロテイン(AFP)プロモーター、(Arbuthnot et al., Hum. Gene Ther., 7:1503-14 (1996))、骨オステオカルシンプロモーター(Stein et al., Mol. Biol. Rep., 24:185-96 (1997));骨シアロタンパク質プロモーター(Chen et al., J. Bone Miner. Res., 11:654-64 (1996))、CD2プロモーター(Hansal et al., J. Immunol., 161:1063-8 (1998);免疫グロブリン重鎖プロモーター;T細胞受容体α鎖プロモーター、神経性の、例えばニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター(Andersen et al., Cell. Mol. Neurobiol., 13:503-15 (1993))、ニューロフィラメント軽鎖遺伝子プロモーター(Piccioli et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:5611-5 (1991))、およびニューロン特異的vgf遺伝子プロモーター(Piccioli et al., Neuron, 15:373-84 (1995))。
【0115】
閉鎖型直鎖状二重鎖DNA(ceDNA)の生成
いくつかの側面において、本開示は、本開示に記載の核酸(例えば、ceDNA)を生成する方法であって、方法が、(i)許容細胞に、少なくとも1つの分断された自己相補的配列が隣接する異種核酸インサートをコードする核酸を導入すること、各自己相補的配列は、作動性末端分解部位およびローリングサークル複製タンパク質結合要素を有し、ここで自己相補的配列は、2つの対向する縦方向対称のステムループを形成する交差アーム配列により分断され、対向する縦方向対称ステムループの各々は、長さが5~15塩基対の範囲のステム部分と、2~5個の不対デオキシリボヌクレオチドを有するループ部分とを有する;および(ii)許容細胞を、許容細胞中のローリングサークル複製タンパク質が核酸の複数コピーの生成を開始する条件下で、維持すること、を含む、前記方法を提供する。
【0116】
核酸の生成から生じるコピー数は、許容細胞に導入された核酸の元のコピー数(例えば、1、2、10、100、またはそれ以上の元のコピー)の倍数で表すことができる。いくつかの態様において、核酸の複数コピーの生成により、許容細胞中の核酸のコピー数が2倍から10,000倍までに増加する。いくつかの態様において、核酸の複数コピーの生成は、許容細胞中の核酸のコピー数の10,000倍を超える増加をもたらす。
【0117】
いくつかの側面において、本開示は、トランスフェクトされた細胞(例えば、トランスフェクトされた許容細胞)を提供する。「トランスフェクション」という用語は、細胞による外来DNAの取り込みを指すために使用され、細胞は、外因性DNAが細胞膜の内部に導入された場合に、「トランスフェクト」されている。多くのトランスフェクション技術が当分野において一般的に知られている。例えば、Graham et al. (1973) Virology, 52:456、Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning, a laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratories, New York、Davis et al. (1986) Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier、およびChu et al. (1981) Gene 13:197を参照。かかる技術は、1つ以上の外因性核酸、例えばヌクレオチド組込みベクターおよび他の核酸分子を、適切な細胞(例えば、許容細胞)に導入するために使用することができる。
【0118】
「許容細胞」とは、本開示に記載の核酸が複製するか、または本開示に記載の核酸の複製を支持することができる、任意の細胞をいう。いくつかの態様において、許容細胞は、核酸の複製可能コピーをウイルス粒子にパッケージング可能なウイルスカプシドタンパク質を発現しない。本開示の側面は部分的に、いくつかの態様において、哺乳動物細胞が本開示に記載の核酸の複製を許容しないという驚くべき発見に関する。したがって、いくつかの態様において、許容細胞は非哺乳動物細胞である(例えば、許容細胞は哺乳動物細胞ではない)。いくつかの態様において、許容細胞は、昆虫細胞株、酵母細胞株、または細菌細胞株である。
【0119】
許容昆虫細胞の例としては、限定はされないが、以下が挙げられる:Spodoptera frugiperda(例えば、Sf9、Sf21)、Spodoptera exigua、Heliothis virescens、Helicoverpa zea、Heliothis subflexa、Anticarsia gemmatalis、Trichopulsia ni(例えば、High-Five細胞)、Drosophila melanogaster(例えば、S2、S3)、Antheraea eucalypti、Bombyx mori、Aedes alpopictus、Aedes aegyptiiなど。
許容細菌細胞の例としては、限定はされないが、Escherichia coli、Corynebacterium glutamicum、およびPseudomonas fluorescensが挙げられる。
許容酵母細胞の例としては、限定はされないが、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces pombe、Pichia pastoris、Bacillus属、Aspergillus属、Trichoderma属、およびMyceliophthora thermophila C1が挙げられる。
許容植物細胞の例としては、限定はされないが、Nicotiana属、Arabidopsis thaliana、Mays zea、Solanum属、またはLemna属が挙げられる。
【0120】
いくつかの態様において、許容細胞は哺乳動物細胞である。許容哺乳動物細胞の例には、Henrietta Lacks腫瘍(HeLa)細胞およびベビーハムスター腎臓(BHK-21)細胞が含まれる。
いくつかの態様において、本開示に記載の核酸は、ベクター内に含有されて許容細胞に送達される。本明細書で使用する場合、用語「ベクター」は、適切な制御要素に会合する場合に複製することができ、遺伝子配列を細胞間で伝達することができる、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、人工染色体、ウイルス、ビリオンなどの任意の遺伝要素を含む。したがってこの用語は、クローニングおよび発現ビヒクル、ならびにウイルスベクターを含む。いくつかの態様において、有用なベクターは、転写されるべき核酸セグメントがプロモーターの転写制御下に位置するようなベクターであることが意図される。
【0121】
いくつかの態様において、方法は、許容細胞中でローリングサークル複製タンパク質(例えば、AAV Repタンパク質などのウイルス非構造タンパク質)を発現させることを含む。いくつかの態様において、複数の(例えば、2、3、4またはそれ以上の)ローリングサークル複製タンパク質が、許容細胞で発現される。いかなる特定の理論に束縛されることを望むものではないが、許容細胞で発現されるウイルス非構造タンパク質(単数または複数)は、本開示に記載の核酸の複製を媒介する。例えば、いくつかの態様において、AAV Rep78およびRep52は、AAV2 ITRベースの非対称かつ分断された自己相補的配列を有する核酸を含む許容細胞で発現される。いくつかの態様において、非構造ウイルスタンパク質は、AAV78、AAV52、AAV Rep68およびAAV Rep40からなる群から選択される。
【0122】
いくつかの態様において、許容細胞で発現されるローリングサークル複製タンパク質(例えば、AAV Repタンパク質などのウイルス非構造タンパク質)は、ヘルパーウイルスベクターによってコードされる。ここで使用する場合、「ヘルパーウイルスベクター」は、本開示に記載の核酸の複製に必要な分子(例えば、1つ以上のタンパク質)を発現する、ウイルスベクターを指す。例えば、いくつかの態様において、ヘルパーウイルスベクターは、分断された自己相補的核酸配列のRBEに結合し、かつ分断された自己相補的核酸配列を含む核酸の複製を開始する、1つ以上のローリングサークル複製タンパク質を発現する。ヘルパーウイルスベクターは一般に知られており、例えば、バキュロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン-バーウイルス、およびワクシニアウイルスのベクターが含まれる。いくつかの態様において、ヘルパーウイルスベクターは、バキュロウイルス発現ベクター(BEV)である。バキュロウイルス発現ベクターは当分野で一般に知られており、例えば、Passer et al. Methods Mol Biol. 2007;388:55-76に記載されている。バキュロウイルスベクターの例には、限定はされないが、Autograph californica核多角体病ウイルス(AcMNPV)ベクター、BmNPV、およびSpodoptera exigua核多角体ウイルスが含まれる。いくつかの態様において、ヘルパーウイルスベクターは、Autograph californica核多角体病ウイルス(AcMNPV)ベクターである。
【0123】
いくつかの態様において、本開示に記載の核酸を生成する方法はさらに、細胞(例えば、許容細胞)から核酸の複数コピーを精製するステップを含む。一般に、任意の適切な核酸精製方法を使用することができる。例えば、いくつかの態様において、本開示に記載の核酸の複数コピーは、Qiagen MiniPrepキットなどのプラスミド精製キット、エタノール沈殿、フェノール-クロロホルム精製などによって精製される。しかしながら本開示は部分的に、分断された自己相補的配列を含む核酸が、弱いカチオン交換クロマトグラフィー媒体(例えば、ジエチルアミノエチル媒体、DEAE)に対して低い結合効率を示すこと、および、シリカゲル媒体を用いる精製が、高分子量複合体の形成を低減させつつ、良好に分解された分子種を生成すること、という発見に関する。したがっていくつかの態様において、精製は、核酸をシリカゲル樹脂と接触させることを含む。
【0124】
いくつかの態様において、本明細書で提供される核酸は、異種インサートを、例えば治療目的のために、細胞に送達するのに使用され得る。さらに、いくつかの側面において、本開示は、治療生成物(例えば、治療用タンパク質、治療用RNA)をコードする異種インサートを含有する核酸の、対象への送達に関する。不純なまたは汚染された核酸の投与を避けるために、または他の点で核酸調製物の純度、品質もしくは構成の程度を特徴付けるために、かかる調製物は、使用前に、例えば細胞または対象に投与する前に、品質管理(QC)またはその他の分析手順に付することができる。例えば、核酸を分析する方法は、いくつかの態様において、本開示に記載の核酸調製物を得ること、および、調製物、例えば核酸複製生成物における1つ以上の核酸成分の、生理化学的特性を決定することを含む。
【0125】
決定され得る生理化学的特性の例としては、限定はされないが、溶解性、安定性、構造(例えば、一次構造、二次構造、三次構造、四次構造等)、疎水性、GC含量、分子量(例えば、核酸の1つ以上の断片または部分の、例えば制限消化後の分子量)などを含む。いくつかの態様において、生理化学的特性は、1つまたは各自己相補的配列のヌクレオチド配列である(例えば、本開示に記載の核酸が切断された交差アーム配列を含むかどうかを決定する)。
いくつかの態様において、生理化学的特性は、本開示に記載の核酸の多量体化(例えば、単量体、二量体、三量体、四量体、または他の多量体またはコンカテマー)の程度である。いくつかの態様において、生理化学的特性は、核酸調製物中の複製生成物の単量体形態および/または多量体形態の化学量論である。
【0126】
いくつかの態様において、生理化学的特性は、1つ以上の複製生成物(例えば、核酸調製物から得られるもの)の、制限エンドヌクレアーゼによる消化に対する感受性である。例えば、いくつかの態様において、本開示に記載の核酸を1つ以上の制限酵素で消化し、核酸の断片を分析して、各断片のサイズを決定する。したがって、いくつかの態様において、生理化学的特性は、1つ以上の複製生成物または複製生成物の断片の、分子量である。いくつかの態様において、分子量は、1つ以上の自己相補的配列を含む1つ以上の複製生成物の断片の分子量である。いくつかの態様において、分子量は、電気泳動移動度に基づいて決定される。いくつかの態様において、分子量は、質量分析に基づいて決定される。
【0127】
いくつかの態様において、分子量は、1つ以上の複製生成物の断片の分子量である。いくつかの態様において、分子量は、ポリメラーゼによるプライマー伸長を含む反応によって増幅される複製生成物の断片の分子量である。ポリメラーゼベースの伸長法の例としては、限定はされないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅、ループ媒介等温増幅(LAMP)などが挙げられる。
いくつかの態様において、生理化学的特性は、複製生成物の二量体形態における単量体の極性であり、ここで、極性はhead-to-head、head-to-tail、またはtail-to-tailである。
【0128】
一般に、生理化学的特性を決定するための適切なアッセイを使用することができる。適切なアッセイとしては、制限消化分析、ゲル電気泳動(例えば、天然ゲル電気泳動、変性ゲル電気泳動、高分解能ゲル電気泳動)、分光法(例えばLC/MS、HPLC/MS、ESI-MS、MALDI-TOFなどの質量分析)、および核酸配列決定(例えば、Maxam-Gilbert配列決定、パイロシーケンシング、鎖終結配列決定、超並列シグネチャー配列決定(massively parallel signature sequencing)、単一分子配列決定、ナノポア配列決定、Illumina配列決定など)を含む。
【0129】
組成物
いくつかの側面において、本開示は、本開示に記載の核酸を含む組成物に関する。いくつかの態様において、本明細書に記載の核酸を含む組成物は、それを必要とする対象に送達される。核酸は対象に、当分野で知られている任意の適切な方法に従って、組成物中で送達され得る。組成物は、本開示に記載のような1つ以上の(例えば、複数の)核酸を含み得ることが、理解されるべきである。いくつかの態様において、複数の核酸は、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の核酸である。いくつかの態様において、複数の1つ以上の核酸のそれぞれが、共有結合(例えば、エンド・ツー・エンドで連結)されている。いくつかの態様において、組成物はさらに、薬学的に許容し得る担体を含む。
好ましくは生理学的に適合性の担体(すなわち、組成物中)に懸濁された核酸は、対象に、すなわち宿主動物、例えばヒト、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ヒツジ、ウサギ、ウマ、ウシ、ヤギ、ブタ、モルモット、ハムスター、ニワトリ、シチメンチョウまたは非ヒト霊長類(例えば、マカク)に投与され得る。いくつかの態様において、宿主動物はヒトを含まない。
【0130】
核酸(例えば、ceDNA)の哺乳動物対象への送達は、例えば、筋肉内注射によって、または哺乳動物対象の血流への投与によってであり得る。血流への投与は、静脈、動脈または任意の他の血管導管への注射によるものであってよい。いくつかの態様において、核酸は、外科技術分野において知られている技術である分離式肢灌流によって血流に投与され、この方法は、核酸の投与前に当業者が体循環から四肢を分離することを本質的に可能にする。米国特許第6,177,403号に記載されている分離式肢灌流技術の変形もまた、当業者が使用して、核酸(単数または複数)を分離された四肢の血管系に投与して、筋肉細胞または組織のトランスフェクションを潜在的に促進することができる。さらに、一定の場合においては、核酸(単数または複数)を対象のCNSに送達することが望ましい場合がある。「CNS」とは、脊椎動物の脳および脊髄のすべての細胞および組織を意味する。したがってこの用語には、限定はされないが、神経細胞、グリア細胞、星状細胞、脳脊髄液(CSF)、間質腔、骨、軟骨などが含まれる。組換えAAVは、CNSまたは脳に直接送達することができ、または注射により、例えば脳室領域、ならびに線条体(例えば、尾状核または線条体の被殻)、脊髄および神経筋接合部、または小脳小葉へ、針、カテーテル、または関連する装置により、当分野で知られている神経外科的技術を用いて、例えば定位注射により、送達することができる(例えば、Stein et al., J Virol 73:3424-3429, 1999;Davidson et al., PNAS 97:3428-3432, 2000;Davidson et al., Nat. Genet. 3:219-223, 1993;およびAlisky and Davidson, Hum. Gene Ther. 11:2315-2329, 2000を参照)。
【0131】
適切な担体は、当業者により、核酸(単数または複数)が指向されている徴候を考慮して、容易に選択され得る。例えば、1つの適切な担体は、様々な緩衝液(例えば、リン酸緩衝食塩水)を用いて処方され得る生理食塩水を含む。他の典型的な担体には、滅菌生理食塩水、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、ピーナッツ油、ゴマ油、および水が含まれる。担体の選択は、本開示を限定するものではない。
任意に、本開示の組成物は、核酸(単数または複数)および担体(単数または複数)に加えて、保存剤または化学安定剤などの他の従来の医薬成分を含有してもよい。適切な例示的な保存剤としては、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン類、エチルバニリン、グリセリン、フェノールおよびパラクロロフェノールが挙げられる。好適な化学安定剤としては、ゼラチンおよびアルブミンが挙げられる。
【0132】
核酸(単数または複数)は、所望の組織の細胞をトランスフェクトし、かつ過度の有害作用なしで十分なレベルの遺伝子導入および発現を提供するのに十分な量で、投与される。従来の薬学的に許容し得る投与経路には、限定はされないが、選択された臓器への直接送達(例えば、肝臓への門脈内送達)、経口、吸入(鼻腔内および気管内送達を含む)、眼内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腫瘍内および他の非経口投与経路が含まれる。投与経路は、必要に応じて組み合わせてもよい。
特定の「治療効果」を達成するために必要とされる核酸(単数または複数)の用量は、いくつかの因子に基づき変化し、これには、限定はされないが、核酸投与の経路、治療効果を達成するために必要な遺伝子またはRNA発現のレベル、処置される特定の疾患または障害、および遺伝子またはRNA生成物の安定性が含まれる。当業者は、上記因子および当分野で知られている他の因子に基づいて、特定の疾患または障害を有する患者を処置するための核酸用量範囲を、容易に決定することができる。
【0133】
投薬計画は、最適な治療応答を提供するように調整され得る。例えば、オリゴヌクレオチドは反復投与されてもよく、例えば、数回用量を1日1回投与してもよく、または治療状況の緊急性による指示に従って用量を比例的に減少してもよい。当業者は、対象となるオリゴヌクレオチドの投与の適切な用量およびスケジュール、およびオリゴヌクレオチドが細胞に投与されるか対象に投与されるかを、容易に決定することができるであろう。
薬学的に許容し得る賦形剤および担体溶液の処方は当業者に知られており、種々の処置レジメンにおいて本明細書に記載の特定の組成物を使用するための、適切な投薬および処置レジメンの開発も同様である。
【0134】
典型的には、これらの処方は、少なくとも約0.1%以上の活性化合物を含有し得るが、ただし活性成分(単数または複数)のパーセンテージは当然ながら変動してもよく、便宜的には、処方全体の重量または容量の約1もしくは2%~約70%もしくは80%以上である。当然ながら、各治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、適切な投与量が、化合物の任意の所与の単位用量で得られるように調製することができる。溶解性、バイオアベイラビリティー、生物学的半減期、投与経路、製品貯蔵寿命などの要因、ならびに他の薬理学的考察は、かかる医薬製剤を調製する当業者により考慮され、したがって、様々な用量および処置レジメンが望ましい場合がある。
特定の状況において、本明細書に開示の適切に製剤化された医薬組成物中の核酸ベースの治療用構築物を、皮下、膵臓内、鼻腔内、非経口、静脈内、筋肉内、くも膜下腔内、または経口、腹腔内または吸入により、送達することが望ましい。いくつかの態様において、米国特許第5,543,158号;第5,641,515号および第5,399,363号(それぞれが具体的に、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に記載の投与様式を用いて、核酸を送達することができる。いくつかの態様において、好ましい投与様式は、門脈静脈注射によるものである。
【0135】
注射の使用に適した医薬形態には、滅菌水性溶液または分散液、および滅菌注射用溶液もしくは分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびこれらの混合物中、および油中で調製されてもよい。通常の保存および使用条件下において、これらの調製物は微生物の増殖を防ぐために保存剤を含有する。多くの場合、その形態は、容易な注射可能性が存在する程度まで滅菌かつ流動性である。それは、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に抗して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、および/または植物油を含有する溶媒または分散媒であってもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合には必要とされる粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射用組成物の持続的な吸収は、組成物中での、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤の使用によって、もたらされ得る。
【0136】
注射可能な水溶液の投与のために、例えば、溶液は、必要に応じて適切に緩衝化され得、液体希釈剤は最初に、十分な生理食塩水またはグルコースで等張化される。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与に特に適している。これに関連して、使用することができる滅菌水性媒体は、当業者に知られているであろう。例えば、1投与量を1mlの等張性NaCl溶液に溶解し、1000mlの皮下注入流体に添加するか、または提案された注入部位に注入することができる(例えば、"Remington's Pharmaceutical Sciences" 15th Edition, pages 1035-1038 and 1570-1580を参照)。投与量のいくらかの変動は、宿主の状態に依存して必然的に生じるであろう。投与を担当する者は、いずれの場合においても、個々の宿主のための適切な用量を決定するであろう。
【0137】
滅菌注射溶液は、必要な量の核酸を、適切な溶媒中に、必要に応じて本明細書に列挙した他の様々な成分と共に組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製される。一般に分散液は、種々の滅菌された活性成分を、基本的な分散媒と上に列挙したものからの必要な他の成分とを含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことにより、調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は真空乾燥および凍結乾燥技術であり、これは、予め滅菌濾過したその溶液から、有効成分+任意の追加の所望の成分の粉末を生じる。
【0138】
本明細書に開示される核酸組成物はまた、中性形態または塩形態で製剤化され得る。薬学的に許容し得る塩には、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基で形成される)が含まれ、これは例えば、塩酸またはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸を用いて形成される。遊離カルボキシル基を用いて形成される塩はまた、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムまたは水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から、誘導することもできる。製剤化されると、溶液は、投薬製剤に適合する様式で、治療的に有効な量で投与される。製剤は、注射液、薬物放出カプセルなどの様々な剤形で、容易に投与される。
【0139】
本明細書で使用される「担体」は、任意のおよびすべての溶媒、分散媒、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤、緩衝剤、担体溶液、懸濁液、コロイドなどを含む。医薬活性物質のためのかかる媒体および薬剤の使用は、当技術分野において知られている。補助的な活性成分も、組成物に組み込むことができる。「薬学的に許容し得る」という語句は、宿主に投与された場合にアレルギー性または同様の有害反応を生じない、分子実体および組成物を指す。
リポソーム、ナノカプセル、微粒子、マイクロスフェア、脂質粒子、小胞などの送達ビヒクルは、本開示の組成物の適切な宿主細胞への導入のために使用され得る。特に、核酸は、脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノスフェア、またはナノ粒子などに封入されて、送達用に製剤化され得る。
【0140】
かかる製剤は、本明細書に開示される核酸の薬学的に許容し得る製剤の導入のために好ましい。リポソームの形成および使用は、当業者に一般に知られている。近年、改善された血清安定性および循環半減期を有するリポソームが開発された(米国特許第5,741,516号)。さらに、潜在的な薬物担体としてのリポソームおよびリポソーム様調製物の、様々な方法が記載されている(米国特許第5,567,434号;第5,552,157号;第5,565,213号;第5,738,868号および第5,795,587号)。
リポソームは、通常は他の手順によるトランスフェクションに耐性であるいくつかの細胞型で、首尾よく使用されてきた。さらにリポソームは、ウイルスに基づく送達システムに典型的な、DNA長の制約がない。リポソームは、遺伝子、薬物、放射線治療剤、ウイルス、転写因子およびアロステリックエフェクターを様々な培養細胞株および動物に導入するために、効果的に使用されている。さらに、リポソーム媒介性薬物送達の有効性を調査する、いくつかの成功した臨床試験が完了している。
【0141】
リポソームは、水性媒体中に分散されたリン脂質から形成され、多重層同心状二層小胞(多重層小胞(MLV)とも呼ばれる)を自発的に形成する。MLVは一般に、25nm~4μmの直径を有する。MLVの超音波処理は、コア内に水溶液を含有する200~500ANGの範囲の直径の単層小胞(SUV)の形成をもたらす。
【0142】
いくつかの態様において、リポソームはカチオン性脂質を含む。用語「カチオン性脂質」は、極性および非極性ドメインの両方を有する脂質および合成脂質であって、生理学的pHまたはその付近で正に荷電することができ、核酸などのポリアニオンに結合し、核酸の細胞への送達を促進する、前記脂質および合成脂質を含む。いくつかの態様において、カチオン性脂質は、飽和および不飽和のアルキルおよび脂環式エーテル、ならびにアミン、アミドまたはそれらの誘導体のエステルを含む。いくつかの態様において、カチオン性脂質は、直鎖状または分枝のアルキル、アルケニル基、またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様において、カチオン性脂質は、1~約25個の炭素原子(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個の炭素原子)を含有する。いくつかの態様において、カチオン性脂質は、25個より多くの炭素原子を含有する。いくつかの態様において、直鎖状または分枝のアルキルまたはアルケン基は、6個以上の炭素原子を有する。カチオン性脂質はまた、いくつかの態様において、1つ以上の脂環式基を含む。脂環式基の非限定的例には、コレステロールおよび他のステロイド基が含まれる。いくつかの態様において、カチオン性脂質は、1つ以上の対イオンを用いて調製される。対イオン(陰イオン)の例としては、限定されないが、Cl-、Br-、I-、F-、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、硫酸塩、亜硝酸塩、および硝酸塩が挙げられる。
【0143】
カチオン性脂質の非限定的な例には、ポリエチレンイミン、ポリアミドアミン(PAMAM)スターバーストデンドリマー、リポフェクチン(DOTMAとDOPEの組合せ)、リポフェクターゼ、LIPOFECTAMINE(商標)(例えばLIPOFECTAMINE(商標)(2000)、DOPE、Cytofectin(Gilead Sciences, Foster City, Calif)、およびEufectins(JBL, San Luis Obispo, Calif)が挙げられる。例示的なカチオン性リポソームは、以下から作ることができる:N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)-プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)-プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムメチルスルフェート(DOTAP)、3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド;およびジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)。核酸(例えば、ceDNA)はまた、例えばポリ(L-リシン)またはアビジンと複合体化することもでき、脂質はこの混合物に含まれてもよく、または含まれなくてもよく、例えばステリル-ポリ(L-リシン)である。
【0144】
いくつかの態様において、本開示に記載の核酸は、米国特許第8,158,601号に記載されているカチオン性脂質、または米国特許第8,034,376号に記載されているポリアミン化合物または脂質を用いて送達される;これら各々の内容は、本明細書に参照により組み込まれる。
いくつかの態様において、本開示に記載の核酸は、細胞取り込みを増加させる薬剤にコンジュゲートされる(例えば、共有結合される)。「細胞取り込みを増加させる薬剤」とは、脂質膜を超える核酸の輸送を促進する分子である。例えば、核酸は、親油性化合物(例えばコレステロール、トコフェロールなど)、細胞浸透性ペプチド(CPP)(例えば、ペネトラチン、TAT、Syn1Bなど)、およびポリアミン(例えばスペルミン)に、コンジュゲートさせ得る。細胞取り込みを増加させる薬剤のさらなる例は、例えばWinkler (2013). Oligonucleotide conjugates for therapeutic applications. Ther. Deliv. 4(7); 791-809に開示されており、この内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0145】
いくつかの態様において、本開示に記載の核酸は、ポリマー(例えば、ポリマー分子)または葉酸塩分子(例えば、葉酸分子)にコンジュゲートされる。一般に、ポリマーにコンジュゲートされた核酸の送達は当技術分野で知られており、例えばWO2000/34343およびWO2008/022309に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの態様において、本開示に記載の核酸は、例えば米国特許第8,987,377号に記載されるように、ポリ(アミド)ポリマーにコンジュゲートされる。いくつかの態様において、本開示に記載の核酸は、米国特許第8,507,455号に記載されるように葉酸分子にコンジュゲートされ、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0146】
いくつかの態様において、本開示に記載の核酸は、例えば、米国特許第8,450,467号に記載されているように、炭水化物にコンジュゲートされ、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
代替的に、核酸のナノカプセル製剤を使用してもよい。ナノカプセルは一般に、物質を安定かつ再現性のある方法で閉じ込めることができる。細胞内ポリマーの過負荷による副作用を避けるために、かかる超微粒子(約0.1μmの大きさ)は、in vivoで分解できるポリマーを用いて設計されるべきである。これらの要件を満たす生分解性ポリアルキル-シアノアクリレートナノ粒子が、使用のために企図される。
【0147】
いくつかの態様において、本開示に記載の核酸は、脂質ナノ粒子によって送達される。一般に、脂質ナノ粒子は、イオン化可能なアミノ脂質を含み(例えば、ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート、DLin-MC3-DMA、ホスファチジルコリン(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、DSPC)、コレステロールおよびコート脂質(ポリエチレングリコール-ジミリストイルグリセロール、PEG-DMG)、例えばTam et al. (2013). Advances in Lipid Nanoparticles for siRNA delivery. Pharmaceuticals 5(3): 498-507に開示されている。いくつかの態様において、脂質ナノ粒子は、約10nm~約1000nmの平均直径を有する。いくつかの態様において、脂質ナノ粒子は、300nm未満の直径を有する。いくつかの態様において、脂質ナノ粒子は、約10nm~約300nmの直径を有する。いくつかの態様において、脂質ナノ粒子は、200nm未満の直径を有する。いくつかの態様において、脂質ナノ粒子は、約25nm~約200nmの直径を有する。いくつかの態様において、脂質ナノ粒子調製物(例えば、複数の脂質ナノ粒子を含む組成物)は、平均サイズ(例えば、直径)が約70nm~約200nmであり、より典型的には平均サイズが約100nm以下である、サイズ分布を有する。
【0148】
いくつかの態様において、本開示に記載の核酸は、金ナノ粒子により送達される。一般に、核酸は、金ナノ粒子に共有結合され得るか、または金ナノ粒子に非共有結合され得(例えば、電荷-電荷相互作用によって結合される)、これは例えば、Ding et al. (2014). Gold Nanoparticles for Nucleic Acid Delivery. Mol. Ther. 22(6); 1075-1083に記載されている。いくつかの態様において、金ナノ粒子-核酸コンジュゲートは、例えば、米国特許第6,812,334号に記載の方法を用いて生成され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0149】
上記の送達方法に加えて、以下の技術もまた、核酸組成物を宿主に送達する代替の方法として企図される。音波泳動(例えば、超音波)が使用され、これは米国特許第5,656,016号に、循環系へのおよびそれを通る薬物透過の速度および有効性を高めるための装置として記載されている。企図される他の薬物送達の代替法は、骨内注射(米国特許第5,779,708号)、マイクロチップデバイス(米国特許第5,797,898号)、眼科用製剤(Bourlais, et al., 1998)、経皮マトリックス(米国特許第5,770,219号および第5,783,208号)、およびフィードバック制御送達(米国特許第5,697,899号)である。
【0150】
送達/投与
いくつかの態様において、本開示は、異種核酸を細胞(例えば、宿主細胞)に送達する方法であって、本開示に記載の核酸を細胞に送達することを含む、前記方法を提供する。
いくつかの側面において、本開示は、トランスフェクトされた宿主細胞を提供する。「宿主細胞」とは、目的の物質を含むか、または含むことができる任意の細胞をいう。宿主細胞は、本開示に記載の核酸のレシピエントとして使用され得る。この用語には、トランスフェクトされた元の細胞の子孫が含まれる。したがって、本明細書で使用される「宿主細胞」は、外因性DNA配列(例えば、本開示に記載の核酸)でトランスフェクトされた細胞を指し得る。単一の親細胞の子孫は、天然の、偶発的な、または故意の突然変異のために、形態またはゲノムもしくは全DNA補体について、元の親と必ずしも完全に同一でなくてもよいことが理解される。
【0151】
いくつかの態様において、宿主細胞は許容細胞である。いくつかの態様において、宿主細胞は許容細胞ではない。宿主細胞は多くの場合、哺乳動物細胞である。いくつかの側面において、本開示は、異種核酸を対象に送達する方法であって、本開示に記載の核酸を有する宿主細胞を対象に投与することを含む、前記方法を提供する。例えば、いくつかの態様において、宿主細胞は、例えば本開示に記載の核酸(例えば、血液疾患関連導入遺伝子をコードする異種核酸インサートを有する核酸)を含む、ヒト血液細胞などの血液細胞である。いかなる特定の理論に束縛されることを望むものではないが、かかる宿主細胞の送達は、いくつかの態様において、血液の疾患または障害の処置のために有用である。
【0152】
本開示の側面は、本明細書に記載の核酸が、現在使用されているウイルスおよび細菌由来の遺伝子治療ベクターと比較して、宿主において免疫応答の低下を誘発する(例えば、免疫応答を誘発しない)、という発見に関する。いくつかの側面において、本開示は、異種核酸を対象に送達する方法を提供し、この方法は、対象に本開示に記載の核酸を送達することを含み、ここで核酸の送達は、対象において核酸に対する免疫応答をもたらさない。いくつかの態様において、免疫応答は体液性応答である。体液性免疫応答とは、Bリンパ球による抗原特異的抗体の産生を指す。いくつかの態様において、免疫応答は細胞性応答である。細胞性免疫応答とは、抗体ではなく、むしろ、抗原(例えば、外因性核酸)による免疫細胞(例えば、食細胞、抗原特異的T細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞など)の活性化が関与する免疫応答を指す。
【0153】
いかなる特定の理論に束縛されることを望むものではないが、本開示に記載のような核酸の投与によって誘発される免疫応答の欠如は、核酸が宿主に複数の機会で投与されることを可能にする。いくつかの態様において、異種核酸が対象に送達される機会の回数は、2~10回の範囲である(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10回)。いくつかの態様において、異種核酸は対象に、10回より多く送達される。
【0154】
いくつかの態様において、核酸(例えば、ceDNA)の用量は対象に、暦日(例えば、24時間の期間)に1回以下投与される。いくつかの態様において、核酸(例えば、ceDNA)の用量は対象に、2、3、4、5、6または7暦日に1回以下、投与される。いくつかの態様において、核酸(例えば、ceDNA)の用量は対象に、暦週(例えば、7暦日)に1回以下、投与される。いくつかの態様において、核酸(例えば、ceDNA)の用量は対象に、2週間毎以下(例えば、2暦週の期間に1回)、投与される。いくつかの態様において、核酸(例えば、ceDNA)の用量は対象に、1暦月に1回以下(例えば、30暦日に1回)、投与される。いくつかの態様において、核酸(例えば、ceDNA)の用量は対象に、6暦月に1回以下投与される。いくつかの態様において、核酸(例えば、ceDNA)の用量は対象に、暦年(例えば、365日またはうるう年には366日)に1回以下、投与される。
【0155】
本明細書に開示されるように、核酸(それらを発現するために使用され得るDNA発現構築物を含む)は、任意の適切な経路によって投与され得る。治療に使用するためには、有効量の核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)および/または他の治療剤を、薬剤を所望の組織、例えば筋肉組織に送達する任意の様式で、対象に投与することができる。いくつかの態様において、薬剤(例えば、核酸)は、筋肉内に投与される。他の適切な投与経路としては、限定はされないが、経口、非経口、静脈内、腹腔内、鼻腔内、舌下、気管内、吸入、皮下、眼、膣および直腸が挙げられる。全身経路には、経口および非経口が含まれる。いくつかの種類の装置が、吸入による投与のために定期的に使用される。これらの種類の装置には、定量吸入器(MDI)、呼吸作動MDI、乾燥粉末吸入器(DPI)、MDIと組み合わせたスペーサー/保持チャンバー、およびネブライザーが含まれる。
【0156】
経口投与のために、薬剤は、活性化合物(単数または複数)を当分野で知られている薬学的に許容し得る担体と組み合わせることにより、容易に製剤化することができる。かかる担体は、本開示の薬剤を、処置される対象による経口摂取のための錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化することを可能にする。経口使用のための医薬調製物を、固体賦形剤として得ることができ、所望により適切な助剤を添加した後、任意に、得られた混合物を粉砕し、顆粒の混合物を加工することにより、錠剤または糖衣錠コアを得る。適切な賦形剤は、特に、以下である:糖などの充填剤、例えばラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトール;セルロース調製物、例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)。必要に応じて崩壊剤を添加してもよく、例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムである。任意に、経口製剤はまた、生理食塩水もしくは内部酸性条件を中和するための緩衝液中に製剤化してもよく、または担体なしで投与してもよい。
【0157】
経口的に使用することができる医薬製剤は、ゼラチン製のプッシュフィットカプセル、ならびにゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤でできたソフトな密封カプセルを含む。プッシュフィットカプセルは、活性成分を、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、および場合によっては安定剤と混合して、含むことができる。ソフトカプセルでは、活性剤は、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解または懸濁されてもよい。さらに、安定剤を添加してもよい。経口投与のために製剤化されたマイクロスフェアもまた使用することができる。かかるマイクロスフェアは、当技術分野において十分に定義されている。経口投与のための製剤は、典型的には、かかる投与に適した薬用量である。
頬側投与のために、組成物は、従来の方法で製剤化された錠剤またはトローチ剤の形態をとり得る。
【0158】
吸入による投与のため、本開示による使用のための薬剤(例えば、核酸)は、適切な噴射剤の使用による加圧パックまたは噴霧器からのエアロゾルスプレー提示の形態で便利に送達され得て、該適切な噴射剤は、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガスである。加圧エアロゾルの場合、用量単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。吸入器または注入器で使用するための、例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物とラクトースもしくはデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物を含有するように、製剤化することができる。
薬剤(例えば、核酸)は、それらを全身に送達することが望ましい場合、注射、例えばボーラス注射または連続注入による非経口投与のために製剤化することができる。注射用製剤は、単位剤形、例えば、アンプルまたは複数用量容器中に、保存剤を加えて提供することができる。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンなどの形態をとり、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの調合剤(formulatory agent)を含み得る。
【0159】
非経口投与用の医薬製剤には、水溶性形態の薬剤(例えば、アンチセンス核酸)の水溶液が含まれる。さらに、薬剤の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製することができる。適切な親油性溶媒またはビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが含まれる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの、懸濁液の粘度を増加させる物質を含み得る。任意に、懸濁液はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために薬剤の溶解性を高める適切な安定剤または薬剤を含有してもよい。代替的に、薬剤(例えば、核酸)は、使用前に適切なビヒクル(例えば、発熱物質を含まない滅菌水)で構成するための、粉末形態であってもよい。薬剤(例えば、核酸)はまた、例えばカカオバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含有する坐剤または停留浣腸などの、直腸または膣用組成物中に製剤化されてもよい。
【0160】
他の送達システムとしては、徐放、遅延放出または持続放出送達システムを含むことができる。かかるシステムは、薬剤(例えば、アンチセンス核酸)の反復投与を避けることができ、対象および医師の利便性を高める。多くの種類の放出送達システムが利用可能である。それらには、ポリマーベースシステム、例えばポリ(ラクチドグリコリド)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸、およびポリ無水物などが含まれる。送達システムは非ポリマーシステムも含み、これは以下である:コレステロールなどのステロール、コレステロールエステルおよび脂肪酸またはモノ、ジおよびトリグリセリドなどの中性脂肪を含む、脂質;ヒドロゲル放出システム;シラスティックシステム;ペプチドベースのシステム;ワックスコーティング;従来の結合剤および賦形剤を用いた圧縮錠剤;部分融合インプラント;および本明細書に開示される他のもの。
【実施例】
【0161】
例1:分断された自己相補的核酸配列
図1Aは、分断された自己相補的核酸配列の非限定的な例を示す(これはAAV2 ITRである)。
図1Aに示すように、核酸は、ステム部分(D-A-A’)と、対向する縦方向ステムループ(B-B’およびC-C’)を有する交差アーム配列とを有する、T型ヘアピン構造を形成する。分断された自己相補的核酸配列のtrsおよびRBEも示されている。
図1Bは、分断された自己相補的核酸配列の「Cアーム」における切断の、いくつかの非限定的な例を示す。非対称AAV2 ITRの一例の図的表現が
図3に示されている。
【0162】
非対称AAV ITRからのceDNAの複製
アデノ随伴ウイルス(AAV)ゲノムは、典型的に逆位末端配列(ITR)と呼ばれる末端パリンドロームが隣接する、直鎖状一本鎖DNAである(
図2A、左側)。7個の不対塩基を除き、145ntのITR配列は自己相補的であり、エネルギー的に安定な「T」型ヘアピンを形成する(ΔG≒1mol当たり-72.4kcal、Tm>80℃)(
図1A)。ウイルスDNA複製の間、細胞DNAポリメラーゼ複合体は、ITRによって形成された部分二重鎖がプライマー伸長のためのプライマーとして働く鋳型鎖の3’末端において、合成を開始する。形成された複製可能中間体は、ITRによって共有結合された鋳型および新生鎖を有する分子内二重鎖である。生産的感染の間、末端分解と呼ばれるプロセスは鎖内ITRを分解し、2つの完全長相補的ウイルスゲノムを生じる(
図2B、左側)。
【0163】
AAVcap遺伝子発現がない場合、非対称ITRを有するAAVベクターゲノムは非効率的な複製を受け、複製生成物は閉鎖型直鎖状二重鎖DNA(ceDNA)の新規立体配座に蓄積する。非効率的な複製(例えば、不完全な末端分解)のために、分子内中間体の相補鎖は、現在、ゲノムの両端のITRを介して共有結合している(
図2B、右側)。したがって、天然の条件では、ceDNAは直鎖状二重鎖DNAとして振る舞うが、変性条件下では、ceDNA鎖は溶けて分離するが互いに結合したままであるため、直鎖状二重鎖分子を一本鎖環状DNAに変換する。
【0164】
いくつかの態様において、非対称AAV ITRからのceDNA生成は、導入遺伝子カセットの一方の端部の切断されたITR、および反対側の端部の作用型(例えば、機能性)、野生型(wt)またはwt様ITRに依存する。いくつかの態様において、切断されたITRは、Sf9細胞内のceDNAの複製サイクル中に非効率的に処理され、複製中間体、二重鎖単量体、二重鎖二量体などの蓄積をもたらす。構造(カプシド)タンパク質の発現がない場合、Rep78(またはRep68)は無傷のITR上に組み立てられ、末端分解部位での部位特異的ニッキングを触媒する。この反応により、一過性チロシン-ホスホジエステル(AAV2 Rep78のY156が、末端分解部位5’AGTTGGの5’チミジンに共有結合している)が形成される。次いで、一過性核タンパク質複合体は、ドナー鎖を相補鎖の遊離3’末端に移動させる。したがって、ceDNA立体配座は、ベクターゲノムの一方の末端に欠損したITR、反対側の末端に無傷または作動性のITR、およびp5とp19 Repタンパク質の同時発現の結果であり、ここで少なくとも1つのp5および1つのp19 Repが発現される。他のパルボウイルス「小」RepまたはNSタンパク質は、AAV p19 Repタンパク質(Rep52およびRep40)に代わることができる。これらの小Repタンパク質は非プロセッシブな単量体ヘリカーゼであるため、非パルボウイルス科のスーパーファミリー2(SF2)ヘリカーゼが、AAV Repタンパク質に代わることが可能である。
【0165】
dependovirinaeは、数千万年(おそらく数億年)の間、比較的変化することなく存在している。それらは、潜伏感染細胞のプロウイルスがヒト染色体19q上のAAVS1遺伝子座にしばしば局在しているそれらの宿主と、恒常性または共生関係を開発したと仮定され、宿主細胞には悪影響を及ぼさないように見える。潜伏期にある間、AAV遺伝子発現は、細胞因子、例えばYY1によって抑制され、サーボ機構的に作用するp5 Repタンパク質によって、p5およびp40プロモーターからの発現を負に調節する。したがって、潜伏感染細胞は、検出可能なAAVタンパク質をほとんどまたは全く有さず、ウイルスタンパク質を合成している細胞に対する後天性免疫応答が制限される。
【0166】
例2:ceDNAの精製
プラスミド精製プロトコルは、典型的には、少量のプラスミド調製物のためのシリカゲル、または、大量のためのアニオン交換クロマトグラフィージエチルアミノエチルセファロース(例えば、DEAE-セファロース)を利用する。大規模なpDNA精製のために、大腸菌をドデシル硫酸ナトリウム(SDS)で溶解し、細胞タンパク質およびゲノムDNAを、プラスミドを溶液中に保持する変性/中和サイクルによって沈殿させる。再生された二本鎖pDNAは、正に荷電したDEAE基に結合し、洗浄ステップに続いてpDNAが置き換えられ、高塩緩衝液で溶出される。代替的に、シリカゲル膜を使用して、高塩条件下で清澄化された細菌溶解物からの選択的pDNA吸着を行い、低または非イオン性緩衝液中で溶出することができる。
【0167】
ceDNAは、小規模のシリカゲルベースのプロセスで容易に精製できることが観察された。大規模アニオン交換プロトコルを用いると、ceDNA回収は非常に非効率的であり、低い収率をもたらした。
シリカゲル膜を用いた、無脊椎動物Sf9細胞からの大規模なceDNA精製法が記載されている。改変されたシリカゲル膜(またはクロマトグラフィー媒体)の表面積を増加させることは、流速、吸着およびceDNAの回収を改善するための1つのアプローチである。標準的なフィルターカプセルは、直径が0.5cmから20cm以上の広範囲の構成で利用可能である。カプセルは、化学的に不活性な支持体上のシリカゲル膜の単一層、または不活性支持体によって分離された膜の積み重ね、または水平流設計を利用するプリーツ膜、を含有することができる。接線流濾過(TFF)および中空糸濾過(HFF)は、同軸流カプセル濾過の代替手段である。
【0168】
例3:疾患の処置のためのceDNA構築物
図4は、非対称自己相補的核酸配列(例えば、AAV2 ITR)および眼疾患に関連する導入遺伝子を有する核酸構築物の、非限定的な例を示す。
図4の第1の核酸構築物は、シュタルガルト病の処置のための核酸分子の非限定的な例を示す。この核酸は、ATP結合カセット、サブファミリーA(ABC1)、メンバー4(ABCA4)タンパク質をコードする異種核酸インサートに隣接する、一対の非対称かつ分断された自己相補的核酸配列(例えば、非対称AAV2 ITR)を含む。AAV2 ITRは、AAV2 ITRの1つ(右側)がC-ステム領域に欠失を含有するため、非対称である。それぞれの分断された自己相補的核酸配列は、作動性Rep結合要素(RBE)および作動性末端分解部位(trs)を含む。核酸はまた、異種核酸インサートの5’に位置するhBグロビンイントロン2および異種核酸インサートの3’に位置するhGHポリ(A)シグナルもコードする。
【0169】
図4の第2の核酸構築物は、アッシャー病の処置のための核酸分子の非限定的な例を示す。この核酸は、usherinタンパク質(USH2A)バリアント1をコードする異種核酸インサートに隣接する、一対の非対称かつ分断された自己相補的核酸配列(例えば、非対称AAV2 ITR)を含む。AAV2 ITRは、AAV2 ITRの1つ(右側)がC-ステム領域に欠失を含有するために、非対称である。それぞれの分断された自己相補的核酸配列は、作動性Rep結合要素(RBE)および作動性末端分解部位(trs)を含む。核酸はまた、異種核酸インサートの5’に位置するCMVプロモーターおよびT7プロモーター、ならびに異種核酸インサートの3’に位置するbGHポリ(A)シグナルもコードする。
【0170】
図4の第3の核酸構築物は、黄斑変性/新血管形成の処置のための核酸分子の非限定的な例を示す。この核酸は、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)をコードする異種核酸インサートに隣接する、一対の非対称かつ分断された自己相補的核酸配列(例えば、非対称AAV2 ITR)を含む。AAV2 ITRは、AAV2 ITRの1つ(右側)がC-ステム領域に欠失を含有するために、非対称である。それぞれの分断された自己相補的核酸配列は、作動性Rep結合要素(RBE)および作動性末端分解部位(trs)を含む。核酸はまた、異種核酸インサートの5’に位置するCMVプロモーターおよびT7プロモーター、ならびに異種核酸インサートの3’に位置するbGHポリ(A)シグナルもコードする。
【0171】
図4の第4の核酸構築物は、レーバー先天性黒内障の処置のための核酸分子の非限定的な例を示す。この核酸は、中心体タンパク質(centrosomal protein)290(CEP290)をコードする異種核酸インサートに隣接する、一対の非対称かつ分断された自己相補的核酸配列(例えば、非対称AAV2 ITR)を含む。AAV2 ITRは、AAV2 ITRの1つ(右側)がC-ステム領域に欠失を含有するために、非対称である。それぞれの分断された自己相補的核酸配列は、作動性Rep結合要素(RBE)および作動性末端分解部位(trs)を含む。核酸はまた、異種核酸インサートの5’に位置するCMVプロモーターおよびT7プロモーター、ならびに異種核酸インサートの3’に位置するbGHポリ(A)シグナルもコードする。
【0172】
図5は、非対称自己相補的核酸配列(例えば、AAV2 ITR)および血液疾患に関連する導入遺伝子を有する核酸構築物の、非限定的な例を示す。
図5の第1の核酸構築物は、血友病Aの処置のための核酸分子の非限定的な例を示す。この核酸は、Bドメインが欠失した第VIII因子タンパク質(BDD-FVIII)をコードする異種核酸インサートに隣接する、一対の非対称かつ分断された自己相補的核酸配列(例えば、非対称AAV2 ITR)を含む。AAV2 ITRは、AAV2 ITRの1つ(右側)がC-ステム領域に欠失を含有するために、非対称である。それぞれの分断された自己相補的核酸配列は、作動性Rep結合要素(RBE)および作動性末端分解部位(trs)を含む。核酸はまた、異種核酸インサートの5’に位置するCMVプロモーター/エンハンサーおよびT7プロモーター、ならびに異種核酸インサートの3’に位置するbGHポリ(A)シグナルもコードする。
【0173】
図5の第2の核酸構築物は、血友病Aの処置のための核酸分子の非限定的な例を示す。この核酸は、全長第VIII因子タンパク質(FVIII)をコードする異種核酸インサートに隣接する、一対の非対称かつ分断された自己相補的核酸配列(例えば、非対称AAV2 ITR)を含み、これは、従来のAAVベクターのクローニング能力を超える。AAV2 ITRは、AAV2 ITRの1つ(右側)がC-ステム領域に欠失を含有するために、非対称である。それぞれの分断された自己相補的核酸配列は、作動性Rep結合要素(RBE)および作動性末端分解部位(trs)を含む。核酸はまた、異種核酸インサートの5’に位置するCMVプロモーター/エンハンサーおよびT7プロモーター、ならびに異種核酸インサートの3’に位置するbGHポリ(A)シグナルもコードする。
【0174】
図5の第3の核酸構築物は、フォンヴィルブランド因子病の処置のための核酸分子の非限定的な例を示す。この核酸は、フォンヴィルブランド因子(vWF)をコードする異種核酸インサートに隣接する、非対称かつ分断された一対の自己相補的核酸配列(例えば、非対称AAV2 ITR)を含む。AAV2 ITRは、AAV2 ITRの1つ(右側)がC-ステム領域に欠失を含有するために、非対称である。それぞれの分断された自己相補的核酸配列は、作動性Rep結合要素(RBE)および作動性末端分解部位(trs)を含む。核酸はまた、異種核酸インサートの5’に位置するCMVプロモーターおよびT7プロモーター、ならびに異種核酸インサートの3’に位置するbGHポリ(A)シグナルもコードする。
【0175】
図6は、非対称自己相補的核酸配列(例えば、AAV2 ITR)および肝疾患に関連する導入遺伝子を有する核酸構築物の、非限定的な例を示す。
図6の第1の核酸構築物は、高コレステロール血症の処置のための核酸分子の非限定的な例を示す。この核酸は、レシチンコレステロールアセチルトランスフェラーゼをコードする異種核酸インサートに隣接する、一対の非対称かつ分断された自己相補的核酸配列(例えば、非対称AAV2 ITR)を含む。AAV2 ITRは、AAV2 ITRの1つ(右側)がC-ステム領域に欠失を含有するために、非対称である。それぞれの分断された自己相補的核酸配列は、作動性Rep結合要素(RBE)および作動性末端分解部位(trs)を含む。核酸はまた、異種核酸インサートの5’に位置するCMVプロモーター/エンハンサーおよびT7プロモーター、ならびに異種核酸インサートの3’に位置するbGHポリ(A)シグナルもコードする。
【0176】
図6の第2の核酸構築物は、フェニルケトン尿症(PKU)の処置のための核酸分子の非限定的な例を示す。この核酸は、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)をコードする異種核酸インサートに隣接する、一対の非対称かつ分断された自己相補的核酸配列(例えば、非対称AAV2 ITR)を含む。AAV2 ITRは、AAV2 ITRの1つ(右側)がC-ステム領域に欠失を含有するために、非対称である。それぞれの分断された自己相補的核酸配列は、作動性Rep結合要素(RBE)および作動性末端分解部位(trs)を含む。核酸はまた、異種核酸インサートの5’に位置するCMVプロモーター/エンハンサーおよびT7プロモーター、ならびに異種核酸インサートの3’に位置するbGHポリ(A)シグナルもコードする。
【0177】
図6の第3の核酸構築物は、糖原病1型(GSD1)の処置のための核酸分子の非限定的な例を示す。この核酸は、グルコース6-ホスファターゼ触媒サブユニット(G6PC)をコードする異種核酸インサートに隣接する、一対の非対称かつ分断された自己相補的核酸配列(例えば、非対称AAV2 ITR)を含む。AAV2 ITRは、AAV2 ITRの1つ(右側)がC-ステム領域に欠失を含有するために、非対称である。それぞれの分断された自己相補的核酸配列は、作動性Rep結合要素(RBE)および作動性末端分解部位(trs)を含む。核酸はまた、異種核酸インサートの5’に位置するCMVプロモーター/エンハンサーおよびT7プロモーター、ならびに異種核酸インサートの3’に位置するbGHポリ(A)シグナルもコードする。
【0178】
図7は、非対称自己相補的核酸配列(例えば、AAV2 ITR)および肺疾患に関連する導入遺伝子を有する核酸構築物の、非限定的な例を示す。
図7の第1の核酸構築物は、嚢胞性線維症の処置のための核酸分子の非限定的な例を示す。この核酸は、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)をコードする異種核酸インサートに隣接する、一対の非対称かつ分断された自己相補的核酸配列(例えば、非対称AAV2 ITR)を含む。AAV2 ITRは、AAV2 ITRの1つ(右側)がC-ステム領域に欠失を含有するために、非対称である。それぞれの分断された自己相補的核酸配列は、作動性Rep結合要素(RBE)および作動性末端分解部位(trs)を含む。核酸はまた、異種核酸インサートの5’に位置するCMVプロモーター/エンハンサーおよびT7プロモーター、ならびに異種核酸インサートの3’に位置するbGHポリ(A)シグナルもコードする。
【0179】
図7の第2の核酸構築物は、α-1アンチトリプシン欠乏症の処置のための核酸分子の非限定的な例を示す。この核酸は、α-1アンチトリプシン(AAT)をコードする異種核酸インサートに隣接する、一対の非対称かつ分断された自己相補的核酸配列(例えば、非対称AAV2 ITR)を含む。AAV2 ITRは、AAV2 ITRの1つ(右側)がC-ステム領域に欠失を含有するために、非対称である。それぞれの分断された自己相補的核酸配列は、作動性Rep結合要素(RBE)および作動性末端分解部位(trs)を含む。核酸はまた、異種核酸インサートの5’に位置するCMVプロモーター/エンハンサーおよびT7プロモーター、ならびに異種核酸インサートの3’に位置するbGHポリ(A)シグナルもコードする。
【0180】
例4:in vivo研究:正常な雄性ICRマウスにおける裸のDNAの流体力学的送達
pDNAのマウス尾静脈への注入後、lacZの発現は、二倍体ゲノムあたりのpDNAの量に対応して、24時間から5週の間で連続的に減少した。非対称かつ分断された自己相補的配列を有するceDNAで処置したマウス肝臓は、24時間から1週の間にlacZ活性に変化を示さなかったが、発現は5週において実質的に減少した。しかし、肝細胞中のceDNAは、5週の時点で本質的に変化しなかった。同様の結果が、チロキシン結合グロブリンプロモーター(TBG)GFPカセットでも得られた:GFP発現およびpDNAは10週間後にほとんどまたは全く検出されなかったが、一方、ceDNA TBG-GFP発現およびDNAレベルは、1週から10週の間に変化しなかった。
【0181】
例5:ceDNAの眼への送達
直接的GFP蛍光が、網膜の幅にわたる細胞内で均一に観察された。
図8A~8Dは、非対称かつ分断された自己相補的配列を有するceDNAの、眼への送達を示す。成体マウスをケタミン/キシラジン(100/10mg/kg)で麻酔し、トランスフェクション剤を1~2μlの容積の経強膜注射により、硝子体内に送達した。抗生物質軟膏を角膜に塗布して、マウス回復中の眼の乾燥を防いだ。マウスを37度で回復させた後、マウス部屋に2週間戻し、CO
2窒息により安楽死させた。網膜を切開し、フラットマウントまたは切片用に処理した。GFP抗体染色は、トランスフェクトされた細胞を検出するためには不要であった。
図8Aは、マウス網膜上のGFP蛍光のフラットマウントを示す。
図8Bは、網膜の断面におけるGFP蛍光を示す。
図8Cは、網膜の断面におけるGFP蛍光およびグリア細胞染色を示す。
図8Dは、網膜下のエレクトロポレーション(上)および硝子体内注射(下)によるceDNAの送達後の、マウス網膜におけるGFP蛍光を示す。
【0182】
例6:in vivo研究:ラットにおける線条体内送達
ceDNA-GFP(非対称かつ分断された自己相補的配列を有するceDNA)を、市販のトランスフェクション試薬であるin vivoジェットPEIを用いて適切な濃度下で製剤化し(Polyplus Corp.)、ラットの線条体に頭蓋内注入した(
図9A)。ラットは、注射後3週および20週に屠殺し、処理の後、脳切片を、免疫組織化学(IHC)を用い、GFP、MHCII、およびIba1に対する抗体(Abs)を用いて検査した。類似のGFP発現が3週および20週に見られた。3週において、
図9B~
図9Cに示すように、脳切片にMHCIIまたはIba1抗原は検出されなかった。
【0183】
例7:ceDNAを生成するためのSf9感染
バクミドへの転位(transposition)
DH10Bacコンピテント細胞(Invitrogen)を氷上で解凍した。50μlの細胞を14mlチューブに分注し、50ngのプラスミドDNA(例えば、非対称かつ分断された自己相補的配列が隣接しておりかつタンパク質をコードする導入遺伝子を含むプラスミド)を添加し、静かに混合する。この例に記載されたプラスミドのDNA配列は、配列番号25で表される。非対称かつ分断された自己相補的配列が隣接しておりかつタンパク質をコードする導入遺伝子を含むプラスミドの領域のDNA配列は、配列番号26で表される。
【0184】
プラスミドDNAで分断された自己相補的配列の配列分析を、
図10A~10Bに示す。5’自己相補的配列(頭部(head portion)と呼ばれ、導入遺伝子のコード配列の上流にある)を
図10Aに示す。これは、プラスミド構築物のCMVプロモーターに相補的なプライマーを用いて、配列決定した。
図10Aは、5’自己相補的配列の領域におけるプラスミドの制限地図を示す。プラスミド配列結果の2回の実行は、野生型AAV2 ITR配列である参照配列と整列される。
3’自己相補的配列(尾部(tail portion)と呼ばれ、導入遺伝子のコード配列の下流にある)を、
図10Bに示す。これは、プラスミド構築物のSV40プロモーターに相補的なプライマーを用いて、配列決定した。
図10Bは、3’自己相補的配列の領域におけるプラスミドの制限地図を示す。プラスミド配列結果の2回の実行は、野生型AAV2 ITR配列である参照配列と整列される。結果は、自己相補的配列内の切断を示し、交差アーム構造の一方のアームに対応する。
【0185】
これらの結果は、プラスミドDNA構築物が、非対称かつ分断された自己相補的配列が隣接する導入遺伝子をコードすることを確認する。非対称性は、5’自己相補的配列が完全な交差アームをコードし;一方3’自己相補的配列が、切断された交差アームをコードするために生じる。
次いで、チューブを氷上で30分間インキュベートし、次いで42℃の水浴中で45秒間熱ショックを与えた。次いで、チューブを氷上で2分間冷却した。450μlのSOC培地をチューブに添加し、37℃インキュベーターで4時間振とうした。アリコートを1:10に希釈し、50μg/mlのカナマイシン、7μg/mlのゲンタマイシン、10μg/mlのテトラサイクリン、100μg/mlのBluo-galおよび40μg/mlのIPTGを含有する寒天プレート上にプレートした。プレートを37℃で48時間、または30℃で72時間、インキュベートした。単一の白色コロニーを採取し、新鮮なプレート上にストライクして、青色コロニーで汚染されていないことを確認し、次いで一晩インキュベートした。グリセロールストックが作成された。
【0186】
バクミドからDNAを調製
バクミドを、50μg/mlのカナマイシン、7μg/mlのゲンタマイシン、10μg/mlのテトラサイクリンを有する10mlのLB培地中でインキュベートし、37℃の振盪インキュベーターで一晩増殖させた。培養物を、8000rpmで10分間遠心沈降した。上清を除去し、ペレットをQiagen抽出キットからの1.5mlのP1緩衝液に再懸濁した。1.5mlの緩衝液2を添加し、チューブを4~6回、逆転させた。2.1mlの緩衝液P3を添加し、チューブを4~6回、逆転させた。沈殿物をQiagenシリンジフィルターに通し、8000rpmで10分間遠心分離した。清浄な溶解溶液を、5mlのイソプロパノールを含有するチューブに移し、よく混合し、4℃で30分間、最高速度で遠心分離した。上清を除去し、3mlの70%エタノールを加えて、ペレットを洗浄した。次いで、ペレットを8000rpmで10分間スピンした。次いでペレットを洗浄し、風乾した。次いで、DNAを200μlのTE緩衝液に再懸濁した。アリコートを取り出し、260nmでの光学密度(OD)を読み取って、DNA濃度を定量した。
【0187】
P1バキュロウイルス発現ベクター(BEV)の生成
全部で4×106個のSf9細胞を、T25 TCフラスコ中の5mlの培地に播種した。フラスコは、細胞付着中は水平面上に置いて、細胞が均一に分布するようにした。一般に細胞は、15分以内に付着する。1μgのバクミドDNAを75μlの水で希釈した。6μlのPromega Fugene HDを69μlの水で別のチューブ内で希釈した。希釈したFugene HDを、希釈したDNAと数回ピペッティングして混合した。15分後、DNA/脂質複合体をSf9細胞に添加した。P1バキュロウイルス発現ベクター(BEV)を、4日後に収穫した。簡潔に述べると、すべての培地を、5mlのピペットを用いてフラスコから取り出し、ポリスチレンチューブ15mlに移した。容器を1200gで10分間スピンして、捕捉されたすべての細胞または破片をペレット化した。BEVを新しい15mlチューブにデカントし、ウイルスを4℃で保存した。
【0188】
バキュロウイルス感染昆虫細胞の生成(Biics)
50mlのSf9細胞を2.5×106細胞/mlの濃度で、1mlのBEV(1:50)で感染させた。細胞を計数し、その直径を1日目にチェックし(例えば、細胞数が2×106/mlに達し、細胞の直径が約15~16μmであるかをチェックした)、および2日目にチェックした(例えば、細胞数が4~5×106細胞/mlの間に達し、直径が約18~19μmであるかをチェックした)。細胞を、300xgで5分間感染させたところで遠心沈降(spin down)させた。上清を除去し、ペレットを凍結培地に再懸濁して、最終濃度が20×107細胞/mlとなるようにした。細胞は、ラック内で貯蔵用にイソプロパノールを用いて、-80℃で凍結することができる。
【0189】
titerless感染バキュロウイルス株(TIPS)に対する感染力の試験効率
20mlの4つのフラスコを、2.5×106細胞/mlで調製した。細胞は、titerless感染バキュロウイルス株(TIPS)の4つの異なる希釈液で感染させた;例えば1/1,000、1/10,000、1/50,000、1/100,000。細胞を増殖させ、直径、生存率および細胞数を3日間評価した。TIPS株の効率を決定するために、3日後にどの希釈が次の基準に達したかをチェックした:生細胞4~5×105細胞/ml、生存率85~95%、直径18~20μm。
【0190】
ceDNAの生成:
2.5×106細胞/mlのSf9細胞を、Repタンパク質および目的の導入遺伝子(例えば、GFP)についてTIPSで同時感染させた。4~5日後、細胞の直径および生存率を観察した。ペレット中の細胞を、4150rpmで30分間の遠心での沈降により回収した。次いで、細胞を凍結させるか、または、ceDNAを例えばQiagen Midi Plus精製プロトコルにより抽出した。
【0191】
ceDNAの解析
ceDNAを、制限消化を伴う天然ゲル電気泳動および/または変性ゲル電気泳動によって分析した。例えば、ITR間のceDNA配列の約2/3の単一切断制限酵素を選択し、得られた制限消化産物をアガロースゲル上で泳動させた。
図10Cは、GFP導入遺伝子を含む約4.5kbのceDNA(ceDNA-GFP)が、天然(左)および変性(右)条件下で、シングルカッターであるXhoIでの消化後に、異なる配座異性体(例えば単量体、二量体、三量体など)に電気泳動的に分離されたことを示す。
【0192】
天然のゲル(
図10C、左)では、単量体は2つの生成物:2.1kbおよび0.4kbに分解された。二量体は、二量体サブユニットの配向(例えば、tail-to-tail、またはhead-to-head)に依存して、4.1kb/0.4kb生成物または4.1kb/0.8kb生成物に分解された。二量体のtail-to-tail組織化から生じる生成物は、下向きの矢印によって示された。0.4kbの末端断片は、ゲルの底部の不純物の蛍光によって隠されていた。上向きの矢印は、head-to-head二量体から生じる生成物を示す。太線は、切断されたITRの位置を示す。単量体において、欠失ITRはceDNA分子の右側にあり、tail-to-tail二量体では、切断されたITRは内部にあった(鏡面で)。head-to-headの立体配座では、切断されたITRは分子の末端となるであろう。
変性ゲル(
図10C、右)において、二量体ceDNA-GFPは、4.1kbおよび0.8kbにバンドを生じた(0.8kbの一本鎖DNAとしてゲル上を流れる変性0.4kb末端生成物に関連する)。上記のように、heat-to-headceDNA-GFP二量体について予測された生成物は、天然のゲルでは0.8kbおよび4.1kbであり、変性ゲルでは0.8kbおよび8.2kbであった。変性ゲルは8.2kbにバンドを示さず、したがってceDNA-GFP二量体の主形態が、tail-to-tailであることを示している。
【0193】
本発明のいくつかの態様を本明細書に記載し説明してきたが、当業者であれば、機能を実行し、および/または本明細書に記載された結果および/または1を超える利点を得るための、様々な他の手段および/または構造を、容易に想像するであろう;かかる変形および/または修正のそれぞれは、本発明の範囲内であるとみなされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載される全てのパラメータ、寸法、材料、および構成が例示的であることを意図し、実際のパラメータ、寸法、材料および/または構成は、本発明の教示が使用される特定の用途(単数または複数)に依存することを、容易に理解するであろう。当業者は、日常的な実験のみを用いて、本明細書に記載された本発明の特定の態様に対する多くの均等物を認識するか、または確認することができるであろう。したがって、前述の態様は単なる例として提示され、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内において、本発明は、具体的に記載および請求される以外の方法で実施され得ることが、理解されるべきである。本発明は、本明細書に記載される個々の特徴、システム、物品、材料、および/または方法を対象とする。さらに、かかる特徴、システム、物品、材料および/または方法の2つ以上の任意の組み合わせは、かかる特徴、システム、物品、材料および/または方法が相互に矛盾しない場合、本発明の範囲内に含まれる。
【0194】
本明細書および特許請求の範囲において使用する不定冠詞「a」および「an」は、明確に反対の指示がない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
本明細書および特許請求の範囲において使用する語句「および/または」は、そのように結合された要素、すなわち、いくつかの場合には結合的に存在し、他の場合では非結合的に存在する要素の、「どちらかまたは両方」を意味すると理解されるべきである。「および/または」句によって具体的に特定される要素以外の他の要素も、逆が明確に示されていない限り、具体的に特定された要素と関連するかどうかにかかわらず、任意に存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む」などの開放型言語と併せて使用される場合、一態様では、AであってBはなし(任意にB以外の要素を含む);別の態様では、BであってAはなし(任意にA以外の要素を含む);さらに別の態様では、AとBの両方(任意に他の要素を含む);などをいう。
【0195】
本明細書および特許請求の範囲で使用する場合、「または」は、上で定義した「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト中の項目を分離する場合、「または」または「および/または」は、包括的であると解釈されるべきであり、すなわち、多数の要素またはリストの要素の少なくとも1つを含むが、1つより多くの要素もまた含み、および任意に、リストにない追加の項目も含む。逆が明示された用語のみ、例えば、「1つのみ」または「正確に1つ」など、または、特許請求の範囲において使用される場合の「~からなる」という用語は、多数の要素またはリストの要素からの正確に1つの要素を含むことをいう。一般に、本明細書で使用する「または」という用語は、「どちらか」、「1つ」、「1つのみ」、または「正確に1つ」などの排他的な用語が先行する場合には、排他的代替(すなわち、どちらか1つだが、両方ではない)を指すものとして解釈されるべきである。特許請求の範囲で使用する場合、「本質的に~からなる」とは、特許法の分野で使用される通常の意味を有するものとする。
【0196】
本明細書および特許請求の範囲で使用する場合、1つ以上の要素のリストを参照した「少なくとも1つの」という語句は、要素のリストのいずれか1つ以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきであり、必ずしも要素のリスト内に具体的にリストされたそれぞれおよび全ての要素の少なくとも1つを含む必要はなく、要素リスト内の要素の任意の組み合わせを除外する必要もない。この定義はまた、「少なくとも1つの」という語句が指し示す要素のリスト内で具体的に特定される要素以外に、具体的に特定される要素に関連するか関連しないかに関わることなく、要素が任意に存在することを可能にする。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または同等に「AまたはBの少なくとも1つ」、または同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)とは、一態様では、少なくとも1つの、任意に1つより多くのAを含み、Bは存在しない(および任意に、B以外の要素を含む);別の態様では、少なくとも1つの、任意に1つより多くのBを含み、Aは存在しない(および任意に、A以外の要素を含む);さらに別の態様では、少なくとも1つの、任意に1つより多くのA、および少なくとも1つの、任意に1つより多くのBを含む(および任意に、他の要素を含む);などである。
【0197】
特許請求の範囲および上記明細書において、全ての移行句(transitional phrase)、例えば「含む(comprising)」、「含む(including)」、「運ぶ」、「有する」、「含有する」、「関与する」、「保持する」等は、開放されている(open-ended)、すなわち、含むが、限定はされないことを意味するものと理解されるべきである。「からなる」および「本質的にからなる」という移行句のみは、United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures, Section 2111.03に記載されているように、それぞれ閉鎖または半閉鎖移行句であるものとする。
特許請求の範囲における「第1」、「第2」、「第3」などの序数用語の、クレーム要素を修飾するための使用は、それ自体が、1つのクレーム要素の他に対するいかなる優先順位、優先権、もしくは順序、または、方法の行為が実施される時間的順序を意味せず、ある名称を有する1つのクレーム要素を、同じ名称を有する(ただし、序数用語の使用が異なる)別の要素から区別するための、ラベルとしてのみ使用される。
【配列表】