(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】操舵支援システム
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20221213BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20221213BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20221213BHJP
G05G 1/36 20080401ALI20221213BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
G05G1/30 E
G05G1/36
(21)【出願番号】P 2017109561
(22)【出願日】2017-06-01
【審査請求日】2020-05-21
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】507234427
【氏名又は名称】公立大学法人岩手県立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】村田 嘉利
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 明宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊之
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】藤井 昇
【審判官】出口 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-165543(JP,A)
【文献】米国特許第5598742(US,A)
【文献】特開平10-218000(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0279340(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00- 1/28
B62D 5/04
B62D 6/00
B62D101/00-137/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵装置の操作を支援する操舵支援システムであって、
被押圧部材に対する押圧力の値を検出する検出装置と、
前記検出装置が検出した前記押圧力の値に基づいて、押圧力に関する情報を取得する取得手段と、
取得した押圧力に関する情報に基づいて前記操舵装置の操舵態様を制御する制御手段と、
を備え、
前記取得手段は、前記被押圧部材が2つ設けられて
おり、2つの被押圧部材のうち第1被押圧部材に対する押圧力に関する情報と、前記2つの被押圧部材のうち第2被押圧部材に対する押圧力に関する情報と、を取得し、
前記制御手段は、前記第1被押圧部材に対する押圧力に関する情報を取得した場合に、一方の操舵方向における前記操舵装置の操舵態様を制御し、前記第2被押圧部材に対する押圧力に関する情報を取得した場合に、他方の操舵方向における前記操舵装置の操舵態様を制御
し、
前記取得手段は、前記被押圧部材に対する操作者の下肢の押圧力に関する情報を取得する操舵支援システム。
【請求項2】
前記取得手段は、前記被押圧部材に対する一方向の押圧力に関する情報を取得する、請求項
1に記載の操舵支援システム。
【請求項3】
操舵装置の操作を支援する操舵支援システムであって、
被押圧部材に対する押圧力の値を検出する検出装置と、
前記検出装置が検出した前記押圧力の値に基づいて、押圧力に関する情報を取得する取得手段と、
取得した押圧力に関する情報に基づいて前記操舵装置の操舵態様を制御する制御手段と、
を備え、
前記取得手段は、前記操舵装置の操舵方向を指示するための指示装置を用いて指示された操舵方向に関する情報を取得し、
前記制御手段は、取得した押圧力に関する情報に基づいて、指示された操舵方向における前記操舵装置の操舵態様を制御する操舵支援システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記押圧力の大きさに応じて前記操舵装置の操舵角が変化するように前記操舵装置の操舵態様を制御する、請求項1~
3の何れかに記載の操舵支援システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記押圧力の大きさに応じて前記操舵装置の操舵速度が変化するように前記操舵装置の操舵態様を制御する、請求項1~
3の何れかに記載の操舵システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記押圧力の変化速度に応じて前記操舵装置の操舵速度が変化するように前記操舵装置の操舵態様を制御する、請求項1~
4の何れかに記載の操舵支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵装置の操作を支援する操舵支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、障害者の自立した日常生活及び社会生活を支援するための様々な取り組みが実施されている。例えば、移動体(例えば車両、船舶、航空機等)に設けられた操舵装置を上肢障害者が自ら操作することによって当該移動体を運転することができるように、当該操舵装置の操舵を支援する操舵支援システムが提案されている。かかる操舵支援システムの一例としては、非特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
非特許文献1に記載された技術では、左足の前後回転運動によって操舵装置の操舵方向を制御することによって、上肢障害者が車両を操舵することができるようになっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】本田技研工業株式会社、“運転補助装置(手の不自由な方へ)”、[online]、[平成29年2月15日検索]、インターネット<URL:http://www.honda.co.jp/welfare/purpose/for-drive-arms/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1に記載の技術では、ペダルを前後方向に漕ぐように左足を運動させることによって操舵装置の操舵方向を制御するように構成されているので、操舵装置を自在に操作するためには、ペダルを漕ぐのに充分な体力が必要であった。また、非特許文献1に記載の技術では、例えば、操舵装置の操舵方向を急に変更する必要がある場合に、前後何れの方向にペダルを漕ぐべきかを操作者が即時且つ適切に判断することができず、操舵装置を自在に操作するのが困難になる虞があった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、例えば操舵装置の上肢操作が困難な場合であっても、当該操舵装置を容易に操作することの可能な操舵支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、操舵装置の操作を支援する操舵支援システムであって、被押圧部材に対する押圧力に関する情報を取得する取得手段と、取得した押圧力に関する情報に基づいて前記操舵装置の操舵態様を制御する制御手段と、を備える操舵支援システムを提供する(発明1)。
【0008】
かかる発明(発明1)によれば、被押圧部材が押圧されると、被押圧部材に対する押圧力に基づいて操舵装置の操舵態様(例えば、操舵角や操舵速度等)が制御されるので、操作者は、被押圧部材を押圧するという簡単な行為によって操舵装置の操作を行うことができる。これにより、例えば操舵装置の上肢操作が困難な場合であっても、操舵方向に応じてペダルの回転方向を変化させることによって操舵装置の操作を行う場合と比較して、操舵装置を容易に操作することができる。
【0009】
上記発明(発明1)においては、前記取得手段は、前記被押圧部材に対する操作者の下肢の押圧力に関する情報を取得するのが好ましい(発明2)。
【0010】
かかる発明(発明2)によれば、操作者は、自身の下肢を用いて操舵装置の操作を行うことができる。これにより、例えば操作者の上肢全体が不自由な場合であっても、操舵装置を容易に操作することができる。
【0011】
上記発明(発明1~2)においては、前記取得手段は、前記被押圧部材に対する一方向の押圧力に関する情報を取得するのが好ましい(発明3)。
【0012】
かかる発明(発明3)によれば、操作者は、被押圧部材を一方向に押圧するという、より簡単な行為によって操舵装置の操作を行うことができる。したがって、操舵装置をより容易に操作することができる。
【0013】
上記発明(発明1~3)においては、前記取得手段は、前記被押圧部材が2つ設けられている場合に、2つの被押圧部材のうち第1被押圧部材に対する押圧力に関する情報と、前記2つの被押圧部材のうち第2被押圧部材に対する押圧力に関する情報と、を取得し、前記制御手段は、前記第1被押圧部材に対する押圧力に関する情報を取得した場合に、一方の操舵方向における前記操舵装置の操舵態様を制御し、前記第2被押圧部材に対する押圧力に関する情報を取得した場合に、他方の操舵方向における前記操舵装置の操舵態様を制御してもよい(発明4)。
【0014】
かかる発明(発明4)によれば、操作者は、操舵装置の操舵方向を、2つの被押圧部材のうち所望の操舵方向に対応する被押圧部材を押圧することによって適切に決定することができるので、操舵装置の操作の確実性を向上させることができる。
【0015】
上記発明(発明1~3)においては、前記取得手段は、前記操舵装置の操舵方向を指示するための指示装置を用いて指示された操舵方向に関する情報を取得し、前記制御手段は、取得した押圧力に関する情報に基づいて、指示された操舵方向における前記操舵装置の操舵態様を制御してもよい(発明5)。
【0016】
かかる発明(発明5)によれば、操作者は、操舵装置の操舵方向を、指示装置を用いて適切に指示することができるので、操舵装置の操作の確実性を向上させることができる。
【0017】
上記発明(発明1~5)においては、前記制御手段は、前記押圧力の大きさに応じて前記操舵装置の操舵角が変化するように前記操舵装置の操舵態様を制御してもよい(発明6)。
【0018】
かかる発明(発明6)によれば、被押圧部材に対する押圧力の大きさに応じて操舵装置の操舵角が変化するので、操作者は、被押圧部材に対する押圧力の大きさを変えることによって操舵装置を自在に操作することができる。
【0019】
上記発明(発明1~5)においては、前記制御手段は、前記押圧力の大きさに応じて前記操舵装置の操舵速度が変化するように前記操舵装置の操舵態様を制御してもよい(発明7)。
【0020】
かかる発明(発明7)によれば、被押圧部材に対する押圧力の大きさに応じて操舵装置の操舵速度が変化するので、操作者は、被押圧部材に対する押圧力の大きさを変えることによって操舵装置を自在に操作することができる。
【0021】
上記発明(発明1~6)においては、前記制御手段は、前記押圧力の変化速度に応じて前記操舵装置の操舵速度が変化するように前記操舵装置の操舵態様を制御するのが好ましい(発明8)。
【0022】
かかる発明(発明8)によれば、被押圧部材に対する押圧力の変化速度に応じて操舵装置の操舵速度が変化するので、操作者は、被押圧部材に対する押圧力の変化速度を変えることによって操舵装置を自在に操作することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の操舵支援システムによれば、例えば操舵装置の上肢操作が困難な場合であっても、当該操舵装置を容易に操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る操舵支援システムの基本構成を概略的に示す図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る操舵支援システムで主要な役割を果たす機能を説明するための機能ブロック図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る操舵支援システムの主要な処理の一例を示すフロー図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る操舵支援システムの基本構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。ここで、本実施形態に係る操舵支援システムは、自動車に設けられたハンドル(操舵装置)の操作を支援するものである。ただし、この実施形態は例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
(1)操舵支援システムの基本構成
図1は、本発明の第1実施形態に係る操舵支援システムの基本構成を概略的に示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る操舵支援システムは、自動車に設けられたハンドル(操舵装置)Hの操作を支援するシステムであって、操作者がペダルPを踏み込んだ際の当該ペダルPに対する押圧力を検出する検出装置10と、ハンドルHの操舵方向を指示するための指示装置20と、検出装置10によって検出された押圧力に関する情報と、指示装置20を用いて指示された操舵方向と、に基づいてハンドルHの操舵態様を制御する制御装置30と、制御装置30の制御に基づいてハンドルHの操作を行うパワーステアリング機構40と、から構成されている。本実施形態では、制御装置30と、検出装置10、指示装置20及びパワーステアリング機構40の各々とは、有線又は無線で通信可能に接続されている。
【0027】
本実施形態では、ペダルPは、自動車に設けられたアクセルペダルやブレーキペダルとは別に設けられており、アクセルペダルやブレーキペダルと同様に、操作者の下肢(ここでは、足の裏)で押圧可能な位置に配置されている。なお、本実施形態において、ペダルPは、本発明の「被押圧部材」の一例である。
【0028】
検出装置10は、例えばロードセルや圧力センサ等であって、ペダルPに対する押圧力を連続的又は断続的(例えば、1ms毎)に検出し、検出した押圧力に関する情報を制御装置30に送信するように構成されている。
【0029】
指示装置20は、例えば、レバーを用いてハンドルHの操舵方向(例えば、左右方向)を指示することの可能な入力機器であってよく、レバーの傾きの有無を検出すると、検出した内容(例えば、レバーが右方向若しくは左方向に傾いた、又は、レバーが傾いていない等)に応じた信号を制御装置30に送信するように構成されている。なお、指示装置20は、例えば、ハンドルHの操舵方向(例えば、左右方向)を指示するための1つ以上のスイッチ(例えば、ボタンスイッチ等)で構成されてもよい。
【0030】
制御装置30は、例えば、ハンドルHの操舵態様を制御するための専用のコンピュータであってもよいし、パーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータであってもよい。また、制御装置30は、例えば、携帯端末、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、双方向の通信機能を備えたテレビジョン受像機(いわゆる多機能型のスマートテレビも含む。)等のように、個々のユーザによって操作される端末装置であってもよい。
【0031】
パワーステアリング機構40は、例えば、周知の電動パワーステアリング機構であってよく、例えばユニバーサルジョイント、ピニオンラック、タイロッド、ハブユニット等を介して車輪(何れも図示省略)に連結されたステアリングシャフト41と、ハンドルHの操舵角度を検出する舵角センサ42と、ハンドルHの操舵を補助するステアリングモータ43と、ステアリングモータ43の出力をステアリングシャフト41に伝達するための減速ギア44と、パワーステアリング機構40を制御するためのコントロールユニット(ECU)45と、を備えている。ステアリングシャフト41には、舵角センサ42と、ステアリングモータ43と、が設けられている。ステアリングモータ43は、減速ギア44を介してステアリングシャフト41に連結されている。ECU45にはバッテリ(図示省略)から電力が供給され、ECU45は、例えば、舵角センサ42で検出された操舵角度と、車速センサ(図示省略)で検出された車速等とに基づいて、ステアリングモータ43に供給する電圧を制御する。本実施形態では、ECU45は、ステアリングモータ43に供給される電圧の大きさに応じてハンドルHの操舵速度を変化させることによって、ハンドルHを操作する。また、本実施形態では、ECU45は、ハンドルHの操舵態様を制御するための信号を制御装置30から受信すると、受信した信号に基づいてハンドルHを操作するようになっている。さらに、ECU45は、舵角センサ42で検出された操舵角度や、車速センサで検出された車速等を制御装置30に送信してもよい。
【0032】
(2)制御装置の構成
図2を参照して制御装置30について説明する。
図2は、制御装置30の内部構成を示すブロック図である。
図2に示すように、制御装置30は、CPU(Central Processing Unit)31と、ROM(Read Only Memory)32と、RAM(Random Access Memory)33と、不揮発性メモリ34と、通信インタフェース部35と、を備えており、各部間の制御信号又はデータ信号を伝送するためのバス36が設けられている。
【0033】
CPU31は、電源が制御装置30に投入されると、ROM32又は不揮発性メモリ34に記憶された各種のプログラムをRAM33にロードして実行する。CPU31は、検出装置10、指示装置20及びパワーステアリング機構40の各々から送信された信号を通信インタフェース部35を介して受信し、その信号を解釈する。また、CPU31は、ハンドルHの操舵態様を制御するための信号を、通信インタフェース部35を介してパワーステアリング機構40に送信する。本実施形態では、CPU31は、ROM32又は不揮発性メモリ34に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、後述する取得手段51及び制御手段52(
図3に示す)の機能を実現する。
【0034】
不揮発性メモリ34は、例えばフラッシュメモリ等であって、CPU31が実行するプログラムやCPU31が参照するデータを格納する。また、不揮発性メモリ34には、後述する制御データ(
図4に示す)が記憶されている。
【0035】
通信インタフェース部35は、検出装置10、指示装置20及びパワーステアリング機構40の各々と有線又は無線で通信を行うためのインタフェース回路を含む。
【0036】
なお、制御装置30には、例えばLCD(Liquid Crystal Display)モニタ等の表示部が設けられていてもよい。表示部が設けられている場合には、CPU31は、例えば、検出装置10によって検出された押圧力に関する情報や、指示装置20を用いて指示された操舵方向に関する情報や、ハンドルHの操舵態様に関する情報等を表示部に表示させてもよい。
【0037】
(3)操舵支援システムにおける各機能の概要
本実施形態に係る操舵支援システムで実現される機能について、
図3を参照して説明する。
図3は、本実施形態に係る操舵支援システムで主要な役割を果たす機能を説明するための機能ブロック図である。
図3の機能ブロック図では、取得手段51及び制御手段52が本発明の主要な構成に対応している。
【0038】
取得手段51は、ペダルP(被押圧部材)に対する押圧力に関する情報を取得する機能を備える。ここで、押圧力に関する情報とは、例えば、押圧力の値であってもよいし、押圧力の値を所定の計算式に代入することによって得られた値であってもよいし、押圧力の度合いを表す情報であってもよい。
【0039】
また、取得手段51は、ペダルPに対する操作者の下肢の押圧力に関する情報を取得してもよい。この場合、操作者は、自身の下肢を用いてハンドルHの操作を行うことができるので、例えば操作者の上肢全体が不自由な場合であっても、ハンドルHを容易に操作することができる。
【0040】
さらに、取得手段51は、ペダルPに対する一方向の押圧力に関する情報を取得してもよい。この場合、操作者は、ペダルPを一方向に押圧するという、より簡単な行為によってハンドルHの操作を行うことができるので、ハンドルHをより容易に操作することができる。
【0041】
さらにまた、取得手段51は、ハンドルHの操舵方向を指示するための指示装置20を用いて指示された操舵方向に関する情報を取得してもよい。この場合、操作者は、ハンドルHの操舵方向を、指示装置20を用いて適切に指示することができるので、ハンドルHの操作の確実性を向上させることができる。
【0042】
取得手段51の機能は、例えば以下のように実現される。制御装置30のCPU31は、検出装置10から送信された情報を通信インタフェース部35を介して受信(取得)するごとに、受信した情報を例えば
図4に示す制御データに記憶する。制御データは、検出装置10が検出した押圧力の大きさ(値)と、当該押圧力の1つ前に検出された押圧力の大きさからの押圧力の変化速度と、検出装置10から情報を受信したときに指示装置20によって指示されている操舵方向(例えば、右方向、左方向又は指示無し等)と、ハンドルHの操舵角と、ハンドルHの操舵速度と、が受信順に記述されているデータである。CPU31は、押圧力に関する情報を検出装置10から受信すると、当該情報に基づく押圧力の大きさを制御データに記憶するとともに押圧力の変化速度を算出し、算出した変化速度を当該押圧力の大きさに対応付けた状態で記憶する。このとき、CPU31は、指示装置20によって指示されている操舵方向を、押圧力の大きさに対応付けた状態で記憶する。
【0043】
制御手段52は、取得した押圧力に関する情報に基づいてハンドルH(操舵装置)の操舵態様を制御する機能を備える。
【0044】
ここで、取得手段51が、指示装置20を用いて指示された操舵方向に関する情報を取得した場合には、制御手段52は、取得した押圧力に関する情報に基づいて、指示された操舵方向におけるハンドルHの操舵態様を制御してもよい。
【0045】
また、制御手段52は、押圧力の大きさに応じてハンドルHの操舵角が変化するようにハンドルHの操舵態様を制御してもよい。この場合、ペダルPに対する押圧力の大きさに応じてハンドルHの操舵角が変化するので、操作者は、ペダルPに対する押圧力の大きさを変えることによってハンドルHを自在に操作することができる。
【0046】
さらに、制御手段52は、押圧力の大きさに応じてハンドルHの操舵速度が変化するようにハンドルHの操舵態様を制御してもよい。この場合、ペダルPに対する押圧力の大きさに応じてハンドルHの操舵速度が変化するので、操作者は、ペダルPに対する押圧力の大きさを変えることによってハンドルHを自在に操作することができる。
【0047】
さらにまた、制御手段52は、押圧力の変化速度に応じてハンドルHの操舵速度が変化するようにハンドルHの操舵態様を制御してもよい。この場合、ペダルPに対する押圧力の変化速度に応じてハンドルHの操舵速度が変化するので、操作者は、ペダルPに対する押圧力の変化速度を変えることによってハンドルHを自在に操作することができる。
【0048】
制御手段52の機能は、例えば以下のように実現される。制御装置30のCPU31は、押圧力に関する情報を取得手段51の機能に基づいて取得すると、制御データにアクセスして、新たに記憶された押圧力の大きさ及び変化速度に基づいてハンドルHの操舵態様(ここでは、操舵角及び操舵速度)をもとめる。ここで、CPU31は、例えば、押圧力の大きさが大きくなるほど、ハンドルHの操舵角が大きくなるように操舵態様をもとめてもよい。また、CPU31は、例えば、押圧力の大きさが大きくなるほど、ハンドルHの操舵速度が大きくなるように操舵態様をもとめてもよい。さらに、CPU31は、例えば、押圧力の変化速度が高くなるほど、ハンドルHの操舵速度が高くなるように操舵態様をもとめてもよい。なお、ハンドルHの操舵角及び操舵速度の各々は、押圧力の大きさ又は変化速度を所定の計算式に代入することによってもとめられてもよいし、押圧力の大きさと操舵角とが予め対応付けられたテーブル情報、及び、押圧力の変化速度と操舵速度とが予め対応付けられたテーブル情報の各々から操舵角及び操舵速度を抽出することによってもとめられてもよい。
【0049】
CPU31は、もとめた操舵角及び操舵速度の各々を、新たに記憶された押圧力の大きさ及び変化速度に対応付けた状態で制御データに記憶する。そして、CPU31は、ハンドルHの操舵速度及び操舵方向を、通信インタフェース部35を介してパワーステアリング機構40に送信する。
【0050】
なお、押圧力の大きさに応じてハンドルHの操舵角を制御する場合には、CPU31は、例えば、ハンドルHの操舵速度及び操舵方向をパワーステアリング機構40に送信した後に、舵角センサ42によって検出されたハンドルHの操舵角を当該操舵角が検出される毎に取得してもよい。そして、CPU31は、ハンドルHの操舵角が、押圧力の大きさに応じてもとめられた操舵角に達した場合に、例えば、ハンドルHの操舵角を維持するための制御信号を、通信インタフェース部35を介してパワーステアリング機構40に送信してもよい。
【0051】
また、CPU31は、例えば、ハンドルHの操舵角を維持するために操作者が所定の動作を行ったことを検知した場合に、ハンドルHの操舵角を維持するための制御信号を、通信インタフェース部35を介してパワーステアリング機構40に送信してもよい。ここで、所定の動作とは、例えば、ペダルP又は指示装置20が所定時間内(例えば1秒間等)に所定回数(例えば2回等)以上押圧されたことであってもよい。
【0052】
一方、パワーステアリング機構40のECU45は、ハンドルHの操舵速度及び操舵方向を制御装置30から受信すると、例えば、受信した操舵速度及び操舵方向に応じた電圧をステアリングモータ43に供給することによって、ハンドルHの操作態様を制御してもよい。ここで、パワーステアリング機構40のECU45は、ペダルPの押圧力の大きさに応じてもとめられた操舵角に基づいてハンドルHの操作態様を制御する場合には、例えば、ハンドルHの操舵角を維持するための制御信号を制御装置30から受信するまでの間、受信した操舵速度でハンドルHを操作するようにステアリングモータ43の電圧を設定してもよい。そして、ECU45は、ハンドルHの操舵角を維持するための制御信号を制御装置30から受信した場合に、例えば、ハンドルHの操舵角が変化しないようにステアリングモータ43の電圧を調整することによってハンドルHの操舵角を維持してもよいし、ステアリングシャフト41を固定することによってハンドルHの操舵角を維持してもよい。
【0053】
なお、制御装置30のCPU31は、ペダルPの押圧力の大きさに応じてハンドルHの操舵角を制御する場合に、押圧力の大きさに応じてもとめられたハンドルHの操舵角をパワーステアリング機構40に送信してもよい。一方、パワーステアリング機構40のECU45は、ハンドルHの操舵角を制御装置30から受信すると、舵角センサ42によって検出されたハンドルHの操舵角を当該操舵角が検出される毎に取得し、ハンドルHの操舵角が受信した操舵角に達した場合に、ハンドルHの操舵角を維持するための制御を行ってもよい。
【0054】
また、パワーステアリング機構40のECU45は、指示装置20を用いてハンドルHの操舵方向(例えば、左右の何れか)が指示されていない場合(つまり、指示無しの場合)や、ペダルPが押圧されていない場合には、例えば、ステアリングシャフト41の制御を開放することによって、タイヤにかかる力を利用してハンドルHをニュートラルの位置に戻してもよいし、ハンドルHのニュートラルの位置に対応する電圧をステアリングモータ43に供給することによって、ハンドルHをニュートラルの位置に戻してもよい。
【0055】
なお、制御装置30に表示部が設けられている場合には、CPU31は、操舵角及び操舵速度をもとめるごとに、押圧力の大きさ及び変化速度と、ハンドルHの操舵角、操舵速度及び操舵方向とを表示部に表示させてもよい。
【0056】
(4)本実施形態の操舵支援システムの主要な処理のフロー
次に、本実施形態の操舵支援システムにより行われる主要な処理のフローの一例について、
図5のフロー図を参照して説明する。
【0057】
先ず、制御装置30のCPU31は、ペダルPに対する押圧力に関する情報を取得する(ステップS100)。具体的には、CPU31は、検出装置10から送信された情報(ここでは、押圧力の大きさ)を通信インタフェース部35を介して受信(取得)すると、受信した情報を制御データに記憶する。また、CPU31は、押圧力の変化速度を算出し、算出した変化速度を、受信した押圧力の大きさに対応付けた状態で記憶する。さらに、CPU31は、指示装置20によって指示されている操舵方向(例えば、右方向、左方向又は指示無し等)を、押圧力の大きさに対応付けた状態で記憶する。
【0058】
次に、制御装置30のCPU31は、取得した押圧力に関する情報に基づいてハンドルHの操舵態様を制御する(ステップS102)。具体的には、CPU31は、制御データにアクセスして、新たに記憶された押圧力の大きさ及び変化速度に基づいてハンドルHの操舵態様(ここでは、操舵角及び操舵速度)をもとめる。次いで、CPU31は、もとめた操舵角及び操舵速度の各々を、新たに記憶された押圧力の大きさ及び変化速度に対応付けた状態で制御データに記憶する。そして、CPU31は、ハンドルHの操舵速度及び操舵方向を、通信インタフェース部35を介してパワーステアリング機構40に送信する。
【0059】
なお、押圧力の大きさに応じてハンドルHの操舵角を制御する場合には、CPU31は、例えば、ハンドルHの操舵速度及び操舵方向をパワーステアリング機構40に送信した後に、舵角センサ42によって検出されたハンドルHの操舵角を当該操舵角が検出される毎にパワーステアリング機構40から取得してもよい。そして、CPU31は、ハンドルHの操舵角が押圧力の大きさに応じてもとめられた操舵角に達した場合に、例えば、ハンドルHの操舵角を維持するための制御信号を、通信インタフェース部35を介してパワーステアリング機構40に送信してもよい。
【0060】
一方、パワーステアリング機構40のECU45は、ハンドルHの操舵速度及び操舵方向を制御装置30から受信すると、受信した操舵速度及び操舵方向に応じてハンドルHを操作するようにステアリングモータの回転態様を制御する。また、ECU45は、舵角センサ42によって検出されたハンドルHの操舵角を当該操舵角が検出される毎に制御装置30に送信してもよく、例えば、ハンドルHの操舵角を維持するための制御信号を制御装置30から受信した場合に、例えば、ハンドルHの操舵角が変化しないようにステアリングモータ43の電圧を調整することによってハンドルHの操舵角を維持してもよいし、ステアリングシャフト41を固定することによってハンドルHの操舵角を維持してもよい。
【0061】
このように、ペダルPが押圧されると、ペダルPに対する押圧力に基づいてハンドルHの操舵態様(ここでは、操舵角及び操舵速度)が制御されるので、操作者は、ペダルPを押圧するという簡単な行為によってハンドルHの操作を行うことができる。
【0062】
上述したように、本実施形態の操舵支援システムによれば、ペダルPが押圧されると、ペダルPに対する押圧力に基づいてハンドルHの操舵態様(例えば、操舵角や操舵速度等)が制御されるので、操作者は、ペダルPを押圧するという簡単な行為によってハンドルHの操作を行うことができる。これにより、例えばハンドルHの上肢操作が困難な場合であっても、操舵方向に応じてペダルの回転方向を変化させることによって操舵装置の操作を行う場合と比較して、ハンドルHを容易に操作することができる。
【0063】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る操舵支援システムは、
図6に示すように、2つのペダルP1,P2を備える一方で、指示装置20が省略されている点において、第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0064】
本実施形態に係る操舵支援システムの2つのペダルP1,P2の各々は、ハンドルHの操舵方向に対応付けられた状態で設けられている。例えば、第1ペダルP1は、ハンドルHを右方向に操舵するためのものであり、第2ペダルP2は、ハンドルHを左方向に操舵するためのものである。検出装置10は、第1ペダルP1及び第2ペダルP2の各々に対する押圧力を連続的又は断続的(例えば、1ms毎)に検出し、検出した押圧力に関する情報を制御装置30に送信するように構成されている。
【0065】
本実施形態において、取得手段51は、ペダル(被押圧部材)が2つ設けられている場合に、2つのペダルP1,P2のうち第1ペダル(第1被押圧部材)に対する押圧力に関する情報と、2つのペダルP1,P2のうち第2ペダル(第2被押圧部材)に対する押圧力に関する情報と、を取得する機能を備える。取得手段51の機能は、例えば以下のように実現される。
【0066】
制御装置30のCPU31は、検出装置10から送信された情報(2つのペダルP1,P2の各々に対する押圧力に関する情報)を通信インタフェース部35を介して受信(取得)するごとに、受信した情報を制御データに記憶する。ここで、CPU31は、例えば第1ペダルP1が押圧された場合に、第1ペダルP1に対応する押圧力の大きさと、当該押圧力に基づいて算出した押圧力の変化と、第1ペダルP1に対応する操舵方向(ここでは、右方向)と、を制御データに記憶する。また、CPU31は、例えば第2ペダルP2が押圧された場合に、第2ペダルP2に対応する押圧力の大きさと、当該押圧力に基づいて算出した押圧力の変化と、第2ペダルP2に対応する操舵方向(ここでは、左方向)と、を制御データに記憶する。なお、CPU31は、何れのペダルP1,P2も押圧されていない場合に、押圧力の大きさをゼロとし、操舵方向を例えば指示無しとして制御データに記憶してもよい。
【0067】
本実施形態において、制御手段52は、第1ペダルP1(第1被押圧部材)に対する押圧力に関する情報を取得した場合に、右方向(一方の操舵方向)におけるハンドルH(操舵装置)の操舵態様を制御し、第2ペダルP2(第2被押圧部材)に対する押圧力に関する情報を取得した場合に、左方向(他方の操舵方向)におけるハンドル(操舵装置)の操舵態様を制御する機能を備える。制御手段52の機能は、例えば以下のように実現される。
【0068】
制御装置30のCPU31は、押圧力に関する情報を取得手段51の機能に基づいて取得すると、制御データにアクセスして、新たに記憶された押圧力の大きさ及び変化速度に基づいてハンドルHの操舵態様(ここでは、操舵角及び操舵速度)をもとめる。ここで、ハンドルHの操舵態様は、第1実施形態と同様にもとめられてもよい。そして、CPU31は、もとめた操舵角及び操舵速度の各々を、新たに記憶された押圧力の大きさ及び変化速度に対応付けた状態で制御データに記憶し、ハンドルHの操舵速度及び操舵方向を、通信インタフェース部35を介してパワーステアリング機構40に送信する。なお、CPU31は、例えば、第1ペダルP1及び第2ペダルP2のうち一方が押圧されている状態で第1ペダルP1及び第2ペダルP2の他方が押圧された場合、又は、第1ペダルP1及び第2ペダルP2のうち一方が押圧されてから所定時間(例えば、500ms)内に第1ペダルP1及び第2ペダルP2のうち他方が押圧された場合には、ハンドルHをニュートラルの位置に戻すようにハンドルHの操舵態様を制御するための信号を、通信インタフェース部35を介してパワーステアリング機構40に送信してもよい。また、CPU31は、第1ペダルP1及び第2ペダルP2の押圧力の大きさに応じてハンドルHの操舵角を制御する場合に、第1実施形態と同様の処理を行ってもよい。
【0069】
一方、パワーステアリング機構40のECU45は、ハンドルHの操舵速度及び操舵方向を制御装置30から受信すると、受信した操舵速度及び操舵方向に応じてハンドルHを操作するようにステアリングモータの回転態様を制御する。また、ECU45は、第1ペダルP1及び第2ペダルP2の押圧力の大きさに応じてハンドルHの操舵角を制御する場合に、第1実施形態と同様の処理を行ってもよい。
【0070】
このようにして、第1ペダルP1及び第2ペダルP2の何れかが押圧された場合に、押圧されたペダルに対応する押圧力の大きさ、変化速度及び操舵方向に基づいてハンドルHの操舵角、操舵速度及び操舵方向を制御することが可能になる。
【0071】
本実施形態の操舵支援システムによれば、操作者は、ハンドルHの操舵方向を、2つのペダルP1,P2のうち所望の操舵方向に対応するペダルを押圧することによって適切に決定することができるので、ハンドルHの操作の確実性を向上させることができる。
【0072】
なお、上記各実施形態の取得手段51及び制御手段52の各機能を実現するプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されていてもよい。このプログラムを記録した記憶媒体は、
図2に示された制御装置30のROM32又は不揮発性メモリ34であってもよい。また、この記憶媒体は、例えばCD-ROMドライブ等のプログラム読取装置に挿入されることで読み取り可能なCD-ROM等であってもよい。さらに、この記憶媒体は、磁気テープ、カセットテープ、フレキシブルディスク、MO/MD/DVD等であってもよいし、半導体メモリであってもよい。
【0073】
以上説明した各実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記各実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0074】
上記各実施形態では、操作者の足の裏によって押圧されるペダルP,P1,P2を被押圧部材の一例として説明したが、被押圧部材は、例えば、操作者の下肢の他の部分(例えば、膝、腿、脛、甲等)によって押圧されるものであってもよいし、操作者の上肢の一部(例えば、指、掌、肘等)によって押圧されるものであってもよい。
【0075】
さらに、上述した各実施形態では、取得手段51及び制御手段52の各機能を制御装置30によって実現する構成としたが、この構成に限られない。これらの全ての手段を検出装置10、指示装置20又はパワーステアリング機構40によって実現する構成としてもよいし、少なくとも一部の手段を検出装置10、指示装置20又はパワーステアリング機構40によって実現する構成としてもよい。
【0076】
さらにまた、上述した各実施形態では、自動車に設けられたハンドルHの操舵態様を制御する場合を一例として説明したが、この場合に限られない。例えば、操舵支援システムは、他の移動体(例えば、船舶や航空機等)の操舵を制御するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
上述したような本発明の操舵支援システムは、操舵装置の上肢操作が困難な場合であっても当該操舵装置を容易に操作することができ、例えば、かかる操舵装置が設けられた移動体(例えば車両)等を自在に操舵することができるので、その産業上の利用可能性は極めて大きい。
【符号の説明】
【0078】
10…検出装置
20…指示装置
30…制御装置
40…パワーステアリング機構
51…取得手段
52…制御手段
H…ハンドル
P…ペダル
P1…第1ペダル
P2…第2ペダル