(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】電極及び電極製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/90 20060101AFI20221213BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20221213BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20221213BHJP
B01J 23/755 20060101ALI20221213BHJP
B01J 23/80 20060101ALI20221213BHJP
B01J 23/889 20060101ALI20221213BHJP
B01J 23/89 20060101ALI20221213BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20221213BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20221213BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20221213BHJP
【FI】
H01M4/90 M
H01M4/86 M
H01M4/88 K
B01J23/755 M
B01J23/80 M
B01J23/889 M
B01J23/89 M
B01J37/04 101
B01J37/08
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2018135920
(22)【出願日】2018-07-19
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】511142604
【氏名又は名称】グローバル・リンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108442
【氏名又は名称】小林 義孝
(72)【発明者】
【氏名】奥山 正己
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健治
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-098004(JP,A)
【文献】特開2017-095746(JP,A)
【文献】特開2008-016338(JP,A)
【文献】特開2004-207088(JP,A)
【文献】特開平11-185771(JP,A)
【文献】特開昭59-073848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/90
H01M 4/86
H01M 4/88
H01M 4/00
H01M 8/10
H01M 12/00
H01G 11/22
C25B 11/00
C22C 1/00
B01J 23/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極又は陰極として使用する電極において、
前記電極が、各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を圧縮した後に焼成したアロイ成形物を微粉砕したアロイ粉体と、前記アロイ粉体を両面に担持させた所定面積のカーボン電極板とから形成され、前記金属粉体混合物では、前記選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、前記各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されている電極
であって、前記3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が、48Ni-42Cu-10Zn、48Ni-45Mo-7Mn、48Fe-48Ni-4Cu、48Fe-46Ti-6Ag、48Cu-48Fe-4Zn、又は、48Cu-46Fe-6Agの組成(重量比)を有する前記アロイ粉体の仕事関数以上であることを特徴とする電極。
【請求項2】
前記カーボン電極板の両面には、該カーボン電極板の厚み方向へ重なる前記アロイ粉体によってアロイ粉体積層ポーラス構造物が形成されている請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記遷移金属の粉体の粒径が、10μm~200μmの範囲にあり、前記アロイ粉体の粒径が、10μm~200μmの範囲にあり、前記カーボン電極板の厚み寸法が、0.03mm~0.3mmの範囲にある請求項1又は請求項2に記載の電極。
【請求項4】
前記金属粉体混合物が、Ni(ニッケル)の粉体を主成分とし、前記金属粉体混合物では、前記Niの仕事関数と該Niを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が前記白金族元素の仕事関数に近似するように、前記各種の遷移金属の中から前記Niの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている請求項1ないし請求項3いずれかに記載の電極。
【請求項5】
前記金属粉体混合物の全重量に対する前記Ni(ニッケル)の粉体の重量比が、30%~50%の範囲にあり、前記Niの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、20%~50%の範囲にあり、前記Niの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%~20%の範囲にある請求項4に記載の電極。
【請求項6】
前記金属粉体混合物が、Fe(鉄)の粉体を主成分とし、前記金属粉体混合物では、前記Feの仕事関数と該Feを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が前記白金族元素の仕事関数に近似するように、前記各種の遷移金属の中から前記Feの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている請求項1ないし請求項3いずれかに記載の電極。
【請求項7】
前記金属粉体混合物の全重量に対する前記Fe(鉄)の粉体の重量比が、30%~50%の範囲にあり、前記Feの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、20%~50%の範囲にあり、前記Feの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%~20%の範囲にある請求項6に記載の電極。
【請求項8】
前記金属粉体混合物が、Cu(銅)の粉体を主成分とし、前記金属粉体混合物では、前記Cuの仕事関数と該Cuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が前記白金族元素の仕事関数に近似するように、前記各種の遷移金属の中から前記Cuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている請求項1ないし請求項3いずれかに記載の電極。
【請求項9】
前記金属粉体混合物の全重量に対する前記Cu(銅)の粉体の重量比が、30%~50%の範囲にあり、前記Cuの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、20%~50%の範囲にあり、前記Cuの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の前記金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%~20%の範囲にある請求項8に記載の電極。
【請求項10】
前記アロイ成形物では、前記選択された遷移金属のうちの少なくとも2種類の遷移金属が金属粉体混合物の焼成時に溶融し、溶融した遷移金属をバインダーとしてそれら遷移金属の粉体が接合されている請求項1ないし請求項9いずれかに記載の電極。
【請求項11】
陽極又は陰極として使用する電極を製造する電極製造方法において、
前記電極製造方法が、各種の遷移金属から選択する少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、前記各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属を選択する遷移金属選択工程と、前記遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を作る金属粉体混合物作成工程と、前記金属粉体混合物作成工程によって作られた金属粉体混合物を所定圧力で加圧して金属粉体圧縮物を作る金属粉体圧縮物作成工程と、前記金属粉体圧縮物作成工程によって作られた金属粉体圧縮物を所定温度で焼成してアロイ成形物を作るアロイ成形物作成工程と、前記アロイ成形物作成工程によって作られたアロイ成形物を微粉砕してアロイ粉体を作るアロイ粉体作成工程と、前記アロイ粉体作成工程によって作られたアロイ粉体を所定面積のカーボン電極板の両面に担持させるアロイ粉体担持工程とを有する
電極製造方法であって、前記3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が、48Ni-42Cu-10Zn、48Ni-45Mo-7Mn、48Fe-48Ni-4Cu、48Fe-46Ti-6Ag、48Cu-48Fe-4Zn、又は、48Cu-46Fe-6Agの組成(重量比)を有する前記アロイ粉体の仕事関数以上であることを特徴とする電極製造方法。
【請求項12】
前記金属粉体混合物作成工程が、前記遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属を10μm~200μmの粒径に微粉砕し、前記アロイ粉体作成工程が、前記アロイ成形物を10μm~200μmの粒径に微粉砕する請求項11に記載の電極製造方法。
【請求項13】
前記金属粉体圧縮物作成工程が、前記金属粉体混合物作成工程によって作られた金属粉体混合物を500Mpa~800Mpaの圧力で加圧して前記金属粉体圧縮物を作る請求項11又は請求項12に記載の電極製造方法。
【請求項14】
前記アロイ成形物作成工程が、前記遷移金属選択工程によって選択された遷移金属のうちの少なくとも2種類の遷移金属を溶融させる温度で前記金属粉体圧縮物を焼成し、溶融した遷移金属をバインダーとしてそれら遷移金属の粉体を接合する請求項11ないし請求項13いずれかに記載の電極製造方法。
【請求項15】
前記アロイ粉体担持工程が、0.03mm~0.3mmの厚み寸法の前記カーボン電極板の両面に前記アロイ粉体を担持させ、前記カーボン電極板の厚み方向へ重なる前記アロイ粉体によって該カーボン電極板の両面にアロイ粉体積層ポーラス構造物を形成する請求項11ないし請求項14いずれかに記載の電極製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽極又は陰極として使用する電極に関するとともに、陽極又は陰極として使用する電極を製造する電極製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低沸点金属である亜鉛を含む多孔性金属錯体(PCP/MOF)を焼成した窒素ドープカーボンに白金を担持させた白金触媒を含む燃料電池電極が開示されている(特許文献1参照)。この燃料電池電極は、低沸点金属である亜鉛を含む多孔性金属錯体(PCP/MOF)を製造原料として用いるため、原料由来の金属をほとんど含まず、大きな比表面積を有するNDCである触媒担持体を得ることができ、少量の白金担持により高活性な白金触媒を得ることができる。さらに、製造原料である多孔性金属錯体(PCP/MOF)由来の金属が含まれていないため、焼成条件を自由に設定できる。すなわち、原料として用いる多孔性金属錯体(PCP/MOF)の有機化合物リンカーの変更や焼成温度の調節により、得られるNDC中の含窒素量や結晶化度をコントロールすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固体高分子形燃料電池の電極触媒として各種の白金担持カーボンが広く利用されている。しかし、白金族元素は、貴金属であり、その生産量に限りがある希少な資源であることから、その使用量を抑えることが求められている。さらに、今後の固体高分子形燃料電池の普及に向けて高価な白金以外の金属を利用した非白金触媒を有する廉価な電極の開発が求められている。
【0005】
本発明の目的は、白金族元素を利用することなく、廉価に作ることができ、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができる電極及びその電極の電極製造方法を提供することにある。本発明の他の目的は、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、水素ガス発生装置において電気分解を効率よく行うことができ、多量の水素ガスを発生させることができる電極及びその電極の電極製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の第1の前提は、陽極又は陰極として使用する電極である。
【0007】
前記第1の前提における本発明の電極の特徴は、電極が、各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を圧縮した後に焼成したアロイ成形物を微粉砕したアロイ粉体と、アロイ粉体を両面に担持させた所定面積のカーボン電極板とから形成され、金属粉体混合物では、選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されている電極であって、3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が、48Ni-42Cu-10Zn、48Ni-45Mo-7Mn、48Fe-48Ni-4Cu、48Fe-46Ti-6Ag、48Cu-48Fe-4Zn、又は、48Cu-46Fe-6Agの組成(重量比)を有するアロイ粉体の仕事関数以上であることにある。
【0008】
本発明の電極の一例として、カーボン電極板の両面には、カーボン電極板の厚み方向へ重なるアロイ粉体によってアロイ粉体積層ポーラス構造物が形成されている。
【0009】
本発明の電極の他の一例としては、遷移金属の粉体の粒径が、10μm~200μmの範囲にあり、アロイ粉体の粒径が、10μm~200μmの範囲にあり、カーボン電極板の厚み寸法が、0.03mm~0.3mmの範囲にある。
【0010】
本発明の電極の他の一例としては、金属粉体混合物が、Ni(ニッケル)の粉体を主成分とし、金属粉体混合物では、Niの仕事関数とNiを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている。
【0011】
本発明の電極の他の一例としては、金属粉体混合物の全重量に対するNi(ニッケル)の粉体の重量比が、30%~50%の範囲にあり、Niの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、20%~50%の範囲にあり、Niの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%~20%の範囲にある。
【0012】
本発明の電極の他の一例としては、金属粉体混合物が、Fe(鉄)の粉体を主成分とし、金属粉体混合物では、Feの仕事関数とFeを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている。
【0013】
本発明の電極の他の一例としては、金属粉体混合物の全重量に対するFe(鉄)の粉体の重量比が、30%~50%の範囲にあり、Feの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、20%~50%の範囲にあり、Feの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%~20%の範囲にある。
【0014】
本発明の電極の他の一例としては、金属粉体混合物が、Cu(銅)の粉体を主成分とし、金属粉体混合物では、Cuの仕事関数とCuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている。
【0015】
本発明の電極の他の一例としては、金属粉体混合物の全重量に対するCu(銅)の粉体の重量比が、30%~50%の範囲にあり、Cuの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、20%~50%の範囲にあり、Cuの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が、3%~20%の範囲にある。
【0016】
本発明の電極の他の一例として、アロイ成形物では、選択された遷移金属のうちの少なくとも2種類の遷移金属が金属粉体混合物の焼成時に溶融し、溶融した遷移金属をバインダーとしてそれら遷移金属の粉体が接合されている。
【0017】
前記課題を解決するための本発明の第2の前提は、陽極又は陰極として使用する電極を製造する電極製造方法である。
【0018】
前記第2の前提における本発明の電極製造方法の特徴は、電極製造方法が、各種の遷移金属から選択する少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属を選択する遷移金属選択工程と、遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を作る金属粉体混合物作成工程と、金属粉体混合物作成工程によって作られた金属粉体混合物を所定圧力で加圧して金属粉体圧縮物を作る金属粉体圧縮物作成工程と、金属粉体圧縮物作成工程によって作られた金属粉体圧縮物を所定温度で焼成してアロイ成形物を作るアロイ成形物作成工程と、アロイ成形物作成工程によって作られたアロイ成形物を微粉砕してアロイ粉体を作るアロイ粉体作成工程と、アロイ粉体作成工程によって作られたアロイ粉体を所定面積のカーボン電極板の両面に担持させるアロイ粉体担持工程とを有する電極製造方法であって、3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が、48Ni-42Cu-10Zn、48Ni-45Mo-7Mn、48Fe-48Ni-4Cu、48Fe-46Ti-6Ag、48Cu-48Fe-4Zn、又は、48Cu-46Fe-6Agの組成(重量比)を有するアロイ粉体の仕事関数以上であることにある。
【0019】
本発明の電極製造方法の一例としては、金属粉体混合物作成工程が、遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属を10μm~200μmの粒径に微粉砕し、アロイ粉体作成工程が、アロイ成形物を10μm~200μmの粒径に微粉砕する。
【0020】
本発明の電極製造方法の他の一例としては、金属粉体圧縮物作成工程が、金属粉体混合物作成工程によって作られた金属粉体混合物を500Mpa~800Mpaの圧力で加圧して金属粉体圧縮物を作る。
【0021】
本発明の電極製造方法の他の一例としては、アロイ成形物作成工程が、遷移金属選択工程によって選択された遷移金属のうちの少なくとも2種類の遷移金属を溶融させる温度で金属粉体圧縮物を焼成し、溶融した遷移金属をバインダーとしてそれら遷移金属の粉体を接合する。
【0022】
本発明の電極製造方法の他の一例としては、アロイ粉体担持工程が、0.03mm~0.3mmの厚み寸法のカーボン電極板の両面にアロイ粉体を担持させ、カーボン電極板の厚み方向へ重なるアロイ粉体によってカーボン電極板の両面にアロイ粉体積層ポーラス構造物を形成する。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る電極によれば、それが各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を圧縮した後に焼成したアロイ成形物を微粉砕したアロイ粉体と、アロイ粉体を両面に担持させた所定面積のカーボン電極板とから形成され、選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されているから、アロイ粉体を有する電極が白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池や水素ガス発生装置の電極として好適に使用することができる。電極は、アロイ成形物が各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属から形成され、高価な白金族元素が利用されていない白金レスであり、電極を廉価に作ることができる。電極は、それが白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮するから、電極を燃料電池に使用することで、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極を水素ガス発生装置に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、多量の水素ガスを発生させることができる。
【0024】
カーボン電極板の厚み方向へ重なるアロイ粉体によってカーボン電極板の両面にアロイ粉体積層ポーラス構造物が形成されている電極は、カーボン電極板の両面にアロイ粉体積層ポーラス構造物を形成することで、アロイ粉体の比表面積を大きくすることができ、アロイ粉体の触媒作用を十分に利用することができるとともに、アロイ粉体積層ポーラス構造物を有する電極が白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池や水素ガス発生装置の電極として好適に使用することができる。電極は、アロイ粉体積層ポーラス構造物を形成した電極が白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮するから、電極を燃料電池に使用することで、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極を水素ガス発生装置に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、多量の水素ガスを発生させることができる。
【0025】
遷移金属の粉体の粒径が10μm~200μmの範囲にあり、アロイ粉体の粒径が10μm~200μmの範囲にあり、カーボン電極板の厚み寸法が0.03mm~0.3mmの範囲にある電極は、カーボン電極板の厚み寸法を前記範囲にすることで、電極の電気抵抗を小さくすることができ、電極に電流をスムースに流すことができる。電極は、電流がスムースに流れるから、電極を燃料電池に使用することで、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極を水素ガス発生装置に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、多量の水素ガスを発生させることができる。
【0026】
金属粉体混合物がNi(ニッケル)の粉体を主成分とし、Niの仕事関数とNiを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている電極は、Niの仕事関数とNiを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているから、アロイ粉体又はアロイ粉体積層ポーラス構造物を有する電極が白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池や水素ガス発生装置の電極として好適に使用することができる。電極は、アロイ成形物がNiの粉体と各種の遷移金属から選択されたNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とから形成され、高価な白金族元素が利用されていない白金レスであり、電極を廉価に作ることができる。電極は、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮するから、電極を燃料電池に使用することで、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極を水素ガス発生装置に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、多量の水素ガスを発生させることができる。
【0027】
金属粉体混合物の全重量に対するNi(ニッケル)の粉体の重量比が30%~50%の範囲にあり、Niの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が20%~50%の範囲にあり、Niの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が3%~20%の範囲にある電極は、Niの仕事関数とNiを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているとともに、Niの粉体の重量比やNiの粉体を除く少なくとも1種類の遷移金属の粉体の重量比、Niの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の重量比を前記範囲にすることで、アロイ粉体又はアロイ粉体積層ポーラス構造物を有する電極が白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、電極を燃料電池に使用することで、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極を水素ガス発生装置に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、多量の水素ガスを発生させることができる。
【0028】
金属粉体混合物がFe(鉄)の粉体を主成分とし、Feの仕事関数とFeを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている電極は、Feの仕事関数とFeを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているから、アロイ粉体又はアロイ粉体積層ポーラス構造物を有する電極が白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池や水素ガス発生装置の電極として好適に使用することができる。電極は、アロイ成形物がFeの粉体と各種の遷移金属から選択されたFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とから形成され、高価な白金族元素が利用されていない白金レスであり、電極を廉価に作ることができる。電極は、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮するから、電極を燃料電池に使用することで、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極を水素ガス発生装置に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、多量の水素ガスを発生させることができる。
【0029】
金属粉体混合物の全重量に対するFe(鉄)の粉体の重量比が30%~50%の範囲にあり、Feの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が20%~50%の範囲にあり、Feの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が3%~20%の範囲にある電極は、Feの仕事関数とFeを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているとともに、Feの粉体の重量比やFeの粉体を除く少なくとも1種類の遷移金属の粉体の重量比、Feの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の重量比を前記範囲にすることで、アロイ粉体又はアロイ粉体積層ポーラス構造物を有する電極が白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、電極を燃料電池に使用することで、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極を水素ガス発生装置に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、多量の水素ガスを発生させることができる。
【0030】
金属粉体混合物がCu(銅)の粉体を主成分とし、Cuの仕事関数とCuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている電極は、Cuの仕事関数とCuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているから、アロイ粉体又はアロイ粉体積層ポーラス構造物を有する電極が白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池や水素ガス発生装置の電極として好適に使用することができる。電極は、アロイ成形物がCuの粉体と各種の遷移金属から選択されたCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とから形成され、高価な白金族元素が利用されていない白金レスであり、電極を廉価に作ることができる。電極は、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮するから、電極を燃料電池に使用することで、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極を水素ガス発生装置に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、多量の水素ガスを発生させることができる。
【0031】
金属粉体混合物の全重量に対するCu(銅)の粉体の重量比が30%~50%の範囲にあり、Cuの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が20%~50%の範囲にあり、Cuの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の金属粉体混合物の全重量に対する重量比が3%~20%の範囲にある電極は、Cuの仕事関数とCuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているとともに、Cuの粉体の重量比やCuの粉体を除く少なくとも1種類の遷移金属の粉体の重量比、Cuの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体の重量比を前記範囲にすることで、アロイ粉体又はアロイ粉体積層ポーラス構造物を有する電極が白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、電極を燃料電池に使用することで、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極を水素ガス発生装置に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、多量の水素ガスを発生させることができる。
【0032】
選択された遷移金属のうちの少なくとも2種類の遷移金属が金属粉体混合物の焼成時に溶融し、溶融した遷移金属をバインダーとしてそれら遷移金属の粉体が接合されている電極は、遷移金属のうちの少なくとも2種類の遷移金属が溶融することでアロイ成形物を作ることができるとともに、アロイ成形物を微粉砕したアロイ粉体を作ることができ、アロイ粉体又はアロイ粉体積層ポーラス構造物を有する電極を作ることができる。電極は、アロイ粉体又はアロイ粉体積層ポーラス構造物を有する電極が白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、電極を燃料電池に使用することで、燃料電池において十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極を水素ガス発生装置に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、多量の水素ガスを発生させることができる。
【0033】
本発明に係る電極製造方法によれば、各種の遷移金属から選択する少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属を選択する遷移金属選択工程と、遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物を作る金属粉体混合物作成工程と、金属粉体混合物作成工程によって作られた金属粉体混合物を所定圧力で加圧して金属粉体圧縮物を作る金属粉体圧縮物作成工程と、金属粉体圧縮物作成工程によって作られた金属粉体圧縮物を所定温度で焼成してアロイ成形物を作るアロイ成形物作成工程と、アロイ成形物作成工程によって作られたアロイ成形物を微粉砕してアロイ粉体を作るアロイ粉体作成工程と、アロイ粉体作成工程によって作られたアロイ粉体を所定面積のカーボン電極板の両面に担持させるアロイ粉体担持工程との各工程によって電極を製造するから、白金族元素を利用しない白金レスの電極を廉価に作ることができ、触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有して燃料電池や水素ガス発生装置に好適に使用することが可能な電極を作ることができる。
【0034】
金属粉体混合物作成工程が遷移金属選択工程によって選択された少なくとも3種類の遷移金属を10μm~200μmの粒径に微粉砕し、アロイ粉体作成工程がアロイ成形物を10μm~200μmの粒径に微粉砕する電極製造方法は、遷移金属を前記範囲の粒径に微粉砕することでアロイ成形物を作ることができるとともに、アロイ成形物を前記範囲の粒径に微粉砕することでアロイ粉体又はアロイ粉体積層ポーラス構造物を有する白金レスの電極を作ることができ、触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有して燃料電池や水素ガス発生装置に好適に使用することが可能な電極を作ることができる。
【0035】
金属粉体圧縮物作成工程が金属粉体混合物作成工程によって作られた金属粉体混合物を500Mpa~800Mpaの圧力で加圧して金属粉体圧縮物を作る電極製造方法は、金属粉体混合物を前記範囲の圧力で加圧(圧縮)することで、金属粉体圧縮物を作ることができ、その金属粉体圧縮物を焼成してアロイ成形物を作ることができるとともに、アロイ成形物を微粉砕したアロイ粉体又はアロイ粉体積層ポーラス構造物を有する白金レスの電極を作ることができる。
【0036】
アロイ成形物作成工程が遷移金属選択工程によって選択された遷移金属のうちの少なくとも2種類の遷移金属を溶融させる温度で金属粉体圧縮物を焼成し、溶融した遷移金属をバインダーとしてそれら遷移金属の粉体を接合する電極製造方法は、遷移金属のうちの少なくとも2種類の遷移金属が溶融することでアロイ成形物を作ることができるとともに、アロイ成形物を微粉砕したアロイ粉体を作ることができ、アロイ粉体又はアロイ粉体積層ポーラス構造物を有する白金レスの電極を作ることができる。
【0037】
アロイ粉体担持工程が0.03mm~0.3mmの厚み寸法のカーボン電極板の両面にアロイ粉体を担持させ、カーボン電極板の厚み方向へ重なるアロイ粉体によってカーボン電極板の両面にアロイ粉体積層ポーラス構造物を形成する電極製造方法は、アロイ粉体の比表面積を大きくしたアロイ粉体積層ポーラス構造物を有する白金レスの電極を作ることができるとともに、カーボン電極板の厚み寸法を前記範囲にすることで、電極の電気抵抗を小さくすることができ、電流をスムースに流すことが可能な白金レスの電極を作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図6】電極を使用したセルの一例を示す分解斜視図。
【
図8】電極を使用した燃料電池(固体高分子形燃料電池)の発電を説明する図。
【
図11】電極を使用した水素ガス発生装置の電気分解を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
一例として示す電極10Aの斜視図である
図1等の添付の図面を参照し、本発明に係る電極の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、
図2は、電極10Aの部分拡大正面図であり、
図3は、
図2のA-A線端面図である。
図1では、厚み方向を矢印Xで示し、径方向を矢印Yで示す。
【0040】
電極10Aは、陽極(アノード)又は陰極(カソード)として使用され、燃料電池21の電極(触媒)(
図6参照)や水素ガス発生装置30の電極(触媒)(
図11参照)として利用される。電極10Aは、前面11及び後面12を有するとともに、所定面積及び所定の厚み寸法を有し、その平面形状が四角形に成形されている。なお、電極10A(電極10Bを含む)の平面形状に特に制限はなく、四角形の他に、その用途にあわせて円形や楕円形、多角形等の他のあらゆる平面形状に成形することができる。
【0041】
電極10Aは、アロイ粉体13(合金粉体)と所定面積のカーボン電極板14とから形成されている。アロイ粉体13は、アロイ成形物42(合金成形物)(
図12参照)を微粉砕することから作られている。アロイ粉体13は、その粒径が10μm~200μmの範囲にある。アロイ成形物42は、粉状に加工(微粉砕)された各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物40(
図12参照)を圧縮した後に焼成(焼結)することから作られている。遷移金属としては、3d遷移金属や4d遷移金属が使用される。3d遷移金属には、Ti(チタン)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)が使用される。4d遷移金属には、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Ag(銀)が使用される。
【0042】
遷移金属の粉体には、粉状に加工(微粉砕)されたTi(チタン)粉体、粉状に加工(微粉砕)されたCr(クロム)粉体、粉状に加工(微粉砕)されたMn(マンガン)粉体、粉状に加工(微粉砕)されたFe(鉄)粉体、粉状に加工(微粉砕)されたCo(コバルト)粉体、粉状に加工(微粉砕)されたNi(ニッケル)粉体、粉状に加工(微粉砕)されたCu(銅)粉体、粉状に加工(微粉砕)されたZn(亜鉛)粉体、粉状に加工(微粉砕)されたNb(ニオブ)粉体、粉状に加工(微粉砕)されたMo(モリブデン)粉体、粉状に加工されたAg(銀)粉体が使用される。
【0043】
Tiの粉体(粉状に加工(微粉砕)されたTi)やCrの粉体(粉状に加工(微粉砕)されたCr)、Mnの粉体(粉状に加工(微粉砕)されたMn)、Feの粉体(粉状に加工(微粉砕)されたFe)、Coの粉体(粉状に加工(微粉砕)されたCo)、Niの粉体(粉状に加工(微粉砕)されたNi)、Cuの粉体(粉状に加工(微粉砕)されたCu)、Znの粉体(粉状に加工(微粉砕)されたZn)、Nbの粉体(粉状に加工(微粉砕)されたNb)、Moの粉体(粉状に加工(微粉砕)されたMo)、Agの粉体(粉状に加工(微粉砕)されたAg)は、それらの粒径が10μm~200μmの範囲にある。
【0044】
金属粉体混合物40では、選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数(物質から電子を取り出すのに必要なエネルギー)の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されている。Tiの仕事関数は、4.14(eV)、Crの仕事関数は、4.5(eV)、Mnの仕事関数は、4.1(eV)、Feの仕事関数は、4.67(eV)、Coの仕事関数は、5.0(eV)、Niの仕事関数は、5.22(eV)、Cuの仕事関数は、5.10(eV)、Znの仕事関数は、3.63(eV)、Nbの仕事関数は、4.01(eV)、Moの仕事関数は、4.45(eV)、Agの仕事関数は、4.31(eV)である。なお、白金の仕事関数は、5.65(eV)である。
【0045】
金属粉体混合物40の一例としては、粉状に加工(微粉砕)されたNi(ニッケル)の粉体を主成分とし、Niの粉体とNiを除く粉状に加工(微粉砕)されたその他の少なくとも2種類の遷移金属(粉状のTi(チタン)、粉状のCr(クロム)、粉状のMn(マンガン)、粉状のFe(鉄)、粉状のCo(コバルト)、粉状のCu(銅)、粉状のZn(亜鉛)、粉状のNb(ニオブ)、粉状のMo(モリブデン)、粉状のAg(銀)のうちの少なくとも2種類)の粉体とを均一に混合・分散した金属粉体混合物40である。
【0046】
主成分となるNi(ニッケル)の粉体とNiを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とを混合した金属粉体混合物40は、Niの仕事関数とNiを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている。
【0047】
Niの粉体を主成分としたアロイ成形物42では、選択された遷移金属のうちの少なくとも2種類の遷移金属が金属粉体混合物40の焼成時に溶融し、溶融した遷移金属をバインダーとしてそれら遷移金属の粉体が接合されている。Niを主成分としたアロイ粉体13は、Niの粉体を主成分とした金属粉体混合物40を圧縮した後に焼成することから作られたアロイ成形物42を微粉砕した粒径が10μm~200μmの微粉砕物である。
【0048】
Ni(ニッケル)の粉体を主成分とした金属粉体混合物40では、金属粉体混合物40の全重量に対するNiの粉体の重量比が30%~50%の範囲にあり、Niの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体(Ti(チタン)粉体、Cr(クロム)粉体、Mn(マンガン)粉体、Fe(鉄)粉体、Co(コバルト)粉体、Cu(銅)粉体、Zn(亜鉛)粉体、Nb(ニオブ)粉体、Mo(モリブデン)粉体、Ag(銀)粉体のうちの少なくとも1種類)の金属粉体混合物40の全重量に対する重量比が20%~50%の範囲にあり、Niの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体(Ti(チタン)粉体、Cr(クロム)粉体、Mn(マンガン)粉体、Fe(鉄)粉体、Co(コバルト)粉体、Cu(銅)粉体、Zn(亜鉛)粉体、Nb(ニオブ)粉体、Mo(モリブデン)粉体、Ag(銀)粉体のうちの他の少なくとも1種類)の金属粉体混合物40の全重量に対する重量比が3%~20%の範囲にある。
【0049】
Ni(ニッケル)を主成分としたアロイ粉体13(Niを主成分とした合金粉体)の具体例としては、Niの粉体、Cuの粉体、ZNの粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物40を圧縮した後に焼成してアロイ成形物42を作り、そのアロイ成形物42を微粉砕した粒径が10μm~200μmの微粉砕物である。このアロイ粉体13は、金属粉体混合物40の全重量に対するNiの粉体の重量比が48%、金属粉体混合物40の全重量に対するCuの粉体重量比が42%、金属粉体混合物40の全重量に対するZnの粉体重量比が10%である。Niの融点が1455℃、Cuの融点が1084.5℃、Znの融点が419.85℃であるから、Znの粉体及びCuの粉体が溶融し、溶融したZn及びCuがバインダーとなってNiの粉体を接合している。
【0050】
Ni(ニッケル)を主成分としたアロイ粉体13の他の具体例としては、Niの粉体、Mnの粉体、Moの粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物40を圧縮した後に焼成してアロイ成形物42を作り、そのアロイ成形物42を微粉砕した粒径が10μm~200μmの微粉砕物である。このアロイ粉体13は、金属粉体混合物40の全重量に対するNiの粉体の重量比が48%、金属粉体混合物40の全重量に対するMnの粉体重量比が7%、金属粉体混合物40の全重量に対するMoの粉体重量比が45%である。Niの融点が1455℃、Mnの融点が1246℃、Moの融点が2623℃であるから、Mnの粉体及びNiの粉体が溶融し、溶融したMn及びNiがバインダーとなってMoの粉体を接合している。
【0051】
金属粉体混合物40の他の一例としては、粉状に加工(微粉砕)されたFe(鉄)の粉体を主成分とし、Feの粉体とFeを除く粉状に加工(微粉砕)されたその他の少なくとも2種類の遷移金属(粉状のTi(チタン)、粉状のCr(クロム)、粉状のMn(マンガン)、粉状のCo(コバルト)、粉状のNi(ニッケル)、粉状のCu(銅)、粉状のZn(亜鉛)、粉状のNb(ニオブ)、粉状のMo(モリブデン)、粉状のAg(銀)のうちの少なくとも2種類)の粉体とを均一に混合・分散した金属粉体混合物40である。
【0052】
主成分となるFe(鉄)の粉体とFeを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とを混合した金属粉体混合物40は、Feの仕事関数とFeを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている。
【0053】
Feの粉体を主成分としたアロイ成形物42では、選択された遷移金属のうちの少なくとも2種類の遷移金属が金属粉体混合物40の焼成時に溶融し、溶融した遷移金属をバインダーとしてそれら遷移金属の粉体が接合されている。Feを主成分としたアロイ粉体13は、Feの粉体を主成分とした金属粉体混合物40を圧縮した後に焼成することから作られたアロイ成形物42を微粉砕した粒径が10μm~200μmの微粉砕物である。
【0054】
Fe(鉄)の粉体を主成分とした金属粉体混合物40では、金属粉体混合物40の全重量に対するFeの粉体の重量比が30%~50%の範囲にあり、Feの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体(Ti(チタン)粉体、Cr(クロム)粉体、Mn(マンガン)粉体、Co(コバルト)粉体、Ni(ニッケル)粉体、Cu(銅)粉体、Zn(亜鉛)粉体、Nb(ニオブ)粉体、Mo(モリブデン)粉体、Ag(銀)粉体のうちの少なくとも1種類)の金属粉体混合物40の全重量に対する重量比が20%~50%の範囲にあり、Feの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体(Ti(チタン)粉体、Cr(クロム)粉体、Mn(マンガン)粉体、Co(コバルト)粉体、Ni(ニッケル)粉体、Cu(銅)粉体、Zn(亜鉛)粉体、Nb(ニオブ)粉体、Mo(モリブデン)粉体、Ag(銀)粉体のうちの他の少なくとも1種類)の前記金属粉体混合物40の全重量に対する重量比が3%~20%の範囲にある。
【0055】
Fe(鉄)を主成分としたアロイ粉体13(Feを主成分とした合金粉体)の具体例としては、Feの粉体、Niの粉体、Cuの粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物40を圧縮した後に焼成してアロイ成形物42を作り、そのアロイ成形物42を微粉砕した粒径が10μm~200μmの微粉砕物である。このアロイ粉体13は、金属粉体混合物40の全重量に対するFeの粉体の重量比が48%、金属粉体混合物40の全重量に対するNiの粉体重量比が48%、金属粉体混合物40の全重量に対するCuの粉体重量比が4%である。Feの融点が1536℃、Niの融点が1455℃、Cuの融点が1084.5℃であるから、Cuの粉体及びNiの粉体が溶融し、溶融したCu及びNiがバインダーとなってFeの粉体を接合している。
【0056】
Fe(鉄)を主成分としたアロイ粉体13の他の具体例としては、Feの粉体、Tiの粉体、Agの粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物40を圧縮した後に焼成してアロイ成形物42を作り、そのアロイ成形物42を微粉砕した粒径が10μm~200μmの微粉砕物である。このアロイ粉体13は、金属粉体混合物40の全重量に対するFeの粉体の重量比が48%、金属粉体混合物40の全重量に対するTiの粉体重量比が46%、金属粉体混合物40の全重量に対するAgの粉体重量比が6%である。Feの融点が1536℃、Tiの融点が1666℃、Agの融点が961.93℃であるから、Agの粉体及びFeの粉体が溶融し、溶融したAg及びFeがバインダーとなってTiの粉体を接合している。
【0057】
金属粉体混合物40の他の一例としては、粉状に加工(微粉砕)されたCu(銅)の粉体を主成分とし、Cuの粉体とCuを除く粉状に加工(微粉砕)されたその他の遷移金属(粉状のTi(チタン)、粉状のCr(クロム)、粉状のMn(マンガン)、粉状のFe(鉄)、粉状のCo(コバルト)、粉状のNi(ニッケル)、粉状のZn(亜鉛)、粉状のNb(ニオブ)、粉状のMo(モリブデン)、粉状のAg(銀)のうちの少なくとも2種類)の粉体とを均一に混合・分散した金属粉体混合物40である。
【0058】
主成分となるCu(銅)の粉体とCuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とを混合した金属粉体混合物40は、Cuの仕事関数とCuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されている。
【0059】
Cuの粉体を主成分としたアロイ成形物42では、選択された遷移金属のうちの少なくとも2種類の遷移金属が金属粉体混合物40の焼成時に溶融し、溶融した遷移金属をバインダーとしてそれら遷移金属の粉体が接合されている。Cuを主成分としたアロイ粉体は、Cuの粉体を主成分とした金属粉体混合物40を圧縮した後に焼成することから作られたアロイ成形物42を微粉砕した粒径が10μm~200μmの微粉砕物である。
【0060】
Cu(銅)の粉体を主成分とした金属粉体混合物40では、金属粉体混合物40の全重量に対するCuの粉体の重量比が30%~50%の範囲にあり、Cuの粉体を除く1種類の遷移金属の粉体(Ti(チタン)粉体、Cr(クロム)粉体、Mn(マンガン)粉体、Fe(鉄)粉体、Co(コバルト)粉体、Ni(ニッケル)粉体、Zn(亜鉛)粉体、Nb(ニオブ)粉体、Mo(モリブデン)粉体、Ag(銀)粉体のうちの少なくとも1種類)の金属粉体混合物40の全重量に対する重量比が20%~50%の範囲にあり、Cuの粉体を除く他の少なくとも1種類の遷移金属の粉体(Ti(チタン)粉体、Cr(クロム)粉体、Mn(マンガン)粉体、Fe(鉄)粉体、Co(コバルト)粉体、Ni(ニッケル)粉体、Zn(亜鉛)粉体、Nb(ニオブ)粉体、Mo(モリブデン)粉体、Ag(銀)粉体のうちの他の少なくとも1種類)の金属粉体混合物40の全重量に対する重量比が3%~20%の範囲にある。
【0061】
Cu(銅)を主成分としたアロイ粉体13(Cuを主成分とした合金粉体)の具体例としては、Cuの粉体、Feの粉体、Znの粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物40を圧縮した後に焼成してアロイ成形物42を作り、そのアロイ成形物42を微粉砕した粒径が10μm~200μmの微粉砕物である。このアロイ粉体13は、金属粉体混合物40の全重量に対するCuの粉体の重量比が48%、金属粉体混合物40の全重量に対するFeの粉体重量比が48%、金属粉体混合物40の全重量に対するZnの粉体重量比が4%である。Cuの融点が1084.5℃、Feの融点が1536℃、Znの融点が419.58℃であるから、Znの粉体及びCuの粉体が溶融し、溶融したZn及びCuがバインダーとなってFeの粉体を接合している。
【0062】
Cu(銅)を主成分としたアロイ粉体13の他の具体例としては、Cuの粉体、Feの粉体、Agの粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物40を圧縮した後に焼成してアロイ成形物42を作り、そのアロイ成形物42を微粉砕した粒径が10μm~200μmの微粉砕物である。このアロイ粉体13は、金属粉体混合物40の全重量に対するCuの粉体の重量比が48%、金属粉体混合物40の全重量に対するFeの粉体重量比が46%、金属粉体混合物40の全重量に対するAgの粉体重量比が6%である。Cuの融点が1084.5℃、Feの融点が1536℃、Agの融点が961.93℃であるから、Agの粉体及びCuの粉体が溶融し、溶融したAg及びCuがバインダーとなってFeの粉体を接合している。
【0063】
カーボン電極板14は、前面15及び後面16を有するとともに、所定面積及び所定の厚み寸法L1を有し、その平面形状が四角形に成形されている。なお、カーボン電極板14の平面形状に特に制限はなく、四角形の他に、円形や楕円形、多角形等の他のあらゆる平面形状に成形することができる。カーボン電極板14の一例としては、数μm~数10μmのカーボングラファイト(黒鉛)粉末と導電性バインダー(導電性結合材)とを冷間静水圧プレスによって成形した後、約3000℃で黒鉛化したシート状の電極材を使用する。カーボン電極板14の他の一例としては、数μm~数10μmのカーボングラファイト(黒鉛)粉末と導電性バインダー(導電性結合材)とを押出型から押し出し成形した後、約3000℃で黒鉛化したシート状の電極材を使用する。カーボン電極板14としては、ガラス状カーボンを使用することもできる。
【0064】
カーボン電極板14は、その厚み寸法L1が0.03mm~0.3mmの範囲、好ましくは、0.05mm~0.1mmの範囲にある。カーボン電極板14の前面15の全域及び後面16の全域(両面の全域)には、
図3に示すように、既述の複数のアロイ粉体13が担持されている。アロイ粉体13は、カーボン電極板14の前面15の全域及び後面16の全域(両面)に導電性バインダー(導電性結合材)やプラズマ溶射によって担持される。
【0065】
カーボン電極板14の厚み寸法L1が0.03mm未満では、その強度が低下し、衝撃が加えられたときにカーボン電極板14(電極10A(または電極10B))が容易に破損又は損壊し、その形状を維持することができない場合がある。カーボン電極板14の厚み寸法L1が0.3mmを超過すると、カーボン電極板14(電極10A(または電極10B))の電気抵抗が大きくなり、カーボン電極板14(電極10A(または電極10B))に電流がスムースに流れず、電極10A(または電極10B)が燃料電池21に使用されたときに燃料電池21において十分な電気を発電することができず、燃料電池21に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができない。また、電極10A(または電極10B)が水素ガス発生装置30に使用されたときに電気分解を効率よく行うことができず、水素ガス発生装置30において短時間に多量の水素ガスを発生させることができない。
【0066】
カーボン電極板14は、その厚み寸法L1が0.03mm~0.3mmの範囲、好ましくは、0.05mm~0.1mmの範囲にあるから、カーボン電極板14(電極10A(または電極10B))が高い強度を有してその形状を維持することができ、カーボン電極板14に衝撃が加えられたときのカーボン電極板14の破損や損壊を防ぐことができる。さらに、厚み寸法L1を前記範囲にすることで、カーボン電極板14(電極10A(または電極10B))の電気抵抗を小さくすることができ、カーボン電極板14(電極10A(または電極10B))に電流がスムースに流れ、電極10Aが燃料電池21に使用されたときに燃料電池21において十分な電気を発電することができ、燃料電池21に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができる。また、電極10Aが水素ガス発生装置30に使用されたときに電気分解を効率よく行うことができ、水素ガス発生装置30において短時間に多量の水素ガスを発生させることができる。
【0067】
図4は、他の一例として示す電極10Bの部分拡大正面図であり、
図5は、
図4のB-B線端面図である。電極10Bが
図1の電極10Aと異なるところは、カーボン電極板14の厚み方向へ重なる複数のアロイ粉体13によってアロイ粉体積層ポーラス構造物17がカーボン電極板14の前面15及び後面16(両面)に形成されている点にあり、その他の構成は
図1の電極10Aと同一であるから、
図1と同一の符号を付すとともに、
図1の電極10Aの説明を援用することで、この電極10Bのその他の構成の詳細な説明は省略する。
【0068】
電極10Bは、陽極(アノード)又は陰極(カソード)として使用され、燃料電池21の電極(触媒)(
図6参照)や水素ガス発生装置30の電極(触媒)(
図11参照)として利用される。電極10Bは、前面11及び後面12を有するとともに、所定の面積及び所定の厚み寸法を有し、その平面形状が四角形に成形されている。電極10Bは、アロイ粉体13(合金粉体)と、両面(前後面15,16)にアロイ粉体13を担持させた所定面積のカーボン電極板14とから形成されている。
【0069】
カーボン電極板14の前面15の全域と後面16の全域(両面の全域)とには、カーボン電極板14の厚み方向へ重なり合った(積層された)複数のアロイ粉体13によってアロイ粉体積層ポーラス構造物17が形成されている。アロイ粉体13は、アロイ成形物42(合金成形物)を微粉砕することから作られている。アロイ成形物42は、粉状に加工(微粉砕)された各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物40を圧縮した後に焼成(焼結)することから作られている。遷移金属や金属粉体混合物40、アロイ成形物42、アロイ粉体13は、
図1の電極10Aのそれらと同一である。遷移金属粉体の粒径やアロイ粉体13の粒径、カーボン電極板14の厚み寸法L1は、
図1の電極10Aのそれらと同一である。
【0070】
アロイ粉体積層ポーラス構造物17には、径が異なる多数の微細な流路18(通路孔)が形成されている。それら流路18(通路孔)には、気体(水素ガスや酸素ガス)または液体(水)が通流する。それら流路18(通路孔)は、カーボン電極板14の前面15の側に開口する複数の通流口19とカーボン電極板14の後面16の側に開口する複数の通流口19とを有し、電極10Bの前面11に向かってアロイ粉体積層ポーラス構造物17を貫通しているとともに、電極10Bの後面12に向かってアロイ粉体積層ポーラス構造物17を貫通している。
【0071】
それら流路18は、カーボン電極板14の厚み方向へ不規則に曲折しながら延びているとともに、カーボン電極板14の外周縁から中心に向かってカーボン電極板14の径方向へ不規則に曲折しながら延びている。カーボン電極板14の径方向へ隣接して厚み方向へ曲折して延びるそれら流路18は径方向において部分的につながり、一方の流路18と他方の流路18とが互いに連通している。カーボン電極板14の厚み方向へ隣接して径方向へ曲折して延びるそれら流路18は厚み方向において部分的につながり、一方の流路18と他方の流路18とが互いに連通している。
【0072】
それら流路18(通路孔)の開口面積(開口径)は、カーボン電極板14の厚み方向に向かって一様ではなく、厚み方向に向かって不規則に変化しているとともに、カーボン電極板14の径方向に向かって一様ではなく、径方向に向かって不規則に変化している。それら流路18は、その開口面積(開口径)が大きくなったり、小さくなったりしながら厚み方向と径方向とへ不規則に開口している。また、前面11に開口する通流口19と後面12に開口する通流口19とは、その開口面積(開口径)が一様ではなく、その面積が相違している。それら流路18(通路孔)の開口径や通流口19の開口径は、1μm~100μmの範囲にある。
【0073】
アロイ粉体積層ポーラス構造物17は、その空隙率が15%~30%の範囲にあり、その相対密度が70%~85%の範囲にある。アロイ粉体積層ポーラス構造物17の空隙率が15%未満であって相対密度が85%を超過すると、アロイ粉体積層ポーラス構造物17に多数の微細な流路18(通路孔)が形成されず、アロイ粉体積層ポーラス構造物17の比表面積を大きくすることができない。アロイ粉体積層ポーラス構造物17の空隙率が30%を超過し、相対密度が70%未満では、流路18(通路孔)の開口面積(開口径)が必要以上に大きくなり、アロイ粉体積層ポーラス構造物17の強度が低下し、衝撃が加えられたときにアロイ粉体積層ポーラス構造物17が容易に破損又は損壊し、その形態を維持することができない場合がある。
【0074】
アロイ粉体積層ポーラス構造物17は、その空隙率及び相対密度が前記範囲にあるから、アロイ粉体積層ポーラス構造物17が開口面積(開口径)の異なる多数の微細な流路18(通路孔)を有する多孔質となり、アロイ粉体積層ポーラス構造物17の比表面積を大きくすることができ、それら流路18(通路孔)を気体や液体が通流しつつ気体や液体をアロイ粉体積層ポーラス構造物17の接触面(アロイ粉体13の表面)に広く接触させることができる。
【0075】
アロイ粉体積層ポーラス構造物17は、その密度が5.0g/cm2~7.0g/cm2の範囲にある。アロイ粉体積層ポーラス構造物17の密度が5.0g/cm2未満では、アロイ粉体積層ポーラス構造物17の強度が低下し、衝撃が加えられたときにアロイ粉体積層ポーラス構造物17が容易に破損又は損壊し、その形態を維持することができない場合がある。アロイ粉体積層ポーラス構造物17の密度が7.0g/cm2を超過すると、アロイ粉体積層ポーラス構造物17に多数の微細な流路18(通路孔)が形成されず、アロイ粉体積層ポーラス構造物17の比表面積を大きくすることができない。
【0076】
カーボン電極板14の両面(前後面15,16)に形成されたアロイ粉体積層ポーラス構造物17は、その密度が前記範囲にあるから、アロイ粉体積層ポーラス構造物17が多数の微細な流路18(通路孔)を有する多孔質に成形され、アロイ粉体積層ポーラス構造物17の比表面積を大きくすることができ、それら流路18(通路孔)を気体や液体が通流しつつ気体や液体をアロイ粉体積層ポーラス構造物17の接触面(アロイ粉体13の表面)に広く接触させることができる。
【0077】
それら遷移金属の粉体の粒径が10μm未満では、遷移金属によって流路18(通路孔)が塞がれ、アロイ粉体積層ポーラス構造物17に多数の微細な流路18を形成することができず、アロイ粉体積層ポーラス構造物17の比表面積を大きくすることができない。それら遷移金属の粉体の粒径が200μmを超過すると、流路18(通路孔)の開口面積(開口径)が必要以上に大きくなり、アロイ粉体積層ポーラス構造物17に多数の微細な流路18を形成することができず、アロイ粉体積層ポーラス構造物17の比表面積を大きくすることができない。それら遷移金属の粉体の粒径が前記範囲にあるから、アロイ粉体積層ポーラス構造物17が多数の微細な流路18(通路孔)を有する多孔質に成形され、アロイ粉体積層ポーラス構造物17の比表面積を大きくすることができ、それら流路18を気体や液体が通流しつつ気体や液体をアロイ粉体積層ポーラス構造物17の接触面(アロイ粉体13の表面)に広く接触させることができる。
【0078】
図6は、電極10A,10Bを使用したセル20の一例を示す分解斜視図であり、
図7は、電極10A,10Bを使用したセル20の側面図である。
図8は、電極10A,10Bを使用した燃料電池21(固体高分子形燃料電池)の発電を説明する図であり、
図9は、電極10A,10Bの起電圧試験の結果を示す図である。
図10は、電極10A,10BのI-V特性試験の結果を示す図である。
【0079】
電極10A又は電極10Bを使用したセル20の一例としては、
図6に示すように、電極10A又は電極10Bを使用した燃料極22(アノード)と、電極10A又は電極10Bを使用した空気極23(カソード)と、燃料極22及び空気極23の間に介在する固体高分子電解質膜24(スルホン酸基を有するフッ素系イオン交換膜)と、燃料極22の厚み方向外側に位置するセパレータ25a(バイポーラプレート)と、空気極23の厚み方向外側に位置するセパレータ25b(バイポーラプレート)とから形成されている。それらセパレータ25a,25bには、反応ガス(水素や酸素等)の供給流路が刻設されている(彫り込まれている)。
【0080】
セル20では、
図7に示すように、燃料極22や空気極23、固体高分子電解質膜24が厚み方向へ重なり合って一体化し、膜/電極接合体 (Membrane Electrode Assembly, MEA)を構成し、膜/電極接合体をそれらセパレータ25a,25bが挟み込んでいる。固体高分子電解質膜24と燃料極22(電極10A又は電極10B)及び空気極23(電極10A又は電極10B)とは、ホットプレスによって積層され@、固体高分子電解質膜24とアロイ粉体13とが隙間なく重なり合い、固体高分子電解質膜24とアロイ粉体13とが隙間なく密着し、又は、固体高分子電解質膜24とアロイ粉体積層ポーラス構造物17とが隙間なく重なり合い、固体高分子電解質膜24とアロイ粉体積層ポーラス構造物17とが隙間なく密着している。燃料電池21(固体高分子形燃料電池)では、複数のセル20(単セル)が一方向へ重なり合い、それらセル20が直列につながれてセルスタック(燃料電池スタック)を形成する。固体高分子電解質膜25は、プロトン導電性があり、電子導電性がない。
【0081】
燃料極22とセパレータ25aとの間には、ガス拡散層26aが形成され、空気極23とセパレータ25bとの間には、ガス拡散層26bが形成されている。燃料極22とセパレータ25aとの間であってガス拡散層26aの上部及び下部には、ガスシール27aが設置されている。空気極23とセパレータ25bとの間であってガス拡散層26bの上部及び下部には、ガスシール27bが設置されている。
【0082】
燃料電池21(固体高分子形燃料電池)では、
図8に示すように、燃料極22(電極10A又は電極10B)に水素(燃料)が供給され、空気極23(電極10A又は電極10B)に空気(酸素)が供給される。燃料極22では、水素がH
2→2H
++2e
-の反応(触媒作用)によってプロトン(水素イオン、H
+)と電子とに分解される。その後、プロトンが固体高分子電解質膜24内を通って空気極23に移動し、電子が導線28内を通って空気極23に移動する。固体高分子電解質膜24には、燃料極22で生成されたプロトンが通流する。空気極23では、固体高分子電解質膜24から移動したプロトンと導線28を移動した電子とが空気中の酸素と反応し、4H
++O
2+4e→2H
2Oの反応によって水が生成される。
【0083】
少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択され、選択された少なくとも3種類の遷移金属から作られたアロイ粉体13がカーボン電極板14の両面(前後面15,16)に担持され、アロイ粉体13やアロイ粉体積層ポーラス構造物17が燃料極22(電極10A又は電極10B)や空気極23(電極10A又は電極10B)を構成するから、燃料極22や空気極23が優れた触媒活性(触媒作用)を示し、水素がプロトンと電子とに効率よく分解される。
【0084】
起電圧試験では、水素ガスを注入してから15分の間、燃料極22と空気極23との間(電極10Aの間や電極10Bの間)の電圧(V)を測定した。
図9の起電圧試験の結果を示す図では、横軸に測定時間(min)を表し、縦軸に電極間の電圧(V)を表す。白金族元素を利用した(担持させた)電極(白金電極)を使用した固体高分子形燃料電池では、起電圧試験の結果を示す
図9から分かるように、燃料極と空気極との間の電圧が1.079(V)前後であった。それに対し、燃料極22(白金レスの電極10A,10B)及び空気極23(白金レスの電極10A,10B)を使用した固体高分子形燃料電池21では、燃料極22と空気極23との間の電圧(起電力)が1.01(V)~1.02(V)であった。
【0085】
I-V特性試験では、燃料極22と空気極23との間(電極10Aの間や電極10Bの間)に負荷29を接続し、電圧と電流との関係を測定した。
図10のI-V特性試験の結果を示す図では、横軸に電流(A)を表し、縦軸に電圧(V)を表す。燃料極22(白金レスの電極10A,10B)及び空気極23(白金レスの電極10A,10B)を使用した固体高分子形燃料電池21では、I-V特性試験の結果を示す
図10から分かるように、白金族元素を利用した(担持させた)電極(白金電極)を使用した固体高分子形燃料電池の電圧降下率と大差のない結果が得られた。
図9の起電圧試験の結果や
図10のI-V特性試験の結果に示すように、白金族元素を利用していない白金レスの燃料極22及び空気極23が電子を放出させて水素イオンとなる反応を促進させる優れた触媒作用を有するとともに、白金を利用した電極と略同様の酸素還元機能(触媒作用)を有することが確認された。
【0086】
図11は、電極10A,10Bを使用した水素ガス発生装置30の電気分解を説明する図である。電極10A,10Bを使用した水素ガス発生装置30の一例は、
図11に示すように、電極10A又は電極10Bを使用した陽極31(アノード)と、電極10A又は電極10Bを使用した陰極32(カソード)と、陽極31及び陰極32の間に介在する固体高分子電解質膜33(スルホン酸基を有するフッ素 系イオン交換膜)と、陽極給電部材34及び陰極給電部材35と、陽極用貯水槽36及び陰極用貯水槽37と、陽極主電極38及び陰極主電極39とから形成されている。水素ガス発生装置30は、陽極31及び陰極32に電気を通電し、陽極31で酸化反応を起こすとともに陰極32で還元反応を起こすことで水を化学分解する。
【0087】
水素ガス発生装置30では、陽極31や陰極32、固体高分子電解質膜33が厚み方向へ重なり合って一体化し、膜/電極接合体 (Membrane Electrode Assembly, MEA)を構成し、膜/電極接合体を陽極給電部材34と陰極給電部材35とが挟み込んでいる。固体高分子電解質膜33と陽極31(電極10A又は電極10B)及び陰極32(電極10A又は電極10B)とは、ホットプレスによって積層され、固体高分子電解質膜33とアロイ粉体13とが隙間なく重なり合い、又は、固体高分子電解質膜22とアロイ粉体積層ポーラス構造物17とが隙間なく重なり合っている。固体高分子電解質膜33は、プロトン導電性があり、電子導電性がない。
【0088】
陽極給電部材34は、陽極31の外側に位置して陽極31に密着し、陽極31に+の電流を給電する。陽極用貯水槽36は、陽極給電部材34の外側に位置して陽極給電部材34に密着している。陽極主電極38は、陽極用貯水槽36の外側に位置して陽極給電部材34に+の電流を給電する。陰極給電部材35は、陰極32の外側に位置して陰極32に密着し、陰極32に-の電流を給電する。陰極用貯水槽37は、陰極給電部材35の外側に位置して陰極給電部材35に密着している。陰極主電極39は、陰極用貯水槽37の外側に位置して陰極給電部材35に-の電流を給電する。
【0089】
水素ガス発生装置30における水の電気分解では、
図11に矢印で示すように、陽極用貯水槽36及び陰極用貯水槽37に水(H
2O)が給水され、陽極主電極38に電源から+の電流が給電されるとともに、陰極主電極39に電源から-の電流が給電される。陽極主電極38に給電された+の電流が陽極給電部材34から陽極31(アノード)に給電され、陰極主電極39に給電された-の電流が陰極給電部材35から陰極32(カソード)に給電される。
【0090】
陽極31(電極10A又は電極10B)では、2H2O→4H++4e-+O2の陽極反応(触媒作用)によって酸素が生成され、陰極32(電極10A又は電極10B)では、4H++4e-→2H2の陰極反応(触媒作用)によって水素が生成される。プロトン(水素イオン:H+)は、固体高分子電解質膜33内を通って陽極31から陰極32に移動する。固体高分子電解質膜33には、陽極31で生成されたプロトンが通流する。少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択され、選択された少なくとも3種類の遷移金属から作られたアロイ粉体13がカーボン電極板14の両面(前後面15,16)に担持され、アロイ粉体13やアロイ粉体積層ポーラス構造物17が陽極31(電極10A又は電極10B)や陰極32(電極10A又は電極10B)を構成するから、陽極31や陰極32が優れた触媒活性(触媒作用)を示し、水素ガス発生装置30において効率よく電気分解が行われ、短時間に多量の水素ガスが発生する。
【0091】
電極10Aは、それが各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属の粉体を均一に混合・分散した金属粉体混合物40を圧縮した後に焼成したアロイ成形物42を微粉砕したアロイ粉体13と、アロイ粉体13を両面(前後面15,16)に担持させた所定面積のカーボン電極板14とから形成され、選択された少なくとも3種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属が選択されているから、アロイ粉体13を有する電極10Aが白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池21や水素ガス発生装置30の電極10Aとして好適に使用することができる。
【0092】
電極10Aは、それが白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮するから、電極10Aを燃料電池21に使用することで、燃料電池21において十分な電気を発電することができ、燃料電池21に接続された負荷29に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極10Aを水素ガス発生装置30に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、水素ガス発生装置30において多量の水素ガスを発生させることができる。
【0093】
カーボン電極板14の厚み方向へ重なり合った(積層された)複数のアロイ粉体13によってカーボン電極板14の両面(前後面15,16)にアロイ粉体積層ポーラス構造物17が形成されている電極10Bは、カーボン電極板14の両面にアロイ粉体積層ポーラス構造物17を形成することで、アロイ粉体積層ポーラス構造物17(アロイ粉体13)の比表面積を大きくすることができ、アロイ粉体13の触媒作用を十分に利用することができるとともに、アロイ粉体積層ポーラス構造物17を有する電極10Bが白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池21や水素ガス発生装置30の電極10Bとして好適に使用することができる。
【0094】
電極10Bは、アロイ粉体積層ポーラス構造物17を形成した電極10Bが白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮するから、電極10Bを燃料電池21に使用することで、燃料電池21において十分な電気を発電することができ、燃料電池21に接続された負荷29に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極10Bを水素ガス発生装置30に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、水素ガス発生装置30において多量の水素ガスを発生させることができる。電極10Aや電極10Bは、アロイ粉体13やアロイ粉体積層ポーラス構造物17が各種の遷移金属から選択された少なくとも3種類の遷移金属から形成され、高価な白金族元素が利用されていない白金レスであり、それら電極10A,10Bを廉価に作ることができる。
【0095】
金属粉体混合物40(アロイ粉体13やアロイ粉体積層ポーラス構造物17)がNi(ニッケル)の粉体を主成分とした電極10Aや電極10Bは、Niの仕事関数とNiを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているから、アロイ粉体13又はアロイ粉体積層ポーラス構造物17を有する電極10A,10Bが白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池21や水素ガス発生装置30の電極10A,10Bとして好適に使用することができる。
【0096】
金属粉体混合物40(アロイ粉体13やアロイ粉体積層ポーラス構造物17)がNi(ニッケル)の粉体を主成分とした電極10Aや電極10Bは、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮するから、電極10Aや電極10Bを燃料電池21に使用することで、燃料電池21において十分な電気を発電することができ、燃料電池21に接続された負荷29に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極10Aや電極10Bを水素ガス発生装置30に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、水素ガス発生装置30において多量の水素ガスを発生させることができる。電極10Aや電極10Bは、アロイ粉体13又はアロイ粉体積層ポーラス構造物17がNiの粉体と各種の遷移金属から選択されたNiの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とから形成され、高価な白金族元素が利用されていない白金レスであり、電極10A,10Bを廉価に作ることができる。
【0097】
金属粉体混合物40(アロイ粉体13やアロイ粉体積層ポーラス構造物17)がFe(鉄)の粉体を主成分とした電極10Aや電極10Bは、Feの仕事関数とFeを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているから、アロイ粉体13又はアロイ粉体積層ポーラス構造物17を有する電極10A,10Bが白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池21や水素ガス発生装置30の電極10A,10Bとして好適に使用することができる。
【0098】
金属粉体混合物40(アロイ粉体13やアロイ粉体積層ポーラス構造物17)がFe(鉄)の粉体を主成分とした電極10Aや電極10Bは、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮するから、電極10Aや電極10Bを燃料電池21に使用することで、燃料電池21において十分な電気を発電することができ、燃料電池21に接続された負荷29に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極10Aや電極10Bを水素ガス発生装置30に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、水素ガス発生装置30において多量の水素ガスを発生させることができる。電極10Aや電極10Bは、アロイ粉体13又はアロイ粉体積層ポーラス構造物17がFeの粉体と各種の遷移金属から選択されたFeの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とから形成され、高価な白金族元素が利用されていない白金レスであり、電極10A,10Bを廉価に作ることができる。
【0099】
金属粉体混合物40(アロイ粉体13やアロイ粉体積層ポーラス構造物17)がCu(銅)の粉体を主成分とした電極10Aや電極10Bは、Cuの仕事関数とCuを除く他の少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数との合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中からCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体が選択されているから、アロイ粉体13又はアロイ粉体積層ポーラス構造物17を有する電極10A,10Bが白金族元素を含む電極と略同一の仕事関数を備え、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、燃料電池21や水素ガス発生装置30の電極10A,10Bとして好適に使用することができる。
【0100】
金属粉体混合物40(アロイ粉体13やアロイ粉体積層ポーラス構造物17)がCu(銅)の粉体を主成分とした電極10Aや電極10Bは、白金族元素を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮するから、電極10Aや電極10Bを燃料電池21に使用することで、燃料電池21において十分な電気を発電することができ、燃料電池21に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができるとともに、電極10Aや電極10Bを水素ガス発生装置30に使用することで、電気分解を効率よく行うことができ、水素ガス発生装置30において多量の水素ガスを発生させることができる。電極10Aや電極10Bは、アロイ粉体13又はアロイ粉体積層ポーラス構造物17がCuの粉体と各種の遷移金属から選択されたCuの粉体を除く他の少なくとも2種類の遷移金属の粉体とから形成され、高価な白金族元素が利用されていない白金レスであり、電極10A,10Bを廉価に作ることができる。
【0101】
図12は、電極10A,10Bの製造方法を説明する図である。電極10Aや電極10Bは、
図11に示すように、遷移金属選択工程S1、金属粉体混合物作成工程S2、金属粉体圧縮物作成工程S3、アロイ成形物作成工程S4、アロイ粉体作成工程S5、アロイ粉体担持工程S6を有する電極製造方法によって製造される。
【0102】
遷移金属選択工程S1では、各種の遷移金属41から選択する少なくとも3種類の遷移金属41の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも3種類の遷移金属41(Ti(チタン)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Ag(銀))を選択する。
【0103】
遷移金属選択工程S1において、既述のように、Ni(ニッケル)を主成分とした金属粉体混合物40(アロイ粉体13やアロイ粉体積層ポーラス構造物17)では、Cu(銅)及びZN(亜鉛)を選択し、又は、Mn(マンガン)及びMo(モリブデン)を選択する。Fe(鉄)を主成分とした金属粉体混合物40(アロイ粉体13やアロイ粉体積層ポーラス構造物17)では、Ni(ニッケル)及びCu(銅)を選択し、又は、Ti(チタン)及びAg(銀)を選択する。Cu(銅)を主成分とした金属粉体混合物40(アロイ粉体13やアロイ粉体積層ポーラス構造物17)では、Fe(鉄)及びZn(亜鉛)を選択し、又は、Fe(鉄)及びAg(銀)を選択する。
【0104】
金属粉体混合物作成工程S2では、遷移金属選択工程S1によって選択された少なくとも3種類の遷移金属41の粉体42を均一に混合・分散した金属粉体混合物40を作る。金属粉体混合物作成工程において、Ni(ニッケル)を主成分とした金属粉体混合物40(アロイ粉体13やアロイ粉体積層ポーラス構造物17)では、遷移金属選択工程S1によって選択されたNi、Cu(銅)、ZN(亜鉛)のそれぞれを微粉砕機によって10μm~200μmの粒径に微粉砕してNiの粉体42、Cuの粉体42、Znの粉体42を作成する。次に、Niの粉体42やCuの粉体42、Znの粉体42を混合機に投入して混合機によってNiの粉体42、Cuの粉体42、Znの粉体42を攪拌・混合し、Niの粉体42、Cuの粉体42、Znの粉体42が均一に混合・分散した金属粉体混合物40を作る。
【0105】
又は、遷移金属選択工程S1によって選択されたNi(ニッケル)、Mn(マンガン)、Mo(モリブデン)のそれぞれを微粉砕機によって10μm~200μmの粒径に微粉砕してNiの粉体42、Mnの粉体42、Moの粉体42を作成する。次に、Niの粉体42やMnの粉体42、Moの粉体42を混合機に投入して混合機によってNiの粉体42、Mnの粉体42、Moの粉体42を攪拌・混合し、Niの粉体42、Mnの粉体42、Moの粉体42が均一に混合・分散した金属粉体混合物40を作る。
【0106】
金属粉体混合物作成工程S2において、Fe(鉄)を主成分とした金属粉体混合物40(アロイ粉体13やアロイ粉体積層ポーラス構造物17)では、遷移金属選択工程S1によって選択されたFe、Ni(ニッケル)、Cu(銅)のそれぞれを微粉砕機によって10μm~200μmの粒径に微粉砕してFeの粉体42、Niの粉体42、Cuの粉体42を作成する。次に、Feの粉体42やNiの粉体42、Cuの粉体42を混合機に投入して混合機によってFeの粉体42、Niの粉体42、Cuの粉体42を攪拌・混合し、Feの粉体42、Niの粉体42、Cuの粉体42が均一に混合・分散した金属粉体混合物30を作る。
【0107】
又は、遷移金属選択工程S1によって選択されたFe(鉄)、Ti(チタン)、Ag(銀)のそれぞれを微粉砕機によって10μm~200μmの粒径に微粉砕してFeの粉体42、Tiの粉体42、Agの粉体42を作成する。次に、Feの粉体42やTiの粉体42、Agの粉体42を混合機に投入して混合機によってFeの粉体42、Tiの粉体42、Agの粉体42を攪拌・混合し、Feの粉体42、Tiの粉体42、Agの粉体42が均一に混合・分散した金属粉体混合物40を作る。
【0108】
金属粉体混合物作成工程S2において、Cu(銅)を主成分とした金属粉体混合物40(アロイ粉体13やアロイ粉体積層ポーラス構造物17)では、遷移金属選択工程S1によって選択されたCu、Fe(鉄)、Zn(亜鉛)のそれぞれを微粉砕機によって10μm~200μmの粒径に微粉砕してCuの粉体42、Feの粉体42、Znの粉体42を作成する。次に、Cuの粉体42やFeの粉体42、Znの粉体42を混合機に投入して混合機によってCuの粉体42、Feの粉体42、Znの粉体42を攪拌・混合し、Cuの粉体42、Feの粉体42、Znの粉体42が均一に混合・分散した金属粉体混合物40を作る。
【0109】
又は、遷移金属選択工程S1によって選択されたCu(銅)、Fe(鉄)、Ag(銀)のそれぞれを微粉砕機によって10μm~200μmの粒径に微粉砕してCuの粉体42、Feの粉体42、Agの粉体42を作成する。次に、Cuの粉体42やFeの粉体42、Agの粉体42を混合機に投入して混合機によってCuの粉体42、Feの粉体42、Agの粉体42を攪拌・混合し、Cuの粉体42、Feの粉体42、Agの粉体42が均一に混合・分散した金属粉体混合物40を作る。
【0110】
金属粉体圧縮物作成工程S3では、金属粉体混合物作成工程S2によって作られた金属粉体混合物40を所定圧力で加圧し、金属粉体混合物40を圧縮した所定面積及び所定厚みの金属粉体圧縮物43を作る。金属粉体圧縮物作成工程S3では、金属粉体混合物40を所定の金型に入れ、金型をプレス機によって加圧(プレス)するプレス加工によって金属粉体圧縮物43を作る。プレス加工時におけるプレス圧(圧力)は、500Mpa~800Mpaの範囲にある。
【0111】
プレス圧(圧力)が500Mpa未満では、金属粉体混合物40を十分に圧縮することができず、所定面積及び所定厚みの金属粉体圧縮物43を作ることができない。プレス圧(圧力)が800Mpaを超過すると、アロイ成形物作成工程S4によって作られるアロイ成形物44の硬度が必要以上に高くなり、アロイ粉体作成工程S5によって所期する粒径のアロイ粉体13を作ることができない。電極製造方法は、金属粉体混合物40を前記範囲の圧力で加圧(圧縮)することで、所定硬度の金属粉体圧縮物43を作ることができ、その金属粉体圧縮物43を焼成して所定硬度のアロイ成形物44を作ることができるとともに、アロイ成形物44を微粉砕した所定粒径のアロイ粉体13を作ることができる。
【0112】
金属粉体圧縮物作成工程S3において、Ni(ニッケル)を主成分とした金属粉体圧縮物41では、Niの粉体42、Cu(銅)の粉体42、ZN(亜鉛)粉体42を混合した金属粉体混合物40の所定量を金型に投入し、その金属粉体混合物40をプレス加工によって加圧して金属粉体混合物40を圧縮した所定面積及び所定厚みの金属粉体圧縮物43を作る。又は、Niの粉体42、Mn(マンガン)の粉体42、Mo(モリブデン)の粉体42を混合した金属粉体混合物40の所定量を金型に投入し、その金属粉体混合物40をプレス加工によって加圧して金属粉体混合物40を圧縮した所定面積及び所定厚みの金属粉体圧縮物43を作る。
【0113】
金属粉体圧縮物作成工程S3において、Fe(鉄)を主成分とした金属粉体圧縮物41では、Feの粉体42、Ni(ニッケル)の粉体42、Cu(銅)の粉体42を混合した金属粉体混合物40の所定量を金型に投入し、その金属粉体混合物40をプレス加工によって加圧して金属粉体混合物40を圧縮した所定面積及び所定厚みの金属粉体圧縮物43を作る。又は、Feの粉体42、Ti(チタン)の粉体42、Ag(銀)の粉体42を混合した金属粉体混合物40の所定量を金型に投入し、その金属粉体混合物40をプレス加工によって加圧して金属粉体混合物40を圧縮した所定面積及び所定厚みの金属粉体圧縮物43を作る。
【0114】
金属粉体圧縮物作成工程S3において、Cu(銅)を主成分とした金属粉体圧縮物41では、Cuの粉体42、Fe(鉄)の粉体42、Zn(亜鉛)の粉体42を混合した金属粉体混合物40の所定量を金型に投入し、その金属粉体混合物40をプレス加工によって加圧(圧縮)して金属粉体混合物40を圧縮した所定面積及び所定厚みの金属粉体圧縮物43を作る。又は、Cuの粉体42、Fe(鉄)の粉体42、Ag(銀)の粉体42を混合した金属粉体混合物40の所定量を金型に投入し、その金属粉体混合物40をプレス加工によって加圧して金属粉体混合物40を圧縮した所定面積及び所定厚みの金属粉体圧縮物43を作る。
【0115】
アロイ成形物作成工程S4では、金属粉体圧縮物作成工程S3によって作られた金属粉体圧縮物43を炉(蒸気過熱炉や電気炉等)に投入し、金属粉体圧縮物43を炉において所定温度で焼成(焼結)し、開口径が1μm~100μmの範囲の多数の微細な流路(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ成形物44を作る。アロイ成形物作成工程S4では、遷移金属選択工程S1によって選択された少なくとも3種類の遷移金属41うちの少なくとも2種類の遷移金属41を溶融させる温度で金属粉体圧縮物43を長時間焼成する。焼成(焼結)時間は、3時間~6時間である。アロイ成形物作成工程S4では、所定面積及び所定厚みに圧縮された金属粉体圧縮物43の焼成時において、少なくとも2種類の遷移金属41の粉体42が溶融し、溶融した遷移金属41をバインダーとして他の遷移金属41の粉体42を接合(固着)する。
【0116】
アロイ成形物作成工程S4において、Ni(ニッケル)を主成分とした金属粉体圧縮物41では、Niの粉体42、Cu(銅)の粉体42、ZN(亜鉛)粉体42を混合した金属粉体混合物40を圧縮した金属粉体圧縮物43を炉において長時間焼成し、開口径が1μm~100μmの範囲の多数の微細な流路(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ成形物44を作る。Niの粉体42、Cuの粉体42、Znの粉体42から形成されたアロイ成形物44では、Zn及びCuの粉体42を溶融させる温度(例えば、1100℃~1200℃)で金属粉体圧縮物43を焼成(焼結)し、溶融したZn及びCuの粉体42によってNiの粉体42が接合(固着)される。
【0117】
また、アロイ成形物作成工程S4において、Ni(ニッケル)を主成分とした金属粉体圧縮物43では、Niの粉体42、Mn(マンガン)の粉体42、Mo(モリブデン)の粉体42を混合した金属粉体混合物40を圧縮した金属粉体圧縮物43を炉において長時間焼成し、開口径が1μm~100μmの範囲の多数の微細な流路(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ成形物44を作る。Niの粉体42、Mnの粉体42、Moの粉体42から形成されたアロイ成形物44では、Mn及びNiの粉体42を溶融させる温度(例えば、1460℃~1500℃)で金属粉体圧縮物43を焼成し、溶融したMn及びNiの粉体42によってMoの粉体42が接合(固着)される。
【0118】
アロイ成形物作成工程S4において、Fe(鉄)を主成分とした金属粉体圧縮物41では、Feの粉体42、Ni(ニッケル)の粉体42、Cu(銅)の粉体42を混合した金属粉体混合物40を圧縮した金属粉体圧縮物43を炉において長時間焼成し、開口径が1μm~100μmの範囲の多数の微細な流路(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ成形物44を作る。Feの粉体42、Niの粉体42、Cuの粉体42から形成されたアロイ成形物44では、Cu及びNiの粉体42を溶融させる温度(例えば、1460℃~1500℃)で金属粉体圧縮物43を焼成し、溶融したCu及びNiの粉体42によってFeの粉体42が接合(固着)される。
【0119】
また、アロイ成形物作成工程S4において、Fe(鉄)を主成分とした金属粉体圧縮物41では、Feの粉体42、Ti(チタン)の粉体42、Ag(銀)の粉体42を混合した金属粉体混合物40を圧縮した金属粉体圧縮物43を炉において長時間焼成し、開口径が1μm~100μmの範囲の多数の微細な流路(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ成形物44を作る。Feの粉体42、Tiの粉体42、Agの粉体42から形成されたアロイ成形物44では、Ag及びFeの粉体42を溶融させる温度(例えば、1540℃~1600℃)で金属粉体圧縮物43を焼成し、溶融したAg及びFeの粉体42によってTiの粉体42が接合(固着)される。
【0120】
アロイ成形物作成工程S4において、Cu(銅)を主成分とした金属粉体圧縮物41では、Cuの粉体42、Fe(鉄)の粉体42、Zn(亜鉛)の粉体42を混合した金属粉体混合物40を圧縮した金属粉体圧縮物43を炉において長時間焼成し、開口径が1μm~100μmの範囲の多数の微細な流路(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ成形物44を作る。Cuの粉体42、Feの粉体42、Znの粉体42から形成されたアロイ成形物44では、Zn及びCuの粉体42を溶融させる温度(例えば、1090℃~1200℃)で金属粉体圧縮物43を焼成し、溶融したZn及びCuの粉体42によってFeの粉体42が接合(固着)される。
【0121】
また、アロイ成形物作成工程S4において、Cu(銅)を主成分とした金属粉体圧縮物41では、Cuの粉体42、Fe(鉄)の粉体42、Ag(銀)の粉体42を混合した金属粉体混合物40を圧縮した金属粉体圧縮物43を炉において長時間焼成し、開口径が1μm~100μmの範囲の多数の微細な流路(通路孔)を形成したポーラス構造のアロイ成形物44を作る。Cuの粉体42、Feの粉体42、Agの粉体42から形成されたアロイ成形物44では、Ag及びCuの粉体42を溶融させる温度(例えば、1090℃~1200℃)で金属粉体圧縮物43を焼成し、溶融したAg及びCuの粉体42によってFeの粉体42が接合(固着)される。
【0122】
アロイ粉体作成工程S5では、アロイ成形物作成工程S4によって作られたアロイ成形物44を微粉砕機によって10μm~200μmの粒径に微粉砕してアロイ粉体13を作る。Ni(ニッケル)を主成分としたアロイ粉体13(Niを主成分とした合金粉体)の一例としては、Niの粉体42、Cuの粉体42、ZNの粉体42を均一に混合・分散した金属粉体混合物40を圧縮した金属粉体圧縮物43を焼成してアロイ成形物44を作り、そのアロイ成形物44を微粉砕機によって10μm~200μmの粒径に微粉砕した微粉砕物である。Ni(ニッケル)を主成分としたアロイ粉体13の他の一例としては、Niの粉体42、Mnの粉体42、Moの粉体42を均一に混合・分散した金属粉体混合物40を圧縮した金属粉体圧縮物43を焼成してアロイ成形物44を作り、そのアロイ成形物44を微粉砕機によって10μm~200μmの粒径に微粉砕した微粉砕物である。
【0123】
Fe(鉄)を主成分としたアロイ粉体13(Feを主成分とした合金粉体)の一例としては、Feの粉体42、Niの粉体42、Cuの粉体42を均一に混合・分散した金属粉体混合物40を圧縮した金属粉体圧縮物43を焼成してアロイ成形物44を作り、そのアロイ成形物44を微粉砕機によって10μm~200μmの粒径に微粉砕した微粉砕物である。Fe(鉄)を主成分としたアロイ粉体13の他の一例としては、Feの粉体42、Tiの粉体42、Agの粉体42を均一に混合・分散した金属粉体混合物40を圧縮した金属粉体圧縮物43を焼成してアロイ成形物44を作り、そのアロイ成形物44を微粉砕機によって10μm~200μmの粒径に微粉砕した微粉砕物である。
【0124】
Cu(銅)を主成分としたアロイ粉体13(Cuを主成分とした合金粉体)の一例としては、Cuの粉体42、Feの粉体42、Znの粉体42を均一に混合・分散した金属粉体混合物40を圧縮した金属粉体圧縮物43を焼成してアロイ成形物44を作り、そのアロイ成形物44を微粉砕機によって10μm~200μmの粒径に微粉砕した微粉砕物である。Cu(銅)を主成分としたアロイ粉体13の他の一例としては、Cuの粉体42、Feの粉体42、Agの粉体42を均一に混合・分散した金属粉体混合物40を圧縮した金属粉体圧縮物43を焼成してアロイ成形物44を作り、そのアロイ成形物44を微粉砕機によって10μm~200μmの粒径に微粉砕した微粉砕物である。
【0125】
アロイ粉体担持工程S6では、アロイ粉体作成工程S5によって作られた複数のアロイ粉体13を所定面積及び0.03mm~0.3mmの厚み寸法L1のカーボン電極板14の前面15の全域と後面16の全域(両面の全域)とに担持させる。また、アロイ粉体担持工程S6では、複数のアロイ粉体13をカーボン電極板14の厚み方向へ重なり合うように(積層するように)、それらアロイ粉体13を所定面積及び0.03mm~0.3mmの厚み寸法L1のカーボン電極板14の前面15の全域と後面16の全域(両面の全域)とに担持させ、カーボン電極板14の厚み方向へ重なり合う(積層した)複数のアロイ粉体13によって既述のアロイ粉体積層ポーラス構造物17を形成する。アロイ粉体担持工程S6では、アロイ粉体13をカーボン電極板14の両面に導電性バインダー(導電性結合材)やプラズマ溶射によって担持する。
【0126】
電極製造方法は、各種の遷移金属41から選択する少なくとも3種類の遷移金属41の仕事関数の合成仕事関数が白金族元素の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属41の中から少なくとも3種類の遷移金属41を選択する遷移金属選択工程S1と、遷移金属選択工程S1によって選択された少なくとも3種類の遷移金属41の粉体42を均一に混合・分散した金属粉体混合物40を作る金属粉体混合物作成工程S2と、金属粉体混合物作成工程S2によって作られた金属粉体混合物40を所定圧力で加圧して金属粉体圧縮物43を作る金属粉体圧縮物作成工程S3と、金属粉体圧縮物作成工程S3によって作られた金属粉体圧縮物43を所定温度で焼成してアロイ成形物44を作るアロイ成形物作成工程S4と、アロイ成形物作成工程S4によって作られたアロイ成形物44を微粉砕してアロイ粉体13を作るアロイ粉体作成工程S5と、アロイ粉体作成工程S5によって作られたアロイ粉体13を所定面積のカーボン電極板14の両面(前後面15,16)に担持させるアロイ粉体担持工程S6との各工程によって電極10A又は電極10Bを製造するから、白金族元素を利用しない白金レスの電極10A,10Bを廉価に作ることができ、触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有して燃料電池21や水素ガス発生装置30に好適に使用することが可能な電極10A,10Bを作ることができる。
【0127】
電極製造方法は、厚み寸法L1が0.03mm~0.3mmの範囲のカーボン電極板14の前面15の全域と後面16の全域とにアロイ粉体13を担持させ、複数のアロイ粉体13を備えた電極10A又は複数のアロイ粉体13が重なり合ったアロイ粉体積層ポーラス構造物17が形成された電極10Bを作ることができるから、電極10A,10Bの電気抵抗を低くすることができ、電極10A,10Bに電流がスムースに流れ、燃料電池21において十分な電気を発電することが可能であって燃料電池21に接続された負荷29に十分な電気エネルギーを供給することが可能な電極10Aや電極10Bを作ることができるとともに、水素ガス発生装置30において電気分解を効率よく行うことができ、水素ガス発生装置30において短時間に多量の水素ガスを発生させることが可能な電極10Aや電極10Bを作ることができる。
【符号の説明】
【0128】
10A 電極
10B 電極
11 前面
12 後面
13 アロイ粉体(合金粉体)
14 カーボン電極板
15 前面
16 後面
17 アロイ粉体積層ポーラス構造物
18 流路
19 通流口
20 セル
21 燃料電池
22 燃料極
23 空気極
24 固体高分子電解質膜(スルホン酸基を有するフッ素系イオン交換膜)
25a セパレータ(バイポーラプレート)
25b セパレータ(バイポーラプレート)
26a ガス拡散層
26b ガス拡散層
27a ガスシール
27b ガスシール
28 導線
29 負荷
30 水素ガス発生装置
31 陽極
32 陰極
33 固体高分子電解質膜(スルホン酸基を有するフッ素系イオン交換膜)
34 陽極給電部材
35 陰極給電部材
36 陽極用貯水槽
37 陰極用貯水槽
38 陽極主電極
39 陰極主電極
40 金属粉体混合物
41 遷移金属
42 粉体
43 金属粉体圧縮物
44 アロイ成形物(合金成形物)