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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】複数レーン・シリアライザ装置
(51)【国際特許分類】
   H03M 9/00 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
H03M9/00 200
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018141409
(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公開番号】P2020017918
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】399011195
【氏名又は名称】ザインエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100110582
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 昌聰
(72)【発明者】
【氏名】三浦 賢
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悠介
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/119488(WO,A1)
【文献】特開2012-039448(JP,A)
【文献】特開2011-066621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 9/00
H04L 25/02
H04L 7/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々、第1クロックに同期して入力されるパラレルデータをシリアライズしてシリアルデータに変換し、前記シリアルデータを第2クロックに同期して出力する複数のシリアライザ回路と、
前記複数のシリアライザ回路の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記複数のシリアライザ回路それぞれは、
前記第1クロックと同周期のロード信号が指示するタイミングで前記パラレルデータをラッチして、そのラッチしたデータを前記第2クロックに同期して前記シリアルデータとして出力する変換部と、
前記第2クロックに基づいて前記ロード信号を生成し、リセット指示信号を受けてロード信号生成動作をリセットするロード信号生成部と、
前記ロード信号と前記第1クロックとの間の位相差を検出し、その検出した位相差が異常である場合に異常検知信号を前記制御部へ出力する位相差検出部と、
前記制御部から出力された一括リセット指示信号を受け取ると、前記リセット指示信号を生成して前記ロード信号生成部へ与えるリセット信号生成部と、
を含み、
前記制御部は、前記複数のシリアライザ回路のうちの何れかのシリアライザ回路の前記位相差検出部から前記異常検知信号を受け取ると、前記複数のシリアライザ回路それぞれの前記リセット信号生成部に対して前記一括リセット指示信号を与える、
複数レーン・シリアライザ装置。
【請求項2】
前記複数のシリアライザ回路それぞれは、入力される前記パラレルデータを、前記第1クロックが指示するタイミングでラッチするラッチ部を更に含み、
前記複数のシリアライザ回路それぞれにおいて、前記変換部は、前記ラッチ部によりラッチされて出力されるパラレルデータを、前記ロード信号が指示するタイミングでラッチする、
請求項1に記載の複数レーン・シリアライザ装置。
【請求項3】
前記複数のシリアライザ回路それぞれは、
入力される前記パラレルデータを、前記第1クロックが指示するタイミングでラッチする第1ラッチ部と、
前記第1ラッチ部によりラッチされて出力されるパラレルデータを、前記第1クロックと同周期の第3クロックが指示するタイミングでラッチする第2ラッチ部と、
を更に含み、
前記複数のシリアライザ回路それぞれにおいて、前記変換部は、前記第2ラッチ部によりラッチされて出力されるパラレルデータを、前記ロード信号が指示するタイミングでラッチする、
請求項1に記載の複数レーン・シリアライザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数レーンのシリアライザ回路を備える複数レーン・シリアライザ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリアライザ回路は、第1クロックに同期して入力されるパラレルデータをシリアライズして、当該シリアルデータを第2クロックに同期して出力する。シリアライザ回路は、第1クロックと同周期のロード信号が指示するタイミングでパラレルデータをラッチして、そのラッチしたデータを第2クロックに同期してシリアルデータとして出力する。第2クロックの周期は第1クロックの周期より短い。ロード信号は、第1クロックと同周期であり、第2クロックに基づいて生成される(特許文献1参照)。
【0003】
シリアライザ回路において、パラレルデータを確実にラッチすることができるように、ラッチ動作の際のセットアップ・タイムおよびホールド・タイムそれぞれのマージンに応じて、第1クロックとロード信号との間の位相差は適正範囲内に設定されることが重要である。
【0004】
ノイズに因る誤動作や温度変化によって第1クロックとロード信号との間の位相差が適正範囲から外れると、シリアライザ回路から出力されるシリアルデータにエラーが生じる。シリアライザ回路から出力されるシリアルデータを受信する受信装置により、その受信したデータのビットエラーレートが大きいことが検出されると、その旨が受信装置から送信側のシリアライザ回路へ通知される。そして、その通知を受けたシリアライザ回路において、第1クロックとロード信号との間の位相差が適正範囲内に回復するようにロード信号生成動作がリセットされる。
【0005】
しかし、ビットエラーレートが大きい旨を受信装置から送信側のシリアライザ回路へ通知するシステム構成は、双方向通信を前提とするものであり、また、受信側から送信側のシリアライザ回路への通信が高速であることを前提とするものである。
【0006】
受信側から送信側への通信線が存在しない場合には、ビットエラーレートが大きい旨を受信装置から送信側のシリアライザ回路へ通知することができず、シリアライザ回路において第1クロックとロード信号との間の位相差を適正範囲内に回復させることができない。
【0007】
受信側から送信側への通信線が存在していても該通信線が簡易なものであって低速である場合には、ビットエラーレートが大きい旨を受信装置から送信側のシリアライザ回路へ通知するのに長時間を要し、シリアライザ回路において第1クロックとロード信号との間の位相差を適正範囲内に回復させる迄に長時間を要するので、長時間に亘ってビットエラーレートが大きい状態が続くことになる。
【0008】
このような問題を解消することを意図した発明が特許文献2,3に開示されている。これらの文献に記載されたシリアライザ回路は、第1クロックとロード信号との間の位相差を検出して、その検出した位相差が適正範囲から外れている場合に、ロード信号を生成するロード信号生成部の動作をリセットし又は一時停止させる。このようにすることで、シリアライザ回路は、第1クロックとロード信号との間の位相差を適正範囲内に回復させることができ、簡易な構成で早期にビットエラーレートを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第7746251号明細書
【文献】特開2017-123607号公報
【文献】特開平6-244739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、本発明者の知見によれば、複数レーンのシリアライザ回路を備える複数レーン・シリアライザ装置において、各シリアライザ回路を特許文献2,3に開示された発明の構成とすると、次のような問題が生じる場合がある。すなわち、レーン間スキューにより、各シリアライザ回路への第1クロックの入力タイミングが互いに僅かに異なる。したがって、各シリアライザ回路において個々に必要時にロード信号生成動作のリセットまたは一時停止を行うと、複数レーンのシリアライザ回路の間でシリアルデータの出力タイミングが大きく異なってしまう場合がある。その結果、複数レーンのシリアライザ回路それぞれから出力されるシリアルデータの間でInter Pair Skew(IPS)に対する要求仕様が満たされない場合がある。IPSは、複数レーンのシリアライザ回路の間のシリアルデータの出力タイミングの差をシリアルデータのビット数で表したものである。
【0011】
複数レーンのシリアライザ回路の間でIPSがある場合であっても、FIFO(First-In First-Out)メモリを用いることで、IPSの問題に対処することができる。しかし、高速化に応じて、大容量のFIFOが必要になることから、FIFOの消費電力が増大し、FIFOのレイアウト面積が大きくなり、また、FIFOによる遅延が大きくなる。したがって、複数レーンのシリアライザ回路の間のIPSを小さくすることが望まれる。
【0012】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、各シリアライザ回路において簡易な構成で早期にビットエラーレートを低減することができるとともに、複数レーンのシリアライザ回路の間のIPSを小さくすることができる複数レーン・シリアライザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の複数レーン・シリアライザ装置は、(1) 各々、第1クロックに同期して入力されるパラレルデータをシリアライズして、当該シリアルデータを第2クロックに同期して出力する複数のシリアライザ回路と、(2) 複数のシリアライザ回路の動作を制御する制御部と、を備える。複数のシリアライザ回路それぞれは、(a) 第1クロックと同周期のロード信号が指示するタイミングでパラレルデータをラッチして、そのラッチしたデータを第2クロックに同期してシリアルデータとして出力する変換部と、(b) 第2クロックに基づいてロード信号を生成し、リセット指示信号を受けてロード信号生成動作をリセットするロード信号生成部と、(c) ロード信号と第1クロックとの間の位相差を検出し、その検出した位相差が異常である場合に異常検知信号を制御部へ出力する位相差検出部と、(d) 制御部から出力された一括リセット指示信号を受け取ると、リセット指示信号を生成してロード信号生成部へ与えるリセット信号生成部と、を含む。制御部は、複数のシリアライザ回路のうちの何れかのシリアライザ回路の位相差検出部から異常検知信号を受け取ると、複数のシリアライザ回路それぞれのリセット信号生成部に対して一括リセット指示信号を与える。
【0014】
本発明において、複数のシリアライザ回路それぞれは、(e) 入力されるパラレルデータを、第1クロックが指示するタイミングでラッチするラッチ部を更に含むのが好適である。この場合、複数のシリアライザ回路それぞれにおいて、変換部は、ラッチ部によりラッチされて出力されるパラレルデータを、ロード信号が指示するタイミングでラッチする。
【0015】
複数のシリアライザ回路それぞれは、(f) 入力されるパラレルデータを、第1クロックが指示するタイミングでラッチする第1ラッチ部と、(g) 第1ラッチ部によりラッチされて出力されるパラレルデータを、第1クロックと同周期の第3クロックが指示するタイミングでラッチする第2ラッチ部と、を更に含むのが好適である。この場合、複数のシリアライザ回路それぞれにおいて、変換部は、第2ラッチ部によりラッチされて出力されるパラレルデータを、ロード信号が指示するタイミングでラッチする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、各シリアライザ回路において簡易な構成で早期にビットエラーレートを低減することができるとともに、複数レーンのシリアライザ回路の間のIPSを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、複数レーン・シリアライザ装置1の構成を示す図である。
図2図2は、シリアライザ回路の構成例を示す図である。
図3図3は、シリアライザ回路の構成例を示す図である。
図4図4は、シリアライザ回路の動作を説明するタイミングチャートである。
図5図5は、シリアライザ回路の動作を説明するタイミングチャートである。
図6図6は、複数レーンのシリアライザ回路を備える複数レーン・シリアライザ装置の動作の問題を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0019】
図1は、複数レーン・シリアライザ装置1の構成を示す図である。複数レーン・シリアライザ装置1は、複数のシリアライザ回路10~10および制御部20を備える。各シリアライザ回路10は、第1クロックCLK1に同期して入力されるパラレルデータPar_Dataをシリアライズして、当該シリアルデータSer_Dataを第2クロックCLK2に同期して出力する。Nは2以上の整数であり、nは1以上N以下の各整数である。各シリアライザ回路10は、異常検知信号を制御部20へ送ることができる。制御部20は、N個のシリアライザ回路10~10のちの何れかのシリアライザ回路から異常検知信号を受け取ると、N個のシリアライザ回路10~10それぞれへ一括リセット指示信号を送る。
【0020】
図2は、シリアライザ回路の構成例を示す図である。この図に示されるシリアライザ回路10Aは、図1中の各シリアライザ回路10として用いられるものである。シリアライザ回路10Aは、第1クロックCLK1に同期して入力されるパラレルデータPar_Dataをシリアライズして、当該シリアルデータSer_Dataを第2クロックCLK2に同期して出力する。第2クロックCLK2の周期は第1クロックCLK1の周期より短い。シリアライザ回路10Aは、ラッチ部11、変換部14、ロード信号生成部15A、位相差検出部16およびリセット信号生成部17を含む。
【0021】
ラッチ部11は、入力されるパラレルデータPar_Dataを、第1クロックCLK1が指示するタイミングでラッチする。ラッチ部11は、例えば、パラレルデータPar_Dataのビット数またはそれ以上の個数のフリップフロップが並列的に配置された構成とすることができる。
【0022】
変換部14は、パラレルデータをシリアルデータに変換する。変換部14は、ラッチ部11によりラッチされて出力されるパラレルデータを、ロード信号Loadが指示するタイミングでラッチして、そのラッチしたデータを第2クロックCLK2に同期してシリアルデータSer_Dataとして出力する。ロード信号Loadは第1クロックCLK1と同周期である。変換部14は、例えば、複数のフリップフロップが直列的に接続されたシフトレジスタを含む構成とし、ロード信号Loadの指示によりパラレルデータをシフトレジスタの各フリップフロップでラッチし、第2クロックCLK2の指示によりシフトレジスタをシフト動作させてシリアルデータSer_Dataを出力することができる。
【0023】
ロード信号生成部15Aは、第2クロックCLK2に基づいてロード信号Loadを生成する。また、ロード信号生成部15Aは、リセット指示信号RSTnの指示によりロード信号生成動作をリセットすることができる。ロード信号生成部15Aは、例えば、カウンタおよびシフトレジスタを含む構成とすることができる。ロード信号生成部15Aは、第2クロックCLK2の指示によりカウンタ動作を行なって分周クロックを生成し、リセット指示信号RSTnの指示によりカウンタ動作をリセットすることができる。また、ロード信号生成部15Aは、分周クロックをシフトレジスタの初段のフリップフロップの入力データとし、第2クロックCLK2(または、第1クロックCLK1より短周期の他のクロック)の指示によりシフトレジスタをシフト動作させて、シフトレジスタの最終段のフリップフロップから出力される信号をロード信号Loadとすることができる。ロード信号生成部15Aから出力されるロード信号Loadは、変換部14に与えられる。
【0024】
位相差検出部16は、ロード信号Loadと第1クロックCLK1との間の位相差を検出し、その検出した位相差が異常である場合に異常検知信号を制御部20へ出力する。リセット信号生成部17は、制御部20から出力された一括リセット指示信号を受け取ると、ロード信号生成部15Aにおけるロード信号生成動作をリセットするためのリセット指示信号RSTnを生成してロード信号生成部15Aへ与える。
【0025】
図3は、シリアライザ回路の構成例を示す図である。この図に示されるシリアライザ回路10Bは、図1中の各シリアライザ回路10として用いられるものである。シリアライザ回路10Bは、第1クロックCLK1に同期して入力されるパラレルデータPar_Dataをシリアライズして、当該シリアルデータSer_Dataを第2クロックCLK2に同期して出力する。第2クロックCLK2の周期は第1クロックCLK1の周期より短い。シリアライザ回路10Bは、第1ラッチ部12、第2ラッチ部13、変換部14、ロード信号生成部15B、位相差検出部16およびリセット信号生成部17を含む。
【0026】
図2に示されたシリアライザ回路10Aの構成と比較すると、図3に示されるシリアライザ回路10Bは、ラッチ部11に替えて第1ラッチ部12および第2ラッチ部13を含む点で相違し、また、ロード信号生成部15Aに替えてロード信号生成部15Bを含む点で相違する。
【0027】
第1ラッチ部12は、入力されるパラレルデータPar_Dataを、第1クロックCLK1が指示するタイミングでラッチして出力する。第2ラッチ部13は、第1ラッチ部12によりラッチされて出力されるパラレルデータを、第3クロックCLK3が指示するタイミングでラッチして出力する。第3クロックCLK3は第1クロックCLK1と同周期である。第1ラッチ部12および第2ラッチ部13それぞれは、例えば、パラレルデータPar_Dataのビット数またはそれ以上の個数のフリップフロップが並列的に配置された構成とすることができる。
【0028】
変換部14は、第2ラッチ部13によりラッチされて出力されるパラレルデータを、ロード信号Loadが指示するタイミングでラッチして、そのラッチしたデータを第2クロックCLK2に同期してシリアルデータSer_Dataとして出力する。ロード信号Loadは第1クロックCLK1と同周期である。変換部14は、例えば、複数のフリップフロップが直列的に接続されたシフトレジスタを含む構成とし、ロード信号Loadの指示によりパラレルデータをシフトレジスタの各フリップフロップでラッチし、第2クロックCLK2の指示によりシフトレジスタをシフト動作させてシリアルデータSer_Dataを出力することができる。
【0029】
ロード信号生成部15Bは、第2クロックCLK2を分周して第3クロックCLK3を生成し、第3クロックCLK3に基づいてロード信号Loadを生成する。ロード信号生成部15Bは、リセット指示信号RSTnの指示により、分周動作をリセットすることができ、ロード信号生成動作をリセットすることができる。ロード信号生成部15Bは、例えば、カウンタおよびシフトレジスタを含む構成とすることができる。ロード信号生成部15Bは、第2クロックCLK2の指示によりカウンタ動作を行なって分周クロック(第3クロックCLK3)を生成する。ロード信号生成部15Bから出力される第3クロックCLK3は、第2ラッチ部13に与えられる。また、ロード信号生成部15Bは、第3クロックCLK3をシフトレジスタの初段のフリップフロップの入力データとし、第2クロックCLK2(または、第1クロックCLK1より短周期の他のクロック)の指示によりシフトレジスタをシフト動作させて、シフトレジスタの最終段のフリップフロップから出力される信号をロード信号Loadとすることができる。ロード信号生成部15Bから出力されるロード信号Loadは、変換部14に与えられる。
【0030】
位相差検出部16は、ロード信号Loadと第1クロックCLK1との間の位相差を検出する。或いは、位相差検出部16は、第3クロックCLK3と第1クロックCLK1との間の位相差を検出してもよい。位相差検出部16は、その検出した位相差が異常である場合に異常検知信号を制御部20へ出力する。リセット信号生成部17は、制御部20から出力された一括リセット指示信号を受け取ると、ロード信号生成部15Bにおけるロード信号生成動作をリセットするためのリセット指示信号RSTnを生成してロード信号生成部15Bへ与える。
【0031】
シリアルデータを入力してパラレルデータを出力する変換部14より前段に、ラッチ部11を設ける構成(図2)が好ましく、また、2段のラッチ部12,13を設ける構成(図3)がより好ましい。このことについて以下に説明する。一般に、シリアライザ回路を含む送信装置を半導体基板上に形成する場合、シリアライザ回路のレイアウトはカスタム設計されるが、ラッチ部より前段の回路のレイアウトはCADシステムにより自動的に配置配線される。したがって、ラッチ部に入力されるパラレルデータPar_Dataの遅延が大きくなりがちであり、セットアップが厳しくなる。また、パラレルデータPar_Dataのビット間の遅延のばらつきも大きくなりがちであり、セットアップが厳しい状態でセットアップ・タイムがばらつくと、ラッチ部からの出力データの遅延も大きくばらつく。その結果、ラッチ部の出力データとロード信号Loadとの間のタイミングが厳しくなる。第1ラッチ部の後段に第2ラッチ部を設けることで、第1ラッチ部の出力データのタイミングの制約は第3クロックCLK3の立上りエッジのみとなり、タイミングの制約が緩和され得る。
【0032】
図4および図5は、シリアライザ回路の動作を説明するタイミングチャートである。これらの図には、上から順に、第1クロックCLK1、ラッチ部11または第1ラッチ部12に入力されるパラレルデータPar_Data、ロード信号Load、第2クロックCLK2およびシリアルデータSer_Data が示されている。これらの図では、パラレルデータPar_Dataを5ビットデータとしている。
【0033】
シリアライザ回路には、パラレルデータPar_Data、第1クロックCLK1および第2クロックCLK2が入力される。これらの図に示されるように、第1クロックCLK1はパラレルデータPar_Dataに同期している。第2クロックCLK2はシリアルデータSer_Dataに同期している。第2クロックCLK2の周期は第1クロックCLK1の周期より短い。ロード信号Loadは第1クロックCLK1と同周期である。
【0034】
図4に示されるように、第1クロックCLK1とロード信号Loadとの間の位相差は、変換部14によるラッチ動作の際のセットアップ・タイムおよびホールド・タイムそれぞれのマージンに応じて適正範囲内に設定されることが重要である。
【0035】
これに対して、図5に示されるように、第1クロックCLK1とロード信号Loadとの間の位相差は、変換部14によるラッチ動作の際のセットアップ・タイムおよびホールド・タイムそれぞれのマージンに応じた適正範囲から外れる場合がある。このような事態が生じる要因としては、ノイズに因るロード信号生成部の誤動作、および、温度変化に因る第1クロックの位相のずれ、が挙げられる。
【0036】
特許文献2,3に開示された発明は、第1クロックCLK1とロード信号Loadとの間の位相差を検出して、その検出した位相差が適正範囲から外れている場合に、ロード信号を生成するロード信号生成部の動作をリセットし又は一時停止させる。このようにすることで、シリアライザ回路は、第1クロックCLK1とロード信号Lodとの間の位相差を適正範囲内に回復させることができ、簡易な構成で早期にビットエラーレートを低減することができる。
【0037】
しかし、複数レーンのシリアライザ回路を備える複数レーン・シリアライザ装置において、各シリアライザ回路を特許文献2,3に開示された発明の構成とすると、次のような問題が生じる場合がある。図6は、複数レーンのシリアライザ回路を備える複数レーン・シリアライザ装置の動作の問題を説明するタイミングチャートである。この図には、上から順に、第1シリアライザ回路における第1クロックCLK1、パラレルデータPar_Data、ロード信号Load、第2クロックCLK2およびシリアルデータSer_Data が示され、続いて、第2シリアライザ回路における第1クロックCLK1、パラレルデータPar_Data、ロード信号Load、第2クロックCLK2およびシリアルデータSer_Data が示されている。
【0038】
この図6に示されるように、レーン間スキューにより、各シリアライザ回路への第1クロックCLK1の入力タイミングが互いに僅かに異なる。したがって、各シリアライザ回路において個々に必要時にロード信号生成動作のリセットまたは一時停止を行うと、複数レーンのシリアライザ回路の間でシリアルデータの出力タイミングが大きく異なってしまう場合がある。
【0039】
図6に示される例では、第1シリアライザ回路への第1クロックCLK1の入力タイミングと比べて、第2シリアライザ回路への第1クロックCLK1の入力タイミングが遅い。第1シリアライザ回路においては、ロード信号Loadの位相が僅かに進んでいるものの、第1クロックCLK1とロード信号Loadとの間の位相差は適正範囲内にある。これに対して、第2シリアライザ回路においては、ロード信号Loadの位相が大きく進んでおり、第1クロックCLK1とロード信号Loadとの間の位相差が適正範囲から外れていたことから、ロード信号生成部におけるロード信号生成動作がリセットされる。その結果、第1シリアライザ回路および第2シリアライザ回路それぞれから出力されるシリアルデータの間でIPSに対する要求仕様が満たされない場合がある。
【0040】
本実施形態の複数レーン・シリアライザ装置1は、このような問題点を解消する為になされたものであり、各シリアライザ回路において簡易な構成で早期にビットエラーレートを低減することができるとともに、複数レーンのシリアライザ回路の間のIPSを小さくすることができる。
【0041】
すなわち、本実施形態では、N個のシリアライザ回路10~10それぞれの位相差検出部16は、ロード信号Loadと第1クロックCLK1との間の位相差を検出し、その検出した位相差が異常である場合(位相差が適正範囲内にない場合)に異常検知信号を制御部20へ出力する。制御部20は、N個のシリアライザ回路10~10のうちの何れかのシリアライザ回路から異常検知信号を受け取ると、N個のシリアライザ回路10~10それぞれへ一括リセット指示信号を送る。そして、N個のシリアライザ回路10~10それぞれにおいて、リセット信号生成部17は、制御部20から出力された一括リセット指示信号を受け取ると、リセット指示信号RSTnをロード信号生成部15A,15Bへ与えて、ロード信号生成部15A,15Bにおけるロード信号生成動作をリセットさせる。
【0042】
このように、N個のシリアライザ回路10~10のうちの何れかのシリアライザ回路においてロード信号Loadと第1クロックCLK1との間の位相差が異常である場合に、N個のシリアライザ回路10~10の全てにおいてロード信号生成部15A,15Bにおけるロード信号生成動作がリセットされる。このようにすることにより、複数レーンのシリアライザ回路の間のIPSを小さくすることができる。
【0043】
また、本実施形態の構成は、テレビおよびモニタなどの表示装置に用いられるディスプレイ・インターフェース、ならびに、カメラおよびビデオなどの撮像装置に用いられるカメラ・インターフェースなどの、映像伝送インターフェースに適用してもよい。一般的に、上述したような映像伝送インターフェースでは、映像伝送のリアルタイム性および滑らかさの双方または何れか一方が重視されるので、他のデータ通信方式に比べて、遅延およびIPSに対する要求が高く、通信が失敗したときに再送することが困難または不可能である場合が多い。さらに、昨今では映像の高精細化に伴って高速な映像伝送インターフェースが求められており、これを他のデータ通信方式のようにFIFOなどを用いた構成で実現しようとすると、高速な映像伝送のリアルタイム性および滑らかさの双方または何れか一方を確保するための要求を満たすことが難しいだけでなく、集積回路にしたときの電力および面積を増大化させてしまう。本実施形態の構成は、複数レーンのシリアライザ回路の間のIPSを小さくすることが可能であるので、上述したような映像伝送インターフェースに適用しても、高速な映像伝送のリアルタイム性および滑らかさの双方または何れか一方を確保しつつ、かつ、集積回路にしたときの電力および面積の増大化を抑えることができる。
【符号の説明】
【0044】
1…複数レーン・シリアライザ装置、10~10,10A,10B…シリアライザ回路、11…ラッチ部、12…第1ラッチ部、13…第2ラッチ部、14…変換部、15A,15B…ロード信号生成部、16…位相差検出部、17…リセット信号生成部、20…制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6