(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ヤヌス液滴を用いた検体の検出
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20221213BHJP
G01N 21/59 20060101ALI20221213BHJP
G01N 33/536 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G01N33/543 581C
G01N21/59 B
G01N33/536 B
(21)【出願番号】P 2019515484
(86)(22)【出願日】2017-09-19
(86)【国際出願番号】 US2017052209
(87)【国際公開番号】W WO2018053481
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-09-18
(32)【優先日】2016-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】スウェイガー, ティモシー エム.
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, チファン
(72)【発明者】
【氏名】サヴァガトラップ, スチョル
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0151756(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0288852(US,A1)
【文献】特表2011-522616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/543
G01N 21/59
G01N 33/536
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体に対する結合性部分に会合した複数のヤヌス液滴を含む系であって、
前記結合性部分および前記検体が、前記検体が前記結合性部分と結合した時、前記複数のヤヌス液滴と相互作用する電磁放射線を検出可能な様式で変化させるのに十分な程度に、前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分の配向が変化するように選択される、系。
【請求項2】
検体に対する複数の結合性部分に会合した複数のヤヌス液滴;および
前記複数のヤヌス液滴に対して位置決めされた検出器
を含む系であって、
十分な数の前記結合性部分が検体と結合した時、前記ヤヌス液滴と相互作用する電磁放射線を前記検出器により決定可能な様式で変化させるのに十分な程度に、前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分の配向が変化する、系。
【請求項3】
前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が、前記検体が前記結合性部分と結合すると、凝集する、請求項1または2に記載の系。
【請求項4】
前記結合性部分との結合前に、前記複数のヤヌス液滴が、各ヤヌス液滴内の第1の相と第2の相との間の界面の少なくとも一部分が互いに平行に整列するように配向されている、請求項1または2に記載の系。
【請求項5】
前記検体の前記結合性部分との結合前に、前記複数のヤヌス液滴が表面に結合している、請求項1または2に記載の系。
【請求項6】
前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が、前記検体が前記結合性部分と結合すると、前記表面から解放される、請求項5に記載の系。
【請求項7】
検体を決定するための方法であって、
外相、および前記外相内に分散した複数のヤヌス液滴を含む物品に、化学的検体または生物学的検体を曝露させるステップであって、前記化学的検体または前記生物学的検体が、存在する場合、前記物品の少なくとも一部分と相互作用し、その結果、前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が配向を変化させ、それにより、前記物品の光学的性質の検出可能な変化を生じる、ステップ;ならびに
前記検出可能な変化を決定するステップ
を含む、方法。
【請求項8】
物品の光透過を変化させるための方法であって、
外相、および前記外相内に分散した複数のヤヌス液滴を含む物品に、化学的検体または生物学的検体を曝露させるステップであって、前記化学的検体または前記生物学的検体が、存在する場合、前記物品の少なくとも一部分と相互作用し、その結果、前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が配向を変化させ、それにより、前記物品の光透過を変化させる、ステップ
を含む、方法。
【請求項9】
前記複数のヤヌス液滴が、結合性部分を含む1つまたは複数の両親媒性化合物を含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記物品の少なくとも一部分と相互作用することが、前記化学的検体または前記生物学的検体の前記結合性部分との結合を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記物品を化学的検体または生物学的検体へ曝露させる前に、前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が、各ヤヌス液滴内の第1の相と第2の相との間の界面の少なくとも一部分が互いに平行に整列するように配向されている、請求項7または8に記載の方法。
【請求項12】
各ヤヌス液滴内の第1の相と第2の相との間の前記界面が、互いに平行に整列している、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記物品を化学的検体または生物学的検体に曝露させることにより、前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が凝集する、請求項7または8に記載の方法。
【請求項14】
前記物品を化学的検体または生物学的検体に曝露させることにより、前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が、各ヤヌス液滴内の第1の相と第2の相との間の界面の少なくとも一部分が互いに平行には整列していないように、配向される、請求項7または8に記載の方法。
【請求項15】
前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が、前記結合性部分を介して、前記物品の表面と結合している、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記物品を化学的検体または生物学的検体に曝露させることにより、前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が前記表面から解放される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
外相;および
前記外相内に分散した複数のヤヌス液滴
を含む物品であって、前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が、結合性部分を含む両親媒性化合物を含み、
前記複数のヤヌス液滴が、各ヤヌス液滴内の第1の相と第2の相との間の界面の少なくとも一部分が互いに平行に整列するように配向されている、物品。
【請求項18】
前記結合性部分が、化学的検体または生物学的検体に結合する能力がある、請求項17に記載の物品。
【請求項19】
前記結合性部分の化学的検体または生物学的検体との結合により、前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が配向を変化させる、請求項18に記載の物品。
【請求項20】
前記複数のヤヌス液滴が、電磁放射線に対して透過性である、請求項17に記載の物品。
【請求項21】
前記結合性部分の化学的検体または生物学的検体との結合により、前記複数のヤヌス液滴の光透過が減少する、請求項18に記載の物品。
【請求項22】
表面;
前記表面の少なくとも一部分上に置かれた外相;および
前記外相内に分散した複数のヤヌス液滴
を含む物品であって、前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が、結合性部分を含む両親媒性化合物を含み、かつ前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が、前記結合性部分を介して前記表面に結合している、物品。
【請求項23】
前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が、各ヤヌス液滴内の第1の相と第2の相との間の界面が前記表面と平行には整列していないように、配向されている、請求項22に記載の物品。
【請求項24】
前記複数のヤヌス液滴の生物学的検体または化学的検体への曝露により、ヤヌス液滴の少なくとも一部分が前記表面から解放される、請求項22または23に記載の物品。
【請求項25】
前記複数のヤヌス液滴の生物学的検体または化学的検体への曝露により、ヤヌス液滴の少なくとも一部分が配向を変化させる、請求項22~24のいずれか一項に記載の物品。
【請求項26】
前記複数のヤヌス液滴の前記生物学的検体または前記化学的検体への曝露後、前記物品が、可視光透過性である、請求項24に記載の物品。
【請求項27】
前記複数のヤヌス液滴の化学的検体または生物学的検体への曝露により、前記複数のヤヌス液滴の光透過が増加する、請求項22~26のいずれか一項に記載の物品。
【請求項28】
請求項22または23に記載の物品;
決定可能なシグナルを発生させるための、組成物に適用可能な外部エネルギーの供給源;および
前記シグナルを検出するように位置決めされた検出器
を含む系。
【請求項29】
前記シグナルが電磁放射線を含む、請求項28に記載の系。
【請求項30】
前記物品の化学的検体または生物学的検体への曝露により、前記系が前記決定可能なシグナルを発生する、請求項28または29に記載の系。
【請求項31】
各ヤヌス液滴が、第1の相、および前記第1の相と不混和性の第2の相を含む、請求項17または22に記載の物品。
【請求項32】
前記外相が水相である、請求項17または22に記載の物品。
【請求項33】
前記第1の相が、炭化水素、フルオロカーボン、シリコーン、液晶、イオン性の液体、ポリマー、それらの組み合わせ、またはそれらの誘導体を含む、請求項31に記載の物品。
【請求項34】
前記第2の相が、前記第1の相と不混和性の、炭化水素、フルオロカーボン、シリコーン、液晶、イオン性の液体、ポリマー、それらの組み合わせ、またはそれらの誘導体を含む、請求項31に記載の物品。
【請求項35】
前記両親媒性化合物が、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ポリマー、タンパク質、DNA、RNA、酸、炭水化物、サッカライド、酵素、発色団、脂質、酸化グラフェン、それらの組み合わせ、およびそれらの誘導体からなる群より選択される、請求項17または22に記載の物品。
【請求項36】
前記外相と前記複数のヤヌス液滴との間の界面が前記両親媒性化合物を含む、請求項17または22に記載の物品。
【請求項37】
前記検体が、生物学的化合物、薬物、高分子、塩、電解質、酵素、酸、核酸、炭水化物、ペプチド、タンパク質、ホスフェート、スルホネート、ウイルス、病原体、酸化剤、還元剤、毒素、化学兵器剤、爆発物、二酸化炭素、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1または2に記載の系。
【請求項38】
前記検体が単一の検体である、請求項1または2に記載の系。
【請求項39】
前記
化学的検体または前記生物学的検体が、生物学的化合物、薬物、高分子、塩、電解質、酵素、酸、核酸、炭水化物、ペプチド、タンパク質、ホスフェート、スルホネート、ウイルス、病原体、酸化剤、還元剤、毒素、化学兵器剤、爆発物、二酸化炭素、またはそれらの組み合わせを含む、請求項18、19および21のいずれか一項に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2016年9月19日に出願され、「SYSTEMS INCLUDING JANUS DROPLETS」との表題の米国出願第15/269,543号(これは、全ての目的のためにその全体が参考として本明細書に援用される)の継続である。
【0002】
本発明は、一般的に、ヤヌス液滴(janus droplet)を含む系および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
乳化は、連続液相内で、不混和性コンポーネントを混合し、分散するための効果的な昔からある技術である。それゆえに、エマルジョンは、薬、食品、および機能性材料の中心的コンポーネントである。複数のエマルジョンおよびヤヌス液滴を含む複雑なエマルジョンは、医薬品および医学的診断において、食品についての微小滴およびカプセルの製作において、化学的分離において、化粧品について、動的光学および化学的分離について、重要性が増加している。しかしながら、ヤヌス液滴を使用する、高い感度および選択性での検体の定量的検出は、まだ実現されていない。したがって、向上した系および方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、ヤヌス液滴を含む系および方法を提供する。
【0005】
一態様では、系が提供される。一部の実施形態では、系は、検体に対する結合性部分に会合した複数のヤヌス液滴を含み、その結合性部分および検体は、検体が結合性部分と結合した時、複数のヤヌス液滴と相互作用する電磁放射線を検出可能な様式で変化させるのに十分な程度に、複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分の配向が変化するように選択される。
【0006】
一部の実施形態では、系は、検体に対する複数の結合性部分に会合した複数のヤヌス液滴、および複数のヤヌス液滴に対して位置決めされた検出器を含み、十分な数の結合性部分が検体と結合した時、ヤヌス液滴と相互作用する電磁放射線を検出器により決定可能な様式で変化させるのに十分な程度に、複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分の配向が変化する。
【0007】
ある特定の実施形態では、複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が、結合性部分と結合すると、凝集する。
【0008】
ある特定の実施形態では、結合性部分との結合前に、複数のヤヌス液滴は、各ヤヌス液滴内の第1の相と第2の相との間の界面の少なくとも一部分が、互いに平行に整列するように、配向されている。
【0009】
ある特定の実施形態では、検体の結合性部分との結合前に、複数のヤヌス液滴は表面に結合している。
【0010】
ある特定の実施形態では、複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が、検体の結合性部分と結合すると、表面から解放される。
【0011】
ある特定の実施形態では、系は、決定可能なシグナルを発生させるための、組成物に適用可能な外部エネルギーの供給源、およびそのシグナルを検出するように位置決めされた検出器を含む。
【0012】
ある特定の実施形態では、シグナルは電磁放射線を含む。
【0013】
ある特定の実施形態では、その物品の化学的検体または生物学的検体への曝露により、系が決定可能なシグナルを発生する。
【0014】
別の態様では、方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、検体を、複数のヤヌス液滴に会合した結合性部分と結合させるステップ、および、検体の結合性部分との結合に少なくとも一部起因する、複数のヤヌス液滴と相互作用する電磁放射線の変化を決定するステップを含む。
【0015】
一部の実施形態では、方法は、外相(outer phase)および前記外相内に分散した複数のヤヌス液滴を含む物品に、化学的検体または生物学的検体を曝露させるステップであって、前記化学的検体または前記生物学的検体が、存在する場合、前記物品の少なくとも一部分と相互作用して、その結果、前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が配向を変化させ、それにより、前記物品の光学的性質の検出可能な変化を生じる、ステップ、ならびに前記検出可能な変化を決定するステップを含む。
【0016】
一部の実施形態では、方法は、外相および前記外相内に分散した複数のヤヌス液滴を含む物品に、化学的検体または生物学的検体を曝露させるステップであって、前記化学的検体または前記生物学的検体が、存在する場合、前記物品の少なくとも一部分と相互作用して、その結果、前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が配向を変化させ、それにより、前記物品の光透過を変化させる、ステップを含む。
【0017】
ある特定の実施形態では、複数のヤヌス液滴は、少なくとも1つの結合性部分を含む1つまたは複数の両親媒性化合物を含む。
【0018】
ある特定の実施形態では、物品の少なくとも一部分と相互作用することは、化学的検体または生物学的検体の、少なくとも1つの結合性部分との結合を含む。
【0019】
ある特定の実施形態では、物品を化学的検体または生物学的検体へ曝露させる前、複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分は、各ヤヌス液滴内の第1の相と第2の相との間の界面の少なくとも一部分が、互いに平行に整列するように配向されている。
【0020】
ある特定の実施形態では、各ヤヌス液滴内の第1の相と第2の相との間の界面の実質的に全部が、互いに平行に整列している。
【0021】
ある特定の実施形態では、物品を化学的検体または生物学的検体に曝露させることにより、複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が凝集する。
【0022】
ある特定の実施形態では、物品を化学的検体または生物学的検体に曝露させることにより、複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が、各ヤヌス液滴内の第1の相と第2の相との間の界面の少なくとも一部分が、互いに平行には整列していないように、配向される。
【0023】
ある特定の実施形態では、複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が、結合性部分を介して物品の表面と結合している。
【0024】
ある特定の実施形態では、物品を化学的検体または生物学的検体に曝露させることにより、複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が表面から解放される。
【0025】
さらに別の態様では、物品が提供される。一部の実施形態では、物品は、外相および前記外相内に分散した複数のヤヌス液滴を含み、前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が、少なくとも1つの結合性部分を含む両親媒性化合物を含む。
【0026】
ある特定の実施形態では、複数のヤヌス液滴は、各ヤヌス液滴内の第1の相と第2の相との間の界面の少なくとも一部分が互いに平行に整列するように、配向されている。
【0027】
ある特定の実施形態では、少なくとも1つの結合性部分は、化学的検体または生物学的検体に結合する能力がある。
【0028】
ある特定の実施形態では、少なくとも1つの結合性部分の化学的検体または生物学的検体への結合により、複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分は配向を変化させる。
【0029】
ある特定の実施形態では、複数のヤヌス液滴は、電磁放射線に対して実質的に透過性である。
【0030】
ある特定の実施形態では、少なくとも1つの結合性部分の化学的検体または生物学的検体への結合により、複数のヤヌス液滴の光透過が減少する。
【0031】
一部の実施形態では、物品は、表面、前記表面の少なくとも一部分上に置かれた外相、および前記外相内に分散した複数のヤヌス液滴を含み、前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が、少なくとも1つの結合性部分を含む両親媒性化合物を含み、前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が、前記結合性部分を介して前記表面と結合している。
【0032】
ある特定の実施形態では、複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が、各ヤヌス液滴内の第1の相と第2の相との間の界面が、表面と平行には整列していないように配向されている。
【0033】
ある特定の実施形態では、複数のヤヌス液滴の生物学的検体または化学的検体への曝露により、ヤヌス液滴の少なくとも一部分が表面から解放される。
【0034】
ある特定の実施形態では、複数のヤヌス液滴の生物学的検体または化学的検体への曝露により、ヤヌス液滴の少なくとも一部分が配向を変化させる。
【0035】
ある特定の実施形態では、物品は、複数のヤヌス液滴の生物学的検体または化学的検体への曝露後、実質的に可視光透過性である。
【0036】
ある特定の実施形態では、複数のヤヌス液滴の化学的検体または生物学的検体への曝露により、複数のヤヌス液滴の光透過が増加する。
【0037】
ある特定の実施形態では、各ヤヌス液滴は、第1の相、および前記第1の相と不混和性の第2の相を含む。
【0038】
ある特定の実施形態では、外相は水相である。
【0039】
ある特定の実施形態では、第1の相は、炭化水素、フルオロカーボン、シリコーン、液晶、イオン性の液体、ポリマー、それらの組み合わせ、またはそれらの誘導体を含む。
【0040】
ある特定の実施形態では、第2の相は、第1の相と不混和性の、炭化水素、フルオロカーボン、シリコーン、液晶、イオン性の液体、ポリマー、それらの組み合わせ、またはそれらの誘導体を含む。
【0041】
ある特定の実施形態では、両親媒性化合物は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ポリマー、タンパク質、DNA、RNA、酸、炭水化物、サッカライド、酵素、発色団、脂質、酸化グラフェン、それらの組み合わせ、およびそれらの誘導体からなる群より選択される。
【0042】
ある特定の実施形態では、外相と複数のヤヌス液滴との間の界面は、両親媒性化合物を含む。
【0043】
ある特定の実施形態では、検体は、生物学的化合物、薬物、高分子、塩、電解質、酵素、酸、核酸、炭水化物、ペプチド、タンパク質、ホスフェート、スルホネート、ウイルス、病原体、酸化剤、還元剤、毒素、化学兵器剤(chemical warfare agent)、爆発物、二酸化炭素、またはそれらの組み合わせを含む。
【0044】
ある特定の実施形態では、検体は単一の検体である。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
検体に対する結合性部分に会合した複数のヤヌス液滴を含む系であって、
前記結合性部分および前記検体が、前記検体が前記結合性部分と結合した時、前記複数のヤヌス液滴と相互作用する電磁放射線を検出可能な様式で変化させるのに十分な程度に、前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分の配向が変化するように選択される、系。
(項目2)
検体に対する複数の結合性部分に会合した複数のヤヌス液滴;および
前記複数のヤヌス液滴に対して位置決めされた検出器
含む系であって、
十分な数の前記結合性部分が検体と結合した時、前記ヤヌス液滴と相互作用する電磁放射線を前記検出器により決定可能な様式で変化させるのに十分な程度に、前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分の配向が変化する、系。
(項目3)
前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が、前記結合性部分と結合すると、凝集する、前記項目のいずれかに記載の系。
(項目4)
前記結合性部分との結合前に、前記複数のヤヌス液滴が、各ヤヌス液滴内の第1の相と第2の相との間の界面の少なくとも一部分が互いに平行に整列するように配向されている、前記項目のいずれかに記載の系。
(項目5)
前記検体の前記結合性部分との結合前に、前記複数のヤヌス液滴が表面に結合している、前記項目のいずれかに記載の系。
(項目6)
前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が、前記検体の前記結合性部分と結合すると、前記表面から解放される、項目5に記載の系。
(項目7)
検体を、複数のヤヌス液滴に会合した結合性部分と結合させるステップ;および
前記検体の前記結合性部分との結合に少なくとも一部起因する、前記複数のヤヌス液滴と相互作用する電磁放射線の変化を決定するステップ
を含む、方法。
(項目8)
検体を決定するための方法であって、
外相、および前記外相内に分散した複数のヤヌス液滴を含む物品に、化学的検体または生物学的検体を曝露させるステップであって、前記化学的検体または前記生物学的検体が、存在する場合、前記物品の少なくとも一部分と相互作用し、その結果、前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が配向を変化させ、それにより、前記物品の光学的性質の検出可能な変化を生じる、ステップ;ならびに
前記検出可能な変化を決定するステップ
を含む、方法。
(項目9)
物品の光透過を変化させるための方法であって、
外相、および前記外相内に分散した複数のヤヌス液滴を含む物品に、化学的検体または生物学的検体を曝露させるステップであって、前記化学的検体または前記生物学的検体が、存在する場合、前記物品の少なくとも一部分と相互作用し、その結果、前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が配向を変化させ、それにより、前記物品の光透過を変化させる、ステップ
を含む、方法。
(項目10)
前記複数のヤヌス液滴が、少なくとも1つの結合性部分を含む1つまたは複数の両親媒性化合物を含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目11)
前記物品の少なくとも一部分と相互作用することが、前記化学的検体または前記生物学的検体の前記少なくとも1つの結合性部分との結合を含む、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記物品を化学的検体または生物学的検体へ曝露させる前に、前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が、各ヤヌス液滴内の第1の相と第2の相との間の界面の少なくとも一部分が互いに平行に整列するように配向されている、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目13)
各ヤヌス液滴内の第1の相と第2の相との間の前記界面の実質的に全部が、互いに平行に整列している、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記物品を化学的検体または生物学的検体に曝露させることにより、前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が凝集する、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目15)
前記物品を化学的検体または生物学的検体に曝露させることにより、前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が、各ヤヌス液滴内の第1の相と第2の相との間の界面の少なくとも一部分が互いに平行には整列していないように、配向される、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目16)
前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が、前記結合性部分を介して、前記物品の表面と結合している、項目10に記載の方法。
(項目17)
前記物品を化学的検体または生物学的検体に曝露させることにより、前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が前記表面から解放される、項目16に記載の方法。
(項目18)
外相;および
前記外相内に分散した複数のヤヌス液滴
を含む物品であって、前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が、少なくとも1つの結合性部分を含む両親媒性化合物を含む、物品。
(項目19)
前記複数のヤヌス液滴が、各ヤヌス液滴内の第1の相と第2の相との間の界面の少なくとも一部分が互いに平行に整列するように配向されている、項目18に記載の物品。
(項目20)
前記少なくとも1つの結合性部分が、化学的検体または生物学的検体に結合する能力がある、前記項目のいずれかに記載の物品。
(項目21)
前記少なくとも1つの結合性部分の化学的検体または生物学的検体との結合により、前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が配向を変化させる、前記項目のいずれかに記載の物品。
(項目22)
前記複数のヤヌス液滴が、電磁放射線に対して実質的に透過性である、前記項目のいずれかに記載の物品。
(項目23)
前記少なくとも1つの結合性部分の化学的検体または生物学的検体との結合により、前記複数のヤヌス液滴の光透過が減少する、前記項目のいずれかに記載の物品。
(項目24)
表面;
前記表面の少なくとも一部分上に置かれた外相;および
前記外相内に分散した複数のヤヌス液滴
を含む物品であって、前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が、少なくとも1つの結合性部分を含む両親媒性化合物を含み、かつ前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が、前記結合性部分を介して前記表面に結合している、物品。
(項目25)
前記複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が、各ヤヌス液滴内の第1の相と第2の相との間の界面が前記表面と平行には整列していないように、配向されている、項目24に記載の物品。
(項目26)
前記複数のヤヌス液滴の生物学的検体または化学的検体への曝露により、ヤヌス液滴の少なくとも一部分が前記表面から解放される、項目24~25のいずれか一項に記載の物品。
(項目27)
前記複数のヤヌス液滴の生物学的検体または化学的検体への曝露により、ヤヌス液滴の少なくとも一部分が配向を変化させる、項目24~26のいずれか一項に記載の物品。
(項目28)
前記複数のヤヌス液滴の前記生物学的検体または前記化学的検体への曝露後、前記物品が、実質的に可視光透過性である、項目26に記載の物品。
(項目29)
前記複数のヤヌス液滴の化学的検体または生物学的検体への曝露により、前記複数のヤヌス液滴の光透過が増加する、項目24~28のいずれか一項に記載の物品。
(項目30)
前記項目のいずれかに記載の物品;
決定可能なシグナルを発生させるための、組成物に適用可能な外部エネルギーの供給源;および
前記シグナルを検出するように位置決めされた検出器
を含む系。
(項目31)
前記シグナルが電磁放射線を含む、項目30に記載の系。
(項目32)
前記物品の化学的検体または生物学的検体への曝露により、前記系が前記決定可能なシグナルを発生する、項目30~31のいずれか一項に記載の系。
(項目33)
各ヤヌス液滴が、第1の相、および前記第1の相と不混和性の第2の相を含む、前記項目のいずれかに記載の物品、系、または方法。
(項目34)
前記外相が水相である、前記項目のいずれかに記載の物品、系、または方法。
(項目35)
前記第1の相が、炭化水素、フルオロカーボン、シリコーン、液晶、イオン性の液体、ポリマー、それらの組み合わせ、またはそれらの誘導体を含む、前記項目のいずれかに記載の物品、系、または方法。
(項目36)
前記第2の相が、前記第1の相と不混和性の、炭化水素、フルオロカーボン、シリコーン、液晶、イオン性の液体、ポリマー、それらの組み合わせ、またはそれらの誘導体を含む、前記項目のいずれかに記載の物品、系、または方法。
(項目37)
前記両親媒性化合物が、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ポリマー、タンパク質、DNA、RNA、酸、炭水化物、サッカライド、酵素、発色団、脂質、酸化グラフェン、それらの組み合わせ、およびそれらの誘導体からなる群より選択される、前記項目のいずれかに記載の物品、系、または方法。
(項目38)
前記外相と前記複数のヤヌス液滴との間の界面が前記両親媒性化合物を含む、前記項目のいずれかに記載の物品、系、または方法。
(項目39)
前記検体が、生物学的化合物、薬物、高分子、塩、電解質、酵素、酸、核酸、炭水化物、ペプチド、タンパク質、ホスフェート、スルホネート、ウイルス、病原体、酸化剤、還元剤、毒素、化学兵器剤、爆発物、二酸化炭素、またはそれらの組み合わせを含む、前記項目のいずれかに記載の物品、系、または方法。
(項目40)
前記検体が単一の検体である、前記項目のいずれかに記載の物品、系、または方法。
【0045】
本発明の他の利点および新規の特徴は、添付の図面と併せて考慮すれば、本発明の様々な非限定的実施形態の以下の詳細な説明から明らかになると予想される。本明細書と、参照により組み入れられた文書が、矛盾し、および/または一致しない開示を含む場合、本明細書が支配するものとする。参照により組み入れられた2つまたはそれより多い文書が、互いに矛盾し、および/または一致しない開示を含む場合には、より後の有効データを有する文書が支配するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1A】
図1Aは、1組の実施形態による、検体に曝露された、ヤヌス液滴を含む系を図示する。
【0047】
【
図1B】
図1Bは、1組の実施形態による、検体に曝露された、ヤヌス液滴を含む系を図示する。
【0048】
【
図1C】
図1Cは、1組の実施形態による、検体に曝露された、複数のヤヌス液滴を含む系を図示する。
【0049】
【
図1D】
図1Dは、1組の実施形態による、検体に曝露された、複数のヤヌス液滴を含む系を図示する。
【0050】
【
図2】
図2は、1組の実施形態による、ヤヌス液滴を含む系を図示する。
【0051】
【
図3】
図3は、1組の実施形態による、ヤヌス液滴の形成を図示する。
【0052】
【
図4】
図4Aは、1組の実施形態による、ヤヌス液滴を含む系に使用される例示的な界面活性剤を示す。
図4Bは、1組の実施形態による、検体の存在下での複数のヤヌス液滴の凝集を示す。
【0053】
【
図5】
図5Aは、1組の実施形態による、単分散系の複数のヤヌス液滴を示す。
図5Bは、1組の実施形態による、変更された配向を有する複数のヤヌス液滴を示す。
【0054】
【
図6A】
図6A~
図6Bは、1組の実施形態による、検体への曝露により、系の光学的性質を変化させる、複数のヤヌス液滴を含む例示的な系を示す。
【
図6B】
図6A~
図6Bは、1組の実施形態による、検体への曝露により、系の光学的性質を変化させる、複数のヤヌス液滴を含む例示的な系を示す。
【0055】
【
図7】
図7A~
図7Fは、1組の実施形態による、検体への曝露でのヤヌス液滴に基づいた画像処理を示す。
【0056】
【
図8】
図8A~
図8Fは、1組の実施形態による、検体への曝露でのヤヌス液滴に基づいた画像処理を示す。
【0057】
【
図9】
図9は、1組の実施形態による、ヤヌス液滴の配向の変化を生じる、検体との相互作用の例示的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明の他の態様、実施形態、および特徴は、添付の図面と併せて考慮すれば、以下の詳細な説明から明らかになると予想される。添付の図面は、概略図であり、一定の縮尺で描かれることを意図するものではない。明快さのために、全てのコンポーネントが全ての図で標識されるわけではなく、当業者が本発明を理解することを可能にするのに図示が必要ではない場合、本発明の各実施形態の全てのコンポーネントが示されるわけでもない。参照により本明細書に組み入れられた全ての特許出願および特許は、全体として参照により組み入れられている。矛盾する場合、定義を含む本明細書が支配するものとする。
【0059】
本明細書に記載された実施形態は、検体の検出において有用であり得る。その系および方法は、化学的および/または生物学的検体などの検体を検出するための比較的単純かつ迅速な仕方を可能にし得、多数の適用において有用であり得、いくつかある適用の中でも、検知、食品製造、医学的診断、機能性材料、動的レンズ、水モニタリング、環境モニタリング、タンパク質の検出、DNAの検出が挙げられる。例えば、本明細書に記載された系および方法は、細菌などの汚染物質の存在を決定する(例えば、感染の広がり、病気、およびさらに死亡を防止するのに役立つ、食品および水試料において病原性細菌を検出する)ために使用され得る。有利には、本明細書に記載された系および方法は、例えば、比較的高い費用、長い濃縮ステップおよび分析時間、ならびに/または徹底的なユーザー訓練の必要性を含む現在の検出テクノロジーにおける欠点を有さないであろう。本明細書に記載された系および方法により提供される別の有利な特徴には、比較的大きいスケールでの製作が挙げられる。一部の実施形態では、系および方法は、(例えば、病原性細菌などの検体の現場での検出のための)例えば、スマートフォンに組み込まれる携帯用検出器を含む検出器と共に使用され得る。例えば、そのような系は、高価な医療処置費用、訴訟、政府認可、製品のリコール、および/または長期間に渡る風評被害を生じ得る、甚大な食物に起因する病気を防止するために食品産業により使用され得る。ヤヌス液滴を含む物品もまた提供される。
【0060】
一部の実施形態では、系および方法は、複数のヤヌス液滴を含む。ヤヌス液滴は、一般的に、互いに不混和性で、ならびに/またはその液滴内に異なる物理的および/もしくは化学的性質を有する、2つまたはそれより多い相を含む。ある特定の実施形態では、等量の2つの不混和性相が存在し、その界面張力が適切に均衡を保っている場合、ヤヌス液滴は、球形であり、その球の各半球が、不混和性相の1つを含む。ある特定の実施形態では、複数のヤヌス液滴は、第1の相および前記第1の相と不混和性の第2の相を含む。一部の実施形態では、複数のヤヌス液滴は、外相(例えば、水相)内に分散し得る。例えば、一部の実施形態では、系は、水相、ならびに炭化水素およびフルオロカーボンを含む複数のヤヌス液滴を含む。一部の場合、複数のヤヌス液滴は、結合性部分に会合し得る(例えば、ヤヌス液滴に会合した結合性部分および/または複数のヤヌス液滴に組み込まれる界面活性剤上に存在する結合性部分)。一部の実施形態では、結合性部分は、検体(例えば、生物学的および/または化学的検体)に結合し得、その結果、複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分の配向が変化する。ヤヌス液滴の配向の変化は、検出可能な様式での電磁放射線(例えば、可視光)のヤヌス液滴との相互作用の変化を生じ得る。一部の実施形態では、複数のヤヌス液滴を検体へ曝露させることは、ヤヌス液滴の光学的性質の検出可能な変化を引き起こし、その結果、検体は、決定および/または定量化することができる。
【0061】
ある特定の実施形態では、検体への曝露により、複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分は凝集し得る。例えば、一部の場合、検体は、複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分の凝集を促進し得る。いくつかのヤヌス液滴の凝集は、電磁放射線(例えば、可視光)のヤヌス液滴との相互作用の検出可能な変化を生じ得る。一部の場合、いくつかのヤヌス液滴の凝集は、ヤヌス液滴のそれぞれの配向の(例えば、検体への曝露前のヤヌス液滴の配向に対する)変化を生じ得る。他の場合、ヤヌス液滴は、検体への曝露前、凝集状態にあり得、系の検体への曝露が、凝集を崩壊させ、ヤヌス液滴の配向の変化を引き起こす。
【0062】
有利には、一部の実施形態では、本明細書に記載された系は、検体の非常に高感度の検出を可能にし得、その検出には、例えば、単一の検体の相互作用事象(例えば、結合事象、化学的反応、生物学的反応)の検出が挙げられる。実例的な実施形態では、単一の検体(例えば、1つのタンパク質、一本鎖のDNA、一本鎖のRNA)は、いくつかのヤヌス液滴の凝集、および凝集したヤヌス液滴のそれぞれの配向の変化を引き起こし得、その結果、単一の検体(例えば、単一のタンパク質、単鎖のDNAなど)が検出される。一部のそのような実施形態では、単一の検体は、いくつかのヤヌス液滴と結合し得、その結果、ヤヌス液滴が凝集する。別の実例的な実施形態では、単一の検体は、単一のヤヌス液滴の配向を(例えば、ヤヌス液滴と結合したテザーの酵素的分解により)変化させ得、その結果、単一の検体が検出される。一部の実施形態では、複数の検体および/または複数の型の検体が(例えば、複数のヤヌス液滴の配向の変化、および/またはヤヌス液滴群の凝集により)検出され得る。ある特定の実施形態では、系に曝露された検体の濃度は、系の検体への曝露により配向を変化させたヤヌス液滴の数を測定することにより決定され得る。
【0063】
図1Aに図示されているように、一部の実施形態では、系100は、ヤヌス液滴120などの複数のヤヌス液滴を含む。ある特定の実施形態では、ヤヌス液滴120は、(例えば、炭化水素を含む)第1の相130および(例えば、フルオロカーボンを含む)第2の相140を含む。
図1Aに図解的に描かれているように、一部の実施形態では、第1の相130および第2の相140は、各ヤヌス液滴において相対的に同じ体積を有し得る。しかしながら、当業者は、この明細書の教示に基づいて、第1の相および第2の相の体積が等しくない場合もあることを理解しているものと予想される。
【0064】
一部の実施形態では、
図1Aに描かれているように、ヤヌス液滴120は、配向100Aなどの特定の配向を有する。本明細書に記載されているようなヤヌス液滴の配向は、第1の相(例えば、第1の相130)と第2の相(例えば、第2の相140)との間の界面(例えば、界面125)により定義される平面の角度を測定することにより決定され得る。一部の実施形態では、ヤヌス液滴120の検体への曝露により、ヤヌス液滴は、配向を(例えば、配向100Aから配向100Bへ)変化させ得る。一部のそのような実施形態では、検体は、ヤヌス液滴上に存在する結合性部分に結合し得、その結果として、ヤヌス液滴の配向の変化を生じる。
図1Aに図示されているように、配向100Bにおける界面125の配向は、配向100Aにおける界面125の配向と異なる。例えば、一部の実施形態では、ヤヌス液滴は、検体への曝露により(例えば、ヤヌス液滴に会合した結合性部分との検体の結合により)回転し得る。一部の実施形態では、ヤヌス液滴の配向の変化は、決定可能(例えば、測定可能)であり、その結果、それは、検体の存在を示す。
【0065】
本明細書に記載されたヤヌス液滴は、いくつかの適用において有用であり得る。例示的な実施形態では、本明細書に記載されたヤヌス液滴は、検体の検知に使用され得る。例えば、一部のそのような実施形態では、ヤヌス液滴は、検体への曝露により配向を変化させ得、その結果、その配向の変化が、(例えば、そのコロイドの光透過、偏光、複屈折などの変化により)検出され得る。別の例示的な実施形態では、本明細書に記載されたヤヌス液滴は、チューナブルレンズ(tunable lens)として使用され得る。ある特定の実施形態では、ヤヌス液滴の光学的性質(例えば、透過、吸収、反射、焦点距離、および散乱)の測定値は、特定の液滴配向を示し得る。例えば、液滴配向の変化が目的の検体(すなわち、酵素、汚染物、ウイルス、細菌など)と相関する場合、光学的測定値が検体の存在の読み出し機構としての役割を果たすセンサーとしてヤヌス液滴を使用することができる。ある特定の実施形態では、時間経過と共に目的の検体の変化(例えば、時間経過における酵素による化学物質の分解などの化学反応の進行)がある系について、時間経過におけるヤヌス液滴の光学的性質の変化の追跡は、例えば、反応速度または検体濃度を分析するために、使用することができる。一部のそのような実施形態では、ヤヌス液滴の配向は、検体の存在下で変化し、その結果、その系は、特定の時間範囲にわたって透明な状態を獲得し、または代替として、特定の時間範囲にわたって相対的に不透明な状態を獲得する。
【0066】
ヤヌス液滴の性質が変化することは、直前のヤヌス液滴の性質が、検体への曝露後のいくらかの相対的に短い時間(例えば、数秒間、数分間、数時間)におけるヤヌス液滴の性質とは実質的に測定可能な形式において異なることを指すことを、当業者は理解しているものと予想される。当業者はまた、本明細書および下記の実施例に基づいて、ヤヌス液滴の性質の変化を決定するための方法(例えば、平均複屈折を測定すること、1つまたは複数の波長における光透過を測定すること、密度を測定することなど)を選択する能力があると予想される。
【0067】
例えば、
図1Bに図示されているように、システム102は、例示的なヤヌス液滴120などの複数のヤヌス液滴を含む。一部の実施形態では、電磁放射線180Aが、ヤヌス液滴120と相互作用する。ある特定の実施形態では、(例えば、検体が、ヤヌス液滴に会合した結合性部分と結合するような)システム102の検体への曝露により、ヤヌス液滴120は、検体への曝露前の電磁放射線180Aの相互作用と比較して、電磁放射線180Aのヤヌス液滴との相互作用を変化させるのに十分な程度に、配向を(例えば、配向100Aから100Bへ)変化させる。例えば、検体への曝露前、ヤヌス液滴120は、電磁放射線180Aと相互作用し得、その結果、電磁放射線180Bが生成される。一部の実施形態では、電磁放射線180Aおよび電磁放射線180Bは、実質的に同じであり得る。例えば、ヤヌス液滴120は、配向100Aを有する場合があり、その結果、相互作用する(例えば、ヤヌス液滴120の界面125と垂直に透過する)電磁放射線の波長および/または振幅は実質的に変化していない。
【0068】
例えば、一部の場合、複数のヤヌス液滴は、系が、第1の相と第2の相との間の界面(例えば、界面125)の表面に垂直の方向に、実質的に光学的に透明であるような配向であり得る。しかしながら、一部の場合、電磁放射線180Bは、電磁放射線180Aとは波長および/または振幅において異なり得る。一部の実施形態では、システム102の検体への曝露により、ヤヌス液滴120は、配向を配向100Aから配向100Bへ変化させ、その結果、電磁放射線180Aはヤヌス液滴120と相互作用し、電磁放射線180Bとは異なる電磁放射線180Cを生じる。
【0069】
一部の実施形態では、複数のヤヌス液滴は、複数のヤヌス液滴と相互作用する電磁放射線を検出可能な様式で変化させるのに十分な程度に、(例えば、検体への曝露により)配向が変化している。ある特定の実施形態では、ヤヌス液滴の少なくとも一部分は、配向を変化させ、それにより、その物品の光透過を変化させ、および/またはそれにより、その物品の光学的性質の検出可能な変化を生じる。一部の実施形態では、検出可能な変化には、色の変化、1つもしくは複数の方向の平均ルミネセンス、および/またはヤヌス液滴(または複数のヤヌス液滴を含む系)の平均光透過が挙げられる。
【0070】
一部の実施形態では、電磁放射線(例えば、ヤヌス液滴との相互作用前の電磁放射線、ヤヌス液滴との相互作用後の電磁放射線)は、任意の適切な波長を含み得、その波長には、赤外線(例えば、約700nmから約1cmの間の波長)、可視光(例えば、約400nmから約700nmの間の波長)、および紫外(UV)線(例えば、約10nmから約400nmの間の波長)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0071】
ある特定の実施形態では、複数のヤヌス液滴(例えば、ヤヌス液滴120)は、
図1A~
図1Cに図示されているように、外相110内に分散している。一部の実施形態では、外相は水相(例えば、水を含む)である。水相はまた、一部の場合、有機分子、イオン、細胞、または生物有機体(biological organism)を含む溶質を含み得る。一部の実施形態では、系を検体へ曝露することは、検体を外相へ導入することを含む。ある特定の実施形態では、検体は外相に加えられ得、その結果、複数のヤヌス液滴が検体に曝露される。
【0072】
ある特定の実施形態では、
図1Aに図示されているように、複数のヤヌス液滴は、表面150に隣接し得る。本明細書で使用される場合、コンポーネント(例えば、ヤヌス液滴)が別のコンポーネント(例えば、表面)に「隣接」していると言われる時、それは、そのコンポーネントに直接隣接することができ、または介在コンポーネント(例えば、流体)がまた存在する場合もある。別のコンポーネントに「直接隣接」するコンポーネントとは、介在コンポーネントが存在しない(例えば、そのコンポーネントと別のコンポーネントが互いに接触している)ことを意味する。表面150は反射面を含み得、その結果、系を検体へ曝露させることが、ヤヌス液滴の光学的性質の検出可能な変化を引き起こし、それにより、表面150からの反射された電磁放射線もまた変化させられる。例示的な実施形態では、複数のヤヌス液滴は実質的に透明であり、それゆえに、表面150は、(例えば、表面150に対して垂直に見た場合)目で見え、検体への曝露により、複数のヤヌス液滴の光透過が、減少し、その結果、表面150の少なくとも一部分が不明瞭になる。表面150はまた、一部の場合、透明であり得、その結果、光は、その表面およびヤヌス液滴を通って透過し、それゆえに、検体への曝露が光の透過を変化させる。
【0073】
一部の実施形態では、複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分は、表面に対して(例えば、ヤヌス液滴の第1の相と第2の相との間の界面により定義される平面の角度により測定される場合)平行に配向されている。例えば、再び、
図1Aを参照すると、一部の実施形態では、(検体への曝露前の)ヤヌス液滴120の界面125は、ヤヌス液滴120に隣接した表面150に対して実質的に平行に配向される。ある特定の実施形態では、複数のヤヌス液滴は、互いに実質的に平行に配向され得る(例えば、実質的に整列され得る)。一部の実施形態では、検体への曝露前、複数のヤヌス液滴は重力の力により整列/配向され(例えば、他の相より大きい密度を有する第1の相または第2の相)、その結果、複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が互いに実質的に平行に配向される。他の実施形態では、ヤヌス液滴の整列を引き起こす力には、電場または磁場が挙げられ得る。例えば、ある特定の実施形態では、複数のヤヌス液滴は、(例えば、強磁性粒子を含む)磁気相(magnetic phase)を含み得る。
【0074】
一部の実施形態では、検体への曝露は、複数のヤヌス液滴の凝集を生じる。例えば、
図1Cに図示されているように、系104は、複数のヤヌス液滴(例えば、例示的なヤヌス液滴120、122、および124)を含む。ある特定の実施形態では、複数のヤヌス液滴は、(界面125A、125B、および125Cに関して)互いに実質的に平行に配向され得る。一部の実施形態では、複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分の第1の相と第2の相との間の界面は、重力の力の主要な方向に直交して整列し、その結果、複数のヤヌス液滴は互いに実質的に平行に配向される。一部の実施形態では、検体への曝露により、ヤヌス液滴の少なくとも一部分が、凝集する。ある特定の実施形態では、ヤヌス液滴の凝集は、ヤヌス液滴の少なくとも一部分の配向の変化(例えば、界面125A、125B、および125Cの角度の変化により測定される場合)を生じる。
【0075】
ある特定の実施形態では、ヤヌス液滴に会合した結合性部分は、検体に結合し得、その結果、ヤヌス液滴は凝集する。例えば、再び
図1Cを参照すると、検体への曝露により、検体は、2つまたはそれより多いヤヌス液滴上の結合性部分と結合し得る(例えば、ヤヌス液滴120とヤヌス液滴122との間など、2つまたはそれより多いヤヌス液滴間で結合した複合体1
60を形成する)。
【0076】
一部の実施形態では、複数の結合性部分(例えば、1つまたは複数のヤヌス液滴に会合した結合性部分)は、1つまたは複数の検体に多価的に結合し得る。例えば、
図1Dに図示されているように、検体155は、ヤヌス液滴120、ヤヌス液滴122、およびヤヌス液滴124に多価的に結合して、その結果、ヤヌス液滴は凝集する。一部のそのような実施形態では、検体への曝露および結合により、ヤヌス液滴は、複数のヤヌス液滴と相互作用する電磁放射線を検出可能な様式で変化させるのに十分な程度に配向を変化させる。
【0077】
図1Dに図示されているように、ある特定の実施形態では、系は、表面に係留された(例えば、結合した)複数のヤヌス液滴を含み得る。一部の実施形態では、系の検体への曝露は、テザーの破壊(例えば、切断)を生じ、その結果、ヤヌス液滴の少なくとも一部分が配向を(例えば、複数のヤヌス液滴と相互作用する電磁放射線を検出可能な様式で変化させるのに十分な程度に)変化させる。例えば、
図2に図示されているように、系200は、ヤヌス液滴220に隣接した表面260にテザー270を介して係留された、第1の相230および第2の相240を含むヤヌス液滴220を含む。一部の実施形態では、検体への曝露は、テザー270の破壊を生じ、その結果、ヤヌス液滴220は配向を(検体への曝露前の配向200Aから検体への曝露による配向200Bへ)変化させる。当業者は、この明細書の教示に基づいて、表面260が、平面である必要はなく、例えば、曲面であり得る(例えば、表面は、ポリマー粒子および/または無機粒子を含む)ことを理解しているものと予想される。一部の場合、表面は、分子の集合体を含み得る。ある特定の実施形態では、表面は、(例えば、皮膚(例えば、ヒト皮膚)、器官組織、細胞などを含む)生物学的組織を含み得る。一部の場合、表面は、外相および/またはヤヌス液滴内に存在する1つもしくは複数の相と不混和性の液体であり得る。一部の実施形態では、表面は、ポリマー材料を含む。
【0078】
一部の実施形態では、ヤヌス液滴は、第1の相と第2の相との間の界面が、隣接した支持体(substrate)と平行ではなく、および/または複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分に平行ではないように、表面に係留されている。一部のそのような実施形態では、検体によるテザーの破壊により、ヤヌス液滴の少なくとも一部分が配向を(例えば、ヤヌス液滴の少なくとも一部分が互いに平行であり、および/または隣接した支持体に平行であるように)変化させる。一部の場合、検体の存在によるテザーの破壊は、系の光透過の増加を生じる(例えば、その結果、表面に対して垂直に見た時、支持体上のフィーチャーが目に見える)。テザーには、例えば、1つもしくは複数のタンパク質、ポリマー、1つもしくは複数のDNA鎖、1つもしくは複数のRNA鎖、またはそれらの組み合わせが挙げられ得る。他のテザーもまた可能である。
【0079】
検体は、テザーを任意の適切な様式で破壊し得る。例えば、一部の実施形態では、検体はテザーを(例えば、酵素的分解により)切断し得る。ある特定の実施形態では、検体は、テザーを破壊するように外相のpHを変化させることにより、テザーを切断し得る。一部の実施形態では、検体は、テザーの切断を引き起こし得、その結果、複数のヤヌス液滴に会合した(例えば、その内部に組み込まれた)1つまたは複数の結合性部分が検体と結合する。一部のそのような実施形態では、1つまたは複数の結合性部分は、テザーと結合していてもよく、それにしたがって、ヤヌス液滴が表面に結合しており、検体への曝露により、結合性部分が、テザーから解放されて、検体と結合する。
【0080】
一部の場合、結合性部分は、媒体(例えば、水相)中の別の生物学的または化学的分子に結合する能力がある生物学的または化学的基を含み得る。例えば、結合性部分は、チオール、アルデヒド、エステル、カルボン酸、ヒドロキシルなどの官能基を含み得、その官能基は、検体と結合を形成する。一部の場合、結合性部分は、電子の豊富な、または電子の乏しい部分であり得、検体と結合性部分との間の相互作用は、静電相互作用を含む。一部の場合、検体と結合性部分との間の相互作用は、金属または金属含有部分との結合を含む。
【0081】
一部の実施形態では、結合性部分と検体は、タンパク質、核酸、糖タンパク質、炭水化物、ホルモン、薬物などを含む生物学的分子のペアの間の結合事象を介して相互作用する。具体的な例には、抗体/ペプチドのペア、抗体/抗原のペア、抗体断片/抗原のペア、抗体/抗原断片のペア、抗体断片/抗原断片のペア、抗体/ハプテンのペア、酵素/基質のペア、酵素/インヒビターのペア、酵素/補因子のペア、タンパク質/基質のペア、核酸/核酸のペア、タンパク質/核酸のペア、ペプチド/ペプチドのペア、タンパク質/タンパク質のペア、小分子/タンパク質のペア、グルタチオン/GSTのペア、抗GFP/GFP融合タンパク質のペア、Myc/Maxのペア、マルトース/マルトース結合タンパク質のペア、炭水化物/タンパク質のペア、炭水化物誘導体/タンパク質のペア、金属結合性タグ/金属/キレート、ペプチドタグ/金属イオン-金属キレートのペア、ペプチド/NTAのペア、レクチン/炭水化物のペア、受容体/ホルモンのペア、受容体/エフェクターのペア、相補性核酸/核酸のペア、リガンド/細胞表面受容体のペア、ウイルス/リガンドのペア、プロテインA/抗体のペア、プロテインG/抗体のペア、プロテインL/抗体のペア、Fc受容体/抗体のペア、ビオチン/アビジンのペア、ビオチン/ストレプトアビジンのペア、薬物/標的のペア、ジンクフィンガー/核酸のペア、小分子/ペプチドのペア、小分子/タンパク質のペア、小分子/標的のペア、炭水化物/タンパク質のペア、例えば、マルトース/MBP(マルトース結合タンパク質)、小分子/標的のペア、または金属イオン/キレート剤のペアが挙げられる。結合性部分の具体的な非限定的例には、ペプチド、タンパク質、DNA、RNA、PNAが挙げられる。他の結合性部分および結合ペアもまた可能である。
【0082】
一部の実施形態では、結合性部分とテザーは、タンパク質、核酸、糖タンパク質、炭水化物、ホルモンなどを含む生物学的分子のペアの間の結合事象を介して相互作用する。
【0083】
検体は、任意の適切な材料(例えば、蒸気検体、液体検体、固体検体)を含み得、その結果、検体の系への取り込みが、複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が配向を(例えば、テザーの破壊および/またはヤヌス液滴の凝集により)変化させることを引き起こす。当業者は、本明細書および下記の実施例の教示に基づいて、検体、およびヤヌス液滴に適したコンポーネントを選択する能力があると予想される。検体の非限定的例には、生物学的化合物、薬物、高分子、塩、電解質、酵素、核酸、炭水化物、ペプチド、タンパク質、脂質、ホスフェート、スルホネート、ウイルス、病原体(例えば、細菌、ウイルス)、酸化剤、還元剤、毒素、化学兵器剤、爆発物、二酸化炭素、界面活性剤、またはそれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、テザーは、生物学的化合物、薬物、高分子、塩、電解質、酵素、核酸、炭水化物、ペプチド、タンパク質、脂質、ホスフェート、スルホネート、ウイルス、病原体、酸化剤、還元剤、毒素、化学兵器剤、爆発物、二酸化炭素、界面活性剤、またはそれらの組み合わせである。例示的な実施形態では、検体は細菌である。
【0084】
例示的な実施形態では、酵素が、複数のヤヌス液滴を含む系に加えられ得、その結果、酵素は、複数のヤヌス液滴に存在するコンポーネント、結合性部分、テザー、および/または両親媒性化合物の1つまたは複数と相互作用する。一部のそのような実施形態では、酵素は、コンポーネント、結合性部分、テザー、および/または両親媒性化合物(例えば、酵素の存在下で切断される界面活性剤など)と相互作用し得、その結果、複数のヤヌス液滴の少なくとも一部分が、本明細書に記載されているように、配向を変化させる。ある特定の実施形態では、ヤヌス液滴は、検体の特定の臨界濃度において配向を変化させる。
【0085】
別の例示的な実施形態では、1つまたは複数のヤヌス液滴は、生物学的検体と相互作用する能力がある界面活性剤などの両親媒性化合物を含み得る。一部のそのような実施形態では、ヤヌス液滴は、生物学的検体の存在下で配向を変化させ、それにしたがって、配向の変化を(例えば、光透過により)検出することができる。
【0086】
一部の実施形態では、結合性部分と検体との間の相互作用には、結合性部分と検体、および/または結合性部分とテザーとの間の化学変換が挙げられる。化学変換の非限定的例には、酵素的分解、酵素的合成、イオン化、切断、カップリング、ハイブリダイゼーション、凝集、加水分解、異性化、還元、酸化、および1つまたは複数のコンポーネント(または界面活性剤などのコンポーネント材料)のホスト-ゲスト相互作用が挙げられる。他の化学変換もまた可能である。
【0087】
本明細書に記載されているように、一部の実施形態では、方法および系は、外相、および前記外相内に分散した複数のヤヌス液滴を含む。ある特定の実施形態では、複数のヤヌス液滴は、2つまたはそれより多い相を含む。2つまたはそれより多い相(例えば、第1の相および第2の相)は、温度範囲(例えば、臨界温度より下、臨界温度より上)にわたって実質的に混和性であり得る。2つまたはそれより多い相はまた、それらが混和性である温度範囲とは異なる温度範囲(例えば、臨界温度より上、臨界温度より下)にわたって実質的に不混和性であり得る。異なる温度において異なる混和性を有する2つまたはそれより多い相の使用は、以前の方法の限界(例えば、マイクロ流体デバイスの低収率、多段階のプロセス、溶媒添加および/または抽出の必要性など)に拘束されない、そのようなヤヌス液滴の1段階形成(例えば、バルク)を可能にし得る。
【0088】
本明細書に記載されたヤヌス液滴は、任意の適切な方法を使用して形成され得る。例えば、一部の実施形態では、外相材料、第1の相、および第2の相が混合および乳化されて、外相、およびその外相内に分散した複数のヤヌス液滴を形成する。流体を乳化するための適切な方法は当技術分野において公知であり、超音波処理、高剪断混合、振盪、流体を膜に通過させること、または2つもしくはそれより多いコンポーネントを外相へ小口径のチャネルを通して注入することを含み得る。
【0089】
ヤヌス液滴を形成するための方法の非限定的例は、共有に係る2015年10月30日に出願された米国特許出願公開第2016/0151753号、発明の名称「Compositions and Methods for Forming Emulsions」、および2016年10月30日に出願された米国特許出願公開第2016/0151756号、発明の名称「Compositions and Methods for Arranging Colloid Phases」に、より詳細に記載されており、それらの特許出願のそれぞれは、全体として参照により本明細書に組み入れられている。
【0090】
本明細書で使用される場合、「不混和性の」とは、逆ペンダントドロップゴニオメーターにより決定される場合、0.01mN/mより大きいかまたはそれに等しい界面張力を有する2つの相を指す。逆に、本明細書で使用される場合、「混和性の」とは、逆ペンダントドロップゴニオメーターにより決定される場合、0.01mN/m未満の界面張力を有する2つの相を指す。
【0091】
本明細書で使用される場合、相という用語は、実質的に類似した分子の群、および/または実質的に類似した化合物の群を含む液滴または流体の一部分を一般的に指す。当業者は、それが、単一の分子または原子を指すものではないことを理解しているものと予想される。一部の実施形態では、相は、実質的に類似した化合物および/または分子および/またはポリマーの群を含む液相(例えば、水相、非水相)である。例えば、一部の場合、各相は、2つまたはそれより多い相の総体積の少なくとも約1体積%、少なくとも約2体積%、少なくとも約5体積%、少なくとも約10体積%、少なくとも約20体積%、少なくとも約50体積%、少なくとも約70体積%、少なくとも約90体積%、少なくとも約95体積%、または少なくとも約99体積%を占め得る。
【0092】
一部の実施形態では、2つまたはそれより多い相の少なくとも1つ(例えば、第1の相)は、炭化水素を含む。適切な炭化水素の非限定的例には、アルカン(例えば、ヘキサン、ヘプタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン)、アルケン、アルキン、芳香族(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、安息香酸ベンジル、フタル酸ジエチル(diethyl phalate))、油(例えば、天然油、ならびに植物油、鉱油、およびオリーブ油を含む油混合物)、液状モノマーおよび/またはポリマー(例えば、ヘキサンジオールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート)、アルコール(例えば、ブタノール、オクタノール、ペンタノール、エタノール、イソプロパノール)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル)、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ニトロメタン、ハロゲン化液体(例えば、クロロホルム、ジクロロベンゼン、塩化メチレン、四塩化炭素)、臭素化液体、ヨウ化液体、ラクテート(例えば、乳酸エチル)、酸(例えば、クエン酸、酢酸)、液晶(4-シアノ-4’-ペンチルビフェニル)、トリメチルアミン、液晶炭化水素(例えば、5-シアノビフェニル)、それらの組み合わせ、および任意選択で置換された、それらの誘導体が挙げられる。一部の実施形態では、炭化水素は、ハロゲン基、イオウ、窒素、リン、酸素などを含む。他の炭化水素もまた可能である。
【0093】
一部の実施形態では、2つまたはそれより多い相の少なくとも1つ(例えば、第2の相)は、フルオロカーボンを含む。適切なフルオロカーボンの非限定的例には、ペルフルオロアルカン(例えば、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロオクタン、ペルフルオロデカリン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン)、ペルフルオロアルケン(例えば、ペルフルオロベンゼン)、ペルフルオロアルキン、および分岐フルオロカーボン(例えば、ペルフルオロトリブチルアミン)などのフッ化化合物が挙げられる。適切なフルオロカーボンの追加の非限定的例には、メトキシペルフルオロブタン、エチルノナフルオロブチルエーテル、2H,3H-ペルフルオロペンタン、トリフルオロトルエン、ペルフルオロヨージド(perfluoroidodide)、フッ化または部分フッ化オリゴマー、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9-ヘキサデカフロオロデカン-1,10-ジイルビス(2-メチルアクリレート)、ペルフルオロヨージド、および2-(トリフルオロメチル)-3-エトキシドデカフルオロヘキサンなどの部分フッ化化合物が挙げられる。他のフルオロカーボンもまた可能である。
【0094】
一部の実施形態では、2つまたはそれより多いコンポーネント相の少なくとも1つは、シリコーン油などのシリコーンである。適切なシリコーン油の非限定的例には、ポリジメチルシロキサンおよびシクロシロキサン流体が挙げられる。
【0095】
一部の実施形態では、2つまたはそれより多い相の少なくとも1つは水を含む。
【0096】
一部の実施形態では、2つまたはそれより多い相の少なくとも1つはイオン性の液体(例えば、電解質、液体塩)を含む。一部の実施形態では、2つまたはそれより多い内相の少なくとも1つは、イオン性の液体(例えば、電解質、液体塩、1-アリル-3-メチルイミダゾリウムブロミド、1-アリル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-ベンジル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムヘキサフルオロホスフェート)を含む。一部の実施形態では、外相は水を含む。ある特定の実施形態では、2つまたはそれより多い相の少なくとも1つは重水素化化合物(例えば、重水素化炭化水素)を含む。
【0097】
一部の実施形態では、2つまたはそれより多い相の少なくとも1つは塩素化溶媒(例えば、クロロホルム、四塩化炭素)を含む。
【0098】
一部の実施形態では、2つまたはそれより多い相の少なくとも1つは、上記の材料の組み合わせ(例えば、炭化水素、フルオロカーボン、シリコーン、またはそれらの組み合わせを含む)を含む。本明細書に記載されたヤヌス液滴に存在する相の組み合わせの非限定的例には、ヘキサンとペルフルオロヘキサン、四塩化炭素とペルフルオロヘキサン、クロロホルムとペルフルオロヘキサン、ヘキサンとペルフルオロデカリン、ヘキサンとペルフルオロメチルシクロヘキサン、ヘキサンとペルフルオロトリブチルアミン、イソプロパノールとヘキサデカン、乳酸エチルとヘプタン、酢酸とデカン、およびトリエチルアミンと水が挙げられる。他の組み合わせと材料もまた可能である。
【0099】
当業者は、本明細書および下記の実施例の教示に基づいて、上記のように、2つまたはそれより多い相が特定の温度範囲および/または条件範囲下で不混和性であるように、適切な相を選択する能力があると予想される。
【0100】
外相は任意の適切な材料を含み得る。一般的に、複数のヤヌス液滴を含む2つまたはそれより多い相は、外相と実質的に不混和性であり得る。一部の実施形態では、外相は水相(例えば、水を含む)である。一部の場合、水相は、イオンを有し、および/または生物学的流体(例えば、痰、血液、血漿、尿)と混合され得る。ある特定の実施形態では、外相は非水相である。一部の実施形態では、その非水相は、2つまたはそれより多い相と実質的に不混和性の、2つまたはそれより多い相の関連において上で記載されているような、炭化水素、フルオロカーボン、シリコーンなどを含む。当業者は、本明細書および下記の実施例の教示に基づいて、外相として使用される適切な材料を、それらの材料の混和性に基づいて(例えば、2つまたはそれより多い相が外相と実質的に不混和性であるように)選択する能力があると予想される。非水性外相の使用は、エマルジョンが、低湿度の環境で使用されるある特定の適用において、有利であり得る。例えば、フルオロカーボン/炭化水素相を含む複数のヤヌス液滴は、液体シリコーンマトリックスにおいて生成することができる。
【0101】
一部の実施形態では、ヤヌス液滴は、両親媒性化合物を含む。ある特定の実施形態では、結合性部分は、両親媒性化合物に会合している。例えば、結合性部分は、両親媒性化合物の少なくとも一部分と結合し得る。
【0102】
ある特定の実施形態では、両親媒性化合物は、外相において混和性である。一部の実施形態では、両親媒性化合物は、2つまたはそれより多い相(例えば、第1の相、第2の相)の少なくとも1つにおいて混和性である。ある特定の実施形態では、両親媒性化合物は、外相における混和性より、2つまたはそれより多い相の少なくとも1つにおいてより高い混和性を有する。他の実施形態では、両親媒性化合物は、水性ミセル構造などの分散物または(例えば、両親媒性化合物の分散物を、ヤヌス液滴を含有する溶液へ注入することを含む)溶解方法により、ヤヌス液滴に加えられる。一部の実施形態では、両親媒性化合物は、外相と複数のヤヌス液滴との間の界面に配置される。ある特定の実施形態では、両親媒性化合物は、2つまたはそれより多い相の少なくとも2つの間の界面(例えば、第1の相と第2の相との間の界面)に配置される。両親媒性化合物は、優先的には、1つまたは複数の相または外相と相互作用し得る。当業者は、本明細書および下記の実施例の教示に基づいて、適切な両親媒性化合物を選択する能力があると予想される。
【0103】
一部の実施形態では、両親媒性化合物は界面活性剤である。適切な界面活性剤の非限定的例には、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、および両性イオン性界面活性剤が挙げられる。一部の実施形態では、界面活性剤は、フルオロ界面活性剤(fluorosurfactant)(例えば、Zonyl(登録商標)またはCapstone(登録商標)などの市販されているフルオロ界面活性剤)である。ある特定の実施形態では、界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))、陽イオン性界面活性剤(例えば、アルキルトリメチル塩化アンモニウム、アルキルメチル臭化アンモニウム)、非イオン性界面活性剤(例えば、アルキルポリ(酸化エチレン))、両性イオン性界面活性剤(例えば、アルキルベタイン、C8-レシチン)、ポリマー界面活性剤、ジェミニ型界面活性剤(gemini surfactant)、粒状界面活性剤(例えば、酸化グラフェン、シリカ粒子)、およびそれらの組み合わせである。他の界面活性剤もまた可能である。一部の実施形態では、両親媒性化合物は核酸(例えば、DNA、RNA)である。ある特定の実施形態では、両親媒性化合物は、アミノ酸(例えば、ペプチド、タンパク質)を含む。一部の実施形態では、両親媒性化合物はバイオマテリアルを含む。適切なバイオマテリアルの非限定的例には、炭水化物またはその誘導体、サッカライドまたはその誘導体(例えば、シアル酸)、脂質またはその誘導体、酵素、発色団などが挙げられる。当業者は、本明細書および下記の実施例の教示に基づいて、適切なバイオマテリアルを選択する能力があると予想される。
【0104】
一部の実施形態では、両親媒性化合物は、過フッ化セグメントを含む。一部の実施形態では、両親媒性化合物は、エチレングリコールを含む。
【0105】
一部の実施形態では、両親媒性化合物は、金属錯体を形成する能力がある。
【0106】
一部の実施形態では、1つもしくは複数の相(例えば、第1の相、第2の相)および/または外相は、その1つもしくは複数の相および/または外相に分散した追加の化合物を含む。ある特定の実施形態では、追加の化合物は、第1の相において混和性/分散性であり、第2の相において不混和性/非分散性である。一部の場合、追加の化合物の少なくとも一部分は、第1の相において分散性であり、第2の相において非分散性である(例えば、界面活性剤)。一部の実施形態では、追加の化合物は、外相において分散性でも非分散性でもよい。適切な追加の化合物の非限定的例には、粒子(例えば、磁気粒子/ナノ粒子、シリカ粒子)、生体分子(例えば、インスリン)、薬学的化合物、ポリマー、界面活性剤、細胞、細菌、ウイルス、活性薬学的成分、および金属または金属粒子が挙げられる。他の追加の化合物もまた可能であり、当業者は、この明細書の教示に基づいて、そのような化合物を選択する能力があると予想される。
【0107】
一部の実施形態では、複数のヤヌス液滴は、2つまたはそれより多い相が互いに実質的に混和性になるように、外相および2つまたはそれより多い不混和性の相を含む流体の温度を調整し、その流体を乳化する(例えば、それゆえ、複数のヤヌス液滴を形成する)ことにより、形成することができる。ある特定の実施形態では、方法は、2つまたはそれより多い相が実質的に不混和性になるように、2つの相を含む流体の温度を調整することを含む。他の実施形態では、方法は、乳化前に安定な均一の組成を生じる溶媒の添加を含み、溶媒は、蒸発または抽出により除去されて、相分離を生じ、ヤヌス液滴を産生する。
【0108】
例えば、
図3に図示されているように、流体300Aは、第1の温度T
0において不混和性である第1の相310(例えば、炭化水素)および第2の相320(例えば、フルオロカーボン)を含む。一部の実施形態では、第1のコンポーネントおよび第2のコンポーネントが流体300Bにおいて混和性混合物330を形成するように、T
0は第2の温度T
1に調整される(例えば、T
1はT
0より高い、またはT
1はT
0より低い)。例えば、一部の実施形態では、最初は実質的に不混和性である、第1の相および第2の相は、それらが混和性であるように加熱され得る。ある特定の実施形態では、最初は実質的に不混和性である、第1の相および第2の相は、それらが混和性であるように、冷却され得る。ある特定の実施形態では、混和性混合物330は、乳化されて、複数の液滴332を含むエマルジョン300Cを形成することができる。複数の液滴332は、混和性混合物330を含み、外相340に存在し得る。一部の場合、外相340は、温度をT
0からT
1へ変化させる前に加えられ得る。ある特定の実施形態では、外相340は、温度を変化させた後であるが、乳化前に加えられ得る。
【0109】
一部の実施形態では、液滴332が第1の相310、および第1のコンポーネント310と実質的に不混和性の第2の相320を含み、ヤヌス液滴を形成するように、T1は温度T2に調整される(例えば、T2はT1より高い、またはT2はT1より低い)。
【0110】
一部の実施形態では、T1は、2つまたはそれより多い相の臨界温度(例えば、2つまたはそれより多い相の上限共溶温度(upper consolute temperature))より高い。ある特定の実施形態では、T1は、2つまたはそれより多い相の臨界温度(例えば、下限共溶温度(lower consolute temperature))より低い。当業者は、2つまたはそれより多い相の臨界温度(例えば、上限共溶温度、下限共溶温度)を決定するための適切な方法を選択する能力があると予想される。
【0111】
流体を乳化するための適切な方法は、当技術分野において公知であり、超音波処理、高剪断混合、振盪、流体を膜に通過させること、または2つもしくはそれより多いコンポーネントを外相へ小口径のチャネルを通して注入することを含み得る。
【0112】
複数のヤヌス粒子は、任意の適切な平均横断面寸法を有し得る。一部の実施形態では、複数のヤヌス粒子の平均横断面寸法は、400ナノメートルより大きいかまたはそれに等しい、500ナノメートルより大きいかまたはそれに等しい、600ナノメートルより大きいかまたはそれに等しい、800ナノメートルより大きいかまたはそれに等しい、1ミクロンより大きいかまたはそれに等しい、2ミクロンより大きいかまたはそれに等しい、5ミクロンより大きいかまたはそれに等しい、10ミクロンより大きいかまたはそれに等しい、20ミクロンより大きいかまたはそれに等しい、30ミクロンより大きいかまたはそれに等しい、50ミクロンより大きいかまたはそれに等しい、60ミクロンより大きいかまたはそれに等しい、75ミクロンより大きいかまたはそれに等しい、100ミクロンより大きいかまたはそれに等しい、150ミクロンより大きいかまたはそれに等しい、200ミクロンより大きいかまたはそれに等しい、300ミクロンより大きいかまたはそれに等しい、または400ミクロンより大きいかまたはそれに等しい。ある特定の実施形態では、複数のヤヌス粒子の平均横断面寸法は、500ミクロン未満またはそれに等しい、400ミクロン未満またはそれに等しい、300ミクロン未満またはそれに等しい、200ミクロン未満またはそれに等しい、150ミクロン未満またはそれに等しい、100ミクロン未満またはそれに等しい、75ミクロン未満またはそれに等しい、60ミクロン未満またはそれに等しい、50ミクロン未満またはそれに等しい、20ミクロン未満またはそれに等しい、10ミクロン未満またはそれに等しい、5ミクロン未満またはそれに等しい、2ミクロン未満またはそれに等しい、1ミクロン未満またはそれに等しい、800ナノメートル未満またはそれに等しい、600ナノメートル未満またはそれに等しい、または500ナノメートル未満またはそれに等しくてもよい。上記で言及された範囲の組み合わせが可能である(例えば、400ナノメートルより大きいかまたはそれに等しく500ミクロン未満またはそれに等しい、400ナノメートルより大きいかまたはそれに等しく100ミクロン未満またはそれに等しい、30ミクロンより大きいかまたはそれに等しく200ミクロン未満またはそれに等しい)。他の範囲もまた可能である。
【実施例】
【0113】
以下の実施例は、本発明のある特定の態様の実施形態を例証する。本明細書に記載された方法および/または材料は、当業者に公知のように、改変および/または拡大縮小され得ることは理解されるべきである。
【0114】
以下の実施例は、検体の検出のための系の使用を実証する。
【0115】
標的化検体(目的の種/分子)を多価的に結合する認識要素で特別に設計された界面活性剤を、合成した。結合相互作用は、複数のヤヌス液滴を重力に対して直立位置から水平に傾斜した位置へ変換することができた。この変換は、検体の存在下で異なる光シグナル(光線の散乱)を発生した。複数のヤヌス液滴が、表面または粒子と結合することにより予め傾斜しており、最初、散乱位置にある場合、反対の応答も可能であった。この場合、検体の作用は、表面または粒子間の連結を崩壊させ、散乱を低下させる直立位置への緩和を可能にすることであった。光シグナルは、例えば、バイナリーのオン/オフ検出についてQRコード(登録商標)を使用し、エマルジョン混合物における検体の量を定量化するようにコンピュータ的に処理される低倍率画像を使用し、および/または試料を通る集束光線の透過をモニターすることにより、スマートフォンによって記録することができた。そのような系は、水性液相検出を含むバイオセンサー適用において使用することができた。低分子量界面活性剤分子のみを含む(ヤヌス液滴を含む)エマルジョンは、製作するのに比較的費用がかからず、さらなる予防措置なしに、何週間にもわたって安定していた。より高いエマルジョン安定性が必要な可能性がある場合、ポリマー界面活性剤分子および構造を用いることができた。加えて、場合によっては、界面活性剤の濃度および/または正体の小さい変化が、ヤヌス液滴の配向の有意な変化をもたらすため、ヤヌス液滴は、病原体の検出について非常に選択性および感度が高かった。ヤヌス液滴を、多分散系液滴を生成するバルク乳化を使用するか、または単分散系液滴を生成するマイクロ流体デバイスにおいてかのいずれかで、製作した。水溶性の界面活性剤について、官能化界面活性剤を含有する溶液を、連続相として使用した。炭化水素相(例えば、ヘキサン、オルト-ジクロロベンゼン、フタレートなど)およびフルオロカーボン相(例えば、ペルフルオロヘキサン、エチルノナフルオロブチルエーテル、メトキシペルフルオロブタン)を混合し、上限臨界温度より高く加熱して、単一の液滴相を生成した。液滴相を、界面活性剤を含有する連続(外)相へ分散させると、単一のエマルジョンが生成された;冷却により、炭化水素相およびフルオロカーボン相は分離して、ヤヌス液滴を生成した。各液滴の組成は実質的に類似していた。なぜなら、それらは、同じ単一の液滴相から生成されたからであった。加えて、界面活性剤は、液滴相へ組み入れることができた。水溶性ではない界面活性剤を、混合前に、炭化水素相またはフルオロカーボン相に溶解した。その後、界面活性剤を含有する液滴相を、連続水相(追加の界面活性剤および界面活性剤集合体を含有してもよい)へ分散させて、液滴を生成することができた。どちらの場合も、ヤヌス液滴は、官能化界面活性剤で覆われた表面を有する検知粒子として使用された。界面活性剤または界面活性剤集合体は、ポリマー界面活性剤/安定剤、またはタンパク質、酵素、核酸、DNA、RNAを含む生物学的意義がある高分子を含有することができた。
【0116】
病原性細菌の検知
病原性細菌を検出するための本発明者らのアプローチは、異なる細菌が炭水化物の特定のパターンに対して示す一般的な親和性を利用した。標的化検体の1つである、Escherichia coli(E.coli)は、汚染された食品および水に容易に広がり得る細菌である。E.coliの大部分の株は無害であるが、毒素を産生するある特定の株は、重篤かつ致死的な病気を引き起こし得る。そのE.coli細菌を検出するために、炭水化物-レクチンの相互作用を介して細胞の表面と相互作用する界面活性剤を注意深く設計した。E.coliの表面上のレクチンとD-マンノースとの間のこの弱い相互作用は、典型的には、単一の相互作用に頼る場合、細菌を高感度で検出するのに困難を生じる。したがって、表面上のマンノース部分の濃度を増加させるようにヤヌス液滴の1つの相を官能化する界面活性剤を設計した。マンノース部分の濃度の増加は、細菌と液滴との間の結合親和性を有意に増強して、液滴を選択性検知粒子へと変換した。D-マンノースを結合することが公知のレクチンであるコンカナバリンA(ConA)間の結合を、最初、ヤヌス液滴をモデル系として使用して、調べた。このテクノロジーは、例えば、活性界面活性剤を変化させることにより、他の検体に、比較的容易に適応させることができる。D-マンノース頭部基(ManC14)を有する新規な界面活性剤を合成した(
図4A)。
図4Aは、マンノース界面活性剤(ManC14)合成についてのスキームを示す。
図4Bは、コンカナバリンA(ConA)と共に整列するヤヌス液滴の概略図を示す。ヤヌス液滴の底部に、より高密度のペルフルオロヘキサン相、および頂部にヘキサン相が整列した。
【0117】
この特定の検知プラットフォームについて、ヤヌス液滴を、以下の方法を使用して製作した。界面活性剤ManC14およびZonyl(登録商標)FS 300(市販されているフルオロカーボン界面活性剤)を、連続相としてのHEPESバッファー溶液(pH=7.5)中に溶解した。ヘキサンとペルフルオロヘキサンの混合物(単一の液滴相)を、界面活性剤溶液へ分散させ、冷却して、ヤヌス液滴を生成した。ヤヌス液滴におけるヘキサン相を、マンノース基で官能化し、界面活性剤ManC14は優先的にヘキサン/水の界面に整列した。理論に縛られるつもりはないが、重力、およびヘキサンの密度に対してペルフルオロヘキサンのより高い密度のせいで、ヤヌス液滴は、底部においてペルフルオロヘキサン相と整列した(
図4B)。ConAは、HEPESバッファー溶液中に、0.5mg mL
-1の最終濃度で溶解した。漸増量(10μL~40μL)のこの溶液をヤヌス液滴に加えた;そして、溶液を旋回させた後、2つの顔をもつヤヌス液滴は、固有の傾斜した立体配置で整列し始めた。ManC14界面活性剤により安定化された表面は一緒に凝集して、液滴複合体を形成した(
図4B)。
【0118】
理論に縛られるつもりはないが、ConAが4つのサブユニットを有し、それぞれがマンノースに対する結合部位を含むため、凝集現象が起こった。この4部位型結合剤は、複数の粒子を結合し、それらを一つにして、凝集された液滴複合体を生じる、抗体と同じように働く。ヤヌス液滴が凝集した時、溶液は、透明から不透明へ変化する。この大きく容易に観察できる変化は特に強力である。なぜなら、検出事象は、一般的に、例えば、いかなる外部の力の入力も必要としないと予想されるからである。ヤヌス液滴凝集レベルは、本明細書に記載されているように、定性的と定量的の両方で特徴付けることができた。
【0119】
表面化学の調整
表面認識は、多くの異なる型の方法に適用することができる一般的な現象である。タンパク質、細胞、または病原体であり得る、多価受容体に結合するリガンド界面活性剤の使用を、上で記載した。受容体が液滴の表面に固定化され、その後、(天然または合成の)多価リガンドスキャフォールドを使用して、ヤヌス液滴を結合し、それらを、重力により支持された、整列した非散乱状態に対して傾斜した(散乱する)状態に保持する場合、このスキームは、逆転され得る。リガンドは、標的検体より低い親和性を有するように設計することができ、ゆえに、検体への曝露は、多価リガンドと液滴との間の連結(例えば、テザー)を破壊する置き換えを生じ得る。同様に、液滴とリガンドとの間のテザーは切断することができる。これは、エステルなどのペプチドを切断する酵素または分解RNAにより影響され得る。それはまた、触媒または重金属イオンまたは選択求核試薬(硫化物)により影響され得る。一部の場合、リガンドは、表面に結合し得る。リガンドが別の液滴上に存在することも可能である。
【0120】
傾斜している、または代替として、傾斜していない(重力により整列している)個々の液滴は、比較的容易に定量化することができる。これは、場合によっては、単一の検体を検出する能力を生じる。例えば、液滴がDNA二重鎖により表面にアンカリングされている場合には、DNAの単一の分子が検出され得ることが可能である。この二重鎖の相補性標的DNA検体による崩壊を観察することができる。多量の他の傾斜した液滴における1つの整列した液滴が容易に検出されると予想される。このスキームは、例えば、DNA分子に対する多数の潜在的結合部位があり、したがって、標的DNAは、まれな結合部位を見出すことを必要とされないという利点を有する。同様に、多量の整列した液滴における傾斜した液滴のクラスターを検出することができ、そのように行うことで、単一の検体を検出することができると予想される。
【0121】
凝集したヤヌス液滴の検出
ヤヌス液滴の溶液は、一般的に、そのエマルジョンが凝集した場合、透明から不透明へ変わる。
図5Aは、検体への曝露前のヤヌス液滴の溶液を示す。
図5Bは、検体への曝露後のヤヌス液滴の溶液を示す。そのような大きく、容易に観察できる違いは、光学顕微鏡写真を分析する画像処理アルゴリズムの使用へ組み入れられ得る。これらの光学顕微鏡写真は、例えば、4×および10×の低倍率を可能にする拡大レンズを備えた任意の一般的なスマートフォンから容易に撮影される(
図6A)。
【0122】
定性的な目的のために、検出は、元のヤヌス液滴と凝集したヤヌス液滴との間の光学的透明度の有意な変化を使用して、バイナリー応答を生じ得る。例えば、
図6Bに示されているように、ヤヌス液滴を含有する透明な分析チャンバーを、2次元QRコード(登録商標)の上に置いた。ConAの存在下において、チャンバーは、不透明になり、QRコード(登録商標)の一部分を覆った。この変換は、スマートフォンがQRコード(登録商標)を読み取るのを阻害した。
【0123】
凝集の程度を定量化するために、以下の2つの異なる論理による、凝集したヤヌス液滴により覆われた区域のパーセンテージを計算する画像処理プログラムを、実装させた:1)重複する液滴の量、および2)画像の光強度の差。
図7A~
図7Cは、標的化された検体の非存在下での複数のヤヌス液滴の定量化を示す。
図7D~
図7Fは、標的化された検体に曝露された複数のヤヌス液滴の定量化を示す。
【0124】
具体的には、画像処理プログラムは、各ヤヌス液滴の位置をマッピングし、それらの半径を測定することにより、生の光学顕微鏡写真(
図7Aおよび
図7D)を分析した(
図7Bおよび
図7E)。この情報を使用して、その後、プログラムは、重複するエマルジョンを探索した。上記のように、凝集の間、ヤヌス液滴は、一つになって、凝集したヤヌス液滴の液滴複合体を形成した。プログラムは、液滴複合体の一部としての2つより多い重複する隣接するものを有する各液滴を識別し、ゼロ、1つ、または2つの重複する隣接するものを有するいかなる液滴も棄却した(
図7Cおよび
図7F)。その後、凝集したヤヌス液滴により覆われた区域のパーセンテージを、元の試料(
図7C)と凝集した試料(
図7F)の両方について計算した。
【0125】
その後、これらのヤヌス液滴凝集により覆われた区域はさらに、画像内の光強度の分析と相関させた。定性的検出と同様に、画像分析は、より低い光学的透明度により、凝集したヤヌス液滴の領域を識別することができる。プログラムは、適応閾値化アルゴリズムを使用して、より高い透明度を有する区域(元のヤヌス液滴)を、不透明な領域(凝集したヤヌス液滴)から識別した(
図8A~
図8F)。その2つの異なる論理、すなわち重複するヤヌス液滴を同定することと、光強度の変化を分析することの組み合わせは、凝集したヤヌス液滴の領域を正確に検出することができる。さらに、全プロセスは、画像を捕捉することから最後の計算まで、数秒以内で完了することができる。
【0126】
一部の場合、ヤヌス液滴は、個々のレンズとして振る舞う。そのような液滴は、走査光線で、またはいくつかのビームを同時に用いて、調べることができる。この場合(例えば、
図8A~
図8F)、光線は、試料を通って透過し、光検出器のアレイ上に衝突する。シグナルは、光線の直線路を表す強度の変化、および屈折する(例えば、直線路から偏向する)光を表す強度の変化により導き出すことができる。本発明者の理論に縛られるつもりはないが、直線路の地点におけるより低い強度、およびその経路から屈折している光のより高い強度は、1つまたは複数の液滴の傾斜の増加を示す。同様に、直線路における光のより高い強度、および屈折しているより低い強度は、液滴の傾斜の減少を示し得る。そのようなレンズ機能(lensing)は、単一の液滴における変化の検出を可能にする。例えば、単一の事象を検出する能力は、単一の病原体、細胞、触媒、または分子の検出をもたらすことができる。
【0127】
図9は、単一の連結(テザー)を破壊することが潜在的に、肉眼で見ることができるセンサー応答を発生することができるストラテジーを詳述する。この系において、ヤヌス液滴(CSC)の赤色の相がより高い密度を有し、引力がその粒子を配向するように作用した。ヤヌス液滴を傾斜した散乱立体配置にピン留めしていた、化学結合または相補性DNA相互作用テザーを崩壊させることは、透過性平衡配向への緩和を生じた。この方法の利点は、例えば、多数の液滴における1つの液滴だけが、検出するために回転される必要があることである。追加として、パターン化表面に係留することにより、単一のデバイスにおいて複数の型の検体を検出することができるセンサーのアレイを作製することができる。
【0128】
液滴の形成
材料。ConAの検出について、炭化水素相およびフルオロカーボン相として、それぞれ、ヘキサンおよびペルフルオロヘキサンを選択した。他の場合、適切な適用のために、混合物の上限臨界温度(Tc)および密度の差を調整するために、炭化水素相(オルト-ジクロロベンゼン、フタレートなど)とフルオロカーボン相(エチルノナフルオロブチルエーテル、メトキシペルフルオロブタンなど)の異なるペアを取り換えることができる。連続水相について、界面活性剤ManC14およびZonyl(登録商標)FS 300を、ヤヌス液滴を安定化し、かつ生成するように選択した。2つの界面活性剤を、HEPESバッファー溶液(pH=7.5)中に別々に、それぞれ、0.0005重量%および0.01重量%の濃度で、溶解した。バルク乳化およびマイクロフルイディクス方法のどちらにおいても、ManC14溶液とZonyl FS 300溶液間の最終体積比は、1.2:1に保たれて、2半球体のヤヌス液滴を生成した。水溶性である界面活性剤(例えば、ManC14およびZonyl(登録商標)FS 300)について、官能化界面活性剤を含有する溶液を、連続相として使用した。
【0129】
多分散系ヤヌス液滴についてのバルク乳化。バルク乳化によりヤヌス液滴を生成するために、本発明者らは、ヘキサンとペルフルオロヘキサンの等量混合物を、5mLガラスバイアル中1mLの総体積で調製することから始めた。その混合物は、最初、室温で不混和性溶液を形成した。その後、その混合物を含有するバイアルを、標準ヒートガンを使用して、その混合物が混和性になるまで、Tcより上に加熱した;ヘキサン-ペルフルオロヘキサン混合物について、Tcは20℃である。炭化水素とフルオロカーボンの他の組み合わせについて、Tcは、その2つの液体に依存して変動し得る。別の5mLガラスバイアルにおいて、ManC14およびZonyl FS 300(両方の濃度は前のセクションで報告されている)を含有する連続相の1mLもまた、ヘキサン-ペルフルオロヘキサン混合物を含有するバイアルと同じ温度へ加熱した。この予防措置は、乳化前の添加によるヘキサンとペルフルオロヘキサンの相分離を軽減し得る。その後、加熱され、かつ混和性のヘキサン-ペルフルオロヘキサン混合物の50μLを、加熱された連続相へピペットにより注入した。その後、そのバイアルを、ボルテックスミキサーを使用して3000RPMで5秒間、振盪することによりヤヌス液滴が生成された。その後、ヤヌス液滴の溶液を、氷浴を使用して、Tcより低く冷却した。このバルク乳化方法は、光学顕微鏡により観察された場合、30μmから200μmまでの範囲の直径を有する多分散系液滴を生成した。
【0130】
マイクロフルイディクスによる単分散系ヤヌス液滴の生成。同軸ガラスキャピラリーマイクロフルイディクスと、市販されているマイクロ流体チップの両方を使用して、エマルジョンを生成した。同軸ガラスキャピラリーマイクロフルイディクスについて、デバイスを、P-1000 Micropipette Puller(Sutter Instrument Company)を使用して30μmのチップへ引っ張られた外側の正方形キャピラリー(OD=1.5mm、ID=1.05mm、AITガラス)および内側の円柱形キャピラリー(OD=1mm、World Precision Instruments)から作製した。市販のマイクロ流体デバイスについて、Micronit製のFocused Flow Droplet Generatorチップ(チャネル幅=100μm、チャネル深さ=20μm、チップ幅=10μm、ガラス)を使用した。どちらのマイクロフルイディクス系においても、外相(連続相)および内相(液滴相)を注入するためにHarvard Apparatus PHD Ultraシリンジポンプを使用した。流量は、連続相について50μL 分-1、液滴相について30μL 分-1であった。単分散系液滴の溶液を、まず、20mLガラスバイアルにより収集し、後で、ManC14溶液およびZonyl(登録商標)溶液の両方で希釈して、その2つの界面活性剤の1.2:1の体積比を維持しながら、6体積%の最終液滴相濃度を達成した。マイクロ流体セットアップを、加熱ランプを使用して、内相溶液のTcより高く加熱した。その後、ヤヌス液滴をTcより低く冷却して、相分離を誘導した。ヘキサン-ペルフルオロヘキサンのエマルジョンについて、そのエマルジョンを、画像化前に氷上で冷やし、多くの場合、20℃より下の温度に維持するために冷水浴中に浸漬しながら、画像化した。このセットアップから生成した単分散系液滴の平均直径は、60±10μmであった。各液滴の組成は、ほぼ同一であった。なぜなら、各液滴が、同じ単一の液滴相から生成されたからであった。
【0131】
安定性および試料保存。上記のいずれかの方法から生成されたヤヌス液滴は、室温下で約数週間、安定であることが観察された。乳化後、ヤヌス液滴を、室温で、閉じられたガラスバイアルにおいて、機械的摂動なしに、連続相内に保持した。ヤヌス液滴の直径は、数週間の保存後、有意に変化することは観察されなかった。
【0132】
検知
ConAの検知のための試料調製。検知実験のために使用される単分散系または多分散系ヤヌス液滴を、上記の方法を使用して製作した。ヤヌス液滴を、1cm深さのウェルおよび1.5cm直径の観察ウィンドウを有するステンレススチールの試料ホルダーへ入れた。30μLのヘキサン-ペルフルオロヘキサン液滴相を含有する混合界面活性剤溶液の0.5mLを、試料ホルダーへ入れ、観察ウィンドウ全体を覆うヤヌス液滴の単層を生じた。試料ホルダーおよびヤヌス液滴の溶液を、ConAの検知および画像獲得の間、ヘキサン-ペルフルオロヘキサン混合物のTc、20℃より低く保った。
【0133】
モデル系:ConAの検知。ConAをHEPESバッファー溶液中に0.5mg mL-1の最終濃度で溶解し、検体として使用した。10μLのConA溶液を、マイクロピペットを使用して、ヤヌス液滴を含有する試料ホルダーへ加えた。その後、溶液を穏やかに旋回させ、数秒以内にヤヌス液滴の凝集が観察された。ConA溶液を加える前と後に画像を記録した。後で、漸増体積(40μLまで)のConA溶液を加えて、凝集レベルと検体濃度との間の相関を得た。凝集レベルを、下記のように、定性的と定量的の両方で分析した。
【0134】
表面化学
DNA官能化表面の製作。ガラス支持体を、ダストを除去するためにアセトンおよびイソプロピルアルコールにおける超音波処理、それぞれ5分間により、クリーニングした。完全に乾燥した後、ガラス支持体を、ピラニア溶液(H2SO4:H2O2、1:1、v/v)中に1時間、浸漬し、蒸留水で徹底的に濯ぎ、その後、N2下で乾燥させた。その後、ガラス支持体を浸漬し、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で終端したトリクロロシランリンカーのトルエン溶液と1時間、反応させて、NHS共有結合性官能化ガラス支持体を形成した。その後、pH9における四ホウ酸ナトリウムバッファー中に溶解した10μM ssDNAの溶液を反応させて、アミド結合を形成し、そのアミド結合は、ガラススライドの表面上にそのssDNAを付着させた。ssDNAをアルキル鎖で官能化して、界面活性剤分子を形成した。ssDNA官能化ガラス支持体の表面上に存在するヤヌス液滴は、重力に対して傾斜した。0.25M NaCl溶液中に溶解した相補鎖の溶液をヤヌス液滴に加えて、DNA鎖をハイブリダイズした。DNA鎖がハイブリダイズされた区域において、ヤヌス液滴はガラス支持体から遊離され、重力で整列した。ssDNAの官能化の成功を保証するために、X線光電子分光法を使用して、ガラス支持体上の要素を分析した。
【0135】
検出
検出のための試料調製。検出の定性的方法と定量的方法の両方について、ヤヌス液滴を、ステンレススチールの試料ホルダーにおいて画像化した。定性的検出について、2次元QRコード(登録商標)(1cm×1cm)を、分析チャンバーの観察ウィンドウより1cm下に置いた。定量的検出について、コントラストを与えるためにQRコード(登録商標)の代わりに白色背景を使用した。分析チャンバーおよびヤヌス液滴の溶液を、ヤヌス液滴の形態を維持するために、ヘキサン-ペルフルオロヘキサン混合物のTcより十分低く、氷浴中に保持した。
【0136】
QRコード(登録商標)を使用する定性分析。定性分析を、スマートフォンから撮影した、拡大されていない画像からのQRコード(登録商標)を使用して実施した。フォンから、ヤヌス液滴を含有する分析チャンバーまでの距離はおよそ10cmであった。正確な距離は、QRコード(登録商標)の既知の寸法(1cm×1cm)を使用することによる画像処理ソフトウェアにより較正された。測定されるバイナリー応答は、QRコード(登録商標)がソフトウェアによって読み取られ得るかどうかであった。QRコード(登録商標)が読み取り可能である場合には、ヤヌス液滴は、凝集していないと見なされ、逆もまた同様であった。
【0137】
定量分析のための画像獲得。定量分析のために低倍率画像を獲得するために、拡大レンズを有するアダプターを、スマートフォン上へ適合させた。この改変で、4×および10×の倍率での光学顕微鏡写真が得られた。スマートフォンから分析チャンバーまでの作動距離は1cmであった。作動距離および画像の寸法を、10μmの目盛を有する、分析チャンバーの真下の較正標示により較正した。その後、画像処理ソフトウェアは、捕捉された画像を、それらをグレースケール画像へ変換し、ブランク分析チャンバーの参照画像に対して明るさおよびコントラストを調整することにより、前処理した。各試料について、分析チャンバーの区域の大部分に及ぶ画像の10×10のアレイを形成する、100個の写真が撮影された。
【0138】
重複するヤヌス液滴の同定。10×倍率での前処理された画像(調整された明るさおよびコントラストをもつグレースケール画像)から、画像処理プログラムは、まず、分析チャンバーの真下の較正標示を使用することにより、ヤヌス液滴の直径の範囲を推定した。その後、プログラムは、あらゆるヤヌス液滴の中心を探索およびマッピングし、その直径を計算した。このプロセスは、円のハフ変換に基づいた改変方法により行われた。ヤヌス液滴の中心および直径の座標を用いて、その後、プログラムは、重複する液滴を評価した。具体的には、2つの液滴の2つの中心間の距離が、その2つの半径の合計より小さい場合には、その液滴は重複していると見なされた。この論理を使用して、プログラムは、同定された液滴ごとに、重複している隣接するものの数を効率良くマッピングすることができた。
【0139】
液滴複合体の同定。ヤヌス液滴は、それの重複している隣接するものの数が3を超える場合には、液滴複合体の一部であると見なされた。場合によっては、液滴複合体の端における液滴の過剰計数、および液滴の偶発的な重複を防ぐために、この閾値が設定された。この測定をさらに、光強度に基づいた分析によって協調させた。その後、凝集された液滴複合体により占められた区域が計算された。
【0140】
光強度の変化の分析。4×倍率の前処理された画像(調整された明るさおよびコントラストをもつグレースケール画像)を使用して、プログラムは、まず、適応閾値アルゴリズムを適用して、ヤヌス液滴のより暗い端を、傾斜した粒子を含む液滴複合体から識別した。より具体的には、プログラムは、固有の低い光強度を有する液滴の端を無視し、液滴複合体の区域のみを探索した。閾値は、液滴複合体の部分と見なされる、最も明るい領域の45%未満の光強度を有する区域を使用して設定された。この情報から、その後、液滴複合体により占められた区域が計算された。
【0141】
本発明のいくつかの実施形態が本明細書に記載され、例証されているが、当業者は、本明細書に記載された機能を実施し、ならびに/または本明細書に記載された結果および/もしくは利点の1つもしくは複数を得るための、様々な他の手段および/または構造を容易に構想すると予想され、そのようなバリエーションおよび/または改変のそれぞれは、本発明の範囲内であると考えられる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載された全てのパラメータ、寸法、材料、および配置は例示的であることを意味すること、ならびに実際のパラメータ、寸法、材料、および/または配置が、本発明の教示が使用される特定の適用(複数可)に依存すると予想されることを容易に認識していると予想される。当業者は、本明細書に記載された本発明の特定の実施形態の多くの等価物を、単なる日常的実験を使用して、容認し、または確かめることができると予想される。したがって、前述の実施形態は、単なる例として提示されていること、ならびに添付された特許請求の範囲およびそれの等価物の範囲内で、本発明が具体的に記載され、および主張されているのとは別様に実践され得ることは、理解されるべきである。本発明は、本明細書に記載された各個々のフィーチャー、系、物品、材料、キット、および/または方法に向けられる。加えて、2つまたはそれより多い、そのようなフィーチャー、系、物品、材料、キット、および/または方法の任意の組み合わせは、そのようなフィーチャー、系、物品、材料、キット、および/または方法が相互に矛盾しない場合には、本発明の範囲内に含まれる。
【0142】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、不定冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、明らかにそれとは反対に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0143】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、句「および/または」は、そのように連結された要素の「いずれかまたは両方」、すなわち、連言的に存在する場合もあれば、選言的に存在する場合もある要素を意味すると理解されるべきである。「および/または」の節により具体的に同定された要素以外の他の要素は、明らかにそれとは反対に示されない限り、具体的に同定されたそれらの要素と関係しようが関係しまいが、任意選択で、存在し得る。したがって、非限定的例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む」などのオープンエンドの言語と共に使用される場合、一実施形態では、Bを含まずAを含むこと(任意選択で、B以外の要素を含む);別の実施形態では、Aを含まずBを含むこと(任意選択で、A以外の要素を含む);さらに別の実施形態では、AとBの両方を含むこと(任意選択で、他の要素を含む)などを指すことができる。
【0144】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、「または」は、上記で定義されているような、「および/または」と同じ意味をもつと理解されるべきである。例えば、リストにおいて項目を選別する場合、「または」または「および/または」は、包括的である、すなわち、いくつかの要素または要素のリストの、少なくとも1つ(1つより多くも含む)、および任意選択で、追加のリストに載っていない項目を包含するものと解釈されるべきである。明らかにそれとは反対に示された用語のみ、例えば、「の1つだけ」または「の正確に1つ」、または特許請求の範囲に使用される場合、「からなる」は、いくつかの要素または要素のリストの正確に1つの要素の包含を指す。一般的に、本明細書に使用される場合、用語「または」は、「いずれかの」、「の1つ」、「の1つだけ」、または「の正確に1つ」などの排他性の用語が先行する時のみ、排他的選択肢(すなわち、「一方または他方であるが、両方ではない」)を示すと解釈されるべきである。特許請求の範囲に使用される場合の「から本質的になること」は、特許法の分野で使用される場合のそれの通常の意味をもつものとする。
【0145】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、1つまたは複数の要素のリストへの言及における句「少なくとも1つ」は、要素のリストにおける要素の任意の1つまたは複数から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリスト内に具体的に列挙されたありとあらゆる要素の少なくとも1つを必ずしも含むわけではなく、要素のリストにおける要素の任意の組み合わせを排除しないことと理解されるべきである。この定義はまた、句「少なくとも1つ」が言及する要素のリスト内に具体的に同定された要素以外の要素が、具体的に同定されたそれらの要素と関係しようが関係しまいが、任意選択で存在してもよいことを許す。したがって、非限定的例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または等価的に、「AまたはBの少なくとも1つ」、または等価的に、「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、任意選択で1つより多くを含む、少なくとも1つのAであって、Bが存在しない(および任意選択で、B以外の要素を含む)ことを指し;別の実施形態では、少なくとも1つのB、任意選択で例えば1つより多くのBであって、Aが存在しない(および任意選択で、A以外の要素を含む)ことを指し;さらに別の実施形態では、少なくとも1つのA、任意選択で例えば1つより多くのA、および少なくとも1つのB、任意選択で例えば1つより多くのB(および任意選択で、他の要素を含む)を指すことができる;以下同様。
【0146】
上記の本明細書においてだけでなく、特許請求の範囲において、「を含むこと(comprising)」、「を含むこと(including)」、「を所有すること」、「を有すること」、「を含有すること」、「を含むこと(involving)」、「を保有すること」などの全ての移行句は、非制限的である、すなわち、含むがそれらに限定されないことを意味すると理解されるべきである。移行句「からなる」および「から本質的になる」だけは、United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures、セクション2111.03に示されているように、それぞれ、排他的または半排他的な移行句であるものとする。
【0147】
本明細書に使用される場合、例えば、1つまたは複数の物品、構造、力、場、流れ、方向/軌道、ならびに/またはそれらの下位要素および/もしくはそれらの組み合わせ、ならびに/またはそのような用語による特徴付けに従う上記で列挙されていない任意の他の有形もしくは無形の要素の、またはそれらの間の、形状、配向、整列、および/または幾何学的関係に関する任意の用語は、他に定義または指示がない限り、そのような用語の数学的な定義への絶対的一致を必要とはしないと理解されるべきであり、むしろ、そのような題材に最も密接に関係した分野の業者により理解されているのと同じように特徴付けられるような、その題材について可能な程度で、そのような用語の数学的な定義への一致を示すと理解されるべきである。形状、配向、および/または幾何学的関係に関するそのような用語の例には、以下が挙げられるが、それを記述した用語に限定されない:形状、例えば、球形、正方形、円形の/円形、長方形の/長方形、三角形の/三角形、円柱形の/円柱形、楕円形の/楕円形、(n)多角形の/(n)多角形など;角度方向、例えば、垂直の、直交の、平行の、鉛直の、水平の、同一線上の、など;輪郭および/または軌道、例えば、平面/平面の、同一平面上の、半球体の、やや球体の、線/線の、双曲線の、放物線の、平らな、曲線状の、一直線の、弓形の、正弦曲線の、接線/接線の、など;方向、例えば、北、南、東、西、など;表面および/またはバルク材料の性質および/または空間/時間分解能および/または分布、例えば、なめらか、反射的、透明な、澄んだ、不透明な、堅い、不浸透性の、均一な(均一に)、不活性の、非湿潤性の、不溶性の、安定した、不変の、一定の、均質な、など;加えて、関連業者に明らかであろう多くの他のもの。1つの例として、「正方形」であると本明細書に記載される、製作された物品は、そのような物品が、完全に平面または線形であり、正確に90度の角度(実際、そのような物品は、数学的抽象概念としてのみ存在することができる)で交差する面または側面を有することを必要とすることはなく、むしろ、そのような物品の形状は、典型的には、当業者により理解されているような、または具体的に記載されているような、挙げられた製作技術について達成可能な、および達成された程度で、数学的に定義されるような「正方形」に近いと解釈されるべきである。別の例として、「整列している」と本明細書に記載される2つまたはそれより多い製作された物品は、そのような物品が、完全に整列している面または側面を有する(実際、そのような物品は、数学的抽象概念としてのみ存在することができる)ことを必要とすることはなく、むしろ、そのような物品の配列が、典型的には、当業者により理解されているような、または具体的に記載されているような、挙げられた製作技術について達成可能な、および達成された程度で、数学的に定義されているような「整列している」ことに近いと解釈されるべきである。