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特許7193169アンテナ、無線通信機器およびアンテナ形成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】アンテナ、無線通信機器およびアンテナ形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 9/26 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
H01Q9/26
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020556640
(86)(22)【出願日】2019-09-12
(86)【国際出願番号】 JP2019035941
(87)【国際公開番号】W WO2020100402
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-04-30
(31)【優先権主張番号】P 2018212048
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】内田 淳
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-191792(JP,A)
【文献】国際公開第2000/026993(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 9/00- 9/46
H01Q 21/00- 21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
あらかじめ指定した任意の周波数において(1/4)波長の長さを有する第1(1/4)波長エレメントおよび第2(1/4)波長エレメント、並びに半波長の長さを有する半波長エレメントとの3つのエレメントを互いに直交する3直交状態に配置し、
かつ、
前記第1(1/4)波長エレメントの一方の端部と前記第2(1/4)波長エレメントの一方の端部とを、アンテナ給電用の給電点を介して結合し、
かつ、
前記第2(1/4)波長エレメントの他方の端部と前記半波長エレメントの一方の端部とを結合して、
1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナとして形成する、
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
あらかじめ指定した任意の周波数において(1/4)波長の長さを有する第1(1/4)波長エレメントおよび第2(1/4)波長エレメント、並びに半波長の長さを有する半波長エレメントとの3つのエレメントを互いに直交する3直交状態に配置し、
かつ、
前記第1(1/4)波長エレメントの一方の端部と前記第2(1/4)波長エレメントの一方の端部とを結合し、
かつ、
前記第2(1/4)波長エレメントの他方の端部と前記半波長エレメントの一方の端部とを結合し、
かつ、
前記半波長エレメントの中央の位置に、アンテナ給電用の給電点を形成して、
1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナとして形成する、
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項3】
あらかじめ指定した任意の周波数において(1/4)波長の長さを有する第1(1/4)波長エレメントおよび第2(1/4)波長エレメント、並びに半波長の長さを有する半波長エレメントとの3つのエレメントを互いに直交する3直交状態に配置し、
かつ、
前記第1(1/4)波長エレメントの一方の端部と前記第2(1/4)波長エレメントの一方の端部とを、アンテナ給電用の給電点を介して結合し、
かつ、
前記第2(1/4)波長エレメントの他方の端部と前記半波長エレメントの一方の端部とを互いに近接した位置で非接触状態に配置して、
1波長ひねりZ字型非接触3直交ダイポールアンテナとして形成する、
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項4】
あらかじめ指定した任意の周波数において半波長の長さを有する第1半波長エレメントと第2半波長エレメントと第3半波長エレメントとの3つのエレメントを互いに直交する3直交状態に配置し、
かつ、
前記第1半波長エレメントの一方の端部と前記第2半波長エレメントの一方の端部とを結合し、
かつ、
前記第2半波長エレメントの他方の端部と前記第3半波長エレメントの一方の端部とを結合し、
かつ、
前記第2半波長エレメントの中央の位置に、アンテナ給電用の給電点を形成して、
1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナとして形成する、
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項5】
あらかじめ指定した任意の周波数において半波長の長さを有する第1半波長エレメントと第2半波長エレメントと第3半波長エレメントとの3つのエレメントを互いに直交する3直交状態に配置し、
かつ、
前記第1半波長エレメントの一方の端部と前記第2半波長エレメントの一方の端部とを結合し、
かつ、
前記第2半波長エレメントの他方の端部と前記第3半波長エレメントの一方の端部とを結合し、
かつ、
前記第1半波長エレメントの中央の位置に、アンテナ給電用の給電点を形成して、
1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナとして形成する、
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項6】
あらかじめ指定した任意の周波数において半波長の長さを有する第1半波長エレメントと第2半波長エレメントと第3半波長エレメントとの3つのエレメントを互いに直交する3直交状態に配置し、
かつ、
前記第2半波長エレメントの中央の位置に、アンテナ給電用の給電点を形成し、
かつ、
前記第1半波長エレメントの一方の端部と前記第2半波長エレメントの一方の端部とを結合するか、あるいは、前記第1半波長エレメントの一方の端部と前記第2半波長エレメントの一方の端部とを互いに近接した位置で非接触状態に配置し、
かつ、
前記第2半波長エレメントの他方の端部と前記第3半波長エレメントの一方の端部とを互いに近接した位置で非接触状態に配置して、
1.5波長ひねりZ字型非接触3直交ダイポールアンテナとして形成する、
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項7】
あらかじめ指定した任意の周波数において半波長の長さを有する第1半波長エレメントと第2半波長エレメントと第3半波長エレメントとの3つのエレメントを互いに直交する3直交状態に配置し、
かつ、
前記第1半波長エレメントの一方の端部と前記第2半波長エレメントの一方の端部とを結合し、
かつ、
前記第2半波長エレメントの他方の端部と前記第3半波長エレメントの一方の端部とを互いに近接した位置で非接触状態に配置し、
かつ、
前記第3半波長エレメントの中央の位置に、アンテナ給電用の給電点を形成して、
1.5波長ひねりZ字型非接触3直交ダイポールアンテナとして形成する、
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項8】
合計の長さがあらかじめ指定した任意の周波数において半波長の長さになる、第1エレメントと第2エレメントと第3エレメントとの3つのエレメントを互いに直交する3直交状態に配置し、
かつ、
前記第1エレメントと前記第3エレメントとの長さを、相等しくするとともに、前記第2エレメントの長さよりも長くし、
かつ、
前記第1エレメントの一方の端部と前記第2エレメントの一方の端部とを結合し、
かつ、
前記第2エレメントの他方の端部と前記第3エレメントの一方の端部とを結合し、
かつ、
前記第2エレメントの中央の位置に、アンテナ給電用の給電点を形成して、
半波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナとして形成する、
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項9】
無線電波を放射するためのダイポールアンテナを有し、
前記ダイポールアンテナを構成するエレメントとしてあらかじめ指定した任意の周波数において(1/4)波長の長さを有する第1(1/4)波長エレメントおよび第2(1/4)波長エレメント並びに半波長の長さを有する半波長エレメントとの3つのエレメントを互いに直交する3直交状態に配置し、
かつ、
前記第1(1/4)波長エレメントの一方の端部と前記第2(1/4)波長エレメントの一方の端部とを、アンテナ給電用の給電点を介して結合し、
かつ、
前記第2(1/4)波長エレメントの他方の端部と前記半波長エレメントの一方の端部とを結合して、
1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナとして形成する、
ことを特徴とする無線通信機器。
【請求項10】
あらかじめ指定した任意の周波数において(1/4)波長の長さを有する第1(1/4)波長エレメントおよび第2(1/4)波長エレメント並びに半波長の長さを有する半波長エレメントとの3つのエレメントを互いに直交する3直交状態に配置し、
かつ、
前記第1(1/4)波長エレメントの一方の端部と前記第2(1/4)波長エレメントの一方の端部とを、アンテナ給電用の給電点を介して結合し、
かつ、
前記第2(1/4)波長エレメントの他方の端部と前記半波長エレメントの一方の端部とを結合して、
1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナとして形成する、
ことを特徴とするアンテナ形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ、無線通信機器およびアンテナ形成方法に関し、特に、ダイポールアンテナを用いるアンテナ、無線通信機器およびアンテナ形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信機器同士の通信は、如何なる機器同士であってもシームレスに通信を行うことが可能であることが重要である。例えば、無線通信機器の一例である無線親機あるいは無線基地局は、如何なる無線子機であってもシームレスな通信を行うことが務めである。そのためには、無線通信機器に搭載するアンテナが、最も重要な構成要素であり、シームレスな通信が可能になるように最適化しなければならない。
【0003】
しかし、最適化のためにアンテナの価格が高価なものになってしまうことは、ユーザには受け入れられない。価格が安く、かつ、良い性能を発揮することができるアンテナを提供することを可能にする技術開発が必要である。例えば、特許文献1に記載の「アンテナ装置および無線通信装置」においては、SSR(Split-Ring-Resonator)アンテナに限定しているが、基板面に対して垂直方向にアンテナを設置することを低コストで実現することができるという技術提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-139685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
家庭用に用いる無線通信機器の一例であるWi-Fi(登録商標)ホームルータ(無線親機)は、様々な無線子機と無線通信を行う。無線子機としては、スマートフォン、PC(Personal Computer)等がある。通常、無線子機は、家中を移動し、かつ、様々な姿勢で使われる。無線親機と無線子機との間の無線通信では、両者の間の無線電波の偏波が互いに合致することが重要である。合致しない場合には、無線親機や無線子機からの無線電波が相手の無線通信機器に届き難く、無線通信は途切れ易くなってしまう。
【0006】
図30A図30Bはそれぞれ、一般的な2つのダイポールアンテナにおける無線電波の偏波の一致状態、不一致状態を示すイメージ図である。図30Aは、2つのダイポールアンテナの無線電波の偏波が一致している状態を示し、図30Bは、2つのダイポールアンテナの無線電波の偏波が不一致になっている状態を示している。無線電波の偏波は、アンテナエレメントと同一面に発生する。したがって、図30Aのように、2つのアンテナ11Lと12Lとを平行に配置している状態においては、両アンテナにおける無線電波の偏波は一致状態になり、互いに無線電波をキャッチすることが可能である。しかし、図30Bのように、2つのアンテナ11L,12Lを直交配置している状態においては、両アンテナにおける無線電波の偏波が不一致状態になり、互いに無線電波をキャッチすることは理論上できない。
【0007】
ただし、図30Bのように、2つのアンテナ11L,12Lを直交配置している状態においても、実際には、壁等における反射によって、アンテナ11L,12Lにおける偏波が直交ではなくなり、近距離では送受信が可能になる場合が多い。しかし、2つのアンテナ11L,12Lが直交配置されている状態では、届く無線電波の電界強度は弱く、通信が途絶し易い。
【0008】
図31Aおよび図31Bは、関連する技術のダイポールアンテナを用いた一般的なホームルータのアンテナ構成を示す模式図である。図31Aは、ホームルータ10Lの外観を示す斜視図であり、図31Bは、該ホームルータ10Lの内部のアンテナ構成を図31Aよりも拡大して示した模式図である。図31Aの斜視図に示すように、ホームルータ10Lの筐体18内には、大地に対して垂直な状態で基板13が実装されている。そして、図31Bに示すように、基板13の上には、無線IC(Integrated Circuit)14が搭載されていて、該無線IC14は、半波長ダイポールアンテナ15Lの給電点16Lと同軸ケーブル17を介して接続されている。同軸ケーブル17を用いることにより、無線IC14から半波長ダイポールアンテナ15Lの給電点16Lに対して電力のロスを抑えて給電することができる。
【0009】
また、半波長ダイポールアンテナ15Lは、基板13の面と平行に配置されていて、大地に対して垂直な状態で実装されている。したがって、半波長ダイポールアンテナ15Lからは、大地に対して垂直な偏波しか出力されない。このため、該ホームルータ10Lと無線接続する無線子機側のアンテナ状態が大地に対して平行な状態に変化して、大地に対して水平な偏波(水平偏波)だけを要求している場合には、該ホームルータ10Lとの通信が困難になってしまう。つまり、通信相手となる無線子機の姿勢が種々の状態に変化することが想定されるホームルータ10Lのアンテナ構成としては、図31Bに示すような垂直な偏波のみで良好な通信状態になるアンテナは、最適なアンテナ構成とは言い難い。
【0010】
また、図32Aおよび図32Bは、図31Aおよび図31Bに示したホームルータ10Lの半波長ダイポールアンテナ15Lのアンテナ放射パターンを表現する際のX軸、Y軸、Z軸の設定状態を示す模式図である。図32Aは、図31Aおよび図31Bに示したホームルータ10Lの基板13、無線IC14、半波長ダイポールアンテナ15L、同軸ケーブル17それぞれのX、Y、Z軸上の位置関係を示す模式図であり、図32Bは、半波長ダイポールアンテナ15Lのアンテナ放射パターンを表現するためのXZ、YZ、XYの3面と半波長ダイポールアンテナ15Lとの位置関係を示す模式図である。なお、図32Aおよび図32Bは、X軸、Y軸、Z軸に関するアンテナの姿勢を概念的に示す図であり、次の図33のような、XZ、YZ、XYの3面におけるアンテナ放射パターンを示すために一般的に用いられている。アンテナ放射パターンは、図32Aおよび図32Bを参照して、XZ、YZ、XYの3面それぞれに対して直交する直交偏波および平行な平行偏波の電界強度を特性曲線として描くことにより、図33のように表現できる。
【0011】
図33は、図31Aおよび図31Bに示したホームルータ10Lの半波長ダイポールアンテナ15Lのアンテナ放射パターンを示すパターン図であり、図32Bの模式図に示すような位置関係にある半波長ダイポールアンテナ15LのXZ面、YZ面、XY面のそれぞれにおけるアンテナ放射パターンを示している。なお、図33においては、アンテナ放射パターンの水平偏波の特性曲線を太線で示し、垂直偏波の特性曲線を細線で示している。図33のパターン図に示すように、XZ面、YZ面においては、それぞれの面に平行な偏波すなわち垂直偏波は存在するものの、それぞれの面に直交する偏波すなわち水平偏波が全くないことが分かる。また、XY面においても、XY面に直交する偏波すなわち垂直偏波は存在するものの、XY面に平行な偏波すなわち水平偏波が全くないことが分かる。したがって、図31Aおよび図31Bに示すような半波長ダイポールアンテナ15Lのアンテナ構成の場合は、全方向に万遍なく無線電波の偏波を出力して、いずれの方向に対しても通信を行うことができるとは言い難い構成である。このように、関連する技術におけるダイポールアンテナは、全方向に万遍なく無線電波の偏波を出力することができず、このことがダイポールアンテナについて解決するべき課題として残されている。
【0012】
(本開示の目的)
本開示の目的は、前述したようなダイポールアンテナの課題に鑑み、ダイポールアンテナとして全方向に万遍なく無線電波の偏波を出力することが可能なアンテナ、無線通信機器およびアンテナ形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の課題を解決するため、本開示によるアンテナ、無線通信機器およびアンテナ形成方法は、主に、次のような特徴的な構成を採用している。
【0014】
(1)本開示の第1の態様に係るアンテナは、
あらかじめ指定した任意の周波数において(1/4)波長の長さを有する第1(1/4)波長エレメントおよび第2(1/4)波長エレメント、並びに半波長の長さを有する半波長エレメントとの3つのエレメントを互いに直交する3直交状態に配置し、
かつ、
前記第1(1/4)波長エレメントの一方の端部と前記第2(1/4)波長エレメントの一方の端部とを結合し、
かつ、
前記第2(1/4)波長エレメントの他方の端部と前記半波長エレメントの一方の端部とを結合し、
かつ、
前記第1(1/4)波長エレメントの一方の端部と前記第2(1/4)波長エレメントの一方の端部とが結合された位置に、アンテナ給電用の給電点を配置して、
1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナとして形成する、
ことを特徴とする。
【0015】
(2)本開示の第2の態様に係るアンテナは、
あらかじめ指定した任意の周波数において半波長の長さを有する第1半波長エレメントと第2半波長エレメントと第3半波長エレメントとの3つのエレメントを互いに直交する3直交状態に配置し、
かつ、
前記第1半波長エレメントの一方の端部と前記第2半波長エレメントの一方の端部とを結合し、
かつ、
前記第2半波長エレメントの他方の端部と前記第3半波長エレメントの一方の端部とを結合し、
かつ、
前記第2半波長エレメントの中央の位置に、アンテナ給電用の給電点を配置して、
1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナとして形成する、
ことを特徴とする。
【0016】
(3)本開示の第3の態様に係るアンテナは、
合計の長さがあらかじめ指定した任意の周波数において半波長の長さになる、第1エレメントと第2エレメントと第3エレメントとの3つのエレメントを互いに直交する3直交状態に配置し、
かつ、
前記第1エレメントと前記第3エレメントとの長さを、相等しくするとともに、前記第2エレメントの長さよりも長くし、
かつ、
前記第1エレメントの一方の端部と前記第2エレメントの一方の端部とを結合し、
かつ、
前記第2エレメントの他方の端部と前記第3エレメントの一方の端部とを結合し、
かつ、
前記第2エレメントの中央の位置に、アンテナ給電用の給電点を配置して、
半波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナとして形成する、
ことを特徴とする。
【0017】
(4)本開示の第4の態様に係る無線通信機器は、
無線電波を放射するためのダイポールアンテナを有し、
前記ダイポールアンテナを構成するエレメントとしてあらかじめ指定した任意の周波数において(1/4)波長の長さを有する第1(1/4)波長エレメントおよび第2(1/4)波長エレメント並びに半波長の長さを有する半波長エレメントとの3つのエレメントを互いに直交する3直交状態に配置し、
かつ、
前記第1(1/4)波長エレメントの一方の端部と前記第2(1/4)波長エレメントの一方の端部とを結合し、
かつ、
前記第2(1/4)波長エレメントの他方の端部と前記半波長エレメントの一方の端部とを結合し、
かつ、
前記第1(1/4)波長エレメントの一方の端部と前記第2(1/4)波長エレメントの一方の端部とが結合された位置に、アンテナ給電用の給電点を配置して、
1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナとして形成する、
ことを特徴とする。
【0018】
(5)本開示の第5の態様に係るアンテナ形成方法は、
あらかじめ指定した任意の周波数において(1/4)波長の長さを有する第1(1/4)波長エレメントおよび第2(1/4)波長エレメント並びに半波長の長さを有する半波長エレメントとの3つのエレメントを互いに直交する3直交状態に配置し、
かつ、
前記第1(1/4)波長エレメントの一方の端部と前記第2(1/4)波長エレメントの一方の端部とを結合し、
かつ、
前記第2(1/4)波長エレメントの他方の端部と前記半波長エレメントの一方の端部とを結合し、
かつ、
前記第1(1/4)波長エレメントの一方の端部と前記第2(1/4)波長エレメントの一方の端部とが結合された位置に、アンテナ給電用の給電点を配置して、
1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナとして形成する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本開示のアンテナ、無線通信機器およびアンテナ形成方法によれば、主に、以下のような効果を奏することができる。
【0020】
すなわち、ダイポールアンテナを構成する3つのエレメントを3直交配置とすることにより、無線通信性能向上に欠かせない無線電波の偏波の改善を実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係るアンテナの一例である1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナのアンテナ構成の一例を示す模式図である。
図2図1に示したアンテナのアンテナ放射パターンを示すパターン図である。
図3】実施形態に係るアンテナの一例である1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナの図1のアンテナとは異なるアンテナ構成例を示す模式図である。
図4図3に示したアンテナのアンテナ放射パターンを示すパターン図である。
図5】実施形態に係るアンテナの一例である1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナの図1図3のアンテナとは異なるアンテナ構成例を示す模式図である。
図6図5に示したアンテナのアンテナ放射パターンを示すパターン図である。
図7】実施形態の一例として図5に示したアンテナを用いたホームルータのアンテナ構成の一例を示す斜視図である。
図8】実施形態の一例として図5に示したアンテナを用いたホームルータのアンテナ構成の図7とは異なる例を示す斜視図である。
図9】実施形態に係るアンテナの一例である1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナの図1図3図5のアンテナとは異なるアンテナ構成例を示す模式図である。
図10図9に示したアンテナのアンテナ放射パターンを示すパターン図である。
図11】実施形態の一例として図9に示したアンテナを用いたホームルータのアンテナ構成の一例を示す斜視図である。
図12】実施形態の一例として図9に示したアンテナを用いたホームルータのアンテナ構成の図11とは異なる例を示す斜視図である。
図13】実施形態に係るアンテナの一例である1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナのアンテナ構成の一例を示す模式図である。
図14図13に示したアンテナのアンテナ放射パターンを示すパターン図である。
図15】実施形態に係るアンテナの一例である1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナの図13のアンテナとは異なるアンテナ構成例を示す模式図である。
図16図15に示したアンテナのアンテナ放射パターンを示すパターン図である。
図17】実施形態に係るアンテナの一例である1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナの図13図15のアンテナとは異なるアンテナ構成例を示す模式図である。
図18図17に示したアンテナのアンテナ放射パターンを示すパターン図である。
図19】実施形態に係るアンテナの一例である1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナの図13図15図17のアンテナとは異なるアンテナ構成例を示す模式図である。
図20図19に示したアンテナのアンテナ放射パターンを示すパターン図である。
図21】実施形態に係るアンテナの一例である1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナの図13図15図17図19のアンテナとは異なるアンテナ構成例を示す模式図である。
図22図21に示したアンテナのアンテナ放射パターンを示すパターン図である。
図23】実施形態に係るアンテナの一例である1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナの図13図15図17図19図21のアンテナとは異なるアンテナ構成例を示す模式図である。
図24図23に示したアンテナのアンテナ放射パターンを示すパターン図である。
図25】実施形態の一例として図23に示したアンテナを用いたホームルータのアンテナ構成の一例を示す斜視図である。
図26】実施形態の一例として図21に示したアンテナを用いたホームルータのアンテナ構成の一例を示す斜視図である。
図27】実施形態に係るアンテナの一例である半波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナのアンテナ構成の一例を示す模式図である。
図28図27に示したアンテナの各エレメントの長さを決定するための評価要素の一例を示す模式図である。
図29図27に示したアンテナのアンテナ放射パターンを示すパターン図である。
図30A】一般的な2つのダイポールアンテナにおける無線電波の偏波の一致状態を示すイメージ図である。
図30B】一般的な2つのダイポールアンテナにおける無線電波の偏波の不一致状態を示すイメージ図である。
図31A】関連する技術のダイポールアンテナを用いた一般的なホームルータのアンテナ構成を示す模式図である。
図31B】関連する技術のダイポールアンテナを用いた一般的なホームルータのアンテナ構成を示す模式図である。
図32A図31Aおよび図31Bに示したホームルータの半波長ダイポールアンテナのアンテナ放射パターンを表現する際のX軸、Y軸、Z軸の設定状態を示す模式図である。
図32B図31Aおよび図31Bに示したホームルータの半波長ダイポールアンテナのアンテナ放射パターンを表現する際のX軸、Y軸、Z軸の設定状態を示す模式図である。
図33図31Aおよび図31Bに示したホームルータの半波長ダイポールアンテナのアンテナ放射パターンを示すパターン図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示によるアンテナ、無線通信機器およびアンテナ形成方法の好適な実施形態について添付図を参照して説明する。なお、本開示によるアンテナは、任意の波長の無線電波を放射するダイポールアンテナに関するものであり、また、本開示による無線通信機器は、ダイポールアンテナを搭載した無線通信機器に関するものである。また、以下の各図面に付した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本開示を図示の態様に限定することを意図するものではないことは言うまでもない。
【0023】
<実施形態の特徴>
実施形態の説明に先立って、その特徴についてその概要をまず説明する。本実施形態に係るアンテナは、あらかじめ指定した任意の周波数において半波長の長さごとに直角に折り曲げたZ字形状で長さが1波長または1.5波長のZ字型ダイポールアンテナであって、長さが半波長のいずれかの半波長エレメントの中央付近にアンテナ給電用の給電点を配置することを、主要な特徴としている。
【0024】
本実施形態の特徴をさらに説明すると次の通りである。長さが1波長のダイポールアンテナ(以下、‘1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ’と称する)の場合は、全体長を1波長とする。そして、半波長ごとに直角に折り曲げて形成した第1半波長エレメントと第2半波長エレメントとのうち、第1半波長エレメントの中央の位置で、ひねった方向に直角に(すなわち第2半波長エレメントとも直交する方向に)折り曲げて第1(1/4)波長エレメントと第2(1/4)波長エレメントとをさらに形成する。
【0025】
その結果、3個それぞれのエレメント(すなわち、第1(1/4)波長エレメントと第2(1/4)波長エレメントと第2半波長エレメント)が互いに直交する(すなわち3直交する)位置関係になる。さらに、第1半波長エレメントと第2半波長エレメントとのいずれか一方の半波長エレメントの中央付近にアンテナ給電用の給電点を配置する。なお、第1半波長エレメントと第2半波長エレメントとの結合部となる互いの端部が、互いに近接する位置関係において非接触とすることも可能である。
【0026】
また、長さが1.5波長のダイポールアンテナ(以下、‘1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ’と称する)の場合は、全体長を1.5波長とする。そして、半波長ごとに直角に折り曲げて形成される第1半波長エレメントと第2半波長エレメントと第3半波長エレメントとの3つの半波長エレメントは、互いに直交する方向に折り曲げられて、その結果、互いに直交する(すなわち3直交する)位置関係になる。
【0027】
さらに、第1半波長エレメントと第2半波長エレメントと第3半波長エレメントとのいずれか一方の半波長エレメントの中央付近にアンテナ給電用の給電点を配置することも可能である。なお、第1半波長エレメントと第2半波長エレメントとの結合部となる互いの端部、第2半波長エレメントと第3半波長エレメントとの結合部となる互いの端部、のいずれか一方または双方は、互いに近接する位置関係において非接触とすることも可能である。
【0028】
<本実施形態の構成例>
次に、本実施形態に係るアンテナのアンテナ構成の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0029】
(1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナのアンテナ構成例)
まず、全体の長さがあらかじめ任意に定めた周波数において1波長の‘1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ’のアンテナ構成例について説明する。なお、以下の説明においては、いずれも、アンテナが、大地(XY面)に対して垂直な方向に設置されている場合について説明する。また、本実施形態として以下に記載するアンテナ構成は、いずれも、無線電波の偏波が存在しない面数を解消させることを可能にしている例を示している。
【0030】
図1は、本実施形態に係るアンテナの一例である1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナのアンテナ構成の一例を示す模式図である。図1に示すように、アンテナ11は、半波長ごとに直角に折り曲げて形成された第1半波長エレメント1と第2半波長エレメント2とのそれぞれの端部を結合点5において互いに結合して接触している状態にある。
【0031】
さらに、第1半波長エレメント1は、中央の位置すなわち両端それぞれの端部から(1/4)波長ずつの長さになる位置で、第2半波長エレメント2とは直交する方向に直角にさらに折り曲げられて(すなわち、直角にさらにひねられて)、第1(1/4)波長エレメント1aと第2(1/4)波長エレメント1bとを形成している。その結果、第1(1/4)波長エレメント1aは、第2(1/4)波長エレメント1bおよび第2半波長エレメント2とそれぞれ直交する位置関係になる。
【0032】
したがって、アンテナ11は、第1(1/4)波長エレメント1a、第2(1/4)波長エレメント1b、第2半波長エレメント2の3つのエレメントが互いに直交する状態(すなわち3直交状態)になり、‘1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ’として形成されることになる。かくのごとく、3つのエレメントが互いに直交する状態(すなわち3直交状態)を形成することが、無線電波の偏波が存在しない面数を解消するために非常に重要な点である。
【0033】
そして、第1半波長エレメント1の中央の位置すなわち第1(1/4)波長エレメント1aと第2(1/4)波長エレメント1bとの結合点の位置に、アンテナ11の始まりとなるアンテナ給電用の給電点4が配置され、同軸ケーブルやストリップラインを介して給電が行われる。
【0034】
つまり、図1に示すアンテナ11は、あらかじめ指定した任意の周波数において(1/4)波長の長さを有する第1(1/4)波長エレメント1aおよび第2(1/4)波長エレメント1bと半波長の長さを有する第2半波長エレメント2との3つのエレメントを互いに直交する3直交状態に配置する。そして、第1(1/4)波長エレメント1aの一方の端部と第2(1/4)波長エレメント1bの一方の端部とを結合し、かつ、第2(1/4)波長エレメント1bの他方の端部と第2半波長エレメント2の一方の端部とを結合する。さらに、第1(1/4)波長エレメント1aの一方の端部と第2(1/4)波長エレメント1bの一方の端部とが結合された位置に、アンテナ給電用の給電点4を配置して、‘1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ’として形成している。
【0035】
図2は、図1に示したアンテナ11(すなわち1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ)のアンテナ放射パターンを示すパターン図であり、アンテナ11のXZ面、YZ面、XY面それぞれにおけるアンテナ放射パターンを示している。なお、図2において、水平偏波の特性曲線を太線で示し、垂直偏波の特性曲線を細線で示している。図2のパターン図に示すように、XZ面、YZ面、XY面の3面のいずれの面にも、無線電波の偏波が存在している。関連する技術として図33に示した半波長ダイポールアンテナ15Lのアンテナ放射パターンとは異なり、図1に示すアンテナ11は、全方向に万遍なく無線電波を放出していることが分かる。
【0036】
次に、図1のアンテナ11とは異なる1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナのアンテナ構成例について、図3を用いて説明する。図3は、本実施形態に係るアンテナの一例である1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナの図1のアンテナ11とは異なるアンテナ構成例を示す模式図である。
【0037】
図3に示すアンテナ11Aは、給電点4の配置位置が図1のアンテナ11とは異なっている例を示している。すなわち、図3に示すアンテナ11Aの場合は、給電点4の配置位置を、図1のアンテナ11の場合の第1半波長エレメント1の中央の位置ではなく、第2半波長エレメント2の中央の位置に変更している。つまり、図3のアンテナ11Aは、給電点4の位置を、第1(1/4)波長エレメント1aの一方の端部と第2(1/4)波長エレメント1bの一方の端部とが結合された位置ではなく、第2半波長エレメント2の中央の位置に配置して、‘1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ’として形成している。
【0038】
図3に示すアンテナ11Aのように、給電点4の位置を変更しても、アンテナ放射パターンは、図4のパターン図に示すように、XZ面、YZ面、XY面の3面のいずれの面にも、無線電波の偏波が存在している。なお、図4において、水平偏波の特性曲線を太線で示し、垂直偏波の特性曲線を細線で示している。図4は、図3に示したアンテナ11A(すなわち1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ)のアンテナ放射パターンを示すパターン図であり、図3に示すアンテナ11Aが、全方向に万遍なく無線電波を放出していることが分かる。
【0039】
次に、図1のアンテナ11、図3のアンテナ11Aとは異なる1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナのアンテナ構成例について、図5を用いて説明する。図5は、本実施形態に係るアンテナの一例である1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナの図1のアンテナ11、図3のアンテナ11Aとは異なるアンテナ構成例を示す模式図である。
【0040】
図5に示すアンテナ11Bは、結合点5において、第1半波長エレメント1と第2半波長エレメント2とのそれぞれの端部を近接した位置で互いに非接触の状態に配置している点が、図1のアンテナ11とは異なっている例を示している。つまり、図5のアンテナ11Bは、‘1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ’において、一部のエレメントが非接触の状態になっている‘1波長ひねりZ字型非接触3直交ダイポールアンテナ’として構成している例を示している。すなわち、図5のアンテナ11Bの場合は、第2(1/4)波長エレメント1bの他方の端部と第2半波長エレメント2の一方の端部とを結合するのではなく、第2(1/4)波長エレメント1bの他方の端部と第2半波長エレメント2の一方の端部とを互いに近接した位置で非接触状態に配置して‘1波長ひねりZ字型非接触3直交ダイポールアンテナ’として形成している場合を示している。かくのごとく、第1半波長エレメント1と第2半波長エレメント2とを非接触の状態に配置することにより、詳細は後述するが、アンテナを基板上に容易に搭載することができるというメリットが得られる。
【0041】
図5に示すアンテナ11Bのように、第1半波長エレメント1と第2半波長エレメント2とを非接触の状態に配置した場合であっても、アンテナ放射パターンは、図6のパターン図に示すように、XZ面、YZ面、XY面の3面のいずれの面にも、無線電波の偏波が存在している。なお、図6において、水平偏波の特性曲線を太線で示し、垂直偏波の特性曲線を細線で示している。図6は、図5に示したアンテナ11B(すなわち1波長ひねりZ字型非接触3直交ダイポールアンテナ)のアンテナ放射パターンを示すパターン図であり、図5に示すアンテナ11Bが、全方向に万遍なく無線電波を放出していることが分かる。
【0042】
次に、無線電波放射用のダイポールアンテナを備えた本実施形態に係る無線通信装置の一例として、図5に示したアンテナ11Bを搭載した無線通信装置の構成例について図7を用いて説明する。ここで、図7の無線通信装置は、関連する技術として図31Aおよび図31Bに示したホームルータ10Lと同様のホームルータの場合を例にして説明する。
【0043】
図7は、本実施形態の一例として図5に示したアンテナ11Bを用いたホームルータのアンテナ構成の一例を示す斜視図であり、ホームルータの内部に実装したアンテナ構成の一例を示している。
【0044】
図7のホームルータ10においては、図7に示すように、基板13上には、アンテナ11Bに対して給電を行う無線IC(Integrated Circuit)14が搭載されていて、該無線IC14は、第1半波長エレメント1の中央に配置されている給電点4と同軸ケーブル17を介して接続されている。同軸ケーブル17を用いることにより、無線IC14からアンテナ11Bの給電点4に対して信号電力のロスを抑えて給電することができる。
【0045】
さらに、図7のホームルータ10においては、図7に示すように、無線IC14が搭載されている基板13上にアンテナ11Bの第2半波長エレメント2を直接搭載する構成としている。つまり、基板13上の部品実装スペースに余裕がある場合には、基板13上にアンテナ11Bの第2半波長エレメント2を直接搭載することにすれば、コスト低減を図ることができる。この際、アンテナ11Bは、前述したように、‘1波長ひねりZ字型非接触3直交ダイポールアンテナ’として、第2半波長エレメント2が第1半波長エレメント1とは非接触の状態で形成されている。したがって、基板13上に第2半波長エレメント2をパターン描画することが容易になり、かつ、基板13上の第2半波長エレメント2とは直交状態にある第1半波長エレメント1を非接触状態とすることにより、第1半波長エレメント1の第1(1/4)波長エレメント1aおよび第2(1/4)波長エレメント1bを基板13の外側に容易に配置することができ、アンテナ11Bの3直交状態を容易に形成することができる。
【0046】
また、図8は、本実施形態の一例として図5に示したアンテナ11Bを用いたホームルータのアンテナ構成の図7とは異なる例を示す斜視図である。図8のホームルータ10Aは、図8に示すように、無線IC14が搭載されている基板13上に直接搭載するアンテナ11Bのエレメントを、図7のホームルータ10の場合と入れ替えた例を示している。
【0047】
すなわち、図8のホームルータ10Aにおいては、アンテナ11Bの第1半波長エレメント1の第1(1/4)波長エレメント1aと第2(1/4)波長エレメント1bとを、基板13上にL字状に直接搭載し、該第1半波長エレメント1と直交する第2半波長エレメント2を基板13の外側に配置する。図8のホームルータ10Aの場合も、図7と同様、基板13上に搭載した第1半波長エレメント1とは直交状態にある第2半波長エレメント2を非接触状態とすることにより、基板13上に第1半波長エレメント1の第1(1/4)波長エレメント1aと第2(1/4)波長エレメント1bとをL字状にパターン描画することが容易になり、かつ、第2半波長エレメント2を基板13の外側に容易に配置することができ、アンテナ11Bの3直交状態を容易に形成することができる。
【0048】
次に、図1のアンテナ11、図3のアンテナ11A、図5のアンテナ11Bとは異なる1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナのアンテナ構成例について、図9を用いて説明する。図9は、本実施形態に係るアンテナの一例である1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナの図1のアンテナ11、図3のアンテナ11A、図5のアンテナ11Bとは異なるアンテナ構成例を示す模式図である。
【0049】
図9に示すアンテナ11Cは、結合点5において、第1半波長エレメント1と第2半波長エレメント2とのそれぞれの端部を互いに非接触の状態に配置している点が、図3のアンテナ11Aとは異なっている例を示している。つまり、図9のアンテナ11Cは、図5のアンテナ11Bの場合と同様、‘1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ’において、一部のエレメントが非接触の状態になっている‘1波長ひねりZ字型非接触3直交ダイポールアンテナ’として構成している例を示している。図7のホームルータ10において前述したように、図9のアンテナ11Cについても、第1半波長エレメント1と第2半波長エレメント2とを非接触の状態に配置することにより、アンテナを基板上に容易に搭載することができる。
【0050】
図9に示すアンテナ11Cのように、給電点4を第2半波長エレメント2の中央に配置し、かつ、第1半波長エレメント1と第2半波長エレメント2とを非接触の状態に配置した場合であっても、図5のアンテナ11Bの場合と同様、アンテナ放射パターンは、図10のパターン図に示すように、XZ面、YZ面、XY面の3面のいずれの面にも、無線電波の偏波が存在している。なお、図10において、水平偏波の特性曲線を太線で示し、垂直偏波の特性曲線を細線で示している。図10は、図9に示したアンテナ11C(すなわち1波長ひねりZ字型非接触3直交ダイポールアンテナ)のアンテナ放射パターンを示すパターン図であり、図9に示すアンテナ11Cが、全方向に万遍なく無線電波を放出していることが分かる。
【0051】
次に、本実施形態に係る無線通信装置の一例として、図9に本実施形態の一例として示したアンテナ11Cを搭載した無線通信装置の構成例について図11を用いて説明する。ここで、図11の無線通信装置についても、図7図8の場合と同様、関連する技術として図31Aおよび図31Bに示したホームルータ10Lと同様のホームルータの場合を例にして説明する。
【0052】
図11は、本実施形態の一例として図9に示したアンテナ11Cを用いたホームルータのアンテナ構成の一例を示す斜視図であり、ホームルータの内部に実装したアンテナ構成の一例を示している。
【0053】
図11のホームルータ10Bにおいては、図11に示すように、基板13上には、アンテナ11Cに対して給電を行う無線IC(Integrated Circuit)14が搭載されていて、該無線IC14は、第2半波長エレメント2の中央に配置されている給電点4と同軸ケーブル17を介して接続されている。同軸ケーブル17を用いることにより、無線IC14からアンテナ11Cの給電点4に対して信号電力のロスを抑えて給電することができる。なお、同軸ケーブル17の代わりに、ストリップラインを用いて、無線IC14と給電点4とを接続するようにしても良い。
【0054】
ここで、図11のホームルータ10Bにおいては、図11に示すように、図7の場合と同様、無線IC14が搭載されている基板13上にアンテナ11Cの第2半波長エレメント2を直接搭載する構成としている。つまり、基板13上の部品実装スペースに余裕がある場合には、基板13上にアンテナ11Cの第2半波長エレメント2を直接搭載することにすれば、コスト低減を図ることができる。この際、アンテナ11Cは、前述したように、‘1波長ひねりZ字型非接触3直交ダイポールアンテナ’として、第2半波長エレメント2が第1半波長エレメント1とは非接触の状態で形成されている。したがって、基板13上に第2半波長エレメント2をパターン描画することが容易になり、かつ、基板13上の第2半波長エレメント2とは直交状態にある第1半波長エレメント1を非接触状態とすることにより、第1半波長エレメント1の第1(1/4)波長エレメント1aおよび第2(1/4)波長エレメント1bを基板13の外側に容易に配置することができ、アンテナ11Cの3直交状態を容易に形成することができる。
【0055】
また、図12は、本実施形態の一例として図9に示したアンテナ11Cを用いたホームルータのアンテナ構成の図11とは異なる例を示す斜視図である。図12のホームルータ10Cは、図12に示すように、無線IC14が搭載されている基板13上に直接搭載するアンテナ11Cのエレメントを、図11のホームルータ10Bの場合と入れ替えた例を示している。
【0056】
すなわち、図12のホームルータ10Cにおいては、図8のホームルータ10Aの場合と同様、アンテナ11Cの第1半波長エレメント1の第1(1/4)波長エレメント1aと第2(1/4)波長エレメント1bとを、基板13上にL字状に直接搭載し、該第1半波長エレメント1と直交する第2半波長エレメント2を基板13の外側に配置する。図12のホームルータ10Cの場合も、図11と同様、基板13上に搭載した第1半波長エレメント1とは直交状態にある第2半波長エレメント2を非接触状態とすることにより、基板13上に第1半波長エレメント1の第1(1/4)波長エレメント1aと第2(1/4)波長エレメント1bとをL字状にパターン描画することが容易になり、かつ、第2半波長エレメント2を基板13の外側に容易に配置することができ、アンテナ11Cの3直交状態を容易に形成することができる。
【0057】
(1.5波長(3半波長)ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナのアンテナ構成例)
次に、全体の長さがあらかじめ任意に定めた周波数において1.5波長(すなわち3半波長)の‘1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ’のアンテナ構成例について説明する。なお、以下の説明においても、アンテナが、大地(XY面)に対して垂直な方向に設置されている場合について説明する。また、本実施形態として以下に記載するアンテナ構成は、いずれも、無線電波の偏波が存在しない面数を解消させることを可能にしている例を示している。
【0058】
図13は、本実施形態に係るアンテナの一例である1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナのアンテナ構成の一例を示す模式図である。図13に示すように、アンテナ11Dは、直角に折り曲げた第1半波長エレメント1と第2半波長エレメント2とのそれぞれの端部が、第1結合点5aにおいて互いに結合して接触し、さらに、第2半波長エレメント2をひねった方向に直角に折り曲げて(すなわち、第1半波長エレメント1と直交する方向にさらに折り曲げて)形成した第3半波長エレメント3と第2半波長エレメント2とのそれぞれの端部が、第2結合点5bにおいて互いに結合して接触している状態にある。
【0059】
その結果、アンテナ11Dは、第1半波長エレメント1、第2半波長エレメント2、第3半波長エレメント3の3つの半波長エレメントが互いに直交する状態(すなわち3直交状態)になり、‘1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ’として形成されることになる。かくのごとく、3つのエレメントが互いに直交する状態(すなわち3直交状態)を形成することが、無線電波の偏波が存在しない面数を解消するために非常に重要な点である。
【0060】
そして、アンテナ11Dの中央の位置すなわち第2半波長エレメント2の中央の位置に、アンテナ11Dの始まりとなるアンテナ給電用の給電点4が配置され、同軸ケーブルやストリップラインを介して給電が行われる。なお、アンテナ11Dの全体の長さは、1.5波長すなわち3半波長である。
【0061】
つまり、図13に示すアンテナ11Dは、あらかじめ指定した任意の周波数において半波長の長さを有する第1半波長エレメント1と第2半波長エレメント2と第3半波長エレメント3との3つのエレメントを互いに直交する3直交状態に配置する。そして、第1半波長エレメント1の一方の端部と第2半波長エレメント2の一方の端部とを結合し、かつ、第2半波長エレメント2の他方の端部と第3半波長エレメント3の一方の端部とを結合する。さらに、第2半波長エレメント2の中央の位置に、アンテナ給電用の給電点を配置して、‘1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ’として形成している。
【0062】
図14は、図13に示したアンテナ11D(すなわち1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ)のアンテナ放射パターンを示すパターン図であり、アンテナ11DのXZ面、YZ面、XY面それぞれにおけるアンテナ放射パターンを示している。なお、水平偏波の特性曲線を太線で示し、垂直偏波の特性曲線を細線で示している。図14のパターン図に示すように、XZ面、YZ面、XY面の3面のいずれの面にも、無線電波の偏波が存在している。関連する技術として図33に示した半波長ダイポールアンテナ15Lのアンテナ放射パターンとは異なり、図14に示すアンテナ11Dは、全方向に万遍なく無線電波を放出していることが分かる。
【0063】
次に、図13のアンテナ11Dとは異なる1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナのアンテナ構成例について、図15を用いて説明する。図15は、本実施形態に係るアンテナの一例である1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナの図13のアンテナ11Dとは異なるアンテナ構成例を示す模式図である。
【0064】
図15に示すアンテナ11Eは、給電点4の配置位置が図13のアンテナ11Dとは異なっている例を示している。すなわち、図15に示すアンテナ11Eの場合は、給電点4の配置位置を、図13のアンテナ11Dの場合の第2半波長エレメント2の中央の位置ではなく、第1半波長エレメント1の中央の位置に変更している。
【0065】
図15に示すアンテナ11Eのように、給電点4の位置を変更しても、アンテナ放射パターンは、図16のパターン図に示すように、XZ面、YZ面、XY面の3面のいずれの面にも、無線電波の偏波が存在している。なお、図16において、水平偏波の特性曲線を太線で示し、垂直偏波の特性曲線を細線で示している。図16は、図15に示したアンテナ11E(すなわち1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ)のアンテナ放射パターンを示すパターン図であり、図15に示すアンテナ11Eが、全方向に万遍なく無線電波を放出していることが分かる。なお、給電点4の配置位置を、第1半波長エレメント1の中央の位置ではなく、第3半波長エレメント3の中央の位置に変更した場合も、アンテナ放射パターンは、図16のXZ面、YZ面、XY面の3面の放射パターンの形状の変更はあるものの、図16の場合とほぼ同様、該3面いずれにも無線電波の偏波が存在していて、全方向に万遍なく無線電波を放出することに変わりはない。
【0066】
次に、図13のアンテナ11D、図15のアンテナ11Eとは異なる1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナのアンテナ構成例について、図17を用いて説明する。図17は、本実施形態に係るアンテナの一例である1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナの図13のアンテナ11D、図15のアンテナ11Eとは異なるアンテナ構成例を示す模式図である。
【0067】
図17に示すアンテナ11Fは、第1結合点5a、第2結合点5bのそれぞれにおいて、第1半波長エレメント1と第2半波長エレメント2と第3半波長エレメント3とのそれぞれの端部を互いに近接した位置関係で非接触の状態に配置している点が、図13のアンテナ11Dとは異なっている例を示している。つまり、図17のアンテナ11Fは、‘1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ’において、各半波長エレメントが非接触の状態になっている‘1.5波長ひねりZ字型非接触3直交ダイポールアンテナ’として構成している例を示している。
【0068】
すなわち、図17のアンテナ11Fの場合は、第1半波長エレメント1の一方の端部と第2半波長エレメント2の一方の端部とを結合するのではなく、第1半波長エレメント1の一方の端部と第2半波長エレメント2の一方の端部とを互いに近接した位置で非接触状態に配置するとともに、さらに、第2半波長エレメント2の他方の端部と第3半波長エレメント3の一方の端部とを結合するのではなく、第2半波長エレメント2の他方の端部と第3半波長エレメント3の一方の端部とについても互いに近接した位置で非接触状態に配置して、‘1.5波長ひねりZ字型非接触3直交ダイポールアンテナ’として形成している場合を示している。かくのごとく、第1半波長エレメント1と第2半波長エレメント2と第3半波長エレメント3とのそれぞれを非接触の状態に配置することにより、‘1波長ひねりZ字型非接触3直交ダイポールアンテナ’の場合と同様、アンテナを基板上に容易に搭載することができるというメリットが得られる。
【0069】
また、図17に示すアンテナ11Fのように、第1半波長エレメント1と第2半波長エレメント2と第3半波長エレメント3とのそれぞれを非接触の状態に配置した場合であっても、アンテナ放射パターンは、図18のパターン図に示すように、XZ面、YZ面、XY面の3面のいずれの面にも、無線電波の偏波が存在している。なお、図18において、水平偏波の特性曲線を太線で示し、垂直偏波の特性曲線を細線で示している。図18は、図17に示したアンテナ11F(すなわち1.5波長ひねりZ字型非接触3直交ダイポールアンテナ)のアンテナ放射パターンを示すパターン図であり、図17に示すアンテナ11Fが、全方向に万遍なく無線電波を放出していることが分かる。
【0070】
次に、図13のアンテナ11D、図15のアンテナ11E、図17のアンテナ11Fとは異なる1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナのアンテナ構成例について、図19を用いて説明する。図19は、本実施形態に係るアンテナの一例である1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナの図13のアンテナ11D、図15のアンテナ11E、図17のアンテナ11Fとは異なるアンテナ構成例を示す模式図である。
【0071】
図19に示すアンテナ11Gは、第2結合点5bにおいて、第2半波長エレメント2と第3半波長エレメント3との端部を互いに近接した位置関係で非接触の状態に配置している点が、図13のアンテナ11Dとは異なっている例を示している。つまり、図19のアンテナ11Gは、図13のアンテナ11Dの場合とは異なり、‘1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ’において、一部の半波長エレメントが非接触の状態になっている‘1.5波長ひねりZ字型非接触3直交ダイポールアンテナ’として構成している例を示している。すなわち、図19のアンテナ11Gの場合は、第2半波長エレメント2の他方の端部と第3半波長エレメント3の一方の端部とを結合するのではなく、第2半波長エレメント2の他方の端部と第3半波長エレメント3の一方の端部とを互いに近接した位置で非接触状態に配置して、‘1.5波長ひねりZ字型非接触3直交ダイポールアンテナ’として形成している場合を示している。かくのごとく、第3半波長エレメント3を他の半波長エレメントと非接触の状態にする場合のように、一部の半波長エレメントを非接触の状態に配置する場合であっても、図17のアンテナ11Fの場合と同様、アンテナを基板上に容易に搭載することができるというメリットが得られる。
【0072】
図19に示すアンテナ11Gのように、第2半波長エレメント2と第3半波長エレメント3との間を非接触の状態に配置した場合であっても、アンテナ放射パターンは、図20のパターン図に示すように、XZ面、YZ面、XY面の3面のいずれの面にも、無線電波の偏波が存在している。なお、図20において、水平偏波の特性曲線を太線で示し、垂直偏波の特性曲線を細線で示している。図20は、図19に示したアンテナ11G(すなわち1.5波長ひねりZ字型非接触3直交ダイポールアンテナ)のアンテナ放射パターンを示すパターン図であり、図19に示すアンテナ11Gが、全方向に万遍なく無線電波を放出していることが分かる。なお、図19のアンテナ11Gの場合のように第2半波長エレメント2と第3半波長エレメント3とを非接触状態にする代わりに、第1半波長エレメント1と第2半波長エレメント2とを非接触状態にしても、アンテナ放射パターンの形状に変化はあるものの、XZ面、YZ面、XY面の3面のいずれの面にも、無線電波の偏波が存在することには変わりはない。
【0073】
次に、図13のアンテナ11D、図15のアンテナ11E、図17のアンテナ11F、図19のアンテナ11Gとは異なる1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナのアンテナ構成例について、図21を用いて説明する。図21は、本実施形態に係るアンテナの一例である1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナの図13のアンテナ11D、図15のアンテナ11E、図17のアンテナ11F、図19のアンテナ11Gとは異なるアンテナ構成例を示す模式図である。
【0074】
図21に示すアンテナ11Hは、第2結合点5bにおいて、第2半波長エレメント2と第3半波長エレメント3とのそれぞれの端部を互いに近接した状態で非接触の状態に配置している点が、図15のアンテナ11Eとは異なっている例を示している。つまり、図21のアンテナ11Hは、図19のアンテナ11Gの場合とは給電点4の配置位置が異なっているものの、図19のアンテナ11Gの場合と同様、‘1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ’において、一部の半波長エレメントが非接触の状態になっている‘1.5波長ひねりZ字型非接触3直交ダイポールアンテナ’として構成している例を示している。図21のアンテナ11Hについても、第2半波長エレメント2と第3半波長エレメント3とを非接触の状態に配置することにより、前述したように、アンテナを基板上に容易に搭載することができる。
【0075】
また、図21に示すアンテナ11Hのように、第2半波長エレメント2と第3半波長エレメント3とを非接触の状態に配置した場合であっても、図19のアンテナ11Gの場合と同様、アンテナ放射パターンは、図22のパターン図に示すように、XZ面、YZ面、XY面の3面のいずれの面にも、無線電波の偏波が存在している。なお、図22において、水平偏波の特性曲線を太線で示し、垂直偏波の特性曲線を細線で示している。図22は、図21に示したアンテナ11H(すなわち1.5波長ひねりZ字型非接触3直交ダイポールアンテナ)のアンテナ放射パターンを示すパターン図であり、図21に示すアンテナ11Hが、全方向に万遍なく無線電波を放出していることが分かる。
【0076】
次に、図13のアンテナ11D、図15のアンテナ11E、図17のアンテナ11F、図19のアンテナ11G、図21のアンテナ11Hとは異なる1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナのアンテナ構成例について、図23を用いて説明する。図23は、本実施形態に係るアンテナの一例である1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナの図13のアンテナ11D、図15のアンテナ11E、図17のアンテナ11F、図19のアンテナ11G、図21のアンテナ11Hとは異なるアンテナ構成例を示す模式図である。
【0077】
図23に示すアンテナ11Iは、給電点4の配置位置が、他の半波長エレメントと非接触状態にある第3半波長エレメント3の中央に配置されている点が、図19のアンテナ11Gや図21のアンテナ11Hとは異なっている例を示している。つまり、図23のアンテナ11Iは、図19のアンテナ11Gや図21のアンテナ11Hの場合と給電点4の配置位置が異なっているものの、図19のアンテナ11Gや図21のアンテナ11Hの場合と同様、‘1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ’において、一部の半波長エレメントが非接触の状態になっている‘1.5波長ひねりZ字型非接触3直交ダイポールアンテナ’として構成している例を示している。すなわち、図23のアンテナ11Iの場合は、第2半波長エレメント2の他方の端部と第3半波長エレメント3の一方の端部とを結合するのではなく、第2半波長エレメント2の他方の端部と第3半波長エレメント3の一方の端部とを互いに近接した位置で非接触状態に配置し、かつ、給電点4の位置を、第2半波長エレメント2または第1半波長エレメント1の中央の位置ではなく、他の半波長エレメントとは非接触状態にある第3半波長エレメント3の中央の位置に配置して、‘1.5波長ひねりZ字型非接触3直交ダイポールアンテナ’として形成している場合を示している。
【0078】
図23に示すアンテナ11Iのように、他の半波長エレメントとは非接触状態の第3半波長エレメント3の中央に給電点4を配置した場合であっても、図19のアンテナ11Gや図21のアンテナ11Hの場合と同様、アンテナ放射パターンは、図24のパターン図に示すように、XZ面、YZ面、XY面の3面のいずれの面にも、無線電波の偏波が存在している。なお、図24において、水平偏波の特性曲線を太線で示し、垂直偏波の特性曲線を細線で示している。図24は、図23に示したアンテナ11I(すなわち1.5波長ひねりZ字型非接触3直交ダイポールアンテナ)のアンテナ放射パターンを示すパターン図であり、図23に示すアンテナ11Iが、全方向に万遍なく無線電波を放出していることが分かる。
【0079】
次に、本実施形態に係る無線通信装置の一例として、図23に本実施形態の一例として示したアンテナ11Iを搭載した無線通信装置の構成例について図25を用いて説明する。ここで、図25の無線通信装置は、関連する技術として図31Aおよび図31Bに示したホームルータ10Lと同様のホームルータの場合を例にして説明する。
【0080】
図25は、本実施形態の一例として図23に示したアンテナ11Iを用いたホームルータのアンテナ構成の一例を示す斜視図であり、ホームルータの内部に実装したアンテナ構成の一例を示している。
【0081】
図25のホームルータ10Dにおいては、図25に示すように、基板13上には、アンテナ11Iに対して給電を行う無線IC(Integrated Circuit)14が搭載されていて、該無線IC14は、第3半波長エレメント3の中央に配置されている給電点4と同軸ケーブル17を介して接続されている。同軸ケーブル17を用いることにより、無線IC14からアンテナ11Iの給電点4に対して信号電力のロスを抑えて給電することができる。
【0082】
さらに、図25のホームルータ10Dにおいては、図25に示すように、無線IC14が搭載されている基板13上にアンテナ11Iの第1半波長エレメント1と第2半波長エレメント2とをL字状に直接搭載する構成としている。つまり、基板13上の部品実装スペースに余裕がある場合には、基板13上にアンテナ11Iの第1半波長エレメント1と第2半波長エレメント2とをL字状に直接搭載することにすれば、アンテナ11I専用の実装基板の小型化が可能になって、コスト低減を図ることができる。この際、アンテナ11Iは、前述したように、‘1.5波長ひねりZ字型非接触3直交ダイポールアンテナ’として、第2半波長エレメント2が第3半波長エレメント3とは非接触の状態で形成されている。したがって、基板13上に第1半波長エレメント1と第2半波長エレメント2とをパターン描画することが容易になり、コストをさらに低減することができ、かつ、基板13上の第1半波長エレメント1と第2半波長エレメント2とは直交状態にある第3半波長エレメント3を非接触状態とすることにより、第3半波長エレメント3を基板13の外側に容易に配置することができ、アンテナ11Iの3直交状態を容易に形成することができる。
【0083】
また、図26は、本実施形態の一例として図21に示したアンテナ11Hを用いたホームルータのアンテナ構成の一例を示す斜視図である。図26のホームルータ10Eは、図25のホームルータ10Dの場合と同様、無線IC14が搭載されている基板13上に直接搭載するアンテナのエレメントが、アンテナ11Hの第1半波長エレメント1と第2半波長エレメントとであるものの、図25のホームルータ10Dの場合とは異なり、第1半波長エレメント1に給電点4が配置されている場合を示している。
【0084】
すなわち、図26のホームルータ10Eにおいては、アンテナ11Hの第1半波長エレメント1の中央に配置されている給電点4と無線IC14とを接続する接続媒体が同軸ケーブルまたはストリップライン17aであり、同軸ケーブルではなく、ストリップラインを基板13上にパターン描画することにすれば、さらなるコスト低減を図ることができる。
【0085】
<本実施形態の効果の説明>
以上に詳細に説明したように、本実施形態においては、以下のような効果が得られる。
【0086】
すなわち、ダイポールアンテナを構成する3つのエレメントを3直交配置とすることにより、無線通信性能向上に欠かせない無線電波の偏波の改善を実現することが可能である。
【0087】
さらに、3つのエレメントの1つ以上のエレメントを他とは非接触とする構造を採用することにより、アンテナへの電力供給用の無線IC14等の部品を搭載している基板13上に1つ以上のエレメントを容易に搭載することが可能になるので、無線通信性能の向上が可能なアンテナを安価にかつシンプルに実現することが可能である。
【0088】
<本実施形態の他の例>
前述した実施形態においては、ダイポールアンテナの全体の長さを1波長または1.5波長とする1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナまたは1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナの場合について説明したが、本実施形態はかかる場合に限るものではない。例えば、ダイポールアンテナの全体の長さを半波長とした半波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナとして構成しても良い。なお、以下の説明においても、アンテナが、大地(XY面)に対して垂直な方向に設置されている場合について説明する。
【0089】
(半波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ)
図27は、本実施形態に係るアンテナの一例である半波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナのアンテナ構成の一例を示す模式図である。図27に示すように、アンテナ11Jは、半波長の長さのエレメントを2ヶ所で互いに直交する方向に直角に折り曲げて第1エレメント1cと第2エレメント2cと第3エレメント3cとして形成している。したがって、第1エレメント1cと第2エレメント2cと第3エレメント3cとは、3直交の位置関係になっている。また、第1エレメント1cと第2エレメント2cおよび第2エレメント2cと第3エレメント3cとは、それぞれの端部が、第1結合点5aおよび第2結合点5bにおいて結合して接触している状態にある。
【0090】
ここで、第1エレメント1cと第2エレメント2cと第3エレメント3cとのそれぞれの長さは、次のような関係にある。
(第1エレメント1c)=(第3エレメント3c)>(第2エレメント2c)
【0091】
つまり、第1エレメント1cと第3エレメント3cとの長さは、互いに相等しく、かつ、第2エレメント2cの長さよりも長いという関係にある。また、アンテナ11Jの始まりとなるアンテナ給電用の給電点4は、第2エレメント2cの中央に配置している。
【0092】
その結果、図27のアンテナ11Jは、‘半波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ’として形成されている。アンテナ11Jは、全体の長さが半波長であり、前述した‘1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ’や‘1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ’よりも短く、コンパクトにすることができる。
【0093】
つまり、図27に示すアンテナ11Jは、合計の長さがあらかじめ指定した任意の周波数において半波長の長さになる、第1エレメント1cと第2エレメント2cと第3エレメント3cとの3つのエレメントを互いに直交する3直交状態に配置する。そして、第1エレメント1cと第3エレメント3cとの長さを、相等しくするとともに、第2エレメント2cの長さよりも長くする。そして、第1エレメント1cの一方の端部と第2エレメント2cの一方の端部とを結合するとともに、第2エレメント2cの他方の端部と第3エレメント3cの一方の端部とを結合する。さらに、第2エレメント2cの中央の位置に、アンテナ給電用の給電点4を配置して、‘半波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ’として形成している。
【0094】
しかし、図27のアンテナ11Jのような‘半波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ’の場合は、‘1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ’や‘1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ’とは異なり、第1エレメント1c、第2エレメント2c、第3エレメント3cの互いの間のいずれか一つまたは全てを非接触状態にすることができないという欠点がある。何故ならば、‘1波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ’や‘1.5波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ’の場合は、給電されないエレメントが存在していても、半波長エレメントまたは(1/4)波長エレメントとして、アンテナとしての機能を発揮することができる。これに反して、‘半波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ’の場合は、各エレメントの長さが短いため、非給電の状態ではアンテナとして機能しなくなるためである。
【0095】
図28は、図27に示したアンテナ11Jの各エレメントの長さを決定するための評価要素の一例を示す模式図であり、各エレメントの長さを各エレメント上の高周波電流分布に基づいて決定する例を示している。図28には、アンテナ11Jの3直交状態の各エレメントを引き延ばして直線状の半波長ダイポールアンテナとした状態にして、該半波長ダイポールアンテナの長さを0°~180°の角度で表現した場合を示している。そして、引き延ばした状態の半波長ダイポールアンテナの中央位置に配置している給電点4から高周波の電力給電を行った場合の高周波電流分布(理論上は正弦波分布)の様子を示している。
【0096】
ここで、例えば、図28の高周波電流分布曲線において、高周波電流分布の面積を3等分にする角度を求めれば、半波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナを形成する際の最適の折り曲げ位置を求めることができる。つまり、図28の高周波電流分布の面積は、該高周波電流の強さを示すものであり、高周波電流がアンテナから放出される無線電波の源となるので、高周波電流分布の面積を3等分すれば、3直交している3面それぞれに対して、均等な強度で無線電波を放射することが可能になる。
【0097】
したがって、図28に示すように、図28の電流分布曲線において3つの領域に分割した際のそれぞれの面積をa,b,cとすると、a=b=cの関係が成立するように、高周波電流分布の面積が3等分された角度位置として角度a、角度bそれぞれの位置を求めれば、角度aを第1結合点5aの折り曲げ位置、角度bを第2結合点5bの折り曲げ位置として決定することができる。実験的には、角度aは、60°~80°、角度bは、100°~120°程度という結果が得られている。
【0098】
半波長の長さの半波長ダイポールアンテナを、図28の評価に基づいて決定した第1結合点5a、第2結合点5bそれぞれの位置で互いに直交する方向に直角に折り曲げれば、図27に示した第1エレメント1c、第2エレメント2c、第3エレメント3cからなるアンテナ11Jのように、最適な‘半波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ’を形成することができる。
【0099】
図29は、図27に示したアンテナ11J(すなわち半波長ひねりZ字型3直交ダイポールアンテナ)のアンテナ放射パターンを示すパターン図であり、アンテナ11JのXZ面、YZ面、XY面それぞれにおけるアンテナ放射パターンを示している。なお、水平偏波の特性曲線を太線で示し、垂直偏波の特性曲線を細線で示している。図27に示したアンテナ11Jに関しては、図29のパターン図に示すように、XZ面、YZ面、XY面の3面のいずれの面にも、無線電波の偏波が存在している。関連する技術として図32Aおよび図32Bに示した半波長ダイポールアンテナ15Lのアンテナ放射パターン(図33)とは異なり、図27に示すアンテナ11Jは、全方向に万遍なく無線電波を放出していることが分かる。さらに、図29のアンテナ放射パターンを示すように、XZ面、YZ面、XY面の各面の垂直偏波に着目すると、それぞれの面においてほぼ同等の強度の偏波が得られており、アンテナ11Jの各エレメントの長さのバランスが適切であることが分かる。
【0100】
以上、本願発明の好適な実施形態の構成を説明した。しかし、かかる実施形態は、本願発明の単なる例示に過ぎず、何ら本願発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。
【0101】
換言すると、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではなく、本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0102】
この出願は、2018年11月12日に出願された日本出願特願2018-212048を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0103】
1 第1半波長エレメント
1a 第1(1/4)波長エレメント
1b 第2(1/4)波長エレメント
1c 第1エレメント
2 第2半波長エレメント
2c 第2エレメント
3 第3半波長エレメント
3c 第3エレメント
4 給電点
5 結合点
5a 第1結合点
5b 第2結合点
10 ホームルータ
10A ホームルータ
10B ホームルータ
10C ホームルータ
10D ホームルータ
10E ホームルータ
10L ホームルータ
11 アンテナ
11A アンテナ
11B アンテナ
11C アンテナ
11D アンテナ
11E アンテナ
11F アンテナ
11G アンテナ
11H アンテナ
11I アンテナ
11J アンテナ
11L アンテナ
12L アンテナ
13 基板
14 無線IC
15L 半波長ダイポールアンテナ
16L 給電点
17 同軸ケーブル
17a 同軸ケーブルまたはストリップライン
18 筐体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30A
図30B
図31A
図31B
図32A
図32B
図33