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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】転写フィルム及びその使用
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20221213BHJP
   B44C 1/17 20060101ALI20221213BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20221213BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20221213BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20221213BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20221213BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B44C1/17 B
B32B27/30 A
B32B27/32 C
B32B27/28 102
B32B7/022
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021088383
(22)【出願日】2021-05-26
(65)【公開番号】P2022181440
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2021-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】521228802
【氏名又は名称】合泰材料科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】林 明輝
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-159128(JP,A)
【文献】特開2012-071456(JP,A)
【文献】特開2010-228315(JP,A)
【文献】特開平09-277458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
B44C 1/17
B32B 27/30
B32B 27/32
B32B 27/28
B32B 7/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースシートと、
前記ベースシートに設けられた高光沢層とを備え、
前記ベースシートは、接触面を有し、
前記高光沢層は、鏡面と前記鏡面の反対側の付着面とを有し、
前記高光沢層の前記鏡面は、前記ベースシートの前記接触面に直接接触し、
前記ベースシートの前記接触面の算術平均粗さは、1.5μm未満であり、
前記ベースシートの材料は、ヒドロキシル基(-OH基)を有するポリエチレン系組成物を含み、
前記高光沢層の材料は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)を含み、
前記ベースシートの縦方向(MD)への破断伸び率は、300%から600%であり、
前記ベースシートの横方向(TD)への破断伸び率は、300%から600%である転写フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の転写フィルムにおいて、
前記ポリエチレン系組成物は、式(1)及び式(2)で表される繰り返し単位を含む転写フィルム。
【化1】
【化2】
(式(1)、(2)において、n1は、0以上で5000未満の自然数であり、n2は、1以上で5000未満の自然数である。)
【請求項3】
請求項2に記載の転写フィルムにおいて、
前記n1は、0であり、
前記ポリエチレン系組成物の前記繰り返し単位は、式(2)で構成される転写フィルム。
【請求項4】
請求項1に記載の転写フィルムにおいて、
前記ポリエチレン系組成物の重合度は、2000から3000である転写フィルム。
【請求項5】
転写フィルムの使用であって、
請求項1乃至の何れか1つに記載の転写フィルムを目的物に付着させることを含む使用。
【請求項6】
請求項に記載の使用において、
前記目的物は、表面を有し、
前記目的物の表面は、平面又は局面である使用。
【請求項7】
請求項に記載の使用において、
前記目的物は、表面を有し、
前記転写フィルムの前記高光沢層の前記付着面は、前記目的物の前記表面に直接付着している使用。
【請求項8】
請求項に記載の使用において、
前記目的物は、凸部又は凹部を有し、
前記凸部又は前記凹部の長さ、幅及び高さの1つは、500mm未満であり、
前記転写フィルムの前記高光沢層の前記付着面は、前記凸部又は前記凹部に直接付着している使用。
【請求項9】
請求項乃至の何れか1つに記載の使用において、
前記目的物の材料は、プラスチック、金属及びガラスからなる群から選択される使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写フィルム、特に、鏡面反射を示し得る転写フィルムに関する。本発明は、転写フィルムの使用にも関し、特に、異なる材料で形成された様々な目的物へのその適用に関する。
【背景技術】
【0002】
生活の質の改善とともに、人々は、製品の本質的な品質を追求するだけでなく、個人の趣向及び唯一性を示すために製品の見た目にも気を払う。製品の芸術的な質感を適切に示すために、製品をコーティングすることによって光沢や鮮やかさを向上させることは共通の実務であり、それにより、鏡面を得るための装飾技術の発展を促進している。
【0003】
装飾のために鏡面を得る現状の技術は、湿式メッキ(water plating)、真空メッキ、水圧転写(water transfer printing)及び溶射(spraying)が含まれる。しかしながら、湿式メッキは、金属を含む大量の排水を発生させ、環境問題を生じさせる。真空メッキの設備は、複雑なコーティング処理及び高コストという不利に加えて、比較的高価である。水圧転写も、フィルムの破損が生じやすいという不利に加えて、水質汚染を生じさせる大量の排水を生じさせる。溶射は、さらなる適用制限があり、目的物が高い平面度を有することが要求され、噴射される粒子は、鏡面反射を示すように平面度を向上させるように一層ずつ積み重ねられる。そのため、溶射によっても、鏡面を得るコストが高い。
【0004】
湿式メッキ、真空メッキ、水圧転写及び溶射は、前述の不利を有するので、転写フィルムが提案され、転写フィルムは、底から表面へ向かう順に、ベースシートと、ミラー調剥離層と、高光沢層とを有する。ユーザが転写フィルムを目的物に貼った後に高光沢層は目的物に貼られ得る。ミラー調剥離層をベースシートと高光沢層との間に配置することによって、高光沢層は、ミラー調剥離層及びベースシートから円滑に分離されることができ、それによって、高光沢層が目的物の表面に転写され、鏡面反射を示す。
【0005】
ベースシートから高光沢層が剥がれることをミラー調剥離層が容易にする一方、ミラー調剥離層の厚さのために、転写フィルムが装飾のために目的物の表面に貼着することが難しくなり、それにより、加圧成型の間に転写フィルムが加熱され且つ引き延ばされた後に波形(ripples)又はゆず肌(orange peel skin)を必然的に生じさせる。前述の不利によって、高光沢層が目的物に転写された後に、転写フィルムは、所望の鏡面反射を示すことが難しく、さらなる改良が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】台湾実用新案登録第M572832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現状の技術の不利を解消するために、本発明の目的は、転写フィルム及びその使用を提供することであり、転写フィルムは、ミラー調剥離層の採用を省略し、それでもなお、転写フィルムを目的物の表面に貼り付けた後に、目的物に鏡面反射又はミラー調の反射を呈させる。以下、鏡面反射は、ミラー調の反射も意味する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の目的を達成するために、本発明は、ベースシートと、前記ベースシートの上に配置された高光沢層とを備えた転写フィルムであり、前記ベースシートは、接触面を有し、前記高光沢層は、鏡面と、前記鏡面と反対側の付着面とを有し、前記高光沢層の鏡面は、前記ベースシートの前記接触面と直接接触し、前記ベースシートの前記接触面の算術平均粗さは、1.5μm未満であり、前記ベースシートの材料は、ヒドロキシル基(-OH基)を含むポリエチレン系組成物を含み、前記高光沢層の材料は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)を含む。
【0009】
前述の技術的手段によって、本発明の転写フィルムは、ミラー調剥離層を省略することができ、所望の鏡面反射を呈すために高光沢層がベースシートから剥離することを容易にする。言い換えると、本発明の高光沢層は、目的物の表面に円滑に貼り付けることができるだけでなく、転写後に鏡面反射を呈することができる。
【0010】
高光沢層の鏡面及び付着面の両方とも、同じ材料で形成され、鏡面反射を呈する高光沢特性を有し、付着面はさらに目的物への付着に使用される。
【0011】
本明細書では、「高光沢層の鏡面がベースシートの接触面に接触していること」は、本発明に係る転写フィルムにおいて、高光沢層とベースシートとの間に、従来技術のミラー調剥離層のような追加の層がないことを意味する。
【0012】
好ましくは、ベースシートの接触面の算術平均粗さは、1.2μm未満である。より好ましくは、ベースシートの接触面の算術平均粗さは、1μm未満である。さらに好ましくは、ベースシートの接触面の算術平均粗さは、0.8μm未満である。1つの実施形態では、ベースシートの接触面の算術平均粗さは、0.05μm以上で且つ0.2μm以下である。ベースシートの接触面の算術平均粗さを調節することによって、高光沢層の鏡面がベースシートの接触面に接触するとしても、本発明は、高光沢層の鏡面の表面特性を保つことができる。
【0013】
好ましくは、ベースシートの縦方向(MD:machine direction)への破断伸び率は300%から600%であり、ベースシートの横方向(TD:transvers direction)への破断伸び率は、300%から600%である。より好ましくは、ベースシートの破断伸び率(MD)は、375%から525%であり、ベースシートの破断伸び率(TD)は、375%から525%である。より好ましくは、ベースシートの破断伸び率(MD)は、400%から500%であり、ベースシートの破断伸び率(TD)は、400%から500%である。したがって、転写フィルムは、大面積の平坦面と様々な小構造又は凹凸表面を有する目的物との両方に付着するのに適する。
【0014】
好ましくは、ベースシートの材料におけるポリエチレン系組成物は、複数のヒドロキシル基を有する改質ポリエチレンであってもよく、改質ポリエチレンは、式(1)及び/又は式(2)で表される繰り返し単位を有していてもよい。
【0015】
【化1】
【0016】
【化2】
【0017】
ここで、n1は、0以上で5000未満の自然数であり、n2は、1以上で5000未満の自然数である。
【0018】
n1が0の場合、ベースシートの材料におけるポリエチレン系組成物は、式(2)の繰り返し単位だけを有し、即ち、式(2)で構成されるポリエチレン系組成物の繰り返し単位を有する。
【0019】
好ましくは、n1は、0から3000の自然数である。
【0020】
好ましくは、n2は、1000から4000の自然数である。
【0021】
好ましくは、ポリエチレン系組成物の重合度は、2000から3000である。より好ましくは、ポリエチレン系組成物の重合度は、2300から2600である。
【0022】
ベースシートの材料は、可塑剤をさらに有していてもよく、可塑剤の量は、ベースシートの材料の全重量を基準として8wt%から13wt%である。好ましくは、可塑剤の量は、ベースシートの材料の全重量を基準として9wt%から12wt%である。
【0023】
本明細書では、本発明の転写フィルムを目的物に転写した後に、高光沢層は、高光沢特性を有し、肉眼で見える鏡面反射を目的物の表面に呈させる。高光沢層の鏡面の光沢度は、80GU(gloss unit)以上である。1つの実施形態では、高光沢層の鏡面の、測定角度60度で光沢計によって測定された読み値は、90GU以上且つ100GUまでである。別の実施形態では、高光沢層の鏡面の、測定角度20度で光沢計によって測定された読み値は、85GU以上且つ95GUまでである。別の実施形態では、高光沢層の鏡面の、測定角度80度で光沢計によって測定された読み値は、95GU以上且つ105GUまでである。
【0024】
好ましくは、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)は、ポリメタクリル酸メチルオリゴマ(PMMA oligomer)である。
【0025】
好ましくは、高光沢層の材料は、限定されるわけではないが、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸n-ブチル(BAC)若しくは酢酸エチル(EAC)のような溶媒、又は、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:TBO184)のような開始剤(initiator)であってもよい。本発明は、MEKを溶媒として採用してもよく、MEKは、PMMAの均一な分散を容易にし、ベースシート上を高光沢層で被覆することができる。
【0026】
紫外線の照射後に高光沢層を硬化させて、プラスチック及び金属等の材料で形成された目的物に固定するために、高光沢層の材料は、例えば、ポリウレタンアクリレート樹脂(polyurethane acrylic resin)、変性エポキシアクリレート樹脂(modified epoxy acrylic resin)又は他の紫外線硬化樹脂などの架橋剤又は紫外線硬化性接着材を含んでいてもよい。したがって、高光沢層と目的物とを結合するために追加的な接着層を設ける必要がない。一実施形態では、紫外線照射のエネルギは、500mJ/cmから1800mJ/cmであり得る。別の実施形態では、紫外線照射のエネルギは、500mJ/cmから1500mJ/cmであり得る。
【0027】
ベースシートの厚さは、20μmから100μmであってもよい。好ましくは、ベースシートの厚さは、30μmから100μmであってもよい。
【0028】
高光沢層の厚さは、10μmから100μmであってもよい。好ましくは、高光沢層の厚さは、10μmから50μmであってもよい。より好ましくは、高光沢層の厚さは、15μmから50μmであってもよい。本発明は、高光沢層の厚さを増大することによって、高光沢層の輝度及び鏡面反射を向上させることができる。
【0029】
また、本発明は、目的物に転写フィルムを付けることを含む、転写フィルムの使用を提供する。本発明の転写フィルムを目的物に転写した後、転写フィルムの高光沢層によって、目的物の外観が視覚的な鏡面反射を呈する。
【0030】
詳しくは、目的物の表面に転写フィルムが付けられた後、転写フィルムの高光沢層の付着面が目的物の表面に付着し、転写フィルムのベースシートは、高光沢層の鏡面から剥がされる。
【0031】
1つの実施形態では、転写フィルムの高光沢層が目的物の表面に接触した後、転写フィルムは、高光沢層を軟らかくするために、50℃から120℃で加熱され得る。さらに、転写フィルムが目的物を覆って接触するために1.0atmから4.0atmの圧力がかけられ、その後、PMMAの架橋反応を開始させるために紫外線照射を行って、高光沢層を硬化させて目的物に固定させる。ベースシートの接触面の算術平均粗さが非常に小さい(目的物の表面の算術平均粗さよりも小さい)ので、本発明は剥離層が採用されていないとしても、ベースシートは、高光沢層が硬化して目的物に固定された後に、高光沢層の鏡面反射を劣化させることなく高光沢層から分離されることができる。
【0032】
本発明によれば、転写フィルムの高光沢層の付着面は、目的物の表面に直接付着し、接着層を用いて高光沢層と目的物とを結合する必要がない。言い換えると、目的物の表面は、高光沢層の付着面に直接接触し、接着層のような別の層が設けられていない。
【0033】
本発明によれば、目的物の材料は、プラスチック、金属及びガラスからなる群から選択されることができるが、これに限定されない。
【0034】
好ましくは、プラスチックは、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PET)、ポリエチレンテレフタレート(PETE)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリウレタン(PU)又は熱可塑性エラストマ(TPE)を含むが、これに限定されない。
【0035】
本発明によれば、目的物は、携帯電話、タブレットコンピュータ、保護ケース、家電機器、自動車、バイク、美容機器、アクセサリ及び絵皿を含む群から選択され得るが、これに限定されない。
【0036】
1つの実施形態では、目的物の表面は、平面又は曲面であり得る。
【0037】
別の実施形態では、目的物は、凸部又は凹部を有し、凸部又は凹部の長さ、幅及び高さの1つは、500mm未満である。好ましくは、凸部又は凹部の長さ、幅及び高さの1つは、0mmよりも大きく、100mmまでである。
【0038】
転写フィルムの高光沢層の付着面は、目的物の凸部及び/又は凹部に直接貼られる。
【0039】
本発明の転写フィルムは、良好な延性を有し、様々な寸法の目的物に適用可能である。
【0040】
車の外表面全体のような大面積の目的物に鏡面反射を呈させる場合、目的物の表面の長さ及び/又は幅を1.5mよりも大きくすることができ、好ましくは、目的物の表面の長さ及び/又は幅は、2mよりも大きい。さらに好ましくは、目的物の表面の長さ及び/又は幅は2mよりも大きく且つ5mよりも小さい。
【0041】
電話ケース又はアクセサリのような小面積の目的物に鏡面反射を呈させる場合、目的物の表面の長さ及び/又は幅を500mm未満とすることができ、好ましくは、目的物の表面の長さ及び/又は幅は、0.1mm以上且つ200mm以下であり得る。
【発明の効果】
【0042】
要するに、本発明の転写フィルムは、湿式メッキ、真空メッキ、水圧転写及び溶射の技術的欠点を解消するだけでなく、従来実務における転写フィルムのための剥離層、鏡面層又はミラー調剥離層などのさらなる層を採用するという制約から解放する。さらに、本発明は、転写フィルムが目的物に貼られた後に、目的物の表面が鏡面反射を呈して、目的物の美観及び機能性を向上させることを保証する。それに加えて、本発明の転写フィルムは、金属に限定されない、様々な種類の材料で形成された目的物に適用することができ、より広い適用性及び優れた商業的可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、転写フィルムの模式的な側面図である。
図2図2は、実施形態に係る目的物の模式図である。
図3図3は、別の実施形態に係る目的物の模式図である。
図4図4は、別の実施形態に係る目的物の模式図である。
図5図5は、別の実施形態に係る目的物の模式図である。
図6図6は、目的物がケースである実施形態の模式的な断面図である。
図7図7は、転写フィルムが目的物に貼られた後の目的物に付着した高光沢層の三次元的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、以下の実施形態によってさらに説明される。当業者は、本発明による有利な点及び有効性を容易に理解できる。本発明は、実施形態の内容に限定されるべきではない。当業者は、本発明の内容を実現又は適用するために、本発明の範囲から逸脱しない改良又は変更を行うことができる。
【0045】
〈転写フィルム〉
図1に示されるように、転写フィルム10は、ベースシート100と、ベースシート100の上に配置された高光沢層110とを有する。ベースシート100は、接触面101を有し、高光沢層110は、鏡面111と、鏡面111と反対側の付着面112とを有し、高光沢層110の鏡面111は、ベースシート100の接触面101に直接接触している。ベースシート100の接触面101の算術平均粗さは、1.5μm未満であり、ベースシート100の材料は、ポリエチレン系組成物を含み、高光沢層110の材料は、PMMAを含む。
【0046】
転写フィルム10は、様々な種類の目的物に適用することができ、それにより、目的物に鏡面反射を呈させることができる。目的物は、それに限定されないが、コンパクトケース、アクセサリ、携帯電話、タブレットコンピュータ、保護ケース、家電機器、建築用材、キッチン用品、自動車、バイク、絵皿等を含む。
【0047】
一実施形態では、目的物は、図2に示されるように、コンパクトケースであり得る。コンパクトケースの表面201は、曲面である。転写フィルムがコンパクトケースに貼られる場合、高光沢層110の付着面112は、コンパクトケースの表面201に貼られ、高光沢層110は、コンパクトケースの外観に視覚的な鏡面反射を呈させる。
【0048】
別の実施形態では、図3に示されるように、目的物は、アクセサリであり得る。アクセサリは、大面積表面202と、小面積表面203とを有する。転写フィルムがアクセサリに貼られる場合、高光沢層110は、アクセサリの大面積表面202及び小面積表面203に貼られ、高光沢層110は、アクセサリの全体的な外観に視覚的な鏡面反射を呈させる。小面積表面203の幅はわずか3mmであるが、高光沢層110は、皺を生じさせることなく、小面積表面203に良好に付着し、それにより、アクセサリの全体的な外観の芸術的な質感及び繊細さを向上させることができる。
【0049】
別の実施形態では、図4に示されるように、目的物は、携帯電話であり得る。凸部2011(例えば、カメラレンズ)が携帯電話に設けられていてもよい。転写フィルムが携帯電話に貼られる場合、高光沢層110は、携帯電話の凸部2011には貼られず、その領域の高光沢層110は、ベースシート100が剥がされた後にベースシート100と共に取り除かれる。それにより、カメラレンズが解放され、携帯電話のレンズのための次の部品の組み立てが容易になる。凸部2011の高さがわずか0.5mmであっても、高光沢層110は、凸部2011の側部に、皺を生じさせることなく良好に付着し、様々な見る角度に対して凸部2011の全体的な外観に視覚的な鏡面反射を呈させることができる。それにより、携帯電話の全体的な外観の芸術的な質感及び繊細さを向上させることができる。
【0050】
別の実施形態では、図5に示されるように、目的物は、タブレットコンピュータであり得る。凹部2012が、タブレットコンピュータに設けられていてもよい。転写フィルムがタブレットコンピュータに貼られた後、凹部2012の排気孔2013のため、高光沢層110と凹部2012との接着効果が真空手段によって増強され得る。高光沢層110は、タブレットコンピュータの全体的な外観に視覚的な鏡面反射を呈させることができる。凹部の深さがわずか2mmであっても、高光沢層110は、皺を発生させることなく凹部2012に良好に付着し、様々な見る角度に対して凹部2012の全体的な外観に視覚的な鏡面反射を呈させることができる。それにより、タブレットコンピュータの全体的な外観の芸術的な質感及び繊細さを向上させることができる。様々な製品の要求に従って、目的物20は、複数の凹部2012を有してもよく、これらの凹部2012は、商標を形成する場合もある。
【0051】
-実施例1-
実施例1に係る転写フィルムは、ベースシートと高光沢層とを有し、ベースシートは、市販品であり、ベースシートの接触面の算術平均粗さは、0.08μmである。ベースシートの材料は、10%から11%の可塑剤と重合度が2400の改質ポリエチレン(MdPE)とを含む。MdPEは、前述の式(1)及び式(2)の繰り返し単位を有する。ベースシートの破断伸び率(MD)及び破断伸び率(TD)は両方とも400%から500%であり、ベースシートの厚さは75μmであり、高光沢層の材料はPMMAを含み、高光沢層の厚さは25μmから30μmである。
【0052】
-比較例1-
比較例1の転写フィルムは、ベースシートとミラー調の剥離層と高光沢層とを有している。ベースシートは市販品であり、その材料は、ポリエチレン(PE)とポリプロピレン(PP)とを含むポリオレフィンフィルム(POフィルム)である。比較例1の高光沢層は、実施例1の高光沢層と同じである。
【0053】
-比較例2-
比較例2の転写フィルムは、ベースシートと高光沢層とを有し、ベースシートは市販品であり、その材料は、破断伸び率75%の非結晶性ポリエチレンテレフタレート(APETフィルム)である。比較例2の高光沢層は、実施例1の高光沢層と同じである。
【0054】
〈転写フィルムの適用〉
実施例2~4(E2~E4)は、実施例1の転写フィルムの適用であり、目的物はそれぞれ、インクを有さない金属目的物(E2)、インク印刷がされたプラスチック目的物(E3)、及び、インクを有さないプラスチック目的物(E4)である。
【0055】
比較例3(CE3)、比較例5(CE5)及び比較例7(CE7)は、比較例1の転写フィルムの適用であり、目的物はそれぞれ、インクを有さない金属目的物(CE3)、インク印刷がされたプラスチック目的物(CE5)、及び、インクを有さないプラスチック目的物(CE7)である。
【0056】
比較例4(CE4)、比較例6(CE6)及び比較例8(CE8)は、比較例2の転写フィルムの適用であり、目的物はそれぞれ、インクを有さない金属目的物(CE4)、インク印刷がされたプラスチック目的物(CE6)、及び、インクを有さないプラスチック目的物(CE8)である。
【0057】
〈転写フィルムの適用試験〉
実施例2~4及び比較例3~8の様々な領域の転写の効果が肉眼で観察され、転写フィルムの高光沢層の転写効果と異なる材料で形成された目的物の様々な領域に示される視覚的効果とが評価される。図6に示されるように、目的物は、第1領域21と第2領域22と第3領域23とを有している。第1領域は、目的物の主面であり、約130cmの最大表面積を有する。第2領域22は、目的物の側面であり、約24cmの表面積を有する。第3領域23は、目的物の底面であり、約4.8cmの表面積を有する。第3領域23は、第1領域21と平行である。表1に結果が示される。
【0058】
【表1】
【0059】
ここで、〇は、転写後に鏡面反射を呈する領域を示す。
【0060】
△は、転写の成功率が30%から60%であるか又は波形若しくはゆず肌が生じた領域を示す。
【0061】
×は、転写の成功率が30%未満か又は高光沢層が領域に付着できないことを示す。
【0062】
まず第1に、実施例2~4の結果によれば、目的物の材料(金属又はプラスチック)にかかわらず、実施例1を使うことによる転写の効果は、影響を受けず、実施例2~4の目的物の全体的な外観は、視覚的な鏡面反射を呈する。
【0063】
第2に、比較例3,4によれば、目的物の処理(インクで印刷されているか又はいないか)にかかわらず、実施例1を使うことによる転写の効果は影響を受けず、比較例3,4の目的物の全体的な外観は、視覚的な鏡面反射を呈する。
【0064】
第3に、比較例3,5,7の結果によれば、第3領域の転写の成功率が30%から60%か又は第3領域に波形若しくはゆず肌が生じている。そのため、POフィルムがベースシートに採用されている場合には、ミラー調剥離層の必要性のため、比較例1の転写フィルムの全体的な変形が不十分であり、転写フィルムは目的物の底の第3表面、即ち、第3領域へ良好に付着することができない。
【0065】
最後に、比較例4,6,8の結果によれば、比較例2は2つの層だけを含んでいるが、比較例2の転写フィルムの高光沢層だけが目的物に付着する。APETフィルムがベースシートとして採用される場合、APETフィルムは、延性が乏しく、波形が生じやすいので、比較例2の転写フィルムを、目的物の第2領域及び第3領域に良好に付着させることができない。したがって、比較例2の転写フィルムは、商業的利用の可能性がほとんどない。
【0066】
〈転写フィルムの接着結果〉
図7に示されるように、目的物は、装飾品であり、この装飾品は、凸部2011と、延長部2014と、曲面2015とを有している。凸部2011、延長部2014及び曲面2015は、一体的に形成されている。転写フィルムが装飾品に貼られる場合、高光沢層110は、凸部2011、延長部2014及び曲面2015に貼られることができ、装飾品の外観全体に視覚的な鏡面反射を呈させる。延長部2014の平面の幅は1mm未満であり、その周方向の長さは3cmを超えているが、それでも高光沢層110は、延長部2014、並びに、延長部2014と凸部2011及び曲面2015との湾曲した接合部に、皺を生じさせることなく良好に貼着される。したがって、本発明は、優れた接着効果を有する。
【0067】
要するに、本発明は、湿式メッキ、真空メッキ、水圧転写及び溶射と比較して、鏡面反射を呈するための異なる技術的手段を提供する。本発明の転写フィルムを鏡面反射を有さない目的物に貼着することによって、転写フィルムの高光沢層が目的物の表面を装飾し、目的物に想像通りの視覚的な鏡面反射を呈させることができる。目的物の材料、目的物の表面がインクで印刷されているか、又は、微小な構造が設けられているかにかかわらず、転写フィルムは、高い成功率で転写でき、目的物に視覚的な鏡面反射を呈させることができる。それにより、目的物の全体的な外観の芸術的な質感及び繊細さ、並びに、目的物の価値を向上させることができる。
【0068】
前述の実施形態は、本発明を便利なやり方で実施した一例であり、それらの実施形態が発明の範囲を限定するために使われることはない。本発明の開示から離れることなく実現される変形、変更、その他の変化は、本発明の範囲に含まれるだろう。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7