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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】医療用項目抽出システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/00 20180101AFI20221213BHJP
【FI】
G16H10/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022034426
(22)【出願日】2022-03-07
【審査請求日】2022-03-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 アプリケーションソフトウェアのリリースにより公開(公開日:2021年3月26日) ウェブサイトでの掲載(掲載年月日:2021年3月26日)) (アドレス1)https://first-priority-inc.co.jp/buddydoctor/phrase/ (アドレス2)https://first-priority-inc.co.jp/#service
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520395558
【氏名又は名称】株式会社ファーストプライオリティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 真徳
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲朗
【審査官】梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-157393(JP,A)
【文献】特開2021-033721(JP,A)
【文献】「新しい保険」を徹底チェック,日経マネー No.472 ,日経BP,2021年04月21日,p.108-109
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療に関する項目を抽出するように構成された医療用項目抽出システムであって、
ユーザ毎に、検査結果を含む画像データを取得するように構成されたデータ取得部と、
前記画像データに含まれるテキストを認識するように構成されたテキスト認識部と、
前記認識されたテキストに基づいて、個々のユーザについて不要又は重複する処置項目を抽出するように構成された処置抽出部と、
前記処置項目が抽出された場合に、予め設定された連絡先に通知を行うように構成された通知送信部と、
を備え
前記処置抽出部は、前記認識されたテキストに含まれる複数の検査結果について、過去の予め設定された期間内における検査結果と比較し、該検査結果の変動率が予め設定された閾値未満である項目を、前記不要又は重複する処置項目として抽出する
ように構成された医療用項目抽出システム。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用項目抽出システムであって、
前記処置抽出部は、過去における同一ユーザについての複数の検査結果を比較することによって、個々のユーザについて不要又は重複する処置項目を抽出する
ように構成された医療用項目抽出システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の医療用項目抽出システムであって、
前記処置抽出部は、同一の医療機関から得られる医療情報に基づいて、個々のユーザについて不要又は重複する処置項目を抽出する
ように構成された医療用項目抽出システム。
【請求項4】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の医療用項目抽出システムであって、
前記テキスト認識部は、機械学習を用いて前記画像データに含まれるテキストを認識する
ように構成された医療用項目抽出システム。
【請求項5】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の医療用項目抽出システムであって、
前記データ取得部を第1データ取得部として、
ユーザが入力したリビングウィルを取得するように構成された第2データ取得部と、
前記リビングウィルを含むデータを表すウィルデータに基づいて、前記ユーザに対する保険料を演算するように構成された保険料演算部と、
をさらに備え
前記保険料演算部は、前記リビングウィルの内容が予め設定された条件を満たすか否かによって保険料の割引率を設定し、該割引率が適用された保険料を演算する
ように構成された医療用項目抽出システム。
【請求項6】
請求項5に記載の医療用項目抽出システムであって、
前記保険料演算部は、前記リビングウィルの内容が予め設定された複数の条件を満たす度に複数段階で割引を適用して、前記割引率を設定する
ように構成された医療用項目抽出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療に関する項目を抽出するように構成された医療用項目抽出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、医療用項目抽出システムであって、医療に関する項目として、投薬・検査等の重複診療をチェックし、同一月で異なる医療機関で同一の診療行為があると判定した場合に、被保険者に通知するという技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-157393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発明者の詳細な検討の結果、上記特許文献1の技術では、重複診療を判定するために利用する元データを手入力する必要があり、この作業負荷が大きいために、ユーザによるデータ提供の協力が得られにくいなど、利便性に課題があった。
【0005】
本開示の1つの局面は、医療に関する項目を抽出するように構成された医療用項目抽出システムにおいて、利便性を向上できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、医療に関する項目を抽出するように構成された医療用項目抽出システムであって、データ取得部と、テキスト認識部と、処置抽出部と、通知送信部と、を備える。データ取得部は、ユーザ毎に、検査結果を含む医療情報に関する画像データを取得するように構成される。テキスト認識部は、画像データに含まれるテキストを認識するように構成される。処置抽出部は、認識されたテキストに基づいて、個々のユーザについて不要又は重複する処置項目を抽出するように構成される。通知送信部は、処置項目が抽出された場合に、予め設定された連絡先に通知を行うように構成される。
【0007】
このような構成によれば、画像データに含まれるテキストを認識し、このテキストに基づいて、処置項目を抽出することができる。よって、テキストを手入力する必要がないため、利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の医療支援システム(医療用項目抽出システム)の構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態での処理を示すフローチャートである。
図3】医療情報の撮像時のスマホでの表示例を示す画像図である。
図4】クラウドデータの一例を示す表である。
図5】判定閾値の設定例を示す表である。
図6】重複通知の表示例を示す画像図である。
図7】第2実施形態の医療支援システム(保険料演算システム)の構成を示すブロック図である。
図8】第2実施形態での処理を示すフローチャートである。
図9】リビングウィルの入力時におけるスマホでの表示例を示す画像図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す医療支援システム1は、検査や診療等の医療に関する支援を実施するように構成されたシステムである。医療支援システム1は、特に、重複や無駄となる項目を抽出する医療用項目抽出システムとしての機能を有する。医療支援システム1は、演算装置10を中心に構成される。医療支援システム1は、ユーザ装置20と、医療機関装置25と、管理装置30と、審査装置35とを備えてもよい。
【0010】
演算装置10は、本実施形態での主たる処理を実現する装置である。演算装置10は、例えば、サーバ装置として構成される。演算装置10は、図示しないインターネット網や携帯電話基地局等を介して、ユーザ装置20、医療機関装置25、管理装置30、及び審査装置35と、互いに通信可能に構成される。
【0011】
演算装置10は、CPU11と、例えば、RAM又はROM等の半導体メモリ(以下、メモリ12)と、を有するマイクロコンピュータを備える。演算装置10の各機能は、CPU11が非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、メモリ12が、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムが実行されることで、プログラムに対応する方法が実行される。なお、非遷移的実体的記録媒体とは、記録媒体のうちの電磁波を除く意味である。また、演算装置10は、1つのマイクロコンピュータを備えてもよいし、複数のマイクロコンピュータを備えてもよい。
【0012】
演算装置10は、ハードディスクやフラッシュメモリ等の記録媒体にクラウドデータ16を記録可能に構成され、重複無駄判定部17としての機能を備える。重複無駄判定部17としての機能は、後述する第1サーバ処理によって実現される。演算装置10に含まれる機能を実現する手法はソフトウェアに限るものではなく、その一部又は全部の機能は、1つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。例えば、上記機能がハードウェアである電子回路によって実現される場合、その電子回路は、デジタル回路、又はアナログ回路、あるいはこれらの組合せによって実現されてもよい。
【0013】
ユーザ装置20は、例えば、ユーザが所持するスマートフォン等の装置として構成される。ユーザは、医療支援システム1のためのアプリケーションをユーザ装置20で使用する者である。なお、ユーザには、検査や診療等を受ける患者本人や、患者本人の家族等を含む。
【0014】
以下、ユーザ装置20をスマホとも呼ぶ。ただし、ユーザ装置20は、スマートフォンに限らず、パソコン、タブレット端末等であってもよい。ユーザ装置20は、図示しないCPU、メモリを備え、演算装置10と同様に、メモリに格納されたプログラムを実行することで後述する第1スマホ処理を実現する。
【0015】
ユーザ装置20は、ユーザの操作によって、アプリケーションを提供する図示しないアプリサーバから、第1スマホ処理を実行するためのアプリケーションをダウンロードし、アプリケーションがインストールされることによって、第1スマホ処理を実行可能になる。なお、図1では1つのユーザ装置20のみを図示しているが、医療支援システム1には複数のユーザ装置20が備えられていてもよい。例えば、企業毎に全社員分だけユーザ装置20が備えられていてもよい。医療機関装置25、管理装置30、審査装置35についても同様である。
【0016】
医療機関装置25は、診療所、病院等の医療機関に配置されるコンピュータ(例えばパソコン)である。医療機関装置25は、スマートフォン、タブレット端末等であってもよい。医療機関装置25は、図示しないCPU、メモリを備え、演算装置10と同様に、メモリに格納されたプログラムを実行することで種々の処理を実現する。例えば、医療機関装置25は、審査装置35に対して、レセプト(診療報酬明細書)の送信を行うことができる。
【0017】
また、医療機関装置25は、ユーザ装置20及び演算装置10から医療記録の提供を受けることができる。医療記録は、検査結果や受診内容等の医療行為についての記録である。医療機関装置25は、審査装置35からレセプトに関する審査結果を受信することができる。
【0018】
管理装置30は、企業における健康管理室、健康保険組合等に配置されるコンピュータ(例えばパソコン)である。管理装置30は、スマートフォン、タブレット端末等であってもよい。管理装置30は、図示しないCPU、メモリを備え、演算装置10と同様に、メモリに格納されたプログラムを実行することで後述する管理処理を実現する。管理装置30は、演算装置10から、管理対象となる企業の社員(例えばA社の全社員)に関する医療記録の提供を受けることができる。
【0019】
審査装置35は、医療機関装置25から請求されるレセプトを審査する審査機関が所有するコンピュータ(例えばパソコン)として構成される。審査装置35は、スマートフォン、タブレット端末等であってもよい。審査装置35は、図示しないCPU、メモリを備え、演算装置10と同様に、メモリに格納されたプログラムを実行することで種々の処理を実現する。
【0020】
例えば、審査装置35は、レセプトを審査し、審査結果を医療機関装置25や管理装置30に通知する。また、審査装置35は、レセプトの審査結果(例えば減額査定)に対する再審査請求を管理装置30から受信し、再審査を実施し、再審査結果を医療機関装置25や管理装置30に通知する。
【0021】
[1-2.処理]
次に、ユーザ装置20(スマホ)が実行する第1スマホ処理について、図2(a)のフローチャートを用いて説明する。
【0022】
まず、S110で、スマホは、ユーザの指示に従って、カメラを起動させ、検査結果を撮像する。
この際、スマホでは、当該医療支援システム1に関するアプリケーションが起動し、図3(a)に示すように、種々の医療情報を選択するための画像が表示される。ここでは、テキストを含む検査結果に関する画像、テキストを含まないレントゲン写真、CT写真等の画像等を選択できるように構成される。その他、手術写真、カルテ情報等をアップロード可能に構成されてもよい。
【0023】
一例として、テキストを含む検査結果の画像(例えば「採血・測定データのアップロード」のボタン)がスマホ上で選択されると、スマホではカメラが起動し、ユーザは、検査結果の用紙を撮像する。すると、スマホでは、図3(b)に示すように、検査結果の撮像画像がアプリケーション上に合成されて表示される。撮像画像は、検査項目と検査結果とがテキストで記載された検査結果(例えば用紙、書類)をスマホ等の端末で撮像して得られるデータである。
【0024】
この画像上で、「アップロード」ボタンが操作されると、検査結果を含む撮像画像が演算装置10に送信される。この際、スマホは、ユーザを特定するためのID等の情報を、撮像画像に加えた画像データを生成し、この画像データを送信する。
【0025】
なお、図3(a)に示す画像上で、CT検査が選択された場合のように、スマホのカメラでは撮像画像が不鮮明になる可能性が高い場合には、図3(c)に示すように、検査結果の写真を、所定の送付先に郵送で送付するよう促す画像を表示させてもよい。
続いて、後述するS120の処理を実行する。ただし、S110の処理の後、一旦、第1スマホ処理を終了してもよい。
【0026】
次に、演算装置10が実行する第1サーバ処理について、図2(b)のフローチャートを用いて説明する。第1サーバ処理は、例えば、スマホから画像データが送信されると開始される処理である。
【0027】
第1サーバ処理では、まず、S210で、演算装置10は、S110でスマホから送信された画像データを取得する。画像データは、ユーザ毎に分類されて、クラウドデータ16として記録される。
【0028】
続いて、S220で、演算装置10は、画像データに含まれるテキストを認識する。この際、演算装置10は、画像データに含まれるテキストを、機械学習(AI)を利用したOCR(Optical Character Recognition)、いわゆるAI・OCRを用いて認識する。なお、AI・OCRは、機械学習を用いて文字の認識精度を高めた文字認識手法である。
【0029】
ここでのAI・OCRでは、教師データとして、様々なフォーマットの検査結果(例えば、用紙、書類)の画像を利用できる。特に、本実施形態のAI・OCRでは、文字列を画像から抽出し、抽出した文字列(例えば、候補となる文字の種別や配列)を接続されたコンピュータやインターネット上の情報から検索する。そして、抽出した文字列を、コンピュータやインターネット上に存在する全ての情報と適合させ、正しい文字列を認識する。つまり、AI・OCRでは、演算装置10内のデータだけでなく、他のコンピュータやインターネット上に存在する全ての情報を教師データとして活用できる。このため、少量の教師データで高い精度を得られる。
【0030】
このような処理によれば、文字列の意味を正しく理解でき、検査項目と検査結果とを互いに対応付けやすくすることができる。この結果、検査結果の読み取り精度を向上できる。
【0031】
演算装置10が画像データ中のテキストを認識すると、例えば図4に示すように、検査結果の一覧が項目毎に整理されて、クラウドデータ16として記録される。検査結果の一覧は、ユーザ毎に、過去の検査結果が検査項目毎にマトリクス状に整理されたデータである。検査結果の一覧では、ユーザ毎に、検査項目毎の検査結果の推移が認識しやすくなるように工夫されている。
【0032】
続いて、S230で、演算装置10は、認識されたテキストに基づいて、個々のユーザについて不要又は重複する処置項目を抽出する。処置項目とは、医療に関する処置についての項目を表す。処置には、検査、診察、手術の何れか1つを含む。「不要又は重複する処置項目」とは、医療費を節約する観点から抽出される項目である。例えば、近い日程で複数回の検査や診察を受けた項目については、重複する項目として抽出され、また、検査結果に変動が小さい場合等には、検査や受診が不要な項目として抽出される。
【0033】
詳細には、S240で、演算装置10は、検査結果を比較し、変動率を演算する。この
処理では、演算装置10は、過去における同一ユーザについての複数の検査結果(詳細には過去における1つの検査結果とそれよりも過去(例えば直前)の検査結果と)を抽出する。そして、これら複数の検査結果についての項目毎に差分を求め、複数の検査結果の変動率を演算する。変動率は、検査結果の増減の割合である。
【0034】
続いて、S250で、演算装置10は、複数の検査結果の差分、ここでは変動率と、判定閾値とを比較して、判定閾値未満の項目を抽出する。抽出された項目は、個々のユーザについて不要又は重複する処置項目である。演算装置10は、ユーザ毎に、処置項目を抽出すればよい。特に、同一の医療機関から得られる1のユーザに関する過去の複数の検査結果に基づいて、前記1のユーザについて不要又は重複する処置項目を抽出してもよい。
【0035】
ここで、判定閾値は、図5に示す閾値設定表を用いて設定できる。閾値設定表には、項目毎に多くの判定閾値の候補が例示されており、複数の閾値の候補からサーバ管理者が任意の判定閾値を選択して設定可能に構成される。ただし、ここでの閾値設定表では、判定閾値「以上」の項目、つまり、検査や受診が必要な項目を抽出するために用いられる。しかし、閾値設定表を用いて、判定閾値「未満」の項目を、不要又は重複する処置項目として抽出することができる。
【0036】
例えば、「赤血球数」の項目において、変動率が「10%以上」が選択されると、「10%以上」に対応する「450以下、及び550以上」を抽出するように判定閾値が設定される。この場合、2つの判定閾値が設定される。なお、検査や受診が必要な項目を抽出するためには、「赤血球数」が「450より大きく、550未満」となる検査結果を抽出すればよい。
【0037】
このように閾値設定表を用いて判定閾値を設定できるが、何れの判定閾値を採用するかについては、例えば、医療関係者による多数決によって設定される。本例の場合、医師50名に、医療処置が不要となる条件について、アンケートを実施し、このアンケートの結果にて3/4以上の賛成が得られた数値を判定閾値に採用した。
【0038】
例えば、「赤血球」については、「10%以上」が採用され、「総蛋白TP」及び「ヘモグロビン」については、「5%以上」が採用される。なお、「白血球」等については、医療機関毎に判定閾値が設定され、この値を外れる場合を表す「施設基準値外」が採用される。つまり、項目によっては、医療機関毎に判定閾値を設定できるように構成される。
【0039】
演算装置10は、最新の検査結果が得られてからの期間と、検査項目毎に予め設定された期間とを比較し、最新の検査結果が得られてから、長期間、検査がされていない項目については、重複する処置項目として抽出されないように、処置項目から除外してもよい。
【0040】
例えば、過去の6か月間等の所定期間において変動なしとされた処置項目については、その他病状の変化がない前提で、検査しないように設定される。しかし、所定期間を超える場合、変動なしとされた処置項目であっても、検査するように設定されてもよい。
【0041】
続いて、S260で、演算装置10は、処置項目が抽出された場合に、予め設定された連絡先に通知を行う。ここでの通知には、不要又は重複する処置項目が存在する旨、及び処置項目の内容等を含む。また、この通知は、例えば、ユーザ装置20及び管理装置30に送信される。S260の後、第1サーバ処理は終了する。
【0042】
ユーザ装置20は、図2(a)に示すように、S120で、スマホのアプリケーションが演算装置10から処置項目に関する通知を受けると、通知結果を表示させる。スマホのアプリケーションでは、例えば、図6(a)に示すように、定型文をポップアップで表示
させる。ポップアップとは、表示中の画像の上に重ねて表示させる画像である。ここでは、「お知らせ」がある旨を通知する。ユーザが画像上でポップアップを選択すると、例えば、図6(b)に示すように、重複する項目がある旨、及び重複している項目を特定するための具体的な名称をスマホ画面上に表示させる。この結果を見たユーザは、重複する検査や診療を控える等の行動を取りやすくなる。S120の処理が終了すると、図2(a)のスマホ処理は終了する。
【0043】
次に、管理装置30が実行する管理処理について、図2(c)のフローチャートを用いて説明する。管理処理は、演算装置10から送信された通知を受信すると開始する処理である。
【0044】
管理処理では、まず、S310で、管理装置30は、演算装置10から送信された通知を受信する。この通知は、メッセージとして管理装置30の画面上に表示され、管理装置30を操作する管理者が、不要又は重複する処置項目が存在する旨、及び処置項目の内容等を認識することができる。S310の処理の後、図2(c)の管理処理は終了する。
【0045】
[1-3.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1a)本開示の一態様は、医療に関する項目を抽出するように構成された医療支援システム1である。医療支援システム1は、演算装置10等を備える。演算装置10は、ユーザ毎に、検査結果を含む医療情報に関する画像データを取得するように構成される。演算装置10は、画像データに含まれるテキストを認識するように構成される。演算装置10は、認識されたテキストに基づいて、個々のユーザについて不要又は重複する処置項目を抽出するように構成される。演算装置10は、処置項目が抽出された場合に、予め設定された連絡先に通知を行うように構成される。
【0046】
このような構成によれば、画像データに含まれるテキストを認識し、このテキストに基づいて、処置項目を抽出することができる。よって、テキストを手入力する必要がないため、利便性を向上させることができる。
【0047】
(1b)本開示の一態様では、演算装置10は、過去における同一ユーザについての複数の検査結果を比較することによって、個々のユーザについて不要又は重複する処置項目を抽出するように構成される。
【0048】
このような構成によれば、過去における複数の検査結果を比較するので、不要又は重複する処置項目をより良好に抽出することができる。
【0049】
(1c)本開示の一態様では、演算装置10は、過去における複数の検査結果の変動率に応じて、個々のユーザについて不要又は重複する処置項目を抽出するように構成される。
このような構成によれば、過去における複数の検査結果の変動率を用いて、不要又は重複する処置項目を抽出するので、例えば、複数の検査結果での変化が小さい場合に、検査や診察を不要にするなど、処置項目を良好に抽出することができる。
【0050】
(1d)本開示の一態様では、演算装置10は、同一の医療機関から得られる医療情報に基づいて、個々のユーザについて不要又は重複する処置項目を抽出するように構成される。
【0051】
このような構成によれば、同一の医療機関から得られる医療情報に基づいて、処置項目を抽出するので、同一の医療機関での重複検査等の不正をより容易に検知することができ
る。
【0052】
(1e)本開示の一態様では、演算装置10は、機械学習を用いて画像データに含まれるテキストを認識するように構成される。
このような構成によれば、機械学習を用いてテキストが意味する内容を認識するので、医療情報の認識精度を向上させることができる。
【0053】
[2.第2実施形態]
[2-1.第1実施形態との相違点]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。第2実施形態では、リビングウィルを用いて保険料を演算する点で、第1実施形態と相違する。
【0054】
[2-2.構成]
第2実施形態の医療支援システム2は、図7に示すように、第1実施形態と同様に、演算装置10と、ユーザ装置20と、医療機関装置25とを備える。医療支援システム2は、第1実施形態の管理装置30及び審査装置35に換えて、処理装置40を備える。
【0055】
処理装置40は、例えば、保険会社のコンピュータ(例えばパソコン)であり、演算装置10及びユーザ装置20と通信可能であり、保険料を演算する機能を備える。処理装置40は、スマートフォン、タブレット端末等であってもよい。
処理装置40は、図7に示すように、CPU41と、例えば、RAM又はROM等の半導体メモリ42と、を有するマイクロコンピュータを備える。演算装置10と同様に、半導体メモリ42に格納されたプログラムを実行することで種々の処理を実現する。
【0056】
医療支援システム2では、演算装置10を所有する企業や処理装置40を所有する保険会社は、ユーザ装置20のユーザに、保険への加入を促す。この際、リビングウィルによって保険料の割引が受けられることをユーザに通知する。保険に興味を持ったユーザは、図示しないアプリサーバからアプリケーションをダウンロードし、アプリケーション上で後述する第2スマホ処理を実行する。なお、第2実施形態でのアプリケーションと、第1実施形態におけるアプリケーションとは、同一のアプリケーションでもよいし、異なるアプリケーションでもよい。
【0057】
また、リビングウィルとは、個人が終末期にどのような医療を受けたいかを意思表示するための文書である。事前指示書とも呼ばれる。また、ユーザ装置20においては、緊急時(ユーザ本人が重篤な状態の場合)には、家族の許可等によってリビングウィルを医療機関装置25に開示できるように構成される。医療機関は、演算装置10にユーザのリビングウィルが登録されている場合、このユーザのリビングウィルを医療機関装置25及び処理装置40に提供することができる。
【0058】
[2-2.処理]
次に、ユーザ装置20が実行する第2スマホ処理について、図8(a)のフローチャートを用いて説明する。第2スマホ処理は、例えば、リビングウィルに関するアプリケーションが起動すると開始する処理である。
【0059】
第2スマホ処理では、まず、S410で、ユーザ装置20は、ユーザによってアプリケーション上でリビングウィルが入力される。例えば、図9(a)から図9(d)に示すように、ユーザは、臓器毎の臓器提供の有無についての選択、及び延命治療に関する選択を入力し、最後に署名を入力することでリビングウィルを完成させる。
【0060】
続いて、S420で、ユーザ装置20は、リビングウィルを演算装置10に送信する。S420の処理の後、図8(a)の第2スマホ処理は終了する。
次に、演算装置10が実行する第2サーバ処理について、図8(b)のフローチャートを用いて説明する。第2サーバ処理は、例えばユーザ装置20からリビングウィルが送信されると開始される処理である。
【0061】
第2サーバ処理では、まず、S510で、演算装置10は、ユーザ装置20からリビングウィルを受信する。
続いて、S520で、演算装置10は、リビングウィルと、該ユーザに関する医療記録とを含むウィルデータを処理装置40に送信する。医療記録はユーザの健康状態が保険の加入要件を満たすか否かが判定できる程度の内容である。S520の処理の後、図8(b)の第2サーバ処理は終了する。
【0062】
次に、処理装置40が実行する料金演算処理について、図8(c)のフローチャートを用いて説明する。料金演算処理は、例えば、演算装置10からウィルデータを受信すると開始される処理である。
【0063】
料金演算処理では、まず、S510で、処理装置40は、ウィルデータを演算装置10から受信する。続いて、S520で、処理装置40は、ウィルデータを活用して、当該ウィルデータに関するユーザに対する保険料を演算する。
【0064】
ここで、保険料は、例えば、入院保険、或いは介護保険に関する料金である。例えば、下記のような手順で演算される。
≪1≫リビングウィルの表明内容、健康状態に関わらず、リビングウィルが入力されていれば、第1段階目の割引(例えば10%程度)を適用する。
【0065】
≪2≫医療記録に基づく健康状態が優良だった場合、第2段階目の割引(合計で例えば15~20%程度)を適用する。
≪3≫上記≪2≫の割引が適用されない場合であって、定期的な通院が確認できた場合、第2段階の割引(合計で例えば15~20%程度)を適用する。
【0066】
≪4≫上記≪2≫又は≪3≫の割引が適用されない場合であって、リビングウィルにより延命治療及び胃瘻腸瘻造設のうちの少なくとも1つを拒否する表明をした場合、第2段階目の割引(合計で例えば15~20%程度)を適用する。
【0067】
すなわち、処理装置40は、保険料について複数段階の割引を設定する。なお、≪2≫~≪4≫の割引について、重複適用するようにしてもよい。この際、何れの割引を重複適用するかについては、処理装置40が入力されたリビングウィルの内容に応じて決定する。例えば、上記≪1≫~≪4≫の全ての条件を満たす場合、第3段階目の割引(合計で例えば20~25%程度)を適用してもよい。S520の処理の後、図8(c)の料金演算処理は終了する。
【0068】
[2-3.効果]
以上詳述した第2実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果(1a)を奏し、さらに、以下の効果を奏する。
【0069】
(2a)本開示の一態様は、演算装置10と、処理装置40と、を備える。演算装置10は、ユーザが入力したリビングウィルを取得するように構成される。演算装置10は、リビングウィルを含むデータを表すウィルデータを、予め設定された処理装置40に送信
するように構成される。処理装置40は、受信したウィルデータに基づいて、ユーザに対する医療に関する保険料を演算するように構成される。
このような構成によれば、リビングウィルを保険料に反映させることができる。
【0070】
(2b)処理装置40は、複数の条件を満たすか否かを判定し、複数の条件を満たす毎に、段階的に保険料を引き下げるように保険料を設定する。例えば、リビングウィルが存在すれば第1段階目の割引を実施し、リビングウィルで所定の医療を拒否する設定がされていればさらに割引を実施する。つまり、リビングウィルが記載されていれば第1段階目の割引を適用し、リビングウィルの記入内容に応じて、第1段階目の割引よりも大きな割引を行う。この際、第1段階目の割引に加えて更なる第2段階目の割引を実施してもよい。
このような構成によれば、ユーザの選択によって詳細に保険料を設定することができる。
【0071】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0072】
(3a)上記実施形態では、第1実施形態の構成と第2実施形態の構成とを異なる医療支援システム1,2として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第1実施形態の構成と第2実施形態の構成と組み合わせて1つの医療支援システムとして構成してもよい。
【0073】
(3b)本開示に記載の演算装置10及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された1つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の演算装置10及びその手法は、1つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の演算装置10及びその手法は、1つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと1つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された1つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されてもよい。演算装置10に含まれる各部の機能を実現する手法には、必ずしもソフトウェアが含まれている必要はなく、その全部の機能が、1つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0074】
(3c)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0075】
(3d)上述した医療支援システム1の他、当該医療支援システム1の構成要素となる演算装置10及び処理装置40、演算装置10又は処理装置40としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実体的記録媒体、医療支援方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【0076】
[4.実施形態の構成と本開示の構成との対応関係]
演算装置10が実行する機能のうち、S210は本開示でのデータ取得部に相当し、S220は本開示でのテキスト認識部に相当し、S230は本開示での処置抽出部に相当し、S240は本開示での通知送信部に相当する。また、処理装置40が実行する機能のうち、S620は本開示での保険料演算部に相当する。
【符号の説明】
【0077】
1,2…医療支援システム、10…演算装置、11…CPU、12…メモリ、16…クラウドデータ、17…重複無駄判定部、20…ユーザ装置、25…医療機関装置、30…管理装置、35…審査装置、40…処理装置、41…CPU、42…半導体メモリ。
【要約】
【課題】医療に関する項目を抽出するように構成された医療用項目抽出システムにおいて、利便性を向上できるようにする。
【解決手段】本開示の一態様は、医療に関する項目を抽出するように構成された医療用項目抽出システムであって、データ取得部と、テキスト認識部と、処置抽出部と、通知送信部と、を備える。データ取得部は、ユーザ毎に、検査結果を含む医療情報に関する画像データを取得するように構成される。テキスト認識部は、画像データに含まれるテキストを認識するように構成される。処置抽出部は、認識されたテキストに基づいて、個々のユーザについて不要又は重複する処置項目を抽出するように構成される。通知送信部は、処置項目が抽出された場合に、予め設定された連絡先に通知を行うように構成される。
【選択図】図2
図1
図2
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図9