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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】引き戸及び操作部構造
(51)【国際特許分類】
   E05B 1/00 20060101AFI20221213BHJP
   E05B 1/06 20060101ALI20221213BHJP
   E05B 5/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
E05B1/00 311J
E05B1/06 103
E05B1/06 105Z
E05B5/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022135252
(22)【出願日】2022-08-26
(62)【分割の表示】P 2022102857の分割
【原出願日】2022-06-27
【審査請求日】2022-10-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521223335
【氏名又は名称】株式会社エルボーション
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 典子
(74)【代理人】
【識別番号】100224269
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 佑太
(72)【発明者】
【氏名】堀之内 史郎
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-94473(JP,U)
【文献】実公昭48-7179(JP,Y1)
【文献】特開2015-200135(JP,A)
【文献】実開平5-85960(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00
E05B 1/06
E05B 5/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸先側及び戸尻側にスライドすることで開閉可能な引き戸(1)であって、
引き戸面と垂直方向に一方の引き戸面から他方の引き戸面へと貫通する孔を備える少なくとも1つの貫通孔部(2)と、
前記貫通孔部(2)に収容される回動体(40)と、
前記引き戸(1)の一部である前記貫通孔部(2)の内面において、対向する2つの地点を通る軸を中心として形成される凹部と、
前記凹部と嵌合し、かつ前記引き戸(1)に対して前記回動体(40)を回動可能に連結する回動部材(41)と、を有し、
前記回動体(40)を前記貫通孔部(2)内で回動させることで、前記引き戸(1)を開閉するための開閉操作領域(5)を前記貫通孔部(2)内に出現させる又は前記貫通孔部(2)内で拡大することを特徴とする引き戸。
【請求項2】
戸先側及び戸尻側にスライドすることで開閉可能な引き戸(1)であって、
引き戸面と垂直方向に一方の引き戸面から他方の引き戸面へと貫通する孔を備える少なくとも1つの貫通孔部(2)と、
前記貫通孔部(2)に収容される回動体(40)と、
前記貫通孔部(2)の内面において対向する2つの地点を通る軸を中心として、前記引き戸(1)に対して前記回動体(40)を回動可能に連結する回動部材(41)と、
前記回動体(40)の回動に伴い回転する歯車(64、65)と、
前記貫通孔部(2)の内側であって前記回動体(40)の戸先側及び戸尻側の両側に位置し、引き戸面と直交する鉛直面に広域面を備え、引き戸面と垂直方向に前記歯車(64、65)と噛合する直線状の歯を備えた補助操作部(68)と、を有し、
前記回動体(40)を前記貫通孔部(2)内で回動させることで、前記引き戸(1)を開閉するための開閉操作領域(5)を前記貫通孔部(2)内に出現させる又は前記貫通孔部(2)内で拡大すること、及び、
前記回動体(40)を、平面視において右回動させると平面視における左側の前記補助操作部(68)が平面視の下方向に移動し、平面視において左回動であれば平面視における右側の前記補助操作部(68)が平面視の下方向に移動することで、前記引き戸(1)を開閉するための前記開閉操作領域(5)が拡大されることを特徴とする引き戸。
【請求項3】
戸先側及び戸尻側にスライドすることで開閉可能な引き戸(1)であって、
引き戸面と垂直方向に一方の引き戸面から他方の引き戸面へと貫通する孔を備える少なくとも1つの貫通孔部(2)と、
前記貫通孔部(2)に収容される回動体(40)と、
前記貫通孔部(2)の内面において対向する2つの地点を通る軸を中心として、前記引き戸(1)に対して前記回動体(40)を回動可能に連結する回動部材(41)と、
前記回動体の回動に伴い回転する歯車(64、65)と、
前記貫通孔部(2)の内側であって前記回動体(40)の戸先側及び戸尻側の両側に位置し、引き戸面と直交する鉛直面に広域面を備え、引き戸面と垂直方向に前記歯車(64、65)と噛合する直線状の歯を備えた補助操作部(68)と、
前記回動部材(41)、前記補助操作部(68)、前記歯車(64、65)、又はそれらと一体的に動作する部分に、配置された弾性体と、を有し、
前記回動体(40)を前記貫通孔部(2)内で回動させることで、前記引き戸(1)を開閉するための開閉操作領域(5)を前記貫通孔部(2)内に出現させる又は前記貫通孔部(2)内で拡大すること、
前記回動体(40)を回動させる力が加えられていない初期状態において、前記補助操作部(68)の広域面の中心及び前記回動体(40)の引き戸厚方向の中心が、引き戸厚の中心付近に位置するように前記弾性体(67)が作用すること、及び、
前記回動体(40)を前記弾性体に抗するように回動させる際に、平面視において右回動であれば平面視における左側の前記補助操作部(68)が平面視下方向に移動し、平面視において左回動であれば平面視における右側の前記補助操作部(68)が平面視下方向に移動することで、前記引き戸(1)を開閉するための前記開閉操作領域(5)が拡大されることを特徴とする引き戸。
【請求項4】
請求項1、2、又は3に記載の引き戸(1)を有する引き戸構造であって、
前記引き戸(1)が、前記回動体(40)と連動して回転する1つ以上の歯車(87)と、 引き戸面と垂直方向に前記歯車(87)と噛合する直線状の歯を備えた滑動部(88)と、前記引き戸(1)の貫通孔部(2)と内部で連結し前記引き戸(1)の戸先側の面へと開口する戸先開口部(77)と、前記回動部材(41)、前記滑動部(88)、前記歯車(87)、又はそれらと一体的に動作する部分に配置され前記回動体(40)を引き戸面と平行にするように作用する弾性体と、をさらに備え、
戸先方向側に前記引き戸(1)の戸先側の面と平行な平面を備えた柱体であるラッチ受け(82)を固定して備えたラッチ受け部(81)と、
前記滑動部(88)の一部と結合し前記戸先開口部(77)の開口方向に延びたアーム(85)と、前記アーム(85)と結合しかつ少なくとも一部が柱体でありかつその柱体の戸尻方向側に前記引き戸(1)の戸先側の面と平行な面を備えるラッチ(83)と、を備えた前記引き戸(1)の閉位置において前記ラッチ受け部(81)に収容されるラッチ部(80)と、を有し、
前記引き戸(1)を閉方向にスライドさせ、前記ラッチ(83)と前記ラッチ受け(82)が接触すると、前記弾性体の伸縮により前記滑動部(88)と結合した前記ラッチ(83)も引き戸面と垂直方向にずれながら前記ラッチ受け(82)の平面側へと回り込み、前記ラッチ(83)の平面と、前記ラッチ受け(82)の平面が重なり合うことで前記引き戸(1)が開方向に動作しないようになり、前記ラッチ受け部(81)に前記ラッチ部(80)が収容されること、
前記弾性体に抗して前記回動体(40)を回動させ、前記滑動部(88)を引き戸面と垂直方向に滑動させることで、前記アーム(85)を介して前記滑動部(88)と一体化した前記ラッチ(83)が引き戸面と垂直方向に動き、前記ラッチ(83)及び前記ラッチ受け(82)の平面が重なり合わなくなる状態で前記引き戸(1)を開方向にスライドさせることで、前記ラッチ(83)が解除されること、及び、
前記回動体(40)を回動させる力が加えられていない初期状態において、引き戸面と垂直方向における前記回動体(40)の中心と、前記ラッチ(83)の中心、及び前記ラッチ受け(82)の中心が幾何学的に同一平面上にあること、を特徴とする引き戸構造。
【請求項5】
前記回動体(40)が、その外周面上に凹状のかんぬき受け(95)を備え、
前記引き戸(1)が、前記かんぬき受け(95)と嵌合する形状のかんぬき(92)と、前記かんぬき(92)を前記かんぬき受け(95)から抜いた開錠状態と前記かんぬき(92)を前記かんぬき受け(95)に嵌合させた施錠状態とを切り換えるためのつまみ(91)と、をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の引き戸構造。
【請求項6】
スライドすることで開閉可能な又は回動することで開閉可能な戸(100)の一部である操作部構造(101)であって、
戸面と垂直方向に一方の戸面(114)から他方の戸面(115)へと貫通する孔を備える少なくとも1つの貫通孔部(2)と、
前記貫通孔部(2)に収容される回動体(40)と、
前記戸(100)の一部である前記貫通孔部(2)の内面において、対向する2つの地点を通る軸を中心として形成される凹部と、
前記凹部と嵌合し、かつ前記戸(100)に対して前記回動体(40)を回動可能に連結する回動部材(41)と、を有し、
前記回動体(40)を前記貫通孔部(2)内で回動させることで、前記戸(100)を開閉するための開閉操作領域()を前記操作部構造(101)内に出現させる又は前記操作部構造(101)内で拡大することを特徴とする操作部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉操作に係る構成要素に特徴を備える引き戸、同特徴を有するラッチ機構付き引き戸、同特徴を有する施錠可能なラッチ機構付き引き戸、戸の開閉操作に係る操作部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な引き戸は、開閉するために外側に突出した操作部材を備え、そこに指を掛けるか又は把持して引き戸をスライドさせて開閉し(特許文献1)、又は凹形状の操作部材を備え、そこに指を掛けることで引き戸をスライドさせて開閉する(特許文献2)。
操作部材が突出した形状を備えた、又は凹形状を備えた、いずれの場合でも、多様な人間が使用できるように個体差を考慮する場合には、操作部材が鉛直方向に長くなり、引き戸全体に対する操作部材の占有領域の割合は大きくなる。また引き戸の重量が増すほど操作部材の突出する高さや凹形状の深さを増す必要性が高くなるので、操作部材の占有領域はより大きくなる。
【0003】
引き戸自体の厚みがない場合又は設置環境に起因するニーズなどにより引き戸を厚くすることができない場合には、操作部材がより突出すること又はより深い凹形状となることを回避しなければならず、この点の設計が制限的であるほど低い操作性の引き戸となりやすい。限られた空間をできる限り有効利用する引き戸の構造、なかんずく操作に関する構成要素の占有領域を相対的に小さくできるような構造が求められる。その実現が操作性の維持にもつながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-175098号公報
【文献】特開2012-225100号公報
【文献】特開2006-28781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、先ず限られた空間を有効利用できるようにするために、引き戸の操作に関わる構成要素の占める領域(操作部構造)を相対的に小さくすることが可能な構造を提供することである。換言すると、身体の一部により開閉操作するための開閉操作領域を特定の操作によって出現させる又は広くする構造を提供することである。例えば非操作時において操作に関わる構成要素の少なくとも一部を引き戸内に格納することで操作に関わる構成要素を引き戸面に対して突出させない又は突出を相対的に低くする、非操作時において凹形状の操作に関わる構成要素の窪みをなくする、又は浅くする、といったことを可能にする構造を提供することである。
【0006】
追加的に、多様な身体的特徴を持つ人間の、様々な部位による、引き戸の開閉を可能にするために、設置部位について相対的に自由度の高い引き戸を提供することも本発明の目的である。
【0007】
また本発明の目的は、上述の目的を実現した引き戸に、さらにラッチ構造を持たせることである。これは引き戸の開動作にひと手間を要する構造をとることで、意図しない引き戸の開放を防止するためである。引き戸の多くはラッチ構造を備えないものが多いが、意図しない引き戸の開放を防止したい場面は多い。例えば地震の振動によって引き戸が開放されて中の物が散乱することを防止したいとき(特許文献3)、幼児の勝手な進入を防ぎたいとき、又は引き戸の劣化によって閉状態で常に少しだけ開いた状態となることを防ぎたいときなどに、施錠までは不要であるがラッチ機能を必要とする場合がある。
【0008】
別の本発明の目的は、上述の目的を実現した引き戸に、さらに施錠構造を持たせることである。
【0009】
さらに本発明の目的は、引き戸のみならず開き戸を含めた戸の一部であって、開閉操作に関わる操作部構造を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。なお、括弧内の数字は、後述する図面中の符号であり、参考のために付するものである。
【0011】
本発明の第1の態様は、
戸先側及び戸尻側にスライドすることで開閉可能な引き戸(1)であって、
引き戸面と垂直方向に一方の引き戸面から他方の引き戸面へと貫通する孔を備える少なくとも1つの貫通孔部(2)と、
前記貫通孔部(2)に収容される回動体(40)と、
前記引き戸(1)の一部である前記貫通孔部(2)の内面において対向する2つの地点を通る軸を中心として形成される凹部と、
前記凹部と嵌合し、かつ前記引き戸(1)に対して前記回動体(40)を回動可能に連結する回動部材(41)と、を有し、
前記回動体(40)を前記貫通孔部(2)内で回動させることで、前記引き戸(1)を開閉するための開閉操作領域(5)を前記貫通孔部(2)内に出現させる又は前記貫通孔部(2)内で拡大することを特徴とする。
【0012】
本発明の第2の態様は、
戸先側及び戸尻側にスライドすることで開閉可能な引き戸(1)であって、
引き戸面と垂直方向に一方の引き戸面から他方の引き戸面へと貫通する孔を備える少なくとも1つの貫通孔部(2)と、
前記貫通孔部(2)に収容される回動体(40)と、
前記貫通孔部(2)の内面において対向する2つの地点を通る軸を中心として、前記引き戸(1)に対して前記回動体(40)を回動可能に連結する回動部材(41)と、
前記回動体(40)の回動に伴い回転する歯車(64、65)と、
前記貫通孔部(2)の内側であって前記回動体(40)の戸先側及び戸尻側の両側に位置し、引き戸面と直交する鉛直面に広域面を備え、引き戸面と垂直方向に前記歯車(64、65)と噛合する直線状の歯を備えた補助操作部(68)と、を有し、
前記回動体(40)を前記貫通孔部(2)内で回動させることで、前記引き戸(1)を開閉するための開閉操作領域(5)を前記貫通孔部(2)内に出現させる又は前記貫通孔部(2)内で拡大すること、及び、
前記回動体(40)を、平面視において右回動させると平面視における左側の前記補助操作部(68)が平面視の下方向に移動し、平面視において左回動であれば平面視における右側の前記補助操作部(68)が平面視の下方向に移動することで、前記引き戸(1)を開閉するための前記開閉操作領域(5)が拡大されることを特徴とする。
【0013】
本発明の第3の態様は、
戸先側及び戸尻側にスライドすることで開閉可能な引き戸(1)であって、
引き戸面と垂直方向に一方の引き戸面から他方の引き戸面へと貫通する孔を備える少なくとも1つの貫通孔部(2)と、
前記貫通孔部(2)に収容される回動体(40)と、
前記貫通孔部(2)の内面において対向する2つの地点を通る軸を中心として、前記引き戸(1)に対して前記回動体(40)を回動可能に連結する回動部材(41)と、
前記回動体の回動に伴い回転する歯車(64、65)と、
前記貫通孔部(2)の内側であって前記回動体(40)の戸先側及び戸尻側の両側に位置し、引き戸面と直交する鉛直面に広域面を備え、引き戸面と垂直方向に前記歯車(64、65)と噛合する直線状の歯を備えた補助操作部(68)と、
前記回動部材(41)、前記補助操作部(68)、前記歯車(64、65)、又はそれらと一体的に動作する部分に、配置された弾性体と、を有し、
前記回動体(40)を前記貫通孔部(2)内で回動させることで、前記引き戸(1)を開閉するための開閉操作領域(5)を前記貫通孔部(2)内に出現させる又は前記貫通孔部(2)内で拡大すること、
前記回動体(40)を回動させる力が加えられていない初期状態において、前記補助操作部(68)の広域面の中心及び前記回動体(40)の引き戸厚方向の中心が、引き戸厚の中心付近に位置するように前記弾性体(67)が作用すること、及び、
前記回動体(40)を前記弾性体に抗するように回動させる際に、平面視において右回動であれば平面視における左側の前記補助操作部(68)が平面視下方向に移動し、平面視において左回動であれば平面視における右側の前記補助操作部(68)が平面視下方向に移動することで、前記引き戸(1)を開閉するための前記開閉操作領域(5)が拡大されることを特徴とする。
【0014】
上記態様において、
前記引き戸(1)が、前記回動体(40)と連動して回転する1つ以上の歯車(87)と、 引き戸面と垂直方向に前記歯車(87)と噛合する直線状の歯を備えた滑動部(88)と、前記引き戸(1)の貫通孔部(2)と内部で連結し前記引き戸(1)の戸先側の面へと開口する戸先開口部(77)と、前記回動部材(41)、前記滑動部(88)、前記歯車(87)、又はそれらと一体的に動作する部分に配置され前記回動体(40)を引き戸面と平行にするように作用する弾性体と、をさらに備え、
戸先方向側に前記引き戸(1)の戸先側の面と平行な平面を備えた柱体であるラッチ受け(82)を固定して備えたラッチ受け部(81)と、
前記滑動部(88)の一部と結合し前記戸先開口部(77)の開口方向に延びたアーム(85)と、前記アーム(85)と結合しかつ少なくとも一部が柱体でありかつその柱体の戸尻方向側に前記引き戸(1)の戸先側の面と平行な面を備えるラッチ(83)と、を備えた前記引き戸(1)の閉位置において前記ラッチ受け部(81)に収容されるラッチ部(80)と、を有し、
前記引き戸(1)を閉方向にスライドさせ、前記ラッチ(83)と前記ラッチ受け(82)が接触すると、前記弾性体の伸縮により前記滑動部(88)と結合した前記ラッチ(83)も引き戸面と垂直方向にずれながら前記ラッチ受け(82)の平面側へと回り込み、前記ラッチ(83)の平面と、前記ラッチ受け(82)の平面が重なり合うことで前記引き戸(1)が開方向に動作しないようになり、前記ラッチ受け部(81)に前記ラッチ部(80)が収容されること、
前記弾性体に抗して前記回動体(40)を回動させ、前記滑動部(88)を引き戸面と垂直方向に滑動させることで、前記アーム(85)を介して前記滑動部(88)と一体化した前記ラッチ(83)が引き戸面と垂直方向に動き、前記ラッチ(83)及び前記ラッチ受け(82)の平面が重なり合わなくなる状態で前記引き戸(1)を開方向にスライドさせることで、前記ラッチ(83)が解除されること、及び、
前記回動体(40)を回動させる力が加えられていない初期状態において、引き戸面と垂直方向における前記回動体(40)の中心と、前記ラッチ(83)の中心、及び前記ラッチ受け(82)の中心が幾何学的に同一平面上にあること、を特徴とする。
【0015】
上記態様において、
前記回動体(40)が、その外周面上に凹状のかんぬき受け(95)を備え、
前記引き戸(1)が、前記かんぬき受け(95)と嵌合する形状のかんぬき(92)と、前記かんぬき(92)を前記かんぬき受け(95)から抜いた開錠状態と前記かんぬき(92)を前記かんぬき受け(95)に嵌合させた施錠状態とを切り換えるためのつまみ(91)と、をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の第4の態様は、
スライドすることで開閉可能な又は回動することで開閉可能な戸(100)の一部である操作部構造(101)であって、
戸面と垂直方向に一方の戸面(114)から他方の戸面(115)へと貫通する孔を備える少なくとも1つの貫通孔部(2)と、
前記貫通孔部(2)に収容される回動体(40)と、
前記戸(100)の一部である前記貫通孔部(2)の内面において、対向する2つの地点を通る軸を中心として形成される凹部と、
前記凹部と嵌合し、かつ前記戸(100)に対して前記回動体(40)を回動可能に連結する回動部材(41)と、を有し、
前記回動体(40)を前記貫通孔部(2)内で回動させることで、前記戸(100)を開閉するための開閉操作領域()を前記操作部構造(101)内に出現させる又は前記操作部構造(101)内で拡大することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明における回動体の回動の結果として、開閉操作領域が出現する又は領域が広がる。非操作時において操作部構造が占める領域を相対的に小さくできることから、限られた空間への引き戸の設置が求められる場合に、相対的に薄い引き戸を設計でき、設置空間を有効利用できるようになる。そうした効果を維持しつつ、ラッチ構造、又はラッチ構造及び施錠構造を有する引き戸を実装することも可能で、それらの機能を必要とする要求に応えられるようになる。
本発明は、回動体の設置箇所や設置個数について自由度が高いため、戸全体の設計自由度も高くなり、引き戸が使用される環境の要求に応えることができる。その設計自由度は、実用的な要求だけでなく、他の引き戸と相違するデザインの要求に応えることをも可能にする。
さらに従来のラッチ受け(とろよけ)部分に、本発明におけるラッチ受けを設けるだけで、本発明における引き戸に対応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の第1の参考形態における引き戸を示す。(a)は、引き戸の正面図を示す。(b)は、(a)と同一視点から視た場合の引き戸厚の中心面における概略断面図を示す。(c)は(a)のライン(I)‐(I)における概略断面図である。
図2図2は、本発明の第2の参考形態のおける引き戸を示す。(a)は、引き戸の正面図を示す。(b)は(a)のライン(II)‐(II)における概略断面図である。(c)及び(d)は摺動体のみ示した図である。(c)は摺動体を(a)と同じ視点で視た概略図であり、(d)は(b)の摺動体だけを拡大した概略図である。
図3図3は、本発明の第3の参考形態における引き戸を示す。(a)は、引き戸の正面図を示す。(b)~(d)は引き戸から突出部材が突出する構造を示すために、そこに関係する構成要素のみを上面図で示し、(e)は正面視における展開図である。(f)は、戸先側にて突出部材が引き戸から突出する様子を示した概略斜視図である。
図4図4は、本発明の第4の実施形態における引き戸を示す。(a)は、引き戸の正面図を示す。(b)は、(a)のライン(III)‐(III)における概略断面図である。
図5図5は、本発明の第5の実施形態における引き戸を示す。(a)は、引き戸の正面図を示す。(b)は、(a)のライン(IV)‐(IV)における概略断面図である。
図6図6は、本発明の第6の参考形態において、引き戸から補助操作部が突出する構造を示すために、(a)において関係する構成要素のみを上面図で示し、(b)においてその構成要素の正面図を示す。
図7図7は、本発明の第7の実施形態において、引き戸から補助操作部が突出する構造を示すために、(a)においてそこに関係する構成要素のみを上面図で示し、(b)においてその構成要素の正面図を示す。(c)は補助操作部のみを取り出し、(b)と同じ視点で見た場合の正面図を示し、(d)ではその側面図を示す。
図8図8は、本発明の第8の参考形態における引き戸構造のラッチ構造に関する図である。(a)は、(b)のライン(V)‐(V)における概略断面図である。(b)は、(a)のライン(VI)‐(VI)における概略断面図である。(c)は本参考形態における貫通孔部と第1受け手を示した概略図である。(d)は、左側の図がラッチ受け部を引き戸側から視た図であり、右側の図がラッチ部を戸先側から視た図である。
図9図9は、本発明の第9の実施形態における引き戸構造のラッチ構造に関する概略斜視図である。
図10図10は、本発明の第10の実施形態における施錠構造を示した概略図である。(a)は施錠構造を備える引き戸の摺動体を上方からみた概略図である。(b)は、施錠構造に関わる構成要素の引き戸厚の中心面における概略断面図である。(c)~(f)により、例示的に施錠構造のタイプや設置位置のパターンを正面視における概略図で示した。
図11図11(a)は、本発明の第11の参考形態における戸を示した概略斜視図である。(b)の上側の図は、(a)のライン(VII)‐(VII)における例示的な操作部構造に関する概略断面図である。下側の図は一方の戸面を正面から視た場合の操作部構造に関する概略正面図である。(c)の上側の図は、(a)のライン(VII)‐(VII)における例示的な操作部構造に関する概略断面図である。下側の図は一方の戸面を正面から視た場合の操作部構造に関する概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施例を示した図面を参照して本発明の各実施形態及び参考形態を説明する。図面において、各形態における同じ又は類似する構成要素には、基本的に同じ符号を付している。また、別の形態において既に説明した同じ又は類似する構成要素については、説明を省略する場合がある。
【0020】
本発明に係る引き戸の記述において、一般的な引き戸の広域面となる両面を「引き戸面」とし、一般的な引き戸及び開き戸を含む戸の広域面となる両面「戸面」とする。引き戸面と垂直方向の引き戸の厚みを「引き戸厚」とし、戸と垂直方向の戸の厚みを「戸厚」とする。引き戸又は戸の厚みの半分の地点をそれぞれ「引き戸厚の中心」、「戸厚の中心」という。それらの中心を通る鉛直線をそれぞれ「引き戸厚の中心線」、「戸厚の中心線」という。それらの中心線によって形成される面をそれぞれ「引き戸厚の中心面」「戸厚の中心面」とする。
引き戸厚方向、戸厚方向、引き戸面と垂直方向、及び戸面と垂直方向は、同じ方向を指す。引き戸及び戸の戸先側の面を「戸先面」とする。
【0021】
(1)第1の参考形態
図1を参照して、本発明の第1の参考形態の引き戸を説明する。
まずいずれの実施形態及び参考形態においても、本発明の引き戸1には、一方の引き戸面から他方の引き戸面まで貫通した孔を備える貫通孔部2が形成される。
一般に、引き戸を戸尻側にスライドさせて開けた際、控え壁に引き戸が全て収納されず、そこからはみ出る部分を扉引き残しというが、本発明の貫通孔部2は、その扉引き残しの範囲の一部に形成される。
貫通孔部2の設置個数、設置箇所、及び形状は、扉引き残しの範囲であること、及び引き戸面と垂直方向に貫通されること、すなわち形成された貫通孔部2が柱体になることを除いて、主だった制約はない。
本参考形態では、図1(a)の上側の貫通孔部2は、実線と点線で作られる部分の外枠をたどって形成される範囲であって、同図の視点で四角形の上下に略楕円形が付いたような形状をとる。同図の下側の貫通孔部2は、実線と点線で作られる部分の外枠をたどって形成される範囲であって、略正方形の形状をとる。同図における引き戸1がドアであると仮定すると、貫通孔部2の設けられた位置や大きさから、上側の貫通孔部2は手指での操作と関連し、下側の貫通孔部2は足での操作に関連することが想定される。
【0022】
本参考形態の引き戸1は、一方の引き戸面から貫通孔部2へ突出した第1受け手7を有する。突出の形状に主だった制限はない。本参考形態において図1(a)で見えている面を一方の引き戸面とする。
図1(a)の上側の貫通孔部2において、点線で囲まれる(一部実線)略楕円の部分が第1受け手7である。同図下側の貫通孔部2において、略正方形の貫通孔部2の四隅における小さな略正方形であって点線で囲まれる(一部実線)部分が第1受け手7となる。
同図で示すように、それらの第1受け手7は、一方の引き戸面と面一の面を備える。この第1受け手7に係る部分だけ引き戸1とは別の素材を用いることも可能であるが、その場合でも一方の引き戸面と面一の面を備える。
また、本参考形態の引き戸1は、他方の引き戸面から貫通孔部2へ突出した第2受け手8を有する。第2受け手8は第1受け手7と形成のされ方は同様であり、第1の受け手7が形成される一方の引き戸面と反対側の他方の引き戸面に形成される。第1の受け手7と第2の受け手8が、引き戸厚の中心面に関して、面対称となる必要はない。しかし面対称となる場合には、後述の摺動体20を摺動させるための外観からは目視できないガイド溝を形成し得る。例えば図1(a)の上側の貫通孔部2において、両側の引き戸面において点線で示す楕円状の第1受け手7及び第2受け手8が形成され、その間で引き戸厚方向に一定の断面積を有する貫通孔部2の一部が形成されている。この貫通孔部2の一部が、後述の摺動体20を安定的に摺動させるためのガイド溝となる。
【0023】
第1受け手7及び第2受け手8の設け方としては、貫通孔部2を形成した後に、後付けでそれらを設けることも可能であり、また貫通孔部2を形成するために引き戸1を貫通する際に、第1受け手7及び第2受け手8を残すように貫通させて設けることも可能である。
【0024】
1つの貫通孔部2に対して設けられる第1受け手7及び第2受け手8の個数には、主だった制限はないが、実用面やデザインから自ずと個数や形状に制限が生じ得る。図1(a)の上側の貫通孔部2の第1受け手の個数は2つであり、下側の貫通孔部2は4つである。
【0025】
第1受け手7と第2受け手8は、引き戸面と面一の面を備える。またその面一の面以外の受け手7、8の面は、曲面であっても良い。
しかし受け手7,8が引き戸厚方向に一定の断面積を備える場合など、一方の引き戸面側の受け手7,8の面と、他方の引き戸面側の受け手7、8の面とが平行になる場合には、摺動体20が同様に一方の引き戸面側の面と他方の引き戸面側の面とが平行となるような面を備える限り、受け手7、8と摺動体20とが摺動の両端において面で衝突することになり、安定的な摺動体20の摺動及び停止につながる。またこの面での接触が衝突に伴う力の分散にも寄与し、引き戸1の長期利用への耐性につながる。
また第1受け手7と第2受け手8の引き戸厚方向の厚みについて、目的達成の観点から一定の制約がある。貫通孔部2内において、引き戸面と垂直方向に第1受け手7と第2受け手8との間を摺動可能に摺動体20が配置され、かつその摺動が、引き戸1を開閉するための開閉操作領域5を貫通孔部2内に出現させる又は貫通孔部2内で拡大するために行うものであるから、摺動する範囲がより広い方が好ましいため、第1受け手7と第2受け手8の厚みもできる限り薄い方が好ましいことなる。
【0026】
引き戸1は摺動体20を有する。摺動体20は、貫通孔部2内に備えられ、引き戸面と垂直方向に第1受け手7と第2受け手8との間で摺動可能に配置される。図1(c)の断面図からわかるように、摺動体20は、貫通孔部2内を第1又は第2受け手と衝突する位置まで同図における左右に摺動可能である。
摺動体20が貫通孔部2内を摺動すればよく、貫通孔部2と嵌合する必要はない。しかし、貫通孔部2のうち外部から視認できる部分については、一方の引き戸面側から、他方の引き戸面側への視界を遮るためには、少なくともその部分を覆う大きさを有することが望ましい。
図1(a)の上側の貫通孔部2内における第1受け手7と第2受け手8との間の摺動可能な空間は、引き戸面と平行な面が、図1(b)で示すように四角形の上下に略楕円形が付いたような形状となる。摺動体20がこの空間を引き戸面と垂直方向に摺動可能な形状をとることから、その形状は引き戸面と平行な面において、例えば、貫通孔部2と略同形状となること、図1(a)の点線で囲まれた部分だけが略同形状となることなどが考えられる。
同様に、図1(a)の下側の貫通孔部2内における第1受け手7と第2受け手8との間の摺動可能な空間は、引き戸面と平行な面が、図1(b)で示すように正方形となる。摺動体20は、引き戸面と平行な面において、例えば貫通孔部2と略同形状の略正方形となり得る。引き戸厚方向における摺動体20の厚みにより、摺動体20が引き戸面と垂直方向に倒れることを防ぐことができる。
摺動体20の摺動が、滑らかになるように、貫通孔部2と摺動体20の接する面を、摩擦の少ない金属で構成することもできる。
貫通孔部2は摺動体20を摺動させる空間を形成するためのものであるため、必然的に貫通孔部2と同数の摺動体20が設けられる。
【0027】
別の形態として、本参考形態の引き戸1は、弾性体(図示なし)を有することもできる。この弾性体は、摺動体20に人の力が加わらない状態において摺動体20が引き戸厚中心に位置するように用いることができる。例えば摺動体20と受け手7、8の間に設けることができる。摺動体20を摺動させる操作において、手指等が弾性体に当たらないようにするために、貫通孔部2内であって、第1受け手又は第2受け手によって外観からは視認できない部分に設けることが好ましい。例えば図1(a)の上側の貫通孔部2における点線の領域である。
【0028】
以上の構成を有する本参考形態おいて、貫通孔部2の両方の引き戸面側に第1受け手7と第2受け手8があることで、その間を摺動する摺動体20が引き戸1から抜け落ちることを防ぐことができる。
通常引き戸の開閉は人の身体の一部を引き戸1に引っ掛けることで行うため、引き戸1の開閉操作領域5は身体の一部を引っ掛けられる場所に位置する。身体のどの部位を掛けるかは設置場所の位置に依存する。本発明を通し全ての実施形態及び参考形態においてその開閉操作領域5は、貫通孔部2内に形成されることになる。
摺動体20の摺動により引き戸1を開閉するための操作領域である開閉操作領域5を貫通孔部2内に出現させる又は貫通孔部2内で拡大する。図1(c)に示す摺動体20が、ほぼ引き戸厚の中心付近にあるとき、引き戸の開閉操作のために手指等を掛ける開閉操作領域5の引き戸面と垂直方向における幅が足りない場合であっても、同図の左右方向である摺動体を引き戸面と垂直方向に第1又は第2受け手7,8に当たるまで摺動させると、その摺動した距離分だけ開閉操作領域5が拡大し、手指等を掛けた操作が可能になる。
図1(c)に示す摺動体20が、引き戸面付近にあるとき、その引き戸面側にいる操作者にとって、実質的に開閉操作領域5が存在しない状態となっている。操作者が摺動体20を反対の引き戸面側に押し出すことで、開閉操作領域5を貫通孔部2内に出現させることができる。
【0029】
開閉操作領域5は操作者が引き戸を操作する部位であるため、貫通孔部2、摺動体20、第1及び第2受け手7、8に関する設置箇所、設置個数、形状に関する自由度により、操作者が使用したい身体の部位をはじめ、引き戸が設置される環境やユーザの要求に応じた引き戸1の設計が可能になる。
開閉操作を手指、肘、膝、足等など様々な部位でできるようにそれらを設計可能であり、例えば、感染対策として手指を使わずに脚によって摺動体20を引き戸面と垂直方向に摺動させるために、それに適した各構成要素の位置や形状を設計することが可能である。
また引き戸1の外観上、貫通孔部2の一部や、第1及び第2受け手7、8の形状は視認できるため、各構成要素の設置個数、設置箇所、及び形状に関する設計の自由度は、引き戸にデザイン性を持たせることを容易にし、この点でも有利性がある。
【0030】
(2)第2の参考形態
図2を用いて第2の参考形態を説明する。本参考形態の各構成要素が果たす機能は、第1の参考形態と共通するため、それらの機能の説明を省略する。
摺動体20が、第1の参考形態のように同参考形態における第1受け手と第2受け手の間のみを摺動するのであれば、引き戸厚が薄いほど開閉操作領域5の領域が小さくなり実用性が失われてしまう。そこで第2の参考形態を示す目的は、摺動体20の一部が引き戸面を越えて摺動することを許容することで、開閉操作領域5の領域をより拡大することにある。さらには、そのような摺動を許容することで、摺動体20が引き戸厚と同じ厚みを有することも可能になる上に、開閉操作領域5を確保できる限りにおいて、引き戸厚を超えた厚みを有しても良い。
【0031】
第1の参考形態との構成要素に関する相違点は、引き戸1が第1ストッパー及び第2ストッパーを有する点である。これらは、引き戸1の製造において、摺動体20の一部として一体的に成形することも可能であるし、摺動体に後付けで設けても良い。後者に場合には摺動体20と別の素材であってもよい。
第1ストッパー21、第2ストッパー22は、それぞれ第1受け手27、第2受け手28にそれぞれ対応し、摺動体20の引き戸厚方向の摺動において、一方の方向への摺動が第1ストッパー21と第1受け手27の衝突により止まり、他方の方向への摺動が第2ストッパー22と第2受け手28の衝突により止まる。
この様子を図2(b)で示し、左側の図で第2ストッパー22が第2受け手28と衝突することで、摺動体20の摺動が停止した状態を示している。中央の図では、引き戸厚と同じ幅を備える摺動体20が引き戸1の貫通孔部2内に収まり、開閉操作領域5が引き戸面のどちら側から見ても存在しない状態を示している。右側の図では第1ストッパー21が第1受けて27と衝突することで、摺動体20の摺動が停止した状態を示している。右側の図は図1(a)の手前側に摺動体20が手前側の引き戸面を越えて摺動した状態である。
【0032】
この機能を実現するため、第1ストッパーの引き戸面と平行な面は、第1受け手27の引き戸面と平行な面と略同一の表面積を備え、その面同士が全面で衝突するように、第1受け手27のその面を引き戸厚方向に略平行移動させた位置に第1ストッパー21のその面が位置するように実装する。第2受け手28と第2ストッパー22についても同じ関係が成り立つように実装する。第1ストッパー21と第2受け手28が接触しないように、かつ第2ストッパー22と第1受け手27が接触しないように、例えば図2(c)に示すように、図2(a)と同じ正面視において、第1ストッパー21と第2ストッパー22が重なり合わないように位置づけられる。その結果、それらと対応する第1受け手27と第2受け手28における引き戸面と平行になるそれぞれの面が、引き戸厚方向に重なり合わないようになる。
第1ストッパー21と第2ストッパー22を設ける位置は、上述の通りに重なり合わないようにする制限があるものの、図1(c)のようにそれらが正面視において隣接しているように見える位置にある必要はなく、離れていてもよい。また同図のように鉛直方向の上下に設ける必要もない。
【0033】
上記の機能と関連する構造として、引き戸1は、第1の参考形態と同様に第1受け手27及び第2受け手28を有する。そして引き戸1は、摺動体20の他方の引き戸面側の面と面一の面を備え、引き戸厚方向に一定の断面積を備える第1ストッパー21を有し、かつ摺動体20の一方の引き戸面側の面と面一の面を備え、引き戸厚方向に一定の断面積を備える第2ストッパー22を有する。
図2(c)に示す通り、第2ストッパー22が摺動体20の一面と面一の面を備えていることがわかる。図示はしないが、これと逆方向から摺動体20を視ると第1ストッパー21が摺動体20の一面と面一の面を備えている。
【0034】
ストッパー21、22、及び受け手7,8は、引き戸厚方向に所定の厚みを有する。衝突に係る力を分散するために、ストッパー21、22と受け手7,8とが相互に面全体で衝突するように設けられる。
【0035】
本参考形態における第1の受け手、第2の受け手、それに対応する第1のストッパー第2のストッパーは、上述の機能を果たせる限りにおいて、複数個所に設けることができる。しかし、実用性や設計コストを考えると基本的には、本参考形態及び図2(b)~(d)に示す通り、それぞれ2箇所ずつ設けることになる。
【0036】
摺動体20が一方の引き戸面付近にある場合や、引き戸厚と同程度以上の厚みを有する場合、開閉操作領域5は一方の引き戸面側に立つ操作者にとって存在しない。その場合に操作者が摺動体20を他方の引き戸面側に押し出すことで、開閉操作領域5を貫通孔部2内に出現させることができる。
また、開閉操作領域5の一部が操作者から見えている場合にも、摺動体20が摺動可能な限りにおいてそれを他方の引き戸面側に押し出すことで、開閉操作領域5を貫通孔部2内に拡大することができる。
【0037】
その他の構造については第1の参考形態における引き戸1と共通するため、本参考形態の有する有利性も共通する。
【0038】
(3)第3の参考形態
第3の参考形態について図3を用いて説明する。本参考形態の引き戸1は、第1及び2の参考形態と貫通孔部2を備えることで共通し、その説明は省略する。
本参考形態の引き戸1は摺動体20を備えず、代わりに突出部材32を備え、それを引き戸面と垂直方向に押し出すことで開閉操作領域5を貫通孔部2内に出現させる又は拡大させる。
この機能を実現するための構成として第1及び2の参考形態と異なる点は、まず突出部材32が突出する構造の土台となる基礎腕部30が貫通孔部2の内面に配置されていることである。その内面と対向する貫通孔部2の内面に基礎腕部30’が固定される。いずれの基礎腕部30、30’に対しても連結腕部31、31’が連結可能である。
図3(f)は、一方の内面において、突出部材32が引き戸1から突出する様子を示した概略斜視図であるが、同図で示すように基礎腕部30は貫通孔部2の内面に固定されたままである。
【0039】
次に、上記機能を実現するために、基礎腕部30、30’と突出部材32の間に連結腕部31、31’が、連結される。
操作者が突出部材32を押し出すことで 突出部材32の連結腕部31、31’に対する相対的位置を変位させ、その変位の限界までくると、連結腕部31、31’の基礎腕部30、30’に対する相対的位置が変位し始める。それらの変位の分だけ、突出部材32の基礎腕部30、30’に対する相対的位置が変位する。こうした変位可能な構造が、突出部材32を突出させる動作を実現する。
突出部材32を押し出すだけでなく、引き出す操作もあり得るが、この場合は、突出部材32等は、その操作者のいる側と反対側の操作者が押し出す場合と同じ動きをする。
連結腕部31、31’は、実用性や機能が確保される限り、さらに複数の連結腕部31、31’を連結していくことができる。すなわち連結部材31、31’の一端が基礎腕部又は別の連結腕部31、31’と連結し、他端が別の連結腕部31、31’又は突出部材32と摺動可能に連結されることになる。つまり基礎腕部30、30’に1組以上の連結腕部31、31’が連結されていき、最終的に他方が何とも連結されておらずかつ対向して位置する2つの連結腕部31、31’に、突出部材32の両端が連結されることになる。
【0040】
本参考形態において、図3(b)に示すように、上記連結に連結部材34が用いられる。連結腕部31、31’に固定された連結部材34が、基礎腕部30、30’内を摺動するように動作し、突出部材32に固定された連結部材34が、連結腕部31、31’内を摺動するように動作することで、突出部材32の突出動作を実現する。摺動を可能にする構造の一例として、図3(e)に示すように、図1(a)と同じ視点において、突出部材32に固定された連結部材34が連結腕部31、31’に嵌合するように、また連結腕部31、31’に固定された連結部材34が基礎腕部に嵌合するように、それぞれの形状を設ける。
全体として、基礎腕部30と基礎腕部30’とが、及び連結腕部31と連結腕部31’とが、基礎腕部30が固定された内面とそれと対向する面との中間の面に関して面対称となるように同数配置される。
【0041】
本参考形態において、図3(c)は、図3(b)及び(d)に示す矢印方向に突出部材32を突出させる力が加えられていない初期状態を示す。この初期状態において突出部材32が引き戸厚の中心に位置するように、弾性体33が備えられる。図3(b)~(d)に示すように、基礎腕部30、30’内において、弾性体33が基礎腕部30、30’内の1つの内面と、連結腕部31、31’に固定された連結部材34との間に接続される。同様に連結腕部31、31’内において、弾性体33が連結腕部31、31’内の1つの内面と、突出部材32に固定された連結部材34との間に接続される。
弾性体33に抗して突出部材32を引き戸面と垂直方向に付勢し、突出部材32及び連結腕部31、31’の基礎腕部30、30’に対する相対位置を変位させて、図3(c)の状態から図3(b)又は(d)の状態へと突出部材32を突出させる。その付勢を停止すると、突出部材32が再度図3(c)の位置に戻る。
本参考形態における貫通孔部2の位置や大きさから足での操作が想定され、足を貫通孔部2に押し入れることで、突出部材32を弾性体33に抗して引き戸面と垂直方向に突出させることができる。
別の参考形態として、貫通孔部2及び突出部材32等が手での操作に適した位置にあり、かつ図3(f)のように突出部材32が円筒型を備える場合には、手でその突出部材32を把持して押し込む態様での操作が想定される。手による把持が可能な形態においては、突出部材32を引いて引き戸を開くこともできる。
【0042】
図3(f)では、突出部材32が突出した状態を示し、それに伴い開閉操作領域5が貫通孔部2内で拡大されることが示される。初期状態において開閉操作領域5が実質的に存在しない場合には、突出部材32の突出により開閉操作領域5が出現することになる。
必要なときだけ開閉操作領域を出現させる又は拡大する機能は、限られた空間を有効に使うことに資する。引き戸操作のための開閉操作領域は通常引き戸両面に設けられており、手で把持又は引っかけるための、その操作に適した形状の引き戸面から突出した開閉操作領域が設けられ、又は手で引っ掛けるための、その操作に適した形状の引き戸面から窪んだ開閉操作領域が設けられる。
引き戸面の両側に突出した開閉操作領域を備えると、その引き戸はその両面の突出した分を含めて空間を占有することになり、引き戸面の両側に窪んだ開閉操作領域を備えると、その両面の窪みの奥行分を考慮した厚みを引き戸に備えさせなければならない。この点に関し本参考形態における突出構造は、突出動作ごとに開閉操作領域を生じさせるため、引き戸厚を相対的に薄く設計することも可能になる。足を使った操作など、引っ掛ける深さをより要する場合には、なお一層この特徴が有利になる。
【0043】
(4)第4の実施形態
第4の実施形態について図4を用いて説明する。上述の参考形態と貫通孔部2が設けられる点で共通し、その特徴及びそれによる有利性は共通するので省略する。
本実施形態は、第1の参考形態における摺動体20を備えず、代わりに引き戸に対して回動可能な回動体40を備える。図4(a)に示すように、引き戸1の正面視において、回動体40は貫通孔部2に収容される。貫通孔部2内での回動体40の回動を可能にするために、回動部材41が備えられ、回動部材41の軸は、貫通孔部2の内面において対向する2つの地点を通るように設けられる。例えば図4(a)の上側の貫通孔部2に設けられた回動体40のように、鉛直方向上下の2地点に軸を設けることもでき、また下側の貫通孔部2に設けられた回動体40のように、同一視点において左右の2地点に軸を設けることもできる。それらの軸は必ずしも引き戸厚の中心面にある必要はない。しかし引き戸の両側において同じ操作感覚とするためには、引き戸厚の中心面上に軸が存在することが好ましい。
【0044】
図4(b)に示すように、2つの回動体40のうち上側の回動体40でいえば、左側の図の状態から、中央の図の状態を経て、右側の図の状態まで回動させることで、引き戸1を開閉するための開閉操作領域5を貫通孔部2内で拡大することができる。下側の回動体40でいえば、中央の図の状態から左右の図の状態へと回動させることで開閉操作領域5を拡大することができる。仮に回動体がいずれかの引き戸面に寄って設けられているときは、その引き戸面側の操作者から視て開閉操作領域5は存在せず、回動体40の回動によって、開閉操作領域5が貫通孔部2内で出現することになる。
【0045】
回動体40を貫通孔部2内に設けて回動させることは、その引き戸厚全体の幅を開閉操作領域5として使用できることを意味し、限られた引き戸厚を操作のために有効に使用することができることになる。上記の機能を実現可能な範囲において、多様な回動体の回動が実現できる点で、デザイン性を持たせやすい点でも有利性がある。
【0046】
(5)第5の実施形態
第5の実施形態について図5を用いて説明する。
本実施形態は、第1~4の実施形態及び参考形態における引き戸に、さらに貫通孔部2の戸先側及び戸尻側の両側に凸条の補助操作部42をさらに有することに特徴と有する。
図5(a)では、回動体40が設けられた上側の貫通孔部2の両側に補助操作部42が固定され、摺動体20が設けられた下側の貫通孔部2の両側に補助操作部42が固定されている例を示す。
補助操作部により、摺動体20の摺動や、回動体40の回動のみでは、拡大され又は出現する開閉操作領域5が操作をするに必要な領域が確保できない場合に有効となる。例えば図5(b)に示すように、上側の貫通孔部2内で回動体40が回動して拡大される開閉操作領域5は、図4(b)と比較して、補助操作部42の分だけ操作するための領域が広くなっていることが分かる。
【0047】
図5(b)に示すように、下側の貫通孔部2内面を越えて、補助操作部42の領域まで、摺動体20が摺動可能にするように、設計することもできる。この場合単純に補助操作部42を設ける場合に比べて、より開閉操作領域5の領域を広くすることができる。
【0048】
(6)第6の参考形態
第6の参考形態について図6を用いて説明する。
第6の参考形態の特徴は、摺動体20を備える引き戸1において、補助操作部50が摺動に連動して摺動方向とは逆方向に移動することである。補助操作部50は、図6(b)の視点において同図点線で示す貫通孔部2内に設置される。
図6(a)に示すように、摺動体20を図の上方へと摺動させたとき、補助操作部54が下方に移動する。単純に摺動体20を摺動させることで拡大又は出現する開閉操作領域5と比較して、補助操作部50の引き戸面を越えて移動した分だけ、開閉操作領域5としての領域が広くなることがわかる。補助操作部50は引き戸面と直交する鉛直面に広域面を備えるため、この広域面が開閉操作に用いられる。
この特徴も限られた引き戸厚に対して、空間を有効活用し、引き戸の開閉操作をより容易にすることに資する。
【0049】
この機能を実現するために、本参考形態の引き戸1は、図6(a)に示すように、回動体40の回動に伴い回転する歯車51を備える。歯車が、回動に伴い回転する構造は数多く考えられるが、一例として本参考形態においては、図6(a)のように摺動体20に固定された連結部材53があり、連結部材53に固定され、引き戸厚方向に直線状の歯を備えた第1ラック52を備え、それにより摺動体20の摺動と連動して第1ラック52が引き戸厚方向に移動する。また第1ラックの歯と噛合する歯車51が、この第1ラックの移動に連動して回転する。本参考形態による歯車51は2段となっており、上段の歯と第1ラック52の歯が噛合する。第1ラック52と歯車51の上段の歯によってラックアンドピニオン構造を構成する。
【0050】
補助操作部50は直線状の歯を備える第2ラック54を有する。図6(a)に示すように、この第2ラックの歯が、歯車51の下段の歯と、噛合する。第2ラック54と歯車51の下段の歯によってラックアンドピニオン構造を構成する。これにより摺動体20の摺動と連動して歯車51が回転し、それに連動して第2ラック54を備える補助操作部50が移動する。摺動体の移動距離に対する補助操作部の引き戸厚方向の移動幅の比から、歯車51の上段と下段の歯数の比、ひいては第1及び第2ラックの歯数を決めることができる。
摺動体20と補助操作部50の動きを連動させるための歯車51等の構成要素は、本参考形態のように、通常引き戸1内部に設置されることが、引き戸1を設置する空間の有効利用という観点から好ましい。しかしこの連動させるための構成要素の設置は、引き戸内部のみで完結されることに限定されない。
【0051】
別の参考形態においては、図6(a)(b)に示すように、第6の参考形態における引き戸1が弾性体55をさらに有する。これは摺動体20を摺動させる力が加えられていない初期状態において、弾性体55は、補助操作部50の広域面の中心及び摺動体20の引き戸厚方向の中心が、引き戸厚の中心付近に位置するように作用する。
弾性体を設ける場所は図6(b)に示すように、摺動体20の一部と、貫通孔部2と第1受け手7又は第2受け手8によって形成される引き戸1内部の内面との間に設けてもよい。摺動体20、連結部材53、第1ラック52、歯車51、第2ラック54、補助操作部50は全て連動するため、初期状態におけるそれぞれの初期位置を維持するように弾性体55をこれらのどの位置につけてもよい。例えば歯車51に渦巻バネを備えることも考えられる。弾性体の設置箇所や設置個数は、摺動体20の摺動が負担になりすぎないこと、各構成要素が初期状態における初期位置に滑らかに戻れること、といった制約の下で自由度がある。
【0052】
(7)第7の実施形態
第7の実施形態について図7を用いて説明する。
第7の実施形態の特徴は、回動体40を備える引き戸1において、補助操作部68が回動に連動して、補助操作部68が引き戸厚方向に移動することである。具体的には、図7(a)の視点において、同図の点線で示した回動体40が右回動すると左側の補助操作部50が下方向に移動し、左回動すると右側の補助操作部68が下方向に移動する。引き戸1の外観において、図7(b)に示す点線で囲まれた部分が引き戸1に開いた孔として見えている。
本実施形態の特徴がもたらす有利性は、第6の参考形態と共通するため、省略する。
【0053】
この機能を実現するために、まず回動体40の回動と連動して回転する歯車64が備えられる。この連動させる方法は数多く考えらえるが、本実施形態においては図7(b)に示すように、回動体40の回転軸に備えらえる回転部材41の上部にプーリーを設け、歯車64にもプーリーを設けベルトにより連動させる。さらにかさ歯車と平歯車の2段構造となっている歯車65が設けられ、かさ歯車の部分が歯車64と噛合する。そして第6の参考形態の補助操作部50同様に、本実施形態の補助操作部68も引き戸厚方向に直線状の歯を備えるラック66を有する。このラック66が歯車65の平歯車の部分と噛合し、ここでラックピニオン構造となる。これによって、回動体40の回動に伴い、補助操作部68が連動して移動する。回動体40の回転角度と補助操作部68の移動距離は、歯車65のかさ歯車の歯数と平歯車の歯数の比によって調整することができる。
回動体40と補助操作部68の動きを連動させるための歯車64等の構成要素は、本実施形態のように、通常引き戸1内部に設置されることが、引き戸1を設置する空間の有効利用という観点から好ましい。しかしこの連動させるための構成要素の設置は、引き戸内部のみで完結されることに限定されない。
【0054】
別の実施形態として、第7の実施形態の引き戸1に弾性体67をさらに設ける構造が考えらえる。
弾性体67は、回動体40を回動させる力が加えられていない初期状態において、補助操作部68の広域面の中心及び回動体40の引き戸厚方向の中心が、引き戸厚の中心付近に位置するように設けられる。回動体40が引き戸面と平行に位置していない場合、引き戸の一方側から他方側への見通すことができ、引き戸をドアとして用いる場合には、好ましくはない。そのため、視界をさえぎる引き戸の機能を維持するためにも初期状態における初期位置にする意味がある。
【0055】
弾性体67は図7(b)に示すように補助操作部68に設けても良いが、回動体40、回動部材41、歯車64、65、ラック66、補助操作部68は、連動して動作するため、これらの動作に関わるいずれの部位に備えてもよい。設置箇所、設置個数については、回動体40の回動に負担となりすぎないこと、各構成要素が初期状態の初期位置に滑らかに戻ることが可能であること、という制約の下で、自由度がある。
【0056】
弾性体67の位置によっては補助操作部68が引き戸面を越えて移動することを妨げてしまう。そのため例えば補助操作部68に弾性体67を備える場合に、図7(b)~(d)に示すような形状を補助操作部68が有することも考えられる。
具体的には、図7(d)の視点において、補助操作部68が、引き戸厚方向の奥側(図9(d)における右側)と手前側(図9(d)における左側)それぞれに凸形の足を備え、それらが図7(b)(c)の視点である引き戸1の正面視において、重なり合わないように位置している。そして引き戸の外観から視認できる貫通孔部2においても、引き戸厚方向の手前側の足が、引き戸面を越えて手前側に移動可能なように孔が形成される。他方で引き戸厚方向の奥側の足が、引き戸面を越えて手前側に移動しないように孔は形成されていない。この孔の形成されていない部分と、引き戸厚方向の奥側の足が、補助操作部68の移動によって接触する。そして図7(d)に示すように、これらの間に弾性体を設けることができる。
この構造により、補助操作部68が引き戸面を越えて移動でき、かつ弾性体67も設けることを可能にする。この構造は、引き戸の一方から他方への視界が常に遮られる点でも有利性がある。
【0057】
(8)第8の参考形態
第8の参考形態について図8を用いて説明する。
第8の参考形態の特徴は、第1の参考形態の引き戸1がラッチ機能を備える点にある。
図8(a)のように引き戸1は、引き戸面と垂直方向において摺動体20の両側に少なくとも1組の弾性体74を備える。本参考形態では図8(b)に示す通り、4組の弾性体74が備わる。この弾性体74の役割の1つは、人により摺動体20を摺動させる力が加えられていない初期状態において、摺動体20の引き戸厚方向の中心と、引き戸1の引き戸厚方向の中心をそろえることにある。
【0058】
本参考形態のラッチ機能を説明する前提として、ラッチ機能に関する構造及び摺動体20が備わる前の、引き戸の構造を図8(c)により説明する。図8(c)は図8(b)と同一視点での概略断面図である。
第1の参考形態の説明にある通り、貫通孔部2は引き戸面と垂直方向に引き戸1を貫通する孔である。本参考形態では同図の視点において、実線で囲まれた部分の形状により貫通孔部2を形成した。最終的に引き戸1の外観から目視可能な貫通孔部2は直方形の点線で囲う部分であり、実線で囲う部分から直方形の点線で囲う部分を除いた部分が第1受け手7ということになる。他方の引き戸面側から視たときには同じ形状の貫通孔部2及び第2受け手8が備わる。
【0059】
本参考形態での引き戸1は、貫通孔部2と内部で連結し引き戸1の戸先側の面へと開口する戸先開口部77を備えるが、図8(c)の円形の点線で囲う部分に、その戸先開口部77を設ける。図8(d)は本参考形態の引き戸におけるラッチ機構に関わる部分を戸先側からみた概略図であり、戸先開口部77が設けられると、図のように開口する。図8(b)に示すように、戸先開口部77が貫通孔部2と引き戸1の内部において、空間として連結している。
戸先開口部77を設ける目的は、図8(b)のように戸先開口部77を介して摺動体20と結合したラッチ部70を設け、ラッチ機構を実現するためである。
この目的が実現される限りにおいて、戸先開口部77の形状は任意に決められる。
【0060】
引き戸1は図8(a)(b)の矢印方向にスライドして開閉する。そして引き戸1は、同図の左方向となる閉方向にスライドさせることで、戸先面Fと壁Wとが接触する引き戸1の閉位置において、ラッチ受け部71に収容されるラッチ部70を備える。
ラッチ部70は、図8(b)のように摺動体20の一部と結合し戸先開口部77の開口方向に延びたアーム75と、アーム75と結合しかつ少なくとも一部が柱体でありかつその柱体の戸尻方向側に引き戸1の戸先側の面と平行な面を備えるラッチ73とを備える。
本参考形態ではアーム75と摺動体20が一体的に形成され、図8(b)のライン(V)‐(V)における概略断面図である図8(a)に示すように、引き戸厚方向の幅が同じであることから、アーム75と摺動体20の境界はあいまいとなる。少なくとも戸先開口部が無い図8(c)の状態で摺動可能に設置された部分が摺動体20であり、それ以外がアーム75とすることもできる。
第1の参考形態で説明した通り、摺動体20の摺動によって開閉操作領域5が拡大されるため、摺動距離を確保するために、摺動体20のみならずアーム75も引き戸厚方向における幅は薄い方が好ましい。
本参考形態においては、摺動体20と連結したアーム75は、引き戸厚方向に、弾性体の伸縮の限界まで、又は戸先開口部の縁と接触するまで、移動することができる。
【0061】
ラッチ部70は、アーム75の他に、アームに連結されたラッチ73を備える。本参考形態におけるラッチ73は柱体であり、その上面は、図8(a)に示す平面視において、戸尻側に戸先面と平行な直線の縁を備える。それ以外の縁は曲面となり、同図左方向に凸形状となる。ラッチ73はアーム75を介して摺動体20と連結するため、その摺動に連動して動く。
このようにアーム75とラッチ73を備えるラッチ部70は、引き戸1の閉位置において、図8(a)(b)(c)の左側の図の壁Wに備わる空洞であるラッチ受け部71に収容される。
なお壁Wとは、引き戸1がドアである場合のみ壁であって、それ以外の場合は、ラッチ受け部71が設けられる場所以上の意味はない。
【0062】
ラッチ受け部71は、その空洞の中に、図8(a)(b)(c)の左側の図に示すように、柱体のラッチ受け72を備える。本参考形態のラッチ受け72は図8(a)に示すように平面視において戸先面と平行な直線に関して、ラッチ73と線対称になっている。ラッチ受け72は図8(d)左側に示すように、一般的な戸枠に設けられている、とろよけの内部に設けることも可能である。
【0063】
引き戸1が閉状態においてラッチ部70がラッチ受け部71に収容された状態が、ラッチが掛かった状態である。
引き戸1を閉じるために閉方向にスライドしていくと、図8(a)のラッチ73の凸状の先端がラッチ受け72の凸状の先端と接触する。その後ラッチ73は、ラッチ受け部71に固定されたラッチ受け72との接触を維持しつつ、図8(a)の視点における上下いずれかの方向に弾性体を伸縮させながら、ラッチ受け72の縁沿いにずれていく。その後ラッチ73の戸先面と平行な面であるラッチ背面79と、ラッチ受け72の戸先面と平行な面であるラッチ受け背面79’とが同一平面上にくるまで回り込むと、弾性体74の復元力により引き戸厚中心まで、ラッチ73がラッチ受け72との接触を維持しつつ移動し、ラッチ背面79とラッチ受け背面79’が、重なり合う。こうしてラッチが掛かる。
【0064】
ラッチの解除とは、引き戸1の開方向への動きを妨げるラッチ背面79とラッチ受け背面79’との重なり合いを解消することである。
図8(a)の視点において、摺動体20を上方向に摺動させることでそれと連結したアーム75及びラッチ73が上方向に移動し、又は摺動体20を下方向に摺動させることでそれと連結したアーム75及びラッチ73が下方向に移動し、ラッチ背面79とラッチ受け背面79’との重なり合いがなくなり、引き戸1の開方向の動きに障害がなくなる。この状態で開閉操作領域5に手指等を掛けて引き戸を開方向スライドさせることでラッチが解除される。
【0065】
上述の通り、ラッチが図8(d)の視点において左右方向への移動することで、ラッチが掛かる又はラッチを解除されるため、同図左側で示すように、ラッチ受け72の左右両側に、ラッチ73が入り込めるだけの幅が、ラッチ受け部71に備わっていなければならない。
アーム75及びラッチ73の一部が引き戸厚方向に移動しながらラッチが掛かるため、その動きを可能にするために、ラッチ受け部71の空洞においてラッチ受け72の鉛直方向の上方も空洞となっている。
ラッチ73及びラッチ受け72が、平面視において、上記のような形状を備えるのは、ラッチが掛かるまでの、ラッチ73とラッチ受け72の接触を滑らかにするためである。また、ラッチ73がラッチ受け72に接触するのはおおよそ図8(b)における円形の点線で囲まれた部分であるため、ラッチ73はこの部分が柱体あればよく、それ以外はラッチ受け部に収容可能な限り、形状に制限はない。
【0066】
ラッチ機能を果たせる限り弾性体の位置と個数に制限はない。しかし摺動体20の引き戸面と平行な表面積が相対的に大きくなるほど、摺動の動きが滑らかではなくなる傾向があるため、実用性を考慮すると、弾性体74の位置や個数は自ずと選択肢が限られることになる。弾性体74の位置は、摺動体20の摺動において、摺動操作を行う人の部位が弾性体74に触れない位置となることが好ましい。
【0067】
本参考形態でラッチ部70は、むき出しの状態で引き戸1から突出しているが、これらを保護するカバー(図示なし)を設けても良い。カバーの中でラッチ73が引き戸厚方向に動作し、カバー自体がラッチ受け部に収容されるような形状をとることになる。
ラッチを掛けるときに、ラッチ73がラッチ受け部71の壁W側の内面に衝突することは、ラッチ機構の故障につながり好ましくはない。そのため、引き戸1を閉めるにあたり、最初に戸先面Fと壁Wが衝突する、又はカバーがラッチ受け部71の壁W側の内面に衝突する構造をとることで、ラッチ73の衝突を回避することが好ましい。
【0068】
引き戸がラッチ機構を備えることは一般的ではない。しかし、長年の使用で引き戸が最後まで閉まらなくなる場合や、多少の地震で開閉方向に動いてしまうことを防ぎたい場合、施錠までは必要ないが摺動体の操作というひと手間を引き戸の開閉に必要とすることで、幼児の引き戸1を越えた行き来を防ぎたい場合など、引き戸にもラッチ機構を備えることのメリットやニーズは少なからず存在する。
【0069】
本参考形態におけるラッチ構造は、第1の参考形態における引き戸1のみに適用可能なのではなく、摺動体20を備える引き戸1であれば、第2の参考形態においても、またその他の形状、位置、大きさとなる摺動体を備える参考形態においても、同様に適用可能である。これは補助操作部が備わる第5、第6の実施形態及び参考形態においても同じである。適用方法は、本参考形態と実質的に同じであるため、省略する。
【0070】
(9)第9の実施形態
第9の実施形態について図9を用いて説明する。
ラッチ83、ラッチ受け82、ラッチ受け部81の形状、は第8の参考形態と共通し、またラッチが掛かるための又は解除されるためのラッチ受け82に対するラッチ83の動きにおいても共通するため省略する。
本実施形態において、ラッチ83の引き戸厚方向の動きを実現する構造が第8の参考形態と異なる。これは、本実施形態が、第8の参考形態の摺動体20の代わりに回動体40を備えていることに起因する。
【0071】
回動体40の回動に連動してラッチ83が引き戸厚方向に動くための、一例としての構造を図9により説明する。
まず本実施形態における引き戸1は、引き戸1に対して回動体40を回動可能に連結する回動部材41を備え、その回動部材41の一端にプーリーを固定し、回動とともに回転するようにする。回動体40の回動の動きと連動しない戸先側の位置に回転可能に設置された歯車87を備え、その歯車の上部にプーリー86’を備える。二つのプーリー86、86’をベルト84でつなぐ。これにより引き戸1は、回動体40と連動して回転する1つ以上の歯車87を有することになる。
【0072】
引き戸1は、歯車87よりもさらに戸先側に、おおよそ引き戸厚に近い長さを有する溝であるレール溝89を備え、その溝に篏合するように、薄い板状の滑動部88が備わり、滑動部88はレール溝89に沿って引き戸厚方向を滑動する。この滑動部88は、引き戸厚方向に直線状の歯が備わり、これが歯車87と噛合する。
【0073】
次にラッチ83を備えるラッチ部80について説明する。第8の参考形態同様にラッチ部80はアーム85を備え、戸先開口部を介してラッチ83と引き戸1を連結する。このアーム85は具体的には、滑動部88に連結される。よって滑動88の滑動に伴いアーム85及びラッチ83が引き戸厚方向に移動するようになる。以上の構造により、回動体40の回動に連動し、ラッチ83の引き戸厚方向の動作を実現し、ラッチが掛かる又はラッチが解除される動作を可能にする。
【0074】
本実施形態においても第8の参考形態同様に、弾性体(図示なし)が設けられる。引き戸面と垂直方向における回動体40の中心と、ラッチ83の中心、及びラッチ受け82の中心が幾何学的に同一平面上になり得るように、それらが引き戸1に設置され、弾性体は、回動体40を回動させる力が加えられていない初期状態において、その位置関係(初期位置)となるようにするために設けられる。
そのため、弾性体は、回動体40の回動に関係する、回動部材41、滑動部88、歯車87、又はそれらと一体的に動作する部分に配置され、初期位置に向かって復元力が働くように設置される。それによって第8の参考形態同様に、ラッチが掛かった位置が維持されるようになる。
弾性体の設置について、例えば、レール溝89内へのコイルばねを設置する方法や、歯車87に渦巻きばねを設置する方法などが考えられる。
【0075】
本実施形態は、第4の実施形態に、ラッチ構造を備えた形態といえるが、その他の形状、位置、大きさである回動体40を備える実施形態においても本実施形態のラッチ構造を設けることが可能である。これは補助操作部が備わる第5、第7の実施形態においても同じである。
【0076】
(10)第10の実施形態
第10の実施形態について図10を用いて説明する。この実施形態の特徴は、これまでに記述した、摺動体20又は回動体40を備えかつラッチ構造を備えた引き戸1に施錠構造を持たせる点にある。
上述の通り、本発明におけるラッチ構造は、摺動体20又は回動体40の動作に連動してラッチが解除されるため、本実施形態の施錠構造は、その摺動体20又は回動体40の動作を止めることでラッチの解除を妨げる構造をとる。
【0077】
図10(a)~(f)で示すように、摺動体20又は回動体40の外周面上に、凹状の空洞であるかんぬき受け95を備える。ここにかんぬき92が嵌合することで、摺動体20の摺動に係る動き、及び回動体40の回動に係る動きが妨げられ、ラッチ部をラッチ受け部から出すことができず、すなわちラッチの解除ができないようになる。
【0078】
本実施形態の施錠構造は、かんぬき92をかんぬき受け95から抜いた開錠状態とかんぬき92をかんぬき受け95に嵌合させた施錠状態とを切り換えるためのつまみ91を備える。
図10(c)及び(d)に示すように、開錠状態と施錠状態を切り換える際のかんぬき92の動きが、回転動作によってかんぬき受け95内に入り込む態様であってもよい。図10(e)及び(f)に示すように、直線的動作によってかんぬき受け95内に入り込む態様であってもよい。図10(c)~(f)に示すように、本実施形態におけるつまみ91は、かんぬき92が回転動作する場合には回転動作可能なつまみにより施錠開錠を行い、かんぬき92が直線的動作をする場合には直線的動作が可能なつまみにより施錠開錠を行う。
【0079】
本実施形態における引き戸1は、弾性体94を備えることもでき、例えば図10(a)(b)のように、摺動体20に摺動させるための力が加えられていない初期状態において、摺動体20が引き戸厚中心に位置するように、さらにはその初期状態における位置において、かんぬき92がかんぬき受け95に嵌まる位置となるように弾性体94を設けることができる。
【0080】
本実施形態においては、図10(b)のように、かんぬき92が中央に、つまみが一端に、他端に鍵穴が備わる、円筒ケースを有していても良い。引き戸を外側から施錠することができるようになる。
【0081】
摺動体20又は回動体40の動作が妨げられさえすればよいため、それが実現される限り、かんぬき92及びかんぬき受け95の位置に限定はない。図10(c)(e)のように、回動体40の上部中央にかんぬき受け95を設ける場合だけでなく、図10(f)のように上部中央からずらして上部左方にかんぬき受け95を設けても良い。さらには図10(d)のように同図における回動体40の右側にかんぬき受け95を設けることもできる。引き戸1に対して回動体40を回動させるための回動部材41を避けるような位置のため、デザインのためなど、多様な設計に係る要求を満たすことができる。
【0082】
第3の参考形態においても、突出部材32そのものにかんぬき受け95を設けることで、第10の実施形態における施錠構造を設けることができる。
【0083】
(11)第11の参考形態
上記実施形態及び参考形態において、引き戸1の操作に関わる構成要素の占める部分を操作部構造101とした場合、その操作部構造101は、引き戸1にとどまらず開き戸にまで適用可能である。数ある戸のタイプと本発明に包含される操作部構造101との組合せは多数考えられるが、本参考形態では、ラッチ部102がドアに一体化したラッチ一体型ドアに、本発明における操作部構造101を設けた場合の一例を示す。なお開き戸はドアに限定されるものではなく、操作部構造101を備え得るあらゆる戸が含まれる。
操作部構造101の構成要素である貫通孔部2、摺動体20等は全て第1の参考形態と同じであるため、共通する記載を省略する。
【0084】
図11(a)は、本参考形態における開き戸を概略斜視図で示す。この戸100は、ドアケース116の中にドア本体100が収容され、ドアケース116の内面とドア本体100の戸尻側の面とが弾性体111によって連結した構造をとる。この戸は外部の例えば壁などの設置面と蝶番を介して連結される。閉状態においてラッチ部102は、ラッチ受け部(図示なし)に収容されているため、開くためにはラッチを解除する必要がある。ラッチの解除はドア本体100を戸尻側にスライドさせることで、ラッチ部102がラッチ受けから抜け出て、同図P方向に戸100が開放可能になる。戸100を開閉するための、具体的には、ラッチ解除のための上記スライド操作と、戸100のP方向又はP方向と逆方向に、開閉操作を行うために、操作部構造101を設ける。
【0085】
本参考形態においては、戸100が摺動体20を備える例を示す。図11(c)の上側の図は、図11(a)のライン(VII)‐(VII)における例示的な操作部構造101に関する概略断面図である。下側の図は一方の戸面を正面から視た場合の操作部構造101に関する概略正面図である。この図に示すように貫通孔部2、摺動体20が円形となる場合を示す。同図上側の図は、図11(a)の手前側の戸面を一方の戸面114とし、その反対側の戸面を他方の戸面115とすると、図11(c)は、一方の戸面114側から他方の戸面115側に摺動体20が押し出され、操作部構造101内で、身体の一部が実際に接触する開閉操作領域5が、出現し又は拡大する。
一方の戸面114側に、摺動体20があることで、一方の戸面114側の操作者からみて実質的に開閉操作領域5が存在しない場合には、摺動体20の他方の戸面115側への摺動により開閉操作領域5が出現することになる。それ以外の場合は、摺動体20を他方の戸面115側に摺動可能な限り、開閉操作領域5は拡大することになる。
【0086】
本参考形態の別形態を、図11(b)に示す。同図の下側の図で示すように、同図の視点において貫通孔部2は外側の点線で囲まれる円形となる。実線と外側の点線の間の領域が第1受け手7となる。図11(b)上側の図で示すように、同図の視点において摺動体20は凹レンズのような形状となっている。また第1受け手7の形状は、図11(c)と異なり、貫通孔部2内面に切り欠きがその内面一周につき存在する。この切り欠きは、手指等を引っ掛けるために設けられたもので、開き戸である戸100の開閉操作を容易にするためである。同図(c)の形態では第1受け手7又は第1受け手8に手指を引っ掛けて戸100の開閉操作を行う。本参考形態における上記スライド操作は、貫通孔部2及び受け手7、8によって形成される開閉操作領域5の一部を戸尻側に押すことよって行う。
【0087】
本参考形態は、第1の参考形態における操作部構造101を開き戸である戸100に適用した例である。同様に第2~第4の実施形態及び参考形態における摺動体20、突出部材32、回動体40を備える操作部構造101を戸100に適用することも可能である。摺動体20、突出部材32、回動体40といった操作体の相違はあるものの、操作体に対する操作が操作部構造内101において開閉操作領域5を出現させる又は拡大させるために存在する点で共通し、その意味で上記記載と共通するため、具体的な記述は省略する。
本参考形態における摺動体20の代替として回動体40を用いた場合は、受け手7,8を設ける必要のないため、戸100の開閉方向に身体の一部を掛けるため部分がない戸100の形態をも含む。その場合には、受け手7,8に相当するものを備えることもできるが、回動体40の回動がその受け手7,8に相当するものに衝突しないように設ける必要が生じる。
【0088】
さらに別の形態として、第5の実施形態のように固定された補助操作部42、第6及び7の実施形態及び参考形態のように移動する補助操作部50、68を備えることも可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 引き戸
2 貫通孔部
5 開閉操作領域
7 第1受け手
8 第2受け手

20 摺動体
21 第1ストッパー
22 第2ストッパー
27 第1受け手
28 第2受け手

30 基礎腕部
30’基礎腕部
31 連結腕部
31’連結腕部
32 突出部材
33 弾性体
34 連結部材

40 回動体
41 回動部材
42 補助操作部

50 補助操作部
51 ピニオン、歯車
52 第1ラック
53 連結部材
54 第2ラック
55 弾性体

61 ベルト
62 プーリー
63 プーリー
64 歯車
65 ピニオン、歯車
66 ラック
67 弾性体
68 補助操作部

70 ラッチ部
71 ラッチ受け部
72 ラッチ受け
73 ラッチ
74 弾性体
75 アーム
76 ストライク
77 戸先開口部
79 ラッチ背面
79’ラッチ受け背面

80 ラッチ部
81 ラッチ受け部
82 ラッチ受け
83 ラッチ
84 ベルト
85 アーム
86 プーリー
86’プーリー
87 平歯車
88 滑動部
89 レール溝

90 円筒ケース
91 つまみ
92 かんぬき
94 弾性体
95 かんぬき受け

F 戸先面
W 壁
P ドア開方向

100 戸
101 操作部構造
110 蝶番
111 弾性体
112 一体型ラッチ部
114 一方の戸面
115 他方の戸面
116 ドアケース

【要約】
【課題】開閉操作に係る構成要素に特徴を有する引き戸、及び同特徴を有するラッチ機構付き引き戸、さらには同特徴を有する施錠可能なラッチ機構付き引き戸を提供する。
【解決手段】戸先側及び戸尻側にスライドすることで開閉可能な引き戸(1)であって、 引き戸面と垂直方向に一方の引き戸面から他方の引き戸面へと貫通する孔を備える少なくとも1つの貫通孔部(2)と、前記貫通孔部(2)に収容される回動体(40)と、前記貫通孔部(2)の内面において対向する2つの地点を通る軸を中心として、前記引き戸(1)に対して前記回動体(40)を回動可能に連結する回動部材(41)と、を有する。
【選択図】図4

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11