(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】配向膜露光装置用の測定機構、および配向膜露光装置の調整方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20221213BHJP
G01B 11/26 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G01B11/26 Z
(21)【出願番号】P 2022528731
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2021036101
(87)【国際公開番号】W WO2022091686
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2020182928
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510138741
【氏名又は名称】フェニックス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【氏名又は名称】多田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】井上 智彦
(72)【発明者】
【氏名】山下 健一
(72)【発明者】
【氏名】松本 弘
(72)【発明者】
【氏名】池田 富彦
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-027968(JP,A)
【文献】特開2020-148863(JP,A)
【文献】特開2019-174631(JP,A)
【文献】国際公開第2019/102734(WO,A1)
【文献】特開2019-074563(JP,A)
【文献】特開2016-218389(JP,A)
【文献】特開2007-225841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源からの光を受け、透過させた前記光を露光面に載置したワークに照射する偏光素子とを備える配向膜露光装置に使用される測定機構であって、
前記露光面に配置される照度計を備えており、
前記照度計は、前記露光面における露光面照度と、消光比と、前記偏光素子における偏光軸のズレと、照射角とを測定し、
前記消光比は、
前記照度計における前記光源に向かう面側に基準偏光素子を配置した後、
前記偏光素子による偏光方向に略直交する方向に向けた状態の前記基準偏光素子を透過してきた光の照度をp波強度とし、
前記p波強度を測定した状態から90°回転させた状態の前記基準偏光素子を透過してきた光の照度をs波強度として、
p波強度の値をs波強度の値で除すことによって算出し、
前記光源は、前記光源からの前記光を前記ワークに対して斜めから照射できるように、前記ワークに対して傾けて配置されており、
前記偏光素子および前記基準偏光素子は、前記露光面に対して平行となるように配置されており、
前記光源からの光軸が前記照度計の受光面中心および前記基準偏光素子の受光面中心を通るように、前記露光面を見おろす向きで見たときに前記照度計の前記受光面中心の位置に対して前記基準偏光素子の前記受光面中心の位置をずらしている
測定機構。
【請求項2】
光源と、
前記光源からの光を受け、透過させた前記光を露光面に載置したワークに照射する偏光素子とを備える配向膜露光装置に使用される測定機構であって、
前記露光面に配置される照度計を備えており、
前記照度計は、前記露光面における露光面照度と、消光比と、前記偏光素子における偏光軸のズレと、照射角とを測定し、
前記偏光素子における偏光軸のズレとは、所定の偏光方向に対する偏光軸のズレをいい、
前記照度計における前記光源に向かう面側に基準偏光素子を配置した後、
所定の方向に向けた基準状態の前記基準偏光素子を透過してきた光を照度基準とし、
前記基準状態から所定の角度ずつ前記基準偏光素子を回転させたときの光の照度を測定して前記照度基準と比較することによって確認し、
前記光源は、前記光源からの前記光を前記ワークに対して斜めから照射できるように、前記ワークに対して傾けて配置されており、
前記偏光素子および前記基準偏光素子は、前記露光面に対して平行となるように配置されており、
前記光源からの光軸が前記照度計の受光面中心および前記基準偏光素子の受光面中心を通るように、前記露光面を見おろす向きで見たときに前記照度計の前記受光面中心の位置に対して前記基準偏光素子の前記受光面中心の位置をずらしている
測定機構。
【請求項3】
前記露光面照度は、前記照度計を前記露光面内で移動させることによって複数の点で測定する
請求項1または2に記載の測定機構。
【請求項4】
照射角は、
前記光源を構成する個々の光源素子の中心光軸と前記露光面とが交差する位置の照度を前記照度計で測定し、
前記照度計が前記光源素子に向かう角度を変えて前記照度を複数回測定した結果のうち、
前記照度が最も高いときの前記角度である
請求項1または2に記載の測定機構。
【請求項5】
光源と、
前記光源からの光を受け、透過させた前記光を露光面に載置したワークに照射する偏光素子とを備える配向膜露光装置に使用される測定機構であって、
前記露光面に配置され、前記ワークのスキャン方向に移動しつつ前記光源から受ける光量を連続的に測定する光量計と、
前記光量計における前記光源に向かう面側に配置された基準偏光素子とを備えており、
前記光量計は、前記光源からの光を受けることで発生するアナログ信号の大きさに応じた頻度のパルス信号を発生させて、前記パルス信号の数に基づいて前記移動の期間全体で前記光源から受けた光量を算出し、
前記光源は、前記光源からの前記光を前記ワークに対して斜めから照射できるように、前記ワークに対して傾けて配置されており、
前記偏光素子および前記基準偏光素子は、前記露光面に対して平行となるように配置されており、
前記光源からの光軸が前記光量計の受光面中心および前記基準偏光素子の受光面中心を通るように、前記露光面を見おろす向きで見たときに前記光量計の前記受光面中心の位置に対して前記基準偏光素子の前記受光面中心の位置をずらしている
測定機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に液晶パネルを製造する際の露光に用いられる配向膜露光装置用の測定機構、および配向膜露光装置の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶をTN方式の表示パネルとして使用する際、2枚のガラス基板の間に液晶を封入してこれらガラス板の内面に形成された透明電極に電圧を印加しただけでは正常も動作しない。これは液晶分子がバラバラの状態にあるからである。
【0003】
液晶に正常なTN方式の動作をさせるためには、液晶分子を一定方向に配向させるとともに、液晶分子の立ち上がり方向を一定にする必要がある。具体的には、ガラス基板に対して3°程度傾く方向に液晶分子を配向させており、この傾きの角度はプレチルト角と呼ばれている。
【0004】
そして、液晶の配向性能をもつ一対のガラス基板のうち、一方のガラス基板をX方向に配向するように配置し、対面する他方のガラス基板をX方向と直交するY方向に配置する。(TN方式)
【0005】
このように、液晶パネルの製造には液晶配向処理が必要であり、従前より、ガラス基板の表面を物理的に擦るラビング処理が行われてきた(例えば、特許文献1)。このラビング処理とは、ガラス基板上に形成された有機高分子膜を毛足の長い布等で所定の方向に擦ることにより、液晶分子を一定方向に配向させることのできる膜を形成する処理方法である。
【0006】
ラビング処理が普及して、応答速度が速いTN方式が一般的になったことにより、液晶パネルが安定した性能で安価に量産できるようになってパソコン等のOA機器用の表示モニターやゲーム機用のモニターとして液晶モニターが普及した経緯がある。
【0007】
しかしながら、ラビング方式には、均一性に乏しいこと、TFTの静電破壊が生じる可能性があること、さらに、ラビング時に生じる粉末ごみが付着するといった信頼性に係わる問題があった。
【0008】
加えて、ラビング方式で達成できるプレチルト角は、上述のように水平配向液晶モードを代表するTN方式においては3°程度であり、低電圧駆動で、高速応答に対応した液晶モードの表示パネルを構成するためには難があった。
【0009】
このようなラビング方式の問題に対応するため、現在では、光配向処理を実施できる配向膜露光装置が提案されており、この配向膜露光装置の光源として、水銀灯やLEDが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、光源を用いて光配向処理を行うためには、配向膜露光装置の照度測定や偏光素子の調整を効率よく実施するための測定機構や調整方法が必要である。
【0012】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ラビング方式に代えて簡便かつ安価な構成で光配向処理を実施できる配向膜露光装置の照度測定や偏光素子の調整を効率よく実施するための測定機構、および配向膜露光装置の調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一局面によれば、
光源と、
前記光源からの光を受け、透過させた前記光を露光面に載置したワークに照射する偏光素子とを備える配向膜露光装置に使用される測定機構であって、
前記露光面に配置される照度計を備えており、
前記照度計は、前記露光面における露光面照度と、消光比と、前記偏光素子における偏光軸のズレと、照射角とを測定し、
前記消光比は、
前記照度計における前記光源に向かう面側に基準偏光素子を配置した後、
前記偏光素子による偏光方向に略直交する方向に向けた状態の前記基準偏光素子を透過してきた光の照度をp波強度とし、
前記p波強度を測定した状態から90°回転させた状態の前記基準偏光素子を透過してきた光の照度をs波強度として、
p波強度の値をs波強度の値で除すことによって算出し、
前記光源は、前記光源からの前記光を前記ワークに対して斜めから照射できるように、前記ワークに対して傾けて配置されており、
前記偏光素子および前記基準偏光素子は、前記露光面に対して平行となるように配置されており、
前記光源からの光軸が前記照度計の受光面中心および前記基準偏光素子の受光面中心を通るように、前記露光面を見おろす向きで見たときに前記照度計の前記受光面中心の位置に対して前記基準偏光素子の前記受光面中心の位置をずらしている
測定機構が提供される。
また、本発明の他の局面によれば、
光源と、
前記光源からの光を受け、透過させた前記光を露光面に載置したワークに照射する偏光素子とを備える配向膜露光装置に使用される測定機構であって、
前記露光面に配置される照度計を備えており、
前記照度計は、前記露光面における露光面照度と、消光比と、前記偏光素子における偏光軸のズレと、照射角とを測定し、
前記偏光素子における偏光軸のズレとは、所定の偏光方向に対する偏光軸のズレをいい、
前記照度計における前記光源に向かう面側に基準偏光素子を配置した後、
所定の方向に向けた基準状態の前記基準偏光素子を透過してきた光を照度基準とし、
前記基準状態から所定の角度ずつ前記基準偏光素子を回転させたときの光の照度を測定して前記照度基準と比較することによって確認し、
前記光源は、前記光源からの前記光を前記ワークに対して斜めから照射できるように、前記ワークに対して傾けて配置されており、
前記偏光素子および前記基準偏光素子は、前記露光面に対して平行となるように配置されており、
前記光源からの光軸が前記照度計の受光面中心および前記基準偏光素子の受光面中心を通るように、前記露光面を見おろす向きで見たときに前記照度計の前記受光面中心の位置に対して前記基準偏光素子の前記受光面中心の位置をずらしている
測定機構が提供される。
【0014】
好適には、
前記露光面照度は、前記照度計を前記露光面内で移動させることによって複数の点で測定する。
【0017】
好適には、
照射角は、
前記光源を構成する個々の光源素子の中心光軸と前記露光面とが交差する位置の照度を前記照度計で測定し、
前記照度計が前記光源素子に向かう角度を変えて前記照度を複数回測定した結果のうち、
前記照度が最も高いときの前記角度である。
【0018】
本発明の他の局面によれば、
光源と、
前記光源からの光を受け、透過させた前記光を露光面に載置したワークに照射する偏光素子とを備える配向膜露光装置に使用される測定機構であって、
前記露光面に配置され、前記ワークのスキャン方向に移動しつつ前記光源から受ける光量を連続的に測定する光量計と、
前記光量計における前記光源に向かう面側に配置された基準偏光素子とを備えており、
前記光量計は、前記光源からの光を受けることで発生するアナログ信号の大きさに応じた頻度のパルス信号を発生させて、前記パルス信号の数に基づいて前記移動の期間全体で前記光源から受けた光量を算出し、
前記光源は、前記光源からの前記光を前記ワークに対して斜めから照射できるように、前記ワークに対して傾けて配置されており、
前記偏光素子および前記基準偏光素子は、前記露光面に対して平行となるように配置されており、
前記光源からの光軸が前記光量計の受光面中心および前記基準偏光素子の受光面中心を通るように、前記露光面を見おろす向きで見たときに前記光量計の前記受光面中心の位置に対して前記基準偏光素子の前記受光面中心の位置をずらしている
測定機構が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る測定機構によれば、照度計を用いて、露光面における露光面照度と、消光比と、偏光素子における偏光軸のズレと、照射角とを測定することができる。
【0021】
また、本発明に係る配向膜露光装置の調整方法によれば、ひとつの照度計で2つの偏光素子の偏光方向を調整することができる。
【0022】
これにより、配向膜露光装置の照度測定や偏光素子の調整を効率よく実施するための測定機構、および配向膜露光装置の調整方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明が適用される配向膜露光装置10を示す図である。
【
図2】本発明が適用された測定機構100を示す図である。
【
図3】測定機構100を配置した状態の配向膜露光装置10を示す図である。
【
図4】測定機構100による露光面Aにおける測定位置Yの例を示す図である。
【
図5】本発明が適用された他の測定機構100を示す図である。
【
図6】変形例1に係る、測定機構100を配置した状態の配向膜露光装置10を示す図である。
【
図7】移動方向と基準偏光素子120の偏光方向とを示す図である。
【
図8】移動方向と基準偏光素子120の偏光方向とを示す図である。
【
図9】基準偏光素子120を回転させる角度(横軸)と、照度計110で受けた光の照度(縦軸)との関係を示すグラフである。
【
図10】基準偏光素子120を回転させる角度(横軸)と、照度計110で受けた光の照度(縦軸)との関係を示すグラフである。
【
図11】変形例3に係る、測定機構100を配置した状態の配向膜露光装置10を示す図である。
【
図12】測定機構100で互いに隣接して並んだ2つの偏光素子14a,14bからの光を受ける状態を示す図である。
【
図13】測定機構100で3つの偏光素子14a,14b、14cを調整する状態を示す図である。
【
図14】変形例5に係る、光量計150を備える測定機構100を示す図である。
【
図16】照度計110の受光面中心の位置と基準偏光素子120の受光面中心の位置とが互いに一致しており、ロスが発生している状態を示す図である。
【
図17】照度計110の受光面中心の位置と基準偏光素子120の受光面中心の位置とをずらすことにより、ロスを最小限にしている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(配向膜露光装置10の構成)
本発明が適用された実施形態に係る測定機構100を説明する前に、当該測定機構100が用いられる配向膜露光装置10について以下に説明する。配向膜露光装置10は、
図1に示すように、大略、光源12と、偏光素子14と、光学フィルター30と、カバー部材40とを備えている。なお、光学フィルター30やカバー部材40は、配向膜露光装置10にとって必須の構成要素ではない。
【0025】
光源12は、ワーク(露光対象物)Xが載置される露光面Aに向けて露光用光Lを照射する部材であり、本実施形態では複数のLED16が使用されている。これらLED16は露光面A上を一定方向に移動していくワークXに対して走査するように露光用光Lを照射していくので、当該光源12はワークXの移動方向に直交する方向に複数のLED16を略直列に配置することによって形成されている。もちろん、ワークXに対して配向膜露光装置10が移動して露光用光Lを照射してもよし、ワークXおよび配向膜露光装置10の両方が移動してもよい。
【0026】
また、光源12を構成する各LED16は、これらLED16の光軸CLがワークXに対して第1の角度θ1(つまり、入射角θ1)を有するように、ワークXに対して(つまり、露光面Aに対して)傾けて配置されている。角度成分のバラツキが少ない光を斜めから照射して作成した配向膜を液晶パネルに使用することにより、安定したプレチルト角と配向状態とを出現させることが可能となり、任意の配向モードの液晶パネルが実現できる。
【0027】
なお、光源12はLED16に限定されるものではなく、例えば、一灯式の放電灯や、多灯式の放電灯を使用してもよい。
【0028】
偏光素子14は、光源12から照射された光のうち一方向に振動する光成分のみを透過して偏光する素子であり、本実施形態では、ワイヤーグリッド偏光素子が使用されている。ワイヤーグリッド偏光素子は、透明基板(ガラス基板)の一方の表面にワイヤーグリッドを形成したものである。本実施形態では、ワイヤーグリッドの形成面18は、偏光素子14における光源12側の面であってもよいし、光源12とは反対側の面であってもよい。また、偏光素子14はワークX(露光面A)に対して平行となるように配設されるのが好適である。
【0029】
光学フィルター30は、光源12と偏光素子14との間に配設されており、光源12から放射された光Lのうち所定の波長以上の光Lを選択的に透過する部材であって、表面に波長選択膜が形成されている。また、光学フィルター30は、偏光素子14と同様、ワークX(露光面A)に対して平行となるように配設されるのが好適である。なお、光学フィルター30としては、以下に説明する条件を満たすものであれば、所定の波長以上の光を透過するロングパスフィルタや、所定の波長範囲の光を透過し、それよりも長波長および短波長の光を遮断するバンドパスフィルタを使用することができる。さらに、光学フィルター30は、偏光素子14の光源12側とは反対側に配設してもよい。
【0030】
カバー部材40は、光源12からの光Lを透過する例えばガラス製の板材であり、偏光素子14におけるワイヤーグリッドの形成面18に対向する位置において、ワークXと略平行に配設されている。つまり、図示するように偏光素子14におけるワイヤーグリッドの形成面18が光源12側とは反対側に形成されている場合、カバー部材40も偏光素子14における光源12側とは反対側に配設される。逆に、偏光素子14におけるワイヤーグリッドの形成面18が光源12側に形成されている場合(図示せず)、カバー部材40も偏光素子14における光源12側に配設される。
【0031】
なお、カバー部材40の表面(両面とも)には、反射防止膜等の反射防止処理をしなくてもよいが、一方または両方の表面に反射防止膜等の反射防止処理を行うのが好適である。
【0032】
また、カバー部材40と偏光素子14におけるワイヤーグリッドの形成面18との間の空間Sは密閉するのが好適である。例えば、カバー部材40および偏光素子14の周縁を保持する保持枠42を設け、当該保持枠42でカバー部材40と偏光素子14におけるワイヤーグリッドの形成面18との間の空間Sを密閉することが考えられる。
【0033】
なお、上述した「密閉」とは、当該空間Sにシロキサン化合物等の微小固形物が侵入しない程度の意味であり、完全な意味での「密閉」は必要ない。
【0034】
また、偏光素子14にはいわゆる「反射タイプ」のワイヤーグリッドを用いるのが好適である。「反射タイプ」であれば、光源12からの光Lによってワイヤーグリッドが加熱され、密閉された空間の温度が不所望に上昇することによってワイヤーグリッドの形成面18等を損傷させる可能性が低いからである。
【0035】
さらに、密閉された空間Sを冷却することを目的として、カバー部材40、偏光素子14、あるいは保持枠42といった当該空間Sを構成する部材を強制空冷または水冷といった方法によって冷却してもよい。
【0036】
(測定機構100の構成)
次に、測定機構100の構成について説明する。本実施形態に係る測定機構100は、露光面Aに配置される照度計110を備えている。
【0037】
本実施形態に係る照度計110では、露光面照度を測定するようになっている。具体的に、照度計110は、
図2に示すように、照度計本体112と、この照度計本体112の上面に一列に配置実装された複数の照度測定子114とで構成されている。また、露光面Aから照度測定子114の表面までの高さは、ワークXの厚さ(つまり、露光面AからワークXの表面までの高さ)と同じにするのが好適である。
【0038】
この照度計110を
図3に示すように露光面Aに配置した後(複数の照度測定子114が露光面Aに対する光源12の移動方向に対して略直交する方向に並ぶように配置するのが好適である。)、当該照度計110を露光面A内で光源12の移動方向に移動させつつ、所定の移動距離毎に照度測定子114で照度を測定していくことにより、
図4に示すように、碁盤目状の測定位置Yで露光面Aにおける光源12からの照度を測定することができる。必要に応じて、光源12を露光面Aに対して相対的に移動させてもよい。
【0039】
なお、
図5に示す測定機構100のように、照度計本体112の上面に実装される照度測定子114はひとつであってもよい。この測定機構100は、照度計110の他に、当該照度計110を直線方向に移動させる照度計移動機構130と、照度計110が光源12に向かう角度を設定できる照度計角度設定機構140とを備えている。
【0040】
照度測定子114がひとつの場合、上述のように照度計110を露光面A内で光源12の移動方向に移動させていくとともに、例えば測定機構100の向きを変えて当該移動方向に直交する方向にも移動させていくことにより、碁盤目状の測定位置Yで露光面Aにおける光源12からの照度を測定することができる。もちろん、ひとつの照度計110を露光面A内で光源12の移動方向に移動させていくことで、当該移動方向に一例に並んだ測定位置Yで露光面Aにおける光源12からの照度を測定することができる。
【0041】
(変形例1)
また、測定機構100は、上述した露光面照度に代えて、あるいは、露光面照度に加えて、消光比を測定してもよい。この場合、測定機構100は、照度計110に加えて、
図6に示すように、基準偏光素子120を備えている。
【0042】
基準偏光素子120とは、ある特定の向きに偏光した光はよく通すが、これに垂直の向きに偏光した光はほとんど通さない特性を有する偏光素子をいう。
【0043】
「消光比」は、照度計110における光源12に向かう面側に基準偏光素子120を配置した後、以下の手順で当該光源12からの照度測定子114で照度を測定していく。
【0044】
最初の測定では、
図7に示すように、基準偏光素子120を偏光素子14による偏光方向に略直交する方向に向けた状態にしておき、この状態の基準偏光素子120を透過して照度計110で受けた光の照度をp波強度とする。然る後、
図8に示すように、このp波強度を測定した状態から90°回転させた状態(この場合、偏光軸方向は、偏光素子14による偏光方向に直交する方向となる。)の基準偏光素子120を透過して照度計110で受けた光の照度をs波強度とする。
【0045】
このようにして得られたp波強度の値をs波強度の値で除すことにより、消光比を算出することができる。
【0046】
なお、消光比の測定は、露光面Aにおける1点のみ(例えば、露光面Aの中央点)で行ってもよいし、露光面A内の複数箇所で行ってもよい。この場合、必要に応じて、光源12を露光面Aに対して相対的に移動させてもよい。
【0047】
(変形例2)
また、測定機構100は、偏光素子14における偏光軸のズレを測定してもよい。この場合も、上述した変形例1と同様に、測定機構100は、照度計110に加えて、基準偏光素子120を備えている(
図6参照)。
【0048】
ここで、偏光素子14における偏光軸のズレとは、所定の偏光方向に対する偏光軸のズレをいう。この偏光軸のズレを確認するため、先ず、照度計110における光源12に向かう面側に基準偏光素子120を配置する。
【0049】
そして、所定の方向(例えば、偏光素子14による偏光方向に略直交する方向)に向けた基準状態の基準偏光素子120を透過してきた光を照度基準とし、然る後、この基準状態から所定の角度ずつ基準偏光素子120を露光面Aに対して平行なままで回転させたときの光の照度をそれぞれ測定して照度基準と比較することによって確認する。
【0050】
例えば、基準状態から、露光面Aを見おろす向きで時計回り、および、反時計回りにそれぞれ所定の角度(10°)ずつ基準偏光素子120を回転させたときの光の照度が
図9のような結果となった場合、偏光素子14における偏光軸にズレがない(偏光軸は照度計110に対する光源12の相対的な移動方向に略直交する方向に一致している。)といえる。もし、当該結果が
図10のようになった場合、偏光軸は照度計110に対する光源12の相対的な移動方向に略直交する方向から露光面Aを見おろす向きで時計回りに10°ずれているといえる。
【0051】
なお、偏光軸のズレの測定は、露光面Aにおける1点のみ(例えば、露光面Aの中央点)で行ってもよいし、露光面A内の複数箇所で行ってもよい。この場合、必要に応じて、光源12を露光面Aに対して相対的に移動させてもよい。
【0052】
(変形例3)
さらに、測定機構100は、照射角を測定してもよい。この場合も、上述した変形例1と同様、
図11に示すように測定機構100は、照度計110に加えて基準偏光素子120を備えているが、この基準偏光素子120は必須の構成要素ではない。
【0053】
照射角とは、光配向膜の性能であるプレチルト角の出現に対し、安定かつ大きな角度を実現するために重要な要素である。この照射角は、露光面Aに対して光源12を固定する角度で決まるものである。
【0054】
照射角は以下の手順で測定する。先ず、光源12を構成する個々の光源素子13の中心光軸と露光面Aとが交差する位置の照度を照度計110で測定する。ここで、光源12は、複数の「光源素子13」で構成されている。例えば、光源12が多数のLEDで構成されている場合、光源素子13は、その内の複数のLEDをひとまとまりにした一単位である。また、光源12が複数の放電灯で構成されている場合、光源素子13は、ひとつの放電灯に対応する。
【0055】
同様にして、例えば、
図5に示す照度計角度設定機構140を用いて、照度計110が光源素子13に向かう角度を変えて照度を複数回測定した結果のうち、当該照度が最も高いときの角度が当該光源素子13の露光面Aに対する照射角である。
【0056】
なお、上述した照射角の測定は、露光面Aにおける1点のみ(例えば、露光面Aの中央点)で行ってもよいし、露光面A内の複数箇所で行ってもよい。この場合、必要に応じて、光源12を露光面Aに対して相対的に移動させてもよい。
【0057】
(変形例4)
測定機構100は、偏光素子14の位置調整にも使用できる。ワークXの大きさが大きい場合、それに応じて光源12の面積も大きくなる。例えば、露光面AにワークXが載置され、光源12がワークXに対して移動(スキャン)するタイプの配向膜露光装置10である場合、光源12の面積は、当該移動方向に対して直交する方向に長いものになる。
【0058】
このとき、光源12を構成する光源素子13は必要な数を並べることで対応できるが、大きい光源12に対応するために複数の偏光素子14a,14bを使用する場合、各偏光素子14a,14bの偏光方向を互いに一致させるために調整する必要がある。
【0059】
例えば、
図12に示すように測定機構100を照度計110と基準偏光素子120とで構成し、これら基準偏光素子120および照度計110で、互いに隣接して並んだ2つの偏光素子14a,14bからの光を受ける。
【0060】
このとき、照度計110が示す照度を確認しつつ、2つの偏光素子14a,14bの偏光方向をそれぞれ調整することで各偏光素子14a,14bの偏光方向を調整することができる。
【0061】
具体的に、3つの偏光素子14a,14b、14cを調整する手順を一例として説明する。
図13に示すように、最初に、第1の偏光素子14aと第2の偏光素子14bとの境目Cに測定機構100を配置する。この状態で、第1の偏光素子14aおよび第2の偏光素子14bを透過してきた光(偏光光)の照度を測定する。
【0062】
そして、第2の偏光素子14bのみを動かして、測定機構100が受光する照度が最大になるように調整する。然る後、今度は第1の偏光素子14aのみを動かして、測定機構100が受光する照度が最大になるように調整する。これにより、第1の偏光素子14aおよび第2の偏光素子14bは、相互に関係を保った状態で最適な偏光方向となるように調整できた。
【0063】
続いて、第2の偏光素子14bと第3の偏光素子14cとの境目Dに測定機構100を配置し、第3の偏光素子14cのみを動かして、測定機構100が受光する照度が最大になるように調整する。
【0064】
以上により、第1の偏光素子14a、第2の偏光素子14b、および第3の偏光素子14cは、相互に関係を保った状態で最適な偏光方向となるように調整できた。
【0065】
(変形例5)
また、測定機構100は、光源12からの光量を測定してもよい。この場合、測定機構100は、照度計110に変えて、
図14に示すように、光量計150を備えている。
【0066】
この光量計150は、
図15に示すように、照度センサ152と、変換器154と、積算表示装置156とを有している。
【0067】
照度センサ152は、光源12からの光を受けて、その照度の大きさに応じたアナログ信号(例えば、電圧)を外部へ送信する。この照度センサ152には、例えば、フォトトランジスタが使用される。
【0068】
変換器154は、照度センサ152から送られてきたアナログ信号の大きさに応じた頻度のパルス信号を発生させて外部へ送信する。
【0069】
積算表示装置156は、変換器154から送られてきたパルス信号を受けて、予め設定しておいた「パスル信号頻度と、光量との関係式」に基づいて、光量を算出するとともに、表示画面158に当該光量の値を表示する。また、積算表示装置156は、一定時間内に照度センサ152で測定した光量の積算値も算出できるようになっている。
【0070】
図14に戻り、このような光量計150を用いて光源12から露光面Aに照射される光量を以下のように測定する。
【0071】
光源12を点灯後、照度センサ152を待機位置から測定開始位置に移動させる。照度センサ152のセンシング位置は、露光面Aから少し光源12に近い、ワークXの表面位置に一致させている。
【0072】
然る後、照度センサ152を測定開始位置からスキャン方向に測定終了位置まで水平移動させていく。この間、照度センサ152の移動速度は一定であることが好ましい。
【0073】
スキャン期間中、照度センサ152は光源12から受ける光の照度に応じたアナログ信号を連続的に送信し続け、この連続的なアナログ信号を受け取った変換器154も当該アナログ信号の大きさに応じた頻度のパルス信号を発信し続ける。
【0074】
これにより、スキャン期間中に発信されたパルス信号の数が積算表示装置156で積算されることになり、この積算パルス信号数に基づいて、スキャン期間中に照度センサ152が受けた積算光量を算出することができる。
【0075】
このように、ノイズが乗りやすく精度が悪いことから微小な変化を捉えにくいアナログ信号をパルス信号に変換することにより、比較的発光量が小さいLED16を用いた光源12であっても正確に光量を測定することができる。
【0076】
さらに言えば、露光対象部(ワーク)Xの露光作業では、当該ワークXをどれくらいの照度で照らすことができるかではなく、ワークXに対して光源12からどれくらいのエネルギー量(=光量)を与えられるかが重要である。このため、変形例5の光量計150であれば、スキャン期間中にワークXに与えられるエネルギー量(=光量)をより正確に測定することができる。
【0077】
(変形例6)
なお、基準偏光素子120を用いる全ての変形例においていえることであるが、基準偏光素子120を透過した光を照度計110で受けて照度を測定する場合、光源12からの光はこれら照度計110や基準偏光素子120の受光面に対して第1の角度θ1をもって入射する。このため、露光面Aを見おろす向きにおいて照度計110の受光面中心の位置と基準偏光素子120の受光面中心の位置とが互いに一致していると
図16に示すように光源12からの光の取りこぼし(ロス)が発生する。
【0078】
そこで、露光面Aを見おろす向きで見たときに照度計110の受光面中心の位置に対して基準偏光素子120の受光面中心の位置をずらしておく、具体的には、
図17に示すように、光源12からの光軸CLが照度計110の受光面中心および基準偏光素子120の受光面中心を通るようにずらしておくことにより、光源12からの光の取りこぼし(ロス)を最小限することができる。
【0079】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0080】
10…光照射装置、12…光源、13…光源素子、14…偏光素子、16…LED、18…ワイヤーグリッドの形成面
30…光学フィルター
40…カバー部材、42…保持枠
100…測定機構、110…照度計、112…照度計本体、114…照度測定子、120…基準偏光素子、130…照度計移動機構、140…照度計角度設定機構、150…光量計、152…照度センサ、154…変換器、156…積算表示装置
X…ワーク(露光対象物)、Y…測定位置、A…露光面、L…露光用光、CL…(LED16の)光軸、θ1…第1の角度、S…(カバー部材40とワイヤーグリッドの形成面18との間の)空間