(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】半芳香族ポリアミドフィルムおよびそれより得られる積層体
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20221213BHJP
B32B 15/088 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
B32B15/088
(21)【出願番号】P 2022534624
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2022014406
【審査請求日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2021061182
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021208336
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青山 雄輝
(72)【発明者】
【氏名】岡部 貴史
(72)【発明者】
【氏名】山根 周平
(72)【発明者】
【氏名】山中 友子
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-132744(JP,A)
【文献】特開2013-189495(JP,A)
【文献】特開2009-079210(JP,A)
【文献】特開2012-082392(JP,A)
【文献】国際公開第2015/147121(WO,A1)
【文献】特開平10-235730(JP,A)
【文献】特開2021-103757(JP,A)
【文献】特開2017-39847(JP,A)
【文献】特開2021-127196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C55/00-55/30
61/00-61/10
B32B1/00-43/00
C08J5/00-5/02
5/12-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を60モル%以上含み、ジアミン成分として炭素数9または10の脂肪族ジアミンを60モル%以上含む半芳香族ポリアミドから構成され、
20~125℃条件下で測定される幅方向の平均線膨張係数が-90~0ppm/℃であることを特徴とする半芳香族ポリアミドフィルム。
【請求項2】
20~250℃条件下で測定される幅方向の平均線膨張係数が-100~0ppm/℃であることを特徴とする請求項1記載の半芳香族ポリアミドフィルム。
【請求項3】
20℃、90%RH条件下、48時間後の幅方向の吸湿伸び率が1.0%以下であることを特徴とする請求項1または2記載の半芳香族ポリアミドフィルム。
【請求項4】
ヘーズが10%以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の半芳香族ポリアミドフィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の半芳香族ポリアミドフィルムとガラス板とを含むことを特徴とする積層体。
【請求項6】
デュポン衝撃試験において、ガラス板が破壊された際の落球(66.8g)落下距離が500mm以上であることを特徴とする請求項5記載の積層体。
【請求項7】
請求項1~4のいずれかに記載の半芳香族ポリアミドフィルムと金属板とを含むことを特徴とする積層体。
【請求項8】
請求項5~7のいずれかに記載の積層体を用いた画像表示装置。
【請求項9】
請求項1~4のいずれかに記載の半芳香族ポリアミドフィルムを製造するための方法であって、
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を60モル%以上含み、ジアミン成分として炭素数9または10の脂肪族ジアミンを60モル%以上含む半芳香族ポリアミドの未延伸フィルムを二軸延伸した後に、熱固定処理する工程を含み、前記熱固定処理を、フィルムの進行方向に2以上の領域に区切られ、かつ、フィルムの進行方向に温度が高くなる温度勾配が設けられた熱固定ゾーンでおこなうことを特徴とする半芳香族ポリアミドフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半芳香族ポリアミドフィルムおよびそれより得られる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL表示装置、太陽電池、薄膜二次電池等における電子デバイスは、薄型化、軽量化が進行している。これら電子デバイスに用いられる回路基板、ディスプレイ材料は、ともに薄膜化が求められており、また、薄型化にともない、可撓性等の、外部応力に対する耐久性についても、要求度が高まっている。
特許文献1には、平均線膨張係数を小さくすることで、回路基板とした際の寸法精度を高めたポリアミドフィルムが開示されている。
特許文献2には、リフローはんだ温度領域を含む広い温度範囲で、平均線膨張係数を小さくし、特定屈折率に制御した半芳香族ポリアミドフィルムが開示されている。
特許文献3には、長手方向の熱収縮率を低減するとともに、幅方向の引張破断伸度を向上させた半芳香族ポリアミドフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2012-515244号公報
【文献】特開2017-39847号公報
【文献】国際公開第2020/230806号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のポリアミドフィルムは、耐熱性、高温下での寸法安定性は高められたが、積層体とした際の適性が必ずしも十分とはいえなかった。例えば、半芳香族ポリアミドフィルムとガラス板とを貼り合わせた積層体は、ディスプレイ部品として用いた場合、貼り合わせ面にシワやたるみが生じ、結果的にディスプレイ部品に反りや歪みが生じる問題点があった。
特許文献2記載の半芳香族ポリアミドフィルムは、平均線膨張係数を小さくし、特定屈折率に制御することで、フレキシブルプリント回路(FPC)用の基板フィルムやカバーレイフィルムとしての適性を高められたが、ガラス板との積層体においては、耐衝撃性や、反り等の外観において、十分でないことがあった。
特許文献3記載の半芳香族ポリアミドフィルムは、長手方向の熱収縮率が十分に低減されるとともに、幅方向の引張破断伸度が十分に向上したが、ガラス板との積層体においては、耐衝撃性が十分でないことがあった。
本発明の課題は、ガラス板と貼り合わせた積層体において、耐衝撃性の向上と、反り等の外観不良の低減とを図ることが可能であり、また、金属と貼り合わせた積層体において、反りや歪み等の外観不良の低減を図ることが可能な半芳香族ポリアミドフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の特性を満足する半芳香族ポリアミドフィルムを用いることで、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムは、
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を60モル%以上含み、ジアミン成分として炭素数9または10の脂肪族ジアミンを60モル%以上含む半芳香族ポリアミドから構成され、
20~125℃条件下で測定される幅方向の平均線膨張係数が-90~0ppm/℃であることを特徴とする。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムによれば、20~250℃条件下で測定される幅方向の平均線膨張係数が-100~0ppm/℃であることが好ましい。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムによれば、20℃、90%RH条件下、48時間後の幅方向の吸湿伸び率が1.0%以下であることが好ましい。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムによれば、ヘーズが10%以下であることが好ましい。
本発明の積層体は、上記半芳香族ポリアミドフィルムとガラス板とを含むものである。
本発明の積層体によれば、デュポン衝撃試験において、ガラス板が破壊された際の落球(66.8g)落下距離が500mm以上であることが好ましい。
本発明の積層体は、上記半芳香族ポリアミドフィルムと金属板とを含むものである。
本発明の画像表示装置は、上記積層体を用いたものである。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムの製造方法は、上記の半芳香族ポリアミドフィルムを製造するための方法であって、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を60モル%以上含み、ジアミン成分として炭素数9または10の脂肪族ジアミンを60モル%以上含む半芳香族ポリアミドの未延伸フィルムを二軸延伸した後に、熱固定処理する工程を含み、前記熱固定処理を、フィルムの進行方向に2以上の領域に区切られ、かつ、フィルムの進行方向に温度が高くなる温度勾配が設けられた熱固定ゾーンでおこなうことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ガラス板と貼り合わせた積層体において、耐衝撃性の向上と、反り等の外観不良の低減とを図ることが可能な半芳香族ポリアミドフィルムを提供することができる。また、本発明によれば、金属と貼り合わせた積層体において、反りや歪み等の外観不良の低減を図ることが可能な半芳香族ポリアミドフィルムを提供することができる。
このような積層体を用いた回路基板、ディスプレイ材料は、特に薄型化、軽量化を求めたモバイル機器等の用途で好適に使用が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
<半芳香族ポリアミドフィルムの特性>
(平均線膨張係数)
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムは、20~125℃条件下で測定される幅方向の平均線膨張係数が-90~0ppm/℃であることが必要であり、-70~-10ppm/℃であることが好ましく、-60~-10ppm/℃であることがより好ましく、-40~-20ppm/℃であることが最も好ましい。
一般的な積層体用フィルムには、寸法安定性向上のため、平均線膨張係数を小さくすることが求められている。一方、本発明の半芳香族ポリアミドフィルムは、平均線膨張係数がマイナスの数値であり、つまり、収縮するフィルムである。
通常、電気、電子部品を扱う分野では、ガラス板に積層される被着体は、貼り合せ工程の乾燥において、80~130℃程度の温度雰囲気にさらされる。本発明の半芳族ポリアミドフィルムは、20~125℃条件下で測定される平均線膨張係数が所定の範囲であるため、ガラス板との積層体は、反り等の外観不良が低減されるばかりでなく、ガラス板に対する衝撃に対しても、衝撃エネルギーが緩和されるので、積層体は耐衝撃性が向上する傾向がある。
【0009】
半芳香族ポリアミドは、元来強靭性を有する材料であるが、平均線膨張係数がマイナスであることで、得られるフィルムは、収縮応力を有するものとなる。したがって、ガラス板との積層体においては、平均線膨張係数がマイナスであるフィルムは、ガラス板の変形に対して反発する力を生み出すことができる。収縮応力が大きい、すなわち平均線膨張係数がマイナスに大きいフィルムは、積層体の耐衝撃性を向上させる。一方、平均線膨張係数の絶対値が大きいフィルムは、積層体の反りや変形が生じやすくなることを意味する。
【0010】
本発明においては、幅方向の平均線膨張係数を重要視する。フィルムは、通常、フィルムロールとして取り扱われ、また積層等においては、ロールtoロールで加工が行われるため、ロール間での機械的な張力調整を行うことで、フィルムの伸縮制御が容易である。しかしながら、フィルムの幅方向は、長手方向に比べ、伸縮制御が難しく、上記した積層体とした場合の反りや変形を低減するためには、フィルムの幅方向は、本発明で規定する特定の平均線膨張係数を有することが必要である。なお、本発明においては、フィルムの長手方向の平均線膨張係数を特に限定しないが、後述する方法で製造されたフィルムであれば、長手方向の特性は、幅方向と大きくは変わらない特性を有している。
【0011】
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムは、20~250℃条件下で測定される幅方向の平均線膨張係数が-100~0ppmであることが好ましく、-90~0ppmであることがより好ましく、-70~0ppmであることがさらに好ましい。通常、電気、電子部品を扱う分野では、リフロー(180~250℃)環境下で半田付け処理を行う。本発明の半芳香族ポリアミドフィルムは、20~250℃条件下で測定される平均線膨張係数が、所定の範囲であることで、積層体は、例えば、リフロー半田のような高温条件にさらされる場合であっても、カールや歪み等の変形の懸念、または浮きや剥離の懸念が低減されたものとなる。
【0012】
(吸湿伸び率)
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムは、20℃、40%RHで前処理された後、20℃、90%RH条件下、48時間後の幅方向の吸湿伸び率が1.0%以下であることが好ましく、0.8%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。一般的に、積層体用フィルムは、寸法安定性が求められており、吸湿伸び率を小さくすることが求められている。本発明においては、吸湿伸び率についても、前述の平均線膨張係数と同様の理由で、幅方向の吸湿伸び率を重要視する。
【0013】
(ヘーズ)
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムは、JIS K7136に準じて測定されるヘーズが、10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましい。半芳香族ポリアミドフィルムは、ヘーズが10%以下であることで、フィルム単体での透明性が優れるばかりでなく、積層体とした場合の視認性にも優れる。特にガラス板と積層する場合は、視認性の観点から、半芳香族ポリアミドフィルムのヘーズは5%以下であることが好ましい。
【0014】
(厚さ)
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムの厚さは、特に限定されないが、透明性と強度の観点から、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、25μm以上であることがさらに好ましく、また、150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、75μm以下であることがさらに好ましい。
【0015】
<半芳香族ポリアミド>
本発明において、半芳香族ポリアミドフィルムを構成する半芳香族ポリアミドは、ジカルボン酸成分とジアミン成分とから構成され、ジカルボン酸成分またはジアミン成分中に芳香族成分を有するものである。
【0016】
ジカルボン酸成分を構成する芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸(TPA)、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、中でも、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸が好ましい。なお、ナフタレンジカルボン酸は、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、1,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸として例示されるものである。
【0017】
ジカルボン酸成分は、テレフタル酸を60モル%以上含有することが好ましく、70モル%以上含有することがより好ましく、85モル%以上含有することがさらに好ましい。テレフタル酸の含有量が60モル%未満の場合には、得られるフィルムは、耐熱性、低吸水性が低下することがある。
ジカルボン酸成分は、本発明の効果を損なわない範囲で、芳香族ジカルボン酸以外のジカルボン酸を含有してもよい。他のジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
【0018】
ジアミン成分を構成する脂肪族ジアミンとしては、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン(NDA)、1,10-デカンジアミン(DDA)、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミンの直鎖状脂肪族ジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン(MODA)、4-メチル-1,8-オクタンジアミン、5-メチル-1,9-ノナンジアミン、2,2,4-/2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2-メチル-1,6-ヘキサンジアミン、2-メチル-1,7-ヘプタンジアミンなどの分岐鎖状脂肪族ジアミンが挙げられる。
【0019】
ジアミン成分は、炭素数6~12の脂肪族ジアミンを主成分として含むことが好ましく、炭素数9~12の脂肪族ジアミンを主成分として含むことがより好ましく、炭素数9または10の脂肪族ジアミンを主成分として含むことがさらに好ましい。
ジアミン成分における炭素数6~12の脂肪族ジアミンの含有量は、60モル%以上であることが好ましく、75モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましい。炭素数6~12の脂肪族ジアミンの含有量が60モル%以上であると、得られるフィルムは、耐熱性と生産性を両立することができる。炭素数6~12の脂肪族ジアミンは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、2種以上を併用する場合、含有量はそれらの合計とする。
【0020】
ジアミン成分は、本発明の効果を損なわない範囲で、脂肪族ジアミン以外のジアミンを含有してもよい。他のジアミンとしては、例えば、イソホロンジアミン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミンなどの脂環式ジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミンなどの芳香族ジアミンが挙げられる。
【0021】
半芳香族ポリアミドは、本発明の効果を損なわない範囲で、ε-カプロラクタム、ζ-エナントラクタム、η-カプリルラクタム、ω-ラウロラクタムなどのラクタム類が共重合されてもよい。
【0022】
半芳香族ポリアミドを構成するモノマーの種類および共重合比率は、得られる半芳香族ポリアミドの融点(Tm)が270~350℃の範囲になるように選択することが好ましい。半芳香族ポリアミドは、Tmが前記範囲であることにより、フィルムに加工する際の熱分解を効率よく抑制することができる。Tmが270℃未満であると、得られるフィルムは、耐熱性が不十分となる場合がある。一方、Tmが350℃を超えると、半芳香族ポリアミドは、フィルム製造時に熱分解が起こる場合がある。
【0023】
半芳香族ポリアミドの極限粘度は、0.8~2.0dL/gであることが好ましく、0.9~1.8dL/gであることがより好ましい。半芳香族ポリアミドは、極限粘度が0.8dL/g以上であると、機械的強度に優れたフィルムを作製することができるが、2.0dL/gを超えると、フィルムを生産することが困難となる場合がある。
【0024】
半芳香族ポリアミドは、重合触媒や末端封止剤が含まれてもよい。末端封止剤としては、例えば、酢酸、ラウリン酸、安息香酸、オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリンが挙げられる。また、重合触媒としては、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、またはそれらの塩等が挙げられる。
【0025】
本発明においては、前記耐熱性と加工性のバランスの観点から、半芳香族ポリアミドとして、1,6-ヘキサンジアミンとTPAとからなるポリアミド6T(Tm320℃、Tg125℃)、NDAおよび/またはMODAとTPAとからなるポリアミド9T(Tm302℃、Tg125℃)、DDAとTPAとからなるポリアミド10T(Tm316℃、Tg150℃)、NDAおよび/またはMODAとナフタレンジカルボン酸とからなるポリアミド9Nが好ましく、本願で規定する平均線膨張係数と吸湿伸び率の制御が容易という観点からポリアミド9Tを用いることが特に好ましい。なお、耐熱性の指標として各ポリアミドが有する融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)を参照することができる。
【0026】
<半芳香族ポリアミドフィルムの製造>
(原料)
半芳香族ポリアミドは、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、酸クロライドとジアミン成分とを原料とする溶液重合法または界面重合法(A法)、あるいはジカルボン酸成分とジアミン成分とを原料として低重合物を作製し、該低重合物を溶融重合または固相重合により高分子量化する方法(B法)、ジカルボン酸成分とジアミン成分とを原料として塩および低重合物の破砕混合物を生成しこれを固相重合する方法(C法)、ジカルボン酸成分とジアミン成分とを原料として塩を生成しこれを固相重合する方法(D法)などが挙げられる。中でも、C法およびD法が好ましく、D法がより好ましい。C法およびD法は、B法に比べて、塩および低重合物の破砕混合物や塩を低温で生成することができ、また、塩および低重合物の破砕混合物や、塩の生成時に多量の水を必要としない。そのため、ゲル状体の発生を低減でき、フィッシュアイを低減することができる。
【0027】
半芳香族ポリアミドとして、市販品を好適に使用することができる。このような市販品としては、例えば、クラレ社製の「ジェネスタ(登録商標)」、ユニチカ社製「ゼコット(登録商標)」、三菱エンジニアリングプラスチック社製「レニー(登録商標)」、三井化学社製「アーレン(登録商標)」、BASF社製「ウルトラミッド(登録商標)」などが挙げられる。
【0028】
半芳香族ポリアミドフィルムの原料は、バージン原料のみを使用したものでもよく、また、半芳香族ポリアミドフィルムを製造する際に生成する規格外のフィルムや、耳トリムとして発生するスクラップ混合物や、該スクラップ混合物にバージン原料を加えたものでもよい。原料の混合は、公知の装置でドライブレンドする方法、一軸または二軸の押出機を用いて溶融混練し混合する練り込み法等の公知の方法で行うことができる。
【0029】
(添加剤)
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムは、フィルムとしての諸特性を損なわない範囲内で、必要に応じて、滑剤、チタンなどの顔料や染料などの着色剤、着色防止剤、熱安定剤、ヒンダードフェノール、リン酸エステルや亜リン酸エステルなどの酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系化合物などの耐候性改良剤、臭素系やリン系の難燃剤、可塑剤、離型剤、タルクなどの強化剤、改質剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、防曇剤、各種ポリマー樹脂等の添加剤を含有してもよい。
滑り性を良好なものとする滑剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム等の無機系粒子を挙げることができる。また、有機系微粒子として、例えば、アクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子などを挙げることができる。滑剤の平均粒径は、0.05~5.0μmであることが好ましい。また滑剤の含有量は0.3質量%以下であることが好ましい。滑剤の平均粒径や含有量は、摩擦特性、光学特性、その他のフィルムに対する要求特性に応じて選択することができる。
【0030】
上記添加剤を半芳香族ポリアミドフィルムに含有させる方法として、下記の方法を挙げることができる。
(i)半芳香族ポリアミドの重合時に添加する方法
(ii)高濃度の添加剤を半芳香族ポリアミドと溶融混練したペレットを準備する、マスターバッチ法
(iii)フィルム製膜時に半芳香族ポリアミドに直接添加し、押出機で溶融混練する方法
(iv)フィルム製膜時に押出機に直接添加し、溶融混練する方法
【0031】
(押出)
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムの製造において、二軸延伸工程に用いる半芳香族ポリアミドの未延伸フィルムは、半芳香族ポリアミドを押出機内にて280~340℃の温度で3~15分間溶融混合した後、Tダイを通じてシート状に押出し、このシート状物を、30~40℃に温度調節された冷却ロール上に密着させて冷却することで製造することができる。
【0032】
(延伸)
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムは、未延伸フィルムを二軸延伸することにより得られる。延伸により、半芳香族ポリアミドは配向結晶化される。
延伸方法は特に限定されないが、フラット式逐次二軸延伸法、フラット式同時二軸延伸法、チューブラ法等を用いることができる。なかでも、厚み精度が良好なフィルムが得られることから、フラット式逐次二軸延伸法、フラット式同時二軸延伸法が最適である。
フラット式同時二軸延伸法を採用するための延伸装置としては、例えば、スクリュー式テンター、パンタグラフ式テンター、リニアモーター駆動クリップ式テンターが挙げられる。
【0033】
延伸倍率は、長手方向(MD)に1.5~3.5倍、幅方向(TD)に1.5~4.5倍であることが好ましく、長手方向に1.5~3.0倍、幅方向に1.5~3.5倍であることがより好ましい。
逐次二軸延伸の場合、長手方向の延伸倍率が3.5倍を超えると、得られる延伸フィルムは、結晶化が進行しすぎてしまい、幅方向の延伸性が低下することがある。また幅方向の延伸ができた場合においても、得られる延伸フィルムは、長手方向の引張破断伸度低下や、透明性が低下することがある。
同時二軸延伸の場合、長手方向の延伸倍率が3.5倍を超えると、得られる延伸フィルムは、熱収縮率が高くなり、寸法安定性が低下することがある。
一方、幅方向の延伸倍率が4.5倍を超えると、得られる延伸フィルムは、熱収縮率が高くなり、寸法安定性が低下し、さらに引張破断伸度が低下することがある。
長手方向ならびに幅方向の延伸倍率が1.5倍未満であると、得られる延伸フィルムは、延伸斑が起こりやすく、厚み斑の発生や、平面性が低下することがある。
【0034】
延伸速度は、特に限定されないが、フィルムの破断を避けるためには、長手方向と幅方向の延伸歪み速度がいずれも400%~12000%/分であることが好ましい。
延伸温度は、半芳香族ポリアミドのTg以上であることが好ましく、Tgを超えかつ(Tg+50℃)以下であることがより好ましい。延伸温度がTg未満であると、フィルムは、破断しやすく、安定した製造を行うことができず、反対に(Tg+50℃)を超えると、フィルムに延伸斑が生じる場合がある。
【0035】
(熱固定)
半芳香族ポリアミドフィルムは、上記の延伸を行った後、延伸時に使用したクリップでフィルムを把持したまま、熱固定処理を行うことが好ましい。熱固定処理を行うことで、得られるフィルムは、熱負け斑が発生することなく、熱収縮率を低減することができる。
熱固定処理温度は、260~285℃であることが好ましく、265~280℃であることがより好ましく、270~280℃であることがさらに好ましい。熱固定処理温度が260℃未満であると、得られるフィルムは、熱収縮率が高くなる。熱固定処理温度が285℃を超えると、得られるフィルムは、吸湿伸び率が高くなり、引張破断伸度も低下する。また、場合によっては熱固定処理時に破断が起こり、二軸延伸フィルムを得ることが困難となる。
【0036】
本発明においては、フィルムの熱固定処理を、フィルムの進行方向に2以上の領域に区切られ、かつ、フィルムの進行方向に温度が高くなる温度勾配が設けられた熱固定ゾーンでおこなうことが必要である。熱固定ゾーンにおける温度勾配は、フィルムの進行方向に3℃以上上昇することが好ましく、5℃以上上昇することがより好ましい。熱固定ゾーンが2領域に区切られた場合、前半部の温度が260~280℃であることが好ましく、260~275℃であることがより好ましい。また、後半部の温度は265℃~285℃であることが好ましく、270~280℃であることがより好ましい。温度勾配が設けられた熱固定ゾーンで熱固定することで、半芳香族ポリアミドフィルムは、平均線膨張係数を本発明で規定する範囲とすることが容易となるばかりか、平均線膨張係数と吸湿伸び率とをバランスよく規定の範囲とすることが可能となる。
【0037】
熱固定処理は、上記温度条件下、1~60秒間行うことが好ましく、5~40秒間であることがより好ましく、8~30秒間であることがさらに好ましい。熱固定処理が1秒未満であると、得られるフィルムは熱固定が不十分であり、60秒を超えると、半芳香族ポリアミドの結晶化が促進され、得られるフィルムは、本発明で規定する平均線膨張係数を達成することが困難となる場合がある。
2以上の領域に区切られた各熱固定ゾーンにおける熱固定時間は、熱固定時間の総計が上記範囲内であればよいが、各熱固定ゾーンでの熱固定時間はそれぞれ3秒以上であることが好ましい。各熱固定ゾーンの熱固定処理時間の比率は、熱固定処理装置のゾーン長に依存するが、概ね均等な時間となるように設定すればよい。
熱固定処理方法としては、例えば、熱風を吹き付ける方法、赤外線を照射する方法、マイクロ波を照射する方法等の公知の方法が挙げられる。中でも、均一に精度よく加熱できることから、熱風を吹き付ける方法が好ましい。
【0038】
(弛緩)
熱固定処理を行った後のフィルムは、クリップに把持されたまま、熱固定処理工程における最終の熱固定処理温度と同じ温度において、弛緩処理を行うことが好ましい。弛緩処理は、長手方向に1.0~8.0%、幅方向に1.0~12.0%の弛緩率で行うことが好ましい。長手方向および幅方向の弛緩率が1.0%未満であると、熱収縮率が十分に低減したフィルムを得ることができないことがある。また、長手方向の弛緩率が8.0%を超えると、または幅方向の弛緩率が12.0%を超えると、得られる二軸延伸フィルムは、長手方向または幅方向の吸湿伸び率が高くなることがある。また、長手方向の弛緩率が8.0%を超えるように、延伸前のクリップ間距離を広くすると、得られるフィルムの機械的強度は、クリップ把持部と非把持部間での変動が増大しやすい。
長手方向に1.0~8.0%、幅方向に1.0~12.0%の弛緩率で弛緩処理を行うことで、熱収縮率が低減し、寸法安定性が高められたフィルムを得ることができる。また弛緩率を低く設定することで、得られる二軸延伸フィルムの吸湿伸び率は低くなる。
なお、同時二軸延伸法および逐次二軸延伸法においては、上記弛緩処理は、インラインで長手方向、幅方向に対し、同時に行うことが可能である。
【0039】
(アニール)
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムは、フィルムの残留応力を取り除く目的でアニール処理を行ってもよい。二軸延伸したフィルムを、インラインで幅方向に弛緩処理した後、一旦巻取り、オフラインにて低張力下、所定温度に設定した乾燥炉内を通過させることで、長手方向の弛緩処理を行うこともできる。
【0040】
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムを製造する装置においては、シリンダー、バレルの溶融部、計量部、単管、フィルター、Tダイ等の表面に対して、樹脂の滞留を防ぐため、その表面の粗さを小さくする処理が施されていることが好ましい。表面の粗さを小さくする方法としては、例えば、極性の低い物質で改質する方法が挙げられる。あるいは、その表面に窒化珪素やダイヤモンドライクカーボンを蒸着させる方法が挙げられる。
【0041】
得られた半芳香族ポリアミドフィルムは、枚葉とされてもよいし、巻き取りロールに巻き取られることによりフィルムロールの形態とされてもよい。各種用途への利用に際しての生産性の観点から、フィルムロールの形態とすることが好ましい。フィルムロールとされた場合は、所望の幅にスリットされてもよい。
【0042】
半芳香族ポリアミドフィルムは、1種の層からなる単層のフィルムでも、2種以上の層を積層してなる多層構造でもよい。多層構造とする場合、例えば2層構造のフィルムでは、2層中任意の1層に滑剤を含有させ、3層構造のフィルムでは、3層中両表面に位置する層に各々滑剤を含有させることができる。含有させる滑剤の種類、含有量は各々独立して設計が可能である。このような多層構造とすることで、半芳香族ポリアミドフィルムのそれぞれの面の表面粗さを独立に制御することができる。
【0043】
<積層体>
本発明の積層体は、半芳香族ポリアミドフィルムとガラス板とを含むものや、半芳香族ポリアミドフィルムと金属板とを含むものである。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムには、ガラス、金属板の他、金属酸化物等の無機物、他種ポリマー、紙、織布、不織布、木材等が積層されてもよい。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムは、ポリアミド本来の耐熱性に加え、寸法安定性にも優れるため、他の基材と積層することで各種電気、電子部品用途で好適に使用が可能である。中でも、光学基板用途としてガラス板や透明ポリイミド等の透明基材との積層を行ったり、回路基板用途として銅箔、銅板等の金属材料との積層を行ったりすることで、反りや歪みを抑制した積層体とすることができる。
【0044】
積層体の基材に求められる特性としては、強度、寸法安定性、張り合わせの密着性等が挙げられ、用途や目的によって決定される。例えば、ガラス板との積層体であれば、ガラス板が破損しない程度の強度が必要であり、金属板との積層体であれば、反りやシワを防止するために寸法安定性や半芳香族ポリアミドフィルムと金属板の密着性が求められる。
【0045】
(ガラス板)
半芳香族ポリアミドフィルムとの積層体に用いられるガラス板は、任意の適切なものが採用され、ガラスフィルムと称される場合がある。
ガラス板の厚みは、10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましい。一方、ガラス板の厚みは、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましい。ガラス板は、厚みが10μm以上であると、機械的強度の極度の低下を防ぎ、一方、200μm以下であると、ガラス単体での製造効率を低下させず、ハンドリング性に優れる。
【0046】
ガラス板の組成は特に限定されず、例えばソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス等ほぼすべてのガラス組成のものが適用でき、強化されたものや、表面処理等の二次加工を施したものも適用可能であり、いずれも用途により使い分けられる。
二次加工としては例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などによるカップリング剤処理、酸処理、アルカリ処理、オゾン処理、イオン処理などの化成処理、プラズマ処理、グロー放電処理、アーク放電処理、コロナ処理などの放電処理、紫外線処理、X線処理、ガンマ線処理、レーザー処理などの電磁波照射処理、その他火炎処理などの表面処理などの各種表面処理があげられる。特に、後述する接着層との密着性を向上させる観点から、接着層とは別にシランカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。
市販されているガラス板(ガラスフィルム)の具体例としては、無アルカリガラスである日本電気硝子社製の商品名「OA-10G」等が挙げられる。
【0047】
(金属板)
半芳香族ポリアミドフィルムとの積層体に用いられる金属板としては、特に限定されず、各種金属からなる金属板のほか、電解銅箔、圧延銅箔、アルミニウム箔、ステンレス鋼箔等の金属箔が挙げられ、中でも、導電性、回路加工性の観点から、電解銅箔、圧延銅箔が好ましい。
金属板の厚さは、積層体の用途に依存するため特に限定されないが、1~35μmであることが好ましく、9~18μmであることがより好ましい。金属板は、厚さが1μm未満であると、回路基板を作製した際にピンホールや破れ等で回路欠損を引き起こしやすくなる傾向にあり、厚さが35μmを超えると、半芳香族ポリアミドフィルムとの貼り合せ温度が高くなり、生産性が低下する傾向にある。
また、金属板の表面には、亜鉛メッキ、クロムメッキ等による無機表面処理、シランカップリング剤等による有機表面処理を施してもよい。
市販されている銅箔の具体例としては、JX金属社製 商品名「圧延銅箔BHY」、福田金属社製 商品名「圧延銅箔ROFL」等が挙げられる。
【0048】
半芳香族ポリアミドフィルムと各種基材との積層体は、OCA(Optical Clear Adhesive)をはじめとする公知の接着剤を用いて貼り合わせることで作製が可能である。
【0049】
積層体の作製の際には、半芳香族ポリアミドフィルムと各種基材との密着性を向上させる観点から、接着層が必要に応じて、半芳香族ポリアミドフィルムと基材とが接する面に設けられる。
接着層としては、感熱接着剤や加圧接着剤などで構成される層が好ましく挙げられ、必要に応じて加熱及び加圧によって密着性を発現するヒートシール層であることが好ましい。
接着層を構成する樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、スチレン-アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などの中から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
接着層の厚さは、半芳香族ポリアミドフィルムとの優れた接着性を得る観点から、30μm以下であることが好ましく、0.1~20μmがより好ましい。また接着層を設ける際、本発明の趣旨を逸脱しない限り、OCR(Optical Clear Resin)やコート液状の物を塗布してもよい。
【0050】
半芳香族ポリアミドフィルムとガラス板を貼り合せる方法としては、特に限定されず、例えば、ラミネーターロールを用いたロールtoロール方式や、プレス機を用いたバッチ方式が挙げられ、適宜必要に応じた温度条件や圧力条件が選択される。
【0051】
(樹脂層)
半芳香族ポリアミドフィルムには、用途に応じて樹脂層を積層してもよい。樹脂層を設ける方法として、二軸延伸された半芳香族ポリアミドフィルムに対し、樹脂層形成用塗剤を塗布する方法(オフライン法)、二軸延伸前の半芳香族ポリアミドフィルムに対し、樹脂層形成用塗剤を塗布した後、延伸および熱処理する方法(インライン法)が挙げられ、いずれの方法も採用できる。また、基材に樹脂層を設けたものを半芳香族ポリアミドフィルムと貼り合せることにより樹脂層を設ける方法や、離型フィルムなどの基材フィルムの上に樹脂層を形成したものを半芳香族ポリアミドフィルムと貼り合せたのち離型フィルムを剥離することで樹脂層を転写させるなどの方法を採用することもできる。
【0052】
インライン法は、半芳香族ポリアミドフィルムの製造工程中に樹脂層形成用塗剤を塗布することにより、半芳香族ポリアミドフィルム表面の配向結晶化の程度が小さい状態で樹脂層形成用塗剤を塗布することができるため、半芳香族ポリアミドフィルムと樹脂層との密着性が向上する。また、半芳香族ポリアミドフィルムが緊張した状態で、樹脂層に、より高温の熱処理ができることで、半芳香族ポリアミドフィルムの品位を低下させることなく、樹脂層の密着性を向上させることができる。
熱処理温度は、半芳香族ポリアミドフィルムの熱セット温度である255℃以上とすることができ、この温度において、半芳香族ポリアミドフィルムとともに樹脂層中で、配向結晶化が進行する。また、形成された樹脂層中で、樹脂と架橋剤とが十分反応し、樹脂層は、それ自体の被膜強度が高まり、半芳香族ポリアミドフィルムとの密着性が高まるとみられる。
さらに、半芳香族ポリアミドフィルムの製造工程中に樹脂層形成用塗剤を塗布するインライン法は、オフラインでの塗布に比べると、製造工程を簡略化することができるばかりか、樹脂層の薄膜化により、コスト面でも有利である。
【0053】
半芳香族ポリアミドフィルムの製造において同時二軸延伸法を採用する場合には、インライン法は、未延伸フィルムに、樹脂層形成用塗剤を塗布、乾燥したのち、半芳香族ポリアミドフィルムを構成する樹脂のTg~Tgより50℃高い温度の範囲で、長手および幅方向にそれぞれ2~4倍程度の延伸倍率となるように二軸延伸する。フィルムを同時二軸延伸機に導く前に、1~1.2倍程度の予備縦延伸を施しておいてもよい。
また、逐次二軸延伸法を採用する場合には、インライン法は、一軸方向に延伸された半芳香族ポリアミドフィルムに、樹脂層形成用塗剤を塗布し、その後、半芳香族ポリアミドフィルムを前記方向と直交する方向にさらに延伸することが、簡便さや操業上の理由から好ましい。
【0054】
樹脂層形成用塗剤を半芳香族ポリアミドフィルムに塗布する方法としては、公知の方法が採用できる。例えば、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法などが採用できる。これらの方法により半芳香族ポリアミドフィルムの表面に塗剤を均一に塗布することができる。
樹脂層形成用塗剤を半芳香族ポリアミドフィルムに塗布した後、乾燥熱処理することにより、水性媒体を除去することができ、緻密な塗膜からなる樹脂層を半芳香族ポリアミドフィルムに密着させた積層体を得ることができる。
【0055】
半芳香族ポリアミドフィルムの表面は、他素材との接着性を良好にするために、コロナ処理、プラズマ処理、酸処理、火炎処理等を施してもよい。
【0056】
(積層体の用途)
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムを用いた積層体は、電子材料、光学部品やその他の用途に使用することができ、特に限定されない。具体的には、太陽電池基板、液晶板、導電性フィルム、表示機器等のための保護板;LED実装基板、フレキシブルプリント配線用の基板、フレキシブルフラットケーブル等の電子基板材料;フレキシブルプリント配線用のカバーレイ等が挙げられる。ガラスとの積層体は、ガラスと同等の透明性を有し、ガラス板より強度が向上していることから、画像表示装置等におけるガラス層として有用である。金属との積層体は、耐熱性や金属密着性が優れていることから、フレキシブル基板等の基材フィルムとしても有用である。上記積層体は、単体で使用しても、更に他のフィルム等と組み合わせて使用してもよい。
【0057】
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、上記積層体を用いたものである。本発明の画像表示装置の具体例としては、本発明の積層体を備えた液晶ディスプレイ、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー、プラズマディスプレイ及びマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)ディスプレイ等が挙げられる。画像表示装置を構成する部材の例としては、偏光板、液晶表示パネル、有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネル、プラズマ表示パネル、タッチパネル及び保護パネル等からなる群より選択される何れかの部材を挙げることができる。これら用途は一例であり、本発明における積層体の用途をこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0059】
1.評価方法
実施例、比較例で得られた半芳香族ポリアミドフィルム、または積層体は、下記の方法で測定し評価した。
【0060】
(1)半芳香族ポリアミドの極限粘度
濃硫酸中、30℃にて、0.05、0.1、0.2、0.4g/dLの各濃度下での樹脂の固有粘度(ηinh)を以下の式から求め、これを濃度0に外挿した値を極限粘度[η]とした。
ηinh=[ln(t1/t0)]/c
式中、ηinhは固有粘度(dL/g)、t0は溶媒の流下時間(秒)、t1は樹脂溶液の流下時間(秒)、cは溶液中の樹脂の濃度(g/dL)を表す。
【0061】
(2)半芳香族ポリアミドフィルムの厚み
デジタル表示計(HEIDENHAIN社製、ND287型)を用いて、10点以上の計測を行い、その平均値を算出した。
【0062】
(3)半芳香族ポリアミドフィルムのヘーズ
半芳香族ポリアミドフィルムを50×100mmの大きさに切り出し、治具に取り付け、ヘーズメーター(日本電色工業社製、NDH4000型)を用いて計測した。
【0063】
(4)半芳香族ポリアミドフィルムの平均線膨張係数
製造直後、絶乾状態を保った半芳香族ポリアミドフィルムを30mm(幅方向)×4mm(長手方向)の大きさに切り出し、20℃(絶乾)環境下にて48時間以上静置した。その後、熱機械的分析装置(日立ハイテクサイエンス社製、TMA7100型)に取り付け、幅方向の寸法変化を計測した(試験体幅:4mm、標点間:10mm、荷重:40mN一定)。測定条件は、下記条件AおよびBで行った。なお、温度上昇に伴ってフィルム寸法が大きくなる(膨張する)場合を正(プラス)とし、温度上昇に伴ってフィルム寸法が小さくなる(収縮する)場合を負(マイナス)とした。
<条件A>
10℃/分で20℃から125℃まで昇温して5分間保持した。計測した125℃の寸法、20℃の寸法より、下記式により平均線膨張係数Aを算出した。
平均線膨張係数A[ppm/℃]=(125℃の寸法-20℃の寸法)/(20℃の寸法)/(125℃-20℃)×106
<条件B>
10℃/分で20℃から250℃まで昇温して5分間保持した。計測した250℃の寸法、20℃の寸法より、下記式により平均線膨張係数Bを算出した。
平均線膨張係数B[ppm/℃]=(250℃の寸法-20℃の寸法)/(20℃の寸法)/(250℃-20℃)×106
【0064】
(5)半芳香族ポリアミドフィルムの吸湿伸び率
半芳香族ポリアミドフィルムの長手方向及び幅方向を判別できるように300×300mmのサイズに切り出し、20℃、40%RH環境下にて48時間以上調湿を行った。調湿後、20℃、40%RH環境下にて、幅方向の間隔が200mm(L0とする)となるようマーキングを行い試験体とした。次いで試験体を20℃、90%RH環境下にて48時間調湿を行い、マーキング間の幅方向長さを計測した(L1とする)。計測は0.1mmの精度で行った。得られた計測値を使って、下記式より吸湿伸び率を算出した。
吸湿伸び率(%)=(L1-L0)/L0×100
【0065】
(6)ガラス積層体の耐衝撃性
JIS K 5600-5-3に準拠し、デュポン衝撃試験機(テスター産業社製)を用いて評価を行った。クローム鋼球(質量66.8g、直径25.4mm)を積層体のガラス板面に落下させ、積層板を構成するガラス板が割れる高さを計測した。ガラス板が割れなかった場合は、クローム鋼球の落下開始点を上昇させ、ガラス板が割れるまで繰り返し実施した。それぞれn数=5で実施し、5回中3回で割れを確認した場合はその時点の高さを記録し、5回中3回で割れが確認されなかった場合は高さを5mm上昇させて評価を続けた。ひび割れ等、軽微な破損についても割れたものとして判定をした。下記基準にて耐衝撃性の評価を行ったが、実用的には落下高さが500mm以上であれば合格とし、落下高さが560mm以上であればより良好であるとした。
○:落下高さが560mm以上である。
△:落下高さが500mm以上560mm未満である。
×:落下高さが500mm未満である。
【0066】
(7)ガラス積層体の反り性
ガラス板との貼り合わせを行った積層体について、積層直後に積層体を室温環境(23℃、50%RH)に3分間静置、その後の状態を下記基準で評価を行った。○または△を合格とした。
○:反りが発生していない。積層体の端部、中央部等に浮きが見られない。
△:反りが発生している。積層体の端部、中央部等に1mm以上2mm未満の浮きが見られる。
×:反りが発生している。積層体の端部、中央部等に2mm以上の浮きが見られる。ガラス板と半芳香族ポリアミドフィルムの剥離が発生している。
【0067】
(8)金属積層体の外観評価
金属板との貼り合わせを行った積層体について、下記基準で評価を行った。○または△を合格とした。
○:積層体の端部および中央部に剥離が見られない。かつ積層体に外観異常が全く認められない。
△:積層体の端部または中央部に剥離が見られる。
×:積層体の端部および中央部にともに剥離が見られる。
【0068】
(9)金属積層体の反り性
金属板との貼り合わせを行った積層体について、下記基準で評価を行った。○または△を合格とした。
○:反りが発生していない。積層体の端部、中央部等に浮きが見られない。
△:反りが発生している。積層体の端部、中央部等に1mm以上2mm未満の浮きが見られる。
×:反りが発生している。積層体の端部、中央等に2mm以上の浮きが見られる。金属板と半芳香族ポリアミドフィルムの剥離が発生している。
【0069】
2.材料
下記原材料を用い、半芳香族ポリアミドフィルム、積層体を製造した。
(1)半芳香族ポリアミド
下記製造例1、3に記載する方法で、半芳香族ポリアミドA、Bを製造した。
(2)ポリアミド6フィルム
市販されているナイロンフィルム(ユニチカ製「エンブレム」、厚み25μm)を用いた。(PA6と略す)
(3)ポリエチレンテレフタレートフィルム
市販されているPETフィルム(ユニチカ製「エンブレット」、厚み25μm)を用いた。(PETと略す)
【0070】
(4)接着層
・光学粘着フィルム(パナック社製「PANACLEAN PDS1-15HU75」、厚み15μm)
(5)ガラス板
・無アルカリガラス基板(日本電気硝子社製「OA-10G」、厚み30μm)
(6)金属板
・電解銅箔(古河電工製、表面CTS処理、厚み18μm)
【0071】
製造例1
(半芳香族ポリアミドAペレットの製造)
テレフタル酸(TPA)3289質量部、1,9-ノナンジアミン(NDA)2533質量部、2-メチル-1,8-オクタンジアミン(MODA)633質量部、安息香酸(BA)48.9質量部、次亜リン酸ナトリウム一水和物6.5質量部(前記のポリアミド原料4者の合計に対して0.1質量%)および蒸留水2200質量部を反応釜に入れ、窒素置換した。これらの原料のモル比(TPA/BA/NDA/MODA)は99/2/80/20である。
反応釜の内容物を100℃で30分間攪拌した後、2時間かけて内部温度を210℃に昇温した。この時、反応釜の内部は2.12MPaまで昇圧した。そのまま1時間反応を続けた後、230℃に昇温し、その後2時間、230℃に温度を保ち、水蒸気を徐々に抜いて圧力を2.12MPaに保ちながら反応させた。次に、30分かけて圧力を0.98MPaまで下げ、さらに1時間反応させて、プレポリマーを得た。これを100℃の温度で減圧下、12時間乾燥した後、2mm以下の大きさまで粉砕した。
次いで、粉砕したプレポリマーを、温度230℃、圧力13.3Paの条件下で10時間固相重合してポリマーを得た。これを二軸押出機に供給し、シリンダー温度320℃の条件下で溶融混練して押出し、冷却、切断して、半芳香族ポリアミドAのペレットを製造した。
半芳香族ポリアミドAは、極限粘度1.17dl/g、融点302℃、ガラス転移温度125℃であった。
【0072】
製造例2
(シリカ含有マスターチップの作製)
製造例1で得た半芳香族ポリアミドAを98質量部と、シリカ(富士シリシア化学社製 サイリシア310P、平均粒径2.7μm)2質量部とを溶融混練して、シリカを2質量%含有するマスターチップ(M1)を作製した。
【0073】
製造例3
(半芳香族ポリアミドBペレットの製造)
テレフタル酸(TPA)489質量部、1,10-デカンジアミン(DDA)507質量部、安息香酸(BA)2.8質量部、次亜リン酸ナトリウム一水和物1.0質量部(前記のポリアミド原料3者の合計に対して0.1質量%)および蒸留水1000質量部を反応釜に入れ、窒素置換した。これらの原料のモル比(TPA/BA/DDA)は99/2/100である。
反応釜の内容物を80℃で0.5時間撹拌した後、230℃で3時間加熱した。その後冷却し、反応物を取り出した。
該反応物を粉砕した後、乾燥機中において、窒素気流下、220℃で5時間加熱し、固相重合してポリマーを得た。これを二軸押出機に供給し、シリンダー温度320℃の条件下で溶融混練して押し出し、冷却、切断して、半芳香族ポリアミドBのペレットを製造した。
半芳香族ポリアミドBは、極限粘度1.24dl/g、融点316℃、ガラス転移温度150℃であった。
【0074】
製造例4
(シリカ含有マスターチップの作製)
製造例3で得た半芳香族ポリアミドBを98質量部と、シリカ(富士シリシア化学社製 サイリシア310P、平均粒径2.7μm)2質量部とを溶融混練して、シリカを2質量%含有するマスターチップ(M2)を作製した。
【0075】
実施例1
(半芳香族ポリアミドフィルムの製造)
製造例1で得た半芳香族ポリアミドA100質量部に対し、耐熱安定剤(住友化学社製スミライザーGA-80)0.2質量部、シリカ0.1質量部となるように、半芳香族ポリアミド、耐熱安定剤、マスターチップ(M1)を混合した。
この混合物を、シリンダー温度を295℃(前段)、320℃(中段)および320℃(後段)に設定した65mm単軸押出機に投入して溶融し、320℃に設定したTダイよりシート状に押出し、表面温度40℃に設定した冷却ロール上に静電密着させて冷却し、厚さ205μmの実質的に無配向の未延伸シートを得た。
次に、フラット式逐次延伸機によって二軸延伸を行った。まず、未延伸フィルムをロール加熱や赤外線加熱等により130℃に加熱し、縦方向(長手方向)に延伸倍率2.3倍で延伸し、縦延伸フィルムを得た。続いて連続して縦延伸フィルムの両端をクリップで把持しながら、横延伸機に導き、逐次二軸延伸を行った。横延伸機内部では予熱部温度が110℃、延伸部温度が148℃、延伸倍率が1.8倍であった。延伸後、熱固定ゾーンの前半部で270℃、5秒、その直後に、熱固定ゾーンの後半部で275℃、5秒の熱固定処理を行い、幅方向に3.0%の弛緩率で弛緩処理を行い、厚み50μmの半芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0076】
(ガラス積層体の作製)
得られた半芳香族ポリアミドフィルムと接着層をそれぞれ150×150mmのサイズに切り出し、これらを重ね合わせた後、ロールラミネーター(ニップ圧力0.4MPa、ロール速度2m/分)を用いて貼り合わせを行った。半芳香族ポリアミドフィルムに貼り合わされた接着層とガラス板(150×150mm)とを重ね合わせ、ロールラミネーター(ニップ圧力0.4MPa、ロール速度2m/分)を用いて貼り合わせることで、ガラス板/接着層/半芳香族ポリアミドフィルムの順で構成されるガラス積層体を得た。
【0077】
(金属積層体の作製)
得られた半芳香族ポリアミドフィルムと接着層をそれぞれ150×150mmのサイズに切り出し、これらを重ね合わせた後、ロールラミネーター(ニップ圧力0.4MPa、ロール速度2m/分)を用いて貼り合わせを行った。半芳香族ポリアミドフィルムに貼り合わされた接着層と電解銅箔(150×150mm)とを重ね合わせ、ヒートプレス機(230℃、15分間、2MPa)でプレスすることで、金属板/接着層/半芳香族ポリアミドフィルムの順で構成される金属積層体を得た。
【0078】
実施例2~14、比較例1~6
フィルムの製造条件を、表に記載されているように条件を変更した以外は、実施例1と同様の操作にて、厚み50μmの半芳香族ポリアミドフィルムと、ガラス積層体と、金属積層体を得た。
【0079】
実施例15~17
実施例2、5、7で得られた半芳香族ポリアミドフィルムを、それぞれロール加熱や赤外線加熱等により250℃に加熱し、10秒間アニール処理を行った以外は、実施例1と同様の操作にて、厚み50μmの半芳香族ポリアミドフィルムと、ガラス積層体と、金属積層体を得た。
【0080】
実施例18
熱固定処理の前半部の温度を280℃、熱処理時間を30秒、熱固定処理の後半部の温度を285℃、熱処理時間を30秒に変更し、幅方向の弛緩率を7%とした以外は、実施例1と同様の操作にて、厚み50μmの半芳香族ポリアミドフィルムを得た。
得られた半芳香族ポリアミドフィルムを、ロール加熱や赤外線加熱等により250℃に加熱し、10秒間アニール処理を行った以外は、実施例1と同様の操作にて、厚み50μmの半芳香族ポリアミドフィルムと、ガラス積層体と、金属積層体を得た。
【0081】
実施例19、20
実施例19では、未延伸フィルムの厚みを480μmに変更した以外は、実施例1と同様の操作にて、厚み75μmの半芳香族ポリアミドフィルムと、ガラス積層体と、金属積層体を得た。実施例20では、未延伸フィルムの厚みを800μmに変更した以外は、実施例1と同様の操作にて、厚み125μmの半芳香族ポリアミドフィルムと、ガラス積層体と、金属積層体を得た。
【0082】
実施例21
実施例1と同様の操作にて厚さ52μmの未延伸フィルムを得た後、この未延伸フィルムの両端をクリップで把持しながら、テンター方式同時二軸延伸機に導き、同時二軸延伸を行った。延伸条件は、予熱部温度が155℃、延伸部温度が150℃、長手方向および幅方向の延伸倍率がそれぞれ2.3倍、2.8倍であった。延伸後、270℃で5秒、その直後に275℃で5秒の熱固定処理を行い、幅方向に3.0%の弛緩率で弛緩処理を行い、厚み8μmの半芳香族ポリアミドフィルムと、ガラス積層体と、金属積層体を得た。
【0083】
実施例22、23
実施例22では、未延伸フィルムの厚みを77μmに変更した以外は、実施例21と同様の操作にて、厚み12μmの半芳香族ポリアミドフィルムと、ガラス積層体と、金属積層体を得た。実施例23では、未延伸フィルムの厚みを160μmに変更した以外は、実施例21と同様の操作にて、厚み25μmの半芳香族ポリアミドフィルムと、ガラス積層体と、金属積層体を得た。
【0084】
実施例24
実施例23で得られた半芳香族ポリアミドフィルムを、ロール加熱や赤外線加熱等により250℃に加熱し、10秒間アニール処理を行った以外は、実施例23と同様の操作にて、厚み25μmの半芳香族ポリアミドフィルムと、ガラス積層体と、金属積層体を得た。
【0085】
実施例25
半芳香族ポリアミドBとマスターチップ(M2)に変更し、未延伸フィルムの厚みを320μmに変更した以外は、実施例21と同様の操作にて、厚み50μmの半芳香族ポリアミドフィルムと、ガラス積層体と、金属積層体を得た。
【0086】
比較例7
比較例1で得られた半芳香族ポリアミドフィルムを、ロール加熱や赤外線加熱等により250℃に加熱し、10秒間アニール処理を行った。
【0087】
比較例8、9
比較例8では、ナイロンフィルム(PA6)を用い、比較例9ではPETフィルム(PET)を用いて評価を行った。
【0088】
実施例、比較例で得られた半芳香族ポリアミドフィルムの製造条件と特性、また、ガラス積層体と金属積層体の特性を表1~3に示す。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
実施例1~25の半芳香族ポリアミドフィルムは、所定の特性を有するものであったため、ガラス積層体では耐衝撃性が良好であり、反りの発生が抑制された。また、金属積層体では外観不良や反りの発生は確認されなかった。
【0093】
比較例1~7の半芳香族ポリアミドフィルムは、条件Aでの平均線膨張係数が本発明規定の上限値を超えていた(膨張した)。その結果、ガラス積層体は、耐衝撃性が劣っていた。特に、比較例1~5、7の半芳香族ポリアミドフィルムは、条件Bでの平均線膨張係数が本発明規定の上限値を超えていたため、金属積層体の外観も劣っていた。
比較例8、9のフィルムは、条件Aでの平均線膨張係数が本発明規定の下限値を大きく下回った(過度に収縮した)。その結果、ガラス積層体は、大きく反りが発生した。
比較例8のフィルムは、半芳香族ポリアミド以外のポリアミドを用いたため、条件Bでの平均線膨張係数を測定することができなかった。また、吸湿伸び率が所定範囲を満たすものとならなかった。その結果、金属積層体は反りが発生し、また金属積層体は外観も劣った。
比較例9のフィルムは、半芳香族ポリアミドとは異なる樹脂フィルムであるため、条件Bでの平均線膨張係数を測定することができなかった。
【0094】
参考例1
上記積層体に用いるガラス板単体にて、耐衝撃性の評価を行った。ガラス板が破壊された際の落球高さは、200mmであった。
【0095】
参考例2
上記積層体に用いるガラス板に対し、接着層(OCA)のみを積層したものについて、耐衝撃性の評価を行った。ガラス板が破壊された際の落球高さは、210mmであった。
【要約】
20~125℃条件下で測定される幅方向の平均線膨張係数が-90~0ppm/℃であることを特徴とする半芳香族ポリアミドフィルム。