(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/22 20060101AFI20221213BHJP
G01N 27/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G01N27/22 A
G01N27/00 B
(21)【出願番号】P 2018215755
(22)【出願日】2018-11-16
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 文裕
(72)【発明者】
【氏名】中根 健智
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-028824(JP,A)
【文献】特開2017-067445(JP,A)
【文献】特開2008-171877(JP,A)
【文献】国際公開第2015/111534(WO,A1)
【文献】特開2008-107183(JP,A)
【文献】特開昭60-166854(JP,A)
【文献】特開昭55-066749(JP,A)
【文献】特開2005-241576(JP,A)
【文献】特開2004-117112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に設けられた参照電極と、
前記参照電極の上方
に設けられた下部電極と、
前記下部電極の上方
に設けられた上部電極と、
を有し、
前記下部電極から見て前記参照電極は絶縁膜の反対側に設けられており、
前記上部電極から見て前記下部電極は物理量検出膜の反対側に設けられており、
前記下部電極の面積は、前記参照電極の面積及び前記上部電極の面積よりも小さく、
前記上部電極と前記下部電極とにより平行平板型の検出用キャパシタが構成され、前記下部電極と前記参照電極とにより平行平板型の参照用キャパシタが構成された検出装置。
【請求項2】
前記下部電極の周囲には、シールド層が配置されている請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記シールド層が2以上に分割されている請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記シールド層は、前記下部電極の周囲の一部を取り囲む第1シールド層と、前記下部電極の周囲の他の部分を取り囲む第2シールド層とを有し、
前記第1シールド層と前記第2シールド層とには、逆位相の駆動信号が印加される請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記シールド層は、前記参照電極、前記下部電極、及び前記上部電極に接続された各信号線を覆っている請求項2に記載の検出装置。
【請求項6】
前記各信号線には、静電気放電保護回路が接続されている請求項5に記載の検出装置。
【請求項7】
前記基板は半導体基板であって、
前記静電気放電保護回路は、MOSトランジスタで構成されている請求項6に記載の検出装置。
【請求項8】
前記シールド層は、前記下部電極と同一の製造工程で形成された配線層である請求項3ないし7いずれか1項に記載の検出装置。
【請求項9】
前記上部電極に交流の第1駆動信号を印加し、前記参照電極に前記第1駆動信号とは逆位相である交流の第2駆動信号を印加する駆動部と、
前記下部電極から出力される電荷を電圧に変換する電荷電圧変換部と、
を有する請求項1ないし8いずれか1項に記載の検出装置。
【請求項10】
前記検出用キャパシタと前記参照用キャパシタとを含む第1半導体チップと、
前記駆動部と前記電荷電圧変換部とを含む第2半導体チップと、
を有する請求項9に記載の検出装置。
【請求項11】
前記第1半導体チップは、前記第2半導体チップ上に積層されている請求項10に記載の検出装置。
【請求項12】
前記物理量検出膜は、感湿膜である請求項1ないし11いずれか1項に記載の検出装置。
【請求項13】
前記感湿膜は、ポリイミドにより形成されている請求項12に記載の検出装置。
【請求項14】
前記上部電極は複数の開口部を備え、
前記上部電極の面積は前記複数の開口部の面積を含むことを特徴とする請求項1ないし13いずれか1項に記載の検出装置。
【請求項15】
基板と、
前記基板の上方に設けられた参照電極と、
前記参照電極の上方に設けられた下部電極と、
前記下部電極の上方に設けられた上部電極と、
を有し、
前記下部電極から見て前記参照電極は絶縁膜の反対側に設けられており、
前記上部電極から見て前記下部電極は物理量検出膜の反対側に設けられており、
前記上部電極と前記下部電極とにより平行平板型の検出用キャパシタが構成され、前記下部電極と前記参照電極とにより平行平板型の参照用キャパシタが構成され、
前記下部電極の周囲には、面状の定電位配線から成るシールド層が配置されている検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿度検出装置等の検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検出装置として、例えば湿度検出装置には、吸収した水分量に応じて誘電率が変化する高分子材料で形成された感湿膜を誘電体として用いた静電容量式のものがある。この静電容量式の湿度検出装置では、感湿膜が電極間に配置され、この電極間の静電容量を測定することにより湿度(相対湿度)が求められる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の湿度検出装置では、湿度により静電容量が変化するセンサ部と、湿度によらず一定の静電容量を保持する基準部(参照部)とを設け、両者の容量差を電圧に変換することにより湿度を計測している。センサ部と基準部とは基板上に並設されている。
【0004】
このような静電容量式の湿度検出装置に用いられる回路部として、センサ部から出力される電荷をチャージアンプにより電圧に変換する構成が知られている(例えば、特許文献2参照)。この回路部には、チャージアンプの他に、センサ部を矩形波の交流駆動信号で駆動する駆動回路等が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5547296号
【文献】特許第6228865号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の湿度検出装置では、センサ部と基準部とは基板上に並設されているので、基板面積が大きく、小型化ができないという問題がある。
【0007】
また、センサ部と基準部とは、それぞれ上部電極と下部電極とを有する平行平板構造のキャパシタであって、下部電極が一体化されている。この下部電極は、上記容量差を検出するための容量検出電極として機能する。特許文献1では、容量検出電極が基板上に配置されていることから、基板との間の寄生容量が大きく、アンプの駆動負荷が大きくなるため、消費電力が大きいという問題がある。
【0008】
本発明は、小型化及び消費電力の低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示の技術は、基板と、前記基板の上方に設けられた参照電極と、前記参照電極の上方に設けられた下部電極と、前記下部電極の上方に設けられた上部電極と、を有し、前記下部電極から見て前記参照電極は絶縁膜の反対側に設けられており、前記上部電極から見て前記下部電極は物理量検出膜の反対側に設けられており、前記下部電極の面積は、前記参照電極の面積及び前記上部電極の面積よりも小さく、前記上部電極と前記下部電極とにより平行平板型の検出用キャパシタが構成され、前記下部電極と前記参照電極とにより平行平板型の参照用キャパシタが構成された検出装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、小型化及び消費電力の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る湿度検出装置の概略構成を例示する図である。
【
図2】
図1中のA-A線に沿う断面を概略的に示す断面図である。
【
図3】モールド樹脂を除去した状態における湿度検出装置の平面図である。
【
図4】センサチップの構成を示す概略平面図である。
【
図5】ESD保護回路の構成を例示する回路図である。
【
図6】ESD保護回路を構成するNMOSトランジスタの層構造を例示する図である。
【
図9】センサチップの素子構造を説明するための概略断面図である。
【
図10】加熱部の平面形状を例示する概略平面図である。
【
図11】湿度検出部の各電極の平面形状を例示する概略平面図である。
【
図12】第2配線層のレイアウトパターンを例示する平面図である。
【
図13】
図12のA-A線に沿った断面構造を示す概略断面図である。
【
図14】ASICチップの構成を例示するブロック図である。
【
図15】湿度計測処理部の構成を例示する図である。
【
図16】測定シーケンスを説明するタイミングチャートである。
【
図17】リーク電流の相殺効果について説明する図である。
【
図18】寄生容量を含めた電極構造の等価回路を示す図である。
【
図19】従来の電極構造の等価回路を示す図である。
【
図20】変形例に係る湿度計測処理部の構成を示す図である。
【
図21】シールド層の第1変形例を示す平面図である。
【
図22】シールド層の第2変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。なお、本開示において、単に湿度と記載されている場合における湿度は、相対湿度を意味する。
【0013】
[概略構成]
本発明の一実施形態に係る湿度検出装置10の構成について説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る湿度検出装置10の概略構成を例示する図である。
図1(A)は、湿度検出装置10を上方から見た平面図である。
図1(B)は、湿度検出装置10を下方から見た下面図である。
図1(C)は、湿度検出装置10を横方向から見た側面図である。また、
図2は、
図1(A)中のA-A線沿う断面を概略的に示す断面図である。
【0015】
湿度検出装置10は、平面形状がほぼ矩形状であって、対向する2組の二辺の一方がX方向に平行であって、他方がY方向に平行である。X方向とY方向とは互いに直交する。また、湿度検出装置10は、X方向及びY方向に直交するZ方向に厚みを有する。なお、湿度検出装置10の平面形状は、矩形状に限られず、円形、楕円、多角形等であってもよい。
【0016】
湿度検出装置10は、第1半導体チップとしてのセンサチップ20と、第2半導体チップとしてのASIC(Application Specific Integrated Circuit)チップ30と、封止部材としてのモールド樹脂40と、複数のリード端子41とを有する。
【0017】
センサチップ20は、ASICチップ30上に第1DAF(Die Attach Film)42を介して積層されている。すなわち、センサチップ20とASICチップ30とは、スタック構造となっている。
【0018】
センサチップ20とASICチップ30とは、複数の第1ボンディングワイヤ43により電気的に接続されている。ASICチップ30と複数のリード端子41とは、複数の第2ボンディングワイヤ44により電気的に接続されている。
【0019】
このように積層化されたセンサチップ20及びASICチップ30、複数の第1ボンディングワイヤ43、複数の第2ボンディングワイヤ44、及び複数のリード端子41は、モールド樹脂40により封止されてパッケージ化されている。このパッケージ方式は、PLP(Plating Lead Package)方式と呼ばれるものである。
【0020】
このPLP方式では、センサチップ20の厚みT1とASICチップ30の厚みT2とは、それぞれ200μm以上であることが好ましい。
【0021】
ASICチップ30の下面には、詳しくは後述するが、PLP方式によりパッケージ化する際に使用された第2DAF45が残存している。第2DAF45は、ASICチップ30の下面を絶縁する役割を有する。湿度検出装置10の下面には、第2DAF45と、複数のリード端子41とが露出している。
【0022】
各リード端子41は、ニッケルや銅により形成されている。第1DAF42及び第2DAF45は、それぞれエポキシ、シリコン、及びシリカなどの混合物からなる絶縁材料で形成されている。モールド樹脂40は、エポキシ樹脂等の遮光性を有する黒色系の樹脂である。
【0023】
湿度検出装置10の上面側には、センサチップ20の一部をモールド樹脂40から露出させる開口部50が形成されている。この開口部50は、例えば、壁部がテーパ状であって、開口面積が下方に向かうにつれて小さくなる。この開口部50のうち、実際にセンサチップ20を露出させる最下端の部分を有効開口部51という。
【0024】
図3は、モールド樹脂40を除去した状態における湿度検出装置10の平面図である。
図3に示すように、センサチップ20とASICチップ30とは、それぞれ平面形状がほぼ矩形状であって、X方向に平行な二辺と、Y方向に平行な二辺とを有する。センサチップ20は、ASICチップ30より小さく、ASICチップ30の表面上に第1DAF42を介して積層されている。
【0025】
センサチップ20には、有効開口部51により露出される領域に、湿度検出部21と、温度検出部22と、加熱部23とが設けられている。加熱部23は、湿度検出部21の下面側に、湿度検出部21の形成領域を覆うように形成されている。
【0026】
また、センサチップ20の端部には、複数のボンディングパッド(以下、単にパッドという。)24が形成されている。本実施形態では、6個のパッド24が形成されている。パッド24は、例えばアルミニウムやアルミシリコン合金(AlSi)により形成されている。
【0027】
ASICチップ30は、信号処理及び制御用の半導体チップであって、後述する湿度計測処理部31、温度計測処理部32、加熱制御部33、及び故障判定部34(いずれも
図14参照)が形成されている。
【0028】
また、ASICチップ30の表面においてセンサチップ20で覆われていない領域には、複数の第1パッド35と、複数の第2パッド36とが設けられている。第1パッド35及び第2パッド36は、例えばアルミニウムやアルミシリコン合金(AlSi)により形成されている。
【0029】
第1パッド35は、第1ボンディングワイヤ43を介して、センサチップ20の対応するパッド24に接続されている。第2パッド36は、第2ボンディングワイヤ44を介して、対応するリード端子41に接続されている。リード端子41は、ASICチップ30の周囲に配置されている。
【0030】
[センサチップの構成]
次に、センサチップ20の構成について説明する。
【0031】
図4は、センサチップ20の構成を示す概略平面図である。前述のパッド24は、外部からの電圧印加や、電位検出に使用される端子である。
図4では、
図3に示した複数のパッド24を、パッド24a~24fと区別して示している。なお、パッド24a~24fを区別する必要がない場合は、単にパッド24という。
【0032】
パッド24aは、グランド電位に接地されるグランド電極端子(GND)として機能する。このパッド24aは、配線や基板を介して、温度検出部22や加熱部23等の各部に電気的に接続される。また、パッド24aは、センサチップ20を構成するp型半導体基板70(
図9参照)に電気的に接続される。
【0033】
パッド24bは、湿度検出部21の下部電極83に電気的に接続された信号端子(TS)である。パッド24cは、湿度検出部21の上部電極84に電気的に接続された第1駆動端子(T1)である。パッド24dは、湿度検出部21の参照電極82(
図9参照)に電気的に接続された第2駆動端子(T2)である。下部電極83は、後述するチャージアンプ301(
図15参照)が静電容量を検出するための容量検出電極として機能する。
【0034】
パッド24eは、温度検出部22に電気的に接続された温度検出用端子(TMP)である。パッド24eは、温度の検出信号を取得するために用いられる。パッド24fは、加熱部23に電気的に接続された加熱用端子(HT)である。パッド24fは、加熱部23を駆動するための駆動電圧を供給するために用いられる。
【0035】
また、パッド24a以外のパッド24b~24fには、それぞれ静電気放電(ESD:Electro-Static Discharge)保護回路60が接続されている。各ESD保護回路60は、入力端子又は出力端子としてのパッド24b~24fのそれぞれと、グランド電極端子としてのパッド24aとの間に接続されている。本実施形態では、ESD保護回路60は、1つのダイオード61により構成されている。ダイオード61は、アノード側がパッド24aに接続され、カソード側がパッド24b~24fのうちのいずれかに接続されている。
【0036】
ESD保護回路60は、有効開口部51から可能な限り離すように、パッド24b~24fの近傍に配置することが好ましい。ESD保護回路60は、モールド樹脂40により覆われているので、光電効果による不要な電流が流れることはない。
【0037】
[ESD保護回路の構成]
次に、ESD保護回路60の構成について説明する。
【0038】
図5は、ESD保護回路60の構成を例示する回路図である。
図5に示すように、ESD保護回路60を構成するダイオード61は、例えば、NチャネルMOS(Metal-Oxide-Semiconductor)トランジスタ(以下、NMOSトランジスタという。)により形成されている。具体的には、ダイオード61は、NMOSトランジスタのソースとゲートとバックゲートを短絡したものである。この短絡部は、アノードとして機能する。このNMOSトランジスタのドレインは、カソードとして機能する。
【0039】
図6は、ESD保護回路60を構成するNMOSトランジスタの層構造を例示する図である。このNMOSトランジスタは、センサチップ20を構成するためのp型半導体基板70の表層に形成された2つのn型拡散層71,72と、コンタクト層73と、ゲート電極74とを有する。ゲート電極74は、p型半導体基板70の表面上にゲート絶縁膜75を介して形成されている。ゲート電極74は、2つのn型拡散層71,72の間に配置されている。
【0040】
例えば、n型拡散層71がソースとして機能し、n型拡散層72がドレインとして機能する。コンタクト層73は、バックゲートとしてのp型半導体基板70との電気的接続のための低抵抗層(p型拡散層)である。n型拡散層71とゲート電極74とコンタクト層73とは、共通に接続されて短絡される。この短絡部がアノードとして機能し、n型拡散層72がカソードとして機能する。
【0041】
p型半導体基板70は、例えばp型シリコン基板である。ゲート電極74は、例えば、多結晶シリコン(ポリシリコン)により形成されている。ゲート絶縁膜75は、例えば、二酸化シリコン等の酸化膜により形成されている。
【0042】
[湿度検出部の構成]
次に、湿度検出部21の構成について説明する。
【0043】
図7は、湿度検出部21の構成を例示する回路図である。
図7に示すように、湿度検出部21は、平行平板型の湿度検出用キャパシタ80と、平行平板型の参照用キャパシタ81とを有する。
【0044】
湿度検出部21の一方の電極(下部電極83)は、信号端子TSとしてのパッド24bに接続されている。湿度検出部21の他方の電極(上部電極84)は、第1駆動端子T1としてのパッド24cに接続されている。参照用キャパシタ81の一方の電極は、湿度検出部21の一方の電極(下部電極83)と共通である。参照用キャパシタ81の他方の電極(参照電極82)は、第2駆動端子T2としてのパッド24dに接続されている。
【0045】
湿度検出用キャパシタ80は、電極間に後述する感湿膜86が設けられている。感湿膜86は、空気中の水分を吸収し、吸収した水分量に応じて誘電率が変化するポリイミド等の高分子材料で形成されている。したがって、湿度検出用キャパシタ80は、感湿膜86が吸収する水分量に応じて静電容量が変化する。
【0046】
参照用キャパシタ81は、電極間に後述する第2絶縁膜111(
図9参照)が設けられている。第2絶縁膜111は、水分を吸収しない二酸化シリコン(SiO
2)等の絶縁材料で形成されている。したがって、参照用キャパシタ81は、湿度に応じて静電容量は変化しない。なお、静電容量が変化しないとは、極僅かに変化することも含む。
【0047】
感湿膜86に含まれる水分量は、湿度検出装置10の周囲の湿度に対応するので、湿度検出用キャパシタ80の静電容量と参照用キャパシタ81の静電容量との差を検出することにより、相対湿度を測定することができる。この相対湿度の測定は、ASICチップ30内の湿度計測処理部31(
図14参照)によって行われる。
【0048】
[温度検出部の構成]
次に、温度検出部22の構成について説明する。
【0049】
図8は、温度検出部22の構成を例示する回路図である。温度検出部22は、半導体のバンドギャップで温度変化により電気特性が比例的に変化する特性を利用して温度を検出するバンドギャップ型の温度センサである。例えば、温度検出部22は、ベース、エミッタ、コレクタのいずれか2つを接続して2端子とされた1又は複数のバイポーラトランジスタを含む。この2端子間の電圧値を検出することにより、温度を測定することができる。
【0050】
図8に示すように、本実施形態では、温度検出部22は、ベースとコレクタを接続したnpn型のバイポーラトランジスタ90を、複数個(例えば8個)並列に接続することにより構成されている。このように、複数個のバイポーラトランジスタ90を並列接続することにより、pn接合の接合面積が増大し、ESD耐性が向上する。
【0051】
バイポーラトランジスタ90のエミッタは、グランド電極端子としてのパッド24aに接続されている。バイポーラトランジスタ90のベース及びコレクタは、温度検出用端子としてのパッド24eに接続されている。
【0052】
温度の測定は、パッド24eの電位に基づき、ASICチップ30内の温度計測処理部32(
図14参照)によって行われる。
【0053】
[センサチップの素子構造]
次に、センサチップ20の素子構造について説明する。
【0054】
図9は、センサチップ20の素子構造を説明するための概略断面図である。なお、
図9では、パッド24a,24b,24c,24eを、湿度検出部21、温度検出部22、及び加熱部23と同一の断面内に示しているが、これは構造の理解を容易にするために示したものであり、実際に同一断面内に存在することを意味するものではない。湿度検出部21、温度検出部22、及び加熱部23の断面についても、構造の理解を容易にするために簡略化しており、各部の位置関係等は実際とは異なる。
【0055】
図9に示すように、センサチップ20は、前述のp型半導体基板70を用いて形成されている。このp型半導体基板70には、第1ディープnウェル100aと、第2ディープnウェル100bとが形成されている。第1ディープnウェル100aには、温度検出部22が形成されている。第2ディープnウェル100bには、加熱部23が形成されている。
【0056】
第1ディープnウェル100aと第2ディープnウェル100bとのいずれも形成されていないp型半導体基板70の表層には、pウェル103a,103bが形成されている。pウェル103a,103bの表層には、それぞれp型拡散領域からなるコンタクト層104a,104bが形成されている。コンタクト層104a,104bは、p型半導体基板70上に形成される所定の配線層とp型半導体基板70との電気的接続のための低抵抗層(p型拡散層)である。
【0057】
第1ディープnウェル100aの表層には、pウェル101とnウェル102とが形成されている。pウェル101の表層には、n型拡散層91及びp型拡散層92が形成されている。nウェル102の表層には、n型拡散層93が形成されている。n型拡散層91、p型拡散層92、及びn型拡散層93は、前述のnpn型のバイポーラトランジスタ90を構成し、それぞれエミッタ、ベース、及びコレクタとして機能する。
【0058】
第2ディープnウェル100bの表層には、pウェル105が形成されている。pウェル105の表層には、1又は2以上のn型拡散層106が形成されている。本実施形態では、複数のn型拡散層106が形成されている。例えば、各n型拡散層106は、紙面に直交する方向に延伸しており、全体として1次元格子状となっている(
図11参照)。n型拡散層106は、所定の抵抗値(例えば、約3.3Ωのシート抵抗値)を有し、電流が流れることにより発熱する抵抗体として機能する。すなわち、n型拡散層106は、前述の加熱部23を構成する。
【0059】
p型半導体基板70内の各層は、通常の半導体製造工程(CMOSプロセス)を用いて形成される。したがって、抵抗体としてのn型拡散層106は、温度検出部22の一部に含まれるn型拡散層91,93と同一の製造工程で形成される。n型拡散層106,91,93は、n型不純物(例えばリン)をイオン注入することにより基板中への不純物添加を行うイオン注入工程により同時に形成される。すなわち、抵抗体としてのn型拡散層106は、温度検出部22の一部に含まれるn型拡散層91,93と、p型半導体基板70の表面からの深さが同一である。また、n型拡散層106は、温度検出部22の一部に含まれるp型拡散層92と、p型半導体基板70の表面からの深さが同一であってもよい。
【0060】
なお、n型拡散層106,91,93は、イオン注入工程に代えて、熱処理によって不純物添加を行う熱拡散工程で形成することも可能である。
【0061】
また、前述のESD保護回路60のn型拡散層71,72についてもn型拡散層106,91,93と同一の製造工程(イオン注入工程又は熱拡散工程)で作成される。コンタクト層73は、p型拡散層92、コンタクト層104a,104b等と同一の製造工程(イオン注入工程又は熱拡散工程)で作成される。
【0062】
p型半導体基板70中のその他の層は、主にコンタクト層として機能するものであるので、説明は省略する。
【0063】
p型半導体基板70の表面上には、第1絶縁膜110、第2絶縁膜111、及び第3絶縁膜112が順に積層されている。これらは、二酸化シリコン(SiO2)や窒化シリコン(SiN)等の絶縁材料で形成されている。
【0064】
第1絶縁膜110上には、第1配線層120が形成されている。第2絶縁膜111上には、第2配線層121が形成されている。第2絶縁膜111は、第1配線層120上を覆っている。第3絶縁膜112は、第2配線層121上を覆っている。第1配線層120及び第2配線層121は、アルミニウム等の導電性材料により形成されている。
【0065】
第1絶縁膜110中には、第1配線層120をp型半導体基板70に接続するための複数の第1プラグを有する第1プラグ層122が形成されている。第2絶縁膜111中には、第1配線層120と第2配線層121とを接続するための複数の第2プラグを有する第2プラグ層123が形成されている。第1プラグ層122及び第2プラグ層123は、タングステン等の導電性材料により形成されている。
【0066】
例えば、前述のバイポーラトランジスタ90のベースとコレクタとを接続するための配線94は、第1配線層120により形成され、第1プラグ層122を介してp型拡散層92及びn型拡散層93に接続される。また、配線94は、第2プラグ層123及び第2配線層121を介して、温度検出用端子としてのパッド24eに接続される。また、バイポーラトランジスタ90のエミッタとしてのn型拡散層91は、第1プラグ層122、第1配線層120、及び第2配線層121を介して、グランド電極端子としてのパッド24aに接続される。
【0067】
加熱部23の一端をグランド電位に接地するための配線107は、第1配線層120により形成され、第1プラグ層122を介してn型拡散層106及びコンタクト層104bに接続される。以下、配線107をグランド配線107という。
【0068】
また、加熱部23の他端を加熱用端子としてのパッド24fに接続するための配線108は、第1プラグ層122を介してn型拡散層106に接続され、かつ、第2プラグ層123及び第2配線層121を介してパッド24fに接続される。なお、配線108は、加熱部23に大きな電流を流すことによるエレクトロマイグレーションを防止するために、他の信号配線より幅を太くすることが好ましい。以下、配線108を電源配線108という。
【0069】
参照用キャパシタ81の参照電極82は、第1配線層120により形成され、第2プラグ層123及び第2配線層121を介して、第2駆動端子T2としてのパッド24d(
図9では図示せず)に接続される。
【0070】
また、湿度検出用キャパシタ80の下部電極83は、第2配線層121により形成され、信号端子TSとしてのパッド24bに接続されている。さらに、湿度検出用キャパシタ80の上部電極84を第1駆動端子T1としてのパッド24cに接続するための配線85は、第2配線層121により形成されている。なお、下部電極83は、第2絶縁膜111を介して参照電極82に対向する位置に配置されている。
【0071】
パッド24a~24fは、アルミニウム等の導電性材料によって、第3絶縁膜112上に形成され、第3絶縁膜112を貫通して第2配線層121に接続されている。
【0072】
第3絶縁膜112上には、感湿膜86が形成されている。感湿膜86は、厚みが0.5μm~1.5μmの水分子を吸着しやすい高分子材料で形成されている。感湿膜86は、例えば、厚みが1μmのポリイミド膜である。なお、感湿膜86を形成する高分子材料は、ポリイミドに限られず、セルロース、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)などであってもよい。
【0073】
感湿膜86の上面は平坦であり、この上面に、平板状の上部電極84が形成されている。上部電極84は、感湿膜86を介して下部電極83に対向する位置に形成されている。上部電極84の一部は、配線85に接続されている。上部電極84は、例えば、厚みが200nmのアルミニウム等で形成された導電膜である。また、上部電極84には、空気中の水分子を感湿膜86に効率的に取り込むために、複数の開口84aが形成されている。
【0074】
感湿膜86上には、上部電極84を覆うようにオーバーコート膜87が設けられている。オーバーコート膜87は、高分子材料、例えば、感湿膜86と同一の材料で形成されている。オーバーコート膜87の厚みは、例えば0.5μm~10μmである。
【0075】
感湿膜86及びオーバーコート膜87には、パッド24a~24fを露出させる開口が形成されている。
【0076】
このように、下部電極83と上部電極84とによって平行平板の湿度検出用キャパシタ80が構成されている。また、下部電極83と参照電極82とによって、平行平板の参照用キャパシタ81が構成されている。また、湿度検出用キャパシタ80と参照用キャパシタ81とは、加熱部23の上方に配置されている。
【0077】
したがって、加熱部23が発熱することにより、下部電極83と上部電極84との間の感湿膜86が加熱されて水分が蒸発し、感湿膜86中の水分量が変化する。これにより、感湿膜86の誘電率が変化し、湿度検出用キャパシタ80の静電容量が変化する。また、温度検出部22は、加熱部23により生じる温度変化を検出する。
【0078】
[加熱部の平面形状]
図10は、加熱部23の平面形状を例示する概略平面図である。
図10では、配線形状等を概略的に示しており、実際のレイアウトパターンとは異なる。
【0079】
図10に示すように、加熱部23を構成するn型拡散層106は、細長い短冊状の領域が複数平行に並べられた一次元格子状に形成されている。この一次元格子状のn型拡散層106の一端は、前述のグランド配線107に接続され、他端は、前述の電源配線108に接続されている。加熱部23は、温度検出部22の全体を覆うように、温度検出部22の下方に位置している。
【0080】
なお、詳しくは後述するが、グランド配線107は、実際には線状ではなく、XY面内に広がった形状を有しており、信号線等をシールドするシールド層として機能している。
【0081】
[電極の平面形状]
図11は、湿度検出部21の各電極の平面形状を例示する概略平面図である。
【0082】
図11に示すように、参照電極82、上部電極84、及び下部電極83は、ともにほぼ同一の形状であって、矩形状である。上部電極84は、下部電極83及び参照電極82を覆うように形成されている。参照電極82、下部電極83、及び上部電極84は、p型半導体基板70側からこの順に積層されている。
【0083】
参照電極82と上部電極84とは、ほぼ同じ大きさであることが好ましい。下部電極83は、参照電極82及び上部電極84よりも小さいことが好ましい。
【0084】
開口84aは、可能な限り小さいほうが好ましく、小さいほど空気中への電界の漏れが減少し、異物付着時の下部電極83と上部電極84との間の静電容量変化が抑制される(
図13参照)。実際は、微小かつ多数の開口84aが形成されている。なお、開口84aは、正方形には限られず、細長い短冊状や、円形であってもよい。
【0085】
信号線201~203は、第1配線層120及び第2配線層121により形成された配線である。信号線201は、湿度検出部21の下部電極83とパッド24bとの間に接続された配線である。信号線202は、湿度検出部21の上部電極84とパッド24cとの間に接続された配線である。
【0086】
なお、前述の配線85は、信号線202の一部である。
【0087】
[電極の平面形状]
図12は、第2配線層121のレイアウトパターンを例示する平面図である。
図12に示すように、下部電極83、グランド配線107、配線85等は、第2配線層121により形成されている。
【0088】
グランド配線107は、グランド配線107、配線85等の配線と、微小なスリットを介して隣接している。グランド配線107は、ほぼ全面に設けられている。したがって、グランド配線107は、上述の信号線201~203、及び温度検出部22に接続される信号線204等を覆い、シールド層として機能している。
【0089】
[電極の積層構造]
図13は、
図12のA-A線に沿った断面構造を示す概略断面図である。
図13に示すように、容量検出電極としての下部電極83は、参照電極82の上方に配置されており、p型半導体基板70には近接していないので、p型半導体基板70との間で生じる寄生容量が抑制される。
【0090】
また、下部電極83の上方には上部電極84が配置されており、下部電極83の周囲には、グランド配線107が近接して設けられているので、これらのシールド効果により電界が閉じ込められる。したがって、
図13に示すように、例えば、開口部50に水滴等の比誘電率が大きく、静電容量を変化させる異物が付着したような場合であっても、グランド配線107によって電界が遮蔽されることにより下部電極83への影響は抑制される。
【0091】
なお、下部電極83の面積を、参照電極82及び上部電極84の各面積よりも小さくすることにより、下部電極83に対する電界の閉じ込め効果が向上する。
【0092】
また、湿度検出用キャパシタ80と参照用キャパシタ81とで下部電極83を共有し、参照電極82、上部電極84、及び下部電極83を積層構造とすることにより、チップ面積が小さくなり、湿度検出装置10の小型化を図ることができる。
【0093】
また、
図13において、参照電極82に隣接して配置された配線は、第1配線層120により形成されており、グランド電位とされている。
【0094】
[ASICチップの構成]
次に、ASICチップ30の構成について説明する。
【0095】
図14は、ASICチップ30の構成を例示するブロック図である。
図14に示すように、ASICチップ30には、湿度計測処理部31、温度計測処理部32、加熱制御部33、及び故障判定部34が構成されている。
【0096】
詳しくは後述するが、湿度計測処理部31は、逆位相の第1駆動信号及び第2駆動信号をそれぞれ第1駆動端子T1及び第2駆動端子T2に印加して、信号端子TSとしてのパッド24bから出力される電荷を電圧に変換することにより相対湿度を計測する。
【0097】
温度計測処理部32は、温度検出用端子HTとしてのパッド24eの電位を検出し、検出電位に対応する温度を算出する。
【0098】
加熱制御部33は、加熱用端子HTとしてのパッド24fに所定の駆動電圧(例えば、上述の電源電圧VDD)を印加することにより、加熱部23に電流(例えば10mA程度)を流して発熱させる。加熱制御部33は、パッド24fへの印加電圧を制御することにより、発熱量の制御を行う。
【0099】
故障判定部34は、湿度計測処理部31により計測された相対湿度と、温度計測処理部32により計測された温度とに基づいて故障判定を行う。故障判定部34は、故障判定時に、加熱部23の加熱開始及び終了に関する指示を、加熱制御部33に与える。
【0100】
例えば、故障判定部34は、加熱部23が発熱していない初期状態において、湿度計測処理部31から湿度H1を取得し、温度計測処理部32から温度T1を取得する。そして、故障判定部34は、加熱部23による加熱を開始させ、一定時間の経過後に、再度、湿度計測処理部31から湿度H2を取得し、温度計測処理部32から温度T2を取得する。
【0101】
故障判定部34は、加熱により温度が上昇し(T2>T1)、かつ、加熱により湿度が低下した(H2<H1)場合には、湿度検出装置10が正常であると判定し、その他の場合には、湿度検出装置10が故障した状態にあると判定する。
【0102】
[湿度計測処理部の構成]
次に、湿度計測処理部31の構成について説明する。
【0103】
図15は、湿度計測処理部31の構成を例示する図である。
図15に示すように、湿度計測処理部31は、駆動部300と、チャージアンプ301と、サンプルホールド回路302と、ADコンバータ(ADC)303と、制御部304とを有する。なお、
図15には、センサチップ20の信号端子TSとしてのパッド24bに接続されたESD保護回路60を示している。
【0104】
駆動部300は、第1駆動回路DRV1と、第2駆動回路DRV2とを含む。チャージアンプ301は、キャパシタC1と、オペアンプOP1と、スイッチ回路SW1とを含んで構成されたスイッチトキャパシタ方式の電荷電圧変換(CV変換)部である。
【0105】
第1駆動回路DRV1は、制御部304からの制御に基づいて、センサチップ20の第1駆動端子T1に、矩形波の交流駆動信号である第1駆動信号を印加する。第2駆動回路DRV2は、制御部304からの制御に基づいて、センサチップ20の第2駆動端子T2に、矩形波の交流駆動信号であって、第1駆動信号とは逆位相の第2駆動信号を印加する。第1駆動信号がハイレベルの場合には第2駆動信号はローレベルであり、第1駆動信号がローレベルの場合には第2駆動信号はハイレベルである。
第1駆動信号及び第2駆動信号のハイレベルは、例えば電源電圧VDDと等しく、ローレベルは、例えばグランド電位GNDと等しい。
【0106】
キャパシタC1は、一端がセンサチップ20の信号端子TSに接続され、他端がオペアンプOP1の出力に接続されている。
【0107】
オペアンプOP1は、反転入力端子が信号端子TSに接続され、非反転入力端子には基準電圧Vrefが入力される。基準電圧Vrefは、例えば、第1駆動信号及び第2駆動信号におけるハイレベルとローレベルとの中間の値である。
【0108】
オペアンプOP1は電圧ゲインが非常に大きいので、信号端子TSの電圧はほぼ基準電圧Vrefと等しくなる。また、オペアンプOP1は反転入力端子の入力インピーダンスは非常に高いので、反転入力端子にはほとんど電流が流れ込まない。オペアンプOP1は、信号端子TSの電圧と基準電圧Vrefとの差を増幅した電圧Voを出力する。
【0109】
スイッチ回路SW1は、キャパシタC1に蓄積される電荷を放電するための回路であり、キャパシタC1と並列に接続される。スイッチ回路SW1は、制御部304からの制御に基づいて、オン又はオフする。
【0110】
サンプルホールド回路302は、第1サンプルホールド回路(第1S/H)302aと、第2サンプルホールド回路(第2S/H)302bとを含む。第1S/H302aと第2S/H302bとは、駆動部300とADC303との間に並列に接続されている。第1S/H302a及び第2S/H302bは、制御部304からの制御に基づいて、駆動部300からの出力電圧Voを、選択的にサンプリングして保持し、保持した電圧を出力する。
【0111】
ADC303は、差動入力方式のADコンバータであって、2つの入力端子のうち一方は第1S/H302aの出力端子に接続され、他方は第2S/H302bの出力端子に接続されている。ADC303は、第1S/H302aの出力電圧Vsh1と第2S/H302bの出力電圧Vsh2との差分値ΔVをデジタル信号Dsに変換して出力する。すなわち、ADC303は、差分処理部として機能する。
【0112】
制御部304は、ASICチップ30内の各部を制御する。制御部304は、駆動部300による駆動信号の発生、スイッチ回路SW1によるキャパシタC1の放電、サンプルホールド回路302によるサンプルホールド、ADC303によるAD変換動作を所定の測定シーケンスに基づいて実行する。
【0113】
[測定シーケンス]
次に、測定シーケンスについて説明する。
【0114】
図16は、測定シーケンスを説明するタイミングチャートである。測定シーケンスにおいて、制御部304は、第1期間T1と第2期間T2とを繰り返すように各部を制御する。第1期間T1は、第1リセット期間Tr1と第1電荷転送期間Tc1とからなる。第2期間T2は、第2リセット期間Tr2と第2電荷転送期間Tc2とからなる。
【0115】
第1リセット期間Tr1及び第2リセット期間Tr2は、スイッチ回路SW1をオンとしてキャパシタC1の電荷を放電する期間である。第1電荷転送期間Tc1及び第2電荷転送期間Tc2は、スイッチ回路SW1をオフとしてキャパシタC1を充電可能な状態として、センサチップ20の信号端子TSから出力される電荷をキャパシタC1に転送する期間である。
【0116】
第1リセット期間Tr1では、第1駆動信号がハイレベルとされ、第2駆動信号がローレベルとされる。第1電荷転送期間Tc1では、第1駆動信号がローレベルとされ、第2駆動信号がハイレベルとされる。第2リセット期間Tr2では、第1駆動信号がローレベルとされ、第2駆動信号がハイレベルとされる。第2電荷転送期間Tc2では、第1駆動信号がハイレベルとされ、第2駆動信号がローレベルとされる。このように、第1駆動信号と第2駆動信号とは、第1期間T1と第2期間T2とで電圧が反転、すなわち逆位相となっている。なお、電圧が反転とは、基準電圧Vrefに対して反転することをいう。
【0117】
これにより、オペアンプOP1からの出力電圧Voは、第1電荷転送期間Tc1と第2電荷転送期間Tc2とで電圧が反転する。第1電荷転送期間Tc1における出力電圧Vo(第1出力電圧)は、第1S/H302aによりサンプルホールドされる。第2電荷転送期間Tc2における出力電圧Vo(第2出力電圧)は、第2S/H302bによりサンプルホールドされる。
【0118】
以下、各期間について詳細に説明する。まず、第1リセット期間Tr1では、スイッチ回路SW1がオンとされることにより、キャパシタC1が放電するとともに、オペアンプOP1がバーチャルショートされる。このとき、第1駆動端子T1には、第1駆動信号のハイレベル(VDD)が印加され、第2駆動端子T1には、第2駆動信号のローレベル(GND)が印加される。これにより、センサチップ20の湿度検出用キャパシタ80と参照用キャパシタ81とには、基準電圧Vrefを基準として電荷が蓄積される。これらの合計の電荷Q1は、下式(1)で表される。
【0119】
Q1=-Cs×(VDD-Vref)+Cr×Vref ・・・(1)
ここで、Csは、湿度検出用キャパシタ80の静電容量であり、Crは、参照用キャパシタ81の静電容量である。
【0120】
また、第1リセット期間Tr1では、スイッチ回路SW1がオンとされているので、キャパシタC1の蓄積電荷Q2は0である。
【0121】
次に、第1電荷転送期間Tc1では、スイッチ回路SW1がオフとされるとともに、第1駆動信号がローレベル(GND)、第2駆動信号がハイレベル(VDD)に変更される。スイッチ回路SW1がオフとされて、オペアンプOP1の反転入力端子がハイインピーダンス(HiZ)状態となることにより、電荷保存則に基づき、湿度検出用キャパシタ80、参照用キャパシタ81、及びキャパシタC1の総電荷量が一定に維持される。
【0122】
第1駆動信号及び第2駆動信号の電圧の変化に伴い、オペアンプOP1の反転入力端子の電圧Viが変化する。この後、オペアンプOP1のフィードバックによって差動入力電圧が釣り合うまで出力電圧Voが上昇する。
【0123】
このとき、湿度検出用キャパシタ80と参照用キャパシタ81との合計の電荷Q3は、下式(2)で表される。
【0124】
Q3=-Cr×(VDD-Vref)+Cs×Vref ・・・(2)
また、第1電荷転送期間Tc1では、キャパシタC1の蓄積電荷Q4は下式(3)で表される。
【0125】
Q4=C1×(Vref-Vo) ・・・(3)
そして、電荷保存則により「Q1+Q2=Q3+Q4」の関係が成立することから、第1電荷転送期間Tc1における出力電圧Voは、下式(4)で表される。
【0126】
Vo=VDD×(Cs-Cr)/C1+Vref ・・・(4)
第1S/H302aによるサンプルホールドは、出力電圧Voが十分に上昇した第1電荷転送期間Tc1の終了時点の信号を取り込み、第1S/H302aには、式(4)で表される出力電圧Voが保持される。
【0127】
次に、第2リセット期間Tr2は、第1リセット期間Tr1と同様であるが、第1駆動信号及び第2駆動信号の電圧が第1リセット期間Tr1とは反転されるので、第2リセット期間Tr2における湿度検出用キャパシタ80と参照用キャパシタ81との合計の電荷Q1'は、下式(5)で表される。
【0128】
Q1'=-Cr×(VDD-Vref)+Cs×Vref ・・・(5)
キャパシタC1の蓄積電荷Q2'は0である。
【0129】
同様に、第2電荷転送期間Tc2では、第1駆動信号及び第2駆動信号の電圧が第1電荷転送期間Tc1とは反転されるので、第2電荷転送期間Tc2における湿度検出用キャパシタ80と参照用キャパシタ81との合計の電荷Q3'は、下式(6)で表される。
【0130】
Q3'=-Cs×(VDD-Vref)+Cr×Vref ・・・(6)
第2電荷転送期間Tc2におけるキャパシタC1の蓄積電荷Q4'は、上式(3)と同様である。
【0131】
電荷保存則により「Q1'+Q2'=Q3'+Q4'」の関係が成立することから、第2電荷転送期間Tc2における出力電圧Voは、下式(7)で表される。
【0132】
Vo=-VDD×(Cs-Cr)/C1+Vref ・・・(7)
第2S/H302bによるサンプルホールドは、出力電圧Voが十分に上昇した第2電荷転送期間Tc2の終了時点の信号を取り込み、第2S/H302bには、式(7)で表される出力電圧Voが保持される。
【0133】
第1S/H302a及び第2S/H302bは、次回のサンプルホールド時まで現在の保持電圧を維持するので、ADC303には、上式(4)の出力電圧Voに一致した出力電圧Vsh1と、上式(7)の出力電圧Voに一致した出力電圧Vsh2とが入力される。
【0134】
したがって、差分処理部としてのADC303により生成される差分値ΔVは、下式(8)で表される。
【0135】
ΔV=2×VDD×(Cs-Cr)/C1 ・・・(8)
このように、第1期間T1と第2期間T2とで第1駆動信号と第2駆動信号との電圧を反転させることにより、測定信号の振幅を2倍に拡大することができる。
【0136】
[リーク電流の相殺効果]
図17は、リーク電流の相殺効果について説明する図である。本実施形態では、センサチップ20の信号端子TSにESD保護回路60が接続されていることから、ESD保護回路60のPN接合に逆方向電圧が印加され、逆方向電流(リーク電流)が発生する可能性がある。また、オペアンプOP1に含まれるスイッチ回路SW1や、信号端子TSに接続されるスイッチ回路(図示せず)についても、PN接合に逆方向電圧が印可され、逆方向電流(リーク電流)が発生する可能性がある。
【0137】
このようなリーク電流は、スイッチ回路SW1がオフ状態である第1電荷転送期間Tc1及び第2電荷転送期間Tc2において、例えば、チャージアンプ301の出力端子、キャパシタC1、チャージアンプ301の入力端子、ESD保護回路60、グランドの経路で流れる。スイッチ回路SW1にリーク電流が流れることにより、出力電圧Voを変動させる。この出力電圧Voの変動量δは、下式(9)で表される。
【0138】
δ=I×t/C1 ・・・(9)
ここで、Iは、リーク電流の大きさ、tは、第1電荷転送期間Tc1及び第2電荷転送期間Tc2のそれぞれの長さを表している。
【0139】
なお、リーク電流が上記経路のように、チャージアンプ301の入力端子からグランドへ流れる場合には、変動量δは正となり、出力電圧Voを上昇させる。逆に、リーク電流がVDDなどの高電圧からチャージアンプ301の入力端子へ流れる場合には、変動量δは負となり、出力電圧Voを低下させる。
【0140】
第1電荷転送期間Tc1であるか第2電荷転送期間Tc2であるかにかかわらずリーク電流の経路は同一であるので、変動量δの正負は、第1電荷転送期間Tc1であるか第2電荷転送期間Tc2であるかによらず同じである。
【0141】
したがって、
図17に示すように、リーク電流が生じた場合には、第1電荷転送期間Tc1における出力電圧Voと第2電荷転送期間Tc2における出力電圧Voとの変動量δの極性は同一であり、ADC303による差分処理により相殺され、リーク電流によるチャージアンプ301の出力電圧誤差が抑制される。
【0142】
なお、
図16及び
図17に示す測定シーケンスにおいて、第1駆動信号と第2駆動信号との電圧のハイレベルをローレベルとし、ローレベルをハイレベルとすることも可能である。
【0143】
[消費電力の抑制効果]
次に、
図9及び
図13に示す電極の積層構造による消費電力の低減効果について説明する。
【0144】
図18は、寄生容量を含めた電極構造の等価回路を示す図である。
図9及び
図13に示すように、本実施形態では、参照電極82がp型半導体基板70に近接するので、参照電極82とp型半導体基板70の間で寄生容量Cpが生じる。この寄生容量Cpは、
図18に示すように、参照用キャパシタ81と第2駆動端子T2との間に付加される。
【0145】
図19は、本実施形態に対する比較例として、従来の電極構造の等価回路を示す図である。例えば、特許文献1の
図4に示されるように、容量検出電極としての下部電極が基板上に近接して設けられることから、下部電極と基板との間で寄生容量Cpが生じる。この寄生容量Cpは、
図19に示すように、信号端子TSに付加されることになる。
【0146】
したがって、本実施形態では、基板との間で生じる寄生容量Cpは、信号端子TSに付加されることなく、参照用キャパシタ81に対して付加されるため、信号端子TSに接続されるチャージアンプの入力端子に接続される駆動負荷が低減し、消費電力が低減する。
【0147】
[湿度計測処理部の変形例]
次に、湿度計測処理部の変形例について説明する。
【0148】
図20は、変形例に係る湿度計測処理部31aの構成を示す図である。
図20に示すように、第1チャージアンプ301a、第2チャージアンプ301b、デマルチプレクサ(DEMUX)305を有する点が上記実施形態の湿度計測処理部31と異なる。
【0149】
第1チャージアンプ301aと第2チャージアンプ301bとは、上記実施形態のチャージアンプ301と同様の構成である。
【0150】
第1チャージアンプ301aの出力端子には第1S/H302aが接続され、第2チャージアンプ301bの出力端子には第2S/H302bが接続されている。第1チャージアンプ301a及び第2チャージアンプ301bの各入力端子にはDEMUX305が接続されている。DEMUX305は、センサチップ20の信号端子TSに接続されている。
【0151】
DEMUX305は、制御部304からの制御に基づいて、第1チャージアンプ301aと第2チャージアンプ301bとを選択的に信号端子TSに接続する。具体的には、DEMUX305は、前述の第1期間T1には、第1チャージアンプ301aを信号端子TSに接続し、前述の第2期間T2には、第2チャージアンプ301bを信号端子TSに接続する。
【0152】
したがって、本変形例に係る湿度計測処理部31aでは、第1期間T1では第1チャージアンプ301aによりCV変換を行って第1S/H302aによりサンプルホールドし、第2期間T2では第2チャージアンプ301bによりCV変換を行って第2S/H302bによりサンプルホールドを行う。
【0153】
湿度計測処理部31aのその他の構成及び動作は、上記実施形態の湿度計測処理部31と同様である。
【0154】
[シールド層の変形例]
次に、シールド層の変形例について説明する。
【0155】
図12では、下部電極83の周囲にグランド配線107を近接させることにより、グランド配線107をシールド層として機能させているが、以下の変形例では、下部電極83の周囲に個別にシールド層を設ける。
【0156】
図21は、シールド層の第1変形例を示す平面図である。
図21に示すように、第1変形例では、下部電極83の周囲を取り囲むようにシールド層400を形成している。このシールド層400は、固定電位(例えば、電源電圧VDD、グランド電位GND)とすることが好ましい。また、シールド層400を、第1駆動信号又は第2駆動信号で電位固定するように構成してもよい。
【0157】
図22は、シールド層の第2変形例を示す平面図である。
図22に示すように、第2変形例では、下部電極83の周囲を取り囲むように、第1シールド層401及び第2シールド層402を形成している。
【0158】
第1シールド層401は、下部電極83の周囲の一部(ほぼ半分)を取り囲んでおり、第2シールド層402は、他の部分(ほぼ半分)を取り囲んでいる。第1シールド層401と第2シールド層402とは、長さ、幅、厚み、下部電極83からの距離がほぼ等しい。このため、第1シールド層401と下部電極83との間で生じる寄生容量と、第2シールド層402と下部電極83との間で生じる寄生容量とはほぼ等しい。
【0159】
第1シールド層401は、信号線202に接続されており、第1駆動信号が印加される。第2シールド層402は、信号線203に接続されており、第2駆動信号が印加される。
【0160】
第1シールド層401及び第2シールド層402に第1駆動信号及び第2駆動信号をそれぞれ印加した場合には、湿度検出用キャパシタ80及び参照用キャパシタ81の静電容量の絶対値にずれが生じる可能性があるが、このずれは推定可能な値であるので、出力電圧Vo等の補正により打ち消すことが可能である。
【0161】
なお、下部電極83の周囲を取り囲むシールド層を、さらに3以上に分割してもよい。
【0162】
[その他の変形例]
以下、その他の種々の変形例について説明する。
【0163】
上記実施形態では、ESD保護回路をNMOSトランジスタにより構成しているが、PチャネルMOSトランジスタ(PMOSトランジスタ)により構成してもよい。
【0164】
また、上記実施形態では、センサチップ20の基板をp型半導体基板70としているが、n型半導体基板を用いることも可能である。
【0165】
また、上記実施形態では、湿度検出装置10を、センサチップ20とASICチップ30とを積層したスタック構造としているが、本発明は、スタック構造以外の湿度検出装置にも適用可能である。
【0166】
また、上記実施形態では、湿度検出用キャパシタ80と参照用キャパシタ81とを設けているが、参照用キャパシタ81は必須ではなく設けなくてもよい。この場合、第2駆動信号を出力する第2駆動回路DRV2は不要である。この場合においても
図17に示す測定シーケンスにより、リーク電流によるチャージアンプ301の出力電圧誤差が抑制される。
【0167】
また、上記実施形態では、湿度検出部21を、静電容量変化型の湿度センサとしているが、吸脱湿による感湿膜の抵抗の変化を検出するピエゾ抵抗式等の抵抗変化型湿度センサとしてもよい。
【0168】
また、上記実施形態では、検出装置として、湿度を検出する湿度検出装置10を例示しているが、本発明は、湿度以外の物理量を検出する検出装置にも適用可能である。すなわち、湿度検出部21に代えて、湿度以外の物理量に応じた信号を出力する検出部を設けることが可能である。すなわち、感湿膜86に代えて、湿度以外の物理量に応じて誘電率が変化する物理量検出膜を用いることが可能である。
【0169】
また、本開示において、「覆う」や「上」という文言により表される2つの要素の位置関係は、第1の要素を第2の要素の表面に、他の要素を介して間接的に設けられる場合、及び直接的に設けられる場合の両方を含む。
【0170】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳説したが、本発明は、上述した実施の形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0171】
10 湿度検出装置(検出装置)、20 センサチップ(第1半導体チップ)、21 湿度検出部、22 温度検出部、23 加熱部、24 ボンディングパッド、30 ASICチップ(第2半導体チップ)、40 モールド樹脂、50 開口部、60 静電気放電保護回路、70 p型半導体基板、80 湿度検出用キャパシタ(検出用キャパシタ)、81 参照用キャパシタ、82 参照電極、83 下部電極、84 上部電極、84a 開口、86 感湿膜(物理量検出膜)、107 グランド配線、300 駆動部、301 チャージアンプ(電荷電圧変換部)、400 シールド層、401 第1シールド層、402 第1シールド層